(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169059
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】加熱ロールプレス用導電性ペースト、導電性積層体、配線板、電子デバイスおよび導電性積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20231121BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20231121BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20231121BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20231121BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231121BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20231121BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231121BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B5/14 B
H01B13/00 503D
B05D5/12 B
B32B27/18 J
H05K1/09 A
H05K1/03 610H
H05K3/12 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080515
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舘野 宏之
【テーマコード(参考)】
4D075
4E351
4F100
5E343
5G301
5G323
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】低コストで体積抵抗率が10μΩcm以下のバルクの金属に近い導通性の高い導体パターンを形成することができる導電性ペーストおよび低コストで導通性の高い導体パターンを提供する。
【解決手段】導電性積層体の製造方法は、平均粒径D50が1~30μmでアスペクト比が1.5~20の銅粉に銅に対して5~30重量%をメッキにより被覆した銀コート銅粉と溶融範囲が150℃以上の樹脂および沸点が150℃から260℃の溶剤を含み銀コート銅粉に対する樹脂の比率が0.5~10.0%である加熱ロールプレス用導電ペーストを、基材にスクリーン印刷によりパターニングし乾燥する工程(塗膜形成工程)を行った後に、100℃~200℃に加熱した状態で、線圧400~4000Nの加熱ロールプレスすることにより、銀コート銅粉が展性されることでバルク金属に匹敵する10μΩcm以下の体積抵抗率を発現する金属光沢を有する回路を形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀コート銅粉と、樹脂と、溶剤とを含有する加熱ロールプレス用導電性ペーストであって、
該銀コート銅粉が、平均粒径D50が1.0~30μmであり、アスペクト比が1.5~20であり、かつ銀コート銅粉中の銀の含有率が5~30質量%である銀コート銅粉を含み、
該樹脂が、融点150℃以上の樹脂を含み、
該溶剤が、沸点150℃~260℃の溶剤を含むことを特徴とする加熱ロールプレス用導電性ペースト。
【請求項2】
前記銀コート銅粉に対する前記樹脂の含有率が、0.5~10.0質量%であることを特徴とする請求項1記載の加熱ロールプレス用導電性ペースト。
【請求項3】
基材上に、請求項1または2に記載の加熱ロールプレス用導電性ペーストを用いて形成されてなる導電膜を有することを特徴とする導電性積層体。
【請求項4】
前記基材が、紙基材、ポリエチレンテレフタレート基材、ポリイミド基材、ポリエチレンナフトレート基材、およびポリアミド基材からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項3記載の導電性積層体。
【請求項5】
請求項3記載の導電性積層体の導電膜側に、さらに絶縁層および/または保護層を有することを特徴とする配線板。
【請求項6】
請求項5記載の配線板を具備してなる電子デバイス。
【請求項7】
基材上に、請求項1または2に記載の加熱ロールプレス用導電性ペーストを、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、およびインクジェット印刷からなる群から選ばれる少なくとも1種の印刷方法により、パターニングされた導電膜を形成する工程を含む導電性積層体の製造方法。
