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特開2023-169155溶接鋼ブランク及び関連する溶接鋼ブランクを生産するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169155
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】溶接鋼ブランク及び関連する溶接鋼ブランクを生産するための方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/322 20140101AFI20231121BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20231121BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20231121BHJP
   C22C 19/03 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B23K26/322
B23K35/30 320A
C22C38/00 301B
B23K35/30 320Q
C22C19/03 G
【審査請求】有
【請求項の数】37
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134423
(22)【出願日】2023-08-22
(62)【分割の表示】P 2021536789の分割
【原出願日】2019-12-24
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/060585
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・シュミ
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ポワリエ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・アルバレス
(72)【発明者】
【氏名】ルシール・グートン
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー・ダビド
(72)【発明者】
【氏名】イバン・ビオー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】溶接鋼ブランクを生産するための方法を提供する。
【解決手段】2つのプレコートシート(2)の2つの主面(4)の各々上にプレコーティング(5)を有する鋼基材(3)を備え、各シート(2)が各主面(4)上の、溶接縁部において、プレコーティング(5)が除去率にわたって除去される除去ゾーン(18)を備える、ことと;0.1重量%~1.2重量%の間に含まれるアルミニウム含有量AlWJを有する溶接継手(22)を生成するように、フィラーワイヤ(20)を使用してシート(2)を突合せ溶接することとを含む、方法。ワイヤ(20)の組成及び添加されるワイヤ(20)の割合は、溶接継手(22)が、(a)

となるような焼入れ係数FTWJ、(b)AlWJが、溶接継手(22)のアルミニウム含有量であるニッケル含有量NiWJ≦14-3.4xAlWJ及びクロム含有量CrWJ≦5-2xAlWJを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接鋼ブランク(1)を生産するための方法であって、連続する
- 2つのプレコートシート(2)を提供するステップであって、各プレコートシート(2)が、その2つの主面(4)の各々上にプレコーティング(5)を有する鋼基材(3)を備え、前記プレコーティング(5)が、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間合金層(9)と、前記金属間合金層(9)の上面に延在する金属合金層(11)とを備え、前記金属合金層(11)が、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層であり、
各プレコートシート(2)が、その各主面(4)上に、少なくとも部分的に溶接継手(22)に組み込まれることを意図した溶接縁部(14)で、前記金属合金層(11)が、その厚さ全体にわたって除去されているが、前記金属間合金層(9)は一体のままである除去ゾーン(18)を備える、ステップと、
- 前記プレコートシート(2)間の接合部に溶接継手(22)を生成するように、フィラーワイヤ(20)を使用して前記プレコートシート(2)を突合せ溶接するステップであって、前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量(AlWJ)が、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる、ステップと
を含み、
- 前記フィラーワイヤ(20)の組成及び溶接プールに添加されるフィラーワイヤ(20)の比率が、このようにして得られた前記溶接継手(22)が、
(a)
【数1】
となるような前記溶接継手(22)の焼入れ係数FTWJ(基準C1)、
ここで、
- FTBMは、前記2つのプレコートシート(2)の前記鋼基材(3)の中で最も硬化性の低い鋼基材(3)の焼入れ係数である、
- 前記焼入れ係数FTWJ及びFTBMは、次の式:FT=128+1553xC+55xMn+267xSi+49xNi+5xCr-79xAl-2xNi-1532xC-5xMn-127xSi-40xCxNi-4xNixMnを使用して決定され、ここで、Al、Cr、Ni、C、Mn及びSiは、それぞれ、焼入れ係数を決定する領域の平均アルミニウム、クロム、ニッケル、炭素、マンガン及びシリコン含有量を重量パーセントで表したものであり、この領域は、FTWJの場合、前記溶接継手(22)にあり、FTBMの場合、最も硬化しにくい基材にある、
(b)次の関係:NiWJ≦14-3.4xAlWJを満たす前記溶接継手(22)の平均ニッケル含有量(NiWJ)、ここで、AlWJは、前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量である(基準C2);並びに
(c)次の関係:CrWJ≦5-2xAlWJを満たす前記溶接継手(22)の平均クロム含有量(CrWJ)、ここで、AlWJは、前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量である(基準C3)
によって特徴付けられるように選定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記プレコートシート(2)のうちの少なくとも1つの前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.10%≦C≦0.5%
0.5%≦Mn≦4.5%
0.1%≦Si≦1%
0.01%≦Cr≦1%
Ti≦0.2%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.010%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量(AlWJ)が、0.15重量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量(AlWJ)が、0.8重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶接継手(22)の平均ニッケル含有量(NiWJ)が、0.1重量%~13.6重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶接鋼ブランクが、熱間プレス成形及び冷却後に、
- 20℃での前記溶接継手(22)のシャルピーエネルギーが25J/cm以上であり、
- 前記熱間プレス成形及び冷却された鋼溶接鋼ブランクの極限引張強度が、前記プレコートシート(2)の前記基材(3)の中で最も弱い基材の極限引張強度以上であり、前記最も弱い基材(3)が、厚さと熱間プレス成形及び冷却後の極限引張強度との積が最も低い基材(3)である
ようなものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィラーワイヤ(20)が、0.01重量%~0.45重量%の間に含まれる炭素含有量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記提供ステップの前に、それぞれの初期プレコートシート(2’)から前記2つのプレコートシート(2)を生産するステップを含み、このステップが、前記プレコートシート(2)の前記溶接縁部(14)でのレーザアブレーションによる前記金属合金層(11)を除去することにより、各プレコートシート(2)の各主面(4)上の前記除去ゾーン(18)を得るサブステップを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記2つのプレコートシート(2)を生産する前記ステップが、
- 2つの初期プレコートシート(2’)を提供するステップと、
- これらの2つの初期プレコートシート(2’)を、それらの間に所定の間隙を残しながら互いに隣接して配列するステップと;
- これらの2つの初期プレコートシート(2’)の隣接する面上に前記除去ゾーン(18)を同時に生成するように、レーザアブレーションによって前記2つの隣接する初期プレコートシート(2’)上の前記プレコーティング(5)を同時に除去するステップであって、前記除去ステップ中に、レーザビームが前記2つの隣接する初期プレコートシート(2’)に重なり合う、ステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
突合せ溶接の前に、次の処理ステップ:ブラッシング、機械加工、チャンファリング及び/又はべべリングのうちの少なくとも1つを使用して、前記プレコートシート(2)のうちの少なくとも1つの前記溶接縁部(14)を調製することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶接するステップが、レーザビームを使用して実行される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プレコートシート(2)のうちの少なくとも1つについて、前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.15%≦C≦0.25%
0.8%≦Mn≦1.8%
0.1%≦Si≦0.35%
0.01%≦Cr≦0.5%
Ti≦0.1%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.005%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プレコートシート(2)のうちの1つについて、前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.040%≦C≦0.100%
0.80%≦Mn≦2.00%
Si≦0.30%
S≦0.005%
P≦0.030%
0.010%≦Al≦0.070%
0.015%≦Nb≦0.100%
Ti≦0.080%
N≦0.009%
Cu≦0.100%
Ni≦0.100%
Cr≦0.100%
Mo≦0.100%
Ca≦0.006%、
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プレコートシート(2)のうちの1つについて、前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.24%≦C≦0.38%
0.40%≦Mn≦3%
0.10%≦Si≦0.70%
0.015%≦AI≦0.070%
0%≦Cr≦2%
0.25%≦Ni≦2%
0.015%≦Ti≦0.10%
0%≦Nb≦0.060%
0.0005%≦B≦0.0040%
0.003%≦N≦0.010%
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、ここで、チタン及び窒素の含有量が、次の関係を満たし:
Ti/N>3.42
並びに、炭素、マンガン、クロム及びケイ素の含有量が、次の関係を満たし:
【数2】
前記鋼が、任意選択的に、次の元素のうちの1つ以上を含み:
0.05%≦Mo≦0.65%
0.001%≦W≦0.30%
0.0005%≦Ca≦0.005%
