(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169250
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】電力管理システム、電力管理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20231121BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 180
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147179
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2022121002の分割
【原出願日】2019-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2018156876
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 寛之
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電力管理システム、電力管理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電力管理システム10における電力管理方法は、電力管理サーバ200が、電力系統に接続される2以上の施設100、300の中から買電施設100P以外の売電施設100A~100F、施設300A~300Cを抽出する際に、買電施設が接続される低圧電力線421に接続されていない施設を売電施設の候補から除外することで、買電施設と売電施設とのマッチングを適切に実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供する電力管理システムであって、
前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出し、
前記2以上の施設の中から前記売電施設を抽出する際に、前記買電施設が接続される低圧電力線に接続されていない施設を前記売電施設の候補から除外する、
電力管理システム。
【請求項2】
電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供する電力管理システムであって、
前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出し、
前記2以上の施設の中から前記売電施設を抽出する際に、買電電力量よりも出力可能量が小さい施設を前記売電施設の候補から除外する、
電力管理システム。
【請求項3】
前記除外は、電力売買の価値を示すスコア値をゼロとして算出する処理である、
請求項1又は2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記除外は、売電施設として抽出しない処理である、
請求項1又は2に記載の電力管理システム。
【請求項5】
電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供する電力管理方法であって、
電力管理システムが、前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出するステップと、
前記電力管理システムが、前記買電施設が接続される低圧電力線に接続されていない施設を前記売電施設の候補から除外するステップと、を含む、
電力管理方法。
【請求項6】
電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供する電力管理方法であって、
電力管理システムが、前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出するステップと、
前記電力管理システムが、買電電力量よりも出力可能量が小さい施設を前記売電施設の候補から除外するステップと、を含む、
電力管理方法。
【請求項7】
電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供するプログラムであって、
コンピュータに、
前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出する手順と、
前記買電施設が接続される低圧電力線に接続されていない施設を前記売電施設の候補から除外する手順と、を実行させる
プログラム。
【請求項8】
電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供するプログラムであって、
コンピュータに、
前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出する手順と、
買電電力量よりも出力可能量が小さい施設を前記売電施設の候補から除外する手順と、を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理システム、電力管理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統の電力需給バランスを維持するために、施設に設けられる分散電源を利用する技術(例えば、VPP(Virtual Power Plant)が知られている(例えば、特許文献1))。さらには、施設に設けられる分散電源の利用方法として、電力の売買を実現する電力取引市場も注目を集めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1の特徴に係る電力管理システムは、電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供する電力管理システムである。前記電力管理システムは、前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出し、前記2以上の施設の中から前記売電施設を抽出する際に、前記買電施設が接続される低圧電力線に接続されていない施設を前記売電施設の候補から除外する。
