(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168997
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ビール風味発酵アルコール飲料およびその製法
(51)【国際特許分類】
C12C 5/02 20060101AFI20231121BHJP
C12C 12/02 20060101ALI20231121BHJP
C12C 12/04 20060101ALI20231121BHJP
C12C 12/00 20060101ALI20231121BHJP
C12C 11/11 20190101ALI20231121BHJP
【FI】
C12C5/02
C12C12/02
C12C12/04
C12C12/00
C12C11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080432
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】加野 智慎
(72)【発明者】
【氏名】森下 あい子
(72)【発明者】
【氏名】三吉 惟道
(72)【発明者】
【氏名】米田 俊浩
【テーマコード(参考)】
4B128
【Fターム(参考)】
4B128CP16
4B128CP22
4B128CP23
4B128CP29
4B128CP34
4B128CP38
4B128CP39
(57)【要約】
【課題】後味のキレが増強されたビール風味発酵アルコール飲料の提供。
【解決手段】飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上である、ビール風味発酵アルコール飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上である、ビール風味発酵アルコール飲料。
【請求項2】
飲料中の酪酸の濃度が0.35~2mg/Lである、請求項1に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
【請求項3】
飲料中の酪酸の濃度が0.6~1mg/Lである、請求項1に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
【請求項4】
飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
【請求項5】
麦芽使用比率が50~100質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
【請求項6】
アルコール濃度が2体積%超である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
【請求項7】
ビール風味発酵アルコール飲料を製造する方法であって、飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上に調整される、方法。
【請求項8】
飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下に調整される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
麦芽使用比率が50~100質量%である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
飲料中のアルコール濃度が2体積%超に調整される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
ビール風味発酵アルコール飲料において、後味のキレを増強する方法であって、飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上に調整される、方法。
【請求項12】
ビール風味発酵アルコール飲料において、スムースな味の流れを改善する方法であって、飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上に調整される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール風味発酵アルコール飲料およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりにより、糖質含有量が低減されたビールテイスト飲料が求められている。糖質を低減したビールやビール系飲料は、味の強度が低くなることが多いため、後味に残る雑味感によるキレの悪さや、口の中でのとげとげしさによるスムースな味の流れの悪さを感じやすいという問題がある。
【0003】
味の強度を高めるための従来の方法としては苦味価(BU)上昇や、ホップによる香気成分を付与する方法があるが、BU上昇により全体の味のバランスが崩れ、ホップによる香気成分付与は単調な印象になってしまう。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、ビール風味発酵アルコール飲料において酪酸(n-ブタン酸)の濃度を所定の範囲に調整することにより、後味のキレを向上できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0005】
従って、本発明は、後味のキレが増強されたビール風味発酵アルコール飲料およびその製法を提供する。
【0006】
そして、本発明には、以下の発明が包含される。
(1)飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上である、ビール風味発酵アルコール飲料。
