(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169263
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】磁性層付き建築用面材
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
E04F13/08 H
E04F13/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148141
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2020550228の分割
【原出願日】2019-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018190511
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 至
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】藤倉 大地
(72)【発明者】
【氏名】戸井田 英俊
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マグネットを吸着することができ、かつ容易に自由な形状に切断加工することができる磁性層付き建築用面材を提供する。
【解決手段】建築用面材11と、前記建築用面材11と、建築用面材11の表面11aの少なくとも一部を覆う磁性層12を有し、前記磁性層12は、磁性材料と無機バインダーとを含有する磁性層付き建築用面材10を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用面材と、
前記建築用面材の表面の少なくとも一部を覆う磁性層とを有し、
前記磁性層は、磁性材料と、無機バインダーとを含有する磁性層付き建築用面材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性層付き建築用面材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば学校の校舎や、商業施設等において、壁等にマグネット等の磁性体により印刷物等を固定するニーズがあった。このため、壁等を形成する際に用いる建材として、マグネットを吸着可能な建材が求められていた。
【0003】
マグネットを吸着可能な建材として、薄い鉄板を表面に配置した建材が知られていた。
【0004】
また、例えば特許文献1には、壁紙と下地材との間に薄い鉄板を介在させ、磁石の吸引力を利用して物品を保持できるようにした掲示用壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鉄板を表面に配置、固定した建材は、切断等の加工をすることができなくなる。
【0007】
建築用面材の大きな利点の一つとして、カッターや丸鋸等により容易に切断等の加工をすることができ、施工現場で所望の形状に切断加工することができるという点が挙げられるが、鉄板を表面に配置した建材では、係る利点を損なうという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に開示されている掲示用壁の場合、現場で下地材の表面に鉄板を貼り付ける等の施工を行う必要があるが、係る施工を行うことは工数が増える点でも問題であった。
【0009】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の一側面では、マグネットを吸着することができ、かつ容易に自由な形状に切断加工することができる磁性層付き建築用面材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の一形態によれば、建築用面材と、
前記建築用面材の表面の少なくとも一部を覆う磁性層とを有し、
前記磁性層は、磁性材料と、無機バインダーとを含有する磁性層付き建築用面材を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一形態によれば、マグネットを吸着することができ、かつ容易に自由な形状に切断加工することができる磁性層付き建築用面材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る磁性層付き建築用面材の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る磁性層付き建築用面材のマグネット吸着試験の説明図。
【
図5】実験例1で用いたマグネットの対1mm鉄板への吸着力の評価方法の説明図。
【
図6】実験例2において接着性試験の際に作製した接着性試験用試験体の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[磁性層付き建築用面材]
本実施形態の磁性層付き建築用面材の一構成例について説明する。
【0014】
本実施形態の磁性層付き建築用面材は建築用面材と、該建築用面材の表面の少なくとも一部を覆う磁性層とを有することができる。そして、磁性層は、磁性材料と、無機バインダーとを含有することができる。
【0015】
以下に本実施形態の磁性層付き建築用面材の構成例について具体的に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の磁性層付き建築用面材10は、建築用面材11と、建築用面材11の表面の少なくとも一部を覆う磁性層12とを有することができる。
【0017】
なお、
図1に示した磁性層付き建築用面材10においては、建築用面材11の一方の主表面11aの表面全体に磁性層12を形成した例を示したが、磁性層は、マグネット等の磁性体を吸着することが要求される部分に形成されていれば良く、係る形態に限定されるものではない。例えば、一方の主表面11aのうち、一部を覆う様に磁性層を形成することもできる。また、一方の主表面11aのみだけではなく、他方の主表面11bの一部、または全部や、側面部の一部または全部についても磁性層を配置することもできる。
【0018】
また、磁性層の形状についても、連続した面形状を有している必要はなく、磁性層の形状は、例えば線状形状や、ドット形状等であっても良い。本実施形態の磁性層付き建築用面材は、複数の連続していない磁性層を有することもできる。
【0019】
本実施形態の磁性層付き建築用面材が含む各部材について以下に説明する。
【0020】
建築用面材11としては特に限定されるものではなく、各種建築用面材を用いることができる。例えば繊維強化セメント板、ガラスマット石膏ボード、ガラス繊維不織布入石膏含有板、ガラス繊維混入セメント板、繊維混入ケイ酸カルシウム板、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量もしくは重量である石膏ボード(以下、上記JISで規定される石膏ボードや、JISで規定される石膏ボードよりも軽量もしくは重量である石膏ボードをまとめて「石膏ボード」ともいう)、石膏板、スラグ石膏板、及び樹脂板等が挙げられる。このため、建築用面材11は、例えば繊維強化セメント板、ガラスマット石膏ボード、ガラス繊維不織布入石膏含有板、ガラス繊維混入セメント板、繊維混入ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、石膏板、スラグ石膏板、または樹脂板であることが好ましい。
【0021】
本実施形態の磁性層付き建築用面材は、特に建造物の壁を構成する材料として好ましく用いることができる。そして、壁材等に広く用いられることから、建築用面材は石膏ボードであることがより好ましい。ここでいう石膏ボードは既述のようにJIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、またはJIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量もしくは重量である石膏ボードを意味する。なお、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボードよりも軽量な石膏ボードは、例えば比重が0.3以上0.65未満の石膏ボードであることが好ましい。
