(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169297
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ヘプシジン媒介性障害を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231121BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231121BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20231121BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231121BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231121BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 D
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P13/12
A61P29/00
C07K16/24
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023150185
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2021198768の分割
【原出願日】2016-07-28
(31)【優先権主張番号】62/268,788
(32)【優先日】2015-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/199,434
(32)【優先日】2015-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カッカー,レイフル
(72)【発明者】
【氏名】デヴァララジャ,マドハヴ,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】エスコット,キャサリン,ジェーン
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、ヘプシジン媒介性障害を治療するための方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、治療有効量のIL-6アンタゴニストを、ヘプシジン媒介性障害を有する患者に投与することを含む、ヘプシジン媒介性障害を治療するための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性腎疾患を有する対象において心血管疾患を治療する方法に使用するための、抗IL-6抗体を含む組成物であって、
該方法が、治療有効量の抗IL-6抗体を対象に投与することを含む、組成物。
【請求項2】
心血管疾患がアテローム性動脈硬化症である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
心血管疾患が炎症である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
対象は、KDOQIステージ1慢性腎疾患を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
対象は、KDOQIステージ2慢性腎疾患を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
対象は、KDOQIステージ3慢性腎疾患を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
対象は、KDOQIステージ4慢性腎疾患を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
対象は、KDOQIステージ5慢性腎疾患を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
対象における炎症が、参照レベルと比較して血清IL-6及び/又はCRPのレベルの増加を特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
抗IL-6抗体が、炎症を中和するのに有効な量で投与される、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
対象は、2mg/Lを超える処置前CRPレベルを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
抗IL-6抗体は、対象のCRPレベルを処置前レベルを下回るように減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、請求項3に記載の組成物。
【請求項13】
抗IL-6抗体は、対象のCRPレベルを、処置前レベルと比較して少なくとも50%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
抗IL-6抗体は、MEDI5117の6つの可変領域CDRをすべて含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
抗IL-6抗体は、MEDI5117のVH及びVLを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
抗IL-6抗体は、MEDI5117である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
心血管疾患がアテローム性動脈硬化症及び炎症であり、
対象が、KDOQIステージ3慢性腎疾患、KDOQIステージ4慢性腎疾患及びKDOQIステージ5慢性腎疾患から選択される慢性腎疾患を有し、
対象が、2mg/Lを超える処置前CRPレベルを有し、かつ
抗IL-6抗体が、対象のCRPレベルを、処置前レベルと比較して少なくとも50%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 関連出願の相互参照
本出願は、2015年7月31日に出願された米国仮出願第62/199,434号及び2015年12月17日に出願された米国仮出願第62/268,788号に対する優先権を主張し、これらそれぞれの全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
2. 背景
ペプチドホルモンであるヘプシジンは、全身の鉄分ホメオスタシスにおいて中心的な役割を果たす。Hentzeら、Cell 142:24~38 (2010)。ヘプシジン発現は、TMPRSS6遺伝子、マトリプターゼ-2、II型膜貫通セリンプロテアーゼの産物の影響を受けることが知られている。TMPRSS6遺伝子の一般的な変異体は、鉄分状態と相関することが示されている。Benyaminら、Nature Genetics 41(11):1173~1175 (2009)。rs855791 SNP(2321G→A、A736V)は、ヘプシジン発現及び血液ヘモグロビンレベルの天然に存在する変動と相関することが示されている。
【0003】
ヘプシジン発現はまた、ヒト鉄分障害、Pietrangelo、J. Hepatology 54:173~181 (2011)、及び慢性疾患の貧血(ACD)(炎症性の貧血(AI)としても知られている)に関与している。ACDは、慢性感染、自己免疫疾患、癌、及び慢性腎疾患(CKD)を有する患者において一般的である。Sunら、Am. J. Hematol. 87(4):392~400 (2012)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘプシジン媒介性障害を治療するための方法が当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
3. 概要
本発明者らは、IL-6シグナル伝達の減少が、慢性疾患の貧血及びヘプシジン媒介性細胞毒性を含むヘプシジン媒介性障害を有する患者において臨床的利益をもたらすが、この利益は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者においてのみもたらされ、上昇したレベルのIL-6を有する患者において最も効果的であることを実証している。
【0006】
したがって、第1の態様では、ヘプシジン媒介性障害を治療するための方法が提供される。本方法は、治療有効量のIL-6アンタゴニストを、TMPRSS6 rs855791 SNPにおいてメジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有すると決定されたヘプシジン媒介障害を有する患者に投与することを含む。第1の一連の実施形態では、患者は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが以前に決定されている。別の一連の実施形態において、本方法は、患者がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定する初期ステップをさらに含む。典型的には、患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している。いくつかの実施形態において、患者は、CRPの処置前血清レベルが上昇している。
【0007】
様々な実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、慢性疾患の貧血である。
【0008】
いくつかの貧血の実施形態において、患者は男性であり、14g/dl未満の処置前ヘモグロビン(Hb)レベル、13g/dl未満の処置前Hbレベル、12g/dl未満の処置前Hbレベル、又は11g/dl未満の処置前Hbレベルを有する。いくつかの貧血の実施形態では、患者は女性であり、12g/dl未満の処置前Hbレベル、11g/dl未満の処置前Hbレベル、10g/dl未満の処置前Hbレベル、又は9g/dl未満の処置前Hbレベルを有する。
【0009】
いくつかの貧血の実施形態において、患者は男性であり、40%未満、35%未満、又は30~34%の処置前ヘマトクリットを有する。いくつかの実施形態において、患者は女性であり、36%未満、35%未満、34%未満、33%未満、32%未満、又は31%未満の処置前ヘマトクリットを有する。いくつかの実施形態において、女性患者は、26~29%の処置前ヘマトクリットを有する。
【0010】
様々な貧血の実施形態において、患者は、赤血球新生刺激剤(ESA)の少なくとも1つの処置前投与を受けている。ある種の実施形態において、患者は、ESAの少なくとも1つの処置前投与を受けていて、正常なHbレベル又は正常なヘマトクリットを有する。様々な実施形態において、患者は、鉄補給の少なくとも1つの処置前投与を受けている。ある種の実施形態において、患者は、鉄補給の少なくとも1つの処置前投与を受けていて、正常なHbレベル又は正常なヘマトクリットを有する。様々な実施形態において、患者は、血液又は濃厚赤血球の少なくとも1回の処置前輸血を受けている。ある種の実施形態において、患者は、血液又は濃厚赤血球の少なくとも1回の処置前輸血を受けていて、正常なHbレベル又は正常なヘマトクリットを有する。
【0011】
様々な貧血の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のHbレベルを処置前レベルを上回るように増加させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のヘマトクリットを処置前レベルを上回るように増加させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のHbレベルを処置直前に存在するレベルを下回るように減少させることなく、患者のESA用量の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。ある種の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のヘマトクリットを処置直前に存在するレベルを下回るように減少させることなく、患者のESA用量の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0012】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、処置前ESA用量と比較して患者のESA用量の少なくとも10%の減少、処置前ESA用量と比較して患者のESA用量の少なくとも20%の減少、処置前ESA用量と比較して患者のESA用量の少なくとも30%の減少、処置前ESA用量と比較して患者のESA用量の少なくとも40%の減少、又は処置前ESA用量と比較して患者のESA用量の少なくとも50%の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び、期間で投与される。
【0013】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、機能的鉄分欠乏を回復させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0014】
一連の実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、慢性疾患が慢性腎疾患(CKD)である慢性疾患の貧血である。
【0015】
いくつかのCKDの実施形態において、患者は、KDOQIステージ1慢性腎疾患、KDOQIステージ2慢性腎疾患、KDOQIステージ3慢性腎疾患、KDOQIステージ4慢性腎疾患、又はKDOQIステージ5慢性腎疾患を有する。具体的な実施形態において、患者はKDOQIステージ5の慢性腎疾患を有する。
【0016】
いくつかのCKDの実施形態において、患者は心腎臓症候群(CRS)を有する。具体的な実施形態において、患者はCRSタイプ4を有する。ある種の実施形態において、患者は少なくとも1つの処置前透析治療を受けている。
【0017】
いくつかのCKDの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、年齢が合致し、疾患が合致した歴史的対照と比較して、心血管(CV)死亡率を減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0018】
様々な実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、慢性疾患が慢性炎症性疾患である慢性疾患の貧血である。
【0019】
いくつかの実施形態において、慢性炎症性疾患は関節リウマチ(RA)である。ある種の実施形態において、患者は5.1を超える処置前DAS28スコアを有する。いくつかの実施形態において、患者は3.2~5.1の処置前DAS28スコアを有する。具体的な実施形態において、患者は2.6未満の処置前DAS28スコアを有する。選択された実施形態において、患者の処置前RAは中程度に活性であるから重度に活性である。
【0020】
いくつかのRAの実施形態において、患者は、メトトレキセートの少なくとも1回の処置前投与を受けている。いくつかの実施形態において、患者は、TNFαアンタゴニストの少なくとも1回の処置前投与を受けている。選択された実施形態において、TNFαアンタゴニストは、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブ及びゴリムマブからなる群から選択される。
【0021】
いくつかのRAの実施形態において、患者は、IL-6アンタゴニストの少なくとも1回の処置前投与を受けている。ある種の実施形態において、処置前IL-6アンタゴニストは、トシリズマブ又はトファシチニブである。
【0022】
好ましい一連の態様において、処置IL-6アンタゴニストはMEDI5117である。
【0023】
様々な実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、慢性疾患が、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎、プラーク乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される慢性疾患の貧血である。
【0024】
いくつかの実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、慢性疾患が癌である慢性疾患の貧血である。ある種の実施形態において、癌は、固形腫瘍、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、血液癌、多発性骨髄腫、白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、リンパ腫、ホジキンリンパ腫及び肝腺腫からなる群から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、慢性疾患が慢性感染症である慢性疾患の貧血である。
