(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168978
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】医療用支持固定装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20231121BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20231121BHJP
A61G 13/12 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61N5/10 T
A61B6/04 332E
A61B6/04 332D
A61G13/12 B
A61B6/04 301
A61B6/04 332M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080409
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】591189812
【氏名又は名称】エンジニアリングシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(72)【発明者】
【氏名】左治木 修
【テーマコード(参考)】
4C082
4C093
4C341
【Fターム(参考)】
4C082AC09
4C082AE01
4C082AL03
4C093CA32
4C093ED12
4C341MN11
(57)【要約】
【課題】 構成が比較的簡潔であり、上述した従来の医療用支持固定装置に比べて製作コストを低減することができると共に、上述した従来の医療用支持固定装置に比べて特に上下方向の寸法が小さく、使用勝手が良好である医療用支持固定装置を提供する。
【解決手段】 医療用支持固定装置は、ベース板、該ベース板上に配設されたヨー角微調整板、該ヨー角微調整板上に配設されたチルト角微調整板、ヨー角微調整機構及びチルト角微調整機構を含む。該ヨー角微調整板は短軸部材及び軸受部材(又は軸受孔)を介してベース板上に装着され、チルト角微調整板はヒンジを介してヨー角微調整板上に装着されている。該ヨー角微調整機構はベース板とヨー角微調整板との間に介在されており、チルト角微調整機構はヨー角微調整板とチルト角微調整板部との間に介在されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース板、該ベース板上に配設されたヨー角微調整板、該ヨー角微調整板上に配設されたチルト角微調整板、ヨー角微調整機構及びチルト角微調整機構を含む医療用支持固定装置において、
該ベース板と該ヨー角微調整板との一方の片端部且つ幅方向中心には、該ベース板と該ヨー角微調整板との該一方に対して垂直に延在する短軸部材が固定され、該ベース板と該ヨー角微調整板との他方の片端部且つ幅方向中心には、該ベース板と該ヨー角微調整板との該他方に対して垂直に延在する軸受部材が固定され又は軸受孔が形成されており、該短軸部材に該軸受部材又は該軸受孔を回転自在に組み合わせることによって該ベース板に該ヨー角微調整板が該短軸部材の中心軸線を中心として回転自在に装着されており、
該ヨー角微調整板の該片端部と該チルト角微調整板の片端部とは、該ヨー角微調整板及び該チルト角微調整板の幅方向に延在する旋回中心軸線を有する少なくとも1個のヒンジを介して相互に旋回自在に接続されており、
該ヨー角微調整機構は、該ベース板の他端部と該ヨー角微調整板の他端部との間に介在されており、
該チルト角微調整機構は、該ヨー角微調整板の他端部と該チルト角微調整板の他端部との間に介在されている、
ことを特徴とする医療用支持固定装置。
【請求項2】
該ヨー角微調整機構は、該ベース板の他端部に該ベース板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在に装着された伝動歯車、該伝動歯車に配設された入力部材及び該ヨー角微調整板の該他端部に固定され且つ該伝動歯車に係合された弧状歯車片から構成されている、請求項1記載の医療用支持固定装置。
【請求項3】
該ヨー角微調整板の該他端部にはヨー角指示片が固定されており、該ベース板の該他端部上にはヨー角メモリが配設されている、請求項1記載の医療用支持固定装置。
【請求項4】