【0022】
磁性層12は、磁性材料と無機バインダーとを含有することができる。
【0023】
磁性層12は、マグネット等の磁性体を吸着できるようにするために設けられた層であり、磁性材料を含有することで、マグネット等の磁性体を吸着することができる。
【0024】
磁性層12が含有する磁性材料の種類は特に限定されるものではなく、マグネット等の磁性体を磁力により吸着できる各種磁性材料を用いることができる。磁性材料としては、少ない添加量で、マグネット等の磁性体を強く吸着できる材料であることが好ましく、少なくとも磁性層付き建築用面材を使用する際の環境温度において強磁性を示す材料であることが好ましい。上記磁性層付き建築用面材を使用する際の環境温度としては例えば-20℃以上50℃以下の温度域が挙げられる。なお、ここでいう強磁性を示す材料とは、全体として磁気モーメントを有する材料(物質)を意味し、外部磁場がない環境下においても自発磁化を有する材料を意味する。このため、強磁性を示す材料にはフェリ磁性の材料等も含む。
【0025】
磁性材料としては、コストが特に低く、安定性にも優れることから、鉄粉であることが特に好ましい。鉄粉の種類についても特に限定されないが、例えば酸化鉄粉、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉から選択された1種類以上を好適に用いることができる。特に磁性材料として鉄粉を用いる場合、磁性材料はアトマイズ鉄粉を含むことが好ましい。
【0026】
磁性材料の粒径は特に限定されるものではなく、任意の粒径の磁性材料を用いることができる。本実施形態の磁性層付き建築用面材の磁性層には一般的に用いられている粒径の磁性材料を用いることが好ましく、例えば平均粒径が20μm以上200μm以下の磁性材料を好適に用いることができる。
【0027】
なお、本明細書において平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味し、体積基準の平均粒径、すなわち体積平均粒径となる。
【0028】
磁性層が含有する磁性材料の割合等は特に限定されず、例えば磁性材料が有する磁性や、磁性層付き建築用面材に要求される磁性体の吸着能等に応じて任意に選択することができる。磁性層は、例えば磁性材料の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m2以上であることが好ましい。これは、磁性層の磁性材料の単位面積当たりの含有量を0.3kg/m2以上とすることで、磁性層付き建築用面材の表面に、マグネット等の磁性体を十分な吸着力で吸着させることができるためである。特にマグネット等の磁性体の吸着力を高める観点からは、磁性層の磁性材料の単位面積当たりの含有量は、0.8kg/m2以上であることがより好ましく、1.0kg/m2以上であることがさらに好ましい。
【0029】
磁性層の磁性材料の単位面積当たりの含有量の上限値は特に限定されるものではなく、例えば磁性材料の磁性や、磁性層付き建築用面材に要求される吸着力やコスト等に応じて任意に選択することができる。磁性層の磁性材料の単位面積当たりの含有量は、例えば10kg/m2以下であることが好ましい。
【0030】
なお、磁性層の磁性材料の単位面積当たりの含有量における、単位面積とは、磁性層12の建築用面材11と対向する面とは反対側の面における単位面積を意味する。
【0031】
また、磁性層の密度は2.0g/cm3以上であることが好ましく、2.5g/cm3以上であることがより好ましい。これは磁性層の密度を2.0g/cm3以上とすることで、マグネットの吸着力を特に高めることができ、磁性層がより確実にマグネット等の磁性体を吸着できるようになるからである。
【0032】
磁性層の密度の上限値は特に限定されるものではなく、例えば磁性層付き建築用面材に要求される吸着力やコスト等に応じて任意に選択することができる。磁性層の密度は、例えば5.0g/cm3以下であることが好ましい。
【0033】
磁性層に含まれる無機バインダーについては特に限定されるものではなく、各種無機バインダーを用いることができる。無機バインダーを用いることで、有機バインダーを用いた場合よりも不燃性を高めることができる。このため、例えば本実施形態の磁性層付き建築用面材は磁性層を1層設けるのみで、不燃の性能を満たすことができる。また、無機バインダーを用いることで、磁性材料の酸化を抑制し、磁性材料の安定性を高めることができる。
【0034】
無機バインダーとしては例えば無機珪酸塩系、リン酸塩系、シリカゾル系等から選択された1種類以上を好ましく用いることができる。
【0035】
なお、既述のように磁性層に無機バインダーを用いることで、有機バインダーを用いた場合よりも、磁性層付き建築用面材の不燃性を高めることができる。このため、磁性層のバインダーとして有機バインダーは使用しないことが好ましく、磁性層は有機バインダーを含有しないことが好ましい。そして、無機バインダーの中でも、無機珪酸塩系のバインダーは難燃材料としての機能も有するため、特に不燃性を高めることが求められる用途においては、無機珪酸塩系のバインダーを好ましく用いることができる。無機珪酸塩系バインダーとしては、例えばアルカリ金属珪酸塩系バインダーを好ましく用いることができる。
【0036】
磁性層に含まれる無機バインダーの含有量は特に限定されず、磁性層に要求される強度等に応じて任意に選択することができる。磁性層は、例えば磁性材料100質量部に対して、無機バインダーが1質量部以上35質量部以下となるように無機バインダーを含有することが好ましく、無機バインダーが1質量部以上15質量部以下となるように無機バインダーを含有することがより好ましい。
【0037】
これは、磁性材料100質量部に対する無機バインダーの含有量を1質量部以上とすることで、磁性層を均一な膜形状とすることができ、さらに下地となる建築用面材との密着性を高めることができるからである。また、磁性材料100質量部に対する無機バインダーの含有量を35質量部以下とすることで、磁性層にクラックが生じることを抑制できるからである。なお、磁性層にクラックが生じる原因は明らかではないが、無機バインダーの含有割合が多くなりすぎると、磁性層の原料である磁性材料含有塗材が硬化する際の磁性層全体の収縮量が大きくなるためと推認している。
【0038】
磁性層は、磁性材料と無機バインダー以外にも任意の成分を含有することができる。
【0039】
磁性層は、例えばさらに無機添加剤を含有することもできる。
【0040】
無機添加剤としては、タルク、石膏、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、カオリン等から選択される1種類以上であることが好ましい。
【0041】
無機添加剤を添加することで、磁性層を形成する際に用いる磁性材料含有塗材の流動性を高め、磁性層の表面を特に平滑にすることができる。また、上記に例示した無機添加剤の場合は、いずれも白色を帯びた材料であるため、磁性層が係る無機添加剤を含有することで、またはさらに後述する顔料をあわせて含有することで、磁性層付き建築用面材の磁性層表面を白色に近づけることもできる。
【0042】
用いる無機添加剤の粒径は特に限定されないが、例えば平均粒径が0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0043】
