(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169214
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20231121BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20231121BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231121BHJP
H01L 23/427 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28D15/02 L
F28D15/04 B
H05K7/20 Q
H01L23/46 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142567
(22)【出願日】2023-09-01
(62)【分割の表示】P 2023541845の分割
【原出願日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/036767
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/042105
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021198039
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021204523
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021208635
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022028635
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 和範
(72)【発明者】
【氏名】太田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山木 誠
(72)【発明者】
【氏名】小鶴 洋次
(72)【発明者】
【氏名】武田 利彦
(72)【発明者】
【氏名】木浦 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】寺内 崇之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直大
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、放熱効率を向上することができるベーパーチャンバおよび電子機器を提供することを目的とする。
【解決手段】ベーパーチャンバ1は、本体シート30と、本体シート30に積層された第1シート20と、を備える。本体シート30は、作動流体の蒸気が通る蒸気流路部と、蒸気流路部と連通して作動流体の液体が通る液流路部60と、を含む。蒸気流路部は、第1方向に沿って延びる蒸気通路を含む。第1シート20は、本体シート30に面する第1シート内面と、第1シート内面に設けられた第1シート溝70であって、平面視で蒸気通路と重なる位置に設けられ、第1方向と交差する方向に沿って延びる第1シート溝70と、を含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるベーパーチャンバであって、
本体シートと、
前記本体シートに積層された第1シートと、を備え、
前記本体シートは、前記作動流体の蒸気が通る蒸気流路部と、前記蒸気流路部と連通して前記作動流体の液体が通る液流路部と、を含み、
前記蒸気流路部は、第1方向に沿って延びる複数の蒸気通路を含み、
前記第1シートは、前記本体シートに面する第1シート内面と、前記第1シート内面に設けられた複数の第1シート溝と、前記第1シート内面に設けられ、互いに隣り合う前記第1シート溝を連通する複数の第1シート連絡溝と、を含み、
前記第1シート溝および前記第1シート連絡溝は、平面視で前記蒸気通路と重なる位置に設けられている、ベーパーチャンバ。
【請求項2】
前記第1シート溝は、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延び、
前記第1シート連絡溝は、前記第1方向に沿って延びている、請求項1に記載のベーパーチャンバ。
【請求項3】
複数の前記第1シート連絡溝は、前記第1方向および前記第2方向に沿って配列され、
前記第1方向において互いに隣り合う前記第1シート連絡溝は、前記第2方向において互いにずれて配置されている、請求項2に記載のベーパーチャンバ。
【請求項4】
複数の前記第1シート連絡溝は、前記第1方向および前記第2方向に沿って配列され、
前記第1方向において互いに隣り合う前記第1シート連絡溝は、前記第2方向において互いに同じ位置に配置されている、請求項2に記載のベーパーチャンバ。
【請求項5】
前記第1シート連絡溝の流路断面積は、前記第1シート溝の流路断面積と異なる、請求項1に記載のベーパーチャンバ。
【請求項6】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されたデバイスと、
前記デバイスに熱的に接触した、請求項1~5のいずれか一項に記載のベーパーチャンバと、を備えた、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベーパーチャンバおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)や発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱を伴うデバイスは、ヒートパイプ等の放熱用部材によって冷却される(例えば、特許文献1および2参照)。近年では、モバイル端末等の薄型化のために、放熱用部材の薄型化も求められており、ヒートパイプより薄型化を図ることができるベーパーチャンバの開発が進められている。ベーパーチャンバ内には、作動流体が封入されており、ベーパーチャンバは、この作動流体がデバイスの熱を吸収して内部で拡散することにより、デバイスを冷却する。
【0003】
より具体的には、ベーパーチャンバ内の作動流体は、デバイスに近接した部分(蒸発部)でデバイスから熱を受けて蒸発して蒸気(作動蒸気)になる。その作動蒸気は、蒸気流路部内で蒸発部から離れる方向に拡散して冷却され、凝縮して液体(作動液)になる。ベーパーチャンバ内には、毛細管構造(ウィック)としての液流路部が設けられており、作動液は、蒸気流路部から液流路部に入り込み、液流路部を流れて蒸発部に向かって輸送される。そして、作動液は、再び蒸発部で熱を受けて蒸発する。このようにして、作動流体が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ内を還流することにより、デバイスの熱を移動させ、放熱効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-204841号公報
【特許文献2】特許第6877513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、放熱効率を向上することができるベーパーチャンバおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の形態は、
作動流体が封入されるベーパーチャンバであって、
本体シートと、
前記本体シートに積層された第1シートと、を備え、
前記本体シートは、前記作動流体の蒸気が通る蒸気流路部と、前記蒸気流路部と連通して前記作動流体の液体が通る液流路部と、を含み、
前記蒸気流路部は、第1方向に沿って延びる蒸気通路を含み、
前記第1シートは、前記本体シートに面する第1シート内面と、前記第1シート内面に設けられた第1シート溝であって、平面視で前記蒸気通路と重なる位置に設けられ、前記第1方向と交差する方向に沿って延びる第1シート溝と、を含む、ベーパーチャンバである。
【0007】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記液流路部は、前記第1方向に沿って延びる液流路主流溝を含んでいてもよく、
前記第1シート溝の流路断面積は、前記液流路主流溝の流路断面積よりも小さくてもよい。
【0008】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記液流路部は、前記第1方向に沿って延びる液流路主流溝を含んでいてもよく、
前記第1シート溝の流路断面積は、前記液流路主流溝の流路断面積よりも大きくてもよい。
【0009】
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シート溝は、平面視で前記液流路部と重なる位置にもわたって設けられていてもよい。
【0010】
本開示の第5の態様は、上述した第4の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シート溝は、前記第1方向と交差する方向において前記蒸気通路を横断するように設けられていてもよい。
【0011】
本開示の第6の態様は、上述した第4の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シート溝は、平面視で前記蒸気通路と重なる位置に設けられた第1端部と、平面視で前記液流路部と重なる位置に設けられた第2端部と、を含んでいてもよい。
【0012】
本開示の第7の態様は、上述した第4の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シートは、複数の前記第1シート溝を含んでいてもよく、
複数の前記第1シート溝は、前記第1方向と交差する方向において前記蒸気通路を横断するように設けられた前記第1シート溝と、平面視で前記蒸気通路と重なる位置に設けられた第1端部および平面視で前記液流路部と重なる位置に設けられた第2端部を含む前記第1シート溝と、含んでいてもよい。
【0013】
本開示の第8の態様は、上述した第6の態様および上述した第7の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シート溝は、前記第2端部から前記第1端部に向かうにつれて流路断面積が小さくなるように形成されていてもよい。
【0014】
本開示の第9の態様は、上述した第6の態様および上述した第7の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シート溝は、前記第1端部から前記第2端部に向かうにつれて流路断面積が小さくなるように形成されていてもよい。
【0015】
本開示の第10の態様は、上述した第6の態様から上述した第9の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シート溝は、平面視で前記第1方向に対して傾斜するように配置されていてもよい。
【0016】
本開示の第11の態様は、上述した第6の態様から上述した第10の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シートは、複数の前記第1シート溝を含んでいてもよく、
複数の前記第1シート溝は、平面視で放射状に配置されていてもよい。
【0017】
本開示の第12の態様は、上述した第1の態様から上述した第11の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シートは、複数の前記第1シート溝と、互いに隣り合う前記第1シート溝を連通する連絡溝と、を含んでいてもよい。
【0018】
本開示の第13の態様は、上述した第1の態様から上述した第12の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記本体シートは、前記第1シート内面に面する第1本体面と、前記第1本体面とは反対側に位置する第2本体面と、を含んでいてもよく、
前記液流路部は、前記第1本体面に設けられていてもよい。
【0019】
本開示の第14の態様は、上述した第13の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記本体シートの前記第2本体面に積層された第2シートを備えていてもよく、
前記液流路部は、前記第2本体面にも設けられていてもよく、
前記第2シートは、前記第2本体面に面する第2シート内面と、前記第2シート内面に設けられた第2シート溝であって、平面視で前記蒸気通路と重なる位置に設けられ、前記第1方向と交差する方向に沿って延びる第2シート溝と、を含んでいてもよい。
【0020】
本開示の第15の態様は、上述した第1の態様から上述した第14の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シートが前記蒸気通路に向かって窪んだ窪み領域を備えていてもよく、
前記第1シート溝は、前記窪み領域に配置されていてもよい。
【0021】
本開示の第16の態様は、上述した第1の態様から上述した第15の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記本体シートは、前記液流路部が設けられた、前記第1方向に沿って延びる複数のランド部であって、前記第1方向に直交する第2方向に沿って並ぶ複数のランド部と、互いに隣り合う前記ランド部を連結する連結部と、を含んでいてもよく、
前記第1シート溝は、前記連結部に対向する位置に設けられていてもよい。
【0022】
本開示の第17の態様は、上述した第1の態様から上述した第16の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記本体シートは、前記液流路部が設けられた、前記第1方向に沿って延びる複数のランド部であって、前記第1方向に直交する第2方向に沿って並ぶ複数のランド部と、互いに隣り合う前記ランド部を連結する連結部と、を含んでいてもよく、
前記第1シート溝は、平面視で前記第1方向に沿って前記連結部に隣接する領域に設けられていてもよい。
【0023】
本開示の第18の態様は、上述した第1の態様から上述した第17の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記ベーパーチャンバが屈曲線に沿って屈曲した屈曲領域を備えていてもよく、
前記第1シート溝は、前記屈曲領域に配置されていてもよい。
【0024】
本開示の第19の態様は、
作動流体が封入されるベーパーチャンバであって、
第1本体面と、前記第1本体面とは反対側に位置する第2本体面と、を含む本体シートと、
前記本体シートの前記第1本体面に位置する第1シートと、
前記本体シートの前記第2本体面に位置する第2シートと、
前記本体シートに設けられた空間部であって、前記第1シートおよび前記第2シートで覆われる空間部と、を備え、
前記本体シートは、前記空間部内に位置する複数のランド部であって、第1方向に延びる複数のランド部を含み、
前記第2シートは、前記本体シートとは反対側に位置する第2シート外面を含み、
前記ベーパーチャンバは、平面視で前記第1方向に交差する方向に延びる屈曲線に沿って屈曲された屈曲領域を含み、
前記屈曲領域において、前記第2シート外面に第2シート外面凹部が位置している、ベーパーチャンバである。
【0025】
本開示の第20の態様は、上述した第19の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記第2シートは、前記本体シートよりも屈曲の内側に位置していてもよい。
【0026】
本開示の第21の態様は、上述した第19の態様および上述した第20の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第2シート外面凹部は、前記屈曲線に沿って延び、前記空間部を横切っていてもよい。
【0027】
本開示の第22の態様は、上述した第21の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記屈曲領域において、前記第2シート外面に複数の前記第2シート外面凹部が位置していてもよく、
複数の前記第2シート外面凹部は、前記第1方向に並んでいてもよい。
【0028】
本開示の第23の態様は、上述した第19の態様および上述した第20の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記屈曲領域において、前記第2シート外面に複数の前記第2シート外面凹部が位置していてもよく、
複数の前記第2シート外面凹部は、前記屈曲線に沿って並んでいてもよく、
複数の前記第2シート外面凹部のうちの少なくとも一部の前記第2シート外面凹部は、前記空間部に重なっていてもよい。
【0029】
本開示の第24の態様は、上述した第19の態様から上述した第23の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記屈曲線は、平面視で前記第1方向に直交する方向に延びていてもよい。
【0030】
本開示の第25の態様は、上述した第19の態様から上述した第23の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記屈曲線は、前記第1方向に傾斜する方向に延びていてもよい。
【0031】
本開示の第26の態様は、上述した第19の態様から上述した第25の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記第1シートは、前記本体シートとは反対側に位置する第1シート外面を含んでいてもよく、
前記屈曲領域において、前記第1シート外面に第1シート外面凹部が位置していてもよい。
【0032】
本開示の第27の態様は、上述した第19の態様から上述した第26の態様のそれぞれによるベーパーチャンバにおいて、
前記ランド部の前記第1本体面または前記第2本体面に、ランド凹部が位置していてもよく、
前記ランド凹部は、前記空間部に連通していなくてもよく、
前記ランド凹部は、前記第2シート外面凹部に重なっていてもよい。
【0033】
本開示の第28の態様は、上述した第27の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記ランド凹部は、前記第2シート外面凹部よりも第1方向の両側に延び出ていてもよい。
【0034】
本開示の第29の態様は、
作動流体が封入されるベーパーチャンバであって、
第1本体面と、前記第1本体面とは反対側に位置する第2本体面と、を含む本体シートと、
前記本体シートの前記第1本体面に位置する第1シートと、
前記本体シートの前記第2本体面に位置する第2シートと、
前記本体シートに設けられた空間部であって、前記第1シートおよび前記第2シートで覆われる空間部と、を備え、
前記本体シートは、前記空間部内に位置する複数のランド部であって、第1方向に延びる複数のランド部を含み、
前記第2シートは、前記本体シートとは反対側に位置する第2シート外面を含み、
前記ベーパーチャンバは、第1領域と、第2領域と、前記第1方向において前記第1領域と前記第2領域との間に位置する第3領域とに区分けされ、
前記第3領域において、前記第2シート外面に第2シート外面凹部が位置している、ベーパーチャンバである。
【0035】
本開示の第30の態様は、上述した第29の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記第2シート外面凹部は、平面視で前記第1方向に交差する方向に延び、前記空間部を横切っていてもよい。
【0036】
本開示の第31の態様は、上述した第29の態様によるベーパーチャンバにおいて、
前記第3領域において、前記第2シート外面に複数の前記第2シート外面凹部が位置していてもよく、
複数の前記第2シート外面凹部は、前記第1方向に交差する方向に並んでいてもよく、
複数の前記第2シート外面凹部のうちの少なくとも一部の前記第2シート外面凹部は、前記空間部に重なっていてもよい。
【0037】
本開示の第32の態様は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されたデバイスと、
前記デバイスと熱的に接触した、上述した第1の態様から上述した第31の態様のいずれかによるベーパーチャンバと、を備える、電子機器である。
【発明の効果】
【0038】
本開示によれば、放熱効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態による電子機器を説明する模式斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態によるベーパーチャンバを示す上面図である。
【
図10】
図10は、
図8のウィックシートと
図9の上側シートとが重なる位置における、
図2のベーパーチャンバの部分拡大上面図である。
【
図21】
図21は、第2の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図23】
図23は、第3の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図24】
図24は、第4の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図25】
図25は、第5の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図26】
図26は、第6の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図27】
図27は、第7の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図30】
図30は、第8の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図32】
図32は、第9の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図35】
図35は、第10の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大断面図である。
【
図36】
図36は、第11の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大断面図である。
【
図37】
図37は、第12の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大断面図である。
【
図38】
図38は、第13の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大上面図である。
【
図39】
図39は、第14の実施の形態によるベーパーチャンバを示す上面図である。
【
図42】
図42は、第15の実施の形態によるベーパーチャンバの一例を示す模式図である。
【
図43】
図43は、第15の実施の形態によるベーパーチャンバの他の一例を示す模式図である。
【
図44】
図44は、第15の実施の形態によるベーパーチャンバを示す外形斜視図である。
【
図64】
図64は、
図59に示すベーパーチャンバの屈曲領域の一変形例を示す概略断面図である。
【
図67】
図67は、第16の実施の形態によるベーパーチャンバを示す外形斜視図である。
【
図69】
図69は、第17の実施の形態によるベーパーチャンバを示す部分拡大断面図である。
【
図70】
図70は、
図69に示す第2シート外面凹部およびランド凹部を示す部分拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本開示の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、一部の図において示された構成等が、他の図において省略されていることもある。
【0041】
また、本明細書において、形状や幾何学的条件および物理的特性ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や、長さや角度ならびに物理的特性の値等については、厳密な意味に限定されることはなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0042】
また、図面において、明瞭にするために、同様の機能を期待し得る複数の部分の形状を、規則的に記載しているが、厳密な意味に限定されることはなく、当該機能を期待することができる範囲内で、当該部分の形状は互いに異なっていてもよい。また、図面において、部材同士の接合面等を示す境界線を、便宜上、単なる直線で示しているが、厳密な直線であることに限定されることはなく、所望の接合性能を期待することができる範囲内で、当該境界線の形状は任意である。
【0043】
(第1の実施の形態)
図1~