【0005】
第2の特徴に係る電力管理システムは、電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供する電力管理システムである。前記電力管理システムは、前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出し、前記2以上の施設の中から前記売電施設を抽出する際に、買電電力量よりも出力可能量が小さい施設を前記売電施設の候補から除外する。
【0006】
第3の特徴に係る電力管理方法は、電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供する方法である。前記電力管理方法は、電力管理システムが、前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出するステップと、前記電力管理システムが、前記買電施設が接続される低圧電力線に接続されていない施設を前記売電施設の候補から除外するステップと、を含む。
【0007】
第4の特徴に係る電力管理方法は、電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供する方法である。前記電力管理方法は、電力管理システムが、前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出するステップと、前記電力管理システムが、買電電力量よりも出力可能量が小さい施設を前記売電施設の候補から除外するステップと、を含む。
【0008】
第5の特徴に係るプログラムは、電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供するプログラムである。前記プログラムは、コンピュータに、前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出する手順と、前記買電施設が接続される低圧電力線に接続されていない施設を前記売電施設の候補から除外する手順と、を実行させる。
【0009】
第6の特徴に係るプログラムは、電力系統に接続される2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供するプログラムである。前記プログラムは、コンピュータに、前記2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出する手順と、買電電力量よりも出力可能量が小さい施設を前記売電施設の候補から除外する手順と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力管理システム10を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電力管理サーバ200を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る評価値を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るスコア値を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
【
図6】
図6は、変更例に係る電力管理システム10を示す図である。
【
図7】
図7は、変更例に係るスコア値を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した電力取引市場では、電力の売り入札及び電力の買い入札をマッチングすることによって電力の売買が実現されている。一般的には、高圧電力系統などに接続されるベース電源によって施設の消費電力を賄うことが可能であるため、上述したマッチングについては、リアルタイム性が要求されておらず、仮想的に行うことが可能である。
【0012】
しかしながら、ベース電源までの電力経路の距離が閾値以上である施設(例えば、低電圧電力系統に接続された施設)の間において、リアルタイムで電力の売買を行うケースを想定すると、ベース電源によって施設の消費電力を速やかに賄うことができない可能性がある。従って、施設から電力系統への逆潮流のタイミング(電力の売り入札)と電力系統から施設への潮流(電力の買い入札)のタイミングが揃っていないと、施設が設けられる地域の電力系統の電力需給バランスが崩れる可能性がある。
【0013】
そこで、本開示は、上述した課題を解決するためになされたものであり、買電施設と売電施設とのマッチングを適切に実現することを可能とする電力管理システム及び電力管理方法を提供する。
【0014】
以下において、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0015】
但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係又は比率が異なる部分が含まれている場合があることは勿論である。
【0016】
[実施形態]
以下において、実施形態に係る電力管理システムについて説明する。電力管理システム10は、施設100と、電力管理サーバ200と、施設300と、ネットワーク410と、変電設備420と、ユーザ端末500とを有する。
【0017】
