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特開2023-169167米に含まれるタンパク質の含有量を測定する方法
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  • 特開-米に含まれるタンパク質の含有量を測定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169167
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】米に含まれるタンパク質の含有量を測定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20231121BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20231121BHJP
   C07K 14/415 20060101ALN20231121BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20231121BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X ZNA
G01N33/02
C07K14/415
C07K7/06
C07K7/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136214
(22)【出願日】2023-08-24
(62)【分割の表示】P 2020004505の分割
【原出願日】2020-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】澤田 隆行
(72)【発明者】
【氏名】大谷 優太
(72)【発明者】
【氏名】島村 淳一
(57)【要約】
【課題】米に含まれるタンパク質の定量評価を可能とするための方法を提供すること。
【解決手段】米に含まれるタンパク質の含有量を測定する方法であって、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いてタンパク質のペプチド断片の含有量を測定する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米に含まれるタンパク質の含有量を測定する方法であって、
液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて前記タンパク質のペプチド断片の含有量を測定するものであり、
前記タンパク質が19kDaのグロブリンであり、前記ペプチド断片が配列番号1又は11のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、
前記タンパク質がグルテリンA2であり、前記ペプチド断片が配列番号3又は26のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、
前記タンパク質がグルテリンDであり、前記ペプチド断片が配列番号6又は51のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、又は
前記タンパク質がプロラミン13a-1であり、前記ペプチド断片が配列番号7のアミノ酸配列を有するペプチド断片である、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米に含まれるタンパク質の含有量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米に含まれる特定のタンパク質の含有量を定量的に測定する方法として、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)法、ウェスタンブロッティング解析等が知られている。例えば下記非特許文献1では、米に含まれるタンパク質を定量分析するにあたり、SDS-PAGEによって貯蔵タンパク質の一種であるプロラミン等を分析する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Plant Cell Physiology (1987), vol. 28, p.1517-1527
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、米に含まれるタンパク質と米の食味との関係はこれまで、米に含まれる全体的なタンパク質量が低いと米の食味・旨味が増すと考えられてきた。ところが、本発明者の検討によれば、後述する参考例で述べるように、米に含まれる総タンパク質量と米の食味・旨味とは必ずしも相関していないことが判明した。
【0005】
そこで、米に含まれるタンパク質と米の食味・旨味との関係を突き詰めていくには、米に含まれる各種タンパク質の含有量をより詳細且つ網羅的に調べる必要があるが、上述したような従来の方法では、絶対的な定量評価を行うことができない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、米に含まれるタンパク質の定量評価を可能とするための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、米に含まれるタンパク質の含有量を測定する方法であって、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて上記タンパク質のペプチド断片の含有量を測定する方法を提供する。
