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特開2023-169070空気調和装置の排水不良検知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169070
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】空気調和装置の排水不良検知システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/32 20180101AFI20231121BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20231121BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20231121BHJP
【FI】
F24F11/32
F24F11/52
F24F11/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080546
(22)【出願日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】515320189
【氏名又は名称】株式会社成田エアポートテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】山之上 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】平川 翔大
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA54
3L260GA17
(57)【要約】
【課題】 巨大ビル等の内部空間の空気環境を保持するような大型空気調和装置に好適に適用することができる空気調和装置の排水不良検知システムを提供する。
【解決手段】 空気調和装置の排水不良検知システム300は、検知機構部400と制御回路部500とから構成される。検知機構部400は、2本の棒状体410a,410aから成る電極棒410と、下端部に電極棒410の上端部を固定して成る電極保持器420と、有底籠体状を呈する電極包囲体430と、から構成される。制御回路部500は、
貯留水の水位が許容上限値であることを検知するレベルセンサー510と、タイマーを所定時間作動させるタイマーリレー520と、給気ファン141を停止させる給気ファン停止スイッチ530と、警報器550を作動させる警報器作動スイッチ540と、警報音を発生する警報器550と、から構成される。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔だけ離間させた2本の棒状体から成る電極棒と、下端部に前記電極棒の上端部を固定し、周面部からケーブルを導出して成る電極保持器と、底面部及び周面部において線状部材を縦横に配設して網目を形成して成る有底籠体状を呈する電極包囲体と、から構成される検知機構部と、
貯留水の水位が許容上限値であることを検知するレベルセンサーと、タイマーを所定時間作動させるタイマーリレーと、給気ファンを停止させる給気ファン停止スイッチと、警報器を作動させる警報器作動スイッチと、警報音を発生する警報器と、から構成される制御回路部と、
から構成されることを特徴とする空気調和装置の排水不良検知システム。
【請求項2】
前記電極包囲体の上端部に前記電極保持器の下端部を載置し、前記電極包囲体の底面部及び周面部に接触することなく、その内部に前記電極棒を配置したことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置の排水不良検知システム。
【請求項3】
前記レベルセンサーは、前記電極棒の下端が貯留水の水面と接触した時、その際の水位が許容上限値Hであることを検知するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和装置の排水不良検知システム。
【請求項4】
前記警報器は、中央監視装置に設置されたものであって、警報音を発生することによって、給気ファンを異常停止したことを監視作業者に伝達するものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の空気調和装置の排水不良検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置、特に、大型空気調和装置において、排水が良好に為されない状態を検知する空気調和装置の排水不良検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
巨大ビル、商業施設等では、そのロビー、フロア等の内部空間の環境を快適に保持するため、大型空気調和装置等を設置した中央空調方式が採用されている。
この中央空調方式では、ボイラー、冷凍機等の熱源機器を地下の機械室等に設置し、これら機器から温水、冷水を大型空気調和装置へ供給し、外気又は換気空気の温度、湿度等を調整した後、ロビー、フロア等の内部空間に調整した空気を供給する。
