(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169103
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】皮膚表上脂質由来の低分子成分の調製方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20231121BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20231121BHJP
G01N 33/92 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
C12N15/10 100Z
G01N33/92 Z
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023024556
(22)【出願日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2022080269
(32)【優先日】2022-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤松 輝久
(72)【発明者】
【氏名】川崎 彰子
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045BB07
2G045CB09
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA60
2G045DA61
2G045FA40
(57)【要約】
【課題】被験体から採取された皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム法を用いた核酸抽出を行う過程で生じるRNA抽出残渣から代謝物である低分子成分を調製する方法の提供。
【解決手段】核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分の調製方法であって、次の工程(1)及び(2):
(1)被験体から採取された皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム抽出により得られた有機層に、強塩基水溶液を加えて混合した後、分離した水層を除去する工程
(2)水層除去後の有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去し、有機層を回収する工程
を含む、調製方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分の調製方法であって、次の工程(1)及び(2):
(1)被験体から採取された皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム抽出により得られた有機層に、強塩基水溶液を加えて混合した後、分離した水層を除去する工程
(2)水層除去後の有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去し、有機層を回収する工程を含む、調製方法。
【請求項2】
前記の工程(1)において、強塩基水溶液の添加量が、強塩基の規定度X(N)と、強塩基水溶液の体積Y(L)を乗じた値[X(N)×Y(L)]が有機層の体積(L)の3倍以上の値となる量である請求項1記載の調製方法。
【請求項3】
強塩基水溶液が水酸化ナトリウム水溶液である請求項1又は2記載の調製方法。
【請求項4】
前記の工程(1)において、有機層に、さらに有機溶媒を加えることを含む、請求項1~3のいずれか1項記載の調製方法。
【請求項5】
有機溶媒がクロロホルムまたはクロロホルム-メタノール混合溶媒である請求項4記載の調製方法。
【請求項6】
前記の工程(2)において、有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去する操作を2回以上おこなう請求項1~5のいずれか1項記載の調製方法。
【請求項7】
皮膚表上脂質由来の低分子成分が、質量分析により提供される精密質量(m/z)が107.0681~1,245.6860である成分である請求項1~6のいずれか1項記載の調製方法。
【請求項8】
前記の工程(1)において、有機層に加える強塩基水溶液の体積(L)が、当該有機層の体積(L)の0.9倍以上である請求項1~7のいずれか1項記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の調製方法で調製した核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を解析することを含む、該低分子成分の解析方法。
【請求項10】
所定の疾患もしくは状態またはそのリスクを有する集団を被験体として、請求項1~8のいずれか1項記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された該低分子成分の量を対照と比較すること、を含む、該所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの選択方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項記載の調製方法により被験体の核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された該低分子成分から、所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来低分子成分マーカーを検出すること、を含む、所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの検出方法。
【請求項12】
同一の被験体の皮膚表上脂質から、核酸及び請求項1~8のいずれか1項記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された核酸の発現量及び該低分子成分の量を対照と比較すること、を含む、該所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの選択方法。
【請求項13】
同一の被験体の皮膚表上脂質から、核酸及び請求項1~8のいずれか1項記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された核酸及び該低分子成分から、所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来低分子成分マーカーを検出すること、を含む、所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表上脂質に由来する低分子成分の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、解析技術の急速な発展に伴い、様々な生体試料中の分子(核酸、タンパク質、代謝物等)を詳細に解析することが可能となった。さらに、これらの分子解析によりヒトの生体内の現在、さらには将来の生理状態等を調べる技術の開発も進んでいる。
例えば、低侵襲もしくは非侵襲的に回収された生体試料中の核酸分子を用いた疾患等の診断及び予測技術は、世界中の多くの研究機関が開発を進めており、飛躍的にその応用化が進展している。なかでも汎用されているのは、DNAもしくはRNAを用いた診断技術である。DNAを用いた診断技術は、一般に、唾液もしくは口腔内の細胞を採取し、そこに含まれるゲノムDNA中の一塩基多形を解析することで、将来の疾患リスクや自身の体質を診断する方法である。一方で、RNA、タンパク質及び代謝物を用いた診断技術は、血液、尿等の生体試料に含まれる発現情報や存在濃度を基に、現在の生体内における疾患の有無を診断する方法である。
