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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169013
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】座席調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/02 20060101AFI20231121BHJP
   B60R 16/037 20060101ALI20231121BHJP
   A47C 1/022 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B60N2/02
B60R16/037
A47C1/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080456
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 将康
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087AA01
3B087BA02
3B087BA15
3B087BD03
3B087DE08
3B099AA05
3B099BA05
(57)【要約】
【課題】カーシェアリングなどに伴い運転者の運転する車両の種類が変化した場合でも、面倒な調整操作を運転者がその都度行うことなく、自分の好みに合った状態に調整可能にすること。
【解決手段】運転者が第1車両を利用した際の運転者用座席11の状態を表す座席情報と、第1車両の種類の特徴を表す車両情報とを取得して車両側からスマートデバイス20へ送信し車両管理テーブルT01等に登録して管理する。運転者が第2車両に乗車する際に、スマートデバイス20から座席情報および車両情報を取得し、第1車両の車両の特徴と第2車両の車両の特徴との差異を反映して、座席情報に基づいて第2車両の座席状態を座席調整ECU13が自動調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が第1車両の座席に着座した際に設定された座席の状態を表す座席情報を取得する座席情報取得部と、
前記第1車両の少なくとも大きさを含む車両の種類毎に固有の特徴を表す車両情報を取得する車両情報取得部と、
取得した前記座席情報および前記車両情報を前記運転者の携帯端末に送信する送信部と、
前記運転者が第2車両に乗車する際に、前記携帯端末から前記座席情報および前記車両情報を取得し、前記第1車両の車両の特徴と前記第2車両の車両の特徴との差異を反映して、前記座席情報に基づいて前記第2車両の座席状態を自動的に調整する調整制御部と、
を備える座席調整装置。
【請求項2】
前記携帯端末は、前記座席情報と前記車両情報とを互いに対応付けた座席調整情報を、複数種類の車両について個別に記憶し管理する車両管理機能を有する、
請求項1に記載の座席調整装置。
【請求項3】
前記携帯端末は、前記座席情報と前記車両情報とを互いに対応付けた座席調整情報を、複数種類の車両について個別に記憶し管理する車両管理機能を有し、
前記調整制御部は、調整対象の車種における前記座席調整情報が未登録の場合に、登録済みの車種における1つ以上の前記座席調整情報を利用して、調整対象の車両の座席状態を自動的に調整する、
請求項1に記載の座席調整装置。
【請求項4】
前記携帯端末は、前記座席情報と前記車両情報とを互いに対応付けた座席調整情報を、少なくとも1種類の車両について記憶し管理する車両管理機能を有し、
前記調整制御部は、前記車両管理機能が記憶した1つの車両の座席調整情報を車種の違いを反映して変換し、調整対象の車種に対して適正化された前記座席調整情報を生成する、
請求項1に記載の座席調整装置。
【請求項5】
各車両または前記携帯端末は、前記第1車両および前記第2車両の少なくとも一方における該当車種の区分を表す情報を自動的に取得する機能を有する、