(2)飲料中の酪酸の濃度が0.35~2mg/Lである、前記(1)に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(3)飲料中の酪酸の濃度が0.6~1mg/Lである、前記(1)に記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(4)飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下である、前記(1)~(3)のいずれかに記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(5)麦芽使用比率が50~100質量%である、前記(1)~(4)のいずれかに記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(6)アルコール濃度が2体積%超である、前記(1)~(5)のいずれかに記載のビール風味発酵アルコール飲料。
(7)ビール風味発酵アルコール飲料を製造する方法であって、飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上に調整される、方法。
(8)飲料中の糖質の濃度が0.5g/100mL以下に調整される、前記(7)に記載の方法。
(9)麦芽使用比率が50~100質量%である、前記(7)または(8)に記載の方法。
(10)飲料中のアルコール濃度が2体積%超に調整される、前記(7)~(9)のいずれかに記載の方法。
(11)ビール風味発酵アルコール飲料において、後味のキレを増強する方法であって、飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上に調整される、方法。
(12)ビール風味発酵アルコール飲料において、スムースな味の流れを改善する方法であって、飲料中の酪酸の濃度が0.35mg/L以上に調整される、方法。
【0007】
本発明によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、後味のキレを増強することが可能となる。また、本発明によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、スムースな味の流れを改善することも可能である。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、飲料中の酪酸濃度が所定の範囲にあるものである。このようなビール風味発酵飲料は、その製造の際に、酪酸濃度を調整することにより得ることができる。酪酸の濃度調整の具体的手段は特に限定されるものではなく、例えば、酪酸の添加、酪酸を含有する原料の使用量の増減、酪酸を最終製品内に生成する原料の使用量の増減、酵母による発酵によって酪酸に変換される物質の濃度調整等が挙げられる。
【0009】
本発明において「ビール風味発酵アルコール飲料」とは、ビール(麦芽およびホップを原料として用い、ビール酵母による発酵によって得られるアルコール飲料)、またはビールと同様の風味を有する発酵アルコール飲料を意味する。本発明において「発酵アルコール飲料」とは、炭素源、窒素源および水などを原料として酵母により発酵させたアルコール(エタノール)含有飲料を意味する。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、発酵後にアルコール(エタノール)濃度を調整したアルコール飲料であってもよい。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくはホップを原料として用いることによりホップの香気が付与された発酵飲料である。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは発酵麦芽飲料、すなわち、原料として少なくとも麦芽を使用した飲料を意味する。このような発酵麦芽飲料としては、ビール、発泡酒、リキュール(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類される飲料)などが挙げられ、好ましくはビールである。本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは麦芽使用比率50質量%以上100質量%以下、より好ましくは麦芽使用比率50質量%以上95質量%以下の発酵麦芽飲料である。
【0010】
本発明において「後味のキレ」の増強とは、後味に残る雑味感によるキレの悪さを低減して、飲用後にそのような味が残らないようにすることを意味する。また、本発明において「スムースな味の流れ」の改善とは、ビール系飲料の飲用時に感じられる口の中でのとげとげしさによるスムースな味の流れの悪さを低減することを意味する。
【0011】
本発明において、「ppm」という単位は「mg/L」と同義であり、「ppb」という単位は「μg/L」と同義である。
【0012】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料中の酪酸濃度は、例えば、0.35mg/L以上とされ、好ましくは0.40mg/L以上、より好ましくは0.45mg/L以上、さらに好ましくは0.50mg/L以上、さらに好ましくは0.55mg/L、さらに好ましくは0.6mg、/L以上とされる。ビール風味発酵アルコール飲料中の酪酸濃度の上限は、本発明の効果が奏される限り特に限定されるものではないが、例えば2.5mg/Lであり、好ましくは2.0mg/L、より好ましくは1.5mg/L、さらに好ましくは1mg/Lである。本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中の酪酸濃度は、例えば、0.35~2.5mg/Lとすることができ、好ましくは0.35~2mg/L、より好ましくは0.40~2mg/L、さらに好ましく0.45~2mg/L、さらに好ましくは0.45~1.5mg/L、さらに好ましくは0.5~1.5mg/L、さらに好ましくは0.55~1.5mg/L、さらに好ましくは0.55~1mg/L、さらに好ましくは0.6~1mg/Lとされる。酪酸は、原料由来のものであってもよく、また植物原料とは別に添加されたものであってもよく、さらに発酵により生成されたものであってもよい。酪酸の濃度は、例えば、原料の組成および発酵条件などをコントロールすることにより、制御することができる。
