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特開2023-169291柔軟な部材に加えられるテンションを制御するための加圧流体に基づくダンサを利用する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169291
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】柔軟な部材に加えられるテンションを制御するための加圧流体に基づくダンサを利用する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 125
B41J2/01 101
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149754
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2022511052の分割
【原出願日】2020-08-16
(31)【優先権主張番号】62/889,069
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514210005
【氏名又は名称】ランダ コーポレイション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ランダ,ベンジオン
(72)【発明者】
【氏名】ゲロン,シャイ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデンスタイン,ゾハル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デジタル印刷システムの柔軟な中間転写部材にテンションを加えるための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】デジタル印刷システムは、柔軟な中間転写部材(ITM)(44)とダンサアセンブリ(100)とを含む。ITMは、インク供給システムからインク液滴を受け取り、その上に画像を形成し、その画像をターゲット基材に転写するように構成されている。ダンサアセンブリ(100)は、流体チャンバ(103)と、流体チャンバ(103)内に嵌め込まれた回転可能な要素(111)とを含み、流体チャンバ(103)は、加圧流体(130)を流体チャンバ(103)内に受け入れるように構成された入口(107)を含み、加圧流体(130)は、回転可能な要素(111)が流体チャンバ(103)に対して移動することを引き起こし、また回転可能な要素(111)がITMによって回転される間にITMにテンションを加えることを引き起こす。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な中間転写部材(ITM)であって、インク供給システムからインク液滴を受け取り、その上に画像を形成し、その画像をターゲット基材に転写するように構成された、柔軟な中間転写部材(ITM)と、
流体チャンバ、回転可能な要素、及びシールを備えるダンサアセンブリであって、
前記流体チャンバは、(i)前記流体チャンバの壁の間に規定された開口部、及び(ii)前記流体チャンバ内に加圧流体を受け入れるように構成された入口を有し、
前記回転可能な要素は、前記流体チャンバの前記開口部内に嵌め込まれ、
前記加圧流体は、前記回転可能な要素が前記流体チャンバの前記開口部に対して移動することを引き起こし、また、前記ITMによって回転されている間に、前記開口部を介して、前記流体チャンバから前記回転可能な要素が突出して、前記ITMにテンションを加えることを引き起こし、かつ、
前記シールは前記開口部に結合され、(i)前記加圧流体の圧力が所定の圧力よりも小さいか等しいときに前記加圧流体を前記流体チャンバ内に保持し、(ii)前記圧力が所定の圧力を超えたときに前記加圧流体の少なくとも一部を前記流体チャンバから放出するように構成され、前記シールが、前記回転可能な要素と前記開口部の壁との間の摩擦を低減するように構成されている
デジタル印刷システム。
【請求項2】
プロセッサを含み、前記プロセッサは、
前記ダンサアセンブリの少なくとも第1の位置か第2の位置かを選択すること、
前記第1の位置において、少なくとも前記流体チャンバを前記ITMに対して移動させること、および
前記第2の位置において、少なくとも前記回転可能な要素を前記流体チャンバに対して移動させること、
を含む、前記回転可能な要素の動きを制御するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
流体コンプレッサを含み、前記流体コンプレッサは、前記入口を介して前記流体チャンバに前記加圧流体を供給するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは:(a)前記ITMに加えられるテンションの指示に基づいて、前記加圧流体に適用されたときに、前記回転可能な要素が前記ITMにそのテンションを加えることを引き起こす目標圧力を計算し、(b)前記流体コンプレッサを制御して、前記目標圧力で前記加圧流体を前記流体チャンバ内に供給するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
圧力センサを含み、前記圧力センサは、前記流体チャンバ内の前記加圧流体の現在の圧力を示す圧力信号を生成するように構成され、前記プロセッサは、前記圧力信号に基づいて、現在の圧力を前記目標圧力に一致させるように前記流体コンプレッサを制御するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
モータをさらに含み、前記モータは、少なくとも前記流体チャンバを前記ITMに対して移動させるように構成されており、少なくとも前記第1の位置において、前記プロセッサは、前記モータを制御して、少なくとも前記流体チャンバを前記ITMに対して移動させるように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記回転可能な要素が、(a)炭素、(b)ポリメタクリルイミド(PMI)、および(c)パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)からなる材料リストから選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記PMIが硬質発泡体として成形される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記PFAがチューブとして成形される、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記シールが、第1および第2のセクションを有するリーフスプリングを含み、前記第1のセクションは、前記開口部の壁に結合され、前記第2のセクションは、前記回転可能な要素に対して移動することによって、前記加圧流体の少なくとも一部を前記流体チャンバから放出するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2のセクションが、前記回転可能な要素の位置の変化に応じて移動するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記リーフスプリングがステンレス鋼を含み、前記回転可能な要素の位置の変化に応答して、前記第2のセクションは、前記第1セクションに対して曲がるように構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2セクションは、スポンジおよびテープからなるリストから選択された少なくとも1つの要素を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
(a)柔軟な中間転写部材(ITM)、および(b)ダンサアセンブリを備えるデジタル印刷システムであって、
前記ダンサアセンブリが、流体チャンバ、回転可能な要素、及びシールを備え、
前記流体チャンバが、(i)前記流体チャンバの壁の間に規定された開口部、および(ii)前記流体チャンバ内に加圧流体を受け入れるように構成された入口を有し、
前記回転可能な要素は、前記流体チャンバの前記開口部内に嵌め込まれ、
前記シールは前記開口部に結合され、(i)前記加圧流体の圧力が所定の圧力よりも小さいか等しいときに前記加圧流体を前記流体チャンバ内に保持し、(ii)前記圧力が所定の圧力を超えたときに前記加圧流体の少なくとも一部を前記流体チャンバから放出するように構成され、前記シールが、前記回転可能な要素と前記開口部の壁との間の摩擦を低減され、
前記加圧流体を前記流体チャンバ内に供給し、かつ前記回転可能な要素が前記流体チャンバに対して移動させることにより、前記回転可能な要素によって前記ITMにテンションを加えるように構成される、
デジタル印刷システムにおいて、
インク供給システムからインク液滴を受け取り、その上に画像を形成する工程と、
その画像をターゲット基材に転写する工程と、
を包含する方法。
【請求項15】
(a)柔軟なターゲット基材、および(b)ダンサアセンブリを備えるデジタル印刷システムであって、
前記ダンサアセンブリが、流体チャンバ、回転可能な要素、及びシールを備え、
前記流体チャンバが、(i)前記流体チャンバの壁の間に規定された開口部、および(ii)前記流体チャンバ内に加圧流体を受け入れるように構成された入口を有し、
前記回転可能な要素は、前記流体チャンバの前記開口部内に嵌め込まれ、
前記シールは前記開口部に結合され、(i)前記加圧流体の圧力が所定の圧力よりも小さいか等しいときに前記加圧流体を前記流体チャンバ内に保持し、(ii)前記圧力が所定の圧力を超えたときに前記加圧流体の少なくとも一部を前記流体チャンバから放出するように構成され、前記シールが、前記回転可能な要素と前記開口部の壁との間の摩擦を低減され、
前記加圧流体を前記流体チャンバ内に供給し、かつ前記回転可能な要素が前記流体チャンバに対して移動させることにより、前記回転可能な要素によって前記柔軟なターゲット基材に所定のテンションを加えるように構成される、
デジタル印刷システムにおいて、
インク供給システムからインク液滴を受け取り、前記柔軟なターゲット基材に画像を形成する工程、
を包含する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル印刷システムに関し、特に、デジタル印刷システムの柔軟な中間転写部材にテンションを加えるための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷システムにおいて柔軟な基材をガイドするための様々な技術が開発されてきた。
【0003】
例えば、米国特許第5,246,155号明細書には、印刷機用のウェブガイドローラアセンブリが、円筒状のローラ支持体と、同心円状の中空ローラ体とを利用することが記載されている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載される本発明の一実施形態は、柔軟な中間転写部材(ITM)とダンサアセンブリとを含む、デジタル印刷システムを提供する。ITMは、インク供給システムからインク液滴を受け取り、その上に画像を形成し、その画像をターゲット基材に転写するように構成されている。ダンサアセンブリは、流体チャンバと、流体チャンバ内に嵌め込まれた回転可能な要素とを含み、流体チャンバは、加圧流体を流体チャンバ内に受け入れるように構成された入口を含み、加圧流体は、回転可能な要素が流体チャンバに対して移動することを引き起こし、回転可能な要素がITMによって回転される間にITMにテンションを加えることを引き起こす。