【0026】
いくつかの実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、慢性疾患がうっ血性心不全(CHF)である慢性疾患の貧血である。
【0027】
いくつかの実施形態において、ヘプシジン媒介障害は鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)である。
【0028】
いくつかの実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は急性冠症候群である。特定の実施形態において、患者は、IL-6アンタゴニストの初回投与に先立って60日以内、IL-6アンタゴニストの初回投与に先立って30日、IL-6アンタゴニストの初回投与に先立って48時間以内、又はIL-6アンタゴニストの初回投与に先立って24時間以内に、心筋梗塞(MI)に罹患している。
【0029】
いくつかの急性冠症候群の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、処置前レベルと比較して、心筋収縮性を改善するのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。いくつかの急性冠症候群の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、処置前レベルと比較して、心臓駆出率を改善するのに十分な投与量、スケジュール、及び期間で投与される。いくつかの急性冠症候群の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、処置前レベルと比較して、心臓線維症を減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0030】
いくつかの実施形態において、ヘプシジン媒介性障害はキャッスルマン病である。
【0031】
別の態様において、ヘプシジン媒介性障害の治療を改善するための方法が提供される。本方法は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であると決定された、ヘプシジン媒介性障害を有する患者へのIL-6アンタゴニストの投与を中止することを含む。
【0032】
別の態様において、効果のない療法を中止し、それにより副作用を減少させ、治療有効性を失うことなく費用を削減することによって、ヘプシジン媒介障害の治療を改善するための方法が提供される。本方法は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であると決定された、ヘプシジン媒介性障害を有する患者へのIL-6アンタゴニストの投与を中止することを含む。一連の実施形態において、患者は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であると以前に決定されている。別の一連の実施形態において、本方法は、患者がTMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であることを決定する初期ステップをさらに含む。典型的な実施形態において、患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している。様々な実施形態において、患者は、CRPの処置前血清レベルが上昇している。様々な実施形態において、患者は、本明細書のセクション5.2.1に記載されたものから選択されるヘプシジン媒介性障害を有する。ある種の実施形態において、患者は慢性疾患の貧血を有する。
【0033】
以下の実施例2、3及び5に示されるデータは、IL-6アンタゴニストが、貧血がない場合でさえ、処置前IL-6レベルが上昇し、TMPRSS6メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する対象において、治療的恩恵を与えることを実証する。したがって、別の態様において、慢性炎症性の貧血がない患者におけるIL-6媒介性炎症性障害を治療するための方法が提供される。本方法は、IL-6媒介性炎症性障害を有する対象、典型的にはヒト患者に治療有効量のIL-6アンタゴニストを投与することを含み、ここで、患者は貧血ではなく、対象はTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが決定されている。第1の一連の実施形態において、対象は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが以前に決定されている。別の一連の実施形態において、本方法は、対象がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定する初期ステップをさらに含む。典型的には、本方法は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性である対象の治療を肯定的に排除する。典型的には、患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している。
【0034】
治療方法のいずれかの具体的な実施形態において、患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している。ある種の実施形態において、患者は、2.5pg/mlを超える、5pg/mlを超える、7.5pg/mlを超える、10pg/mlを超える、又は12.5pg/mlを超える処置前血清IL-6レベルを有する。
【0035】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者の血清中の遊離IL-6レベルを処置前レベルを下回るように減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。具体的な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、遊離IL-6レベルを、処置前レベルと比較して少なくとも10%、処置前レベルと比較して少なくとも20%、又は処置前レベルと比較して少なくとも50%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0036】
治療方法のいずれかの特定の実施形態において、患者は、C反応性タンパク質(CRP)の処置前レベルが上昇している。ある種の実施形態において、患者は、2mg/mlを超える、3mg/mlを超える、5mg/mlを超える、7.5mg/mlを超える、又は10mg/mlを超える処置前CRPレベルを有する。
【0037】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のCRPレベルを処置前レベルを下回るように減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。具体的な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のCRPレベルを、処置前レベルと比較して少なくとも50%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0038】
治療方法のいずれかの具体的な実施形態において、患者は、TaqMan(登録商標)リアルタイムPCRアッセイを使用して、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが決定されている。
【0039】
治療方法のいずれかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、抗IL-6抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体である。
【0040】
ある種の実施形態において、抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、ヒトIL-6への結合について100nM未満、50nM未満、10nM未満、又は1nM未満のKDを有する。ある種の実施形態において、抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、又は少なくとも30日間の静脈内投与後の排泄半減期を有する。
【0041】
様々な抗体の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、IgG1又はIgG4抗体などの全長モノクローナル抗IL-6抗体である。
【0042】
選択された実施形態において、抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は完全にヒトである。いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体はヒト化されている。
【0043】
現在好ましい実施形態において、抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、MED5117の6つの可変領域CDRをすべて含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、抗体は、MED5117のVH及びVLを含む。さらに、特定の実施形態において、抗体はMED5117である。
【0044】
様々な実施形態において、抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、エルシリモマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals, Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals, Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体の6つの可変領域CDRをすべて含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals, Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals, Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体由来の重鎖V領域及び軽鎖V領域を含む。具体的な実施形態において、抗IL-6抗体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals, Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals, Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体である。
【0046】
いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals, Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals, Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体である。具体的な実施形態において、抗IL-6抗体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals, Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals, Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体である。
【0047】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、単一ドメイン抗体、VHHナノボディ、Fab、又はscFvである。
【0048】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、抗IL-6R抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体である。ある種の実施形態において、抗IL-6R抗体、抗原結合断片又は誘導体は、トシリズマブ又はボバリリズマブである。
【0049】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストはJAK阻害剤である。具体的な実施形態において、JAK阻害剤は、トファシチニブ(Xeljanz)、デセルノチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、レスタウルチニブ、パクリチニブ、ペフィシチニブ、INCB-039110、ABT-494、INCB-047986及びAC-410からなる群から選択される。
【0050】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストはSTAT3阻害剤である。
【0051】
IL-6アンタゴニストが抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体であるいくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは非経口投与される。具体的な実施形態において、IL-6アンタゴニストは皮下投与される。
【0052】
IL-6アンタゴニストがJAK阻害剤又はSTAT3阻害剤であるいくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストが経口投与される。
4. 図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1A及び1B:エリスロポエチン(「EPO」)の増加量は、血清IL-6のレベルが上昇していて、TMPRSS6遺伝子、rs855791(ヌクレオチド2321位にG又はC、アミノ酸736位にアラニン(736A)を含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする)における公知のSNPでメジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有した慢性腎疾患患者(CKDステージ5透析対象)における治療に必要されるが、IL-6のレベルが上昇していて、rs855791 TMPRSS6マイナー対立遺伝子(ヌクレオチド2321位でT又はA、736位でバリン(736V)を有するTMPRSS6ポリペプチドをコードする)に対してホモ接合性であって慢性腎疾患においては必要なかったことを示すボックスプロットを提供する図である。マイナー対立遺伝子(A/A)に対してホモ接合性である患者からのデータを
図1Aに示す。メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピー(ホモ接合G/G及びヘテロ接合G/A)を有する患者からのデータをプールし、
図1Bに示す。2つの患者集団の各々は、血清IL-6レベルの三分位に基づく群にさらに層別化された:「低」三分位(IL-6<5pg/ml)、「中」三分位(IL-6=5~15pg/ml)、「最高」三分位(IL-6>15μg/ml)。誤差バーを含むボックスプロットは生データ上に重ねられる。各ボックスプロットは、IL-6レベルと遺伝子型の両方に基づく患者群を表す。詳細は実施例1に記載される。
【
図2A】TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子が、慢性腎疾患ステージ5透析対象におけるIL-6レベルの上昇に応答してより高い全原因死亡率を与えることを実証する生存曲線を提供する図である。
図2Aは、マイナー対立遺伝子(A/A)に対するホモ接合性である患者からのデータを示す。各群は、
図1で使用されたIL-6レベルを使用して血清IL-6レベルの三分位に分離された。詳細は実施例1に記載される。
【
図2B】TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子が、慢性腎疾患ステージ5透析対象におけるIL-6レベルの上昇に応答してより高い全原因死亡率を与えることを実証する生存曲線を提供する図である。
図2Bは、メジャー対立遺伝子(ホモ接合G/G及びヘテロ接合G/A)の少なくとも1コピーを有する患者からのデータを示す。各群は、
図1で使用されたIL-6レベルを使用して血清IL-6レベルの三分位に分離された。詳細は実施例1に記載される。