請求項1に記載の座席調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両上で運転者等が着座する座席の状態の適正な調整のために利用可能な座席調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、車両上で着座者に対して適切なストレッチを施して、着座者の姿勢を矯正する姿勢調整装置が開示されている。この姿勢調整装置は、移動体の内部空間に備えられたセンサによって検知された着座者の体格および姿勢に基づいて、着座者の身体の可動部位の特性を推定する可動部位特性推定部と、移動体用シートに設けられた姿勢調整機構を作動させる対象となる対象部位を特定する対象部位特定部と、対象部位に対して、姿勢調整機構を作動させて姿勢調整動作を実行させる姿勢調整機構制御部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-199919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者は、通常は自身が個人で所有している同じ自分の自動車を日常的に運転する場合が多い。一方、近年ではカーシェアリングの形態で車両を利用する機会が増えつつある。したがって、各運転者は自分が所有していない様々な種類の自動車をその都度選択的に利用して運転を実施することになる。
【0005】
カーシェアリングで様々な種類の自動車を利用する場合、運転者は、利用する自動車の固有の特性に合わせて、座席の位置、高さ、姿勢などを、自分の好みに合わせて運転の前にその都度調整しなければならない。したがって、運転者は、運転を開始するまでの必要な操作が増えてしまい煩わしく感じることがある。
【0006】
例えば、特許文献1の技術を採用する場合には、着座者の体格および姿勢に基づいて、座席の姿勢を自動的に調整することが可能である。しかしながら、着座者の体格および姿勢に応じて自動調整された姿勢がそれぞれの運転者にとって適切であるとは限らない。すなわち、一般的に適切であると考えられる姿勢と、それぞれの運転者の好みに合わせて適切であると考える姿勢とは異なる可能性がある。
【0007】
更に、例えば各車両の車体の大きさの違い、車体全体の形状の種類(ワゴン、セダン、スポーツタイプなど)、地面から車室内床面までの高さの違いなどの車両固有の特性の違いが、各運転者の好みに合った運転姿勢に影響を及ぼす可能性が高い。
【0008】
そのため、カーシェアリングなどの場合には、各運転者は運転を開始するまでに座席などの姿勢をその都度自分の好みに合わせて調整しなければならず、結局面倒な操作が必要になる。また、カーシェアリングを運営する会社にとっても、保有する全ての車両に着座者の体格および姿勢を検知するための高価なセンサを設置する必要が生じ、多額の導入コストがかかる。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者の運転する車両の種類が変化した場合でも、面倒な調整操作を運転者がその都度行うことなく、自分の好みに合った状態に調整可能な座席調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
【0011】
運転者が第1車両の座席に着座した際に設定された座席の状態を表す座席情報を取得する座席情報取得部と、
前記第1車両の少なくとも大きさを含む車両の種類毎に固有の特徴を表す車両情報を取得する車両情報取得部と、
取得した前記座席情報および前記車両情報を前記運転者の携帯端末に送信する送信部と、
前記運転者が第2車両に乗車する際に、前記携帯端末から前記座席情報および前記車両情報を取得し、前記第1車両の車両の特徴と前記第2車両の車両の特徴との差異を反映して、前記座席情報に基づいて前記第2車両の座席状態を自動的に調整する調整制御部と、
を備える座席調整装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の座席調整装置によれば、同じ運転者が運転しようとする車両の大きさや種類などが変化した場合に、運転の前に運転者がその都度自分の好みに合わせて手動操作で調整しなくても、自動的に自分の好みに合った座席の状態に合わせることができる。そのため、使用する車両の切り替わりに伴う面倒な調整操作を省略できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る座席調整装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、車両管理テーブルの構成例を示す模式図である。
図3図3は、2台の車両を順次に利用する場合の車両上の主要な機能を示すブロック図である。
図4図4は、座席調整装置の動作例を示すフローチャートである。
図5図5は、座席調整装置の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る座席調整装置100の構成例を示すブロック図である。
