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  • 特開-室外機、および、空気調和装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169085
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】室外機、および、空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/42 20210101AFI20231121BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20231121BHJP
   F24F 1/30 20110101ALI20231121BHJP
   F24F 1/32 20110101ALI20231121BHJP
【FI】
F25B41/42
F25B1/00 311
F24F1/30
F24F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142027
(22)【出願日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2022080030
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊一
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BB01
3L054BB03
3L054BC01
3L054BC10
(57)【要約】
【課題】空気調和能力を向上できる室外機、および、空気調和装置を提供する。
【解決手段】本開示における室外機は、複数の圧縮機11a、11bと、複数の圧縮機11a、11bそれぞれに接続されるインジェクション配管27a、27bと、インジェクション配管27a、27bに接続され鉛直方向に沿って配置される分岐管30と、を有する室外機であって、分岐管30は、下端に冷媒の流入口31aを一つ形成する第1管部31と、流入口31aと連通する冷媒の流出口32c、33cをそれぞれ上端に形成する第2管部32および第3管部33と、を有し、第2管部32および第3管部33は、円弧状に曲げられ、流出口32c、33cを介してインジェクション配管27a、27bとそれぞれ連通する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧縮機と、複数の前記圧縮機それぞれに接続されるインジェクション配管と、前記インジェクション配管に接続され鉛直方向に沿って配置される分岐管と、を有する室外機であって、
前記分岐管は、下端に冷媒の流入口を一つ形成する第1管部と、前記流入口と連通する冷媒の流出口をそれぞれ上端に形成する第2管部および第3管部と、を有し、
前記第2管部および前記第3管部は、円弧状に曲げられ、前記流出口を介して前記インジェクション配管とそれぞれ連通する、
ことを特徴とする室外機。
【請求項2】
前記第2管部および前記第3管部は、円弧状に湾曲した湾曲部と、鉛直方向に沿って設けられる直線状の直線配管部と、をそれぞれ有し、
前記第2管部の内径は、前記第3管部の内径と略同等であり、
前記第2管部の前記直線配管部と前記第3管部の前記直線配管部との間の距離は、前記第2管部の前記内径の2倍以上であり、且つ、前記第2管部の前記内径の18倍以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の室外機。
【請求項3】
前記第2管部の前記直線配管部と前記第3管部の前記直線配管部との間の前記距離は、前記第2管部の前記内径の3.5倍以上であり、且つ、前記第2管部の前記内径の17倍以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載の室外機。
【請求項4】
室内機と、請求項1から3のいずれかに記載の室外機と、
前記室内機と前記室外機とを接続する接続配管と、を備えた空気調和装置において、
前記接続配管は、水平方向に沿って配置され、冷媒を分岐して流す接続配管用分岐管を備え、
前記接続配管用分岐管同士の距離は、前記第2管部と前記第3管部との間の距離よりも小さい、
ことを特徴とする空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、室外機、および、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、3つの熱交換器に対して供給される冷媒の気液の不均等を抑制できる冷媒分配器を開示する。