無機添加剤を添加する場合、磁性層が含有する無機添加剤の量は、用いる無機添加剤の種類や、粒径等に応じて選択することができ、特に限定されない。磁性層は、無機添加剤を含有する場合、例えば無機添加剤を、磁性材料100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下の割合で含有することが好ましく、1質量部以上20質量部以下の割合で含有することがより好ましく、5質量部以上10質量部以下の割合で含有することがさらに好ましい。なお、無機添加剤の含有量が磁性材料100質量部に対して0.5質量部未満の場合や、30質量部よりも多い場合、磁性層を形成する際に用いる磁性材料含有塗材の流動性が低下する恐れがある。そして、磁性材料含有塗材の流動性が低下すると、磁性層に気泡の跡であるピンホールを生じる場合がある。磁性層にピンホールが生じても、該磁性層のマグネットの吸着力等に変化はないものの、ペンキにより表面を仕上げた場合等に美観を損なう恐れがある。一方、上述のように無機添加剤の含有量を磁性材料100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下とすることで、磁性層にピンホールが生じることを特に抑制することができるため好ましい。
【0044】
また、磁性層は防錆剤を含有することもできる。磁性層が防錆剤を含有することで、磁性層に含まれる磁性材料の酸化が進行して変色したり、マグネット等の磁性体の吸着力に変化が生じることを特に抑制することができる。
【0045】
磁性層が防錆剤を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、防錆剤の成分やその添加量によっては無機バインダーと反応してゲル化する場合もあることから、他の成分に影響を与えない範囲で添加することが好ましい。
【0046】
磁性層が防錆剤を含有する場合、磁性層は、防錆剤を磁性材料に対して0.1質量%以上の割合で含有することが好ましく、0.3質量%以上の割合で含有することがより好ましい。
【0047】
磁性層が防錆剤を含有する場合、その含有量の上限値は特に限定されるものではないが、過度に添加しても防錆の効果に大きな変化はなく、また磁性層の強度が低下する恐れがある。このため、磁性層は防錆剤を、例えば磁性材料に対して20質量%以下の割合で含有することが好ましい。
【0048】
防錆剤の種類は特に限定されるものではないが、防錆剤は、例えば水溶性またはエマルションの有機酸系防錆剤、キレート系防錆剤、有機酸アミン系防錆剤、脂肪酸系防錆剤、及び亜硝酸塩系防錆剤から選択された1種類以上を含むことが好ましい。
【0049】
ただし、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、無機バインダーを用いることで既述の様に磁性材料の酸化を抑制し、磁性材料の安定性を高めることができる。このため、本実施形態の磁性層付き建築用面材の磁性層は防錆剤を含有しなくてもいい。
【0050】
なお、磁性層は、その他にも任意の添加剤を含有することもでき、例えば増粘剤や、消泡剤、磁性層の色味を調整するための酸化チタン、鉛白、亜鉛華、リトポン等から選択された1種類以上の顔料、充填材(嵩増し材)等を含有することもできる。
【0051】
磁性層の表面の色差計で測定したハンター白色度(Wb)が25を超える場合、例えば磁性層付き建築用面材の表面に壁紙を配置した壁紙仕上げや、ペンキを塗布するペンキ仕上げを行った際に、仕上げ材の表面に磁性層の色が透けて見えにくくなり好ましい。このため、磁性層の表面のハンター白色度(Wb)が25よりも大きくなるように、例えば既述の無機添加剤や、場合によってはさらに上述の顔料を添加し、磁性層の色味を調整することが好ましい。特に磁性材料として鉄粉を用い、磁性層が無機添加剤や顔料を含有しない場合、磁性層表面のハンター白色度(Wb)は約3程度となるため、上述のように、磁性層に無機添加剤や、顔料を添加し、その色味を調整することが好ましい。本発明の発明者らの検討によれば、例えば磁性層が含有する鉄粉100質量部に対して、無機添加剤であるタルクを0.5質量部、顔料である酸化チタンを2質量部添加するとハンター白色度(Wb)は約30となる。このため、磁性層が鉄粉を含有する場合、磁性層は、鉄粉100質量部に対して、タルク等の無機添加剤を0.5質量部以上、酸化チタン等の顔料を2質量部以上含有することが好ましい。
【0052】
上述のように、本実施形態の磁性層付き建築用面材の磁性層は任意の添加剤を含有できるが、本実施形態の磁性層付き建築用面材の不燃性を高める観点からは、磁性層の有機化合物の含有量を抑制していることが好ましい。ただし、本発明の発明者らの検討によれば、磁性層における磁性材料100質量部に対する有機化合物の含有割合が5質量部程度までであれば磁性層付き建築用面材の発熱量としてはほとんど変化がなく、不燃性に影響を及ぼさない。このため、磁性層は、有機化合物の含有割合が、磁性材料100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0053】
なお、磁性層が含有する有機化合物は、磁性層に添加する任意の添加剤に由来する。このため、磁性層を形成する際に用いる磁性材料含有塗材に添加する添加剤中の有機化合物の含有割合を調整することで、磁性層が含有する有機化合物の含有割合を所望の範囲とすることができる。
【0054】
磁性層12の厚さは特に限定されるものではないが、例えば0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。
【0055】
磁性層12の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、例えば5.0mm以下であることが好ましく、更に好ましくは2.0mm以下であることが好ましい。
【0056】
本実施形態の磁性層付き建築用面材は、磁性層が建築用面材と対向する面と反対側の面は露出していることが好ましい。すなわち、磁性層の建築用面材と対向する面と反対側の面には不燃性を高める層を含む他の層を有しないことが好ましい。これは、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、磁性層が無機バインダーを含有することで、不燃性が十分に高められている。このため、不燃性をさらに高めるための各種層をさらに設ける必要がないからである。
【0057】
なお、本実施形態の磁性層付き建築用面材を用いて壁等を形成する際に、磁性層の表面に配置する壁紙等の仕上げ材は、上述の他の層には含まない。従って、これらの仕上げ材を除いた場合に、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、磁性層の建築用面材と対向する面と反対側の面が露出していることが好ましい。
【0058】
ここまで、本実施形態の磁性層付き建築用面材が含む部材について説明したが、以下に本実施形態の磁性層付き建築用面材の特性等について説明する。
【0059】
本実施形態の磁性層付き建築用面材は、表面が平滑であることが好ましい。
【0060】
ここで、本実施形態の磁性層付き建築用面材の表面(主表面)が平滑であるとは、磁性層付き建築用面材の厚さを複数箇所で測定した場合に、厚さのばらつきが500μm以下であることを意味している。
【0061】
なお、磁性層付き建築用面材の厚さについては、JIS A 6901(2014)の「7.3.1 寸法」の「a)厚さ」での規定と同様に測定することができる。具体的には、試料である磁性層付き建築用面材の端面から25mm以内であって、両側面から80mm以上内側の領域において、等間隔で6か所の測定位置で厚さを測定することができる。このため、測定した該6か所での厚さのばらつきが、500μm以下の場合に表面が平滑であるといえる。
【0062】
磁性層付き建築用面材の表面が平滑であることで、例えば壁材等として用いた場合に、平坦な壁を形成することができ、好ましい。また、磁性層付き建築用面材の表面が平滑であることで、磁性層付き建築用面材の表面について、壁紙を貼ることによる壁紙貼り(壁紙仕上げ)や、塗料を塗布することによる塗装仕上げ、ラミネート加工等の化粧仕上げ、化粧マグネットを配置することによる化粧マグネット仕上げ等を容易に行うことが可能になる。なお、化粧マグネット仕上げとは、一方の主表面にマグネットを配置した壁紙や、化粧板、化粧紙を該マグネットにより磁性層付き建築用面材に吸着させ、壁の表面を仕上げることをいう。
