(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169095
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】端子台及び積層バスバ
(51)【国際特許分類】
H01R 9/00 20060101AFI20231121BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20231121BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01R9/00 Z
H02K5/22
H01R4/58 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180394
(22)【出願日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2022080173
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】西條 敦哉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】舘 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智貴
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】辻井 芳朋
【テーマコード(参考)】
5E086
5H605
【Fターム(参考)】
5E086CC47
5E086DD04
5E086DD05
5E086DD32
5E086JJ03
5E086LL04
5E086LL14
5E086LL20
5H605AA08
5H605BB05
5H605CC06
5H605EC08
5H605EC18
5H605GG06
(57)【要約】
【課題】位置ずれ吸収性能に優れ、かつ、低コスト化が可能な端子台を提供すること。
【解決手段】機器に固定される端子台30であって、長尺状に形成された積層バスバ40と、積層バスバを保持した状態で機器に固定される台本体50と、を備え、積層バスバは、積層された複数のバスバ48を含み、積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域E1で、複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、積層バスバの長手方向におけるその他の分離領域E2で、複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に固定される端子台であって、
長尺状に形成された積層バスバと、
前記積層バスバを保持した状態で前記機器に固定される台本体と、
を備え、
前記積層バスバは、積層された複数のバスバを含み、
前記積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域で、前記複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、前記積層バスバの長手方向におけるその他の分離領域で、前記複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている、端子台。
【請求項2】
請求項1に記載の端子台であって、
前記積層保持領域は、前記積層バスバの長手方向における中間に位置する、端子台。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の端子台であって、
前記積層保持領域で、隣合う前記バスバ同士が接合されて前記複数のバスバが積層状態に保持されている、端子台。
【請求項4】
請求項3に記載の端子台であって、
前記隣合う前記バスバ同士が超音波接合、溶接又はろう接によって接合されている、端子台。
【請求項5】
請求項3に記載の端子台であって、
前記隣合う前記バスバ同士が拡散接合によって接合されている、端子台。
【請求項6】
請求項3に記載の端子台であって、
前記積層保持領域の少なくとも一部が前記台本体内に位置する、端子台。
【請求項7】
請求項6に記載の端子台であって、
前記積層保持領域と前記台本体との間に前記積層保持領域と前記台本体との隙間を埋めるシール剤が介在する、端子台。
【請求項8】
請求項3に記載の端子台であって、
前記台本体に、前記台本体と前記機器との間に介在可能な環状シールが装着されている、端子台。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の端子台であって、
前記台本体が、前記積層保持領域で、前記複数のバスバを相対移動不能な状態で積層状態に保持している、端子台。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載の端子台であって、
前記積層バスバは、前記複数のバスバを貫通するように第1ネジ挿通孔が形成された第1接続端と、前記複数のバスバを貫通するように第2ネジ挿通孔が形成された第2接続端とを含む、端子台。
【請求項11】
長尺状に形成された積層バスバであって、
積層された複数のバスバを備え、
前記積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域で、前記複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、前記積層バスバの長手方向におけるその他の分離領域で、前記複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている、積層バスバ。
【請求項12】
請求項11に記載の積層バスバであって、
前記積層保持領域は、前記積層バスバの長手方向における中間に位置する、積層バスバ。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の積層バスバであって、
前記積層保持領域で、隣合う前記バスバ同士が接合されて前記複数のバスバが積層状態に保持されている、積層バスバ。
【請求項14】
請求項13に記載の積層バスバであって、
前記隣合う前記バスバ同士が超音波接合、溶接又はろう接によって接合されている、積層バスバ。
【請求項15】
請求項13に記載の積層バスバであって、
