(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169219
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20231121BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143391
(22)【出願日】2023-09-05
(62)【分割の表示】P 2022084288の分割
【原出願日】2011-02-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
(71)【出願人】
【識別番号】391001848
【氏名又は名称】株式会社ユピテル
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】片桐 康晴
(57)【要約】 (修正有)
【課題】実際に警報対象に至る可能性の高い警報対象を抽出することができること
【解決手段】車両の位置を検出するGPS受信器8と、警報対象の位置情報や道路ネットワーク情報を記憶するデータベース19と、警報対象の位置情報と、車両の現在位置が所定の接近関係を有する場合に表示部5等に対する報知制御を行う制御部18を備える。制御部は、道路ネットワーク情報を用いて自車位置から周囲に存在する警報対象までの推奨経路を求め、求めた推奨経路を走行した場合の走行距離に基づき接近関係の有無を決定するようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を取得する機能と、
前記車両が警報対象物と所定の接近関係を有する場合に警報を発する機能と、
を有し、
前記警報を発する機能は、
車両の走行速度を測定する装置又は車両を監視する装置を前記警報対象物とし、前記車両の進行方向と、前記警報対象物の設置方向又は監視方向とに基づいて、前記警報を発すべき前記警報対象物を抽出する
システム。
【請求項2】
前記警報を発する機能は、
前記車両の現在位置から前記警報対象物までに至る推奨経路で走行した場合の走行距離が所定の接近距離以内であり、かつ前記推奨経路を走行して前記警報対象物に到達する直前の車両の進行方向と前記警報対象物の設置方向とが警報条件を満たす前記警報対象物を抽出する
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記警報を発する機能は、
前記車両の進行方向と前記警報対象物の設置方向又は監視方向とのなす角が0度の場合、警報を発すべき前記警報対象物として抽出しない
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記警報を発する機能は、
前記車両の進行方向と前記警報対象物の設置方向又は監視方向とが、180度を中心として所定角度範囲内にある場合には、警報を発すべき前記警報対象物として抽出する
請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のシステムの機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置が警報対象と所定の接近関係になった場合にその接近に関する情報を報知するシステム及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の速度を測定する車両速度測定装置が路上周辺等に多数設置されるようになっている。車両速度測定装置の一例を示すと、所定周波数帯域のマイクロ波を車両に向けて発射し、その反射波を受信して車両の走行スピードを測定するようになっている。
【0003】
こうした車両速度測定装置の存在を検出するため、車両速度測定装置から発射されたマイクロ波を検出して警報を出力するように構成されたマイクロ波検出器が従来から知られている。
【0004】
また、車両速度測定装置の中には、従来のマイクロ波検出器では検出できないものもある。一例を挙げると、ループ式と称されるように、地中にループ状のコイルを埋め込み、そのコイルの上を車両が通過するのを検知するとともに車速も判定するものがある。また、マイクロ波以外の光を用いて車両の速度を検出するものもある。そこで、予め車両速度測定装置の設置位置情報を記憶させておき、GPS(Global Positioning System )等によって取得した現在位置が、記憶した設置位置に近づいた場合(所定の接近関係になった場合)に、マイクロ波の検知の有無に関係なく警告を発するようにしたレーダー探知機等の車載用電子機器がある(特許文献1)。これら各種の車両速度測定装置は、交通事故の多発地点や、スピードを出しやすく交通事故を誘発しやすい箇所等に設置されるので、それらの箇所を事前にドライバーに通知することで、特に危険な場所で交通規則を遵守した安全運転を促すことができる。
【0005】
具体的な報知の態様としては、例えば、「左方向 1km先 高速道 Hシステムです」、「すぐ先 一般道 Nシステムです」などの相対位置関係や、目的の内容を特定する内容を音声情報としてスピーカから出力したり、それらを表す文字やイメージを表示部に表示したりすることが行われる。
【0006】
また、警報対象は、固定式の車両速度測定装置、Nシステム(自動車ナンバー自動読み取り装置)、交通事故多発地帯、各種の取り締まりエリア、検問エリア等、各種のものがあり、設定により警報する対象を選択できるようになっている。
【0007】
ところで、登録した警報対象が実際に警報されるための条件の1つとして、現在位置と警報対象の位置が所定の接近関係にあることがある。この接近関係は、具体的には、現在位置と警報対象の位置との間の直線距離を求め、その直線距離が設定された基準値r(例えば2km,1kmなど)以下としている。これにより現在位置を中心とした半径rの円内に存在する警報対象が実際に警報する対象として抽出される。
【0008】
このとき、現在位置の周囲に複数の警報対象が存在することが多々ある。係る場合、所定の条件に合致する1つの警報対象を目的物とし、その目的物について、上記のような相対位置関係等を示す警報情報を報知する。また、表示部を備えている場合、その表示画面の所定位置に自車を示すオブジェクトを描画すると共に、表示画面に表示された空間内に警報対象が存在する場合には、その警報対象のオブジェクトを画面上の対応する位置に描画する。このとき、上記の目的物となる警報対象の位置には、目的物になっていることがわかるように他の警報対象のオブジェクトとは異なる態様のオブジェクトを描画する。このようにオブジェクトの描画態様を変えることで、運転者は、表示画面に描画された複数の警報対象(オブジェクト)の中から目的物とされた警報対象の存在を認識し、自車位置との相対位置関係を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
警報対象を抽出する際の条件の1つである接近関係は、現在位置と警報対象の位置との間の直線距離に基づいて判定している。そのため、例えば、現在走行している道路と異なる道路上に設置された警報対象が、現在位置から所定の距離以下の直線距離にあると警報対象として報知されてしまう。しかし、その報知された警報対象は現在走行している道路に設置されていないため、そのまま走行していても警報対象の前を通過することはない。つまりこの警報は不要な警報である。係る不要な警報を受けることで、運転者は無用な心配をしてしまう。さらに、その警報対象の前を通過しないために警報対象を実際に見つけて通過を確認することができずに不安な状態が続くおそれもある。また、係る異なる道路が、現在走行している道路と平行で比較的接近している場合、仮に表示画面に自車位置と警報対象の位置にそれぞれのオブジェクトを描画したとすると、進行方向前方に当該警報対象のオブジェクトが描画されることから、自車が走行している道路上に警報対象があると誤認識してしまうおそれがある。特に、表示画面が小さい場合、誤認識するおそれが高くなる。
【0011】
また、例えば走行している道路の前方が大きくカーブしていて、その道路の曲がった先に警報対象が存在する場合、表示画面に自車位置と警報対象の位置にそれぞれのオブジェクトを描画したとすると、進行方向前方から大きく離れた位置に当該警報対象のオブジェクトが描画されることから、運転者は,一目見ただけでは走行している道路とは異なる道路にあると誤認識するおそれがある。逆に、現在は直線道路でその前方でカーブしている道路であって、その直線道路の延長線上で走行中の道路とは異なる道路に警報対象が存在している場合、表示画面に自車位置と警報対象の位置にそれぞれのオブジェクトを描画したとすると、進行方向前方に警報対象のオブジェクトが描画されるため、走行する道路の先に警報対象が存在していると誤認識してしまうおそれがある。特に、地図情報を記憶していない廉価な商品の場合、警報対象のポイントの位置情報を記憶してそのポイントの位置を表示する際に地図を表示できないので、誤認識の問題が大きくなる。