【0063】
また、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、厚さtがJIS A 6901(2014)の規格を満たしていることが好ましい。
【0064】
JIS A 6901(2014)の規格を満たしているとは、磁性層付き建築用面材の厚さが9.5mm以上10.0mm以下、12.5mm以上13.0mm以下、15.0mm以上15.5mm以下、16.0mm以上16.5mm以下、18.0mm以上18.5mm以下、21.0mm以上21.5mm以下、25.0mm以上25.5mm以下のいずれかの範囲に属していることを意味する。
【0065】
これは、磁性層付き建築用面材の厚さtがJIS A 6901(2014)の規格を満たしている場合、磁性層付き建築用面材の厚さが、通常用いられている建築用面材の厚さと同様の規格を満たしていることになる。このため、例えば本実施形態の磁性層付き建築用面材と、通常の建築用面材とを同時に用いて壁等を形成した場合でも、厚さの調整等を行うことなく、用いた建築用面材の種類による凹凸のない面一な壁、すなわち平坦な壁を容易に形成することができ、好ましいからである。
【0066】
磁性層付き建築用面材の厚さtは、より一般的に用いられている建築用面材と同様に、9.5mm以上10.0mm以下、12.5mm以上13.0mm以下、15.0mm以上15.5mm以下、21.0mm以上21.5mm以下、のいずれかの範囲に属していることがより好ましい。
【0067】
なお、ここでいう磁性層付き建築用面材の厚さtとは、
図1に示したように、磁性層付き建築用面材全体の厚さを意味している。例えば
図1に示した磁性層付き建築用面材10のように、磁性層付き建築用面材が、建築用面材11と、磁性層12とから構成される場合には、建築用面材11と、磁性層12との厚さの合計が該磁性層付き建築用面材10の厚さtとなる。
【0068】
磁性層付き建築用面材の厚さは、JIS A 6901(2014)に規定された方法により評価を行うことができる。
【0069】
本実施形態の磁性層付き建築用面材は、準不燃の性能を満たすことが好ましい。すなわち、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、準不燃材料であると認定されることが好ましい。なお、準不燃とは、建築基準法施工令第1条第5号で規定されている。準不燃材料と認められるためには、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後10分間、燃焼しないものであること、防火上有害な変形、溶融、亀裂その他の損傷を生じないものであること、避難上有害な煙またはガスを発生しないものであることを満たすことが要求される。
【0070】
また、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、不燃の性能を満たすことが好ましい。すなわち、不燃材料であると認定されることが好ましい。なお、不燃とは、建築基準法第2条第9号、及び建築基準法施工令108条の2で規定されている。不燃材料と認められるためには、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間、燃焼しないものであること、防火上有害な変形、溶融、亀裂その他の損傷を生じないものであること、避難上有害な煙またはガスを発生しないものであることを満たすことが要求される。建築基準法の内装制限によって、建物の用途や規模により使用できる建築材料が準不燃材料か不燃材料と決められている。本実施形態の磁性層付き建築用面材は、使用する建物が要求される内装制限に適応することができる、すなわち準不燃材料にもなるし、不燃材料にもなるので、いかなる用途や規模の建物においても使用できる。
【0071】
本実施形態の磁性層付き建築用面材は、既述の様に磁性層に無機バインダーを用いることで不燃性を高めているが、場合によってはさらに不燃性を高めるために、建築用面材の材料や、磁性層の材料について燃えにくい材料を選択することができる。具体的には例えば磁性層を配置する建築用面材について、準不燃の性能を満たす建築用面材、または不燃の性能を満たす建築用面材を用いることもできる。そして、必要に応じてこれらの材料を選択することで、準不燃、不燃の性能を満たす磁性層付き建築用面材とすることができる。
【0072】
既述の様に、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、磁性層を配置することにより、マグネット等の磁性体を吸着することが可能である。マグネットの吸着力については特に限定されるものではないが、例えば、以下のマグネット吸着試験の特性を満たすことが好ましい。
【0073】
まず
図2に示す様に、本実施形態の磁性層付き建築用面材21を、主表面21aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット22を1個用い、該マグネット1個により、主表面21aにA4用紙23を1枚貼り付けた場合に、A4用紙が落下しない吸着力を有することが好ましい。なお、ここでいう主表面21aが垂直になるように立てるとは、地面等の水平方向に対して、板状形状を有する磁性層付き建築用面材21の主表面、すなわちマグネットを吸着させる面が垂直になるように立てることを意味する。以下、同様の記載については同様の意味を有する。
【0074】
また、磁性層付き建築用面材の主表面に壁紙を配置した場合にも同様の特性を有することがより好ましい。すなわち、主表面21aに壁紙が施工された磁性層付き建築用面材21を、主表面21aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット22を1個用い、該マグネット1個により、主表面21aにA4用紙23を1枚貼り付けた場合に、A4用紙23が落下しない吸着力を有することが好ましい。
【0075】
なお、磁性層付き建築用面材の主表面に壁紙を配置し、マグネット吸着試験を実施する場合、壁紙としては、例えば汎用的に使用される厚さ0.3mmの壁紙を用いることができる。壁紙としては例えばビニールクロス等を用いることができる。
【0076】
また、上述のいずれのマグネット吸着試験においても、A4用紙としては、厚さ0.09mm、質量64g/m2のA4用紙を好ましく用いることができる。また、本マグネット吸着試験に限らず、本明細書において、A4用紙としては上記厚さ、質量を有するA4用紙を好ましく用いることができる。
【0077】
上記いずれかのマグネット吸着試験を実施する際、磁性層を配置する位置は特に限定されないが、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、磁性層を建築用面材の表面の少なくとも一部に設けることでマグネットを吸着するのに十分な吸着力を発揮する。このため、少なくともマグネット22を配置する部分には磁性層が設けられていることが好ましい。
【0078】
また、マグネット22と、A4用紙23との位置は特に限定されないが、マグネット22の中心と、A4用紙23の上端との間の距離Lは3cmであることが好ましく、マグネット22の中心は、A4用紙23の幅方向の中央に配置されていることが好ましい。
【0079】
以上に本実施形態の磁性層付き建築用面材について説明してきたが、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、建築用面材の表面の少なくとも一部に磁性層を配置することで、マグネット等の磁性体を吸着することが可能になる。また、建築用面材の表面の少なくとも一部に磁性層を配置しているのみであるため、容易に切断等を行い、自由な形状に加工することができる。
【0080】
また、従来用いられていた鉄板を表面に配置、固定した建築用面材では、該鉄板のために、ビスや釘を打つことが困難になるため、建築用面材の止め付けが困難になるという問題があった。さらには、壁紙、塗装による仕上げを行う際に、壁紙や塗料との接着性が低下する等の問題があった。