【0003】
この大型空気調和装置では、夏期には冷房運転によって結露水が生成し、冬期には加湿運転によって加湿水が供給され、大型空気調和装置内には、多様な水が生成又は供給されることになる。
【0004】
その際、余剰となった水は、ドレンパンから排水口を介して外部の排水管へと排水されることになるが、その排水経路において、経路閉塞、排水不良等が発生すると、大型空気調和装置の外部に水が溢れ、数々の漏水障害を起生する原因となる。
【0005】
そこで、このような漏水障害を未然に防止するため、生成水等を貯留するドレンパンに水位センサを配置し、水位が所定値を超えた場合には、空気調和装置の運転を停止するという手法が提案されている(特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-122614号公報
【特許文献2】特開2017-155943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び2に記載された発明は、何れも、比較的小型な空気調和装置に適用できるものであって、巨大ビル、商業施設等の内部空間の空気環境を保持するような大型空気調和装置に適用するのを想定したものではなかった。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたものであって、巨大ビル、商業施設等の内部空間の空気環境を保持するような大型空気調和装置に好適に適用することができる空気調和装置の排水不良検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の空気調和装置の排水不良検知システムは、
所定間隔だけ離間させた2本の棒状体から成る電極棒と、下端部に前記電極棒の上端部を固定し、周面部からケーブルを導出して成る電極保持器と、底面部及び周面部において線状部材を縦横に配設して網目を形成して成る有底籠体状を呈する電極包囲体と、から構成される検知機構部と、
貯留水の水位が許容上限値であることを検知するレベルセンサーと、タイマーを所定時間作動させるタイマーリレーと、給気ファンを停止させる給気ファン停止スイッチと、警報器を作動させる警報器作動スイッチと、警報音を発生する警報器と、から構成される制御回路部と、
から構成されることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記電極包囲体の上端部に前記電極保持器の下端部を載置し、前記電極包囲体の底面部及び周面部に接触することなく、その内部に前記電極棒を配置したことを特徴とする。
【0011】
前記レベルセンサーは、前記電極棒の下端が貯留水の水面と接触した時、その際の水位が許容上限値Hであることを検知するものであることを特徴とする。
【0012】
又、前記警報器は、中央監視装置に設置されたものであって、警報音を発生することによって、給気ファンを異常停止したことを監視作業者に伝達するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空気調和装置の排水不良検知システムによれば、巨大ビル、商業施設等の内部空間の空気環境を保持する大型空気調和装置に好適に適用することができ、大型空気調和装置の外部に水が溢れ、数々の漏水障害が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】大型空気調和装置を設置した中央空調方式の概要説明図である。
図2】大型空気調和装置の空気調整ユニットの概略構成図である。
図3図2の空気調整ユニットにおいて漏水障害が発生した状態を示す説明図である。
図4】本発明の排水不良検知システムの検知機構を示す説明図である。
図5図4の検知機構の外観図である。
図6】検知機構を構成する検知電極体の外観図である。
図7】検知機構を構成する電極包囲体の外観図である。
図8】本発明の排水不良検知システムの概略構成図である。
図9】本発明の排水不良検知システムの中央監視装置の(A)は通常時における表示パネルの正面図、(B)は異常時における表示パネルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本発明の空気調和装置の排水不良検知システムを適用する大型空気調和装置の概略構造及び排水不良の発生原因について、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
一般に、中央空調方式を採用した大型空気調和装置100(AHU:エアハンドリングユニット)は、図1に示すように、チャンバーユニット110,120と、コイルユニット130と、ファンユニット140,150と、から構成されている。
【0017】
先ず、チャンバーユニット110において、外気ダクト210から吸入した外気を還気と合流させ、エアフィルター111によって空気中の粉塵等を捕集し、電気集塵機112によって高電圧を印加させて微粒子を捕集し、再度、エアフィルター113によって粉塵等を捕集して、空気を浄化する。