【0005】
いくつかの実施形態では、システムはプロセッサを含み、プロセッサは、回転可能な要素の動きを制御するように構成され、制御は以下を含む:(i)ダンサアセンブリの少なくとも第1の位置か第2の位置かを選択すること、(ii)第1の位置において、少なくとも流体チャンバをITMに対して移動させること、および(iii)第2の位置において、少なくとも回転可能な要素を流体チャンバに対して移動させること。他の実施形態では、システムは、流体コンプレッサを含み、このコンプレッサは、入口を介して流体チャンバに加圧流体を供給するように構成される。さらに他の実施形態では、システムはプロセッサを含み、このプロセッサは:(a)ITMに加えられるテンションの指示に基づいて、加圧流体に適用されたときに、回転可能な要素がITMにそのテンションを加えることを引き起こす目標圧力を計算し、(b)流体コンプレッサを制御して、目標圧力で加圧流体を流体チャンバ内に供給するように構成される。
【0006】
一実施形態では、システムは圧力センサを含み、この圧力センサは、流体チャンバ内の加圧流体の現在の圧力を示す圧力信号を生成するように構成され、プロセッサは、圧力信号に基づいて、現在の圧力を目標圧力に一致させるように流体コンプレッサを制御するように構成されている。別の実施形態では、加圧流体は加圧空気を含み、流体コンプレッサは、加圧空気を供給するように構成された空気ブロワを含む。さらに別の実施形態では、システムは、位置感知アセンブリを含み、このアセンブリは、所定の基準点に対する回転可能な要素の位置を示す位置信号を生成するように構成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、位置信号に基づいて、モータを制御して、少なくとも流体チャンバをITMに対して移動させるように構成される。他の実施形態では、位置信号に基づいて、プロセッサは、加圧流体の圧力を制御することによって、少なくとも回転可能な要素を流体チャンバの軸に沿って移動させるように流体コンプレッサを制御するように構成される。さらに他の実施形態では、回転可能な要素はローラを含む。
【0008】
一実施形態では、ローラは円形の断面を有する。別の実施形態では、回転可能な要素は、(a)炭素、(b)ポリメタクリルイミド(PMI)、および(c)パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)からなる材料リストから選択された少なくとも1つの材料を含む。さらに別の実施形態では、PMIは硬質発泡体として成形される。
【0009】
いくつかの実施形態では、PFAはチューブとして成形される。他の実施形態では、システムはモータを含み、このモータは、少なくとも流体チャンバをITMに対して移動させるように構成されており、少なくとも第1の位置において、プロセッサは、モータを制御して、少なくとも流体チャンバをITMに対して移動させるように構成されている。他の実施形態では、システムは開口部を含み、この開口部は、回転可能な要素にぴったり合うようにサイズおよび形状が決められ、加圧流体は、回転可能な要素が開口部を介して流体チャンバから突き出ることを引き起こす。さらに他の実施形態では、システムはシールを含み、このシールは開口部に結合され、加圧流体の圧力が所定の圧力よりも小さいか等しいときに加圧流体を流体チャンバ内に保持し、圧力が所定の圧力を超えたときに加圧流体の少なくとも一部を流体チャンバから放出するように構成されている。
【0010】
一実施形態では、シールは、回転可能な要素と開口部の壁との間の摩擦を低減するように構成されている。別の実施形態では、シールは、スポンジおよびテープからなるリストから選択された少なくとも1つの要素を含む。さらに別の実施形態では、テープは、スポンジの表面に接着される。
【0011】
いくつかの実施形態では、スポンジはポリエステルを含む。他の実施形態では、テープは超高分子量(UHMW)ポリエチレンを含む。さらに他の実施形態では、シールは、第1および第2のセクションを有するリーフスプリングを含み、第1のセクションは、開口部の壁に結合され、第2のセクションは、回転可能な要素に対して移動することによって、加圧流体の少なくとも一部を流体チャンバから放出するように構成される。
【0012】
一実施形態では、第2のセクションは、回転可能な要素の位置の変化に応じて移動するように構成されている。別の実施形態では、リーフスプリングはステンレス鋼を含み、回転可能な要素の位置の変化に応答して、第2のセクションは、第1セクションに対して曲がるように構成される。さらに別の実施形態では、第2のセクションは、スポンジおよびテープからなるリストから選択された1つまたは複数の要素を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、テープは、スポンジの表面に接着される。他の実施形態では、スポンジは、ポリウレタンフォームを含む。さらに他の実施形態では、テープは、超高分子量(UHMW)ポリエチレンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、スポンジが第2のセクションに結合され、テープがスポンジに結合され、回転可能な要素の位置の変化に応答して、第2のセクションは、テープと回転可能な要素の外面との間の距離を維持するように、回転可能な要素に対して移動するように構成される。他の実施形態では、加圧流体は、回転可能な要素を流体チャンバの軸に沿って移動させ、ITMと回転可能な要素との間の接触点において、流体チャンバの軸は、ITMの移動軸と直交している。
【0015】
さらに、本発明の一実施形態によれば、(a)柔軟な中間転写部材(ITM)と、(b)ダンサアセンブリと含み、ダンサアセンブリは、流体チャンバと、流体チャンバ内に嵌め込まれた回転可能な要素とを含み、流体チャンバは、加圧流体を流体チャンバ内に受け入れるための入口を含む、デジタル印刷システムにおいて、加圧流体を流体チャンバ内に供給し、回転可能な要素を流体チャンバに対して移動させることによって、回転可能な要素によって、ITMにテンションを加えることを含む方法が提供される。インク供給システムからインク液滴を受け取ることによってITM上に画像が形成され、その画像がターゲット基材に転写される。
【0016】
さらに、本発明の一実施形態によれば、(a)柔軟なターゲット基材と、(b)ダンサアセンブリとを含み、ダンサアセンブリは、流体チャンバと、流体チャンバ内に嵌め込まれた回転可能な要素とを含み、流体チャンバは、加圧流体を流体チャンバ内に受け入れるための入口を含む、デジタル印刷システムにおいて、加圧流体を流体チャンバ内に供給し、回転可能な要素を流体チャンバに対して移動させることによって、回転可能な要素によって、柔軟なターゲット基材に所定のテンションを加えることを含む方法が提供される。画像は、インク供給システムからインク液滴を受け取ることによって、柔軟なターゲット基材上に形成される。
【0017】
さらに、本発明の一実施形態によれば、柔軟な部材に加えられるテンションを制御する装置が提供され、この装置は、基材とダンサアセンブリとを含む。基材は、柔軟な部材を含む。ダンサアセンブリは、流体チャンバと、流体チャンバ内に嵌め込まれた回転可能な要素とを含み、流体チャンバは、加圧流体を流体チャンバ内に受け入れるように構成された入口を含み、加圧流体は、回転可能な要素が流体チャンバに対して移動することを引き起こし、回転可能な要素が基材によって回転される間に基材にテンションを加えることを引き起こす。
【0018】
本発明は、以下の図面と併せて読むことで、その実施形態についての以下の詳細な記載からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態によるデジタル印刷システムの概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態によるデジタル印刷システムのダンサアセンブリを概略的に示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態によるデジタル印刷システムのダンサアセンブリの概略的な絵図である。
図4A】本発明の一実施形態によるブランケット設置位置にあるダンサアセンブリの断面図である。
図4B】本発明の一実施形態による動作位置にあるダンサアセンブリの断面図である。
図5】本発明の一実施形態によるスプリングベースシールを有するダンサアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
概要
本明細書に記載される本発明の実施形態は、デジタル印刷システムの柔軟な部材に制御されたテンションを加えて、部材を張った状態に維持するための装置を提供する。いくつかの実施形態では、デジタル印刷システムは、本明細書ではブランケットとも呼ばれる柔軟な中間転写部材(ITM)を備えており、この中間転写部材は、典型的には多層の布地から作られる。ITMは、画像形成ステーションからインク液滴を受け取り、その上に画像を形成し、押圧ステーションでシートや連続ウェブなどのターゲット基材に画像を転写するように構成されている。(ITM上での)画像形成や(ターゲット基材への)転写時の歪みを防ぐように、ITMを張った状態に維持することが重要である。原理的には、電動ダンサを使ってITMにテンションを加えることが可能である。このようなダンサは、以下のことを必要とする:(a)画像の歪みの原因となるたわみなしにITM全体に均一なテンションを保持するために、十分に剛性であること。そのためそのようなダンサは一般的に重量がある、および(B)印刷プロセス中にITMに起こり得る振動によって生じる高周波数テンション変化を補償できるように十分に軽量であること。このトレードオフは、任意のタイプの柔軟な部材上で実行される印刷プロセスの性能限度を制限する可能性がある。
【0021】
いくつかの実施形態では、デジタル印刷システムは、本明細書でダンサアセンブリと呼ばれる装置を備え、この装置は、空気チャンバと、空気チャンバ内に嵌め込まれた軽量ローラとを備える。空気チャンバは、入口と開口部を備え、この開口部は、ローラにぴったり合うような大きさと形状である。エアダンサは、制御可能なブロワを備えており、このブロワは、入口を介して加圧空気を空気チャンバ内に供給するように構成される。加圧空気は、ローラに均一な圧力をかけ、空気チャンバの長手方向に沿ってローラを移動させる。その結果、ローラは開口部を介して空気チャンバから突出し、ITMによって回転される間にITMにテンションを加える。均一な力を加えることで、(a)十分に高い剛性および(b)高周波振動への応答性を提供する軽量のローラを使用することが可能になることに留意されたい。
【0022】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリはコントローラを備え、コントローラは、ITMに加えられるべき目標テンションを示す信号を受信し、その信号に基づいて、制御可能な圧力で加圧空気を供給するために、空気ブロワの回転速度(通常、1分あたりの回転数(RPM)で測定される)を制御するように構成されている。このような実施形態では、コントローラは、ローラがITMに目標テンションを加えることを引き起こす圧力で加圧空気を供給するように空気ブロワを制御する。