該チルト角微調整機構は、該ヨー角微調整板の他端部に該ヨー角微調整板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在に装着された雄ねじ部材、該雄ねじ部材に配設された入力部材、及び該雄ねじ部材に螺合された雌ねじ部材から構成され、該雌ねじ部材には該チルト角微調整板の多端部に係止される係止片が付設されている、請求項1又は2記載の医療用支持固定装置。
【請求項5】
該チルト角微調整板の該他端部にはチルト角指示片が固定されており、該ヨー角微調整板の該他端部にはチルト角メモリが配設されている部材が立設されている、請求項1記載の医療用支持固定装置。
【請求項6】
ベース板、該ベース板上に配設されたチルト角微調整板、該チルト角微調整板上に配設されたヨー角微調整板、ヨー角微調整機構及びチルト角微調整機構を含む医療用支持固定装置において、
該ベース板の片端部と該チルト角微調整板の片端部とは、該ベース板及び該チルト微調整板の幅方向に延在する旋回中心軸線を有する少なくとも1個のヒンジを介して旋回自在に接続されており、
該チルト角微調整板と該ヨー角微調整板との一方の片端部且つ幅方向中心には、該チルト角微調整板と該ヨー角微調整板との該一方に対して垂直に延在する短軸部材が固定され、該チルト角微調整板と該ヨー角微調整板との他方の片端部且つ幅方向中心には、該チルト角微調整板と該ヨー角微調整板との該他方に対して垂直に延在する軸受部材が固定され又は軸受孔が形成されており、該短軸部材に該軸受部材又は該軸受孔を回転自在に組み合わせることによって該チルト角微調整板に該ヨー角微調整板が該短軸部材の中心軸線を中心として回転自在に装着されており、
該チルト角微調整機構は、該ベース板の他端部と該チルト角微調整板の他端部との間に介在されており、
該ヨー角微調整機構は、該チルト角微調整板の他端部と該ヨー角微調整板の他端部との間に介在されている、
ことを特徴とする医療用支持固定装置。
【請求項7】
該チルト角微調整機構は、該ベース板の他端部に該ベース板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在に装着された雄ねじ部材、該雄ねじ部材に配設された入力部材、及び該雄ねじ部材に螺合された雌ねじ部材から構成され、該雌ねじ部材には該チルト角微調整板の多端部に係止される係止片が付設されている、請求項6記載の医療用支持固定装置。
【請求項8】
該チルト角微調整板の該他端部にはチルト角指示片が固定されており、該ベース板の該他端部上にはチルト角メモリが配設されている部材が立設されている、請求項6記載の医療用支持固定装置。
【請求項9】
該ヨー角微調整機構は、該チルト角微調整板の他端部に該チルト角微調整板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在に装着された伝動歯車、該伝動歯車に配設定された入力部材及び該ヨー角微調整板の他端部に固定され且つ該伝動歯車に係合された弧状歯車片から構成されている、請求項6又7記載の医療用支持固定装置。
【請求項10】
該ヨー角微調整板の該他端部にはヨー角指示片が固定されており、該チルト角微調整板の該他端部にはヨー角メモリが配設されている、請求項6記載の医療用支持固定装置。
【請求項11】
全体が合成樹脂から形成されている、請求項1又は6記載の医療用支持固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の所定部位、例えば頭部、を支持し固定するために使用される医療用支持固定装置、更に詳しくはベース板、ヨー角微調整板、チルト角微調整板、ヨー角微調整機構及びチルト角微調整機構を含む医療用支持固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ベース板(基台)、ベース板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在にベース板上に装着されたヨー角微調整板、ヨー角微調整板の幅方向に延在する旋回中心軸線を中心として旋回自在にヨー角微調整板上に装着されたチルト角微調整板、ベース板とヨー角微調整板との間に介在されたヨー角微調整機構、及びヨー角微調整板とチルト角微調整板との間に介在されたチルト角微調整機構を含む医療用支持固定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者が先に提案した、上記特許文献1に開示されている上記のとおりの医療用支持固定装置は、ヨー角及びチルト角を微調整することができる有用な医療用支持固定装置であるが、未だ充分に満足し得るものではなく、(1)ベース板に対するヨー角微調整板の装着様式及びヨー角微調整板に対するチルト角微調整板の装着様式が比較的複雑であり、そしてまたヨー角微調整機構の構成及びチルト角微調整機構の構成も比較的複雑であり、医療用支持固定装置の製作コストが比較的高価である、(2)医療用支持固定装置の特に上下方向の寸法が比較的大きく、使用勝手が必ずしも良好でない、という解決すべき問題を有する。