【0003】
一般的にRNAは網羅的な解析方法が確立されており、一度の解析で豊富な情報を得られる。一方、代謝物も近年、その解析技術が飛躍的に向上しており網羅的な代謝物の解析が可能になってきている。代謝物は、分解しやすいRNAに比べて安定な低分子成分が多く扱いが比較的容易であり、またRNAよりも表現型に近く現在や未来の健康状態や疾患のリスク等を高い精度で診断できる可能性がある。さらには、RNAだけではなく代謝物データも同時に利用することで、現在及び未来の健康状態や疾患の診断における有用性を高めたり適用範囲を拡大できたりする可能性がある。
【0004】
特許文献1では、皮膚表上脂質(SSL)中からRNAを抽出可能なことを見出しており、非侵襲かつ簡便に採取可能なSSL中のRNAを用いたバイオマーカーの探索・診断技術への応用が提案されている。RNAの抽出にはいくつかの手法があるが、その中でもフェノール-クロロホルム法は簡便かつ高収量にRNAを得られることから最も一般的である。フェノール-クロロホルム法は、特に脂質に富んだ組織の溶解に有効であり、上記SSL中のRNA抽出にも採用されている。
しかしながら、代謝物をRNAと同時に検出する記載はなく、またフェノール-クロロホルム法と代謝物抽出を組み合わせる技術の報告はない。RNAと代謝物を同時に測定する手法として代謝物を有機溶媒等で先に抽出し、その後RNAを抽出する手法(非特許文献1)が報告されているが、不安定なRNAを後で抽出する手法は好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報第2018/008319号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Woodward, A. et al. (2021) ‘Integrated metabolomics and transcriptomics using an optimised dual extraction process to study human brain cancer cells and tissues’, Metabolites, 11(240). doi: 10.3390/metabo11040240.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一態様において、本発明は、被験体から採取された皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム法を用いた核酸抽出を行う過程で生じるRNA抽出残渣から代謝物である低分子成分を調製する方法を提供する。
別の一態様において、本発明は、上記方法で調製した低分子成分を解析することを含む低分子成分の解析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、RNA抽出残渣である有機層(フェノール・クロロホルム層)に強塩基水溶液を加えてフェノールをフェノキシドとすることによりフェノキシドを含む水層と代謝物である低分子成分を含む有機層の2層に分離し、有機層からフェノールを除去した後、水による洗浄操作を加えることで、低分子成分を効率的に抽出できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の1)~6)に係るものである。
1)核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分の調製方法であって、次の工程(1)及び(2):
(1)被験体から採取された皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム抽出により得られた有機層に、強塩基水溶液を加えて混合した後、分離した水層を除去する工程
(2)水層除去後の有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去し、有機層を回収する工程
を含む、調製方法。
2)1)記載の調製方法で調製した核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を解析することを含む、該低分子成分の解析方法。
3)所定の疾患もしくは状態またはそのリスクを有する集団を被験体として、1)記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された該低分子成分の量を対照と比較すること、を含む、該所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの選択方法。
4)1)記載の調製方法により被験体の核酸以外の皮膚表上脂質由来低分子成分を調製すること、調製された該低分子成分から、所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーを検出すること、を含む、所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの検出方法。
5)同一の被験体の皮膚表上脂質から、核酸及び1)記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された核酸の発現量及び該低分子成分の量を対照と比較すること、を含む、該所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの選択方法。
6)同一の被験体の皮膚表上脂質から、核酸及び1)記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来低分子成分を調製すること、調製された核酸及び該低分子成分から、所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーを検出すること、を含む、所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの検出方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被験体から簡便かつ非侵襲的に代謝物である低分子成分を採取することができる。本発明により調製された低分子成分は、被験体の皮膚、さらには被験体の皮膚以外の部位または全身の状態の解析(例えば、各種疾患の診断)等のための試料として有用である。また、本発明の方法は、一般的なRNA抽出方法であるフェノール-クロロホルム法におけるRNA抽出後の残渣を利用するため、同一サンプルからRNA及び低分子成分を取得できる。これにより、各種疾患や状態の診断に最適なバイオマーカーを組み合わせて利用することができ、適用範囲の拡大が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】回収したサンプルの逆相HPLC-Mass Spectrometry(MS)解析の結果(TIC,Total Ion Chromatogram)を示す。
【
図2】水酸化ナトリウム水溶液添加後の水層と有機層の分離状態を示す。
【
図3】回収したサンプルの逆相HPLC-Mass Spectrometry(MS)解析の結果を示す。
【
図4】SSLに由来するテストステロンの回収率を示す。
【
図7】あぶらとりフィルムに滴下したアンドロゲン4種の回収率を示す。
【
図8】回収したサンプルの逆相HPLC-Mass Spectrometry(MS)解析の結果(TIC)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分の調製方法は、次の工程(1)及び(2):