【0023】
いくつかの実施形態では、空気チャンバは、開口部の壁に結合されているシールをさらに備える。ある実施形態では、シールはローラと接触し、別の実施形態では、ダンサアセンブリの設計は、シールとローラの間にエアギャップを組み込んでもよい。シールは、空気チャンバ内の加圧空気を特定の圧力まで保持するように構成されている。また、シールは、例えば、シールとローラとの間に前述のエアギャップを有することによって、開口部とITMによって回転されるローラとの間の摩擦を低減または除去するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリは、圧力センサを備え、この圧力センサは、空気チャンバ内の空気圧を示す圧力信号を生成するように構成される。プロセッサは、空気圧の測定値を使用して、例えば、コントローラに前述の目標テンションを含むテンションコマンドを送信することによって、加圧空気に加えられる圧力を制御してもよい。さらにまたは代わりに、ダンサアセンブリは、位置センサを含んでいてもよく、この位置センサは、空気チャンバの開口部などの所定の基準点に対するローラの位置を示す位置信号を生成するように構成されている。プロセッサは、例えば、コントローラに目標位置信号を送信することによって、空気チャンバの位置を制御するために位置測定値を使用してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、加圧空気ダンサアセンブリは、印刷システムで発生する機械的振動の影響からITMを実質的に隔離するように構成されている。さらに、空気圧を制御することにより、ダンサアセンブリは、ITMの張りを維持し、画像形成ステーションに隣接して通過するとき、およびデジタル印刷システムの押圧ステーションに入るときに、ITMを所定の速度で移動させることを支援するように構成されている。
【0026】
場合によっては、例えば、ITMが(例えば、1.7m/sで)移動する際に即時停止することにより、ITMが高い加減速度を有することがある。このような場合、重い重量(例えば、20Kg)のダンサアセンブリは、ITMに過剰な力を加え、ITMに機械的な損傷を与える可能性がある。いくつかの実施形態では、軽量ローラは、500グラム未満または他の適切な重量の総重量を有していてもよく、したがって、前述の重い重量のダンサアセンブリによって適用される力の10分の1未満の力をITMに適用する。
【0027】
開示された技術は、例えば、色対色、および画像対基材の位置合わせエラーに起因する画像の歪みを低減させることによって、デジタル印刷された画像の画質を向上させる。改善された位置合わせは、印刷プロセス中にITMに加えられるテンションの安定性と均一性を改善することによって得られる。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態によるデジタル印刷システム10の概略側面図である。いくつかの実施形態では、システム10は、画像形成ステーション60、乾燥ステーション64、押圧ステーション84、およびブランケット処理ステーション52を循環する回転式の柔軟なブランケット44を備える。本発明の文脈および特許請求の範囲において、「ブランケット」および「中間転写部材(ITM)」という用語は、交換可能に使用され、以下に詳細に記載するように、インク画像を受け取り、インク画像をターゲット基材に転写するように構成された中間部材として使用される1つまたは複数の層を含む柔軟な部材を指す。
【0029】
動作モードでは、画像形成ステーション60は、ブランケット44の表面の上部走行部にデジタル画像42のミラーインク画像(本明細書では「インク画像」(図示せず)または簡略化のために「画像」とも呼ばれる)を形成するように構成される。その後、インク画像は、ブランケット44の下部走行部の下に位置するターゲット基材(例えば、紙、折り畳み式カートン、多層ポリマー、またはシートまたは連続ウェブの形態の任意の適切な柔軟パッケージ)に転写される。
【0030】
本発明の文脈では、用語「走行部」は、ブランケット44が案内される任意の2つの所与のローラの間のブランケット44の長さまたはセグメントを指す。
【0031】
いくつかの実施形態では、設置段階でブランケット44の端と端を接着して、連続的なブランケットループ(図示せず)を形成してもよい。継ぎ目の設置のための方法およびシステムの例は、米国仮特許出願第62/532,400号に詳細に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、画像形成ステーション60は、典型的には、ブランケット44の上部走行部の表面より上に一定の高さで配置されたフレーム(図示せず)にそれぞれが取り付けられた(例えば、スライダを使用して)、複数の印刷バー62を備える。いくつかの実施形態では、各印刷バー62は、ブランケット44上の印刷領域と同じ幅の印刷ヘッドのストリップを含み、個別に制御可能な印刷ノズルを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、画像形成ステーション60は、任意の適切な数のバー62を含んでいてもよく、各バー62は、異なる色の水性インクなどの印刷流体を含んでいてもよい。インクは、典型的には、シアン、マゼンタ、赤、緑、青、黄、黒、白などであるがこれらに限定されない可視色を有する。図1の例では、画像形成ステーション60は、7本の印刷バー62を備えているが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックなどの任意の選択された色を有する4本の印刷バー62を備えてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、印刷ヘッドは、ブランケット44の表面上にインク画像(図示せず)を形成するように、ブランケット44の表面上に異なる色のインク液滴を噴射するように構成されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、異なる印刷バー62は、矢印94で表されるブランケット44の移動軸に沿って互いに間隔を置いて配置される。この構成では、バー62間の正確な間隔と、各バー62のインクの液滴を向けることおよびブランケット44を動かすことの間の同期とが、画像パターンの正しい配置を可能にするために不可欠である。
【0036】
いくつかの実施形態では、システム10は、高温ガスもしくは高温空気ブロワ66および/または赤外線(IR)ヒータ、またはおよび印刷用途に適合した他の適切なタイプのヒータなどのヒータを備える。図1の例では、空気ブロワ66が印刷バー62の間に配置されており、ブランケット44の表面に堆積したインク液滴を部分的に乾燥させるように構成されている。印刷バーの間のこの高温空気の流れは、例えば、印刷ヘッドの表面での結露を低減すること、および/またはサテライト(例えば、主なインク液滴の周囲に分散された残留物または小液滴)を処理すること、および/または印刷ヘッドのインクジェットノズルの閉塞を防止すること、および/またはブランケット44上の異なる色のインクの液滴が望ましくない形で互いに交わることを防止することを支援することができる。いくつかの実施形態では、システム10は、ブランケット44の表面に高温空気(または別の気体)を吹き付けるように構成された乾燥ステーション64を備える。いくつかの実施形態では、乾燥ステーションは、ブロワ68または任意の他の適切な乾燥装置を備える。
【0037】
乾燥ステーション64では、ブランケット44上に形成されたインク画像が、インクをより完全に乾燥させるために、放射線および/または高温空気にさらされ、液体キャリアのほとんどまたはすべてを蒸発させ、粘着性のあるインクフィルムになるまで加熱された樹脂および着色剤の層だけを残す。
【0038】
いくつかの実施形態では、システム10は、ブランケット44などの回転式ITMを含むブランケットモジュール70を備える。いくつかの実施形態では、ブランケットモジュール70は、1つまたは複数のローラ78を備え、ローラ78の少なくとも1つは、エンコーダ(図示せず)を含み、このエンコーダは、それぞれの印刷バー62に対するブランケット44のセクションの位置を制御するように、ブランケット44の位置を記録するように構成されている。いくつかの実施形態では、ローラ78のエンコーダは、典型的には、それぞれのローラの角変位を示す回転ベースの位置信号を生成するように構成されたロータリエンコーダを備える。本発明の文脈および特許請求の範囲では、「を示す(indicative of)」および「指標(indication)」という用語は交換可能に使用されていることに留意されたい。
【0039】
追加または代替として、ブランケット44は、システム10の様々なモジュールの動作を制御するための統合型エンコーダ(図示せず)を含んでいてもよい。統合型エンコーダの1つの実践例は、例えば、米国仮特許出願62/689,852号に詳細に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、ブランケット44は、ローラ76および78と、本明細書でダンサアセンブリ74とも呼ばれる動力付きテンションローラとの間を案内される。ダンサアセンブリ74は、ブランケット44のたるみの長さを制御するように構成されており、その動きは、両頭矢印で概略的に表されている。さらに、経年変化によるブランケット44の伸びは、システム10のインク画像配置性能に影響を与えないと考えられ、単にテンションを調整するダンサアセンブリ74によってより多くのたるみを取ることが必要となるだろう。
【0041】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ74はモータ駆動されてもよい。ローラ76および78の構成および動作は、例えば、米国特許出願公開第2017/0008272号および上述のPCT国際公開第2013/132424号パンフレットにさらに詳細に記載されており、それらの開示内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。ダンサアセンブリの実施形態は、以下の図2~3、4Aおよび4Bで詳細に記載される。
【0042】
いくつかの実施形態では、システム10は、ブランケット44に沿った1つまたは複数の位置に配置された1つまたは複数のテンションセンサ(図示せず)を含んでもよい。テンションセンサは、ブランケット44に内蔵されていてもよいし、ブランケット44に加えられる機械的テンション示す信号を取得するための任意の他の適切な技術を用いてブランケット44の外部に設けられたセンサを備えていてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ20およびシステム10の追加のコントローラ(例えば、以下の図2および3に示す)は、ブランケット44に加えられるテンションを監視し、ダンサアセンブリ74の動作を制御するように、テンションセンサによって生成される信号を受信するように構成される。
【0043】
押圧ステーション84において、ブランケット44は、圧胴82と、圧縮可能なブランケットを運ぶように構成された圧力シリンダ90との間を通過する。
