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特開2023-169034搬送処理システム、搬送処理装置、自律搬送車両、搬送処理方法、搬送処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169034
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】搬送処理システム、搬送処理装置、自律搬送車両、搬送処理方法、搬送処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20231121BHJP
【FI】
G05D1/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080479
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大嗣
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG17
5H301HH10
5H301LL01
(57)【要約】
【課題】落下した荷物の位置情報を正確に報知可能な搬送処理システムの提供。
【解決手段】荷物を搬送する自律搬送車両の、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理システムのプロセッサは、自律搬送車両からの荷物の落下を監視することと、落下した荷物の到達した位置である到達点Prをセンシングすることにより、当該到達点Prを表す落下物データDfrを出力することとを、実行するように構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)の、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記自律搬送車両からの前記荷物の落下を監視することと、
落下した前記荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される搬送処理システム。
【請求項2】
前記落下物データを出力することは、
前記自律搬送車両の少なくとも一部分を点旋回駆動することにより、落下した前記荷物を前記自律搬送車両からのセンシングエリア(As)内に捕捉することを、含む請求項1に記載の搬送処理システム。
【請求項3】
前記落下物データを出力することは、
前記自律搬送車両を駆動する駆動系(3)により、前記自律搬送車両の全体を点旋回駆動することを、含む請求項2に記載の搬送処理システム。
【請求項4】
前記落下物データを出力することは、
前記到達点をセンシングするセンサ系(2004)を前記自律搬送車両の一部分において点旋回駆動することを、含む請求項2に記載の搬送処理システム。
【請求項5】
前記落下物データを出力することは、
落下した前記荷物として、当該落下前に前記自律搬送車両からのセンシングエリア(As)外の物体を当該センシングエリア内に捕捉することを、含む請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【請求項6】
前記荷物の落下を監視することは、
前記荷物の落下した落下点(Pf)を監視することを、含み、
前記落下物データを出力することは、
前記到達点のセンシングに必要な距離(Ls)を前記落下点から空けたセンシング位置(Ps)へ前記自律搬送車両を駆動することにより、落下した前記荷物を前記自律搬送車両からのセンシングエリア(As)内に捕捉することを、含む請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【請求項7】
前記落下物データを出力することは、
前記荷物の落下に応じて一旦停止した前記自律搬送車両の駆動再開により、落下した前記荷物を前記自律搬送車両からのセンシングエリア(As)内に捕捉することを、含む請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【請求項8】
前記落下物データを出力することは、
落下により前記自律搬送車両からの死角エリア(Ab)内へ到達した前記荷物を、前記自律搬送車両の駆動により探索して前記自律搬送車両からのセンシングエリア(As)内に捕捉することを、含む請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【請求項9】
前記落下物データを出力することは、
落下した前記荷物の探索に失敗した場合に、前記到達点に代えて、前記荷物の落下時点における前記自律搬送車両の走行位置を表す前記落下物データ(Dfl)を出力することを、含む請求項8に記載の搬送処理システム。
【請求項10】
前記落下物データを出力することは、
前記落下物データを、前記自律搬送車両の外部へ配信することを、含む請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【請求項11】
前記落下物データを出力することは、
前記落下物データに基づく警報を、前記自律搬送車両の外部へ出力することを、含む請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記落下物データの出力後に、前記自律搬送車両の速度及び姿勢角のうち少なくとも一種類に関する最大時間変化率を、前記荷物の落下前よりも小さく制御することを、さらに実行するように構成される請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【請求項13】
前記プロセッサは、
可燃性を有する前記荷物に関しての前記落下物データの出力後に、前記自律搬送車両の電源をオフすることを、さらに実行するように構成される請求項1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【請求項14】
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)に搭載可能に構成され、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理装置であって、
前記プロセッサは、
前記自律搬送車両からの前記荷物の落下を監視することと、
落下した前記荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される搬送処理装置。
【請求項15】
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両であって、
前記プロセッサは、