(1)被験体から採取された皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム抽出により得られた有機層に、強塩基水溶液を加えて混合した後、分離した水層を除去する工程
(2)水層除去後の有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去し、有機層を回収する工程、を有する。
以下、本明細書において、「核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分」を単に「低分子成分」と記載することがある。
【0013】
〔工程(1)〕
本工程は、被験体から採取された皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム抽出により得られた有機層に、強塩基水溶液を加えて混合した後、分離した水層を除去する工程である。
本明細書において「皮膚表上脂質(SSL)」とは、皮膚の表上に存在する脂溶性画分をいい、皮脂と呼ばれることもある。一般に、SSLは、皮膚にある皮脂腺等の外分泌腺から分泌された分泌物を主に含み、皮膚表面を覆う薄い層の形で皮膚表上に存在している。また、「皮膚」とは、特に限定しない限り、角層、表皮、真皮、毛包、ならびに汗腺、皮脂腺及びその他の腺等の組織を含む領域の総称である。
【0014】
「被験体」は、皮膚上にSSLを有する生物であればよい。被験体の例としては、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物が挙げられ、好ましくはヒトである。好ましくは、被験体は、自身の核酸の解析を必要とするかまたは希望するヒト又は非ヒト哺乳動物である。また好ましくは、被験体は、皮膚における遺伝子発現解析、または核酸を用いた皮膚もしくは皮膚以外の部位の状態の解析を必要とするか、または希望するヒト又は非ヒト哺乳動物である。
【0015】
被験体から採取されたSSLは、該被験体の皮膚細胞で発現した核酸、タンパク質、代謝物である低分子成分を含む。
「核酸」は、DNA、RNA等特に限定されないが、好ましくはRNAである。RNAとしては、mRNA、tRNA、rRNA、small RNA(例えば、microRNA(miRNA)、small interfering RNA(siRNA)、Piwi-interacting RNA(piRNA)等)、long intergenic non-coding(linc)RNA、等が挙げられる。
本明細書における低分子成分については後述する。
【0016】
本工程では、さらに、被験体のSSLを採取する工程を有していてもよい。
SSLが採取される皮膚の部位としては、頭、顔、首、体幹、手足等の身体の任意の部位の皮膚、アトピー、ニキビ、炎症、腫瘍等の疾患を有する皮膚、創傷を有する皮膚、等が挙げられるが、特に限定されない。また、SSLが採取される皮膚の部位は、好ましくは、手のひら、背部、足の裏、又は指の皮膚を含まない。
【0017】
被験体の皮膚からのSSLの採取には、皮膚からのSSLの回収又は除去に用いられているあらゆる手段を採用することができる。好ましくは、後述するSSL吸収性素材、SSL接着性素材、又は皮膚からSSLをこすり落とす器具を使用することができる。
SSL吸収性素材又はSSL接着性素材としては、SSLに親和性を有する素材であれば特に限定されず、例えばポリプロピレン、パルプ等が挙げられる。皮膚からのSSLの採取手順のより詳細な例としては、あぶら取り紙、あぶら取りフィルム等のシート状素材へSSLを吸収させる方法、ガラス板、テープ等へSSLを接着させる方法、スパーテル、スクレイパー等によりSSLをこすり落として回収する方法、等が挙げられる。SSLの吸着性を向上させるため、脂溶性の高い溶媒を予め含ませたSSL吸収性素材を用いてもよい。一方、SSL吸収性素材は、水溶性の高い溶媒や水分を含んでいるとSSLの吸着が阻害されるため、水溶性の高い溶媒や水分の含有量が少ないことが好ましい。SSL吸収性素材は、乾燥した状態で用いることが好ましい。
【0018】
被験体から採取されたSSLは一定期間保存されてもよい。採取されたSSLは、含有するRNAの分解を極力抑えるために、採取後できるだけ速やかに低温条件で保存することが好ましい。本発明におけるSSLの保存の温度条件は、0℃以下であればよく、好ましくは-20±20℃~-80±20℃、より好ましくは-20±10℃~-80±10℃、さらに好ましくは-20±20℃~-40±20℃、さらに好ましくは-20±10℃~-40±10℃、さらに好ましくは-20±10℃、さらに好ましくは-20±5℃である。SSLの該低温条件での保存の期間は、特に限定されないが、好ましくは12か月以下、例えば6時間以上12ヶ月以下、より好ましくは6ヶ月以下、例えば1日間以上6ヶ月以下、さらに好ましくは3ヶ月以下、例えば3日間以上3ヶ月以下である。
【0019】
フェノール-クロロホルム抽出は、常法に従って行うことができる。例えば、核酸抽出サンプルにフェノール液、次いでクロロホルムを加えて混合した後、遠心分離する。遠心分離により水層と有機層(フェノール・クロロホルム層)に分離する。上層にRNAを含む水層、下層に代謝物である低分子成分、タンパク質を含む有機層、水層と有機層の境界にDNAを含む中間層ができる。SSLからのRNAの抽出では上層の水層が回収され、下層の有機層はRNA抽出残渣として廃棄されるところ、本発明では該有機層からそれに含まれる低分子成分を抽出する。
【0020】
本工程で用いられる強塩基水溶液としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩、アルコキシド等の強塩基の水溶液が挙げられる。具体的には、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド等の水溶液が挙げられる。なかでも、入手性や汎用性の観点から、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。強塩基は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
強塩基水溶液の水は、水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等を用いることができる。
【0021】
本工程において、強塩基水溶液の添加量は、有機層中のフェノールが水層へ移行する量であれば適宜選択可能であるが、有機層から水層へのフェノール移行を容易にする観点から、強塩基の規定度X(N)と、強塩基水溶液の体積Y(L)を乗じた値[X(N)×Y(L)]が、有機層の体積(L)の3倍以上の値となる量であることが好ましい。強塩基の規定度X(N)と、強塩基水溶液の体積Y(L)と、有機層の体積(L)の関係を式に示すと、以下の式(1)のとおりである。
X×Y≧有機層の体積×3 (1)
強塩基水溶液の添加量は、同様の観点から、強塩基の規定度X(N)と、強塩基水溶液の体積Y(L)を乗じた値[X(N)×Y(L)]が、有機層の体積(L)の3倍以上の値となる量であることが好ましく、また、低分子成分の抽出効率、回収率を向上させる観点から、有機層の体積(L)の9.2倍以下、更には6倍以下、更には5倍以下、更には4倍以下の値となる量であることが好ましい。強塩基水溶液の添加量は、強塩基の規定度X(N)と、強塩基水溶液の体積Y(L)を乗じた値[X(N)×Y(L)]が、有機層の体積(L)の3~9.2倍、更には3~6倍、更には3~5倍、更には3~4倍の値となる量であることが好ましい。
【0022】
