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特開2023-168981ポリシロキサン系化合物、皮膜形成用組成物、積層体、タッチパネル、及び、硬化皮膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168981
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ポリシロキサン系化合物、皮膜形成用組成物、積層体、タッチパネル、及び、硬化皮膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20231121BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20231121BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231121BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20231121BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20231121BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231121BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C08L83/06
C09D183/04
C09D7/63
G03F7/075 511
G03F7/027 502
B32B27/00 101
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080415
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】池堂 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】青柳 志保
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4F100
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
2H197CE01
2H197HA03
2H197HA04
2H225AC36
2H225AC38
2H225AC60
2H225AD06
2H225AM62P
2H225AM86P
2H225AN22P
2H225AN39P
2H225AN72P
2H225BA09P
2H225BA33P
2H225CA14
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4F100AG00B
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA30A
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ52
4F100GB41
4F100YY00A
4J002CP05W
4J002CP05X
4J002EE048
4J002EH106
4J002EH136
4J002EV347
4J002EX019
4J002EX060
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD158
4J002FD209
4J002GF00
4J002GP00
4J002GQ00
4J038DL031
4J038FA112
4J038GA01
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA14
4J038PA17
4J038PB08
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】タック性に優れた硬化皮膜を得ることができ、かつ、現像性及び光硬化性に優れるポリシロキサン系化合物を提供する。
【解決手段】テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)に由来する構成単位(A)と、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)に由来する構成単位(B)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)に由来する構成単位(C)とを少なくとも含み、下記式(1)で算出される構成比率が、0より大きく0.1未満であるポリシロキサン系化合物。
(式(1)中、MAは構成単位(A)のモル数を表し、MBは構成単位(B)のモル数を表し、MCは構成単位(C)のモル数を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)に由来する構成単位(A)と、
アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)に由来する構成単位(B)と、
ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)に由来する構成単位(C)とを少なくとも含み、
下記式(1)で算出される構成比率が、0より大きく0.1未満であるポリシロキサン系化合物。
(式(1)中、MAは構成単位(A)のモル数を表し、MBは構成単位(B)のモル数を表し、MCは構成単位(C)のモル数を表す。)
【請求項2】
前記シラン系化合物(A)は、テトラエトキシシランである請求項1に記載のポリシロキサン系化合物。
【請求項3】
前記シラン系化合物(B)は、フェニルトリメトキシシラン及び/又はメチルトリエトキシシランである請求項1又は2に記載のポリシロキサン系化合物。
【請求項4】
前記シラン系化合物(C)は、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランである請求項1又は2に記載のポリシロキサン系化合物。
【請求項5】
前記式(1)で算出される構成比率が、0.03以上0.08以下である請求項1又は2に記載のポリシロキサン系化合物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリシロキサン系化合物、光ラジカル重合開始剤、及び、有機溶剤を少なくとも含有する皮膜形成用組成物。
【請求項7】
前記光ラジカル重合開始剤がケトオキシムエステル基を含有する請求項6に記載の皮膜形成用組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の皮膜形成用組成物を塗工してなる積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を用いてなるタッチパネル。
【請求項10】