【請求項8】
さらに、導電膜を100℃~200℃に加熱した状態で、線圧400~4000Nの荷重を付与して加熱ロールプレスする工程を含む、請求項7に記載の導電性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性に優れた加熱ロールプレス用導電性ペースト、導電性積層体、配線板、電子デバイスおよび導電性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品、電磁波シールド用、RFIDアンテナの薄膜形成手段あるいは導電回路の形成手段として、一般的に、エッチング法および印刷法が知られている。エッチング法とは、ポリイミドフィルム、エポキシ等の基盤に銅やアルミニウムを接着剤で貼合し、金属の表面や形状を、化学あるいは電気化学的に溶解除去し、その表面処理を含めた広義の加工技術の意である。エッチングは、化学加工の一種であり、主に金属膜に希望のパターン形状を得るために行われるが、一般的に工程が煩雑であり、また後工程で廃液処理が必要であるため、費用もかかり問題が多い。
電子回路や、電磁波シールド材、RFIDアンテナを作成する際、導電性ペーストを印刷して所定のパターンの導体回路を形成する方法が知られている。一般的に導電性ペーストは、金属粉体を樹脂および溶剤等のバインダー成分に混合する事により製造する。ここで金属粉体としては銅、アルミニウム、ニッケルなどの卑金属類は安価であるが粉体にした時に酸化してしまい良好な導電性が得られない。したがって、一般的には大気中の酸素に酸化されにくい銀、パラジウム、プラチナ、金が用いられるがこの中で価格が安い銀が用いられることが多い。
【0003】
しかしながら、銀粉も卑金属と比べ100倍程度の価格差があり、低コスト化が望まれている。
これらの問題を克服するために特許文献1では銅粉表面の少なくとも一部を銀で覆った銀コート銅粉末と、ガラス転移温度(Tg)が35~170℃のセルロース誘導体から成るバインダー樹脂を含有し、印刷後にプレスして成型する導体成型方法が提案されている。
しかしながら、プレス加工を行っても得られた導体の比抵抗(体積抵抗率)は50μΩcmであり、アルミニウムや銅をエッチングによりパターン形成を行った回路の比抵抗には届かない。
【0004】
本発明は上記の点を鑑みて低コストで体積抵抗率が10μΩcm以下のバルクの金属に近い導電性を有し、更に流動性が良好で印刷適性に優れた加熱ロールプレス用導電性ペーストおよび導体パターンを提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、低コストで体積抵抗率が10μΩcm以下のバルクの金属に近い導通性の高い導体パターンを形成することができる導電性ペーストを提供することを目的とする。また、低コストで導通性の高い導体パターンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の銀コート銅粉、樹脂、溶剤を含む導電性ペーストが優れた導電性を発揮することに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、銀コート銅粉と、樹脂と、溶剤とを含有する加熱ロールプレス用導電性ペーストであって、該銀コート銅粉が、平均粒径D50が1~30μmであり、アスペクト比が1.5~20であり、かつ銀コート銅粉中の銀の含有率が5~30質量%である銀コート銅粉を含み、該樹脂が、融点150℃以上の樹脂を含み、該溶剤が、沸点150℃~260℃の溶剤を含むことを特徴とする加熱ロールプレス用導電性ペーストに関する。
【0009】
また、本発明は、前記銀コート銅粉に対する前記樹脂の含有率が、0.5~10.0質量%であることを特徴とする前記の加熱ロールプレス用導電性ペーストに関する。
【0010】
また、本発明は、基材上に、前記の加熱ロールプレス用導電性ペーストを用いて形成されてなる導電膜を有することを特徴とする導電性積層体に関する。
【0011】
また、本発明は、前記基材が、紙基材、ポリエチレンテレフタレート基材、ポリイミド基材、ポリエチレンナフトレート基材、およびポリアミド基材からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする前記の導電性積層体に関する。
【0012】
また、本発明は、前記の導電性積層体の導電膜側に、さらに絶縁層および/または保護層を有することを特徴とする配線板に関する。
【0013】
また、本発明は、前記の配線板を具備してなる電子デバイスに関する。
【0014】