前記隣合う前記バスバ同士が拡散接合によって接合されている、積層バスバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子台及び積層バスバに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インバータ側接続端子とモータ側接続端子とを編組線により接続して成る電気伝導体を備えたインバータ端子台を開示している。また、特許文献1は、インバータ側接続端子とモータ側接続端子とを1枚のバスバの両端で接続したインバータ端子台も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インバータ側接続端子とモータ側接続端子とを編組線により接続した構成によると、部品コストが高いという問題がある。また、インバータ側接続端子とモータ側接続端子とを1枚のバスバの両端で接続した構成によると、接続先部品に対する位置ずれ吸収が困難になるという問題がある。
【0005】
そこで、本開示は、位置ずれ吸収性能に優れ、かつ、低コスト化が可能な端子台及び積層バスバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子台は、機器に固定される端子台であって、長尺状に形成された積層バスバと、前記積層バスバを保持した状態で前記機器に固定される台本体と、を備え、前記積層バスバは、積層された複数のバスバを含み、前記積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域で、前記複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、前記積層バスバの長手方向におけるその他の分離領域で、前記複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている、端子台である。
【0007】
また、本開示の積層バスバは、長尺状に形成された積層バスバであって、積層された複数のバスバを備え、前記積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域で、前記複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、前記積層バスバの長手方向におけるその他の分離領域で、前記複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている、積層バスバである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、位置ずれ吸収性能に優れ、かつ、低コスト化が可能な端子台及び積層バスバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態に係る機電一体化ユニットを示す概略図である。
【
図6】
図6は変形例に係る端子台を示す断面図である。
【
図7】
図7は他の変形例に係る端子台を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の端子台は、次の通りである。
【0012】
(1)機器に固定される端子台であって、長尺状に形成された積層バスバと、前記積層バスバを保持した状態で前記機器に固定される台本体と、を備え、前記積層バスバは、積層された複数のバスバを含み、前記積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域で、前記複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、前記積層バスバの長手方向におけるその他の分離領域で、前記複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている、端子台である。
【0013】
本端子台によると、積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域で、複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、積層バスバの長手方向におけるその他の分離領域で、複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている。このため、積層バスバは、積層バスバの長手方向におけるその他の領域で、積層方向に容易に曲ることができる。このため、1枚の金属板で形成されたバスバと比較して、位置ずれ吸収性能に優れる。また、複数のバスバは、1箇所の積層保持領域で相対移動不能な状態で積層状態に保持されているため、複数のバスバを複数箇所で相対移動不能な状態で積層状態に保持する場合と比較して、低コストで当該積層バスバを積層状態に保つ構成を実現できる。
【0014】
(2)(1)の端子台であって、前記積層保持領域は、前記積層バスバの長手方向における中間に位置していてもよい。これにより、積層バスバの長手方向中間の積層保持領域に対して、積層バスバの両端を積層方向に容易に変位させることができる。このため、積層バスバの長手方向両端に、他の接続部分を接続する際に、積層バスバの長手方向両端の位置を容易に調整できる。
【0015】
(3)(1)又は(2)の端子台であって、前記積層保持領域で、隣合う前記バスバ同士が接合されて前記複数のバスバが積層状態に保持されていてもよい。これにより、複数のバスバ間でシール性を向上させることができる。
【0016】
(4)(3)の端子台であって、前記隣合う前記バスバ同士が超音波接合、溶接又はろう接によって接合されていてもよい。隣合うバスバ間でシール性を向上させることができる。
【0017】
(5)(3)の端子台であって、前記隣合う前記バスバ同士が拡散接合によって接合されていてもよい。隣合うバスバ間でシール性を向上させることができる。
【0018】
(6)(3)から(5)のいずれか1つの端子台であって、前記積層保持領域の少なくとも一部が前記台本体内に位置してもよい。この場合、当該積層バスバのうち積層保持領域と台本体との間でのシール性を向上させることができる。これにより、積層バスバを伝って液体が漏れたり、浸入したりし難くなる。
【0019】
(7)(6)の端子台であって、前記積層保持領域と前記台本体との間に前記積層保持領域と前記台本体との隙間を埋めるシール剤が介在していてもよい。この場合、シール剤によって積層保持領域と台本体との間でのシール性をより向上させることができる。
【0020】
(8)(3)から(7)のいずれか1つの端子台であって、前記台本体に、前記台本体と前記機器との間に介在可能な環状シールが装着されていてもよい。この場合、環状シールによって、台本体と機器との間でのシール性を向上させることができる。隣合うバスバ同士が接合されていることにより、複数のバスバ間でシール性が向上されていることと相俟って、端子台におけるシール性を向上させることができる。
