(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169005
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】平板状ワークの移送方法
(51)【国際特許分類】
B65H 3/08 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
B65H3/08 310A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080444
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岡 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】前田 実
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA09
3F343FB17
3F343FC17
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD04
3F343HA17
3F343JB02
3F343KB04
3F343LA14
3F343LB03
(57)【要約】
【課題】 少なくとも2つのフィルムの間に粘着剤層が設けられている平板状ワークを初期場所から載置場所に移送する際に、載置場所に前記粘着剤層の粘着剤が付着しないようにする。
【解決手段】 初期場所Aに存在する可撓性を有する平板状ワーク1を保持装置3にて保持し、前記平板状ワーク1を載置場所Bの上方に移動させ、前記載置場所Bに載置する平板状ワーク1の移送方法であって、前記平板状ワーク1が、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、側面視で前記平板状ワーク1の第1方向中間部が第1方向両端部よりも下方に位置するように前記平板状ワーク1を湾曲させた状態で、前記平板状ワーク1を前記載置場所Bに載置する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、
前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、
側面視で前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも下方に位置するように前記平板状ワークを湾曲させた状態で、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する、平板状ワークの移送方法。
【請求項2】
初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、
前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、
前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも先に前記載置場所に接するようにして、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する、平板状ワークの移送方法。
【請求項3】
前記保持装置が、前記平板状ワークを略水平にした状態で前記初期場所から持ち上げ、その状態で前記載置場所の上方に移動させる、請求項1または2に記載の平板状ワークの移送方法。
【請求項4】
前記保持装置が、前記平板状ワークの第1方向両端部及び中間部に吸着脱可能な端吸着部及び中吸着部を有し、
前記端吸着部を前記平板状ワークの第1方向両端部の表面にそれぞれ吸着させ且つ前記中吸着部を前記平板状ワークの第1方向中間部の表面に吸着させる工程、
前記吸着した平板状ワークを前記初期場所から載置場所の上方に移動させる工程、
前記中吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除した後、前記端吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除することにより、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する工程、を有する、請求項1または2に記載の平板状ワークの移送方法。
【請求項5】
前記平板状ワークの周囲において、前記第1フィルム及び第2フィルムの各端面と前記粘着剤層の端面が平行に延在している、請求項1または2に記載の平板状ワークの移送方法。
【請求項6】
前記平板状ワークの第1フィルムが、偏光フィルムを含む、請求項1または2に記載の平板状ワークの移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を含む平板状ワークをある場所から他の場所に移し替える平板状ワークの移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の平面視形状に形成されたフィルムが様々な用途に使用されている。本明細書において、所定の平面視形状に形成されたフィルムを「平板状ワーク」という。
例えば、光学フィルムは、画像表示装置の画面の形状に合わせて、所定の平面視形状に形成された後、画像表示装置に組み込まれる。このような平板状ワーク(所定形状の光学フィルム)は、通常、光学フィルム原反(長尺帯状の光学フィルム或いは大判の光学フィルム)を切断刃で切り抜くことによって得られる。この平板状ワーク(所定形状の光学フィルム)は、次工程へと移送され、任意の適切な処理が施された後、製品として出荷される。
前記平板状ワークを移送する装置として、いわゆるピックアンドプレイス装置が知られている。ピックアンドプレイス装置は、ある場所(以下、初期場所という)に存在する対象物を保持して持ち上げ、他の場所(以下、載置場所という)の上方にまで移送し、その対象物を載置場所に降ろして載置する、という一連の動作を行う装置である。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸着用穴空き帯7の幅方向両側に、スプリング引上げ装置5によって上下動する吸着皿12が配置されているフィルム分離装置2が開示されている(ただし、特許文献1に付された符号を援用)。このフィルム分離装置2もピックアンドプレイス装置の一種であり、次のように動作して、初期場所である積み重ねた山から1枚ずつ平板状ワーク(フィルム)を取り出し、載置場所に移送する。すなわち、スプリング引上げ装置5によって吸着皿12を下降させ、吸着皿12にて最上段の平板状ワーク(フィルム)を吸着し、スプリング引上げ装置5によって吸着皿12を上昇させて前記平板状ワークを持ち上げ、穴開き帯7にて平板状ワークを吸着させると同時に吸着皿12の吸着を解除し、穴開き帯7を駆動させて平板状ワークを載置場所に移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