また、本発明は、基材上に、前記の加熱ロールプレス用導電性ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷、およびインクジェット印刷からなる群から選ばれる少なくとも1種の印刷方法により、パターニングされた導電膜を形成する工程を含む導電性積層体の製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、さらに、導電膜を100℃~200℃に加熱した状態で、線圧400~4000Nの荷重を付与して加熱ロールプレスする工程を含む、前記の導電性積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
上記の本発明によれば、複雑なエッチング工程を行わなくとも印刷方式により低コストでバルク金属と同レベルの導電性を有する配線パターンを効率良く提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する要件等の説明は本発明の実施態様の代表例であり、その趣旨を超えない限りこれらの内容に制限されるものではない。
【0019】
<導電性ペースト>
本発明の導電性ペーストは、加熱ロールプレス用に用いることができ、導電性物質、樹脂、および溶剤を含むことを特徴とする。
【0020】
(導電物質)
本発明の導電性物質としては、銀コート銅粉を含むことが特徴であり、さらに、銀コート銅粉が、平均粒径D50が1.0~30μmであり、アスペクト比が1.5~20であり、かつ銀コート銅粉中の銀の含有率が5~30質量%である銀コート銅粉を含むことが特徴である。
銀コート銅粉の平均粒径D50は1.0~30μmであり、好ましくは1.5~15μm、より好ましくは2~10μmである。平均粒径が1μm未満の場合はナノ物質となり価格が高く取扱いが困難となる。また、平均粒径D50が30μmよりも大きい場合はD90~D95の粒径が50~100μmとなりスクリーンメッシュに銀コート銅が詰まり良好なパターニングができなくなると共に流動性が乏しく印刷が困難となる。
【0021】
銀コート銅粉のアスペクト比は1.5~20、より好ましくは2~10であり、球状および扁平状粒子の混合物が好ましい。
球状粒子と扁平状粒子により粒子の充填量が高くなり加熱ロールプレスした際に低抵抗化が可能となる。アスペクト比が1.5未満の粒子では充填量が低くなり導電性が乏しくなり、アスペクト比が20を超える粒子では樹脂及び溶剤からなるバインダーに分散した際にペーストとして流動性が乏しく印刷性が損なわれる。
【0022】
平均粒径D50は銀コート銅粉をイソプロピルアルコール(IPA)中に0.1質量%添加し超音波撹拌機にて分散しマイクロトラック・ベル社製レーザー散乱回折型粒子径分布測定装置MT3000IIにて測定した。
【0023】
アスペクト比は、[平均長径(μm)]/[平均厚さ(μm)]で算出されるものである。このときの平均長径(μm)は、走査型電子顕微鏡で適正な倍率(2000倍前後)の観察像を得て、その観察像の中にある30個前後の粒子の長径及び厚さを直接観察して、その平均値として得られた値を用いた。一方、銀コート銅粉の平均厚さは、まず銀コート銅粉をエポキシ樹脂で固めた試料を製造し、次にその試料の断面を走査型電子顕微鏡(倍率2000倍)で直接観察し、視野内にある銀コート銅粉の30個前後の厚さの総和を粒子の個数で除して求めた。
【0024】
銀コート銅粉中の銀の含有率は5~30質量%、好ましくは5~20質量%である。銀コート銅粉中の銀の含有率は、銀による被覆量を示し、5重量%未満の場合は銅粉を完全に被覆する事が出来ずに酸化され導電性を損ねる。また、30重量%を超えるとコスト高となる。
【0025】
銀コート銅粉と併用できる導電物質としては、金粉、銀粉、プラチナ粉および銀コートニッケル粉、銀コート銅ニッケル合金粉、銀コート銅ニッケル亜鉛合金粉、銀コートアルミ粉などが挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(樹脂)
本発明の導電性ペーストに用いられる樹脂について説明する。
本発明の導電性ペーストに用いられる樹脂は、融点が150℃以上樹脂を含有することを特徴とする。融点が150℃以上の樹脂としては、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン樹脂、ポリアミドイミド、アセチルセルロース、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂などが挙げられるが、沸点150℃~260℃の溶剤への溶解性とペーストにした時の印刷性の観点からセルロースアセテートプロピオネート樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
樹脂の融点は150℃~300℃が好ましく、より好ましくは、200℃~280℃である。溶融温度が150℃未満の樹脂は熱プレスを行った際にヒートロール上で溶融してしまい導電膜が形成できない。また、溶融温度が300℃を超える樹脂は沸点150℃~260℃の溶剤と溶解しないためペーストとして良好な流動性が得られない。
