(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169277
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】無残渣フラックス、ソルダペースト、はんだ付けプロセス、はんだ付け製品の製造方法、BGAパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20231121BHJP
B23K 31/02 20060101ALI20231121BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20231121BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20231121BHJP
B23K 1/008 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
B23K35/363 E
B23K31/02 310B
B23K31/02 310C
B23K35/26 310A
C22C13/00
B23K1/008 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148834
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2020505127の分割
【原出願日】2019-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018043396
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(71)【出願人】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢部 有沙
(72)【発明者】
【氏名】小澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光康
(57)【要約】
【課題】還元剤および活性剤を含まず、さらに、はんだ接合部を無残渣にできるフラックス、および、当該フラックスを用いたソルダペーストを提供する。
【解決手段】本発明のフラックスは、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が180℃以上260℃未満である第1の溶剤と;窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が100℃以上220℃未満である第2の溶剤と;脂肪酸アマイドとを含む。第1の溶剤の含有量は、第2の溶剤の含有量よりも少ない。はんだの表面酸化膜を還元除去するための還元剤および還元性を向上させるための活性剤を含まず、はんだ粉末との混合物はソルダペーストになり得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が180℃以上260℃未満である第1の溶剤と;
窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が100℃以上220℃未満である第2の溶剤と;
脂肪酸アマイドと;を含み、
前記第1の溶剤の含有量は、前記第2の溶剤の含有量よりも少なく、
はんだの表面酸化膜を還元除去するための還元剤および還元性を向上させるための活性剤を含まず、
はんだ粉末との混合物は、ソルダペーストになり得、
フラックス残渣は、無残渣となり得る、
フラックス。
【請求項2】
前記第1の溶剤の前記温度は、前記第2の溶剤の前記温度よりも高く、
前記第1の溶剤の前記温度と前記第2の溶剤の前記温度との差は、15℃以上である、
請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記脂肪酸アマイドを6~24質量%、前記第1の溶剤を2~15質量%、前記第2の溶剤を70~86質量%含む、
請求項1または請求項2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記第1の溶剤と;
前記第2の溶剤と;
前記脂肪酸アマイドからなる;
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のフラックス。
【請求項5】
はんだ粉末と;
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のフラックスと;を含む、
ソルダペースト。
【請求項6】
はんだ粉末と;
請求項4に記載のフラックスからなる;
ソルダペースト。
【請求項7】
前記はんだ粉末は、38μm以下の粒径の粉末を、はんだ粉末総量の40質量%以下の割合で含む、
請求項5または請求項6に記載のソルダペースト。
【請求項8】
請求項5~請求項7のいずれか1項に記載のソルダペーストを提供する工程と;
前記はんだ粉末を還元する還元ガスを導入する工程と;
前記はんだ粉末を溶融する工程と;を備える、
はんだ付けプロセス。
【請求項9】
第1の溶剤と、
窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が前記第1の溶剤よりも低い第2の溶剤と、
脂肪酸アマイドと、
はんだ粉末とを含むソルダペーストを、はんだ付け対象物に塗布する、塗布工程と;
前記ソルダペーストを塗布したはんだ付け対象物を、前記はんだ粉末が溶融しない範囲で加熱して、前記第2の溶剤を蒸発させる、蒸発工程と;
前記蒸発工程に並行して、またはその後に、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物を還元ガスで還元する、還元工程と;
前記還元工程の後に、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物を加熱して、前記はんだ粉末を溶融させる、はんだ溶融工程と;を備え、
前記第1の溶剤と前記脂肪酸アマイドは、前記蒸発工程で前記第2の溶剤とともに蒸発する、または、前記はんだ溶融工程での加熱に伴い蒸発し、
フラックス残渣は、無残渣となり得る、
はんだ付け製品の製造方法。
【請求項10】
前記蒸発工程は、前記はんだ付け対象物が配置された空間を減圧する、減圧工程をさらに備える、
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記蒸発工程は、前記はんだ付け対象物が真空中にある状態で加熱する、
請求項9または請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記蒸発工程により、前記はんだ粉末間に間隙が生じ、
前記還元工程は、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物が真空中にある状態で、前記間隙に還元ガスを導入する、
請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記はんだ溶融工程は、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物が真空中にある状態で加熱して前記はんだ粉末を溶融し、一体化したはんだ接合部を得て:
前記はんだ溶融工程後、前記真空を破壊して、前記はんだ接合部の内部空洞(ボイド)を圧縮して小さくする、または無くす、真空破壊工程と;
前記真空破壊工程後、前記はんだ付け対象物を冷却する冷却工程と;をさらに備え、
請求項9~請求項12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記還元ガスは、ギ酸ガスである、
請求項9~請求項13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
第1の溶剤と、
窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が前記第1の溶剤よりも低い第2の溶剤と、
脂肪酸アマイドとを含むフラックスを、仮固定剤として、BGAパッケージ基板に塗布する、塗布工程と;
塗布した前記フラックスにはんだボールを仮固定する、仮固定工程と;
前記フラックスを塗布したBGAパッケージ基板を、前記はんだボールが溶融しない範囲で加熱して、前記第2の溶剤を蒸発させる、蒸発工程と;
前記蒸発工程に並行して、またはその後に、前記はんだボールと前記BGAパッケージ基板を還元ガスで還元する、還元工程と;
前記還元工程の後に、前記はんだボールと前記BGAパッケージ基板を加熱して、前記はんだボールを前記BGAパッケージ基板に接合し、はんだバンプを形成する、形成工程と;を備え、
前記第1の溶剤と前記脂肪酸アマイドは、前記蒸発工程で前記第2の溶剤とともに蒸発する、または、前記形成工程での加熱に伴い蒸発し、
フラックス残渣は、無残渣となり得る、
BGAパッケージの製造方法。
【請求項16】