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、構成が比較的簡潔であり、上述した従来の医療用支持固定装置に比べて製作コストを低減することができると共に、上述した従来の医療用支持固定装置に比べて特に上下方向の寸法が小さく、使用勝手が良好である、新規且つ改良された医療用支持固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する医療用支持固定装置として、
ベース板、該ベース板上に配設されたヨー角微調整板、該ヨー角微調整板上に配設されたチルト角微調整板、ヨー角微調整機構及びチルト角微調整機構を含む医療用支持固定装置において、
該ベース板と該ヨー角微調整板との一方の片端部且つ幅方向中心には、該ベース板と該ヨー角微調整板との該一方に対して垂直に延在する短軸部材が固定され、該ベース板と該ヨー角微調整板との他方の片端部且つ幅方向中心には、該ベース板と該ヨー角微調整板との該他方に対して垂直に延在する軸受部材が固定され又は軸受孔が形成されており、該短軸部材に該軸受部材又は該軸受孔を回転自在に組み合わせることによって該ベース板に該ヨー角微調整板が該短軸部材の中心軸線を中心として回転自在に装着されており、
該ヨー角微調整板の該片端部と該チルト角微調整板の片端部とは、該ヨー角微調整板及び該チルト角微調整板の幅方向に延在する旋回中心軸線を有する少なくとも1個のヒンジを介して相互に旋回自在に接続されており、
該ヨー角微調整機構は、該ベース板の他端部と該ヨー角微調整板の他端部との間に介在されており、
該チルト角微調整機構は、該ヨー角微調整板の他端部と該チルト角微調整板の他端部との間に介在されている、
ことを特徴とする医療用支持固定装置が提供される。
【0007】
好ましくは、該ヨー角微調整機構は、該ベース板の他端部に該ベース板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在に装着された伝動歯車、該伝動歯車に配設された入力部材及び該ヨー角微調整板の該他端部に固定され且つ該伝動歯車に係合された弧状歯車片から構成されている。該ヨー角微調整板の該他端部にはヨー角指示片が固定されており、該ベース板の該他端部上にはヨー角メモリが配設されているのが好適である。好ましくは、該チルト角微調整機構は、該ヨー角微調整板の他端部に該ヨー角微調整板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在に装着された雄ねじ部材、該雄ねじ部材に配設された入力部材、及び該雄ねじ部材に螺合された雌ねじ部材から構成され、該雌ねじ部材には該チルト角微調整板の多端部に係止される係止片が付設されている。該チルト角微調整板の該他端部にはチルト角指示片が固定されており、該ヨー角微調整板の該他端部にはチルト角メモリが配設されている部材が立設されているのが好適である。好ましくは、医療用支持固定装置は全体が合成樹脂から形成されている。
【0008】
本発明の第二の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する医療用支持固定装置として、
ベース板、該ベース板上に配設されたチルト角微調整板、該チルト角微調整板上に配設されたヨー角微調整板、ヨー角微調整機構及びチルト角微調整機構を含む医療用支持固定装置において、
該ベース板の片端部と該チルト角微調整板の片端部とは、該ベース板及び該チルト微調整板の幅方向に延在する旋回中心軸線を有する少なくとも1個のヒンジを介して旋回自在に接続されており、
該チルト角微調整板と該ヨー角微調整板との一方の片端部且つ幅方向中心には、該チルト角微調整板と該ヨー角微調整板との該一方に対して垂直に延在する短軸部材が固定され、該チルト角微調整板と該ヨー角微調整板との他方の片端部且つ幅方向中心には、該チルト角微調整板と該ヨー角微調整板との該他方に対して垂直に延在する軸受部材が固定され又は軸受孔が形成されており、該短軸部材に該軸受部材又は該軸受孔を回転自在に組み合わせることによって該チルト角微調整板に該ヨー角微調整板が該短軸部材の中心軸線を中心として回転自在に装着されており、
該チルト角微調整機構は、該ベース板の他端部と該チルト角微調整板の他端部との間に介在されており、