ところで、平板状ワークが、粘着剤層を含む積層体からなる場合、その平板状ワークを初期場所から載置場所に連続的に移送していくと、載置場所に粘着剤が付着するおそれがあることが判ってきた。
例えば、初期場所から移送した平板状ワークを、先に移送した平板状ワークの表面に積み上げる場合がある。この場合、移送した平板状ワークの粘着剤が、先の平板状ワークの表面に付着し、上下に重なる平板状ワークがブロッキングを起こすおそれがある。また、例えば、初期場所から移送した平板状ワークを、コンベアベルトの表面に載置する場合がある。この場合、初期場所から移送した平板状ワークの粘着剤が、コンベアベルトの表面に付着し、そのベルトが粘着剤で汚染されるおそれがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、少なくとも2つのフィルムの間に粘着剤層が設けられている平板状ワークを初期場所から載置場所に移送する際に、載置場所に前記粘着剤層の粘着剤が付着しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、載置場所に粘着剤が付着する原因について鋭意研究した。なお、載置場所は、上記例示では、先に移送した平板状ワークの表面やコンベアベルトの表面に相当する。
詳しくは、平板状ワークを載置場所に移送した際、平板状ワークが少し傾斜して載置場所の表面に載る、或いは、平板状ワークが載置場所の表面に載った際の振動により、前記移送される平板状ワークの縁が載置場所に接触することがある。平板状ワークの縁には粘着剤層の端面が位置しているため、その粘着剤層の端面において露出する粘着剤が載置場所に少し付着することが判ってきた。特に、特許文献1のように、平板状ワークの中央部を吸着して移送した場合には、載置場所上で平板状ワークの両端部が下方に垂れ下がり、その状態で平板状ワークの保持を解除すると、粘着剤層の端面が載置場所に接触し易くなる。
本発明者らは、このような知見に基づき、本発明を完成した。
【0008】
本発明の第1の方法は、初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、側面視で前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも下方に位置するように前記平板状ワークを湾曲させた状態で、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する。
【0009】
本発明の第2の方法は、初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも先に前記載置場所に接するようにして、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する。
【0010】
本発明の好ましい移送方法は、前記保持装置が、前記平板状ワークを略水平にした状態で前記初期場所から持ち上げ、その状態で前記載置場所の上方に移動させる。
本発明の好ましい移送方法は、前記保持装置が、前記平板状ワークの第1方向両端部及び中間部に吸着脱可能な端吸着部及び中吸着部を有し、前記端吸着部を前記平板状ワークの第1方向両端部の表面にそれぞれ吸着させ且つ前記中吸着部を前記平板状ワークの第1方向中間部の表面に吸着させる工程、前記吸着した平板状ワークを前記初期場所から載置場所の上方に移動させる工程、前記中吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除した後、前記端吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除することにより、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する工程、を有する。
本発明の好ましい移送方法は、前記平板状ワークの周囲において、前記第1フィルム及び第2フィルムの各端面と前記粘着剤層の端面が平行に延在している。
本発明の好ましい移送方法は、前記平板状ワークの第1フィルムが、偏光フィルムを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移送方法によれば、平板状ワークを載置場所に載置する際に、載置場所に粘着剤が付着し難く、載置場所が粘着剤で汚染されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】平板状ワークの1つの層構成例を示す側面図。
【
図7】
図6の矢印VII方向から見た保持装置の拡大正面図。
【
図8】平板状ワークに対する吸着部の吸着位置を示す参考平面図。
【
図9】平板状ワークを持ち上げて載置場所の上方に移送する過程を示す側面図。
【
図10】平板状ワークを載置場所に載置する過程を示す側面図。
【
図11】変形例の吸着部の平板状ワークに対する吸着位置を示す参考平面図。
【
図12】変形例の吸着部を下斜めから見た参考斜視図。
【
図13】変形例の初期場所から載置場所へ平板状ワークを移送する過程を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「平面視」は、対象物の面に対して鉛直方向から見ることをいい、「平面視形状」及び「平面図」は、対象物の面に対して鉛直方向から見たときの対象物の形状及び図面をいう。また、本明細書において、「側面視」は、第2方向一方側から反対側に向かって見ることをいい、「側面視形状」及び「側面図」は、第2方向一方側から反対側に向かって見たときの対象物の形状及び図面をいう。第1方向と第2方向は、平板状ワークの面内において、互いに直交する方向をいう。
また、本明細書において、「略」という表現は、本発明の技術分野で許容される範囲を含むことを意味する。さらに、本明細書において、「下限値以上上限値以下」で表される数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択できるものとする。