図12を用いて、本開示の第1の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、電子機器Eに収容された発熱体としてのデバイスD(被冷却装置)を冷却するために、電子機器Eに搭載される装置である。電子機器Eの例としては、携帯端末やタブレット端末等のモバイル端末等が挙げられる。デバイスDの例としては、モバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱を伴う電子デバイスが挙げられる。
【0044】
ここではまず、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が搭載される電子機器Eについて、タブレット端末を例にとって説明する。
図1に示すように、電子機器E(タブレット端末)は、ハウジングHと、ハウジングH内に収容されたデバイスDと、ベーパーチャンバ1と、を備えている。
図1に示す電子機器Eでは、ハウジングHの前面にタッチパネルディスプレイTDが設けられている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、デバイスDと熱的に接触するように配置されている。このことにより、電子機器Eの使用時にデバイスDで発生する熱をベーパーチャンバ1が受けることができる。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動流体2a、2bを介してベーパーチャンバ1の外部に放出される。このようにして、デバイスDは効果的に冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合、デバイスDは、中央演算処理装置等に相当する。
【0045】
次に、本実施の形態によるベーパーチャンバ1について説明する。
図2および
図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、作動流体2a、2bが封入された密封空間3を含んでいる。ベーパーチャンバ1は、作動流体2a、2bが相変化を繰り返しながら密封空間3を貫流することにより、上述した電子機器EのデバイスDを冷却するように構成されている。作動流体2a、2bの例としては、純水、エタノール、メタノール、アセトン等、およびそれらの混合液が挙げられる。
【0046】
図2および
図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、下側シート10(第2シート)と、上側シート20(第1シート)と、下側シート10と上側シート20との間に介在されたウィックシート30(本体シート)と、を備えている。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1は、下側シート10と、上側シート20と、ウィックシート30とで構成されている。本実施の形態によるベーパーチャンバ1においては、下側シート10、ウィックシート30および上側シート20が、この順番で積層されている。なお、本実施の形態においては、ウィックシート30は、1枚のシートによって構成されている例が示されているが、ウィックシート30は、2枚以上のシートで構成されていてもよく、ウィックシート30のシート枚数は任意である。
【0047】
ベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。ベーパーチャンバ1の平面形状は任意であるが、
図2に示すような矩形形状であってもよい。ベーパーチャンバ1の平面形状は、例えば、1辺が10mm以上200mm以下で他の辺が50mm以上600mm以下の長方形であってもよく、1辺が40mm以上300mm以下の正方形であってもよく、その平面寸法は任意である。本実施の形態においては、一例として、ベーパーチャンバ1の平面形状が、X方向(第1方向)を長手方向とし、X方向に直交するY方向(第2方向)を短手方向とする矩形形状である例について説明する。この場合、
図4~
図6に示すように、下側シート10、上側シート20およびウィックシート30も、ベーパーチャンバ1と同様の平面形状を有していてもよい。なお、ベーパーチャンバ1の平面形状は、矩形形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状、U字形状等、任意の形状とすることができる。
【0048】
図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、作動液2bが蒸発する蒸発領域SRと、作動蒸気2aが凝縮する凝縮領域CRと、を含んでいる。ここで、作動蒸気2aは、気体状態の作動流体、すなわち作動流体の蒸気であり、作動液2bは、液体状態の作動流体、すなわち作動流体の液体である。
【0049】
蒸発領域SRは、平面視でデバイスDと重なる領域であり、デバイスDが取り付けられる領域である。蒸発領域SRは、ベーパーチャンバ1上の任意の位置に配置することができる。図示された例においては、ベーパーチャンバ1のX方向負側(
図2における左側)に、蒸発領域SRが形成されている。蒸発領域SRにデバイスDからの熱が伝わり、この熱によって作動液2bが蒸発し、作動蒸気2aが生成される。デバイスDからの熱は、平面視でデバイスDと重なる領域だけではなく、当該領域の周辺にも伝わり得る。このため、蒸発領域SRは、平面視で、デバイスDに重なっている領域とその周辺の領域とを含む。
【0050】
ここで、平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスDから熱を受ける面および受けた熱を放出する面に直交する方向から見た状態である。本実施の形態においては、熱を受ける面は、上側シート20の後述する上側シート外面20bに相当し、熱を放出する面は、下側シート10の後述する下側シート外面10aに相当する。なお、熱を受ける面が、下側シート外面10aに相当し、熱を放出する面が、上側シート外面20bに相当してもよい。例えば、
図2に示すように、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態、または下方から見た状態が、平面視に相当する。
【0051】
凝縮領域CRは、平面視でデバイスDと重ならない領域であって、主として作動蒸気2aが熱を放出して凝縮する領域である。凝縮領域CRは、蒸発領域SRの周囲の領域と言うこともできる。図示された例においては、ベーパーチャンバ1のX方向正側(
図2における右側)に、凝縮領域CRが形成されている。凝縮領域CRにおいて作動蒸気2aからの熱が下側シート10に放出され、作動蒸気2aが冷却されて凝縮し、作動液2bが生成される。
【0052】
なお、ベーパーチャンバ1がモバイル端末内に設置される場合、モバイル端末の姿勢によっては、上下関係が崩れる場合もある。しかしながら、本実施の形態においては、便宜上、デバイスDから熱を受けるシートを上述の上側シート20と称し、受けた熱を放出するシートを上述の下側シート10と称する。このため、下側シート10が下側に配置され、上側シート20が上側に配置された状態で、以下説明する。
【0053】
図3に示すように、下側シート10は、ウィックシート30とは反対側に設けられた下側シート外面10a(第2シート外面)と、ウィックシート30に面する下側シート内面10b(第2シート内面)と、を含んでいる。この下側シート外面10aに、モバイル端末等のハウジングHの一部を構成するハウジング部材Haが取り付けられる。下側シート外面10aの全体が、ハウジング部材Haで覆われてもよい。下側シート10は、全体的に平坦状に形成されていてもよく、全体的に一定の厚さを有していてもよい。
【0054】
図4に示すように、下側シート10の四隅に、アライメント孔12が設けられていてもよい。
図4に示す例においては、アライメント孔12の平面形状は円形状であるが、これに限られることはない。アライメント孔12は、下側シート10を貫通していてもよい。
【0055】
図3に示すように、上側シート20は、ウィックシート30に面する上側シート内面20a(第1シート内面)と、上側シート内面20aとは反対側に設けられた上側シート外面20b(第1シート外面)と、を含んでいる。この上側シート外面20bに、上述のデバイスDが取り付けられる。また、
図3および
図5に示すように、上側シート20は、上側シート内面20aに設けられた上側シート溝70(第1シート溝)を含んでいる。上側シート溝70の詳細については後述する。
【0056】
図5に示すように、上側シート20の四隅に、アライメント孔22が設けられていてもよい。
図5に示す例においては、アライメント孔22の平面形状は円形状であるが、これに限られることはない。アライメント孔22は、上側シート20を貫通していてもよい。
【0057】
図3に示すように、ウィックシート30は、ウィックシート下面30a(第2本体面)と、ウィックシート下面30aとは反対側に設けられたウィックシート上面30b(第1本体面)と、を含んでいる。ウィックシート下面30aは、下側シート10の下側シート内面10bに面している。ウィックシート上面30bは、上側シート20の上側シート内面20aに面している。
【0058】
下側シート内面10bとウィックシート下面30aとは、熱圧着により互いに恒久的に接合されていてもよい。同様に、上側シート内面20aとウィックシート上面30bとは、熱圧着により互いに恒久的に接合されていてもよい。熱圧着による接合の例としては、例えば、拡散接合を挙げることができる。しかしながら、下側シート10、上側シート20およびウィックシート30は、拡散接合ではなく、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。
【0059】
なお、「恒久的に接合」という用語は、厳密な意味に限定されることはなく、ベーパーチャンバ1の動作時に、密封空間3の密封性を維持可能な程度に接合されていることを意味する用語として用いている。
【0060】
また、
図2および
図6に示すように、ウィックシート30は、枠体部32と、枠体部32内に設けられた複数のランド部33と、を含んでいる。枠体部32およびランド部33は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。
【0061】
図示された例においては、枠体部32は、平面視で矩形枠状に形成されている。この枠体部32の内側に、蒸気流路部50が設けられている。蒸気流路部50は、作動流体2a、2bを収容している。各ランド部33は、枠体部32の内側に設けられており、各ランド部33の周囲に蒸気流路部50が設けられている。このため、各ランド部33の周囲を作動蒸気2aが流れるようになっている。
【0062】
図示された例においては、各ランド部33は、平面視でX方向(
図6における左右方向)に沿って延びており、各ランド部33の平面形状は、細長の矩形形状になっている。また、各ランド部33は、X方向に直交するY方向(
図6における上下方向)に沿って並んでいる。各ランド部33は、Y方向に一定の間隔をあけて並んでいてもよい。各ランド部33の幅w1(
図7参照)は、例えば、100μm~3000μmであってもよい。ここで、ランド部33の幅w1は、Y方向におけるランド部33の寸法であって、Z方向において後述する貫通部34が存在する位置における寸法を意味している。
【0063】
ここで、X方向は、後述する蒸気流路部50の第2蒸気通路52が延びる方向として特定される。また、Y方向は、平面視でX方向に直交する方向として特定される。また、Z方向は、X方向およびY方向に直交する方向として特定され、ウィックシート30の厚さ方向に相当する。
【0064】
枠体部32および各ランド部33は、下側シート10に拡散接合されるとともに、上側シート20に拡散接合されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させている。後述する下側蒸気流路凹部53の壁面53aおよび上側蒸気流路凹部54の壁面54aは、ランド部33の側壁を構成している。ウィックシート下面30aおよびウィックシート上面30bは、枠体部32および各ランド部33にわたって、平坦状に形成されていてもよい。
【0065】
図6に示すように、ウィックシート30の四隅に、アライメント孔35が設けられていてもよい。
図6に示す例においては、アライメント孔35の平面形状は円形状であるが、これに限られることはない。アライメント孔35は、ウィックシート30を貫通していてもよい。
【0066】
また、ウィックシート30は、作動蒸気2aが通る蒸気流路部50と、蒸気流路部50と連通して作動液2bが通る液流路部60と、を含んでいる。
【0067】
蒸気流路部50は、主として、作動蒸気2aが通る流路である。蒸気流路部50に、作動液2bも通ってもよい。
図3および
図7に示すように、蒸気流路部50は、ウィックシート下面30aからウィックシート上面30bに延びて、ウィックシート30を貫通していてもよい。蒸気流路部50は、ウィックシート下面30aにおいて下側シート10で覆われていてもよく、ウィックシート上面30bにおいて上側シート20で覆われていてもよい。
【0068】
図6に示すように、蒸気流路部50は、第1蒸気通路51と複数の第2蒸気通路52とを含んでいてもよい。第1蒸気通路51は、枠体部32とランド部33との間に形成されている。第1蒸気通路51は、枠体部32の内側であってランド部33の外側に連続状に形成されている。第1蒸気通路51の平面形状は、矩形枠状になっている。第2蒸気通路52は、互いに隣り合うランド部33の間に形成されている。第2蒸気通路52は、X方向に沿って延びている。第2蒸気通路52の平面形状は、細長の矩形形状になっている。複数のランド部33によって、蒸気流路部50は、第1蒸気通路51と複数の第2蒸気通路52とに区画されている。
【0069】
なお、本実施の形態においては、蒸気流路部50が第1蒸気通路51を含んでいるが、蒸気流路部50は第1蒸気通路51を含んでいなくてもよい。すなわち、枠体部32とランド部33とが隣接するように配置され、枠体部32とランド部33との間に蒸気通路が設けられていなくてもよい。
【0070】
図3および
図7に示すように、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52は、ウィックシート下面30aからウィックシート上面30bに延びて、ウィックシート30を貫通していてもよい。第1蒸気通路51および第2蒸気通路52は、ウィックシート下面30aに設けられた下側蒸気流路凹部53と、ウィックシート上面30bに設けられた上側蒸気流路凹部54と、を含んでいる。下側蒸気流路凹部53と上側蒸気流路凹部54とが連通して、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52が、ウィックシート下面30aからウィックシート上面30bにわたって延びるように形成されている。
【0071】
下側蒸気流路凹部53は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30がウィックシート下面30aからエッチングされることによって、ウィックシート下面30aに凹状に形成されている。ここで、ウィックシート下面30aに凹状に形成されているとは、ウィックシート下面30aから凹むように形成されているということを意味している。このことにより、下側蒸気流路凹部53は、
図7に示すように、湾曲状に形成された壁面53aを有している。この壁面53aは、下側蒸気流路凹部53を画定し、
図7に示す断面において、ウィックシート上面30bに向かって進むにつれて、対向する壁面53aに近づくように湾曲している。
図3および
図7に示すように、この壁面53aには作動液2bが付着し得る。このような下側蒸気流路凹部53は、第1蒸気通路51の一部(下半分)および第2蒸気通路52の一部(下半分)を構成している。
【0072】
上側蒸気流路凹部54は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30がウィックシート上面30bからエッチングされることによって、ウィックシート上面30bに凹状に形成されている。ここで、ウィックシート上面30bに凹状に形成されているとは、ウィックシート上面30bから凹むように形成されているということを意味している。このことにより、上側蒸気流路凹部54は、
図7に示すように、湾曲状に形成された壁面54aを有している。この壁面54aは、上側蒸気流路凹部54を画定し、
図7に示す断面において、ウィックシート下面30aに向かって進むにつれて、対向する壁面54aに近づくように湾曲している。
図3および
図7に示すように、この壁面54aには作動液2bが付着し得る。このような上側蒸気流路凹部54は、第1蒸気通路51の一部(上半分)および第2蒸気通路52の一部(上半分)を構成している。
【0073】
図7に示すように、下側蒸気流路凹部53の壁面53aと、上側蒸気流路凹部54の壁面54aとが接続されて貫通部34が形成されている。図示された例においては、第1蒸気通路51における貫通部34の平面形状は、第1蒸気通路51と同様に矩形枠状になっており、第2蒸気通路52における貫通部34の平面形状は、第2蒸気通路52と同様に細長の矩形形状になっている。貫通部34は、下側蒸気流路凹部53の壁面53aと上側蒸気流路凹部54の壁面54aとが合流して内側に張り出すように形成された稜線によって画定されていてもよい。この貫通部34において、第1蒸気通路51の平面面積が最小になっていてもよく、第2蒸気通路52の平面面積が最小になっていてもよい。各蒸気通路51、52の貫通部34の幅w2(
図7参照)は、例えば、400μm~1600μmであってもよい。ここで、第1蒸気通路51の貫通部34の幅w2は、Y方向において互いに隣り合うランド部33の間のギャップに相当する。また、第2蒸気通路52の貫通部34の幅w2は、Y方向(またはX方向)における枠体部32とランド部33との間のギャップに相当する。
【0074】
Z方向(
図7における上下方向)における貫通部34の位置は、ウィックシート下面30aとウィックシート上面30bとの中間位置であってもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、中間位置よりも下側シート10に近い位置であってもよく、中間位置よりも上側シート20に近い位置であってもよい。Z方向における貫通部34の位置は任意である。
【0075】
また、図示された例においては、上述したように、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52の断面形状が、内側に張り出すように形成された稜線によって画定された貫通部34を含むように形成されているが、これに限られることはない。例えば、第1蒸気通路51の断面形状および第2蒸気通路52の断面形状は、台形形状や矩形形状であってもよく、あるいは樽形形状であってもよい。
【0076】
このように構成された第1蒸気通路51および第2蒸気通路52を含む蒸気流路部50は、上述した密封空間3の一部を構成している。
図3に示すように、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52は、主として、下側シート10と、上側シート20と、上述したウィックシート30の枠体部32およびランド部33と、によって画定されている。各蒸気通路51、52は、作動蒸気2aが通るように比較的大きな流路断面積を有している。
【0077】
ここで、
図3は、図面を明瞭にするために、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52等を拡大して示しており、これらの蒸気通路51、52等の個数や配置は、
図2、
図6~
図10等とは異なっている。
【0078】
ところで、図示しないが、蒸気流路部50内に、ランド部33を枠体部32に支持する支持部が複数設けられていてもよい。また、互いに隣り合うランド部33を連結する連結部38(
図37および
図38参照)が複数設けられていてもよい。支持部および連結部38は、蒸気流路部50を拡散する作動蒸気2aの流れを妨げないように形成されていてもよい。例えば、ウィックシート30のウィックシート下面30aおよびウィックシート上面30bのうちの一方に近い位置に配置されて、他方に近い位置には、蒸気流路凹部をなす空間が形成されてもよい。このことにより、支持部および連結部38の厚さをウィックシート30の厚さよりも薄くすることができ、第1蒸気通路51および第2蒸気通路52が、X方向およびY方向において分断されることを防止することができる。
【0079】
液流路部60は、主として、作動液2bが通る流路である。液流路部60に、作動蒸気2aも通ってもよい。
図3、
図6および
図7に示すように、液流路部60は、ウィックシート30のウィックシート上面30bに設けられていてもよい。図示された例においては、液流路部60は、各ランド部33におけるウィックシート上面30bに設けられている。液流路部60は、上述した密封空間3の一部を構成しており、蒸気流路部50と連通している。液流路部60は、作動液2bを蒸発領域SRに輸送するための毛細管構造(ウィック)として構成されている。液流路部60は、各ランド部33におけるウィックシート上面30bの全体にわたって形成されていてもよい。なお、枠体部32におけるウィックシート上面30bに、液流路部60が設けられていてもよい。
【0080】
図8に示すように、液流路部60は、ウィックシート上面30bに設けられた複数の溝で構成されていてもよい。より具体的には、液流路部60は、作動液2bが通る複数の液流路主流溝61と、液流路主流溝61に連通する複数の液流路連絡溝65と、を含んでいていてもよい。
【0081】
各液流路主流溝61は、
図8に示すように、X方向に沿って延びている。液流路主流溝61は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように小さな流路断面積を有している。液流路主流溝61の流路断面積は、蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい。液流路主流溝61は、作動蒸気2aから凝縮した作動液2bを蒸発領域SRに輸送するように構成されている。各液流路主流溝61は、Y方向に沿って並んでいてもよい。各液流路主流溝61は、一定の間隔をあけて、互いに平行に並んでいてもよい。
【0082】
液流路主流溝61は、後述するエッチング工程において、ウィックシート30がウィックシート上面30bからエッチングされることによって形成されてもよい。このことにより、液流路主流溝61は、
図7に示すように、湾曲状に形成された壁面62を有していてもよい。この壁面62は、液流路主流溝61を画定し、ウィックシート下面30aに向かって凹状に湾曲していてもよい。
【0083】
図7および
図8に示す液流路主流溝61の幅w3(Y方向における寸法)は、蒸気通路51、52の貫通部34の幅w2よりも小さく、ランド部33の幅w1よりも小さい。液流路主流溝61の幅w3は、例えば、5μm~150μmであってもよい。ここで、液流路主流溝61の幅w3は、ウィックシート上面30bにおける寸法を意味している。また、
図7に示す液流路主流溝61の深さh1(Z方向における寸法)は、例えば、3μm~150μmであってもよい。
【0084】
図8に示すように、各液流路連絡溝65は、X方向と交差する方向に沿って延びている。図示された例においては、各液流路連絡溝65は、Y方向に沿って延びており、液流路主流溝61に垂直に形成されている。いくつかの液流路連絡溝65は、互いに隣り合う液流路主流溝61を連通している。他の液流路連絡溝65は、第1蒸気通路51または第2蒸気通路52と液流路主流溝61とを連通している。すなわち、当該液流路連絡溝65は、Y方向におけるランド部33の端縁から当該端縁に隣り合う液流路主流溝61に延びている。このようにして、第1蒸気通路51と液流路主流溝61とが連通しているとともに、第2蒸気通路52と液流路主流溝61とが連通している。
【0085】
液流路連絡溝65は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように小さな流路断面積を有している。液流路連絡溝65の流路断面積は、蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい。各液流路連絡溝65は、X方向に沿って並んでいてもよい。各液流路連絡溝65は、一定の間隔をあけて、互いに平行に並んでいてもよい。
【0086】
液流路連絡溝65も、液流路主流溝61と同様に、エッチングによって形成されてもよい。このことにより、液流路連絡溝65は、液流路主流溝61と同様の湾曲状に形成された壁面(図示せず)を有していてもよい。
図8に示す液流路連絡溝65の幅w4(X方向における寸法)は、蒸気通路51、52の貫通部34の幅w2よりも小さく、ランド部33の幅w1よりも小さい。液流路連絡溝65の幅w4は、液流路主流溝61の幅w3と等しくてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、液流路連絡溝65の幅w4は、液流路主流溝61の幅w3よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。液流路連絡溝65の深さは、液流路主流溝61の深さh1と等しくてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、液流路連絡溝65の深さは、液流路主流溝61の深さh1よりも深くてもよいし、浅くてもよい。