前記荷物の落下を監視することと、
落下した前記荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される自律搬送車両。
【請求項16】
荷物(9)を搬送する自律搬送車両(10)の、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理方法であって、
前記自律搬送車両からの前記荷物の落下を監視することと、
落下した前記荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、含む搬送処理方法。
【請求項17】
荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)の、当該搬送に関連する処理を遂行するために記憶媒体(11)に記憶され、プロセッサ(12)により実行される命令を含む搬送処理プログラムであって、
前記命令は、
前記自律搬送車両からの前記荷物の落下を監視させることと、
落下した前記荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングさせることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力させることとを、含む搬送処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷物を搬送する自律搬送車両の、当該搬送に関連する処理を遂行する技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の技術では、無人搬送車両において荷物の落下が検出されると、当該落下時における無人搬送車両の移動位置が後続車両へ報知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4803049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、無人搬送車両から落下した荷物は、当該落下時における無人搬送車両の移動位置に存在しているとは限らない。なぜなら、荷物の落下した落下点自体、落下時における無人搬送車両の移動位置とは一致せず、さらに落下時の慣性力に起因して地面上を転動した荷物の位置は、落下時における無人搬送車両の移動位置からは離間してしまうからである。したがって、特許文献1に開示の技術では、落下した荷物の正確な位置を後続車両へ報知することは、困難である。
【0005】
本開示の課題は、落下した荷物の位置情報を正確に報知可能な搬送処理システム、搬送処理装置、自律搬送車両、搬送処理方法、及び搬送処理プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)の、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理システムであって、
プロセッサは、
自律搬送車両からの荷物の落下を監視することと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される。
【0008】
本開示の第二態様は、
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)に搭載可能に構成され、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理装置であって、
プロセッサは、
自律搬送車両からの荷物の落下を監視することと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される。
【0009】
本開示の第三態様は、
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両であって、
プロセッサは、
荷物の落下を監視することと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される。
【0010】
本開示の第四態様は、
荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)の、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理方法であって、
自律搬送車両からの荷物の落下を監視することと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、含む。
【0011】
本開示の第五態様は、
荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)の、当該搬送に関連する処理を遂行するために記憶媒体(11)に記憶され、プロセッサ(12)により実行される命令を含む搬送処理プログラムであって、
命令は、
自律搬送車両からの荷物の落下を監視させることと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングさせることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力させることとを、含む。
【0012】
このように第一~第五態様では、自律搬送車両からの荷物の落下が監視される。そこで第一~第五態様によると、落下した荷物の到達した到達点のセンシングにより、当該到達点を表す落下物データが出力される。これによれば、落下時に慣性力を受けた荷物の実際に止まった到達点が、出力された落下物データによって報知され得る。故に、落下した荷物の位置情報を正確に報知することが、可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態による搬送処理システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】第一実施形態の適用される自律搬送車両の構成を示す斜視図である。
図3】第一実施形態の適用される自律搬送車両の構成を示すブロック図である。
図4】第一実施形態による搬送処理システムの機能構成を示すブロック図である。
図5】第一実施形態による搬送処理フローを示すフローチャートである。
