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特開2023-169098軟磁性粉末組成物およびこれを利用したインダクタコアの製造方法
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  • 特開-軟磁性粉末組成物およびこれを利用したインダクタコアの製造方法 図1
  • 特開-軟磁性粉末組成物およびこれを利用したインダクタコアの製造方法 図2
  • 特開-軟磁性粉末組成物およびこれを利用したインダクタコアの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169098
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】軟磁性粉末組成物およびこれを利用したインダクタコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/147 20060101AFI20231121BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20231121BHJP
   H01F 1/24 20060101ALI20231121BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231121BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20231121BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20231121BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20231121BHJP
   B22F 1/142 20220101ALI20231121BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20231121BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01F1/147 150
H01F41/02 D
H01F1/24
B22F1/00 Y
B22F1/052
B22F1/16 100
B22F3/00 B
B22F1/142 100
C22C38/00 303S
C22C38/00 303T
C22C38/00 304
C22C19/03 E
B22F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022199688
(22)【出願日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0059425
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522486896
【氏名又は名称】エレクトロ エム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン デュク キュ
(72)【発明者】
【氏名】リ ヒ ヒュク
(72)【発明者】
【氏名】リ キ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】カン スク イ
(72)【発明者】
【氏名】キム タエ ヒュン
【テーマコード(参考)】
4K018
5E041
【Fターム(参考)】
4K018AA30
4K018BA16
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC01
4K018BC12
4K018BC28
4K018CA02
4K018FA08
4K018HA04
4K018KA44
5E041AA02
5E041AA04
5E041AA07
5E041BC01
5E041BD03
5E041CA02
5E041HB11
5E041HB14
5E041NN01
5E041NN06
5E041NN18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コア損失および直流重畳特性が優秀な軟磁性粉末組成物およびこれを利用した自動車電力変換部品用インダクタコアの製造方法を提供する。
【解決手段】Fe、Ni、Al、Si金属の合金粉末を一定の比率で混合したインダクタコア用軟磁性粉末組成物によって、透磁率と直流重畳特性およびコア損失特性が優秀なインダクタコアを得る。合金粉末は、Fe-Ni合金粉末60~80重量%、Fe-Si合金粉末5~25重量%およびFe-Si-Al合金粉末10~30重量%を含む。。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金粉末全体を基準としてFe-Ni合金粉末60~80重量%、Fe-Si合金粉末5~25重量%およびFe-Si-Al合金粉末10~30重量%を含む、インダクタコア用軟磁性粉末組成物。