第1の溶剤と、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が前記第1の溶剤よりも低い第2の溶剤と、脂肪酸アマイドと、はんだ粉末とを含むソルダペーストを、はんだ付け対象物に塗布する、塗布工程と;
塗布した前記ソルダペーストに、BGAパッケージが有するはんだバンプを配置する、バンプ配置工程と;
前記ソルダペーストを塗布したはんだ付け対象物を、前記はんだ粉末と前記はんだバンプが溶融しない範囲で加熱して、前記第2の溶剤を蒸発させる、蒸発工程と;
前記蒸発工程に並行して、またはその後に、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物と前記はんだバンプを還元ガスで還元する、還元工程と;
前記還元工程の後に、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物と前記はんだバンプを加熱して、前記はんだ粉末と前記はんだバンプを溶融させる、はんだ溶融工程と;を備え、
前記第1の溶剤と前記脂肪酸アマイドは、前記蒸発工程で前記第2の溶剤とともに蒸発する、または、前記はんだ溶融工程での加熱に伴い蒸発し、
フラックス残渣は、無残渣となり得る、
はんだ付け製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、ソルダペースト、はんだ付けプロセス、はんだ付け製品の製造方法に関し、特に無残渣ソルダペーストを構成可能なフラックス、無残渣ソルダペースト、当該ソルダペーストを用いた、はんだ付けプロセス、はんだ付け製品の製造方法、および、BGAパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスの製造においては、半導体チップとDBC(Direct bonded copper)基板との間、および、DBC基板とベース板との間のそれぞれにおいて、大面積のはんだ接合がなされる。はんだ材料としては、はんだ箔やソルダペーストを用いる場合があり、前者では固定のための冶具が必要であり、後者でははんだ接合後のフラックス残渣の洗浄が必要となる。
【0003】
ソルダペーストには、通常、はんだ粉末とフラックスが含まれる。フラックス成分には、還元剤、活性剤、チキソ剤(バインダー)、溶剤、粘着付与剤樹脂などがある。還元剤は、はんだ付けの際、はんだ粉末の表面やはんだ付け対象物の表面の酸化膜を除去する役割を果たし、活性剤は、還元性を向上させはんだの濡れ性を向上させる役割を果たす。
【0004】
しかし、フラックスは、はんだ付け後にフラックス残渣として残存する。フラックス成分のうち還元剤や活性剤は、はんだ付けの性能、腐食、マイグレーションに大きな影響を及ぼす。還元効果が高ければ、はんだ付け性は向上する。しかし、これらの活性成分はイオン化し易く水との親和性も強いため、腐食やイオンマイグレーションを引き起こし易い。
【0005】
このため、還元剤や活性剤を含むソルダペーストを用いた場合は、はんだ接合後のフラックス残渣の洗浄が必要となる。しかし、フラックス残渣の洗浄は、工程のコストアップを招く。また、洗浄工程では廃液が発生するために、環境負荷が高く、削減が望まれている。
そこで、特許文献1には、還元剤および活性剤フリーの、洗浄を必要としないソルダペーストが開示されている(段落0001)。当該ソルダペーストを用いた場合のフラックス残渣は、含有するチキソ剤が主であり、その残渣量は、はんだ接合部全体の1質量%以下と極めてわずかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記ソルダペーストを用いた場合でも、はんだ接合が大面積になればなるほどフラックス残渣の総量は増加する。また、面積が大きいために、フラックスが揮発しにくく、はんだ接合部の内部に残ってボイド発生の要因となってしまう。なお、ボイドの発生した箇所は放熱性が悪化するために、パワーデバイスの性能低下を招く。
本発明は上述の課題に鑑み、還元剤および活性剤を含まず、さらに、はんだ接合部を無残渣かつ低ボイドにできるフラックス、および、当該フラックスを用いたソルダペーストを提供することを目的とする。なお、「無残渣」とは、はんだ接合後のフラックス残渣が存在しない状態またはほとんど存在しない状態をいう。具体的には、はんだ接合後、目視で観察してフラックス残渣を確認できない、もしくは、フラックス残渣を目視で確認できるが赤外分光法(IR)で検出できない程度の残渣をいう。「低ボイド」とは、はんだ部分をX線透過装置で観察した場合にボイドが5%未満のものをいう。なお、「%」は、2次元透過像の面積比率である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、脂肪酸アマイドは特定の溶剤の蒸発とともに蒸発させることができるため、チキソ剤として脂肪酸アマイドと、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が異なる、2種類の溶剤を用いて、還元剤、活性剤を含まず、前記2種類の溶剤(第1の溶剤、第2の溶剤)と、脂肪酸アマイドを含むフラックスを作製し、このフラックスを用いたソルダペーストがフラックス残渣を無残渣にでき、そのためフラックス残渣は内部に残らずはんだ接合部が低ボイドとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の第1の態様に係るフラックスは、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が180℃以上260℃未満である第1の溶剤と;窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が100℃以上220℃未満である第2の溶剤と;脂肪酸アマイドとを含み;前記第1の溶剤の含有量は、前記第2の溶剤の含有量よりも少なく、はんだの表面酸化膜を還元除去するための還元剤および還元性を向上させるための活性剤を含まず、はんだ粉末との混合物はソルダペーストになり得、フラックス残渣は、無残渣となり得る。
本明細書において「熱重量測定で質量がゼロ」とは、ゼロまたはゼロに近い値であって、昇温に対してTG曲線が変動しなくなった値(または、昇温に対してTG曲線の変動がみられなくなった値)をいう。「脂肪酸アマイド」はチキソ剤として作用し、はんだ粉末と他の成分との分離防止またはだれ防止等を可能とし、「溶剤」は粘度調整等を可能とする。第2の溶剤ははんだ粉末が溶融する温度よりも低い温度で蒸発するものが好ましい。第1の溶剤は蒸発時に脂肪酸アマイドを蒸発させるものが好ましい。「還元剤」は酸化膜を除去する成分をいい、「活性剤」は還元性を向上させる成分をいう。「還元剤を含まない」とは還元剤フリーであること、または、含んだとしても、本発明の効果を妨げない程度の量であることをいい、「活性剤を含まない」とは活性剤フリーであること、または、含んだとしても、本発明の効果を妨げない程度の量であることをいう。すなわち、洗浄を必要とせず、フラックス残渣が無残渣となり、はんだ接合部を低ボイドにできる量である。このように、本発明の効果を妨げない範囲においては、還元剤、活性剤、添加物等のその他成分を含んでもよい。すなわち、本発明のフラックスは、本質的に、第1の溶剤、第2の溶剤、脂肪酸アマイドからなるフラックスであってもよく、ソルダペーストは、本質的に、はんだ粉末、第1の溶剤、第2の溶剤、脂肪酸アマイドからなるソルダペーストであってもよい。なお、本明細書において、「~からなる」というときは、「本質的に~からなる(essentially consisting of)」を意味する。
このように構成すると、フラックス残渣が無残渣となり、はんだ接合部を低ボイドにできるフラックスを得ることができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係るフラックスは、上記本発明の第1の態様に係るフラックスにおいて、前記第1の溶剤の前記温度は、前記第2の溶剤の前記温度よりも高く、前記第1の溶剤の前記温度と前記第2の溶剤の前記温度との差は、15℃以上である。
このように構成すると、第1の溶剤と第2の溶剤の組合せがより好ましくなる。
【0011】
本発明の第3の態様に係るフラックスは、上記本発明の第1の態様または第2の態様に係るフラックスにおいて、前記第1の溶剤を2~15質量%、前記第2の溶剤を70~86質量%、前記脂肪酸アマイドを6~24質量%含む。
このように構成すると、フラックス成分の割合をより適切な割合にすることができる。
【0012】
本発明の第4の態様に係るフラックスは、上記本発明の第1の態様~第3の態様のいずれか1の態様に係るフラックスにおいて、前記第1の溶剤と;前記第2の溶剤と;前記脂肪酸アマイドからなる。
このように構成すると、フラックス残渣が無残渣となり、はんだ接合部を低ボイドにできるフラックスを得ることができる。
【0013】
本発明の第5の態様に係るソルダペーストは、はんだ粉末と;上記本発明の第1の態様~第4の態様のいずれか1の態様に係るフラックスとを含む。
このように構成すると、はんだ接合後のフラックス残渣が無残渣となり、はんだ接合部を低ボイドにできるソルダペーストを得ることができる。