残部は、鉄及び製造から不可避的に生じる不純物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶接するステップが、保護ガスを使用して実行される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
溶接され、その後、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品を生産するための方法であって、連続するステップ:
- 溶接鋼ブランク(1)を得るために、請求項1~15のいずれか一項に記載の前記方法を行うステップと;
- 前記プレコートシート(2)の前記基材(3)中に完全オーステナイト組織を得るために、前記溶接鋼ブランク(1)を加熱するステップと;
- 鋼部品を得るために、プレスツール中で前記溶接鋼ブランク(1)を熱間プレス成形するステップと;
- 前記プレスツール中で前記鋼部品を冷却するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
前記冷却ステップ中、冷却速度が、前記プレコートシート(2)の前記基材(3)の中で最も硬化しやすいもののベイナイト又はマルテンサイト冷却速度以上である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
2つのプレコートシート(2)を備える溶接鋼ブランク(1)であって、各プレコートシート(2)が、その主面(4)の各々上にプレコーティング(5)を有する鋼基材(3)を備え、前記プレコーティング(5)が、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間合金層(9)と、前記金属間合金層(9)の上面に延在する金属合金層(11)とを備え、前記金属合金層(11)が、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層であり、
前記プレコートシート(2)が、溶接継手(22)によって接合されており、前記溶接継手(22)が、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる平均アルミニウム含有量(AlWJ)を有し、前記溶接継手(22)が、
(a)
【数3】
となるような前記溶接継手(22)の焼入れ係数FTWJ(基準C1)、
ここで、
- FTBMは、前記2つのプレコートシート(2)の前記鋼基材(3)の中で最も硬化性の低い鋼基材(3)の焼入れ係数である、
- 前記焼入れ係数FTWJ及びFTBMは、次の式:FT=128+1553xC+55xMn+267xSi+49xNi+5xCr-79xAl-2xNi-1532xC-5xMn-127xSi-40xCxNi-4xNixMnを使用して決定され、ここで、Al、Cr、Ni、C、Mn及びSiは、それぞれ、焼入れ係数を決定する領域の平均アルミニウム、クロム、ニッケル、炭素、マンガン及びシリコン含有量を重量パーセントで表したものであり、この領域は、FTWJの場合、前記溶接継手(22)にあり、FTBMの場合、最も硬化しにくい基材にある、
(b)次の関係:NiWJ≦14-3.4xAlWJを満たす前記溶接継手(22)の平均ニッケル含有量(NiWJ)、ここで、AlWJは、前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量である(基準C2);並びに
(c)次の関係:CrWJ≦5-2xAlWJを満たす前記溶接継手(22)の平均クロム含有量(CrWJ)、ここで、AlWJは、前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量である(基準C3)
によってさらに特徴付けられ、
各プレコートシート(2)が、その各主面(4)上に、前記溶接継手(22)に隣接して、前記金属合金層(11)が、その厚さ全体にわたって除去されているが、前記金属間合金層(9)は一体のままである中間ゾーン(28)を備える、溶接鋼ブランク(1)。
【請求項19】
前記プレコートシート(2)のうちの少なくとも1つの前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.10%≦C≦0.5%
0.5%≦Mn≦4.5%
0.1%≦Si≦1%
0.01%≦Cr≦1%
Ti≦0.2%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.010%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である、請求項18に記載の溶接鋼ブランク(1)。
【請求項20】
各プレコートシート(2)について、前記中間ゾーン(28)の幅が、前記溶接継手(22)の縁部から5μm~2000μmの間に含まれる、請求項18又は19に記載の溶接鋼ブランク(1)。
【請求項21】
前記溶接継手(22)の前記ニッケル含有量(NiWJ)が、0.1重量%~13.6重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれる、請求項18~20のいずれか一項に記載の溶接鋼ブランク(1)。
【請求項22】
前記溶接鋼ブランク(1)が、熱間プレス成形及び冷却後に、
- 20℃における前記溶接継手(22)のシャルピーエネルギーが、25J/cm以上であり;並びに
- 前記熱間プレス成形及び冷却溶接鋼ブランクの極限引張強度が、前記プレコートシート(2)の前記基材(3)の中で最も弱い基材の極限引張強度以上であり、前記最も弱い基材(3)が、厚さと熱間プレス成形及び冷却後の極限引張強度との積が最も小さい基材である
ようなものである、請求項18~21のいずれか一項に記載の溶接鋼ブランク(1)。
【請求項23】
前記溶接継手(22)が、熱間プレス成形及び冷却後に、前記溶接継手(22)全体の最大硬度変化ΔHV(WJ)が、前記溶接継手(22)の平均硬度HV平均(WJ)の20%以下である、請求項18~22のいずれか一項に記載の溶接鋼ブランク(1)。
【請求項24】
各中間ゾーン(28)が、凝固条痕を含み、前記2つのプレコートシート(2)の隣接する主面(4)上の前記凝固条痕が、前記2つのプレコートシート(2)間の垂直中央面(M)に対して対称である、請求項18~23のいずれか一項に記載の溶接鋼ブランク(1)。
【請求項25】
各中間ゾーン(28)が、前記溶接継手(22)に位置する内縁(30)と、前記溶接継手(22)から離れて位置する外縁(32)とを備え、前記2つのプレコートシート(2)の隣接する中間ゾーン(28)の前記外縁(32)間の距離が、前記溶接継手(22)の長手方向に沿って一定である、請求項18~24のいずれか一項に記載の溶接鋼ブランク(1)。
【請求項26】
第1のコーティングされた鋼部品部分及び第2のコーティングされた鋼部品部分を備える、溶接された鋼部品であって、各コーティングされた鋼部品部分が、その主面のうちの少なくとも1つの上に、少なくとも鉄及びアルミニウムを含むコーティングを有する鋼基材(3)を備え、
前記第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分が、溶接継手(22)によって接合されており、前記溶接継手(22)が、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる平均アルミニウム含有量(AlWJ)を有し、
前記溶接継手(22)が、
(a)
【数4】
となるような前記溶接継手(22)の焼入れ係数FTWJ(基準C1)、
ここで、
- FTBMは、前記2つのプレコートシート(2)の前記鋼基材(3)の中で最も硬化性の低い鋼基材(3)の焼入れ係数である、
- 前記焼入れ係数FTWJ及びFTBMは、次の式:FT=128+1553xC+55xMn+267xSi+49xNi+5xCr-79xAl-2xNi-1532xC-5xMn-127xSi-40xCxNi-4xNixMnを使用して決定され、ここで、Al、Cr、Ni、C、Mn及びSiは、それぞれ、焼入れ係数を決定する領域の平均アルミニウム、クロム、ニッケル、炭素、マンガン及びシリコン含有量を重量パーセントで表したものであり、この領域は、FTWJの場合、前記溶接継手(22)にあり、FTBMの場合、最も硬化しにくい基材にある、
(b)次の関係:NiWJ≦14-3.4xAlWJを満たす前記溶接継手(22)の平均ニッケル含有量(NiWJ)、ここで、AlWJは、前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量である(基準C2);並びに
(c)次の関係:CrWJ≦5-2xAlWJを満たす前記溶接継手(22)の平均クロム含有量(CrWJ)、ここで、AlWJは、前記溶接継手(22)の平均アルミニウム含有量である(基準C3)
によってさらに特徴付けられ、
各コーティングされた鋼部品部分が、その各主面上に、前記溶接継手(22)に隣接して中間ゾーン(28)を備え、前記中間ゾーンにおいて、前記コーティングの厚さが、前記中間ゾーンよりも前記溶接継手(22)から遠い距離に位置する前記コーティングされた鋼部品部分の隣接ゾーンよりも厳密に薄く、
並びに
前記溶接継手(22)の20℃におけるシャルピーエネルギーが、25J/cm以上である、溶接された鋼部品。
【請求項27】
前記第1及び第2の鋼部品部分のうちの少なくとも1つの前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.10%≦C≦0.5%
0.5%≦Mn≦4.5%
0.1%≦Si≦1%
0.01%≦Cr≦1%
Ti≦0.2%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.010%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である、請求項26に記載の溶接された鋼部品。
【請求項28】
各中間ゾーンが、凝固条痕を含み、前記2つのコーティングされた鋼部品部分の隣接する主面(4)上の前記凝固条痕が、前記2つのコーティングされた鋼部品部分間の垂直中央面に対して対称である、請求項26又は27に記載の溶接された鋼部品。
【請求項29】
各中間ゾーンが、前記溶接継手(22)に位置する内縁部と、前記溶接継手(22)から離れて位置する外縁部とを備え、前記2つのコーティングされた鋼部品部分の隣接する中間ゾーンの前記外縁部間の距離が、前記溶接継手(22)の長手方向に沿って一定である、請求項26~28のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品。
【請求項30】
前記溶接継手(22)中の平均硬度HV平均(WJ)が、700HV以下である、請求項26~29のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品。
【請求項31】
前記溶接継手(22)の平均ニッケル含有量(NiWJ)が、0.1重量%~13.6重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれる、請求項26~30のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品。
【請求項32】
- 前記溶接された鋼部品の極限引張強度が、前記コーティングされた鋼部品部分の前記基材(3)の中で最も弱い基材の極限引張強度以上であり、前記最も弱い基材(3)が、厚さと極限引張強度との積が最も低い基材である
請求項26~31のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品。
【請求項33】
前記溶接継手(22)全体の最大硬度変化ΔHV(WJ)が、前記溶接継手(22)の平均硬度HV平均(WJ)の20%以下である、請求項26~32のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品。
【請求項34】
前記第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分の中の少なくとも1つの前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.15%≦C≦0.25%
0.8%≦Mn≦1.8%
0.1%≦Si≦0.35%
0.01%≦Cr≦0.5%
Ti≦0.1%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.005%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である、請求項26~33のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品。
【請求項35】