【請求項2】
前記軟磁性粉末組成物の金属含量は、合金粉末全体を基準としてFeは54.2~68.8重量%、Niは30.0~40.0重量%、Siは0.9~4.1重量%およびAlは0.3~1.7重量%である、請求項1に記載の軟磁性粉末組成物。
【請求項3】
前記Fe-Ni合金粉末のNi含量は40~50重量%範囲であり、
前記Fe-Si合金粉末のSi含量は3~6重量%範囲であり、
前記Fe-Si-Al合金粉末のSi含量は8~11重量%範囲であり、Al含量は4~7重量%範囲である、請求項1に記載の軟磁性粉末組成物。
【請求項4】
前記Fe-Ni合金粉末の平均粒子の大きさは17~23μm範囲であり、前記Fe-Si合金粉末の平均粒子の大きさは23~29μm範囲であり、前記Fe-Si-Al合金粉末の平均粒子の大きさは20~28μm範囲である、請求項1に記載の軟磁性粉末組成物。
【請求項5】
前記Fe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末およびFe-Si-Al合金粉末はそれぞれ絶縁材でコーティングされたものである、請求項1に記載の軟磁性粉末組成物。
【請求項6】
前記絶縁材はシリケート、ガラスフリット、アルミナ、水ガラスからなる群から1種以上選択されたものである、請求項5に記載の軟磁性粉末組成物。
【請求項7】
前記絶縁材でコーティングされた各合金粉末において、Fe-Ni合金粉末の絶縁材の含量は1.5~3.0重量%範囲であり、Fe-Si合金粉末の絶縁材の含量は3.0~4.2重量%範囲であり、Fe-Si-Al合金粉末の絶縁材の含量は1.0~2.5重量%範囲である、請求項5に記載の軟磁性粉末組成物。
【請求項8】
前記絶縁材でコーティングされた合金粉末の透磁率(permeability)は50~125範囲である、請求項5に記載の軟磁性粉末組成物。
【請求項9】
前記絶縁材でコーティングされた合金粉末の透磁率(permeability)は50~70範囲である、請求項8に記載の軟磁性粉末組成物。
【請求項10】
Fe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末およびFe-Si-Al合金粉末を高温で熱処理する段階;
前記高温熱処理された軟磁性合金粉末をそれぞれ絶縁材でコーティングする段階;
前記絶縁材でコーティングされた軟磁性合金粉末を混合した後圧力を加えて粉末成形体を製造する段階;および
前記粉末成形体を熱処理する段階を含む、インダクタコアの製造方法。
【請求項11】
前記合金粉末の高温熱処理温度は700~950℃の範囲である、請求項10に記載のインダクタコアの製造方法。
【請求項12】
前記Fe-Ni合金粉末の熱処理段階は750~800℃の温度範囲で遂行される1次熱処理段階および600~800℃の温度範囲で遂行される2次熱処理段階を含む、請求項11に記載のインダクタコアの製造方法。
【請求項13】
前記絶縁材はシリケート、ガラスフリット、アルミナ、水ガラスからなる群から1種以上選択されるものである、請求項10に記載のインダクタコアの製造方法。
【請求項14】
前記絶縁材でコーティングされた合金粉末の透磁率(permeability)は50~125範囲である、請求項10に記載のインダクタコアの製造方法。
【請求項15】
前記絶縁材でコーティングされた合金粉末の透磁率(permeability)は50~70範囲である、請求項14に記載のインダクタコアの製造方法。
【請求項16】
前記合金粉末の混合比は、合金粉末全体を基準としてFe-Ni合金粉末60~80重量%、Fe-Si合金粉末5~25重量%およびFe-Si-Al合金粉末10~30重量%である、請求項10に記載のインダクタコアの製造方法。
【請求項17】
前記粉末成形体を製造する段階の圧力は17~22ton/cmの範囲である、請求項10に記載のインダクタコアの製造方法。
【請求項18】
前記粉末成形体の熱処理温度は700~950℃の範囲である、請求項10に記載のインダクタコアの製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載された軟磁性粉末組成物を利用して製造されたコアを含む、自動車電力変換部品用インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インダクタコア用軟磁性粉末組成物およびこれを利用したインダクタコアの製造方法に関し、Fe、Ni、Al、Si金属の合金粉末を一定の比率で混合して、透磁率と直流重畳特性およびコア損失特性が優秀なインダクタコアを提供することができる。