施設100は、低圧電力線に接続される。低圧電力線は、電力系統の一例であり、高圧電力線の電圧よりも低い電圧に対応する電力線である。特に限定されるものではないが、施設100は、相対的に小規模な施設である。例えば、施設100は、空調機器、照明機器、AV(Audio Visual)機器などの負荷機器を有する。施設100は、太陽電池装置、蓄電池装置、燃料電池装置などの分散電源を有してもよい。
【0018】
例えば、施設100Pは、分散電源を有していない。施設100Aは、太陽電池装置を有する。施設100Bは、太陽電池装置及び蓄電池装置を有する。施設100Cは、太陽電池装置を有する。施設100Dは、太陽電池装置、蓄電池装置及び燃料電池装置を有する。施設100Eは、太陽電池装置及び蓄電池装置を有する。施設100Fは、分散電源を有していない。
【0019】
ここで、施設100P、施設100A、施設100B及び施設100Cは、同一の低圧電力線421に接続される。施設100D、施設100E及び施設100Fは、同一の低圧電力線422に接続される。低圧電力線421及び低圧電力線422は、変電設備420で分岐しており、異なる低圧電力線と考えてもよい。
【0020】
以下において、低圧電力線から施設100への電力の流れを潮流と称してもよい。施設100から低圧電力線への電力の流れを逆潮流と称してもよい。
【0021】
電力管理サーバ200は、2以上の施設の間における電力の売買の仕組みを提供するサーバである。具体的には、電力管理サーバ200は、電力を購入しようとする買電施設と電力を売却しようとする売電施設とのマッチングを行う。実施形態では、施設100Pは、買電施設の一例である。施設100A~施設100Fは、売電施設の候補である。後述する施設300A~施設300Cも、売電施設の候補であってもよい。
【0022】
電力管理サーバ200は、発電事業者、送配電事業者或いは小売事業者、リソースアグリゲータなどの電力事業者によって管理されるサーバであってもよい。リソースアグリゲータは、VPP(Virtual Power Plant)において、発電事業者、送配電事業者及び小売事業者などに逆潮流の電力を提供する電力事業者である。リソースアグリゲータは、リソースアグリゲータによって管理される施設の消費電力の削減によって余剰電力(ネガワット)を生み出す電力事業者であってもよい。このような余剰電力は発電電力と見做されてもよい。リソースアグリゲータは、リソースアグリゲータによって管理される施設の消費電力の増大(例えば、蓄電池装置の充電量の増大)によって過剰な電力を吸収する電力事業者であってもよい。
【0023】
電力管理サーバ200は、施設100に対して、施設100に設けられる分散電源に対する制御を指示する制御メッセージを送信する。例えば、電力管理サーバ200は、潮流の制御を要求する潮流制御メッセージ(例えば、DR;Demand Response)を送信してもよい。電力管理サーバ200は、逆潮流の制御を要求する逆潮流制御メッセージを送信してもよい。さらに、電力管理サーバ200は、分散電源の動作状態を制御する電源制御メッセージを送信してもよい。潮流又は逆潮流の制御度合いは、絶対値(例えば、○○kW)で表されてもよく、相対値(例えば、○○%)で表されてもよい。或い
は、潮流又は逆潮流の制御度合いは、2以上のレベルで表されてもよい。潮流又は逆潮流の制御度合いは、現在の電力需給バランスによって定められる電力料金(RTP;Real Time Pricing)によって表されてもよい。潮流又は逆潮流の制御度合いは、過去の電力需給バランスによって定められる電力料金(TOU;Time Of Use)によって表されてもよい。
【0024】
施設300は、高圧電力線に接続される。高圧電力線は、電力系統の一例であり、低圧電力線の電圧よりも高い電圧に対応する電力線である。特に限定されるものではないが、施設300は、相対的に大規模な施設である。
【0025】
例えば、施設300Aは、火力発電所である。施設300Bは、原子力発電所である。施設300Cは、風力発電所である。但し、施設300は、多数の太陽電池装置を有する施設であってもよい。施設300は、多数の蓄電池装置を有する施設であってもよい。施設300A~施設300A~施設300Cは、ベース電源の一例である。
【0026】
ネットワーク410は、施設100、電力管理サーバ200及び施設300を接続するネットワークである。特に限定されるものではないが、ネットワーク410は、VPN(Virtual Private Network)などの専用回線であってもよい。
【0027】
変電設備420は、高圧電力線の電圧を低圧電力線の電圧に変換する設備である。変電設備420には、複数の低圧電力線が接続されてもよい。変電設備420には、複数の高圧電力線が接続されてもよい。
【0028】
ユーザ端末500は、施設100Pのユーザに属する端末である。ユーザ端末500は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットPCなどの端末であってもよい。
【0029】
実施形態において、電力管理サーバ200と施設100との間の通信は、第1プロトコルに従って行われてもよい。一方で、施設100と分散電源との間の通信は、第1プロトコルとは異なる第2プロトコルに従って行われてもよい。さらに、電力管理サーバ200と分散電源との間の通信は、第1プロトコルに従って行われてもよい。例えば、第1プロトコルとしては、Open ADR(Automated Demand Response)に準拠するプロトコル、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。例えば、第2プロトコルは、ECHONET Lite(登録商標)に準拠するプロトコル、SEP(Smart Energy Profile)2.0、KNX、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。