この冷媒分配器は、複数の熱交換器に分岐して接続する分岐管が鉛直方向に配置されて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6843256号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、空気調和能力を向上できる室外機、および、空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における室外機は、複数の圧縮機と、複数の前記圧縮機それぞれに接続されるインジェクション配管と、前記インジェクション配管に接続され鉛直方向に沿って配置される分岐管と、を有する室外機であって、前記分岐管は、下端に冷媒の流入口を一つ形成する第1管部と、前記流入口と連通する冷媒の流出口をそれぞれ上端に形成する第2管部および第3管部と、を有し、前記第2管部および前記第3管部は、円弧状に曲げられ、前記流出口を介して前記インジェクション配管とそれぞれ連通する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における室外機、および、空気調和装置は、圧縮機を高回転で運転することができる。そのため、室外機、および、空気調和装置の空気調和能力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1における空気調和装置の冷凍サイクル図
図2】実施の形態1における分岐管の側面図
図3】実施の形態1における液接続配管の平面図
図4】実施の形態1における分岐管の斜視図
図5】実施例における第2管部の内径に対する第2管部および第3管部の間の距離と、第1圧縮機および第2圧縮機が吐出する冷媒の温度差との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、室外機、および、空気調和装置という技術は、空気調和能力の向上が求められていた。そのため、当該業界では、室外機に対して複数個の圧縮機を用いるという製品設計をすることがあった。そうした状況下において、発明者らは、複数台の圧縮機を用いてインジェクションサイクルを構成するという着想を得た。そして、発明者らは、その着想を実現するには、インジェクションに用いるガスリッチな気液混合冷媒は、液体冷媒を均等に分流させることが特に難しく、各圧縮機の間で吐出される冷媒に温度差が生じるという課題があることを発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0009】
そこで、本開示は、空気調和能力を向上できる室外機、および、空気調和装置を提供する。
【0010】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
(実施の形態1)
以下、図1から図5を用いて、実施の形態1を説明する。
[1-1.構成]
[1-1-1.冷凍サイクル回路の構成]
図1は、実施の形態1に係る空気調和装置1の冷凍サイクル図である。図1に示すように、空気調和装置1は、室外機10および室内機50を備える。空気調和装置1において、室外機10および室内機50は、液接続配管(接続配管)41およびガス接続配管43によって接続されることにより、冷凍サイクル回路を形成する。
【0012】
室外機10は、第1圧縮機(圧縮機)11a、第2圧縮機(圧縮機)11b、四方弁13、室外熱交換器15、室外減圧弁19をそれぞれ備える。第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bは、ともに冷媒を圧縮し、圧縮された冷媒を四方弁13に向けて吐出する機械装置である。第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bは、冷媒が圧縮される過程において冷媒の圧力が中間圧となる中間圧室を備える。また、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bは、外部から冷媒を中間圧室にインジェクションするためのインジェクションポートを備える。後述するように、第1圧縮機11aのインジェクションポートには、第1インジェクション配管(インジェクション配管)27aが接続される。第2圧縮機11bのインジェクションポートには、第2インジェクション配管(インジェクション配管)27b接続される。
【0013】
四方弁13は、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bから吐出される冷媒の流路を切り替えることにより、室内機50の運転モードを暖房運転および冷房運転の間で切り替える。室外熱交換器15は、プレート式熱交換器であり、四方弁13およびレシーバタンク17に接続される。室外熱交換器15は、内部に冷媒および水WTを別々に流す流路を備え、内部に流した冷媒および水WTの間で熱交換させる。レシーバタンク17は、液体の冷媒を貯留することにより、冷凍サイクル回路内を流れる冷媒の量を調整するタンクである。室外減圧弁19は、通過する冷媒を減圧させる電磁弁であり、その開度を電子制御により調整可能である。
【0014】
室外減圧弁19は、過冷却熱交換器23を介して液接続配管41に接続される。過冷却熱交換器23は、例えば、プレート式熱交換器である。過冷却熱交換器23は、室外減圧弁19と液接続配管41との間を流れる冷媒が流れる流路と、液接続配管41から分岐して過冷却膨張弁21を通った冷媒が流れる流路とを備え、それぞれの流路を流れる冷媒同士の間で熱交換させる。過冷却膨張弁21は、通過する冷媒を減圧させる電磁弁であり、その開度を電子制御により調整可能である。