請求項6に記載の皮膜形成用組成物を塗工する工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することを特徴とする硬化皮膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン系化合物、皮膜形成用組成物、積層体、タッチパネル、及び、硬化皮膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット型PCで利用されるタッチパネル、LED、半導体等の電子部品のセンサー部分等に用いられる絶縁層を形成する皮膜形成用組成物としてポリシロキサン系化合物が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、(メタ)アクリロイル基を有するポリシロキサン100質量部に対して、ラジカル開始剤を0.5~10質量部含有する白色LED封止材用樹脂組成物が開示されている。
【0004】
ポリシロキサン系化合物は、プリベーク後にタック性があり、タッチパネル等に用いた場合に、コンタクト露光では基板とマスクが貼り付いてしまい、加工途中の作業性が悪いという課題があった。
一方で、基板とマスクに傷を与えないようギャップを設けたプロキシミティ露光という方法が用いられているが、ギャップにより解像度が下がってしまうというデメリットがあった。
【0005】
特許文献1に記載の方法では、上記タック性(タックを抑制する性質)について未だに不十分であり、更なる改善の余地があった。
【0006】
また、電子部品等に用いられる電極層や絶縁層の形成には、主としてフォトリソグラフィー法が利用される。
そのため、現像工程において、活性エネルギー線を照射した露光部が現像液により除去されない性質(光硬化性ともいう)を有する一方で、活性エネルギー線を遮蔽した未露光部が現像液により素早く溶解、除去される性質(現像性ともいう)が必要とされた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-131009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、タック性に優れた硬化皮膜を得ることができ、かつ、現像性及び光硬化性に優れるポリシロキサン系化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ポリシロキサン系化合物について鋭意検討したところ、特定のシロキサン系化合物に由来する構成単位を、所定のモル比率で有することにより、上記課題をすべて解決できるポリシロキサン系化合物を得ることができることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)に由来する構成単位(A)と、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)に由来する構成単位(B)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)に由来する構成単位(C)とを少なくとも含み、下記式(1)で算出される構成比率が、0より大きく0.1未満であるポリシロキサン系化合物である。
(式(1)中、MAは構成単位(A)のモル数を表し、MBは構成単位(B)のモル数を表し、MCは構成単位(C)のモル数を表す。)
【0011】
本発明のポリシロキサン系化合物において、上記前記シラン系化合物(A)は、テトラエトキシシランであることが好ましい。
また、上記シラン系化合物(B)は、フェニルトリメトキシシラン及び/又はメチルトリエトキシシランであることが好ましい。
また、上記シラン系化合物(C)は、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランであることが好ましい。
また、上記式(1)で算出される構成比率が、0.03以上0.08以下であることが好ましい。
本発明は、上記ポリシロキサン系化合物、光ラジカル重合開始剤、及び、有機溶剤を少なくとも含有する皮膜形成用組成物でもある。
本発明の皮膜形成用組成物において、光ラジカル重合開始剤がケトオキシムエステル基を含有することが好ましい。
本発明は、上記皮膜形成用組成物を塗工してなる積層体でもある。
また、本発明は、上記積層体を用いてなるタッチパネルでもある。
また、本発明は、上記皮膜形成用組成物を塗工する工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することを特徴とする硬化皮膜の形成方法でもある。
【発明の効果】
【0012】
タック性に優れた硬化皮膜を得ることができ、かつ、現像性及び光硬化性に優れるポリシロキサン系化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ポリシロキサン系化合物>
本発明のポリシロキサン系化合物は、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)に由来する構成単位(A)と、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)に由来する構成単位(B)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)に由来する構成単位(C)とを少なくとも含み、下記式(1)で算出される構成比率が、0より大きく0.1未満である。
(式(1)中、MAは構成単位(A)のモル数を表し、MBは構成単位(B)のモル数を表し、MCは構成単位(C)のモル数を表す。)
【0014】
[シラン系化合物(A)]
本発明のポリシロキサン系化合物は、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)に由来する構成単位(A)を含む。
【0015】
上記シラン系化合物(A)としては、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種である。
【0016】
上記テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、エトキシトリメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0017】
上記ビス(トリアルコキシシリル)アルカンとしては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン等を挙げることができる。
【0018】
上記シラン系化合物(A)としては、汎用性の面から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシランがより好ましく、テトラエトキシシランが更に好ましい。
【0019】
[シラン系化合物(B)]
本発明のポリシロキサン系化合物は、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)に由来する構成単位(B)を含む。
【0020】
上記アルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、メチルトリ-sec-ブトキシシラン、メチルトリ-tert-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリイソブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリ-n-プロポキシシラン、n-プロピルトリイソプロポキシシラン、n-プロピルトリ-n-ブトキシシラン、n-プロピルトリイソブトキシシラン、n-プロピルトリ-sec-ブトキシシラン、n-プロピルトリ-tert-ブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ-n-プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ-n-ブトキシシラン、イソプロピルトリイソブトキシシラン、イソプロピルトリ-sec-ブトキシシラン、イソプロピルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