【0087】
図8に示すように、液流路部60は、ウィックシート上面30bに設けられた液流路凸部列63を有していてもよい。液流路凸部列63は、互いに隣り合う液流路主流溝61の間に設けられている。各液流路凸部列63は、X方向に並ぶ複数の液流路凸部64を含んでいる。液流路凸部64は、上側シート内面20aに当接している。各液流路凸部64は、平面視で、X方向が長手方向となるように矩形状に形成されている。Y方向において互いに隣り合う液流路凸部64の間に、液流路主流溝61が介在されている。X方向において互いに隣り合う液流路凸部64の間に、液流路連絡溝65が介在されている。
【0088】
液流路凸部64は、後述するエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート30の材料が残る部分である。
図8に示すように、液流路凸部64の平面形状(ウィックシート上面30bの位置における形状)が、矩形形状になっていてもよい。
【0089】
図8に示すように、液流路凸部64は、千鳥状に配置されていてもよい。より具体的には、Y方向において互いに隣り合う液流路凸部列63の液流路凸部64が、X方向において互いにずれて配置されていてもよい。このずれ量は、X方向における液流路凸部64の配列ピッチの半分であってもよい。
図8に示す液流路凸部64の幅w5(Y方向における寸法)は、例えば、5μm~500μmであってもよい。ここで、液流路凸部64の幅w5は、ウィックシート上面30bにおける寸法を意味している。液流路凸部64の幅w5は、Y方向において互いに隣り合う液流路主流溝61の間のギャップに相当する。なお、液流路凸部64の配置は、千鳥状であることに限られることはなく、並列配列されていてもよい。この場合、Y方向において互いに隣り合う液流路凸部列63の液流路凸部64が、X方向においても整列される。
【0090】
また、
図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、密封空間3に作動液2bを注入するための注入部4を備えていてもよい。注入部4の位置は任意であるが、
図2に示すように、注入部4は、ベーパーチャンバ1のX方向負側(
図2における左側)の端縁に設けられていてもよい。注入部4は、ウィックシート30に形成された注入流路37を有していてもよい。作動液2bが注入された後、注入流路37は封止されてもよい。
【0091】
下側シート10、上側シート20およびウィックシート30を構成する材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはない。下側シート10、上側シート20およびウィックシート30は、例えば、銅または銅合金を含んでいてもよい。この場合、各シート10、20、30の熱伝導率を高めることができ、ベーパーチャンバ1の放熱効率を高めることができる。また、作動流体2a、2bとして純水を使用する場合には、腐食を防止することができる。なお、所望の放熱効率を得るとともに腐食を防止することができれば、これらのシート10、20、30に、アルミニウムやチタン等の他の金属材料や、ステンレス等の他の金属合金材料を用いてもよい。
【0092】
図3に示すベーパーチャンバ1の厚さt1は、例えば、100μm~1000μmであってもよい。ベーパーチャンバ1の厚さt1を100μm以上にすることにより、蒸気流路部50を適切に確保することができ、ベーパーチャンバ1を適切に機能させることができる。一方、厚さt1を1000μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1が厚くなることを抑制することができる。
【0093】
図3に示す下側シート10の厚さt2は、例えば、6μm~100μmであってもよい。下側シート10の厚さt2を6μm以上にすることにより、下側シート10の機械的強度を確保することができる。一方、下側シート10の厚さt2を100μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1が厚くなることを抑制することができる。同様に、
図3に示す上側シート20の厚さt3は、下側シート10の厚さt2と同様に設定されていてもよい。上側シート20の厚さt3と下側シート10の厚さt2は、互いに異なっていてもよい。
【0094】
図3に示すウィックシート30の厚さt4は、例えば、50μm~400μmであってもよい。ウィックシート30の厚さt4を50μm以上にすることにより、蒸気流路部50を適切に確保することができ、ベーパーチャンバ1を適切に機能させることができる。一方、400μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ1が厚くなることを抑制することができる。
【0095】
上述したように、本実施の形態によるベーパーチャンバ1の上側シート20は、上側シート内面20aに設けられた上側シート溝70を含んでいる。
図5、
図9および
図10に示すように、上側シート20は、複数の上側シート溝70を含んでいてもよい。
【0096】
図10は、ウィックシート30と上側シート20とが重なった状態を示す部分拡大上面図である。
図10に示すように、上側シート溝70は、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられている。図示された例においては、上側シート溝70は、平面視で第2蒸気通路52と重なる位置に設けられており、上側シート溝70の全体が、平面視で第2蒸気通路52と重なっている。上側シート溝70は、平面視で互いに隣り合うランド部33の間に設けられていると言うこともできる。上側シート溝70は、平面視で第1蒸気通路51と重なる位置に設けられていてもよい。この場合、上側シート溝70は、平面視で第1蒸気通路51のうちX方向に延びる部分と重なる位置に設けられていてもよい。
【0097】
図9および
図10に示すように、上側シート溝70は、X方向と交差する方向に沿って延びている。図示された例においては、上側シート溝70は、X方向に直交するY方向に沿って延びている。上側シート溝70の平面形状は、細長の矩形形状になっている。上側シート溝70は、Y方向における両端部に設けられた第1端部71および第2端部72を含んでいる。第1端部71は、上側シート溝70のY方向正側(
図9および
図10における上側)の端部を構成しており、第2端部72は、上側シート溝70のY方向負側(
図9および
図10における下側)の端部を構成している。図示された例においては、第1端部71および第2端部72のいずれもが、平面視で第2蒸気通路52と重なる位置に設けられている。
【0098】
図9および
図10に示すように、各上側シート溝70は、X方向に沿って並んでいてもよい。各上側シート溝70は、一定の間隔をあけて、互いに平行に並んでいてもよい。
【0099】
上側シート溝70は、上側シート20が上側シート内面20aからエッチングされることによって形成されてもよい。このことにより、上側シート溝70は、
図11に示すように、湾曲状に形成された壁面73を有していてもよい。この壁面73は、上側シート溝70を画定し、上側シート内面20aから上側シート外面20bに向かって凹状に湾曲していてもよい。
図11に示す例においては、上側シート溝70の断面形状は、半円形状である。
【0100】
上側シート溝70は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように小さな流路断面積を有している。上側シート溝70は、蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい流路断面積を有する溝である。上側シート溝70は、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を促進する。上側シート溝70の流路断面積は、液流路主流溝61の流路断面積と等しくてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、上側シート溝70の流路断面積は、液流路主流溝61の流路断面積よりも小さくてもよい。この場合、上側シート溝70の毛細管作用によって、作動液2bに液流路部60から上側シート溝70に向かう推進力を与え、液流路部60内の作動液2bを上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができる。また、上側シート溝70の流路断面積は、液流路主流溝61の流路断面積よりも大きくてもよい。この場合、上側シート溝70の毛細管作用によって、作動液2bに上側シート溝70から液流路部60に向かう推進力を与え、蒸気通路51、52内の作動液2bを上側シート溝70を通って液流路部60に速やかに移動させることができる。
【0101】
図9に示す上側シート溝70の長さL1(Y方向における寸法)は、液流路主流溝61の幅w3(
図7参照)よりも大きくてもよく、液流路凸部64の幅w5(
図8参照)よりも大きくてもよい。上側シート溝70が蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい流路断面積を有する溝であれば、上側シート溝70の長さL1は、後述する上側シート溝70の幅w6よりも大きくてもよい。上側シート溝70の長さL1は、例えば、5μmよりも大きくてもよい。
【0102】
図9および
図11に示す上側シート溝70の幅w6(X方向における寸法)は、液流路主流溝61の幅w3(
図7参照)と等しくてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、上側シート溝70の幅w6は、液流路主流溝61の幅w3よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。上側シート溝70の幅w6(X方向における寸法)は、例えば、5μm~150μmであってもよい。ここで、上側シート溝70の幅w6は、上側シート内面20aにおける寸法を意味している。
【0103】
図11に示す上側シート溝70の深さh2(Z方向における寸法)は、液流路主流溝61の深さh1(
図7参照)と等しくてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、上側シート溝70の深さh2は、液流路主流溝61の深さh1よりも深くてもよいし、浅くてもよい。上側シート溝70の深さh2は、例えば、3μm~150μmであってもよい。
【0104】
図11に示すX方向において互いに隣り合う上側シート溝70の間のギャップw7は、Y方向において互いに隣り合う液流路主流溝61の間のギャップ、すなわち液流路凸部64の幅w5(
図8参照)と等しくてもよい、あるいは液流路凸部64の幅w5よりも小さくてもよい。この場合、より多くの上側シート溝70を配置することができ、蒸気通路51、52と液流路部60との間で十分な量の作動液2bを往来させることができる。しかしながら、このことに限られることはなく、X方向において互いに隣り合う上側シート溝70の間のギャップw7は、液流路凸部64の幅w5よりも大きくてもよい。X方向において互いに隣り合う上側シート溝70の間のギャップw7は、例えば、3μm~500μmであってもよい。
【0105】
なお、本実施の形態においては、上側シート溝70の平面形状が細長の矩形形状になっており、上側シート溝70の断面形状が半円形状になっているが、これに限られることはなく、上側シート溝70の形状は任意である。
【0106】
また、本実施の形態においては、上側シート溝70は、平面視で第2蒸気通路52と重なる領域の全体にわたって設けられているが、これに限られることはなく、上側シート溝70は、平面視で蒸気通路51、52と重なる領域のうちの一部の領域にのみ設けられていてもよい。例えば、上側シート溝70は、蒸発領域SRにのみ配置されていてもよい。また例えば、上側シート溝70は、凝縮領域CRにのみ配置されていてもよい。
【0107】
次に、このような構成からなるベーパーチャンバ1の製造方法について説明する。
【0108】
まず、シート準備工程として、各シート10、20、30を準備する。シート準備工程は、下側シート10を準備する下側シート準備工程と、上側シート20を準備する上側シート準備工程と、ウィックシート30を準備するウィックシート準備工程と、を含んでいる。
【0109】
下側シート準備工程においては、まず、所望の厚さを有する下側シート母材を準備する。下側シート母材は、圧延材であってもよい。続いて、下側シート母材をエッチングすることにより、所望の平面形状を有する下側シート10を形成する。あるいは、下側シート母材をプレス加工することにより、所望の平面形状を有する下側シート10を形成してもよい。このようにして、
図4に示すような下側シート10を準備することができる。
【0110】
上側シート準備工程においても、下側シート準備工程と同様に、まず、所望の厚さを有する上側シート母材を準備する。上側シート母材は、圧延材であってもよい。続いて、上側シート母材をエッチングすることにより、所望の平面形状を有する上側シート20を形成する。このエッチングにより、上側シート20に上述した上側シート溝70が形成される。あるいは、上側シート母材をプレス加工することにより、所望の平面形状を有する上側シート20を形成してもよい。また、上側シート母材を切削加工することにより、上側シート溝70を形成してもよい。このようにして、
図5に示すような上側シート20を準備することができる。
【0111】
ウィックシート準備工程は、金属材料シートを準備する材料シート準備工程と、金属材料シートをエッチングするエッチング工程と、を含んでいてもよい。まず、材料シート準備工程において、所望の厚さを有する平板状の金属材料シートを準備する。金属材料シートは、圧延材であってもよい。続いて、エッチング工程において、金属材料シートを、第1材料面よび第2材料面からエッチングして、所望の平面形状ならびに蒸気流路部50および液流路部60を有するウィックシート30を形成する。このようにして、
図6に示すようなウィックシート30を準備することができる。
【0112】
ここで、エッチング工程において、金属材料シートの第1材料面および第2材料面を同時にエッチングしてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、第1材料面と第2材料面のエッチングは別々の工程として行われてもよい。また、蒸気流路部50および液流路部60は同時にエッチングされて形成されてもよいが、別々の工程でエッチングされて形成されてもよい。エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いてもよい。
【0113】
シート準備工程の後、接合工程として、下側シート10、上側シート20およびウィックシート30を接合する。まず、下側シート10、ウィックシート30および上側シート20をこの順番で積層する。この際、下側シート10のアライメント孔12と、ウィックシート30のアライメント孔35と、上側シート20のアライメント孔22とを用いて、各シート10、20、30を位置合わせしてもよい。続いて、下側シート10、ウィックシート30および上側シート20を仮止めする。例えば、各シート10、20、30をスポット溶接またはレーザ溶接で仮止めしてもよい。次に、下側シート10と、ウィックシート30と、上側シート20とを、熱圧着によって恒久的に接合する。例えば、各シート10、20、30を拡散接合によって接合してもよい。
【0114】
接合工程の後、注入工程として、注入部4の注入流路37から密封空間3に作動液2bを注入する。
【0115】
注入工程の後、封止工程として、注入流路37を封止する。このことにより、密封空間3と外部との連通が遮断され、密封空間3が密封される。このため、作動液2bが封入された密封空間3を得ることができ、密封空間3内の作動液2bが外部に漏洩することを防止することができる。
【0116】
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1を得ることができる。
【0117】
次に、ベーパーチャンバ1の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
【0118】
上述のようにして得られたベーパーチャンバ1は、モバイル端末等のハウジングH内に設置される。そして、上側シート20の上側シート外面20bに、被冷却装置であるCPU等のデバイスDが取り付けられる(あるいは、デバイスDにベーパーチャンバ1が取り付けられる)。密封空間3内の作動液2bは、その表面張力によって、密封空間3の壁面、すなわち、下側蒸気流路凹部53の壁面53a、上側蒸気流路凹部54の壁面54a、液流路部60の液流路主流溝61の壁面62および液流路連絡溝65の壁面に付着する。また、作動液2bは、下側シート10の下側シート内面10bのうち下側蒸気流路凹部53に露出した部分にも付着し得る。さらに、作動液2bは、上側シート20の上側シート内面20aのうち上側蒸気流路凹部54、液流路主流溝61および液流路連絡溝65に露出した部分にも付着し得る。
【0119】
この状態でデバイスDが発熱すると、蒸発領域SR(
図6参照)に存在する作動液2bが、デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2bが蒸発(気化)し、作動蒸気2aが生成される。生成された作動蒸気2aは、密封空間3を構成する第1蒸気通路51および第2蒸気通路52内で拡散する。より具体的には、主として、第1蒸気通路51のうちX方向に延びる部分と、第2蒸気通路52とにおいて、作動蒸気2aがX方向に拡散する(
図6の実線矢印参照)。
【0120】
そして、各蒸気通路51、52内の作動蒸気2aは、蒸発領域SRから離れ、比較的温度の低い凝縮領域CR(
図6における右側の部分)に輸送される。凝縮領域CRにおいて、作動蒸気2aは、主として下側シート10に放熱して冷却される。下側シート10が作動蒸気2aから受けた熱は、ハウジング部材Ha(
図3参照)を介して外気に伝達される。
【0121】
作動蒸気2aは、凝縮領域CRにおいて下側シート10に放熱することにより、蒸発領域SRにおいて吸収した潜熱を失う。このことにより、作動蒸気2aは凝縮し、作動液2bが生成される。生成された作動液2bは、各蒸気流路凹部53、54の壁面53a、54aおよび下側シート10の下側シート内面10bおよび上側シート20の上側シート内面20aに付着する。ここで、蒸発領域SRでは作動液2bが蒸発し続けている。このため、液流路部60のうち蒸発領域SR以外の領域(すなわち、凝縮領域CR)に存在する作動液2bは、各液流路主流溝61の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かって輸送される(
図6の破線矢印参照)。このことにより、各壁面53a、54a、下側シート内面10bおよび上側シート内面20aに付着した作動液2bは、液流路部60に移動し、液流路連絡溝65を通過して液流路主流溝61に入り込む。このようにして、各液流路主流溝61および各液流路連絡溝65に、作動液2bが充填される。充填された作動液2bは、各液流路主流溝61の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かう推進力を得て、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
【0122】
液流路部60においては、各液流路主流溝61が、対応する液流路連絡溝65を介して、隣り合う他の液流路主流溝61と連通している。このことにより、互いに隣り合う液流路主流溝61の間で、作動液2bが往来し、液流路主流溝61でドライアウトが発生することが抑制される。このため、各液流路主流溝61内の作動液2bに毛細管作用が付与されて、作動液2bは、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
【0123】
蒸発領域SRに達した作動液2bは、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。作動液2bから蒸発した作動蒸気2aは、蒸発領域SR内の液流路連絡溝65を通って、流路断面積が大きい下側蒸気流路凹部53および上側蒸気流路凹部54に移動する。そして、作動蒸気2aは、各蒸気流路凹部53、54内で拡散する。このようにして、作動流体2a、2bが、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながら密封空間3内を還流する。このことにより、デバイスDの熱が拡散されて、放出される。この結果、デバイスDが冷却される。
【0124】
ここで、本実施の形態においては、上側シート20の上側シート内面20aに、上側シート溝70が設けられている。上側シート溝70は、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられ、X方向と交差する方向に沿って延びている。このことにより、凝縮領域CRにおいて、作動液2bは、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52から液流路部60にスムースに移動することができ、液流路主流溝61にスムースに入り込むことができる。また、蒸発領域SRにおいて、作動液2bは、上側シート溝70を通って液流路部60から蒸気通路51、52に移動することができる。このため、蒸気通路51、52に移動した作動液2bによって、デバイスDの熱を効果的に吸収し、デバイスDを効果的に冷却することができる。
【0125】
このように本実施の形態によれば、上側シート20は、上側シート内面20aに設けられた上側シート溝70であって、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられ、X方向と交差する方向に沿って延びる上側シート溝70を含んでいる。このことにより、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を促進することができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1の放熱効率を向上させることができる。
【0126】
また、本実施の形態において、上側シート溝70の流路断面積は、液流路主流溝61の流路断面積よりも小さくてもよい。このことにより、上側シート溝70の毛細管作用によって、作動液2bに液流路部60から上側シート溝70に向かう推進力を与え、液流路部60内の作動液2bを上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができる。このため、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、蒸発領域SRにおける作動液2bの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0127】
また、本実施の形態において、上側シート溝70の流路断面積は、液流路主流溝61の流路断面積よりも大きくてもよい。このことにより、上側シート溝70の毛細管作用によって、作動液2bに上側シート溝70から液流路部60に向かう推進力を与え、蒸気通路51、52内の作動液2bを上側シート溝70を通って液流路部60に速やかに移動させることができる。このため、このような上側シート溝70を凝縮領域CRに配置した場合、凝縮領域CRにおける作動液2bの蒸気通路51、52から液流路部60への移動を効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0128】
また、本実施の形態によれば、液流路部60は、ウィックシート上面30bに設けられている。上述したように、上側シート溝70は、ウィックシート上面30bに面する上側シート内面20aに設けられている。このことにより、上側シート溝70を流れた作動液2bは、蒸気通路51、52または液流路部60にスムースに移動することができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0129】
なお、上述した本実施の形態においては、液流路部60が、ウィックシート上面30bに設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、
図12に示すように、液流路部60は、ウィックシート下面30aに設けられていてもよい。
【0130】
このような場合であっても、作動液2bは、液流路部60から下側蒸気流路凹部53の壁面53aおよび上側蒸気流路凹部54の壁面54aを伝って上側シート溝70を流れ、蒸気通路51、52に移動することができる。また、作動液2bは、蒸気通路51、52から上側シート溝70を流れ、下側蒸気流路凹部53の壁面53aおよび上側蒸気流路凹部54の壁面54aを伝って、液流路部60に移動することができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を促進することができる。
