(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169067
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】燃焼炉
(51)【国際特許分類】
F23G 5/32 20060101AFI20231121BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20231121BHJP
F23L 1/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
F23G5/32
F23G5/44 G
F23L1/00 Z
F23L1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080541
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】510093336
【氏名又は名称】飛田和 義行
(71)【出願人】
【識別番号】597027796
【氏名又は名称】松竹 孝元
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【弁理士】
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】飛田和 義行
(72)【発明者】
【氏名】松竹 孝元
【テーマコード(参考)】
3K023
3K065
3K261
【Fターム(参考)】
3K023BA01
3K023GA00
3K065AA23
3K065AB01
3K261AA04
3K261EA03
3K261EA09
(57)【要約】
【課題】
燃焼処理物の高温焼却が可能であって有害物質の発生を抑制することができる焼却炉の提供。
【解決手段】
燃焼炉1は、内側に燃焼室20を備える筐体2と、空気通路8を通って燃焼室20に燃焼用空気Aを送る送風機3と、燃焼室20に設置され、燃焼用空気Aを供給する吹出部21と、を有している。燃焼室20には燃焼後の空気が排出される排気口2aが設けられている。吹出部21は、燃焼用空気Aを、燃焼室20の内壁20Aから燃焼室20内に向けて、内壁20Aに沿う方向であって排気口2a側に傾斜した方向に噴出する第1吹出部22Aと、第1吹出部22Aよりも排気口2aに近い位置に設置され、第1吹出部22A側に傾斜する方向に燃焼用空気Aを噴出する押さえ部23と、を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に燃焼室を備える筐体と、
空気通路を通って前記燃焼室に燃焼用空気を送る送風機と、
前記燃焼室に設置され、前記燃焼用空気を供給する吹出部と、を有し、
前記燃焼室には燃焼後の空気が排出される排気口が設けられ、
前記吹出部は、
前記燃焼用空気を、前記燃焼室の内壁から前記燃焼室内に向けて、前記内壁に沿う方向であって前記排気口側に傾斜した方向に噴出する第1吹出部と、
前記第1吹出部よりも前記排気口に近い位置に設置され、前記第1吹出部側に傾斜する方向に前記燃焼用空気を噴出する第2吹出部と、を有することを特徴とする燃焼炉。
【請求項2】
前記吹出部は、前記燃焼用空気を、前記燃焼室の内壁から前記燃焼室内に向けて、前記内壁に沿う方向であって前記排気口と反対方向に噴出する第3吹出部をさらに有し、
前記第3吹出部は、前記第2吹出部よりも前記排気口から遠い位置に設置されていて、
前記第2吹出部は、前記第1吹出部側及び前記第3吹出部側に傾斜する方向に前記燃焼用空気を噴出していることを特徴とする請求項1に記載の燃焼炉。
【請求項3】
前記第2吹出部は、前記内壁から前記燃焼室内に向けて、前記第1吹出部側に傾斜する方向に前記燃焼用空気を噴出することを特徴とする請求項1に記載の燃焼炉。
【請求項4】
前記燃焼室には、前記第2吹出部を備えた支持軸が設けられていて、
前記第2吹出部は、前記支持軸の前記排出口側の端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼炉。
【請求項5】
前記空気通路に配置され、磁石を備える磁気通路をさらに有し、
前記磁気通路は二重管構造であって、外管と、内管と、を有し、
前記内管にはスパイラル状に壁が設けられ、前記外管には前記磁石が設けられ、前記燃焼用空気は前記内管と前記外管との間の溝を通過することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の燃焼炉。
【請求項6】
前記送風機の吸気側又は排気側のいずれか一方には、セラミック材が収納されたイオン部が設けられ、
前記燃焼用空気は、前記イオン部を通過して前記送風機により前記燃焼室に供給されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の燃焼炉。
【請求項7】
内側に燃焼室を備える筐体と、
空気通路を通って前記燃焼室に燃焼用空気を送る送風機と、
前記燃焼室に設置され、前記燃焼用空気を供給する吹出部と、を有し、
前記燃焼室には燃焼後の空気が排出される排気口が設けられ、
前記吹出部は、
支持軸と、
前記支持軸に回転可能に設けられ、前記燃焼用空気を噴出する第1吹出部と、
前記第1吹出部よりも前記排気口に近い位置に設置され、前記第1吹出部側に傾斜する方向に前記燃焼用空気を噴出する第2吹出部と、を有し、