図6】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図7】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図8】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図9】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図10】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図11】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図12】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図13】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図14】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図15】第一実施形態による搬送処理フローを説明するための模式図である。
図16図5の変形例による搬送処理フローを示すフローチャートである。
図17】第一実施形態の適用される自律搬送車両の構成を示すブロック図である。
図18】第二実施形態による搬送処理フローを示すフローチャートである。
図19図18の変形例であって、図16に対応する搬送処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。また、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0015】
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態の搬送処理システム10は、図2,3に示すように荷物9を搬送する自律搬送車両1の、当該搬送に関連する処理(以下、搬送関連処理という)を遂行する。自律搬送車両1は、前後左右の任意方向に自律走行する。自律搬送車両1は、道路を自律走行して荷物9を配送先へ搬送する、配送車両であってもよい。自律搬送車両1は、倉庫内外を自律走行して荷物9を搬送する、物流車両であってもよい。自律搬送車両1は、荷物9の搬送機能を備えている限り、これら以外の車両であっても勿論よい。さらにいずれの種の自律搬送車両1であっても、外部センタとの通信によりリモートでの走行支援又は走行制御を受けてもよい。
【0016】
自律搬送車両1は、ボディ2、駆動系3、センサ系4、地図データベース5、及び情報提示系6を備えている。ボディ2は、例えば金属等により、中空状に形成されている。ボディ2は本実施形態では、外部のうち上部へ向かって開放された荷室20を、前後左右からは囲んで形成している。ボディ2において荷室20は、少なくとも一つの荷物9を荷台上に積載可能な空間サイズを、有している。尚、ボディ2の構造としては、図2に示す構造以外にも、荷物9の落下を想定可能であれば、例えば上部及び前後開放の荷室20を左右からは囲む構造、上部開放の荷室20を前後左右からは囲まない構造等を、採用可能である。
【0017】
図2,3に示すように駆動系3は、車輪30、バッテリ32、及び電動アクチュエータ34を含んで構成されている。車輪30は、ボディ2により複数支持されている。各車輪30は、それぞれ独立して回転可能に構成されている。複数車輪30のうち、ボディ2の左右に一つずつを対として一対設けられる駆動輪300は、それぞれ個別の電動アクチュエータ34により独立して駆動される。これら各駆動輪300間での回転速度差(即ち、単位時間当たりの回転数差)に応じて、自律搬送車両1の駆動状態が直進駆動と旋回駆動とのいずれかに切り替わる。
【0018】
具体的には、左右の駆動輪300間での回転速度差が零値、又は零値と擬制可能な範囲では、自律搬送車両1が直進駆動される。一方、左右の駆動輪300間での回転速度差が増大する範囲では、自律搬送車両1の旋回駆動される旋回半径が、当該回転速度差の増大に応じて縮小する。ここで旋回半径とは、ボディ2の鉛直中心線と旋回駆動の旋回中心との平面視における距離を意味することから、旋回半径が実質0に縮小される旋回駆動が特に、点旋回駆動となる。尚、時複数車輪30には、図2に示すように駆動輪300に従動して回転する少なくとも一つの従動輪が、含まれていてもよい。
【0019】
図3に示すようにバッテリ32は、ボディ2内に搭載されている。バッテリ32は、例えばリチウムイオン電池等の蓄電池を主体に、構成されている。バッテリ32は、放電によってボディ2内の電装品へ供給する電力を、外部からの充電によって蓄える。バッテリ32は、電動アクチュエータ34からの回生電力を、蓄えてもよい。バッテリ32は、電動アクチュエータ34、センサ系4、地図データベース5、及び情報提示系6と、搬送処理システム10において後述の如く自律搬送車両1に搭載される少なくとも一部分とに対し、ワイヤハーネスを介して電力供給可能に接続されている。
【0020】
電動アクチュエータ34は、ボディ2内に一対搭載されている。各電動アクチュエータ34は、それぞれ個別の電動モータを主体に構成されている。各電動アクチュエータ34は、それぞれ対応する駆動輪300を独立して回転駆動する。各電動アクチュエータ34は、それぞれ対応する駆動輪300の回転中に制動を与える、ブレーキユニットを備えていてもよい。各電動アクチュエータ34は、それぞれ対応する駆動輪300を停止中にロックする、ロックユニットを備えていてもよい。
【0021】
センサ系4は、搬送処理システム10により利用可能なセンシング情報を、自律搬送車両1における外界及び内界のセンシングによって取得する。そのためにセンサ系4の構成要素は、ボディ2の複数箇所に搭載されている。具体的にセンサ系4は、外界センサ40と内界センサ41とを含んで構成されている。
【0022】
外界センサ40は、自律搬送車両1の周辺環境となる外界から、センシング情報としての外界情報を取得する。外界センサ40は、自律搬送車両1の外界に存在する物体を検知することで、外界情報を取得する。物体検知タイプの外界センサ40は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。
【0023】
外界センサ40は、自律搬送車両1の外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から測位信号を受信することで、外界情報を取得してもよい。測位タイプの外界センサ40は、例えばGNSS受信機等である。外界センサ40は、自律搬送車両1の外界に存在するV2Xシステムとの間において通信信号を送受信することで、外界情報を取得してもよい。通信タイプの外界センサ40は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、セルラV2X(C-V2X)通信機、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。通信タイプのうち特にV2Xタイプの外界センサ40は、外部センタ及び他の自律搬送車両のうち、少なくとも一種類と通信可能であってもよい。