【0014】
[平板状ワーク]
図1は、平板状ワーク1の平面図を示す。
平板状ワーク1は、可撓性を有する。可撓性は、ワークの自重によって曲がる又は少しの荷重を受けて曲がることをいう。
平板状ワーク1は、製品規格などの何らかの意図で、所定の平面視形状に形成されたフィルムである。平板状ワーク1の平面視形状は、最終的な製品の形状であってもよく、製品を作製する途中の中間体の形状であってもよい。
平板状ワーク1の具体的な形状は、特に限定されない。例えば、平板状ワーク1の平面視形状は、略矩形状(略矩形状は、略長方形状又は略正方形状)、略三角形状、略六角形状などの略多角形状、略円形状、略楕円形状、これらの形状が組み合わされた異形状などが挙げられる。前記略矩形状、略三角形状及び略多角形状の「略」は、例えば、角部が面取りされている形状、辺の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、辺が若干湾曲している形状などが含まれる。また、前記略円形状及び略楕円形状の「略」は、例えば、周の一部が僅かに膨らむ又は窪んでいる形状、周の一部が若干直線又は斜線とされた形状などが含まれる。
図1では、平面視略長方形状の平板状ワーク1を図示している。なお、
図1では、長方形の4つの角部が面取りされている略長方形状の平板状ワーク1を図示しているが、角部が直角とされていてもよい。
また、
図1では、略長方形状の平板状ワーク1を長辺に沿った方向を第1方向としているが、短辺に沿った方向を第1方向としてもよく、或いは、長辺に対して斜めの方向を第1方向としてもよい。第1方向(及び第1方向に対して直交する方向である第2方向)は、平板状ワーク1の面内のいずれの方向であってもよい。
【0015】
平板状ワーク1から得られる製品の用途は、特に限定されない。平板状ワーク1から得られる製品は、例えば、画像表示装置の画面やサングラスのレンズなどに組み込む光学的部品又は機械的部品;タックラベルなどのシール材;ラッピングフィルムなどの包装材;電磁波シールドなどの電気的部品;などが挙げられる。特に、高い清潔性が要求されることから、光学的部品となる平板状ワーク1の移送に本発明の方法を適用することが好ましい。
【0016】
層構成の観点では、平板状ワーク1は、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有する。平板状ワーク1は、第1フィルム/粘着剤層/第2フィルムの積層構造を有することを条件として、さらに、別のフィルムや層を有していてもよい。
【0017】
以下、光学的部品用途の平板状ワーク1の層構成例のいくつかを例示的に説明する。
図2は、平板状ワーク1の1つの層構成例を示す側面図(第2方向一方側から平板状ワーク1を見た図)であり、
図3は、平板状ワーク1の他の層構成例を示す側面図である。なお、第1方向一方側から平板状ワーク1を見た場合も(横幅は異なるけれども)層構成や端面は同じであるので、その図は省略する。
図2に示す平板状ワーク1は、表面側から順に、第1フィルム11と、粘着剤層15と、第2フィルム12と、を有する。平板状ワーク1の周囲において、前記第1フィルム11及び第2フィルム12の各端面11a,12aと前記粘着剤層15の端面15aは平行に延在している。換言すると、第1フィルム11の端面11aと粘着剤層15の端面15aと第2フィルム12の端面12aは、連続して1つの平面を成している。従って、平板状ワーク1の端面は、第1フィルム11、粘着剤層15及び第2フィルム12の各端面11a,15a,12aの集合から構成されている。なお、本明細書において、端面は、厚み方向に沿った面であり、表面及び裏面は、厚み方向と直交する面である。
図3に示す平板状ワーク1は、表面側から順に、第3フィルム13と、第1の粘着剤層151と、第1フィルム11と、第2の粘着剤層152と、第2フィルム12と、を有する。平板状ワーク1の周囲において、前記第1乃至第3フィルム11,12,13の各端面11a,12a,13aと前記第1及び第2の粘着剤層151,152の各端面151a,152aは平行に延在している。換言すると、各フィルム11,12,13の端面11a,12a,13aと各粘着剤層151,152の各端面151a,152aは、連続して1つの平面を成している。
その他、図示しないが、平板状ワーク1は、さらに他のフィルム及び/又は粘着剤層を有していてもよい。前記他のフィルム及び/又は粘着剤層を有する平板状ワーク1についても、各フィルムの端面と各粘着剤層の端面は、連続して1つの平面を成している。
【0018】
光学的部品用途の平板状ワーク1は、光学フィルムを含んでいる。この場合、第1フィルム11などの全てのフィルムが光学フィルムであってもよく、或いは、複数のフィルムから選ばれる少なくとも1つのフィルムが光学フィルムで且つ少なくとも1つのフィルムが光学フィルム以外のフィルムであってもよい。
図2に示す層構成では、例えば、第1フィルム11が、光学フィルムであり、第2フィルム12がはく離ライナー(光学フィルム以外のフィルム)であり、
図3に示す層構成では、例えば、第1フィルム11及び第3フィルム13が、光学フィルムであり、第2フィルム12がはく離ライナーである。はく離ライナーは、粘着剤層15,152に対してはく離可能に接着されている。従って、はく離ライナーと粘着剤層15,152は、それらの界面においてはく離できるが、光学フィルムと粘着剤層15,152は、はく離困難である。使用時には、はく離ライナーは、引き剥がして除去される。
【0019】
光学フィルムとしては、光学機能フィルム、保護フィルムなどが挙げられる。光学フィルムは、1層構造でもよく、或いは、2層以上の複層構造であってもよい。光学フィルムが2層以上の複層構造である場合、同一の機能を有するフィルムを2層以上積層した積層体でもよく、異なる機能を有するフィルムを2層以上積層した積層体でもよい。前記異なる機能を有するフィルムの積層体としては、例えば、偏光フィルムと位相差フィルムの積層体、偏光フィルムと保護フィルムの積層体などが挙げられる。