前記第1吹出部は、前記燃焼用空気が吹き出す推力によって前記支持軸に対して回転することを特徴とする燃焼炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼炉に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼処理物を焼却するための燃焼炉では、ダイオキシン等の有害物質を熱分解するために800℃以上の高温に設定され高温焼却炉が利用されるが、温焼却炉では燃焼室の温度を高く保つために多くの燃料が必要となりランニングコストが高い。また、水分を含む燃焼処理物を燃焼させると、燃焼温度が低下して有害物質が発生する虞があった。
【0003】
特許文献1の焼却炉では、800℃以下の低温であっても触媒によって有害物質を無害化している。触媒は高温の排気によって劣化するため、排気を触媒通過前に冷却することにより触媒の長寿命化を図ることができる。低温焼却であれば燃料使用量を抑えることができるため、ランニングコストの低減化が期待される。
【0004】
特許文献2の焼却炉では、燃焼後の燃焼ガスを燃焼ガス処理装置に送り水分を除去するとともに通路部を通過することによってセラミックで煙、におい、又はその両方を除去することができる。通路部は、複数の孔が形成された板状部材であるセラミックが複数積層されていて、当該板状部材の孔を燃焼後の燃焼ガスが通過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-200352号公報
【特許文献2】特開2010-281486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に記載の燃焼炉では、焼却対象物の種類によっては多量の煙が発生するため高温焼却を行う必要がある。高温焼却では燃焼のための燃料が多く必要となり、ランニングコストが嵩んでしまう。低温焼却を行った場合は、焼却対象物が不完全燃焼のまま焼却残渣として残るとともに、燃焼ガスから有害物質を除去のためのアフターバーナーやフィルタ装置等が必要となり導入コストが高くなってしまう。
【0007】
燃焼ガスに含まれるダイオキシンを熱分解するためには、炉内の温度を800℃以上として滞留時間が2秒以上となることが望ましい。燃焼室内の温度を800℃以上に保つために燃料を供給してバーナーによって高温状態を維持することが行われているが、低コストで高温状態を維持することが可能な焼却炉が求められていた。
【0008】
そこで本発明は、燃焼処理物の高温焼却が可能であって有害物質の発生を抑制することができる焼却炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために第1の本発明は、内側に燃焼室を備える筐体と、空気通路を通って前記燃焼室に燃焼用空気を送る送風機と、前記燃焼室に設置され、前記燃焼用空気を供給する吹出部と、を有し、前記燃焼室には燃焼後の空気が排出される排気口が設けられ、前記吹出部は、前記燃焼用空気を、前記燃焼室の内壁から前記燃焼室内に向けて、前記内壁に沿う方向であって前記排気口側に傾斜した方向に噴出する第1吹出部と、前記第1吹出部よりも前記排気口に近い位置に設置され、前記第1吹出部側に傾斜する方向に前記燃焼用空気を噴出する第2吹出部と、を有することを特徴とする燃焼炉を提供している。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の燃焼炉であって、前記吹出部は、前記燃焼用空気を、前記燃焼室の内壁から前記燃焼室内に向けて、前記内壁に沿う方向であって前記排気口と反対方向に噴出する第3吹出部をさらに有し、前記第3吹出部は、前記第2吹出部よりも前記排気口から遠い位置に設置されていて、前記第2吹出部は、前記第1吹出部側及び前記第3吹出部側に傾斜する方向に前記燃焼用空気を噴出していることを特徴としている。
【0011】
第3の発明では、第1の発明の燃焼炉であって、前記第2吹出部は、前記内壁から前記燃焼室内に向けて、前記第1吹出部側に傾斜する方向に前記燃焼用空気を噴出することを特徴としている。
【0012】
第4の発明は、第1の発明の燃焼炉であって、前記燃焼室には、前記第2吹出部を備えた支持軸が設けられていて、前記第2吹出部は、前記支持軸の前記排出口側の端部に設けられていることを特徴としている。
【0013】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかの燃焼炉であって、前記空気通路に配置され、磁石を備える磁気通路をさらに有し、前記磁気通路は二重管構造であって、外管と、内管と、を有し、前記内管にはスパイラル状に壁が設けられ、前記外管には前記磁石が設けられ、前記燃焼用空気は前記内管と前記外管との間の溝を通過することを特徴としている。
【0014】
第6の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかの燃焼炉であって、前記送風機の吸気側又は排気側のいずれか一方には、セラミック材が収納されたイオン部が設けられ、
前記燃焼用空気は、前記イオン部を通過して前記送風機により前記燃焼室に供給されることを特徴としている。
【0015】