【0008】
上記タンパク質は、貯蔵タンパク質であってよい。
【0009】
上記タンパク質は、グロブリン、グルテリン及びプロラミンから選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0010】
上記タンパク質のペプチド断片を測定する方法において、タンパク質が19kDaのグロブリンであり、ペプチド断片が配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、タンパク質がグルテリンA1であり、ペプチド断片が配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、タンパク質がグルテリンA2であり、ペプチド断片が配列番号3のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、タンパク質がグルテリンA3であり、ペプチド断片が配列番号4のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、タンパク質がグルテリンBであり、ペプチド断片が配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、タンパク質がグルテリンDであり、ペプチド断片が配列番号6のアミノ酸配列を有するペプチド断片であるか、又は、タンパク質がプロラミン13a-1であり、ペプチド断片が配列番号7のアミノ酸配列を有するペプチド断片であってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、米に含まれるタンパク質の定量評価を可能とするための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】参考例において、米に含まれるタンパク質量と米の食味・旨味の官能評価との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態において、米に含まれるタンパク質の含有量を測定する方法は、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)法を用いてタンパク質のペプチド断片の含有量を測定するものである。すなわち、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)法を用いて、測定対象となるタンパク質に対応するタンパク質のペプチド断片の含有量を測定する工程を含む。
【0015】
米に含まれるタンパク質において定量対象となるタンパク質は、米に含まれるタンパク質の大部分を占める貯蔵タンパク質と呼ばれるものであってよい。貯蔵タンパク質としては、例えば、アルカリ可溶性のグルテリン、食塩水可溶性のグロブリン、及びアルコール可溶性のプロラミンなどが挙げられる。グロブリンとしては、例えば、19kDaのグロブリン、7Sのグロブリン、12Sのグロブリン等が挙げられる。グルテリンとしては、例えば、グルテリンA1、グルテリンA2、グルテリンA3、グルテリンB(グルテリンB1、グルテリンB2、グルテリンB4、グルテリンB5)、グルテリンD、グルテリンC(インディカ)等が挙げられる。プロラミンとしては、例えば、プロラミン13a-1、プロラミン13b-1等が挙げられる。
【0016】
液体クロマトグラフィー質量分析法を用いてタンパク質のペプチド断片の含有量を測定する方法は、特に制限されるものではないが、例えば以下の方法で測定することができる。
【0017】
まず、米を粉砕して得られた米粉から、タンパク質を抽出・精製し、酵素処理によってタンパク質を断片化してペプチド断片を得る。米粉からタンパク質を抽出・精製する方法は、特に制限されるものではなく、通常の抽出・精製処理の方法を適宜採用することができる。また、酵素処理によってタンパク質を断片化する方法において用いる酵素は、目的とするペプチド断片により適宜選定することができるが、例えばトリプシン等を用いて消化することにより、目的のペプチド断片を得ることができる。なお酵素処理の後は、適宜界面活性剤の除去や脱塩を行なってもよい。
【0018】
一方、内部標準として、濃度既知であって、標準となる元素とは異なる質量の同位体で標識されたペプチドを含む標品ペプチド溶液を調製する。このような標識ペプチドは、予め同位体で標識されたアミノ酸を用いてペプチド合成することにより、同位体で標識されたアミノ酸が導入されたペプチドとして合成されてもよいし、ペプチドを化学合成した後、同位体元素を有するラベル化試薬を当該ペプチドに結合させて合成されてもよい。ラベル化試薬をペプチドに結合させて同位体標識ペプチドを合成した場合は、上記酵素処理で得られたペプチド断片にも、対応する標準となる元素を有するラベル化試薬を結合させる。同位体標識される元素としては、標準となる元素とは異なる質量を有していればよく、標準となる元素よりも重くても軽くてもよい。このような同位体としては、例えば、標準となる元素12Cの同位体である13C、14C、11C等、標準となる元素14Nの同位体である15N等、標準となる元素16Oの同位体である17O等であってよいが、ペプチド断片中に最も多く存在する元素である炭素同位体を用いることが、測定感度を良好に保つ点から好ましい。ラベル化試薬としては、例えば、サーモサイエンティフィック社製のTMT label kit等が市販されている。
【0019】
