(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168986
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
F22B 35/00 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
F22B35/00 E
F22B35/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080420
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】山田 和也
(72)【発明者】
【氏名】相曽 達也
(72)【発明者】
【氏名】片川 健一
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021DA03
3L021DA04
3L021EA01
3L021FA12
3L021FA21
(57)【要約】
【課題】複数のボイラを有するボイラ群を備えるボイラシステムにおいて、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータを補正する。
【解決手段】台数制御パラメータ調整装置であって、ボイラ群2の蒸気需要予測量を取得する蒸気需要予測量取得部602と、蒸気需要予測量に応じて、台数制御パラメータの設定値を算出する台数制御パラメータ算出部603と、台数制御パラメータ算出部603により算出された台数制御パラメータの値により、台数制御パラメータの設定値を直接補正する台数制御パラメータ補正部604と、を含み、台数制御パラメータ補正部604は、台数制御パラメータの設定値を補正した以降、予め設定された所定時間が経過するまでの間、前記台数制御パラメータの設定値を補正せずに、維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボイラからなるボイラ群の燃焼状態を制御するために、台数制御パラメータの設定値を用いる台数制御部と通信可能に接続された、前記台数制御パラメータの設定値の変更を行う制御装置であって、
前記ボイラ群の蒸気需要予測量を取得する蒸気需要予測量取得部と、
前記蒸気需要予測量取得部により取得された蒸気需要予測量に応じて、台数制御パラメータの設定値を算出する台数制御パラメータ算出部と、
前記台数制御部に設定されている台数制御パラメータの設定値に換えて、前記台数制御パラメータ算出部により算出された台数制御パラメータの値に直接補正する台数制御パラメータ補正部と、を含み、
前記台数制御パラメータ補正部は、
前記台数制御パラメータの設定値を補正した以降、予め設定された所定時間が経過するまでの間、前記台数制御パラメータの設定値を補正せずに、維持する、
制御装置。
【請求項2】
前記台数制御パラメータは、少なくとも最大使用蒸気量を含む、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記台数制御パラメータ算出部は、
前記蒸気需要予測量に含まれる最大蒸気使用量の予測値に予め設定された余裕蒸気量を加算することで、前記台数制御パラメータに含まれる最大使用蒸気量を算出する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記台数制御パラメータ算出部は、さらに、
直近に取得した最大蒸気使用量の予測値に基づいて前記台数制御パラメータが直接補正された以降に取得した最新の最大蒸気使用量の予測値と、前記直近に取得した最大蒸気使用量の予測値と、の差分が予め設定された所定量又は所定率を上回ると判定された場合、前記最新の最大蒸気使用量の予測値に基づいて台数制御パラメータの値を算出し、
前記台数制御パラメータ補正部は、前記所定時間の経過前か否かに関わらず、
前記台数制御部に設定されている台数制御パラメータの設定値を算出された前記台数制御パラメータの値に直接補正する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記台数制御パラメータ算出部により算出された台数制御パラメータに基づいて予測される最大蒸気使用量の予測値と、実際のボイラ燃焼状態に基づく最大蒸気使用量との乖離が予め設定した所定値を超えていることを第1条件とした場合、
前記台数制御パラメータ補正部は、さらに、
前記第1条件を満たすと判定された場合、
予め台数制御パラメータに初期値として設定されていた最大使用蒸気量、又は
実際のボイラ燃焼状態に基づく最大蒸気使用量に所定の余裕蒸気量を加算した値に補正する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1条件を満たすと判定された場合であって、実際のボイラ燃焼状態に基づいて台数制御パラメータの値を算出する場合、
前記台数制御パラメータ算出部は、
前記蒸気需要予測量に基づくボイラ負荷率又は蒸気量が前記実際のボイラ燃焼状態に基づくボイラ負荷率又は蒸気量より小さい場合、前記台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量に予め設定された増加蒸気量を加算した値を補正最大使用蒸気量とし、
前記蒸気需要予測量に基づくボイラ負荷率又は蒸気量が前記実際のボイラ燃焼状態に基づくボイラ負荷率又は蒸気量より大きい場合、前記台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量から予め設定された減少蒸気量を減算した値を補正最大使用蒸気量とし、
前記台数制御パラメータ補正部は、前記台数制御パラメータ算出部により算出された補正最大使用蒸気量により、前記台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量を直接補正する、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は前記台数制御部を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のボイラからなるボイラ群の燃焼状態を制御するために設定される台数制御パラメータを、蒸気需要予測に基づいて直接補正する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のボイラを有するボイラ群と、前記ボイラ群において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダと、前記蒸気ヘッダの内部の蒸気圧であるヘッダ圧力値に基づいて前記ボイラ群の燃焼状態を制御するボイラシステムが提案されている。
従来、ボイラとして、選択される燃焼位置に応じて燃焼量を段階的に増減可能な段階値制御ボイラ、及び燃焼量を連続的に増減可能な連続制御ボイラが知られている。
ここで、段階値制御ボイラとは、燃焼を選択的にオン/オフしたり、炎の大きさを調整したりすること等により複数(3以上)段階の燃焼位置で燃焼する多位置制御ボイラをいう。このような段階値制御ボイラでは、燃焼率が段階的に変更される。なお、多位置制御とは、段階値制御ボイラの燃焼量を、燃焼停止位置を含めて複数個の位置に段階的に制御可能なことを表す。
そして、特許文献1に記載されているように、段階値制御ボイラを複数有するボイラ群を備えるボイラシステムの燃焼制御において、蒸気負荷量を基本負荷量と変動負荷量とに区分し、予め設定しておいた基本負荷量と変動負荷量との組み合わせに基づいて、各時間帯における運転パターンを作成する自動台数制御装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された自動台数制御装置は、各時間帯における基本負荷量と変動負荷量とを、ボイラ稼働前に入力しておく。各時間帯における基本負荷量と変動負荷量とに基づいて、自動台数制御装置は、それぞれの時間帯において常に燃焼しているボイラ台数については極力高性能を発揮する高燃焼領域を優先させ、負荷変動に対応させるために常に燃焼しているボイラ台数のうち一部を負荷変動に対する対応用に低燃焼を優先させる運転パターンを創出することで、安定した蒸気出力と高い効率が得られることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、蒸気を生成する複数のボイラで構成されるボイラ設備の運転条件として予め定められている複数の運転条件を記憶するように構成された記憶部と、少なくとも、前記ボイラ設備から蒸気の供給を受ける対象施設における将来の蒸気の需要予測と、前記ボイラ設備から前記対象施設への現在の蒸気の流量とから、前記複数の運転条件をそれぞれ評価するように構成された評価部と、前記評価部による評価結果に基づいて前記複数の運転条件の中から最適な運転条件を選択するように構成された最適運転条件決定部と、を備えるボイラ運転条件決定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6-41801号公報