【0012】
また、警報対象の報知内容として、警報対象までの残り距離を報知する機能を備えたものがある。この残り距離は、上記の直線距離に基づいている。そして、実際に車両が走行する場合、道路がカーブしている場合はもちろんのこと、途中の交差点で右左折して進路を変更することがある。従って、警報対象は、現在走行している方向の延長線上にないことが多く、残り距離が減少していく度合いと、実際の走行距離との差が異なり、残り距離が減少していく程度に違和感が生じる。
【0013】
さらに、実際に警報対象の前に到着するまでに走行する距離は、直線距離よりも当然長くなる。そして、上記のように現在位置から実際に警報対象に到達するまでに右左折を繰り返したり、道路が大きくカーブしていたり、道路網の状態や一方通行その他の交通法規に従って走行する場合など、その差が非常に大きくなることもある。すると、最初に警報が発せられてから実際に警報対象に到着するまでに長距離を走行し、時間もかかることになる。その結果、運転者は、警報はあったものの、中々警報対象を視認して確認することができず、警報に対して疑心暗鬼になるおそれもあるばかりか、警報が間違いと誤判断した後で警報対象に至る事態を生じるおそれもある。また、そもそも右左折を繰り返して初めて到着するような警報対象の場所には実際に行かないことが多く、係る場合、無用な警報をすることになり好ましくない。
【0014】
一方、データベースに登録する警報対象の種別を増やすことに相まって、現在位置の周囲に存在する警報対象の数も多数になり、それらを全て表示すると警報対象のオブジェクトだらけになり、目的物の存在・位置がわかり難くなるという課題もある。また、警報する警報対象の数を少なくするため、報知する種別を予め登録したり、進行方向前方でかつ所定角度の扇形の領域内に存在するものを警報対象としたりすることなどが行われる。
【0015】
しかし、前者の場合、必要以上に警報種別を絞り込むと、せっかく登録されている各種の警報対象を報知することができない。また、後者の場合、大きくカーブしている道路の先や、交差点を曲がった先に存在する警報対象は、扇形の外に位置することもあり、警報することができなくなる。
【0016】
このように、従来のこの種の車載用電子機器は、周囲に存在する警報対象を適切に抽出し、警報を発することが十分に行えていないという課題がある。また、警報対象が複数存在する際に所定の警報対象(目的物)についての詳細な警報情報を報知する場合、運転者はどの警報対象について報知しているかが容易にわかるようにしたいという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的を達成するために、本発明に係る車載用電子機器は、(1)車両の現在位置を取得する位置取得手段と、前記位置取得手段によって取得した車両の現在位置と、警報対象の位置情報を記憶する位置記憶手段にアクセスして取得した当該警報対象の位置情報とが所定の接近関係を有する場合に報知手段に対する報知制御を行う制御手段と、を備えるシステムにおいて、前記制御手段は、道路ネットワーク情報を記憶する地図データ記憶手段にアクセスして取得した前記道路ネットワーク情報を用いて前記車両の現在位置から前記警報対象までの経路を求め、求めた経路に基づき前記接近関係の有無を決定するようにした。
【0018】
位置取得手段は、実施形態では、GPS受信器8に対応する。本発明の位置取得手段は、実施形態のGPS受信器のように現在位置を検出する位置検出手段によって取得するものはもちろんのこと、外部装置・機器等から車両の現在位置についての位置情報を取得する機能を備えたものも含む。係る外部装置・機器等としては、例えば、カーナビゲーション装置等の位置検出機能(GPS受信器)を備えた電子機器や、GPSアンテナユニットなどがある。
【0019】
地図データ記憶手段は、実施形態ではデータベース19に対応する。このように、装置に内蔵している場合もあれば、一部または全部の情報をサーバなどの外部の装置に記憶させておき、通信によりそのサーバにアクセスして必要な情報を取得するものもある。
【0020】
経路は、実施形態では推奨経路に対応する。この推奨経路は、カーナビゲーションシステムで一般に用いられるものを利用するとよく、現在位置から目的地まで至るまでの数ある経路の中から、走行距離が最も短いものや、短時間で到達するものに決定する。このとき、走行する道路種別(優先道路/一般道路)を特定して、条件に合致する経路を決定するようにしてもよい。本発明では、係るカーナビゲーションの技術を利用することもできるし、さらに別の条件に基づいて警報対象までの経路を求めても良い。
【0021】
従来の接近関係の判定は、現在位置と警報対象を結ぶ直線距離に基づいて求めていたが、本発明では道路ネットワーク情報を用いて求めた経路に基づいて判定する。経路に基づく判定は、例えば、警報対象が、実際に走行している道路の先に存在するか或いは別の道路に存在するか、現在位置から警報対象までに至るのが容易か否か等のより実際の走行に即した条件・状況に基づいて行うようにするとよい。このようにすれば、自車の周囲に登録した警報対象が多数存在する場合でも、実際の走行に即したものが「所定の接近関係を有する」と判定される。よってユーザは、自車の周囲に存在する多数の警報対象の中でより適切なものを知ることができる。
【0022】
(2)前記制御手段は、前記経路を走行した場合の距離を求め、その距離に基づいて前記接近関係の有無を決定するようにするとよい。道路網の状態、すなわち、直線道路かカーブ道路や、交差点の位置や、一方通行・右折禁止等の交通規則などの条件から、現在位置と警報対象までの直線距離と、経路に沿って警報対象に至るまで走行した場合の距離(走行距離)は異なる。そして、直線距離よりは当該距離の方が長くなるが、その差も状況に応じて大きく異なる。直線距離で近い警報対象があったとしても、そこに到達するまでは、迂回等することで長い距離を走行する必要があるとその警報対象に至るまでに時間がかかることもあり、すぐに警報する必要性が低いと共に、実際にその警報対象の箇所に行く可能性も低い。一方、係る経路に沿って走行する当該距離が短い警報対象に対しては、比較的すぐに到達する可能性があるため、警報を発するのが好ましい。このように経路を通って警報対象までに至るまでに走行する距離に基づいて接近関係を判断し警報を制御することで、適切に警報を発すべき警報対象を抽出し、報知することができる。
【0023】
(3)前記制御手段は、前記経路を走行した場合に要する時間を求め、その時間に基づいて前記接近関係の有無を決定するようにのしてもよい。時間は例えばVICSや通信によって取得した渋滞状況のプローブ情報等を用いて計算するとよい。警報対象に到達するまでに要する時間がかかる場合には、警報を発すべき緊急性が低く、逆に当該時間が短い場合には警報を発すべき緊急性が高くなる。よって、時間に基づいて接近関係の有無を決定すると良い。
【0024】
(4)前記制御手段は、前記経路を走行した場合に曲がる交差点の数を求め、その数に基づいて前記接近関係の有無を決定するものとするとよい。現在位置から警報対象に至る経路において、曲がる(右左折する)交差点の数が多いほど、その警報対象までは複雑なルートを通るものとなる。従って、複雑なルートを通る経路ほど、実際にその警報対象の箇所に行く可能性が低いといえる。つまり、実際に警報対象の箇所まで行く可能性が低いと言うことは、仮に直線距離等が短くても、そのときの走行状況にとっては接近していっていない(接近関係は低い・無い)といえる。このように曲がる交差点の数に基づいて接近関係を判断し警報を制御することで、適切に警報を発すべき警報対象を抽出し、報知することができる。
【0025】
(5)(4)の発明において、前記制御手段は、前記曲がる交差点の数が2回以上の警報対象は、正規の警報をしないようにするとよい。例えば現在走行している道路と平行(略平行・交差しない)な別の道路に警報対象が存在する場合、係る別の道路を走行するようになるためには、現在走行している道路から外れるためにその走行中の道路上の交差点で1回曲がり、さらに、別の道路に入るためには、その別の道路の交差点で1回曲がる必要がある。よって、係る別の道路を走行するために、少なくとも2回にわたり交差点で曲がる必要がある。換言すると、警報対象に至るまでに交差点を2回以上曲がる関係にある場合には、平行する別の道路上に警報対象が存在するか、複雑な経路を通るかであり、係る警報対象に至る可能性は低い。従って、本発明のようにすることで、たとえ警報対象までの距離(直線距離及びまたは経路を走行した場合の距離)が近くても、平行する他の道路等に存在する警報対象を効果的に排除することができる。正規の警報をしないとは、警報をしないものはもちろん、警報はするもののレベルを落として行うものなども含む。レベルを落とすとは、例えば、警報対象の位置に通常の警報対象に比べると目立たない態様のオブジェクトを描画したり、警報対象の位置にオブジェクトは描画しても、その警報対象に付随する詳細な警報情報は出力しないようにすることなどがある。