【0017】
図1に示した車両10は、座席の調整と関連する装備として、運転者用座席11、座席調整機構12、座席調整ECU(電子制御ユニット)13、センサ14、操作部15、記憶部16、及び通信部17を備えている。
【0018】
運転者が着座する位置にある運転者用座席11は可動構造であり、座席調整機構12と連結されている。運転者用座席11は、例えば座席全体を前後方向に移動する変更、シートクッションの床面からの高さの変更、シートバックの傾斜角度の変更などのそれぞれについて姿勢調整ができる。
【0019】
座席調整機構12は、複数の電気モータを備えており、それぞれの電気モータの駆動により運転者用座席11の可動部毎に位置、高さ、姿勢などの調整を行うことができる。運転者用座席11の調整により、運転時の運転者の体の姿勢を調整し、運転に適した姿勢や運転者の好みの姿勢にすることができる。
【0020】
座席調整ECU13は、マイクロコンピュータを主体とする電子回路により構成され、座席調整機構12の各電気モータの駆動を制御して、運転者用座席11の姿勢(位置、高さ等も含む)調整を行う機能を有している。
【0021】
センサ14は、座席調整機構12の各可動部が所定の基準位置にあるか否かを検出したり、運転者用座席11の位置、高さ、その他の姿勢などの実際の状態を表す信号を出力できる。
【0022】
操作部15は、運転者のマニュアル操作で運転者用座席11の状態を調整するために利用可能な複数のスイッチや、運転者用座席11の状態などを表示可能なディスプレイを備えている。
【0023】
記憶部16は、例えば不揮発性メモリにより構成され、この座席調整装置100を搭載している車両10の車種を表す車種情報や、車両パラメータを保持している。ここで、車種情報は当該車両のメーカ名、車種名、車両の形式(ワゴン、セダン、スポーツタイプなどの区分)を表す。また、車両パラメータは例えば該当する車両の車体の大きさ、地面から車室内床面までの高さの違い、運転席から車体先端までの距離の大小などの影響を反映した数値であり、複数の数値で構成される場合もある。したがって、車両パラメータは車両メーカ毎、車種毎にそれぞれ独立した数値になる。
【0024】
通信部17は、有線通信、又は例えばIEEE 802.11規格に対応した無線通信を利用して所定のスマートデバイス20などと接続し通信することができる。
【0025】
本実施形態の座席調整装置100は、それぞれのユーザが様々な種類の車両を運転しようとする場合に、各ユーザが所持するスマートデバイス20の利用によりユーザ毎に適切な座席状態に自動調整することができる。
【0026】
スマートデバイス20の代表例として、スマートホンのような携帯端末を利用できる。座席調整装置100を利用するために必要な専用のアプリケーションソフトウェア(アプリ)を一般的なスマートホンに組み込むことで、これをスマートデバイス20として利用できる。
【0027】
座席調整装置100を使用する場合には、スマートデバイス20上に車両管理テーブルT01が用意される。この車両管理テーブルT01は、ユーザ個人の座席状態の好みなどを表す情報と車両の種類とを関連付けたデータを含む。車両管理テーブルT01上のデータは、必要に応じて逐次追加される。
【0028】
本実施形態の座席調整ECU13は、スマートデバイス20上の車両管理テーブルT01の内容を利用することで、それぞれの運転者が車種の異なる車両を運転する場合でも、運転者個人の好みに合った座席状態を再現するように自動的に座席の位置、高さ、姿勢などを調整することができる。
【0029】
なお、車両管理テーブルT01のデータは、スマートデバイス20を経由してインターネット上の所定のサーバ上で保持し管理してもよい。
【0030】
図2は、車両管理テーブルT01の構成例を示す模式図である。
図2に示した例では、車両管理テーブルT01は、車両メーカ区分MID、車種の区分VT、車両パラメータVP、及びユーザ個人の座席情報UPを互いに対応付けた状態で保持している。
【0031】
また、図2の例では、複数の車両メーカMA、MB、MCの情報がそれぞれ車両管理テーブルT01に登録されている。
【0032】
また、9種類の車種区分VT01、VT02、VT03、VT11、VT12、VT13、VT21、VT22、及びVT23のそれぞれの情報が車両管理テーブルT01に登録されている。
【0033】