【0021】
(9)(1)又は(2)の端子台であって、前記台本体が、前記積層保持領域で、前記複数のバスバを相対移動不能な状態で積層状態に保持していてもよい。この場合、台本体の製造工程とは別に、複数のバスバ同士を接続する作業を省略することができ、端子台を容易に製造できる。
【0022】
(10)(1)から(9)のいずれか1つの端子台であって、前記積層バスバは、前記複数のバスバを貫通するように第1ネジ挿通孔が形成された第1接続端と、前記複数のバスバを貫通するように第2ネジ挿通孔が形成された第2接続端とを含んでもよい。この場合、第1接続端及び第2接続端に他の接続部分を容易にねじ止できる。
【0023】
本開示の積層バスバは、次の通りである。
【0024】
(11)長尺状に形成された積層バスバであって、積層された複数のバスバを備え、前記積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域で、前記複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、前記積層バスバの長手方向におけるその他の分離領域で、前記複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている、積層バスバである。
【0025】
この積層バスバによると、積層バスバの長手方向における1箇所の部分的な領域で、複数のバスバが相対移動不能な状態で積層状態に保持され、積層バスバの長手方向におけるその他の領域で、複数のバスバが相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている。このため、積層バスバは、積層バスバの長手方向におけるその他の領域で、積層方向に容易に曲ることができる。このため、1枚の金属板で形成されたバスバと比較して、位置ずれ吸収性能に優れる。また、複数のバスバは、積層バスバの長手方向における部分的な領域で相対移動不能な状態で積層状態に保持されているため、複数のバスバを複数箇所で相対移動不能な状態で積層状態に保持する場合と比較して、低コストで当該積層バスバを積層状態に保つ構成を実現できる。
【0026】
(12)(11)の積層バスバであって、前記積層保持領域は、前記積層バスバの長手方向における中間に位置してもよい。この場合、積層バスバの長手方向中間の積層保持領域に対して、積層バスバの両端を積層方向に容易に変位させることができる。このため、積層バスバの長手方向両端に、他の接続部分を接続する際に、積層バスバの長手方向両端の位置を容易に調整できる。
【0027】
(13)(11)又は(12)の積層バスバであって、前記積層保持領域で、隣合う前記バスバ同士が接合されて前記複数のバスバが積層状態に保持されていてもよい。この場合、複数のバスバ間でシール性を向上させることができる。
【0028】
(14)(13)の積層バスバであって、前記隣合う前記バスバ同士が超音波接合、溶接又はろう接によって接合されていてもよい。隣合うバスバ間でシール性を向上させることができる。
【0029】
(15)(13)の積層バスバであって、前記隣合う前記バスバ同士が拡散接合によって接合されていてもよい。隣合うバスバ間でシール性を向上させることができる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の端子台及び積層バスバの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
[実施形態1]
以下、実施形態に係る端子台及び積層バスバについて説明する。端子台は、機器に固定され、当該機器を、他の電気機器に電気的に接続するための部品である。積層バスバは、電気的な接続を行うための部品であり、一種の配線部品である。本実施形態では、機器が回転電機であり、他の電気機器が回転電機を駆動制御するインバータである例が説明される。機器及び他の電気機器は、回転電機又はインバータであることは必須ではなく、他の機器、例えば、バッテリ、DC-DCコンバータ、ジャンクションボックス等であってもよい。
【0032】
<端子台が組込まれた機電一体化ユニットの全体構成について>
説明の便宜上、積層バスバを含む端子台が組込まれた機電一体化ユニットの全体構成について説明しておく。
図1は機電一体化ユニット10を示す概略図である。
【0033】
機電一体化ユニット10は、回転電機20と、インバータ12とを備える。
【0034】
回転電機20は、ケース22、電機子24及び界磁28を備える回転電機である。
図1では、筒状のケース22内に、ステータとしての電機子24が固定されている例が示される。界磁28は、ロータとして電機子24内に配置されている。電機子24が発生させる磁界によって界磁28が回転し、又は、界磁28の回転によって電機子24が起電力を発生させる。本実施形態では、回転電機20が3相交流モータとして使用可能な回転電機であることが想定されている。回転電機は、モータとしての動作に加えて又は代えて発電機として動作可能であってもよい。
【0035】
電機子24は、ステータコアと、複数のコイル線とを備える。ステータコアは、複数のティースを含み、複数のティースは、回転軸を囲むように設けられている。各コイル線は、1つ又は複数のティースに巻回されている。複数のコイル線の複数の端部のうちの少なくとも一部は、複数のティースの間から電機子の軸方向一端側に引出されている。
【0036】
電機子24は、コイル接続端26を備える。コイル接続端26は、例えば、細長い導電性板状部分である。コイル接続端26は、電機子24の軸方向一端側に配置される。コイル接続端26にねじ止のためのネジ挿通孔26hが形成されている。コイル接続端26は、コイル線の端部自体であってもよいし、コイル線に溶接、ネジ止等によって接続された金属板であってもよい。本実施形態では、3相に対応する3つのコイル接続端26が間隔をあけて並列状態で、電機子24の一端側に配置されている。
【0037】
また、インバータ12は、インバータ回路を有する機器である。インバータ12は、回転電機20に一体化されることが想定される。例えば、インバータ12は、回転電機20のケース22に対してボルト固定等によって一体化される。
【0038】