【特許文献2】特開2020-118328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボイラシステムは、例えば、蒸気需要予測に基づいて、今後最適と想定される台数制御パラメータ値に補正するように構成することができる。しかしながら、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値を頻繁に補正することは、かえって台数制御が不安定になるリスクがある。
このため、ボイラシステムにおいて、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値を直接補正する場合、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値を頻繁に補正することによる台数制御が不安定になるリスクを避けることで安定した台数制御ができるボイラシステムが望まれる。
【0007】
本発明は、複数のボイラを有するボイラ群を備えるボイラシステムにおいて、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータを直接補正する場合、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータを頻繁に補正することによる台数制御が不安定になるリスクを避けることで、安定した台数制御ができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のボイラからなるボイラ群の燃焼状態を制御するために、台数制御パラメータの設定値を用いる台数制御部と通信可能に接続された、前記台数制御パラメータの設定値の変更を行う制御装置であって、
前記ボイラ群の蒸気需要予測量を取得する蒸気需要予測量取得部と、
前記蒸気需要予測量取得部により取得された蒸気需要予測量に応じて、台数制御パラメータの設定値を算出する台数制御パラメータ算出部と、
前記台数制御部に設定されている台数制御パラメータの設定値に換えて、前記台数制御パラメータ算出部により算出された台数制御パラメータの値に直接補正する台数制御パラメータ補正部と、を含み、
前記台数制御パラメータ補正部は、
前記台数制御パラメータの設定値を補正した以降、予め設定された所定時間が経過するまでの間、前記台数制御パラメータの設定値を補正せずに、維持する、
制御装置に関する。
【0009】
また、前記台数制御パラメータは、少なくとも最大使用蒸気量を含むようにしてもよい。
【0010】
また、前記台数制御パラメータ算出部は、
前記蒸気需要予測量に含まれる最大蒸気使用量の予測値に予め設定された余裕蒸気量(+α)を加算することで、前記台数制御パラメータに含まれる最大使用蒸気量を算出するようにしてもよい。
【0011】
また、前記台数制御パラメータ算出部は、さらに、
直近に取得した最大蒸気使用量の予測値に基づいて前記台数制御パラメータが直接補正された以降に取得した最新の最大蒸気使用量の予測値と、前記直近に取得した最大蒸気使用量の予測値と、の差分が予め設定された所定量又は所定率を上回ると判定された場合、前記最新の最大蒸気使用量の予測値に基づいて台数制御パラメータの値を算出し、
前記台数制御パラメータ補正部は、前記所定時間の経過前か否かに関わらず、
前記台数制御部に設定されている台数制御パラメータの設定値を算出された前記台数制御パラメータの値に直接補正するようにしてもよい。
【0012】
また、前記台数制御パラメータ算出部により算出された台数制御パラメータに基づいて予測される最大蒸気使用量の予測値と、実際のボイラ燃焼状態に基づく最大蒸気使用量との乖離が予め設定した所定値を超えていることを第1条件とした場合、
前記台数制御パラメータ補正部は、さらに、
前記第1条件を満たすと判定された場合、
予め台数制御パラメータに初期値として設定されていた最大使用蒸気量、又は
実際のボイラ燃焼状態に基づく最大蒸気使用量に所定の余裕蒸気量を加算した値に補正するようにしてもよい。
【0013】
また、前記第1条件を満たすと判定された場合であって、実際のボイラ燃焼状態に基づいて台数制御パラメータの値を算出する場合、
前記台数制御パラメータ算出部は、
前記蒸気需要予測量に基づくボイラ負荷率又は蒸気量が前記実際のボイラ燃焼状態に基づくボイラ負荷率又は蒸気量より小さい場合、前記台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量に予め設定された増加蒸気量(+β)を加算した値を補正最大使用蒸気量とし、
前記蒸気需要予測量に基づくボイラ負荷率又は蒸気量が前記実際のボイラ燃焼状態に基づくボイラ負荷率又は蒸気量より大きい場合、前記台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量から予め設定された減少蒸気量(-θ)を減算した値を補正最大使用蒸気量とし、
前記台数制御パラメータ補正部は、前記台数制御パラメータ算出部により算出された補正最大使用蒸気量により、前記台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量を直接補正するようにしてもよい。
【0014】
また、前記制御装置は前記台数制御部を含むようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のボイラを有するボイラ群を備えるボイラシステムにおいて、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値を直接補正する場合、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値を頻繁に補正することによる台数制御が不安定になるリスクを避けることで、安定した台数制御ができる制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステムの概略を示す図である。
【
図2】上記実施形態の台数制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】台数制御パラメータ調整装置6の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4A】上記実施形態の台数制御パラメータ調整装置6の動作を説明するフローチャートを示す図である。
【
図4B】上記実施形態の台数制御パラメータ調整装置6の動作を説明するフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステムの好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステム100の概略を示す図である。
図1に示すように、台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステム100は、ボイラシステム1及び制御装置としての台数制御パラメータ調整装置6を含む。また、ボイラシステム1は、複数の段階値制御ボイラ20を含むボイラ群2と、これら複数の段階値制御ボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダ4と、蒸気ヘッダ4の内部の圧力(以下「ヘッダ圧力」ともいう)を測定する、蒸気圧測定手段としての蒸気圧センサ5と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部30を有する台数制御部としての台数制御装置3と、を備える。