強塩基の規定度(N)は、強塩基水溶液の添加量、強塩基水溶液の体積に応じて適宜調整することができる。強塩基の規定度(N)は、有機層と水層を分離させる観点、低分子成分の回収率を向上させる観点から、好ましくは0.2N以上、より好ましくは0.4N以上、より好ましくは0.5N以上、より好ましくは0.8N以上、より好ましくは1.0N以上、より好ましくは1.8N以上、より好ましくは3.0N以上、更に好ましくは4.0N以上、更に好ましくは4.3N以上、より更に好ましくは6.0N以上である。また、強塩基の規定度(N)の上限は、低分子成分の抽出効率、回収率を向上させる観点から、好ましくは12.0N以下、より好ましくは8.0N以下である。強塩基の規定度(N)は、好ましくは0.2~12.0N、より好ましくは0.4~12.0N、より好ましくは0.5~12.0N、より好ましくは0.8~12.0N、より好ましくは1.0~12.0N、より好ましくは1.8~8.0N、更に好ましくは3.0~8.0N、更に好ましくは4.0~8.0N、更に好ましくは4.3~8.0N、より更に好ましくは6.0~8.0Nである。
【0023】
強塩基水溶液の体積(L)は、強塩基水溶液の添加量、強塩基の規定度(N)に応じて適宜調整することができるが、有機層の体積(L)の0.9倍以上であることが低分子成分の回収率を向上させる観点から好ましい。
強塩基水溶液の体積(L)は、同様の観点から、有機層の体積(L)に対して、好ましくは0.92倍以上、より好ましくは1.0倍以上、より好ましくは2.0倍以上、より好ましくは3.8倍以上、より好ましくは5.5倍以上、より好ましくは7.0倍以上であり、また、操作性の観点から、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下である。
【0024】
本工程では、皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム抽出により得られた有機層に、さらに有機溶媒を加えることが操作性向上の観点から好ましい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類等が挙げられる。、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。なかでも、好ましくはアルコール類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類であり、より好ましくはクロロホルム、クロロホルム-メタノール混合溶液である。
クロロホルム-メタノール混合溶液におけるクロロホルムの比率(体積比)は、有機層から水層へのフェノール移行を容易にする観点、回収率を向上させる観点から、好ましくは53%以上、より好ましくは55%以上であり、また、低分子成分の抽出効率の観点から、好ましくは90%以下である。クロロホルム-メタノール混合溶液におけるクロロホルムの比率(体積比)は、好ましくは53~90%、より好ましくは55~90%である。
【0025】
有機溶媒の添加量は、有機層の体積(L)に対して、好ましくは1倍以上である。
【0026】
有機層と水層を分離する手段としては、静置分離、遠心分離等が挙げられる。
分離条件は適宜調整することができるが、遠心分離の場合、常圧で、5000~20000r/minにて、5~30分間の条件で調整することが好ましい。
分離する際の温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、例えば4℃で実施することが好ましい。 本工程では、有機層へ強塩基水溶液を加えて混合することにより、有機層中のフェノールはフェノキシドとなって上層の水層へ移行するため、フェノキシドを含む水層を分離、除去することで、有機層からフェノールを除去することができる。水層除去後の低分子成分を含む有機層を次工程へ供する。
【0027】
〔工程(2)〕
本工程は、水層除去後の有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去し、有機層を回収する工程である。有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去する操作は、1回でも複数回でもよく、例えば2回、3回繰り返してもよい。有機層に残存する強塩基を効率よく除去する観点から、複数回繰り返すことが好ましい。
水としては、例えば、水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水が例示される。
【0028】
有機層への水の添加量は、有機層の体積(L)に対して、好ましくは1倍以上である。前記水の添加量は1回あたりの値である。
【0029】
有機層と水層を分離する手段としては、静置分離、遠心分離等が挙げられる。
分離条件は適宜調整することができるが、遠心分離の場合、常圧で、5000~20000r/minにて、5~30分間の条件で調整することが好ましい。
分離する際の温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、例えば4℃で実施することが好ましい。
有機層へ水を加えて混合することにより、有機層中に残存している強塩基が上層の水層へ移行するため、強塩基を含む水層を分離、除去することによって、低分子成分を含む有機層を回収することができる。
回収した有機層は、必要に応じて、乾燥を行ってもよい。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。
【0030】
かくして、被験体から採取された皮膚表上脂質から低分子成分を調製することができる。
低分子成分としては、生体由来成分又は非生体由来成分が挙げられる。具体的には、生体由来成分として、脂肪酸、アシルグリセロール、スフィンゴ脂質、リン脂質、皮脂、ホルモン、アラキドン酸カスケード等が挙げられる。また、非生体由来成分として、食品由来成分、パーソナルケア製品由来成分、ケミカル製品由来成分、医薬品成分等が挙げられる。
低分子成分は、質量分析により提供される精密質量(m/z)が107.0681~1,245.6860の範囲内である成分が好ましい。質量分析装置条件は、後述の実施例に記載したとおりである。
【0031】
当該低分子成分は、各種の解析又は診断に使用することができる。従って、本発明はまた、上記本発明による低分子成分の調製方法により調製した低分子成分を解析することを含む、低分子成分の解析方法を提供する。低分子成分を用いて行うことができる解析や診断の例としては、以下が挙げられる:
(i)被験体の皮膚状態の解析、例えば、皮膚の健康状態の評価もしくは将来予測、皮膚疾患の診断もしくは予後診断、皮膚外用剤の効能評価、皮膚ガンの診断もしくは予後診断、皮膚の微細変化の評価、等。具体的には、例えば、SSL中のステロイドホルモンを解析することで皮膚状態を予測可能であることが示されている(特開2020-143915)。また血中濃度とも相関していることから採血の必要なく非侵襲的に血中ステロイドホルモン量を解析可能である。
(ii)被験体の皮膚以外の部位または全身の状態の解析、例えば、全身的な健康状態の評価もしくは将来予測、および神経疾患、心血管疾患、代謝性疾患、ガン等の各種疾患の診断もしくは予後診断、等。具体的には、例えば、皮脂中の脂質関連物質の組成の違いによりパーキンソン病を診断できる可能性が示されている(Sinclair, Eleanor et al. 2021. “Metabolomics of sebum reveals lipid dysregulation in Parkinson’s disease.” Nature Communications 12: 1592. http://dx.doi.org/10.1038/s41467-021-21669-4.)
【0032】
本発明はまた、疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの選択方法を提供する。該方法では、所定の疾患もしくは状態またはそのリスクを有する集団を被験体として、本発明の調製方法に従って、核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製する。本発明では、同一の被験体の皮膚表上脂質から核酸を調製してもよい。