【
図3】EPOの増加量が、急性期反応物CRPの血清レベルが上昇していて、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有した慢性腎疾患患者(CKDステージ5透析対象)における療法に必要であるが、急性期反応物CRPの血清レベルが上昇していて、rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であった慢性腎疾患患者においては必要なかったことを示すグラフ図である。各遺伝子型群を血清CRPレベル<2mg/L対>2mg/Lに分離した。詳細は実施例1に記載される。
【
図4】
図4A及び4B:TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子が、心筋梗塞(「MI」)後の患者において上昇したIL-6レベルに応答してより高い全原因死亡率を与えることを実証するグラフ図である。
図4Aは、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性である集団のMI後の日数(x軸)に対して経時的に死亡事象の累積確率(y軸)をプロットしたものである。
図4Bは、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する集団について経時的に死亡事象の累積確率をプロットしたものである。各群は、指示されるように血清IL-6レベルの三分位に分離された。心筋梗塞の1カ月後にIL-6レベルを測定した。死亡率は、心筋梗塞後の1~12カ月で測定した。詳細は実施例2に記載される。
【
図5】
図5A及び5B:TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子が、MI後の患者におけるIL-6レベルの上昇に応答して心不全(「HF」)のより高いリスクを与えることを実証するグラフ図である。
図5Aは、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性である集団のMI後の日数(x軸)に対して経時的にHFの累積確率(y軸)をプロットしたものである。
図5Bは、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する集団について経時的にHF事象の累積確率をプロットしたものである。各群は、指示されるように血清IL-6レベルの三分位に分離された。心筋梗塞の1カ月後にIL-6レベルを測定した。HFは、心筋梗塞後の1~12カ月で測定された。詳細は実施例2に記載される。
【
図6A】TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子又はメジャー対立遺伝子のいずれかを構成的に発現する構築物をトランスフェクトし、インビトロでBMP2+IL-6又はBMP2単独に曝露した場合、心筋細胞に分化したヒトiPS細胞のアッセイの結果を示し、これは、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子は、IL-6に応答して細胞死(Trypan Blue陽性)のより高いリスクを提供することを実証する図である。
図6Aは正常酸素環境における結果を示す。データは、IL-6曝露の減少が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を有する患者において心筋細胞の生存を改善すべきであるが、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子を有する患者では改善すべきでないことを意味する。詳細は実施例3に記載される。
【
図6B】TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子又はメジャー対立遺伝子のいずれかを構成的に発現する構築物をトランスフェクトし、インビトロでBMP2+IL-6又はBMP2単独に曝露した場合、心筋細胞に分化したヒトiPS細胞のアッセイの結果を示し、これは、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子は、IL-6に応答して細胞死(Trypan Blue陽性)のより高いリスクを提供することを実証する図である。
図6Bは、低酸素条件及び再酸素化への曝露後の結果を示す。データは、IL-6曝露の減少が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を有する患者において心筋細胞の生存を改善すべきであるが、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子を有する患者では改善すべきでないことを意味する。詳細は実施例3に記載される。
【
図7】実施例4に記載される心腎臓症候群研究の実験デザインを示す図である。CRS4は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトに遺伝子型的に類似するラットにおいて誘導された。この図は、タイムラインに沿った研究の様々な事象を示す。この研究において、0週目にラットに心筋梗塞(「MI」)を誘導した。2週目に各対象において単一の腎切除(「Nx」)が行われた。腎切除術後の1日目(D1)から開始し、本研究の終了まで、3日に1回、抗IL-6抗体(Ab9770、Abcam Plc, UK)( Rx)又はアイソタイプ対照抗体(「IgG」;ab171516、Abcam Plc, UK)が投与された。ケア療法の標準(ACE阻害剤-ペリンドプリル)は、Nx後の1日から本研究の終了まで毎日投与された。6週目にげっ歯類を屠殺した。MI及びNxは、対照群である「シャム」対象群では行われなかった。げっ歯類の様々なアセスメントを矢印で示された時点で行った。
【
図8A】
図7において要約され、実施例4において詳細に記載される心腎臓症候群モデルにおいて、対照(「アイソタイプ」)処置群及びシャム手術された動物に対する、抗IL-6抗体(「IL-6抗体」)、ケアACE阻害剤の標準(ペリンドプリル又は「Peri」)で処置されたラットの心臓駆出率を示す図である。
図8Aは、心筋梗塞の2週間後であるが、腎切除前の全群についてのベースライン駆出率レベルを示すプロットである。結果は平均±SEMとして表され、抗IL-6療法が、心臓駆出率の変化によって測定された、ケア療法の基準と同等の、心腎臓症候群モデルにおける治療有効性を有することを実証する。
【
図8B】
図7において要約され、実施例4において詳細に記載される心腎臓症候群モデルにおいて、対照(「アイソタイプ」)処置群及びシャム手術された動物に対する、抗IL-6抗体(「IL-6抗体」)、ケアACE阻害剤の標準(ペリンドプリル又は「Peri」)で処置されたラットの心臓駆出率を示す図である。
図8Bは、1週間の処置後であり、腎切除の1週間後の全群について駆出率レベルを示すプロットである。結果は平均±SEMとして表され、抗IL-6療法が、心臓駆出率の変化によって測定された、ケア療法の基準と同等の、心腎臓症候群モデルにおける治療有効性を有することを実証する。
【
図8C】
図7において要約され、実施例4において詳細に記載される心腎臓症候群モデルにおいて、対照(「アイソタイプ」)処置群及びシャム手術された動物に対する、抗IL-6抗体(「IL-6抗体」)、ケアACE阻害剤の標準(ペリンドプリル又は「Peri」)で処置されたラットの心臓駆出率を示す図である。
図8Cは、2週間の処置後であり、腎切除の2週間後の全群について駆出率を示すプロットである。結果は平均±SEMとして表され、抗IL-6療法が、心臓駆出率の変化によって測定された、ケア療法の基準と同等の、心腎臓症候群モデルにおける治療有効性を有することを実証する。
【
図8D】
図7において要約され、実施例4において詳細に記載される心腎臓症候群モデルにおいて、対照(「アイソタイプ」)処置群及びシャム手術された動物に対する、抗IL-6抗体(「IL-6抗体」)、ケアACE阻害剤の標準(ペリンドプリル又は「Peri」)で処置されたラットの心臓駆出率を示す図である。
図8Dは、4週間の処置後であり、腎切除術の4週間後の全群について駆出率を示すプロットである。結果は平均±SEMとして表され、抗IL-6療法が、心臓駆出率の変化によって測定された、ケア療法の基準と同等の、心腎臓症候群モデルにおける治療有効性を有することを実証する。
【
図9】
図7において要約され、実施例4において詳細に記載される心腎臓症候群モデルにおいて、対照(「アイソタイプ」)処置群に対する、抗IL-6抗体(「IL-6抗体」)、ケアの標準(ペリンドプリル又は「Peri」)で処置されたラットの心収縮性を示すプロットを示す図である。心収縮性は、心臓内の圧力の尺度であるdP/dtmax(mmHb/ミリ秒)を測定することにより、研究の終了時にアセスメントされた。処置の4週間後であり、腎切除の4週間後の全群についての測定を示す。結果は平均±SEMとして表され、抗IL-6で処置されたげっ歯類群における心収縮性の増加によって示されるように、抗IL-6療法は、ケア療法の標準と同等の治療効果を有することを実証する。
【
図10A】抗IL-6療法(「IL-6 Ab」)、ケアの標準(ペリンドプリル又は「Peri」)、及び対照(「IgG」)で処置されたげっ歯類群からの心臓組織における線維症のレベルによって測定した場合、抗IL-6療法は、ケア療法の標準と同等の抗心腎臓症候群効果を有することを示す図である。
図10Aは、ピクロシリウス-レッドで染色された心臓組織の組織学的切片を示す顕微鏡写真である。組織の2つの領域、「正常」領域及び「線維症周辺」領域を分析した。「正常」領域の例は、組織片の描写された部分によって示される。顕微鏡写真の挿入図は、「正常」領域の拡大図を示し、「正常」領域の小さな部分が線維化組織を有することを示している。「線維症周辺」領域は、線維化組織の周辺の「正常」領域の組織の領域である。
【
図10B】抗IL-6療法(「IL-6 Ab」)、ケアの標準(ペリンドプリル又は「Peri」)、及び対照(「IgG」)で処置されたげっ歯類群からの心臓組織における線維症のレベルによって測定した場合、抗IL-6療法は、ケア療法の標準と同等の抗心腎臓症候群効果を有することを示す図である。
図10Bは、全群からの組織サンプル中の線維性組織(すなわち、染色/暗領域)として示される「正常」領域の面積の割合を示すプロットである。結果を平均±SEMとして表す。詳細は実施例4に記載されている。
【
図10C】抗IL-6療法(「IL-6 Ab」)、ケアの標準(ペリンドプリル又は「Peri」)、及び対照(「IgG」)で処置されたげっ歯類群からの心臓組織における線維症のレベルによって測定した場合、抗IL-6療法は、ケア療法の標準と同等の抗心腎臓症候群効果を有することを示す図である。
図10Cは、全群の組織サンプル中の線維性組織として示される「線維症周辺」領域の面積の割合を示すプロットである。結果を平均±SEMとして表す。詳細は実施例4に記載されている。
【
図11A】TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトに遺伝子型的に類似したマウスにおいて心筋梗塞が誘導されたインビボモデルからのデータを示す図である。対照群は療法を受けなかった。実験群を抗マウスIL-6抗体で処置した。
図11Aは、抗IL-6による処置が駆出率において統計的に有意な改善を与えることを示す。データは、心筋梗塞の直後に与えられた抗IL-6療法が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を有するヒト患者を模倣するげっ歯類における左心室の機能回復を改善することを実証する。詳細は実施例5に記載される。
【
図11B】TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトに遺伝子型的に類似したマウスにおいて心筋梗塞が誘導されたインビボモデルからのデータを示す図である。対照群は療法を受けなかった。実験群を抗マウスIL-6抗体で処置した。
図11Bは、抗IL-6による処置が、心臓の左心室分画短縮として測定される収縮性において統計的に有意な改善を与えることを示す。データは、心筋梗塞の直後に与えられた抗IL-6療法が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を有するヒト患者を模倣するげっ歯類における左心室の機能回復を改善することを実証する。詳細は実施例5に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図面は、例示のみを目的として、本発明の様々な実施形態を示している。当業者は、本明細書に記載される本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に例示される構造及び方法の代替の実施形態が用いられ得ることを容易に認識する。
【0055】
5. 詳細な説明
5.1. 実験結果の概要
ペプチドホルモンであるヘプシジンは、全身の鉄分ホメオスタシスにおいて中心的な役割を果たす。Hentzeら、Cell 142:24~38 (2010)。ヘプシジン発現は、TMPRSS6遺伝子の産物、マトリプターゼ-2、II型膜貫通セリンプロテアーゼによって影響を受けることが知られている。TMPRSS6遺伝子の一般的な変異体は、鉄分状態と相関することが示されている(Benyaminら、Nature Genetics 41(11):1173~1175 (2009))。rs855791 SNP(2321G→A、A736V)は、ヘプシジン発現及び血液ヘモグロビンレベルの自然発生変動と相関することが示されている。ヘプシジン発現はまた、ヒト鉄分障害(Pietrangelo、J. Hepatology 54:173~181 (2011))、及び慢性疾患の貧血(ACD)(炎症性の貧血(AI)としても知られている)に関与している。ACDは、慢性感染、自己免疫疾患、癌、及び慢性腎疾患(CKD)を有する患者において一般的である。Sunら、Am. J. Hematol. 87(4):392~400 (2012)。
【0056】
TMPRSS6 rs855791 SNPでの遺伝子型が末期腎疾患における貧血の程度を予測するかどうかを決定するために、慢性腎疾患患者の臨床研究において以前に収集されたデータを、新たに決定されたSNP遺伝子型決定と併せて分析した。ヘプシジンの発現はまたIL-6によって調節されるため(Casanovasら、PLOS Computational Biol. 10(1):e1003421 (2014))、データをさらに分析して、血清IL-6レベルが末期腎疾患における貧血の程度を予測できるかどうかを決定した。
【0057】
実施例1に記載され、
図1に示されるように、臨床的に滴定されるEPO用量として測定される、根底にある貧血の程度は、TMPRSS6 rs855791 SNPでメジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者においてのみIL-6レベルと相関した。これらの患者において、より高い血清IL-6レベルは、より高い必要とされるEPO用量と相関した(
図1B)。対照的に、マイナー対立遺伝子の2つのコピーを有する患者における貧血の程度は、血清IL-6レベルと相関しなかった(
図1A)。
【0058】
同様に、全生存率は、TMPRSS6 SNP rs855791でメジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者においてのみIL-6レベルと相関した。TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する対象において、生存は血清IL-6レベルと逆相関し、血清IL-6レベルの最高三分位にある患者は、IL-6レベルの最低三分位にある患者よりも統計的に有意に悪かった(
図2B)。対照的に、rs855791でマイナー対立遺伝子に対してホモ接合性である患者の全生存率は、IL-6レベルによって影響を受けなかった(
図2A)。
【0059】
理論に縛られるつもりはないが、TMPRSS6メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者において、血清IL-6の増加は、ヘプシジン発現の増加を引き起こし、それによって貧血を増加させる可能性がある。死亡リスクの増加は、調節不全の鉄分代謝、結果として生じる貧血、及び/又は処置のために投与されるEPOなどの赤血球新生刺激剤の用量増加の結果である。これらの相関関係は、IL-6レベル又はIL-6シグナル伝達の減少が、慢性腎疾患を有する患者であるが、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有するそれらの患者においてのみ、貧血を減少させ、必要なEPO用量を減少させ、及び生存を高める可能性を上昇させ、IL-6の血清レベルが上昇しているそれらの患者において最も効果的であった。