【0015】
過冷却膨張弁21および過冷却熱交換器23を通過した冷媒は、後述する分岐管30において分岐し、第1インジェクション配管27aおよび第2インジェクション配管27bの内部をそれぞれ流れる。第1インジェクション配管27aは、中途部に第1調整弁25aを有し、第1圧縮機11aのインジェクションポートに接続される配管である。第2インジェクション配管27bは、中途部に第2調整弁25bを有し、第2圧縮機11bのインジェクションポートに接続される配管である。第1調整弁25aおよび第2調整弁25bは、ともにその開度を調整可能な電磁弁であり、第1インジェクション配管27aおよび第2インジェクション配管27bを流れる冷媒の流量を調整する。
【0016】
液接続配管41は、室外機10と室内機50とを接続する冷媒用の配管であり、内部に液体の冷媒が流れる。液接続配管41は、中途部において接続配管分岐部60を形成する。接続配管分岐部60において、液接続配管41は、2つの接続配管用分岐管61に分岐する。2つの接続配管用分岐管61は、それぞれ別々の室内機50に接続される。また、各室内機50は、室外機10の四方弁13に連通するように、室外機10に対してガス接続配管43を介して接続される。接続配管分岐部60の詳細については、後述する。
【0017】
室内機50は、室内熱交換器51と、室内減圧弁53と、室内送風機55と、をそれぞれ備える。室内熱交換器51は、例えばフィンチューブ式の熱交換器であり、内部に流れる冷媒と室内送風機55から送風される空気との間で熱交換させる。室内減圧弁53は、室内熱交換器51と液接続配管41との間に設けられる電磁弁であり、通過する冷媒を減圧させる。室内送風機55は、例えばシロッコファンであり、室内機50が設けられる空間の空気を室内機50の内部に吸引し、吸引した空気を室内熱交換器51を介して室内機50の外部に送風する。
【0018】
[1-1-2.分岐部の構成]
図2は、分岐管30の側面図である。図2において、符号UPを記した矢印は鉛直方向上方を表し、上下、鉛直、および水平といった文章中の方向の説明は、これに対応する。分岐管30は、鉛直方向に沿って設けられる略Y字形状の冷媒配管であり、第1管部31、第2管部32、および、第3管部33を有する。
【0019】
第1管部31は、鉛直方向に沿って設けられる円形断面の冷媒配管であり、その下端には流入口31aが形成される。流入口31aは、過冷却熱交換器23から流出した冷媒が分岐管30に対して流入する部分である。後述するように、流入口31aから流入する冷媒はガスリッチな気液混合冷媒であり、流入口31aに流入した時点では、液体冷媒の分布には慣性によって水平方向における偏りが生じる。流入口31aから流入した液体冷媒は、第1管部31の内部を鉛直方向上方に流れることによって水平方向における分布の偏りが解消され、液体冷媒は第1管部31の内壁全周に沿って略均一に分布するようになる。第1管部31の長さHは、150mm以上であれば、第1管部31の上端における液体冷媒の水平方向の分布の偏りが解消される。本実施形態において、第1管部31の長さHは、150mm以上である。
【0020】
第1管部31の上端には、第2管部32及び第3管部33が接続される。第2管部32および第3管部33は、第1管部31の上端から分岐し、互いに第1管部31を中心に対称となるように形成される。なお、本実施形態において、第1インジェクション配管27a及び第2インジェクション配管27bについても、互いに第1管部31を中心に対称となるように形成される。これにより、第1管部31の上端から第1圧縮機11aのインジェクションポートまでの冷媒の流路と、第1管部31の上端から第2圧縮機11bのインジェクションポートまでの冷媒の流路とが対称となり、それぞれの流路における圧力損失も同等となる。
【0021】
第2管部32は、円形断面の冷媒配管であり、その内径は、内径L2である。第2管部32は、第1湾曲部(湾曲部)32aと、第1直線配管部(直線配管部)32bと、を有する。第1湾曲部32aは、下端が水平方向に沿い、上端が鉛直方向に沿う四分円の弧に対応する円弧状に湾曲した冷媒配管である。第1湾曲部32aは、下端において第3管部33および第1管部31と接続し、上端において第1直線配管部32bと接続する。第1直線配管部32bは、鉛直方向に沿って設けられる冷媒配管であり、下端において第1湾曲部32aと接続し、上端には第1流出口(流出口)32cが形成される。第1流出口32cは、分岐管30において第1インジェクション配管27aに対して接続する部分である。第2管部32は、第1流出口32cを介して第1インジェクション配管27aに連通する。
【0022】