前記光学機能フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、光反射フィルムなどが挙げられる。偏光フィルムは、特定の1つの方向に振動する光(偏光)を透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を有するフィルムである。位相差フィルムは、光学異方性を示すフィルムであり、代表的には、例えば、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂などの延伸フィルムなどが挙げられる。また、保護フィルムは、前記光学機能フィルムを保護する目的で用いられるフィルムである。保護フィルムとしては、典型的には、無色透明なフィルムが用いられる。
1つの実施例において、
図2に示す第1フィルム11は、例えば、光学機能フィルムである。もう1つの実施例において、
図3に示す第1フィルム11は、例えば、光学機能フィルムで、第3フィルム13は、例えば、保護フィルムである。この場合、第3フィルム13が粘着剤層151を伴って第1フィルム11から剥離できるようにしてもよく、或いは、第3フィルム13が第1フィルム11から剥離困難な状態で粘着剤層151を介して接着されていてもよい。
光学フィルムの厚みは、特に限定されず、例えば、5μm以上300μm以下である。
【0020】
はく離ライナーは、前記粘着剤層に対してはく離性に優れた離型面を有する。
はく離ライナーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム;紙;織布、不織布、網布などの多孔質フィルム;発泡樹脂フィルム;などが挙げられる。表面平滑性に優れていることから、はく離ライナーは、樹脂フィルムであることが好ましい。前記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
前記はく離ライナーの厚みは、特に限定されず、例えば、5μm以上200μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0021】
粘着剤層は、常温で粘着性を有し且つはく離後も粘着性が持続して再貼付可能なものである。粘着剤層は、公知の粘着剤によって構成される。前記粘着剤としては、無色透明なアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。
特に、比較的軟らかい粘着剤によって形成された粘着剤層を有する平板状ワークに、本発明の方法を適用することが効果的である。
粘着剤の硬さは、例えば、貯蔵弾性率G’で指標することができる。前記軟らかい粘着剤としては、例えば、25℃における貯蔵弾性率G’が、0.001MPa以上1MPa以下であり、好ましくは、0.01MPa以上1MPa以下である。前記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定によって測定できる。具体的には、粘着剤層15を、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製の装置名「ARES」)を用いて、周波数1Hzの条件で、-20以上100℃以下の温度範囲、昇温速度5℃/分で測定して、25℃における貯蔵弾性率G’を算出できる。
前記粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは1μm以上30μm以下である。
【0022】
[平板状ワークの保持装置及び移送方法]
本発明の平板状ワークの移送方法は、初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する。平板状ワークを載置場所に載せる際、平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも先に前記載置場所に接するようにして、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する。或いは、側面視で平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも下方に位置するように前記平板状ワークを湾曲させた状態で、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する。
以下、光学的部品用途の平板状ワークを例に採って説明する。
【0023】
<平板状ワークの保持装置>
図4及び
図5は、原反4から平板状ワーク1を作製するワーク形成装置2と平板状ワーク1を保持して移送する保持装置3を示す概略図である。
図4及び
図5の細矢印は、原反4を搬送すること及び切断残余41を回収することを表している。
平板状ワーク1を製造するワーク形成装置2は、原反4を上流側から下流側へ搬送する第1搬送部21と、原反4を切断して平板状ワーク1を形作る切断部23と、平板状ワーク1を下流側へ搬送する第2搬送部22と、を有する。平板状ワーク1を移送する保持装置3は、平板状ワーク1を保持する保持装置を有する。ワーク形成装置2によって形成された平板状ワーク1は、保持装置3によって次工程に移送される。
【0024】
ワーク形成装置2は、従来公知の装置を用いることができる。ワーク形成装置2の動作を簡単に説明する。
例えば、原反4を第1搬送部21にて切断部23に搬送する。原反4は、平面視で長尺帯状でもよく、或いは、平面視で大判の矩形状であってもよい。原反4を切断したものが平板状ワーク1であるため、原反4の層構成は、上述の平板状ワーク1の層構成と同じである。原反4を細矢印に示すように下流側に送り、切断部23で原反4を切断することにより、面内方向に並んだ複数の平板状ワーク1を得ることができる。切断部23は、トムソン刃などを有するプレス式でもよく、或いは、ロータリーカッターのような回転式でもよい。なお、原反4を切断した後に生じる切断残余41(例えば、原反4の両端部)を細矢印に示すように回収する。得られた平板状ワーク1は、第2搬送部22によって下流側に順次搬送され、任意の適切な場所(初期場所)に載置される。
【0025】
図示例では、前記得られた平板状ワーク1は、第2搬送部22の下流側に設けられたコンベアベルト24上に載せられている。このコンベアベルト24は、制御装置(図示せず)により、搬送と停止を繰り返すようになっている。例えば、コンベアベルト24上に並んだ平板状ワーク1のうち、ベルト24の最下流位置に存在する平板状ワーク1が、保持装置3によって載置場所Bに移送されると、コンベアベルト24が動き、次の平板状ワーク1を前記最下流位置に移動させた後、コンベアベルト24が停止する。図示例の場合には、コンベアベルト24上の最下流位置が初期場所Aに相当する。