【0021】
上記ジアルキルジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジメチルジイソブトキシシラン、ジメチルジ-sec-ブトキシシラン、ジメチルジ-tert-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ-n-プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジイソブトキシシラン、ジエチルジ-sec-ブトキシシラン、ジエチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、ジ-n-プロピルジエトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-プロピルジイソプロポキシシラン、ジ-n-プロピルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジイソブトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-プロピルジ-tert-ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ-n-プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ-n-ブトキシシラン、ジイソプロピルジイソブトキシシラン、ジイソプロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジイソプロピルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジメトキシシラン、ジ-n-ブチルジエトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-n-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-n-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-n-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジ-n-プロポキシシラン、ジイソブチルジイソプロポキシシラン、ジイソブチルジ-n-ブトキシシラン、ジイソブチルジイソブトキシシラン、ジイソブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジイソブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジエトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-sec-ブチルジ-tert-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジメトキシシラン、ジ-tert-ブチルジエトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-プロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジイソプロポキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-n-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジイソブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-sec-ブトキシシラン、ジ-tert-ブチルジ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
【0022】
上記シクロアルキルトリアルコキシシランとしては、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリ-n-プロポキシシラン、シクロペンチルトリイソプロポキシシラン、シクロペンチルトリ-n-ブトキシシラン、シクロペンチルトリイソブトキシシラン、シクロペンチルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロペンチルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリ-n-プロポキシシラン、シクロヘキシルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキシルトリ-n-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリイソブトキシシラン、シクロヘキシルトリ-sec-ブトキシシラン、シクロヘキシルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
【0023】
上記ビニルトリアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-n-プロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ-n-ブトキシシラン、ビニルトリイソブトキシシラン、ビニルトリ-sec-ブトキシシラン、ビニルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
【0024】
上記フェニルトリアルコキシシランとしては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ-n-プロポキシシラン、フェニルトリソプロポキシシラン、フェニルトリ-n-ブトキシシラン、フェニルトリイソブトキシシラン、フェニルトリ-sec-ブトキシシラン、フェニルトリ-tert-ブトキシシラン等を挙げることができる。
【0025】
上記シラン系化合物(B)としては、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランの群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フェニルトリメトキシシラン及び/又はメチルトリエトキシシランであることがより好ましい。
【0026】
[シラン系化合物(C)]
本発明のポリシロキサン系化合物は、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)に由来する構成単位(C)を少なくとも含む。
【0027】