【0081】
一方、本実施形態の磁性層付き建築用面材によれば、建築用面材の表面の少なくとも一部に磁性層を配置しているのみであるため、釘やビス等も容易に打つことができる。さらに、本実施形態の磁性層付き建築用面材は、上述のように建築用面材の表面の少なくとも一部に磁性層を配置しているのみであるため、釘やビス等を打った場合でも割れが生じることを抑制できる。また、壁紙や、塗料との接着性も十分に高いものとすることができる。
[磁性層付き建築用面材の製造方法]
次に、本実施形態の磁性層付き建築用面材の製造方法の一構成例について説明する。本実施形態の磁性層付き建築用面材の製造方法により、既述の磁性層付き建築用面材を製造することができる。このため、既に説明した事項の一部は説明を省略する。
【0082】
本実施形態の磁性層付き建築用面材の製造方法は、建築用面材の表面の少なくとも一部に、磁性材料と無機バインダーとを含有する磁性材料含有塗材を塗工し、磁性層を形成する磁性層形成工程を有することができる。
【0083】
なお、磁性材料含有塗材は、既述の磁性層の材料、具体的には磁性材料と、無機バインダーと、必要に応じて無機添加剤や、防錆剤等の任意の添加剤等とを混合することで調製できる。磁性材料含有塗材を調製する際、必要に応じて粘度を調整するための水等の分散媒をさらに添加して混合することもできる。
【0084】
磁性層の磁性材料の単位面積当たりの含有量や、磁性層の密度は、例えば磁性材料含有塗材に含まれる磁性材料の粒径や、磁性材料、練り水、無機添加剤等の各種成分の含有量(含有割合)により調整することができる。また、磁性材料含有塗材に充填材(嵩増し材)を添加する場合には、該充填材の添加量(含有量)により調整することもできる。充填材としては例えば骨材等を用いることができる。
【0085】
磁性層形成工程で用いる原料やその好適な添加量、磁性層の磁性材料の単位面積当たりの含有量や、密度の好適な範囲等については既述のため、説明を省略する。
【0086】
磁性層形成工程において、磁性材料含有塗材を建築用面材の表面の少なくとも一部に塗工する手段、方法は特に限定されるものではない。ただし、形成する磁性層の厚さが均一になるように塗工することが好ましい。このため、磁性層形成工程では、磁性材料含有塗材をロールコーター、フローコーター、掻き取り法のいずれかにより、建築用面材の表面の少なくとも一部に塗工することが好ましい。
【0087】
ここで、ロールコーターとは、回転するローラに磁性材料含有塗材を塗り付け、該ローラにより建築用面材の表面に磁性層を形成する手段である。また、フローコーターとは、搬送している建築用面材の上方から、建築用面材の表面に対して磁性材料含有塗材を薄い膜状に流下し、建築用面材の表面に磁性層を形成する手段である。また、掻き取り法とは、建築用面材の表面に供給した磁性材料含有塗材を、例えばブレード等により掻き取り、建築用面材の表面に所望の厚さとなるように展ばし、磁性層を形成する手段(方法)である。
【0088】
なお、磁性層形成工程に供給する建築用面材は、予め磁性層を形成しない部分にはマスキング等を行っておき、所望のパターンを有する磁性層を形成することもできる。
【0089】
本実施形態の磁性層付き建築用面材の製造方法は、上述の磁性層形成工程に加えて、任意の工程を有することもできる。
【0090】
本実施形態の磁性層付き建築用面材の製造方法は、必要に応じて、形成した磁性層を乾燥させる乾燥工程や、磁性層付き建築用面材や、原料となる建築用面材を任意のサイズに切断する切断工程等をさらに有することもできる。
【0091】
乾燥工程における乾燥温度は特に限定されないが、例えば100℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。これは乾燥温度を100℃以下とすることで、磁性層付き建築用面材に反りが生じたり、磁性層にひびが入る等の不具合が生じることを抑制できるからである。
【0092】
なお、乾燥温度の下限値は特に限定されないが、生産性の観点から、20℃以上とすることが好ましく、30℃以上とすることがより好ましい。
[壁構造体]
次に、既述の磁性層付き建築用面材を用いた壁構造体の構成例について
図3、
図4を用いて説明する。
図3は、壁構造体である間仕切壁について、高さ方向と平行でかつ壁の主表面と垂直な面での断面図を示しており、
図4は、間仕切壁の斜視図を示している。なお、
図4においては間仕切壁の構造が分かりやすいように、
図3では示している天井軽鉄下地等の記載を省略している。
【0093】
本実施形態の壁構造体は、既述の磁性層付き建築用面材を含むことができる。以下、具体的な構成例を示す。
【0094】
図3に示す間仕切壁30は、鉄筋コンクリートの床スラブF1上に施工される。間仕切壁30の下端部は、床スラブF1に固定され、間仕切壁30の上端部は、上階の鉄筋コンクリートの床スラブF2に固定される。間仕切壁30の軸組は、鋼製のスタッド31、床ランナ321及び上部ランナ(天井ランナ)322により構成される。スタッド31は、軽量鉄骨製のチャンネル型部材からなり、床ランナ321及び上部ランナ322は、軽量溝型鋼からなる。
図3中の点線はスタッド31の内壁を示している。床ランナ321、上部ランナ322は、アンカーボルト等の係止具33によって床スラブF1、F2にそれぞれ固定され、スタッド31は、下端部及び上端部が床ランナ321及び上部ランナ322にそれぞれ係止する。スタッド31は、300~600mm程度の寸法に設定された所定間隔(例えば、455mm間隔)を隔てて壁芯方向に整列し、床スラブF1、F2の間に垂直に立設する。
【0095】
下貼ボード34が、ビス35によってスタッド31の両側に取付けられ、上貼ボード36が、ステープル等の係止具37及び接着剤から選択された1種類以上によって下貼ボード34の表面に固定される。下貼ボード34としては、JIS A 6901(2014)で規定される石膏ボード、前記石膏ボードよりも軽量もしくは重量である石膏ボード、石膏板、硬質石膏板、ガラス繊維補強石膏板、珪酸カルシウム板等の不燃性の建材ボードを好適に用いることができる。なお、
図3では記載の都合上ビス35の記載を一部省略している。
【0096】
上貼ボード36の表面には、塗装又はクロス等の表装仕上材38が施工される。
【0097】
間仕切壁30の内部には、グラスウールや、ロックウール等の断熱材39を配置することができる。そして、床スラブF1上には床仕上材40を施工し、巾木41を、間仕切壁30の下端縁に取付けることができる。巾木41として、汎用の既製巾木、例えば、ビニール巾木等を使用し得る。
【0098】
更に、天井軽鉄下地42を、上階の床スラブF2から懸吊することもできる。そして、天井軽鉄下地42の表面には、天井仕上材43を配置することができる。
【0099】
天井仕上材43は、天井廻り縁等の見切り縁44を介して、室内側壁面に連接する。見切り縁44として、樹脂または金属製の既製見切り縁、またはジョイナーや、木材の加工品を使用し得る。
【0100】
そして、
図4に示すように、下貼ボード34は、横張り方向に施工され、上下の下貼ボード34は、横目地45において互いに突付けられる。複数の横目地45は、突付け目地形態の継目として水平且つ平行に延びる。
【0101】
上貼ボード36は、縦張り方向に施工され、目透かし目地、突付け目地、ジョイント工法目地等の所望の目地形態の縦目地46を介して相互連接する。複数の縦目地46は、垂直且つ平行に延びる。
【0102】
そして、上貼ボード36としては既述の磁性層付き建築用面材を好適に用いることができる。また、上貼ボード36間の縦目地46は、目地処理材を用いて目地処理を行うこともできる。なお、間仕切壁30を構成する、上貼ボード36の一部を磁性層付き建築用面材とし、残部を磁性層を有しない通常の建築用面材とすることもできる。
【0103】
このように上貼ボード36として既述の磁性層付き建築用面材を用いることにより、壁構造体である間仕切壁について、マグネット等の磁性体を吸着可能な壁とすることができるため好ましい。