また、9種類の車両パラメータVP01、VP02、VP03、VP11、VP12、VP13、VP21、VP22、及びVP23のそれぞれの情報が車両管理テーブルT01に登録されている。車両パラメータVP01~VP32のそれぞれは、該当する車種の車両における特徴を表す車両の車体の大きさ、運転席から車体先端までの距離の大小、地面から車室内床面までの高さなどの影響を反映した数値である。
【0034】
また、ユーザ個人の座席情報UPとして、9種類の座席情報UP001~UP009がそれぞれ異なる車種の車両に対応付けた状態で登録されている。これらの座席情報UP001~UP009は、それぞれと対応する車両において、該当するスマートデバイス20を所持している特定のユーザの好みに合った座席の位置、高さ、姿勢などの状態を表している。
【0035】
各座席情報UP001~UP009は、特定の個人の好みを反映するので、それぞれのユーザが座席調整装置100を使い始めた初期状態では、適切なデータは全く存在しない。しかし、使用する車両の種類にかかわらず、同じユーザが座席調整装置100を使い続けることで車種毎に適切な多数の座席情報UPを車両管理テーブルT01に登録し保持することができる。
【0036】
<座席調整装置の主要な機能>
図3は、2台の車両10A、10Bを順次に利用する場合の車両上の主要な機能を示すブロック図である。図3中のマニュアル調整機能31A、31B、通信・表示機能32A、32B、及び自動調整機能33A、33Bは、いずれも座席調整ECU13の制御により実現される機能である。
【0037】
スマートデバイス20を所持する特定のユーザが座席調整装置100を最初に使用する際には、個人(自分)の特性に合わせた座席姿勢などのデータが車両管理テーブルT01上に存在しない。
【0038】
したがって、この時に当該ユーザが運転者として使用する車両10Aに乗車する際に、破線の枠で示す自動調整機能33Aは動作しない。この場合は、ユーザがマニュアル調整機能31Aを利用して運転者用座席11の姿勢等を手動操作で自分の好みに合わせて調整する。
【0039】
つまり、ユーザが操作部15の所定のスイッチを操作して座席調整ECU13に指示を与えることで、スイッチを操作している間だけ、所定の方向に運転者用座席11の姿勢等を変更し、ユーザ自身の好みに合わせることができる。
【0040】
通信・表示機能32Aは、ユーザがマニュアル調整機能31Aにより調整した運転者用座席11の姿勢等の調整量の情報を数値化して操作部15のディスプレイに表示すると共に、有線通信または無線通信によりスマートデバイス20に送信する。この時に送信する情報には、記憶部16が保持している車種情報や車両パラメータの内容も含めることができる。
【0041】
スマートデバイス20は、車両10Aの通信・表示機能32Aから送信された車種情報、車両パラメータ、運転者用座席11の姿勢等の情報を受信して車両管理テーブルT01に登録することができる。
【0042】
スマートデバイス20を所持する特定のユーザが車両10Aを使用した後で、次に別の車両10Bを使用する場合には、スマートデバイス20の車両管理テーブルT01にデータが存在するので、このデータを利用することができる。
【0043】
すなわち、車両10B上の通信・表示機能32Bがスマートデバイス20から車両管理テーブルT01のデータを取得する。また、通信・表示機能32Bがスマートデバイス20から取得したデータに従い、自動調整機能33Bは、運転者用座席11の姿勢等を自動的に調整し、運転者の好みに合った座席の状態を再現する。
【0044】
自動調整機能33Bの自動調整だけで運転者の好みに合った座席の状態を完全に再現できた場合には、車両10B上の破線の枠で示したマニュアル調整機能31Bは不要である。但し、ユーザがマニュアル調整機能31Bを利用して座席姿勢の微調整を行うこともできる。この微調整の内容を表すデータは、車種情報と共に通信・表示機能32Bからスマートデバイス20に送信し、車両管理テーブルT01に追加登録することができる。
【0045】
<座席調整装置の動作>
図4は、座席調整装置100の動作例を示すフローチャートである。この動作は、主に座席調整ECU13の制御により実現する。図4の動作について以下に説明する。
【0046】
座席調整ECU13は、通信部17を介してスマートデバイス20との間で通信し、自車両の運転者用座席11の姿勢等を調整するために必要な個人情報を含む車両管理テーブルT01が存在するか否かをS01で識別する。
【0047】
スマートデバイス20上に車両管理テーブルT01が存在する場合は、座席調整ECU13はS02でスマートデバイス20から車両管理テーブルT01の内容を受信して必要な情報を取得する。