上記シラン系化合物(C)としては、(3-(メタ)アクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、(3-(メタ)アクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、(3-(メタ)アクリロイルオキシ)プロピルエチルジエトキシシラン、(3-(メタ)アクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン等の(3-(メタ)アクリロイルオキシ)プロピルシラン化合物、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリルシラン化合物を挙げることができる。
なかでも、現像性と硬化皮膜のパターン形状の維持安定性とのバランスの観点から、(3-(メタ)アクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0028】
[その他のシラン系化合物(D)]
上記ポリシロキサン系化合物を構成する縮合前のシラン系化合物としては、必要に応じて、例えば、分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物等を加えても良い。
ここで、上記分子内にエポキシ基を有するシラン系化合物としては、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル)メチルジメトキシシラン、(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル)メチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0029】
[構成比率]
本発明のポリシロキサン系化合物は、下記式(1)で算出される構成比率が、0より大きく0.1未満である。
構成比率が上記範囲であることにより、硬化皮膜のタックを抑制することができ、かつ、現像性及び光硬化性に優れるポリシロキサン系化合物を得ることができる。
下記式(1)で算出される構成比率は、0.03以上0.08以下であることが好ましい。
【0030】
(式(1)中、MAは構成単位(A)のモル数を表し、MBは構成単位(B)のモル数を表し、MCは構成単位(C)のモル数を表す。)
【0031】
ポリシロキサン系化合物を形成する構成単位全体に対する上記シラン系化合物(A)に由来する構成単位(A)のモル比率は、フォトリソグラフィー法によって本発明の皮膜形成用組成物を塗工して硬化皮膜を形成する際に、未露光部の光硬化していない部位、及び露光部の光硬化した部位の現像性を高くする観点から、0.10~0.25であることが好ましく、0.15~0.22であることがより好ましい。
【0032】
ポリシロキサン系化合物を形成する構成単位全体に対する上記シラン系化合物(B)に由来する構成単位(B)のモル比率は、フォトリソグラフィー法によって本発明の皮膜形成用組成物を塗工して硬化皮膜を形成する際に、未露光部の光硬化していない部位、及び露光部の光硬化した部位の現像性を低くする観点から、0.65~0.90であることが好ましく、0.70~0.85であることがより好ましい。
【0033】
ポリシロキサン系化合物を形成する構成単位全体に対する上記シラン系化合物(C)に由来する構成単位(C)のモル比率は、光硬化性及びタック性の観点から、0.020~0.10であることが好ましく、0.025~0.075であることがより好ましい。
【0034】
ポリシロキサン系化合物を形成する構成単位全体に対する上記シラン系化合物(D)に由来する構成単位(D)のモル比率は、未露光部の光硬化していない部位の現像性、及び硬化皮膜と基材やITO電極との密着性の観点から、0~0.005であることが好ましく、0~0.002であることがより好ましい。
【0035】
[ポリシロキサン系化合物の製造方法]
上記ポリシロキサン系化合物の製造方法について説明する。
上記ポリシロキサン系化合物の製造方法としては、例えば、適切な容器内で上記シラン系化合物(A)~(C)及び任意に含んでも良い他のシラン系化合物(D)を混合した後、水、重合触媒、必要に応じて反応溶媒を添加して加水分解させて縮合させる方法等が利用できる。
ここで、上記水の量としては、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての加水分解性の置換基の数に対して、水の分子が同じ数になる程度の量が好ましい。
【0036】
上記シラン系化合物では、加水分解性の置換基を一分子あたり3または4個有することから、その様なシラン系化合物が多く含まれるときは、簡易的に水の量を、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての分子の数に対して、水の分子の数が3~4倍(モル比率として、シラン系化合物の全量:水=1:3~4)となる程度の量としてもよい。
【0037】
重合触媒としては、例えば、酢酸、塩酸等の酸触媒、アンモニア、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基触媒を用いることができる。そして、重合触媒の量としては、容器内に仕込まれたシラン系化合物の全ての分子の数に対して、重合触媒の分子の数が0.05~0.2倍(モル比率として、シラン系化合物の全量:重合触媒=1:0.05~0.2)になる程度の量が好ましい。
【0038】
反応溶媒としては、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル等のエステル化合物が好適であり、中でも低級アルコールが好ましく、適度な反応温度を維持できて留去しやすいという点からエタノール、イソプロピルアルコールがより好ましい。
【0039】
反応温度は、60~80℃が好ましく、反応時間は反応が十分に進行するよう、概ね、2~24時間であることが好ましい。
反応後、上記ポリシロキサン系化合物以外の不要な副生成物を、抽出、脱水、溶媒除去等の方法で除去し、上記ポリシロキサン系化合物を得ることができる。
【0040】
[ポリシロキサン系化合物の物性]
本発明のポリシロキサン系化合物は、タック性に優れる(タックを抑制することができる)。
上記タック性については、以下の試験により判断することができる。
【0041】
ポリシロキサン系化合物を、不揮発性成分の濃度が25質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルアセテートで希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて400rpm、60秒の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板にポリシロキサン系化合物を塗工する。
次いで、80℃3分間加熱(プリベーク)処理し、評価用試験ピースを作製する。
【0042】
上記評価用試験ピースのポリシロキサン系化合物を塗工した面を指で触って、跡残りの度合いを目視にて確認し、指の跡が全く残らなければ、タック性に優れると判断することができる。
【0043】
本発明のポリシロキサン系化合物は、現像性に優れる。
上記現像性については、以下の試験により判断することができる。
【0044】
上記タック性の試験に用いた評価用試験ピースを水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液(現像液)中に晒し、溶解状態を目視にて観察し、完全に溶解したことが確認された場合、現像性に優れると判断することができる。