【0024】
内界センサ41は、自律搬送車両1の内部環境となる内界から、センシング情報としての内界情報を取得する。内界センサ41は、自律搬送車両1の内界としての荷室20内の荷台上において荷物9を検知することで、内界情報を取得する。荷物検知タイプの内界センサ41は、例えば重量センサ、圧力センサ、カメラ、及びRFID(Radio Frequency Identifier)リーダ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ41は、自律搬送車両1の内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を取得してもよい。運動検知タイプの内界センサ41は、例えば速度センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0025】
地図データベース5は、搬送処理システム10により利用可能な地図情報を、記憶する。地図データベース5は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成されている。地図データベース5は、自律搬送車両1の自己位置を含む自己状態量を推定するロケータの、データベースであってもよい。地図データベース5は、自律搬送車両1の走行を計画するプランニングユニットの、データベースであってもよい。地図データベース5は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されていてもよい。
【0026】
地図データベース5は、例えば外部センタとの通信等により、最新の地図情報を取得して記憶する。ここで地図情報は、自律搬送車両1の走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を含んでいてもよい。
【0027】
情報提示系6は、自律搬送車両1の周辺者へ向けた報知情報を、提示する。情報提示系6は、周辺者の視覚を刺激することで、報知情報を提示してもよい。視覚刺激タイプの情報提示系6は、例えばモニタユニット、及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。情報提示系6は、周辺者の聴覚を刺激することで、報知情報を提示してもよい。聴覚刺激タイプの情報提示系6は、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0028】
図1に示す搬送処理システム10は、自律搬送車両1においてボディ2に搭載されるコンピュータを含んだ、少なくとも一つの専用コンピュータを主体に構成されている。そこで、搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち少なくとも一種類を介して、図3に示すバッテリ32、電動アクチュエータ34、センサ系4、地図データベース5、及び情報提示系6に接続されている。
【0029】
図1の搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、自律搬送車両1の走行する目標軌道を計画する、プランニングECU(Electronic Control Unit)であってもよい。搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、自律搬送車両1の目標軌道に実軌道を追従させる、軌道制御ECUであってもよい。搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、自律搬送車両1の各電動アクチュエータ34を制御する、アクチュエータECUであってもよい。
【0030】
搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、自律搬送車両1のセンサ系4を制御する、センシングECUであってもよい。搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、自律搬送車両1の自己位置を含む自己状態量を地図データベース5に基づき推定する、ロケータECUであってもよい。搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、自律搬送車両1の情報提示系6を制御する、情報提示ECUであってもよい。搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、例えば通信タイプの外界センサ40を介して通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構成する、ボディ2外のコンピュータであってもよい。
【0031】
搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、メモリ11及びプロセッサ12を、少なくとも一つずつ有している。メモリ11は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0032】
搬送処理システム10においてプロセッサ12は、荷物9を搬送する自律搬送車両1の搬送関連処理を遂行するためにメモリ11に記憶された制御プログラムに含まれる複数の命令を、実行する。これにより搬送処理システム10は、搬送関連処理を遂行するための機能ブロックを、複数構築する。搬送処理システム10において構築される複数の機能ブロックには、図4に示すように監視ブロック100及び出力ブロック110が含まれている。
【0033】
これらブロック100,110の共同により、搬送処理システム10が搬送関連処理を遂行する方法は、図5に示す搬送処理フローに従って実行される。搬送処理フローは、自律搬送車両1による荷物9の搬送中に繰り返し実行される。尚、搬送処理フローにおける各「S」は、搬送処理プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0034】
S100において監視ブロック100は、自律搬送車両1における荷室20から外部への荷物9の落下を、監視する。このとき荷物9の落下は、荷物検知タイプの内界センサ41によって取得の内界情報に基づき、検出される。S100において荷物9の落下が検出されるまではS100が繰り返され、当該落下検出に応じて搬送処理フローがS101へ移行する。
【0035】