続いて、上記で得られた米タンパク質由来のペプチド断片を含む溶液と、標品ペプチド溶液とを混合して測定サンプルを調製し、液体クロマトグラフィー質量分析によりタンパク質のペプチド断片の含有量を測定する。
【0020】
液体クロマトグラフィー質量分析は、例えば、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて行うことができる。液体クロマトグラフィー質量分析法の分析条件は、例えば以下のとおりである。
カラム:InertSustain AQ-C18(φ2.1mm×150mm、ジーエルサイエンス株式会社製)
カラム温度:40℃
流速:400μl/分
注入量:5μl
溶媒:移動相A:超純水(LCMS用)+0.1%ギ酸、移動相B:100%アセトニトリル(LCMS用)+0.1%ギ酸、5%移動相B(0~2分)、5~45%移動相B(2~13分)、45~95%移動相B(13~16分)、95%移動相B(16~18分)、5%移動相B(18~20分)
【0021】
測定サンプルに含まれるペプチド断片は、上記液体クロマトグラフィー(LC)カラムにより分離され、順次オンラインで質量分析計に投入され解析される。得られたクロマトグラムにおける定量対象ペプチドと内部標準である安定同位体標識ペプチドとのピークエリア比と検量線とから、測定サンプル中の定量対象ペプチドの絶対量が測定され、さらに得られたペプチド断片の絶対量から、各ペプチド断片に対応するタンパク質の含有量が算出される。
【0022】
定量対象となるタンパク質を断片化して得られるペプチド断片の種類は、対象となるタンパク質により異なるが、通常1種のタンパク質を酵素処理することにより複数種(2種以上)のペプチド断片が得られる。ペプチド断片の含有量を更に高感度に測定し、より定量性の高いタンパク質定量を達成する観点から、特定のタンパク質の定量に際して最適なペプチド断片を選択して用いることが好ましい。ここで、最適なペプチド断片を選択する方法としては、上記で得られたクロマトグラムにおけるピーク面積値が大きく、且つピークの形状がシャープであるものを選択することが、検出感度を更に高める観点から好ましい。定量対象となるタンパク質と用いるペプチド断片との好ましい組み合わせは、以下のとおりである。
【0023】
定量対象となるタンパク質が19kDaのグロブリンである場合、19kDaのグロブリンをトリプシン消化して得られた断片の一つである配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチド断片を用いることが好ましく、定量対象となるタンパク質がグルテリンA1である場合、グルテリンA1をトリプシン消化して得られた断片の一つである配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド断片を用いることが好ましく、定量対象となるタンパク質がグルテリンA2である場合、グルテリンA2をトリプシン消化して得られた断片の一つである配列番号3のアミノ酸配列を有するペプチド断片を用いることが好ましく、定量対象となるタンパク質がグルテリンA3である場合、グルテリンA3をトリプシン消化して得られた断片の一つである配列番号4のアミノ酸配列を有するペプチド断片を用いることが好ましく、定量対象となるタンパク質がグルテリンBである場合、グルテリンBをトリプシン消化して得られた断片の一つである配列番号5のアミノ酸配列を有するペプチド断片を用いることが好ましく、定量対象となるタンパク質がグルテリンDである場合、グルテリンDをトリプシン消化して得られた断片の一つである配列番号6のアミノ酸配列を有するペプチド断片を用いることが好ましく、定量対象となるタンパク質がプロラミン13a-1である場合、プロラミン13a-1をトリプシン消化して得られた断片の一つである配列番号7のアミノ酸配列を有するペプチド断片を用いることが好ましい。
【0024】
なお、上記各配列番号のアミノ酸配列を有するペプチド断片は、当該各配列番号のアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を有していてもよいが、当該各配列番号のアミノ酸配列からなるペプチド断片であることが好ましい。
【0025】
本実施形態において用いられる米の由来は特に限定されず、任意の種類の米を用いて実施することができる。米としては、例えば、コシヒカリ、ササニシキ、ひとめぼれ、あきたこまち、つぶぞろい等が挙げられる。米の産地は特に限定されない。
【0026】
本実施形態に係る方法により米に含まれるタンパク質の含有量を測定することで、従来の方法と比較して、米に含まれる各種タンパク質の含有量をより詳細且つ網羅的に調べることができる。
【実施例0027】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
(参考例:米に含まれるタンパク質と食味・風味との相関)
米に含まれるタンパク質量と食味・旨味とが相関するか否かを調べるために、表1に示す各銘柄の米に対し、食味分析計(TM-3500、静岡製機株式会社製)を用いてタンパク質値(%)を測定した。また、表1に示す各銘柄の米を炊飯し、無作為に選出したパネルにより、官能試験を実施した。官能試験は食味・旨味について、1~7の7段階で評価した。評価結果は、数値が高い方が食味・旨味がよいことを意味する。表1に各銘柄の米のタンパク質値(%)及び官能評価値の平均値を示し、図1に米に含まれるタンパク質値(%)と米の食味・旨味の官能評価値の平均値との関係を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