【0131】
また、上述した本実施の形態において、
図13に示すように、上側シート溝70は、液流路部60の最も蒸気通路51、52の側に位置する液流路連絡溝65に対応する位置に配置されていてもよい。すなわち、
図13に示すように、上側シート溝70は、X方向において液流路部60の最も蒸気通路51、52の側に位置する液流路連絡溝65と同じ位置で、Y方向において第1端部71又は第2端部72が当該液流路連絡溝65と向き合うように、配置されていてもよい。また、
図13に示すように、上側シート溝70は、X方向において、当該位置以外の位置には配置されていなくてもよい。この場合、上側シート溝70の個数を削減することで、上側シート20の機械的強度の低下を抑制しつつ、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を効果的に促進することができる。
【0132】
また、上述した本実施の形態においては、上側シート溝70の平面形状が、細長の矩形形状である例について説明した(
図9参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、
図14に示すように、上側シート溝70の平面形状は、Y方向に延び、Y方向における両端部(第1端部71および第2端部72)が丸みを帯びた細長の形状であってもよい。また例えば、
図15に示すように、上側シート溝70の平面形状は、Y方向に延びた細長の楕円形状であってもよい。また例えば、
図16に示すように、上側シート溝70の平面形状は、複数の円がY方向に部分的に重なって連なった数珠状の形状であってもよい。このように、上側シート溝70の平面形状は任意である。
【0133】
また、上述した本実施の形態においては、上側シート溝70の断面形状が、半円形状である例について説明した(
図11参照)。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、
図17に示すように、上側シート溝70の断面形状は、三角形状であってもよい。また例えば、
図18に示すように、上側シート溝70の断面形状は、矩形形状であってもよい。また例えば、
図19に示すように、上側シート溝70の断面形状は、台形形状であってもよい。また例えば、
図20に示すように、上側シート溝70の断面形状は、内側に開口部よりも広い幅を有する部分円形状であってもよい。このように、上側シート溝70の断面形状は、蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい流路断面積を有していれば、任意である。
【0134】
(第2の実施の形態)
次に、
図21および
図22を用いて、本開示の第2の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0135】
図21および
図22に示す第2の実施の形態においては、第1シート溝が、平面視で液流路部と重なる位置にもわたって設けられており、第1方向と交差する方向において蒸気通路を横断するように設けられている点が主に異なり、他の構成は、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図21および
図22において、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0136】
本実施の形態においては、
図21に示すように、上側シート溝70は、平面視で液流路部60と重なる位置にもわたって設けられている。すなわち、上側シート溝70は、平面視でランド部33とも重なっている。
図21に示すように、上側シート溝70は、平面視で液流路主流溝61と重なっていてもよい。
【0137】
また、本実施の形態においては、上側シート溝70は、X方向と交差する方向において蒸気通路51、52を横断するように設けられている。
図21に示す例においては、上側シート溝70は、Y方向において第2蒸気通路52を横断するように設けられている。上側シート溝70の第1端部71および第2端部72は、平面視でランド部33と重なる位置に設けられている。より具体的には、第1端部71は、平面視で一のランド部33と重なる位置に設けられており、第2端部72は、平面視で当該一のランド部33と隣り合う他のランド部33と重なる位置に設けられている。
【0138】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、平面視で液流路部60と重なる位置にもわたって設けられている。このことにより、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を効果的に促進することができる。このため、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、蒸発領域SRにおける作動液2bの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。また、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。さらに、上側シート溝70の流路断面積が液流路主流溝61の流路断面積よりも大きい場合、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動をより一層効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0139】
また、本実施の形態によれば、上側シート溝70は、第1方向と交差する方向において蒸気通路51、52を横断するように設けられている。このことにより、例えば、互いに隣り合うランド部33に設けられた各液流路部60に移動する作動液2bの量を均一化することができる。このため、特定の液流路部60に多くの作動液2bが偏在することを抑制することができる。この結果、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0140】
なお、上述した本実施の形態においては、上側シート溝70の第1端部71および第2端部72が、平面視でランド部33と重なる位置に設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、
図22に示すように、上側シート溝70は、X方向と交差する方向においてランド部33を横断するように設けられていてもよい。
図22に示す例においては、上側シート溝70は、平面視で蒸気通路51、52およびランド部33を横断するように、Y方向に沿って直線状に延びている。
【0141】
このような場合であっても、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を効果的に促進することができる。このため、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、蒸発領域SRにおける作動液2bの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。また、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。さらに、上側シート溝70の流路断面積が液流路主流溝61の流路断面積よりも大きい場合、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動をより一層効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。また、各液流路部60に移動する作動液2bの量を均一化し、特定の液流路部60に多くの作動液2bが偏在することを抑制することができる。このため、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0142】
(第3の実施の形態)
次に、
図23を用いて、本開示の第3の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0143】
図23に示す第3の実施の形態においては、第1シート溝が、平面視で蒸気通路と重なる位置に設けられた第1端部と、平面視で液流路部と重なる位置に設けられた第2端部と、を含む点が主に異なり、他の構成は、
図21および
図22に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、
図23において、
図21および
図22に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0144】
本実施の形態においては、
図23に示すように、上側シート溝70は、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられた第1端部71と、平面視で液流路部60と重なる位置に設けられた第2端部72と、を含んでいる。ここで、第1端部71は、X方向に交差する方向における両端部のうち、平面視で蒸気通路51、52と重なる側の端部として定義され、第2端部72は、X方向に交差する方向における両端部のうち、平面視で液流路部60と重なる側の端部として定義されている。
図23に示す例においては、第1端部71は、平面視で第2蒸気通路52と重なっており、第2端部72は、平面視で液流路主流溝61と重なっている。
【0145】
また、
図23に示すように、上側シート溝70は、平面視でランド部33のY方向正側の端縁と重なる位置と、平面視でランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置とに、それぞれ設けられていてもよい。平面視でランド部33のY方向正側の端縁と重なる位置において、各上側シート溝70は、X方向に沿って並んでいてもよい。また、平面視でランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置においても、各上側シート溝70は、X方向に沿って並んでいてもよい。
【0146】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられた第1端部71と、平面視で液流路部60と重なる位置に設けられた第2端部72と、を含んでいる。このことにより、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を効果的に促進することができる。このため、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、蒸発領域SRにおける作動液2bの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。また、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。さらに、上側シート溝70の流路断面積が液流路主流溝61の流路断面積よりも大きい場合、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動をより一層効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0147】
(第4の実施の形態)
次に、
図24を用いて、本開示の第4の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0148】
図24に示す第4の実施の形態においては、複数の第1シート溝が、第1方向と交差する方向において蒸気通路を横断するように設けられた第1シート溝と、平面視で蒸気通路と重なる位置に設けられた第1端部および平面視で液流路部と重なる位置に設けられた第2端部を含む第1シート溝と、含む点が主に異なり、他の構成は、
図21に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、
図24において、
図21に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0149】
本実施の形態においては、
図24に示すように、複数の上側シート溝70、70’は、X方向と交差する方向において蒸気通路51、52を横断するように設けられた上側シート溝70と、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられた第1端部71’および平面視で液流路部60と重なる位置に設けられた第2端部72’を含む上側シート溝70’と、を含んでいる。
【0150】
図24に示す例においては、上側シート溝70は、Y方向において第2蒸気通路52を横断するように設けられている。上側シート溝70の第1端部71および第2端部72は、平面視でランド部33と重なる位置に設けられている。より具体的には、第1端部71は、平面視で一のランド部33と重なる位置に設けられており、第2端部72は、平面視で当該一のランド部33と隣り合う他のランド部33と重なる位置に設けられている。
【0151】
また、
図24に示す例においては、上側シート溝70’の第1端部71’は、平面視で第2蒸気通路52と重なっており、上側シート溝70’の第2端部72’は、平面視で液流路主流溝61と重なっている。
【0152】
図24に示すように、上側シート溝70’は、平面視で一のランド部33(例えば、
図24における中央部に配置されたランド部33)のY方向正側の端縁と重なる位置と、平面視で当該一のランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置とに、それぞれ設けられていてもよい。平面視で当該一のランド部33のY方向正側の端縁と重なる位置において、上側シート溝70と上側シート溝70’とが、X方向において交互に並んでいてもよい。また、平面視で当該一のランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置においても、上側シート溝70と上側シート溝70’とが、X方向において交互に並んでいてもよい。
【0153】
一方、
図24に示すように、上側シート溝70’は、平面視で当該一のランド部33と隣り合う他のランド部33(例えば、
図24における下側および上側に配置されたランド部33)のY方向正側の端縁と重なる位置と、平面視で当該他のランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置とには、設けられていなくてもよい。平面視で当該他のランド部33のY方向正側の端縁と重なる位置においては、各上側シート溝70が、X方向に沿って並んでいてもよい。また、平面視で当該他のランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置においても、各上側シート溝70が、X方向において交互に並んでいてもよい。
【0154】
このように本実施の形態によれば、複数の上側シート溝70、70’は、X方向と交差する方向において蒸気通路51、52を横断するように設けられた上側シート溝70と、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられた第1端部71’および平面視で液流路部60と重なる位置に設けられた第2端部72’を含む上側シート溝70’と、を含んでいる。このことにより、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を効果的に促進することができる。このため、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、蒸発領域SRにおける作動液2bの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。また、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。さらに、上側シート溝70の流路断面積が液流路主流溝61の流路断面積よりも大きい場合、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動をより一層効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0155】
とりわけ、本実施の形態によれば、蒸気通路51、52と一のランド部33に設けられた液流路部60との間での作動液2bの往来を促進することができる。このことにより、各液流路部60間で作動液2bを偏在させることができる。このため、例えば、他の液流路部60よりも作動液2bの輸送能力が高い特定の液流路部60に多くの作動液2bを移動させることができる。この結果、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0156】
(第5の実施の形態)
次に、
図25を用いて、本開示の第5の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0157】
図25に示す第5の実施の形態においては、第1シート溝が、第2端部から第1端部に向かうにつれて流路断面積が小さくなるように形成されている点が主に異なり、他の構成は、
図23に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、
図25において、
図23に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0158】
本実施の形態においては、
図25に示すように、上側シート溝70は、第2端部72から第1端部71に向かうにつれて流路断面積が小さくなるように形成されている。すなわち、上側シート溝70は、第2端部72から第1端部71に向かって先細になるように形成されている。例えば、上側シート溝70は、第2端部72から第1端部71に向かうにつれて上側シート溝70の幅w6が小さくなるように形成されていてもよい。また、上側シート溝70は、第2端部72から第1端部71に向かうにつれて上側シート溝70の深さh2が浅くなるように形成されていてもよい。
【0159】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、第2端部72から第1端部71に向かうにつれて流路断面積が小さくなるように形成されている。このことにより、上側シート溝70の毛細管作用によって、作動液2bに液流路部60から上側シート溝70に向かう推進力を与え、液流路部60内の作動液2bを上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができる。このため、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、蒸発領域SRにおける作動液2bの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。また、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。さらに、上側シート溝70の流路断面積が液流路主流溝61の流路断面積よりも大きい場合、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動をより一層効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0160】
(第6の実施の形態)
次に、
図26を用いて、本開示の第6の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0161】
図26に示す第6の実施の形態においては、第1シート溝が、第1端部から第2端部に向かうにつれて流路断面積が小さくなるように形成されている点が主に異なり、他の構成は、
図23に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、
図26において、
図23に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0162】
本実施の形態においては、
図26に示すように、上側シート溝70は、第1端部71から第2端部72に向かうにつれて流路断面積が小さくなるように形成されている。すなわち、上側シート溝70は、第1端部71から第2端部72に向かって先細になるように形成されている。例えば、上側シート溝70は、第1端部71から第2端部72に向かうにつれて上側シート溝70の幅w6が小さくなるように形成されていてもよい。また、上側シート溝70は、第1端部71から第2端部72に向かうにつれて上側シート溝70の深さh2が浅くなるように形成されていてもよい。
【0163】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、第1端部71から第2端部72に向かうにつれて流路断面積が小さくなるように形成されている。このことにより、上側シート溝70の毛細管作用によって、作動液2bに上側シート溝70から液流路部60に向かう推進力を与え、蒸気通路51、52内の作動液2bを上側シート溝70を通って液流路部60に速やかに移動させることができる。このため、このような上側シート溝70を凝縮領域CRに配置した場合、凝縮領域CRにおける作動液2bの蒸気通路51、52から液流路部60への移動を効果的に促進することができる。また、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。さらに、上側シート溝70の流路断面積が液流路主流溝61の流路断面積よりも大きい場合、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動をより一層効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0164】
(第7の実施の形態)
次に、
図27~
図29を用いて、本開示の第7の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0165】
図27~
図29に示す第7の実施の形態においては、第1シート溝が、平面視で第1方向に対して傾斜するように配置されている点が主に異なり、他の構成は、
図23に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、
図27~
図29において、
図23に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0166】
本実施の形態においては、
図27に示すように、上側シート溝70は、平面視でX方向に対して傾斜するように配置されている。上側シート溝70の傾斜角度は、0度よりも大きく90度よりも小さい任意の角度とすることができる。上側シート溝70は、平面視でY方向に対して傾斜していると言うこともできる。
【0167】
図27に示す例においては、平面視でランド部33のY方向正側の端縁と重なる位置において、各上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向正側かつY方向正側に位置するように傾斜している。また、当該平面視でランド部33のY方向正側の端縁と重なる位置において、各上側シート溝70は、互いに平行になるようにX方向に沿って並んでいる。
図27に示す例においては、4個の上側シート溝70が並んでいる。
【0168】
一方、平面視でランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置においては、各上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向正側かつY方向負側に位置するように傾斜している。また、当該平面視でランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置において、各上側シート溝70は、互いに平行になるようにX方向に沿って並んでいる。
図27に示す例においては、4個の上側シート溝70が並んでいる。
【0169】
各上側シート溝70は、ベーパーチャンバ1の端部(例えば、ベーパーチャンバ1のX方向負側の端部)に近い位置に配置されていてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、各上側シート溝70は、ベーパーチャンバ1の任意の位置に配置されていてもよい。
【0170】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、平面視でX方向に対して傾斜するように配置されている。このことにより、例えば、蒸気通路51、52内の作動液2bを、凝縮領域CR内の液流路部60に集中させるように移動させることができる。とりわけ、液流路部60がベーパーチャンバ1の端部に近い位置に配置されている場合であっても、当該液流路部60に十分な量の作動液2bを移動させることができる。また、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。とりわけ、上側シート溝70が、第1端部71が凝縮領域CRの側を向くように傾斜している場合、作動蒸気2aの流れを凝縮領域CRに向けることができ、作動蒸気2aを速やかに凝縮領域CRへ輸送することができる。このため、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を促進することができる。