S101において監視ブロック100は、各電動アクチュエータ34の制御によって自律搬送車両1を一旦停止させる。続くS102において監視ブロック100は、図6に示すように荷物9が外部の地面に最初に落下した位置となる落下点Pfを、当該落下に伴って検出できたか否か、判定する。このとき落下点Pfは、物体検知タイプの外界センサ40により、特に好ましくは測距可能なLiDAR又はステレオカメラ等により取得される外界情報に基づき、監視される。その結果、図5に示すように肯定判定が下された場合には、搬送処理フローがS103へ移行する。
【0036】
S103において出力ブロック110は、図7に示すように落下点Pfから荷物9のセンシングに必要距離Lsを空けたセンシング位置Psへ移動するように、一旦停止状態の自律搬送車両1の駆動を各電動アクチュエータ34の制御によって再開する。このとき必要距離Lsは、図6,7に示すように落下点Pfから到達した位置となる到達点Prの荷物9をセンシングするために確保が必要な最小距離として、点旋回駆動により自律搬送車両1が荷物9との衝突を回避可能な距離に、設定される。そこで図8に示すように必要距離Lsは、平面視における自律搬送車両1の鉛直中心線まわりの外接円径、又は当該外接円径に差分にマージンを付加した安全値に、設定されるとよい。こうした自律搬送車両1全体でのセンシング位置Psへの駆動は、直線駆動であってもよいし、旋回駆動であってもよいし、それらの連続的な組み合わせであってもよい。
【0037】
図5に示すようにS103の実行後、搬送処理フローはS104へ移行する。S102において否定判定が下された場合にも、搬送処理フローはS104へ移行する。S104において出力ブロック110は、図9に示すように自律搬送車両1の少なくとも一部分の一具体例として同車両1の全体を、各電動アクチュエータ34の制御によって点旋回駆動する。このときの点旋回駆動は、物体検知タイプの外界センサ40によって取得の外界情報に基づくことで、同センサ40からのセンシングエリアAs内に荷物9を捕捉するまで、最大360度の範囲で継続される。またこのとき、S102での否定判定から移行した場合のS104での点旋回駆動は、一旦停止状態の自律搬送車両1に対する駆動再開となる。
【0038】
S104において点旋回駆動範囲を決める荷物9の捕捉は、物体検知タイプ及び通信タイプのうち少なくとも一方の外界センサ40によって取得の外界情報に基づく。このとき、落下前まではセンシングエリアAs外であった静的物体のうち、落下後にはセンシングエリアAs内となった静的物体が、荷物9として認識されてもよい。S104における荷物9の捕捉では、落下前において自律搬送車両1の通過した後方位置に存在している静的物体が、荷物9として認識されてもよい。S102において落下点Pfが検出できた場合のS104における荷物9の捕捉では、当該落下点Pfの周辺に存在している静的物体が、荷物9として認識されてもよい。
【0039】
このようなS104において出力ブロック110は、図5に示すように、360度以下の点旋回駆動によって荷物9をセンシングエリアAs内に捕捉したか否か、判定する。その結果、否定判定が下された場合には、搬送処理フローがS105へ移行する。
【0040】
S105において出力ブロック110は、図10に示すように落下によって自律搬送車両1からの死角エリアAb内へ到達した可能性のある荷物9を探索するために、探索マップMを生成する。このとき探索マップMは、本実施形態では図11に示すように落下時における自律搬送車両1の走行位置周辺を区切った複数の格子毎に、荷物9の落下後における到達確率値を表す尤度を予測することで、生成される。こうした尤度は、地図データベース5の地図情報、落下までの自律搬送車両1の走行ルート、落下時点での自律搬送車両1の走行方向、落下時点での自律搬送車両1からの距離、荷物9の重量、及びS102において検出できた場合の落下点Pf等のうち、少なくとも一種類に基づき予測される。
【0041】
図5に示すようにS105に続くS106において出力ブロック110は、生成した探索マップMに基づくことで、図12に示すように自律搬送車両1の駆動による荷物9の探索ルートRを設定する。このとき探索ルートRは、センシングエリアAs内の各格子毎に予測された尤度の積算値が最大となるように、設定されてもよい。探索ルートRは、各格子毎に落下時点での自律搬送車両1からの距離に応じて重み付けした尤度の荷重平均値が最大となるように、設定されてもよい。
【0042】
図5に示すようにS106に続くS107において出力ブロック110は、各電動アクチュエータ34の制御によって自律搬送車両1を、探索マップMに基づく探索ルートRに従って駆動することで、荷物9を探索する。このとき自律搬送車両1全体での探索駆動は、物体検知タイプの外界センサ40によって取得の外界情報に基づくことで、図13に示すように同センサ40からのセンシングエリアAs内に荷物9を捕捉するまで、探索ルートRの設定範囲内で継続される。
【0043】
このようなS107において出力ブロック110は、図5に示すように、探索ルートR上での探索駆動によってセンシングエリアAs内に荷物9を捕捉したか否か、判定する。その結果、落下した荷物9の探索に失敗したとして否定判定が下された場合には、搬送処理フローがS108へ移行する。尚、S107では捕捉の否定判定が下されても、例えば実験等により予め設定の閾値以下若しくは未満に上述の尤度積算値又は尤度荷重平均値が低下するまで、搬送処理フローがS106へ戻ることで、先回までよりも小さな尤度積算値又は尤度荷重平均値の範囲で探索ルートRが再設定されてもよい。この場合、S107において捕捉の否定判定と共に、尤度積算値又は尤度荷重平均値が閾値以下若しくは未満の判定が下されると、搬送処理フローがS108へ移行するとよい。
【0044】
S108において出力ブロック110は、後述の如く到達点Prを表した落下物データDfrに代えて、荷物9の落下時点における自律搬送車両1の走行位置を表した落下物データDflを、出力する。このとき落下物データDflには、S102において検出できた場合における落下点Pfの情報が、落下時点での走行位置の情報に加えて又は代えて含まれていてもよい。落下物データDflには、到達点Prのセンシングに失敗したことを表す情報が、落下時点での走行位置の情報に加えて又は代えて含まれていてもよい。落下物データDflには、荷物9の落下した時刻の情報が含まれていてもよい。落下物データDflには、荷物9の落下時点及び/又は前後における、自律搬送車両1に関する走行位置以外の走行環境の情報が含まれていてもよい。落下物データDflには、荷物9の落下時点及び/又は前後における自律搬送車両1でのセンシング情報及び運動情報のうち、少なくとも一種類が含まれていてもよい。落下物データDflには、例えば荷物9の種別、サイズ、重量、梱包状態、及び搬送先等のうち、少なくとも一種類を表す情報が含まれていてもよい。