【0044】
いくつかの実施形態では、システム10は、ブランケットモジュール70、ブランケットモジュール70の上に位置する画像形成ステーション60、およびブランケットモジュール70の下に位置し、後述するように1つまたは複数の押圧ステーションを含む基材運搬モジュール80など、システム10の複数のモジュールを制御するように構成された制御コンソール12を備える。
【0045】
いくつかの実施形態では、コンソール12は、ダンサアセンブリ74のコントローラと、およびケーブル57を介してコントローラ54とインターフェースし、そこからの信号を受信するための適切なフロントエンドおよびインターフェース回路を備えた、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ20を備える。いくつかの実施形態では、単一のデバイスとして概略的に示されているコントローラ54は、所定の位置でシステム10に取り付けられた1つまたは複数の電子モジュールを含んでもよい。コントローラ54の電子モジュールの少なくとも1つは、システム10の様々なモジュールおよびステーションを制御するように構成された、制御回路またはプロセッサ(図示せず)などの電子デバイスを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ20および制御回路は、印刷システムで使用される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされ、ソフトウェアのデータをメモリ22に格納してもよい。ソフトウェアは、例えばネットワークを介して、電子的な形態でプロセッサ20および制御回路にダウンロードされてもよいし、光学的、磁気的、または電子的なメモリ媒体などの非一時的な有形媒体上で提供されてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、コンソール12は、プロセッサ20から受信したデータおよび画像、または入力装置40を使用してユーザ(図示せず)が挿入した入力を表示するように構成されたディスプレイ34を備える。いくつかの実施形態では、コンソール12は、任意の他の適切な構成を有してもよく、例えば、コンソール12およびディスプレイ34の代替的な構成は、米国特許第9,229,664号に詳細に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、ディスプレイ34に、画像42の1つまたは複数のセグメント(図示せず)および/またはメモリ22に記憶され得る様々なタイプのテストパターンを含むデジタル画像42を表示するように構成される。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書で冷却ステーションとも呼ばれるブランケット処理ステーション52は、例えば、ブランケットを冷却すること、および/またはブランケット44の外面に処理液を塗布すること、および/またはブランケット44の外面をクリーニングすることによって、ブランケットを処理するように構成される。ブランケット処理ステーション52では、ブランケット44が画像形成ステーション60に入る前に、ブランケット44の温度を所望の値まで下げることができる。処理は、ブランケットの外面に冷却および/または洗浄および/または処理液を塗布するように構成された1つまたは複数のローラまたはブレード上にブランケット44を通過させることによって行われてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、ブランケット処理ステーション52は、図1に示すブランケット処理ステーション52の位置に加えて、またはその代わりに、画像形成ステーション60に隣接して配置されてもよい。そのような実施形態では、ブランケット処理ステーションは、印刷バー62に隣接する1つまたは複数のバーを含んでいてもよく、処理液は、ジェット噴射によってブランケット44に塗布される。
【0050】
いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、ブランケット44の温度を監視し、ブランケット処理ステーション52の動作を制御するように、例えば、温度センサ(図示せず)から、ブランケット44の表面温度を示す信号を受信するように構成される。そのような処理ステーションの例は、例えば、PCT国際公開第2013/132424号パンフレットおよび同第2017/208152号パンフレットに記載されており、その開示内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
さらに、または代わりに、処理液は、画像形成ステーションでのインクの噴射に先立って、噴射によってブランケット44に適用されてもよい。
【0052】
図1の例では、ステーション52は、押圧ステーション84と画像形成ステーション60との間に取り付けられているが、ステーション52は、押圧ステーション84と画像形成ステーション60との間の任意の他のまたは追加の1つまたは複数の適切な位置でブランケット44に隣接して取り付けられてもよい。上述したように、ステーション52は、追加的または代替的に、画像形成ステーション60に隣接するバーを含んでもよい。
【0053】
図1の例では、圧胴82は、基材運搬モジュール80によって入力スタック86から圧胴82を介して出力スタック88に搬送される個々のシート50などのターゲット柔軟基材にインク画像を押し付ける。
【0054】
いくつかの実施形態では、ブランケット44の下部走行部は、押圧ステーション84において圧胴82と選択的に相互作用し、圧力シリンダ90の圧力の作用によってブランケット44と圧胴82との間で圧縮されたターゲット柔軟基材に画像パターンを押し付ける。図1に示すシンプレックスプリンタ(すなわち、シート50の片面に印刷する)の場合には、押圧ステーション84は1つだけでよい。
【0055】
他の実施形態では、モジュール80は、1つまたは複数のデュープレックス印刷を可能にするように、2つ以上の圧胴を備えてもよい。また、2つの圧胴の構成は、両面印刷の2倍の速度で片面印刷を行うことを可能にする。また、片面印刷と両面印刷の混合ロットの印刷も可能である。別の実施形態では、モジュール80の異なる構成が、連続ウェブ基材への印刷に使用されてもよい。デュープレックス印刷システムおよび連続ウェブ基材に印刷するためのシステムの詳細な記載および様々な構成は、例えば、米国特許第9,914,316号明細書および同第9,186,884号明細書、PCT国際公開第2013/132424号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0054865号、および米国仮特許出願第62/596,926号に記載されており、それらの開示内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
上で簡単に記載したように、シート50または連続したウェブ基材(図示せず)は、入力スタック86からモジュール80によって運ばれ、圧胴82と圧力シリンダ90との間に位置するニップ(図示せず)を通過する。ニップ内では、インク画像を担持するブランケット44の表面が、圧力シリンダ90の、例えば圧縮可能なブランケット(図示せず)によって、シート50(または他の適切な基材)に対してしっかりと押圧され、それによりインク画像がシート50の表面に押し付けられて、ブランケット44の表面からきれいに分離される。その後、シート50は出力スタック88まで運搬される。
【0057】
図1の例では、ローラ78は、ブランケット44の上部走行部に配置されており、画像形成ステーション60に隣接して通過する際にブランケット44を張った状態に維持するように構成されている。さらに、画像形成ステーション60の下方でブランケット44の速度を制御して、インク液滴の正確な噴射および堆積を得て、それによって形成ステーション60によるブランケット44の表面へのインク画像の配置を行うことが特に重要である。
【0058】
いくつかの実施形態では、圧胴82は、ブランケット44と圧胴82との間を通過するターゲット基材に、移動しているブランケット44からインク画像を転写するために、周期的にブランケット44に係合したり、ブランケット44から離脱したりする。いくつかの実施形態では、システム10は、上述のローラおよびダンサアセンブリを使用してブランケット44にトルクを加えるように構成されており、これにより、上部走行部を張った状態に維持し、ブランケット44の上部走行部を、下部走行部で発生する機械的振動の影響を受けないように実質的に隔離することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、システム10は、本明細書では自動品質管理(AQM)システムとも呼ばれる画像品質制御ステーション55を備え、このステーションは、システム10に統合された閉ループ検査システムとして機能する。いくつかの実施形態では、ステーション55は、図1に示すように、圧胴82に隣接して配置されてもよいし、システム10内の他の適切な場所に配置されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、ステーション55はカメラ(図示せず)を備え、このカメラは、シート50上に印刷された前述のインク画像の1つまたは複数のデジタル画像を取得するように構成されている。いくつかの実施形態では、カメラは、接触画像センサ(CIS)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサなどの任意の適切なイメージセンサと、約1メートルの幅または他の適切な幅を有するスリットを含むスキャナとを備えていてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、ステーション55は、シート50に印刷されたインクの品質を監視するように構成された分光光度計(図示せず)を含んでいてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、ステーション55によって取得されたデジタル画像は、それぞれの印刷画像の品質を評価するように構成された、プロセッサ20またはステーション55の任意の他のプロセッサなどのプロセッサに送信される。評価およびコントローラ54から受信した信号に基づいて、プロセッサ20は、システム10のモジュールおよびステーションの動作を制御するように構成される。本発明の文脈および特許請求の範囲において、「プロセッサ」という用語は、プロセッサ20、またはステーション55に接続されているか、ステーション55と統合されている他のプロセッサまたはコントローラなどの任意の処理ユニットを指し、ステーション55のカメラおよび/または分光光度計から受信した信号を処理するように構成されている。なお、本明細書に記載されている信号処理動作、制御関連命令、およびその他の計算動作は、単一のプロセッサによって実行されてもよいし、1つまたは複数のそれぞれのコンピュータの複数のプロセッサ間で共有されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、ステーション55は、シート50との完全な画像位置合わせ、色対色(C2C)位置合わせ、印刷されたジオメトリ、画像の均一性、色のプロファイルと直線性、および印刷ノズルの機能性など、様々な属性を監視するように、印刷画像およびテストパターンの品質を検査するように構成される。いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、前述の属性の1つまたは複数における幾何学的な歪みまたは他のエラーを自動的に検出するように構成される。例えば、プロセッサ20は、所与のデジタル画像の設計バージョン(本明細書では、「マスター」または「ソース画像」とも呼ばれる)と、カメラによって取得された所与の画像の印刷バージョンのデジタル画像とを比較するように構成される。