【0014】
本発明の第6の態様に係るソルダペーストは、はんだ粉末と;上記本発明の第4の態様に係るフラックスからなる。
このように構成すると、はんだ接合後のフラックス残渣が無残渣となり、はんだ接合部を低ボイドにできるソルダペーストを得ることができる。
【0015】
本発明の第7の態様に係るソルダペーストは、上記本発明の第5の態様または第6の態様に係るソルダペーストにおいて、前記はんだ粉末が、38μm以下の粒径の粉末を、はんだ粉末総量の40質量%以下の割合で含む。
このように構成すると、はんだ粉末の少なくとも60質量%は、その粒径が38μmを超えることとなり、はんだ粉末間に還元ガスの導入により適した間隙を維持でき、より還元ガスが侵入しやすくなる。さらに、粒径が大きいと粒子間のスキマが大きくなるので、溶剤と脂肪酸アマイドの蒸発がより容易になる。特に、大面積接合のパワーデバイスでは、中心部の溶剤および脂肪酸アマイドを蒸発させるのが難しく、上記の粒子径がより好ましい。なお、
図7にはんだ粉末間に生じた間隙の走査電子顕微鏡(SEM)画像を例示する。
【0016】
本発明の第8の態様に係るはんだ付けプロセスは、上記本発明の第5の態様~第7の態様のいずれか1の態様に係るソルダペーストを提供する工程と;前記はんだ粉末を還元する還元ガスを導入する工程と;前記はんだ粉末を溶融する工程とを備える。
このように構成すると、フラックス残渣の量を無残渣とすることができる。さらに、ソルダペーストは還元剤・活性剤フリーであるため、はんだ付け時のフラックスの揮発分にはイオン性がなく、基板や部材への腐食が起きることはない。
【0017】
本発明の第9の態様に係るはんだ付け製品の製造方法は、第1の溶剤と、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が前記第1の溶剤よりも低い第2の溶剤と、脂肪酸アマイドと、はんだ粉末とを含むソルダペーストを、はんだ付け対象物に塗布する、塗布工程と;前記ソルダペーストを塗布したはんだ付け対象物を、前記はんだ粉末が溶融しない範囲で加熱して、前記第2の溶剤を蒸発させる、蒸発工程と;前記蒸発工程に並行して、またはその後に、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物を還元ガスで還元する、還元工程と;前記還元工程の後に、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物を加熱して、前記はんだ粉末を溶融させる、はんだ溶融工程とを備え;前記第1の溶剤と前記脂肪酸アマイドは、前記蒸発工程で前記第2の溶剤とともに蒸発する、または、前記はんだ溶融工程での加熱に伴い蒸発し、フラックス残渣は、無残渣となり得る。
このように構成すると、還元時にはんだ粉末が溶融せず、はんだ粉末間等に生じた間隙により、はんだ粉末およびはんだ付け対象物の還元を効果的に行うことができる。さらに、フラックス残渣の量を無残渣とすることができる、および、ソルダペーストは還元剤・活性剤フリーであるため、はんだ付け時のフラックスの揮発分にはイオン性がなく、基板や部材への腐食が起きることはない、という利点を有するはんだ付け製品の製造方法となる。
【0018】
本発明の第10の態様に係るはんだ付け製品の製造方法は、上記本発明の第9の態様に係るはんだ付け製品の製造方法において、前記蒸発工程は、前記はんだ付け対象物が配置された空間を減圧する、減圧工程をさらに備える。
このように構成すると、蒸発工程で蒸発するフラックス成分の蒸発を促すことができる。
【0019】
本発明の第11の態様に係るはんだ付け製品の製造方法は、上記本発明の第9の態様または第10の態様に係るはんだ付け製品の製造方法において、前記蒸発工程は、前記はんだ付け対象物が真空中にある状態で加熱する。「真空」とは、大気より低い圧力(いわゆる減圧)の空間をいう。
このように構成すると、溶剤の蒸発を促進させることができる。さらに、常圧時の沸点が還元時の温度よりも高い溶剤であっても効率よく蒸発させることができ、使用可能な溶剤の種類を増やすことができる。
【0020】
本発明の第12の態様に係るはんだ付け製品の製造方法は、上記本発明の第9の態様~第11の態様のいずれか1の態様に係るはんだ付け製品の製造方法において、前記蒸発工程により、前記はんだ粉末間に間隙が生じ、前記還元工程は、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物が真空中にある状態で、前記間隙に還元ガスを導入する。
このように構成すると、はんだ粉末間等の間隙に還元ガスを浸入し易くできる。
【0021】
本発明の第13の態様に係るはんだ付け製品の製造方法は、上記本発明の第9の態様~第12の態様のいずれか1の態様に係るはんだ付け製品の製造方法において、前記はんだ溶融工程は、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物が真空中にある状態で加熱して前記はんだ粉末を溶融し、一体化したはんだ接合部を得て:前記はんだ溶融工程後、前記真空を破壊して、前記はんだ接合部の内部空洞(ボイド)を圧縮して小さくする、または無くす、真空破壊工程と;前記真空破壊工程後、前記はんだ付け対象物を冷却する冷却工程とをさらに備える。
このように構成すると、真空破壊工程においてはんだが溶融している状態で空洞(ボイド)を潰すことができ、空洞を潰した後ではんだを固化させることができるため、はんだ中のボイドによる疲労寿命の低下をさらに抑制することができる。
【0022】
本発明の第14の態様に係るはんだ付け製品の製造方法は、上記本発明の第9の態様~第13の態様のいずれか1の態様に係るはんだ付け製品の製造方法において、前記還元ガスが、ギ酸ガスである。
このように構成すると、還元ガスとしてよく用いられるガスに好適なソルダペーストとなる。また、300℃より低い温度ではんだ粉末およびはんだ付け対象物を還元することができる。
【0023】
本発明の第15の態様は、本発明の第1の態様~第4の態様のいずれか1の態様に係るフラックスをはんだボールの仮固定剤として使用して、BGAパッケージを製造するものである。BGAパッケージの製造方法は、第1の溶剤と、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が前記第1の溶剤よりも低い第2の溶剤と、脂肪酸アマイドとを含むフラックスを、仮固定剤として、BGAパッケージ基板に塗布する、塗布工程と;塗布した前記フラックスにはんだボールを仮固定する、仮固定工程と;前記フラックスを塗布したBGAパッケージ基板を、前記はんだボールが溶融しない範囲で加熱して、前記第2の溶剤を蒸発させる、蒸発工程と;前記蒸発工程に並行して、またはその後に、前記はんだボールと前記BGAパッケージ基板を還元ガスで還元する、還元工程と;前記還元工程の後に、前記はんだボールと前記BGAパッケージ基板を加熱して、前記はんだボールを前記BGAパッケージ基板に接合し、はんだバンプを形成する、形成工程とを備え;前記第1の溶剤と前記脂肪酸アマイドは、前記蒸発工程で前記第2の溶剤とともに蒸発する、または、前記形成工程での加熱に伴い蒸発し、フラックス残渣は、無残渣となり得る。
このように構成すると、フラックス残渣が無残渣となり、はんだ接合部が低ボイドのBGAパッケージを製造できる。
【0024】
本発明の第16の態様に係るはんだ付け製品の製造方法は、第1の溶剤と、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が前記第1の溶剤よりも低い第2の溶剤と、脂肪酸アマイドと、はんだ粉末とを含むソルダペーストを、はんだ付け対象物に塗布する、塗布工程と;塗布した前記ソルダペーストに、BGAパッケージが有するはんだバンプを配置する、バンプ配置工程と;前記ソルダペーストを塗布したはんだ付け対象物を、前記はんだ粉末と前記はんだバンプが溶融しない範囲で加熱して、前記第2の溶剤を蒸発させる、蒸発工程と;前記蒸発工程に並行して、またはその後に、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物と前記はんだバンプを還元ガスで還元する、還元工程と;前記還元工程の後に、前記はんだ粉末と前記はんだ付け対象物と前記はんだバンプを加熱して、前記はんだ粉末と前記はんだバンプを溶融させる、はんだ溶融工程とを備え;前記第1の溶剤と前記脂肪酸アマイドは、前記蒸発工程で前記第2の溶剤とともに蒸発する、または、前記はんだ溶融工程での加熱に伴い蒸発し、フラックス残渣は、無残渣となり得る。
このように構成すると、前記はんだ付け対象物がプリント基板の場合、BGAパッケージを実装することができ、フラックス残渣は無残渣となり、はんだ接合部を低ボイドとすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、還元剤および活性剤を含まず洗浄が不要なフラックスであって、フラックス残渣の量を無残渣にでき、はんだ接合部のボイドが少ないフラックスを得ることができる。また、当該フラックスとはんだ粉末との混合物は、洗浄不要な、残渣が無残渣の、かつはんだ接合部のボイドが少ないソルダペーストとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】はんだ付け製品の製造方法の概要を示す図である。Aは従来法であり、Bは本発明の方法である。