【0045】
S108における出力は、メモリ11への記憶による落下物データDflの蓄積であってもよい。S108における出力は、外部センタと、自律搬送車両1外部における他の自律搬送車両とのうち、少なくとも一種類への落下物データDflの配信出力であってもよい。S108における出力は、情報提示系6による視覚刺激及び聴覚刺激のうち少なくとも一種類の刺激により、落下物データDflに基づく報知情報としての警報情報を自律搬送車両1外部へ提示出力することであってもよい。
【0046】
一方、S107において肯定判定が下された場合には、搬送処理フローはS109へ移行する。S104において肯定判定が下された場合にも、搬送処理フローはS109へ移行する。S109において出力ブロック110は、図14,15に示すように捕捉時点での荷物9に対するセンシングエリアAsの相対状態を、検出する。このときの検出では、到達点Prのセンシングに必要な割合として、100%となる荷物9の全体、又は100%未満となる荷物9の一部分が、センシングエリアAs内に収まっているか否かを、判断される。その結果、図5に示すように否定判定が下された場合(図14参照)には、搬送処理フローがS110へ移行する。
【0047】
S110において出力ブロック110は、自律搬送車両1のうち到達点Prのセンシングに必要な割合がセンシングエリアAs内に収まるように(図15参照)、各電動アクチュエータ34の制御によって同車両1を追加駆動する。このとき自律搬送車両1全体での追加駆動は、直線駆動であってもよいし、旋回駆動であってもよいし、それらの連続的な組み合せであってもよい。
【0048】
S110の実行後、搬送処理フローはS111へ移行する。S109において肯定判定が下された場合(図15参照)にも、搬送処理フローはS111へ移行する。S111において出力ブロック110は、センシングエリアAs内に収まった荷物9の、落下後に最終的に到達して止まった到達点Prを、センシングする。続くS112において出力ブロック110は、センシングした到達点Prを表す落下物データDfrを、出力する。
【0049】
S112において出力される落下物データDfrには、S102において検出できた場合における落下点Pfの情報が含まれていてもよい。落下物データDfrには、荷物9の落下した時刻の情報が含まれていてもよい。落下物データDfrには、荷物9の落下時点及び/又は前後における、自律搬送車両1に関する走行環境の情報が含まれていてもよい。落下物データDfrには、荷物9の落下時点及び/又は前後における自律搬送車両1でのセンシング情報及び運動情報のうち、少なくとも一種類が含まれていてもよい。落下物データDfrには、例えば荷物9の種別、サイズ、重量、梱包状態、及び搬送先等のうち、少なくとも一種類を表す情報が含まれていてもよい。
【0050】
S112における出力は、メモリ11への記憶による落下物データDfrの蓄積であってもよい。S112における出力は、外部センタと、自律搬送車両1外部における他の自律搬送車両とのうち、少なくとも一種類への落下物データDfrの配信出力であってもよい。S112における出力は、情報提示系6による視覚刺激及び聴覚刺激のうち少なくとも一種類の刺激により、落下物データDfrに基づく報知情報としての警報情報を自律搬送車両1外部へ提示出力することであってもよい。
【0051】
図5に示すようにS112,S108の実行後において搬送処理フローの今回実行は終了するが、図16に変形例を示すように今回実行の終了前に、出力ブロック110による事後制御処理がS113として追加実施されてもよい。このとき事後制御処理は、S112,S108による落下物データDfr,Dflの出力後に、駆動する自律搬送車両1の速度及び姿勢角のうち少なくとも一方に関しての最大時間変化率を、荷物9の落下前よりも小さく制御する処理であってもよい。こうした変化率の制御処理は、例えば自律搬送車両1の加速度(但し、符号がマイナスの減速度を含む)及びヨーレートのうち少なくとも一方の最大値を、荷物9の落下前よりも抑制調整することで、実現される。
【0052】
これら以外にS113の事後制御処理は、可燃性を有する荷物9に関しての落下物データDfr,Dflの場合には、S112,S108による出力後に、自律搬送車両1の電源をオフに制御する処理(即ち、シャットダウン処理)であってもよい。事後制御処理は、S112,S108による落下物データDfr,Dflの出力後に、自律搬送車両1の予定走行ルートを、例えばカーブ及び勾配等による走行状態の変化が抑制されたルートへの、変更処理であってもよい。事後制御処理は、S112,S108による落下物データDfr,Dflの出力後に、インフラカメラの設置箇所まで自律搬送車両1を駆動することで、外部センタと他の自律搬送車両とのうち少なくとも一種類に対して、荷室20の撮像結果を配信する処理であってもよい。
【0053】
(作用効果)
以上説明した第一実施形態の作用効果を、以下に説明する。
【0054】
第一実施形態では、自律搬送車両1からの荷物9の落下が監視される。そこで第一実施形態によると、落下した荷物9の到達した到達点Prのセンシングにより、当該到達点Prを表す落下物データDfrが出力される。これによれば、落下時に慣性力を受けた荷物9の実際に止まった到達点Prが、出力された落下物データDfrによって報知され得る。故に、落下した荷物9の位置情報を正確に報知することが、可能となる。
【0055】
第一実施形態によると、自律搬送車両1の少なくとも一部分が点旋回駆動されることで、落下した荷物9が同車両1からのセンシングエリアAs内に捕捉されることとなる。これによれば、落下時における自律搬送車両1の走行位置周辺に予想される到達点Prの荷物9は、駆動範囲の制限された自律搬送車両1からは見落としを抑制されて、当該到達点Prをセンシングされ得る。故に、落下した荷物9の位置情報を正確に報知することに対する信頼性を、確保することが可能となる。
【0056】
第一実施形態によると、駆動系3により自律搬送車両1の全体が点旋回駆動されることで、駆動範囲の制限された同車両1からでも的確に、荷物9がセンシングエリアAs内に捕捉され得る。故に、落下した荷物9の位置情報を正確に報知することに対する信頼性を、高めることが可能となる。
【0057】
第一実施形態によると、落下した荷物9としては、落下前にセンシングエリアAs外であった物体が、センシングエリアAs内に捕捉されることとなる。これによれば、落下時における自律搬送車両1の走行位置周辺のうち、落下前にはセンシングエリアAs外であった箇所に予想される到達点Prの荷物9は、自律搬送車両1からの見落としを抑制され易くなるので、当該到達点Prが適正にセンシングされ得る。故に、落下した荷物9の位置情報を正確に報知することに対する信頼性を、高めることが可能となる。