米に含まれるタンパク質と米の食味・旨味との関係はこれまで、米に含まれる全体的なタンパク質量が低いと米の食味・旨味が増すと考えられてきたが、表1及び図1に示されるように、米に含まれるタンパク質量と米の食味・旨味とは必ずしも相関していないことが判明した。
【0031】
(実施例1:米に含まれる19kDaのグロブリンの含有量の測定)
<タンパク質抽出・精製>
米(コシヒカリ、ひとめぼれ、ササニシキ、あきたこまち及びつぶぞろい)を粉砕して得られた米粉50mgを2mlチューブに量り取り、1mlタンパク質抽出用バッファー(バッファー950μl(0.125M Tris、8M ウレア、4%SDS)+2-メルカプトエタノール50μl)を添加し、16時間以上室温で撹拌した。その後、16000×gで15分間(4℃)遠心し、得られた上清200μlに対してメタノールクロロホルム沈殿を行い、沈殿物を得た。
【0032】
<タンパク質の断片化(ペプチド断片の調製)>
上記で得られた沈殿物に200μlタンパク質溶解バッファー(50mM TEAB(pH8.5)、12mMデオキシコール酸ナトリウム一水和物、12mM N-ラウロイルサルコシンナトリウム)及び20μlの500mM DTT溶液を添加し、37℃で30分間インキュベートした後、遮光しながら20μmの500mM IAAを加え、30分以上室温でインキュベートし、1mlの50mM TEABを加えて希釈した。Lys-C(Lysyl Endopeptidase(1μg/μl))をタンパク質100μg当たり2μg加え、37℃で4時間インキュベートした後、トリプシン(1μg/μl)をタンパク質50μg当たり1μg等量加え、37℃で18時間以上インキュベートすることでタンパク質を断片化した。得られたペプチド断片を含む溶液に対して等量の酢酸エチルを加えた後、最終濃度0.5%となるようにTFAを加え、遠心分離(16000×g、2分間)を行い、有機層を除去して減圧乾燥させ、ペプチド断片のペレットを得た。得られたペレットをスピンカラム(Mono spin C18、ジーエルサイエンス株式会社製)で脱塩処理して減圧乾燥させ、100μlの0.2mM TEMBに再溶解させてペプチド断片を含む溶液を得た。
【0033】
<ペプチド断片のラベル化>
ペプチド断片のラベル化は、TMT label kit(サーモサイエンティフィック社製)を用いて行った。具体的には、上記で得られたペプチド断片を含む溶液100μlに対し、10μlのTMT zero reagentを加え、室温で1時間反応させた後、5%ヒドロキシルアミン(8μl)を添加して反応を停止させることでTMTラベル化したペプチド断片を含む溶液を得た。
【0034】
<標品ペプチドのラベル化>
配列番号1からなるペプチドを含む溶液(濃度5.7mg/ml)を準備し、当該溶液に安定同位体元素13Cを含むTMT lebel reagentを加えて、室温で1時間反応させた後、5%ヒドロキシルアミンを添加して反応を停止させることで安定同位体元素13Cを含むTMTでラベル化された標品ペプチドを含む溶液1を得た。
【0035】
<液体クロマトグラフィー質量分析法による19kDaのグロブリンの含有量の測定>
上記で得られたペプチド断片を含む溶液及び標品ペプチドを含む溶液1にそれぞれ0.1%ギ酸溶液を加え、ペプチド断片を含む溶液42.5μlと標品ペプチドを含む溶液7.5μlとを混合して、フィルター(Ultrafree-MC-HV Centrifugal Filters Durapore PVDF 0.45μm)によりろ過して測定サンプルを得た。
【0036】
液体クロマトグラフィー質量分析は、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて、以下の分析条件で行った。
カラム:InertSustain AQ-C18(φ2.1mm×150mm、ジーエルサイエンス株式会社製)
カラム温度:40℃
流速:400μl/分
注入量:5μl
溶媒:移動相A:超純水(LCMS用)+0.1%ギ酸、移動相B:100%アセトニトリル(LCMS用)+0.1%ギ酸、5%移動相B(0~2分)、5~45%移動相B(2~13分)、45~95%移動相B(13~16分)、95%移動相B(16~18分)、5%移動相B(18~20分)
【0037】
上記で得られた濃度既知の標品ペプチドのピーク面積値及びペプチド断片のピーク面積値からサンプルに含まれる各ペプチド断片の濃度を算出し、算出結果から対応するタンパク質(19kDaのグロブリン)の濃度を算出した。算出結果は98.7pmolであった。
【0038】
(実施例2:米に含まれるグルテリンA1の含有量の測定)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、配列番号2からなるペプチドを含む溶液(濃度1.08mg/ml)を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、標品ペプチドを含む溶液2を調製し、米に含まれるグルテリンA1の含有量を測定した。算出結果は59.9pmolであった。
【0039】
(実施例3:米に含まれるグルテリンA2の含有量の測定)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、配列番号3からなるペプチドを含む溶液(濃度5.0mg/ml)を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、標品ペプチドを含む溶液3を調製し、米に含まれるグルテリンA2の含有量を測定した。算出結果は45.3pmolであった。