第3管部33は、円形断面の冷媒配管である。第3管部33の内径L3は、第2管部32の内径L2と略同等である。第3管部33は、第2湾曲部(湾曲部)33aと、第2直線配管部(直線配管部)33bと、を有する。第2湾曲部33aは、下端が水平方向に沿い、上端が鉛直方向に沿う四分円の弧に対応する円弧状に湾曲した冷媒配管である。第2湾曲部33aは、下端において第1湾曲部32aの下端と水平方向に接続し、第1管部31の上端と鉛直方向に接続される。第1湾曲部32aと第2湾曲部33aは、半円形状に沿って円弧状に曲げられた冷媒配管を形成する。第2湾曲部33aの上端には、第2直線配管部33bが接続される。第2直線配管部33bは、鉛直方向に沿って設けられる冷媒配管であり、下端において第2湾曲部33aと接続し、上端には第2流出口(流出口)33cが形成される。第2流出口33cは、分岐管30において第2インジェクション配管27bに対して接続する部分である。第3管部33は、第2流出口33cを介して第2インジェクション配管27bに連通する。
【0023】
図2に示すように、第2管部32および第3管部33は、水平方向において互いに距離L1だけ離れて配置される。距離L1は、第1湾曲部32aおよび第2湾曲部33aが成す四分円の最内面における曲率半径Rの2倍と略同等である。
【0024】
また、後述の実施例で説明するように、距離L1により、第2管部32および第3管部33に分配される液体冷媒の割合に変化が生じる。後述するように、距離L1は、第2管部32の内径L2の2倍以上、且つ、18倍以下であることが望ましい。また、距離L1は、第2管部32の内径L2の3.5倍以上、且つ、17倍以下であることがより望ましい。本実施形態において、距離L1は、第2管部32の内径L2の3.5倍以上、且つ、17倍以下である。この場合、液体冷媒は、第2管部32および第3管部33に対してより均等に分配される。
【0025】
[1-1-3.接続配管分岐部の構成]
図3は、接続配管分岐部60の平面図であり、上方から見た接続配管分岐部60を示す。接続配管分岐部60は、略水平方向に沿って配置され、2つの接続配管用分岐管61を略平行に並べて連結する。2つの接続配管用分岐管61は、互いに距離L4だけ離れて配置される。接続配管用分岐管61同士の距離L4は、第2管部32と第3管部33との間の距離L1よりも小さい。また、接続配管用分岐管61同士の距離L4は、接続配管用分岐管61の内径L5よりも小さい。
【0026】
[1-2.動作、作用]
以上のように構成された空気調和装置1について、以下その動作、作用を説明する。以下では、空気調和装置1が空気調和を実行する場合の一例として、冷房運転を実行する場合について説明する。
【0027】
空気調和装置1が室内機50の設置された空間に対して冷房運転を実行する場合、空気調和装置1は、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bを駆動させる。この場合、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bから吐出された高温高圧の気体冷媒は、四方弁13を介して室外熱交換器15に流入する。室外熱交換器15に流入した冷媒は、水と熱交換して温度が低下し、凝縮して低温高圧の液体冷媒となる。
【0028】
低温高圧の液体冷媒は、レシーバタンク17、室外減圧弁19、過冷却熱交換器23を流れる。低温高圧の液体冷媒は、後述のように過冷却熱交換器23において更に冷却され、液接続配管41に流入する液体冷媒、および、過冷却膨張弁21に流入する液体冷媒に分岐して流れる。液接続配管41を流れる液体冷媒は、接続配管分岐部60において2つの接続配管用分岐管61に分岐して流れる。このとき、接続配管用分岐管61同士の距離L4は、第2管部32と第3管部33との間の距離L1よりも小さく、且つ、接続配管用分岐管61の内径L5よりも小さい。そのため、液体冷媒は、接続配管分岐部60において2つの接続配管用分岐管61に分岐する際に受ける圧力損失が小さくなる。また、接続配管分岐部60に流入する時点における冷媒は液体冷媒であるため、2つの接続配管用分岐管61に分配される気体冷媒と液体冷媒との割合に偏りが生じることがない。
【0029】
接続配管用分岐管61を分岐して流れる低温高圧の液体冷媒は、それぞれの接続配管用分岐管61が接続された室内機50に流入する。室内機50において、低温高圧の液体冷媒は、室内減圧弁53によって減圧されて低温低圧の気液混合冷媒となり、室内熱交換器51に流入する。室内熱交換器51において、冷媒は室内送風機55に送風される空気と熱交換して蒸発し、空気の温度を下げる。これにより、室内機50が設けられた空間は冷却される。
【0030】
一方、過冷却膨張弁21に流入した低温高圧の液体冷媒は、過冷却膨張弁21において減圧され、再び過冷却熱交換器23に流入する。減圧された冷媒は、室外熱交換器15から流出した低温高圧の液体冷媒と過冷却熱交換器23において熱交換して大部分が蒸発し、ガスリッチな気液混合冷媒となる。このとき、室外熱交換器15から流出した低温高圧の液体冷媒は冷却される。
【0031】