該集団から調製された低分子成分、または核酸及び低分子成分について、その量や発現(発現レベル等)を、対照の量や発現と比較する。該対照としては、該所定の疾患もしくは状態またはそのリスクを有さない集団、およびそれに基づく統計学的データ等が挙げられる。対照と比べて異なる量や発現を示す低分子成分を、該所定の疾患もしくは状態のマーカーまたはその候補として選択することができる。
【0033】
本発明はまた、疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの検出方法、または該マーカー検出に基づく疾患もしくは状態、またはそのリスクの判定方法を提供する。該方法では、所定の疾患もしくは状態、またはそのリスクの判定を所望または必要とする被験体から、本発明の調製方法に従って、核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製する。本発明では、同一の被験体の皮膚表上脂質から核酸を調製してもよい。
次いで、調製された低分子成分、または核酸及び低分子成分から、所定の疾患もしくは状態の低分子成分マーカー、または核酸マーカー及び低分子成分マーカーを検出する。該マーカーの有無や発現量に基づいて、被験体の該疾患もしくは状態、またはそのリスクを判定する。
【0034】
(調製用キット)
さらなる一態様において、本発明は、核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分の調製用キットを提供する。該キットは、被験体のSSLの採取及び保存に必要な用具及び試薬、核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を抽出するための試薬を含有する。
SSLの採取及び保存に必要な用具及び試薬としては、例えば、SSLを採取するための用具(例えば、あぶら取りフィルム)、採取したSSLを保存するための試薬、保存用の容器等が挙げられる。
核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を抽出するための試薬としては、例えば採取したSSLから低分子成分を抽出・精製するための試薬(例えば、フェノール-クロロホルム抽出試薬等)、試験に必要な器具の他、ガイダンス等が包含される。
【0035】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の態様をさらに開示する。
【0036】
<1>核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分の調製方法であって、次の工程(1)及び(2):
(1)被験体から採取された皮膚表上脂質からフェノール-クロロホルム抽出により得られた有機層に、強塩基水溶液を加えて混合した後、分離した水層を除去する工程
(2)水層除去後の有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去し、有機層を回収する工程を含む、調製方法。
【0037】
<2>前記の工程(1)において、強塩基水溶液の添加量が、強塩基の規定度X(N)と、強塩基水溶液の体積Y(L)を乗じた値[X(N)×Y(L)]が有機層の体積(L)の好ましくは3倍以上の値となる量であり、また、好ましくは9.2倍以下、より好ましくは6倍以下、更に好ましくは5倍以下、更に好ましくは4倍以下の値となる量であり、また、好ましくは3~9.2倍、より好ましくは3~6倍、更に好ましくは3~5倍、更に好ましくは3~4倍の値となる量である<1>記載の調製方法。
<3>強塩基水溶液が、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩又はアルコキシドの水溶液であり、より好ましくは水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム及びナトリウムメトキシドの水溶液から選ばれる1種又は2種以上であり、更に好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である<1>又は<2>記載の調製方法。
<4>強塩基の規定度(N)が、好ましくは0.2N以上、より好ましくは0.4N以上、より好ましくは0.5N以上、より好ましくは0.8N以上、より好ましくは1.0N以上、より好ましくは1.8N以上、より好ましくは3.0N以上、更に好ましくは4.0N以上、更に好ましくは4.3N以上、より好ましくは6.0N以上であり、また、好ましくは12.0N以下、より好ましくは8.0N以下であり、また、好ましくは0.2~12.0N、より好ましくは0.4~12.0N、より好ましくは0.5~12.0N、より好ましくは0.8~12.0N、より好ましくは1.0~12.0N、より好ましくは1.8~8.0N、更に好ましくは3.0~8.0N、更に好ましくは4.0~8.0N、更に好ましくは4.3~8.0N、より更に好ましくは6.0~8.0Nである<1>~<3>のいずれか1に記載の調製方法。
<5>有機層に加える強塩基水溶液の体積(L)が、当該有機層の体積(L)の好ましくは0.9倍以上、より好ましくは0.92倍以上、より好ましくは1.0倍以上、より好ましくは2.0倍以上、より好ましくは3.8倍以上、更に好ましくは5.5倍以上、より更に好ましくは7.0倍以上であり、また、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下であり、また、好ましくは0.9~20倍、より好ましくは0.92~20倍、より好ましくは1.0~20倍、より好ましくは2.0~20倍、より好ましくは3.8~10倍、更に好ましくは5.5~10倍、より更に好ましくは7.0~10倍である<1>~<4>のいずれか1に記載の調製方法。
<6>前記の工程(1)において、有機層に、さらに有機溶媒を加えることを含む、<1>~<5>のいずれか1に記載の調製方法。
<7>有機溶媒が、好ましくはアルコール類、ハロゲン化炭化水素類及び炭化水素類から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはクロロホルムまたはクロロホルム-メタノール混合溶媒である<6>記載の調製方法。
<8>クロロホルム-メタノール混合溶液におけるクロロホルムの比率(体積比)が、好ましくは53%以上、より好ましくは55%以上であり、また、好ましくは90%以下であり、また、好ましくは53~90%、より好ましくは55~90%である<7>記載の調製方法。
<9>前記の工程(2)において、有機層に水を加えて混合した後、分離した水層を除去する操作を2回以上おこなう<1>~<8>のいずれか1に記載の調製方法。
<10>皮膚表上脂質由来の低分子成分が、質量分析により提供される精密質量(m/z)が107.0681~1,245.6860である成分である<1>~<9>のいずれか1に記載の調製方法。
<11><1>~<10>のいずれか1に記載の調製方法で調製した核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を解析することを含む、該低分子成分の解析方法。
<12>所定の疾患もしくは状態またはそのリスクを有する集団を被験体として、<1>~<10>のいずれか1に記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された該低分子成分の量を対照と比較すること、を含む、該所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの選択方法。