なお、台数制御装置3、及び台数制御パラメータ調整装置6は、それぞれ所定の機能の動作を実現するために、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を備えるととともに、各種の制御用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)やHDD等の図示しない補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAMといった図示しない主記憶装置を備える。そして、演算処理装置が補助記憶装置からOSやアプリケーションソフトウェアを読み込み、読み込んだOSやアプリケーションソフトウェアを主記憶装置に展開させながら、これらのOSやアプリケーションソフトウェアに基づいた演算処理を行う。この演算結果に基づいて、それぞれの装置が各ハードウェアを制御する。これにより、それぞれの装置の備える機能は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
以下の説明においては、ボイラとして段階値制御ボイラを例示して説明する。しかしながら、台数制御装置3を、連続制御ボイラを制御する台数制御装置3Aに置き換えるとともに、台数制御パラメータ調整装置6については、連続制御ボイラに対してそのまま適用することで、台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステム100は、連続制御ボイラを複数有するボイラ群を備えるボイラシステム1にも適用できる。
次に、ボイラシステム1について簡単に説明する。
【0018】
ボイラ群2は、負荷機器としての蒸気使用設備18に供給する蒸気を発生する。
台数制御装置3は、台数制御パラメータ調整装置6と図示しない接続インタフェースを介して互いに直接接続されてもよい。また、台数制御装置3は、台数制御パラメータ調整装置6と、LAN(Local Area Network)やインターネット等の図示しないネットワークを介して相互に接続されていてもよい。この場合、台数制御装置3、及び台数制御パラメータ調整装置6は、かかる接続によって相互に通信を行うための図示しない通信部を備えている。なお、後述するように、台数制御装置3は、台数制御パラメータ調整装置6、又は後述する台数制御パラメータ調整装置6の備える少なくとも1つ以上の機能部を含むようにしてもよい。
【0019】
複数の段階値制御ボイラ20のそれぞれは、燃焼が行われるボイラ本体21と、段階値制御ボイラ20の燃焼位置を制御するローカル制御部22と、を備える。
本実施形態では、段階値制御ボイラ20として
1)燃焼停止位置(第1燃焼位置:0%)、
2)低燃焼位置L(第2燃焼位置:例えば最大燃焼量の5~35%で設定される、本実施形態では20%)、
3)中燃焼位置M(第3燃焼位置:例えば最大燃焼量の40~60%で設定される、本実施形態では50%)、
4)高燃焼位置H(第4燃焼位置:100%(最大燃焼量))の段階的な燃焼位置を有する段階値制御ボイラ(以下、「4位置制御ボイラ」ともいう)を例示する。
本実施形態の段階値制御ボイラ20は、中燃焼位置が運転効率の高い特性を有するボイラとする。すなわち、各段階値制御ボイラ20は、中燃焼位置を高効率燃焼位置とする。
【0020】
複数の段階値制御ボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行う段階値制御ボイラ20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。なお、この優先順位は、後述の制御部30の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更してもよい。
なお、段階値制御ボイラ20は、4位置ボイラに限られない。任意の多位置ボイラとしてもよい。
【0021】
ボイラ本体21は、水管やバーナを備え、図示せぬ水源(給水タンク)から供給された缶水を水管内で加熱し、蒸気を生成する。
【0022】
ローカル制御部22は、蒸気消費量に応じて段階値制御ボイラ20の燃焼位置を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される台数制御信号に基づいて、段階値制御ボイラ20の燃焼位置を制御する。また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、段階値制御ボイラ20の実際の燃焼位置、ボイラ負荷率又は出力蒸気量、及びその他のデータ等が挙げられる。
【0023】
蒸気ヘッダ4は、蒸気管11を介してボイラ群2を構成する複数の段階値制御ボイラ20に接続されている。蒸気ヘッダ4の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
【0024】
蒸気ヘッダ4は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留する。蒸気ヘッダ4は、燃焼させる1又は複数の段階値制御ボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、蒸気圧力値が一定に調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。
【0025】
蒸気圧センサ5は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ5は、蒸気ヘッダ4の蒸気圧力値(ヘッダ圧力値)を測定し、その蒸気圧力値に対応する蒸気圧信号を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0026】
次に、台数制御装置3について簡単に説明する。
台数制御装置3は、
図1に示すように信号線16を介して、複数の段階値制御ボイラ20と電気的に接続されている。台数制御装置3は、蒸気圧センサ5により測定される蒸気ヘッダ4の蒸気圧力値に基づいて要求負荷に応じたボイラ群2の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて、ボイラ群2の内、制御対象となる段階値制御ボイラ20(以下「制御対象ボイラ」ともいう)の燃焼位置を制御する。
ボイラシステム1においては、ボイラ群2の内、制御対象でない段階値制御ボイラ20(以下、「予備ボイラ」ともいう)を設けることができる。そして、台数制御装置3は、制御対象ボイラ20の燃焼状態に応じて、予備ボイラ20を制御対象に追加して制御対象ボイラ20に変更、又は制御対象ボイラ20を制御対象から外して予備ボイラ20に変更することができる。
【0027】
図2は、台数制御装置3の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、制御手段としての制御部30と、記憶部32と、を備える。制御部30の構成を説明する前に、最初に記憶部32について説明する。
【0028】
記憶部32は、例えばROM、RAM、HDD等であり、各種の制御用プログラムとともに、
図2に示すように、台数制御パラメータ記憶部320を含む。台数制御パラメータ記憶部320は、台数制御パラメータ値をそれぞれ含む記憶部、例えば、最大使用蒸気量記憶部321、平均蒸気量記憶部322、変動蒸気量記憶部323等を含むようにしてもよい。
最大使用蒸気量記憶部321は、台数制御パラメータに含まれる最大使用蒸気量、すなわち、ボイラ群2が給蒸する出力蒸気量の最大値である最大蒸気使用量(すなわち、蒸気使用設備18(要求負荷)において消費される蒸気量の最大蒸気使用量)を記憶する。
平均蒸気量記憶部322は、台数制御パラメータに含まれる平均蒸気使用量、すなわち、ボイラ群2が給蒸する出力蒸気量の平均値である平均蒸気使用量(「平均蒸気量」ともいう)を記憶する。
変動蒸気量記憶部323は、台数制御パラメータに含まれる変動蒸気量、すなわち、ボイラ群2における蒸気供給量の変動に対応する変動蒸気量を記憶する。通常、変動蒸気量=最大使用蒸気量-平均蒸気量とされる。
【0029】
また、記憶部32は、前述したように台数制御装置3(制御部30)の制御により各段階値制御ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各段階値制御ボイラ20から受信した燃焼位置等の情報、優先順位の設定情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報を記憶する。
【0030】
次に制御部30について説明する。
図2に示すように、制御部30は、台数制御機能部301と、出力蒸気量算出部302と、台数制御パラメータ設定部303と、を含む。