図4は、分岐管30の斜視図であり、気液混合冷媒が分岐管30において分配される様子を示す。図4において、白抜きの矢印は気体冷媒の流れを表し、黒塗りの矢印は液体冷媒の流れを表す。過冷却熱交換器23から流出したガスリッチな気液混合冷媒は、分岐管30に流入する。分岐管30に流入した気液混合冷媒は、第1管部31を鉛直方向上方に向けて流れる。これにより、気液混合冷媒が水平方向に流れていた際に生じた、液体冷媒の水平方向における分布の慣性による偏りが解消される。そのため、第1管部31の上部において、気液混合冷媒に含まれる液体冷媒は、図4に斜線で示すように、表面張力によって第1管部31の内周の略全面に略均一に張り付いて流れる。また、気液混合冷媒に含まれる気体冷媒は、第1管部31の中心を流れる。
【0032】
第1管部31を流れた気液混合冷媒は、第1管部31の上端から、第2管部32の第1湾曲部32a、および、第3管部33の第2湾曲部33aに流入する。このとき、気液混合冷媒のうち、気体冷媒よりも比重が大きい液体冷媒は、L1の距離がL4の距離より大きいので第1管部31の上端から上方に飛び出し、第1湾曲部32aおよび第2湾曲部33aの内壁面のうち、上部に付着する。この液体冷媒は、L1の距離がL4の距離より大きいので内壁面の上部の面積が大きいことから第1湾曲部32aおよび第2湾曲部33aの内壁面の上部において、表面張力によって略均一に広がる。分岐管30は鉛直方向に沿って設けられるため、気体冷媒と液体冷媒との比重の差によって液体冷媒が第2管部32または第3管部33の片方に偏ることがない。
【0033】
本実施形態において、第3管部33の内径L3は、第2管部32の内径L2と略同等である。また、第1直線配管部32bと第2直線配管部33bとの間の距離L1は、第2管部32の内径L2の3.5倍以上であり、且つ、17倍以下である。従って、後述の実施例において示すように、液体冷媒は、第2管部32および第3管部33に対して略均等に分配される。
【0034】
第2管部32および第3管部33に分岐して流れる気液混合冷媒は、第1インジェクション配管27aおよび第2インジェクション配管27bを介し、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bの中間圧室にインジェクションされる。このときインジェクションされる気液混合冷媒は、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bの中間圧室において圧縮中の冷媒よりも乾き度が小さい。従って、気液混合冷媒のインジェクションにより、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bから吐出される冷媒の温度を低下させることができる。従って、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bを高回転で運転することが可能となる。
【0035】
さらに、第1インジェクション配管27aを流れる気液混合冷媒と、第2インジェクション配管27bを流れる気液混合冷媒との間において、気体冷媒と液体冷媒の割合は略均等である。そのため、第1圧縮機11aから吐出される冷媒の温度と、第2圧縮機11bから吐出される冷媒の温度と、が略均一となる。従って、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bを、共に高回転で運転することが可能となる。
【0036】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、室外機10は、第1圧縮機11a、第2圧縮機11bと、第1圧縮機11a、第2圧縮機11bそれぞれに接続される第1インジェクション配管27a、第2インジェクション配管27bと、第1インジェクション配管27a、第2インジェクション配管27bに接続され鉛直方向に沿って配置される分岐管30と、を有する室外機であって、分岐管30は、下端に冷媒の流入口31aを一つ形成する第1管部31と、流入口31aと連通する冷媒の第1流出口32c、第2流出口33cをそれぞれ上端に形成する第2管部32および第3管部33と、を有し、第2管部32および第3管部33は、円弧状に曲げられ、第1流出口32c、第2流出口33cを介して第1インジェクション配管27a、第2インジェクション配管27bとそれぞれ連通する。
【0037】
この構成によれば、分岐管30が鉛直方向に沿って設けられ、冷媒が下方から上方に向けて流れる。従って、気体冷媒と液体冷媒との比重の差によって第2管部32または第3管部33の片方に偏って液体冷媒が流れることが抑制され、気液二層冷媒は略均等に分流される。これにより、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bが吐出する冷媒の温度が均一化され、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bを共に高回転で運転させることができる。そのため、室外機10は、空気調和能力を向上できる。
【0038】