【0045】
本発明のポリシロキサン系化合物は、光硬化性に優れる。
上記光硬化性については、以下の試験により判断することができる。
【0046】
ポリシロキサン系化合物100質量部に対し、Irgacure OXE02を2.5質量部、4-メトキシフェノールを0.13質量部、BYK-310を0.6質量部加えたものを、不揮発性成分の濃度が25%になるようにプロピレングリコールモノメチルアセテートで希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて400rpm、60秒の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板に塗工する。
次いで、80℃、3分間加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナー(PLA-501FA、キヤノン社製)を用いて、100mJ/cmの照射条件でテストパターンを焼き付け処理し一部を現像液として使用される水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液(現像液)中に1分間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、評価用試験ピースを作製する。
【0047】
上記現像液に晒された部分の露光部の膜厚(T1)及び晒されていない部分の未露光部の膜厚(T2)を膜厚測定装置(Alpha-Step IQサーフェースプロファイラー、KLM-Tencor社製)を用いて測定し、T1/T2が0.35以上であれば光硬化性に優れると判断することができ、0.55以上であれば光硬化性に特に優れると判断することができる。
【0048】
本発明のポリシロキサン系化合物は、重量平均分子量(Mw)が、800~1万であることが好ましい。
上記重量平均分子量(Mw)が800未満であると、皮膜形成用組成物の硬化性が低下することがあり、上記重量平均分子量(Mw)が、1万を超えると、皮膜形成用組成物の溶解性が低下することがある。
上記ポリシロキサン系化合物は、重量平均分子量(Mw)が、1000~5000であることがより好ましい。
【0049】
なお、上記重量平均分子量(Mw)としては、上記ポリシロキサン系化合物を溶解させて、0.02質量%の溶液を作製し、フィルター(ジーエルサイエンス社製、GLクロマトディスク、水系25A、孔径0.2μm)を通過させた後、サイズ排除クロマトグラフィー、屈折率検出器から構成されるセミミクロGPC/SEC分析システム(日本分光社製)を用いて、以下の条件により測定することができる。
カラム:KF-603、KF-604(いずれも昭和電工社製)直列接続
RI検出器:RI-4035(日本分光社製)
PDA検出器:MD-4015(日本分光社製)
溶離液:THF
流速:1.0ml/min
注入量:100μl
【0050】
<皮膜形成用組成物>
本発明の皮膜形成用組成物は、上述したポリシロキサン系化合物、光ラジカル重合開始剤、及び、有機溶剤を少なくとも含有する。
【0051】
[光ラジカル重合開始剤]
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド系化合物、チオキサントン系化合物、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオフェニル基含有化合物など)、α-アミノアルキルフェノン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
なかでも、フォトリソグラフィー法により硬化皮膜を形成する際に、光硬化反応性を高くする観点から、ケトオキシムエステル基を含有するものが好ましい。
【0052】
[有機溶剤]
上記有機溶剤としては、アルコール類、多価アルコール類とその誘導体、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤等、通常の塗工剤で用いられる有機溶剤が利用できる。
ここで、アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール-n-、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール等の低級アルコールが好適に利用できる。
また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール等を挙げることができる。
また、多価アルコール誘導体として、まずは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールイソブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類を挙げることができる。
さらに、プロピレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルアシレート類を挙げることができる。
また、ケトン系有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。
また、エステル系有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸-n-プロピル等を挙げることができる。
この様な有機溶剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。そして、ポリシロキサン系化合物の溶解性及び塗工適性の面から、多価アルコール誘導体やエステル系有機溶剤が好ましく、とりわけ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピルが好ましい。
【0053】
[重合性単量体]
本発明の皮膜形成用組成物は、重合性単量体を含有してもよい。
【0054】
上記重合性単量体としては、例えば、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0055】
なかでも、硬化皮膜に硬度を好適に付与する観点から、三官能以上の反応性官能基を有する化合物、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0056】
[添加剤]
本発明の皮膜形成用組成物は、本発明の効果を低下させない範囲において、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム等の金属のキレート化合物、カルボジイミド系、イソシアネート系、エポキシ基やチオール基等の架橋性官能基を有する架橋剤、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤、芳香族炭化水素系、アミノ化合物系、ニトロ化合物系、キノン類、キサントン類等の光増感剤、ハイドロキノン、メトキノン、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、ジ-tert-ブチルハイドロキノン、4-メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等の重合抑制剤、無機金属酸化物、有機微粒子等の充填剤等を添加することができる。