【0031】
台数制御機能部301は、当業者にとって公知の機能部であって、蒸気圧センサ5により測定される蒸気ヘッダ4の蒸気圧力値に基づいて要求負荷に応じたボイラ群2の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて、ボイラ群2の内、制御対象となる段階値制御ボイラ20(以下「制御対象ボイラ」ともいう)の燃焼位置を制御する機能部である。
例えば、台数制御機能部301は、蒸気圧センサ5により測定される蒸気ヘッダ4の蒸気圧力値に基づいて要求負荷に応じたボイラ群2の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて、ボイラ群2の内、制御対象となる段階値制御ボイラ20(以下「制御対象ボイラ」ともいう)の燃焼位置を制御する。例えば、制御部30は、比例分配制御方式による台数制御を行うようにしてもよい。
具体的には、台数制御機能部301は、予め設定される比例分配制御圧力と比例分配制御幅の2つの設定値により定める制御圧力帯を制御対象となるボイラ台数やボイラ種別に基づき複数の圧力帯に分割し、分割した圧力帯毎に、ヘッダ圧力が低くなるにつれてボイラ燃焼量が増加するように、予めボイラ燃焼台数及び燃焼状態を割り当てる。そうすることで、制御部30は、ヘッダ圧力の変動に伴い、ヘッダ圧力値の含まれる分割した圧力帯に応じて、ボイラ燃焼台数及び燃焼状態を変化するように台数制御することができる。
【0032】
台数制御機能部301は、予め設定された台数制御パラメータ値(最大使用蒸気量、平均蒸気量、変動蒸気量等)に基づいて、台数制御を行うことができる。
例えば、台数制御パターンとして、効率優先モードが設定されている場合、台数制御機能部301は、最も効率の良い燃焼状態(例えば中燃焼状態)で、平均蒸気量分の出力蒸気量を確保できるように、制御対象とするボイラ及び台数を決定するとともに、変動蒸気量(=-平均蒸気量)分の蒸気の余力量を確保できるように、燃焼ボイラを順次増やしながら、ボイラを最も効率の良い燃焼状態としていくように制御する。すなわち、平均蒸気量を超える負荷に対して、機能停止しているボイラを起動するとロスが生じるため、台数制御機能部301は、新たにボイラを起動せずに、効率燃焼しているボイラを一時的に上位の燃焼状態にするように制御する。
また、台数制御パターンとして、応答優先モードが設定されている場合、台数制御機能部301は、平均蒸気量と変動蒸気量の合計量(最大使用蒸気量)分の出力蒸気量を確保できるように、制御対象とするボイラ及び台数を決定するとともに、ボイラを可能な限り待機状態としないことで、応答性を高めるように制御する。すなわち、台数制御機能部301は、負荷が増加時にはボイラを順に中燃焼とし、負荷が減少時には低燃焼ボイラを優先的に確保することで、ボイラを可能な限り待機状態としないように制御することで応答性を高める。
【0033】
出力蒸気量算出部302は、予め設定されたサンプリング周期毎(又は予め設定された時間間隔毎)に、ローカル制御部22から送信される制御対象となる段階値制御ボイラ20のそれぞれの燃焼状態に基づいて、当該周期毎にボイラ群2により出力される出力蒸気量を算出する。そして、出力蒸気量算出部302は、当該周期における時刻を示すタイムスタンプ(以下「サンプリングタイム」ともいう)と、当該時刻における少なくともボイラ群2の全出力蒸気量を含む出力蒸気量データを生成して、後述する台数制御パラメータ調整装置6及び蒸気需要予測装置(図示せず)に出力するようにしてもよい。ここで、サンプリング周期(予め設定された時間間隔)は、例えば1秒であってもよい。また、サンプリング周期を制御周期としてもよい。以下、特に断らないかぎり、サンプリング周期を1秒として例示し、説明する。なお、サンプリング周期は、1秒に限られない。任意の値を用いてもよい。
【0034】
台数制御パラメータ設定部303は、ボイラシステム1を稼働したときは、ユーザにより予め設定された初期値(「初期設定台数制御パラメータ値」)が設定され、その後、後述する台数制御パラメータ調整装置6からの台数制御パラメータ値の補正指示に基づいて、台数制御パラメータ値等を補正する。そうすることで、台数制御装置3は、ボイラシステム1の稼働後、蒸気需要予測に基づいて、ボイラ群を適切な台数制御パラメータ値に基づいて、燃焼制御することができる。
以上、制御部としての台数制御装置3について説明した。
【0035】
次に、制御装置としての台数制御パラメータ調整装置6について説明する。
図3に、台数制御パラメータ調整装置6の構成を示す機能ブロック図を示す。
台数制御パラメータ調整装置6は、前述したように、台数制御装置3と接続インタフェースを介して互いに直接接続、又はLAN(Local Area Network)やインターネット等の図示しないネットワークを介して相互に接続される装置である。
図3に示すように、台数制御パラメータ調整装置6は、制御部60と、記憶部62と、を備える。制御部60の構成を説明する前に、最初に記憶部62について説明する。
【0036】
記憶部62は、例えばROM、RAM、HDD等であり、各種の制御用プログラムとともに、
図3に示すように、全出力蒸気量時系列情報記憶部621と、単位時間蒸気量時系列情報記憶部622と、蒸気需要予測量記憶部623と、台数制御パラメータ記憶部624と、蒸気負荷パターン情報記憶部626と、を含む。
【0037】
全出力蒸気量時系列情報記憶部621は、後述するようにボイラシステム1の各稼働日に対してサンプリング周期毎にボイラ群2の全出力蒸気量の時系列情報(「全出力蒸気量時系列情報」ともいう)を記憶する。なお、本実施例では、サンプリング周期として1秒を例示する。そうすると、1日分の全出力蒸気量時系列情報には、ボイラ群2の全出力蒸気量の値と当該全出力蒸気量が測定された時刻を示す時刻情報(サンプリングタイム)とを1組の情報とする最大86400組(=24hh×60mm×60ss)の情報と、当該全出力蒸気量が測定された日付情報とが含まれる。時刻情報は、例えばhhmmss(時分秒)としてもよい。以下、特に断らないかぎり、サンプリング周期として1秒として例示し説明するが、サンプリング周期は1秒に限られない。任意の値を設定してもよい。
【0038】
単位時間蒸気量時系列情報記憶部622は、後述するように出力蒸気量取得部601により取得した、ボイラシステム1の各稼働日に対して、単位時間あたりの全出力蒸気量の最大値及び平均値(「単位時間蒸気量」ともいう)を時刻情報と対応づけた時系列情報(「単位時間蒸気量時系列情報」ともいう)を記憶する。なお、本実施例では、単位時間として1分を例示する。また、単位時間(1分)の始まりをmm分00秒とし、mm分00秒から1分の間とする。そうすると、1日分の単位時間蒸気量時系列情報には、単位時間毎の、ボイラ群2の単位時間蒸気量の値と、当該単位時間の時刻を示す時刻情報とを1組の情報とする最大1440(=24hh×60mm)の情報と、全出力蒸気量が測定された日付情報とが含まれる。時刻情報は、例えばhhmm(時分)としてもよい。なわち、日付をyymmdd(年月日)とし、当該日付のhhmm時の(最大蒸気使用量、平均蒸気使用量)を含む単位時間蒸気量をxyymmdd(hhmm)とすると、単位時間蒸気量時系列情報は、蒸気量が測定された日付情報の単位時間蒸気量の集合{xyymmdd(hhmm)}として記載することができる。以下、特に断らないかぎり、単位時間を1分として例示し説明するが、単位時間は、1分に限られない。任意の値を設定してもよい。
【0039】
蒸気需要予測量記憶部623は、後述するように蒸気需要予測量取得部602により取得される、蒸気需要予測量を時刻情報と対応づけて記憶する。
【0040】
台数制御パラメータ記憶部624は、最大使用蒸気量、平均蒸気量、及び変動蒸気量等を含む台数制御パラメータ値を記憶する。なお、台数制御パラメータ記憶部624は、初期設定台数制御パラメータ値を含むようにしてもよい。
【0041】
蒸気負荷パターン情報記憶部626は、例えばカレンダー日付に予めユーザにより設定された初期設定台数制御パラメータ値を対応づけたテーブル(「蒸気負荷パターンテーブル」ともいう)を記憶する。
例えば曜日毎に、初期設定台数制御パラメータ値が設定されている場合は、曜日=初期設定台数制御パラメータ値とし、祝日等のイレギュラー時に任意の初期設定台数制御パラメータ値を設定するようにしてもよい。また、月毎に、当該月に属する日付と初期設定台数制御パラメータ値とを対応づけるテーブルを予め設定するようにしてもよい。