【0040】
(実施例4:米に含まれるグルテリンA3の含有量の測定)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、配列番号4からなるペプチドを含む溶液(濃度5.0mg/ml)を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、標品ペプチドを含む溶液4を調製し、米に含まれるグルテリンA3の含有量を測定した。算出結果は4.9pmolであった。
【0041】
(実施例5:米に含まれるグルテリンBの含有量の測定)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、配列番号5からなるペプチドを含む溶液(濃度1mg/ml)を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、標品ペプチドを含む溶液5を準備し、米に含まれるグルテリンBの含有量を測定した。算出結果は12.4pmolであった。
【0042】
(実施例6:米に含まれるグルテリンDの含有量の測定)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、配列番号6からなるペプチドを含む溶液(濃度5.0mg/ml)を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、標品ペプチドを含む溶液6を調製し、米に含まれるグルテリンDの含有量を測定した。算出結果は12.0pmolであった。
【0043】
(実施例7:米に含まれるプロラミン13a-1の含有量の測定)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、配列番号7からなるペプチドを含む溶液(濃度5.4mg/ml)を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、標品ペプチドを含む溶液7を調製し、米に含まれるプロラミン13a-1の含有量を測定した。算出結果は73.2pmolであった。
【0044】
以下の試験例1~7においては、定量対象となるタンパク質を断片化して得られるペプチド断片の種類に応じた、ペプチド断片の含有量の測定感度を比較した。
【0045】
(試験例1:19kDaのグロブリンの各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、下記表2に示すような、19kDaのグロブリンの各種ペプチド断片に相当するペプチドをそれぞれ含む溶液を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、それぞれのペプチド断片の標品ペプチドを含む溶液を調製した。得られた各種標品ペプチドを含む溶液を、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて、上記実施例1で示した同様の測定条件により測定し、ピーク面積値及びピーク形状を比較した。下記表2に使用したペプチド断片及びピーク面積値を示す。
【0046】
【表2】
【0047】
測定感度の比較は、ピーク面積値が大きく、且つピーク形状がシャープであるものを選択することが好ましい。したがって、19kDaのグロブリンの各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較においては、ピーク面積値とピーク形状を総合的に考慮し、配列番号1のペプチドを用いることが最も好ましい。
【0048】
(試験例2:グルテリンA1の各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、下記表3に示すような、グルテリンA1の各種ペプチド断片に相当するペプチドをそれぞれ含む溶液を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、それぞれのペプチド断片の標品ペプチドを含む溶液を調製した。得られた各種標品ペプチドを含む溶液を、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて、上記実施例1で示した同様の測定条件により測定し、ピーク面積値及びピーク形状を比較した。下記表3に使用したペプチド断片及びピーク面積値を示す。
【0049】
【表3】
【0050】
測定感度の比較は、ピーク面積値が大きく、且つピーク形状がシャープであるものを選択することが好ましい。したがって、グルテリンA1の各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較においては、ピーク面積値とピーク形状を総合的に考慮し、配列番号2のペプチドを用いることが最も好ましい。
【0051】
(試験例3:グルテリンA2の各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、下記表4に示すような、グルテリンA2の各種ペプチド断片に相当するペプチドをそれぞれ含む溶液を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、それぞれのペプチド断片の標品ペプチドを含む溶液を調製した。得られた各種標品ペプチドを含む溶液を、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて、上記実施例1で示した同様の測定条件により測定し、ピーク面積値及びピーク形状を比較した。下記表4に使用したペプチド断片及びピーク面積値を示す。