【0057】
[皮膜形成用組成物における各材料の含有量]
上記重合性単量体は、上記ポリシロキサン系化合物100質量部に対して、10~50質量部含有することが好ましい。
上記重合性単量体の含有量が、上記ポリシロキサン系化合物100質量部に対して10質量部未満であると、硬化皮膜の硬化性やガラス基材等との密着性が不充分となることがあり、上記ポリシロキサン系化合物100質量部に対して50質量部を超えると、硬化していない皮膜の現像液に対する溶解性が不充分となることがある。
【0058】
上記光ラジカル重合開始剤は、上記ポリシロキサン系化合物と上記重合性単量体との合計量を100質量部としたとき、0.5~40質量部含有することが好ましい。
上記光ラジカル重合開始剤の含有量が、0.5質量部未満であると、光重合性が低下して、フォトリソグラフィー法の露光部に未反応成分が残存することがあり、40質量部を超えると、皮膜形成用組成物の保存安定性が低下する可能性がある。
上記光ラジカル重合開始剤は、上記ポリシロキサン系化合物と上記重合性単量体との合計量を100質量部としたとき、1~20質量部であることがより好ましい。
【0059】
上記有機溶剤の含有量としては特に限定されないが、例えば、皮膜形成用組成物の全質量に対して、50~90質量%程度であることが好ましい。
【0060】
[皮膜形成用組成物の製造方法]
本発明の皮膜形成用組成物の製造方法としては、適切な容器内に有機溶剤を仕込み、例えば、高速攪拌機等で撹拌しながら、上記ポリシロキサン系化合物、上記光ラジカル重合開始剤及び必要に応じて用いる添加剤を仕込んで混合する方法が利用できる。
なお、この方法に限定されるものではなく、各材料の仕込みの順番は任意であってよい。また、固形の状態の材料は、有機溶剤に可溶であれば、仕込みの前に予め溶解させておいてもよく、有機溶剤中に直接または分散剤等を利用して分散可能であれば、仕込みの前に予め分散させておいてもよい。
【0061】
[皮膜形成用組成物の物性]
本発明の皮膜形成用組成物は、タック性に優れる。
上記タック性については、以下の試験により判断することができる。
【0062】
皮膜形成用組成物の不揮発性成分の濃度が25質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルアセテートで希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて400rpm、60秒の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板にポリシロキサン系化合物を塗工する。
次いで、80℃3分間加熱(プリベーク)処理し、評価用試験ピースを作製する。
【0063】
上記評価用試験ピースの皮膜形成用組成物を塗工した面を指で触った際の跡残りの度合いを目視にて確認し、指の跡が全く残らなければ、タック性に優れると判断することができる。
【0064】
本発明の皮膜形成用組成物は、現像性に優れる。
上記現像性については、以下の試験により判断することができる。
【0065】
上記皮膜形成用組成物のタック性の試験に用いた評価用試験ピースを水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液(現像液)中に晒し、溶解状態を目視にて観察し、完全に溶解したことが確認された場合、現像性に優れると判断することができる。
【0066】
本発明の皮膜形成用組成物は、光硬化性に優れる。
上記光硬化性については、以下の試験により判断することができる。
【0067】
皮膜形成用組成物100質量部を、不揮発性成分の濃度が25%になるようにプロピレングリコールモノメチルアセテートで希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて400rpm、60秒の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板に塗工する。
次いで、80℃、3分間加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナー(PLA-501FA、キヤノン社製)を用いて、100mJ/cmの照射条件でテストパターンを焼き付け処理し一部を現像液として使用される水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液(現像液)中に1分間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、評価用試験ピースを作製する。
【0068】
上記現像液に晒された部分の露光部の膜厚(T1)及び晒されていない部分の未露光部の膜厚(T2)を膜厚測定装置(Alpha-Step IQサーフェースプロファイラー、KLM-Tencor社製)を用いて測定し、T1/T2が0.35以上であれば光硬化性に優れると判断することができ、0.55以上であれば光硬化性に特に優れると判断することができる。
【0069】
本発明の皮膜形成用組成物は、エロージョン評価に優れることが好ましい。
上記エロージョン評価については、以下の試験により判断することができる。
【0070】
上記皮膜形成用組成物の光硬化性の試験に用いた評価用試験ピースが現像液に晒されたときの、露光部のラインパターン部の細り幅を現像時間で割った値を溶解速度(nm/s)として評価する。
上記溶解速度が、1200nm/s未満であることが好ましく、600nm/s未満であることがより好ましい。
【0071】
<硬化皮膜の形成方法>
本発明の硬化皮膜の形成方法は、本発明の皮膜形成用組成物を基材に塗工する塗工工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有する。
【0072】
上記塗工工程における塗工方法、上記露光工程における露光部に照射する活性エネルギー線及びその照射方法、及び、露光部の塗液を除去する現像液は、従来のフォトリソグラフィー法で用いられているもの及び方法を適宜選択して用いることができる。
例えば、皮膜形成用組成物の不揮発性成分の濃度が25%となるように希釈し、スピンコーターを用いて塗工し、80℃で3分間等の条件で加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナーを用いて、100mJ/cmの照射条件でテストパターンを焼き付け処理し、現像液に1分間浸漬した後、150℃で30分間等の条件で加熱(ポストベーク)処理することで硬化皮膜を得ることができる。
【0073】
上記プリベークの条件としては、80~100℃、1~3分間で処理をすることが好ましい。
上記照射条件としては、20~120mJ/cmであることが好ましい。
上記ポストベークの条件としては、120~180℃、30~60分間の条件で処理をすることが好ましい。
【0074】
また、上記基材としては、タッチパネルに用いられるガラス基材、プラスチック基材として従来公知のものを適宜用いることができ、表面に透明電極が形成された基材であってもよい。
なお、表面に透明電極を有する場合には、透明電極が形成された面上に、本発明の皮膜形成用組成物の硬化皮膜を形成することが好ましい。
上記基材上に、本発明の皮膜形成用組成物の硬化皮膜を有することを特徴とする積層体もまた、本発明の一態様である。