前記第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分の中の1つの前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.040%≦C≦0.100%
0.80%≦Mn≦2.00%
Si≦0.30%
S≦0.005%
P≦0.030%
0.010%≦Al≦0.070%
0.015%≦Nb≦0.100%
Ti≦0.080%
N≦0.009%
Cu≦0.100%
Ni≦0.100%
Cr≦0.100%
Mo≦0.100%
Ca≦0.006%、
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である、請求項26~34のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品。
【請求項36】
前記第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分の中の1つの前記基材(3)の前記鋼が、重量で、
0.24%≦C≦0.38%
0.40%≦Mn≦3%
0.10%≦Si≦0.70%
0.015%≦AI≦0.070%
0%≦Cr≦2%
0.25%≦Ni≦2%
0.015%≦Ti≦0.10%
0%≦Nb≦0.060%
0.0005%≦B≦0.0040%
0.003%≦N≦0.010%
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、ここで、チタン及び窒素の含有量が、次の関係を満たし:
Ti/N>3.42
並びに、炭素、マンガン、クロム及びケイ素の含有量が、次の関係を満たし:
【数5】
前記鋼が、任意選択的に、次の元素のうちの1つ以上を含み:
0.05%≦Mo≦0.65%
0.001%≦W≦0.30%
0.0005%≦Ca≦0.005%
残部は、鉄及び製造から不可避的に生じる不純物である、請求項26~34のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品。
【請求項37】
自動車両用の侵入防止部品又はエネルギー吸収部品を生産するための、請求項26~36のいずれか一項に記載の溶接された鋼部品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接鋼ブランクを生産するための方法、このようにして得られた溶接鋼ブランク、溶接鋼ブランクから溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品を生産するための方法、並びにこのようにして得られた溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに突合せ溶接された異なる組成及び/又は厚さの鋼板から溶接部品を製作するための方法は、従来技術から知られている。より詳細には、溶接ブランクは通常、鋼のオーステナイト化を可能にする温度まで加熱され、次いで熱間プレス成形ツール中で熱間成形され、冷却される。鋼の組成は、その後の加熱及び成形作業を可能にし、溶接鋼部品に高い機械的強度、高い衝撃強度及び良好な耐食性を与えるために両方を選択することができる。
【0003】
このタイプの鋼部品は、特に自動車両産業において、より詳細には、侵入防止部品、構造部品又は自動車両の安全に寄与する部品の製作に使用される。
【0004】
腐食を防止するために、鋼板は、アルミニウム含有浴中での溶融めっきによってアルミニウム系プレコーティングでプレコーティングされる。いかなる事前の準備なしに鋼板が溶接される場合、アルミニウム系プレコーティングは、溶接作業中に溶融金属内の鋼基材で希釈される。プレコーティングのアルミニウム含有量の範囲では、そのとき2つの現象が起きる可能性がある。
【0005】
溶融金属中のアルミニウム含有量が局所的に高い場合、溶融金属中のプレコーティングの一部の希釈、及び熱間成形ステップ前の溶接継手のその後の加熱中に起こる合金化の結果として、溶接継手中に金属間化合物が形成される。これらの金属間化合物は、初期割れが最も起こりやすい部位である。
【0006】
さらに、アルミニウムは、溶接継手のオーステナイト化温度(Ac3)を上昇させる傾向があり、オーステナイトドメインのこの修正は、溶接継手中のアルミニウムのレベルが高いため、一層重要になる。場合によっては、このことが、ホットスタンピング、並びに、熱間プレス成形及び冷却後に溶接継手中でマルテンサイト組織を得るのに必要な第1のステップである、成形前の加熱時に起こるはずの溶接継手の完全なオーステナイト化を妨げる可能性がある。
【0007】
さらに、アルミニウムはまた、冷却中に溶接継手中にマルテンサイト又はベイナイト組織を得るのに必要な臨界冷却速度を増加させるので、溶接継手の焼入れ性に有害な影響を及ぼす。
【0008】
その結果、熱間成形後の冷却中にマルテンサイト又はベイナイトを得ることはもはや不可能であり、このようにして得られた溶接継手は、フェライトを含有する。次いで、溶接継手は、2つの隣接するシートの硬度及び機械的強度よりも小さい硬度及び機械的強度を示し、したがって部品の最も弱い領域を構成する。
【0009】
EP2007545は、溶接金属ゾーンに少なくとも部分的に組み込まれるように意図されたプレコート鋼板の溶接縁部で金属合金の表層を除去することからなる解決策を記載している。除去は、ブラッシング又はレーザビームの使用によって実行することができる。金属間合金層は、耐食性を保証し、成形作業に先立つ熱処理中の脱炭及び酸化の現象を防止するために保存される。この場合、アルミニウムの効果は、コーティングの表層の局所的な排除によって低減される。
【0010】
しかしながら、本特許出願の発明者らは、金属合金の表層がプレコート鋼板の溶接縁部で除去されたとしても、溶接継手が依然として不十分な機械的特性を有する場合があることを観察した。実際に、溶接継手中のアルミニウム濃度は、除去作業から生じる溶接縁部における鋼板の側面へのコーティングからの突出部の存在に起因して、及び/又は例えば1.0mm以下の厚さを有する薄鋼板の場合、依然として高すぎる場合がある。
【0011】
EP2737971、US2016/0144456及びWO2014075824は、プレコーティングの溶融から生じる溶接部中のアルミニウムの存在にもかかわらず、熱間プレス成形及び冷却後に、溶接継手中に完全なマルテンサイト構造を得る目的で、炭素、マンガン又はニッケルなどのオーステナイト安定化元素を含むフィラーワイヤを使用して、プレコートを事前に除去することなくプレコートシートを溶接する方法を提供しようとしている。
【0012】
しかしながら、これらの方法は、溶接プール中のアルミニウムの存在に関する問題のうちの1つ、すなわち、オーステナイト化温度(Ac3)の補償、及び場合によっては、高炭素フィラーワイヤの使用が溶接継手中の偏析を誘発する可能性があるという問題のうちの1つにしか対処しないため、完全に満足できるものではない。実際、本発明の発明者らは、上述の文献に開示された方法では、熱間プレス成形及び冷却後に得られた部品において、特に溶接継手中の0.7重量%以上のアルミニウム含有量に対して、満足のいく機械的特性を得ることが可能ではないことを見出した。特に、そのような部品では、溶接横方向の引張試験下で溶接継手が破損するリスクが高い。
【0013】
WO2015/086781及びEP2942143に開示されている方法はまた、この課題に対処し、特有のフィラー材料を用いた特定の溶接方法を使用してプレコート鋼板を溶接する方法を記載している。
【0014】
より詳細には、WO2015/086781は、重量百分率で次の組成を有する金属粉末の形態のフィラー材料を供給しながら、ツインスポットレーザ溶接を使用することを提案している:C:0~0.03重量%、Mo:2.0~3.0重量%、Ni:10~14重量%、Mn:1.0~2.0重量%、Cr:16~18重量%及びSi:0.0~1..0重量%、残部は、鉄である。
【0015】
EP2942143は、次の組成を有するフィラーワイヤの形態のフィラー材料を供給しながら、レーザビームの前方に配置されたアーク溶接トーチを使用してハイブリッドレーザ/アーク溶接を使用することを提案している:C:0~0.3重量%、Mo:0~0.4重量%、Ni:6~20重量%、Mn:0.5~7重量%、Cr:5~22重量%及びSi:0~1.3重量%、Nb:0~0.7重量%、残部は、鉄である。
【0016】
これらの方法も満足のいくものではない。実際、本発明の発明者らは、そこに記載されたフィラーワイヤの使用が、溶接部に直接隣接するゾーンにおける熱間プレス成形及び冷却後の部品の破損の高いリスクをもたらすことを観察した。
【0017】
さらに、ハイブリッドレーザ/アーク溶接は、レーザ溶接と同じ溶接速度に到達することが可能ではなく、したがって工程の全体的な生産性を低下させるので、ハイブリッドレーザ-アーク溶接の使用は望ましくない。
【0018】
さらに、粉末添加は、一般に、フィラーワイヤよりも大規模な工業的設定で実施することはより困難である。
【0019】
前述のフィラー材料の添加に基づく方法は全て、フィラー材料の化学組成範囲を指定するだけであり、溶接パラメータ及び条件は、フィラー材料速度に影響を及ぼすため、1本のフィラーワイヤが、溶接継手中に非常に異なる化学組成を誘起する可能性がある。したがって、フィラーワイヤ単独の組成の説明は、上述の問題を解決するのに十分ではないように思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2007545号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2737971号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0144456号明細書
【特許文献4】国際公開第2014/075824号
【特許文献5】国際公開第2015/086781号
【特許文献6】欧州特許出願公開第2942143号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明の目的は、2つのそのようなプレコートシートから溶接鋼ブランクを生産するための方法であって、熱間プレス成形及び冷却後に、溶接継手中の比較的高いアルミニウム含有量であっても、満足できるクラッシュ性能特性を有する部品を得ることを可能にする、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的のために、溶接継手中の完全な脆性破壊を回避することが特に望ましい。
【0023】
この目的のために、本発明は、連続する
- 2つのプレコートシートを提供するステップであって、各プレコートシートが、その2つの主面の各々上にプレコーティングを有する鋼基材(3)を備え、プレコーティングが、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間合金層と、任意選択的に、その金属間合金層の上面に延在する金属合金層とを備え、金属合金層が、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層であり、
各プレコートシートが、その各主面上に、少なくとも部分的に溶接継手に組み込まれることを意図した溶接縁部で、プレコーティングが、プレコーティングの厚さの30%~100%の間に含まれる除去率にわたって除去された除去ゾーンを備える、ステップと、
- プレコートシート間の接合部に溶接継手を生成するように、フィラーワイヤを使用してプレコートシートを突合せ溶接するステップであって、溶接継手の平均アルミニウム含有量AlWJが、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる、ステップと
を含む、溶接鋼ブランクを生産するための方法に関し、
- フィラーワイヤの組成及び溶接プールに添加されるフィラーワイヤの比率は、このようにして得られた溶接継手が、
(a)
【0024】
【数1】
となるような溶接継手の焼入れ係数FTWJ(基準C1)、
- FTBMは、2つのプレコートシートの鋼基材の中で最も硬化性の低い鋼基材の焼入れ係数である、
- 焼入れ係数FTWJ及びFTBMは、次の式:FT=128+1553xC+55xMn+267xSi+49xNi+5xCr-79xAl-2xNi-1532xC-5xMn-127xSi-40xCxNi-4xNixMnを使用して決定され、ここで、Al、Cr、Ni、C、Mn及びSiは、それぞれ、焼入れ係数を決定する領域の平均アルミニウム、クロム、ニッケル、炭素、マンガン及びシリコン含有量を重量パーセントで表したものであり、この領域は、FTWJの場合、溶接継手にあり、FTBMの場合、最も硬化しにくい基材にある、