第7の発明は、内側に燃焼室を備える筐体と、空気通路を通って前記燃焼室に燃焼用空気を送る送風機と、前記燃焼室に設置され、前記燃焼用空気を供給する吹出部と、を有し、前記燃焼室には燃焼後の空気が排出される排気口が設けられ、前記吹出部は、支持軸と、前記支持軸に回転可能に設けられ、前記燃焼用空気を噴出する第1吹出部と、前記第1吹出部よりも前記排気口に近い位置に設置され、前記燃焼室の内壁から前記燃焼室内に向けて、前記第1吹出部側に傾斜する方向に前記燃焼用空気を噴出する第2吹出部と、を有し、前記第1吹出部は、前記燃焼用空気が吹き出す推力によって前記支持軸に対して回転することを特徴とする燃焼炉を提供している。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によると、第1吹出部によって燃焼用空気が内壁を沿いながら排気口側に向けて噴出されることにより、筐体内に回転上昇気流が発生する。同時に、第2吹出部から排気口と反対側に向けて燃焼用空気が噴出されることにより、回転上昇気流が排気口から排気されることを抑制して燃焼用空気を長い時間燃焼室に留まらせる。これにより、燃焼室の燃焼効率を向上させるとともに燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。また、燃焼処理物自身が高温で燃焼するため、温度を維持するための追加の燃料投下が不要となり、ランニングコストを低減できる。
【0017】
第2の発明によると、第3吹出部が内壁に沿う方向であって排気口と反対側に燃焼用空気を噴出するため、燃焼室内で回転上昇気流が乱流となり燃焼用空気と燃料とが混合される。これにより、燃焼室の燃焼効率を向上させるとともに燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。
【0018】
第3の発明によると、第2吹出部が内壁から燃焼室内に向けて燃焼用空気を噴出するため、燃焼室内に部材等を配置する必要がない。これにより、燃焼室を広く確保することができるとともに、燃焼室の燃焼効率を向上させ燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。また、内壁から燃焼用空気を噴出するため、燃焼室内に配管等を配置する必要がない。これにより、高温による配管等の部材の劣化を防止できる。
【0019】
第4の発明によると、燃焼室に設けられた支持軸の端部に第2吹出部が設けられているため、燃焼炉の周囲に燃焼用空気を供給するための配管を設置する必要がない。これにより、燃焼炉を小型化及び簡素化することができる。
【0020】
第5の発明によると、燃焼用空気が磁気通路を通過して筐体に供給されるため、磁気通路通過の際に磁石によって磁気通路通過時の空気の流れが湾曲する。これにより、燃焼用空気の流れが不安定な状態で筐体内に供給されるため、燃焼室の燃焼効率を向上させるとともに燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。また、燃焼用空気は磁石を保持する外管とスパイラル状の壁が設けられた内管との間の溝を通過するため、溝通過の際に磁石によって空気の流れが湾曲する。これにより、燃焼用空気の流れが不安定な状態で筐体内に供給されるため、燃焼室の燃焼効率を向上させるとともに燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。
【0021】
第6の発明によると、送風機の吸気側又は排気側のいずれか一方にはセラミック材が収納されたイオン部が設けられているため、燃焼用空気に各種イオンを含有させた状態で筐体に供給することができる。これにより、燃焼室の燃焼効率を向上させるとともに燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。
【0022】
第7の発明によると、燃焼用空気が第1吹出部によって回転しながら供給されることにより、筐体内に支持軸を中心とした回転気流が発生する。同時に、第2吹出部から第1吹出部側に向けて燃焼用空気が噴出されることにより、回転気流が排気口から排気されることを抑制して燃焼用空気を長い時間燃焼室に留まらせる。これにより、燃焼室の燃焼効率を向上させるとともに燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。
【0023】
本発明によれば、燃焼処理物の高温焼却が可能であって有害物質の発生を抑制できる焼却炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉の外観図。
【
図2】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉の構成を表す図。
【
図3】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉の筐体の断面図。
【
図4】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉の筐体の断面図。
【
図5】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉のセラミック部の分解斜視図。
【
図6】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉の第1磁気通路の斜視図。
【
図7】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉の第1磁気通路の側面図。
【
図8】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉の第2磁気通路の断面図。
【
図9】本発明の第1の実施の形態の燃焼炉の動作フローチャート。
【
図10】本発明の第2の実施の形態の燃焼炉の構成を表す図。
【
図11】本発明の第3の実施の形態の燃焼炉の構成を表す図。
【
図12】本発明の第4の実施の形態の燃焼炉の構成を表す図。
【
図13】本発明の第4の実施の形態の燃焼炉の筐体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態による燃焼炉1を、
図1から