【0026】
(6)前記制御手段は、現在位置と警報対象の位置情報から、現在位置を中心とした設定された所定距離の半径の円または扇形の領域に存在する警報対象を警報対象候補として抽出し、抽出した警報対象候補までの前記経路を求め、求めた経路に基づき前記報知手段にて報知する警報対象を決定するとよい。経路を求める対象を絞り込むことで、制御手段の負荷が軽減する。警報対象候補の抽出の基準となる扇形の領域は、車両の進行方向に対し、半径rで中心角θの扇形の領域とするとよい。
【0027】
(7)前記所定の距離は、前記接近関係の有無を、前記経路を走行した場合の距離に基づいて決定する場合の接近関係が有りとされる距離以下とするとよい。現在位置から警報対象まで経路の道路に沿って走行したと仮定した場合の距離は、現在位置から警報対象までの直線距離よりと等しいか長くなる。そこで、当該所定の距離を、接近関係が有りとされる距離に設定することで、警報を発すべき警報対象になり得ないものを警報対象候補として抽出しないようにできる。さらに、当該走行距離と直線距離とが等しくなるのは、車両の現在位置から警報対象までが1本の直線道路でつながっている場合であり、多くの場合は、直線距離の方が短くなる。従って、所定の距離を接近関係が有りとされる距離より短く設定することで、警報対象候補として抽出される数を適切に減らすことができる。
【0028】
(8)前記警報対象が特定の方向から接近した場合に警報を発した方がよい警報対象の場合、その警報対象に関連付けて当該特定の方向を示す方向情報を所定の記憶手段に登録し、前記制御手段は、前記経路を走行し前記警報対象が設置されている道路を走行する際の車両の進行方向と、前記方向情報に基づいて、正規の警報をするか否かを決定するようにするとよい。
【0029】
車両が警報対象に接近していく場合において、警報対象に対してどの方向から接近していっても警報を発した方がよい警報対象と、特定の方向から接近した場合に警報を発した方がよい警報対象がある。一例を示すと、方向性が無くどの方向から接近していっても警報を発した方がよい警報対象としては、居眠り運転事故地点、駐禁監視エリア、交差点監視ポイント、事故多発エリア、車上狙い多発エリア等がある。これに対し、例えば車両速度測定装置や、Nシステムなどの車両を監視する装置・システムの場合には、監視領域・監視している車線(上り車線/下り車線)があり、逆方向から接近している場合には、監視領域・車線を通過しないため、警報を発する必要性は低い。制限速度切替りポイントも、制限速度が低い側に切り替わるポイントであるので、通常上り車線か下り車線の片側に設定されるため、反対側の車線を走行して警報対象に接近している場合には警報を発する必要性は低い。このように、警報対象に接近していく際の方向で警報を発するか否か変わる場合、当該接近していく方向を特定するための方向情報を警報対象に関連付けて登録しておくことで、経路を通って最終的に警報対象の直前に至った際に、そのときの車両の進行方向と、警報対象に登録された方向情報で特定される方向が所望の関係になっていない場合には、正規の警報を発しないようにすることができる。
【0030】
つまり、方向情報を登録している場合、重要なのは、現在位置での車両の進行方向との関係ではなく、最終的に警報対象の直前での車両の進行方向である。本発明では、道路ネットワーク情報があり、警報対象の直前での車両の進行方向がわかるので、事前に警報対象の方向情報で特定される方向と、直前における車両の進行方向が適切な関係にあるか否かを判断でき、正しい警報を行うことができる。
【0031】
なお、この方向情報を登録する記憶手段は、位置記憶手段と同じ(一部に組み込む)でも良いし、別でも良い。そして、この記憶手段も制御手段を備えた装置内に実走しても良いし、装置外のサーバ等の記憶装置として実現しても良い。この特定の方向であるが、実施形態では、設置方向に対応する。すなわち、特定の方向は、装置が設置されている向き(監視領域を特定する方向)に基づいて設定されることから、実施形態では、警報対象が装置の場合を基準に想定して、設置方向としたが、装置以外の警報対象の場合のものも特定の方向として規定するのを妨げない。
【0032】
(9)前記警報対象が特定の方向から接近した場合に警報を発した方がよい警報対象の場合、その警報対象に関連付けて当該特定の方向を示す方向情報を所定の記憶手段に登録し、前記経路は、方向情報が設定されている警報対象が存在する道路では、その警報対象に接近する方向として当該設置方向に向かって進行するような経路を選択するようにするとよい。このようにすることで、警報対象に対し、元々特定の方向と異なる方向で接近する経路を排除することができる。
【0033】
(10)前記制御手段は、所定の警報対象までの残り距離に応じて警報を制御するものであり、前記残り距離は、現在位置からその所定の警報対象までを前記経路で走行した場合の距離以下に設定されるとよい。この種のシステムでは、警報対象までの残り距離を数値やインジケータ等で表示したり、表示部の背景色を変えたり、残り距離を音声で報知したりしている。この場合に、当該走行距離を用いることで、より実際の状況に符合した適切なタイミングで残り距離に基づく警報を行うことができる。
【0034】
(11)前記報知手段は、表示部を備え、前記制御手段は、前記表示部に前記道路ネットワーク情報に基づく道路地図を描画するとともに、その道路地図上の現在位置と前記警報対象の存在位置にそれぞれ対応するオブジェクトを描画し、かつ、前記現在位置に描画した自車を示すオブジェクトと、前記警報対象を示すオブジェクトを結ぶガイド線を、前記求めた経路に沿うように描画するとよい。ガイド線は、道路に沿って描画されることから、運転者は、警報対象までの経路が自分が走行しようとしている道路か否かが一目で理解でき、気をつけるべき警報対象か否かを直感的に理解できる。また、このガイド線は、例えば自車位置から道路に沿って徐々に延びていき、最終的に警報対象のオブジェクトに到達するというようにアニメーションで描画するとより目立って良い。また、ガイド線は、現在位置と警報対象の位置関係がわかれば良いで、そのガイド線の先端は自車を示すオブジェクトと、前記警報対象を示すオブジェクトのそれぞれに直接接続されていなくても良い。
【0035】
(12)前記報知手段は、表示部を備え、前記制御手段は、前記表示部に、前記警報対象に関する情報を表示する表示板を描画し、前記警報対象が複数存在する場合には、その複数の警報対象についてのそれぞれの表示板を設定された優先順位の高いものが手前側に来るように描画するとよい。複数の警報対象の存在と、その順番等が一目で理解できるので好ましい。
【0036】
(13)本発明のプログラムは、上記の(1)~(12)のいずれかに記載の車載用電子機器における制御手段の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、実際に警報対象に至る可能性の高い警報対象を抽出することができ、警報・報知する周囲の警報対象を適切に絞り込み、それら絞り込んだ警報対象について警報を発することができる。警報する警報対象を絞り込むことで、例えば表示部に警報対象の位置を示す場合でもその表示数が少ないので、運転者は個々の警報対象を確認しやすくなり、さらに、描画を工夫することで、所定の警報対象(目的物)についての詳細な警報情報を報知する場合、運転者はどの警報対象について報知しているかが容易にわかる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の好適な一実施形態であるレーダー探知機の構成を示す図である。
【
図3】待ち受け画面・レーダースコープ・GPS警報の表示例を示す図である。
【
図4】レーダー波警報機能における警報画面の表示例を示す図である。
【
図5】自車位置と周囲に存在する警報対象の一例を示す図である。
【
図6】各警報対象候補までの推奨経路の探索結果を示す図である。
【
図7】警報対象に設定された設置方向と、車両の走行方向の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1,
図2は、本発明のシステムを構成する電子機器として好適な一実施形態であるレーダー探知機の構成を示している。本レーダー探知機は通常ダッシュボード上に取り付けられる。本レーダー探知機は、