【背景技術】
【0002】
環境に優しい自動車の開発において、電力変換用インダクタコアの特性に対する重要性が大きくなっている。自動車の核心的な電力変換部品であるOBC(On board charge)の力率改善回路(PFC:Power Factor correction)に含まれるインダクタはハウジング、コイルおよび軟磁性コアで構成され、軟磁性コアはCuコイルによって発生した磁力線の集束および通路の役割をする。軟磁性粉末からなるインダクタコアの直流重畳およびコア損失のような磁気特性は、自動車の電力変換部品の性能に非常に大きな影響を及ぼすため特定の基準に符合するように製造する必要がある。
【0003】
従来インダクタコアは、Fe-Si系またはFe-Si-Al系金属粉末を圧縮成形した製品が主に使用されていたが、このような製品はコア損失または直流重畳のような磁気特性が悪いため、自動車の電力変換部品に適用するのに困難があった。またFe-Ni系金属粉末コアの場合にはニッケルの含量が高いため価格競争力が低く、特に最近ニッケルの価格が急騰しており、産業素材としての使用に相当な障害要因となっている。
【0004】
したがって、直流重畳特性やコア損失特性のような磁気特性が優れており、素材の価格競争力と工程適合性も優秀な軟磁性インダクタコアの開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コア損失および直流重畳特性が優秀な軟磁性粉末組成物およびこれを利用した自動車電力変換部品用インダクタコアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために、一実施例として、Fe-Ni合金粉末60~80重量%;Fe-Si合金粉末5~25重量%;およびFe-Si-Al合金粉末10~30重量%を含むインダクタコア用軟磁性粉末組成物を提供する。
【0007】
また、他の一実施例として、Fe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末およびFe-Si-Al合金粉末をそれぞれ高温で熱処理する段階;前記高温熱処理された軟磁性合金粉末をそれぞれ絶縁材でコーティングする段階;前記絶縁材でコーティングされた軟磁性合金粉末を混合した後圧力を加えて粉末成形体を製造する段階;および前記粉末成形体を熱処理する段階を含むインダクタコアの製造方法を提供する。
【0008】
さらに他の一実施例として、前記軟磁性粉末組成物を利用して製造されたコアを含む自動車電力変換部品用インダクタを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、異なる種類の多くの合金粉末を最適な割合で組み合わせて直流重畳特性とコア損失特性が優秀なインダクタコアを製造することができる。特に実施例に係るインダクタコア用軟磁性粉末組成物は、高価なニッケル含有金属粉末の含量を20%以上大きく下げることによって原価を節減できるため、価格競争力が優秀なインダクタコアを提供することができる。
【0010】
また、本実施例に係る軟磁性インダクタコアの製造方法は、合金粉末の熱処理段階、絶縁コーティング段階、粉末成形体製造段階および粉末成形体の熱処理段階を含む一連の過程を通じてインダクタコアを製造できるため、製造工程が単純で不良率が低いという長所がある。
【0011】
このように、磁気特性および価格競争力と工程適合度が優秀な軟磁性インダクタコアを含む自動車の電力変換部品は、性能が向上して環境に優しい自動車の開発に寄与することができる。
【0012】
一方、本発明の効果は以上で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は下記の記載から当業者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施例に係る軟磁性粉末組成物を利用してインダクタコアを製造する過程を示す工程フローチャートである。
図2】一実施例に係る合金粉末の混合比を示すグラフである。
図3】実施例および比較例に係るインダクタコアの直流重畳特性測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例および図面を参照して本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明の理解を助けるために例示的に提示されたものであり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。本発明は多様な変更を加えることができ、多様な異なる形態で具現され得、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されるべきである。