【0013】
ビール風味発酵アルコール飲料中の酪酸の定量は、FID検出器付きガスクロマトグラフィー(GC)により行うことができる。このGC分析は、例えば次のようにして行うことができる。まず、飲料中の香気成分を水酸化ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー固相カラムで抽出し、それをGC/FIDに供することによって分析を行うことができる。成分の定量には内部標準法を用いることができ、内部標準物質としてはトランス-2-ヘキサン酸およびカプリル酸メチルを用いることができる。さらに、より正確な濃度測定のためには、既知の濃度を有する幾つかの対照サンプルの測定値に基づいて作成した検量線を用いることが望ましい。GCの分析条件は、以下の表1に従うことができる。
【0014】
【0015】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のアルコール濃度は、特に限定されるものではないが、好ましくは1体積%(v/v%)以上とされ、より好ましくは1体積%(v/v%)超とされ、さらに好ましくは2体積%(v/v%)以上とされ、さらに好ましくは2体積%(v/v%)超とされ、さらに好ましくは3体積%(v/v%)以上とされ、さらに好ましくは3体積%(v/v%)超とされ、さらに好ましくは3.5体積%以上、さらに好ましくは4体積%以上とされる。ビール風味発酵アルコール飲料のアルコール濃度の上限は、本発明の効果が奏される限り特に限定されるものではないが、例えば20体積%、好ましくは10体積%、より好ましくは7体積%である。本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料中のアルコール濃度は、好ましくは2体積%超10体積%以下とされ、より好ましくは3~10体積%以下、さらに好ましくは3~7体積%、さらに好ましくは3~5体積%とされる。ビール風味発酵アルコール飲料中のアルコールの濃度の測定は公知の方法によって行うことができ、具体的には、日本国国税庁が定める「BCOJビール分析法 8.3.6 アルコライザー法」に基づいて行うことができる。
【0016】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料は糖質の含有量が通常よりも低減された飲料とされる。この「通常よりも低減された」とは、そのビール風味発酵アルコール飲料を製造する際に糖質の含有量を低下させるための工夫がなされていることを意味する。このような低糖質のビール風味発酵アルコール飲料における具体的な糖質濃度の数値は特に限定されるものではないが、例えば、1.5g/100mL以下、好ましくは1.5g/100mL未満、より好ましくは1.1g/100mL以下、さらに好ましくは1.0g/100mL以下、さらに好ましくは1.0g/100mL未満、さらに好ましくは0.5g/100mL以下、さらに好ましくは0.5g/100mL未満とすることができる。一つの実施態様において、低糖質ビール風味発酵アルコール飲料中の糖質の濃度は0.4g/mL以下である。
【0017】
糖質濃度の測定は公知の方法によって行うことができ、当該試料の質量から、水分、たんぱく質、脂質、灰分および食物繊維量を除いて算出する方法(食品表示基準について(平成27年3月30日 消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等 参照)に従って行うことができる。
【0018】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、炭酸飲料とすることができる。炭酸ガス圧は好みに応じて適宜調整することができ、例えば、0.05~0.4MPa(20℃におけるガス圧)の範囲で調整することができる。
【0019】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、pHを、例えば、2.0~5.0、好ましくは2.3~4.8、より好ましくは2.9~4.8に調整することができる。飲料のpHは市販のpHメーター(例えば、HORIBA Scientific 卓上pH計、株式会社堀場アドバンスドテクノ製)を使用して容易に測定することができる。
【0020】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、好ましくは容器詰飲料として提供される。本発明のビール風味発酵アルコール飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル(例えば、PETボトル)、または瓶とされる。
【0021】
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のビール風味発酵アルコール飲料は、飲料中の酪酸の濃度調整以外は、通常のビール風味発酵アルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。通常の製法としては、例えば、少なくとも水および麦芽を含んでなる発酵前液を発酵させる方法、すなわち、麦芽等の醸造原料から調製された麦汁(発酵前液)に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、所望により発酵液を低温にて貯蔵した後、ろ過工程により酵母を除去する方法が挙げられる。