図1に示すように、ケース本体1の上面にソーラーパネル2並びにスイッチ部3を配置し、ケース本体1の前面側の内部に速度測定装置の発する周波数帯のマイクロ波を検知するマイクロ波受信器4を配置する。一方、ケース本体1の後面側(車両後方へ配置される側(運転者側)には、表示部5と警報ランプ6と赤外線通信機7とリモコン受信器16を配置している。また、ケース本体1の内部の上面側には、GPS受信器8を配置する。さらに、ケース本体1の一方の側面には、アダプタージャック9を配置し、他方の側面には電源スイッチ10並びに図示省略するDCジャックを配置する。また、ケース本体1内には、スピーカ20も内蔵している。
【0040】
本実施形態では、表示部5は2.4インチの小型液晶ディスプレイであり、ケース本体1の後面側(車両後方へ配置される側(運転者側))を表示面としている。表示部5を実装するケース本体1の後方側の高さHは、その他の部位の高さH0よりも大きくしている。
【0041】
図2に示すように、赤外線通信機7は携帯電話機12等の赤外線通信機を内蔵した通信装置との間でデータの送受を行なう。アダプタージャック9は、メモリカードリーダ13を接続する端子である。アダプタージャック9にメモリカードリーダ13を接続することで、そのメモリカードリーダ13に装着されたメモリカード14に格納したデータを内部に取り込んだり、データベース19や制御部18のメモリの内容をメモリカード14に書き込んだりすることができる。より具体的には、メモリカード14に格納したデータに、新規な目標物その他の警報対象に関する情報である警報対象情報などの更新情報がある場合、その更新情報を制御部18が装置に内蔵されるデータベース19に格納(ダウンロード)し、データベース19のデータを更新する。なお、メモリカードリーダ13の機能は、本体ケース1内に内蔵するように構成してもよい。
【0042】
データベース19は、制御部18のマイコン内あるいはマイコンに外付けした不揮発性メモリ(たとえばEEPROM)である。データベース19には、出荷時に一定の警報対象に関する情報である警報対象情報を登録しており、その後に追加された警報対象についてのデータ等が上記のようにしてデータ更新することができる。また、データ更新は、赤外線通信機7を介して行なうこともできる。
【0043】
DCジャックは、図示省略のシガープラグコードを接続するためのもので、そのシガープラグコードを介して車両のシガーソケットに接続して電源供給を受け得るようにする。無線受信器15は、飛来する所定周波数の無線を受信する。リモコン受信器16は、赤外線によりリモコン(携帯機:子機)17とデータ通信をし、装置に対する各種の設定を行なう。また、スイッチ部3も制御部18に接続され(図示省略)、リモコン17と同様の設定を行えるようになっている。リモコン17には、再生ボタン、待受切替ボタン、設定ボタン、選択ボタン、キャンセルボタン、決定ボタンと、上下左右の十字ボタンを備えている。
【0044】
また、制御部18は、CPU,ROM,RAM,不揮発性メモリ、I/O等を備えるマイコンであり、
図2に示すように上述した各部と接続され、上記の各部から入力される情報に基づき所定の処理を実行し、上記の各部を制御して所定の警報・メッセージや情報を出力する。なお、これらの基本構成は、基本的に従来のものと同様のものを用いることができる。
【0045】
本実施形態のレーダー探知機における機能は、制御部18に有するコンピュータが実行するプログラムとして制御部18のEEPROM上に格納され、これを制御部18に有するコンピュータが実行することで実現する。制御部18の有するプログラムによってコンピュータが実現する機能としては、GPSログ機能、待ち受け画面表示機能、レーダースコープ表示機能、GPS警報機能、レーダー波警報機能、無線警報機能などがある。
【0046】
GPSログ機能は、制御部18が1秒ごとにGPS受信器8によって検出した現在位置をその検出した時刻および速度(車速)と関連づけて位置履歴としてメモリカード14に記憶する機能である。この位置履歴は例えばNMEA形式で記録する機能である。
待ち受け画面表示機能は、
図3(a)に示すように、GPS受信器8によって検出した自車両の速度、緯度、経度、高度を表示部5に表示する機能である。
【0047】
レーダースコープ表示機能は、
図3(b)に示すように、GPS受信器8によって検出した現在位置から所定の範囲内(例えば約1kmの範囲内)にある警報対象(目標物,ターゲットなどとも称する)をデータベース19に記憶した位置情報から検索し、自車位置と警報対象の位置との相対的な位置関係を表示部5に表示させる機能である。
図3(b)中の左側の「W」が西、右側の「E」が東、上側の「N」が北の方角を示し、「W」と「E」を結ぶ左右方向の線と「N」から下へ伸びる上下方向の線との交点にあるアイコンが自車位置を示している。また「L」「RD」「P」「N」等の文字を有するアイコンが警報対象の種類と位置(存在箇所)を示す。
【0048】
図3(a)に示すような待ち受け画面表示機能実行中にリモコン17に設けた待受切替ボタンの押下を検出した場合、
図3(b)に示すようなレーダースコープ表示機能に切り替える。
【0049】
制御部18は、待ち受け画面表示機能またはレーダースコープ表示機能(以下これらの機能を総称して待受機能と称する)の実行中に、発生したイベントに応じて、GPS警報機能、レーダー波警報機能、無線警報機能等の各機能を実現する処理を実行する。
【0050】
レーダー波警報機能は、マイクロ波受信器4によって速度測定装置(移動式レーダー等(以下、単に「レーダー」と称する))から発せられる周波数帯のマイクロ波に対応する信号を検出した場合に、表示部5に対して警報画面を表示するとともに、スピーカ20から警報音を出力する警報機能である。例えば、レーダーの発するマイクロ波の周波数帯のマイクロ波をマイクロ波受信器4が検出した場合、
図4に示すように、データベース19に記憶したレーダーの模式図または写真を表示部5に警報画面として表示するとともに、データベース19に記憶した音声データを読み出して「レーダーです。スピード注意」という音声をスピーカ20から出力する。音声出力中は、警報ランプ6を点燈させる。
【0051】
無線警報機能は、無線受信器15によって、緊急車両等の発する無線電波を受信した場合に、その走行等の妨げとならないよう、警報を発する機能である。無線警報機能においては、取締無線、カーロケ無線、デジタル無線、特小無線、署活系無線、警察電話、警察活動無線、レッカー無線、ヘリテレ無線、消防ヘリテレ無線、消防無線、救急無線、高速道路無線、警備無線等の周波数をスキャンし、スキャンした周波数で、無線を受信した場合には、データベース19に無線種別ごとに記憶したその周波数に対応する無線を受信した旨の模式図を警報画面として表示部5に表示するとともに、データベース19に無線種別ごとに記憶した音声データを読み出して、スピーカ20からその無線の種別を示す警報音声を出力する。たとえば、取締無線を受信した場合には「取締無線です。スピード注意」のように音声を出力する。音声出力中は、警報ランプ6を点燈させる。
【0052】
GPS警報機能は、
図3(a)の待ち受け画面表示機能または
図3(b)のレーダースコープ表示機能の実行中に、制御部18に有するタイマーからのイベントにより所定時間間隔(1秒間隔)で実行する処理であり、GPS受信器8によって検出した現在位置と、データベース19に記憶した警報対象情報を用いて警報条件(所定の接近関係)を満たしたか否かを判断し、満たした場合に警報を発する機能である。
【0053】
まず警報対象の種別の一例を示すと、居眠り運転事故地点、車両速度測定装置(レーダー式/Hシステム/ループコイル/LHシステム)、移動式車両速度測定エリア、制限速度切替りポイント、取締エリア、検問エリア、駐禁監視エリア、Nシステム、交通監視システム、交差点監視ポイント、信号無視抑止システム、警察署、事故多発エリア、車上狙い多発エリア、急/連続カーブ(高速道)、分岐/合流ポイント(高速道)、ETCレーン事前案内(高速道)、サービスエリア(高速道)、パーキングエリア(高速道)、ハイウェイオアシス(高速道)、スマートインターチェンジ(高速道)、PA/SA内 ガソリンスタンド(高速道)、トンネル(高速道)、ハイウェイラジオ受信エリア(高速道)、県境告知、道の駅、ビューポイントパーキング等の多様な種別のものがある。
【0054】
データベース19に格納する警報対象情報は、個々の警報対象に関する情報であり、警報対象の位置を特定するための経度・緯度を含む位置情報や、警報対象を運転者が特定するのに役立つ警報対象特定用情報がある。本実施形態では、位置情報は、経度・緯度を用いた絶対位置情報としている。これにより、GPS受信器8で検出した現在位置との相対位置関係を容易に求めることができるので好ましい。