【0075】
また、本発明の積層体を用いてなることを特徴とするタッチパネルもまた、本発明の一態様である。
タッチパネルを構成する材料としては、本発明の積層体を用いることを除いては、従来公知のものを適宜用いることができる。
【実施例0076】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。
【0077】
ポリシロキサン系化合物の合成に用いるシラン系化合物(A)~(C)として、以下のものを準備した。
【0078】
<シラン系化合物(A)>
テトラエトキシシラン
<シラン系化合物(B)>
フェニルトリメトキシシラン
メチルトリエトキシシラン
ジメチルジメトキシシラン
<シラン系化合物(C)>
3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン
【0079】
(実施例1~3、比較例1~8)
(ポリシロキサン系化合物の合成)
撹拌装置、環流冷却器、温度計、及び、滴下漏斗を取り付けた反応容器に、表1に記載の配合比でシラン系化合物(A)、シラン系化合物(B)及びシラン系化合物(C)の総質量が100gとなるよう仕込んだ。ついで、イソプロピルアルコール400gに溶解し均一の溶液とした。
さらに、撹拌しながら、水と硝酸とを、それぞれ、仕込まれたシラン系化合物(A)、シラン系化合物(B)及びシラン系化合物(C)の全分子数に対して、水の分子数が4倍となる量で、また、硝酸の分子数が0.1倍となる量で仕込み、還流しながら3時間混合した後、得られた反応溶液を室温まで冷却した。
その後、反応溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20.00gを加え、反応副生物であるメタノール、水、硝酸を減圧留去し、加水分解縮合物溶液を得た。
その後、加水分解縮合物溶液にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、ポリシロキサン系化合物を不揮発性成分濃度が45質量%である加水分解縮合物溶液(シロキサン系化合物溶液)を得た。
なお、上記ポリシロキサン系化合物の重量平均分子量(Mw)を、本明細書に記載した条件で測定したところ、いずれも800~1万の範囲内であった。
なお、表1に記載の各化合物名の行に記載の数値は、モル数を意味し、[MC/(MA+MB)]の行に記載の数値は、上記式(1)で算出された構成比率を意味する。
【0080】
<ポリシロキサン系化合物の評価>
(タック性)
[評価用試験ピースの作製]
合成したポリシロキサン系化合物をそれぞれ、不揮発性成分の濃度が25質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルアセテートで希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて400rpm、60秒の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板にポリシロキサン系化合物を塗工した。
次いで、80℃3分間加熱(プリベーク)処理し、評価用試験ピースを作製した。
[評価結果]
作製した評価用試験ピースのポリシロキサン系化合物を塗工した面を指で触った際の跡残りの度合いを目視にて確認し、以下を評価基準としてポリシロキサン系化合物のタック性を評価した。その結果を表1に示した。
〇:指の跡が全く残らない
△:指の跡がわずかに残る
×:指の跡がはっきり残る
【0081】
(現像性)
タック性の評価の際に作製した評価用試験ピースを水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液(現像液)中に晒し、溶解状態を目視にて観察し、以下の評価基準でポリシロキサン系化合物の現像性を評価した。その結果を表1に示した。
〇:完全に溶解する
△:ほぼ溶解するが残渣が発生する
×:溶解しない
【0082】
(光硬化性)
[評価用試験ピースの作製]
合成したそれぞれのポリシロキサン系化合物100質量部に対し、Irgacure OXE02を2.5質量部、4-メトキシフェノールを0.13質量部、BYK-310を0.6質量部加えたものを、不揮発性成分の濃度が25%になるようにプロピレングリコールモノメチルアセテートで希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて400rpm、60秒の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板に塗工した。
次いで、80℃、3分間加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナー(PLA-501FA、キヤノン社製)を用いて、100mJ/cmの照射条件でテストパターンを焼き付け処理し一部を現像液として使用される水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液(現像液)中に1分間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、評価用試験ピースを作製した。
[評価結果]
現像液に晒された部分の露光部の膜厚(T1)及び晒されていない部分の未露光部の膜厚(T2)を膜厚測定装置(Alpha-Step IQサーフェースプロファイラー、KLM-Tencor社製)を用いて測定し、以下の評価基準でポリシロキサン系化合物の光硬化性を評価した。その結果を表1に示した。
〇:T1/T2が0.55以上である
△:T1/T2が0.35以上、0.55未満である
×:T1/T2が0.35未満である
【0083】
【表1】
【0084】
<皮膜形成用組成物の作製>
皮膜形成用組成物の作製に用いる材料として、以下のものを準備した。
【0085】
<重合性単量体>
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリアクリレート(THITA、東京化成工業社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、東京化成工業社製)
<重合開始剤>
O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム(Irgacure OXE02、BASFジャパン社製)
<その他の材料>
カレンズMT PE-1(チオール系架橋剤、昭和電工社製)
4-メトキシフェノール(重合抑制剤、4-MeOPh、東京化成工業社製)
BYK-310(シリコーン系界面活性剤、ビックケミージャパン社製)
【0086】
(実施例4)
高速撹拌装置を備えた容器内に、実施例1で作製したポリシロキサン系化合物溶液(不揮発性成分濃度45%)を100質量部、THITAを15質量部、DPHAを5質量部、カレンズMT PE-1を5質量部、Irgacure OXE02を2.5質量部、4-MeOPhを0.13質量部、BYK-310を0.6質量部、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を135質量部加えて撹拌し、実施例4の皮膜形成用組成物を作製した。
【0087】
(実施例5~6、比較例9~16)
ポリシロキサン系化合物溶液の種類を表2に記載のように変更したこと以外は、実施例4と同様にして皮膜形成用組成物を作製した。