なお、保持装置3がコンベアベルト24上に並んだ平板状ワーク1の位置まで移動して平板状ワーク1を保持して移送するように変更してもよい。その場合には、前記コンベアベルト24の動作(次の平板状ワーク1を最下流位置に移動させる動作)を行なわなくてもよく、又は、それを行ってもよい。この場合、コンベアベルト24上において各平板状ワーク1の並んでいる場所が初期場所Aに相当する。
【0026】
保持装置3は、前記初期場所Aに存在する平板状ワーク1を載置場所Bに移送する。
保持装置3は、平板状ワーク1の第1方向両端部及び中間部を必要時に保持し且つ必要時にその保持を解除できる保持部と、前記保持部を上下方向及び水平方向に移動させる移動手段と、を有する。なお、前記移動手段は、保持部を斜め方向(斜め方向は、上下方向及び水平方向の合成である)に移動させるものでもよく、上下方向、水平方向及び斜め方向に移動させるものでもよい。
保持部は、平板状ワーク1の第1方向両端部及び中間部の表面を必要時に保持し且つ必要時に離すことができる機能を有する。このような機能を有していることを条件として、保持部の構造は特に限定されない。平板状ワーク1の表面に対する保持及び保持の解除を確実に行なうことができ、さらに、平板状ワーク1の表面に保持跡などが付かないことから、保持部は、平板状ワーク1の表面に吸着する機能を有することが好ましい。平板状ワーク1に対する吸着方式は、特に限定されないが、平板状ワーク1の保持及び保持の解除を簡易に行えることから、エアー吸引方式であることが好ましい。
【0027】
図6は、
図5の拡大図であって、初期場所A及び載置場所Bを含む保持装置3の拡大側面図であり、
図7は、その保持装置3を載置場所側(
図6のVII方向)から見た拡大正面図である。
図7において、同じ構造が連続する中間部分を省略している。
図4乃至
図7を参照して、保持装置3は、平板状ワーク1の表面に吸着脱可能な吸着機能を有する吸着部5を有する。
平板状ワーク1に対する吸着位置との関係では、前記吸着部5は、平板状ワーク1の第1方向両端部に吸着脱可能な吸着部51と、平板状ワーク1の第1方向中間部に吸着脱可能な吸着部52と、を有する。平板状ワーク1の端部に吸着脱可能な吸着部5を「端吸着部51」といい、中間部に吸着脱可能な吸着部5を「中吸着部52」といい、それらを総称して「吸着部5」という。
具体的には、保持装置3は、本体部31と、前記本体部31から垂下された軸部32と、前記軸部32の下端に設けられた前記吸着部5と、を有する。本体部31は、第1方向に移動可能とされている。例えば、保持装置3は、第1方向に延びるレール部33を有する。本体部31には、前記レール上を転動する車輪34が設けられており、本体部31は、車輪34を介して前記レール部33に沿って第1方向に往復動することができる。
【0028】
吸着部5は、1つの平板状ワーク1に対して間隔を開けて複数設けられている。各吸着部5の先端5aは、平面視略円形状に形成されている。なお、吸着部5の先端5aは、平面視略円形状に限られず、略四角形状、略三角形状などでもよい。
吸着部5は、金属や硬質合成樹脂などの比較的硬い材質で形成されていてもよいが、平板状ワーク1の傷付き防止の観点から、比較的柔らかい材質で形成されていることが好ましい。例えば、吸着部5は、柔軟な合成樹脂、ゴム、エラストマーなどから形成される。
各吸着部5は、上下動可能に本体部31に取り付けられている。図示例では、軸部32が本体部31に対して上下方向に移動可能とされており、前記軸部32の下端に設けられた吸着部5は、軸部32の駆動によって上下動する。軸部32を上下動させる手段としては、ラックアンドピニオン、各種カム機構、エアーシリンダ、油圧シリンダーなどが挙げられる。
なお、前記上下動させる手段を本体部31に具備させてもよく、その場合、各軸部32及び吸着部5を本体部31に固定的に取り付けてもよい。
【0029】
前記軸部32の内部には、吸引装置(図示せず)に繋がるチューブ35が挿通されている。吸着部5は、中空の筒状に形成されており、前記チューブ35の端部が前記吸着部5の中空部分に繋がっている。前記吸引装置を作動させることにより、前記チューブ35を介して吸着部5の先端5aからエアーが吸引される。エアーの吸引により、吸着部5の先端5aが平板状ワーク1の表面を吸着し、平板状ワーク1を保持する。吸引装置の吸引を停止することにより、吸着部5による平板状ワーク1の吸着保持が解除される。なお、図示例では、軸部32の内部に挿通されたチューブ35は、途中で軸部32の外に出されているが、途中で軸部32の外へ出さなくてもよい。
エアー吸引方式の吸着部5の吸引力(吸引による吸着力)は、特に限定されないが、余りに小さいと、平板状ワーク1が外れるおそれがあり、余りに大きいと、平板状ワーク1に保持跡(吸着跡)が付くおそれがある。かかる観点から、前記吸着部5の吸引力は、例えば、10kPa以上90kPa以下である。
【0030】
図8は、平板状ワーク1と各吸着部5の位置の関係を表した平面図であり、吸着部5の先端5aを円形で表している。
図8において、2つの端部及び中間部を判りやすくするため、便宜上、平板状ワーク1の第1方向一端部に右斜線を付し、平板状ワーク1の第1方向反対側端部に、左斜線を付し、平板状ワーク1の第1方向中間部にドットを付している(
図11も同様)。
【0031】
図8に示すように、端吸着部51は、平板状ワーク1の第1方向一端部及び反対側端部(両端部)に対応して配置され、中吸着部52は、平板状ワーク1の第1方向中間部に対応して配置されている。平板状ワーク1の第1方向中間部は、第1方向一端部と反対側端部の間を意味する。従って、平板状ワーク1の第1方向中間部は、平板状ワーク1の第1方向長さの半分の位置を含んでいてもよく、その位置を含んでいなくてもよい。以下、第1方向一端部を「一端部」、第1方向反対側端部を「反対側端部」、前記一端部及び反対側端部を合わせて「両端部」、第1方向中間部を「中間部」という場合がある。
【0032】
端吸着部51は、平板状ワーク1の一端部及び反対側端部の一箇所に対応してそれぞれ配置されていてもよいが、平板状ワーク1を略水平状態にして初期場所Aから載置場所Bの上方へ移送するために、第2方向に間隔を開けて複数配置されていることが好ましい。図示例では、一端部に対応する端吸着部51は、第2方向両端部寄りに配置され、反対側端部に対応する端吸着部51は、第2方向両端部寄りに配置される。なお、一端部及び反対側端部に対応する端吸着部51は、前記第2方向両端部寄りに配置されているだけでなく、第2方向中間部に配置されていてもよい(図示せず)。