【0055】
警報対象特定用情報は、警報対象の種別を示す種別情報や、警報対象の位置を示す文字情報、警報対象を示す音声情報、警報対象を示す画像情報等がある。警報対象を示す音声情報や画像情報等は、警報対象の種別情報に対応するものの場合、個々の警報対象に対する警報対象情報として格納するのではなく、別途共通の情報として所定の記憶エリアに記憶することもできる。そして制御部18は、警報をするに際しては、警報対象情報として記憶している種別情報を読み出し、その種別対象から対応する画像情報や音声情報等を取得し、警報出力することができる。
【0056】
共通の画像情報としては、警報対象の種別が容易に理解できるようにした模式図等のイメージデータがある。模式図は、警報対象の種類が、視覚から直感的に理解できるようにするためのマークでもあり、例えば、車両速度装置や、パトカーや、警官等を3D等でイメージとして作成したものがある。これらの模式図は、報知する際に表示部5に描画出力することで、運転者が直感的に現在報知している警報対象の種類・内容を理解できる。そして、後述するように、表示部5の表示エリア上における自車位置に自車アイコンを描画し、警報対象の箇所の位置に当該模式図を描画するようにすることで、どの位置に何の警報対象のものがあるかが直感的に理解できるのでより好ましい。
【0057】
また、音声情報は、例えば、「左方向 1km先 高速道 Hシステムです」、「すぐ先 一般道 Nシステムです」などの相対位置関係や、警報対象の種類等を音声情報としてスピーカ20から出力するためのデータである。上記の例で言うと、「左方向」,「1km先」,「すぐ先」等の車両の現在位置と警報対象との相対的な位置関係を示す音声データと、「一般道 Nシステム」や「高速道 Hシステム」のように警報対象の種類・内容を特定するための音声データは、別に管理・記憶し、報知する際に制御部18がそれぞれの音声データを組み合わせて出力する。
【0058】
これらの警報対象の種類に応じて固定的な音声情報(音声データ)等を別に管理することで、同一内容の情報を個々の警報対象の警報対象情報として登録しなくて済み、メモリ領域の消費量を削減できる。
【0059】
そして、例えば、
図3(a)の待ち受け画面表示機能または
図3(b)のレーダースコープ機能の実行中に、定期的に現在位置に基づいてデータベース19をアクセスし、警報対象であるループコイルと自車との距離がデータベース19に記憶された接近警告距離である2km、1km、500mのいずれかになった場合には、警報対象であるループコイルの模式図または写真のデータをデータベース19から読み出して表示部5に表示させるとともに、データベース19に記憶された音声データを読み出してスピーカ20から警報音声を出力する接近報知を行なう。例えば、500mに接近した場合には、
図3(c)のように、画面右側に
図3(b)と同様のレーダースコープ画面を表示して警報対象であるループコイルと自車位置との位置関係を表示するとともに、ループコイルを示す警報対象であるループコイルの模式図または写真のデータをデータベース19から読み出して表示部5に表示させ、「500m先ループコイルです、スピード注意」という音声データをデータベース19から読み出してスピーカ20から出力させる。また、警報音声の出力中は、警報ランプ6を点燈させる。
【0060】
さらに、データベース19には、道路ネットワーク情報を含む地図データを格納している。この道路ネットワーク情報は、カーナビゲーション等における推奨経路を検索する際に必要なデータであり、道路網(道路レイアウト)や、一方通行等の交通規制などの情報を含む。さらにこの道路ネットワーク情報は、道路と道路の交点ないし道路の変曲点をノードとしてそのノードの位置情報(緯度経度)を記憶するとともに各ノードが接続する他のノードがどのノードかの接続関係を示す情報を記憶している。このように各ノードの接続関係を示す情報に基づき、隣接するノード同士を接続し、その接続したノード間が道路リンクとなる。なお、カーナビゲーション装置のように目的地までの案内をするのではないので、施設・家屋等の表示データのような詳細なデータはなく、簡易なデータとなっている。
【0061】
本実施形態では、接近警告をする条件として、現在位置と警報対象の位置の距離が接近警告距離になったか否により行うが、係る距離は直線距離ではなく、道路データに基づいて求めた当該警報対象に至るまでの道のりに沿って走行したと仮定した場合の距離(走行距離)を用いて行うようにした。具体的には、制御部18が、以下の(1)から(3)の処理を実行する。
【0062】
(1)制御部18は、まず、自車位置(現在位置)から半径r(例えば1km,2km)内に存在する警報対象を抽出する(条件1)。これは、従来の直線距離に基づく現在位置の周囲(半径rの円)に存在する警報対象の抽出処理と同じアルゴリズムにより実行でき、抽出された警報対象を警報対象候補とする。ここでrは、以下の(3)における所定接近距離以下に設定するとよい。現在位置から警報対象まで実際の道路に沿って走行したと仮定した場合の走行距離は、現在位置から警報対象までの直線距離よりと等しいか長くなるので、当該rを接近距離に設定することで、警報を発すべき警報対象になり得ないものを警報対象候補として抽出しないようにできる。そして、当該走行距離と、直線距離とが等しい場合というのは、車両の現在位置から警報対象までが1本の直線道路でつながっている場合であり、多くの場合は、直線距離の方が短くなる。従って、rを(3)における所定接近距離より短く設定することで、警報対象候補として抽出される数を減らし、(2)以降の処理を行う負荷を減らすと良い。
【0063】
(2)次いで、制御部18は、現在位置から各警報対象候補までのルート検索を実行する。これは、カーナビゲーションシステムにおける推奨経路の探索の技術を利用して求める。すなわち、各警報対象候補を当該ナビゲーションシステムにおける目的地にみなし、各警報対象候補の位置情報を順番に当該目的地の位置情報として設定し、現在位置から目的地までの推奨経路を、データベース19に記憶している道路ネットワーク情報に基づいて求める。データベース19には、道路ネットワーク情報として、交差点等のノードの位置情報と、各ノード間の接続関係を示す情報が登録されているので、制御部18は、現在位置から隣接するノードを順次経由して目的地として設定された警報対象候補の位置に至る経路の候補を求めるとともに、条件に合致する1つの経路を推奨経路として決定する。係る推奨経路の条件としては、各経路の距離が一番小さいものを推奨経路とする。また、最短距離ではなく、最短時間で到達する経路を推奨経路に決定してもよい。さらには、経路を探索するに際し、一般道路を優先して求めたり、有料道路を優先して求めたりするなど、各種の条件を付加しても良い。この推奨経路の算出方法としては例えばダイクストラ法など公知の手法を用いることができる。さらに制御部18は、決定した推奨経路に沿って現在位置から当該警報対象候補まで走行した場合の走行距離を求める。本実施形態では、警報対象候補に至るまでの経路で走行距離が最短距離のものを推奨経路に決定しているので、係る決定する際に求めた走行距離を利用する。
【0064】
(3)制御部18は、推奨経路を通って警報対象候補までに至るまでに走行する走行距離が、所定接近距離以内(例えば2km)のものを警報を発すべき警報対象とする(条件2)。さらに、警報対象に設置方向(監視方向)が登録されている場合、制御部18は、当該走行距離が所定の接近距離以内であり、かつ、推奨経路を走行して警報対象候補に到達する直前の車両の進行方向と、警報対象の設置方向が警報条件を満たす警報対象を抽出し、それを警報を発すべき警報対象とする(条件3)。
【0065】
例えば、警報対象が車両速度測定装置などの場合、車両の走行速度を測定する監視領域がある。この監視エリアは、車両速度測定装置がマイクロ波を出射する方式の場合、当該マイクロ波を出射するアンテナが向いている方向を基準に左右に所定角度範囲で、その車両速度測定装置から一定の距離の範囲内となる。従って、仮に車両速度測定装置に対して設置方向と反対側から近づいていった場合には、その車両速度測定装置の存在を警報報知する必要性は低い。そこで、車両速度測定装置(アンテナ)の向きを設置方向として登録しておき、車両の進行方向との関係から、警報対象候補までの距離が近い場合でも、警報が必要な警報対象か否かを判断することができる。このように警報対象の設置方向は、監視領域を特定することができるが、上記のようにマイクロ波が出射される範囲に限ることはなく、例えば、道路の上りと下りのうちの一方のみを監視等するような警報対象が存在する場合、その上り/下りのいずれかの道路の延びる方向を設置方向として設定すると良い。