【0064】
他の実施形態では、プロセッサ20は、前述のエラーを示す歪みを検出するために、任意の適切なタイプの画像処理ソフトウェアを、例えば、テストパターンに適用してもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、検出された歪みを補正するように、誤動作しているモジュールに是正措置を適用するために、および/または、システム10の別のモジュールまたはステーションに命令を供給するために、検出された歪みを分析するように構成される。
【0065】
いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、ステーション55の分光光度計から受信した信号に基づいて、印刷された色のプロファイルおよび直線性の偏差を検出するように構成される。
【0066】
いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、ステーション55によって取得された信号に基づいて、以下の様々なタイプの欠陥を検出するように構成される:(i)基材(例えば、ブランケット44および/またはシート50)における、スクラッチ、ピンホール、および壊れたエッジなどの欠陥、および(ii)印刷関連の欠陥、例えば、不規則なカラースポット、サテライト、およびスプラッシュなどの欠陥。
【0067】
いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、印刷されたデザインのセクションと、本明細書でマスターとも呼ばれるオリジナルデザインのそれぞれの基準セクションとを比較することによって、これらの欠陥を検出するように構成される。プロセッサ20はさらに、欠陥を分類し、分類および事前定義された基準に基づいて、指定された事前定義された基準内にない欠陥を有するシート50を拒絶するように構成される。
【0068】
いくつかの実施形態では、ステーション55のプロセッサは、例えば、欠陥密度が指定された閾値を超えている場合に、システム10の動作を停止するかどうかを決定するように構成される。ステーション55のプロセッサは、さらに、上述のように、システム10のモジュールおよびステーションのうちの1つまたは複数において、是正措置を開始するように構成される。是正措置は、オンザフライで(システム10が印刷プロセスを継続している間に)実施されてもよいし、印刷動作を停止してシステム10のそれぞれのモジュールおよび/またはステーションで問題を修正することにより、オフラインで実施されてもよい。他の実施形態では、システム10の任意の他のプロセッサまたはコントローラ(例えば、プロセッサ20またはコントローラ54)は、欠陥密度が指定された閾値を超えた場合に、是正措置を開始するか、またはシステム10の動作を停止するように構成される。
【0069】
さらにまたは代替として、プロセッサ20は、例えばステーション55から、システム10の印刷プロセスにおける追加のタイプの欠陥および問題を示す信号を受信するように構成される。これらの信号に基づいて、プロセッサ20は、パターン配置精度のレベルおよび上で挙げられていない追加のタイプの欠陥を自動的に推定するように構成される。他の実施形態では、シート50(または上述のいずれかの他の基材)に印刷されたパターンを検査するための任意の他の適切な方法も、例えば、外部の(例えば、オフラインの)検査システム、または任意のタイプの測定治具および/またはスキャナを使用して使用することができる。これらの実施形態では、外部検査システムから受信した情報に基づいて、プロセッサ20は、任意の適切な是正措置を開始し、および/またはシステム10の動作を停止するように構成される。
【0070】
システム10の構成は、本発明を明確にするために、純粋に例として簡略化して提供されている。本明細書において上に挙げた印刷システム10において記載されている構成要素、モジュール、およびステーション、ならびに追加の構成要素および構成は、例えば、米国特許第9,327,496号明細書および同第9,186,884号明細書、PCT国際公開第2013/132438号パンフレット、同第2013/132424号パンフレットおよび同第2017/208152号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0118503号および同第2017/0008272号に詳細に記載されており、それらの開示内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
システム10の特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を説明し、そのようなシステムの性能を高める際にこれらの実施形態を適用することを実証するために、例として示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、決してこのような特定の種類の例示システムに限定されるものではなく、本明細書に記載した原理は、他の種類の印刷システムにも同様に適用することができる。
【0072】
流体ベースのダンサアセンブリを使用するブランケットへのテンション付与
図2は、本発明の一実施形態によるダンサアセンブリ100を概略的に示すブロック図である。ダンサアセンブリ100は、例えば、上の図1のダンサアセンブリ74を実装するために使用されてもよい。図2の例では、ダンサアセンブリ100は、以下の2つの異なる位置で示されている:(a)本明細書では第1の位置またはホームポジションとも呼ばれるブランケット設置位置、および(b)本明細書では第2の位置とも呼ばれる動作位置。なお、システム10は、図2には示されていないが、以下に記載される待機位置などの追加の位置を有していてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、本明細書では軸115と呼ばれる長手方向軸を有する、本明細書ではチャンバ103と呼ばれる流体チャンバを備える。いくつかの実施形態では、チャンバ103は、ハウジング102と、加圧流体、本例では加圧空気130を、入口チューブ132を介して流体チャンバ103に受け入れるように構成された入口107とを備える。他の実施形態では、加圧流体は、任意の適切な気体、または任意の適切な液体、またはそれらの適切な組み合わせを含んでもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、流体チャンバ103内に嵌め込まれた回転可能な要素、本例では円形の断面を有するローラ111を含む。他の実施形態では、回転可能な要素は、1つまたは複数のボール、円形以外の任意の断面を有するローラ、または後述するようにブランケット44によって回転するように適合された任意の他の適切な要素を含んでもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、回転可能な要素(例えば、ローラ111)は、任意の適切な軽量材料から作られ、例えば、限定しないが、炭素(例えば、炭素繊維)、およびEvonik industries(Essen、Germany)が提供するROHACELL(登録商標)製品群として商業的に知られているポリメタクリルイミド(PMI)を含む硬質発泡体から作られる。いくつかの実施形態では、硬質発泡体は、硬質発泡体を収容し、発泡体の表面を摩耗、湿度から保護し、摩擦を低減するチューブとして成形されたパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)または他の任意の適切な材料を含む軽量の収縮可能なスリーブを用いてローラ111を形成するように成形されてもよい。
【0076】
詳細は後述するが、ローラ111は加圧空気によって移動し、加圧空気はローラ111の表面に沿って一様に分布する直線的な力を加える。したがって、ローラ111は、以下に詳述するように、ダンサアセンブリ100がブランケット44に安定したテンション力(例えば、700N±5N)を加えるように構成されるように、低摩擦を有する軽量材料を含んでもよい。以下に詳述するように、ローラ111によってブランケット44に加えられるテンション力は、ローラ111の寸法、例えば、長さおよび直径、ならびに加圧空気によってローラ111に加えられる圧力に依存する。
【0077】
いくつかの実施形態では、チャンバ103は、ローラ111にぴったり合うようなサイズおよび形状の開口部105を含む。以下で詳細に記載する動作位置において、加圧空気130は、開口部105を介してチャンバ103からローラ111を突出させ、ブランケット44によって回転させられる間、ブランケット44に所定の制御可能なテンションを加える。
【0078】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、位置検知アセンブリ112を備え、この位置検知アセンブリ112は、位置を検知し、開口部105または任意の種類のモーションリミッタ(以下、図3に示す)などの任意の適切な基準点に対するローラ111の位置を示す、本明細書では位置信号とも呼ばれる電気信号を生成するように構成される。位置感知アセンブリ112は、光ファイバ(以下の図3に示す)を有する光学ベースの位置センサ、または他の任意の適切なタイプの位置センサを含んでもよい。
【0079】
他の実施形態では、位置感知アセンブリ112は、ローラ111の位置を感知するのに適した任意の他の位置でダンサアセンブリ100に取り付けられてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、流体コンプレッサ、本例では、本明細書でブロワ104とも呼ばれる空気ブロワを備え、このブロワは、入口107を介してチャンバ103内に加圧空気130を供給するように構成される。他の実施形態では、ダンサアセンブリ100は、前述の種類の流体のいずれかに圧力を加えるように構成された、任意の他の適切な種類の流体コンプレッサを含んでもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、圧力センサ114を備え、この圧力センサ114は、チャンバ103内の加圧空気130の圧力を感知し、感知した圧力を示す電気信号(本明細書では圧力信号とも呼ばれる)をプロセッサ20に送信するように構成される。
【0082】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、コントローラ106を備え、このコントローラ106は、例えばプロセッサ20からテンションコマンド110を受信するように構成される。テンションコマンド110は、ブランケット44に適用されるべき所定のテンション(本明細書では目標テンションとも呼ばれる)を示す電気信号を含む。コントローラ106は、さらに、ケーブル113を介して、圧力センサ114によって生成された圧力信号を受信するように構成される。いくつかの実施形態では、コントローラ106は、制御ループフィードバック機構を有する比例積分微分(PID)コントローラと、ブロワ104を駆動するように構成されたドライバ(図示せず)とを含んでいてもよい。