【0033】
中吸着部52は、平板状ワーク1の中間部の一箇所に対応して配置されていてもよいが、平板状ワーク1を略水平状態にして初期場所Aから載置場所Bの上方へ移送するために、第2方向に間隔を開けて複数配置されていることが好ましい。図示例では、中間部に対応する中吸着部52は、第2方向両端部寄りに配置され、さらに、第2方向中間部にも配置されている。
図7及び
図8に、第2方向中間部に配置されている中吸着部52に、符号Xを付加している。なお、中間部に対応する中吸着部52は、第2方向両端部寄りに配置されているだけでもよい。
側面視で端吸着部51と中吸着部52の間隔(端吸着部51と中吸着部52の第1方向における間隔)は、平板状ワーク1を略水平状態にして移送できるような間隔であれば特に限定されず、平板状ワーク1の第1方向長さに応じて適宜設定できる。
上記保持装置3は、軸部32を通じて各吸着部5が上下方向に移動し、また、その吸着部5が軸部32を介して取り付けられた本体部31が、レール部33に沿って第1方向に移動する。なお、上記では、コンベアベルト24上に、第2方向に5列の平板状ワーク1が並んでおり、各列の平板状ワーク1に対応して、本体部31及び吸着部5が配置されているが、各列に対応して配置する場合に限定されるわけではない。
【0034】
<平板状ワークの移送方法>
初期場所Aから載置場所Bへの平板状ワーク1の移送は、端吸着部51を平板状ワーク1の一端部及び反対側端部の表面にそれぞれ吸着させ且つ中吸着部52を平板状ワーク1の中間部の表面に吸着させる工程、前記吸着した平板状ワーク1を初期場所Aから載置場所Bの上方に移動させる工程、前記中吸着部52の平板状ワーク1に対する吸着を解除した後、前記端吸着部51の平板状ワーク1に対する吸着を解除することにより、前記平板状ワーク1を載置場所Bに載置する工程、を有する。
【0035】
具体的には、
図6に示すように、初期場所Aに存在する平板状ワーク1を保持装置3で保持する。保持した平板状ワーク1を載置場所Bの上方に移送する。図示例の初期場所Aは、上述のように、コンベアベルト24上である。また、図示例の載置場所Bは、集積ボックス7に収容される平板状ワーク1の集積物の表面である。集積ボックス7は、コンテナ71と、コンテナ71内に配置された平板状ワーク1を載せる台座72と、を有する。保持装置3にて移送した平板状ワーク1を台座72上に順次積み上げていくことにより、複数の平板状ワーク1からなる集積物が集積ボックス7内に生じる。このように移送した平板状ワーク1を積み上げていく場合には、台座72上に先に載せられた平板状ワーク1の表面が載置場所Bに相当する。なお、集積ボックス7内に所定量の平板状ワーク1が集積されると、次工程に送られ、平板状ワーク1に任意の適切な処理が施される。
なお、必要に応じて、集積ボックス7には、コンテナ71と台座72の間に昇降部73が設けられていてもよい。昇降部73は、集積物の最上段の平板状ワーク1の表面の位置を一定の高さに保持するために設けられる。つまり、平板状ワーク1を積み上げていくと、載置場所Bの高さ、すなわち先に移送された平板状ワーク1の表面の位置が徐々に上昇するところ、昇降部73はこの高さを一定にする。例えば、昇降部73は、集積物の最上段の平板状ワーク1の表面の位置を検知するセンサー(図示せず)を有し、前記センサーの情報に従い、集積物の最上段の平板状ワーク1の表面が基準面(基準面は、例えば、コンテナ71の底面や床面などの不動の面)から一定の高さとなるように、台座72を含む集積物を昇降させる。
【0036】
図6の二点鎖線で示すように、保持装置3の吸着部5が下降し、吸着部5にて平板状ワーク1の表面を吸着保持する。各吸着部5は同期して下降してもよく(同時に下降)、時間差を有して下降してもよいが、通常、各吸着部5は同期して下降する。
下降した吸着部5の先端5aが初期場所Aに存在する平板状ワーク1に接することにより、各端吸着部51が平板状ワーク1の一端部及び反対側端部に吸着し且つ各中吸着部52が平板状ワーク1の中間部に吸着する。
図9の二点鎖線で示すように、各軸部32(各吸着部5)が同期して上昇することにより、平板状ワーク1を略水平状態にして初期場所Aから平板状ワーク1を持ち上げることができる。略水平状態は、平板状ワーク1の表面が略水平という意味である。
保持装置3が、平板状ワーク1を略水平状態(側面視直線状にした状態)で所定高さまで持ち上げた後、
図9に示すように、レール部33に沿って本体部31が移動し、平板状ワーク1を載置場所Bの上方にまで移動させる。このように平板状ワーク1を略水平に保った状態で載置場所Bの上方に移動させるので、平板状ワーク1に僅かな変形などが生じない。
【0037】
次に、載置場所Bの上方に移送した平板状ワーク1に対する中吸着部52の吸着を解除する。中吸着部52の吸着を解除し且つ端吸着部51を吸着させたままにすると、
図10に示すように、可撓性を有する平板状ワーク1は、その自重によって中間部が垂れ下がる。よって、側面視で平板状ワーク1の中間部が両端部よりも下方に位置するように、平板状ワーク1が僅かに湾曲する。以下、中間部が両端部よりも下方に位置するように平板状ワーク1が湾曲した状態を「下向き凸の湾曲状態」という場合がある。下向き凸の湾曲状態の平板状ワーク1に対する端吸着部51の吸着を解除することにより、平板状ワーク1の中間部が両端部よりも先に載置場所Bに接するようになる。このため、移送される平板状ワーク1の縁が載置場所Bの表面(図示例では、集積物の最上段の平板状ワーク1の表面)に接触し難くなる。
【0038】
端吸着部51の吸着を解除する際の平板状ワーク1の高さ位置は、特に限定されないが、余りに載置場所Bから離れすぎていると、下向き凸の湾曲状態の平板状ワーク1が落下中に側面視直線状又は上向き凸になるおそれあり、余りに載置場所Bから近すぎると、吸着部5と載置場所Bの間に平板状ワーク1が挟まれて平板状ワーク1に僅かな押圧力が加わり、そのワーク1の粘着剤が粘着剤層の端面から膨らみ出るおそれある。
かかる観点から、載置場所Bに対する平板状ワーク1の裏面の高さHが、零を超え500mm以下のときに前記端吸着部51の吸着を解除することが好ましく、さらに、零を超え300mm以下のときに前記端吸着部51の吸着を解除することがより好ましい。前記載置場所Bに対する平板状ワーク1の裏面の高さHは、
図10に示すように、載置場所Bと平板状ワーク1の一端部の裏面との間の長さをいう。
【0039】