インバータ12は、インバータ回路の出力端に接続されたバスバ18を備える。バスバ18は、銅、銅合金等の金属板材によって形成された細長板状部材である。バスバ18に、ねじ止のためのネジ挿通孔18hが形成されている。本実施形態では、インバータ12から3相に対応する3つのバスバ18が間隔をあけて並列状態で回転電機20に向って延びている。
【0039】
端子台30は、回転電機20のケース22に固定され、回転電機20とインバータ12とを接続する部品である。端子台30は、積層バスバ40を備えている。積層バスバ40の一端部がケース22内を向いてコイル接続端26の端部に接続される第1接続端42である。端子台30がケース22に固定された状態で、第1接続端42は、コイル接続端26と重なり合う位置に配置される。積層バスバ40の他端部がケース22外を向いてインバータ12のバスバ18の端部に接続可能な位置に支持される第2接続端44である。第2接続端44は、回転電機20にインバータ12が一体化された状態で、バスバ18と重なり合う位置に配置される。本実施形態では、3相に対応する3つの積層バスバ40が間隔をあけて並列状態で配置されている。
【0040】
組付公差の範囲内で、コイル接続端26が所定位置からずれて配置される場合がある。また、熱膨張収縮等に起因して、コイル接続端26が所定位置からずれて配置される場合がある。このため、コイル接続端26と第1接続端42とが位置ずれする場合がある。本端子台30は、コイル接続端26と第1接続端42との位置ずれを吸収する役割を果すことができる。
【0041】
特に、コイルの占積率を高めるため、平角導体がコイル線として用いられることがある。しかしながら、コイル線が平角導体であると、コイル線として撚り線を用いた場合よりも硬くて変形し難くなるため、コイル線の変形によってコイル接続端26の位置を矯正することは困難となる。本端子台30は、このような場合において、第1接続端42とコイル接続端26との間の位置ずれを吸収するのに役立つ。
【0042】
また、回転電機20にインバータ12を一体化する際、組付公差の範囲内で、バスバ18の端部と積層バスバ40の第2接続端44とが位置ずれすることが考えられる。また、回転電機20にインバータ12が一体化された状態で、熱膨張収縮によって、バスバ18の端部と積層バスバ40の第2接続端44とが位置ずれすることが考えられる。
【0043】
本端子台30は、バスバ18の端部と積層バスバ40の第2接続端44との位置ずれを吸収するための役割を果すこともできる。
【0044】
<端子台について>
端子台30についてより具体的に説明する。
図2は端子台30を示す斜視図である。
図3は
図2のIII-III線断面図である。
図4は
図3のIV-IV線断面図である。
図2では端子台30からケース22から取外された状態が示されている。
図3及び
図4では端子台30がケース22に固定された状態が示されている。
図5は
図3のA部分の拡大図である。
図2から
図5において、ケース22が部分的に図示される。
【0045】
端子台30は、積層バスバ40と、台本体50とを備える。
【0046】
積層バスバ40は、長尺状に形成された導電部品である。上記したように、積層バスバ40の一端が第1接続端42であり、積層バスバ40の他端が第2接続端44である。
【0047】
第1接続端42に第1ネジ挿通孔42hが形成されている。第1接続端42にコイル接続端26が重ね合わされた状態で、ネジS1がネジ挿通孔26h、42hに挿通される。そして、当該ネジS1がナットN1に螺合締結される。すると、ネジS1の頭部とナットN1との間に挟込まれ、第1接続端42とコイル接続端26とが電気的に接続された状態で固定される。
【0048】
第1ネジ挿通孔42hは、ネジS1のネジ軸部の直径よりも大きいことが好ましい。第1接続端42とコイル接続端26との重ね合せ面に沿った方向において、公差範囲内での第1接続端42とコイル接続端26との位置ずれを吸収し得る範囲内で、第1ネジ挿通孔42hがネジS1のネジ軸部の直径よりも大きく設定されるとよい。ネジ挿通孔26hがネジS1のネジ軸部の直径よりも大きいことによっても、上記位置ずれを吸収し得る。このため、ネジ挿通孔26hの大きさも考慮して、第1ネジ挿通孔42hの大きさが設定されるとよい。
【0049】
第2接続端44に第2ネジ挿通孔44hが形成されている。第2接続端44にバスバ18が重ね合わされた状態で、ネジS2がネジ挿通孔18h、44hに挿通される。そして、当該ネジS2がナットN2に螺合締結される。すると、ネジS2の頭部とナットN2との間に挟込まれ、第2接続端44とバスバ18とが電気的に接続された状態で固定される。第2ネジ挿通孔44hは、ネジS2のネジ軸部の直径よりも大きいことが好ましい。第2接続端44とバスバ18との重ね合せ面に沿った方向において、公差範囲内での第2接続端44とバスバ18との位置ずれを吸収し得る範囲内で、第2ネジ挿通孔44hがネジS2のネジ軸部の直径よりも大きく設定されるとよい。ネジ挿通孔18hがネジS2のネジ軸部の直径よりも大きいことによっても、上記位置ずれを吸収し得る。このため、ネジ挿通孔18hの大きさも考慮して、第2ネジ挿通孔44hの大きさが設定されるとよい。
【0050】
本実施形態では、端子台30は、3本の積層バスバ40を備える。端子台30は、少なくとも1つの積層バスバを備えればよい。
【0051】
積層バスバ40は、積層された複数のバスバ48を含む。バスバ48は、積層バスバ40の全体の厚みよりも薄いバスバである。バスバ48は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属板によって構成される。バスバ48は、細長い金属板状に形成されている。本実施形態では、バスバ48は、一方向に長い長方形状に形成されている。バスバ48の端部が丸められた形状に形成されていることも想定される。
【0052】
バスバ48の両端に、上記ネジ挿通孔42h、44hを形成するための孔48hが形成されている。
【0053】
複数のバスバ48は、同じ形状に形成されている。複数のバスバ48が積層されることによって、積層バスバ40が構成される。積層バスバ40においては、複数の孔48hが重なることによって、第1ネジ挿通孔42h又は第2ネジ挿通孔44hが形成される。
【0054】
後で説明するように、積層バスバ40が積層方向に変形すると、積層されたバスバ48間で孔48hの位置がずれることが想定される。孔48hの位置がずれても、ネジ挿通孔42h、44hにネジS1又はS2を挿通可能なように、孔48hは、ネジS1又はネジS2の直径よりも大きいことが好ましい。
【0055】