なお、表2では記載していないが、実施例1と同様に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を135質量部用いている。
【0088】
(タック性)
[評価用試験ピースの作製]
作製したそれぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発性成分の濃度が25質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルアセテートで希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて400rpm、60秒の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板に皮膜形成用組成物を塗工した。
次いで、80℃3分間加熱(プリベーク)処理し、評価用試験ピースを作製した。
[評価結果]
作製した評価用試験ピースの皮膜形成用組成物を塗工した面を指で触った際の跡残りの度合いを目視にて確認し、以下を評価基準として皮膜形成用組成物のタック性を評価した。その結果を表2に示した。
〇:指の跡が全く残らない
△:指の跡がわずかに残る
×:指の跡がはっきり残る
【0089】
(現像性)
タック性の評価の際に作製した評価用試験ピースを水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液(現像液)中に晒し、溶解状態を目視にて観察し、以下の評価基準でポリシロキサン系化合物の現像性を評価した。その結果を表2に示した。
〇:完全に溶解する
△:ほぼ溶解するが残渣が発生する
×:溶解しない
【0090】
(光硬化性)
[評価用試験ピースの作製]
作製したそれぞれの皮膜形成用組成物を、不揮発性成分の濃度が25質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルアセテートで希釈し、スピンコーター(MS-A100、ミカサ社製)を用いて400rpm、60秒の塗工条件で市販の50mm角のソーダガラス基板に皮膜形成用組成物を塗工した。
次いで、80℃3分間加熱(プリベーク)処理した後、マスクアライナー(PLA-501FA、キヤノン社製)を用いて、100mJ/cmの照射条件でテストパターンを焼き付け処理し一部を現像液として使用される水酸化テトラメチルアンモニウム2.38質量%水溶液(現像液)中に1分間浸漬した後、150℃で30分間加熱(ポストベーク)処理し、評価用試験ピースを作製した。
[評価結果]
現像液に晒された部分の露光部の膜厚(T1)及び晒されていない部分の未露光部の膜厚(T2)を膜厚測定装置(Alpha-Step IQサーフェースプロファイラー、KLM-Tencor社製)を用いて測定し、以下の評価基準で皮膜形成用組成物の光硬化性を評価した。その結果を表2に示した。
〇:T1/T2が0.55以上である
△:T1/T2が0.35以上、0.55未満である
×:T1/T2が0.35未満である
【0091】
(エロージョン)
上記現像性の評価の際に作製した評価用試験ピースが現像液に晒されたときの、露光部のラインパターン部の細り幅を現像時間で割った値を溶解速度(nm/s)とし、以下を評価基準とした。その結果を表2に示した。
〇:溶解速度が600nm/s未満である
△:溶解速度が600nm/s以上、1200nm/s未満である
×:溶解速度が1200nm/s以上である
【0092】
【表2】
【0093】
実施例1~3のポリシロキサン系化合物は、タック性及び現像性に優れており、更に光硬化性にも優れることが確認された。また、上記実施例1~3のポリシロキサン系化合物を用いた実施例4~6の皮膜形成用組成物は、タック性、現像性、光硬化性及びエロージョンの評価に優れることが確認された。
一方で、上記式(1)で算出される構成比率が0.1以上である比較例1~6、8のポリシロキサン系化合物では、タック性が不十分であった。また、上記比較例1~6、8のポリシロキサン系化合物を用いた比較例9~14、16の皮膜形成用組成物も、タック性が不十分であった。
また、上記式(1)で算出される構成比率が0である比較例7のポリシロキサン系化合物では、光硬化性が不十分であった。また、上記比較例7のポリシロキサン系化合物を用いた比較例15の皮膜形成用組成物も、光硬化性及びエロージョンが不十分であった。
【0094】
本明細書には以下の事項が開示されている。
本開示(1)は、テトラアルコキシシラン及びビス(トリアルコキシシリル)アルカンの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(A)に由来する構成単位(A)と、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、シクロアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシランの群から選択される少なくとも1種であるシラン系化合物(B)に由来する構成単位(B)と、ラジカル重合性不飽和二重結合を有するシラン系化合物(C)に由来する構成単位(C)とを少なくとも含み、下記式(1)で算出される構成比率が、0より大きく0.1未満であるポリシロキサン系化合物である。
(式(1)中、MAは構成単位(A)のモル数を表し、MBは構成単位(B)のモル数を表し、MCは構成単位(C)のモル数を表す。)
本開示(2)は、上記前記シラン系化合物(A)が、テトラエトキシシランである本開示(1)に記載のポリシロキサン系化合物である。
本開示(3)は、上記シラン系化合物(B)が、フェニルトリメトキシシラン及び/又はメチルトリエトキシシランである本開示(1)又は(2)に記載のポリシロキサン系化合物である。
本開示(4)は、上記シラン系化合物(C)が、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランである本開示(1)~(3)の何れかに記載のポリシロキサン系化合物である。
本開示(5)は、上記式(1)で算出される構成比率が、0.03以上0.08以下である本開示(1)~(4)の何れかに記載のポリシロキサン系化合物である。
本開示(6)は、本開示(1)~(5)の何れかに記載のポリシロキサン系化合物、光ラジカル重合開始剤、及び、有機溶剤を少なくとも含有する皮膜形成用組成物である。
本開示(7)は、光ラジカル重合開始剤がケトオキシムエステル基を含有する本開示(6)に記載の皮膜形成用組成物である。
本開示(8)は、本開示(6)又は(7)に記載の皮膜形成用組成物を塗工してなる積層体である。
本開示(9)は、本開示(8)に記載の積層体を用いてなるタッチパネルである。
本開示(10)は、本開示(6)又は(7)に記載の皮膜形成用組成物を塗工する工程、露光部に活性エネルギー線を照射して硬化皮膜を形成する露光工程、及び、未露光部の塗液を現像液で溶解除去する現像工程を有することを特徴とする硬化皮膜の形成方法である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のポリシロキサン系化合物は、タック性に優れた硬化皮膜を得ることができ、かつ、現像性及び光硬化性に優れるため、タッチパネル等の透光性基板に塗工する皮膜として好適に用いることができる。