<13><1>~<10>のいずれか1に記載の調製方法により被験体の核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された該低分子成分から、所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来低分子成分マーカーを検出すること、を含む、所定の疾患もしくは状態の皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの検出方法。
<14>同一の被験体の皮膚表上脂質から、核酸及び<1>~<10>のいずれか1に記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された核酸の発現量及び該低分子成分の量を対照と比較すること、を含む、該所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの選択方法。
<15>同一の被験体の皮膚表上脂質から、核酸及び<1>~<10>のいずれか1に記載の調製方法により核酸以外の皮膚表上脂質由来の低分子成分を調製すること、調製された核酸及び該低分子成分から、所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来低分子成分マーカーを検出すること、を含む、所定の疾患もしくは状態の核酸マーカー及び皮膚表上脂質由来の低分子成分マーカーの検出方法。
【実施例0038】
実施例1.RNA抽出残渣からの代謝物の抽出
試料には皮膚表上脂質(SSL)を用いた。SSLはあぶら取りフィルム(3Mジャパン)を用いて、被験者1名の顔全体から回収した。次いであぶらとりフィルムを適当な大きさに切断し、QIAzol(Qiagen)試薬(フェノール50v/v%含有)を用いて、付属のプロトコルに準じてRNA抽出操作を行った。すなわち、切断したフィルムにQIAzolを添加し、SSLを抽出後、抽出液にクロロホルムを添加・混合し、遠心操作を行った。その際に生じる2層のうち、上層がRNAを含む水層であり、下層が代謝物を含む淡赤色のRNA抽出残渣である。この下層を代謝物抽出に用いた。
淡赤色の残渣にはフェノールが豊富に含まれており、これが代謝物分析を阻害するため、除去することが好ましい。多量に含まれるフェノールを除去するために下記の操作を行った。
【0039】
300μLのRNA抽出残渣にクロロホルム:メタノール=3:1(体積比)混液を1,350μL添加して混和した後、さらに8Nの水酸化ナトリウム水溶液を150μL添加した。ボルテックスでよく混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。溶液が2層に分離し、淡赤色の層が上層に分離したため、上層を丁寧に除去した。
残った下層に300μLの超純水(milliQ水,Merck Millipore)を加えてボルテックスで混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。生じた上層を丁寧に除去した。この純水添加→混和→遠心→上層除去の操作を計3回繰り返した。なお、いずれの遠心操作も4℃でおこなった。
【0040】
最終的に残った下層を減圧下で濃縮乾固し、水溶液が残留した場合は、凍結乾燥により乾燥させた。乾燥させたサンプルに80%メタノール(体積比)を200μL加えて再溶解し、15,000r/minで5分間遠心分離した後の上清を用いて逆相HPLC-Mass Spectrometry(MS)解析を行った。なお、SSLを採取していないフィルムから上記RNA抽出から始まる抽出操作を行ったサンプル及びフィルム無しで抽出操作のみ行ったサンプルを調製した。
【0041】
その結果、RNA抽出残渣には多数のSSLに含まれる代謝物由来のピークが観測されることが明らかとなった(
図1)。検出されたピークの構造を質量分析データに基づきその構造を推定した結果、生体由来と考えられる成分として、脂肪酸((2E,18R)-18-hydroxynonadec-2-enoic acid,N-palmitoyl methionine,CAR 18:1,CAR 20:2,CAR 17:0,CAR 18:0;O,CAR 16:0,Octadecanamide,NAE 20:2,C16:0, FA16:1, FA18:1, FA14:1)、アシルグリセロール(MG(14:0~20:0),DG(i-13:0/8:0/0:0))、スフィンゴ脂質(Sphingosines,Sphinganines,N-acetylsphinganine,N,N-Dimethylsphingosine,Halaminol A,2-amino-3-methoxyoctadec-4-en-1-ol,Phytosphingosines,Dehydrosphingosine,Cer(d18:2/14:0),Cer(d18:2/15:0),Cer(d16:1/17:0))、リン脂質(PA,PC,PE,PS,LysoPC,LysoPE)、皮脂(7a-Hydroxy-cholestene-3-one,3-Oxo-4,6-choladienoic acid(bile acid),Sulfolithocholic acid(bile acid),7-Dehydrodesmosterol)、ホルモン(cortisol 17-valerate,18-Hydroxycortisol,3b,17b-Dihydroxyetiocholane)、アラキドン酸カスケード(Arachidonic acid,Eicosenoic acid,Eicosapentaenoic acid,leukotriene-D4)等が推定された。また、その他の成分として、食品由来成分(caffeine)、パーソナルケア製品由来成分(Laureth-5)、ケミカル製品由来成分(Octyl 4-methoxycinnamic acid)と推定される成分を含む多数の成分を検出した。
脂肪酸等は皮脂中に含まれる成分として知られており、本抽出方法がRNA抽出残渣からの代謝物の抽出方法として妥当であることが示された。
また、その他の成分の一つとしてカフェインを標準品により同定した。カフェインは非特許文献よりカフェイン飲料摂取後に皮膚上から検出されることが報告されており(Liou, Y., Chang, K. and Lin, C. (2017) ‘Sampling and profiling caffeine and its metabolites from an eyelid using a watercolor pen based on electrospray ionization / mass spectrometry’, International Journal of Mass Spectrometry, 422, pp. 51-55. doi: 10.1016/j.ijms.2017.08.010.)、本手法はRNA抽出残渣からの代謝物の抽出方法として妥当であることが示された。
【0042】
実施例2.フェノールの分離・除去に必要な塩基の添加量の検討
皮脂等の生体試料を使用せずQIAzolによるRNA抽出操作を行い、RNA抽出残渣を調製した。抽出残渣300μLにクロロホルム300μLを加え混和した後、さらに濃度の異なる水酸化ナトリウム水溶液を150μL添加した。ボルテックスでよく混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。水酸化ナトリウムの濃度は2、4、5、6、7及び8mol/L(N)のものをそれぞれ添加した。なお、遠心操作は4℃でおこなった。
【0043】
その結果、2,4,5Nの水酸化ナトリウムでは、淡赤色の層が下層に一部または全部が残っていた一方で、6N以上では淡赤色の層が完全に上層に移行していた(