【0048】
なお、座席調整ECU13が実際にスマートデバイス20から車両管理テーブルT01の内容を取得するタイミングについては、例えば車両のエンジンを始動する時や、車両のドアを解錠する時などが想定される。
【0049】
座席調整ECU13は、S02で受信した車両管理テーブルT01の内容に基づいて、自車両における運転者の好みの運転姿勢を再現するために必要な運転者用座席11の自動姿勢調整を実施する。これは図3中に示した自動調整機能33Bに相当する。
【0050】
実際には、車種が同じ車両を利用する場合には、最低1つの座席情報UPが車両管理テーブルT01に登録されていれば、この座席情報UPに基づいて運転者の好みの運転姿勢をS03で再現できる。
【0051】
また、同じユーザが車種の異なる車両を順番に使用する場合でも、車種毎に異なる複数の車両パラメータVPと最低1つの座席情報UPが車両管理テーブルT01に登録されていれば、この座席情報UPに基づいて運転者の好みの運転姿勢をS03で再現できる。
【0052】
例えば、車両パラメータVPと座席情報UPとの関係を表す関係式、或いはそれと同等の変換テーブルが事前に登録されている場合には、車種毎の車両パラメータVPの差異と、登録済みの1つの座席情報UPとに基づいて、それぞれの車種の車両における適切な座席の位置、高さ、姿勢などの調整量の推定値を算出し、適切な座席状態をS03で自動的に再現できる
【0053】
一方、スマートデバイス20上に車両管理テーブルT01が存在しない場合は、座席調整ECU13はS01からS04の処理に進む。そして、運転者による操作部15のスイッチ操作による姿勢調整指示の有無を監視する。座席調整ECU13は、運転者からのマニュアル姿勢調整指示を検知するとS04からS05の処理に進む。そして、マニュアル姿勢調整指示がある間は座席調整機構12の電気モータを駆動して、運転者用座席11の位置、高さ、姿勢などを少しずつ変更するように調整する。この調整が完了すると、座席調整ECU13はセンサ14が検知した現在の運転者用座席11における位置、高さ、姿勢などの状態を数値化して操作部15のディスプレイに表示する(S05)。
【0054】
更に、座席調整ECU13はS05で検知した運転者用座席11の姿勢などの情報と、記憶部16が保持している車種情報や車両パラメータVPとを通信部17を介してスマートデバイス20へ送信する(S06)。
【0055】
<座席調整装置の動作の変形例>
図5は、座席調整装置100の変形例を示すフローチャートである。この動作は、主に座席調整ECU13の制御により実現する。図5の動作について以下に説明する。
【0056】
座席調整ECU13は、自車両の車種を表す車種情報および自車両の車両パラメータVPをS11で記憶部16から取得する。
【0057】
座席調整ECU13は、通信部17を介してスマートデバイス20との間で通信を行い、S11で取得した車種情報と一致する車種の座席情報UPが車両管理テーブルT01上に存在するか否かをS12で識別する。
【0058】
自車両と車種が一致する座席情報UPが車両管理テーブルT01上に既に存在する場合には、座席調整ECU13はS12からS13の処理に進む。そして、該当する座席情報UPをスマートデバイス20の車両管理テーブルT01から取得し、この座席情報UPに従って座席調整ECU13が運転者用座席11の位置、高さ、姿勢などを自動的に調整し、運転者の好みに合わせた運転姿勢を再現する(S14)。
【0059】
一方、自車両と車種が一致する座席情報UPが車両管理テーブルT01上に存在しない場合には、座席調整ECU13はS12からS15の処理に進む。そして、車種毎の1つ又は複数の座席情報UPを、スマートデバイス20の車両管理テーブルT01から取得する。
【0060】
座席調整ECU13は、S15で取得した複数の座席情報UPに基づいて自車両の車種に適合し且つ運転者の好みに合う座席情報UPをS16で自動的に生成し、この座席情報UPに従って座席調整ECU13が運転者用座席11の位置、高さ、姿勢などを自動的に調整し、運転者の好みに合わせた運転姿勢を再現する(S14)。
【0061】
例えば図2中の2つの車種区分VT01、VT02のそれぞれに対応する2つの座席情報UP001、UP002が車両管理テーブルT01に登録されている場合には、車種区分VT01、VT02以外の車両であっても、座席情報UP001、UP002を利用して好みの姿勢を再現可能である。例えば、2つの座席情報UP001、UP002の平均値を採用して新たな座席情報UPとすることで、過去に運転したことのない車種の車両の場合にも運転者の好みの姿勢に対して大きなずれのない姿勢を再現できる。