【0104】
なお、ここでは壁構造体として間仕切り壁の構成を例に説明したが、本実施形態の壁構造体は、間仕切り壁に限定されるものではなく、既述の磁性層付き建築用面材を用いた各種壁構造体を包含する。また、ここでは磁性層付き建築用面材を下貼ボードに固定した例を示したが、本実施形態の壁構造は、これに限定されるものではなく、既述の磁性層付き建築用面材をスタッドにビス等で固定する壁構造体を包含する。
【実施例0105】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
実験例1では、
図1に示す磁性層付き建築用面材を作製し、マグネット吸着試験を実施した。
【0106】
まず、磁性層付き建築用面材の製造条件について説明する。
【0107】
建築用面材11として厚さ12.0mm×幅300mm×長さ400mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面11a上の全面に磁性層12を形成し、磁性層付き建築用面材10とした。
【0108】
磁性層は、磁性材料である鉄粉100質量部に対して、バインダーとして無機バインダーであるアルカリ金属珪酸塩系バインダーを5質量部と、水とを混合して形成した磁性材料含有塗材を、掻き取り法により、建築用面材11の主表面上に厚さが0.75mmとなるように塗工し、乾燥することで形成した。
【0109】
鉄粉としては表1に示すように、実験例1-1~実験例1-5では還元鉄粉を、実験例1-6~実験例1-10ではアトマイズ鉄粉を、実験例1-11~実験例1-15では酸化鉄粉を用いた。なお、酸化鉄粉としては四酸化三鉄の粉末を用いている。いずれの鉄粉も平均粒径は50μmである。
【0110】
また、アルカリ金属珪酸塩系バインダーは、珪酸リチウムと、珪酸ナトリウムと、ホウ酸亜鉛とを含有している。
【0111】
実験例1-1~実験例1-15では、磁性層12の、それぞれ磁性材料である鉄粉の単位面積当たりの含有量が表1に示した値となるように形成した。具体的には例えば実験例1-1、実験例1-6、実験例1-11では磁性層の磁性材料である鉄粉の単位面積当たりの含有量が0.3kg/m2となるように磁性層を形成している。なお、各実験例の磁性層12を形成する際、磁性材料含有塗材に添加する水の量を調整することで、磁性層12の鉄粉の単位面積当たりの含有量が、各実験例について所望の値となるように調整した。
【0112】
また、いずれの実験例でも磁性層の厚さは0.75mm±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0113】
マグネット吸着試験は
図2に示すように、まず、各実験例で作製した磁性層付き建築用面材21を、主表面21aが垂直になるように立てる。そして、マグネット部分の直径が17mmφであり、対1mm鉄板への吸着力が3.5Nであるマグネット22を1個用い、該マグネット1個により、主表面21aにA4用紙23を貼り付けた。そして、A4用紙23が落下するまで、A4用紙23の枚数を増やしていき、A4用紙23が落下した際の枚数-1枚を、該磁性層付き建築用面材のマグネット吸着力として評価した。
【0114】
なお、マグネット吸着試験で用いたマグネットは、
図5に示すように、該マグネット51を厚さ1mmの鉄板52に吸着させ、マグネット51に接続しておいたフック511を、図示しないオートグラフにより3mm/secの速度でブロック矢印Aに沿って引き上げ、最大強度を測定した。そして、該最大強度を、対1mm鉄板への吸着力とし、本実験例では同じマグネットを用いた。
【0115】
また、
図2に示したマグネット吸着試験を実施する際、マグネット22の中心と、A4用紙23の上端との間の距離Lが3cmであり、マグネット22の中心が、A4用紙23の幅方向の中央に位置するようにマグネットを配置した。
【0116】
そして、A4用紙23としては、厚さ0.09mm、質量64g/m2のA4用紙を用いた。
【0117】
評価結果を表1に示す。
【0118】
表1中、各実験例番号の下の数値が、マグネット吸着試験の結果を示している。
【0119】
実験例1-1~実験例1-15はいずれも実施例となる。
【0120】
【表1】
表1に示した結果から建築用面材の表面に、磁性材料と、無機バインダーとを含有する磁性層を形成し、磁性層付き建築用面材とした場合、該磁性層付き建築用面材は十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。また、カッターにより切断を試みたところ、いずれの実験例の磁性層付き建築用面材も容易に任意の形状に切断加工できることを確認できた。
[実験例2]
実験例2では、磁性材料として、実験例1において磁性層中の磁性材料の単位面積当たりの含有量が同じ場合にマグネット吸着力が一番優れるアトマイズ鉄粉を用いた。そして、無機バインダーの配合量を変え、もしくは無機バインダーに替えて有機バインダーを用いて、実験例1の場合と同様にして磁性層付き建築用面材を作製した。
【0121】
具体的には、建築用面材として、厚さ12.0mm×幅300mm×長さ400mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面上の全面に磁性層を形成して、磁性層付き建築用面材とした。
【0122】
磁性層は、磁性材料であるアトマイズ鉄粉100質量部に対して、バインダーとして表2に示した割合の無機バインダーまたは有機バインダーと、水とを混合して形成した磁性材料含有塗材を、掻き取り法により、建築用面材11の主表面上に厚さが0.75mmとなるように塗工し、乾燥することで形成した。
【0123】
アトマイズ鉄粉としては実験例1と同じものを用いている。
【0124】
実験例2-1~実験例2-7においてはバインダーとして無機バインダーであるアルカリ金属珪酸塩系バインダーを用いた。なお、アルカリ金属珪酸塩系バインダーは、実験例1と同じものを用いている。実験例2-8においてはバインダーとして有機バインダーである酢酸ビニル樹脂を用いた。
【0125】
いずれの実験例でも、磁性層12は、それぞれ磁性材料である鉄粉の単位面積当たりの含有量が2.0kg/m2となるように磁性層を形成している。なお、各実験例の磁性層12を形成する際、上述の磁性材料含有塗材に添加する水の量を調整することで、磁性層12の鉄粉の単位面積当たりの含有量が所望の値となるように調整した。
【0126】
また、いずれの実験例でも磁性層の厚さは0.75mm±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0127】
そして、作製した磁性層付き建築用面材について、マグネット吸着試験、接着性試験、外観試験、発熱性試験を行った。
【0128】
マグネット吸着試験については、実験例1において既に説明したため、ここでは説明を省略し、その他の評価方法について説明する。
(接着性試験)
接着性試験を行うに当ってまず、
図6に示すように、磁性層付き建築用面材試験片61にアタッチメント621、622を接着した接着性試験用試験体60を作製した。なお、
図6では、接着性試験用試験体60の、磁性層付き建築用面材試験片61とアタッチメント621、622との積層方向と平行な面における断面図を示している。
【0129】
接着性試験用試験体60を作製するに当ってまず、各実験例で作製した磁性層付き建築用面材から、丸鋸により磁性層付き建築用面材試験片61を切り出した。具体的には、磁性層の露出した面と垂直に切込みを入れ、磁性層と建築用面材との積層方向上方から見た場合に、サイズが4cm×4cmの直方体となるように磁性層付き建築用面材試験片61を切り出した。
【0130】
そして、試料を接着する面のサイズが4cm×4cmである1対のアタッチメント621、622を、磁性層付き建築用面材試験片61のうちの建築用面材611の部分、及び磁性層612の部分にそれぞれエポキシ樹脂で接着した。これにより、接着性試験用試験体60を作製した。
【0131】