(b)次の関係:NiWJ:NiWJ≦14-3.4xAlWJを満たす溶接継手中の平均ニッケル含有量、ここで、AlWJは、溶接継手中の平均アルミニウム含有量である(基準C2);並びに
(c)次の関係:CrWJ≦5-2xAlWJを満たす溶接継手中の平均クロム含有量CrWJ、ここで、AlWJは、溶接継手中の平均アルミニウム含有量である(基準C3)
によって特徴付けられるように選定される。
【0025】
特定の実施形態によれば、本方法は、単独で、又は任意の技術的に可能な組み合わせに従って、次の特徴のうちの1つ以上を含み得る:
- プレコートシートのうちの少なくとも1つの基材の鋼、及び例えば各プレコートシートの基材の鋼は、重量で、
0.10%≦C≦0.5%
0.5%≦Mn≦4.5%
0.1%≦Si≦1%
0.01%≦Cr≦1%
Ti≦0.2%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.010%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である。
【0026】
- プレコートシートの各々の基材は、プレス硬化性鋼で作製される;
- 溶接継手の平均アルミニウム含有量は、0.15重量%以上である;
- 溶接継手の平均アルミニウム含有量は、0.8重量%以下である;
- 溶接継手の平均ニッケル含有量は、0.1重量%~13.6重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれる;
- 溶接鋼ブランクは、熱間プレス成形及び冷却後に、20℃での溶接継手のシャルピーエネルギーが25J/cm以上であり、熱間プレス成形及び冷却された鋼溶接鋼ブランクの極限引張強度は、プレコートシートの基材の中で最も弱い基材の極限引張強度以上であり、最も弱い基材は、厚さと熱間プレス成形及び冷却後の極限引張強度との積が最も低い基材であるようなものである;
- フィラーワイヤは、0.01重量%~0.45重量%の間に含まれる炭素含有量を有する;
- 少なくとも1つのプレコートシート、及び例えば両方のプレコートシートについて、除去率は、プレコーティングの厚さの100%より厳密に小さい;
- 少なくとも1つのプレコートシートについて、プレコーティングは、金属間合金層の上面に延在する金属合金層を備え、金属合金層は、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層であり、少なくとも1つのプレコートシート、及び例えば両方のプレコートシートについて、金属合金層は、その厚さ全体にわたって除去されているが、金属間合金層は、プレコートシートの各主面上の除去ゾーンにおいて一体のままである;
- 提供ステップで提供された少なくとも1つのプレコートシート、及び例えば両方のプレコートシートについて、プレコートシートの各主面上の除去ゾーンにおいて、除去率は、プレコーティングがその厚さ全体にわたって除去されるように100%に等しい;
- 本方法は、提供ステップの前に、それぞれの初期プレコートシートから2つのプレコートシートを生産するステップをさらに含み、このステップは、プレコートシートの溶接縁部におけるレーザアブレーションによるプレコーティングの厚さの30%~100%の間に含まれる区分除去率にわたってプレコーティングを除去することによって各プレコートシートの各主面上の除去ゾーンを得るサブステップを含む。
【0027】
- 2つのプレコートシートを生産するステップは、以下を含む:
- 2つの初期プレコートシートを提供するステップ、
- これらの2つの初期プレコートシートを、それらの間に所定の間隙を残しながら互いに隣接して配列するステップ;及び
- これらの2つの初期プレコートシートの隣接する面上に除去ゾーンを同時に生成するように、レーザアブレーションにより、2つの隣接する初期プレコートシート上のプレコーティングを同時に除去するステップであって、該除去ステップ中に、レーザビームが2つの隣接する初期プレコートシートに重なり合い、任意選択的に、溶接ステップ中に、このようにして調製された隣接する2つのプレコートシートが、レーザビームスポットが2つの隣接するプレコートシートに重なり合うように溶接され、レーザアブレーションの終了と溶接の開始との間の時間は、好ましくは10秒以下である、除去するステップ;
- 本方法は、突合せ溶接の前に、次の処理ステップ:ブラッシング、機械加工、チャンファリング及び/又はべべリングのうちの少なくとも1つを使用して、プレコートシートのうちの少なくとも1つの溶接縁部を調製することをさらに含む;
- 溶接ステップは、レーザビームを使用して実行される;
- 2つのプレコートシートは、同じ厚さを有する;
- 2つのプレコートシートは、異なる厚さを有する;
- プレコートシートのうちの少なくとも1つ、及び例えば両方のプレコートシートについて、基材の鋼は、重量で、
0.15%≦C≦0.25%
0.8%≦Mn≦1.8%
0.1%≦Si≦0.35%
0.01%≦Cr≦0.5%
Ti≦0.1%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.005%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である。
【0028】
- プレコートシートのうちの1つについて、基材の鋼は、重量で、
0.040%≦C≦0.100%
0.80%≦Mn≦2.00%
Si≦0.30%
S≦0.005%
P≦0.030%
0.010%≦Al≦0.070%
0.015%≦Nb≦0.100%
Ti≦0.080%
N≦0.009%
Cu≦0.100%
Ni≦0.100%
Cr≦0.100%
Mo≦0.100%
Ca≦0.006%、
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である。
【0029】
- プレコートシートのうちの1つについて、基材の鋼は、重量で、
0.24%≦C≦0.38%
0.40%≦Mn≦3%
0.10%≦Si≦0.70%
0.015%≦AI≦0.070%
0%≦Cr≦2%
0.25%≦Ni≦2%
0.015%≦Ti≦0.10%
0%≦Nb≦0.060%
0.0005%≦B≦0.0040%
0.003%≦N≦0.010%
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、ここで、チタン及び窒素の含有量は、次の関係を満たし:
Ti/N>3.42
並びに、炭素、マンガン、クロム及びケイ素の含有量は、次の関係を満たし:
【0030】
【数2】
鋼は、任意選択的に、次の元素のうちの1つ以上を含み:
0.05%≦Mo≦0.65%
0.001%≦W≦0.30%
0.0005%≦Ca≦0.005%
残部は、鉄及び製造から不可避的に生じる不純物である。
【0031】
- 溶接は、保護ガス、特にヘリウム及び/又はアルゴンを使用して実行される。
【0032】
本発明はさらに、溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品を生産するための方法であって、連続する、
- 溶接鋼ブランクを得るために、上記で定義した方法を行うステップと;
- プレコートシートの基材に完全オーステナイト構造を得るために、溶接鋼ブランクを加熱するステップと;
- 鋼部品を得るために、プレスツール中で溶接鋼ブランクを熱間プレス成形するステップと;
- プレスツール中で鋼部品を冷却するステップと
を含む、方法に関する。
【0033】
溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品を生産するためのこの方法の特定の実施形態によれば、冷却ステップ中、冷却速度は、プレコートシートの基材の中で最も硬化性の高いベイナイト又はマルテンサイト冷却速度以上である。
【0034】
本発明はまた、2つのプレコートシートを含む溶接鋼ブランクに関し、各プレコートシートは、その主面の各々上にプレコーティングを有する鋼基材を備え、プレコーティングは、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間合金層と、任意選択的に、その金属間合金層の上面に延在する金属合金層とを備え、金属合金層は、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層であり、
プレコートシートは、溶接継手によって接合されており、溶接継手は、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる平均アルミニウム含有量を有し、溶接継手は、
(a)
【0035】
【数3】
となるような溶接継手の焼入れ係数FTWJ(基準C1)、
- FTBMは、2つのプレコートシートの鋼基材の中で最も硬化性の低い鋼基材の焼入れ係数である、
- 焼入れ係数FTWJ及びFTBMは、次の式:FT=128+1553xC+55xMn+267xSi+49xNi+5xCr-79xAl-2xNi-1532xC-5xMn-127xSi-40xCxNi-4xNixMnを使用して決定され、ここで、Al、Cr、Ni、C、Mn及びSiは、それぞれ、焼入れ係数を決定する領域の平均アルミニウム、クロム、ニッケル、炭素、マンガン及びシリコン含有量を重量パーセントで表したものであり、この領域は、FTWJの場合、溶接継手にあり、FTBMの場合、最も硬化しにくい基材にある、
(b)次の関係:NiWJ:NiWJ≦14-3.4xAlWJを満たす溶接継手中の平均ニッケル含有量、ここで、AlWJは、溶接継手中の平均アルミニウム含有量である(基準C2);並びに
(c)次の関係:CrWJ≦5-2xAlWJを満たす溶接継手中の平均クロム含有量CrWJ、ここで、AlWJは、溶接継手中の平均アルミニウム含有量(基準C3)
によってさらに特徴付けられ、
各プレコートシートは、その各主面上に、溶接継手に隣接して、プレコーティングの厚さの30%~100%の間に含まれる除去率にわたってプレコーティングが除去された中間ゾーンを備える。
【0036】
溶接鋼ブランクの特定の実施形態によれば、溶接鋼ブランクは、単独で、又は任意の技術的に可能な組み合わせに従って、次の特徴のうちの1つ以上を含む:
- プレコートシートのうちの少なくとも1つ、及び例えば両方のプレコートシートの基材の鋼は、重量で、
0.10%≦C≦0.5%
0.5%≦Mn≦4.5%
0.1%≦Si≦1%
0.01%≦Cr≦1%
Ti≦0.2%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.010%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である、
- プレコートシートの各々の基材は、プレス硬化性鋼で作製される;
- プレコートシートごとに、中間ゾーンの幅は、溶接継手の縁部から5μm~2000μmの間に含まれる;
- 少なくとも1つのプレコートシート、及び例えば両方のプレコートシートについて、除去率は、プレコーティングの厚さの100%に等しい;
- 少なくとも1つのプレコートシート、及び例えば両方のプレコートシートについて、除去率は、プレコーティングの厚さの100%より厳密に小さい;
- 少なくとも1つのプレコートシート、及び例えば両方のプレコートシートについて、プレコーティングは、金属間合金層の上面に延在する金属合金層を備え、金属合金層は、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層であり、少なくとも1つのプレコートシート、及び例えば両方のプレコートシートについて、金属合金層は、その厚さ全体にわたって除去されているが、金属間合金層は、プレコートシートの各主面上の除去ゾーンに一体のままである;
- 溶接継手のニッケル含有量は、0.1重量%~13.6重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれる;
- 溶接鋼ブランクは、熱間プレス成形及び冷却後に、20℃での溶接継手のシャルピーエネルギーが25J/cm以上であり、熱間プレス成形及び冷却された溶接鋼ブランクの極限引張強度は、プレコートシートの基材の中で最も弱い基材の極限引張強度以上であり、最も弱い基材は、厚さと熱間プレス成形及び冷却後の極限引張強度との積が最も低い基材であるようなものである;
- 溶接継手は、熱間プレス成形及び冷却後に、溶接継手全体の最大硬度変化ΔHV(WJ)が溶接継手の平均硬度HV平均(WJ)の20%以下である;
- 各中間ゾーンは、凝固条痕を含み、2つのプレコートシートの隣接する主面上の凝固条痕は、2つのプレコートシート間の垂直正中面に対して対称である;