【0022】
本発明のビール風味発酵アルコール飲料の製造過程では、いずれかの工程でホップ(ホップの加工品を含む)を添加することができる。ホップの添加量は、典型的には、発酵工程における発酵前液の容量に対して0.1~5g/Lとなるように調整することができ、好ましくは0.1~2g/L、より好ましくは0.2~1.5g/Lとすることができる。
【0023】
本発明では、麦芽、ホップおよび水以外に、米、とうもろこし、こうりゃん、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)、果実、コリアンダー等の酒税法で定める副原料や、タンパク質分解物、酵母エキス等の窒素源、色素、起泡・泡持ち向上剤、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物を醸造原料として使用することができる。また、未発芽の麦類(例えば、未発芽大麦(エキス化したものを含む)、未発芽小麦(エキス化したものを含む))を醸造原料として使用してもよい。
【0024】
本発明の別の態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、後味のキレを増強する方法が提供され、該方法は、飲料中の酪酸の濃度を上述の数値範囲に調整することを含む。
【0025】
本発明の別の態様によれば、ビール風味発酵アルコール飲料において、スムースな味の流れを改善する方法が提供され、該方法は、飲料中の酪酸の濃度を上述の数値範囲に調整することを含む
【実施例0026】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1:ビール風味発酵アルコール飲料における酪酸濃度と香味との関係
本実施例では、試験醸造したビールをベースとして酪酸濃度を調整した試飲サンプルを調製し、官能評価を行って、ビール風味発酵アルコール飲料における酪酸濃度と香味との関係を調べた。
【0028】
(1)試飲サンプルの調製
以下の手順に従って、ビール風味発酵アルコール飲料の試飲サンプルを調製した。
【0029】
本実施例のビール風味発酵アルコール飲料の製造においては、主原料として大麦麦芽を使用した(麦芽使用比率60%)。糖化に際してはグルコアミラーゼを主体とした酵素製剤を用い、糖化の温度および時間を調整し、濾過することで麦汁を得た。得られた麦汁にホップと資化性糖を主体として含む液糖とを添加し、100℃で煮沸した。次いで、麦汁を静置して凝固したタンパク質(トリューブ)を分離した後、冷却して発酵前液を得た。得られた発酵前液に下面発酵酵母を添加し、主発酵および後発酵を行い、発酵液を得た。得られた発酵液を低温で貯蔵して発酵を停止させ、濾過することにより、清澄なビール風味発酵アルコール飲料を得た。
【0030】
得られたビール風味発酵アルコール飲料を希釈し、そこに不足した糖質(ショ糖)と酒類原料用アルコール(第一アルコール社、アルコール濃度95%)を添加することにより、糖質0.4g/100mL、アルコール(エタノール)濃度3および5%(v/v)のベース飲料を調製した。このベース飲料に、酪酸の濃度が下記表の値となるように酪酸を添加して、試飲サンプルを調整した。なお、実施例における各飲料中のアルコール(エタノール)濃度、糖質および酪酸の濃度は、それぞれ以下の方法に従って測定した。
【0031】
実施例における各飲料中のアルコールの濃度は、日本国国税庁が定める「BCOJビール分析法 8.3.6 アルコライザー法」に従って測定した。
【0032】
実施例における各飲料中の糖質の濃度は、日本国消費者庁が定める「食品表示基準について(平成27年3月30日 消食表第139号)別添 栄養成分等の分析方法等」に基づいて、測定対象となる飲料の質量から、水分、たんぱく質、脂質、灰分、および食物繊維のそれぞれの質量を除くことにより測定した。
【0033】
実施例における各飲料中の酪酸の定量は、FID検出器付きガスクロマトグラフィー(GC)により行った。具体的には、飲料中の香気成分を水酸化ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー固相カラムで抽出し、得られた抽出液をGC/FIDに供した。また、内部標準物質として、トランス-2-ヘキサン酸およびカプリル酸メチルを用いた。GCの分析条件は、以下の表2に示す通りとした。
【0034】
【0035】
(2)試飲サンプルの官能評価
上記(1)で得られた試飲サンプルについて、訓練された6名のパネルによる官能評価を行った。官能評価の評価項目は、「後味のキレ」および「スムースな味の流れ」の2項目とした。以下にそれぞれの具体的な評価基準を示す。
a.後味のキレ:1(弱く感じられる)~3(中程度に感じられる)~5(強く感じられる)の5段階のスコアで評価。
b.スムースな味の流れ:1(良くない)~3(中程度に良い)~5(とても良い)の5段階のスコアで評価。
【0036】
下記表3に、試飲サンプル中の酪酸濃度、アルコール(エタノール)濃度および官能評価結果をまとめて示す。官能評価結果のスコアは、平均値および標準偏差として示す。
【0037】
【0038】
官能評価においては、試験区3(エタノール濃度5v/v%、酪酸濃度0.3mg/L)のスコアを2.0に固定した。
【0039】
表3に示される結果から、エタノール濃度が3v/v%であるか5v/v%であるかにかかわらず、酪酸の濃度が0.35mg/L以上である場合に、後味のキレが顕著に増強されることが明らかであり、酪酸濃度が0.35~2mg/L、特に0.6~1mg/Lである場合に、後味のキレの増強効果がさらに顕著に奏されることが明らかとなった。さらに、スムースな味の流れの改善効果についても同様の傾向が見られた。