なお、前記高さHの位置で端吸着部51の吸着を解除する際に、下向き凸になった平板状ワーク1の中間部が載置場所Bに接している場合もあれば、接していない場合もあるが、いずれの場合でも、端吸着部51の吸着を解除することにより、平板状ワーク1の中間部が両端部よりも先に載置場所Bに接するようになる。
また、初期場所Aから載置場所Bの上方へ平板状ワーク1を移送したときに、その平板状ワーク1が前記高さHに位置している場合、中吸着部52の吸着を解除した後、端吸着部51の吸着を解除する。
一方、初期場所Aから載置場所Bの上方へ平板状ワーク1を移送したときに、その平板状ワーク1が前記高さHよりも上方に位置している場合には、吸着部5と共に平板状ワーク1を前記高さHにまで下降させることが好ましい。このように載置場所Bの上方にある平板状ワーク1を下降させる場合、中吸着部52の吸着を解除し且つ端吸着部51を吸着させたままで(つまり平板状ワーク1を下向き凸の湾曲状態にして)平板状ワーク1を下降させてもよく、或いは、中吸着部52及び端吸着部51を吸着させたままで(つまり平板状ワーク1を略水平状態にして)平板状ワーク1を下降させてもよい。後者の場合、平板状ワーク1を略水平状態で前記高さHまで下降させた後、中吸着部52の吸着を解除することにより、その高さ位置で平板状ワーク1が下向き凸の湾曲状態となる。
【0040】
このように平板状ワーク1を下向き凸の湾曲状態で載置場所Bに載せることにより、平板状ワーク1の中間部が両端部よりも先に載置場所Bに接し、移送される平板状ワーク1の粘着剤が載置場所B(例えば先に移送されている平板状ワーク1の表面)に付着することを防止できる。これを順次繰り返すことにより、集積ボックス7内に複数の平板状ワーク1を積み上げていくことができる。
特に、比較的軟らかい粘着剤からなる粘着剤層は、その端面において粘着剤が膨出し易く、従来の移送方法では、平板状ワーク1に起因する粘着剤が載置場所Bに付着し易い傾向にある。この点、本発明の移送方法によれば、比較的軟らかい粘着剤層を有する平板状ワーク1を移送する場合でも、載置場所Bが粘着剤で汚染されることを防止できる。
【0041】
[変形例]
上記実施形態では、端吸着部51及び中吸着部52はいずれも第2方向に間隔を開けて複数設けられているが、例えば、
図11及び
図12に示すように、端吸着部51及び/又は中吸着部52が、第2方向の略全体に亘って延びる平面視帯状であってもよい。
このような端吸着部51及び中吸着部52によれば、平板状ワーク1の両端部及び中吸着部52を第2方向略全体に亘って吸着保持できる。前記端吸着部51及び中吸着部52は、例えば、柔軟な合成樹脂やゴムなどから形成された吸着面部5bと、前記吸着面部5bの面内に形成され且つエアーを吸引する複数の穴5cと、から構成される。
なお、上記実施形態のような平面視円形状などのスポット的な端吸着部51及び中吸着部52の複数を、それぞれ平板状ワーク1の第2方向に隙間無く連続的に並設しても、
図11及び
図12に示す平面視帯状の端吸着部51及び中吸着部52と同様の効果を奏する。
【0042】
さらに、上記実施形態では、初期場所Aがコンベアベルト24上であり、載置場所Bが複数の平板状ワーク1の集積物上(先に移送されている平板状ワーク1の表面)であったが、例えば、
図13に示すように、初期場所Aが複数の平板状ワーク1の集積物上で、載置場所Bが任意の作業台8上などでもあってもよい。また、初期場所A及び載置場所Bは、コンベアベルト24、集積物、作業台上に限られず、本発明は、任意の場所にある平板状ワーク1を任意の場所に移送する際に適用できる。
【0043】
また、上記実施形態では、初期場所Aに存在する平板状ワーク1を保持装置3で保持し且つ持ち上げた後に載置場所Bの上方に移送したが、初期場所Aに存在する平板状ワーク1を保持装置3で保持し(持ち上げることなく)水平方向に移動させて載置場所Bの上方に移送してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 平板状ワーク
11 第1フィルム
15,151,152 粘着剤層
12 第2フィルム
3 保持装置
5 吸着部
51 端吸着部
52 中吸着部
A 初期場所
B 載置場所
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、
前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、
前記粘着剤層を構成する粘着剤の、25℃における貯蔵弾性率G’が、0.001MPa以上1MPa以下であり、
側面視で前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも下方に位置するように前記平板状ワークを湾曲させた状態で、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する、平板状ワークの移送方法。
【請求項2】
初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、
前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、
前記粘着剤層を構成する粘着剤の、25℃における貯蔵弾性率G’が、0.001MPa以上1MPa以下であり、
前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも先に前記載置場所に接するようにして、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する、平板状ワークの移送方法。
【請求項3】
前記保持装置が、前記平板状ワークを略水平にした状態で前記初期場所から持ち上げ、その状態で前記載置場所の上方に移動させる、請求項1または2に記載の平板状ワークの移送方法。
【請求項4】
初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、
前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、
前記保持装置が、前記平板状ワークの第1方向両端部及び中間部に吸着脱可能な端吸着部及び中吸着部を有し、
前記端吸着部を前記平板状ワークの第1方向両端部の表面にそれぞれ吸着させ且つ前記中吸着部を前記平板状ワークの第1方向中間部の表面に吸着させる工程、
前記吸着した平板状ワークを前記初期場所から載置場所の上方に移動させる工程、