【
図2】本発明のはんだ付け製品の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】はんだ付け装置1を用いたはんだ接合手順を例示するフローチャートである。
【
図5】はんだ付け装置1を用いた他のはんだ接合手順を例示するフローチャートである。
【
図6】リフローでの温度プロファイルを例示するグラフである。
【
図7】はんだ粉末間に生じた間隙を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この出願は、日本国で2018年3月9日に出願された特願2018-043396号に基づいており、その内容は本願の内容としてその一部を形成する。
また、本発明は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、本発明の精神と範囲内における、種々の変更、改変が、当業者にとって明らかであるからである。出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0029】
[フラックス]
本発明の第1の実施の形態に係るフラックスを説明する。
本発明のフラックスは、チキソ剤として脂肪酸アマイドと、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が異なる、第1の溶剤と第2の溶剤の2種類の溶剤とを含むが、還元剤、活性剤を含まない。または、含むとしても本発明の効果を妨げない程度の量以下である。
ここで還元剤とは、還元作用を示し、はんだ付けの際はんだ粉末の表面やはんだ付け対象物の表面の酸化膜を除去する物質であり、例えば、ロジン、ロジン誘導体などである。
活性剤とは、還元性やはんだの濡れ性を向上させる物質であり、例えば、アミン-ハロゲン化水素酸塩、有機酸などである。アミン-ハロゲン化水素酸塩としては、例えば、ジエチルアミン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩などが挙げられる。有機酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ステアリン酸、安息香酸などが挙げられる。
なお、本発明のフラックスは、還元剤と活性剤を除き、発明の効果が得られる限りにおいて、脂肪酸アマイドと溶剤以外の化合物(添加物等)を含有してもよい。
【0030】
[ソルダペースト]
本発明の第2の実施の形態に係るソルダペーストを説明する。
本発明のソルダペーストは、上記フラックスとはんだ粉末とを含む。
なお、本発明のソルダペーストは、還元剤と活性剤を除き、発明の効果が得られる限りにおいて、上記フラックスとはんだ粉末以外の化合物(添加物等)を含有してもよい。
【0031】
本発明のソルダペーストを用いてはんだ付けを行う場合、還元には還元ガスを用いる。本発明のソルダペーストに含まれるはんだ粉末は、前記還元ガスによる還元温度および還元時の気圧において溶融しないものが好ましい。すなわち、はんだ粉末が溶融する温度は、還元温度よりも高い任意の温度であり、本実施の形態では還元温度よりも10~50℃高い温度であることが好ましい。
【0032】
[溶剤]
第2の溶剤は、還元温度以下で蒸発(気化)するものが好ましい。第2の溶剤の蒸発が気圧に関わらず完了する最低温度(以後、蒸発温度とする)は、還元温度よりも低いまたは同一の任意の温度である。常圧での沸点が還元温度よりも高い溶剤であっても、雰囲気の圧力を調整する機構により、溶剤の蒸発温度を還元温度よりも低くすることができ、第2の溶剤として用いることができる。このように、第2の溶剤は所定の気圧において還元温度以下で蒸発するものであればよい。
すなわち、本発明のフラックスおよびソルダペーストは、所定の気圧において、以下の関係を有する材料を含む。
・第2の溶剤の蒸発温度≦還元温度<はんだ粉末の融点
上記の「融点」とは、気圧にかかわらず物質が溶融する温度をいう。
このように、還元ガスによる還元の際、はんだ粉末は固体であればよく、第2の溶剤は気体であればよく、還元時の温度に合わせて、はんだ粉末、第2の溶剤を適宜組合せる。
【0033】
第1の溶剤は、第2の溶剤の蒸発に伴い本来の沸点よりも低い温度で蒸発を開始し、蒸発工程において第2の溶剤とともに蒸発(気化)してしまうものであってもよく、第2の溶剤とは異なり、還元時の温度からのさらなる昇温に伴い蒸発するものであってもよい。このように、第1の溶剤はその種類により、蒸発により消失するタイミングは異なってもよい。なお、第1の溶剤の蒸発に伴って脂肪酸アマイドを蒸発させる必要があるため、第1の溶剤は、蒸発時に脂肪酸アマイドを蒸発させることができる溶剤であることが好ましい。
【0034】
第1の溶剤は、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が180℃以上260℃未満であるものが好ましい。
第2の溶剤は、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度が100℃以上220℃未満であるものが好ましい。
熱重量測定(TG)は、熱分析装置(TG-DTA)、株式会社リガク製TG8120を用いて、アルミパンに5mg程度(約5mg)を入れて測定したものである。
なお、第1の溶剤の前記温度と第2の溶剤の前記温度との差が、少なくとも15℃以上あることが好ましい。より好ましくは25℃以上であり、特に好ましくは35℃以上である。
【0035】
第1の溶剤としては、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、1-ヘキサデカノール、2-ヘキシルデカノール、1-オクタデカノール、イソアラキルアルコール、イソオクタデカノール、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。前記溶剤は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
【0036】
第2の溶剤としては、例えば、グリコール系、グリコールエーテル系、アルコール系などの溶剤を挙げることができる。具体的には、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルアセテート、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、α-テルピネオール、メントール、ベンジルアルコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル、ドデカン、テトラデセン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,5-ジヒドロキシペンタン、オレイルアルコール等が挙げられる。前記溶剤は、単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
【0037】
[チキソ剤]
チキソ剤は、ソルダペーストの粘度調整や物質の固着を促進させる。チキソ剤には、脂肪酸アマイドを用いる。
脂肪酸アマイドとして、アマイド系チキソ剤を挙げることができる。アマイド系チキソ剤とは、アマイド結合(-CONH-)を含む化合物であり、例えば、ステアリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、12-ヒドロキシステアリン酸アマイド等の高級脂肪酸アマイド、リシノール酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド等の不飽和脂肪酸モノアマイド、N-ラウリルラウリン酸アマイド、N-ステアリルステアリン酸アマイド等の置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド等のメチロールアマイド、脂肪酸アマイドのエチレンオキシド付加体、脂肪酸エステルアマイド、脂肪酸エタノールアマイド、N-ブチル-N’-ステアリル尿素などの置換尿素等、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド等の飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド等の不飽和脂肪酸ビスアマイド、m-キシリレンビスステアリン酸アマイド等の芳香族ビスアマイド等が挙げられる。これらのアマイド系チキソ剤を単独で、あるいは複数種類を混合して用いることができる。
なお、形状は特に制限されず、粒状やフレーク状であってもよい。また、溶剤で膨潤したものを用いてもよい。前記チキソ剤の中でも、第1の溶剤とともに揮発しやすくなるため、高級脂肪酸アマイド等を用いることがより好ましい。特に好ましくは、常圧時の融点が80℃以上110℃以下の高級脂肪酸アマイドおよび不飽和脂肪酸アマイドである。