【0060】
実施例2において、TMPRSS6 rs855791遺伝子型が慢性疾患というよりは急性疾患の患者におけるIL-6感受性に影響を与えるかどうかを決定するために、本発明者らは、新たに決定されたSNP遺伝子型決定と併せて急性冠症候群のために入院した患者の臨床研究において以前に収集したデータを分析した。
【0061】
TMPRSS6 rs855791 SNPマイナー対立遺伝子(A)対してホモ接合性である対象の死亡率は、IL-6の変動と相関しなかった(
図4A)。しかしながら、メジャー対立遺伝子(G)の1つ又は2つのコピーは、心筋梗塞後の対象において上昇したIL-6レベルに応答して、全原因死亡率を高めた(
図4B)。したがって、TMPRSS6は、心筋梗塞後のIL-6媒介性の死亡リスクを調節した。
【0062】
IL-6介在性の心不全リスクにおけるTMPRSS6遺伝子型の効果もまたアセスメントした。マイナー対立遺伝子(A)に対してホモ接合性である対象における心不全は、IL-6の変動と相関しなかった(
図5A)。しかしながら、TMPRSS6のG対立遺伝子は、心筋梗塞後の対象におけるIL-6レベルの上昇に応答してより高い心不全率を与えた(
図5B)。したがって、TMPRSS6は、心筋梗塞後のIL-6媒介性の心不全リスクを調節した。
【0063】
実施例2からのデータは、TMPRSS6遺伝子型、IL-6レベル、及び有害な臨床転帰の間の相関が、慢性腎疾患を有する患者に限定されないことを実証する。理論に縛られるつもりはないが、TMPRSS6メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者において、血清IL-6の増加はヘプシジン発現を増加させ、その結果、心筋細胞における鉄分の隔離が増加し、続いて鉄分を媒介する細胞毒性をもたらす。これらの相関は、IL-6レベル又はIL-6シグナル伝達の減少が、急性冠症候群患者であるが、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有するそれらの患者においてのみ、心不全及び死亡率を減少させることができる可能性を高め、IL-6の血清レベルが上昇しているそれらの患者において最大の効果をもたらした。
【0064】
実施例1及び2において観察された相関関係は、IL-6媒介性のシグナル伝達の減少が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有し、IL-6レベルが上昇し、及び貧血又はヘプシジン媒介性の細胞毒性を有する患者において臨床的恩恵を与えるべきであることを強く示唆するが、観察された相関は、因果関係を証明するには不十分である。したがって、実施例3において、ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞心筋細胞は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子又はマイナー対立遺伝子のみを発現するように遺伝子操作され、インビトロで試験された。
【0065】
ヘプシジン発現は、BMP6/SMADとIL-6/STATシグナル伝達経路の両方によって調節され、BMPとIL-6の両方は、それらの各受容体を介して作用して、増加したヘプシジン発現を促進する。Casanovasら、PLOS Comp. Biol. 10(1):e1003421 (2014)。メジャー対立遺伝子及びマイナー対立遺伝子のiPS心筋細胞は、IL-6レベル(又はシグナル伝達)が減少する臨床的介入をモデル化するために、両方のシグナル伝達経路のアゴニストである組換えBMP2及びIL-6を用いて、又はBMP2単独で用いてインビボで処理された。対照iPS細胞はいずれのアゴニストでも処置されなかった。細胞死亡率は、正常酸素圧(正常酸素)下で、また低酸素状態をシミュレートした後、再酸素化(再灌流)の条件下で測定された。
【0066】
図6Aは、正常酸素レベルで細胞を処理した場合の結果を示す。TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子(「736Vマイナー対立遺伝子」)のみを発現するiPS心筋細胞は、IL-6シグナル伝達の排除によって有意には影響を受けない(「n.s.」)。トリパンブルー陽性細胞の割合として測定された細胞死亡率は、BMP2+IL-6による処置と比較して、BMP2単独で細胞を処置した場合に有意には減少しない。対照的に、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を発現するiPS心筋細胞は、IL-6シグナル伝達が排除された場合、統計的に有意により低い細胞死を示す。
【0067】
図6Bは、細胞を低酸素に供し、続いて再酸素化に供した場合の結果を示す。正常酸素条件下と比較して、低酸素/再酸素化はiPS心筋細胞に対して毒性であり、メジャー対立遺伝子及びマイナー対立遺伝子の対照細胞の約40パーセントが死滅し、これに対して、対照細胞の約20%が正常酸素条件下で死滅した(
図6Aと比較されたい)。このバックグラウンド毒性の増加に対して、マイナー対立遺伝子のiPS心筋細胞は、IL-6シグナル伝達の排除によって有意に影響を受けない。細胞の死亡率は、BMP2+IL-6による処置と比較して、BMP2単独で細胞を処置した場合、有意に減少しない。対照的に、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を発現するiPS心筋細胞は、IL-6シグナル伝達が排除された場合、統計的に有意により低い細胞死を示す。
【0068】
これらのデータは、実施例1及び実施例2における臨床試験データの事後解析から導き出された推論を強化する。IL-6シグナル伝達の減少は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を発現する心筋細胞において、IL-6媒介性の毒性を減少するのに効果的あるが、マイナー対立遺伝子のみを発現する心筋細胞においては効果的ではない。理論に縛られるつもりはないが、メジャー対立遺伝子のiPS心筋細胞におけるIL-6誘導性の毒性の増加は、ヘプシジン発現におけるIL6媒介性の増加から生じ得、その結果、鉄分の細胞内での隔離が増加し、続いて鉄分を媒介した細胞毒性をもたらす。
【0069】
実施例1において分析されたMIMICK研究に登録された患者などの慢性腎疾患を有する患者は、多くの場合、全体的な死亡率の主な原因である心機能障害を発症する。原発性慢性腎疾患に続くこの二次的な心臓損傷は、心腎臓症候群4型(CRSタイプ4)と呼ばれる。実施例1及び3のデータによって示唆されるように、抗IL-6療法がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有するCRS4患者の治療として有効であるかどうかを直接試験するために、本発明者らは、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトと遺伝子型的に類似しているラットにおいてCRS4のモデルを使用した。
【0070】
4週間の処置後、処置群の両方、すなわち抗IL-6抗体で処置された群、及びACE阻害剤療法のケアの標準であるペリンドプリルで処置された群は、アイソタイプ対照群と比較して統計的に有意に増加した駆出率レベルを示した(
図8D)(p <0.001)。処置の第4週後に測定した抗IL-6群及びケアの標準群における類似の駆出率レベルは、抗IL-6療法がACE阻害剤と同等の有効性を有することを示した。
図9は、抗IL-6療法がまた、心収縮性の保持にACE阻害剤と同等に有効であることを示す。
図10A~10Cは、抗IL-6療法が心臓線維症を減少させるのに同等に有効であったことを実証している。
【0071】
これらのデータは、抗IL-6剤による治療が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトと遺伝子型的に類似する動物における心腎臓症候群のインビボモデルにおける心臓損傷を低減し、機能を回復させるのに有効であることを実証する。
【0072】
同様に、実施例2及び3のデータは、IL-6レベル又はIL-6シグナル伝達の減少が、急性冠症候群の患者であるが、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1コピーを有するそれらの患者において心不全及び死亡率を減少させることを示唆し、IL-6の血清レベルが上昇しているそれらの患者において最大の効果をもたらすことを示唆した。
【0073】
TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトと遺伝子型的に類似しているマウスにおける急性心筋梗塞後の抗IL-6療法の効果を決定するための研究を行った。
【0074】
図11A及び11Bは、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトと遺伝子型的に類似したマウスにおいて心筋梗塞が誘導されたインビボモデルからのデータを示す。対照群は療法を受けなかった。実験群は抗マウスIL-6抗体で処置された。
図11Aは、抗IL-6による処置が、対照と比較して駆出率の統計的に有意な改善をもたらすことを示す。
図11Bは、抗IL-6による治療が、対照と比較して心臓駆出率(cardiac fractional)の短縮として測定される収縮性において統計的に有意な改善をもたらすことを示す。これらのデータは、心筋梗塞の直後に与えられた抗IL-6療法が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を有するヒト患者と遺伝子型的に類似しているげっ歯類における左心室の機能回復を改善することを実証する。
【0075】
まとめると、実験データは、IL-6シグナル伝達を減少させる治療的介入が、貧血又はヘプシジン媒介性の細胞毒性などのヘプシジン媒介性障害を有する患者であるが、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有するそれらの患者においてのみ臨床的恩恵をもたらし、IL-6のレベルが上昇している患者において最大の効果をもたらすことを実証する。
【0076】
したがって、以下にさらに記載するように、第1の態様において、ヘプシジン媒介障害を治療するための方法が提供される。本方法は、TMPRSS6 rs855791 SNPでメジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有すると決定されたヘプシジン媒介性障害を有する患者に治療有効量のIL-6アンタゴニストを投与することを含む。第2の態様において、ヘプシジン媒介性障害の治療を改善するための方法が提供され、本方法は、ヘプシジン媒介性障害を有する患者にIL-6アンタゴニストの投与を中止することを含み、ここで、患者は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であると決定されている。効果のない療法を中止し、それにより副作用を減少させ、治療有効性を失うことなく費用を削減することによって、治療は改善される。さらなる態様において、慢性炎症性の貧血を伴わない患者におけるIL-6媒介性炎症性障害を治療するための方法が提供され、本方法は、IL-6媒介性炎症性障害を有し、貧血を有しない患者に治療有効量のIL-6アンタゴニストを投与することを含み、対象は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが決定されている。
【0077】
5.2. 定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用するとき、以下の用語は、以下のそれらに帰属される意味を有する。
【0078】
「ヘプシジン」とは、NCBIアクセッション番号NP_066998(「ヘプシジンプレタンパク質」)で提供されるアミノ酸配列と少なくとも約85%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチド又はその生物学的に活性な断片を意味する。例示的なヘプシジン生物学的活性には、鉄分輸送チャネルフェロポーチンの結合及びそのレベルの減少、鉄分運搬の阻害、腸鉄分吸収の阻害、並びにマクロファージ及び肝臓からの鉄分放出の阻害が含まれる。例示的なペプシジンプレタンパク質のアミノ酸配列を以下に提供する:
【0079】
1 MALSSQIWAA CLLLLLLLAS LTSGSVFPQQ TGQLAELQPQ DRAGARASWM PMFQRRRRRD
61 THFPICIFCC GCCHRSKCGM CCKT (配列番号1)
【0080】
上記の配列に関して、ヘプシジンは、プレプロホルモン(アミノ酸25~84)、プロホルモン(アミノ酸25~84)、及びヘプシジン-25(アミノ酸60~84)と呼ばれる成熟形態、ヘプシジン-22(アミノ酸63~84)、及びヘプシジン-20(アミノ酸65~84)を含む、様々な形態で存在する。
【0081】
「ヘプシジン媒介性障害」は、ヘプシジン発現が障害の病因又はその症状のいずれかに寄与する任意の障害である。病因に対するヘプシジンの寄与は、公知であり得、疑われ得、又はIL-6アンタゴニストの投与が、TMPRSS6 rs855791 SNPマイナー対立遺伝子に対してホモ接合性である障害を有する患者と比較して、TMPRSS6 rs855791 SNPメジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する障害を有する患者において、より大きな治療的恩恵を提供するという観察から推測され得る。ヘプシジン介在性障害は、以下のセクション5.2.1でさらに記載される。
【0082】
「膜貫通プロテアーゼセリン6(TMPRSS6)ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_001275929で提供されるアミノ酸配列と少なくとも約85%以上のアミノ酸同一性を有し、セリンプロテイナーゼ活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。TMPRSS6ポリペプチドは、マトリプターゼ-2(MT2)としても知られ、ヘモジュエリンを切断し、骨形成タンパク質のシグナル伝達を阻害する。736位にアラニン(736A)を有する例示的なTMPRSS6アミノ酸配列を以下に提供する:
【0083】
1 MPVAEAPQVA GGQGDGGDGE EAEPEGMFKA CEDSKRKARG YLRLVPLFVL LALLVLASAG
61 VLLWYFLGYK AEVMVSQVYS GSLRVLNRHF SQDLTRRESS AFRSETAKAQ KMLKELITST
121 RLGTYYNSSS VYSFGEGPLT CFFWFILQIP EHRRLMLSPE VVQALLVEEL LSTVNSSAAV
181 PYRAEYEVDP EGLVILEASV KDIAALNSTL GCYRYSYVGQ GQVLRLKGPD HLASSCLWHL
241 QGPKDLMLKL RLEWTLAECR DRLAMYDVAG PLEKRLITSV YGCSRQEPVV EVLASGAIMA
301 VVWKKGLHSY YDPFVLSVQP VVFQACEVNL TLDNRLDSQG VLSTPYFPSY YSPQTHCSWH
361 LTVPSLDYGL ALWFDAYALR RQKYDLPCTQ GQWTIQNRRL CGLRILQPYA ERIPVVATAG
421 ITINFTSQIS LTGPGVRVHY GLYNQSDPCP GEFLCSVNGL CVPACDGVKD CPNGLDERNC
481 VCRATFQCKE DSTCISLPKV CDGQPDCLNG SDEEQCQEGV PCGTFTFQCE DRSCVKKPNP
541 QCDGRPDCRD GSDEEHCDCG LQGPSSRIVG GAVSSEGEWP WQASLQVRGR HICGGALIAD
601 RWVITAAHCF QEDSMASTVL WTVFLGKVWQ NSRWPGEVSF KVSRLLLHPY HEEDSHDYDV
661 ALLQLDHPVV RSAAVRPVCL PARSHFFEPG LHCWITGWGA LREGALRADA VALFYGWRNQ
721 GSETCCCPIS NALQKADVQL IPQDLCSEVY RYQVTPRMLC AGYRKGKKDA CQGDSGGPLV
781 CKALSGRWFL AGLVSWGLGC GRPNYFGVYT RITGVISWIQ QVVT (配列番号2)
【0084】
736位にバリン(736V)を有する例示的なTMPRSS6アミノ酸配列を以下に提供する:
1 MPVAEAPQVA GGQGDGGDGE EAEPEGMFKA CEDSKRKARG YLRLVPLFVL LALLVLASAG