【0058】
第一実施形態では、荷物9の落下した落下点Pfが監視される。そこで第一実施形態によると、到達点Prのセンシングに必要な距離Lsを落下点Pfから空けたセンシング位置Psへ自律搬送車両1が駆動されることで、落下した荷物9がセンシングエリアAs内に捕捉されることとなる。これによれば、落下時における自律搬送車両1の走行位置周辺のうち、落下点Pf周辺に予想される到達点Prの荷物9は、適正なセンシング位置Psの自律搬送車両1とは衝突を抑制されて、当該到達点Prをセンシングされ得る。故に、落下した荷物9の位置情報を正確に報知することに対する信頼性を、高めることが可能となる。
【0059】
第一実施形態によると、荷物9の落下に応じて一旦停止した自律搬送車両1の駆動再開により、落下した荷物9がセンシングエリアAs内に捕捉されることとなる。これによれば、自律搬送車両1の走行位置周辺に予想される到達点Prの荷物9は、一旦停止位置からの駆動では見落としを抑制され易くなるので、当該到達点Prが適正にセンシングされ得る。故に、落下した荷物9の位置情報を正確に報知することに対する高い信頼性を、高めることが可能となる。
【0060】
第一実施形態によると、落下によって自律搬送車両1からの死角エリアAb内へと到達した荷物9は、自律搬送車両1の駆動により探索されることで、センシングエリアAs内に捕捉されることとなる。これによれば、落下時における自律搬送車両1の走行位置周辺に到達点Prの予想される荷物9であっても、死角エリアAb内にまで到達してしまった荷物9については、当該到達点Prを探索によってセンシングすることができる。故に、落下した荷物9の位置情報を正確に報知することに対する高い信頼性を、高めることが可能となる。
【0061】
第一実施形態によると、落下した荷物9の探索が失敗した場合には、到達点Prに代えて、荷物9の落下時点における自律搬送車両1の走行位置を表す落下物データDflが、出力される。これによれば、探索によっても荷物9が見失われてしまった状況では、落下した荷物9に関する最低限の位置情報を報知することが、可能となる。
【0062】
第一実施形態による落下物データDfrは、自律搬送車両1の外部へ配信される。これによれば、落下時に慣性力を受けた荷物9の実際に止まった到達点Prは、配信された落下物データDfrによって報知され得る。故に、落下した荷物9の位置情報を、落下物データDfrの配信先へ正確に報知することが可能となる。
【0063】
第一実施形態によると、落下物データDfrに基づく警報が、自律搬送車両1の外部へ出力される。これによれば、出力された警報により荷物9の落下自体を報知して、搬送環境の安全性を高めることが可能となる。
【0064】
第一実施形態によると、落下物データDfrの出力後には、自律搬送車両1の速度及び姿勢角のうち少なくとも一方に関する最大時間変化率が、荷物9の落下前よりも小さく制御される。これによれば、荷物9の落下が一旦発生すると、速度及び姿勢角の少なくとも一方に関して時間変化が抑制されることで、懸念される残荷物9の落下確率が低減され得る。故に、荷物9の連続落下を抑制して搬送環境の安全性を高めることが、可能となる。
【0065】
第一実施形態によると、可燃性を有する荷物9に関しての落下物データDfrの出力後には、自律搬送車両1の電源がオフされる。これによれば、落下した可燃性荷物9に対する自律搬送車両1の衝突によるリスクを低減して、搬送環境の安全性を高めることが可能となる。
【0066】
(第二実施形態)
図17に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0067】
第二実施形態のセンサ系2004において到達点Prのセンシングに利用される外界センサ2040は、自律搬送車両1の一部分においてセンサ駆動部2042により、360度の点旋回駆動可能に構成されている。
【0068】
このような第二実施形態の搬送処理フローでは、図18,19に示すように、第一実施形態のS104に代わるS2104において出力ブロック110が、自律搬送車両1の一部分においてセンサ駆動部2042を制御することで、当該一部分の外界センサ2040を点旋回駆動する。このときの点旋回駆動も、物体検知タイプの外界センサ2040によって取得の外界情報に基づくことで、同センサ2040からのセンシングエリアAs内に荷物9を捕捉するまで、最大360度の範囲で継続される。またこのとき、S102の火否定判定から移行した場合のS2104に後続するS111での追加駆動が、一旦停止後の自律搬送車両1に対する駆動再開となる。
【0069】
こうした第二実施形態によると、到達点Prをセンシングするセンサ系2004が自律搬送車両1の一部分において点旋回駆動されることで、駆動範囲の制限された同系2004からでも的確に、荷物9がセンシングエリアAs内に捕捉され得る。故に、落下した荷物9の位置情報を正確に報知することに対する信頼性を、高めることが可能となる。
【0070】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0071】
変形例において搬送処理システム10を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。またこうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0072】
変形例の搬送処理フローでは、S102~S103が省かれると共に、S101の実行後に同フローがS104,S2104へ移行してもよい。変形例の搬送処理フローでは、S109~S110が省かれると共に、S108の実行後及びS104,S2104の肯定判定から同フローがS111へ移行してもよい。変形例の搬送処理フローでは、S105~S107が省かれると共に、S104,S2104において否定判定が下された場合は同フローがS108へ移行してもよい。変形例の搬送処理フローでは、S105~S108が省かれると共に、S104,S2104において否定判定が下された場合は同フローの今回実行が終了してもよい。
【0073】
ここまでの説明形態の他に上述の実施形態及び変形例は、自律搬送車両1に搭載可能に構成される搬送処理装置として処理回路(例えば処理ECU等)若しくは半導体装置(例えば半導体チップ等)の形態、又は当該搬送処理装置を搭載した自律搬送車両1として、実施されてもよい。
【0074】
(付言)
本明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0075】
(技術的思想1)