【0083】
次に、動作位置について言及する。いくつかの実施形態では、ローラ111がブランケット44と物理的に接触し(以下で詳細に記載するように)、加圧空気130がローラ111に力を加える。これに応答して、ローラ111は、開口部105を通って、両頭矢印166で示す方向にブランケット44に向かって移動する。
【0084】
図2の動作位置に示す例示的な実施形態では、チャンバ103は、加圧空気130によって加えられる力に応答して、ローラ111が軸115に平行な両頭矢印166に沿って移動するように設計されている。一実施形態では、ブランケット44と物理的に接触させると、ローラ111は、本明細書で「ローラテンション」と呼ばれるテンションをブランケット44に加える。
【0085】
いくつかの実施形態では、ブランケット44とローラ111との間の接触点(POC)117において、軸115に沿ったローラ111の移動方向は、典型的には、矢印94で表されるブランケット44の移動軸に直交する。ブランケット44およびローラ111は、POC117などの単一点よりも大きな接触面(以下の図4Bに示すラップ角によって決定される)を有することがあることに留意されたい。したがって、POC117は、ローラ111と物理的に接触しているブランケット44のセクションの中心、言い換えれば、ラップ角の中心として定義されてもよい。他の実施形態では、POC117において、ローラ111の移動方向は、ブランケット44に対して他の適切な角度であってもよい。
【0086】
チャンバ103の図示された形状は、概念的に明確にするために単純化されており、例として示されている。代替実施形態では、チャンバ103は、加圧空気130によって加えられる力に応答して、ローラ111または任意の他の適切なタイプの回転可能な要素が、任意の適切な線形または非線形の軌道で動くことができるような、他の適切な設計を有してもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、本明細書で記載するように、コントローラ106、ブロワ104および圧力センサ114を用いて、本明細書で「圧力ループ」とも呼ばれる、ローラテンションの閉ループ制御を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、コントローラ106は、圧力センサ114から受信した圧力信号に基づいて、ブランケット44に適用されるローラテンションを計算するように構成される。コントローラ106はさらに、ローラテンションを、テンションコマンド110でプロセッサ20から受信される目標テンションと比較するように構成される。比較に基づいて、コントローラ106は、ブロワ104のシャフトおよびブレードの回転速度を制御することによって、ローラテンションを調整するように構成される。言い換えれば、コントローラ106は、目標テンションに基づいて、加圧空気130によってローラ111に加えるべき目標圧力を決定するように構成される。
【0089】
例えば、目標テンションがローラテンションよりも大きい場合、コントローラ106は、ブロワ104に制御信号を送り、空気圧を増加させるようにブロワ104のシャフトおよびブレードの回転速度を増加させ、その結果、ブランケット44に向かうローラ111の動きによって加えられるローラテンションを増加させることができる。ローラテンションが目標テンションと一致すると、コントローラ106は、目標テンションとローラテンションの一致を維持するように、回転速度を維持するようにブロワ104に命令する。この位置では、ローラ111は矢印166に沿って移動せず、矢印94で表される前述のブランケット移動軸に沿って移動するブランケット44によって、自身の軸を中心に回転される。
【0090】
他の実施形態では、プロセッサ20は、圧力センサ114から受信した圧力信号に基づいて、チャンバ103内の加圧空気130の現在の圧力を目標圧力に一致させるように、ブロワ114を制御するように構成される。
【0091】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、ブランケット44に沿ったあらゆる非線形運動によって引き起こされる衝撃を吸収し、画像形成ステーション60に隣接して通過するとき、および押圧ステーション84に入るときにブランケット44を張った状態に維持するように構成される。
【0092】
なお、システム10が、例えば印刷ジョブの間で前述の待機位置にあるとき、ブランケット44は動かないが、ダンサアセンブリ100は通常、ブランケット44を張った状態に維持するように動作位置にとどまる。
【0093】
いくつかのケースでは、ブランケット44を交換する必要があり、および/またはシステム10に新しいブランケット44を導入する必要がある。いくつかの実施形態では、コントローラ106は、ローラテンションを目標テンションよりも小さい値に低減するように、加圧空気130の圧力を低減するようにブロワ104に指示する。加圧空気130の圧力の低下に応じて、ローラ111は流体チャンバ103内に後退し、開口部105を介したチャンバ103からの突出量が実質的に小さくなる。他の実施形態では、ローラ111は、開口部105を介して突き出ることなく、チャンバ103内に完全に収容されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、例えば80:1の比率または他の任意の適切な比率を有するギアに結合されたステッパモータなどのモータ120を備える。あるいは、ダンサアセンブリ100は、ギアの有無にかかわらず、任意の他の適切なタイプのモータまたはモーションアセンブリを備えてもよい。モーションアセンブリは、エンコーダなどであるがそれに制限されない、制御を可能にする機能を含んでいてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、ケーブル109を介して位置感知アセンブリ112によって生成された位置信号を受信するように構成された、本明細書でコントローラ122と称されるモータコントローラをさらに備える。コントローラ122は、任意の適切なタイプの制御ループフィードバック機構を有するPIDコントローラと、モータ120を駆動するように構成されたドライバ(図示せず)とを含んでいてもよい。
【0096】
場合によっては、ブランケット44の移動(例えば、印刷プロセス中)により、動作位置でブランケットに適用される目標テンションに影響を与える振動が発生することがある。例えば、前述の図1で説明したように、押圧ステーション84は、ブランケット44と圧胴82との間で周期的に係合および離脱し、これが前述の振動の一因となり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、コントローラ106は、ブランケット44に所望のテンション力を加える所与の位置にローラ111を配置する圧力を維持するように構成される。システム10のいずれかのアセンブリ(ダンサアセンブリ100以外)によってブランケット44に加えられるテンションの変化に応答して、ローラ111は、テンションの変化を補償するように、所与の位置に対して移動する。例えば、システム10の振動に応答して、ローラ111は、この振動を補償するように、20ミリ秒ごとに約0.8mmの振幅で動いてもよい。
【0098】
他の実施形態では、コントローラ106は、ブランケット44に加えられる一定のテンションを維持するように、40ヘルツの例示的な周波数(または任意の他の適切な周波数)で、所定の間隔(例えば、0.3mm~0.8mm)にわたってローラ111を振動させ、それによってブランケット44に発生した振動を補償するように構成される。この振動補償機構は、比較的高い周波数でチャンバ103の構造全体を動かす必要性を低減し得る。そのような実施形態では、コントローラ122は、プロセッサ20から受信した目標位置信号128のためのローパス(LP)フィルタとして機能し得る回路(図示せず)をさらに備える(またはそれに電気的に結合される)。
【0099】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、本明細書で記載されるように、コントローラ122およびモータ120を使用して、本明細書で「位置ループ」とも呼ばれる、チャンバ103の位置に関する閉ループ制御を含む。
【0100】
ここで、ブランケット設置位置について言及する。いくつかの実施形態では、モータ120は、アーム108を介してチャンバ103に物理的に結合されており、チャンバ103を両頭矢印133で表される方向に移動させるように構成されている。図2の例では、モータ120は、チャンバ103を矢印133で示す円弧運動で移動させるように構成されている。円弧運動速度は、コントローラ122によって、任意の適切な速度、例えば3~5cm/秒の範囲の速度を用いて制御されてもよく、アーム108の長さ(例えば63cm)によって決定される円弧半径に依存している。運動速度は、矢印133に沿って一定であってもよいし、ブランケット44からの距離に応じて変化してもよい。
【0101】
他の実施形態では、チャンバ103は、任意の他の適切な運動プロファイル(例えば、線形)を使用する任意の適切な運動アセンブリによって移動されてもよい。
【0102】
図2の例では、ブロワ104およびコントローラ106は、チャンバ103、位置感知アセンブリ112およびセンサ114とともに移動される。代替的な実施形態では、モータ120は、チャンバ103、位置感知アセンブリ112およびセンサ114のみを移動させてもよく、一方、入口チューブ132およびケーブル113の少なくとも一方は、ブロワ104およびコントローラ106などの他の部品を、ブランケット設置位置に概略的に示すそれぞれの位置に保持するのに十分な長さおよび柔軟性を有している。
【0103】
なお、上述した位置ループおよび圧力ループを有することにより、プロセッサ20は、ブランケット44に対するローラ111の粗い動きおよび細かい動きをそれぞれ制御するように構成されている。言い換えれば、位置ループは、チャンバ103と、剛体としてのローラ111とをブランケット44に対して相対的に移動させ、圧力ループは、ブランケット44に対するローラ111の位置のみを調整する。
【0104】
上述したように、ローラ111は、PFA系チューブに収容されたPMI系の硬質発泡体など、軽量な材料で作られている。ローラ111の軽量化により、ブランケット44の加減速度が高い場合に、ブランケット44の機械的損傷を防ぐことができる。例えば、1.7m/sの例示的な速度で、またはデジタル印刷に適した他の速度で移動するブランケット44の緊急停止の場合である。
【0105】
いくつかの実施形態では、ローラ111の軽量性が、低い慣性を誘発し、したがって、ダンサアセンブリ100は、ブランケット44が高い加減速度を受ける場合、例えば、ブランケット44が予定外の即時停止をする場合であっても、ブランケット44に安定したテンションを適用することができる。
【0106】
このような実施形態では、ローラ111の質量は、ブランケット44に加わる力に比例する。前述の即時停止の場合、ローラ111の十分に大きな質量(例えば、数キログラム)は、ブランケット44に十分に大きな力を加える可能性があり、これは、その歪みおよび/または引き裂きなど、機械的損傷を引き起こす可能性がある。