- 各中間ゾーンは、溶接継手に位置する内縁と、溶接継手から離れて位置する外縁とを備え、2つのプレコートシートの隣接する中間ゾーンの外縁間の距離は、溶接継手の長手方向に沿って一定である;
- プレコートシートのうちの少なくとも1つ、及び例えば両方のプレコートシートについて、基材の鋼は、重量で、
0.15%≦C≦0.25%
0.8%≦Mn≦1.8%
0.1%≦Si≦0.35%
0.01%≦Cr≦0.5%
Ti≦0.1%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.005%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である;
- プレコートシートのうちの1つについて、基材の鋼は、重量で、
0.040%≦C≦0.100%
0.80%≦Mn≦2.00%
Si≦0.30%
S≦0.005%
P≦0.030%
0.010%≦Al≦0.070%
0.015%≦Nb≦0.100%
Ti≦0.080%
N≦0.009%
Cu≦0.100%
Ni≦0.100%
Cr≦0.100%
Mo≦0.100%
Ca≦0.006%、
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である;
- プレコートシートのうちの1つについて、基材の鋼は、重量で、
0.24%≦C≦0.38%
0.40%≦Mn≦3%
0.10%≦Si≦0.70%
0.015%≦AI≦0.070%
0%≦Cr≦2%
0.25%≦Ni≦2%
0.015%≦Ti≦0.10%
0%≦Nb≦0.060%
0.0005%≦B≦0.0040%
0.003%≦N≦0.010%
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、ここで、チタン及び窒素の含有量は、次の関係を満たし:
Ti/N>3.42
並びに、炭素、マンガン、クロム及びケイ素の含有量は、次の関係を満たし:
【0037】
【数4】
鋼は、任意選択的に、次の元素のうちの1つ以上を含み:
0.05%≦Mo≦0.65%
0.001%≦W≦0.30%
0.0005%≦Ca≦0.005%
残部は、鉄及び製造から不可避的に生じる不純物である。
【0038】
本発明はさらに、第1のコーティングされた鋼部品部分及び第2のコーティングされた鋼部品部分を備える、溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品に関し、各コーティングされた鋼部品部分が、その主面のうちの少なくとも1つに、少なくとも鉄及びアルミニウムを含むコーティングを有する鋼基材を備え、
第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分は、溶接継手によって接合されており、溶接継手は、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる平均アルミニウム含有量を有し、溶接継手は、
(a)
【0039】
【数5】
となるような溶接継手の焼入れ係数FTWJ(基準C1)、
- FTBMは、2つのプレコートシートの鋼基材の中で最も硬化性の低い鋼基材の焼入れ係数である、
- 焼入れ係数FTWJ及びFTBMは、次の式:FT=128+1553xC+55xMn+267xSi+49xNi+5xCr-79xAl-2xNi-1532xC-5xMn-127xSi-40xCxNi-4xNixMnを使用して決定され、ここで、Al、Cr、Ni、C、Mn及びSiは、それぞれ、焼入れ係数を決定する領域の平均アルミニウム、クロム、ニッケル、炭素、マンガン及びシリコン含有量を重量パーセントで表したものであり、この領域は、FTWJの場合、溶接継手にあり、FTBMの場合、最も硬化しにくい基材にある、
(b)次の関係:Ni≦14-3.4xAlWJを満たす溶接継手中の平均ニッケル含有量NiWJ、ここで、AlWJは、溶接継手中の平均アルミニウム含有量である(基準C2);並びに
(c)次の関係:Cr≦5-2xAlWJを満たす溶接継手中の平均クロム含有量CrWJ、ここで、AlWJは、溶接継手中の平均アルミニウム含有量(基準C3)
によってさらに特徴付けられ、
各コーティングされた鋼部品部分は、その各主面上に、溶接継手に隣接して、コーティングの厚さが、中間ゾーンよりも溶接継手から遠い距離に位置するコーティングされた鋼部品部分の隣接ゾーンよりも厳密に薄いか、又はコーティングがない中間ゾーンを備える。
【0040】
溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品の特定の実施形態によれば、溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品は、単独で、又は任意の可能な組み合わせに従って、次の特徴のうちの1つ又はいくつかを含み得る:
- 第1及び第2の鋼部品部分のうちの少なくとも1つの基材の鋼、及び例えば第1及び第2の鋼部品部分の鋼は、重量で、
0.10%≦C≦0.5%
0.5%≦Mn≦4.5%
0.1%≦Si≦1%
0.01%≦Cr≦1%
Ti≦0.2%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.010%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物であり、
- 第1及び第2の鋼部品部分の各々の基材は、プレス硬化性鋼で作製される;
- 各中間ゾーンは、凝固条痕を含み、2つのコーティングされた鋼部品部分の隣接する主面上の凝固条痕は、2つのコーティングされた鋼部品部分の間の垂直中央面に対して対称である;
- 各中間ゾーンは、溶接継手に位置する内縁部と、溶接継手から離れて位置する外縁部とを備え、2つのコーティングされた鋼部品部分の隣接する中間ゾーンの外縁部間の距離は、溶接継手の長手方向に沿って一定である;
- 溶接継手の平均硬度HV平均(WJ)は、700HV以下である;
- 溶接継手中の平均ニッケル含有量は、0.1重量%~13.6重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれる;
- 20℃での溶接継手のシャルピーエネルギーは、25J/cm以上であり、溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品の極限引張強度は、コーティングされた鋼部品部分の基材の中で最も弱い基材の極限引張強度以上であり、最も弱い基材は、厚さと極限引張強度との積が最も低い基材である;
- 溶接継手全体の最大硬度変化ΔHV(WJ)は、溶接継手の平均硬度HV平均(WJ)の20%以下である;
- 第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分のうちの少なくとも1つの基材の鋼、並びに例えば第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分の基材の鋼は、重量で、
0.15%≦C≦0.25%
0.8%≦Mn≦1.8%
0.1%≦Si≦0.35%
0.01%≦Cr≦0.5%
Ti≦0.1%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.005%
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である;
- 第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分の中の1つの基材の鋼は、重量で、
0.040%≦C≦0.100%
0.80%≦Mn≦2.00%
Si≦0.30%
S≦0.005%
P≦0.030%
0.010%≦Al≦0.070%
0.015%≦Nb≦0.100%
Ti≦0.080%
N≦0.009%
Cu≦0.100%
Ni≦0.100%
Cr≦0.100%
Mo≦0.100%
Ca≦0.006%、
を含み、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である;
- 第1及び第2のコーティングされた鋼部品部分の中の1つの基材の鋼は、重量で、
0.24%≦C≦0.38%
0.40%≦Mn≦3%
0.10%≦Si≦0.70%
0.015%≦AI≦0.070%
0%≦Cr≦2%
0.25%≦Ni≦2%
0.015%≦Ti≦0.10%
0%≦Nb≦0.060%
0.0005%≦B≦0.0040%
0.003%≦N≦0.010%
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、ここで、チタン及び窒素の含有量は、次の関係を満たし:
Ti/N>3.42
並びに、炭素、マンガン、クロム及びケイ素の含有量は、次の関係を満たし:
【0041】
【数6】
鋼は、任意選択的に、次の元素のうちの1つ以上を含み:
0.05%≦Mo≦0.65%
0.001%≦W≦0.30%
0.0005%≦Ca≦0.005%
残部は、鉄及び製造から不可避的に生じる不純物である。
【0042】
本発明はさらに、自動車両用の侵入防止部品又はエネルギー吸収部品を生産するための、上述の溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品の使用に関する。
【0043】
本発明は、添付の図面を参照して、例としてのみ与えられる以下の明細書を読むと、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】シートの周囲でのプレコーティング中に除去ゾーンを含むプレコートシートの斜視図である。
図2】初期プレコートシートの斜視図である。
図3】本発明による方法の溶接ステップの開始の概略断面図である。
図4】本発明による方法の溶接ステップの終了の概略断面図である。
図5】本発明による溶接鋼ブランクの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
特許出願全体において、元素の含有量は、重量パーセント(重量%)で表される。
【0046】
本発明は、溶接鋼ブランク1を生産するための方法に関する。
【0047】
本方法は、2つのプレコートシート2を提供する第1のステップを含む。
【0048】
図1に示すように、各プレコートシート2は、2つの主面4と、一方の主面4から他方の主面4まで2つのそれらの間に延在する少なくとも1つの側面13とを備える。図1に示す例では、プレコートシート2は、4つの側面13を備える。例えば、側面13は、主面4のうちの1つと60°~90°の間に含まれる角度を形成する。
【0049】
各プレコートシート2は、その主面の各々上にプレコーティング5を有する金属基材3を備える。プレコーティング5は、基材3上に重ねられて、それらと接触している。
【0050】
金属基材3は、より詳細には鋼基材である。
【0051】
基材3の鋼は、より詳細には、フェライト-パーライト微細構造を有する鋼である。
【0052】
好ましくは、基材3は、熱処理用の鋼、より詳細にはプレス硬化性鋼、及び例えば22MnB5型鋼などのマンガン-ホウ素鋼で作製される。
【0053】
一実施形態によれば、基材3の鋼は、重量で、
0.10%≦C≦0.5%
0.5%≦Mn≦3%
0.1%≦Si≦1%
0.01%≦Cr≦1%
Ti≦0.2%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.010%
を含み、特にそれらからなり、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である。
【0054】
より詳細には、基材3の鋼は、重量で、
0.15%≦C≦0.25%
0.8%≦Mn≦1.8%
0.1%≦Si≦0.35%
0.01%≦Cr≦0.5%
Ti≦0.1%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.005%
を含み、特にそれらからなり、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である。
【0055】
代替形態によれば、基材3の鋼は、重量で、
0.040%≦C≦0.100%
0.80%≦Mn≦2.00%
Si≦0.30%
S≦0.005%
P≦0.030%
0.010%≦Al≦0.070%
0.015%≦Nb≦0.100%
Ti≦0.080%
N≦0.009%
Cu≦0.100%
Ni≦0.100%
Cr≦0.100%
Mo≦0.100%
Ca≦0.006%
を含み、特にそれらからなり、残部は、鉄及び製造に起因する不純物である。
【0056】
代替形態によれば、基材3の鋼は、重量で、
0.24%≦C≦0.38%
0.40%≦Mn≦3%
0.10%≦Si≦0.70%
0.015%≦AI≦0.070%