【0030】
(電力管理サーバ)
以下において、実施形態に係る電力管理サーバについて説明する。
図2に示すように、電力管理サーバ200は、管理部210と、通信部220と、制御部230とを有する。
【0031】
管理部210は、不揮発性メモリ又は/及びHDDなどの記憶媒体によって構成されており、電力管理サーバ200によって管理される2以上の施設100に関するデータを管理する。電力管理サーバ200によって管理される2以上の施設100は、電力管理サーバ200を管理するエンティティと契約を有する施設100であってもよい。例えば、施設100に関するデータは、電力系統から施設100に供給される需要電力であってもよい。施設100に関するデータは、電力系統全体の需要電力の削減要請(DR;Demand Response)に応じて各施設100で削減された電力量であってもよい。施設100に関するデータは、施設100に設けられる分散電源の種別、施設100に設けられる分散電源のスペックなどであってもよい。スペックは、太陽電池装置の定格発電電力(W)、蓄電池装置の最大出力電力(W)、燃料電池装置の最大出力電力(W)であってもよい。さらに、施設100に関するデータは、過去において分散電源に指示した出力電力量であってもよい。例えば、分散電源が蓄電池装置である場合において、施設100に関するデータは、蓄電池装置に指示した放電電力量であってもよい。施設100に関するデータは、分散電源の劣化度であってもよい。例えば、分散電源が蓄電池装置である場合において、施設100に関するデータは、蓄電池装置のSOH(State Of Health)であってもよい。
【0032】
実施形態では、管理部210は、
図3に示すように、買電施設に電力を供給する電力ソースに対応付けられた評価値を管理する。電力ソースは、太陽電池装置、蓄電池装置、燃料電池装置、火力発電所、原子力発電所、風力発電所などである。管理部210は、評価値の算出に用いる指標値を管理してもよい。指標値は、安定性、期待値、CO2排出量、分散電源、運用コスト、被害リスクなどである。
【0033】
安定性は、電力の供給を安定的に継続できる度合いに関する指標値である。充電残量が変動し得る蓄電池装置、日射量で発電量が変動し得る太陽電池装置、風量で発電量が変動し得る風力発電所については、相対的に安定性の指標値が低いと考えられる。
【0034】
期待値は、電力の供給を期待できる度合いに関する指標値である。施設100の消費電力、充電残量、日射量などに影響される太陽電池装置、蓄電池装置及び燃料電池装置については、相対的に期待値の指標値が低いと考えられる。風量で発電量が変動し得る風力発電所については、相対的に期待値の指標値が低いと考えられる。
【0035】
CO2排出量は、電力ソースが排出するCO2量に関する指標値である。燃料電池装置及び火力発電所については、CO2排出量が多いと考えられるため、相対的にCO2排出量の指標値が低いと考えられる。
【0036】
分散電源は、電力ソースが分散電源であるか否かを示す指標値である。電力ソースが分散電源であれば、地産地消を期待できるため、分散電源の指標値が高いと考えられる。
【0037】
運用コストは、電力ソースの運用コストに関する指標値である。太陽電池装置及び風力発電所については、自然エネルギーを利用するため、運用コストの指標値が高いと考えられる。
【0038】
被害リスクは、災害に対する被害のリスクに関する指標値である。火力発電所及び原子力発電所については、災害に対する被害が大規模であるため、被害リスクの指標値が低いと考えられる。
【0039】
図3では、売電に用いる電力ソースに対応付けられた評価値は、安定性、期待値、CO2排出量、運用コスト及び被害リスクに基づいて定められている。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。売電に用いる電力ソースに対応付けられた評価値は、安定性、期待値、CO2排出量、運用コスト及び被害リスクの少なくともいずれか1つに基づいて定められてもよい。
【0040】
通信部220は、通信モジュールによって構成されており、ネットワーク400を介して移設100と通信を行う。通信部220は、上述したように、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージを施設100に送信する。通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答を施設100から受信する。
【0041】
実施形態では、通信部220は、ユーザ端末500と通信を行う。通信部220は、売電施設に設けられる電力ソースのスコア値を要求するメッセージ(スコア値要求)をユーザ端末500から受信する。通信部220は、売電施設に設けられる電力ソースのスコア値を含むメッセージ(スコア値応答)をユーザ端末500に送信する。すなわち、通信部220は、スコア値をユーザ端末500に通知する通知部を構成する。
【0042】
制御部230は、メモリ及びCPUなどによって構成されており、電力管理サーバ200に設けられる各構成を制御する。例えば、制御部230は、制御メッセージの送信によって、施設100に対して、施設100に設けられる分散電源に対する制御を指示する。制御メッセージは、上述したように、潮流制御メッセージであってもよく、逆潮流制御メッセージであってもよく、電源制御メッセージであってもよい。
【0043】