尚、融点は三商社製融点測定機にて測定した。
【0027】
銀コート銅粉に対する樹脂の含有率は、好ましくは0.5~10.0質量%であり、より好ましくは2.0~8.0質量%である。銀コート銅に対する樹脂の比率が10.0%質量以下であれば、良好な体積抵抗率が得られ、0.5質量%以上であれば、銀コート銅粉が固着せず良好な被膜が得られる。
【0028】
(溶剤)
本発明の導電性ペーストに用いられる溶剤としては、沸点150~260℃の溶剤を含むことを特徴とする。溶剤の沸点は、より好ましくは180~250℃である。
沸点が150℃以上であれば、後述する3本ロールミル分散にて溶剤が揮発しないため、良好な分散が得られる。更にスクリーン印刷に於いて印刷中に溶剤が揮発しないため安定した印刷物が得られる。
【0029】
また、沸点260℃以下の溶剤であれば高温での乾燥が不要なため、基材にダメージを与えることがなく、残留溶剤により導電性が不安定となることも無い。
【0030】
市販の沸点150~260℃の炭化水素系溶剤としては、例えばENEOS製T-SOL100、150、3040、AN45、カクタスソルベントP100、P150、P180、カクタスファインSF-01、SF-02、ハイゾール100、SS―100、SS-150、ナフテゾール160,200、220、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、YHNP、SHNP、NSクリーン100、110、200、220、230、ドライソルベントハイソフト、テリクリーンN16、N20、N22、クレンゾルHS、ミネラルスプリット、Aソルベント、ベースソルベント21、フォッグソルベント、LSソルベント、AFソルベント、0号ソルベント、アイソゾール300、400、エクソンモービル製エクソゾールD40、D60、D80、D95、D110、アイソパーG、H、L、M、アクア化学製のアクアソルベントGF、G71、AQ#300、AQ#500、D200、D400、SP20、Z-G3、Z-71,アクワフレラックスAQ#100などが挙げられる。
【0031】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、3-ペンタノン、2-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、ガンマーブチルラクトン等が挙げられる。
【0032】
芳香系溶剤としてはジエチルベンゼン、C5~C20のアルキルベンゼン、クロロベンゼン等が挙げられる。
【0033】
アルコール類としては、ヘキサノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、べンジルアルコール等が挙げられる。セロソルブ類としてはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ等が挙げられる。
【0034】
エーテル類では、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル等が挙げられる。
【0035】
エステル類としては、酢酸オクチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、等が挙げられる。
【0036】
本発明の導電性ペーストにおける溶剤の含有量は、5%~30%が好ましく10%~20%がより好ましい。加熱ロールプレス用導電性ペーストの溶剤が5%以上であれば粘度が良好であるため印刷性が良好となる。また、30%以下であれば固形分が少なく印刷した際に充分な膜厚が保てるため好ましい。
【0037】
(その他の成分)
次に、その他の成分について説明する。本発明の導電性ペーストには、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル補足剤、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、アルミキレート、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0038】
(導電ペーストの製造)
導電ペーストは、導電性物質と、樹脂、有機溶剤、必要に応じて、その他添加剤とを、分散、混合して得られるが、導電性ペーストを得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
【0039】
例えば、3本ロールミル、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー、遊星式撹拌機等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS-5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