0%≦Cr≦2%
0.25%≦Ni≦2%
0.015%≦Ti≦0.10%
0%≦Nb≦0.060%
0.0005%≦B≦0.0040%
0.003%≦N≦0.010%
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、ここで、チタン及び窒素の含有量は、次の関係を満たし:
Ti/N>3.42、
並びに、炭素、マンガン、クロム及びケイ素の含有量は、次の関係を満たし:
【0057】
【数7】
鋼は、任意選択的に、次の要素のうちの1つ以上を含み:
0.05%≦Mo≦0.65%
0.001%≦W≦0.30%
0.0005%≦Ca≦0.005%
残部は、鉄及び製造から不可避的に生じる不純物である。
【0058】
一例によれば、2つのプレコートシート2の基材3は、同じ組成を有する。
【0059】
別の例によれば、2つのプレコートシート2の基材3は、異なる組成を有する。特に、2つの基材3は、上述の4つの組成の中からそれぞれ選定された異なる組成を有する。例えば、一方のプレコートシート2の基材3の鋼は、上述の第1の組成を有し、他方のプレコートシート2の基材3の鋼は、上述の第2、第3又は第4の組成の中から選定された組成を有する。
【0060】
基材3は、その所望の厚さに応じて、熱間圧延及び/又は冷間圧延とそれに続く焼鈍によって、又は任意の他の適切な方法によって得られ得る。
【0061】
基材3は、有利には、0.8mm~5mmの間に含まれ、より詳細には1.0mm~3.0mmの間に含まれる厚さを有する。2つのプレコートシート2は、同じ厚さ又は異なる厚さを有し得る。
【0062】
プレコーティング5は、溶融めっきコーティングによって、すなわち溶融金属浴への基材3の浸漬によって得られる。
【0063】
プレコーティング5は、基材3と接触している少なくとも金属間合金層9を備える。金属間合金層9は、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む。金属間合金層9は、特に、基材3と浴の溶融金属との反応によって形成される。より詳細には、金属間合金層9は、Fe- Alタイプの金属間化合物、より詳細にはFeAlを含む。
【0064】
図1に示す例では、プレコーティング5は、金属間合金層9の上面に延在する金属合金層11をさらに備える。金属合金層11は、浴中の溶融金属に近い組成を有する。それは、溶融めっきコーティング中に溶融金属浴を通って移動するときにシートによって持ち去られる溶融金属によって形成される。金属合金層11は、アルミニウムの層、又はアルミニウム合金の層、又はアルミニウム系合金の層である。
【0065】
これに関連して、アルミニウム合金は、50重量%を超えるアルミニウムを含む合金を指す。アルミニウム系合金は、重量でアルミニウムが主成分である合金である。
【0066】
例えば、金属合金層11は、シリコンをさらに含むアルミニウム合金の層である。より詳細には、金属合金層11は、重量で、
- 8%≦Si≦11%、
- 2%≦Fe≦4%、
を含み、残部は、アルミニウム及び可能性のある不純物である。
【0067】
金属合金層11は、例えば、19μm~33μmの間、又は10μm~20μmの間に含まれる厚さを有する。
【0068】
プレコーティング5が金属合金層11を備える図1に示す例では、金属間合金層9の厚さは、一般に数マイクロメートル程度である。特に、その平均厚さは、典型的には2~8マイクロメートルの間に含まれる。
【0069】
溶融めっきコーティングによって得られた金属間合金層9及び金属合金層11を備えるプレコーティング5の特定の構造は、特にEP2007545に開示されている。
【0070】
別の実施形態によれば、プレコーティング5は、上述の金属間合金層9のみを備える。この場合、金属間合金層9の厚さは、例えば、10μm~40μmの間に含まれる。金属間合金9からなるそのようなプレコーティング5は、例えば、上記に開示された金属間合金層9及び金属合金層11を備えるプレコーティング5を予備合金化処理に供することによって得られ得る。そのような予備合金化処理は、プレコーティング5の厚さの少なくとも一部にわたってプレコーティング5を基材3と合金化するように選定された温度及び保持時間で行われる。より詳細には、予備合金化処理は、次のステップを含み得る:シートを700℃~900℃の間に含まれる予備合金化温度まで加熱し、2分~200時間に含まれる時間の間この温度で予備合金シートを保持するステップ。この場合、金属間合金層9は、FeAl、FeAl、FeAl、FeAl12Si及びFeAl副層などの異なる金属間副層から構成され得る。
【0071】
有利には、図1に示されるように、基材3は、その主面4の両方に上述のプレコーティング5を有する。
【0072】
さらに、図1に示すように、プレコートシート2ごとに、溶接縁部14で除去ゾーン18を生成するように、プレコートシート2の各主面4上のプレコートシート2の溶接縁部14でプレコーティング5が除去される。より詳細には、プレコーティング5は、プレコーティング5の厚さの30%~100%の間(境界を含む)に含まれる除去率Fにわたって除去されている。
【0073】
溶接縁部14は、突合せ溶接中に溶接継手22に少なくとも部分的に組み込まれるように意図されたプレコートシート2の周辺部分を備える。より詳細には、溶接縁部14は、プレコートシート2の側面13と、この側面13から延在し、プレコーティング5の一部及び基材3の一部を備えるプレコートシート2の一部とを備える。
【0074】
溶接縁部14でのプレコーティング5の除去率Fの除去は、好ましくは、レーザビームを使用して、すなわちレーザアブレーションによって行われる。
【0075】
除去ゾーン18は、シート2の側面13から0.5mm~3mmの間に含まれる幅にわたって延在し得る。
【0076】
有利には、除去率Fは、厳密に100%未満であり、これは、プレコーティング5の一部のみが、除去ゾーン18中で除去され、その一部は残ることを意味する。
【0077】
例えば、図1に示す実施形態では、除去ゾーン18において、金属合金層11が除去されるが、金属間合金層9は、その厚さの少なくとも一部にわたって残る。この場合、残りの金属間合金層9は、溶接継手22に直接隣接する溶接ブランク1の領域を、その後の熱間プレス成形ステップ中の酸化及び脱炭並びに使用寿命中の腐食から保護する。
【0078】
実施形態によれば、除去ステップ中、金属間合金層9は、その一体性のままであるか、又は例えば、その初期厚さのわずか60%、80%若しくは90%を超えるなど、厳密に100%未満のその初期厚さの一部にわたって残る。
【0079】
代替的な実施形態(図示せず)によれば、除去ステップ中に、プレコーティング5は、除去ゾーン18においてその厚さ全体にわたって除去される。この実施形態では、除去率は、プレコーティング5の厚さの100%に相当する。この実施形態では、除去ゾーン18にプレコーティング5が存在しない。
【0080】
より詳細には、本方法は、提供ステップの前に、図2に示すようなそれぞれの初期プレコートシート2’から図1に示すような2つのプレコートシート2を生産するステップを含む。
【0081】
初期プレコートシート2’は、プレコートシート2と実質的に同じ幾何学的形状及び組成を有し、唯一の違いは、除去ゾーン18がないことである。言い換えれば、初期プレコートシート2’のプレコーティング5は、初期プレコートシート2’の両方の主面4上に一体のままである。それは、初期プレコートシート2’の2つの主面を完全に覆う。
【0082】
このステップは、レーザアブレーションによって溶接縁部14で除去率Fにわたってプレコーティング5を除去することによって、各プレコートシート2の各主面4上の除去ゾーン18を得るサブステップを含む。
【0083】
任意選択的に、本方法は、プレコートシート2のうちの少なくとも1つ、及び例えば両方のプレコートシート2の溶接縁部14を調製するステップをさらに含む。
【0084】
溶接縁部14の調製は、次の処理ステップのうちの少なくとも1つを含み得る:
- 溶接縁部14のブラッシング、
- 溶接縁部14の機械加工、
- 溶接縁部14のチャンファリング、及び/又は
- 溶接縁部14のべべリング。
【0085】
ブラッシングステップは、機械的切断作業から及び/又は溶接縁部14でのプレコーティング5の除去から生じる、溶接縁部14上、より詳細には側面13上のプレコーティング5の痕跡を少なくとも部分的に除去することを可能にする。
【0086】
溶接縁部14をチャンファリング又はべべリングすることにより、溶接継手22で厚肉をもたらすことなく、添加されるフィラー材料の量を増加させることが可能である。
【0087】
溶接縁部14の機械加工は、機械加工前の溶接縁部14の形状がレーザ溶接に十分に真っ直ぐでない場合に行われる。
【0088】
本方法は、溶接鋼ブランク1を得るために、溶接縁部14の任意選択的な調製後に、フィラーワイヤ20を使用してプレコートシート2を突合せ溶接するステップをさらに含む。
【0089】
図3及び図4は、溶接鋼ブランク1を生成するための溶接ステップの2つの段階を示す。
【0090】
図3及び図4に示す例では、2つのプレコートシート2は、図1に示すようにプレコートシートであり、それぞれの溶接縁部14で除去ゾーン18を備え、金属合金層11は、その厚さ全体にわたって除去されているが、金属間合金層9は、一体のままである。
【0091】
溶接作業の結果、2つのシート2の間の接合部で溶融金属ゾーンが形成され、続いて凝固して、溶接継手22を形成する。
【0092】
溶接ステップは、特に、レーザビーム24が2つのシート2の間の接合部に向けられるレーザ溶接ステップである。このレーザビーム24は、レーザビーム24の衝突点26でフィラーワイヤ20を溶融するように構成される。
【0093】
レーザ溶接ステップは、例えば、COレーザ又は固体レーザを使用して行われる。
【0094】
レーザ源は、好ましくは高出力レーザ源である。それは、例えば、近似的に10マイクロメートルの波長を有するCOレーザ、近似的に1マイクロメートルの波長を有する固体レーザ源、又は半導体レーザ源、例えば、近似的に0.8~1の間マイクロメートルに含まれる波長を有するダイオードレーザの中から選択され得る。
【0095】
レーザ源の出力は、シート2の厚さに応じて選定される。特に、電力は、フィラーワイヤ20とシート2の溶接縁部14との融合、及び溶接継手22における十分な混合を可能にするように選定される。COレーザの場合、レーザ出力は、例えば、3kW~12kWの間に含まれる。固体レーザ又は半導体レーザの場合、レーザ出力は、例えば2kW~8kWの間に含まれる。
【0096】
シート2上の衝突点26でのレーザビーム24の直径は、両方のタイプのレーザ源について約600μmに等しくてもよい。
【0097】
溶接ステップ中、溶接は、例えば保護雰囲気下で行われる。そのような保護雰囲気は、特に、溶接が実行されている領域の酸化及び脱炭、溶接継手22における窒化ホウ素の形成、並びに水素吸収に起因する可能性のある冷間割れを防止する。
【0098】
保護雰囲気は、例えば不活性ガス又は不活性ガスの混合物である。不活性ガスは、ヘリウム若しくはアルゴン、又はこれらのガスの混合物であってもよい。
【0099】
この溶接ステップ中、2つのシート1の対向する側面13の間の距離は、例えば0.3mm以下、より詳細には0.1mm以下である。2つのシート1の対向する側面13の間にそのようなクリアランスを提供することにより、溶接作業中のフィラー金属の堆積が促進され、溶接継手22における厚肉の形成が防止される。調製ステップ中に、シート2の溶接縁部14でチャンファリング又はべべリングされた縁部が生産された場合にも、フィラー金属の堆積及び厚肉の防止が改善される。
【0100】
特に、溶接継手22中の平均アルミニウム含有量AlWJは、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる。より詳細には、溶接継手22中の平均アルミニウム含有量AlWJは、0.15重量%以上である。溶接継手22中の平均アルミニウム含有量AlWJは、例えば、0.8重量%以下である。
【0101】
この平均アルミニウム含有量AlWJは、除去率Fの除去後に除去ゾーン18に残っている可能性があるプレコーティング5の部分、並びに除去作業及び/又は切断作業から生じる溶接縁部(複数可)14の側面(複数可)13上に存在するアルミニウムの痕跡から生じる。溶接継手22では、それは、基材3及びフィラーワイヤ20の鋼と混合される。
【0102】
溶接ステップ中、溶接プールに添加されるフィラーワイヤ20の割合は、例えば10%~50%の間に含まれ、より詳細には10%~40%の間に含まれる。
【0103】