図9に基づき説明する。図中に示すように、上下左右方向を定義する。燃焼炉1は、筐体2と、送風機3と、イオン部4と、第1磁気通路5と、第2磁気通路6と、制御パネル7と、空気通路8と、を有している。燃焼炉1では、イオン部4を介して送風機3が取り込んだ燃焼用空気Aが、空気通路8に設置された第1磁気通路5及び第1磁気通路5を通過して筐体2に供給される。燃焼炉1は、燃焼のための燃料をほとんど使用することなく、燃焼処理物を1000℃以上の高温で処理することができる。本実施の形態の燃焼炉1では、バイオマス発電によって副産物として発生する不純物を多く含んだ木タールFを燃焼処理物とするが、これに限定されず任意の廃棄物又は処理物を有害物質の発生を抑えて燃焼させることができる。
【0026】
筐体2は、所定の肉厚を有する略円筒形状の耐熱セラミックセメントで構成されていて上に排気口2aが形成され、
図2に示すように、内部に燃焼室20が規定されている。筐体2の底面には、燃焼室20で燃焼した燃焼残渣を排出するための図示せぬ排出部が設けられていて、排出部の扉を開けることにより燃焼室20内にアクセスできる。筐体2の上部は開放されているが、燃焼によって発生する熱を回収してボイラーによって蒸気タービンを運転することで発電を行ってもよい。
【0027】
燃焼室20の内壁20Aには、内壁20Aから内側に突出し、送風機3からの燃焼用空気Aを噴出する吹出部21が設けられている。吹出部21は、回転上昇気流Uを発生させる回転流発生部22と、押さえ部23と、を備えている。吹出部21の各部材は、ニッケル基やコバルト基の耐熱合金で構成されているが、各部材の内部を燃焼用空気Aが流れることにより冷却されるため、焼却熱による劣化を抑制することができる。回転流発生部22は、上方に向けて燃焼用空気Aを噴出する第1発生部22Aと、下方に向けて燃焼用空気Aを噴出する第2発生部22Bと、を有している。第1発生部22Aは第1吹出部の一例であって、押さえ部23は第2吹出部の一例であって、第2発生部22Bは第3吹出部の一例である。
【0028】
吹出部21は、空気通路8によって筐体2の外側まで案内され、筐体2を貫通して燃焼室20内に燃焼用空気Aを噴出する。換言すると、燃焼用空気Aの流路において、筐体2に案内されるまでを空気通路8と規定し、筐体2に貫通している部分以降の下流側を吹出部21と規定する。吹出部21は、
図1及び
図2に示すように、筐体2の周囲に上下に延びるように立設された4本の空気通路8である第1空気管81及び第2空気管82から燃焼室20に燃焼用空気Aを供給している。
【0029】
回転流発生部22は、筐体2の下方に設けられ、回転上昇気流Uを発生させるための回転流発生部22である第1発生部22A及び第2発生部22Bが、
図2に示すように上下に2層であって、
図3に示すように円周方向に等間隔に4か所の合計8か所設けられている。
図3に示すように、第1発生部22Aが円周方向に2つ並んだ後、第2発生部22Bが円周方向に2つ並んでいる。第1発生部22Aは、筐体2の内壁20Aに沿うようにアール状に湾曲し、上方である排気口2a側に向けて燃焼用空気Aを噴出している。詳細には、第1発生部22Aは、内壁20Aから燃焼室20の中心に延び、内壁20Aに沿って円周方向に湾曲すると同時に、斜め上方に延びている。第1発生部22Aの噴出口は、斜め上方に向けて開口している。
【0030】
第2発生部22Bは、筐体2の内壁20Aに沿うようにアール状に湾曲し、下方である排気口2aと反対側に向けて燃焼用空気Aを噴出している。詳細には、第2発生部22Bは、内壁20Aから燃焼室20の中心に延び、内壁20Aに沿って円周方向に湾曲すると同時に、斜め下方に延びている。第2発生部22Bの噴出口は、斜め下方に向けて開口している。第1発生部22A及び第2発生部22Bから燃焼用空気Aが噴出されることにより、筐体2内に回転上昇気流Uが発生すると同時に燃焼室20内に乱流が発生する。本実施の形態では、回転上昇気流Uが回転する方向は半時計回りだが、時計回りであってもよい。効率的に燃焼処理物の燃焼を行うために地球の自転の影響を勘案すると、北半球では反時計回りであって、南半球では時計回りであることが望ましい。
【0031】
押さえ部23は、
図4に示すように、回転流発生部22の上方に、円周方向に等間隔に8か所設けられている。押さえ部23には、
図1に示すように、筐体2の外側において、円周方向に延びる第2空気管82によって燃焼用空気Aが供給されている。押さえ部23は、筐体2の中心に延びるように略水平に配置され、吹出口23aは下方斜め45°を向いている。これにより、
図2に示すように、燃焼用空気Aは下方斜め45°となるように押さえ部23から噴出される。換言すると、押さえ部23から吹き出される燃焼用空気Aは、
図2に一点鎖線で示す上下方向に直交する平面23Pに対して、排気口2aと反対側に傾斜する方向に吹き出される。押さえ部23の噴射角度は、下方斜め45°に限定されず、水平方向から下方に傾斜した方向であって回転流発生部22側、つまり排気口2aから離間する方向であれば良い。
【0032】
筐体2の底面であって回転流発生部22の近傍には、バーナー26が設けられている。バーナー26は、燃焼炉1の運転開始時の着火のために設けられていて、燃焼処理物の種類によっては運転開始から所定時間経過後に停止させてもよい。これにより、バーナー26によって使用される燃料を削減し、低コストでの燃焼炉1の運転が可能となる。
【0033】