該ヨー角微調整機構は、該チルト角微調整板の他端部と該ヨー角微調整板の他端部との間に介在されている、
ことを特徴とする医療用支持固定装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該チルト角微調整機構は、該ベース板の他端部に該ベース板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在に装着された雄ねじ部材、該雄ねじ部材に配設された入力部材、及び該雄ねじ部材に螺合された雌ねじ部材から構成され、該雌ねじ部材には該チルト角微調整板の多端部に係止される係止片が付設されている。該チルト角微調整板の該他端部にはチルト角指示片が固定されており、該ベース板の該他端部上にはチルト角メモリが配設されている部材が立設されているのが好適である。好ましくは、該ヨー角微調整機構は、該チルト角微調整板の他端部に該チルト角微調整板に対して垂直に延在する回転中心軸線を中心として回転自在に装着された伝動歯車、該伝動歯車に配設された入力部材及び該ヨー角微調整板の他端部に固定され且つ該伝動歯車に係合された弧状歯車片から構成されている。該ヨー角微調整板の該他端部にはヨー角指示片が固定されており、該チルト角微調整板の該他端部にはヨー角メモリが配設されているのが好適である。好ましくは、医療用支持固定装置は全体が合成樹脂から形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の医療用支持固定装置においては、構成が比較的簡潔であり、上述した従来の医療用支持固定装置に比べて製作コストを低減することができると共に、上述した従来の医療用支持固定装置に比べて特に上下方向の寸法が小さく、使用勝手が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成された医療用支持固定装置の好適実施形態を示す斜面図。
【
図4】
図1に示す医療用支持固定装置におけるベース板の平面図。
【
図5】
図1に示す医療用支持固定装置におけるベース板の底面図。
【
図6】
図1に示す医療用支持固定装置におけるベース板の断面図。
【
図7】
図1に示す医療用支持固定装置におけるヨー角微調整板の平面図。
【
図8】
図1に示す医療用支持固定装置におけるヨー角微調整板の底面図。
【
図9】
図1に示す医療用支持固定装置におけるヨー角微調整板の断面図。
【
図10】
図1に示す医療用支持固定装置におけるチルト角微調整板の平面図。
【
図11】
図1に示す医療用支持固定装置におけるチルト角微調整板の底面図。
【
図12】
図1に示す医療用支持固定装置におけるチルト角微調整板の断面図。
【
図13】
図1に示す医療用支持固定装置におけるヨー角微調整機構を示す部分断面図。
【
図14】
図1に示す医療用支持固定装置におけるチルト角微調整機構を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された医療用支持固定装置の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳述する。
【0013】
図1乃至
図3を参照して説明すると、本発明に従って構成された全体を番号2で示す医療用支持固定装置は、ベース板4、ヨー角微調整板6、チルト角微調整板8、ヨー角微調整機構10及びチルト角微調整機構12を含んでいる。医療用支持固定装置2を構成するこれらの構成要素(使用されている締結ねじ等の部品も含む)の全ては、放射線治療及び撮像並びに核磁気共鳴撮像等の際の障害発生を確実に回避するために、金属ではなくて合成樹脂から形成されているのが望ましい。
【0014】
図4乃至
図6を参照して説明を続けると、ベース板4は矩形状であり、その片端部(
図4乃至
図6において左端部)且つ幅方向(
図4及び
図5において上下方向)中心には円形孔が形成されており、この円形孔には軸受部材14が圧入によって固定されている。そして、この軸受部材14を挿通する短軸部材16がベース板4に固定されている(短軸部材16の固定については後に更に言及する)。短軸部材16はベース板4に対して垂直に延在し、短軸部材16の上端には円環形状のフランジが形成されている。ベース板4の他端部(
図4乃至
図6において右端部)には、ヨー角微調整機構10を構成する種々の部品(これらの部品については後述する)が配設されている。ベース板4の裏面(
図6において下面)には、ベース板4よりも幾分小寸法の裏張材18が貼着されている。軟質合成樹脂から形成されているのが好都合である裏張材18は、