【0107】
典型的には、コントローラ106および122の少なくとも一方は、本明細書に記載された機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされた汎用コントローラを含む。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して、電子的な形態でコントローラにダウンロードされてもよいし、代替的または追加的に、磁気、光学、または電子メモリなどの非一時的な有形媒体に提供および/または格納されてもよい。
【0108】
図2に示すダンサアセンブリ100の具体的なブロック図は、概念的に明確にするために簡略化されている。さらに、この構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を説明し、ITMを有するこのようなデジタル印刷システムの性能を高める上でこれらの実施形態を適用することを示すために、純粋に例として描かれている。しかしながら、本発明の実施形態は、決してこの特定の種類の例示的な構成に限定されるものではなく、代替的な実施形態では、ダンサアセンブリは、ブランケット44に指定されたテンションを適用するように、任意の追加または代替の適切な要素を含んでもよい。
【0109】
代替実施形態では、プロセッサ20は、コントローラ106および122のうちの少なくとも1つを備えている、または置き換えてもよい。そのような実施形態では、プロセッサ20は以下のように構成される:(a)圧力センサ114によって生成された圧力信号を受信し、ブロワ104を駆動して、例えば動作位置において、記載された目標圧力を得る、および/または、(b)位置感知アセンブリ112によって生成された位置信号を受信し、モータ120を駆動して、チャンバ103を上述した適切な位置のいずれかに移動させる。これらの実施形態において、プロセッサ20は、目標テンションを示す閾値を保持してもよいし、目標テンションを示す電気信号を受信してもよいことに留意されたい。
【0110】
図3は、本発明の一実施形態によるダンサアセンブリ100の概略的な絵図である。いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、上述の図2に詳細に描かれたブロワ104、入口チューブ132、チャンバ103、ローラ111、およびモータ120を備える。
【0111】
図3の例では、入口チューブ132は、ブロワ104とチャンバ103との間で、加圧空気130を、25℃の例示的な温度で、または押圧ステーション84でのブランケット44の温度など、他の適切な温度で流すように構成されている。温度は、例えば、加圧空気を測定して加熱または冷却することによって制御されてもよく、または、空気を加熱も冷却もすることなく室温で流れてもよい。さらに、入口チューブ132は、剛体構造を備えてもよく、それにより、前述の図2で記載したように、ブロワ104、入口チューブ132、およびチャンバ103はモータ120によって単一の剛体として移動される。
【0112】
ここで挿入図150を参照する。いくつかの実施形態では、位置感知アセンブリ112および圧力センサ114がチャンバ103に結合される。位置感知アセンブリ112は、任意の適切な数の光ファイバ127を含み、これらの光ファイバは、光源(図示せず)からの光信号をローラ111の表面に衝突し、その後、上記図2で説明したように、位置センサ(図示せず)によって感知されるように伝えるように構成される。
【0113】
ここで挿入図125を参照する。いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、ローラ111のシャフト(図示せず)に結合されたベアリング124を囲むトレンチを有するモーションリミッタ126を備える。モーションリミッタ126は、軸129に沿ったローラ111の横方向の動きを制限するように構成されている。図3の例では、ローラ111は、例えば、ダンサアセンブリ100がブランケット設置位置にあるときに、流体チャンバ103内に後退する。
【0114】
いくつかの実施形態では、上述の図2に示す動作位置に移動する前に、プロセッサ20は、空気130の圧力を増加させるように、コントローラ106にテンションコマンド110を送信することによって、圧力ループを作動させる。増加した空気130の圧力は、矢印131で表される方向への軸129に沿ったローラ111の横方向の移動を引き起こし、これはベアリング124がモーションリミテッド126のトレンチのエッジ134にぶつかり、矢印131の方向への横方向の移動を停止するまで続く。
【0115】
いくつかの実施形態では、位置感知アセンブリ112は、ベアリング124がエッジ134と物理的に接触している(またはエッジに近接している)ことを示す位置信号をコントローラ106に送信し、コントローラ106は、ベアリング124の位置を示す信号をプロセッサ20に送信する。コントローラ106から信号を受信したことに応答して、プロセッサ20は、目標位置信号128をコントローラ122に送ることによって位置ループを作動させ、モータ120に少なくともチャンバ103を動作位置に移動させるように命令する。ローラ111がブランケット44と物理的に接触すると、ローラ111は、典型的にはチャンバ103内に後退し、それによりベアリング124は矢印131と反対の方向に移動する。
【0116】
いくつかの実施形態では、位置感知アセンブリ112は、ローラ111が後退したことを示す位置信号をコントローラ106に送信し、これに応答して、コントローラ106は、目標テンションとローラテンションが一致するまで圧力ループを動作させる。この時点でブランケット44は、上述の図1において記載したデジタル印刷プロセスを開始する準備ができている。
【0117】
代替実施形態では、位置感知アセンブリ112は、超音波、共焦点波長、三角面、機械的プロービング、磁気、および反射力などであるがこれらに限定されない、任意の他の適切な感知技術に基づいてもよい。
【0118】
ダンサアセンブリ100のこの特定の構成は、本発明の実施形態によって対処される特定の問題を説明し、このようなシステムの性能を高める際にこれらの実施形態を適用することを実証するために、例として示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、決してこのような特定の種類の例示的なダンサアセンブリに限定されるものではなく、本明細書に記載された原理は、任意の種類の媒体を引き伸ばすための、および/またはそのような媒体を張った状態に維持するための他の種類の装置にも同様に適用することができる。開示された技術は、任意の適切なタイプの印刷システムまたは材料移送システムの柔軟なコンベヤに適用することができる。
【0119】
図4Aは、本発明の一実施形態による、ブランケット設置位置にあるダンサアセンブリ100の断面図である。いくつかの実施形態では、チャンバ103は、ローラ111がブランケット44と物理的に接触しないように、モータ120およびアーム108によってブランケット44から離される。
【0120】
ここで挿入図180を参照する。いくつかの実施形態では、チャンバ103は、入口107を備え、この入口107は、上述の図2において記載したように、任意の適切な温度(例えば、25°、40°)で加圧空気130をチャンバ103に流すように構成される。チャンバ103は、ハウジング102の内壁163をさらに備える。
【0121】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100がブランケット設置位置にあるとき、ブロワ104は加圧空気130をチャンバ103に吹き込まない。したがって、ローラ111の表面は、内壁163と接触しているか、またはそこから距離161以内にある。
【0122】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、本明細書でシール170と呼ばれる1つまたは複数のシール要素を備え、このシール要素は、任意の適切な技術を用いて、内壁163に、開口部105で結合されるか、または開口部105とローラ111との間に配置されている。いくつかの実施形態では、シール170は、ポリエステルから作られたスポンジ、およびスポンジの表面に結合された超高分子量(UHMW)ポリエチレンテープなどであるこれらに限定されない任意の適切な材料を含み得る。いくつかの実施形態では、シール170は、以下の図4Bにおいて記載されるように、加圧空気130をチャンバ103内に保持し、ローラ111とハウジング102との間の摩擦を低減または排除するように構成される。
【0123】
図4Bは、本発明の一実施形態による、動作位置にあるチャンバ103およびローラ111の断面図である。上の図2において記載したように、圧力ループが作動すると、ブロワ104は、目標テンションとローラテンションとの間を一致させるように、チャンバ103に流入する空気130の圧力を増加させる。
【0124】
いくつかの実施形態では、加圧空気103は、矢印162で表される力をローラ111に加える。加圧空気130、または任意の他の適切な流体を使用することで、ローラ111の表面に沿って均一な力が加えられることに留意されたい。均一な力は、ローラ111のゆがみやその他の歪みを防ぎ、ブランケット44全体に適用される均一なテンションを維持する。そのような実施形態では、ローラ111(約62mmの例示的な直径、または他の任意の適切な直径を有してもよい)は、250グラムから450グラムの間の例示的な重量、または他の任意の適切な重量を有してもよい。
【0125】
上述したように、ローラ111、または任意の回転可能な要素の質量が小さいほど、ブランケット44に機械的な損傷を与えることなく、ローラ111の相対的な加速度または減速度を高めることができる。さらに、ローラ111の質量を小さくすることで、ダンサアセンブリ100は、一定の圧力または力が加えられた状態で、ローラ111のより高い加速度を得ることができる。大幅なたわみを防止する重いローラで同じテンション力を保持することができるギアを備えた電動ダンサは、約25Kgの重量を有し得る。したがって、本例示的な重さに従って、ダンサアセンブリ100は、ローラ111にたわみを生じさせることなく、約78倍の加速度でローラ111を加速させることができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、加圧空気130は、ローラ111を、矢印166の方向に沿って、開口部105からさらに突き出るように移動させる。図4Bに示すように、空気130の圧力の増加に応じて、ローラ111の外面と内壁163との間の距離161が増加し、図4Aに示すブランケット設置位置における距離161よりも大きくなる。
【0127】