【0042】
次に制御部60について説明する。
図3に示すように、制御部60は、出力蒸気量取得部601と、蒸気需要予測量取得部602と、台数制御パラメータ算出部603と、台数制御パラメータ補正部604と、需要予測急変判定部605と、蒸気需要予測正誤判定部606と、を備える。
【0043】
まず、出力蒸気量取得部601について、説明する。
任意の時点、具体的にはサンプリング周期毎における、各ボイラ20の燃焼状態から算出される出力蒸気量の合計値であるボイラ群2の出力蒸気量を、当該時点におけるボイラ群2の出力蒸気量と定義する。ここでは、サンプリング周期を、例えば1秒とする。
そうすると、出力蒸気量取得部601は、前述したように、任意の時点(hh.mm.ss)において、信号線16を介して各ボイラ20から受信した実際の燃焼位置に基づいて、各ボイラ20の出力蒸気量を取得することができる。そして、出力蒸気量取得部601は、各ボイラ20の出力蒸気量の合計値を算出することで、任意の時点(hh.mm.ss)における出力蒸気量を取得することができる。
出力蒸気量取得部601は、予め設定された所定期間を遡った時点(例えば、現在から60秒前)から現在までのボイラ群2の出力蒸気量を平滑化することで、ボイラ群2の平均出力蒸気量(以下「ボイラ群2の現在の平均出力蒸気量」ともいう)を算出するようにしてもよい。
【0044】
具体的には、出力蒸気量取得部601は、現時点を満了点として予め設定された所定期間を遡った時点(例えば、現在から60秒前)を起算点とする単位時間(例えば、1分)内における各ボイラ20の制御周期毎の出力蒸気量の合計値の平均値をボイラ群2の平均出力蒸気量とするようにしてもよい。具体的には、例えば出力蒸気量取得部601は、予め設定された所定期間を遡った時点(例えば、現在から60秒前)から現在までのボイラ群2の出力蒸気量を移動平均することで、ボイラ群2の現在の平均出力蒸気量としてもよい。こうすることで、ボイラ群2の出力蒸気量の現在の傾向を反映することができる。
【0045】
また、出力蒸気量取得部601は、現時点を満了点として予め設定された所定期間を遡った時点を起算点とする期間内における、各ボイラ20の制御周期毎の出力蒸気量の合計値に時間に依存する重み付けを適用することで算出される重みづけされた値の平均値をボイラ群2の平均出力蒸気量とするようにしてもよい。例えば出力蒸気量取得部601は、予め設定された所定期間を遡った時点(例えば、現在から60秒前)から現在までのボイラ群2の出力蒸気量について、それぞれの出力蒸気量に所定の重み係数を掛けた値の平均値を算出することで、ボイラ群2の現在の平均出力蒸気量としてもよい。ここで、重み係数は現時点に近い時点ほど、より大きな値になるようにしてもよい。こうすることで、平均出力蒸気量の算出にあたって、現在に近い出力蒸気量の値をより反映することができる。
【0046】
また、出力蒸気量取得部601は、現時点を満了点として予め設定された所定期間を遡った時点(例えば、現在から60秒前)を起算点とする単位時間(例えば、1分)内における各ボイラ20の制御周期毎の出力蒸気量の合計値の最大値を、ボイラ群2の現在の最大出力蒸気量としてもよい。
以上のように、出力蒸気量取得部601は、単位時間(hh.mm)毎に、当該単位時間における最大出力蒸気量及び平均出力蒸気量を取得することができる。
なお、上記の説明においては、ボイラ群2の出力蒸気量を算出する例を示したが、出力蒸気量に換えてボイラ群2のボイラ負荷率を算出するようにしてもよい。
【0047】
次に、蒸気需要予測量取得部602について説明する前に、蒸気需要予測量を出力する蒸気需要予測装置(図示せず)について説明する。蒸気需要予測装置(図示せず)は、任意のものを使用することができる。一例として、蒸気需要予測装置(図示せず)は、蒸気需要予測量を、以下のように算出することができる。
例えば、過去の燃焼状態履歴データを利用して、蒸気負荷パターンが類似する稼働日毎(例えば曜日、季節等)に、以下のような予測モデルを作成するようにしてもよい。
所定期間(例えば直近の過去X時間分)に含まれる単位時間当たりの最大蒸気使用量、平均蒸気使用量、及び変動蒸気量等を入力することで、所定時間(例えば1時間)先までの単位時間当たりの最大蒸気使用量、平均蒸気使用量、及び変動蒸気量の予測値を導出する予測モデルを作成する。
具体的には、所定期間(例えば直近の過去X時間分)に含まれる単位時間当たりの最大蒸気使用量、平均蒸気使用量、及び変動蒸気量等を入力データ、所定時間(例えば1時間)先までの単位時間当たりの最大蒸気使用量、平均蒸気使用量、及び変動蒸気量をラベルデータとする教師データ(訓練データ)として、教師あり学習を実行することで、予測モデルを作成する。
蒸気需要予測装置(図示せず)は、作成された予測モデルを実装することで、当該予測モデルに、所定期間(例えば直近の過去X時間分)に含まれる単位時間当たりの最大蒸気使用量、平均蒸気使用量、及び変動蒸気量等を入力することで、所定時間(例えば1時間)先までの単位時間当たりの最大蒸気使用量、平均蒸気使用量、及び変動蒸気量の予測値を出力することができる。
【0048】
また、蒸気需要予測装置(図示せず)は、所定期間(例えば直近の過去X時間分)に含まれる単位時間当たりの最大蒸気使用量、平均蒸気使用量、及び変動蒸気量等を入力データと、所定時間(例えば1時間)先までの単位時間当たりの最大蒸気使用量、平均蒸気使用量、及び変動蒸気量と、に基づいて、時系列分析を行うことで、予測モデルを作成するようにしてもよい。
なお、ここで説明した予測分析モデルは一例であって、これに限られない。
本実施形態においては、蒸気需要予測装置(図示せず)として、直近の所定期間(例えば直近の過去X時間分)に含まれる単位時間当たりの負荷又は出力蒸気量を入力することで、所定時間(例えば1時間)先までの単位時間当たりの負荷又は出力蒸気量を蒸気需要予測量として出力する予測モデルに基づく予測機能を備える装置として説明する。
【0049】
蒸気需要予測量取得部602は、例えば、単位時間(例えば1分)毎にボイラ群2の蒸気需要予測量を取得するようにしてもよい。具体的には、出力蒸気量取得部601により取得される単位時間毎の最大出力蒸気量及び平均出力蒸気量に基づいて算出される、直近の所定期間に含まれる単位時間毎の最大出力蒸気量及び平均出力蒸気量を蒸気需要予測装置(図示せず)に入力することで、所定時間先までの単位時間毎の最大出力蒸気量及び平均出力蒸気量を蒸気需要予測量として取得することができる。
【0050】
蒸気需要予測量取得部602は、さらに、所定時間先までの単位時間毎の最大出力蒸気量及び平均出力蒸気量から、部分集合となる第2の所定時間(例えば10分)先までの単位時間毎の最大出力蒸気量及び平均出力蒸気量を取得することで、第2の所定時間先までの期間における最大出力蒸気量及び平均出力蒸気量を算出するようにしてもよい。
そうすることで、蒸気需要予測量取得部602は、単位時間(例えば1分)毎に、前記所定時間よりも短い第2の所定時間帯毎のボイラ群2の蒸気需要予測量を取得することができる。
なお、上記の説明においては、ボイラ群2の出力蒸気量を用いる例を示したが、前述したように、出力蒸気量に換えてボイラ群2のボイラ負荷率を用いるようにしてもよい。
以上、蒸気需要予測量取得部602について説明した。次に、台数制御パラメータ算出部603について説明する。
【0051】
台数制御パラメータ算出部603は、単位時間(例えば1分)毎に、取得した第2の所定時間帯毎のボイラ群2の蒸気需要予測量に基づいて、第2の所定時間帯において、最大使用蒸気量を含む、平均蒸気量、及び変動蒸気量の値(以下「台数制御パラメータ値」という)を算出する。
なお、台数制御装置3は、最大使用蒸気量に基づいて、最大負荷時における制御ボイラ台数の上限を決定することから、仮に最大使用蒸気量の値が小さい場合に、最大負荷時に燃焼ボイラ不足となり、ヘッダ圧力が大きく低下するリスクがある。このため、台数制御パラメータに含まれる最大使用蒸気量に対して、最大蒸気使用量の予測値をそのまま適用するのではなく、予め設定された余裕蒸気量(+α)を加算した値を適用することが好ましい。そうすることで、実際の最大使用蒸気量が最大蒸気使用量の予測値を超えるような場合であっても、当該最大負荷時に、燃焼ボイラ不足となりヘッダ圧力が大きく低下することがないようにすることができる。