<導電性積層体>
本発明の導電性積層体は、基材と、本発明の導電ペーストを用いて形成されてなる導電回路(導電膜)とを有する。
【0041】
基材としては、紙あるいはプラスチックなどを使用することができる。紙基材としては、コート紙、マット紙、非コート紙、その他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できるが、安定した抵抗値を得るためには、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど好ましい。
【0042】
また、プラスチック基材としては、耐熱性が高いポリエチレンテレフタレート基材、ポリイミド基材、ポリエチレンナフトレート基材、ポリアミド基材等からなる基材が使用できる。基材はシート状であってもよいし、ロール状、ブロック状のものであってもよい。
【0043】
この中でも紙基材、ポリエチレンテレフタレート基材、ポリイミド基材、ポリエチレンナフトレート基剤、ポリアミド基材が好ましい。
【0044】
導電回路を形成する前工程において、基材との密着性を高める目的で、基材にコロナ処理、プラズマ放電処理、フレーム処理等の表面改質処理を行っても良く、更に基材にアンカーコート剤や各種ワニスを塗工してもよい。また、導電回路形成後に回路の保護を目的として発泡体、スポンジ(保護層)などを貼合せたり、樹脂でコーティング(絶縁層)しても良い。
更に回路と検出装置等との接合部にエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等をバインダーとした導電性カーボンペーストを重ね刷りして保護することもできる。
【0045】
<導電性積層体の製造方法>
本発明の熱プレス用導電ペーストを基材に印刷することで被膜層を形成し、さらに乾燥することで基材上にパターニングされた導電膜を形成し、本発明の導電性積層体を得ることができる。印刷方法は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、、グラビア印刷、フレキソ印刷、グラビアオフセット印刷等が挙げられるところ、スクリーン印刷が好ましい。
具体的な導電膜の形成は、例えば、円筒状のスクリーン版を用いてロータリースクリーン印刷を行い所望のパターンを作製できる。
【0046】
乾燥はボックス型オーブン、熱風および赤外線電気炉等を用いて60℃~180℃、より好ましくは80℃~150℃で乾燥する。乾燥温度が60℃以下だと溶剤が残留し抵抗値が高くなる。また、180℃以上では基材が損傷し易くなる。
【0047】
<加熱ロールプレス>
印刷により得られたパターンニングされた導電膜を100℃~200℃に加熱した状態で、線圧400~4000Nの荷重を付与し加熱ロールプレスすることで体積固有抵抗率が10μΩcm以下のバルク金属に匹敵する導電膜が得られる。
加熱プレス機はフラットタイプと加熱ロールタイプが存在するが本発明に用いるプレス機は2本の100~200℃に加熱されたローラー間を線圧400~4000Nの荷重を掛けられる加熱ロールプレス機が好ましい。加圧方式は機械式、油圧式などがあるが、所定の温度および圧力が得られればどちらでも良い。
【0048】
<導電膜を有する配線板>
本発明の配線板は、基材と、加熱ロールプレス用銀コート銅ペーストから形成された導電膜と絶縁層および/または保護層とを備える。導電膜は信号配線として機能し、例えば、配線回路、グランド配線、アンテナ配線等の電気信号等として通電できる。配線板は、例えば、プリント基板、フレキシブルプリント基板としての使用等が挙げられる。
【0049】
<配線板を具備してなる電子デバイス>
本発明の電子デバイスは、配線板を備えている。電子デバイスは、太陽電池、タッチパネル、非接触ID等が挙げられる。
【0050】
図1は配線板を使用した基本構成の一例である。例えばポリエステルフィルム等の3基材上に本発明の加熱ロールプレス用銀コート銅ペーストをスクリーン印刷等で2信号配線のパターニングし加熱乾燥および加熱ロールプレスを行った後に、1絶縁層(保護層)を必要な部分に印刷する。
【0051】
図2は非接触IDの構成の一例を表す。8基材に本発明の加熱乾燥および熱プレスを施した加熱ロールプレス用銀コート銅ペーストによりパターニングおよび加熱ロールプレスされた6導電アンテナに7ICチップを接合し、5粘着剤を用いて4保護フィルムを貼る。
ここでICチップは、データの記憶、蓄積、演算をおこなうものである。非接触IDは、RFID(Radio Frequnecy Identification)、非接触ICカード、非接触ICタグ、データキャリア(記録媒体)、ワイヤレスカードとして、リーダー、あるいはリーダーライターとの間で、電波を使用して個体の識別やデータの送受信を行うものである。その使用用途としては、例えば、料金徴収システム等のID管理と履歴管理、道路利用状況管理システムや貨物、荷物追跡・管理システム等の位置管理がある。