前記中吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除し、側面視で前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも下方に位置するように前記平板状ワークを湾曲させた後、前記端吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除することにより、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する工程、を有する、平板状ワークの移送方法。
【請求項5】
初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、
前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、
前記保持装置が、前記平板状ワークの第1方向両端部及び中間部に吸着脱可能な端吸着部及び中吸着部を有し、
前記端吸着部を前記平板状ワークの第1方向両端部の表面にそれぞれ吸着させ且つ前記中吸着部を前記平板状ワークの第1方向中間部の表面に吸着させる工程、
前記吸着した平板状ワークを前記初期場所から載置場所の上方に移動させる工程、
前記中吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除した後、前記端吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除することにより、前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも先に前記載置場所に接するようにして、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する工程、を有する、平板状ワークの移送方法。
【請求項6】
前記平板状ワークの周囲において、前記第1フィルム及び第2フィルムの各端面と前記粘着剤層の端面が平行に延在している、請求項1または2に記載の平板状ワークの移送方法。
【請求項7】
前記平板状ワークの第1フィルムが、偏光フィルムを含む、請求項1または2に記載の平板状ワークの移送方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の第1の方法は、初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、前記粘着剤層を構成する粘着剤の、25℃における貯蔵弾性率G’が、0.001MPa以上1MPa以下であり、側面視で前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも下方に位置するように前記平板状ワークを湾曲させた状態で、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する。
本発明の第2の方法は、初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、前記粘着剤層を構成する粘着剤の、25℃における貯蔵弾性率G’が、0.001MPa以上1MPa以下であり、前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも先に前記載置場所に接するようにして、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する。
本発明の好ましい第1又は第2の移送方法は、前記保持装置が、前記平板状ワークを略水平にした状態で前記初期場所から持ち上げ、その状態で前記載置場所の上方に移動させる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の第3の方法は、初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、前記保持装置が、前記平板状ワークの第1方向両端部及び中間部に吸着脱可能な端吸着部及び中吸着部を有し、前記端吸着部を前記平板状ワークの第1方向両端部の表面にそれぞれ吸着させ且つ前記中吸着部を前記平板状ワークの第1方向中間部の表面に吸着させる工程、前記吸着した平板状ワークを前記初期場所から載置場所の上方に移動させる工程、前記中吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除し、側面視で前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも下方に位置するように前記平板状ワークを湾曲させた後、前記端吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除することにより、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する工程、を有する。
本発明の第4の方法は、初期場所に存在する可撓性を有する平板状ワークを保持装置にて保持し、前記平板状ワークを載置場所の上方に移動させ、前記載置場所に載置する平板状ワークの移送方法であって、前記平板状ワークが、第1フィルムと、第2フィルムと、前記第1フィルムと第2フィルムの間に設けられた粘着剤層と、を有し、前記保持装置が、前記平板状ワークの第1方向両端部及び中間部に吸着脱可能な端吸着部及び中吸着部を有し、前記端吸着部を前記平板状ワークの第1方向両端部の表面にそれぞれ吸着させ且つ前記中吸着部を前記平板状ワークの第1方向中間部の表面に吸着させる工程、前記吸着した平板状ワークを前記初期場所から載置場所の上方に移動させる工程、前記中吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除した後、前記端吸着部の前記平板状ワークに対する吸着を解除することにより、前記平板状ワークの第1方向中間部が第1方向両端部よりも先に前記載置場所に接するようにして、前記平板状ワークを前記載置場所に載置する工程、を有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の好ましい第1又は第2の移送方法は、前記平板状ワークの周囲において、前記第1フィルム及び第2フィルムの各端面と前記粘着剤層の端面が平行に延在している。
本発明の好ましい第1又は第2の移送方法は、前記平板状ワークの第1フィルムが、偏光フィルムを含む。