積層バスバ40の厚み、バスバ48の厚み、及び、バスバ48の数は任意である。これらの厚み及び数は、積層バスバ40に対して要請される許容電流値、変形の容易性及び加工性等を考慮して設定される。
【0056】
例えば、0.3mm~1mm厚のバスバ48が3~6枚積層された積層バスバ40とされてもよい。また、例えば、0.4mm~0.6mm厚のバスバ48が4~5枚積層された積層バスバ40とされてもよい。本実施形態では、同じ形状のバスバ48が4枚積層された例が説明される。
【0057】
複数のバスバ48が同じ形状に形成されることは必須ではない。例えば、異なる厚みを有する複数のバスバが積層されて積層バスバが構成されてもよい。また、複数のバスバに異なる形状の孔が形成されており、当該複数の孔の共通開口部分によって第1ネジ挿通孔42h又は第2ネジ挿通孔44hが形成されてもよい。
【0058】
積層バスバ40の長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域E1で、複数のバスバ48が相対移動不能な状態で積層状態に保持されている。複数のバスバ48が相対移動不能な状態で積層状態に保持されているとは、複数のバスバ48が相互に接合されているか否かに拘らず、複数のバスバ48の相対的な位置ずれが抑制された状態となっていることをいう。積層保持領域E1において、隣合うバスバ48同士が直接接触した状態となっていることが好ましいが、これは必須ではない。
【0059】
また、積層バスバ40の長手方向におけるその他の分離領域E2で、複数のバスバ48が相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている。複数のバスバ48が相対的に位置ずれ可能な状態で積層されているとは、隣合うバスバ48同士が接合されておらず、従って、隣合うバスバ48が擦れ合うようにして、各バスバ48が厚み方向(積層バスバ40の積層方向)に曲ることができる状態となっていることをいう。
【0060】
本実施形態では、積層バスバ40の長手方向における中間に、積層保持領域E1が位置する。このため、積層バスバ40の長手方向における両端に、分離領域E2が位置する。つまり、上記第1接続端42及び第2接続端44は、分離領域E2に形成される。
【0061】
積層保持領域E1は、積層バスバ40の長手方向中央を含む領域に形成されていることが好ましい。積層保持領域E1の両端に分離領域E2は、同じ長さであることが好ましい。積層保持領域E1は、積層バスバ40のいずれかの端に偏る領域に形成されてもよい。
【0062】
積層保持領域E1が長い程、複数のバスバ48はより確実に積層状態に保たれ易く、分離し難い。分離領域E2の長さが長ければ、積層バスバ40は、分離領域E2において積層方向に容易に曲ることができる。積層保持領域E1及び分離領域E2の長さは、積層バスバ40の一体化保持性能、分離領域E2において望ましいとされる変形容易性等に応じて、設定され得る。
【0063】
積層保持領域E1において、複数のバスバ48を相対移動不能な状態で積層状態に保持する構成は任意である。本実施形態では、積層保持領域E1で、隣合うバスバ48同士が接合されて複数のバスバ48が積層状態に保持されている。つまり、積層保持領域E1では、隣合うバスバ48間の隙間を可及的になくすように、複数のバスバ48が一体化されている。
【0064】
隣合うバスバ48同士の接合は、例えば、超音波接合によってなされてもよいし、抵抗溶接、レーザ溶接等の溶接によってなされてもよいし、半田付等のろう接によってなされてもよい。これらの場合、複数のバスバ48は、積層保持領域E1において電気的に接続された状態となる。隣合うバスバ48同士の接合は、例えば、接着剤によってなされてもよい。
【0065】
複数のバスバ48を積層状態に保持する構成は、上記例に限られない。複数のバスバ48の周囲を樹脂によって固めたり、複数のバスバ48を結束バンド等の結束部材で結束したりして、複数のバスバ48を積層状態に保持するしてもよい。本実施形態において、台本体50が複数のバスバ48を、相対移動不能な状態で積層状態に保持すると捉えることもできる。この場合、複数のバスバ48のうち台本体50内の部分が積層保持領域であり、台本体50から外部に延出する部分が分離領域である。
【0066】
分離領域E2は、上記積層保持領域E1に隣接するため、当該分離領域E2においても、複数のバスバ48が積層状態に保たれる。しかしながら、分離領域E2においては、複数のバスバ48は、相互に接合されておらず、擦れ合うように位置ずれ可能である。このため、分離領域E2においては、複数のバスバ48が擦れ合うように位置ずれすることによって、積層バスバ40が積層方向に容易に曲ることができる。
【0067】
台本体50は、積層バスバ40を保持した状態で機器の一例である回転電機20に固定される部分である。ここで、回転電機20のケース22に、取付孔22h1が形成されている。取付孔22h1は、ケース22の内外に貫通する孔である。本実施形態では、取付孔22h1は、細長い貫通孔である。ケース22に平坦部分が形成され、その平坦部分に取付孔22h1が形成されている。当該平坦部分のうち取付孔22h1の外周りにネジ孔22h2が形成されている。本実施形態では、ケース22のうち取付孔22h1の長手方向両外側にネジ孔22h2が形成されている。台本体50の一部が上記取付孔22h1に挿入された状態で、台本体50がネジ孔22h2を利用してケース22にねじ止固定される。
【0068】
台本体50は、例えば、樹脂等の絶縁体であることが想定される。台本体50を形成する樹脂は、例えば、ポリアミド6T(PA6T)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であり、PA6Tがより好ましい。回転電機20が油冷式である場合、台本体50を形成する樹脂は、PA6T又はPPSであることが好ましい。回転電機20が水冷式である場合、台本体50を形成する樹脂は、PBTであってもよい。複数の積層バスバ40は、台本体50によって、回転電機20に対して一定位置に支持される。
【0069】
台本体50は、挿入部52と、基部53と、ネジ止部54と、延長保持部56、57と、仕切部58とを備える。
【0070】
挿入部52は、取付孔22h1に挿入可能な形状に形成されている。ここで、挿入部52は、取付孔22h1の内周面と同じか当該取付孔22h1よりも小さい外周形状を有している。挿入部52の長さは、取付孔22h1の貫通方向の長さと同じに設定されている。
【0071】