【0015】
本出願で使った用語は単に特定の実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。
【0016】
異なって定義されない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで使われるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または形式的な意味で解釈されない。
【0017】
具体的には、粉末タイプの軟磁性金属素材を利用して、電気自動車の電力変換部品(OBC)に適用できる磁気特性を有するインダクタコアが提供される。
【0018】
一実施例に係る軟磁性粉末組成物はFe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末およびFe-Si-Al合金粉末すなわち、3種の合金粉末を一定の比率で含む。
【0019】
また、一実施例に係るインダクタコアの製造方法はFe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末およびFe-Si-Al合金粉末をそれぞれ高温で熱処理する段階;前記高温熱処理された軟磁性合金粉末をそれぞれ絶縁材でコーティングする段階;前記絶縁材でコーティングされた軟磁性合金粉末を混合した後圧力を加えて粉末成形体を製造する段階;および前記粉末成形体を熱処理する段階を含む。
【0020】
このように、軟磁性粉末組成物を利用してインダクタコアを製造するためには、まずそれぞれの合金粉末を準備しなければならない。各合金粉末は商用の合金粉末を使ってもよく、直接製造して使ってもよい。
【0021】
金属原材料(Fe、Si、Al、Ni)を利用してインダクタコア用粉末組成物に使われるFe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末およびFe-Si-Al合金粉末を製造する方法としては、例えばガスアトマイザー方法が挙げられる。ガスアトマイザー方法は、原材料(Fe、Si、Al、Ni)をそれぞれの合金組成に合うように計量した後、溶解炉に装入して電磁誘導現象で1,600℃以上の温度で条件で溶融金属の溶湯を作った後微細なノズル(直径1~8mm)を通過させ、この時、ノズルは通過する溶融金属を不活性ガス(窒素、アルゴン)を一定の圧力(10~20MPa)で噴射して溶融金属に衝撃を与えて粉末を製造する方式である。それぞれの粉末素材の特徴により製造条件は変わり得るが、基本的な製造工程は類似している。
【0022】
通常ガスアトマイザーで製造された粉末は球状であり、粉末粒子の大きさは多様に製造される。したがって、ガスアトマイザー方式で得られた多様な大きさの粉末は、用途に応じて大きさ別に分離して使う。粉末の分離は乾式篩分け方式で進行することができ、粉末の大きさによって20μm以下、20~45μm、45~63μm、63μm以上に区分することができる。
【0023】
実施例に係るインダクタコアの製造に適合なFe-Ni合金粉末の平均粒子の大きさは17~23μm範囲であり、前記Fe-Si合金粉末の平均粒子の大きさは23~29μm範囲であり、前記Fe-Si-Al合金粉末の平均粒子の大きさは20~28μm範囲であることが好ましい。粒子の大きさが前記範囲未満の場合は粉末を製造または分級(篩分け)をする時に時間と費用が多く必要とされ、金型の損傷や粉末成形品の不良率が増加する可能性があり、粒子の大きさが前記範囲を超過する場合は粉末の絶縁コーティング時に添加する絶縁材の絶縁率の範囲が変わるため、透磁率および優秀なコア損失特性を得ることが困難であり得る。したがって、前記のような範囲に粒子の大きさを最適化すると絶縁コーティング工程の制御が有利であるという長所がある。
【0024】
また、実施例によると、インダクタコアの製造に使うために、各合金粉末を一定の温度と雰囲気条件で熱処理する。合金粉末の熱処理は粉末の内部応力を除去し、酸化を防止できるように温度と還元性の雰囲気を調節して施行する。具体的な熱処理条件はそれぞれの合金粉末の組成および特性により異なるため素材と用途に応じて適切な調節が必要である。
【0025】
各合金粉末の熱処理温度は700~950℃の範囲で各粉末の特性に合わせて温度を調節することができる。例えば、Fe-Si合金粉末は850~950℃窒素雰囲気で熱処理することが好ましく、Fe-Si-Al合金粉末は800~900℃窒素雰囲気で熱処理することが好ましい。
【0026】
また、必要に応じて異なる温度範囲で2回以上の熱処理過程を遂行してもよい。例えば、Fe-Ni合金粉末は750~800℃、水素雰囲気で1次熱処理過程を遂行し、600~800℃で2次熱処理過程を遂行することが好ましい。
【0027】