【0066】
次に、具体例を示しながら上記の処理(1)~(3)に基づく判定を説明する。例えば
図5に示すように、自車Gの現在位置の周囲(半径r以内)に存在する警報対象として登録されているもの(条件1を充足)が、4つ存在していたとする。すると、(1)の処理を実行することで、制御部18は、この4つの警報対象を警報対象候補K1~K4として抽出する。次いで、制御部18は(2)の処理を実行し、各警報対象候補K1~K4に対してそれぞれルート検索をする。すなわち、制御部18は、警報対象候補K1を目的地に設定して自車位置からの推奨経路を検索する。すると、制御部18は、例えば、
図6(a)に示すように、最初のT字路を左折し、次の十字路でさらに左折するルートR1を推奨経路として決定する。
【0067】
制御部18は、次に警報対象候補K2を目的地に設定して自車位置からの推奨経路を検索し、例えば、
図6(b)に示すように、最初のT字路を左折した後、直進するルートR2を推奨経路として決定する。同様に制御部18は、警報対象候補K3を目的地に設定して自車位置からの推奨経路を検索し、例えば、
図6(c)に示すようなルートR3を推奨経路として決定する。警報対象候補K3は高速道路上に設定されているため、一般道路を走行中の車両は、インターチェンジまで走行した後、高速道路に進入する経路をとる。さらに制御部18は、次に警報対象候補K4を目的地に設定して自車位置からの推奨経路を検索し、例えば、
図6(d)に示すようなルートR4を推奨経路として決定する。
【0068】
その後、制御部18は、(3)の処理を実行し、条件2或いは条件3を充足する警報対象候補を抽出する。まず、条件2,3で共通の推奨経路を通って警報対象候補までに至るまでに走行する走行距離に基づく判定では、高速道路上にある警報対象候補K3は、直線距離に比べて当該走行距離は、非常に遠く接近距離以上となるので実際に警報すべき警報対象から外れる。このようにすると、現在走行している道路と警報対象が設置されている道路の道路種別が違う場合、道路種別の一致/不一致を判定することなく多くの場合に警報対象から外すことができる。
【0069】
すなわち、この種のレーダー探知機では、実際に報知する対象として、高速道路/一般道路/両方などを設定により切り替えることができる。仮に「両方」を選択している場合において、一般道路のみを走行しているときに高速道路について警報対象が報知されると煩わしさを感じることがある。この場合、「一般道路」のみを報知対象に選択すればよいが、係る設定の切替が煩雑で誤設定のおそれもある。また、同様に高速道路を走行中に、併走する一般道路等に設置された警報対象について報知されても煩わしさを感じることがある。この場合に、「高速道路」のみを報知対象に選択すればよいが、係る設定の切替が煩雑で誤設定のおそれもある。さらに、例えば、高速道路の出口から比較的近い一般道路のある地点に警報対象が設定されている場合、報知する警報対象を高速道路のみに設定しておくと、高速道路から降りて一般道路に進入して初めて警報対象の存在を知ることになる。つまり、高速道路上の出口付近では、その警報対象の存在を知ることができないという弊害も生じる。
【0070】
これに対し、本実施形態のように、推奨経路を通って警報対象候補までに至るまでに走行する走行距離が接近距離以下になったことを条件に警報を発するようにすると、
図5に示すように、一般道路を走行中の車両Gから高速道路上の警報対象候補K3までの走行距離が遠いので警報を発しないようにすることができる。また、仮に警報対象候補K3の位置に車両が存在している場合(高速道路の走行中)、警報対象候補K2,K4は、その車両位置から直線距離は非常に近いものの、実際にその警報対象候補K2,K4の位置に至るためには、遠くのインターチェンジ出口で一般道路に降りてから一般道路を走行して戻ってくる必要があり、その走行距離は非常に長くなる。よって、係る場合の警報対象候補K2,K4は、やはり警報を発する対象から除外できる。一方、具体的な図示は省略するものの、車両が高速道路の出口付近を走行中の場合、その出口の周囲の一番道路上に設置された警報対象までの走行距離は、係る出口で降りればよいので比較的短くなり、警報を発する警報対象に設定することができる。よって、推奨経路を通って警報対象候補までに至るまでに走行する走行距離に基づいて判断することで、通常は、一般道路や高速道路を走行中は、異なる道路種別にある警報対象については警報しないようにすることができると共に、高速道路を走行中から高速道路出口付近の一般道路に存在する警報対象や、その逆で高速道路の入口付近の一般道路を走行中から、高速道路上の当該入口付近の警報対象については警報を発する対象にすることができる。
【0071】
さらに上述した例の場合、4つの警報対象候補K1~K4は、いずれも設置方向が登録されている(図中矢印方向を監視している)ので、制御部18は、条件3を充足するか否かを判断する。設置方向に向かって車両が進行している場合、そのまま進むと当該警報対象の監視領域内に進入し監視される。一例としては、警報対象が例えば車両速度測定装置の場合には自車両の走行速度が計測され、警報対象がNシステムの場合には自車両のナンバープレートが撮影される。
【0072】
つまり、
図7(a)に示すように、車両の進行方向と、警報対象の設置方向(監視方向)が反対向き(なす角が180度)の場合には、車両の進行方向の前方に警報すべき警報対象が存在していると判断でき、そのまま進むと警報対象の監視領域内に進入すると判断できる。これに対し、
図7(b)に示すように、車両の進行方向と監視対象の設置方向(監視方向)とのなす角が0度の場合には、警報対象と逆方向に進んでいるか、警報対象に向かって進んでいる場合でも監視方向が異なる場合であるので、警報を発すべき警報対象ではないとする。さらに本実施形態では、
図7に示した例では、180度を中心として±所定角度(例えば、±90度)範囲内にある場合には、警報を発すべき警報対象と判断する。もちろん、角度範囲は90度に限ることはなく、任意に設定できる。この警報対象の設置方向と、車両の進行方向が所定の角度関係になっているか否かの判定の具体的なアルゴリズムは、例えば特開2002-228741号公報に開示された技術等を用いて実現できる。
【0073】
そして、本実施形態で重要なのは、最終的にその警報対象が設置されている道路を走行しているときに、その走行している車両の走行方向と警報対象の監視方向の関係がどうなっているかである。つまり、例えば警報対象候補K4に着目すると、現在の車両の走行方向と、警報対象候補K4の設置方向はほぼ同じ方向を向いているので、現在位置での車両の進行方向に基づくと警報を発すべき警報対象ではないとの判断結果に至るが、実際にその警報対象候補K4に到達し、その前を通過する際には、
図6(d)のルートR4で示すように警報対象の設置方向に向かって走行することになり、警報をすべき警報対象となる。
【0074】
また、警報対象候補K1に着目すると、現在の車両の走行方向と、警報対象候補K1の設置方向はほぼ反対方向を向いているので、現在位置での車両の進行方向に基づくと警報を発すべき警報対象であるとの判断結果に至るが、実際にその警報対象候補K1に到達し、その前を通過する際には、
図6(a)のルートR1で示すように警報対象の設置方向と同じ向きに走行することになり、警報を発すべき警報対象ではなくなる。
【0075】
その結果、車両の進行方向と警報対象の設置方向との関係では、警報対象候補K2,K4が警報を発する対象となり、警報対象候補K1,K3は警報を発する対象とはならない。よって、制御部18は、条件3を充足する警報対象として、警報対象候補K2,K4を抽出する。
【0076】
もちろん、例えば特開2002-228741号公報等に開示された従来方式でも、警報対象候補K4に近づいたならば、車両の進行方向と警報対象の設置方向が対向するために警報を発することができるものの、本実施形態では、それよりも事前の離れた位置から警報を発することができる。また、上記の従来方式では、警報対象候補K1を、一旦警報を発すべき対象と認定して警報を報知し、車両が進むにつれて自車位置を基準とした前方の所定角度範囲からはずれるので、最後まで警報を発することはないものの、本実施形態では、最初から警報しないので、運転者にとって不要な警報・報知がされることを防止できる。
【0077】
さらに制御部18は、このようにして抽出された警報をすべき対象となる警報対象候補K2,K4を、表示部5,ランプ6,スピーカ20等の警報出力手段を用いて報知する。この場合の報知は、基本的には従来公知のものと同様にすることができる。
【0078】
すなわち、
図8は、
図5に示した例に基づく警報画面の一例を占めている。ここでは、2つの警報対象候補K2,K4を実際の警報対象とし、それらに登録された警報種別に従って、該当する地図上の位置に所定のポリゴンを描画している。