図2)。このことから、抽出残渣に含まれるフェノールの除去には抽出残渣に対して一定量の水酸化ナトリウムが必要であることが示された。そしてフェノールの分離・除去の条件として残渣の体積(μL)に対して、水酸化ナトリウム濃度(N)×水酸化ナトリウム水溶液量(μL)が3倍以上となることが必要であることが示された。なお、上記で調製した残渣300μL中にはフェノールが約2.77mmol含まれているが、フェノールを分離除去可能だった6Nの水酸化ナトリウム150μLは約0.90mmolであることから、中和に必要な理論量よりも大幅に少ない量で分離可能であることが示された。
【0044】
実施例3.塩基の添加量の違いによる分析結果への影響
フェノール除去に必要な水酸化ナトリウムは量を必要以上に加えた際に、抽出される代謝物の収率等に悪影響が生じないかどうか検討を行った。
実施例1と同様に被験者の顔全体からSSLを回収し、RNA抽出操作を行った。2枚のあぶらとりフィルムからRNA抽出操作を行い、得られたRNA抽出残渣を統合した。300μLのRNA抽出残渣を4チューブ準備し、クロロホルム:メタノール=3:1(体積比)混液を1,350μL添加して混和した。そこへ、6、8、12N及び18.4Nの水酸化ナトリウム水溶液を150μL添加した。なお、18.4Nは残渣中に存在するフェノールの中和に必要な理論量である。ボルテックスでよく混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。すべてで溶液が2層に分離し、淡赤色の層が上層に分離したため、上層を丁寧に除去した。残った下層に300μLの超純水(milliQ水,Merck Millipore)を加えてボルテックスで混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。生じた上層を丁寧に除去した。この純水添加→混和→遠心→上層除去の操作を計4回繰り返した。なお、いずれの遠心操作も4℃でおこなった。
【0045】
最終的に残った下層を減圧下で濃縮乾固し、水溶液が残留した場合は、凍結乾燥により乾燥させた。乾燥させたサンプルに80%メタノール(体積比)を200μL加えて再溶解し、15,000r/minで5分間遠心分離した後の上清を用いて逆相HPLC-Mass Spectrometry(MS)解析(positiveモード)を行った。
【0046】
その結果、水酸化ナトリウム濃度が大きくなるほど、特に12及び18.4Nでは代謝物由来のピーク強度が全体的に減弱した(
図3)。これはより高濃度の水酸化ナトリウム処理により抽出効率が低下し、回収率が低下したと考えられた。このことから、代謝物をできるだけ効率よく検出・測定するためには、残渣の体積(μL)に対して、水酸化ナトリウム濃度(N)×水酸化ナトリウム水溶液量(μL)が6倍未満となることが望ましいことが示された。
【0047】
実施例4.残渣に添加するクロロホルム・メタノール比率がフェノール分離・除去に与える影響
RNA抽出残渣に直接水酸化ナトリウムを加えてもフェノールを含む淡赤色層が上層に移行するが、代謝物を含む下層の体積が極端に小さくなり、上層を除去する際に下層をロスする可能性があり、その影響が大きい。そのため、操作性向上のため下層の体積を上層と同等程度となるようにクロロホルム・メタノール混合溶液等の有機溶媒を添加しておくことが望ましい。
【0048】
皮脂等の生体試料を使用せずQIAzolによるRNA抽出操作を行い、RNA抽出残渣を調製した。抽出残渣300μLにクロロホルム/メタノールの比率(体積比)が異なる混合溶液450μLを加え混和した後、8Nの水酸化ナトリウム水溶液を150μL添加した。ボルテックスでよく混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。クロロホルムの比率(%)は50、55、60、66.70、75、80、85.7、90、95.2及び100%の溶液をそれぞれ添加した。なお、遠心操作は4℃でおこなった。
【0049】
その結果、表1に示すように、クロロホルムの比率が55%以上の混合溶媒を使用したとき、フェノールを含む淡赤色層が上層に移行し、除去可能となった。このことから残渣にクロロホルム‐メタノール混合溶媒を加える場合は、クロロホルムの比率が55%以上であることが望ましいことが示された。
【0050】
【0051】
実施例5.残渣に添加するクロロホルム・メタノール比率がテストステロンの収率に与える影響
SSL中の検出が想定される男性ホルモンの1つであるテストステロンについて、RNA抽出残渣に添加するクロロホルム・メタノール比率が代謝物抽出の回収率へ与える影響を検討した。
皮脂等の生体試料を使用せずQIAzolによるRNA抽出操作のみを行い、RNA抽出残渣を調製した。抽出残渣300μLにテストステロン標準品400pgを添加(100ppbメタノール溶液を4μL)し、クロロホルム/メタノールの比率(体積比)が異なる混合溶液450μLを加え混和した後、8Nの水酸化ナトリウム水溶液を150μL添加した。ボルテックスでよく混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。クロロホルムの比率(%)は75、80、85.7、90、95.2及び100%の溶液をそれぞれ添加した。すべての条件で淡赤色の層が上層に分離したため、上層を丁寧に除去した。残った下層に300μLの超純水(milliQ水,Merck Millipore)を加えてボルテックスで混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。生じた上層を丁寧に除去した。この純水添加→混和→遠心→上層除去の操作を計4回繰り返した。なお、いずれの遠心操作も4℃でおこなった。
【0052】
最終的に残った下層を減圧下で濃縮乾固し、水溶液が残留した場合は、凍結乾燥により乾燥させた。乾燥させたサンプルに50%メタノール(体積比)を200μL加えて再溶解し、15,000r/minで5分間遠心分離した後の上清を用いてLC-MS/MS解析を行い、テストステロンの定量、回収率の計算を行った。
【0053】
その結果、クロロホルムの比率が上がるにつれて回収率が増加する傾向であった(
図4)。このことから残渣にクロロホルム‐メタノール混合溶媒を加える場合はクロロホルム比率が高い方が回収率が高くなることが示された。
【0054】
実施例6.工程(1)における水の添加がアンドロゲンの収率に与える影響(1)
SSL中の検出が想定される男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)、テストステロン(T)、アンドロステンジオン(A-dione)およびデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)について、工程(1)における水の添加が代謝物抽出の回収率へ与える影響を検討した。
皮脂等の生体試料を使用せずQIAzolによるRNA抽出操作のみを行い、RNA抽出残渣を調製した。DHT、T、A-dioneおよびDHEA標準品それぞれ200pgを添加(20ppb混合溶液(溶媒:メタノール)を10μL)し濃縮乾固したチューブに、抽出残渣600μLを加えた。そこへクロロホルム900μLを加え混和した。さらに0、1、5または10mLの超純水(milliQ水,Merck Millipore)を加えた後、8Nの水酸化ナトリウム水溶液を300μL添加した(超純水と水酸化ナトリウム水溶液を併せた体積は、0.3mL、1.3mL、5.3mL、10.3mL)。ボルテックスでよく混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。すべての条件で淡赤色の層が上層に分離したため、上層を丁寧に除去した。残った下層に600μLの超純水を加えてボルテックスで混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。生じた上層を丁寧に除去した。この純水添加→混和→遠心→上層除去の操作を計3回繰り返した。なお、いずれの遠心操作も4℃でおこなった。