次いで、一方のアタッチメント621を固定し、他方のアタッチメント622をオートグラフ(島津製作所製、AG-X plus)を用いて2mm/minの速度で、
図6中の上方に引っ張り、磁性層付き建築用面材試験片61における破断箇所を観測した。
【0132】
磁性層付き建築用面材試験片61の磁性層、具体的には磁性層612と建築用面材611との間で破断した場合には磁性層と建築用面材との間の接着強度が低く、密着性(接着性)が十分ではないことを示している。また、磁性層付き建築用面材試験片61の建築用面材611で破断した場合には磁性層と建築用面材との間の接着強度が高く、密着性が十分に高いことを示している。
(外観試験)
作製した磁性層付き建築用面材の磁性層表面にクラックが発生していないか目視で検査した。
(発熱性試験)
ISO5660-1コーンカロリーメータ法に準拠して行った。一般財団法人日本総合研究所防耐火性能試験・評価業務方法書、4.10.1 不燃性試験方法、及び4.11.1 準不燃性能試験方法における6.判定に従い評価した。
【0133】
発熱性試験の評価中、発熱性試験(準不燃)は加熱開始後10分間の総発熱量、最高発熱速度、及び亀裂の貫通の有無を、発熱性試験(不燃)は加熱開始後20分間の総発熱量、最高発熱速度、及び亀裂の貫通の有無をそれぞれ示している。
【0134】
実験例2-1~実験例2-7が実施例、実験例2-8が比較例となる。評価結果を表2に示す。
【0135】
【表2】
表2に示した結果から、実験例2-1~実験例2-7の磁性層付き建築用面材はいずれも十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。また、カッターにより切断を試みたところ、いずれの実験例の磁性層付き建築用面材も容易に任意の形状に切断加工できることを確認できた。
【0136】
さらに、無機バインダーを用いた実験例2-1~実験例2-7においては、有機バインダーを用いた実験例2-8と比較して総発熱量、最高発熱速度が抑制され、不燃性を高められていることを確認できた。
【0137】
なお、加熱開始後10分間における総発熱量が8MJ/m2以下であり、最高発熱速度が10秒を超えて連続して200kw/m2を超えることがなく、防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴がない場合、準不燃材料と認定される。また、加熱開始後20分間において、準不燃の場合と同様の要件を満たす場合、不燃材料と認定される。このため、実験例2-3~実験例2-7の磁性層付き建築用面材は、不燃材料であることが確認できた。また、実験例2-2~実験例2-7の磁性層付き建築用面材は準不燃材料であることが確認できた。
【0138】
接着性試験において、無機バインダーの配合量が、磁性材料100質量部に対して、1質量部未満である実験例2-1の場合、接着性試験における破断箇所が磁性層となった。なお、磁性層が薄いことから、磁性層で破断したとは、既述の様に磁性層と建築用面材との間、すなわち界面で破断していることを意味している。一方、無機バインダーの配合量が、磁性材料100質量部に対して、1質量部以上である実験例2-2~実験例2-7の場合、磁性層と建築用面材との界面では破断せず、石膏芯、すなわち建築用面材の内部で破断していることが確認できた。
【0139】
これは、実験例2-1では、磁性層と、建築用面材との接着強度が実験例2-2~実験例2-7と比較して低かったため、すなわち密着性が低かったため、係る界面で破断したものと考えられる。他の実験例2-2~実験例2-7においては、磁性層と、建築用面材との接着強度が十分に高かったため、石膏芯で破断したものと考えられる。
【0140】
ただし、無機バインダーの配合量が多くなりすぎると、実験例2-7の様に、磁性層にクラックを生じる場合があることを確認できた。
[実験例3]
実験例3では、磁性材料として、実験例1において磁性層中の磁性材料の単位面積当たりの含有量が同じ場合にマグネット吸着力が一番優れるアトマイズ鉄粉を用いた。そして、磁性材料含有塗材として、上記磁性材料および無機バインダーに、所定量の無機添加剤をさらに添加したものを用いて磁性層付き建築用面材を作製し、評価を行った。
【0141】
具体的には、建築用面材として、厚さ12.0mm×幅300mm×長さ400mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面上の全面に磁性層を形成して、磁性層付き建築用面材とした。
【0142】
磁性層は、磁性材料であるアトマイズ鉄粉100質量部に対して、バインダーとして無機バインダーであるアルカリ金属珪酸塩系バインダー5質量部と、表3に示した割合の無機添加剤と、水20質量部とを混合して形成した磁性材料含有塗材を、掻き取り法により、建築用面材11の主表面上に厚さが0.75mmとなるように塗工し、乾燥することで形成した。
【0143】
なお、アトマイズ鉄粉、アルカリ金属珪酸塩系バインダーは、実験例1と同じものを用いている。
【0144】
無機添加剤としては平均粒径が16μmのタルクを用いた。
【0145】
いずれの実験例でも、磁性層12は、それぞれ磁性材料である鉄粉の単位面積当たりの含有量が2.0kg/m2となるように磁性層を形成している。
【0146】
また、いずれの実験例でも形成した磁性層の厚さは0.75mm±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0147】
そして、作製した磁性層付き建築用面材について、マグネット吸着試験、接着性試験、外観試験、発熱性試験を行った。
【0148】
マグネット吸着試験、接着性試験、発熱性試験については、実験例1、または実験例2において既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0149】
外観試験では、磁性層の表面に気泡の跡であるピンホールが生じていないかを評価した。目視でピンホールが確認できた場合にはあり、確認できなかった場合にはなしと評価した。
【0150】
実験例3-1~実験例3-6はいずれも実施例となる。
【0151】
【表3】
表3に示した結果から、実験例3-1~実験例3-6の磁性層付き建築用面材はいずれも十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。また、カッターにより切断を試みたところ、いずれの実験例の磁性層付き建築用面材も容易に任意の形状に切断加工できることを確認できた。
【0152】
実験例3-1~実験例3-6では接着性試験を行った際に、建築用面材、すなわち石膏芯で破断することが確認でき、磁性層と、建築用面材との接着強度が十分に高いことを確認できた。
【0153】
実験例3-1、実験例3-6では、磁性層表面にピンホールが生じていることを確認できた。これは、無機添加剤の添加量が十分ではないか、過度に多かったため、磁性材料含有塗材の流動性が十分ではなかったためと考えられる。
【0154】
実験例3-1~実験例3-6の磁性層付き建築用面材は不燃材料となっていることが確認できた。
[実験例4]
実験例4では、建築用面材の種類を変え、
図1に示す磁性層付き建築用面材を作製し、評価を行った。
【0155】
まず、磁性層付き建築用面材の製造条件について説明する。
【0156】
建築用面材11として、表4に示した各種建築用面材を用意した。なおいずれもサイズは厚さ12.0mm×幅300mm×長さ400mmとなる。そして、その一方の主表面11a上の全面に磁性層12を形成して、磁性層付き建築用面材とした。
【0157】
磁性層は、磁性材料であるアトマイズ鉄粉100質量部に対して、バインダーとして無機バインダーであるアルカリ金属珪酸塩系バインダー5質量部と、水20質量部とを混合して形成した磁性材料含有塗材を、掻き取り法により、建築用面材11の主表面上に厚さが0.75mmとなるように塗工し、乾燥することで形成した。
【0158】
なお、アトマイズ鉄粉、アルカリ金属珪酸塩系バインダーは、実験例1と同じものを用いている。
【0159】