いくつかの実施形態では、シール170は、チャンバ103内の加圧空気130を、約10Kpaと約15Kpaとの間の例示的な圧力範囲を有する所定の圧力で保持するように構成される。一実施形態では、所定の圧力がこの範囲内で比較的低い(例えば、約11Kpaまたは約12Kpa)場合、シール170は、応答的に、ローラ111から離脱し、一部の加圧空気130は、ローラ111とシール170との間に漏れ、それによりシール170と回転ローラ111との間の摩擦を防止し、なおかつ、加圧空気130の所定の圧力をチャンバ103内に保持する。別の実施形態では、所定の圧力が比較的高い(例えば、約14Kpaまたは14.5Kpa)場合、シール170はなおもローラ111から離脱し(すなわち、エアギャップを有しており)、より多量の加圧空気130がローラ111とシール170との間に漏れ、それにより(i)シール170と回転ローラ111との間のゼロの摩擦と、(ii)所定の圧力とを保持する。前述の圧力値は例として提供されており、他の実施形態では、任意の他の適切な圧力または圧力範囲を使用できることに留意されたい。さらに、より高い漏れで発生させることができる最大圧力は、ブロワ104の仕様(例えば、流量-圧力曲線)に依存する。したがって、チャンバ103内の加圧空気130の最大圧力は、典型的には、ブロワ104が最大出力で動作するときに得られ、シール170の種類および構成に依存する。
【0128】
いくつかの実施形態では、シール170は、ブランケット44がローラ111を動作位置で回転させるときに、ローラ111と開口部105の内壁163との間の摩擦を低減または排除するようにさらに構成される。一実施形態では、シール170はローラ111と接触し、別の実施形態では、ダンサアセンブリ100の設計は、ローラ111と開口部105の内壁163との間の摩擦を低減または排除するように、シール170とローラ111との間にエアギャップを組み込んでもよい。
【0129】
ダンサアセンブリ100の構成では、ブランケット44に加わる力は、ローラ111の長さおよび直径と、流体チャンバ内の圧力とを掛け合わせることによって決定される。例示的な実施形態では、ローラ111の62mmの直径、1177mmの長さ、および空気130の約10Kpaの圧力により、ブランケット44に700Nの例示的な特定の力が加わる。その結果、ブランケット44に加わるテンションは、所定のラップ角165(例えば、70°)に対応するローラ111とブランケット44との間の接触面によって決定される。
【0130】
上の図2において記載したように、加圧空気130または他の任意の適切な流体に基づくダンサアセンブリ100は、ブランケット44に沿った任意の非線形運動によって引き起こされる衝撃を吸収するように構成されている。いくつかの実施形態では、流体に基づくダンサアセンブリは、ブランケット44の下部走行部で発生する機械的振動の影響を受けないように、ブランケット44の上部走行部を実質的に分離するように構成される。言い換えれば、ダンサアセンブリ100は、システム10の動作中に生じる望ましくない機械的振動の少なくとも一部を抑制するように構成されている。したがって、ダンサアセンブリ100は、ブランケット44を張った状態に維持し、画像形成ステーション60に隣接して通過するとき、および押圧ステーション84に入るときに、ブランケット44を所定の速度で移動させることを支援するように構成されている。
【0131】
さらに、ローラ111の軽量化により、上の図2において詳細に記載したように、ブランケット44の高い加減速度の場合に、ブランケット44の機械的損傷を防止することができる。
【0132】
図5は、本発明の一実施形態に係る、スプリングベースシール(SBS)177を有するダンサアセンブリ100の断面図である。
【0133】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100は、上の図4Aおよび図4Bに示すシール170の代わりに、内壁163に結合されるSBS177を備える。図5の例では、SBS177は、ハウジング102の内壁163とローラ111との間に配置されている。
【0134】
ここで、SBS177の詳細な構造を示す挿入図182を参照する。いくつかの実施形態では、SBS177は、典型的には、SS301合金などのステンレス鋼(SS)、または任意の他の適切な材料で作られ、約0.2mmまたは任意の他の適切な厚さを有するリーフスプリング(LS)188を備える。
【0135】
本開示の文脈および特許請求の範囲において、任意の数値または数値の範囲に対する「約」または「およそ」という用語は、本明細書に記載されているように、部品または構成要素の集合体、または厚さなどの物理的パラメータがその意図された目的のために機能することを可能にする適切な寸法公差を示す。より具体的には、「約」または「およそ」という用語は、記載された値の±20%の値の範囲を指すことがあり、例えば、「約90%」は、71%から99%の値の範囲を指すことがある。
【0136】
いくつかの実施形態では、LS188は、セクション189および190を含み、セクション189は、ハウジング102の内壁163(図5の全体図に示す)に結合され、セクション190は、セクション189から延び、セクション189および内壁163によって定められる平面を示す破線185に対して、曲げ角度αで曲げられている。本例では、角度αは、約±0.5度の許容差で約15度の公称値を有するが、他の実施形態では、角度αは、任意の他の適切な許容差で任意の他の適切な角度を有してもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、SBS177は、LS188のセクション190に結合され、加圧空気130をチャンバ103内に保持し、ローラ111とハウジング102との間の摩擦を低減または排除するように構成された層184を備える。
【0138】
いくつかの実施形態では、層184は、本明細書でスポンジとも呼ばれるPoron(登録商標)4701-30などのポリウレタンフォームを含み、約1mmの厚さまたは他の任意の適切な厚さを有する。他の実施形態では、層184は、加圧空気130をチャンバ103内に保持するのに適し、また、ローラ111と層184との間の摩擦を低減するのに適した、任意の他の材料で作られた1つまたは複数のサブ層を含んでもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、SBS177は、層184に接着され、UHMWポリエチレンテープまたはTeflon(商標)とも呼ばれるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはチャンバ103内に加圧空気130を保持するのに適し、またローラ111とハウジング102との間の摩擦を低減するのに適した任意の他の材料を含むテープ186を含んでいる。
【0140】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100の動作中、増加した加圧空気130を適用することに応答して、ローラ111はSBS177の遠位端198に向かって方向191に移動し、セクション190は角度αを減少させる方向192に曲がる。同様に、加圧空気130の圧力を減少させると、ローラ111はSBS177の近位端196に向かって方向193に移動し、セクション190は角度αを増加させる方向194に曲がる。
【0141】
いくつかの実施形態では、ダンサアセンブリ100がチャンバ103内の加圧空気130の所定の(すなわち一定の)圧力で動作し、システム10の動作中にブランケット44に加えられるテンションが変動しているか、または異なる一定のテンションに変化しているとき、ローラ111は、テンションの変化に応じて方向191または193に移動するように構成される。例えば、ローラ111が方向191に移動すると、セクション190のより大きな部分が加圧空気130にさらされるので、セクション190が方向192に曲がり、それによって角度αが小さくなり、逆もまた同様であり、ブランケット44に加えられるテンションの変化に応じてローラ111が方向193に移動すると、セクション190が方向194に曲がり、それによって角度αが大きくなる。なお、上述した機構に基づいて、ローラ111が方向191または193に移動するとき、ダンサアセンブリ100は:(i)チャンバ103内の加圧空気130の所定の圧力、および、(ii)シール170とローラ111との間の前述のエアギャップ、を維持し、それによりシール170と回転するローラ111との間の摩擦を排除するように構成される。
【0142】
いくつかの実施形態では、ローラ111とSBS177のテープ186との間の最も近接した位置を示す点195が、ローラ111の動きと一緒に移動する。加圧空気130を適用するとき、ローラ111とテープ186は、点195で互いに物理的に接触しておらず、典型的には、互いに約0.2mmの距離を保持しており、これにより、チャンバ103内の加圧空気の前述の特定の圧力を維持することができ、ローラ111と層184との間の摩擦を防止または低減することができることに留意されたい。言い換えれば、加圧空気130の圧力の変化に応じて、セクション190は、テープ186がローラ111の外周面から前述の距離(または他の適切な設定可能な距離)に配置されるように、ローラ111に対して移動する。摩擦を防ぐことで、開示された技術は、ローラ111が回転しているときに、テープ186およびローラ111の少なくとも一方の浸食を防ぐ。加圧空気130がない場合、または所定の圧力レベル未満か等しい圧力の場合、ローラ111は、典型的には、その軸を中心に回転しておらず、その場合、ローラ111およびテープ186は、点195で互いに物理的に接触している可能性がある。
【0143】
いくつかの実施形態では、LS188の柔軟性に基づいて、SBS177は、加圧空気130の広い範囲で動作するように構成されているので、低い圧力を加えるときにローラ111またはテープ186が侵食されることはなく、空気130の圧力が増加したときにも空気と圧力の規定の漏れが維持される。さらに、開示された技術では、ローラ111とセクション190を相対的に移動させることで、加圧空気130のレベルが異なる場合でも、連続的な運転や作業状態を実現することができる。
【0144】
上述した構成および特定された寸法と圧力は、純粋に例として描かれている。代替実施形態では、ダンサアセンブリ100およびチャンバ103は、任意の他の適切な構成および寸法を有してもよく、任意の他の適切な特定された条件を用いて動作してもよい。
【0145】
本明細書に記載した実施形態は、主に柔軟なITMを使用したデジタル印刷を対象としているが、本明細書に記載した方法およびシステムは、柔軟なターゲット基材に(例えば、ジェット噴射によって)インクを直接塗布することによるデジタル印刷、任意のタイプの柔軟な部材に適用されるテンションの制御、および、例えば機械産業および/または食品産業における、柔軟な媒体を有するコンベアを含む任意のシステムなど、他の用途にも使用することができる。
【0146】
したがって、上述した実施形態は、例として記載されており、本発明は、本明細書において上で特に示され、記載されたものに限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲には、本明細書に記載された様々な特徴の組み合わせおよびサブ組み合わせの両方、ならびに、前述の記載を読んで当業者が思いつくであろう、従来技術に開示されていないその変形および変更が含まれる。本特許出願に参照により組み込まれた文書は、本出願の不可欠な一部とみなされるが、ただし、これらの組み込まれた文書において、本明細書で明示的または暗示的になされた定義と矛盾する方法で用語が定義されている場合は、本明細書の定義のみを考慮する必要がある。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5