【0171】
なお、上述した本実施の形態においては、平面視でランド部33の端縁と重なる位置において、各上側シート溝70が、互いに平行になるようにX方向に沿って並んでいる例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、
図28および
図29に示すように、各上側シート溝70は、互いに平行でなくてもよい。
【0172】
図28に示す例においては、平面視でランド部33のY方向正側の端縁と重なる位置に、6個の上側シート溝70がX方向に沿って並んでいる。これらの上側シート溝70のうちX方向負側に位置する3個の上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向負側かつY方向正側に位置するように傾斜している。また、X方向正側に位置する3個の上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向正側かつY方向正側に位置するように傾斜している。
【0173】
一方、平面視でランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置にも、6個の上側シート溝70がX方向に沿って並んでいる。これらの上側シート溝70のうちX方向負側に位置する3個の上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向負側かつY方向負側に位置するように傾斜している。また、X方向正側に位置する3個の上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向正側かつY方向負側に位置するように傾斜している。
【0174】
この場合、例えば、蒸気通路51、52内の作動液2bを、凝縮領域CR内の液流路部60に集中させるように移動させることができる。このことにより、当該液流路部60に十分な量の作動液2bを移動させることができる。また、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。とりわけ、複数の凝縮領域CRが配置されている場合、作動蒸気2aの流れを各凝縮領域CRに向けることができ、作動蒸気2aを速やかに各凝縮領域CRへ輸送することができる。このため、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を促進することができる。
【0175】
また、
図29に示す例においては、平面視でランド部33のY方向正側の端縁と重なる位置に、6個の上側シート溝70がX方向に沿って並んでいる。これらの上側シート溝70のうちX方向負側に位置する3個の上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向正側かつY方向正側に位置するように傾斜している。また、X方向正側に位置する3個の上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向負側かつY方向正側に位置するように傾斜している。
【0176】
一方、平面視でランド部33のY方向負側の端縁と重なる位置にも、6個の上側シート溝70がX方向に沿って並んでいる。これらの上側シート溝70のうちX方向負側に位置する3個の上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向正側かつY方向負側に位置するように傾斜している。また、X方向正側に位置する3個の上側シート溝70は、第1端部71が第2端部72よりもX方向負側かつY方向負側に位置するように傾斜している。
【0177】
この場合、例えば、液流路部60内の作動液2bを、蒸発領域SR内の蒸気通路51、52に集中させるように移動させることができる。このことにより、蒸発領域SRにおいて作動液2bを効率よく蒸発させることができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を促進することができる。
【0178】
(第8の実施の形態)
次に、
図30および
図31を用いて、本開示の第8の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0179】
図30および
図31に示す第8の実施の形態においては、複数の第1シート溝が、平面視で放射状に配置されている点が主に異なり、他の構成は、
図23に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、
図30および
図31において、
図23に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0180】
本実施の形態においては、
図30に示すように、複数の上側シート溝70は、平面視で放射状に配置されている。
図30に示す例においては、各上側シート溝70は、X方向に対して傾斜するように配置されている。また、各上側シート溝70は、第2端部72が液流路部60の特定の位置を向くように配置されている。各上側シート溝70は、X方向において互いに隣り合う上側シート溝70の間のギャップw7(
図11参照)が蒸気通路51、52の側から液流路部60の側に向かうにつれて小さくなるように、放射状に配置されている。
【0181】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、平面視で放射状に配置されている。このことにより、例えば、蒸気通路51、52内の作動液2bを、凝縮領域CR内の液流路部60に集中させるように移動させることができる。このため、当該液流路部60に十分な量の作動液2bを移動させることができる。また、このような上側シート溝70を蒸発領域SRに配置した場合、急な温度上昇時は、液流路部60内で作動液2bから蒸発した作動蒸気2aを、上側シート溝70を通って蒸気通路51、52に速やかに移動させることができ、蒸発領域SRにおける作動蒸気2aの液流路部60から蒸気通路51、52への移動を効果的に促進することができる。とりわけ、複数の凝縮領域CRが配置されている場合、作動蒸気2aの流れを各凝縮領域CRに向けることができ、作動蒸気2aを速やかに各凝縮領域CRへ輸送することができる。この結果、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を促進することができる。
【0182】
なお、上述した本実施の形態においては、各上側シート溝70が、X方向において互いに隣り合う上側シート溝70の間のギャップw7が蒸気通路51、52の側から液流路部60の側に向かうにつれて小さくなるように、放射状に配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、
図31に示すように、各上側シート溝70は、X方向において互いに隣り合う上側シート溝70の間のギャップw7が液流路部60の側から蒸気通路51、52の側に向かうにつれて小さくなるように、放射状に配置されていてもよい。各上側シート溝70は、第1端部71が蒸気通路51、52の特定の位置を向くように配置されていてもよい。
【0183】
この場合、例えば、液流路部60内の作動液2bを、蒸発領域SR内の蒸気通路51、52に集中させるように移動させることができる。このことにより、蒸発領域SRにおいて作動液2bを効率よく蒸発させることができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を促進することができる。
【0184】
(第9の実施の形態)
次に、
図32~
図34を用いて、本開示の第9の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0185】
図32~
図34に示す第9の実施の形態においては、第1シートが、互いに隣り合う第1シート溝を連通する連絡溝を含む点が主に異なり、他の構成は、
図21および
図22に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、
図32~
図34において、
図21および
図22に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0186】
本実施の形態においては、
図32に示すように、上側シート20は、互いに隣り合う上側シート溝70を連通する上側シート連絡溝75(連絡溝)を含んでいる。上側シート20は、複数の上側シート連絡溝75を含んでいてもよい。
図32に示す例においては、各上側シート溝70は、Y方向に沿って延びている。各上側シート溝70は、Y方向において第2蒸気通路52を横断するように設けられている。各上側シート連絡溝75は、平面視で第2蒸気通路52と重なる位置に配置されている。各上側シート連絡溝75は、X方向に沿って延びている。各上側シート連絡溝75は、互いに隣り合う上側シート溝70に接続されている。
【0187】
上側シート連絡溝75は、主として、作動液2bが毛細管作用によって流れるように小さな流路断面積を有している。上側シート連絡溝75の流路断面積は、蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい。上側シート連絡溝75の流路断面積は、上側シート溝70の流路断面積と等しくてもよい。しかしながら、このことに限られることはなく、上側シート連絡溝75の流路断面積は、上側シート溝70の流路断面積よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0188】
上側シート連絡溝75は、上側シート溝70と同様、上側シート20が上側シート内面20aからエッチングされることによって形成されてもよい。このことにより、上側シート連絡溝75は、上側シート溝70と同様の湾曲状に形成された壁面(図示せず)を有していてもよい。また、上側シート連絡溝75は、上側シート溝70と一体に連続的に形成されていてもよい。
【0189】
各上側シート連絡溝75は、X方向およびY方向に沿って並んでいてもよい。また、
図32に示すように、各上側シート連絡溝75は、千鳥状に配置されていてもよい。すなわち、X方向において互いに隣り合う上側シート連絡溝75が、Y方向において互いにずれて配置されていてもよい。このずれ量は、X方向における上側シート連絡溝75の配列ピッチの半分であってもよい。
【0190】
このように本実施の形態によれば、上側シート20は、互いに隣り合う上側シート溝70を連通する上側シート連絡溝75を含んでいる。このことにより、上側シート連絡溝75の毛細管作用によって、作動液2bを上側シート溝70間で移動させることができる。このため、上側シート溝70間で作動液2bが偏在することを抑制することができる。この結果、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0191】
なお、上述した本実施の形態においては、各上側シート溝70がY方向において第2蒸気通路52を横断するように設けられ、各上側シート連絡溝75が千鳥状に配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各上側シート溝70および各上側シート連絡溝75の配置は任意である。
【0192】
図33に示す例においては、各上側シート溝70は、千鳥状に配置されている。すなわち、X方向において互いに隣り合う上側シート溝70が、Y方向において互いにずれて配置されている。このずれ量は、X方向における上側シート溝70の配列ピッチの半分であってもよい。
【0193】
また、
図33に示す例においては、各上側シート連絡溝75は、X方向に沿って直線状に延びている。各上側シート連絡溝75は、各上側シート溝70の端部(第1端部71または第2端部72)に接続されて、各上側シート溝70、70’を連通している。各上側シート連絡溝75は、平面視で第2蒸気通路52と重なる位置に配置されている。各上側シート連絡溝75は、Y方向に沿って並んでいる。
図33に示す例においては、3本の上側シート連絡溝75が、互いに平行になるように並んでいる。
【0194】
このような場合であっても、上側シート連絡溝75の毛細管作用によって、作動液2bを上側シート溝70間で移動させることができる。このため、上側シート溝70間で作動液2bが偏在することを抑制することができる。この結果、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0195】
また、上述した本実施の形態においては、各上側シート連絡溝75が、千鳥状に配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、
図34に示すように、各上側シート連絡溝75が、格子状に配置されていてもよい。すなわち、各上側シート連絡溝75が、X方向およびY方向に整列して並んでいてもよい。
【0196】
このような場合であっても、上側シート連絡溝75の毛細管作用によって、作動液2bを上側シート溝70間で移動させることができる。このため、上側シート溝70間で作動液2bが偏在することを抑制することができる。この結果、作動液2bの輸送効率を向上させることができ、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0197】
(第10の実施の形態)
次に、
図35を用いて、本開示の第10の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0198】
図35に示す第10の実施の形態においては、液流路部が、第2本体面にも設けられ、第2シートは、第2シート内面に設けられた第2シート溝であって、平面視で蒸気通路と重なる位置に設けられ、第1方向と交差する方向に沿って延びる第2シート溝を含む点が主に異なり、他の構成は、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図35において、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0199】
本実施の形態においては、
図35に示すように、液流路部60は、ウィックシート下面30aにも設けられている。すなわち、液流路部60は、ウィックシート上面30bに設けられているとともに、ウィックシート下面30aにも設けられている。
【0200】
また、本実施の形態においては、
図35に示すように、下側シート10は、下側シート内面10bに設けられた下側シート溝80(第2シート溝)を含んでいる。下側シート10は、複数の下側シート溝80を含んでいてもよい。下側シート溝80は、上側シート溝70と同様、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられている。下側シート溝80は、上側シート溝70に対向する位置に設けられていてもよい。下側シート溝80は、上側シート溝70と同様、X方向と交差する方向に沿って延びている。下側シート溝80は、例えば、上側シート溝70と同様、X方向に直交するY方向に沿って延びていてもよい。下側シート溝80のその他の構成は、上述した上側シート溝70の構成と同様である。
【0201】
このように本実施の形態によれば、液流路部60が、ウィックシート下面30aにも設けられている。このことにより、ベーパーチャンバ1内のスペースを有効に活用して、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0202】
また、本実施の形態によれば、下側シート10は、下側シート内面10bに設けられた下側シート溝80であって、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられX方向と交差する方向に沿って延びる下側シート溝80を含んでいる。このことにより、液流路部60がウィックシート下面30aにも設けられている場合に、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来をより一層促進することができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0203】
(第11の実施の形態)
次に、
図36を用いて、本開示の第11の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0204】
図36に示す第11の実施の形態においては、第1シートが蒸気通路に向かって窪んだ窪み領域を備え、第1シート溝は、窪み領域に配置されている点が主に異なり、他の構成は、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図36において、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0205】
本実施の形態においては、
図36に示すように、ベーパーチャンバ1は、上側シート20が平坦状に形成された平坦領域FRと、上側シート20が蒸気流路部50の蒸気通路51,52に向かって窪んだ窪み領域DRと、を備えている。平坦領域FRにおいては、下側シート10も平坦状に形成されていてもよい。窪み領域DRにおいては、下側シート10も蒸気流路部50の蒸気通路51,52に向かって窪んでいてもよい。窪み領域DRは、平板状のベーパーチャンバ1を外部から部分的に押圧したり、平板状のベーパーチャンバ1を屈曲したりすることにより形成することができる。
【0206】
また、本実施の形態においては、
図36に示すように、上側シート溝70は、窪み領域DRに配置されている。すなわち、上側シート溝70は、上側シート内面20aのうち窪み領域DRに位置する部分に設けられている。一方、上側シート溝70は、窪み領域DR以外の領域、すなわち平坦領域FRには設けられていなくてもよい。
【0207】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、窪み領域DRに配置されている。窪み領域DRにおいては、蒸気通路51、52の流路断面積が、他の領域における蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい。このことにより、窪み領域DRにおいては、作動蒸気2aが凝縮し易く、作動液2bが生成され易い。このため、窪み領域DRにおいて作動液2bが滞留するおそれがある。これに対して、上側シート溝70が窪み領域DRに配置されていることにより、窪み領域DRにおいて、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を促進することができる。このため、窪み領域DRにおける作動液2bの滞留を抑制することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を効果的に促進することができる。
【0208】
(第12の実施の形態)
次に、
図37を用いて、本開示の第12の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0209】
図37に示す第12の実施の形態においては、第1シート溝は、平面視で連結部と重なる位置に設けられている点が主に異なり、他の構成は、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図37において、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0210】
本実施の形態においては、
図37に示すように、上側シート溝70は、平面視で連結部38と重なる位置に設けられている。上側シート溝70は、連結部38に対向する位置に設けられていると言うこともできる。ここで、連結部38は、上述したように、互いに隣り合うランド部33を接続する部材である。
【0211】
図37に示す例においては、連結部38は、ウィックシート30のウィックシート下面30aに近い位置に配置されている。より具体的には、連結部38は、蒸気通路51、52の下側蒸気流路凹部53をなす空間内に配置されている。ウィックシート30のウィックシート上面30bに近い位置には、蒸気通路51、52の上側蒸気流路凹部54が確保されている。上側シート溝70は、連結部38に対向する位置以外の位置には設けられていなくてもよい。
【0212】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、平面視で連結部38と重なる位置に設けられている。連結部38が設けられている位置においては、蒸気通路51、52の流路断面積が、他の位置における蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい。このことにより、連結部38が設けられている位置においては、作動蒸気2aが凝縮し易く、作動液2bが生成され易い。このため、当該位置において作動液2bが滞留するおそれがある。これに対して、上側シート溝70が平面視で連結部38と重なる位置に設けられていることにより、当該位置において、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を促進し、作動液2bの滞留を抑制することができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を効果的に促進することができる。
【0213】
(第13の実施の形態)
次に、
図38を用いて、本開示の第13の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0214】
図38に示す第13の実施の形態においては、第1シート溝は、平面視で第1方向に沿って連結部に隣接する領域に設けられている点が主に異なり、他の構成は、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図38において、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0215】
本実施の形態においては、
図38に示すように、上側シート溝70は、平面視でX方向に沿って連結部38に隣接する領域に設けられている。ここで、連結部38は、上述したように、互いに隣り合うランド部33を接続する部材である。
【0216】
連結部38は、ウィックシート30のウィックシート下面30aに近い位置に配置されていてもよい。連結部38は、蒸気通路51、52の下側蒸気流路凹部53をなす空間内に配置され、ウィックシート30のウィックシート上面30bに近い位置には、蒸気通路51、52の上側蒸気流路凹部54が確保されていてもよい。上側シート溝70は、平面視でX方向に沿って連結部38に隣接する領域以外の位置、すなわち平面視で連結部38から離れた位置には設けられていなくてもよい。ここで、平面視でX方向に沿って連結部38に隣接する領域は、例えば、平面視でX方向において連結部38から300μm以内の領域であってもよく、150μm以内の領域であってもよく、50μm以内の領域であってもよい。
【0217】
なお、
図38に示す例においては、上側シート溝70は、平面視でX方向に沿って連結部38に隣接する領域のうち、X方向における両側の領域にそれぞれ設けられているが、このことに限られることはなく、上側シート溝70は、X方向におけるいずれか一方の側の領域に設けられていてもよい。
【0218】
また、
図38に示す例においては、上側シート溝70は、平面視で連結部38と重なる位置には設けられていないが、このことに限られることはなく、上側シート溝70は、平面視で連結部38と重なる位置にも設けられていてもよい。
【0219】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、平面視でX方向に沿って連結部38に隣接する領域に設けられている。連結部38が設けられている位置においては、蒸気通路51、52の流路断面積が、他の位置における蒸気通路51、52の流路断面積よりも小さい。このことにより、X方向に沿って連結部38に隣接する領域においても、作動蒸気2aが凝縮し易く、作動液2bが生成され易い。このため、当該領域において作動液2bが滞留するおそれがある。これに対して、上側シート溝70が平面視でX方向に沿って連結部38に隣接する領域に設けられていることにより、当該領域において、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を促進し、作動液2bの滞留を抑制することができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を効果的に促進することができる。
【0220】
(第14の実施の形態)
次に、
図39および
図40を用いて、本開示の第14の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0221】
図39および