【0038】
これらのチキソ剤は、フラックスおよびソルダペーストの粘度を上げる、ソルダペーストのチキソ比を上げる(印刷性が向上する)、熱ダレ性を向上させる、はんだ粉末とフラックスの分離を抑制することができる。これらのチキソ剤は、第1の溶剤の蒸発時に蒸発するためはんだ接合部内にほとんど残らない。揮発して基板や部品に再付着しても、活性物質ではないため腐食させることがない。
【0039】
[はんだ粉末]
はんだ粉末の合金組成は特に制限されない。バンプ形成やプリント基板の実装に今日使用されている各種はんだ合金が使用可能である。例えば、鉛フリーはんだとして用いられているSn-Ag系はんだ、Sn-Ag-Cu系はんだ、Sn-Ag-Cu-Bi系はんだ、Sn-Ag-In-Bi系はんだ、Sn-Cu系はんだ、Sn-Zn系はんだ、Sn-Bi系はんだ等の鉛フリーはんだ合金の粉末や、融点変化型合金A-FAPを挙げることができる。
【0040】
はんだ粉末の平均粒径は、例えば15~53μmまたは20~53μmの範囲を挙げることができる。しかし、印刷開口のサイズにより、より大径またはより小径のものに適宜変更してもよい。なお、はんだ粉末間の間隙に還元ガスを導入し、より還元性を向上させることを考慮すると、はんだ粉末は、38μm以下の粒径の粉末をはんだ粉末総量の40質量%以下の割合で含む粉末がより好ましい。さらに好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。
図7に粒径の違いにより生じるはんだ粉末間の間隙を走査電子顕微鏡(SEM)画像で例示する。
なお、本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0041】
[還元ガス]
ソルダペーストとともに用いる還元ガスとしては、水素、ギ酸などのカルボン酸のガス、カルボン酸以外の有機酸のガス、有機酸以外の有機化合物のガス、有機化合物以外の他の還元性のガスを挙げることができる。
常圧、真空に関わらず、還元時の温度は150~450℃が好ましい。例えば還元ガスがギ酸の場合は、還元時の温度は150~300℃であり、好ましくは160~250℃であり、特に好ましくは170~230℃である。還元ガスが水素の場合は、250~450℃であり、好ましくは260~400℃であり、特に好ましくは270~350℃である。
一例として、還元ガスにギ酸を用いて、還元温度を約200℃とした場合は、第2の溶剤には約200℃以下で蒸発するものが好ましい。なお、ギ酸を用いると他の還元ガスよりも低い温度で還元できるため好ましい。
【0042】
[組成]
本発明のフラックスの組成は、脂肪酸アマイドが6~24質量%、第1の溶剤が2~15質量%、第2の溶剤が70~86質量%であり、好ましくは、脂肪酸アマイドが9~15質量%、第1の溶剤が4~12質量%、第2の溶剤が76~84質量%である。例えば、第1の溶剤が4質量%、脂肪酸アマイドが12質量%、第2の溶剤が84質量部%である。
本発明のソルダペーストの組成は、はんだ粉末が80~99質量%、上記フラックスが1~20質量%であり、好ましくは、はんだ粉末が85~95質量%、上記フラックスが5~15質量%である。
【0043】
本発明のフラックスは、典型的には、脂肪酸アマイド、第1の溶剤、第2の溶剤を上記割合で混合したものである。本発明のソルダペーストは、典型的には、はんだ粉末、脂肪酸アマイド、第1の溶剤、第2の溶剤を上記割合で混合して、ペースト状にしたものである。なお、脂肪酸アマイドや溶剤の量は粘度調整の程度により適宜変更することができる。脂肪酸アマイドと溶剤は、加熱しながら撹拌して混合すればよい。はんだ粉末との混合は、常温で撹拌機を用いて混合すればよい。
【0044】
[はんだ付け製品の製造方法]
図1を参照して、従来法と比較しながら本発明の第3の実施の形態に係るはんだ付け製品の製造方法の概要を説明する。
図1の方法Aは従来法であり、使用するソルダペーストは、はんだ粉末と、フラックスとして、還元剤、活性剤、チキソ剤、溶剤を含む。方法Bは本発明のはんだ付け製品の製造方法であり、使用するソルダペーストは、はんだ粉末と、フラックスとして、チキソ剤(脂肪酸アマイド)、第1の溶剤、第2の溶剤を含むが、還元剤、活性剤を含まない。
【0045】
以下、
図1では被接合部材としてはんだ付け対象物TとソルダペーストSを用いて説明する。
まず方法Aでは、スクリーン印刷等によりはんだ付け対象物TにソルダペーストS’を塗布する(A1)。
図1に示す、はんだ付け対象物TとソルダペーストS’を加熱すると、溶剤の蒸発が始まる(A2)。さらに加熱して、還元剤、活性剤を含む溶融したフラックスにより還元する(A3)。さらにはんだ溶融温度以上まで加熱し、はんだ付けを行う(A4)。ソルダペースト中の10質量%前後のフラックスがフラックス残渣として残るため、洗浄して除去する(A5)。
【0046】
一方で方法Bでは、スクリーン印刷等によりはんだ付け対象物TにソルダペーストSを塗布する(B1)。
図1に示すはんだ付け対象物TとソルダペーストSを加熱すると、第2の溶剤の蒸発が始まる(B2)。さらに還元温度まで加熱し、還元ガスFにより還元する(B3)。還元時(B3)では、第1の溶剤の種類や還元を開始するまでの時間等の種々の条件によりチキソ剤としての脂肪酸アマイドと第1の溶剤が残存している場合がある。さらにはんだ溶融温度以上まで加熱し、はんだ付けを行う(B4)。第1の溶剤が残存している場合は、はんだ付けを完了するまでに第1の溶剤が蒸発し、第1の溶剤の蒸発に伴いチキソ剤としての脂肪酸アマイドも蒸発する。よって、フラックス残渣はほとんど残らず無残渣となり、洗浄も当然不要である。方法Bでは、はんだ粉末の溶融する温度が還元温度よりも高いため、還元時にはんだ粉末が溶融せず、はんだ粉末間に間隙が生じ、還元ガスの浸入、還元を容易にする。なお、還元は、第2の溶剤の蒸発と同時であってもよく、蒸発後であってもよい。
【0047】
図2を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るはんだ付け製品の製造方法をより詳細に説明する。
図2は、はんだ付け製品の製造方法を示すフローチャートである。
以下、
図2、
図3では、被接合部材として、
図3に示すように基板W、ソルダペーストS、電子部品Pとを用いて説明する。
(1)ソルダペーストの提供工程
ソルダペーストの提供工程とは、上記本発明の第2の実施の形態に係るソルダペーストを使用できる状態にする工程である。ソルダペーストの製造であっても、すでに製造されたソルダペーストの準備であってもよい。
【0048】
(2)ソルダペーストの塗布工程
ソルダペーストを、ソルダペースト印刷機(またはスクリーン印刷機)等を用いてはんだ付け対象物の上に塗布する。通常はメタルマスクと呼ばれる、例えば、薄さが約30~300μm程度の金属板に穴を開けたマスク(型)を用い、印刷機のスキージを使って印刷を行う。人間の手でスキージを動かす手動の装置を使用してもよい。または、シリンジを用いた塗布であってもよい。
【0049】
(3)第2の溶剤の蒸発工程、被接合部材の還元工程、はんだ溶融工程
第2の溶剤の蒸発工程、被接合部材の還元工程、はんだ溶融工程について、
図3に記載のはんだ付け装置1を用いてより詳細に説明する。
ソルダペーストSを塗布したはんだ付け対象物として、基板Wと電子部品Pとを用いている。還元ガスとしては、ギ酸ガスを用いている。
なお、以下の説明において、本発明の第3の実施の形態に係るはんだ付け製品の製造方法は、
図3のはんだ付け装置1の作用と併せて説明するが、他の装置によって行われるものでもよい。
【0050】
まず
図3を参照して、はんだ付け装置1を説明する。
図3は、はんだ付け装置1の概略構成図である。はんだ付け装置1は、被接合部材のはんだ接合が行われる空間である処理空間11sを形成するチャンバ11を有する処理部10と、還元ガスとしてのギ酸ガスFをチャンバ11に供給する還元ガス供給部としてのギ酸供給部20と、はんだ付け装置1内のギ酸ガスFを排出する前に濃度を低下させる還元ガス処理部としての触媒ユニット33と、はんだ付け装置1の動作を制御する制御装置50と、これらを収容する筐体100とを備えている。
【0051】
はんだ付け装置1は、基板Wと電子部品Pとを、ソルダペーストSで接合する装置となっている。基板Wおよび電子部品Pは、共に、表面に金属部分を有しており、当該金属部分がはんだを介して導通するように接合される。基板Wおよび電子部品Pは、ソルダペーストSを挟んだ状態でチャンバ11に搬入され、チャンバ11内ではんだが溶融して接合される。以下、基板W、ソルダペーストS、電子部品Pが積重されてはんだが溶融していない状態のものを被接合部材Bといい、はんだが溶融して基板Wと電子部品Pとが接合された状態のもの、すなわち接合部材をはんだ付け製品Cという。
【0052】