【0018】
次に、コイルユニット130において、冷房時には、冷水コイル131によって空気の温度を降下させ、又は、暖房時には、温水コイル132によって空気の温度を上昇させ、空気の温度を調整する。さらに、加湿機133によって水を噴霧して、空気の湿度を調整する。
【0019】
次に、ファンユニット140において、給気ファン141によって温度及び湿度を調整された空気を給気ダクト220に流出させ、給気ダクト220から空調対象の内部空間200内へと給気として供給する。
【0020】
次に、ファンユニット150において、還気ファン151によって内部空間内から排出した空気を還気ダクト230から還気として吸入し、チャンバーユニット120へと送給する。
【0021】
そして、チャンバーユニット120において、還気の一部を排気ダクト240から外部に排気すると共に、還気の一部をチャンバーユニット110に還流させる。
【0022】
上記のような工程によって、ロビー、フロア等の内部空間200内の空気環境を快適に保持するようにしている。
【0023】
ここで、コイルユニット130において、夏期にあっては、冷房運転によって、冷水コイル131の周面に空気中の水分が凝集し、結露水が生成される。又、冬期にあっては、加湿運転によって、加湿機133から加湿水が供給される。
そこで、図2に示すように、コイルユニット130の底面部にはドレンパン134を配設して、滴下した結露水、加湿水を貯留するようにしてある。
【0024】
そして、余剰となった貯留水は、図2に示すように、ドレンパン134の下端部に配設された排水口135から排水管160へと流出される。
又、排水口135には、開閉部136aを有する排水トラップ136を配置してあり、開閉部136aの作動によって排水量を調整し、外部の排水管160へと流出するようにしてある。
【0025】
しかし、貯留水には埃、塵、微生物等が含まれており、ドレンパン134に長時間滞留すると、これらが凝集してスライムが生成し易い。このスライムが排水トラップ136の開閉部136aに付着すると、開閉部136aが固着して、排水トラップ136が閉塞する事態となる。
【0026】
又、長期使用による排水トラップ136の劣化又は腐食によって、排水トラップ136の開閉部136aが脱落してしまう虞がある。これによって、排水口135において圧力差が発生し、排水口135から空気を吸い込んで、排水が阻害され、排水不良を起こす事態となる。
【0027】
上記のような排水トラップ136の開閉部136aの固着、又、開閉部136aの脱落による排水不良が発生すると、図3に示すように、大型空気調和装置100から外部へと漏水し、床面Fに排水が貯留する。
これによって、周辺装置に排水が侵入したり、ビル階下に排水が滴下したりして、種々の漏水障害を起生する。
【0028】
本発明の空気調和装置の排水不良検知システムは、従来、大型空気調和装置100では対策が為されなかった、大型空気調和装置からの漏水を効果的に防止し、種々の漏水障害を起生させないことを目的とするものである。
【0029】
次に、本発明の空気調和装置の排水不良検知システムについて、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
本発明の空気調和装置の排水不良検知システム300は、図8に示すように、検知機構部400と、制御回路部500と、から構成される。
【0031】
検知機構部400は、図4及び5に示すように、コイルユニット130の底面部に配設されたドレンパン134に設置され、電極棒410と、電極保持器420と、電極包囲体430と、から構成される。
【0032】
電極棒410は、図6に示すように、所定間隔だけ離間させた2本の棒状体410a,410aから構成されるものである。
そして、ドレンパン134内の貯留水に下端が接触すると、棒状体410a,410a間に電流が流れるので、貯留水の水位の許容上限値Hを検知することができる。
【0033】
電極保持器420は、図6に示すように、円盤状を呈するものであって、その下端部に前記電極棒310の上端部を固定し、その周面部からケーブル421を導出してある。
そして、電極棒410によって検知した貯留水の水位を許容上限値Hと判定して、ケーブル321を介して検知信号として制御回路部500に送信する。
【0034】
電極包囲体430は、図7に示すように、有底籠体状を呈するものであって、その底面部431及び周面部432は、線状部材Aを縦横に配設して網目431a,432aを形成してある。
ここで、網目431a,432aの大きさは、5×5mm~30×30mmの矩形状であるのが好ましい。
【0035】
そして、電極包囲体430の上端部に前記電極保持器420の下端部を載置することによって、電極包囲体430の底面部431及び周面部432に接触することなく、その内部に電極棒410が配置されるようになっている。
【0036】
検知機構部400は、以上のような構成であるから、図4及び5に示すように、ドレンパン134に載置すれば、ドレンパン134内の貯留水に電極棒410の下端が接触することによって貯留水の水位を許容上限値Hと検知、判定して、検知信号として制御回路部500に送信することができる。