61 VLLWYFLGYK AEVMVSQVYS GSLRVLNRHF SQDLTRRESS AFRSETAKAQ KMLKELITST
121 RLGTYYNSSS VYSFGEGPLT CFFWFILQIP EHRRLMLSPE VVQALLVEEL LSTVNSSAAV
181 PYRAEYEVDP EGLVILEASV KDIAALNSTL GCYRYSYVGQ GQVLRLKGPD HLASSCLWHL
24 QGPKDLMLKL RLEWTLAECR DRLAMYDVAG PLEKRLITSV YGCSRQEPVV EVLASGAIMA
30 VVWKKGLHSY YDPFVLSVQP VVFQACEVNL TLDNRLDSQG VLSTPYFPSY YSPQTHCSWH
36 LTVPSLDYGL ALWFDAYALR RQKYDLPCTQ GQWTIQNRRL CGLRILQPYA ERIPVVATAG
42 ITINFTSQIS LTGPGVRVHY GLYNQSDPCP GEFLCSVNGL CVPACDGVKD CPNGLDERNC
48 VCRATFQCKE DSTCISLPKV CDGQPDCLNG SDEEQCQEGV PCGTFTFQCE DRSCVKKPNP
54 QCDGRPDCRD GSDEEHCDCG LQGPSSRIVG GAVSSEGEWP WQASLQVRGR HICGGALIAD
60 RWVITAAHCF QEDSMASTVL WTVFLGKVWQ NSRWPGEVSF KVSRLLLHPY HEEDSHDYDV
66 ALLQLDHPVV RSAAVRPVCL PARSHFFEPG LHCWITGWGA LREGALRADA VALFYGWRNQ
72 GSETCCCPIS NALQKVDVQL IPQDLCSEVY RYQVTPRMLC AGYRKGKKDA CQGDSGGPLV
78 CKALSGRWFL AGLVSWGLGC GRPNYFGVYT RITGVISWIQ QVVT (配列番号3)
【0085】
「TMPRSS6核酸分子」とは、TMPRSS6ポリペプチド(マトリプターゼ-2、MT2)をコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なTMPRSS6核酸分子配列は、NCBIアクセッション番号NM_001289000に提供される。ヌクレオチド2321位にGを有するTMPRSS6核酸配列(「G対立遺伝子」、「メジャー対立遺伝子」)を以下に提供する:
【0086】
1 GGACAAACAG AGGCTCCTGA GGCCTGTGTG CAGGCCCGGC ACCTATCTGC CGCTCCCAAA
61 GGATGCCCGT GGCCGAGGCC CCCCAGGTGG CTGGCGGGCA GGGGGACGGA GGTGATGGCG
121 AGGAAGCGGA GCCGGAGGGG ATGTTCAAGG CCTGTGAGGA CTCCAAGAGA AAAGCCCGGG
181 GCTACCTCCG CCTGGTGCCC CTGTTTGTGC TGCTGGCCCT GCTCGTGCTG GCTTCGGCGG
241 GGGTGCTACT CTGGTATTTC CTAGGGTACA AGGCGGAGGT GATGGTCAGC CAGGTGTACT
301 CAGGCAGTCT GCGTGTACTC AATCGCCACT TCTCCCAGGA TCTTACCCGC CGGGAATCTA
361 GTGCCTTCCG CAGTGAAACC GCCAAAGCCC AGAAGATGCT CAAGGAGCTC ATCACCAGCA
421 CCCGCCTGGG AACTTACTAC AACTCCAGCT CCGTCTATTC CTTTGGGGAG GGACCCCTCA
481 CCTGCTTCTT CTGGTTCATT CTCCAAATCC CCGAGCACCG CCGGCTGATG CTGAGCCCCG
541 AGGTGGTGCA GGCACTGCTG GTGGAGGAGC TGCTGTCCAC AGTCAACAGC TCGGCTGCCG
601 TCCCCTACAG GGCCGAGTAC GAAGTGGACC CCGAGGGCCT AGTGATCCTG GAAGCCAGTG
661 TGAAAGACAT AGCTGCATTG AATTCCACGC TGGGTTGTTA CCGCTACAGC TACGTGGGCC
721 AGGGCCAGGT CCTCCGGCTG AAGGGGCCTG ACCACCTGGC CTCCAGCTGC CTGTGGCACC
781 TGCAGGGCCC CAAGGACCTC ATGCTCAAAC TCCGGCTGGA GTGGACGCTG GCAGAGTGCC
841 GGGACCGACT GGCCATGTAT GACGTGGCCG GGCCCCTGGA GAAGAGGCTC ATCACCTCGG
901 TGTACGGCTG CAGCCGCCAG GAGCCCGTGG TGGAGGTTCT GGCGTCGGGG GCCATCATGG
961 CGGTCGTCTG GAAGAAGGGC CTGCACAGCT ACTACGACCC CTTCGTGCTC TCCGTGCAGC
1021 CGGTGGTCTT CCAGGCCTGT GAAGTGAACC TGACGCTGGA CAACAGGCTC GACTCCCAGG
1081 GCGTCCTCAG CACCCCGTAC TTCCCCAGCT ACTACTCGCC CCAAACCCAC TGCTCCTGGC
1141 ACCTCACGGT GCCCTCTCTG GACTACGGCT TGGCCCTCTG GTTTGATGCC TATGCACTGA
1201 GGAGGCAGAA GTATGATTTG CCGTGCACCC AGGGCCAGTG GACGATCCAG AACAGGAGGC
1261 TGTGTGGCTT GCGCATCCTG CAGCCCTACG CCGAGAGGAT CCCCGTGGTG GCCACGGCCG
1321 GGATCACCAT CAACTTCACC TCCCAGATCT CCCTCACCGG GCCCGGTGTG CGGGTGCACT
1381 ATGGCTTGTA CAACCAGTCG GACCCCTGCC CTGGAGAGTT CCTCTGTTCT GTGAATGGAC
1441 TCTGTGTCCC TGCCTGTGAT GGGGTCAAGG ACTGCCCCAA CGGCCTGGAT GAGAGAAACT
1501 GCGTTTGCAG AGCCACATTC CAGTGCAAAG AGGACAGCAC ATGCATCTCA CTGCCCAAGG
1561 TCTGTGATGG GCAGCCTGAT TGTCTCAACG GCAGCGACGA AGAGCAGTGC CAGGAAGGGG
1621 TGCCATGTGG GACATTCACC TTCCAGTGTG AGGACCGGAG CTGCGTGAAG AAGCCCAACC
1681 CGCAGTGTGA TGGGCGGCCC GACTGCAGGG ACGGCTCGGA TGAGGAGCAC TGTGACTGTG
1741 GCCTCCAGGG CCCCTCCAGC CGCATTGTTG GTGGAGCTGT GTCCTCCGAG GGTGAGTGGC
1801 CATGGCAGGC CAGCCTCCAG GTTCGGGGTC GACACATCTG TGGGGGGGCC CTCATCGCTG
1861 ACCGCTGGGT GATAACAGCT GCCCACTGCT TCCAGGAGGA CAGCATGGCC TCCACGGTGC
1921 TGTGGACCGT GTTCCTGGGC AAGGTGTGGC AGAACTCGCG CTGGCCTGGA GAGGTGTCCT
1981 TCAAGGTGAG CCGCCTGCTC CTGCACCCGT ACCACGAAGA GGACAGCCAT GACTACGACG
2041 TGGCGCTGCT GCAGCTCGAC CACCCGGTGG TGCGCTCGGC CGCCGTGCGC CCCGTCTGCC
2101 TGCCCGCGCG CTCCCACTTC TTCGAGCCCG GCCTGCACTG CTGGATTACG GGCTGGGGCG
2161 CCTTGCGCGA GGGCGCCCTA CGGGCGGATG CTGTGGCCCT ATTTTATGGA TGGAGAAACC
2221 AAGGCTCAGA GACATGTTGC TGCCCCATCA GCAACGCTCT GCAGAAAGTG GATGTGCAGT
2281 TGATCCCACA GGACCTGTGC AGCGAGGTCT ATCGCTACCA GGTGACGCCA CGCATGCTGT
2341 GTGCCGGCTA CCGCAAGGGC AAGAAGGATG CCTGTCAGGG TGACTCAGGT GGTCCGCTGG
2401 TGTGCAAGGC ACTCAGTGGC CGCTGGTTCC TGGCGGGGCT GGTCAGCTGG GGCCTGGGCT
2461 GTGGCCGGCC TAACTACTTC GGCGTCTACA CCCGCATCAC AGGTGTGATC AGCTGGATCC
2521 AGCAAGTGGT GACCTGAGGA ACTGCCCCCC TGCAAAGCAG GGCCCACCTC CTGGACTCAG
2581 AGAGCCCAGG GCAACTGCCA AGCAGGGGGA CAAGTATTCT GGCGGGGGGT GGGGGAGAGA
2641 GCAGGCCCTG TGGTGGCAGG AGGTGGCATC TTGTCTCGTC CCTGATGTCT GCTCCAGTGA
2701 TGGCAGGAGG ATGGAGAAGT GCCAGCAGCT GGGGGTCAAG ACGTCCCCTG AGGACCCAGG
2761 CCCACACCCA GCCCTTCTGC CTCCCAATTC TCTCTCCTCC GTCCCCTTCC TCCACTGCTG
2821 CCTAATGCAA GGCAGTGGCT CAGCAGCAAG AATGCTGGTT CTACATCCCG AGGAGTGTCT
2881 GAGGTGCGCC CCACTCTGTA CAGAGGCTGT TTGGGCAGCC TTGCCTCCAG AGAGCAGATT
2941 CCAGCTTCGG AAGCCCCTGG TCTAACTTGG GATCTGGGAA TGGAAGGTGC TCCCATCGGA
3001 GGGGACCCTC AGAGCCCTGG AGACTGCCAG GTGGGCCTGC TGCCACTGTA AGCCAAAAGG
3061 TGGGGAAGTC CTGACTCCAG GGTCCTTGCC CCACCCCTGC CTGCCACCTG GGCCCTCACA
3121 GCCCAGACCC TCACTGGGAG GTGAGCTCAG CTGCCCTTTG GAATAAAGCT GCCTGATCCA
3181 AAAAAAAAAA AAAAAA (配列番号4)
【0087】
ヌクレオチド2321位にAを有するTMPRSS6核酸配列を以下に提供する:
1 GGACAAACAG AGGCTCCTGA GGCCTGTGTG CAGGCCCGGC ACCTATCTGC CGCTCCCAAA
61 GGATGCCCGT GGCCGAGGCC CCCCAGGTGG CTGGCGGGCA GGGGGACGGA GGTGATGGCG
121 AGGAAGCGGA GCCGGAGGGG ATGTTCAAGG CCTGTGAGGA CTCCAAGAGA AAAGCCCGGG
181 GCTACCTCCG CCTGGTGCCC CTGTTTGTGC TGCTGGCCCT GCTCGTGCTG GCTTCGGCGG
241 GGGTGCTACT CTGGTATTTC CTAGGGTACA AGGCGGAGGT GATGGTCAGC CAGGTGTACT
301 CAGGCAGTCT GCGTGTACTC AATCGCCACT TCTCCCAGGA TCTTACCCGC CGGGAATCTA
361 GTGCCTTCCG CAGTGAAACC GCCAAAGCCC AGAAGATGCT CAAGGAGCTC ATCACCAGCA
421 CCCGCCTGGG AACTTACTAC AACTCCAGCT CCGTCTATTC CTTTGGGGAG GGACCCCTCA
481 CCTGCTTCTT CTGGTTCATT CTCCAAATCC CCGAGCACCG CCGGCTGATG CTGAGCCCCG
541 AGGTGGTGCA GGCACTGCTG GTGGAGGAGC TGCTGTCCAC AGTCAACAGC TCGGCTGCCG
601 TCCCCTACAG GGCCGAGTAC GAAGTGGACC CCGAGGGCCT AGTGATCCTG GAAGCCAGTG
661 TGAAAGACAT AGCTGCATTG AATTCCACGC TGGGTTGTTA CCGCTACAGC TACGTGGGCC
721 AGGGCCAGGT CCTCCGGCTG AAGGGGCCTG ACCACCTGGC CTCCAGCTGC CTGTGGCACC
781 TGCAGGGCCC CAAGGACCTC ATGCTCAAAC TCCGGCTGGA GTGGACGCTG GCAGAGTGCC
841 GGGACCGACT GGCCATGTAT GACGTGGCCG GGCCCCTGGA GAAGAGGCTC ATCACCTCGG
901 TGTACGGCTG CAGCCGCCAG GAGCCCGTGG TGGAGGTTCT GGCGTCGGGG GCCATCATGG
961 CGGTCGTCTG GAAGAAGGGC CTGCACAGCT ACTACGACCC CTTCGTGCTC TCCGTGCAGC
1021 CGGTGGTCTT CCAGGCCTGT GAAGTGAACC TGACGCTGGA CAACAGGCTC GACTCCCAGG
1081 GCGTCCTCAG CACCCCGTAC TTCCCCAGCT ACTACTCGCC CCAAACCCAC TGCTCCTGGC
1141 ACCTCACGGT GCCCTCTCTG GACTACGGCT TGGCCCTCTG GTTTGATGCC TATGCACTGA
1201 GGAGGCAGAA GTATGATTTG CCGTGCACCC AGGGCCAGTG GACGATCCAG AACAGGAGGC
1261 TGTGTGGCTT GCGCATCCTG CAGCCCTACG CCGAGAGGAT CCCCGTGGTG GCCACGGCCG
1321 GGATCACCAT CAACTTCACC TCCCAGATCT CCCTCACCGG GCCCGGTGTG CGGGTGCACT
1381 ATGGCTTGTA CAACCAGTCG GACCCCTGCC CTGGAGAGTT CCTCTGTTCT GTGAATGGAC
1441 TCTGTGTCCC TGCCTGTGAT GGGGTCAAGG ACTGCCCCAA CGGCCTGGAT GAGAGAAACT
1501 GCGTTTGCAG AGCCACATTC CAGTGCAAAG AGGACAGCAC ATGCATCTCA CTGCCCAAGG
1561 TCTGTGATGG GCAGCCTGAT TGTCTCAACG GCAGCGACGA AGAGCAGTGC CAGGAAGGGG
1621 TGCCATGTGG GACATTCACC TTCCAGTGTG AGGACCGGAG CTGCGTGAAG AAGCCCAACC
1681 CGCAGTGTGA TGGGCGGCCC GACTGCAGGG ACGGCTCGGA TGAGGAGCAC TGTGACTGTG
1741 GCCTCCAGGG CCCCTCCAGC CGCATTGTTG GTGGAGCTGT GTCCTCCGAG GGTGAGTGGC
1801 CATGGCAGGC CAGCCTCCAG GTTCGGGGTC GACACATCTG TGGGGGGGCC CTCATCGCTG
1861 ACCGCTGGGT GATAACAGCT GCCCACTGCT TCCAGGAGGA CAGCATGGCC TCCACGGTGC
1921 TGTGGACCGT GTTCCTGGGC AAGGTGTGGC AGAACTCGCG CTGGCCTGGA GAGGTGTCCT
1981 TCAAGGTGAG CCGCCTGCTC CTGCACCCGT ACCACGAAGA GGACAGCCAT GACTACGACG
2041 TGGCGCTGCT GCAGCTCGAC CACCCGGTGG TGCGCTCGGC CGCCGTGCGC CCCGTCTGCC
2101 TGCCCGCGCG CTCCCACTTC TTCGAGCCCG GCCTGCACTG CTGGATTACG GGCTGGGGCG