図5に明確に図示されている如く、短軸部材16が存在する領域及びヨー角部調整機構10の構成部品が存在する領域において切り欠かれている。
【0015】
図7乃至
図9から明確に理解されるとおり、ヨー角微調整板6も矩形状であり、その片端部(
図7乃至
図9において左端部)且つ幅方向(
図7及び
図8において上下方向)中心には円形孔が形成されており、この円形孔には短円筒形状の軸受部材20が圧入によって固定されている。ヨー角微調整板6の他端部の裏面(
図9において下面)にはヨー角微調整機構10を構成する部品(この部品については後述する)が配設されており、ヨー角微調整板6の他端部の上面にはチルト角微調整機構8を構成する種々の部品(これらの部品については後述する)が配設されている。ヨー角微調整板6の他端部の上面には、更に、先端部が二等辺三角形状であるヨー角指示片22が締結ねじ24によって固定されている。
【0016】
図4乃至
図6、
図7乃至
図9と共に
図1及び
図2を参照することによって明確に理解される如く、ヨー角微調整板6はベース板4上に積層配置し、そしてヨー角微調整板6の他端部に固定されている軸受部材20及びベース板4の他端部に固定されている軸受部材14を挿通する短軸部材16をベース板4に固定することによって、ベース板4上のヨー角微調整板6が短軸部材16の中心軸線26を中心として回転自在に装着される。ベース板4に対する短軸部材16の固定は、図示の実施形態においてはベース板4の裏面に短軸部材16のフランジの外径と同一でよい外径を有する円形止片28を配設し、この円形止片28を通して締結ねじ30を短軸部材16に螺着することによって実現されている。図示の実施形態においては、ベース板4に短軸部材16を固定しヨー角微調整板6に軸受部材20を固定しているが、ベース板4に軸受部材20を固定しヨー角微調整板6に短軸部材16を固定することもできる。また、軸受部材20を省略してヨー角微調整板6(又はベース板4)に形成した円形孔をそのまま軸受孔として利用して、この軸受孔に短軸部材16を組み合わせる(即ち挿通させる)こともできる。
【0017】
図10乃至
図12にはチルト角微調整板8が図示されている。チルト角微調整板8は矩形状の主部32とこの主部32の両側縁から下方に垂下する垂下部34とを有する。チルト角微調整板8の片端部(
図10乃至12において左端部)はヨー角微調整板6の片端部に、少なくとも1個のヒンジ36を介して相互に旋回自在に接続されている。詳述すると、図示の実施形態においては、ヨー角微調整板6及びチルト角微調整板8の幅方向(
図7乃至
図12において上下方向)に間隔をおいて2個のヒンジ36が配設されており、かかるヒンジ36の旋回中心軸線37はヨー角微調整板6及びチルト角微調整板8の幅方向に延在する。
図10乃至
図12に図示するとおり、ヒンジ36の中央部に位置する片側旋回部38が締結ねじ40によってチルト角微調整板8の片側部の裏面に固定され、ヒンジ36の両側部に位置する他側旋回部42が締結ねじ44によってヨー角微調整板6の片側部の表面に固定されている。チルト角微調整板8の他端部の下面には、チルト角微調整板8の幅方向に間隔をおいて一対のチルト角指示片46が締結ねじ47によって固定されている。チルト角指示片46の先端部はチルト角微調整板8の他端縁を超えて突出している。チルト角微調整板8の他端部の表面には、チルト角微調整板8の幅方向に間隔をおいて一対の突起48が固定され、そしてまた同様にチルト角微調整板8の幅方向に間隔をおいて一対の円形孔が形成され、かかる円形孔に軸受部材50が圧入されている。一対の突起48及び一対の軸受部材50は、チルト角微調整板8上に人体の所定部位を固定する固定手段(その一例を
図1に二点鎖線で示す)を装着するのに利用することができる。
【0018】
次に、
図1乃至
図9と共に
図13を参照してヨー角微調整機構10について説明する。ベース板4の他端部の表面には、ベース板4の幅方向に細長く延在する支持部材52が締結ねじ54(