挿入部52の外周に環状シール60が装着されている。例えば、挿入部52の外周に環状溝が形成され、当該環状溝に環状シール60が装着されている。環状シール60は、例えば、ゴム等の弾性部材によって形成された環状部材である。挿入部52が取付孔22h1に挿入された状態で、環状シール60が台本体50における挿入部52とケース22の取付孔22h1の内周面との間で圧縮状態で介在する。これにより、取付孔22h1と挿入部52との間を通った液体の漏れ又は浸入が抑制される。
【0072】
基部53は、挿入部52の一端側である基端側に連なる部分である。基部53は、挿入部52よりも大きく広がる形状に形成されている。ここでは、基部53は、取付孔22h1よりも大きく広がる扁平な直方体状に形成されている。
【0073】
ネジ止部54は、上記基部53の外周から突出する部分である。本実施形態では、台本体50は、2つのネジ止部54を含む。2つのネジ止部54は、基部53の長手方向両端から外方に突出している。ネジ止部54に、ネジ挿通孔54hが形成されている。
【0074】
挿入部52が取付孔22h1に挿入された状態で、基部53が取付孔22h1の周囲でケース22の外面に接することができる。この状態で、一対のネジ止部54が一対のネジ孔22h2上に配置される。ネジS3がネジ挿通孔54hに挿通されて、ケース22のネジ孔22h2に螺合締結されることで、台本体50がケース22に固定される。
【0075】
積層バスバ40がケース22の内外を貫通するように、挿入部52及び基部53によって保持される。本実施形態では、複数(3つ)の積層バスバ40が間隔をあけた並列状態で、挿入部52及び基部53によって保持される。複数(3つ)の積層バスバ40は、挿入部52及び基部53によって互いに絶縁状態に保たれている。
【0076】
積層バスバ40のうちの長手方向中間部が挿入部52及び基部53内に埋った状態となっている。積層バスバ40のうち第1接続端42側の部分は、挿入部52の先端側から突出している。積層バスバ40のうち第2接続端44側の部分は、基部53から挿入部52とは反対側に突出している。
【0077】
上記のように台本体50がケース22に固定された状態で、積層バスバ40の第1接続端42がコイル接続端26に重ね合せ可能な位置に配置される。また、積層バスバ40の第2接続端44がバスバ18と重ね合せ可能な位置に配置される。
【0078】
延長保持部56は、各積層バスバ40を部分的に覆った状態で、挿入部52の先端側から突出している。従って、積層バスバ40のうち第1接続端42寄りの部分は、延長保持部56の先端側から出た部分で台本体50から露出している。
【0079】
また、延長保持部57は、各積層バスバ40を部分的に覆った状態で、基部53から突出している。従って、積層バスバ40のうち第2接続端44寄りの部分は、延長保持部57の先端側から出た部分で台本体50から露出している。
【0080】
仕切部58は、挿入部52の先端側かつ各積層バスバ40間において、複数の積層バスバ40が並ぶ方向に対して直交する方向に延びる板状部分である。かかる仕切部58は、各積層バスバ40のうち第1接続端42寄りの部分間を仕切ることができる。
【0081】
延長保持部56、57は省略されてもよい。仕切部58が省略されてもよい。
【0082】
積層保持領域E1の少なくとも一部は、台本体50内に位置することが好ましい。本実施形態では、積層保持領域E1の全体が挿入部52及び基部53内に位置する。
【0083】
積層バスバ40のうち積層保持領域E1と台本体50との間に、当該積層保持領域E1と台本体50との間の隙間を埋めるシール剤70が介在することが好ましい。シール剤70は、積層保持領域E1の全体に存在する必要は無く、積層保持領域E1のうちの少なくとも一部と台本体50との間に介在していればよい。
【0084】
シール剤70は、積層保持領域E1と台本体50との間に介在し、積層保持領域E1と台本体50との間の液体の侵入路を塞ぐ役割を果す。例えば、シール剤70としては、弾性接着剤を用いることができ、例えば、エピクロロヒドリンゴム接着剤を用いることができる。
【0085】
本端子台30は、例えば、次のようにして製造される。すなわち、複数のバスバ48の長方向の一部を接合して積層バスバ40を製造する。積層バスバ40のうち台本体50内に埋る部分にシール剤70を付着させる。
【0086】
台本体50を金型成形するための金型に、上記積層バスバ40をセットする。金型内に台本体50を形成するための溶融樹脂を流し込み、積層バスバ40をインサートとして台本体50を金型成形する。これにより、積層バスバ40の長手方向中間部がインサート部分として台本体50内に埋った端子台30が製造される。ネジ挿通孔54hに金属製のカラーが埋込まれていてもよい。
【0087】
上記製法とは異なり、積層バスバ40を挿入可能な貫通孔を有する台本体50を金型成形した後に、上記積層バスバ40を当該貫通孔に貫通して、端子台30を製造してもよい。
【0088】
上記端子台30によって回転電機20とインバータ12とを接続する作業例について説明する。
【0089】
まず、回転電機20については、ケース22内に電機子24等が組込まれ、コイル接続端26がケース22内の所定位置に配置されているとする。この状態で、台本体50の挿入部52がケース22のうち取付孔22h1内に挿入される。すると、第1接続端42がコイル接続端26と重なり合う位置に配置される。しかしながら、第1接続端42及びコイル接続端26の少なくとも一方の位置が、積層バスバ40の積層方向において、設計上の所定位置からずれる場合があり得る(
図3の矢符P1参照)。このような場合に、積層バスバ40のうち第1接続端42寄りの部分に広がる分離領域E2が、コイル接続端26の位置に応じて積層方向に容易に曲ることができる(
図3の矢符P2参照)。これにより、第1接続端42とコイル接続端26とが面接触するように重ね合せた状態で、それらをネジ止固定することができる。
【0090】
なお、第1接続端42及びコイル接続端26の少なくとも一方の位置が、積層バスバ40の積層方向に直交する方向において、設計上の所定位置からずれる場合もあり得る(
図3の矢符P3参照)。このような場合に備えて、例えば、ネジ挿通孔42h及びネジ挿通孔26hの少なくとも一方を、ネジS1の直径よりも大きくしておくとよい。この場合、ネジS1が、ずれ量に応じて偏った位置でネジ挿通孔42h又はネジ挿通孔26hに挿通された状態で、第1接続端42とコイル接続端26とがネジ止固定され得る。
【0091】
ケース22に固定された端子台30の外側に積層バスバ40の第2接続端44が突出している。インバータ12が回転電機20上に配置され、バスバ18の端部が第2接続端44と重なり合う位置に配置される。しかしながら、第2接続端44及びバスバ18の端部の少なくとも一方の位置が、積層バスバ40の積層方向において、設計上の所定位置からずれる場合があり得る(