筐体2の下部側壁には、燃焼室20に燃焼処理物である木タールFを供給するノズル27が設けられている。ノズル27は、図示せぬ燃料タンクに接続されていて、圧送ポンプ及び電磁弁28によって一定時間毎に木タールFが燃焼室20内に噴霧される。燃料タンクにはヒータが設置されていて、供給される木タールFは60℃まで温められている。本実施の形態では、燃焼処理物が粘性を有する液体であったためノズル27による噴霧で燃焼室20への供給を行ったが、燃焼処理物が固形物である場合には、コンベヤ等によって排気口2aから供給してもよい。
【0034】
筐体2の側壁には、制御パネル7に電気的に接続された温度センサ29が設けられていて、燃焼室20内の燃焼温度を表示している。温度センサ29によって検出された温度に基づいて、電磁弁28を制御して木タールFの供給量を調整してもよい。
【0035】
送風機3は、真空ブロワであって筐体2に燃焼用空気Aを供給するために用いられる。本実施の形態の真空ブロワの真空圧は、20kPaに設定したが、燃焼炉1の規模、木タールFの投入量、また筐体2の形状等に応じて任意の値を設定することができる。
【0036】
イオン部4は、
図5に示すように、外筒41と、内筒42と、セラミックボール43と、から構成される。イオン部4では、内筒42に多数のセラミックボール43が封入され外筒41に固定される。イオン部4は、送風機3の吸気口に配置されていて、送風機3によって吸引される空気は外筒41と内筒42との隙間及びセラミックボール43の隙間を通過する。内筒42に封入される素材は、セラミックボール43に限らず、セラミック素材であれば形状は限定されない。セラミックボール43は、本発明のセラミック材の一例である。イオン部4は、送風機3の吸気側に配置されているが、排気側に配置されていてもよく、両方に配置されていてもよい。
【0037】
セラミックボール43の成分は特に限定されず、各種酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物及びその他の化合物等が挙げられる。例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、溶融シリカ、非溶融シリカ、スピネル、コージェライト、フォルステライト、ジルコン及びムライトなどセラミック成分、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化チタン、窒化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化カルシウム、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タングステン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化チタン、ホウ化タングステン、チタン酸アルミニウム及びチタン酸ジルコン酸アルミニウム等のセラミック成分が挙げられる。これらは単独で含有されてもよく、2種以上が含有されてもよい。2種以上が含有される場合とは、例えば、カオリナイト、ハロイサイト、スメクタイト、パイロフィライト、セリサイト及びタルク等の各種粘土鉱物のうちの少なくとも1種を主成分とする粘土、並びに、これらの粘土を原料とするシャモットを焼成して得られた耐火セラミック等が挙げられる。
【0038】
ここで言う「主成分とする」とは、セラミックボール43を100質量%とした場合に、上記所定のセラミック成分であって1種の場合は単独、2種以上の場合は合計を50質量%以上含有することを意味する。つまり、1種類の場合には所定のセラミック成分が100質量%となる。この含有量は、所定のセラミック成分が1種のみ含有される場合には、このセラミック成分の含有量であり、所定のセラミック成分が2種以上含有される場合には、これらのセラミック成分の合計含有量である。
【0039】
セラミックボール43は、浸食性を向上させるために各種の処理を施したものを用いてもよい。各種の処理とは、例えば、耐食性を向上させる各種の処理が挙げられる。即ち、コーティングにより形成された耐食層(ジルコニア質コート層、カルシア質コート層等)、含浸形成された耐食層(基材表面部にジルコニア、カルシア等が定着された層)などが挙げられる。含浸形成された耐食層とは、Ca等(Zr、Mgなど)の金属元素を含有する水溶性有機金属化合物(酢酸カルシウム等)の水溶液に基材を浸漬して基材に水溶液を含浸させた後、加熱して金属酸化物を基材の表面部に定着させた層や、同様にアルミナゾルに浸漬して基材にアルミナゾルを含浸させた後、加熱してアルミナを基材の表面部に定着させた層などである。セラミックボール43は、キャスタブル材及び天然材のいずれであってもよい。また、キャスタブル材である場合には、セメントのみからなるものであってもよく、セラミック繊維及び/又はセラミックフィラー等を含有するものであってもよい。なお、セラミックボール43の気孔率は、送風機3の吸込口における抵抗に応じて任意に設定することができる。
【0040】
セラミックボール43は、1つのセラミックボール43のイオン測定器によって測定される値が500[個/cc]以上であればよく、1000[個/cc]以上であることがより好ましい。イオン部4が送風機3の吸込口に設置されているため、空気がセラミックボール43の隙間を通過することにより燃焼用空気Aに多くのマイナスイオン等の各種イオンが含有される。
【0041】
第1磁気通路5は、
図2に示すように、送風機3と筐体2との間の流路に設置される。第1磁気通路5は、