【0055】
最終的に残った下層を減圧下で濃縮乾固し、水溶液が残留した場合は、凍結乾燥により乾燥させた。乾燥させたサンプルに50mMのメトキシアミン塩酸塩メタノール溶液を90μL加えて再溶解し、60℃30分間反応させアンドロゲンを誘導体化した。30分後に氷上で5分程度冷却した後、50%アセトニトリルを110μL添加し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC 13HP045AN、ADVANTEC)でろ過した。ろ液をLC-MS/MSで分析し、各男性ホルモンのピーク面積値を取得し、回収率の計算を行った。なお、回収率(%)は、「各抽出条件での男性ホルモンの各ピーク面積値/誘導体化のみ行った男性ホルモンの各ピーク面積値×100」で算出した。
【0056】
その結果、工程(1)で有機溶媒および強塩基水溶液以外に水を添加することで回収率が顕著に増加した(
図5)。このことから残渣体積に対して、有機層に加える強塩基水溶液の体積を大きくすると代謝物の回収率が向上することが示された。
【0057】
実施例7.工程(1)における水の添加がアンドロゲンの収率に与える影響(2)
実施例6と同様の試験を、抽出残渣に添加する超純水の量を変更しておこなった。すなわち、0、0.25、0.5、1、2または4mLの超純水を加えた各条件で試験を実施した。なお、工程(2)の純水添加→混和→遠心→上層除去の操作を計2回繰り返した。それ以外の条件は同一で実施した。
【0058】
その結果、実施例6と同様に強塩基水溶液の体積が大きくなるにつれて回収率が顕著に増加した(
図6)。添加する水の量が0.25mLでも顕著な回収率の向上が認められ、水の添加量が増加するにしたがって回収率はさらに向上した。水の添加量が0.25mLの条件では、添加した水酸化ナトリウム水溶液と併せて水溶液の体積が0.55mLであり、これは使用した残渣600μLの0.92倍に相当する。このことから残渣体積の0.92倍以上の体積となるように水酸化ナトリウム水溶液を添加することで代謝物の回収率が向上することが示された。
【0059】
実施例8.工程(1)における水の添加がアンドロゲンの収率に与える影響(3)
SSL中の検出が想定される男性ホルモンであるDHT、T、A-dioneおよびDHEAをあぶらとりフィルムに滴下した後にRNA抽出操作を行い、そこで生じたRNA抽出残渣を使用して、工程(1)における水の添加が代謝物抽出の回収率へ与える影響を検討した。
皮脂等の生体試料を使用せず、あぶらとりフィルムにDHT、T、A-dioneおよびDHEA標準品それぞれ250pgを添加(50ppb混合溶液(溶媒:メタノール)を5μL)し溶媒を風乾させた。上記のあぶらとりフィルムをハサミで16分割になるように裁断し、5mLチューブに入れた。そこへQIAzol LysisReagent(Qiagen)を1,450μL添加し、ボルテックスを10秒間実施し1分間静置した。ボルテックス→静置の操作を計3回繰り返したのち、チューブ内の抽出液を取れるだけ2mLチューブに移した。そこへ260μLのクロロホルムを添加し、10秒間ボルテックスした後、15,000r/mimで15分間遠心を行った。遠心後の上清を除去し残った下層の有機層、すなわちRNA抽出残渣を取得した。抽出残渣600μLを新しい5mLチューブに加えた後、クロロホルム900μLを加えた。さらに0mLまたは3mLの超純水および8Nの水酸化ナトリウム水溶液を350μL添加した(超純水と水酸化ナトリウム水溶液を併せた体積は、0.35mL、3.35mL)。ボルテックスでよく混和した後、3,000r/minで5分間遠心分離を行った。上層を丁寧に除去した後、残った下層に600μLの超純水を加えてボルテックスで混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った。生じた上層を丁寧に除去した。この純水添加→混和→遠心→上層除去の操作をもう1度おこなった(計2回)。なお、いずれの遠心操作も4℃でおこなった。
【0060】
最終的に残った下層を減圧下で濃縮乾固した。乾固させたサンプルに50mMのメトキシアミン塩酸塩メタノール溶液を90μL加えて再溶解し、60℃30分間反応させアンドロゲンを誘導体化した。30分後に氷上で5分程度冷却した後、40%アセトニトリルを110μL添加し、0.45μmのシリンジフィルター(DISMIC 13HP045AN、ADVANTEC)でろ過した。ろ液をLC-MS/MSで分析し、各男性ホルモンのピーク面積値を取得し、回収率の計算を行った。なお、回収率(%)は、「各抽出条件での男性ホルモンの各ピーク面積値/誘導体化のみ行った男性ホルモンの各ピーク面積値×100」で算出した。
【0061】
その結果、各男性ホルモンの回収率は水を添加していない条件(変更前)と比較して水を3mL添加した条件(変更後)でフィルムからの回収率が顕著に増加した(
図7)。このことから標準品を滴下したあぶらとりフィルムからフェノール-クロロホルム法で調製したRNA抽出残渣を用いて代謝物を抽出する場合においても、工程(1)で強塩基水溶液の体積が大きくなるにつれて回収率が向上することが示された。
【0062】
実施例9.工程(1)における水の添加が低分子成分の収率に与える影響
被験者1名の顔全体からSSLを2回分(異なる日時)に採取した。次いであぶらとりフィルムを適当な大きさに切断し、QIAzol(Qiagen)試薬(フェノール50v/v%含有)を用いて、付属のプロトコルに準じてRNA抽出操作を行った。すなわち、切断したフィルムにQIAzolを1,450μL添加し、SSLを抽出した。抽出液を新しいチューブに回収し、そこへクロロホルム260μLを添加・激しく混合し、遠心操作を行った。その際に生じる2層のうち、下層(RNA抽出残渣)を代謝物抽出に用いた。得られたRNA抽出残渣(2回分)は統合し、300μLのRNA抽出残渣を4チューブ準備した。
【0063】
300μLのRNA抽出残渣にクロロホルム:メタノール=3:1(体積比)混液を450μL添加して混和した後、さらに8Nの水酸化ナトリウム水溶液を150μL添加した。さらに0mL、0.5mL、1.0mLまたは2.0mLの超純水を添加した(残渣に対する水酸化ナトリウム水溶液と超純水の合計は、それぞれ0.5、2.17、3.83および7.17倍)。ボルテックスでよく混和した後、15,000r/minで5分間遠心分離を行った後、淡赤色の上層を丁寧に除去した。
残った下層に300μLの超純水を加えてボルテックスで混和した後、15,000r/minで3分間遠心分離を行い、生じた上層を丁寧に除去した。この純水添加→混和→遠心→上層除去の操作を2回繰り返しおこなった(計3回)。なお、いずれの遠心操作も4℃でおこなった。
【0064】
最終的に残った下層を減圧下で濃縮乾固した。このサンプルに80%メタノール(体積比)を300μL加えて再溶解し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過をおこない、ろ液を用いて逆相HPLC-Mass Spectrometry(MS)解析(positiveモード)を行った。
【0065】
その結果、水酸化ナトリウム水溶液の体積が大きくなるほど、特に0.5mL以上超純水を加えた条件(残渣の体積(μL)に対して、強塩基水溶液の体積が2.17倍以上)では代謝物由来のピーク強度が顕著にかつ全体的に増強した(
図8)。よって実施例8で示した男性ホルモンと同様に、工程(1)で強塩基水溶液の体積が大きくなるにつれてSSLから抽出される代謝物の回収率が向上することが示された。