図3の矢符P4参照)。このような場合に、積層バスバ40のうち第2接続端44寄りの部分に広がる分離領域E2が、バスバ18の端部の位置に応じて積層方向に容易に曲ることができる(
図3の矢符P5参照)。これにより、第2接続端44とバスバ18の端部とが面接触するように重ね合せた状態で、それらをネジ止固定することができる。
【0092】
この場合にも、第2接続端44及びバスバ18の端部の少なくとも一方の位置が、積層バスバ40の積層方向に直交する方向において、設計上の所定位置からずれる場合もあり得る(
図3の矢符P6参照)。上記と同様に、例えば、ネジ挿通孔44h及びネジ挿通孔18hの少なくとも一方を、ネジS2の直径よりも大きくしておくとよい。
【0093】
なお、ネジS1、S2、S3によるネジ止固定の順は、任意である。
【0094】
回転電機20にインバータ12を一体化した後においても、熱膨張収縮等によって、第1接続端42とコイル接続端26との位置ずれが生じたり、第2接続端44とバスバ18の端部との位置ずれが生じたり、大きくなったりすることがある。このような場合にも、積層バスバ40の分離領域E2が容易に変形することで、当該位置ずれに対応することができる。
【0095】
回転電機20にインバータ12を一体化した状態において、回転電機20の内外間で液体の通過の抑制が望まれる場合がある。例えば、回転電機20が油冷式である場合には、ケース22内にオイルが存在している。端子台30においても、オイルが回転電機20外に漏れないようにすることが要請される。
【0096】
本端子台30については、ケース22の取付孔22h1と端子台30との間に隙間が生じ得る。しかしながら、ケース22の取付孔22h1と端子台30との間については、環状シール60によって液体の漏れが抑制されている(
図3の矢符F1参照)。
【0097】
また、積層バスバ40と台本体50との間にも微細な隙間が生じ得る。しかしながら、積層バスバ40の積層保持領域E1と台本体50との間については、シール剤70によって液体の漏れが抑制されている(
図3の矢符F2参照)。
【0098】
バスバ48と台本体50との間にも隙間が生じ得る。しかしながら、積層保持領域E1においては、隣合うバスバ48同士が接合されているため、バスバ48間を通った液体の漏れも抑制されている(
図3の矢符F3)。特に、積層保持領域E1とシール剤70とが、積層バスバ40の長手方向において少なくとも一部で重複していれば、積層バスバ40を伝った水の経路は、積層保持領域E1とシール剤70とによって塞がれる。
【0099】
よって、端子台30において、ケース22からのオイル漏れが抑制される。
【0100】
<効果等>
以上のように構成された端子台30及び積層バスバ40によると、積層バスバ40の長手方向における1箇所の部分的な積層保持領域E1で、複数のバスバ48が相対移動不能な状態で積層状態に保持され、積層バスバ40の長手方向におけるその他の分離領域E2で、複数のバスバ48が相対的に位置ずれ可能な状態で積層されている。
【0101】
このため、積層バスバは、積層バスバの長手方向におけるその他の領域で、積層方向に容易に曲ることができる。このため、1枚の金属板で形成されたバスバと比較して、位置ずれ吸収性能に優れる。これにより、インバータ12を回転電機20に接続する作業が容易となる。
【0102】
また、複数のバスバ48を、1つの配線部材としてまとめて取扱うことができる。例えば、複数のバスバ48の端部を重ね合せ状態に保って、バスバ18又はコイル接続端26への接続に用いられる第1接続端42及び第2接続端44として利用することができる。この場合において、複数のバスバ48は、積層バスバ40の長手方向における部分的な1箇所の領域で相対移動不能な状態で積層状態に保持されているため、複数のバスバを複数箇所で相対移動不能な状態で積層状態に保持する場合と比較して、低コストで当該積層バスバを積層状態に保つ構成を実現できる。
【0103】
また、積層保持領域E1は、積層バスバ40の長手方向における中間に位置するため、積層バスバ40の両端を分離領域E2として積層方向に容易に変位させることができる。このため、積層バスバ40の長手方向両端の第1接続端42及び第2接続端44に、他の接続部分としてコイル接続端26又はバスバ18の端部を接続する際に、両端の第1接続端42及び第2接続端44の位置を容易に調整できる。
【0104】
また、積層バスバ40の両端に、積層保持領域E1の加工痕跡が残り難い。例えば、積層保持領域E1において、複数のバスバ48を超音波接合した場合には、超音波接合のための加圧痕が残る場合が考えられる。また、積層保持領域E1において、複数のバスバ48を溶かして溶接した場合には、溶接痕が残る場合が考えられる。第1接続端42又は第2接続端44に加工痕が残っていると、表面の平滑性が失われ、コイル接続端26又はバスバ18と面接触できない可能性がある。積層バスバ40の長手方向中間部に積層保持領域E1を設定することで、第1接続端42及び第2接続端44の表面が平滑となり、コイル接続端26又はバスバ18と面接触した状態で接続がなされ、良好な電気的接続がなされる。
【0105】
また、積層保持領域E1で、隣合うバスバ48同士が接合されて複数のバスバ48が積層状態に保持されているため、隣合うバスバ48間で隙間が生じ難くなる。これにより、複数のバスバ間でシール性を向上させることができ、バスバ48間を伝った液体の通過が抑制される。
【0106】
特に、隣合うバスバ48同士が超音波接合、溶接又はろう接によって接合されていたり、拡散接合によって接合されていたりすると、隣合うバスバ48間でシール性を向上させることができる。また、別途積層のための構成を追加せずi、バスバ48同士をコンパクトな構成で積層状態に保つことができる。
【0107】
また、隣合うバスバ48同士が接合された積層保持領域E1の少なくとも一部が台本体50内に位置すると、台本体50内において、バスバ48間を通った水の通過と、積層バスバ40のうち積層保持領域E1と台本体50との間を通った水の通過との両方を抑制できる。これにより、液体が積層バスバ40を伝って漏れたり、浸入したりし難くなる。
【0108】
また、積層保持領域E1と台本体50との間に積層保持領域E1と台本体50との間の隙間を埋めるシール剤70が介在すると、当該シール剤70によって積層保持領域E1と台本体50との間でのシール性をより向上させることができる。