図6に示すように、第1ベース51と、第2ベース52と、磁石53と、を有している。第1ベース51及び第2ベース52は、ステンレス鋼で構成される。第1ベース51は、第2ベース52と通路Hを隔てて離間しており、複数の磁石53を内蔵している。第1ベース51と第2ベース52の合計で磁石53の磁束密度は14万ガウスであるが、送風機3の能力及び燃焼炉1の規模に応じて任意の磁束密度を設定することができる。磁石53には、希土類元素を利用したネオジム磁石、又はサマリウムコバルト磁石等の永久磁石を用いてもよい。本実施の形態では、通路Hの幅が6mmであって第1ベース51の幅を70mmとしたが、これに限定されない。送風機3から排出された燃焼用空気Aは、第1磁気通路5の通路Hで絞られるため圧力及び温度が上昇する。
【0042】
磁石53は、
図7に示すように、第1ベース51と第2ベース52とで通路Hを挟んで対応する位置に設けられていて、S極とN極とを所定の順序で配列する。SS又はNNで通路Hを挟んで対向させることによる反発作用、及びSNで通路Hを挟んで対向させることによる吸引作用を利用して、通路Hを流れる空気を一定方向に湾曲させる。強力な磁石53の磁場により、空気は一種の磁性流体のように振る舞うため、磁石53に引き付けられる。これは、空気に含まれる酸素が例外的に大きな磁化率(常磁性)を有していることに起因する。燃焼用空気Aは、通路H内を第1ベース51に近接した後、第2ベース52に近接し、再び第1ベース51に近接し、第2ベース52に近接するようなジグザグ形状で第1磁気通路5を通過する。磁石53の極の配置は、燃焼室20の燃焼状態が最適となるように設定する。
【0043】
第2磁気通路6は、
図2に示すように、第1磁気通路5と筐体2との間の空気通路8に設置される。第2磁気通路6は、
図8に示すように、外殻61と、スクリュー62と、マグネット63と、を備えている。外殻61は所定の肉厚を有しており、内部に複数のマグネット63が配置される。燃焼用空気Aは、スクリュー62の溝62aに沿って第2磁気通路6内を流れる。外殻61は本発明の外管の一例であって、スクリュー62は本発明の内管の一例である。
【0044】
マグネット63は、スクリュー62の円周方向において180°隔てた位置に2か所設置され、第2磁気通路6全体で8万ガウスの磁束密度を有する。マグネット63は、磁石53と同様に、SS又はNNで通路Hを挟んで対向させることによる反発作用、及びSNで通路Hを挟んで対向させることによる吸引作用を利用して、溝62aを流れる空気を一定方向に湾曲させる。詳細には、溝62a内において燃焼用空気Aが回転するように流れる。本実施の形態では、マグネット63の極の配列を予め設定された配列とすることにより、効率的に溝62aを流れる空気を攪拌することができる。
【0045】
制御パネル7には図示せぬ制御部が設けられていて、筐体2への木タールFの供給、及びバーナー26の点火及び消火を制御しており、温度センサ29の検出結果がパネル71に表示される。制御パネル7には、送風機3の起動・停止を行うレバー72と、送風機3運転時に点灯するパイロットランプ73と、が設けられている。
【0046】
空気通路8は、送風機3からの空気を第1磁気通路5及び第2磁気通路6を通過させ、筐体2の外側に立設された4本の第1空気管81及び筐体2上部に円周方向全周に設けられた第2空気管82を介して燃焼室20内に供給している。第1空気管81の下部に第1発生部22A及び第2発生部22Bが設けられるとともに、第2空気管82の円周方向に等間隔に8か所押さえ部23が設けられている。
【0047】
次に、
図9を参照して燃焼炉1の動作フローを説明する。燃焼炉1を運転する際は、作業者は制御パネル7の電源を投入し、レバー72を操作して送風機3を起動する(S1)。これにより、回転流発生部22の第1発生部22A及び第2発生部22Bから燃焼用空気Aが噴出されて回転上昇気流U及び乱流が発生する。同時に、押さえ部23から斜め下方に向けて燃焼用空気Aが噴出される。送風機3が起動してから所定時間経過後、自動的にバーナー26が点火する(S2)。
【0048】
バーナー26が点火してから所定時間が経過した後、木タールFを供給するための圧送ポンプが稼働し、電磁弁28が開いて筐体2に燃料が供給される(S3)。木タールFはノズル27から噴霧されるため、バーナー26の炎によって点火し燃焼する。このとき、筐体2に投入された木タールFは、燃焼しながら回転流発生部22によって発生する反時計回りの回転上昇気流Uによって上方に上るとともに第2発生部22Bによる乱流で燃焼用空気Aと混合され、押さえ部23から斜め下方に噴出される燃焼用空気Aによって下方に押し下げられる。これにより、筐体2内に燃焼用空気Aが長い時間滞在するとともに部分的に乱気流が発生して温度センサ29によって検出される筐体2内の温度が1500℃以上、最大で1800℃に達する。
【0049】
制御パネル7はタイマーを備えていて、電磁弁28を開いてから一定時間が経過した後、再び電磁弁28を開いて筐体2に木タールFを供給する(S4:YES)。電磁弁28を開いてから一定時間が経過していない場合は(S4:NO)、レバー72によって送風機3の停止が操作されたか否かを判断する。レバー72によって送風機3が停止された場合は(S5:YES)、圧送ポンプを停止して木タールFの供給を止める(S6)。圧送ポンプの停止から所定時間経過し、筐体2内の木タールFが完全に燃焼したらバーナー26及び送風機3を停止する(S7、S8)。
【0050】
このような構成によると、回転流発生部22の第1発生部22Aによって燃焼用空気Aが内壁20Aを沿いながら排気口2a側に向けて噴出されることにより、筐体2内に回転上昇気流Uが発生する。同時に、押さえ部23から排気口2aと反対側に向けて燃焼用空気Aが噴出されることにより、回転上昇気流Uが排気口2aから排気されることを抑制して燃焼用空気Aを長い時間燃焼室20に留まらせる。これにより、燃焼室20の燃焼効率を向上させるとともに燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。また、燃焼処理物自身が高温で燃焼するため、温度を維持するための追加の燃料投下が不要となり、ランニングコストを低減できる。