図40に示す第14の実施の形態においては、ベーパーチャンバが屈曲線に沿って屈曲した屈曲領域を備え、第1シート溝は、屈曲領域に配置されている点が主に異なり、他の構成は、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、
図39および
図40において、
図1~
図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0222】
本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1は、
図39に示す屈曲線BLに沿って屈曲される。
図39は、屈曲される前の平板状のベーパーチャンバ1を示している。
図39に示す例においては、屈曲線BLは、X方向におけるベーパーチャンバ1の中央部に設けられており、Y方向に沿って延びている。ベーパーチャンバ1が屈曲線BLに沿って屈曲されることにより、
図40に示すような、ベーパーチャンバ1が屈曲線BLに沿って屈曲した屈曲領域BRと、ベーパーチャンバ1が屈曲領域BRを介して隔てられた第1領域RR1および第2領域RR2と、を備える、屈曲したベーパーチャンバ1を得ることができる。
図40に示すように、第1領域RR1にデバイスDが取り付けられ、第2領域RR2にハウジング部材Haが取り付けられてもよい。
【0223】
ベーパーチャンバ1は、下側シート10が内側に位置し、上側シート20が外側に位置するように屈曲されてもよい。屈曲角度は、任意の角度であってもよい。
図40に示す例においては、屈曲角度は90度(直角)である。このため、ベーパーチャンバ1の断面形状は、略L字形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、ベーパーチャンバ1を湾曲するように屈曲させて、ベーパーチャンバ1の断面形状がU字形状になるようにしてもよい。また例えば、ベーパーチャンバ1を複数回屈曲させて、ベーパーチャンバ1の断面形状がコの字形状等になるようにしてもよい。このようにベーパーチャンバ1を屈曲させることによって、ベーパーチャンバ1のハウジングH内における配置の自由度を向上させることができる。ここで、屈曲角度とは、ベーパーチャンバ1の第1領域RR1における下側シート外面10aまたは上側シート外面20bと、ベーパーチャンバ1の第2領域RR2における下側シート外面10aまたは上側シート外面20bとがなす角度を意味している。
【0224】
このような屈曲したベーパーチャンバ1は、ベーパーチャンバ1の製造工程において、封止工程の後、屈曲工程として、平板状のベーパーチャンバ1を屈曲線BLに沿って屈曲させることにより、作製することができる。
【0225】
本実施の形態においては、上側シート溝70は、屈曲領域BRに配置されている。すなわち、上側シート溝70は、屈曲領域BRにおける上側シート20の上側シート内面20aに設けられている。上側シート溝70は、屈曲領域BR以外の領域、すなわち第1領域RR1および第2領域RR2には配置されていなくてもよい。
【0226】
このように本実施の形態によれば、上側シート溝70は、屈曲領域BRに配置されている。ベーパーチャンバ1を屈曲した場合、内側に位置する下側シート10は、屈曲領域BRにおいて圧縮応力を受けて下側蒸気流路凹部53に向かって凹むように変形し得る。また、外側に位置する上側シート20は、屈曲領域BRにおいて引張応力を受けて上側蒸気流路凹部54に向かって凹むように変形し得る。このことにより、屈曲したベーパーチャンバ1の屈曲領域BRには、上述した第11の実施の形態で
図36を用いて説明したような、窪み領域DRが形成され得る。このため、屈曲領域BRにおいては、蒸気通路51、52の流路断面積が小さくなり得る。このことにより、屈曲領域BRにおいては、作動蒸気2aが凝縮し易く、作動液2bが生成され易くなり得る。このため、屈曲領域BRにおいて作動液2bが滞留するおそれがある。これに対して、上側シート溝70が屈曲領域BRに配置されていることにより、屈曲領域BRにおいて、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を促進することができる。このため、屈曲領域BRにおける作動液2bの滞留を抑制することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を効果的に促進することができる。
【0227】
とりわけ、屈曲したベーパーチャンバ1においては、外側に位置する上側シート20の上側シート内面20aで、作動蒸気2aが凝縮し易く、作動液2bが生成され易い。上述したように、上側シート溝70は、上側シート内面20aに設けられている。このことにより、例えば、上側シート内面20aで凝縮した作動液2bを、上側シート溝70の毛細管作用によって、液流路部60に速やかに移動させることができる。このため、ベーパーチャンバ1が、下側シート10が内側に位置し、上側シート20が外側に位置するように屈曲された場合、凝縮領域CRにおける作動液2bの蒸気通路51、52から液流路部60への移動を効果的に促進することができる。この結果、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流をより一層促進することができる。
【0228】
なお、上述した各実施の形態においては、ベーパーチャンバ1が、下側シート10と、上側シート20と、ウィックシート30とで構成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることになく、ベーパーチャンバ1は、
図41に示すように、上側シート20と、ウィックシート30とで構成されていてもよい。
【0229】
図41に示す例においては、ベーパーチャンバ1は、上側シート20と、ウィックシート30と、を備えているが、下側シート10を備えていない。この場合、ハウジング部材Haは、ウィックシート30のウィックシート下面30aに取り付けられてもよい。作動蒸気2aの熱は、ウィックシート30からハウジング部材Haに伝わる。
【0230】
また、
図41に示す例においては、蒸気流路部50は、ウィックシート上面30bに設けられているが、ウィックシート下面30aまで延びておらず、ウィックシート30を貫通していない。すなわち、蒸気流路部50の第1蒸気通路51および第2蒸気通路52は、上側蒸気流路凹部54で構成されており、ウィックシート30に下側蒸気流路凹部53は設けられていない。
【0231】
また、
図41に示す例においては、上側シート20の蒸気流路部50と対向する位置に、上側シート溝70が設けられている。すなわち、上側シート20は、上側シート内面20aに設けられた上側シート溝70であって、平面視で蒸気通路51、52と重なる位置に設けられた上側シート溝70を含んでいる。
【0232】
図41に示すベーパーチャンバ1の厚さt5は、例えば、100μm~1000μmであってもよい。
図41に示す上側シート20の厚さt6は、例えば、6μm~200μmであってもよい。
図41に示すウィックシート30の厚さt7は、例えば、50μm~800μmであってもよい。
【0233】
なお、
図41に示す例においては、上側シート20の上側シート内面20aに、液流路部60は設けられていないが、このことに限られることはなく、上側シート20の上側シート内面20aに、液流路部60が設けられていてもよい。この場合、上側シート20の液流路部60は、ウィックシート30の液流路部60に対向する位置に設けられていてもよい。
【0234】
このように、ベーパーチャンバ1が、上側シート20と、ウィックシート30とで構成されていてもよい。このような場合であっても、上側シート20が上側シート溝70を含んでいることにより、蒸気通路51、52と液流路部60との間での作動液2bの往来を促進することができる。このため、ベーパーチャンバ1内での作動流体2a、2bの還流を促進することができる。また、この場合、ベーパーチャンバ1をより一層薄型化することができる。
【0235】
(第15の実施の形態)
次に、
図42~
図66を用いて、本開示の第15の本実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0236】
ベーパーチャンバは、搭載される電子機器の内部構造によっては、屈曲される場合がある。この場合、蒸気流路が屈曲されるため、蒸気流路が潰れる傾向にある。このため、流路抵抗が増大し、蒸気流路部内の作動蒸気の流れが阻害されるという問題がある。
【0237】
本実施の形態は、屈曲された場合であっても放熱効率を向上できるベーパーチャンバおよび電子機器を提供することを目的とする。
【0238】
本実施の形態によるベーパーチャンバ101は、
図42および
図43に示すように、屈曲されている。ベーパーチャンバ101は、電子機器Eの内部構造に応じて屈曲される。発熱を伴う電子機器Eと、熱を放出するハウジング部材Haとの位置関係によって、ベーパーチャンバ101が屈曲される場合がある。ハウジング部材Haは、ハウジングHを構成する部材である。
【0239】
一例として、
図42に示すように電子デバイスDとハウジング部材Haとが配置されている場合が挙げられる。この場合、電子デバイスDとハウジング部材Haに接触するようにベーパーチャンバ101は直角状に屈曲される。電子デバイスDは、基板Sに実装されている。ベーパーチャンバ101は、基板Sに粘着剤ADを用いて接合されてもよい。粘着剤ADは、後述する屈曲領域107に接合されてもよく、後述する第1領域105または第2領域106に接合されてもよい。他の例として、
図43に示すように電子デバイスDとハウジング部材Haとが配置されている場合が挙げられる。この場合、電子デバイスDとハウジング部材Haに接触するようにベーパーチャンバ101は180°屈曲される。ベーパーチャンバ101は、
図42に示す例と同様に、基板Sに粘着剤ADを用いて接合されてもよい。
図42および
図42には、1つの屈曲線108(
図44および
図45参照)で屈曲されているベーパーチャンバ101の例が示されているが、これに限られることはない。ベーパーチャンバ101は、2つ以上の屈曲線108で異なる位置で屈曲されていてもよい。
【0240】
本実施の形態においては、
図44に示すように、1つの屈曲線108で直角状に屈曲されているベーパーチャンバ101を例にとって説明する。
図44に示すベーパーチャンバ101は、第1領域105と、第2領域106と、第1領域105と第2領域106との間に位置する屈曲領域107とに区分けされている。屈曲領域107は、第3領域の一例である。屈曲領域107において、ベーパーチャンバ101が、直角状に屈曲されている。第1領域105および第2領域106は、実質的に平坦状に形成されている。第1領域105に、電子デバイスDが接触してもよく、第2領域106に、ハウジング部材Ha(
図42参照)が接触してもよい。各領域についての詳細な説明は、後述する。
【0241】
ここでは、まず、屈曲される前のベーパーチャンバ101を示す
図45~
図58を用いて、ベーパーチャンバ101の構成を説明する。
図45に示す平板状のベーパーチャンバ101が屈曲されることにより、
図44に示すベーパーチャンバ101が得られる。
【0242】
図45および
図46に示すように、ベーパーチャンバ101は、作動流体102a、102bが封入された密封空間103を有している。密封空間103内の作動流体102a、102bが相変化を繰り返すことにより、上述した電子デバイスDが冷却される。作動流体102a、102bの例としては、純水、エタノール、メタノールおよびアセトン等、並びにそれらの混合液が挙げられる。
【0243】
図45および
図46に示すように、ベーパーチャンバ101は、第1シート110と、第2シート120と、ベーパーチャンバ用のウィックシート130と、蒸気流路部150と、液流路部160と、を備えている。第2シート120は、ウィックシート130に対して第1シート110とは反対側に設けられている。ベーパーチャンバ用のウィックシート130は、本体シートの一例であり、第1シート110と第2シート120との間に介在されている。ベーパーチャンバ用のウィックシート130を、以下、単に、ウィックシート130と記す。本実施の形態によるベーパーチャンバ101は、第1シート110、ウィックシート130および第2シート120が、この順番で重ねられている。なお、本実施の形態においては、ウィックシート130は、1枚のシートによって構成されている例が示されているが、ウィックシート130は、2枚以上のシートで構成されていてもよく、ウィックシート130のシート枚数は任意である。
【0244】
図45に示すベーパーチャンバ101は、概略的に薄い平板状に形成されている。屈曲前のベーパーチャンバ101の平面形状は任意であるが、
図45に示すような矩形形状であってもよい。ベーパーチャンバ101の平面形状は、例えば、1辺が1cmで他の辺が3cmの長方形であってもよく、1辺が15cmの正方形であってもよい。屈曲前のベーパーチャンバ101の平面寸法は任意である。本実施の形態では、屈曲前のベーパーチャンバ101の平面形状が、後述するX方向を長手方向とする矩形形状である例について説明する。この場合、
図47~
図55に示すように、第1シート110、第2シート120およびウィックシート130は、ベーパーチャンバ101と同様の平面形状を有していてもよい。屈曲前のベーパーチャンバ101の平面形状は、矩形形状に限られることはなく、円形形状、楕円形形状、L字形状またはT字形状等、任意の形状であってもよい。
【0245】
図44および
図45に示すように、ベーパーチャンバ101は、作動液102bが蒸発する蒸発領域SRと、作動蒸気102aが凝縮する凝縮領域CRと、を有している。作動蒸気102aは、気体状態の作動流体であり、作動液102bは、液体状態の作動流体である。
【0246】
蒸発領域SRは、平面視において電子デバイスDと重なる領域であり、電子デバイスDと接触する領域である。蒸発領域SRは、第1領域105内に位置しているが、蒸発領域SRの位置は任意である。本実施の形態においては、ベーパーチャンバ101のX方向における一側(
図45における左側)に、蒸発領域SRが形成されている。蒸発領域SRに電子デバイスDからの熱が伝わり、この熱によって作動液102bが蒸発して、作動蒸気102aが生成される。電子デバイスDからの熱は、平面視において電子デバイスDに重なる領域だけではなく、電子デバイスDが重なる領域の周辺にも伝わり得る。このため、蒸発領域SRは、平面視において、電子デバイスDに重なっている領域とその周辺の領域とを含んでいてもよい。
【0247】
凝縮領域CRは、平面視において電子デバイスDと重ならない領域であって、主として作動蒸気102aが熱を放出して凝縮する領域である。凝縮領域CRは、第2領域106内に位置していてもよい。凝縮領域CRは、第2領域106を含む蒸発領域SRの周囲の領域であってもよい。凝縮領域CRにおいて作動蒸気102aからの熱が放出される。作動蒸気102aは冷却されて凝縮し、作動液102bが生成される。
【0248】
ここで平面視とは、ベーパーチャンバ101が電子デバイスDから熱を受ける面および受けた熱を放出する面に直交する方向から見た状態である。本実施の形態においては、熱を受ける面は、第2シート120の後述する第2シート外面120bに相当し、熱を放出する面は、第1シート110の後述する第1シート外面110aに相当する。なお、熱を受ける面が、第1シート外面110aに相当し、熱を放出する面が、第2シート外面120bに相当してもよい。例えば、
図44に示すように、屈曲されたベーパーチャンバ101の第1領域105においては、矢印V1で示す方向で見た状態が平面視に相当する。第2領域106においては、矢印V2で示す方向で見た状態が平面視に相当する。
図45に示すように、屈曲前のベーパーチャンバ101では、ベーパーチャンバ101を上方から見た状態、または下方から見た状態が、平面視に相当する。
【0249】
図46に示すように、第1シート110は、ウィックシート130とは反対側に位置する第1シート外面110aと、ウィックシート130に対向する第1シート内面110bと、を含んでいる。上述した第2領域106において、第1シート外面110aに、上述したハウジング部材Haが接してもよい。第1シート内面110bに、ウィックシート130の後述する第1本体面130aが接している。
図46および
図47に示すように、第1シート110は、実質的に平坦状に形成されていてもよい。第1シート110は、実質的に一定の厚さを有していてもよい。
【0250】
図47に示すように、第1シート110の四隅に、アライメント孔112が形成されていてもよい。
図47には、アライメント孔112の平面形状が円形である例が示されているが、これに限られることはない。アライメント孔112は、第1シート110を貫通していてもよい。
【0251】
図47に示すように、第2シート120は、ウィックシート130に対向する第2シート内面120aと、ウィックシート130とは反対側に位置する第2シート外面120bと、を含んでいる。上述した第1領域105において、第2シート外面120bに、上述した電子デバイスDが接してもよい。第2シート内面120aに、ウィックシート130の後述する第2本体面130bが接している。
図46および
図48に示すように、第2シート120は、実質的に平坦状に形成されていてもよい。第2シート120は、実質的に一定の厚さを有していてもよい。
【0252】
図48に示すように、第2シート120の四隅に、アライメント孔122が形成されていてもよい。
図48には、アライメント孔122の平面形状が円形である例が示されているが、これに限られることはない。アライメント孔122は、第2シート120を貫通していてもよい。
【0253】
図45、
図48および
図49に示すように、第2シート120は、第2シート外面120bに位置する複数の第2シート外面凹部123を含んでいる。第2シート外面凹部123は、
図45に示すように、屈曲領域107に位置していてもよい。
【0254】
図45および
図48に示すように、第2シート外面凹部123は、平面視でX方向に交差する方向に延びている。第2シート外面凹部123は、Y方向に延びていてもよく、屈曲線108に沿って延びていてもよい。第2シート外面凹部123は、平面視で、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152を横切っていてもよい。本実施の形態においては、第2シート外面凹部123は、第2シート120のY方向全域に形成されている。この場合、第2シート外面凹部123は、平面視で、枠体部132、各々のランド部133および各々の蒸気通路151、152を交差するように延びている。しかしながら、このことに限られることはなく、第2シート外面凹部123は、ベーパーチャンバ101の屈曲性を確保するとともに、屈曲後の各々の蒸気通路151、152の流路断面積を確保できれば、第2シート120のY方向全域に形成されていなくてもよい。また、
図45に示す例においては、第2シート外面凹部123は、平面視で、Y方向に延びた直線状の形状を有しているが、このことに限られることはない。例えば、
図50に示すように、第2シート外面凹部123は、平面視で、複数の円がY方向に部分的に重なって連なった数珠状の形状を有していてもよい。このように、第2シート外面凹部123の平面形状は任意である。
【0255】
図49に示すように、第2シート外面凹部123は、第2シート外面120bに凹状に形成されている。第2シート外面凹部123は、Y方向に延びる溝状に形成されていてもよい。第2シート外面凹部123は、X方向に並んでいてもよく、X方向に等間隔に離間していてもよい。各々の第2シート外面凹部123は、互いに平行に位置していてもよい。
【0256】
屈曲領域107は、ベーパーチャンバ101が屈曲される領域である。このことにより、ベーパーチャンバ101が屈曲された後、第2シート外面凹部123は、屈曲領域107に位置する。第2シート外面凹部123は、屈曲線108に沿って延びる。
【0257】
第2シート外面凹部123は、後述する第2シートエッチング工程において、第2シート120の第2シート外面120bからエッチングされることによって形成される。このことにより、第2シート外面凹部123は、
図49に示すように、湾曲状に形成された壁面を有していてもよい。この壁面は、第2シート外面凹部123を画定し、第2シート内面120aに向かって膨らむような形状で湾曲していてもよい。
図49においては、第2シート外面凹部123が、半円形状の断面を有している例が示されている。しかしながら、第2シート外面凹部123の断面形状は、ベーパーチャンバ101の屈曲時に第2シート120に作用する応力を吸収可能であれば、任意である。例えば、
図51に示すように、第2シート外面凹部123の断面形状は、三角形状であってもよい。また例えば、
図52に示すように、第2シート外面凹部123の断面形状は、矩形形状であってもよい。また例えば、
図53に示すように、第2シート外面凹部123の断面形状は、台形形状であってもよい。また例えば、
図54に示すように、第2シート外面凹部123の断面形状は、内側に開口部よりも広い幅を有する部分円形状であってもよい。また、第2シート外面凹部123は、エッチング以外の方法で形成されてもよく、その形成方法は任意である。例えば、第2シート外面凹部123は、プレス加工やルーター加工で形成されてもよい。
【0258】
図49に示すように、第2シート外面凹部123の幅w18は、例えば、10μm~60μmであってもよい。幅w18は、第2シート外面120bにおける第2シート外面凹部123の寸法を意味している。幅w18は、第2シート外面凹部123のX方向寸法に相当している。第2シート外面凹部123のX方向ピッチp11は、例えば、20μm~100μmであってもよい。第2シート外面凹部123の深さh12は、例えば、第2シート120の厚さt13が35μm程度の場合、5μm~30μmであってもよい。深さh12は、第2シート外面凹部123のZ方向寸法に相当している。
【0259】
図45に示すように、ウィックシート130は、第1本体面130aと、第1本体面130aとは反対側に位置する第2本体面130bと、を有している。第1本体面130aに、第1シート110の第1シート内面110bが接している。第2本体面130bに、第2シート120の第2シート内面120aが接している。
【0260】
第1シート110の第1シート内面110bとウィックシート130の第1本体面130aとは、拡散接合されていてもよい。第1シート内面110bと第1本体面130aとは、互いに恒久的に接合されていてもよい。
【0261】
同様に、第2シート120の第2シート内面120aとウィックシート130の第2本体面130bとは、拡散接合されていてもよい。第2シート内面120aと第2本体面130bとは、互いに恒久的に接合されていてもよい。
【0262】
なお、「恒久的に接合」という用語は、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ101の動作時に、密封空間103の密封性を維持可能な程度に接合されていることを意味する用語として用いている。
【0263】
図45、
図55および
図56に示すように、本実施の形態によるウィックシート130は、枠体部132と、複数のランド部133と、を含んでいる。枠体部132は、蒸気流路部150を画定しており、平面視においてX方向およびY方向に沿って矩形枠形状に形成されている。ランド部133は、平面視において枠体部132の内側に位置しており、ランド部133の周囲に蒸気流路部150が位置している。このため、ランド部133の周囲を作動蒸気102aが流れるようになっている。枠体部132およびランド部133は、後述するウィックシートエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート130の材料が残る部分である。枠体部132と隣り合うランド部133との間に、作動蒸気102aが流れる後述の第1蒸気通路151が形成されている。互いに隣り合うランド部133の間に、作動蒸気102aが流れる後述の第2蒸気通路152が形成されている。
【0264】
ランド部133は、平面視において、X方向を長手方向として細長状に延びていてもよい。ランド部133の平面形状は、細長の矩形形状になっていてもよい。X方向は、第1方向の一例であり、
図55および
図56における左右方向に相当する。また、各ランド部133は、Y方向において等間隔に離間して配置されていてもよい。Y方向は、第2方向の一例であり、平面視でX方向に直交する方向である。Y方向は、ランド部133の幅方向であり、
図55および
図56における上下方向に相当する。各ランド部133は、互いに平行に位置していてもよい。X方向およびY方向のそれぞれに直交する方向をZ方向とする。Z方向は、
図46および
図57における上下方向に相当しており、厚さ方向に相当している。
【0265】
図57に示すように、ランド部133の幅w11は、例えば、100μm~1500μmであってもよい。ここで、ランド部133の幅w11は、Y方向におけるランド部133の寸法である。幅w11は、ウィックシート130のZ方向において、後述する貫通部134が存在する位置における寸法を意味している。