【0062】
また、自車両の車両パラメータVPxが存在し、座席情報UPxが存在しない場合には、平均ではなく、2つの車両パラメータVP01、VP02のうち自車両の車両パラメータVPxに近い方の車種の座席情報UP001又はUP002を座席情報UPxとして採用することもできる。
【0063】
また、自車両の車両パラメータVPxが存在しない場合でも、自車両の車種VTxが既知である場合には、2つの車種の区分VT01、VT02のうち自車両の車種VTxに近い方の車種に割り当てられた座席情報UP001又はUP002を座席情報UPxとして採用することもできる。
【0064】
例えば、他車両の車両パラメータVP01及び座席情報UP001が既に登録され、自車両の車両パラメータVP02が既知で、自車両の座席情報UP002が不明であるような場合は、次のようにして暫定的に座席情報UP002を決定できる。
【0065】
例えば、車両パラメータVP01に比べて車両パラメータVP02が車体が大きいことを表す状態であれば、運転者の運転姿勢のゆとりが大きくなる方向に、座席情報UP001の値を微調整した結果を暫定的な座席情報UP002に決定する。
【0066】
逆に、車両パラメータVP01に比べて車両パラメータVP02が車体が小さいことを表す状態であれば、運転者の運転姿勢のゆとりが小さくなる方向に、座席情報UP001の値を微調整した結果を暫定的な座席情報UP002に決定する。
【0067】
例えば、標準的なセダンタイプの車種の車両における座席情報UP001が登録され、自車両の座席情報UPxが未登録の場合に、自車両の車種の区分VTがスポーツタイプであれば、座席情報UP001の値を基準にして、座席の高さが少し低くなる方向に座席情報UP001の値を調整した結果を暫定的な座席情報UPxとして採用できる。
【0068】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0069】
例えば、図2に示した車両管理テーブルT01は、車両毎に車両メーカ区分MID、車種の区分VT、車両パラメータVP、及び座席情報UPの組み合わせを表すデータを保持する場合を想定しているが、車両パラメータVPと座席情報UPの組み合わせのデータだけを登録しても良い。また、車種の区分VTと座席情報UPの組み合わせのデータだけを登録しても良い。
【0070】
また、図1に示した座席調整装置100においては、自車両に装備した記憶部16が車種情報および車両パラメータを予め保持する場合を想定しているが、これらの情報は記憶部16がなくても必要に応じて取得可能である。例えば、スマートデバイス20のカメラを用いて車両10の外観を撮影した画像の特徴に基づいて様々な画像をインターネット上などのデータベースで検索することで、目的の車両の車種などを特定できる。また、車種が分かれば該当する車両の詳細な仕様の情報を入手できるので、この情報から車両パラメータVPの値の特定が可能になる。
【0071】
また、上述の実施形態では運転者用座席11の状態だけを調整する場合を示しているが、運転者用座席11の姿勢などの変化に合わせて、ルームミラーの角度や、サイドミラーの角度などを自動的に調整することも可能である。また、運転者と共に同じ家族がいつも車両に同乗するような場合には、運転者用座席11と共に助手席などの姿勢を同じように調整することも考えられる。
【0072】
以上のように、本実施形態の座席調整装置100を利用する場合には、例えばカーシェアリングなどに伴ってユーザが様々な種類の車両をその都度乗り換えて運転する場合でも、運転者用座席11の位置、高さ、姿勢などを運転者個人の好みに合わせて手動でその都度調整し直す必要がない。すなわち、運転者が自分の好みに合わせて最低1回の調整を行った結果を車両管理テーブルT01に登録して管理することで、車両の種類が変わった場合でも、座席の状態を好みに合った状態に自動的に調整できる。
【0073】
これにより、運転者は特別な調整の操作を行うことなく、いつも同じ姿勢でそれぞれの車両を運転できるので、運転に伴う運転者の疲労の軽減が可能になる。また、事故防止に繋がる効果も得られる。
【0074】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る座席調整装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 運転者が第1車両(車両10A)の座席に着座した際に設定された座席の状態を表す座席情報を取得する座席情報取得部(センサ14)と、