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)の、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理システムであって、
プロセッサは、
自律搬送車両からの荷物の落下を監視することと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される搬送処理システム。
【0076】
(技術的思想2)
落下物データを出力することは、
自律搬送車両の少なくとも一部分を点旋回駆動することにより、落下した荷物を自律搬送車両からのセンシングエリア(As)内に捕捉することを、含む技術的思想1に記載の搬送処理システム。
【0077】
(技術的思想3)
落下物データを出力することは、
自律搬送車両を駆動する駆動系(3)により、自律搬送車両の全体を点旋回駆動することを、含む技術的思想2に記載の搬送処理システム。
【0078】
(技術的思想4)
落下物データを出力することは、
到達点をセンシングするセンサ系(2004)を自律搬送車両の一部分において点旋回駆動することを、含む技術的思想2に記載の搬送処理システム。
【0079】
(技術的思想5)
落下物データを出力することは、
落下した荷物として、当該落下前にセンシングエリア外の物体をセンシングエリア内に捕捉することを、含む技術的思想1~4のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【0080】
(技術的思想6)
荷物の落下を監視することは、
荷物の落下した落下点(Pf)を監視することを、含み、
落下物データを出力することは、
到達点のセンシングに必要な距離(Ls)を落下点から空けたセンシング位置(Ps)へ自律搬送車両を駆動することにより、落下した荷物をセンシングエリア内に捕捉することを、含む技術的思想1~5のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【0081】
(技術的思想7)
落下物データを出力することは、
荷物の落下に応じて一旦停止した自律搬送車両の駆動再開により、落下した荷物をセンシングエリア内に捕捉することを、含む技術的思想1~6のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【0082】
(技術的思想8)
落下物データを出力することは、
落下により自律搬送車両からの死角エリア(Ab)内へ到達した荷物を、自律搬送車両の駆動により探索してセンシングエリア内に捕捉することを、含む技術的思想1~7のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【0083】
(技術的思想9)
落下物データを出力することは、
落下した荷物の探索に失敗した場合に、到達点に代えて、荷物の落下時点における自律搬送車両の走行位置を表す落下物データ(Dfl)を出力することを、含む技術的思想8に記載の搬送処理システム。
【0084】
(技術的思想10)
落下物データを出力することは、
落下物データを、自律搬送車両の外部へ配信することを、含む技術的思想1~9のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【0085】
(技術的思想11)
落下物データを出力することは、
落下物データに基づく警報を、自律搬送車両の外部へ出力することを、含む技術的思想1~10のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【0086】
(技術的思想12)
プロセッサは、
落下物データの出力後に、自律搬送車両の速度及び姿勢角のうち少なくとも一種類に関する最大時間変化率を、荷物の落下前よりも小さく制御することを、さらに実行するように構成される技術的思想1~11のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【0087】
(技術的思想13)
プロセッサは、
可燃性を有する荷物に関しての落下物データの出力後に、自律搬送車両の電源をオフすることを、さらに実行するように構成される技術的思想1~12のいずれか一項に記載の搬送処理システム。
【0088】
(技術的思想14)
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)に搭載可能に構成され、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理装置であって、
プロセッサは、
自律搬送車両からの荷物の落下を監視することと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される搬送処理装置。
【0089】
(技術的思想15)
プロセッサ(12)を有し、荷物(9)を搬送する自律搬送車両であって、
プロセッサは、
荷物の落下を監視することと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、実行するように構成される自律搬送車両。
【0090】
(技術的思想16)
荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)の、当該搬送に関連する処理を遂行する搬送処理方法であって、
自律搬送車両からの荷物の落下を監視することと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングすることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力することとを、含む搬送処理方法。
【0091】
(技術的思想17)
荷物(9)を搬送する自律搬送車両(1)の、当該搬送に関連する処理を遂行するために記憶媒体(11)に記憶され、プロセッサ(12)により実行される命令を含む搬送処理プログラムであって、
命令は、
自律搬送車両からの荷物の落下を監視させることと、
落下した荷物の到達した位置である到達点(Pr)をセンシングさせることにより、当該到達点を表す落下物データ(Dfr)を出力させることとを、含む搬送処理プログラム。
【符号の説明】
【0092】
1:搬送処理システム、3:駆動系、4,2004:センサ系、9:荷物、10:自律搬送車両、11:メモリ、12:プロセッサ、Ab:死角エリア、As:センシングエリア、Dfl,Dfr:落下物データ、Ls:必要距離、Pf:落下点、Pr:到達点、Psセンシング位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19