いずれの実験例でも、磁性層12は、それぞれ磁性材料である鉄粉の単位面積当たりの含有量が2.0kg/m2となるように磁性層を形成している。
【0160】
また、厚さは0.75mm±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0161】
そして、作製した磁性層付き建築用面材について、マグネット吸着試験、接着性試験、発熱性試験を行った。
【0162】
マグネット吸着試験、接着性試験、発熱性試験については、実験例1、または実験例2において既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0163】
実験例4-1~実験例4-5はいずれも実施例となる。
【0164】
【表4】
表4に示した結果から、実験例4-1~実験例4-5の磁性層付き建築用面材はいずれも十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。また、カッターにより切断を試みたところ、いずれの実験例の磁性層付き建築用面材も容易に任意の形状に切断加工できることを確認できた。
【0165】
実験例4-1~実験例4-5では接着性試験を行った際に、建築用面材、すなわち基材で破断することが確認でき、磁性層と、建築用面材との接着強度が十分に高いことが確認できた。
【0166】
実験例4-1~実験例4-5の磁性層付き建築用面材は不燃材料となっていることが確認できた。
[実験例5]
実験例5では、磁性材料として、実験例1において磁性層中の磁性材料の単位面積当たりの含有量が同じ場合にマグネット吸着力が一番優れるアトマイズ鉄粉を用いた。そして、磁性材料含有塗材として、上記磁性材料及び無機バインダーに、所定量の無機添加剤、及び増粘剤をさらに添加したものを用いて磁性層付き建築用面材を作製し、評価を行った。
【0167】
具体的には、建築用面材として、厚さ12.0mm×幅300mm×長さ400mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面上の全面に磁性層を形成して、磁性層付き建築用面材とした。
【0168】
磁性層は、磁性材料であるアトマイズ鉄粉100質量部に対して、バインダーとして無機バインダーであるアルカリ金属珪酸塩系バインダー5質量部と、無機添加剤5質量部と、表5に示した割合の、増粘剤である変性ポリアクリル系スルホン酸塩と、水20質量部とを混合して形成した磁性材料含有塗材を、掻き取り法により、建築用面材11の主表面上に厚さが0.75mmとなるように塗工し、乾燥することで形成した。
【0169】
なお、アトマイズ鉄粉、アルカリ金属珪酸塩系バインダーは、実験例1と同じものを用いている。
【0170】
無機添加剤としては平均粒径が16μmのタルクを用いた。
【0171】
いずれの実験例でも、磁性層12は、それぞれ磁性材料である鉄粉の単位面積当たりの含有量が2.0kg/m2となるように磁性層を形成している。
【0172】
また、いずれの実験例でも形成した磁性層の厚さは0.75mm±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0173】
そして、作製した磁性層付き建築用面材について、マグネット吸着試験、接着性試験、発熱性試験を行った。
【0174】
マグネット吸着試験、接着性試験、発熱性試験については、実験例1、または実験例2において既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0175】
実験例5-1~実験例5-4はいずれも実施例となる。
【0176】
【表5】
表5に示した結果から、実験例5-1~実験例5-4の磁性層付き建築用面材はいずれも十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。また、カッターにより切断を試みたところ、いずれの実験例の磁性層付き建築用面材も容易に任意の形状に切断加工できることを確認できた。
【0177】
実験例5-1~実験例5-4では接着性試験を行った際に、建築用面材、すなわち石膏芯で破断することが確認でき、磁性層と、建築用面材との接着強度が十分に高いことが確認できた。
【0178】
実験例5-1~実験例5-4の磁性層付き建築用面材は不燃材料となっていることが確認できた。また、有機化合物である増粘剤の配合量が磁性材料100質量部に対して5質量部以下程度であれば、総発熱量に大きな変化はなく、不燃性に大きな影響を与えないことを確認できた。
[実験例6]
実験例6では、磁性材料として、実験例1において磁性層中の磁性材料の単位面積当たりの含有量が同じ場合にマグネット吸着力が一番優れるアトマイズ鉄粉を用いた。そして、磁性材料含有塗材の原料として上記磁性材料に加えて、所定量の無機添加剤、バインダーとして無機バインダーまたは有機バインダーを用いて、磁性層付き建築用面材を作製し、評価を行った。
【0179】
具体的には、建築用面材として、厚さ12.0mm×幅100mm×長さ100mmの石膏ボードを用意し、その一方の主表面上の全面に磁性層を形成して、磁性層付き建築用面材とした。
【0180】
磁性層は、磁性材料であるアトマイズ鉄粉100質量部に対して、無機添加剤としてタルク5質量部、バインダーとして無機バインダー(実験例6-1)または有機バインダー(実験例6-2)を5質量部と、水20質量部とを混合して形成した磁性材料含有塗材を、掻き取り法により、建築用面材11の主表面上に厚さが0.75mmとなるように塗工し、乾燥することで形成した。
【0181】
アトマイズ鉄粉としては実験例1と同じものを用いた。
【0182】
無機添加剤としては平均粒径が16μmのタルクを用いた。
【0183】
実験例6-1においてはバインダーとして無機バインダーであるアルカリ金属珪酸塩系バインダーを用いた。なお、アルカリ金属珪酸塩系バインダーは、実験例1と同じものを用いている。実験例6-2においてはバインダーとして有機バインダーである酢酸ビニル樹脂を用いた。
【0184】
いずれの実験例でも、磁性層12は、それぞれ磁性材料である鉄粉の単位面積当たりの含有量が2.0kg/m2となるように磁性層を形成している。
【0185】
また、いずれの実験例でも形成した磁性層の厚さは0.75mm±0.25mmの範囲内にあることを確認した。
【0186】
そして、作製した磁性層付き建築用面材について、錆の発生評価を行った。
【0187】
錆の発生評価は、
図7に示すように、実験例6-1の磁性層付き建築用面材71と、実験例6-2の磁性層付き建築用面材72と、水100mLを入れたシャーレ73とを密閉容器74内に入れた後、該密閉容器を40℃に設定した恒温槽内に入れて、磁性層に錆が発生するかを目視で確認した。
【0188】
結果を表6に示す。なお、実験例6-1が実施例、実験例6-2が比較例になる。
【0189】
【表6】
表6に示した結果によれば試験開始後14日の時点においても無機バインダーを用いた実験例6-1の磁性層付き建築用面材では錆が発生しないことを確認できた。一方有機バインダーを用いた実験例6-2の磁性層付き建築用面材では、試験開始後7日目にして錆の発生が確認できた。
【0190】
上記結果から、バインダーとして無機バインダーを用いることで、防錆剤を添加していなくても、磁性層の磁性材料が酸化し、錆等が生じることを抑制できることを確認できた。
【0191】
なお、マグネット吸着試験の結果は示していないが、実験例6-1、実験例6-2の磁性層付き建築用面材はいずれも十分なマグネット吸着力を有することが確認できた。また、カッターにより切断を試みたところ、いずれの実験例の磁性層付き建築用面材も容易に任意の形状に切断加工できることを確認できた。
【0192】
以上に磁性層付き建築用面材を、実施形態等で説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0193】
本出願は、2018年10月5日に日本国特許庁に出願された特願2018-190511号に基づく優先権を主張するものであり、特願2018-190511号の全内容を本国際出願に援用する。