【0079】
まず、画面領域のレイアウトは、その大部分を占める矩形状のメイン表示領域E1の上側に帯状のアイコン表示領域E2を配置した構成を採る。もちろん、このアイコン表示領域E2は、下側或いは左右の適宜位置に設けても良いし、設けなくても良い。アイコン表示領域E2は、GPSの受信中を示すアイコンI1のように装置の動作状態を示すアイコンや、警報対象の種類を報知するためのアイコンI2などがある。係る表示は、制御部18からの制御により行う。さらにアイコン表示領域E2には、その右端に警報対象までの残り距離を描画している。この残り距離は、目立たせるようにするため、メイン表示領域E1内の右下等の適宜位置に別ウインドウで描画しても良い。その場合に、係るアイコン表示領域E2の右端は、現在時刻或いは日付その他の情報を描画するようにしても良い。また、この残り距離は、従来のように直線距離としても良いが、好ましくは、現在位置から警報対象までの推奨経路を通った場合の走行距離とすることである。このようにすると、残り距離の数値が減っていく(接近していく)のが、実際の走行距離に一致するので違和感が無くなる。
【0080】
また、メイン表示領域E1は、主として警報対象と自車との位置関係を示すもので、それぞれ所定の形状からなるオブジェクトをそれぞれの位置に表示するための領域である。この表示部5は、複数のレイヤに分けてそれぞれの画像等を描画している。具体的には、最下層のレイヤには、背景色を描画する。この背景色は、手前側(自車側:画面の下側)程明るくなるようにグラデーションで描画したり、単一色で描画したりする。さらに、警報対象との位置関係により色を異ならせている。すなわち、警報対象が存在するが一定の距離以上(たとえば500m以上)離れている場合には、緑色をベースとし、警報対象までの距離が一定の距離未満に近づくと、ベースの色を異なる色(例えば「黄色」)に変える。さらに、接近した場合には、赤色をベースにするなど、適宜色を変えることで、接近していることを運転者に容易に理解させることができる。
【0081】
この色を変える基準となる警報対象までの残り距離であるが、従来同様両者間の直線距離に基づいても良いが、好ましくは、現在位置から警報対象までの推奨経路を通った場合の走行距離とすることである。走行距離に基づいて色を変えることで、隣接する道路に存在しているように直線距離では非常に接近していても、推奨経路を通って警報対象候補までに至るまでに走行する走行距離が離れているような場合に、緑色のベース色とすることで、すぐには到着しないことを運転者に理解させることができる。
【0082】
制御部18は、表示された空間内に対応する地図データを呼び出し、背景色のレイヤの上に存在するレイヤに、その地図データ(概略の道路地図)を描画する。そして、制御部18は、その地図データの描画レイヤより上側のレイヤに、各種のオブジェクトを描画する。メイン表示領域R1の下方所定位置に、自車位置を示すオブジェクト(以下、「自車オブジェクト」と称する)Gobを描画する。図では、円の中に進行方向を示す矢を描画した二次元のマークで描画しているが、自車オブジェクトGobは、三角錐あるいは四角錐のポリゴンから構成し,より立体的にすると良い。その場合に、制御部18が、その自車オブジェクトGobを描画する際には、その三角錐あるいは四角錐の頂点が車両の進行方向前方を向くようにするとともに、宙に浮いた状態に見えるように描画(下方に陰を描画)するとよい。なお、以下の説明において、特に断り書きがない場合においても、表示部5の表示画面に各オブジェクトその他の画像を描画するのは、制御部18が行う。
【0083】
また、表示された空間内に警報すべき警報対象が存在する場合には、その警報対象のオブジェクトを画面上の対応する位置に描画する。このとき、データベース19に登録した警報対象が周囲に複数存在することが多々ある。この場合、条件を満たす1つを実際の警報対象(警報の目的物)とし、その警報対象の存在位置に対応する表示画面上の位置に警報対象オブジェクトKobを描画する。また、他の警報対象になり得るものについては、制御部18は、その検出した警報対象の種類に応じたオブジェクトを、POI(Point Of Interest)オブジェクトIobとして該当する位置に描画する。
【0084】
図では、警報対象オブジェクトKobとPOIオブジェクトIobとは、共に円の中に警報対象の種類を示す記号を記載した二次元のマークとし、警報対象オブジェクトKobには、その存在が一目でわかるように一対の三角形の指示マークで示すようにした。さらに、この警報対象オブジェクトKobでは、設置方向が登録されている場合には、その方向も矢印で示すようにしている。これにより、運転者は、自己が走行予定の道路上に警報対象があるか否かが一目でわかる。
【0085】
また、この警報対象オブジェクトKobとPOIオブジェクトIobも、自車オブジェクトと同様に立体的なポリゴンで描画しても良い。その場合に、警報対象オブジェクトKobは、その表示態様を、実際の警報対象に関連するものを模した3次元形状とすると、その種類がより直感的に理解できるので好ましい。
【0086】
また、警報の表示態様として、警報対象オブジェクトKobの存在をより注目させるため、自車オブジェクトGobから警報対象オブジェクトKobを繋ぐ“ガイド線“を描画すると良い。このガイド線は、その両端が自車オブジェクトGobと警報対象オブジェクトKobに接触或いは近接し、さらに、自車オブジェクトGobから警報対象オブジェクトKobへ至る経路の道路上、或いはその道路のそばに沿って描画される。
【0087】
特に、POIオブジェクトIobが多数存在している場合には、その中から一目で警報対象オブジェクトを見つけることが困難なこともある。
図8に示すように、三角形の指示マークを付記したり、ブリンキングさせたりするだけでは、他のPOIオブジェクトIobとの差別化がしにくいことがあり、特に、レーダー探知機の場合、カーナビゲーション装置と比較して表示部の面積も小さいことから、わかりにくさがより顕著となる。そこで、点線や異なる色からなるガイド線で両者を繋ぐようにするとよい。すると、運転者はそのガイド線を追うことで、容易に警報対象オブジェクトを見つけ出すことができる。
【0088】
また、その場合に、例えば
図9(a)~(c)に示すように、自車オブジェクトGobから警報対象オブジェクトKobまで点線によるガイド線Sを流れるようにアニメーションにし、最終的にその先端が警報対象オブジェクトKobに至るようにすると、そのアニメーションを見ることで運転者は、警報対象オブジェクトKobの存在を容易に理解できる。また、そのアニメーションによるガイド線Sは、道路に沿って延びていくので、運転者自身が進もうとしている道路か否かが容易に理解でき、気をつけるべき警報対象か、関係のないものかも直感的に理解できる。
[推奨経路の他の決定方法]
【0089】
上述した実施形態では、処理(2)において、走行距離を求める際の基準となる推奨経路を求めるに際し、制御部18は、現在位置から警報対象候補までに至る複数の経路の中から最短距離等の条件を満たすものを推奨経路に決定するようにした。この推奨経路を求める際に条件3で用いた設置方向を加味して求めるようにしてもよい。すなわち、一般的な推奨経路は、現在地点から目的地に至るまでの数ある経路の中から、走行距離が最も短いものや、短時間で到達するものを選択するようにしているが、その経路を選ぶ際の条件として、設置方向が設定されている警報対象候補が存在する道路では、その警報対象に接近する方向として当該設置方向に向かって進行するような経路を推奨経路とする。
【0090】
そして、このように推奨経路を求める際に、すでに設置方向が加味されているため、上述した処理(3)で行う警報を発すべき警報対象か否かの判断は、条件2を充足するか否かで行う。つまり、制御部18は、推奨経路を通って警報対象候補までに至るまでに走行する走行距離が、所定接近距離以内(例えば2km)のものを、警報を発すべき警報対象とする。
【0091】
一例を示すと、警報対象候補K1は、
図6(a)に示すように右側から至る経路ではなく、左側から至る経路を推奨経路とする。つまり
図6(a)でいえば現在の進行方向とは逆側からまわる(時計回りの)経路で警報対象候補に至るとして走行距離を算出して、その距離が2km以上な場合には、警報対象にしない。
【0092】
[右左折の数に基づいて警報を発すべきか否かを判定]
上述した実施形態並びに変形例では、道路ネットワーク情報を利用した警報を発すべき警報対象か否かの判定アルゴリズムとして、推奨経路を走行した場合の走行距離に基づいて判定したが、本発明はこれに限ることはなく、各種の方法を用いることができる。一例を示すと、以下の(1),(2),(3)′を実施するものがある。