実施形態では、制御部230は、買電施設(例えば、施設100P)に対応するユーザ端末500からの入力によって、2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出する。制御部230は、売電施設と買電施設との間の通信経路における通信時間に基づいて、電力の売買の価値を示すスコア値を算出する。
【0044】
例えば、ユーザ端末500からの入力は、上述したスコア値要求である。スコア値要求は、買電施設に電力を供給可能な売電施設の全て又は一部を指定する情報要素を含んでもよい。売電施設の一部を指定する情報要素は、ベース電源までの電力経路の距離が閾値以上であるという条件を示す情報要素を含んでもよい。このような情報要素は、低圧電力線に接続される施設という条件を示す情報要素を含んでもよい。売電施設の一部を指定する情報要素は、買電施設が接続される低圧電力線に接続される施設という条件を示す情報要素を含んでもよい。売電施設の一部を指定する情報要素は、安定性が高い、期待値が高い、CO2排出量が少ない、電力ソースが分散電源である、運用コストが安い、被害リスクが小さいなどの条件を示す情報要素を含んでもよい。
【0045】
例えば、通信経路における通信時間は、売電施設と買電施設との間のRTT(Round Trip Time)で表されてもよい。実施形態では、売電施設と買電施設との間の通信経路は、電力管理サーバ200を経由するため、売電施設と買電施設との間のRTTは、売電施設と電力管理サーバ200との間のRTT及び買電施設と電力管理サーバ200との間のRTTの合計である。
【0046】
例えば、施設100Pが買電施設であり、施設100A~施設100F及び施設300A~施設300Cが売電施設の候補であるケースについて考える。
【0047】
制御部230は、
図4に示すように、
図3に示す評価値を通信経路における通信時間(RTT)で補正することによって、電力の売買の価値を示すスコア値を算出する。具体的には、制御部230は、RTTが小さいほどスコア値が高くなるように評価値を補正する。
【0048】
実施形態では、
図3に示す評価値は、電力ソースの種類によって異なっている。従って、制御部230は、結果として、電力ソースの種類に基づいてスコア値を算出している。
【0049】
実施形態では、
図3に示す評価値は、安定性、期待値、CO2排出量、運用コスト及び被害リスクの少なくともいずれか1つに基づいて定められている。従って、制御部230は、結果として、安定性、期待値、CO2排出量、運用コスト及び被害リスクの少なくともいずれか1つに基づいてスコア値を算出している。
【0050】
制御部230は、ベース電源までの電力経路の距離が閾値未満である施設を売電施設の候補から除外してもよい。例えば、制御部230は、施設300A~施設300Cを売電施設の候補から除外してもよい。除外は、スコア値をゼロとして算出する処理であってもよく、売電施設として抽出しない処理であってもよい。
【0051】
制御部230は、買電施設が接続される低圧電力線に接続されていない施設を売電施設の候補から除外してもよい。すなわち、この場合、売電施設は、買電施設が接続される低圧電力線に接続されている施設である。例えば、制御部230は、施設100D~施設100Fを売電施設の候補から除外してもよい。除外は、スコア値をゼロとして算出する処理であってもよく、売電施設として抽出しない処理であってもよい。
【0052】
制御部230は、電力ソースから出力可能な電力量(以下、出力可能量)に基づいてスコア値を算出してもよい。電力ソースが分散電源である場合には、出力可能量は、分散電源が逆潮流可能な電力量であってもよい。例えば、制御部230は、買電施設のユーザが要求する買電電力量よりも出力可能量が小さいほどスコア値が低くなるようにスコア値を算出する。制御部230は、買電電力量よりも出力可能量が小さい施設を売電施設の候補から除外してもよい。
【0053】
(電力管理方法)
以下において、実施形態に係る電力管理方法について説明する。
【0054】
図5に示すように、ステップS10において、ユーザ端末500は、売電施設に設けられる電力ソースのスコア値を要求するメッセージ(スコア値要求)を電力管理サーバ200に送信する。上述したように、スコア値要求は、買電施設に電力を供給可能な売電施設の全て又は一部を指定する情報要素を含んでもよい。
【0055】
ステップS20において、電力管理サーバ200は、買電施設に対応するユーザ端末500からの入力によって、2以上の施設の中から買電施設以外の売電施設を抽出する。
【0056】
ステップS30において、電力管理サーバ200は、売電施設と買電施設との間の通信経路における通信時間に基づいて、電力の売買の価値を示すスコア値を算出する。例えば、電力管理サーバ200は、
図4に示すスコア値を算出する。スコア値の算出方法については上述した通りであるため、その詳細については省略する。
【0057】
ステップS40において、電力管理サーバ200は、売電施設に設けられる電力ソースのスコア値を含むメッセージ(スコア値応答)をユーザ端末500に送信する。
【0058】
ステップS50において、ユーザ端末500は、ユーザによって選択された売電施設を示す情報要素を含むメッセージ(買電要求)を電力管理サーバ200に送信する。ここで、ユーザ端末500は、スコア値応答の受信に応じて、売電施設をユーザに選択させるため、
図4に示すスコア値の一覧を表示してもよい。
【0059】
ステップS60において、電力管理サーバ200は、買電施設と売電施設とのマッチングが成立した場合に、マッチングの成立を示す情報要素を含むメッセージ(買電応答)をユーザ端末500に送信する。電力管理サーバ200は、買電施設と売電施設とのマッチングが成立しなかった場合に、マッチングの不成立を示す情報要素を含むメッセージ(買電応答)をユーザ端末500に送信してもよい。以下においては、マッチングが成立したものとして説明を進める。