【実施例0052】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「質量部」を意味する。
【0053】
<導電性物質の平均粒径>
平均粒径D50は導電性物質をイソプロピルアルコール(IPA)中に0.1重量%添加し超音波撹拌機にて分散しマイクロトラック・ベル社製レーザー散乱回折型粒子径分布測定装置MT3000IIにて測定した。
【0054】
<導電性物質の厚みおよびアスペクト比>
走査型電子顕微鏡にて30個の粒子の平均長径を直接観察して、更に導電性物質を市販エポキシ樹脂で固めた試料を作製し、その試料の断面を走査型電子顕微鏡(倍率2000倍)で直接観察し、視野内にある微粒子30個の平均厚さを求め平均アスペクト比を計算した。なお走査型電子顕微鏡は日立ハイテクノロジーズ株式会社社製 TM-1000を用いた。
【0055】
<樹脂溶液の調整>
(バインダー1の調整)
イーストマンケミカル製セルロースアセテートプロピオネート樹脂CAP-482-0.5(融点188℃)40部をエチルジグリコールアセテート(沸点214℃)60部に80℃にて加熱溶解しバインダー1を得た。
【0056】
(バインダー2の調整)
日本触媒製ポリビニルピロリドンK-30(融点225℃)40部をエチレングリコール(沸点197℃)60部に80℃にて加熱溶解しバインダー2を得た。
【0057】
(バインダー3の調整)
三菱瓦斯化学製ポリカーボネート樹脂PCZ220(融点261℃)40部をイソホロン(沸点215℃)60部に80℃にて加熱溶解しバインダー3を得た。
【0058】
(バインダー4の調整)
イーストマンケミカル製セルロースアセテートブチレート樹脂CAB-381-0.1(融点155℃)40部をエチルジグリコールアセテート(沸点214℃)60部に80℃にて加熱溶解しバインダー4を得た。
【0059】
(バインダー5の調整)
三菱ケミカル製エポキシ樹脂JER4250(融点105℃)40部をブチルジグリコールアセテート(沸点247℃)60部に80℃にて加熱溶解しバインダー5を得た。
【0060】
(バインダー6の調整)
イーストマンケミカル製セルロースアセテートプロピオネート樹脂CAP-482-0.5(融点188℃)40部をエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)60部に80℃にて加熱溶解しバインダー6を得た。
【0061】
(バインダー7の調整)
日本触媒製ポリビニルピロリドンK-30(融点225℃)40部をテトラエチレングリコールジメチルエーテル(沸点275℃)60部に80℃にて加熱溶解しバインダー7を得た。
【0062】
<銀コート銅粉>
(銀コート銅粉(1))
DOWAエレクトロニクス製の球状および扁平状粒子の混合物(平均粒径4.5μm、アスペクト比2.5、銀の含有率10質量%)を銀コート銅粉(1)とした。
(銀コート銅粉(2))
DOWAエレクトロニクス製の球状および扁平状粒子の混合物(平均粒径4.5μm、アスペクト比3.4、銀の含有率20質量%)を銀コート銅粉(2)とした。
(銀コート銅粉(3))
DOWAエレクトロニクス製の球状および扁平状粒子の混合物(平均粒径8.5μm、アスペクト比7.8、銀の含有率10質量%)を銀コート銅粉(3)とした。
(銀コート銅粉(4))
DOWAエレクトロニクス製のフレーク状銀コート銅粉(平均粒径15.0μm、アスペクト比25、銀の含有率20質量%)を銀コート銅粉(4)とした。
(銀コート銅粉(5))
三井金属工業製の球状銀コート銅粉(平均粒径0.9μm、アスペクト比1.1、銀の含有率10質量%)を銀コート銅粉(5)とした。
【0063】
<導電ペーストの作成>
(実施例1)
バインダー(1)5.0部、銀コート銅粉(1)81.0部、エチルジグリコールアセテート14.0部を配合し、自転公転式撹拌機を用いて混合することで、導電性ペースト1を得た。
【0064】
(実施例2~7、比較例1~5)
配合種、および配合量を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、導電性ペースト2~12を得た。
【0065】
<体積抵抗率の測定>
導電膜の体積抵抗率を測定し、導電性を評価した。
紙基材である三菱製紙製マット紙(坪量127.9g/m2)上に導電性ペーストを15×30mmのパターン8個を有するステンレススクリーン版(スクリーンメッシュ200線/インチ、線形40μm)を用いて印刷し、循環式ボックス型オーブンにて80℃、30分間乾燥後に、サンクメタル社製加熱ロールプレス機に150℃、線圧2800N、0.5m・分の条件で加熱ロールプレスを行い4探深抵抗測定器(三菱ケミカルアナリテック製ロレスタGP)を用いて表面抵抗率を求め、更に電子顕微鏡にて断面写真を測定し膜厚を求め体積抵抗率を算出した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:体積抵抗率6μΩcm未満