【0109】
また、台本体50に、台本体50と取付孔22h1の内周部との間に介在する環状シール60が装着されていると、当該環状シール60によって、台本体50とケース22との間のシール性を向上させることができる。隣合うバスバ48同士が接合されてシール性が向上されていることと相俟って、端子台30におけるシール性を向上させることができる。
【0110】
積層バスバ40は、第1ネジ挿通孔42hが形成された第1接続端42と、第2ネジ挿通孔44hが形成された第2接続端44とを含むため、第1接続端42及び第2接続端44に他の接続部分を容易にねじ止できる。
【0111】
[変形例]
上記実施形態では、積層バスバ40が台本体50によって保持された例が説明された。積層バスバ40は、台本体50を伴わずに、電気部品同士を接続する配線材として利用されてもよい。
【0112】
上記実施形態では、積層保持領域E1が積層バスバ40の長手方向中間部に位置する例が説明された。積層保持領域E1は、積層バスバ40の一端又は他端に位置してもよい。つまり、上記第1接続端42が積層保持領域E1であってもよい。この場合、積層バスバ40の長手方向中間から第2接続端44に至る領域が分離領域E2である。上記第2接続端44が積層保持領域E1であってもよい。この場合、積層バスバ40の長手方向中間から第1接続端42に至る領域が分離領域E2である。積層バスバの一端を基準として、他端が容易に変形できるため、位置ずれ吸収性能に優れる。
【0113】
図6に示す変形例に係る端子台30Bのように、積層保持領域E1において、隣合うバスバ48同士が拡散接合によって接合されていてもよい。隣合うバスバ48同士が拡散接合された部分を、拡散接合部48Bとする。
【0114】
拡散接合は、JIS Z 3001-2に規定されているように、隣合うバスバ48同士を密着させ,バスバ48の母材の融点以下の温度条件で,塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して,接合面間に金属結合を実現して接合する方法である。拡散接合は、表面の酸化を抑制可能な真空状態又は不活性ガス雰囲気状態でなされることが好ましい。拡散接合されたバスバ48間では、空隙が消失して、積層されたバスバ48が一体化された状態となっている。拡散接合部48Eにおいて、境界痕跡が残っていてもよい。境界痕跡は、例えば、バスバ48の間に残存する僅かな空隙、拡散接合部48Eの側面に残る段差又は溝として観察されてもよい。境界痕跡が残るかどうか、或いは、どの程度残るかについては、温度、雰囲気、加圧条件等の諸条件に依存する。
【0115】
なお、
図6に示す例では、積層保持領域E1は、実施形態における積層保持領域E1よりも短いが、当該長さは特に限定されない。
【0116】
本変形例において、積層方向において最も外側に位置するバスバ48の外面に、当該バスバ48の延在方向に交差(ここでは直交)する方向に沿う溝48Vが形成されている。当該溝48Vは、台本体50に対応する台本体50Bと積層保持領域E1との間にシール剤70(
図5参照)が介在する場合に、当該シール剤70を積層保持領域E1に留める役割を果すことができる。
【0117】
本変形例において、上記実施形態における挿入部52が省略されている。環状シール60に対応する環状シール60Bが台本体50Bのうちケース22の表面に対向する部分に形成された環状溝50Bg内に配置されている。環状シール60Bは、台本体50Bとケース22の表面との間に圧縮状態で介在して、台本体50Bとケース22との間をシールする。環状シールの構成例は当該例に限られず、上記実施形態と同様に、台本体に一体形成された挿入部に外嵌めされる構成であってもよい。
【0118】
本変形例において、台本体50Bに位置決めピン50Bpが形成されており、当該位置決めピン50Bpがケース22に形成された位置決め孔に挿入される。位置決めピン50Bpは省略されてもよい。
【0119】
上記実施形態及び変形例では、積層保持領域E1において、隣合うバスバ48同士が接合されている場合が説明された。積層保持領域E1において、隣合うバスバ48同士が接合されていることは必須ではない。
【0120】
図7に示す変形例に係る端子台130のように、複数のバスバ48が相互に接合されずに積層された積層バスバ140を、インサート部分として、台本体50が金型成形されてもよい。
【0121】
この場合、台本体50が、複数のバスバ48の長手方向の一部(ここでは中間部)を、相対移動不能な状態で積層状態に保持する。つまり、積層バスバ140のうち台本体50内の部分が積層保持領域E1であり、台本体50から外部に延出する部分が分離領域E2である。本変形例において、環状シール60は省略されていてもよい。また、シール剤70が省略されていてもよい。
【0122】
この変形例においても、積層バスバ140のうち端子台130から延び出る部分は、積層方向において容易に変形できる。このため、シール性に関する点を除き、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0123】
例えば、水冷式の回転電機20においては、ケース22の冷却水通路内を水が循環している。このため、ケース22のうち電機子24等を収容する空間と外部空間との間でのシール性は要請されない。そのような場合に、本端子台130が適用されてもよい。
【0124】
本変形例によると、台本体50が、積層保持領域E1で、複数のバスバ48を相対移動不能な状態で積層状態に保持しているため、台本体50の製造工程とは別に、複数のバスバ48同士を接続する作業を省略することができ、端子台130を容易に製造できる。
【0125】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0126】
10 機電一体化ユニット
12 インバータ
18 バスバ
18h ネジ挿通孔
20 回転電機(機器)
22 ケース
22h1 取付孔
22h2 ネジ孔
24 電機子
26 コイル接続端
26h ネジ挿通孔
28 界磁
30、30B、130 端子台
40、140 積層バスバ
42 第1接続端
42h 第1ネジ挿通孔
44 第2接続端
44h 第2ネジ挿通孔
48 バスバ
48B 拡散接合部
48h 孔
48V 溝
50、50B 本体
50Bg 環状溝
50Bp 位置決めピン
52 挿入部
53 基部
54 ネジ止部
54h ネジ挿通孔
56、57 延長保持部
58 仕切部
60、60B 環状シール
70 シール剤
E1 積層保持領域
E2 分離領域
N1、N2 ナット
S1、S2、S3 ネジ