本発明によれば、フィラーワイヤ20の組成及び溶接プールに添加されるフィラーワイヤ20の比率は、こうして得られた溶接継手22が、
(a)
【0104】
【数8】
となるような溶接継手22の焼入れ係数FTWJ(基準C1)、
- FTBMは、2つのプレコートシート2の鋼基材3の中で最も硬化性の低い鋼基材3の焼入れ係数である、
- 焼入れ係数FTWJ及びFTBMは、次の式:FT=128+1553xC+55xMn+267xSi+49xNi+5xCr-79xAl-2xNi-1532xC-5xMn-127xSi-40xCxNi-4xNixMnを使用して決定され、ここで、Al、Cr、Ni、C、Mn及びSiは、それぞれ、焼入れ係数を決定する領域の平均アルミニウム、クロム、ニッケル、炭素、マンガン及びシリコン含有量を重量パーセントで表したものであり、この領域は、FTWJの場合、溶接継手22にあり、FTBMの場合、最も硬化しにくい基材3にある;
(b)次の関係:NiWJ≦14-3.4xAlWJを満たす溶接継手22の平均ニッケル含有量NiWJ、ここで、AlWJは、溶接継手の平均アルミニウム含有量である(基準C2);並びに
(c)次の関係:CrWJ≦5-2xAlWJを満たす溶接継手22の平均クロム含有量CrWJ、ここで、AlWJは、溶接継手22の平均アルミニウム含有量である(基準C3)
によって特徴付けられるように選定される。
【0105】
プレコートシート2の基材3の中で最も硬化性が低い基材3は、炭素含有量が最も低い基材3である。
【0106】
実際、本発明の発明者らは、驚くべき方法で、上記基準C1、C2及びC3が累積的に満たされる場合、オーステナイト化ステップ(プレスツール中での熱間プレス成形及び冷却)を含む熱処理後のそのような溶接鋼ブランク1から得られた部品は、溶接継手22において20℃で25J/cm以上のシャルピーエネルギー及びプレコートシート2の基材3の中で最も弱い基材の極限引張強度以上の極限引張強度を示すことを見出した。
【0107】
最も弱い基材3は、厚さと熱間プレス成形及び冷却後の極限引張強度との積が最も小さい基材である。
【0108】
特に、20℃での溶接継手22のシャルピーエネルギーが25J/cm以上であると、溶接継手の完全な脆性破壊を回避することが可能である。
【0109】
したがって、上記基準C1、C2及びC3が累積的に満たされる場合、溶接継手22の存在は、溶接継手22が比較的高いアルミニウム含有量を含む場合であっても、溶接ブランクからの熱間プレス成形及び冷却によって得られる溶接鋼部品の特性を、プレコートシート2の基材3の中で最も弱い基材3の熱間プレス成形及び冷却後の特性と比較して低下させない。
【0110】
したがって、本発明による方法により、溶接継手22中のアルミニウム含有量が比較的高い可能性があるにもかかわらず、満足できる衝突性能を有する部品を得ることが可能である。
【0111】
好ましくは、フィラーワイヤ20の組成及び溶接プールに添加されるフィラーワイヤ20の割合は、溶接継手22の平均ニッケル含有量NiWJが、0.1重量%~13.7重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれるようにさらに選定される。
【0112】
例えば、フィラーワイヤ20の組成及び溶接プールに添加されるフィラーワイヤ20の割合は、溶接継手22の平均クロム含有量CrWJが0.05重量%以上になるようにさらに選定される。溶接継手中のそのようなクロム含有量は、溶接継手22の耐食性及び焼入れ性を改善するので有利である。
【0113】
好ましくは、溶接継手22の組成は、熱間プレス成形及び冷却後に主要なマルテンサイト微細構造を有するようなものである。「主要に」とは、少なくとも95%のマルテンサイト、より詳細には100%のマルテンサイトを含むことを意味する。
【0114】
フィラーワイヤ20は、特に、0.01重量%~0.45重量%の間に含まれる炭素含有量を有する。一例によれば、フィラーワイヤ20の炭素含有量は、2つのプレコートシート2の基材3の中の最も硬化しにくい基材3の炭素含有量以上である。
【0115】
実際、本発明の発明者らは、驚くべき方法で、プレスツール中での熱間プレス成形及び冷却後の溶接継手22における炭素偏析、したがって硬度ピークの発生のリスクを低減するために、特に溶接継手22中に重要な量のアルミニウムが存在する場合、フィラーワイヤ中の炭素含有量は、0.01重量%~0.45重量%の間に含まれるべきであることを見出した。したがって、そのようなフィラーワイヤ20を使用することにより、溶接継手22の脆性のリスクが低減され、溶接継手22に垂直な張力下でプレスツール中での熱間プレス成形及び冷却後に得られる部品の溶接継手22における破損の回避に関与する。
【0116】
特に、本発明の発明者らは、溶接継手22を得ることができるようにするために、フィラーワイヤ中の炭素含有量が、0.01重量%~0.45重量%の間に含まれるべきであることを観察し、溶接継手22全体の最大硬度変化ΔHV(WJ)は、溶接継手22の平均硬度HV平均(WJ)の20%以下、言い換えれば
【0117】
【数9】
であり、ΔHV(WJ)は、溶接継手22で測定された最大硬度と最小硬度との差であり、HV平均(WJ)は、溶接継手22で測定された平均硬度である。
【0118】
好ましくは、フィラーワイヤ20は、プレコートシート2の基材3のマンガン含有量よりも厳密に小さいマンガン含有量を有する。
【0119】
例えば、フィラーワイヤ20は、重量で、次の組成を有し:
0.01%≦C≦0.45%、及び例えば0.02%≦C≦0.45%
0.001%≦Mn≦0.45%、及び例えば0.05%≦Mn≦0.45%、さらにより詳細には0.05%≦Mn≦0.20%、
0.001%≦Si≦1%
0.02%≦Ni≦56%、及び例えば0.2%≦Ni≦10.0%の間、
0.001%≦Cr≦30%
0.001%≦Mo≦5%
0.001%≦Al≦0.30%
0.001%≦Cu≦1.80%
0.001%≦Nb≦1.50%
0.001%≦Ti≦0.30%
0.001%≦N≦10%
0.001%≦V≦0.1%
0.001%≦Co≦0.20%
残部は、鉄及び不可避不純物である。
【0120】
上記の例示的なフィラーワイヤ組成物では、約0.001%に等しいMn、Si、Cr、Mo、Al、Cu、Nb、Ti、N、V及びCoの含有量は、原料の融合から、及び非常に低い含有量についての測定装置の精緻化又は精度から生じる不純物のレベルでのこれらの元素の痕跡に対応し、分析された鋼に完全に存在しない元素は、非常に低い含有量で存在するとして測定され、又は非常に低い含有量で存在する元素は、鋼に存在しないとして測定され得るという事実をもたらす場合がある。
【0121】
例えば、フィラーワイヤ20は、上述の元素からなる。
【0122】
フィラーワイヤ20は、例えばソリッドワイヤ又はフラックスコアードワイヤである。
【0123】
本発明はまた、上述の方法を使用して得られ得る溶接鋼ブランク1に関する。
【0124】
そのような溶接鋼ブランクの例を図5に示す。
【0125】
溶接鋼ブランク1は、2つのプレコートシート2を備え、各プレコートシート2は、その主面4の各々上にプレコーティング5を有する鋼基材3を備え、プレコーティング5は、少なくとも鉄及びアルミニウムを含む金属間合金層9と、任意選択的に、金属間合金層9の上面に延在する金属合金層11とを備え、金属合金層11は、アルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層であり、プレコートシート2は、溶接継手22によって接合されている。
【0126】
溶接鋼ブランク1は、溶接継手22の両側上に、上で定義したように除去ゾーンFにわたってプレコーティング5が除去された中間ゾーン28を備える。
【0127】
さらに、図5に見られるように、各中間ゾーン28は、溶接継手22に位置する内縁30と、溶接継手22から離れて位置する外縁32とを備える。
【0128】
溶接継手22の縁部から測定された各中間ゾーン28の幅W、すなわち内縁30と外縁32との間の距離は、5μm~2000μmの間、より詳細には5μm~1500μmの間に含まれる。
【0129】
好ましくは、中間ゾーン28において、プレコーティング5は、厳密に100%より小さい除去率Fにわたって除去されている。特に、金属合金層11は、除去されているが、金属間合金層9は、一体のままである。
【0130】
代替例によれば、中間ゾーン28では、プレコーティング5は、100%に等しい除去率Fにわたって、すなわちその厚さ全体にわたって除去されている。
【0131】
したがって、中間ゾーン28では、プレコーティング5の厚さは、溶接継手22からさらに離れて位置するプレコートシート2のゾーンよりも厳密に小さいか、又は存在さえしない。
【0132】
中間ゾーン28は、対応するプレコートシート2上の除去ゾーン18から生じる。
【0133】
プレコートシート2及び溶接継手22は、溶接鋼ブランク1を生産するための方法に関して上記で開示した特徴を有する。
【0134】
したがって、溶接継手22は、上記で定義された基準C1、C2及びC3を順守する。
【0135】
さらに、溶接継手22の平均アルミニウム含有量AlWJは、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる。より詳細には、溶接継手22の平均アルミニウム含有量AlWJは、0.15重量%以上である。溶接継手22の平均アルミニウム含有量AlWJは、例えば、0.8重量%以下である。
【0136】
溶接継手22は、例えば、プレスツール中での熱間プレス成形及び冷却後に、20℃での溶接継手22のシャルピーエネルギーが25J/cm以上である。
【0137】
さらに、熱間プレス成形及び冷却後、熱間プレス成形及び冷却溶接鋼ブランクの極限引張強度は、プレコートシート2の基材3の中で最も弱い基材の極限引張強度以上である。これに関連して、最も弱い基材は、上述のように定義される。
【0138】
例えば、溶接継手22の平均ニッケル含有量NiWJは、0.1重量%~13.6重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれる。
【0139】
例えば、溶接継手22の平均クロム含有量CrWJは、0.05重量%以上である。
【0140】
溶接継手22は、例えば、プレスツール中での熱間プレス成形及び冷却後に、溶接継手22全体の最大硬度変化ΔHV(WJ)が、溶接継手22の平均硬度HV平均(WJ)の20%以下である。言い換えれば、
【0141】
【数10】
である。
【0142】
溶接継手22は、例えば、プレスツール中での熱間プレス成形及び冷却後の溶接継手22の平均硬度HV平均(WJ)が、700HV以下である。
【0143】
好ましくは、溶接継手22の組成は、熱間プレス成形及び冷却後に主要なマルテンサイト微細構造を有するようなものである。「主要に」とは、少なくとも95%のマルテンサイト、より詳細には100%のマルテンサイトを含むことを意味する。
【0144】
本発明はまた、溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品を生産するための方法であって、
- 上述の方法を使用して、溶接鋼ブランク1を生産することと;
- 溶接ブランク1を構成するプレコートシート2の基材3中に完全オーステナイト構造を得るために、溶接鋼ブランク1を加熱することと;
- 鋼部品を得るために、プレスツール中で溶接鋼ブランク1を熱間プレス成形することと;
- プレスツール中で鋼部品を冷却することと
を含む、方法に関する。
【0145】
より詳細には、加熱ステップ中、溶接鋼ブランク1は、オーステナイト化温度まで加熱される。次いで、溶接鋼ブランク1を形成する鋼板2の厚さに応じた保持時間の間オーステナイト化温度に保持される。保持時間は、溶接ブランク1がオーステナイト化され、基材3とプレコーティング5との間の合金化によって所定の厚さの合金化金属間層が形成されるように、オーステナイト化温度に応じて選定される。例えば、保持時間は、約5分に等しい。
【0146】
熱間プレス成形の前に、このように加熱された溶接鋼ブランク1は、熱間成形プレスツールに移送される。移送時間は、有利には5~10秒の間に含まれる。移送時間は、熱間プレス成形前の溶接鋼ブランク1における冶金学的変形を回避するために、可能な限り短くなるように選定される。
【0147】
冷却ステップ中、冷却速度は、2つの鋼板2の基材3のうちの少なくとも1つ、及び例えば最も硬化性の鋼板1、すなわち最も低い臨界冷却速度を有する鋼板の臨界マルテンサイト又はベイナイト冷却速度以上である。
【0148】
冷却後、溶接継手22は、主要なマルテンサイト微細構造を有する。「主要に」とは、少なくとも95%のマルテンサイト、より詳細には100%のマルテンサイトを含むことを意味する。