本実施形態のように、室外機10において、第2管部32および第3管部33は、円弧状に湾曲した第1湾曲部32a、第2湾曲部33aと、鉛直方向に沿って設けられる直線状の第1直線配管部32b、第2直線配管部33bと、をそれぞれ有し、第2管部32の内径L2は、第3管部33の内径L3と略同等であり、第2管部32の第1直線配管部32bと第3管部33の第2直線配管部33bとの間の距離L1は、第2管部32の内径L2の2倍以上であり、且つ、第2管部32の内径L2の18倍以下である構成としてもよい。
【0039】
この構成によれば、液体冷媒は、第2管部32および第3管部33に対してより均等に分配される。従って、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bが吐出する冷媒の温度をより均一化できるため、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bを共に高回転で運転できる。そのため、室外機10は、空気調和能力をより向上できる。
【0040】
本実施形態のように、第2管部32の第1直線配管部32bと第3管部33の第2直線配管部33bとの間の距離L1は、第2管部32の内径L2の3.5倍以上であり、且つ、第2管部32の内径L2の17倍以下である構成としてもよい。
【0041】
この構成によれば、液体冷媒は、第2管部32および第3管部33に対してさらに均等に分配される。従って、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bが吐出する冷媒の温度をさらに均一化できるため、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bを共に高回転で運転できる。そのため、室外機10は、空気調和能力をさらに向上できる。
【0042】
空気調和装置1は、室内機50と、上述の室外機10と、室内機50と室外機10とを接続する液接続配管41と、を備えた空気調和装置において、液接続配管41は、水平方向に沿って配置され、冷媒を分岐して流す接続配管用分岐管61を備え、接続配管用分岐管61同士の距離L4は、第2管部32と第3管部33との間の距離L1よりも小さい。
【0043】
この構成によれば、接続配管用分岐管61に対して冷媒を分流する際の圧力損失を抑制できる。従って、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bにインジェクションされる冷媒を均一化しつつ、接続配管用分岐管61を流れる冷媒を流れやすくすることができる。そのため、空気調和装置1の空気調和能力が向上する。
【0044】
(実施例)
発明者らが実施した試験について、実施例として以下に示す。なお、以下の試験では、第2管部32の内径L2に対する距離L1の大きさが、第2管部32および第3管部33に分配される液体冷媒の偏りに対して与える影響を評価することを目的とした。
【0045】
実施例において、第2管部32および第3管部33を構成する配管は、外径9.52mm、厚さ0.8mmであり、内径L2および内径L3は、7.92mmであった。実施例では、内径L2および内径L3を一定としたうえで、距離L1を0mm、3mm、70.48mm、200mm、と変化させ、第2管部32および第3管部33に分配される液体冷媒の偏りを評価した。なお、第2管部32および第3管部33に分配される液体冷媒の偏りは、分配された冷媒を第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bにインジェクションし、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bが吐出する冷媒の温度差dtによって評価した。具体的には、温度差dtが大きければ、液体冷媒は第2管部32または第3管部33のどちらか一方により偏って分配されると評価した。また、温度差dtが小さければ、液体冷媒は第2管部32および第3管部33に対し、より均等に分配されると評価した。
【0046】
図5は、第2管部32の内径L2に対する距離L1の大きさと、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bが吐出する冷媒の温度差dtとの関係を示すグラフである。図5において、横軸は距離L1を内径L2で除した無次元量であり、縦軸は温度差dtの絶対値である。また、図5の曲線は、各データ点に対して二次の多項式近似を適用した線である。
【0047】
図5に示すように、距離L1が内径L2の10倍程度である場合に、温度差dtは極小且つ最小であり、2K程度となる。距離L1が内径L2の2倍程度から18倍程度となる範囲A1において、温度差dtが13.0K以下となる。また、距離L1が内径L2の3.5倍程度から17倍程度となる範囲A2において、温度差dtが10.0K以下となる。
【0048】