台数制御パラメータ算出部603は、このように算出した最大使用蒸気量、平均蒸気量、及び変動蒸気量の値を、後述する台数制御パラメータ補正部604に出力する。
【0052】
ただし、台数制御パラメータ値を頻繁に(例えば単位時間毎に)補正すると、却って台数制御が不安定になるリスクがあるため、後述するように、一度台数制御パラメータ値を補正した以降は第3の所定時間が経過するまでは、ボイラ群2の蒸気需要予測量から、蒸気需要が急変することが予測される場合を除いて、同じ状態を継続させることで、台数制御が不安定になるリスクを低くすることが好ましい。ここで、第3の所定時間は、予めユーザが設定することができる。例えば、10分から30分としてもよい。なお、台数制御パラメータ値を補正した以降に、第3の所定時間が経過した場合、台数制御パラメータ算出部603は、新たに取得した第2の所定時間帯毎のボイラ群2の蒸気需要予測量に基づいて、第2の所定時間帯において望ましい台数制御パラメータ値を再算出するようにしてもよい。なお、図示しないが、台数制御パラメータ調整装置6は、第3の所定時間を計測するための計測器を備えているものとする。
【0053】
ただし、ボイラ群2の蒸気需要予測量から、蒸気需要が急変することが予測される場合は、蒸気需要の急変に備えて、速やかに適切な台数制御パラメータ値を補正することが好ましい。
このため、制御部60は、蒸気需要が急変するか否かを判定する需要予測急変判定部605を備える。需要予測急変判定部605は、直近に設定された台数制御パラメータ値の算出の基礎となったボイラ群2の蒸気需要予測量(「基礎となる蒸気需要予測量」という)と、その後例えば単位時間毎に、蒸気需要予測量取得部602により取得される蒸気需要予測量(「最新の蒸気需要予測量」という)と、を比較する。ここで、需要予測急変判定部605は、最新の蒸気需要予測量と、基礎となる蒸気需要予測量と、はともに第2の所定時間帯における値を用いてもよい。
需要予測急変判定部605は、最新の蒸気需要予測量と、基礎となる蒸気需要予測量と、の差分が予め設定された第1の所定量又は所定率を上回るときに、蒸気需要が急変すると判定することができる。なお、前記第1の所定量又は所定率は、台数制御パラメータ値に応じて予め設定するようにしてもよい。
この場合、需要予測急変判定部605は、最新の蒸気需要予測量と、基礎となる蒸気需要予測量と、の差分が、台数制御パラメータ値に応じて予め設定された第1の所定量又は所定率を上回るときに、蒸気需要が急変すると判定することができる。
【0054】
台数制御パラメータ算出部603は、需要予測急変判定部605により蒸気需要が急変すると判定された場合、最新の蒸気需要予測量に基づいて、蒸気需要の急変に備えて、台数制御パラメータ値を再算出することができる。
具体的には、最新の蒸気需要予測量が基礎となる蒸気需要予測量より大きい場合、台数制御パラメータ算出部603は、現在の台数制御パラメータ値(特に最大使用蒸気量)よりも大きな値となる台数制御パラメータ値(特に最大使用蒸気量)を算出する。逆に、最新の蒸気需要予測量が基礎となる蒸気需要予測量より小さい場合、台数制御パラメータ算出部603は、現在の台数制御パラメータ値(特に最大使用蒸気量)よりも小さな値となる台数制御パラメータ値(特に最大使用蒸気量)を算出する。ただし、この場合においても、前述した余裕蒸気量を加算するようにしてもよい。
そうすることで、後述するように、台数制御パラメータ補正部604は、第3の所定時間の経過前か否かに関わらず、蒸気需要の急変に備えて、台数制御パラメータ算出部603により算出された最大使用蒸気量を含む台数制御パラメータ値に基づいて、台数制御装置3に設定されている台数制御パラメータを直接補正することができる。
【0055】
次に、蒸気需要予測量が、実際の出力蒸気量と比べて大幅に乖離している場合について説明する。
蒸気需要予測量が、実際の出力蒸気量と比べて大幅に乖離している場合、台数制御パラメータ調整装置6は、蒸気需要予測量に基づく台数制御パラメータの補正調整を中止することが好ましい。
このため、制御部60は、蒸気需要予測正誤判定部606を備える。
蒸気需要予測正誤判定部606は、出力蒸気量取得部601により単位時間毎に取得されるボイラ群2の現在の出力蒸気量(「現在の単位時間毎の出力蒸気量」という)と、蒸気需要予測量取得部602により過去に取得された、現在と同じ時間(単位時間)における蒸気需要予測量(「現在の単位時間毎の予測された出力蒸気量」という)と、を比較することで、実際のボイラ負荷率又は出力蒸気量が蒸気需要予測量と大幅に異なっているか否かを判定することができる。
具体的には、蒸気需要予測正誤判定部606は、現在の単位時間毎の出力蒸気量と、現在の単位時間毎の予測された出力蒸気量と、の差分が予め設定された第2の所定量又は所定率を上回る状態が続く場合、蒸気需要予測が誤っていると判定することができる。なお、差分を比較する出力蒸気量としては、例えば、単位時間毎の最大出力蒸気量を用いるようにしてもよい。なお、単位時間毎の差分を比較する換わりに、蒸気需要予測正誤判定部606は、最新の蒸気需要予測量と、基礎となる蒸気需要予測量と、はともに同じ時間帯となる第2の所定時間帯における値を用いてもよい。
そうすることで、蒸気需要予測正誤判定部606により蒸気需要予測が誤っていると判定された場合、例えば、表示器にその旨を示すアラーム情報を出力するとともに、台数制御パラメータ算出部603は、最初に設定されていた台数制御パラメータ値(初期設定台数制御パラメータ値)又は、実際の出力蒸気量に基づいて台数制御パラメータ値(「実際の出力蒸気量に基づく台数制御パラメータ値」という)を算出するようにしてもよい。
なお、初期設定台数制御パラメータ値を算出するか、又は実際の出力蒸気量に基づく台数制御パラメータ値を算出するか、については、蒸気需要予測が誤っていると判定された場合にいずれを適用するかを予め設定しておくようにしてもよい。この場合、アラーム情報出力時に、適用される台数制御パラメータ値を表示器に表示するようにしてもよい。
またアラーム情報出力時に、ユーザに対して、いずれを適用するかを入力させるようにしてもよい。
なお、実際のボイラ負荷率又は出力蒸気量が蒸気需要予測量と大幅に異なっているときに、実際の出力蒸気量に基づく台数制御パラメータ値を算出する場合、台数制御パラメータ算出部603は、
蒸気需要予測量に基づくボイラ負荷率又は蒸気量が実際のボイラ燃焼状態に基づくボイラ負荷率又は蒸気量より小さい場合、台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量に予め設定された増加蒸気量(+β)を加算した値を補正最大使用蒸気量とし、
蒸気需要予測量に基づくボイラ負荷率又は蒸気量が実際のボイラ燃焼状態に基づくボイラ負荷率又は蒸気量より大きい場合、台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量から予め設定された減少蒸気量(-θ)を減算した値を補正最大使用蒸気量とするようにしてもよい。
なお、以上の説明においても、前述したように、出力蒸気量に換えてボイラ群2のボイラ負荷率を用いるようにしてもよい。
【0056】
台数制御パラメータ算出部603は、需要予測急変判定部605、及び蒸気需要予測正誤判定部606のいずれの判定においても、該当する条件を満たさない場合、前述したように、台数制御パラメータ値を補正した以降は第3の所定時間が経過するまでは、蒸気需要予測量に基づいて台数制御パラメータ値を補正せずに、第3の所定時間が経過した以降に、新たに取得した第2の所定時間帯毎のボイラ群2の蒸気需要予測量に基づいて、第2の所定時間帯において望ましい台数制御パラメータ値を再算出することが好ましい。
そうすることで、台数制御パラメータ値を頻繁に補正すると、台数制御が不安定になるリスクがあるため、一度台数制御パラメータ値を補正した以降は所定時間が経過するまで同じ状態を継続させることで、台数制御が不安定になるリスクを低くすることができる。
以上のように、台数制御パラメータ算出部603は、需要予測急変判定部605、及び蒸気需要予測正誤判定部606の判定結果に基づいて、算出した台数制御パラメータ値を、後述する台数制御パラメータ補正部604に出力する。また、前述したように、需要予測急変判定部605、及び蒸気需要予測正誤判定部606のいずれの判定においても、該当する条件を満たさない場合、台数制御パラメータ値を補正した以降は第3の所定時間が経過するまでは、台数制御パラメータ算出部603は、後述する台数制御パラメータ補正部604に、台数制御パラメータ値の補正なし情報を出力するようにしてもよい。