2161 CCTTGCGCGA GGGCGCCCTA CGGGCGGATG CTGTGGCCCT ATTTTATGGA TGGAGAAACC
2221 AAGGCTCAGA GACATGTTGC TGCCCCATCA GCAACGCTCT GCAGAAAGTG GATGTGCAGT
2281 TGATCCCACA GGACCTGTGC AGCGAGGTCT ATCGCTACCA AGTGACGCCA CGCATGCTGT
2341 GTGCCGGCTA CCGCAAGGGC AAGAAGGATG CCTGTCAGGG TGACTCAGGT GGTCCGCTGG
2401 TGTGCAAGGC ACTCAGTGGC CGCTGGTTCC TGGCGGGGCT GGTCAGCTGG GGCCTGGGCT
2461 GTGGCCGGCC TAACTACTTC GGCGTCTACA CCCGCATCAC AGGTGTGATC AGCTGGATCC
2521 AGCAAGTGGT GACCTGAGGA ACTGCCCCCC TGCAAAGCAG GGCCCACCTC CTGGACTCAG
2581 AGAGCCCAGG GCAACTGCCA AGCAGGGGGA CAAGTATTCT GGCGGGGGGT GGGGGAGAGA
2641 GCAGGCCCTG TGGTGGCAGG AGGTGGCATC TTGTCTCGTC CCTGATGTCT GCTCCAGTGA
2701 TGGCAGGAGG ATGGAGAAGT GCCAGCAGCT GGGGGTCAAG ACGTCCCCTG AGGACCCAGG
2761 CCCACACCCA GCCCTTCTGC CTCCCAATTC TCTCTCCTCC GTCCCCTTCC TCCACTGCTG
2821 CCTAATGCAA GGCAGTGGCT CAGCAGCAAG AATGCTGGTT CTACATCCCG AGGAGTGTCT
2881 GAGGTGCGCC CCACTCTGTA CAGAGGCTGT TTGGGCAGCC TTGCCTCCAG AGAGCAGATT
2941 CCAGCTTCGG AAGCCCCTGG TCTAACTTGG GATCTGGGAA TGGAAGGTGC TCCCATCGGA
3001 GGGGACCCTC AGAGCCCTGG AGACTGCCAG GTGGGCCTGC TGCCACTGTA AGCCAAAAGG
3061 TGGGGAAGTC CTGACTCCAG GGTCCTTGCC CCACCCCTGC CTGCCACCTG GGCCCTCACA
3121 GCCCAGACCC TCACTGGGAG GTGAGCTCAG CTGCCCTTTG GAATAAAGCT GCCTGATCCA
3181 AAAAAAAAAA AAAAAA (配列番号5)
【0088】
「変異体」とは、1つ以上のヌクレオチド又は1つ以上のアミノ酸によって参照配列と異なるポリヌクレオチド又はポリペプチド配列を意味する。例示的なTMPRSS6変異体は、SNP rs855791(G→A)から生じるTMPRSS6(A736V)である。
【0089】
「一塩基多型」又は「SNP」とは、ゲノム中の一塩基が生物種のメンバー間又は個体における対になった染色体間で異なる、天然に存在するDNA配列変異体を意味する。SNPは、変異対立遺伝子の遺伝マーカーとして使用することができる。一実施形態において、TMPRSS6 SNPはrs855791である。
【0090】
「rs855791」とは、TMPRSS6遺伝子によってコードされる、マトリプターゼ-2(MT2)の触媒ドメインにおいて、アラニンからバリンへの置換(A736V)をもたらす、ヒトTMPRSS6遺伝子、2321G→Aの一塩基多型(SNP)を意味する。ヒト集団において最高の頻度を有する対立遺伝子(メジャー対立遺伝子)は2321Gであり、736Aをコードする。ヒト集団において最低の頻度を有する対立遺伝子(マイナー対立遺伝子)は2321Aであり、736Vをコードする。
【0091】
「ヘテロ接合」とは、染色体座が2つの異なる対立遺伝子を有することを意味する。本明細書に記載される方法の一実施形態において、ヘテロ接合は、1つの対立遺伝子が、アミノ酸736位にアラニンを有するTMPRSS6ポリペプチドをコードするTMPRSS6核酸配列(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)(rs855791メジャー対立遺伝子)を有し、他方の対立遺伝子が、アミノ酸736位にバリンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする変異体TMPRSS6核酸配列(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にA又はTを有する)(rs855791マイナーアレル)を含む、遺伝子型を指す。
【0092】
「ホモ接合」とは、染色体座が2つの同一の対立遺伝子を有することを意味する。本明細書に記載される方法のある種の実施形態において、ホモ接合は、両方の対立遺伝子が、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードするTMPRSS6核酸配列(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)(rs855791ホモ接合メジャー対立遺伝子)を有する遺伝子型を指す。いくつかの実施形態において、ホモ接合は、両方の対立遺伝子が、アミノ酸736位にバリンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードするTMPRSS6核酸配列(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にA又はTを有する)(rs855791ホモ接合マイナー対立遺伝子)を有する遺伝子型を指す。
【0093】
「患者がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定すること」には、限定されないが、患者がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定するアッセイを実施すること、患者がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定するためのアッセイを指示すること、患者がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定するためのアッセイを処方すること、そうでなければ、患者がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定するためのアッセイを実施することを指示又は制御すること、及び患者がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つの1コピーを有することを決定するために、TMRSS6遺伝子型アッセイデータ又はタンパク質若しくは核酸配列データを検討することが含まれる。
【0094】
「インターロイキン6(IL-6)」又は「IL-6ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_000591で提供されるアミノ酸配列と少なくとも約85%以上のアミノ酸同一性を有し、IL-6生物学的活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。IL-6は、複数の生物学的機能を有する共面性サイトカインである。例示的なIL-6の生物学的活性としては、免疫刺激性及び炎症誘発性活性が挙げられる。例示的なIL-6アミノ酸配列を以下に提供する:
【0095】
1 MCVGARRLGR GPCAALLLLG LGLSTVTGLH CVGDTYPSND RCCHECRPGN GMVSRCSRSQ
61 NTVCRPCGPG FYNDVVSSKP CKPCTWCNLR SGSERKQLCT ATQDTVCRCR AGTQPLDSYK
121 PGVDCAPCPP GHFSPGDNQA CKPWTNCTLA GKHTLQPASN SSDAICEDRD PPATQPQETQ
181 GPPARPITVQ PTEAWPRTSQ GPSTRPVEVP GGRAVAAILG LGLVLGLLGP LAILLALYLL
241 RRDQRLPPDA HKPPGGGSFR TPIQEEQADA HSTLAKI (配列番号6)
【0096】
「インターロイキン6(IL-6)核酸」とは、インターロイキン6(IL-6)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。例示的なインターロイキン6(IL-6)核酸配列は、NCBIアクセッション番号NM_000600で提供される。NCBIアクセッション番号NM_000600における例示的な配列を以下に提供する:
【0097】
1 AATATTAGAG TCTCAACCCC CAATAAATAT AGGACTGGAG ATGTCTGAGG CTCATTCTGC
61 CCTCGAGCCC ACCGGGAACG AAAGAGAAGC TCTATCTCCC CTCCAGGAGC CCAGCTATGA
121 ACTCCTTCTC CACAAGCGCC TTCGGTCCAG TTGCCTTCTC CCTGGGGCTG CTCCTGGTGT
181 TGCCTGCTGC CTTCCCTGCC CCAGTACCCC CAGGAGAAGA TTCCAAAGAT GTAGCCGCCC
241 CACACAGACA GCCACTCACC TCTTCAGAAC GAATTGACAA ACAAATTCGG TACATCCTCG
301 ACGGCATCTC AGCCCTGAGA AAGGAGACAT GTAACAAGAG TAACATGTGT GAAAGCAGCA
361 AAGAGGCACT GGCAGAAAAC AACCTGAACC TTCCAAAGAT GGCTGAAAAA GATGGATGCT
421 TCCAATCTGG ATTCAATGAG GAGACTTGCC TGGTGAAAAT CATCACTGGT CTTTTGGAGT
481 TTGAGGTATA CCTAGAGTAC CTCCAGAACA GATTTGAGAG TAGTGAGGAA CAAGCCAGAG
541 CTGTGCAGAT GAGTACAAAA GTCCTGATCC AGTTCCTGCA GAAAAAGGCA AAGAATCTAG
601 ATGCAATAAC CACCCCTGAC CCAACCACAA ATGCCAGCCT GCTGACGAAG CTGCAGGCAC
661 AGAACCAGTG GCTGCAGGAC ATGACAACTC ATCTCATTCT GCGCAGCTTT AAGGAGTTCC
721 TGCAGTCCAG CCTGAGGGCT CTTCGGCAAA TGTAGCATGG GCACCTCAGA TTGTTGTTGT
781 TAATGGGCAT TCCTTCTTCT GGTCAGAAAC CTGTCCACTG GGCACAGAAC TTATGTTGTT
841 CTCTATGGAG AACTAAAAGT ATGAGCGTTA GGACACTATT TTAATTATTT TTAATTTATT
901 AATATTTAAA TATGTGAAGC TGAGTTAATT TATGTAAGTC ATATTTATAT TTTTAAGAAG
961 TACCACTTGA AACATTTTAT GTATTAGTTT TGAAATAATA ATGGAAAGTG GCTATGCAGT
1021 TTGAATATCC TTTGTTTCAG AGCCAGATCA TTTCTTGGAA AGTGTAGGCT TACCTCAAAT
1081 AAATGGCTAA CTTATACATA TTTTTAAAGA AATATTTATA TTGTATTTAT ATAATGTATA
1141 AATGGTTTTT ATACCAATAA ATGGCATTTT AAAAAATTCA GCAAAAAAAA AAAAAAAAAA
1201 A (配列番号7)
【0098】
「インターロイキン6受容体(IL-6R)複合体」とは、IL-6受容体サブユニットアルファ (IL-6Rα)、及びインターロイキン6受容体サブユニットβ(IL-6Rβ)とも呼ばれるインターロイキン6シグナルトランスデューサー糖タンパク質130を含む、タンパク質複合体を意味する。
【0099】
「インターロイキン6受容体サブユニットα(IL-6Rα)ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_000556又はNP_852004で提供されるアミノ酸配列と少なくとも約85%以上のアミノ酸同一性を有し、IL-6受容体の生物学的活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。例示的なIL-6Rα生物学的活性は、IL-6への結合、糖タンパク質130(gp130)への結合、並びに細胞増殖及び分化の調節を含む。例示的なIL-6R配列を以下に提供する:
【0100】
1 MLAVGCALLA ALLAAPGAAL APRRCPAQEV ARGVLTSLPG DSVTLTCPGV EPEDNATVHW
61 VLRKPAAGSH PSRWAGMGRR LLLRSVQLHD SGNYSCYRAG RPAGTVHLLV DVPPEEPQLS
121 CFRKSPLSNV VCEWGPRSTP SLTTKAVLLV RKFQNSPAED FQEPCQYSQE SQKFSCQLAV
181 PEGDSSFYIV SMCVASSVGS KFSKTQTFQG CGILQPDPPA NITVTAVARN PRWLSVTWQD
241 PHSWNSSFYR LRFELRYRAE RSKTFTTWMV KDLQHHCVIH DAWSGLRHVV QLRAQEEFGQ
301 GEWSEWSPEA MGTPWTESRS PPAENEVSTP MQALTTNKDD DNILFRDSAN ATSLPVQDSS
361 SVPLPTFLVA GGSLAFGTLL CIAIVLRFKK TWKLRALKEG KTSMHPPYSL GQLVPERPRP
421 TPVLVPLISP PVSPSSLGSD NTSSHNRPDA RDPRSPYDIS NTDYFFPR (配列番号8)
【0101】
「インターロイキン6受容体サブユニットβ(IL-6Rβ)ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_002175、NP_786943、又はNP_001177910で提供されるアミノ酸配列と少なくとも約85%以上のアミノ酸同一性を有し、IL-6受容体の生物学的活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。例示的なIL-6Rβ生物学的活性は、IL-6Rαへの結合、IL-6受容体シグナル伝達活性、及び細胞増殖、分化、ヘプシジン発現などの調節を含む。例示的なIL-6Rβ配列を以下に提供する:
【0102】
1 MLTLQTWLVQ ALFIFLTTES TGELLDPCGY ISPESPVVQL HSNFTAVCVL KEKCMDYFHV
61 NANYIVWKTN HFTIPKEQYT IINRTASSVT FTDIASLNIQ LTCNILTFGQ LEQNVYGITI
121 ISGLPPEKPK NLSCIVNEGK KMRCEWDGGR ETHLETNFTL KSEWATHKFA DCKAKRDTPT
181 SCTVDYSTVY FVNIEVWVEA ENALGKVTSD HINFDPVYKV KPNPPHNLSV INSEELSSIL
241 KLTWTNPSIK SVIILKYNIQ YRTKDASTWS QIPPEDTAST RSSFTVQDLK PFTEYVFRIR
301 CMKEDGKGYW SDWSEEASGI TYEDRPSKAP SFWYKIDPSH TQGYRTVQLV WKTLPPFEAN
361 GKILDYEVTL TRWKSHLQNY TVNATKLTVN LTNDRYLATL TVRNLVGKSD AAVLTIPACD
421 FQATHPVMDL KAFPKDNMLW VEWTTPRESV KKYILEWCVL SDKAPCITDW QQEDGTVHRT
481 YLRGNLAESK CYLITVTPVY ADGPGSPESI KAYLKQAPPS KGPTVRTKKV GKNEAVLEWD
541 QLPVDVQNGF IRNYTIFYRT IIGNETAVNV DSSHTEYTLS SLTSDTLYMV RMAAYTDEGG
601 KDGPEFTFTT PKFAQGEIEA IVVPVCLAFL LTTLLGVLFC FNKRDLIKKH IWPNVPDPSK
661 SHIAQWSPHT PPRHNFNSKD QMYSDGNFTD VSVVEIEAND KKPFPEDLKS LDLFKKEKIN