距離L1が大きくなることにより、第1湾曲部32aおよび第2湾曲部33aの内壁面の面積が大きくなる。図4に示すように、第1管部31の上端から飛び出した液体冷媒は、表面張力により、第1湾曲部32aおよび第2湾曲部33aの内壁面により均一に広がる。従って、距離L1が内径L2の0倍から10倍までの範囲においては、上記の表面張力の作用が支配的であり、距離L1が大きくなることにより、液体冷媒は第2管部32および第3管部33に対し、より均等に分配されることが判明した。
【0049】
一方で、距離L1が大きくなることにより、分岐管30の設置時における鉛直方向に対するわずかな傾きの影響が大きくなる。そのため、液体冷媒は、重力の作用により、第2管部32または第3管部33のどちらか一方に偏って分配される。従って、距離L1が内径L2の10倍から21倍までの範囲においては、上記の重力の作用が支配的であり、距離L1が大きくなることにより、液体冷媒は第2管部32または第3管部33のどちらか一方により偏って分配されることが判明した。
【0050】
第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bが吐出する冷媒の温度差dtは、13K以下であることが望ましい。また、温度差dtは、より小さいことが望ましい。従って、以上の結果から、望ましい距離L1の範囲は、内径L2の2倍以上、且つ、18倍以下であることが判明した。また、より望ましい距離L1の範囲は、内径L2の3.5倍以上、且つ、17倍以下であることが判明した。
【0051】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1および2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1および2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0052】
実施の形態1では、第1湾曲部32aと第2湾曲部33aは、半円形状に沿って円弧状に曲げられた冷媒配管を形成すると説明したが、これは一例である。例えば、第2管部32および第3管部33は、楕円の弧に沿って円弧状に湾曲する構成としてもよい。また、第1湾曲部32aと第2湾曲部33aは水平方向に沿った直線状の部分において接続されていてもよい。但し、第1湾曲部32aと第2湾曲部33aが半円形状に沿って円弧状に曲げられる場合、第1湾曲部32aおよび第2湾曲部33aの内壁面に付着した液体冷媒は、円弧に沿って第2管部32および第3管部33の両側により均等に分配される。
【0053】
実施の形態1では、第1管部31、第2管部32、および、第3管部33は、それぞれ円形断面の冷媒配管であると説明したが、これは一例である。例えば、第1管部31、第2管部32、および、第3管部33は、それぞれ多角形または楕円形状の断面を有する冷媒配管であってもよい。但し、第1管部31、第2管部32、および、第3管部33が円形断面の冷媒配管である場合、多角形の角または楕円の長軸側などに液体冷媒の移動が制限されることがなく、液体冷媒は第2管部32および第3管部33の両側により均等に分配される。
【0054】
実施の形態1では、室外機10は、第1圧縮機11aおよび第2圧縮機11bを備える構成としていたが、これは一例である。例えば、室外機10は、3つ以上の圧縮機を備え、それぞれの圧縮機に対してインジェクション配管が接続されていてもよい。この場合、分岐管30は、複数設けられていてもよい。
【0055】
実施の形態1では、接続配管分岐部60において、液接続配管41は、2つの接続配管用分岐管61に分岐し、2つの接続配管用分岐管61は、それぞれ別々の室内機50に接続されると説明したが、これは一例である。例えば、室内機50は3つ以上設けられていてもよく、液接続配管41は、接続配管分岐部60において、3つ以上の接続配管用分岐管61に分岐していてもよい。
【0056】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示は、室外機、および、空気調和装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 空気調和装置
10 室外機
11a 第1圧縮機(圧縮機)
11b 第2圧縮機(圧縮機)
13 四方弁
15 室外熱交換器
17 レシーバタンク
19 室外減圧弁
21 過冷却膨張弁
23 過冷却熱交換器
25a 第1調整弁
25b 第2調整弁
27a 第1インジェクション配管(インジェクション配管)
27b 第2インジェクション配管(インジェクション配管)
30 分岐管
31 第1管部
31a 流入口
32 第2管部
32a 第1湾曲部(湾曲部)
32b 第1直線配管部(直線配管部)
32c 第1流出口(流出口)
33 第3管部
33a 第2湾曲部(湾曲部)
33b 第2直線配管部(直線配管部)
33c 第2流出口(流出口)
41 液接続配管(接続配管)
43 ガス接続配管
50 室内機
51 室内熱交換器
53 室内減圧弁
55 室内送風機
60 接続配管分岐部
61 接続配管用分岐管
A1 範囲
A2 範囲
H 長さ
L1 距離
L2 内径
L3 内径
L4 距離
L5 内径
R 曲率半径
WT 水
dt 温度差
図1
図2
図3
図4
図5