以上、台数制御パラメータ算出部603の機能について説明した。最後に、台数制御パラメータ補正部604について説明する。
【0057】
台数制御パラメータ補正部604は、台数制御パラメータ算出部603により選択された台数制御パラメータ値により、台数制御装置1における台数制御パラメータを補正する。なお、台数制御パラメータ値の補正のない場合は、現行の台数制御パラメータ値のままとする。
台数制御パラメータ補正部604は、台数制御パラメータ値の補正がある場合、台数制御パラメータ値を台数制御装置1(台数制御パラメータ設定部303)に出力する。そうすることで、台数制御装置1は、蒸気需要予測等に基づいて、ボイラ群を適切な台数制御パラメータに基づいて、燃焼制御することができる。
以上、台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステム100について説明した。
【0058】
次に、本実施形態に係る台数制御パラメータ調整装置6による台数制御装置3への台数制御パラメータの設定処理に係る動作について説明する。
図4A及び
図4Bは、台数制御パラメータ調整装置6の処理について説明するフローチャートである。なお、台数制御装置3(台数制御パラメータ記憶部324)には、予め初期設定台数制御パラメータ値が記憶され、初期設定台数制御パラメータが設定されているものとする。なお、台数制御パラメータ調整装置6(台数制御パラメータ記憶部624)にも、前記初期設定台数制御パラメータ値が記憶されているものとする。
また、台数制御パラメータ調整装置6に係る処理は、並行処理され、台数制御パラメータ調整装置6(出力蒸気量取得部601)は、ボイラシステム1の稼働後、単位時間(hh.mm)毎に、当該単位時間における最大負荷(最大出力蒸気量)及び平均負荷(平均出力蒸気量)を並行して取得しているものとする。同様に、台数制御パラメータ調整装置6(蒸気需要予測量取得部602)は、単位時間毎に、第2の所定時間先までの期間における最大負荷(最大出力蒸気量)及び平均負荷(平均出力蒸気量)を並行して取得しているものとする。したがって、
図4A及び
図4Bには、これらの処理については、図示しないが、
図4A及び
図4Bに記載の処理と並行処理されているものとする。
また、第3の所定時間の計測器(図示せず)は、予め初期化されているものとする。
【0059】
図4Aを参照すると、ステップS10において、蒸気需要予測正誤判定部606は、ボイラ群2の現在の出力蒸気量と、過去に予測された現在の出力蒸気量と、の差分が、所定の大きさを上回っているか否かを判定する。所定の大きさを上回っている場合、ステップS20に移る。所定の大きさを上回っていない場合、ステップS11に移る。
【0060】
ステップS11において、需要予測急変判定部605は、最新の蒸気需要予測量と、基礎となる蒸気需要予測量と、の差分が、現在設定されている台数制御パラメータ値に基づいて予め設定された第1の所定量又は所定率を上回るか否かを判定する。上回る場合(YESの場合)、ステップS16に移る。上回らない場合(NOの場合)、ステップS12に移る。
【0061】
ステップS12において、台数制御パラメータ算出部603は、直近の台数制御パラメータを補正してから、第3の所定時間が経過しているか否かを判定する。第3の所定時間が経過している場合(YESの場合)、ステップS13に移る。第3の所定時間が経過していない場合(NOの場合)、ステップS10に移る。
【0062】
ステップS13において、台数制御パラメータ算出部603は、最新の蒸気需要予測量に基づいて、台数制御の制御パラメータ値を算出する。
【0063】
ステップS14において、選択された台数制御の制御パラメータ値が現在の制御パラメータ値と同じか否かを判定する。同じ場合(YESの場合)、ステップS15に移る。異なる場合(NOの場合)、ステップS17に移る。
【0064】
ステップS15において、第3の所定時間の計測を初期化し、ステップS10に移る。
【0065】
ステップS16において、台数制御パラメータ算出部603は、ボイラ群2の蒸気需要予測量に基づいて、望ましい台数制御パラメータ値を算出する。その後、ステップS17に移る。
【0066】
ステップS17において、台数制御パラメータ補正部604は、台数制御パラメータ算出部603により算出された台数制御パラメータ値により、台数制御装置1における台数制御パラメータを補正する。
【0067】
ステップS18において、第3の所定時間の計測を初期化し、ステップS10に移る。
【0068】
図4Bを参照すると、ステップS20において、台数制御パラメータ算出部603は、初期設定台数制御パラメータ値、又は実際の出力蒸気量に基づく台数制御パラメータ値を算出する。
【0069】
ステップS21において、台数制御パラメータ補正部604は、台数制御装置1における台数制御パラメータをステップS20において算出された台数制御パラメータに補正する。
【0070】
ステップS22において、台数制御パラメータ調整装置6は、蒸気需要予測等に基づく、台数制御パラメータの算出及び補正機能をストップする。それ以降、台数制御装置1は、ステップS21において補正された台数制御パラメータに基づいて燃焼制御する。
【0071】
以上により、ボイラ20を有するボイラ群2を備える台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステム100において、台数制御パラメータ調整装置6は、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値を補正する場合、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値を頻繁に補正することによる台数制御が不安定になるリスクを避け、蒸気需要予測が急変した場合には、負荷が急変する恐れがあることから、台数制御パラメータ値を即座に補正する。他方、蒸気需要予測と、実際のボイラ負荷率又は蒸気量と、が大きく外れている場合には、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値を補正することを中止する等、適切に対処することで、安定した台数制御をすることができる。
【0072】
以上、一の実施形態について説明したが、台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステム100は、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等が含まれる。
<変形例1>
台数制御パラメータ調整装置6は、蒸気需要予測に基づいて台数制御パラメータ値補正指示を台数制御装置1に対して出力する実施形態について説明した。台数制御パラメータ調整装置6は、これに加えて蒸気需要予測に基づいて各ボイラ20の燃焼位置を算出し、台数制御装置1に対して、各ボイラ20の燃焼位置を指示するようにしてもよい。
すなわち、前述したように、台数制御装置1は、蒸気ヘッダ4の蒸気圧力値(ヘッダ圧力値)に基づいて要求負荷に応じたボイラ群2の必要蒸気量を算出し、該算出された必要蒸気量に基づいて、ボイラ群2の内、制御対象となる段階値制御ボイラ20(制御対象ボイラ)の燃焼位置を制御(比例分配制御方式)していたが、これに換えて、台数制御パラメータ調整装置6(制御部60)が、蒸気需要予測量に基づいて、ボイラ群2の必要燃焼量を算出し、算出した必要燃焼量から、各ボイラ20の燃焼位置を算出し、台数制御装置1に対して、各ボイラ20の燃焼位置を指示するようにしてもよい。
例えば、上述した実施形態において、例示したように、ボイラ群2が5台の段階値制御ボイラ20を備え、各ボイラ20の最大燃焼量を2000kg/h、中燃焼量を1000kg/h、低燃焼量を500kg/hとするボイラ群の場合に、ボイラ群2の蒸気需要予測(ボイラ燃焼率)が80%の場合、台数制御パラメータ調整装置6(制御部60)は、例えば、3台のボイラ20を高燃焼位置に、2台のボイラ20を中燃焼位置で燃焼するように、燃焼指示するようにしてもよい。