721 TEGHSSGIGG SSCMSSSRPS ISSSDENESS QNTSSTVQYS TVVHSGYRHQ VPSVQVFSRS
781 ESTQPLLDSE ERPEDLQLVD HVDGGDGILP RQQYFKQNCS QHESSPDISH FERSKQVSSV
841 NEEDFVRLKQ QISDHISQSC GSGQMKMFQE VSAADAFGPG TEGQVERFET VGMEAATDEG
901 MPKSYLPQTV RQGGYMPQ (配列番号9)
【0103】
「IL-6アンタゴニスト」とは、IL-6の生物学的活性を低下させることができる薬剤を意する。IL-6アンタゴニストは、血清中のIL-6ポリペプチドのレベルを低下させる薬剤;IL-6ポリペプチド又は核酸の発現を減少させる薬剤、IL-6Rに結合するIL-6の能力を低下させる薬剤、IL-6Rの発現を減少させる薬剤、及びIL-6に結合した場合にIL-6R受容体によるシグナル伝達を低下させる薬剤を含む。好ましい実施形態において、IL-6アンタゴニストは、IL-6の生物学的活性を少なくとも約10%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、又はさらには100%低下させる。以下のセクション5.7においてさらに記載されるように、IL-6アンタゴニストには、IL-6結合ポリペプチド、例えば抗IL-6抗体及びその抗原結合断片又は誘導体;IL-6R結合ポリペプチド、例えば抗IL-6R抗体及びその抗原結合断片又は誘導体;並びに合成化学分子、例えばJAK1及びJAK3阻害剤が含まれる。
【0104】
「IL-6抗体」又は「抗IL-6抗体」とは、IL-6に特異的に結合する抗体を意味する。抗IL-6抗体には、IL-6に特異的なモノクローナル及びポリクローナル抗体、並びにその抗原結合断片又は誘導体が含まれる。IL-6抗体は、以下のセクション5.7.1においてより詳細に記載される。
【0105】
「IL-6媒介性炎症性障害」とは、IL-6が疾患の病因又はその症状のいずれかに寄与することが知られている又は疑われる任意の障害を意味する。
【0106】
「エリスロポエチン(EPO)」とは、NCBIアクセッション番号NP_000790で提供されるアミノ酸配列と少なくとも約85%以上のアミノ酸同一性を有し、EPO生物学的活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。例示的なEPO生物学的活性は、エリスロポエチン受容体への結合、及び結果としての赤血球前駆細胞の増殖及び最終分化及び/又は赤血球新生(赤血球産生)の増加を含む。例示的なEPOアミノ酸配列を以下に提供する:
【0107】
1 MGVHECPAWL WLLLSLLSLP LGLPVLGAPP RLICDSRVLE RYLLEAKEAE NITTGCAEHC
61 SLNENITVPD TKVNFYAWKR MEVGQQAVEV WQGLALLSEA VLRGQALLVN SSQPWEPLQL
121 HVDKAVSGLR SLTTLLRALG AQKEAISPPD AASAAPLRTI TADTFRKLFR VYSNFLRGKL
181 KLYTGEACRT GDR (配列番号10)
【0108】
「赤血球新生刺激剤(ESA)」とは、赤血球新生を刺激する薬剤を意味する。ESAには、限定されないが、EPO、ダルベポエチン(Aranesp)、エポエチンベータ(NeoRecormon)、エポエチンデルタ(Dynepo)、エポエチンオメガ(Epomax)、エポエチンゼータが含まれる。
【0109】
「赤血球新生因子」とは、赤血球若しくはその前駆細胞(例えば、造血幹細胞)の成長若しくは増殖を増加させ、及び/又は赤血球若しくはその前駆細胞における細胞死を低下させる薬剤を意味する。様々な実施形態において、赤血球新生因子は、赤血球新生刺激剤、HIF安定剤、及び補助的な鉄分を含む。
【0110】
「C反応性タンパク質(CRP)ポリペプチド」とは、NCBIアクセッション番号NP_000558で提供されるアミノ酸配列と少なくとも約85%以上のアミノ酸同一性を有し、補体活性化活性を有するポリペプチド又はその断片を意味する。CRPレベルは、炎症に応答して上昇する。例示的なCRP配列を以下に提供する:
【0111】
1 MEKLLCFLVL TSLSHAFGQT DMSRKAFVFP KESDTSYVSL KAPLTKPLKA FTVCLHFYTE
61 LSSTRGYSIF SYATKRQDNE ILIFWSKDIG YSFTVGGSEI LFEVPEVTVA PVHICTSWES
121 ASGIVEFWVD GKPRVRKSLK KGYTVGAEAS IILGQEQDSF GGNFEGSQSL VGDIGNVNMW
181 DFVLSPDEIN TIYLGGPFSP NVLNWRALKY EVQGEVFTKP QLWP (配列番号11)
【0112】
「薬剤」とは、療法において投与するのに適した任意の化合物又は組成物を意味し、化学化合物、抗体又はその抗原結合断片を含むタンパク質、ペプチド;及び核酸分子を明示的に含む。
【0113】
「対象」とは、ヒト又は非ヒト哺乳動物を意味し、限定されないが、ウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、ネコ、並びにマウス及びラットなどのげっ歯類の対象が含まれる。「患者」はヒト対象である。
【0114】
本明細書で使用するとき、「治療する」、「治療すること」、「治療」などの用語は、障害及び/又はそれに関連する徴候若しくは症状の低減又は寛解、あるいはその進行の遅延若しくは停止を意味する。除外されないが、障害又は状態の治療は、それに関連する障害、状態又は症状が完全に排除されることを必要としないことは理解される。
【0115】
「処置前」とは、本明細書に記載の方法によるIL-6アンタゴニストの初回投与前を意味する。処置前は、IL-6アンタゴニスト以外の治療の事前投与を排除せず、しばしば含む。
【0116】
本開示において、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること」、「有すること」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、及びそれらの言語上の変形体は、米国特許法においてそれらに帰する意味を有し、明示的に列挙したものを超える追加の成分の存在を認める。
【0117】
「生物学的サンプル」とは、生物(例えば、ヒト対象)に由来する任意の組織、細胞、液体、又は他の物質を意味する。ある種の実施形態において、生物学的サンプルは血清又は血液である。
【0118】
「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤」とは、アンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換するアンジオテンシン変換酵素の生物学的機能を阻害する薬剤を意味する。ACE阻害剤には、限定されないが、キナプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、カプトプリル、ベナゼプリル、トランドラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル及びエナラプリルが含まれる。様々な実施形態において、ACE阻害剤はペリンドプリルである。
【0119】
5.1. 他の解釈慣習
他に特定しない限り、抗体定常領域の残基番号付けは、Kabatに示されるEU指数に従う。
【0120】
本明細書において提供される範囲は、列挙された終点を含む、範囲内のすべての値の省略形であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50からなる群から任意の数、数の組合せ、又は部分範囲を含むことが理解される。
【0121】
特に記述がなく又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用するとき、用語「又は」は、包括的であると理解される。特に記述がなく又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用するとき、「a」、「an」及び「the」という用語は、単数又は複数であると理解される。
【0122】
特に記述がなく又は他に文脈から明らかでない限り、本明細書で使用するとき、用語「約」は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差以内と理解される。約は、記述された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。他に文脈から明らかでない限り、本明細書において提供されるすべての数値は、約という用語によって修正される。
【0123】
5.2. ヘプシジン介在性障害を治療するための方法
第1の態様において、ヘプシジン媒介性障害を治療するための方法が提供される。
【0124】
本方法は、対象、典型的には、ヘプシジン媒介性障害を有するヒト患者に治療有効量のIL-6アンタゴニストを投与することを含み、ここで、対象は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが決定されている。第1の一連の実施形態において、対象は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが以前に決定されている。別の一連の実施形態において、本方法は、対象がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定する初期ステップをさらに含む。典型的には、本方法は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性である対象の治療を肯定的に排除する。典型的には、患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している。
【0125】
5.2.1. ヘプシジン媒介性障害
5.2.1.1. 慢性疾患/慢性炎症性の貧血
様々な実施形態において、本明細書に記載される方法によって治療されるヘプシジン媒介性障害は、慢性疾患の貧血であり、慢性炎症性の貧血としても知られている。
【0126】
様々な実施形態において、患者は男性であり、14g/dl未満の処置前ヘモグロビン(Hb)含量を有する。いくつかの実施形態において、男性患者は、13.0~13.9g/dl、12.0~12.9g/dl、11.0~11.9g/dl、10.0~10.9g/dl、又は10g/dl未満の処置前Hbレベルを有する。様々な実施形態において、患者は女性であり、12g/dl未満の治療理Hb含量を有する。いくつかの実施形態において、女性患者は、11.0~11.9g/dl、10.0~10.9g/dl、9.0~9.9g/dl、8.0~8.9g/dl、又は8g/dl未満の処置前Hbレベルを有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、事前に患者はESAで治療されている。いくつかの実施形態において、患者は鉄補給で治療されている。いくつかの実施形態において、患者は、血液又は濃縮赤血球の輸血で治療されている。
【0127】
様々な実施形態において、患者は男性であり、40%未満の処置前ヘマトクリットを有する。いくつかの実施形態において、男性患者は、39%未満、38%未満、37%未満、36%未満、又は35%未満の処置前ヘマトクリットを有する。ある種の実施形態において、男性患者は、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%又は30%の処置前ヘマトクリットを有する。様々な実施形態において、患者は女性であり、36%未満の処置前ヘマトクリットを有する。いくつかの実施形態において、女性患者は、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、又は26%未満の処置前ヘマトクリットを有する。ある種の実施形態において、女性患者は、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、又は26%の処置前ヘマトクリットを有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、患者はESAで治療されている。いくつかの実施形態において、患者は鉄補給で治療されている。いくつかの実施形態において、患者は、血液又は濃縮赤血球の輸血で治療されている。
【0128】
いくつかの実施形態において、患者はESAで治療され、正常な処置前Hb含量及び/又は正常な処置前ヘマトクリットを有する。ある種の実施態様において、患者は男性であり、少なくとも14g/dlの処置前ヘモグロビン(Hb)含量及び/又は少なくとも40%の処置前ヘマトクリットを有する。ある種の実施形態において、患者は女性であり、少なくとも12g/dlの処置前Hb含量及び/又は少なくとも36%のヘマトクリットを有する。特定の実施形態において、ESAはEPOである。特定の実施形態において、ESAはダルベポエチンアルファである。
【0129】
いくつかの実施形態において、患者は鉄補給で治療されていて、正常な処置前Hb含量及び/又は正常な処置前ヘマトクリットを有する。ある種の実施態様において、患者は男性であり、少なくとも14g/dlの処置前ヘモグロビン(Hb)含量及び/又は少なくとも40%の処置前ヘマトクリットを有する。ある種の実施形態において、患者は女性であり、少なくとも12g/dlの処置前Hb含量及び/又は少なくとも36%のヘマトクリットを有する。
【0130】
いくつかの実施形態において、患者は、全血又は濃縮赤血球の輸血で処置されていて、正常な処置前Hb含量及び/又は正常な処置前ヘマトクリットを有する。ある種の実施態様において、患者は男性であり、少なくとも14g/dlの処置前ヘモグロビン(Hb)含量及び/又は少なくとも40%の処置前ヘマトクリットを有する。ある種の実施形態において、患者は女性であり、少なくとも12g/dlの処置前Hb含量及び/又は少なくとも36%のヘマトクリットを有する。
【0131】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のHbレベルを処置前レベルを上回るように増加させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のヘマトクリットを処置前レベルを上回るように増加させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、Hbレベル及びヘマトクリットの両方を処置前レベルを上回るように増加させるのに十分な用量、スケジュール、及び十分な期間で投与される。
【0132】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者におけるHbレベルを処置前レベルを下回るように減少させることなく、患者のESA用量の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のヘマトクリットを処置前レベルを下回るように減少させることなく、患者のESA用量の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のHbレベル及びヘマトクリットを減少させることなく、患者のESA用量の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0133】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、処置前のESA用量と比較して、患者のESA用量において少なくとも10%の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。ある種の実施態様において、IL-6アンタゴニストは、処置前のESA用量と比較して、患者のESA用量において少なくとも20%、30%、40%又は50%の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。具体的な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、処置前のESA用量と比較して、患者のESA用量において少なくとも60%、又はさらに少なくとも75%の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0134】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、機能的鉄分欠乏を回復させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0135】