【0093】
(1)制御部18は、まず、自車位置(現在位置)から半径r(例えば1km,2km)内に存在する警報対象を抽出する(条件1)。これは、従来の直線距離に基づく現在位置の周囲に存在する警報対象の抽出処理と同じアルゴリズムにより実行でき、抽出された警報対象を警報対象候補とする。
【0094】
(2)次いで、制御部18は、現在位置から各警報対象候補までのルート検索を実行する。これは、各警報対象候補の位置情報を順番に目的地の位置情報として設定し、現在位置から目的地までの推奨経路を、データベース19に記憶している道路ネットワーク情報に基づいて求める。この推奨経路の算出方法としては例えばダイクストラ法など公知の手法を用いることができる。
【0095】
この(1),(2)までの処理については、詳細な説明を省略するが、上述したものと同様である。また、この処理(2)で推奨経路を求めるに際し、上述した変形例と同様に条件3の設置方向を加味して求めるようにしてもよい。
【0096】
(3)′次に、現在位置から警報対象候補まで推奨経路で進んだ場合に右左折する交差点の数を求める。当該交差点の数がn回以上(直進して通過する交差点の数は計数しない)の警報対象候補は、警報を発すべき警報対象としない。換言すると、交差点の数がn回未満の警報対象候補を、警報を発する警報対象とする。すなわち、n回以上交差点で右左折をしないと警報対象に至らない複雑な経路を走行するようなケースでは、実際に係る警報対象の設置された道路は通行しない可能性が高い。特に、直線距離が近くてもそこに行くために多数回交差点を曲がる必要があるような場合では、係る警報対象の設置箇所に行かない可能性が極めて高い。従って、係る警報対象を報知することは、その運転者にとって無用な警報の可能性がたいため、警報を発する警報対象にはしないようにした。
【0097】
これにより、直線距離で一定の距離以内の周囲に存在する警報対象の中から、比較的到達しやすい(到達する可能性が高い)警報対象を抽出し、警報することができる。換言すると、周囲に存在する警報対象の中でも、実際に到達する可能性が低いものは警報しないようにすることで、警報する警報対象の数を効果的に削減し、運転者にとって必要なものを適切に報知することができる。もちろん、n回未満であっても、警報対象の設置方向が設定されている場合に、直前の道路の走行方向との角度関係に基づいて警報する対象とするか否かを弁別する機能を設けても良い。
【0098】
また、nを2とすると、走行する道路と平行・近接する他の道路に設置された警報対象を、警報を発する警報対象にしないようにできるので好ましい。すなわち、例えば
図10(a)に示すように、車両Gが左側の道路を走行中において、それと平行する右側の道路上に警報対象Kが設置されているとする。この場合、左側の道路をそのまま直進しているとすると右側の道路上の警報対象Kに至ることはないので、係る左側の現在走行中の道路を直進する運転者にとっては、当該警報対象Kについての警報は無用なもので、警報されるとかえって邪魔に感じる。
【0099】
図10(a)から明らかなように、車両Gが推奨経路を走行して警報対象Kに至るためには、交差点Aで右折し、さらに交差点Bで左折するというように2回曲がる必要がある。この例に限ることなく、略平行(交差しない)の2本の道路が存在する場合、一方の道路を走行中の車両が他方の道路に至るためには、少なくとも走行中の道路から外れるために走行中の道路上の交差点で進行方向を変更(右折/左折)し、さらに、他方の道路に入るために当該他方の道路上の交差点で右折または左折する必要があるので、少なくとも2回は交差点で進路を変更することになる。一方、例えば上述した実施形態において例示した警報対象候補K2のように、走行している道路と交差する道路上に警報対象が存在する場合には、走行する道路上の交差点を1回曲がるだけで、警報対象と対向する事態を生じかねない。
【0100】
そこで、n=2とすることで、交差点で曲がった先等に設置された警報対象を曲がる前から知ることができると共に、平行する他の道路などに設置された警報対象は、報知されないで済む。
【0101】
なお、
図10(a)に示すケースでは、
図10(b)に示すように、交差点Aで右折した場合には、その時の車両Gの現在位置から警報対象Kに至る推奨経路は、交差点Bで1回左折すると警報対象Kに至るので、その時点で警報を発することになる。
【0102】
また、
図10(a)に示すように左側の道路を走行中において、当該左側の道路上に警報対象が存在する場合であって、係る警報対象までの走行距離が右側に設置された警報対象Kまでの走行距離よりも長い場合でも、係る警報対象Kまでは2回曲がる必要があるため、制御部18は、左側の道路上の設置された警報対象について警報することになる。
【0103】
また、表示部に対する警報の仕方であるが、周囲に複数の警報対象が存在する場合、曲がる回数の少ない順にソートし、係る回数が少ないものほど優先順位を高くするように順位付けをするとよい。なお、回数が同じ場合には、警報対象までの走行距離が近いものほど優先順位を高くする。もちろん、警報対象の種別による優先度を加味してさらに優先順位を付けても良い。
【0104】
[時間に基づく判定]
警報を発すべき警報対象か否かの判断の別のアルゴリズムとして、警報対象に到達するまでの予測時間を用いても良い。すなわち、制御部18は、上述した各実施形態並びに変形例で示す手法により、推奨経路を求める。そして、制御部18は、求めた推奨経路で走行した場合に警報対象に到達するまでの予測時間を求め、その予測時間が予め設定した基準値以下の場合警報を発すべき警報対象に決定する。予測時間は、例えばVICSや通信によって取得した渋滞状況のプローブ情報等を用いて計算するとよい。
【0105】
[表示部に対する警報態様]
図11に示すように、条件2或いは条件3を充足する周囲に存在する警報対象について、それぞれの警報情報を仮想看板51に描画したものを、奥行きのあるように前後方向に重ねて描画するとよい。仮想看板51に記載する警報情報は、ここでは、警報対象の種類と、設置場所を特定する情報と、残り距離としているが、他の情報を表示するのを妨げない。そして、例えば直線道路を走行する場合に、手前側から奥側に至る複数の交差点に設置される交差点案内板が見える景色を模し、奥行きがあるように仮想看板51を奥側ほど小さく描画する。これにより、優先度の高低が一目でわかる。また、走行に伴い進路が変わると、各警報対象の優先順位も変わるので、係る場合には、優先順位に応じて仮想看板51の前後の並べ替えをすると良い。
【0106】
また、上述した実施形態並びに変形例では、条件を充足しないものは警報を発すべきでない警報対象として、表示部5に描画もしないようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、表示態様を変えて描画するようにしても良い。すなわち、条件を充足しないものは、少なくとも警報対象オブジェクトKob(詳細な警報情報を報知するもの)にはならないようにする。さらに、POI(Point Of Interest)オブジェクトIobにもなら内容にすると好ましい。そして、条件1を充足して警報対象候補にはなるものの条件2,3を充足しない警報対象については、対応する位置に簡易的なオブジェクト(単なる丸等の単純な形態や、円の半径を小さくするなど)を描画する。これにより、運転者は、警報を発すべき警報対象には該当しないが、何かしらの警報多少があることを知ることができる。
【0107】
上述した実施形態並びに変形例では、電子機器としてレーダー探知機に適用した例を示したが、本発明はこれに限ることはなく、カーナビケーション装置その他の電子機器の一機能として組み込むものでも良い。
【0108】
さらに、上述した実施形態並びに変形例では、装置内に各種の情報を記憶したデータベース19を備え、制御部18は係るデータベース19にアクセスして必要な情報を読み出し、各種の処理をしたが、本発明はこれに限ることはない。すなわち、データベース19に登録する情報の一部または全部をサーバに登録しておく。そして、レーダー探知機その他の電子機器・装置は、係るサーバと通信する機能を備え、制御部18は、適宜サーバにアクセスし、必要な情報を取得して処理を実行するシステムとしてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 ケース本体
2 ソーラーパネル
4 マイクロ波受信器
5 表示部
6 ランプ
7 赤外線通信機
8 GPS受信器
9 アダプタージャック
10 電源スイッチ
11 携帯電話機
12 メモリカードリーダ
14 メモリカード
15 無線受信器
16 リモコン受信器
17 リモコン
18 制御部
19 データベース
20 スピーカ