チャンバ11は、シャッタ11dで搬入出口11aを塞ぐことにより、処理空間11sを密閉することができるように構成されている。チャンバ11は、処理空間11sを、概ね10Pa(絶対圧力)に減圧しても耐えうるような材料や形状が採用されている。
チャンバ11の内部には、被接合部材Bが載置されるキャリアプレート12と、キャリアプレート12を加熱するヒータ13とが設けられている。
【0053】
ヒータ13は、キャリアプレート12を、はんだの溶融温度よりも高い接合温度まで加熱することができるように構成されている。
【0054】
ギ酸供給部20は、ギ酸ガスFをチャンバ11内に導く。なお、本説明では、還元ガスとしてギ酸ガスFを用いているが、基板Wおよび電子部品Pの接合面に生成された金属酸化物を還元することができるものであれば、ギ酸ガスF以外のカルボン酸のガス、カルボン酸以外の有機酸のガス、有機酸以外の有機化合物のガス、有機化合物以外の他の還元性のガスであってもよい。他の還元性のガスとして、例えば水素ガスが挙げられる。本説明では、還元温度をはんだの溶融温度よりも低くする観点、および入手容易性の観点から、還元ガスとしてギ酸ガスFを用いている。
【0055】
触媒ユニット33は、はんだ付け装置1から排出される排出ガスE中のギ酸の濃度を、環境に影響を与えない濃度に低下させる機器である。なお、気体Gは、チャンバ11から排出されるガスの総称である。
【0056】
真空ポンプ31は、チャンバ11内の圧力を概ね10Pa(絶対圧力)に減圧することができるようにチャンバ11内の気体Gを排出する減圧ポンプとして配設される。
【0057】
制御装置50は、シャッタ11dを開閉させることができるように構成されている。また、制御装置50は、ヒータ13のON-OFFおよび出力の変更を介して、キャリアプレート12の加熱を行うことができるように構成されている。また、制御装置50は、ギ酸ガスFをチャンバ11に向けて供給することができるように構成されている。また、制御装置50は、真空ポンプ31の発停を制御することができるように構成されている。また、制御装置50は、後述するはんだ付け装置1の動作のシーケンスが記憶されている。
【0058】
引き続き
図4を参照して、本発明の実施の形態に係るはんだ付け製品Cの製造方法を説明する。
図4は、はんだ付け製品Cのはんだ接合手順を示すフローチャートである。以下の説明ではんだ付け装置1の構成について言及しているときは、適宜
図3を参照する。
【0059】
はんだ付け装置1に被接合部材Bを搬入するため、シャッタ11dを開けるボタン(不図示)を押すと、制御装置50は、真空ポンプ31を作動させ、チャンバ11内の気体Gの排気を開始した後(S1)、シャッタ11dを開にする。併せて、キャリアプレート12の大部分がチャンバ11の外側に出るようにキャリアプレート12を移動させる。シャッタ11dを開ける前にチャンバ11内の気体Gをチャンバ11から排出させることで、シャッタ11dを開けてもチャンバ11内の気体Gが搬入出口11aを介してはんだ付け装置1の外に流出することを防ぐことができる。シャッタ11dが開になり、キャリアプレート12の大部分がチャンバ11の外側に出て、キャリアプレート12に被接合部材Bが載置されたら、キャリアプレート12のチャンバ11内への移動に伴って被接合部材Bがチャンバ11内に搬入される(S2)。
【0060】
被接合部材Bがチャンバ11内に搬入されたら、制御装置50は、シャッタ11dを閉じて、チャンバ11内を密閉する。次に、シャッタ11dが開の時にチャンバ11内に流入した大気を除去し、不活性ガスの雰囲気とするため、制御装置50は、チャンバ11内の気体Gの排気を行い、その後不活性ガスNを導入する。この工程を繰り返すことにより、チャンバ11内の酸素濃度を低下させる(S3)。酸素濃度は5ppm以下が好ましい。不活性ガスNは、例えば窒素ガスである。
【0061】
次に制御装置50は、ヒータ13をONにして、キャリアプレート12の温度、ひいては被接合部材Bの温度を、ソルダペーストSに含まれる第2の溶剤が気化(蒸発)する温度に昇温する(S4)。昇温するにつれて主に第2の溶剤が蒸発しソルダペーストSから除去される。本実施の形態では、第2の溶剤の蒸発を促進するため、チャンバ11内の圧力を真空(減圧)にすることができる。このように、ギ酸ガスFの供給前に、ギ酸ガスFを含まない雰囲気で加熱し第2の溶剤を蒸発させて、はんだ粉末間に間隙を形成してもよい。
本実施の形態では、気化する温度が還元温度よりも低い場合で説明しているが、気化する温度は下記の還元温度と同一でもよい。同一の場合は、第2の溶剤の一部の蒸発と被接合部材Bの還元が同時に起こることになる。すなわち、(S4)工程と次工程である(S5)工程および(S6)工程が並行する場合が存在する。
【0062】
第2の溶剤が蒸発し、はんだ粉末間に間隙が形成されたら、次に制御装置50は、ギ酸ガスFをギ酸供給部20からチャンバ11内に供給する(S5)と共に、ヒータ13をONに維持して、キャリアプレート12の温度、ひいては被接合部材Bの温度を還元温度に昇温する(S6)。還元温度は、ギ酸によって被接合部材Bの酸化物が還元される温度である。ここで、本実施の形態では、還元温度は、ソルダペーストSに含まれるはんだ粉末の溶融温度よりも低いため、はんだ粉末が溶融せず形成された間隙にギ酸ガスが浸入し易く、被接合部材Bがはんだ接合される前に酸化膜を好適に除去することができる。ギ酸ガスFの供給は、チャンバ11内を真空にしてから行うことにより、はんだ粉末の間隙にギ酸ガスFが浸入し易くなる。ギ酸ガスFをチャンバ11内に供給する工程(S5)および被接合部材Bの温度を還元温度に昇温する工程(S6)が還元工程に相当する。なお、還元温度への昇温が完了後にギ酸ガスFを供給してもよい。
【0063】
還元工程(S5、S6)が終了したら、チャンバ11内のギ酸ガスF雰囲気を維持したまま、ヒータ13の出力を上げて、キャリアプレート12の温度、ひいては被接合部材Bの温度を接合温度に昇温してはんだ粉末を溶融させ、被接合部材Bのはんだ接合を行う(S7)。接合温度は、ソルダペーストSに含まれるはんだ粉末の溶融温度よりも高い任意の温度であり、本実施の形態では溶融温度よりも30~50℃高い温度としている。なお、第1の溶剤が残存している場合は、還元工程(S5、S6)から接合工程(S7)の間に蒸発し、第1の溶剤の蒸発に伴い脂肪酸アマイドも蒸発して消失する。
【0064】
被接合部材Bのはんだが溶融したら、制御装置50は、ヒータ13をOFFにする。このように冷却を開始することで、被接合部材Bの温度が低下し、融点未満になると、はんだが固まってはんだ付け製品Cとなる。このとき、キャリアプレート12を強制的に冷却することではんだの固化を早めてもよい。次に、真空ポンプ31の作動およびメイン排気弁41vを開にしてチャンバ11内からギ酸ガスFを排出し(S8)、不活性ガスNを導入することで、チャンバ11内を常圧とする。チャンバ11内から排出されたギ酸ガスFは、触媒ユニット33に流入する。ギ酸ガスFは、触媒ユニット33でギ酸が分解され、ギ酸の濃度が所定の濃度以下に低減されて、排出ガスEとしてはんだ付け装置1から排出される(S9)。はんだ付け製品Cが製造されると、制御装置50は、バイパス排気管42を介したチャンバ11内の気体Gの排気を行い(S10)、シャッタ11dを開にする。これにより、はんだ付け製品Cをチャンバ11から取り出すことができる(S11)。
【0065】
はんだ付け製品Cがチャンバ11から搬出されたら、制御装置50は、連続運転が行われるか否かを判断する(S12)。連続運転が行われる場合は、チャンバ11内の気体Gの排気を行う工程(S1)に戻る。他方、連続運転が行われない場合は、メンテナンス運転を行う(S13)。
【0066】
以上の説明では、被接合部材Bをギ酸ガスFの雰囲気下で昇温し、ソルダペーストS中のはんだ粉末を溶融するようにしたが、真空(例えば100Pa(絶対圧力)程度)中で昇温してはんだ粉末を溶融してもよい。被接合部材Bを真空中で昇温する場合は、処理排出工程(S8、S9)が、還元工程(S5、S6)の直後に行われる。なお、はんだ付け製品Cをチャンバ11から取り出す(S11)ためのシャッタ11dを開ける際に、チャンバ11内にギ酸ガスFがほとんど存在しない場合は、チャンバ11内を負圧にせずに(真空ポンプ31を作動させず)、シャッタ11dを開けてもよい。本発明で使用するソルダペーストは、フラックス残渣を無残渣にすることができるため、被接合部材Bを真空中で接合した場合でもはんだ飛散(またはフラックス飛散)を抑制することができる。
【0067】
被接合部材Bを真空中で接合する例として、
図5を参照して、本発明の他の実施の形態に係るはんだ付け製品Cの製造方法を説明する。
図5は、はんだ付け製品Cのはんだ接合手順を示すフローチャートである。以下の説明ではんだ付け装置1の構成について言及しているときは、適宜
図3を参照する。
【0068】
(S1)~(S6)は、
図4の製造方法と同様である。