【0051】
このような構成によると、回転流発生部22の第2発生部22Bが内壁20Aに沿う方向であって排気口aと反対側に燃焼用空気Aを噴出するため、燃焼室20内で回転上昇気流Uが乱流となり燃焼用空気Aと木タールFとが混合される。これにより、燃焼室20の燃焼効率を向上させるとともに木タールFを高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。
【0052】
このような構成によると、押さえ部23が内壁20Aから燃焼室20内に向けて燃焼用空気Aを噴出するため、燃焼室20内に部材等を配置する必要がない。これにより、燃焼室20を広く確保することができるとともに、燃焼室20の燃焼効率を向上させ木タールFを高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。また、内壁20Aから燃焼用空気Aを噴出するため、燃焼室20内に配管等を配置する必要がない。これにより、高温による配管等の部材の劣化を防止できる。
【0053】
このような構成によると、燃焼用空気Aが第1磁気通路5及び第2磁気通路6を通過して筐体2に供給されるため、通過の際に磁石53又はマグネット63によって通過時の空気の流れが湾曲する。これにより、燃焼用空気Aの流れが不安定な状態で筐体2内に供給されるため、燃焼室20の燃焼効率を向上させるとともに木タールFを高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。また、燃焼用空気Aはマグネット63を保持する外殻61とスパイラル状の壁が設けられたスクリュー62との間の溝62aを通過するため、溝62a通過の際にマグネット63によって空気の流れが湾曲する。これにより、燃焼用空気Aの流れが不安定な状態で筐体内に供給されるため、燃焼室20の燃焼効率を向上させるとともに燃焼処理物を高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。
【0054】
このような構成によると、送風機3の吸気側又は排気側のいずれか一方にはセラミックボール43が収納されたイオン部4が設けられているため、燃焼用空気Aに各種イオンを含有させた状態で筐体2に供給することができる。これにより、燃焼室20の燃焼効率を向上させるとともに木タールFを高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。
【0055】
次に本発明の第2の実施の形態について、
図10を参照して説明する。第2の実施の形態の燃焼炉201は、8か所設けられた回転流発生部22のすべてが第1発生部22Aとなる。換言すると、回転流発生部22のすべてが上方に向かう回転上昇気流Uを発生させるように燃焼用空気Aを噴出する。これにより、より強い回転上昇気流Uを発生させることができる。この場合、回転上昇気流Uの上昇速度が速くなるため、第2空気管82及び押さえ部23の管径を大きくし、押さえ部23から排出される風量を増やすことが望ましい。これにより、燃焼用空気Aの筐体2内の滞在時間が長くなり、燃焼効率及び燃焼温度を高めることができる。
【0056】
次に本発明の第3の実施の形態について、
図11を参照して説明する。第3の実施の形態の燃焼炉301の燃焼室20の略中央には、支持軸322と、第1吹出口324と、第2吹出口325と、を備えている。支持軸322、第1吹出口324、及び第2吹出口325の各部材は、ニッケル基やコバルト基の耐熱合金で構成されているが、各部材の内部を燃焼用空気Aが流れることにより冷却されるため、焼却熱による劣化を抑制することができる。第1吹出口324及び第2吹出口325は本発明の第2吹出部の一例である。
【0057】
支持軸322は、上下方向に延びる略円筒形状の軸であって、送風機3によってイオン部4、第1磁気通路5、及び第2磁気通路6を通過した燃焼用空気Aが供給される。支持軸322の内部には、図示せぬ軸通路が規定されている。
【0058】
第1吹出口324は、回転流発生部22の上方に設けられていて、
図12に示すように、略パイプ形状の両端から径方向外方に向けて燃焼用空気Aが吹き出される。このとき、燃焼用空気Aは、下方斜め45°となるように第1吹出口24から噴出される。換言すると、第1吹出口24から吹き出される燃焼用空気Aは、図中に一点鎖線で示す上下方向に直交する平面324Pに対して、排気口2a側ではなく回転流発生部22側に傾斜する方向に吹き出される。第1吹出口324の噴射角度は、下方斜め45°に限定されず、水平方向から下方に傾斜した方向、つまり排気口2aから離間する方向であれば良い。
【0059】
第2吹出口325は第1吹出口324と略同一形状であって、第1吹出口324の上方に設けられている。第2吹出口325は、第1吹出口324と直交する方向に延びる略パイプ形状であって、両端から支持軸322の径方向外方に向けて燃焼用空気Aが噴出される。このとき、燃焼用空気Aは、下方斜め45°となるように第2吹出口325から噴出される。換言すると、第2吹出口325から吹き出される燃焼用空気Aは、図中に一点鎖線で示す支持軸322に直交する平面325Pに対して、排気口2a側ではなく回転流発生部22側に傾斜する方向に吹き出される。第2吹出口325の噴射角度は、下方斜め45°に限定されず、水平方向から下方に傾斜した方向であって回転流発生部22側、つまり排気口2aから離間する方向であれば良い。