B:体積抵抗率6μΩcm以上8μΩcm未満
C:体積抵抗率8μΩ以上10μΩcm未満
D:体積抵抗率10μΩcm以上
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0066】
<加熱ロールプレス適性>
紙基材である三菱製紙製マット紙(坪量127.9g/m2)上に導電性ペーストを15×30mmのパターン8個を有するステンレススクリーン版(スクリーンメッシュ200線/インチ、線形40μm)を用いて印刷し、循環式ボックス型オーブンにて80℃、30分間乾燥後に、サンクメタル社製加熱ロールプレス機に150℃、線圧2800N、0.5m・分の条件で加熱ロールプレスを行った際に印刷された導電性ペーストが加熱ロールプレス機の加熱ロールへの転移した割合を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
(評価基準)
A:導電性ペーストの加熱ロールへの転移無し
B:導電性ペーストが2%未満加熱ロールに転移
C:導電性ペーストが2%以上5%未満加熱ロールに転移
D:導電性ペーストの5%以上が加熱ロールに転移
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0068】
<流動性>
E型粘度計TV250H(東機産業株式会社製)、ローターNo.5を用いて25℃環境下で、ローター回転数が2回転、5回転および20回転時の粘度をそれぞれ測定し、流動性を評価した。また粘度およびチキソトロピーインデックス値(TI値)の値を以下定義する値であり、粘度は回転開始から2分後の数値を用いた。結果を表1に示す。
・粘度: 5回転で測定した粘度
・TI値=(2回転の粘度)/(20回転の粘度)
【0069】
(評価基準(粘度))
A:粘度が3Pa・s以上30Pa・s未満(良好)
B:粘度が30Pa・s以上80Pa・s未満(使用可)
C:粘度が80Pa・s以上150Pa・s未満(やや不良)
D:粘度が150Pa・s以上250Pa・s未満(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0070】
(評価基準(TI値))
A:TI値=1以上1.5未満(良好)
B:TI値=1.5以上3未満(使用可)
C:TI値=3以上5未満(やや不良)
D:TI値=5以上(不良)
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0071】
<印刷適性評価>
得られた加熱ロールプレス用導電性ペーストをセミオート型スクリーン印刷機SSA-PC250IP(セリアコーポレーション)にステンレススクリーン版(200メッシュ200線/インチ、線形40μm)を装着し、ポリエステルフィルム(東レ製PETフィルム「ルミラーT60」、厚さ100μm)上に枚葉印刷して50×100mmのパターンの被膜層を形成した。合計100枚印刷し、100枚目の印刷物を80℃に加熱した循環式加熱オーブンにて乾燥させ印刷状態を目視で評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:掠れが無く平滑性が良好
B:掠れが無く平滑性がやや悪い
C:掠れが有り平滑性がやや悪い
D:掠れが多く平滑性が悪い
なお、実用レベルの評価はA~Cである。
【0072】
【0073】
実施例1~3、実施例5および実施例6は全ての評価で実用レベルであった。
実施例4は全ての評価で実施例1~3、実施例5および実施例6に若干劣るが実用レベルであった。
銀コート銅に対する樹脂の比率が高い実施例7は体積抵抗率、粘度、TI値が高いが実用レベルであった。
【0074】
比較例1は加熱ロールプレス上に100%転移してしまい体積抵抗率の測定が出来なかった。
粒径およびアスペクト比が大きい銀コート銅粉を使用した比較例2は体積抵抗率が高く、粘度、TI値、印刷適性の点で実用レベルに至らなかった。
粒径が小さくアスペクト比も小さい銀コート銅粉を使用した比較例3も体積抵抗率が高く実用レベルに至らなかった。
沸点が145℃のエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを使用した比較例4は印刷中に溶剤が揮発し粘度が上昇してしまい印刷性の点で不適であった。また掠れが多く体積抵抗率も不適であった。
沸点が275℃のテトラエチレングリコールジメチルエーテルを使用した比較例5は溶剤が残留してしまい体積抵抗率、加熱ロールプレス適性の項目で不適であった。