前記第1車両の少なくとも大きさを含む車両の種類毎に固有の特徴を表す車両情報を取得する車両情報取得部(座席調整ECU13、S11)と、
取得した前記座席情報および前記車両情報を前記運転者の携帯端末(スマートデバイス20)に送信する送信部(座席調整ECU13、S06)と、
前記運転者が第2車両(車両10B)に乗車する際に、前記携帯端末から前記座席情報および前記車両情報を取得し(座席調整ECU13、S02、S13、S15)、前記第1車両の車両の特徴と前記第2車両の車両の特徴との差異を反映して、前記座席情報に基づいて前記第2車両の座席状態を自動的に調整する調整制御部(座席調整ECU13、S03、S14、S16)と、
を備える座席調整装置(100)。
【0075】
上記[1]の構成の座席調整装置によれば、運転者が第1車両を利用する際に、最低1回だけ自分の好みに合わせて手動で座席の姿勢などを調整した後で、車種が異なる第2車両を利用する際には、手動の調整を行わなくても運転者の好みの姿勢に自動調整することが可能である。したがって、カーシェアリングなどに伴って運転の度に座席の状態を調整するような煩雑な操作が不要になる。
【0076】
[2] 前記携帯端末は、前記座席情報(UP)と前記車両情報(車種の区分VT、又は車両パラメータVP)とを互いに対応付けた座席調整情報を、複数種類の車両について個別に記憶し管理する車両管理機能(車両管理テーブルT01)を有する、
上記[1]に記載の座席調整装置。
【0077】
上記[2]の構成の座席調整装置によれば、複数種類の車両のそれぞれにおいて好みの姿勢などの状態を個別に記憶し管理できるので、同じ運転者による様々な車両の使用実績が増えるのに伴って自動調整の精度向上が期待できる。
【0078】
[3] 前記携帯端末は、前記座席情報(UP)と前記車両情報(車種の区分VT、又は車両パラメータVP)とを互いに対応付けた座席調整情報を、複数種類の車両について個別に記憶し管理する車両管理機能(車両管理テーブルT01)を有し、
前記調整制御部は、調整対象の車種における前記座席調整情報が未登録の場合に、登録済みの車種における1つ以上の前記座席調整情報を利用して、調整対象の車両の座席状態を自動的に調整する(S16)、
上記[1]に記載の座席調整装置。
【0079】
上記[3]の構成の座席調整装置によれば、同じ運転者による車両の使用実績が少なく、車両管理機能で管理している車両の種類が少ない場合でも、1つ以上の座席調整情報が登録されている場合には、運転者の好みに合わせた座席の姿勢などを自動的に再現できる。
【0080】
[4] 前記携帯端末は、前記座席情報(UP)と前記車両情報(車種の区分VT、又は車両パラメータVP)とを互いに対応付けた座席調整情報を、少なくとも1種類の車両について記憶し管理する車両管理機能(車両管理テーブルT01)を有し、
前記調整制御部は、前記車両管理機能が記憶した1つの車両の座席調整情報を車種の違いを反映して変換し、調整対象の車種に対して適正化された前記座席調整情報を生成する(S03)、
上記[1]に記載の座席調整装置。
【0081】
上記[4]の構成の座席調整装置によれば、同じ運転者による車両の使用実績が少なく、車両管理機能で管理している車両の種類が少ない場合でも、1つ以上の座席調整情報が登録されている場合には、運転者の好みに合わせた座席の姿勢などを自動的に再現できる。
【0082】
[5] 各車両または前記携帯端末は、前記第1車両および前記第2車両の少なくとも一方における該当車種の区分を表す情報を自動的に取得する機能(記憶部16、S11)を有する、
上記[1]に記載の座席調整装置。
【0083】
上記[5]の構成の座席調整装置によれば、使用する車両の車種などの情報を運転者が手作業でその都度入力しなくても、該当車種の区分を自動的に特定できる。そのため運転者が行う入力操作を削減できる。
【符号の説明】
【0084】
10,10A,10B 車両
11 運転者用座席
12 座席調整機構
13 座席調整ECU
14 センサ
15 操作部
16 記憶部
17 通信部
20 スマートデバイス
31A,31B マニュアル調整機能
32A,32B 通信・表示機能
33A,33B 自動調整機能
100 座席調整装置
T01 車両管理テーブル
MID 車両メーカ区分
UP 座席情報
VP 車両パラメータ
VT 車種の区分
図1
図2
図3
図4
図5