(S6)が終了したら、制御装置50は、真空ポンプ31の作動およびメイン排気弁41vを開にすることで、チャンバ11内からギ酸ガスFを排出し、チャンバ11内を減圧する(S7)。チャンバ11内の減圧(真空)を維持したまま、ヒータ13の出力を上げて、キャリアプレート12の温度、ひいては被接合部材Bの温度を接合温度に昇温し(S8)、はんだを溶融させ、被接合部材Bのはんだ接合を行う。被接合部材Bのはんだ接合を行ったら、制御装置50は、不活性ガスNを導入する(S9)ことで、チャンバ11内の真空を破壊する。制御装置50は、ヒータ13をOFFにし、冷却を開始する(S10)ことで、被接合部材Bの温度が低下し、融点未満になると、はんだが固まって、はんだ付け製品Cとなる。はんだ付け製品Cが製造されると、制御装置50は、バイパス排気管42を介したチャンバ11内の気体Gの排気を行い、シャッタ11dを開にする。これにより、はんだ付け製品Cをチャンバ11から取り出すことができる(S11)。
(S12)~(S13)は、
図4の製造方法と同様である。
このようにはんだが溶融した状態で不活性ガスNを導入すると、空洞(ボイド)を圧縮し潰すことができる。空洞を潰した後ではんだを固化させると、はんだ中のボイドによる疲労寿命の低下をさらに抑制することができる。
【0069】
以上で説明したように、はんだ付け装置1によれば、筐体100に、処理部10、ギ酸供給部20、触媒ユニット33、制御装置50等、真空中ではんだ接合を行うのに要する機器が収容されているので、ギ酸ガスFを用いたはんだ接合を適切にはんだ付け装置1内で完結させることができる。また、本実施の形態に係るはんだ付け製品Cの製造方法によれば、ソルダペーストSとギ酸ガスFを用いて適切な真空はんだ付けを行うことができる。
【0070】
以上の説明では、被接合部材として、ソルダペーストSとともに基板W、電子部品Pを用いて説明したが、被接合部材は、はんだ接合に適した金属部分を表面に有する部材であれば、基板Wや電子部品P以外の部材であってもよい。
【0071】
本願のはんだ付け製品の製造方法は、さらにはんだ接合が完了したはんだ付け対象物をコーティングするコーティング工程を備えてもよい。本発明によるはんだ接合では、残渣がほとんど無いためコーティング剤との密着性に問題が生じない。よって、コーティング工程によりコーティングすることにより、はんだ接合部が適切に保護される。
【0072】
本願のはんだ付け製品の製造方法は、BGA(Ball Grid Array)パッケージの製造方法に用いることもできる。すなわち、BGAパッケージ基板上に、仮固定剤として本願のフラックスを塗布(印刷)し、粒径100~350μm程度のはんだボールをフラックス上に載置して、本願のはんだ付け製品の製造方法を用いて、はんだボールの接合(バンプの形成)を行ってもよい。
【0073】
本願のはんだ付け製品の製造方法は、BGAパッケージの実装に用いることもできる。すなわち、プリント基板上に、仮固定剤として本願のソルダペーストを塗布(印刷)し、BGAパッケージのはんだバンプをソルダペースト上に載置して、本願のはんだ付け製品の製造方法を用いて、はんだバンプの接合を行ってもよい。
【0074】
以上のとおり、本発明のフラックスおよびソルダペーストは、その組成をよりシンプルなものとし、従来の還元剤および活性剤が担っていた酸化金属の還元や還元性の向上、さらには溶融性の向上を、装置側の還元ガスの導入および真空によって対応できるようにしたものである。さらにその組成により、はんだ接合部を無残渣かつ低ボイドとすることができる。なお、本発明を、はんだ付けを通して説明したが、本発明は「はんだ付け(soldering)」に限られず「ろう付け(brazing)」においても有用である。
【実施例0075】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0076】
[材料]
・はんだ粉末
はんだ粉末(A):Sn-3Ag-0.5Cu(略称SAC305)、融点約220℃、平均粒径40μm、38μm以下の割合15%
はんだ粉末(B):Sn-3Ag-0.5Cu(略称SAC305)、融点約220℃、平均粒径33μm、38μm以下の割合80%
はんだ粉末(C):Sn-3Ag-0.5Cu(略称SAC305)、融点約220℃、平均粒径30μm、38μm以下の割合90%、20μm以下の割合5%
はんだ粉末(D):Sn-3Ag-0.5Cu(略称SAC305)、融点約220℃、平均粒径19μm、25μm以下の割合90%、10μm以下の割合5%
・アマイド
脂肪酸アマイド(A):ステアリン酸アマイド(花王社製)
脂肪酸アマイド(B):ラウリン酸アマイド(日本化成社製)
ポリアマイド:ライトアマイドWH-255(共栄社化学社製)
・溶剤
第1の溶剤(A):トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製)
第1の溶剤(B):イソオクタデカノール(日産化学工業社製)
第1の溶剤(C):1-ヘキサデカノール(東京化成社製)
第1の溶剤(D):2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール(東京化成社製)
第2の溶剤(A):2,2-ジメチル-1,3-ヘキサンジオール(KHネオケム社製)
第2の溶剤(B):2-メチル-1,3-ヘキサンジオール(東京化成社製)
第2の溶剤(C):3-メチル-1,5-ペンタンジオール(東京化成社製)
第2の溶剤(D):3-メチル-1,3-ブタンジオール(東京化成社製)
【0077】
[ソルダペーストの作製1]
[実施例1]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(A)2質量%、第2の溶剤(A)86質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例2]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(A)4質量%、第2の溶剤(A)84質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例3]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(B)4質量%、第2の溶剤(A)84質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例4]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(B)12質量%、第2の溶剤(A)76質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例5]
脂肪酸アマイド(A)3質量%、脂肪酸アマイド(B)3質量%、第1の溶剤(B)12質量%、第2の溶剤(A)82質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例6]
脂肪酸アマイド(A)12質量%、脂肪酸アマイド(B)12質量%、第1の溶剤(B)6質量%、第2の溶剤(A)70質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%と鉛フリーはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例7]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(C)4質量%、第2の溶剤(A)84質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%と鉛フリーはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例8]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(D)4質量%、第2の溶剤(A)84質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%と鉛フリーはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[比較例1]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第2の溶剤(A)88質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[比較例2]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(B)21質量%、第2の溶剤(A)67質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[比較例3]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(A)21質量%、第2の溶剤(A)67質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(A)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[比較例4]