【0149】
本発明はまた、上述の方法を使用して得られる溶接され、熱間プレス成形され及び冷却された鋼部品に関する。
【0150】
より詳細には、この鋼部品は、2つのプレコート鋼板2のプレスツール中での熱間プレス成形及び冷却からそれぞれ生じる第1のコーティングされた鋼部品部分及び第2のコーティングされた鋼部品部分を備える。
【0151】
より詳細には、各コーティングされた鋼部品部分は、その主面の各々に鉄及びアルミニウムを含むコーティングを有する鋼基材を備え、第1及び第2の鋼部品部分は、上述のように溶接継手22によって接合されている。
【0152】
特に、第1及び第2の鋼部品部分のコーティングは、熱間プレス成形中のプレコーティング5の少なくとも部分的な合金化から生じる。
【0153】
第1及び第2の鋼部品部分の基材は、プレコートシート2について上述した組成を有する。それらは、プレコートシート2の基材3の熱間プレス成形及び冷却から生じる。
【0154】
各鋼部品部分は、溶接継手22に隣接して、鋼部品部分の各面上に中間ゾーンを備える。この中間ゾーンは、溶接ブランク1に関して説明した中間ゾーン28から生じる。中間ゾーンでは、コーティングの厚さは、鋼部品部分の残りの部分よりも厳密に小さいか、又はコーティングは、存在すらしない。
【0155】
溶接継手22は、上記で定義された基準C1、C2及びC3を順守する。
【0156】
さらに、溶接継手22は、0.1重量%~1.2重量%の間に含まれる平均アルミニウム含有量AlWJを有する。溶接継手22の平均アルミニウム含有量は、例えば0.15重量%以上である。例えば、溶接継手22の平均アルミニウム含有量は、0.8重量%以下である。
【0157】
20℃での溶接継手22のシャルピーエネルギーは、25J/cm以上であり、部品の極限引張強度は、コーティングされた鋼部品部分の基材3の中で最も弱い基材の極限引張強度以上である。
【0158】
例えば、溶接継手22は、0.1重量%~13.6重量%の間、より詳細には0.2重量%~12.0重量%の間に含まれる平均ニッケル含有量NiWJを有する。
【0159】
例えば、溶接継手22は、0.05重量%以上の平均クロム含有量CrWJを有する。
【0160】
溶接継手22は、例えば、溶接継手22全体の最大硬度変化ΔHV(WJ)が、溶接継手22の平均硬度HV平均(WJ)の20%以下である。言い換えれば、
【0161】
【数11】
である。
【0162】
溶接継手22の平均硬度HV平均(WJ)は、例えば700HV以下である。
【0163】
好ましくは、溶接継手22は、主要なマルテンサイト微細構造を有する。「主要に」とは、少なくとも95%のマルテンサイト、より詳細には100%のマルテンサイトを含むことを意味する。
【0164】
本発明者らは、溶接鋼ブランク1を、フィラーワイヤWを使用して2つのプレコートシートA及びBを一緒に突合せレーザ溶接することによって生産する実験を行った。
【0165】
行った実験E1~E22ごとの実験条件を以下の表1に示す。
【0166】
最初に提供されたプレコートシートA及びBは、それらの主面4の両方上に約25マイクロメートルの厚さのプレコーティング5を有していた。
【0167】
試験されたプレコートシートA及びBの全てについて、プレコーティング5は、溶融金属浴中での溶融めっきコーティングによって得られ、金属合金層11及び金属間合金層9を備えていた。
【0168】
プレコーティング5の金属合金層11は、重量で、
Si:9%
Fe:3%、
を含み、残部は、アルミニウム及び精緻化から生じる可能性のある不純物からなっていた。
【0169】
金属合金層11の平均総厚は、20μmであった。
【0170】
金属間合金層9は、Fe-Aly型の金属間化合物と、主要にFeAlとを含有していた。FeAI及びFeAISi。その平均厚さは、5μmである。
【0171】
試験されたプレコートシートA及びBの全てについて、金属間合金層を一体のままにしながら、金属合金層11の除去によって両方の主面上に除去ゾーン18が生成されている。除去は、先行出願国際公開第2007/118939号パンフレットに開示されている方法を使用してレーザアブレーションによって行った。
【0172】
【表1】
【0173】
上記の表では、本発明によらない実験に下線を引いている。
【0174】
上記の表では、「溶接プールに添加されたフィラーワイヤの割合」の欄の「0」は、フィラーワイヤが添加されていないことを意味する。
【0175】
表1に記載の異なる実験で使用された鋼基材は、以下の表2に列挙された組成を有し、含有量は、重量%で表される。
【0176】
【表2】
【0177】
全ての基材について、組成物の残部は、鉄、可能性のある不純物、及び製造から生じる不可避の元素である。
【0178】
上記の表2では、「-」は、基材が考慮される元素の最大トレースを含むことを意味する。
【0179】
表1に記載の異なる実験で使用されたフィラーワイヤWは、以下の表3に列挙された組成を有し、含有量は、重量%で表される。
【0180】
【表3】
【0181】
全ての溶接ワイヤについて、組成物の残部は、鉄、可能性のある不純物、及び製造から生じる不可避の元素である。
【0182】
特に明記しない限り、これらのフィラーワイヤは、微量のこれらの元素に対応する約0.001%に等しい含有量でAl、Cu、Nb、Ti、N、V及びCoを含み得る。
【0183】
次いで、本発明者らは、従来の測定方法を使用して、得られた溶接継手22の組成を実験E1~E21ごとに測定した。
【0184】
溶接継手22の平均マンガン、アルミニウム、ニッケル、クロム及びケイ素含有量は、走査型電子顕微鏡に統合されたエネルギー分散型分光検出器を使用して分析された溶接部の表面全体にわたって平均することによって決定した。平均炭素含有量は、溶接継手22に対して垂直に採取した試料の断面上でキャスティング電子マイクロプローブを使用して決定した。これらの測定の結果を以下の表4に示す。
【0185】
【表4】
【0186】
さらに、本発明者らは、このようにして生産された溶接鋼ブランク1を、オーステナイト化を含む熱処理に供し、続いて熱処理部品を得るために急冷した。そのような熱処理部品は、熱間プレス成形部品及び冷却部品と同じ特性を有する。
【0187】
次いで、本発明者らは、これらの部品の機械的特性(熱間プレス成形部品及び冷却部品の極限引張強度並びに溶接継手のシャルピーエネルギー)を決定するための測定を行った。
【0188】
それらは、熱間プレス成形部品及び冷却部品(UTS部品)の測定された極限引張強度を、熱処理後の最も弱い基材(UTS最も弱い基材)の極限引張強度とさらに比較した。
【0189】
このようにして決定された機械的特性を以下の表5に示す。
【0190】
【表5】
【0191】
上記の表では、「n.d.」は、「未定」を意味する。
【0192】
引張試験は、以下の規格:NF EN ISO 4136及びNF ISO 6892-1に開示されている方法を使用して周囲温度(約20℃)で、タイプEN 12.5×50(240×30mm)の横方向に溶接された引張試験片に対して行い、レーザ溶接方向に垂直に抽出した。実験(E1~E21)ごとに、5つの引張試験を行った。
【0193】
シャルピーエネルギーは、溶接継手22中に深さ2mm及び全幅8mmのV字状ノッチを有し、ノッチが溶接継手に0.2mm以上の精度で配置され、ノッチの深さに平行な試験片の寸法である幅を有する試験片を使用して、標準シャルピー衝撃試験を使用して測定した。試験は、20℃で行った。
【0194】
本発明者らは、測定した溶接継手22の組成に基づいて、実験E1~E22ごとに上記で定義された基準C1~C3に適合するか否かを決定した。
【0195】
この決定の結果を以下の表6に要約する。
【0196】
【表6】
下線部:本発明に該当しない
【0197】
表6から分かるように、E1、E2、E5~E14、E17及びE18を参照した実験は、本発明による例である:これらの実験では、基準C1~C3が満たされる。
【0198】
対照的に、E3、E4、E15及びE20~E22を参照した実験は、本発明によるものではない:これらの実験では、基準C1~C3のうちの少なくとも1つの基準が満たされない。
【0199】
上記の表5から分かるように、基準C1~C3を満たす実験E1、E2、E5~E14、E17及びE18では、溶接ブランク1から得られた熱間プレス成形部品及び冷却部品は、機械的特性、特に熱処理後の溶接ブランク1の2つの基材の中で最も弱い基材のそれ以上の極限引張強度、及び20℃での溶接継手22の25J/cm以上のシャルピーエネルギーを満たす。
【0200】
したがって、本発明によるブランク1から得られた部品では、溶接継手22の存在は、熱間プレス成形及び冷却後の最も弱い基材3の特性と比較して、溶接鋼部品の特性を低下させない。したがって、これらの部品は、溶接継手中にアルミニウムが存在するにもかかわらず、満足できる衝突性能を有する。
【0201】
対照的に、本発明によらない実験E3、E4、E14~E15及びE20~E22では、基準C1~C3の中の少なくとも1つが満たされないため、熱間プレス成形及び冷却部品の極限引張強度又は、溶接継手のシャルピーエネルギーのうちの少なくとも1つが低すぎ、したがって満足のいくものではない。したがって、これらの部品では、例えば衝突状況において、溶接継手中で部品が破損するリスクがある。
【0202】
したがって、本発明による方法は、プレスツール中での熱間プレス成形及び冷却後に、溶接継手中にアルミニウムが存在するにもかかわらず、溶接継手22を含む優れた機械的特性を有する部品を得ることを可能にするので、特に有利である。
【0203】
したがって、自動車両の安全性に寄与する侵入防止部品、構造部品又はエネルギー吸収部品の製作に特に適している。
【0204】
本発明による溶接ブランク1を生産するための方法の特定の実施形態によれば、2つのプレコートシート2を生産するステップは、
- 2つの初期プレコートシート2’を提供するステップと、
- これらの2つの初期プレコートシート2’を、それらの間に所定の間隙を残しながら互いに隣接して配列するステップと;
- これらの2つの初期プレコートシート2’の隣接する面上に除去ゾーン18を同時に生成するように、レーザアブレーションにより、除去率Fにわたって2つの隣接する初期プレコートシート2’上のプレコーティング5を同時に除去するステップであって、該除去ステップ中にレーザビームが、2つの隣接する初期プレコートシート2’に重なり合う、除去ステップと
を含む。
【0205】
溶接ステップ中、このようにして調製された隣接する2つのプレコートシート2は、レーザビームスポットが2つのプレコートシート2と重なり合った状態で溶接される。好ましくは、レーザアブレーションの終了と溶接の開始との間の時間は、10秒以下である。
【0206】
このようにして得られた溶接ブランク1の各中間ゾーン28は、レーザアブレーションから生じる凝固条痕を含む。
【0207】
両方の初期プレコートシート2と重なり合う1つのレーザビームを使用して除去率Fにわたってプレコーティング5を同時に除去するため、2つのプレコートシート2の隣接する主面4上の凝固条痕は、2つのプレコートシート2間の垂直中央面Mに対して対称である。
【0208】
さらに、図5に関して前述したように、各中間ゾーン28は、溶接継手22に位置する内縁30と、溶接継手22から離れて位置する外縁32とを備える。
【0209】
この特定の実施形態では、同時アブレーション法により、2つのプレコートシートの隣接する中間ゾーンの外縁の間の距離は、溶接継手22の長手方向に沿って実質的に一定である。実質的に一定とは、2つのプレコートシート2の隣接する中間ゾーンの外縁32の間の距離が、溶接継手22に沿って、すなわち溶接継手22の長手方向に最大5%変動することを意味する。
【0210】
本発明はまた、特定の実施形態による方法を使用して得られた溶接ブランク1の熱間プレス成形及び冷却によって得られた部品に関する。
【0211】
この熱間プレス成形され及び冷却された部品は、上述したのと同じ特徴を有する。
【0212】
さらに、この部品では、各中間ゾーンは、凝固条痕を含み、2つのコーティングされた鋼部品部分の隣接する主面4上の凝固条痕は、2つのコーティングされた鋼部品部分間の垂直中央面に対して対称である。
【0213】
好ましくは、各中間ゾーンは、溶接継手22に位置する内縁部と、溶接継手22から離れて位置する外縁部とを備え、2つのコーティングされた鋼部品部分の隣接する中間ゾーンの外縁部間の距離は、溶接継手22の長手方向に沿って実質的に一定である。実質的に一定とは、2つのコーティングされた鋼部品部分の隣接する中間ゾーンの外縁の間の距離が、溶接継手22に沿って、すなわち溶接継手22の長手方向に最大5%変動することを意味する。
図1
図2
図3
図4
図5