各合金粉末の熱処理段階が完了すると、合金粉末の表面に絶縁材をコーティングする過程を実施する。本発明ではインダクタコアの製造のために、Fe-Si合金粉末、Fe-Si-Al合金粉末およびFe-Si-Al合金粉末それぞれをセラミック系絶縁材でコーティングした。
【0028】
この時、使用可能なセラミック系絶縁材としては、シリケート、ガラスフリット(glass frit)、アルミナ(alumina)、水ガラス(water glass)からなる群から1種以上選択することができ、この中でシリケートまたは水ガラス(ウォーターガラス)等が安価で使いやすい長所があるが、これに特に制限されるものではない。
【0029】
前記絶縁材でコーティングされた各合金粉末において、Fe-Ni合金粉末の絶縁材の含量は1.5~3.0重量%範囲であり、Fe-Si合金粉末の絶縁材の含量は3.0~4.2重量%範囲であり、Fe-Si-Al合金粉末の絶縁材の含量は1.0~2.5重量%範囲であることが好ましいが、これは合金粉末の透磁率により調節可能なものであって、特にこの範囲に制限されるものではない。
【0030】
実施例によると、絶縁材でコーティングされた各合金粉末の透磁率(permeability)は約50~125範囲であり、50~70範囲であることが好ましい。例えば、インダクタコアに使うのに適合な透磁率60に合わせて各合金粉末の絶縁コーティングを実施することができるが、特にこれに制限されるものではなく、絶縁材の含量を調節すれば、透磁率125までも可能である。
【0031】
前記のように透磁率60で絶縁コーティングされたそれぞれの合金粉末が得られると、これら粉末を混合してインダクタコアの製造に使う。絶縁コーティングされた合金粉末の混合比率は直流重畳特性とコア損失特性を具現する条件に応じてその比率を調整することができる。それぞれの合金粉末の混合比率の例示を図2の組成グラフに示した。図2に示されたように、本発明では透磁率および特化した特性を実現する条件に応じてそれぞれの合金粉末を混合して適用することによって、個別的合金粉末の固有特性を最大限活用した新しい特性を有する粉末コアを製作することができる。
【0032】
本実施例では多様な組成で合金粉末を混合して軟磁性コアを製造した後、直流重畳特性とコア損失特性を測定して、自動車の電力変換部品に使うのに適合な軟磁性粉末組成物の配合比を捜し出した。これによると、インダクタコア用軟磁性粉末組成物は、合金粉末全体を基準としてFe-Ni合金粉末60~80重量%;Fe-Si合金粉末5~25重量%;およびFe-Si-Al合金粉末10~30重量%を含むことが好ましい。Fe-Si合金粉末とFe-Si-Al合金粉末の配合比が前記範囲を超過する場合、磁気特性が低下してコア性能が低下することになり、Fe-Ni合金粉末の含量が高くなると価格が高くなって市場競争力を確保し難い。
【0033】
したがって、前記合金粉末の配合比はインダクタコアに適用するには適合であるが、目標とする製品の特性(コア損失、直流重畳特性、透磁率など)により粉末混合組成物の配合比と絶縁材の含量を調節することができる。
【0034】
実施例によると、各合金粉末の前記配合比により、軟磁性粉末組成物の金属含量は合金粉末全体を基準としてFeは54.2~68.8重量%、Niは30.0~4.0重量%、Siは0.9~4.1重量%およびAlは0.3~1.7重量%範囲を有することになる。
【0035】
また、本実施例に使われた軟磁性合金粉末の場合、Fe-Ni合金粉末のNi含量は40~50重量%で、Fe-Si合金粉末のSi含量は3~6重量%であり、Fe-Si-Al合金粉末のSi含量は8~11重量%で、Al含量は4~7重量であるものを使うことが好ましい。
【0036】
次に、前記Fe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末およびFe-Si-Al合金粉末を前記のように一定の比率で混合した後、圧力を加えて粉末成形体を製造する。また、必要に応じて混合された合金粉末に潤滑剤を混入して成形機を通じて粉末成形体を製造してもよい。
【0037】
粉末成形に適用される圧力は17~22ton/cmの範囲が好ましい。17ton/cm未満の圧力では粉末成形体の形状の具現や透磁率60および直流重畳特性の具現が難しく、22ton/cmを超過する場合には金型の損傷および寿命の短縮、成形品外観のスクラッチ、粉末絶縁層の破壊で損失特性の低下、成形生産性の低下などの問題がある。
【0038】
前記のように加圧条件下で粉末成形体が製造されると、内部応力および望む透磁率と磁気特性を具現するために熱処理を進行する。粉末成形体の熱処理段階は、700~850℃範囲の温度で窒素または水素雰囲気下で遂行され得る。一方、熱処理後に粉末成形体は必要に応じてエポキシコーティング処理のような後処理工程を通じて耐食性および強度などを付与することも可能である。