【0060】
燃焼炉301における燃焼プロセスにおいて、筐体2に投入された木タールFは、燃焼しながら回転流発生部22によって発生する反時計回りの回転上昇気流Uによって上方に上るとともに第1吹出口324及び第2吹出口325から斜め下方に噴出される燃焼用空気Aによって下方に押し下げられるため、筐体2内に燃焼用空気Aが長い時間滞在するとともに部分的に乱気流が発生して温度センサ29によって検出される筐体2内の温度が1500℃以上、最大で1800℃に達する。
【0061】
このような構成によると、燃焼室20に設けられた支持軸322の端部に第1吹出口324及び第2吹出口325が設けられているため、燃焼炉301の周囲に燃焼用空気Aを供給するための配管を設置する必要がない。これにより、燃焼炉301を小型化及び構造簡素化することができる。
【0062】
次に、第4の実施の形態について、
図12及び
図13を参照して説明する。第4の実施の形態による燃焼炉401の燃焼室20の略中央には、支持軸422と、回転部423と、を備えている。支持軸422及び回転部423の各部材は、ニッケル基やコバルト基の耐熱合金で構成されているが、各部材の内部を燃焼用空気Aが流れることにより冷却されるため、焼却熱による劣化を抑制することができる。回転部423は、本発明の第1吹出部の一例である。
【0063】
回転部423は、支持軸422の下部に配置され、支持軸422の円周方向に回転可能である。回転部423は、円筒形である支持軸422の略接線方向に燃焼用空気Aを排出する第1噴出口423Aと、支持軸422の中心に対して第1噴出口423Aと略対称に設けられた第2噴出口423Bと、を備えている。回転部423に送風機3からの燃焼用空気Aが供給されると、推力によって上方から見て半時計回りに回転部423が回転する。
図13に示すように回転部423が燃焼用空気Aを噴出しながら支持軸422を中心に回転することにより、
図12に示すように燃焼室20に回転部423の上方に反時計回りの回転上昇気流Uが発生する。なお、回転部423の回転方向は、時計回りであってもよい。効率的に燃焼処理物の燃焼を行うために地球の自転の影響を勘案すると、北半球では反時計回りであって、南半球では時計回りであることが望ましい。
【0064】
燃焼炉401における燃焼プロセスにおいて、筐体2に投入された木タールFは、燃焼しながら回転部423によって発生する反時計回りの回転上昇気流Uによって上方に上るとともに押さえ部23から斜め下方に噴出される燃焼用空気Aによって下方に押し下げられるため、筐体2内に燃焼用空気Aが長い時間滞在するとともに部分的に乱気流が発生して温度センサ29によって検出される筐体2内の温度が1500℃以上、最大で1800℃に達する。
【0065】
このような構成によると、燃焼用空気Aが回転部423によって回転しながら供給されることにより、筐体2内に支持軸422を中心とした回転上昇気流Uが発生する。同時に、押さえ部23から回転部423側に向けて燃焼用空気が噴出されることにより、回転上昇気流Uが排気口2aから排気されることを抑制して燃焼用空気Aを長い時間燃焼室に留まらせる。これにより、燃焼室20の燃焼効率を向上させるとともに木タールFを高温で完全燃焼させることができ、有害物質の発生及び燃焼残渣を抑制することができる。
【0066】
本発明による燃焼炉は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0067】
上述の実施の形態による燃焼炉1では、8つの回転流発生部22のうち、4つの第1発生部22Aと、4つの第2発生部22Bと、が設けられていたが、これに限定されない。例えば、少なくとも1つの第1発生部22Aと、残りの第2発生部22Bであってもよく、逆に少なくとも1つの第2発生部22Bと、残りの第1発生部22Aであってもよい。また、第1発生部22A及び第2発生部22Bの個数及び配置は、これらに限定されない。
【0068】
上述の形態による燃焼炉1及び燃焼炉401では、回転上昇気流Uを発生させるために、回転流発生部22、又は回転部423のいずれか一方を設けたが、これに限定されない。例えば、回転流発生部22と回転部423の両方を設けてもよい。
【0069】
上述の実施の形態による燃焼炉1及び燃焼炉301では、排気口2aから遠ざかる方向に燃焼用空気Aを噴出する押さえ部23、又は第1吹出口324及び第2吹出口325のいずれか一方を設けたが、これに限定されない。例えば、押さえ部23並びに第1吹出口324及び第2吹出口325の両方を設けてもよい。
【0070】
上述の実施の形態による燃焼炉では、イオン部4、第1磁気通路5、及び第2磁気通路6を設けたが、これに限定されない。これらの3つの機構のうち、少なくともいずれか1つを設けていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の燃焼炉は、燃焼処理物を完全燃焼させ有害物質の排出を抑えるための燃焼炉として利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1、201、301、401 燃焼炉
2 筐体
2a 排気口
3 送風機
4 イオン部
5 第1磁気通路
6 第2磁気通路
7 制御パネル
8 空気通路
20 燃焼室
20A 内壁
21 吹出部
22 回転流発生部
22A 第1発生部
22B 第2発生部
23 押さえ部
43 セラミックボール
51 第1ベース
52 第2ベース
53 磁石
61 外殻
62 スクリュー
63 マグネット
322、422 支持軸
324 第1吹出口
325 第2吹出口
423 回転部