【0266】
ここで、
図44に示すベーパーチャンバ101の第1領域105および第2領域106におけるX方向は、ランド部133の長手方向に沿う方向に相当する。第1領域105におけるX方向は、
図44の上下方向に相当する。
図44に示すベーパーチャンバ101の第1領域105および第2領域106におけるY方向は、ランド部133が並んでいる方向に相当する。Z方向は、
図44に示すベーパーチャンバ101の第1領域105および第2領域106において、ベーパーチャンバ101に直交する方向に相当する。第2領域106におけるZ方向は、
図44の上下方向に相当する。
【0267】
枠体部132および各ランド部133は、第1シート110に拡散接合されるとともに、第2シート120に拡散接合されている。このことにより、ベーパーチャンバ101の機械的強度を向上させている。後述する第1蒸気流路凹部153の壁面153aおよび第2蒸気流路凹部154の壁面154aは、ランド部133の側壁を構成している。ウィックシート130の第1本体面130aおよび第2本体面130bは、枠体部132および各ランド部133にわたって、平坦状に形成されていてもよい。
【0268】
図55および
図56に示すように、ウィックシート130の四隅に、アライメント孔135が形成されていてもよい。
図55および
図56には、アライメント孔135の平面形状が円形である例が示されているが、これに限られることはない。また、アライメント孔135は、ウィックシート130を貫通していてもよい。
【0269】
図46に示すように、蒸気流路部150は、ウィックシート130の第1本体面130aに設けられていてもよい。蒸気流路部150は、空間部の一例である。蒸気流路部150は、主として、作動蒸気102aが通る流路であってもよい。蒸気流路部150に、作動液102bも通ってもよい。本実施の形態においては、蒸気流路部150は、第1本体面130aから第2本体面130bに延びていてもよく、ウィックシート130を貫通していてもよい。蒸気流路部150は、第1本体面130aにおいて第1シート110で覆われていてもよく、第2本体面130bにおいて第2シート120で覆われていてもよい。
【0270】
図55および
図56に示すように、本実施の形態による蒸気流路部150は、第1蒸気通路151と複数の第2蒸気通路152とを含んでいてもよい。第1蒸気通路151および第2蒸気通路152はそれぞれ、作動流体通路の一例である。第1蒸気通路151は、枠体部132とランド部133との間に形成されている。第1蒸気通路151は、枠体部132の内側であってランド部133の外側に連続状に形成されている。第1蒸気通路151の平面形状は、X方向およびY方向に沿って矩形枠形状になっていてもよい。第2蒸気通路152は、互いに隣り合うランド部133の間に形成されている。第2蒸気通路152の平面形状は、細長の矩形形状になっていてもよい。複数のランド部133によって、蒸気流路部150は、第1蒸気通路151と複数の第2蒸気通路152とに区画されている。
【0271】
図46に示すように、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152は、ウィックシート130の第1本体面130aから第2本体面130bに延びていてもよい。この場合、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152は、第1本体面130aから第2本体面130bに貫通する。第1蒸気通路151および第2蒸気通路152は、第1本体面130aに設けられた第1蒸気流路凹部153と、第2本体面130bに設けられた第2蒸気流路凹部154と、を含んでいる。第1蒸気流路凹部153と第2蒸気流路凹部154とが連通している。
【0272】
第1蒸気流路凹部153は、後述するウィックシートエッチング工程において、ウィックシート130の第1本体面130aからエッチングされることによって形成されていてもよい。第1蒸気流路凹部153は、第1本体面130aに凹状に形成されている。第1蒸気流路凹部153は、
図57に示すように、湾曲状に形成された壁面153aを有していてもよい。
図57は、X方向に直交する断面を示している。この壁面153aは、第1蒸気流路凹部153を画定し、第2本体面130bに近づくにつれて、対向する壁面153aに近づくように湾曲していてもよい。第1蒸気流路凹部153は、第1蒸気通路151のうち第1シート110に比較的近い部分および第2蒸気通路152のうち第1シート110に比較的近い部分を構成している。
【0273】
第1領域105および第2領域106における第1蒸気流路凹部153の幅w12は、例えば、100μm~5000μmであってもよい。第1蒸気流路凹部153の幅w12は、Y方向の寸法であって、第1本体面130aにおける第1蒸気流路凹部153の寸法である。幅w12は、第1蒸気通路151のうちX方向に延びる部分のY方向の寸法および第2蒸気通路152のY方向の寸法に相当している。幅w12は、第1蒸気通路151のうちY方向に延びる部分のX方向寸法にも相当している。
【0274】
第2蒸気流路凹部154は、後述するウィックシートエッチング工程において、ウィックシート130の第2本体面130bからエッチングされることによって形成されていてもよい。第2蒸気流路凹部154は、第2本体面130bに凹状に形成されている。第2蒸気流路凹部154は、
図57に示すように、湾曲状に形成された壁面154aを有していてもよい。この壁面154aは、第2蒸気流路凹部154を画定し、第1本体面130aに近づくにつれて、対向する壁面154aに近づくように湾曲していてもよい。第2蒸気流路凹部154は、第1蒸気通路151のうち第2シート120に比較的近い部分および第2蒸気通路152のうち第2シート120に比較的近い部分を構成している。
【0275】
第1領域105および第2領域106における第2蒸気流路凹部154の幅w13は、上述した第1蒸気流路凹部153の幅w12と同様に、例えば、100μm~5000μmであってもよい。第2蒸気流路凹部154の幅w13は、Y方向の寸法であって、第2本体面130bにおける第2蒸気流路凹部154の寸法である。幅w13は、第1蒸気通路151のうちX方向に延びる部分のY方向の寸法および第2蒸気通路152のY方向の寸法に相当している。幅w13は、第1蒸気通路151のうちY方向に延びる部分のX方向寸法にも相当している。第2蒸気流路凹部154の幅w13は、第1蒸気流路凹部153の幅w12と等しくてもよいが、異なっていてもよい。
【0276】
図57に示すように、第1蒸気流路凹部153の壁面153aと、第2蒸気流路凹部154の壁面154aとが接続されて貫通部134が形成されていてもよい。本実施の形態では、第1蒸気通路151における貫通部134の平面形状は、矩形枠形状になっていてもよい。第2蒸気通路152における貫通部134の平面形状は、細長の矩形形状になっていてもよい。貫通部134は、第1蒸気流路凹部153の壁面153aと第2蒸気流路凹部154の壁面154aとが合流し、稜線によって画定されていてもよい。当該稜線は、
図57に示すように、蒸気通路151、152の内側に張り出すように形成されていてもよい。この貫通部134における第1蒸気通路151の平面面積が最小になっていてもよく、貫通部134における第2蒸気通路152の平面面積が最小になっていてもよい。各蒸気通路151、152の貫通部134の幅w14は、例えば、400μm~5000μmであってもよい。ここで、貫通部134の幅w14は、第1領域105および第2領域106における貫通部134の幅であり、Y方向において互いに隣り合うランド部133の間のギャップに相当する。幅w14は、
図57に示すように、ランド部133のうち最も蒸気通路151、152の内側に張り出した部分同士の間のギャップであってもよい。
【0277】
Z方向における貫通部134の位置は、第1本体面130aと第2本体面130bとの中間位置であってもよい。あるいは、貫通部134の位置は、中間位置よりも第1シート110に近い位置でもよく、または中間位置よりも第2シート120に近い位置でもよい。Z方向における貫通部134の位置は任意である。
【0278】
本実施の形態では、上述したように、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152の断面形状が、内側に張り出すように形成された稜線によって画定された貫通部134を含むように形成されているが、これに限られることはない。例えば、第1蒸気通路151の断面形状および第2蒸気通路152の断面形状は、台形形状や平行四辺形形状であってもよく、あるいは樽形形状になっていてもよい。
【0279】
このように構成された第1蒸気通路151および第2蒸気通路152を含む蒸気流路部150は、上述した密封空間103の一部を構成している。各蒸気通路151、152は、作動蒸気102aが通るように比較的大きな流路断面積を有している。
【0280】
ここで、
図57は、図面を明瞭にするために、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152を拡大して示している。後述する主流溝161の個数は、
図46とは異なっている。
【0281】
図示しないが、各蒸気通路151、152内に、ランド部133を枠体部132に支持する支持部が複数設けられていてもよい。また、互いに隣り合うランド部133同士を支持する支持部が設けられていてもよい。これらの支持部は、X方向においてランド部133の両側に設けられていてもよく、Y方向におけるランド部133の両側に設けられていてもよい。支持部は、蒸気流路部150を拡散する作動蒸気102aの流れを妨げないように形成されていてもよい。例えば、支持部は、ウィックシート130の第1本体面130aおよび第2本体面130bのうちの一方に近い位置に位置して、他方に近い位置には、蒸気流路部150をなす空間が形成されてもよい。このことにより、支持部の厚さをウィックシート130の厚さよりも薄くでき、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152が、X方向およびY方向において分断されることを防止できる。
【0282】
図45に示すように、ベーパーチャンバ101は、密封空間103に作動液102bを注入する注入部104を備えていてもよい。注入部104は、第1蒸気通路151に連通した注入流路136を含んでいる。注入部104の位置は、任意である。
図55および
図56に示すように、注入流路136は、第2本体面130bに凹状に形成されていてもよい。あるいは、注入流路136は、第1本体面130aに凹状に形成されていてもよい。なお、液流路部160の構成によっては、注入流路136は液流路部160に連通していてもよい。
【0283】
図46、
図55および
図57に示すように、液流路部160は、第1シート110とウィックシート130との間に形成されていてもよい。本実施の形態においては、液流路部160は、各々のランド部133の第1本体面130aに形成されている。液流路部160は、主として作動液102bが通る流路であってもよい。液流路部160には、上述した作動蒸気102aが通ってもよい。液流路部160は、上述した密封空間103の一部を構成しており、蒸気流路部150に連通している。液流路部160は、作動液102bを蒸発領域SRに輸送するための毛細管構造として構成されている。液流路部160は、ウィックと称する場合もある。液流路部160は、各ランド部133の第1本体面130aの全体にわたって形成されていてもよい。
図55等では図示していないが、枠体部132の第1本体面130aの内側部分に、液流路部160が形成されていてもよい。本実施の形態においては、ランド部133の第2本体面130bおよび枠体部132の第2本体面130bには、液流路部は形成されていない。
【0284】
図58に示すように、液流路部160は、複数の溝を含む第1溝集合体の一例である。より具体的には、液流路部160は、複数の主流溝161と、複数の連絡溝165と、を含んでいる。液流路部160の主流溝161および連絡溝165は、第1溝の一例である。主流溝161および連絡溝165は、作動液102bが通る溝である。連絡溝165は、主流溝161と連通している。
【0285】
各主流溝161は、
図58に示すように、X方向に延びている。主流溝161は、主として、作動液102bが毛細管作用によって流れるように小さな流路断面積を有している。主流溝161の流路断面積は、蒸気通路151、152の流路断面積よりも小さい。主流溝161は、作動蒸気102aから凝縮した作動液102bを蒸発領域SRに輸送するように構成されている。各主流溝161は、X方向に直交するY方向に沿って、等間隔に離間していてもよい。各主流溝161は、互いに平行に位置していてもよい。
【0286】
主流溝161は、後述するウィックシートエッチング工程において、ウィックシート130の第1本体面130aからエッチングされることによって形成される。このことにより、主流溝161は、
図57に示すように、湾曲状に形成された壁面162を有していてもよい。この壁面162は、主流溝161を画定し、第2本体面130bに向かって膨らむような形状で湾曲していてもよい。
【0287】
図57および
図58に示すように、主流溝161の幅w15は、第1蒸気流路凹部153の幅w12よりも小さくてもよい。主流溝161の幅w15は、ランド部133の幅w11よりも小さくてもよい。主流溝161の幅w15は、例えば、5μm~400μmであってもよい。幅w15は、第1本体面130aにおける主流溝161の寸法を意味している。
図57および
図58においては、幅w15は、主流溝161のY方向寸法に相当している。主流溝161の深さh11は、例えば、3μm~300μmであってもよい。深さh11は、主流溝161のZ方向寸法に相当している。
【0288】
図58に示すように、各連絡溝165は、X方向とは異なる方向に延びている。本実施の形態による各連絡溝165はY方向に延びており、主流溝161に垂直に形成されている。いくつかの連絡溝165は、互いに隣り合う主流溝161同士を連通している。他の連絡溝165は、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152と主流溝161とを連通している。すなわち、当該連絡溝165は、Y方向におけるランド部133の側縁133eから当該側縁133eに隣り合う主流溝161に延びている。このようにして、第1蒸気通路151が主流溝161に連通しているとともに、第2蒸気通路152が主流溝161に連通している。
【0289】
連絡溝165は、主として、作動液102bが毛細管作用によって流れるように、小さな流路断面積を有している。連絡溝165の流路断面積は、蒸気通路151、152の流路断面積よりも小さい。連絡溝165は、X方向に沿って、所定の間隔で離間している。各連絡溝165は、互いに平行に位置していてもよい。
【0290】
連絡溝165も、主流溝161と同様に、後述するエッチングによって形成される。このことにより、連絡溝165は、主流溝161と同様の湾曲状に形成された壁面(図示せず)を有していてもよい。連絡溝165の幅w16は、第1蒸気流路凹部153の幅w12よりも小さくてもよい。連絡溝165の幅w16は、ランド部133の幅w11よりも小さくてもよい。
図58に示すように、連絡溝165の幅w16は、主流溝161の幅w15と等しくてもよい。しかしながら、幅w16は、幅w15よりも大きくてもよく、あるいは小さくてもよい。幅w16は、第1本体面130aにおける連絡溝165の寸法を意味している。
図58においては、幅w16は、連絡溝165のX方向寸法に相当している。連絡溝165の深さは、主流溝161の深さh11と等しくてもよい。しかしながら、連絡溝165の深さは、深さh11よりも深くてもよく、あるいは浅くてもよい。
【0291】
図58に示すように、液流路部160は、複数の凸部列163を有している。凸部列163は、各々のランド部133の第1本体面130aに形成されている。凸部列163は、互いに隣り合う主流溝161の間に位置している。各凸部列163は、X方向に配列された複数の凸部164を含んでいる。凸部164は、第1シート110に当接している。各凸部164は、
図58に示すように、平面視において、X方向が長手方向となるように矩形形状に形成されている。Y方向において互いに隣り合う凸部164の間に、主流溝161が介在されている。X方向において互いに隣り合う凸部164の間に、連絡溝165が介在されている。
【0292】
凸部164は、後述するウィックシートエッチング工程においてエッチングされることなく、ウィックシート130の材料が残る部分である。本実施の形態では、
図58に示すように、凸部164の平面形状が、矩形形状になっている。より具体的には、凸部164の平面形状とは、第1本体面130aの位置における平面形状に相当している。
【0293】
本実施の形態においては、凸部164は、千鳥状に位置している。より具体的には、Y方向において互いに隣り合う凸部列163の凸部164が、X方向において互いにずれた位置に位置している。このずれ量は、X方向における凸部164の配列ピッチの半分であってもよい。凸部164の幅w17は、例えば、5μm~500μmであってもよい。幅w17は、第1本体面130aにおける凸部164の寸法を意味している。
図58においては、幅w17は、凸部164のY方向寸法に相当している。なお、凸部164の位置は、千鳥状であることに限られることはなく、並列配列されていてもよい。この場合、Y方向において互いに隣り合う凸部列163の各凸部164が、X方向に同じ位置に位置する。
【0294】
ところで、第1シート110、第2シート120およびウィックシート130を構成する材料は、ベーパーチャンバ101としての放熱効率を確保できる程度に熱伝導率が良好な材料であれば、特に限られることはない。例えば、各シート110、120、130は、金属材料で構成されていてもよい。例えば、各シート110、120、130は、銅または銅合金を含んでいてもよい。銅および銅合金は、良好な熱伝導率と、作動流体として純水を使用する場合の耐腐食性と、を有している。銅の例としては、純銅および無酸素銅(C1020)等が挙げられる。銅合金の例としては、錫を含む銅合金、チタンを含む銅合金(C1990等)、並びに、ニッケル、シリコンおよびマグネシウムを含む銅合金であるコルソン系銅合金(C7025等)などが挙げられる。錫を含む銅合金は、例えば、りん青銅(C5210等)である。
【0295】
図46に示すベーパーチャンバ101の厚さt11は、例えば、100μm~500μmであってもよい。ベーパーチャンバ101の厚さt11を100μm以上にすることにより、蒸気流路部150を適切に確保できる。このため、ベーパーチャンバ101は、適切に機能できる。一方、厚さt11を500μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ101の厚さt11が厚くなることを抑制できる。このため、ベーパーチャンバ101を薄くできる。
【0296】
ウィックシート130の厚さは、第1シート110の厚さよりも厚くてもよい。同様に、ウィックシート130の厚さは、第2シート120の厚さよりも厚くてもよい。本実施の形態においては、第1シート110の厚さと第2シート120の厚さが等しい例を示している。しかしながら、このことに限られることはなく、第1シート110の厚さと第2シート120の厚さは、異なっていてもよい。
【0297】
第1シート110の厚さt12は、例えば、6μm~100μmであってもよい。第1シート110の厚さt12を6μm以上にすることにより、第1シート110の機械的強度および長期信頼性を確保できる。一方、第1シート110の厚さt12を100μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ101の厚さt11が厚くなることを抑制できる。第2シート120の厚さt13は、第1シート110の厚さt12と同様に設定されていてもよい。
【0298】
ウィックシート130の厚さt14は、例えば、50μm~400μmであってもよい。ウィックシート130の厚さt14を50μm以上にすることにより、蒸気流路部150を適切に確保できる。このため、ベーパーチャンバ101は、適切に機能できる。一方、400μm以下にすることにより、ベーパーチャンバ101の厚さt11が厚くなることを抑制できる。このため、ベーパーチャンバ101を薄くできる。なお、ウィックシート130の厚さt14は、第1本体面130aと第2本体面130bとの距離であってもよい。
【0299】
図45に示すように、本実施の形態によるベーパーチャンバ101は、屈曲領域107を含んでいる。屈曲領域107において、ベーパーチャンバ101が、平面視でX方向に交差する方向に延びる屈曲線108に沿って屈曲している。
図44および
図45に示すように、本実施の形態による屈曲線108は、平面視でY方向に延びている。Y方向は、平面視でX方向に直交する方向である。屈曲線108は、枠体部132、ランド部133、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152を横切っている。このことにより、第1シート110が各蒸気通路151、152に入り込むような変形を抑制できるとともに、第2シート120が各蒸気通路151、152に入り込むような変形を抑制できる。第1蒸気通路151および第2蒸気通路152の流路断面積を確保できる。第1領域105、第2領域106および屈曲領域107は、屈曲線108に沿った境界線で区分けされてもよい。
図44および
図45に示す例では、各領域105、106、107は、平面視でY方向に延びる境界線で区分けされてもよい。
【0300】
図45および
図59に示すように、上述した第2シート外面凹部123は、屈曲領域107に位置している。第2シート外面凹部123は、屈曲領域107を屈曲の内側または外側から見たときに、屈曲線108に重なっている。
【0301】
ベーパーチャンバ101は、
図59に示すように屈曲している。第1シート110は、ウィックシート130よりも屈曲の外側に位置している。屈曲領域107において、第1シート110は、屈曲の中心Oに対して、ウィックシート130よりも外側に位置している。第2シート120は、ウィックシート130よりも屈曲の内側に位置している。第2シート120は、屈曲の中心Oに対して、ウィックシート130よりも内側に位置している。
【0302】
各蒸気通路151、152は、
図59に示すように、屈曲領域107に位置する通路屈曲部157を含んでいてもよい。
図59には、通路屈曲部157の一例が示されている。
図59では、Y方向に沿って見たときの通路屈曲部157の形状が、1/4の円弧をなしているが、これに限られることはない。通路屈曲部157は、上述した第1蒸気流路凹部153および第2蒸気流路凹部154を含んでいてもよい。
【0303】
次に、このような構成からなる本実施の形態のベーパーチャンバ101の製造方法について説明する。
【0304】
まず、準備工程として、第1シート110、第2シート120およびウィックシート130を準備する。準備工程は、第2シート120をエッチングすることにより形成する第2シートエッチング工程と、ウィックシート130をエッチングにより形成するウィックシートエッチング工程と、を含んでいてもよい。各々のエッチング工程において、第2シート120およびウィックシート130は、フォトリソグラフィー技術によるパターン状のレジスト膜(図示せず)を用いて、エッチングによって形成されてもよい。
【0305】
仮止め工程として、第1シート110、ウィックシート130および第2シート120が仮止めされる。例えば、各シート110、120、130は、スポット溶接またはレーザ溶接で仮止めされてもよい。この際、上述したアライメント孔112、122、135を用いて、各シート110、120、130が位置合わせされてもよい。
【0306】
次に、接合工程として、第1シート110と、ウィックシート130と、第2シート120とが、恒久的に接合される。各シート110、120、130は、拡散接合によって接合されてもよい。
【0307】
接合工程の後、注入工程として、密封空間103が真空引きされるとともに、注入部104(
図45参照)から密封空間103に作動液102bが注入される。
【0308】
注入工程の後、封止工程として、上述した注入流路136が封止される。このことにより、密封空間103と外部との連通が遮断され、密封空間103が密封される。作動液102bが封入された密封空間103が得られ、密封空間103内の作動液102bが外部に漏洩することが防止される。
【0309】
封止工程の後、屈曲工程として、第1シート110、第2シート120およびウィックシート130が屈曲されてもよい。例えば、
図45に示すようなY方向に延びる屈曲線108に沿って、各シート110、120、130が屈曲される。この際、屈曲の内側となる第2シート120の第2シート外面120bに、図示しない治具を当接する。X方向における各シート110、120、130のX方向における両端部が把持されて、各シート110、120、130が所望の角度で屈曲される。このことにより、