【0037】
ここで、電極包囲体430の内部に電極棒410を配置したことによって、貯留水に包含される、又は浮遊する異物等は、電極包囲体430の網目431a,432aによって捕獲、阻止され、電極棒40に接触させないことができ。誤検知や装置の故障を防止することができる。
【0038】
又、コイルユニット130内は空気の流速が大きいため、電極棒410をそのまま垂下した場合には、その強い空気流によって電極棒410が揺動し、電極棒410の位置が安定しないが、電極包囲体430内に配置されるため、位置が安定して、常に同一高さにて水位を検知することができる。
【0039】
又、電極包囲体430の上端部と電極保持器420の下端部との間に適宜厚さのスペーサーを配置すれば、電極棒410の下端の位置を任意の高さに設定することができるから、検出基準とする水位の許容上限値Hを容易に設定、変更することができる。
【0040】
制御回路部500は、図8に示すように、空調動力盤170内に設置されたレベルセンサー510と、タイマーリレー520と、給気ファン停止スイッチ530と、警報器作動スイッチ540と、図9に示すように、中央監視装置180内に設置された警報器550と、から構成される。
【0041】
レベルセンサー510は、前記電極保持器420から導出したケーブル421と接続してあり、電極棒410の下端が貯留水の水面と接触した時、ケーブル421から検知信号を受信して、その際の水位が許容上限値Hであることを検知する。
【0042】
レベルセンサー510によって、貯留水の水位が許容上限値Hに到達したことが検知されると、タイマーリレー520が作動し、所定時間、例えば、30秒間タイマーを作動させる。
【0043】
ここで、貯留水の水位が許容上限値H以下の状態であっても、電極棒410への一時的な水撥ね等によって水位の誤検知が発生する虞れがある。そのため、所定時間タイマーを作動させて、所定時間後もレベルセンサー510が許容上限値Hを検知した場合に、正確に許容上限値Hを検知したと判断するものである。
よって、所定時間経過後に水位が上昇しても、ドレンパン134から溢れ出ない範囲内の適宜時間であればよく、必ずしも30秒間ではなく、20~40秒間の適宜時間に設定してもよい。
【0044】
次に、所定時間後、再度、レベルセンサー510によって、貯留水の水位が許容上限値Hに到達したことが検知されると、給気ファン停止スイッチ530が作動し、給気ファン141を停止させる。
【0045】
一方、警報器作動スイッチ540が作動し、中央監視装置180内に設置された警報器550に指令信号が送信され、図9(B)に示すように、警報器550から警報音を発生させ、給気ファン141を異常停止したことを監視作業者に伝達する。
【0046】
又、給気ファン141を異常停止した場合には、図9(B)に示すように、給気ファン141の図形の色彩を、例えば赤色から緑色へと変更表示させるようにしてもよい。
これによれば、異常事態が発生したことを、監視作業者に視覚をもって認識させることができる。
【0047】
上記の如く、本発明の空気調和装置の排水不良検知システム300によれば、ドレンパン134内の貯留水の水位が許容上限値Hに到達したことを自動的に検知し、給気ファン141を停止させると共に、警報器550から警報音を発生させることができる。
【0048】
このように、給気ファン141を停止させることによって、さらなる結露水の生成及び加湿水の供給を阻止して、大型空気調和装置100からの漏水を効果的に防止して、種々の漏水障害を起生させないことができる。
【0049】
又、警報器550から警報音を発生させることによって、中央監視装置180において大型空気調和装置100の作動を監視する作業者に直ちに伝達して、大型空気調和装置100の異常事態を知らせることができる。
【0050】
さらに、中央監視装置180において、給気ファン141の図形の色彩を変更表示させるようにすれば、異常事態が発生したことを、監視作業者に視覚をもって認識させることもできる。
【0051】
以上、本発明の空気調和装置の排水不良検知システム300は、従来為し得なかった、巨大ビル、商業施設等の内部空間の空気環境を保持するような大型空気調和装置に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100 大型空気調和装置
141 給気ファン
170 空調動力盤
180 中央監視装置
300 排水不良検知システム
400 検知機構部
410 電極棒
410a 棒状体
420 電極保持器
421 ケーブル
430 電極包囲体
431 底面部
432 周面部
431a 網目
432a 網目
500 制御回路部
510 レベルセンサー
520 タイマーリレー
530 給気ファン停止スイッチ
540 警報器作動スイッチ
550 警報器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9