図5)によって固定されている。支持部材52の中央部には円形穴56が形成されており、支持部材52の中央部の表面上には軸受部材58が締結ねじ(図示していない)によって固定されている。軸受部材58には円形孔60が形成されており、この円形孔60は支持部材52に形成されている円形穴56と同心であり、比較的大経の下部と比較的小径の上部を有する。軸受部材58には入力部材62が回転自在に装着されている。入力部材62は軸受部材58の円形孔60の上部の内径に対応した外径を有する嵌合部62aと嵌合部62aの外径よりも大きい外径を有する把持部62bを有し、嵌合部62aを軸受部材58の円形穴56内に嵌入することによって軸受部材58に入力部材62が回転自在に装着されている。入力部材62の下端面には伝動歯車64が固定されている。伝動歯車64の中心に形成されている貫通孔66は比較的小径の上部と比較的大経の下部とを有し、上部よりも大経で下部よりも小径である外径を有する頭部を有する締結ねじ68を伝動歯車64の貫通孔66を通して入力部材62に螺着することによって、伝動歯車64が入力部材62固定されている。入力部材62に対する伝動歯車64の相対的角度位置は、両者間に介在された規制ピン70によって規制することができる。図示の実施形態においては、入力部材62と伝動歯車64とを別個に形成して両者を締結ねじ68によって固定しているが、所望ならが両者を一体に形成することもできる。一方、ヨー角微調整板6の他端部の裏面には弧状歯車片72が止めねじ74によって固定されており、この弧状歯車片72が伝導歯車64と係合されている。ベース板4の他端部には、
図5を参照することによって明確に理解される如く、伝動歯車64及び弧状歯車片72に対応して開口76が形成されている。
図1、
図2及び
図4に図示する如く、上記支持部材52の表面にはヨー角メモリが印刷されているシート78が貼着されている。
【0019】
上記のとおりのヨー角微調整機構10においては、入力部材62の把持部62bを把持して回転すると、かかる回転が伝動歯車64を介して弧状歯車片72に伝動され、
図2に二点鎖線6A及び6Bで図示する如く、ベース板4に対してヨー角微調整板6が上記短軸部材16の中心軸線26を中心として回転され、ベース板4に対するヨー角微調整板6のヨー角が微調整される。シート78に印刷されているヨー角メモリに対する上記ヨー角指示片22の位置を参照することによってベース板4に対するヨー角微調整板6のヨー角を視認することができる。上述した支持部材52はベース板4の他端縁を超えて延出しており、延出端部には円形孔80及び長円孔82が形成されている。かかる円形孔80及び長円孔82は、チルト角微調整板8上に人体の所定部位を固定する固定手段(その一例を
図1に二点鎖線で示す)を装着するのに利用することができる。
【0020】
次いで、
図1乃至
図3及び
図7乃至
図12と共に
図14を参照してチルト角微調整機構12について説明する。
図1を参照することによって明確に理解されるとおり、ヨー角微調整板6の他端部の表面には、幅方向に間隔をおいて一対の案内壁84が配設されている。詳述すると、案内壁84の各々はヨー角微調整板6に対して垂直に立設されており、相互に平行に延在している。ヨー角微調整板6の裏面から案内壁84の各々の下端部内に複数個の締結ねじ(図示していない)を螺着することによってヨー角微調整板6の表面に案内壁84の各々が固定されている。案内壁84の各々の内面(相互に対向する面)の片側部は比較的厚く他側部は比較的薄く、両者間にはヨー角微調整板6の表面に対して垂直に延在し且つ片端側(
図1において左下側)に面する肩面86(
図1に案内壁84の一方の内面に形成されている肩面86を図示している)が形成されている。案内壁84の各々の外面にはチルト角メモリが印刷されているシート88(シート88の一方を
図1に図示している)が貼着されている。一対の案内壁84の上端面間には軸受部材90が締結ねじ92によって固定されている。この軸受部材90の幅方向中央には軸受孔94(
図14)が形成されている。上述したチルト角指示片46の各々はチルト角微調整板8の他端縁を超えて突出し、一対の案内壁84の外面に近接して位置する。
【0021】
図14に明確に図示する如く、ヨー角微微調整板6の他端部の幅方向中央部には円形開口100が形成されており、この円形開口100には軸受部材102が圧入されている。軸受部材102の主部は短円筒形状であり上端には円環形状のフランジが付設されている。上記軸受部材90とヨー角微調整板6に固定された軸受部材102には雄ねじ部材104が回転自在に装着されている。雄ねじ部材104の上端部104a及び下端部104bの外径は主部104cの外径よりも幾分小さく且つこれらの外周面は円筒形状であり、上端部104aが軸受孔94に嵌入され下端部104bが軸受部材102に嵌入され、かくして雄ねじ部材104が回転自在に装着されている。雄ねじ部材104の主部104cの外周面には雄ねじが形成されている。
図1及び
図14に明確に図示する如く、雄ねじ部材104には雌ねじ部材106が螺着されている。この雌ねじ部材106にはチルト角微調整板8の他端部の下方に延出する係止片108が付設されている。図示の実施形態においては、係止片108はヨー角微調整板6の幅方向に細長く延在してり、その片側部の幅方向長さはその他側部の幅方向長さより幾分小さく、係止片108の両側には他端側(