図44に示す屈曲されたベーパーチャンバ101が得られ、ベーパーチャンバ101の屈曲領域107が形成される。なお、屈曲工程は、接合工程と注入工程との間に行ってもよい。
【0310】
本実施の形態においては、屈曲の内側に位置する第2シート120の第2シート外面120bに、第2シート外面凹部123が形成されている。屈曲工程においては、第2シート外面凹部123が形成された位置でベーパーチャンバ101を屈曲してもよい。屈曲線108が第2シート外面凹部123が延びる方向に沿うように、ベーパーチャンバ101を屈曲してもよい。第2シート外面凹部123は、容易に視認でき、屈曲位置の目印となり得る。
【0311】
屈曲時、第2シート120のうち各蒸気通路151、152を覆っている第2シート蓋部124(
図57参照)に、圧縮応力が作用する。第2シート120は屈曲の内側に位置するため、第2シート120の第2シート外面120bに、図示しない治具が当接する。このため、第2シート蓋部124は、屈曲の内側への変位が規制され、第2シート120よりも屈曲の外側に位置する第2蒸気流路凹部154に入り込む傾向にある。しかしながら、本実施の形態によれば、屈曲領域107における第2シート外面120bに、第2シート外面凹部123が形成されている。このことにより、屈曲時に第2シート蓋部124に作用する圧縮応力を吸収でき、第2シート蓋部124が第2蒸気流路凹部154に入り込むことを抑制できる。
【0312】
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ101が得られる。
【0313】
上述のようにして得られたベーパーチャンバ101は、基板Sに実装する際、
図59に示すように、粘着剤ADを用いて基板Sに接合されてもよい。粘着剤ADは、屈曲領域107における第2シート外面120bに接合されてもよい。この場合、粘着剤ADは、第2シート外面凹部123に入り込む。このことにより、ベーパーチャンバ101と粘着剤ADとの密着性が向上する。
【0314】
次に、ベーパーチャンバ101の作動方法、すなわち、電子デバイスDの冷却方法について説明する。
【0315】
上述のようにして得られたベーパーチャンバ101は、モバイル端末等のハウジングH内に設置される。そして、第2領域106において、第1シート110の第1シート外面110aが、ハウジング部材Haと接する。第1領域105において、第2シート120の第2シート外面120bが、電子デバイスDと接する。密封空間103内の作動液102bは、その表面張力によって、密封空間103の壁面に付着する。より具体的には、作動液102bは、第1蒸気流路凹部153の壁面153a、第2蒸気流路凹部154の壁面154a、液流路部160の主流溝161の壁面162および連絡溝165の壁面に付着する。また、作動液102bは、第1シート110の第1シート内面110bのうち第1蒸気流路凹部153に露出した部分にも付着し得る。さらに、作動液102bは、第2シート120の第2シート内面120aのうち第2蒸気流路凹部154、主流溝161および連絡溝165に露出した部分にも付着し得る。
【0316】
この状態で電子デバイスDが発熱すると、蒸発領域SRに存在する作動液102bが、電子デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液102bが蒸発し、作動蒸気102aが生成される。生成された作動蒸気102aは、密封空間103を構成する第1蒸気通路151および第2蒸気通路152内で拡散する(
図55の実線矢印参照)。より具体的には、蒸気流路部150の第1蒸気通路151のうちX方向に延びる部分と、第2蒸気通路152とにおいて、作動蒸気102aは、主としてX方向に拡散する。この場合、作動蒸気102aの一部は、通路屈曲部157を通って拡散する。一方、第1蒸気通路151のうちY方向に延びる部分においては、作動蒸気102aは、主としてY方向に拡散する。
【0317】
そして、各蒸気通路151、152内の作動蒸気102aは、蒸発領域SRから離れ、比較的温度の低い凝縮領域CRに輸送される。凝縮領域CRにおいて、作動蒸気102aは、主として第1シート110に放熱して冷却される。第1シート110が作動蒸気102aから受けた熱は、ハウジング部材Ha(
図46参照)を介して外気に伝達される。
【0318】
作動蒸気102aは、凝縮領域CRにおいて第1シート110に放熱することにより、蒸発領域SRにおいて吸収した潜熱を失う。このことにより、作動蒸気102aは凝縮し、作動液102bが生成される。生成された作動液102bは、各蒸気流路凹部153、154の壁面153a、154aおよび第1シート110の第1シート内面110bおよび第2シート120の第2シート内面120aに付着する。ここで、蒸発領域SRでは作動液102bが蒸発し続けている。このため、液流路部160のうち凝縮領域CRにおける作動液102bは、各主流溝161の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かって輸送される(
図55の破線矢印参照)。このことにより、各壁面153a、154a、第1シート内面110bおよび第2シート内面120aに付着した作動液102bは、液流路部160に移動し、連絡溝165を通って主流溝161に入り込む。このようにして、各主流溝161および各連絡溝165に、作動液102bが充填される。充填された作動液102bは、各主流溝161の毛細管作用により、蒸発領域SRに向かう推進力を得て、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
図44に示すように、蒸発領域SRが、ベーパーチャンバ101の上部に位置する場合であっても、作動液102bは、毛細管作用によって輸送される。
【0319】
液流路部160においては、各主流溝161が、対応する連絡溝165を介して、隣り合う他の主流溝161と連通している。このことにより、互いに隣り合う主流溝161同士で、作動液102bが往来し、主流溝161でドライアウトが発生することが抑制されている。このため、各主流溝161内の作動液102bに毛細管作用が付与されて、作動液102bは、蒸発領域SRに向かってスムースに輸送される。
【0320】
蒸発領域SRに達した作動液102bは、電子デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。作動液102bから蒸発した作動蒸気102aは、蒸発領域SR内の連絡溝165を通って、流路断面積が大きい第1蒸気流路凹部153および第2蒸気流路凹部154に移動する。そして、作動蒸気102aは、各蒸気流路凹部153、154内で拡散し、作動蒸気102aの一部は、通路屈曲部157を通って拡散できる。このようにして、作動流体102a、102bが、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながら密封空間103内を還流する。このことにより、電子デバイスDの熱が拡散されて、放出される。この結果、電子デバイスDが冷却される。
【0321】
このように本実施の形態によれば、屈曲領域107において、第2シート120の第2シート外面120bに、第2シート外面凹部123が位置している。このことにより、ベーパーチャンバ101の屈曲時、第2シート120に作用する応力を吸収でき、屈曲領域107における第2シート120が、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152内に入り込むことを抑制できる。このため、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152の流路断面積を確保でき、屈曲領域107における作動蒸気102aの流れが阻害されることを抑制できる。この結果、屈曲された場合であっても、ベーパーチャンバ101の放熱効率を向上できる。また、第2シート外面凹部123は容易に視認できるため、屈曲前に、ベーパーチャンバ101の屈曲位置の目印とすることができる。このため、屈曲作業性を向上できる。
【0322】
また、本実施の形態によれば、第2シート120は、ウィックシート130よりも屈曲の内側に位置している。このことにより、ベーパーチャンバ101の屈曲時、第2シート120に作用する圧縮応力を、第2シート外面凹部123で吸収できる。このため、屈曲領域107における第2シート120が、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152内に入り込むことを抑制できる。
【0323】
また、本実施の形態によれば、第2シート外面凹部123は、屈曲線108に沿って延び、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152を横切っている。このことにより、ベーパーチャンバ101の屈曲時、第2シート120に作用する応力を効果的に吸収でき、屈曲領域107における第2シート120が、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152内に入り込むことをより一層抑制できる。また、ベーパーチャンバ101を屈曲線108に沿って容易に屈曲できる。
【0324】
また、本実施の形態によれば、屈曲領域107において、第2シート外面120bに複数の第2シート外面凹部123が位置している。複数の第2シート外面凹部123は、X方向に並んでいる。このことにより、ベーパーチャンバ101の屈曲時、第2シート120に作用する応力を効果的に吸収でき、第2シート120が、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152内に入り込むことをより一層抑制できる。また、ベーパーチャンバ101を屈曲線108に沿って容易に屈曲できる。
【0325】
また、本実施の形態によれば、屈曲線108は、X方向に直交するY方向に延びている。このことにより、ベーパーチャンバ101を、ランド部133が延びるX方向に直交する方向に沿って屈曲することが容易となる。このため、屈曲領域107において、第1シート110が各蒸気通路151、152に入り込むような変形を抑制できるとともに、第2シート120が各蒸気通路151、152に入り込むような変形を抑制できる。このため、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152の流路断面積を確保でき、屈曲領域107における作動蒸気102aの流れが阻害されることを抑制できる。
【0326】
なお、上述した本実施の形態においては、ランド部133の第2本体面130bおよび枠体部132の第2本体面130bに、液流路部が形成されていない例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、ランド部133の第2本体面130bに、図示しない液流路部が形成されていてもよい。液流路部は、上述した液流路部160と同様にして、主流溝161と連絡溝165とを含んでいてもよい。第2本体面130bに形成される液流路部の溝の流路断面積は、液流路部160の溝の流路断面積と等しくてもよく、または、液流路部160の溝の流路断面積よりも大きくてもよい。また、第2本体面130bに液流路部が形成される場合には、第1本体面130aに液流路部160は形成されていなくてもよい。
【0327】
また、上述した本実施の形態においては、第2シート外面凹部123が、Y方向に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、
図60に示すように、複数の第2シート外面凹部123は、屈曲線108に沿って並んでいてもよく、Y方向に並んでいてもよい。隣り合う第2シート外面凹部123同士は離間している。
図60に示す例においては、第2シート外面凹部123は、千鳥状に配置されているが、格子状に配置されていてもよく(
図63参照)、第2シート外面凹部123の配置は任意である。
【0328】
複数の第2シート外面凹部123のうち、一部の第2シート外面凹部123は、平面視で第1蒸気通路151または第2蒸気通路152に重なっていてもよい。残りの第2シート外面凹部123は、平面視で第1蒸気通路151または第2蒸気通路152に重なっていなくてもよい。あるいは、全ての第2シート外面凹部123は、平面視で第1蒸気通路151または第2蒸気通路152に重なっていてもよい。
図60に示す例においては、第2シート外面凹部123は、ランド部133、枠体部132および蒸気通路151、152に重なっている。
【0329】
図60に示す例においても、ベーパーチャンバ101の屈曲時、第2シート120に作用する応力を吸収でき、屈曲領域107における第2シート120が、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152内に入り込むことを抑制できる。また、
図60に示す例においては、隣り合う第2シート外面凹部123同士が離間しているため、ベーパーチャンバ101の機械的強度が特定の方向に低下することを抑制できる。
【0330】
図60に示す例においては、第2シート外面凹部123は、円形形状の平面形状を有しているが、第2シート外面凹部123の平面形状は任意である。例えば、
図61に示すように、第2シート外面凹部123は、楕円形状の平面形状を有していてもよい。また例えば、
図62に示すように、第2シート外面凹部123は、矩形形状の平面形状を有していてもよい。また、
図63に示すように、第2シート外面凹部123が矩形形状の平面形状を有している場合において、第2シート外面凹部123は、矩形の各辺がX方向およびY方向に対して傾斜し、矩形の対向する角部が屈曲線108に沿うように配置されていてもよい。
図63に示す例においては、第2シート外面凹部123は、格子状に配置されている。また、第2シート外面凹部123および屈曲線108は、平面視で、X方向に傾斜する方向に延びていてもよい。
【0331】
また、上述した本実施の形態においては、屈曲領域107において、第2シート120の第2シート外面120bに、第2シート外面凹部123が位置している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、
図64に示すように、屈曲領域107において、第1シート110の第1シート外面110aに、第1シート外面凹部113が位置していてもよい。この場合、ベーパーチャンバ101の屈曲時、第1シート110に作用する引張応力を吸収でき、屈曲領域107における第1シート110が、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152内に入り込むことを抑制できる。
【0332】
第1シート外面凹部113は、第2シート外面凹部123と同様に形成できる。
図64に示すように、第1シート外面110aに第1シート外面凹部113が形成されるとともに、第2シート外面120bに第2シート外面凹部123が形成されていてもよい。あるいは、図示しないが、第1シート外面110aに第1シート外面凹部113が形成され、第2シート外面120bに、第2シート外面凹部123が形成されていなくてもよい。また、第2シート外面凹部123が形成された第2シート120を、屈曲の外側に配置し、第1シート外面凹部113が形成されていない第1シート110を、屈曲の内側に配置してもよい。
【0333】
また、上述した本実施の形態において、
図65および
図66に示すように、上述した第1の実施の形態~第14の実施の形態で説明したような、シート溝70、80が設けられていてもよい。
図65および
図66に示す例においては、第2シート120の第2シート内面120aに、シート溝70が設けられている。
図65および
図66に示すように、シート溝70は、平面視で、蒸気通路151、152および第2シート外面凹部123と重なる位置に設けられていてもよい。シート溝70は、平面視で、蒸気通路151、152と重ならない位置、例えばランド部133と重なる位置には設けられていなくてもよい。
図65に示す例においては、シート溝70の第1端部71は、平面視で、ランド部133のY方向負側(
図65のおける下側)の縁部と重なり、シート溝70の第2端部72は、平面視で、ランド部133のY方向正側(
図65のおける上側)の縁部と重なっている。また、
図65に示すように、シート溝70は、平面視で、第2シート外面凹部123と重ならない位置には設けられていなくてもよい。このようなシート溝70により、ベーパーチャンバ101の屈曲時、第2シート120に作用する応力をより一層吸収でき、屈曲領域107における第2シート120が、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152内に入り込むことをより一層抑制できる。
【0334】
なお、
図65および
図66に示す例においては、シート溝70は、平面視で、第2シート外面凹部123と重ならない位置には設けられていないが、シート溝70は、平面視で、第2シート外面凹部123と重ならない位置にも設けられていてもよい。この場合、屈曲領域107においては作動蒸気102aが凝縮し易く作動液102bが生成され易いことから、凝縮した作動液102bをシート溝70の毛細管作用によって液流路部160に速やかに移動させることができ、流路抵抗の増大をより一層抑制することができる。
【0335】
(第16の実施の形態)
次に、
図67および
図68を用いて、本開示の第16の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0336】
図67および
図68に示す第16の実施の形態においては、屈曲線が、第1方向に傾斜する方向に延びている点が主に異なる。他の構成は、
図42~
図66に示す第15の実施の形態と略同一である。なお、
図67および
図68において、
図42~
図66に示す第15の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0337】
本実施の形態によるベーパーチャンバ101は、
図67および
図68に示すように、平面視でX方向に傾斜した屈曲線108に沿って屈曲されている。
図67および
図68に示す屈曲線108は、X方向に傾斜する方向に延びるとともにY方向に傾斜する方向に延びている。本実施の形態による屈曲線108も、平面視でX方向に交差する方向に延びている。
【0338】
図68に示すように、各々の第2シート外面凹部123は、平面視でX方向に傾斜する方向に延びている。この場合においても、第2シート外面凹部123は、X方向に交差している。第2シート外面凹部123は、X方向に並んでいてもよく、X方向に等間隔に離間していてもよい。各々の第2シート外面凹部123は、互いに平行に位置していてもよい。
【0339】
このように本実施の形態によれば、屈曲線108が、X方向に傾斜する方向に延びている。このことにより、ベーパーチャンバ101を、X方向に傾斜する方向に延びる屈曲線108に沿って屈曲した場合であっても、屈曲領域107における第2シート120が、第1蒸気通路151または第2蒸気通路152内に入り込むことを抑制できる。このため、第1蒸気通路151および第2蒸気通路152の流路断面積を確保でき、屈曲領域107における作動蒸気102aの流れが阻害されることを抑制できる。この結果、屈曲された場合であっても、ベーパーチャンバ101の放熱効率を向上できる。
【0340】
なお、上述した本実施の形態においては、第2シート外面凹部123が、平面視でX方向に傾斜する方向に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、複数の第2シート外面凹部123は、屈曲線108に沿って並んでいてもよく、X方向に傾斜する方向に並んでいてもよい。この場合、
図60~
図63に示す例と同様に、第2シート外面凹部123が形成されていてもよい。
【0341】
(第17の実施の形態)
次に、
図69および
図70を用いて、本開示の第17の実施の形態によるベーパーチャンバおよび電子機器について説明する。
【0342】
図69および
図70に示す第17の実施の形態においては、ランド部の第1本体面または第2本体面に、ランド凹部が位置している点が主に異なる。他の構成は、
図42~
図66に示す第15の実施の形態と略同一である。なお、
図69および
図70において、
図42~
図66に示す第15の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0343】
本実施の形態によるベーパーチャンバ101は、
図69に示すように、ランド部133の第2本体面130bに、ランド凹部137が形成されている。ランド凹部137は、蒸気通路151、152には連通していない。ランド凹部137は、液流路部160の主流溝161および連絡溝165にも連通していない。上述したように、液流路部160は、ランド部133の第1本体面130aに位置しており、ランド凹部137は、液流路部160とは反対側に位置する第2本体面130bに形成されている。ランド部133の第1本体面130aおよび第2本体面130bの一方に液流路部160が形成され、他方にランド凹部137が形成されていてもよい。例えば、液流路部160が、ランド部133の第2本体面130bに位置している場合には、ランド凹部137は、ランド部133の第1本体面130aに形成されていてもよい。
【0344】
図70に示すように、ランド凹部137は、平面視で、第2シート外面凹部123に重なっている。言い換えると、ランド凹部137は、屈曲領域107を屈曲の内側または外側から見たとときに、第2シート外面凹部123に重なっている。
【0345】
ランド凹部137は、屈曲領域107に位置している。ランド凹部137は、第2本体面130bに凹状に形成されており、溝状に形成されていてもよい。
【0346】
ランド凹部137は、X方向に延びている。ランド凹部137は、第2シート外面凹部123に交差している。ランド凹部137は、第2シート外面凹部123よりもX方向の両側に延び出ていてもよい。
【0347】
各々のランド部133に、ランド凹部137が形成されていてもよい。1つのランド部133に、複数のランド凹部137が形成されていてもよい。ランド凹部137は、第2シート外面凹部123および屈曲線108に沿って並んでいてもよく、Y方向に並んでいてもよい。ランド凹部137は、互いに平行に位置していてもよい。ランド凹部137は、枠体部132に形成されていてもよい。
【0348】
ランド凹部137は、上述したウィックシートエッチング工程において、ウィックシート130の第2本体面130bからエッチングされることによって形成される。このことにより、ランド凹部137は、
図69に示すように、湾曲状に形成された壁面を有していてもよい。この壁面は、ランド凹部137を画定し、第1本体面130aに向かって膨らむような形状で湾曲していてもよい。
【0349】
図69に示すように、ランド凹部137の幅w19は、例えば、50μm~150μmであってもよい。幅w19は、第2本体面130bにおけるランド凹部137の寸法を意味している。幅w19は、ランド凹部137のY方向寸法に相当している。ランド凹部137の深さh13は、例えば、20μm~120μmであってもよい。深さh13は、ランド凹部137のZ方向寸法に相当している。
【0350】
このように本実施の形態によれば、ランド部133の第2本体面130bに、蒸気通路151、152に連通しないランド凹部137が位置し、ランド凹部137が、第2シート外面凹部123に重なっている。このことにより、屈曲領域107におけるランド部133の剛性を低下できる。このため、ベーパーチャンバ101の屈曲時、ランド部133を容易に屈曲できる。
【0351】
また、本実施の形態によれば、ランド凹部137は、第2シート外面凹部123よりもX方向の両側に延び出ている。このことにより、第2シート外面凹部123の近傍においても、ランド部133の剛性を低下できる。このため、ベーパーチャンバ101の屈曲時、ランド部133をより一層容易に屈曲できる。
【0352】
なお、上述した本実施の形態においては、第2シート外面凹部123および屈曲線108が、平面視でY方向に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはない。例えば、第2シート外面凹部123は、平面視でX方向の傾斜する方向に延びていてもよい。
図67および
図68に示すように、第2シート外面凹部123および屈曲線108は、平面視でX方向に傾斜する方向に延びていてもよい。この場合においても、各々のランド部133に形成されたランド凹部137は、第2シート外面凹部123に重なるとともに、第2シート外面凹部123および屈曲線108に沿って並んでいてもよい。
【0353】
本発明は上記各実施の形態および各変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記各実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。上記各実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。