【0060】
ステップS70において、電力管理サーバ200は、ユーザによって選択された売電施設から電力を出力するよう指示するメッセージ(出力指示)を売電施設に送信する。
【0061】
ステップS80において、売電施設は、電力を電力系統に出力する。
図5では、説明を明確にするために、売電施設から買電施設に電力が供給される図が示されているが、これは売電施設から買電施設に専用の電力線によって直接的に電力を供給することを意図するものではない。売電施設から電力系統に電力が出力される動作及び電力系統から買電施設に電力が供給される動作が別々に行われてもよく、リアルタイムで電力を売買するケースでは、これらの動作はマッチングが成立した際に略同じタイミングで行われてもよい。
【0062】
(作用及び効果)
実施形態では、電力管理サーバ200は、売電施設と買電施設との間の通信経路における通信時間に基づいて、電力の売買の価値を示すスコア値を算出する。このような構成によれば、リアルタイムで電力を売買するケースにおいて、買電施設と売電施設とのマッチングを適切に実現することができる。
【0063】
例えば、ベース電源までの電力経路の距離が閾値以上である2以上の施設間で電力の売買を行う仕組みを提供するケースにおいて、逆潮流のタイミングと潮流のタイミングとのズレによって生じる電力需給バランスの崩れを抑制することができる。
【0064】
[変更例]
以下において、実施形態の変更例について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0065】
実施形態では、通信経路における通信時間としてRTTを用いるケースについて説明した。これに対して、変更例では、通信経路における通信時間としてホップ数を用いるケースについて説明する。
【0066】
図6に示すように、電力管理システム10において、施設100は、無線通信網によって構成されるアドホックネットワークを構成する。アドホックネットワークは、無線通信網ではなく、有線通信網によって構成されてもよい。このようなケースにおいて、買電施設と売電施設との間の通信経路は、電力管理サーバ200を経由しなくてもよい。
【0067】
このようなケースにおいて、電力管理サーバ200は、施設100間のホップ数を管理する。ホップ数とは、通信経路に設けられる施設100の数によって表される。ホップ数は、施設100から通知されてもよい。
【0068】
具体的には、電力管理サーバ200は、
図7に示すように、
図3に示す評価値を通信経路における通信時間(ホップ数)で補正することによって、電力の売買の価値を示すスコア値を算出する。具体的には、制御部230は、ホップ数が少ないほどスコア値が高くなるように評価値を補正する。言い換えると、電力管理サーバ200は、
図4に示すスコア値の一覧に代えて、
図7に示すスコア値の一覧を生成してもよい。
【0069】
[その他の実施形態]
本開示は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0070】
実施形態では、買電要求は、ユーザによって選択された売電施設を示す情報要素を含む。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。買電要求は、ユーザによって選択された売電施設を示す情報要素に加えて、ユーザによって選択された電力ソースを示す情報要素を含んでもよい。すなわち、売電施設が2種類以上の電力ソースを有する場合に、2種類以上の電力ソースのスコア値が異なることから、売電施設に設けられる電力ソースをユーザが選択可能であってもよい。
【0071】
実施形態では特に触れていないが、ユーザ端末500は買電施設と同義と考えてもよい。このようなケースにおいて、ユーザ端末500は、買電施設に設けられる端末であってもよい。通信経路における通信時間は、ユーザ端末500と売電施設との間の通信経路における通信時間であってもよい。
【0072】
実施形態では特に触れていないが、ユーザ端末500は、買電施設に滞在中又は滞在予定の端末であってもよい。例えば、このような利用シーンとしては、買電施設が友人宅である場合に、ユーザ端末500のユーザが電気自動車を友人宅で充電する利用シーン、買電施設が飲食店である場合に、ユーザ端末500のユーザがスマートフォンを飲食店で充電する利用シーンが考えられる。
【0073】
実施形態では、評価値は、安定性、期待値、CO2排出量、運用コスト及び被害リスクの少なくともいずれか1つに基づいて定められる。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。評価値は、買電施設のユーザによって設定されてもよい。評価値は、予め定められていてもよい。
【0074】
実施形態では、売電施設の抽出及びスコア値の算出は、電力管理サーバ200で行われる。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。売電施設の抽出及びスコア値の算出は、ネットワーク410に接続される装置であれば、どのような装置によって行われてもよい。売電施設の抽出及びスコア値の算出は、2以上の装置の連携によって行われてもよい。売電施設の抽出及びスコア値の算出は、ユーザ端末500によって行われてもよく、1以上の売電施設のユーザに属する端末によって行われてもよく、2以上のユーザ端末がアクセス可能なクラウドサーバによって行われてもよい。
【0075】
なお、日本国特許出願第2018-156876号(2018年8月24日出願)の全内容が、参照により、本願に組み込まれている。