ただし、蒸気需要予測量が、当該蒸気需要予測量を予測した時刻において測定される実際の出力蒸気量に比べて大幅に乖離している場合、台数制御パラメータ調整装置6は、蒸気需要予測量に基づいて各ボイラ20の燃焼位置を指示する燃焼制御を中止するようにしてもよい。そうすることで、台数制御装置1は、従来の比例分配制御方式に基づいて、各ボイラ20の燃焼位置を制御するようにしてもよい。
以上、台数制御パラメータ調整装置6の実施形態に、蒸気需要予測量に基づいて、ボイラ20の燃焼位置を台数制御装置1に対して指示する燃焼制御を追加する変形例について説明した。
【0073】
<変形例2>
上述の実施形態では、制御装置としての台数制御パラメータ調整装置6は、台数制御部としての台数制御装置3と異なる装置として例示したが、台数制御パラメータ調整装置6の一部又は全部の機能を、台数制御装置3が備えるようにしてもよい。あるいは、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、台数制御パラメータ調整装置6の一部又は全部の機能を実現してもよい。
【0074】
<変形例3>
また、前述したように、ボイラは、段階値制御ボイラに限られない。連続制御ボイラからなるボイラ群に対しても適用することができる。
具体的には、例えば、前述したように台数制御装置3は、当業者にとって公知の連続制御ボイラ群を台数制御する台数制御装置3Aに置き換えるとともに、例えば、平均蒸気量を出力する際に、燃焼ボイラの燃焼率がエコ運転ゾーンの範囲内になるように例えば設定する、制御パラメータを設定してもよい。
【0075】
以上説明した本実施形態の台数制御パラメータ調整機能付きボイラシステム100に含まれる台数制御パラメータ調整装置6によれば、以下のような効果を奏する。
【0076】
(1)本実施形態の台数制御パラメータ調整装置6は、
複数のボイラからなるボイラ群2の燃焼状態を制御するために、台数制御パラメータの設定値を用いる台数制御部としての台数制御装置3と通信可能に接続された、前記台数制御パラメータの設定値の変更を行う制御装置であって、
ボイラ群2の蒸気需要予測量を取得する蒸気需要予測量取得部602と、
蒸気需要予測量取得部602により取得された蒸気需要予測量に応じて、台数制御パラメータの設定値を算出する台数制御パラメータ算出部603と、
台数制御装置3の制御部30に設定されている台数制御パラメータの設定値に換えて、台数制御パラメータ算出部603により算出された台数制御パラメータの値に直接補正する台数制御パラメータ補正部604と、を含み、
台数制御パラメータ補正部604は、
台数制御パラメータの設定値を補正した以降、予め設定された所定時間が経過するまでの間、台数制御パラメータの設定値を補正せずに、維持する。
そうすることで、台数制御パラメータの設定値を頻繁に補正すると、台数制御が不安定になるリスクがあるため、一度、台数制御パラメータの設定値を補正した以降は所定時間が経過するまで同じ台数制御パラメータの設定値を継続させることで、台数制御が不安定になるリスクを低くすることができる。
【0077】
(2)本実施形態の台数制御パラメータ調整装置6において、台数制御パラメータは、少なくとも最大使用蒸気量を含むようにしてもよい。
そうすることで、「最大使用蒸気量」に基づいて、最大負荷時における制御ボイラ台数上限を決めることができる。
【0078】
(3)本実施形態の台数制御パラメータ調整装置6において、台数制御パラメータ算出部603は、蒸気需要予測量に含まれる最大蒸気使用量の予測値に予め設定された余裕蒸気量(+α)を加算することで、台数制御パラメータに含まれる最大使用蒸気量を算出するようにしてもよい。
そうすることで、「最大使用蒸気量」は、制御ボイラ台数上限を決定するために用いられるため、仮に蒸気需要予測量に含まれる最大蒸気使用量の予測値が小さい値の場合、最大蒸気使用量の予測値をそのまま適用した場合、最大負荷時に燃焼ボイラ不足となりヘッダ圧力が大きく低下するリスクがあるが、台数制御パラメータに含まれる「最大使用蒸気量」に対しては、最大蒸気使用量の予測値に予め設定された余裕蒸気量(+α)を適用した値を設定値とすることで、最大負荷時に燃焼ボイラ不足となりヘッダ圧力が大きく低下するリスクを避けることができる。
【0079】
(4)本実施形態の台数制御パラメータ調整装置6において、
台数制御パラメータ算出部603は、さらに、
直近に取得した最大蒸気使用量の予測値に基づいて台数制御パラメータが直接補正された以降に取得した最新の最大蒸気使用量の予測値と、直近に取得した最大蒸気使用量の予測値と、の差分が予め設定された所定量又は所定率を上回ると判定された場合、前記最新の最大蒸気使用量の予測値に基づいて台数制御パラメータの値を算出し、
台数制御パラメータ補正部604は、所定時間の経過前か否かに関わらず、
制御部30に設定されている台数制御パラメータの設定値を算出された台数制御パラメータの値に直接補正するようにしてもよい。
そうすることで、蒸気需要予測量が急変(蒸気需要予測量が急増又は急減)する場合は、その後の短時間にヘッダ圧力が急変するリスクがあるため、即座に最新の蒸気需要予測量に基づいて、蒸気需要量の急変に備えることができる。
【0080】
(5)本実施形態の台数制御パラメータ調整装置6において、
台数制御パラメータ算出部603により算出された台数制御パラメータに基づいて予測される最大蒸気使用量の予測値と、実際のボイラ燃焼状態に基づく最大蒸気使用量との乖離が予め設定した所定値を超えていることを第1条件とした場合、
台数制御パラメータ補正部604は、さらに、
第1条件を満たすと判定された場合、
予め台数制御パラメータに初期値として設定されていた最大使用蒸気量、又は
実際のボイラ燃焼状態に基づく最大蒸気使用量に所定の余裕蒸気量を加算した値に補正するようにしてもよい。
そうすることで、蒸気需要予測が外れている場合に、実際のボイラ燃焼状態に基づく最大蒸気使用量に所定の余裕蒸気量を加算した値、又は予め台数制御パラメータに初期値として設定されていた最大使用蒸気量に補正することで、台数制御の安定性を確保することができる。
【0081】
(6)本実施形態の台数制御パラメータ調整装置6において、
第1条件を満たすと判定された場合であって、実際のボイラ燃焼状態に基づいて台数制御パラメータの値を算出する場合、
台数制御パラメータ算出部603は、
蒸気需要予測量に基づくボイラ負荷率又は蒸気量が実際のボイラ燃焼状態に基づくボイラ負荷率又は蒸気量より小さい場合、台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量に予め設定された増加蒸気量(+β)を加算した値を補正最大使用蒸気量とし、
蒸気需要予測量に基づくボイラ負荷率又は蒸気量が実際のボイラ燃焼状態に基づくボイラ負荷率又は蒸気量より大きい場合、台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量から予め設定された減少蒸気量(-θ)を減算した値を補正最大使用蒸気量とし、
台数制御パラメータ補正部604は、台数制御パラメータ算出部603により算出された補正最大使用蒸気量により、台数制御パラメータに設定されている最大使用蒸気量を直接補正するようにしてもよい。
そうすることで、蒸気需要予測が外れている場合に、実際の燃焼状態に基づいて、台数制御パラメータを補正することで、台数制御の安定性を増すことができる。
【0082】
(7)本実施形態の台数制御パラメータ調整装置6は、台数制御装置3を含むようにしてもよい。
そうすることで、台数制御装置3と、台数制御パラメータ調整装置6と、を1つの装置とすることで、別装置とする場合に比べて、設置スペース、設置のために要する工数等を削減することができる。
【符号の説明】
【0083】
100 ボイラシステム
1 ボイラシステム
2 ボイラ群
20 段階値制御ボイラ
3 台数制御装置
30 制御部
301 台数制御機能部
302 出力蒸気量算出部
303 台数制御パラメータ設定部
32 記憶部
320 台数制御パラメータ記憶部
321 最大使用蒸気量記憶部
322 平均蒸気量記憶部
323 変動蒸気量記憶部
4 蒸気ヘッダ
5 蒸気圧センサ
6 台数制御パラメータ調整装置
60 制御部
601 出力蒸気量取得部
602 蒸気需要予測量取得部
603 台数制御パラメータ算出部
604 台数制御パラメータ補正部
605 需要予測急変判定部
606 蒸気需要予測正誤判定部
62 記憶部
621 全出力蒸気量時系列情報記憶部
622 単位時間蒸気量時系列情報記憶部
623 蒸気需要予測量記憶部
624 台数制御パラメータ記憶部