【0039】
本発明により3種の合金粉末を混合して製作されたインダクタコアは直流重畳特性およびコア損失特性のような磁気特性が優秀であり、高価なニッケルの含量が低いため価格競争力が優秀であるので、環境に優しい自動車のOBC内自動車力率改善回路(PFC)のインダクタに使うのに適合である。
【0040】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は本発明の理解を助けるために例示的に提示されたものであって、本発明の範囲がこれに限定されるものと解釈されてはならない。
【0041】
<実施例>
1)合金粉末の製造
【0042】
軟磁性粉末コア製造に使うFe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末、Fe-Si-Ni合金粉末を、ガスアトマイザー方式でそれぞれ製造した。原材料(Fe、Si、Al、Ni)をそれぞれの合金組成に合うように計量した後、溶解炉に装入して電磁誘導現象で1,600℃以上の温度で条件で溶融金属の溶湯を作った後微細なノズル(直径1~5mm)を通過させ、この時、ノズルは通過する溶融金属を不活性ガス(窒素、アルゴン)を一定の圧力(10~20MPa)で噴射して溶融金属に衝撃を与えて粉末を製造した。
【0043】
ガスアトマイザー方式で製造された多様な大きさの球状粉末を乾式篩分け方式で分類した。粒子の大きさ別に分類された粉末を下記の[表1]の条件に合うように選択して熱処理段階を遂行した。
【0044】
【表1】
【0045】
2)合金粉末の絶縁コーティング
【0046】
前記において準備されたFe-Ni合金粉末、Fe-Si合金粉末、Fe-Si-Ni合金粉末の表面を絶縁コーティング処理した。粉末表面の絶縁コーティングは乾式タイプおよび湿式タイプで進行してもよく、本実施例ではリボンミキサーを使った。リボンミキサーにセラミック系シリケート絶縁材を使ってそれぞれ合金粉末が透磁率60となるように絶縁量を異ならせて施行した。絶縁材の含量は固定されたものではなく、透磁率条件によって変わるものであり、本実施例で各合金粉末に対する絶縁材の含量はFe-Ni合金粉末は1.5~3.0重量%、Fe-Si合金粉末は3.0~4.2重量%、Fe-Si-Al合金粉末は1.0~2.5重量%範囲で混合した。
【0047】
3)絶縁コーティング粉末の混合
【0048】
前記で透磁率60で絶縁コーティングされたそれぞれの合金粉末を、下記の[表2]の組成のように一定の比率で混合した。本発明では粉末コアの特性により混合比率を異ならせることによって、目標とする水準の直流重畳特性およびコア損失を示す軟磁性粉末コアを製作することができる。
【0049】
【表2】
【0050】
4)粉末成形体およびコアの製造
【0051】
前記それぞれの合金粉末を混合条件によって混合した後、適正量の潤滑剤を混合して成形モールドおよび粉末成形機を使って粉末成形体を製造した。粉末成形時の加圧条件は17~22ton/cmであった。製造された粉末成形体は内部応力および望む透磁率と電磁特性を具現するために熱処理を進行し、700~850℃の温度範囲の窒素または水素雰囲気で施行した。また、熱処理後粉末成形体は必要に応じてエポキシコーティング処理を通じて耐食性および強度などを付与して高信頼性の製品に製作した。
【0052】
<試験例>
1)軟磁性粉末コアの磁気特性の比較
【0053】
前記実施例および比較例により製造されたインダクタ用軟磁性粉末コアの磁気特性を測定した。磁気特性評価のために外径27.7mm、内径14.1mm、高さ11.9mmである軟磁性粉末コアを使った。
【0054】
コア損失測定条件は50kHz/100kHz、100mT、25℃、対象コアサイズΦ27であったし、測定結果は下記の[表3]に示した。
【0055】
【表3】
【0056】
また、直流重畳測定条件は0~100 Oe、100kHz、25℃、対象コアサイズΦ27であり、測定結果は下記の[表4]および図3に示した。
【0057】
【表4】
【0058】
2)信頼性検査
【0059】
軟磁性粉末コアを電気自動車のOBCなどに適用するために、検査項目である信頼性に対して実施例3と比較例1および比較例2の合金粉末コアを比較した。信頼性評価項目としては高温/高湿[85℃/85%]のチャンバー内に投入して一定時間[1,000時間]維持し、信頼性評価結果はLCRメータで粉末コアをチャンバー内に投入前/後のインダクタンスを測定してその変化率で評価した。インダクタンス測定結果は下記の[表5]に示された通りであり、この結果によると、本発明に係る実施例3の粉末コアの信頼度が変化率基準である±5%以内を満足するものと評価されて、電装部品に適合することを確認することができる。
【0060】
【表5】
図1
図2
図3