ポリアマイド5質量%、第2の溶剤(A)95質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%と鉛フリーはんだ合金粉末(B)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
【0078】
[試験片の作製1]
試験片として、ニッケルメッキ銅基板(70×70mm、厚み1mm)を準備し、前記基板の一面に実施例および比較例のソルダペーストを40×35mmサイズで600μm厚み(メタルマスク厚)に塗布した。塗布したソルダペーストの上にニッケルメッキ銅基板(40×35mm、厚み1mm)を搭載した。
【0079】
[リフロー条件1]
リフロー条件は、
図6の「温度プロファイル」に示すとおりである。
予備加熱1(第2の溶剤蒸発工程):窒素雰囲気(大気圧)200℃以下
予備加熱2(第2の溶剤蒸発工程):真空雰囲気(200Pa以下)、200℃、120秒
予備加熱3(還元工程):ギ酸+窒素雰囲気(大気圧、ギ酸濃度3%Vol)、200℃、240秒
本加熱(はんだ溶融工程):真空雰囲気(200Pa)、ピーク温度260℃、220℃以上、加熱時間90秒
【0080】
[ボイド判定1]
ソルダペーストが印刷された基板を、前記リフロー条件で加熱後、ボイドの有無を確認した。確認方法は、基板ごとにはんだ部分をX線透過装置(エクスロン・インターナショナル社製Cheetah Evo)で観察して、ボイドが5%未満のものをOK、ボイドが5%以上ものをNGとした。
[残渣量判定1]
前記リフロー条件で加熱後のフラックス残渣は、目視で観察して、はんだ接合部の淵から3mm以上に渡ってフラックス残渣を明確に確認できる、もしくは、はんだ接合部から離れた箇所にフラックス残渣を明確に確認できる場合、またはIR法(赤外分光法、パーキンエルマー社製FT-IR Frontier,Spotlight400)にて検出できる場合を、NGとした。フラックス残渣を目視で確認できない、もしくは、はんだ接合部の淵から3mm以内に極僅かしか確認できない場合であって、かつIR法(赤外分光法)にて検出できない場合をOKとした。
【0081】
【表1】
気化温度とは、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度である。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
実施例1~8は、ボイドを少なく、および残渣を少なくする(無残渣とする)ことができた。ボイドを5%未満とすることができると、大面積のはんだ接合がなされるパワーデバイスの製造(ヒートシンクのはんだ接合など)に特に有効となる。なお、上記のとおり脂肪酸アマイドは気化温度が350℃以下であることが好ましい。比較例1は、第1の溶剤を含まないため、脂肪酸アマイドを蒸発させることができず、ボイドが発生した。比較例2~3は、第1の溶剤の量が多すぎるため、第1の溶剤が残渣として残った。比較例4は、脂肪酸アマイドではなくポリアマイドを用いたために、フラックス残渣が残り、気化時のガスが放出され続けた結果、ボイドも多かった。
【0086】
[ソルダペーストの作製2]
[実施例9]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(A)8質量%、第2の溶剤(B)80質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(C)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例10]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(A)8質量%、第2の溶剤(C)80質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(C)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例11]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(B)8質量%、第2の溶剤(D)80質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(C)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[実施例12]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第1の溶剤(B)8質量%、第2の溶剤(D)80質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(D)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[比較例5]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第2の溶剤(D)88質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(C)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
[比較例6]
脂肪酸アマイド(A)6質量%、脂肪酸アマイド(B)6質量%、第2の溶剤(B)88質量%を混合し、フラックスを作製した。
作製したフラックス8.5質量%とはんだ合金粉末(C)(Sn:Ag:Cu=96.5:3.0:0.5(質量%))91.5質量%とを混合攪拌してソルダペーストを作製した。
【0087】
[試験片の作製2]
試験片として、無酸素銅基板(44×35mm、厚み1mm)を準備し、前記基板の一面に実施例および比較例のソルダペーストを12.8×9.8mmサイズで200μm厚み(メタルマスク厚)に塗布した。塗布したソルダペーストの上にニッケルメッキ銅基板(12.8×9.8mm、厚み1mm)を搭載した。
【0088】
[リフロー条件2]
リフロー条件は、
図6の「温度プロファイル」に示すとおりである。
予備加熱1(第2の溶剤蒸発工程):窒素雰囲気(大気圧)200℃以下、60秒
予備加熱2(第2の溶剤蒸発工程):真空雰囲気(200Pa以下)、200℃、60秒
予備加熱3(還元工程):ギ酸+窒素雰囲気(大気圧、ギ酸濃度3%Vol)、200℃、120秒
本加熱(はんだ溶融工程):真空雰囲気(200Pa)、ピーク温度250℃、220℃以上、加熱時40秒
【0089】
[ボイド判定2]
ソルダペーストが印刷された基板を、前記リフロー条件で加熱後、ボイドの有無を確認した。確認方法は、基板ごとにはんだ部分をX線透過装置(エクスロン・インターナショナル社製Cheetah Evo)で観察して、ボイドが3%未満のものをOK、ボイドが3%以上ものをNGとした。
[残渣量判定2]
前記リフロー条件で加熱後のフラックス残渣は、目視で観察して、はんだ接合部の淵から3mm以上に渡ってフラックス残渣を明確に確認できる、もしくは、はんだ接合部から離れた箇所にフラックス残渣を明確に確認できる場合、またはIR法(赤外分光法、パーキンエルマー社製FT-IR Frontier,Spotlight400)にて検出できる場合を、NGとした。フラックス残渣を目視で確認できない、もしくは、はんだ接合部の淵から3mm以内に極僅かしか確認できない場合であって、かつIR法(赤外分光法)にて検出できない場合をOKとした。
【0090】
【表5】
気化温度とは、窒素流量0.2~0.3L毎分で昇温速度10℃毎分の熱重量測定で質量がゼロとなる温度である。
【0091】
【0092】
実施例9~12は、ボイドを少なく、および残渣を少なくする(無残渣とする)ことができた。ボイドを3%未満とすることができると、より厳しい基準が要求される半導体チップのはんだ接合に特に有効となる。比較例5および比較例6は、第1の溶剤を含まないため、脂肪酸アマイドを蒸発させることができず、ボイドが発生した。
【0093】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照により組み込む、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ程度で、参照によりここに組み込む。
【0094】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「~を含むが限定されない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本発明の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0095】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを予期しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。したがって本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。