図1において右上側)に面する肩面110が形成されている。
図1を参照することによって明確に理解されるとおり、係止片108の両側に形成された肩面110が夫々一対の案内壁84の各々の内面に形成されている肩面86に当接乃至近接され、かくして係止片108の上下方向移動が一対の案内壁84によって案内される。図示の実施形態においては、雌ねじ部材106と係止片108とを一体に形成しているが、所望ならば両者を別個に形成して適宜の手段によって相互に固定することもできる。雄ねじ部材104の上端には上部は短円柱形状である入力部材112が締結ねじ114によって固定されている。雄ねじ部材104には下部の内径は比較的大きく上部の内径は比較的小さい貫通孔116が形成されており、締結ねじ114の軸部は貫通孔116の上部を通って入力部材112に螺着されている。所望ならば、入力部材112を雄ねじ部材104と一体に形成することもできる。
【0022】
上述したとおりのチルト角微調整機構12においては、入力部材112を把持して所定方向(例えば上方から見て時計方向)に回転すると、雌ねじ部材106が上昇され、係止片108がチルト角微調整板8の他端部の裏面に当接してチルト角微調整板8の他端部を上昇させ、かくして
図2に二点鎖線で図示する如くチルト角微調整板8のチルト角が増大される。入力部材112を逆方向(例えば上方から見て反時計方向)に回転すると、雌ねじ部材106が下降されて係止片108がチルト角微調整板8の裏面から下方に移動し、チルト角微調整板8の他端部が下降され、かくしてチルト角微調整板8のチルト角が低減される。チルト角微調整板8のチルト角は、シート88に印刷されているチルト角メモリに対するチルト角指示片46の位置によって視認することができる。
【0023】
上述したとおりの医療用支持固定装置2の使用様式の典型例について説明すると、放射線治療又は撮像或いは核磁気共鳴撮像等の際には、人体が横たわる適宜の寝台上に医療用支持固定装置2が載置される。そして、
図1に二点鎖線で図示する如く、チルト角微調整板8の表面上に固定手段118が取り付けられる。固定手段118は矩形板形態の基板120とこの基板120に装着されるカバー部材122を含んでいる。基板120の片端部の両側部には孔124が形成されており、かかる孔124をチルト角微調整板8の他端部の両側部に配設されている突起48に被嵌することによってチルト角微調整板8に対して固定手段118を所定位置に位置付けることができる。人体の頭部は基板120上に位置付けられてカバー部材122によって覆われて固定される。人体の頭部の精密な位置付けは、入力部材62を手動操作してベース板4に対するヨー角微調整板6のヨー角を微調整し、そしてまた入力部材112を手動操作してヨー角微調整板6に対するチルト角微調整板8のチルト角を微調整することによって実現される。固定手段118自体は当業者には周知の形態でよいので、その詳細な説明は省略する。
【0024】
以上添付図面を参照して本発明に従って構成された医療用支持固定装置の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言を要しない。
【0025】
例えば、図示の実施形態においては、短軸部材16及び軸受部材20(又は軸受孔)を介してベース板4上にヨー角微調整板6を装着し、ヨー角微調整板6上にヒンジ36を介してチルト角微調整板8を装着し、ベース板4とヨー角微調整板6との間にヨー角微調整機構10を配設し、ヨー角微調整板6とチルト角微調整板8との間にチルト角微調整機構12を配設しているが、ヒンジを介してベース板上にチルト角微調整板を装着し、短軸部材及び軸受部材(又は軸受孔)を介してチルト角微調整板上に板ヨー角微調整板を装着し、ベース板とチルト角微調整板との間にチルト角微調整機構を配設し、チルト角微調整板とヨー角微調整板との間にヨー角微調整機構を配設することもできる。
【符号の説明】
【0026】
2:医療用支持固定装置
4:ベース板
6:ヨー角微調整板
8:チルト角微調整板
10:ヨー角微調整機構
12:チルト角微調整機構
16:短軸部材
20:軸受部材
22:ヨー角指示片
36:ヒンジ
46:チルト指示片
62:入力部材
64:伝動歯車
72:弧状歯車片
78:ヨー角メモリが印刷されたシート
88:チルト角メモリが印刷されたシート
104:雄ねじ部材
106:雌ねじ部材
108:係止片
112:入力部材