【0052】
【表4】
【0053】
測定感度の比較は、ピーク面積値が大きく、且つピーク形状がシャープであるものを選択することが好ましい。したがって、グルテリンA2の各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較においては、ピーク面積値とピーク形状を総合的に考慮し、配列番号3のペプチドを用いることが最も好ましい。
【0054】
(試験例4:グルテリンA3の各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、下記表5に示すような、グルテリンA3の各種ペプチド断片に相当するペプチドをそれぞれ含む溶液を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、それぞれのペプチド断片の標品ペプチドを含む溶液を調製した。得られた各種標品ペプチドを含む溶液を、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて、上記実施例1で示した同様の測定条件により測定し、ピーク面積値及びピーク形状を比較した。下記表5に使用したペプチド断片及びピーク面積値を示す。
【0055】
【表5】
【0056】
測定感度の比較は、ピーク面積値が大きく、且つピーク形状がシャープであるものを選択することが好ましい。したがって、グルテリンA3の各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較においては、ピーク面積値とピーク形状を総合的に考慮し、配列番号4のペプチドを用いることが最も好ましい。
【0057】
(試験例5:グルテリンBの各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、下記表6に示すような、グルテリンBの各種ペプチド断片に相当するペプチドをそれぞれ含む溶液を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、それぞれのペプチド断片の標品ペプチドを含む溶液を調製した。得られた各種標品ペプチドを含む溶液を、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて、上記実施例1で示した同様の測定条件により測定し、ピーク面積値及びピーク形状を比較した。下記表6に使用したペプチド断片及びピーク面積値を示す。
【0058】
【表6】
【0059】
測定感度の比較は、ピーク面積値が大きく、且つピーク形状がシャープであるものを選択することが好ましい。したがって、グルテリンBの各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較においては、ピーク面積値とピーク形状を総合的に考慮し、配列番号5のペプチドを用いることが最も好ましい。
【0060】
(試験例6:グルテリンDの各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、下記表7に示すような、グルテリンDの各種ペプチド断片に相当するペプチドをそれぞれ含む溶液を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、それぞれのペプチド断片の標品ペプチドを含む溶液を調製した。得られた各種標品ペプチドを含む溶液を、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて、上記実施例1で示した同様の測定条件により測定し、ピーク面積値及びピーク形状を比較した。下記表7に使用したペプチド断片及びピーク面積値を示す。
【0061】
【表7】
【0062】
測定感度の比較は、ピーク面積値が大きく、且つピーク形状がシャープであるものを選択することが好ましい。したがって、グルテリンDの各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較においては、ピーク面積値とピーク形状を総合的に考慮し、配列番号6のペプチドを用いることが最も好ましい。
【0063】
(試験例7:プロラミン13a-1の各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較)
標品ペプチドのラベル化において、配列番号1からなるペプチドを含む溶液を準備する代わりに、下記表8に示すような、プロラミン13a-1の各種ペプチド断片に相当するペプチドをそれぞれ含む溶液を準備したこと以外は、上記実施例1と同様の手法により、それぞれのペプチド断片の標品ペプチドを含む溶液を調製した。得られた各種標品ペプチドを含む溶液を、液体クロマトグラフ質量分析計LC-MS9010(株式会社島津製作所製)を用いて、上記実施例1で示した同様の測定条件により測定し、ピーク面積値及びピーク形状を比較した。下記表8に使用したペプチド断片及びピーク面積値を示す。
【0064】
【表8】
【0065】
測定感度の比較は、ピーク面積値が大きく、且つピーク形状がシャープであるものを選択することが好ましい。したがって、プロラミン13a-1の各種ペプチド断片の種類による測定感度の比較においては、ピーク面積値とピーク形状を総合的に考慮し、配列番号7のペプチドを用いることが最も好ましい。
図1
【配列表】
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