5.2.1.1.1. 慢性腎疾患
様々な実施形態において、慢性疾患は慢性腎疾患(CKD)である。
【0136】
いくつかの実施形態において、患者はKDOQIステージ1の慢性腎疾患を有する。ある種の実施形態において、患者は、KDOQIステージ2の慢性腎疾患、KDOQIステージ3の慢性腎疾患、KDOQIステージ4の慢性腎疾患、又はKDOQIステージ5の慢性腎疾患を有する。
【0137】
いくつかの実施形態において、患者は心腎臓症候群(CRS)を有する。ある種の実施形態において、患者はCRSタイプ4を有する。
【0138】
いくつかの実施形態において、患者は透析で治療されている。
【0139】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、年齢が合致し、疾患が合致した歴史的コホートと比較して、心血管(CV)死亡率を減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0140】
5.2.1.1.2. 慢性炎症性疾患
様々な実施形態において、慢性疾患は慢性炎症性疾患である。
【0141】
いくつかの実施形態において、慢性炎症性疾患は、関節リウマチ(RA)である。
【0142】
特定の実施形態において、患者は、5.1を超える処置前DAS28スコアを有する。いくつかの実施形態において、患者は3.2~5.1の処置前DAS28スコアを有する。いくつかの実施形態において、患者は、2.6未満の処置前DAS28スコアを有する。様々な実施形態において、患者の処置前RAは重度に活性である。いくつかの実施形態において、患者の処置前RAは中程度に活性である。
【0143】
ある種の実施形態において、患者はメトトレキセートで治療されている。いくつかの実施形態において、メトトレキセートは、IL-6アンタゴニストによる治療が開始されたときに中止される。いくつかの実施形態において、メトトレキサートによる治療は、IL-6アンタゴニストによる治療が開始されたときに継続される。
【0144】
ある種の実施形態において、患者は抗TNFα剤で治療されている。具体的な実施形態において、抗TNFα剤は、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブ、及びゴリムマブから選択される。具体的な実施形態において、抗TNFα剤は、IL-6アンタゴニストによる治療が開始された場合中止される。
【0145】
ある種の実施形態において、患者はIL-1受容体アンタゴニストで治療されている。特定の実施形態において、IL-1受容体アンタゴニストはアナキンラである。具体的な実施形態において、IL-1受容体アンタゴニストは、IL-6アンタゴニストによる治療が開始された場合、中止される。
【0146】
ある種の実施形態において、患者はアバタセプトで治療されている。具体的な実施形態において、IL-6アンタゴニストによる治療が開始された場合、アバタセプトは中止される。
【0147】
ある種の実施形態において、患者はIL-6アンタゴニストで処置されており、本方法は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが新たに決定されたそれらの患者にのみIL-6アンタゴニストを投与し続けることをさらに含む。特定の実施形態において、IL-6アンタゴニストはトシリズマブである。特定の実施形態において、IL-6アンタゴニストはトファシチニブである。
【0148】
様々な実施形態において、慢性炎症性疾患は、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎、プラーク乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される。
【0149】
5.2.1.1.3. 癌
様々な実施形態において、慢性疾患は癌である。
【0150】
いくつかの実施形態において、癌は、固形腫瘍、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、血液癌、多発性骨髄腫、白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、リンパ腫、及びホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0151】
5.2.1.1.4. 慢性感染症
様々な実施形態において、慢性疾患は慢性感染症である。
【0152】
5.2.1.1.5. うっ血性心不全
様々な実施形態において、慢性疾患はうっ血性心不全(CHF)である。
【0153】
5.2.1.2. 鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)
様々な実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)である。
【0154】
5.2.1.3. ヘプシジン産生肝腺腫に伴う貧血
様々な実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は、ヘプシジン産生肝腺腫に関連する貧血である。
【0155】
5.2.1.4. 急性冠症候群
以下の実施例2、3及び5に示されるデータは、IL-6アンタゴニストが、急性心筋梗塞後の心不全及び死の危険性を減少させ、心機能を高め、並びに線維症を減少させるのに有効であることを実証する。したがって、様々な実施形態において、ヘプシジン媒介性障害は急性冠症候群である。
【0156】
ある種の実施形態において、患者は、IL-6アンタゴニストの初回投与の60日前に心筋梗塞に罹患している。具体的な実施形態において、患者は、IL-6アンタゴニストの初回投与前の30日以内、14日以内、7日以内、48時間以内、又は24時間以内に心筋梗塞に罹患している。
【0157】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、処置前レベルと比較して、心筋収縮性を改善するのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。ある種の実施態様において、IL-6アンタゴニストは、処置前レベルと比較して、心臓駆出率を改善するのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。ある種の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、処置前レベルと比較して、心臓線維症を減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0158】
5.2.1.5. キャッスルマン病
様々な実施形態において、ヘプシジン媒介障害はキャッスルマン病である。
【0159】
5.3. ヘプシジン介在性障害の治療を改善するための方法
別の態様において、効果のない療法を中止し、それにより副作用を減少させ、治療有効性を失うことなく費用を削減することによって、ヘプシジン媒介障害の治療を改善するための方法が提供される。本方法は、ヘプシジン媒介性障害を有する患者に対するIL-6アンタゴニストの投与を中止することを含み、ここで、患者は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であると決定されている。一連の実施形態において、患者は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であると以前に決定されている。別の一連の実施形態において、本方法は、患者がTMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であることを決定する初期ステップをさらに含む。典型的な実施形態において、患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している。様々な実施形態において、患者は、CRPの処置前血清レベルが上昇している。
【0160】
様々な実施形態において、患者は、上記のセッション5.2.1に記載されたものから選択されるヘプシジン媒介障害を有する。ある種の実施形態において、患者は慢性疾患の貧血を有する。
【0161】
5.4. IL-6媒介性炎症性障害を治療するための方法
以下の実施例2、3及び5に示されるデータは、IL-6アンタゴニストが、貧血の非存在下でさえも、処置前IL-6レベルが上昇し、及びTMPRSS6メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する対象において治療的恩恵を提供することを実証する。したがって、別の態様において、慢性炎症性の貧血のない患者におけるIL-6媒介性炎症性障害を治療するための方法が提供される。
【0162】
本方法は、IL-6媒介性炎症性障害を有する対象、典型的にはヒト患者に、治療有効量のIL-6アンタゴニストを投与することを含み、ここで、患者は貧血を有さず、対象はTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが決定されている。第1の一連の実施形態において、対象は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが以前に決定されている。別の一連の実施形態において、本方法は、対象がTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定する初期ステップをさらに含む。典型的には、本方法は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性である対象の治療を肯定的に排除する。典型的には、患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している。
【0163】
いくつかの実施形態において、IL-6媒介性障害は関節リウマチ(RA)である。
【0164】
特定の実施形態において、患者は、5.1を超える処置前DAS28スコアを有する。いくつかの実施形態において、患者は3.2~5.1の処置前DAS28スコアを有する。いくつかの実施形態において、患者は2.6未満の処置前DAS28スコアを有する。様々な実施形態において、患者の処置前RAは重度に活性である。いくつかの実施形態において、患者の処置前RAは中程度に活性である。
【0165】
ある種の実施形態において、患者はメトトレキセートで治療されている。いくつかの実施形態において、メトトレキセートは、IL-6アンタゴニストによる治療が開始されたときに中止される。いくつかの実施形態において、メトトレキセートは、IL-6アンタゴニストによる治療が開始されたときに継続される。
【0166】
ある種の実施形態において、患者は抗TNFα剤で治療されている。具体的な実施形態において、抗TNFα剤は、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブ、及びゴリムマブから選択される。具体的な実施形態において、抗TNFα剤は、IL-6アンタゴニストによる治療が開始されたときに中止される。
【0167】
ある種の実施形態において、患者はIL-1受容体アンタゴニストで処置されている。特定の実施形態において、IL-1受容体アンタゴニストはアナキンラである。具体的な実施形態において、IL-1受容体アンタゴニストは、IL-6アンタゴニストによる治療が開始されたときに中止される。
【0168】
ある種の実施形態において、患者はアバタセプトで治療されている。具体的な実施形態において、IL-6アンタゴニストによる治療が開始されたときにアバタセプトは中止される。
【0169】
様々な実施形態において、IL-6媒介性障害は、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎、プラーク乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される。
【0170】
5.5. 処置前血清IL-6及びCRPレベル
本明細書に記載される方法の典型的な実施形態において、患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している。
【0171】
いくつかの実施形態において、患者は、2.5pg/mlを超える処置前血清IL-6レベルを有する。様々な実施形態において、患者は、5pg/ml超、7.5pg/ml超、10pg/ml超、12.5pg/ml超、又は15pg/ml超の処置前血清IL-6レベルを有する。
【0172】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者の血清IL-6レベルを処置前レベルを下回るように減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。ある種の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者の血清IL-6レベルを少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。
【0173】
様々な実施形態において、患者は、C反応性タンパク質(CRP)の処置前レベルが上昇している。いくつかの実施形態において、患者は、2mg/ml、2.5mg/ml、3mg/ml、3.5mg/ml、4mg/ml、4.5mg/ml、又は5mg/mlを超える処置前CRPレベルを有する。いくつかの実施形態において、患者は、7.5mg/ml、10mg/ml、12.5mg/ml、又は15mg/mlを超える処置前CRPレベルを有する。
【0174】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のCRPレベルを処置前レベルを下回るように減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される。ある種の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、患者のCRPレベルを、処置前レベルと比較して少なくとも10%、20%、30%、40%、又は50%減少させるのに十分な用量、スケジュール、又は期間で投与される。
【0175】
5.6. TMPRSS6 rs855791遺伝子型決定
本明細書に記載される方法は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有すると決定された対象に、IL-6アンタゴニストの治療有効量を投与することを含む。好ましくは、目的の遺伝子に対応する両方の対立遺伝子が同定され、したがって、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であり、メジャー及びマイナーのTMPRSS6 rs855791対立遺伝子に対してヘテロ接合性であり、並びにTMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合である患者の同定及び識別が可能である。
【0176】
TMPRSS6遺伝子におけるSNP rs855791(2321G→A)の非存在(メジャー対立遺伝子)又は存在(マイナー対立遺伝子)は、標準的な技術を使用して決定される。
【0177】
典型的には、PCRは、患者から得られた生物学的サンプルを増幅するために使用される。
【0178】
いくつかの実施形態において、多型の非存在又は存在は、リアルタイムPCR(RT-PCR)を使用した増幅と同時に検出される。ある種の実施形態において、RT-PCRアッセイは、5'ヌクレアーゼ(TaqMan(登録商標)プローブ)、分子ビーコン、及び/又はFRETハイブリダイゼーションプローブを用いる。その全体が参照により本明細書に組み込まれるEspyら、Clin. Microbiol. Rev. 2006年1月、19(1): 165~256頁に概説されている。典型的な実施形態において、市販のアッセイが使用される。選択された実施形態において、市販のアッセイは、TaqMan(商標)SNP遺伝子型決定アッセイ(ThermoFisher)、 PCR SNP遺伝子型決定アッセイ(Qiagen)、 Novallele遺伝子型決定アッセイ(Canon)、及びSNP Type(商標)アッセイ(以前のSNPtype)(Fluidigm)からなる群から選択される。
【0179】
いくつかの実施形態において、多型の非存在又は存在は、SNP rs855791に特異的なプローブ、制限エンドヌクレアーゼ消化、核酸配列決定、プライマー伸長、マイクロアレイ又は遺伝子チップ分析、質量分析、並びに/又はDNAse保護アッセイを用いたハイブリダイゼーションによる増幅後に検出される。いくつかの実施形態において、対立遺伝子変異体は配列決定によって決定される(called by)。ある種の実施形態において、サンガー配列決定が使用される。ある種の実施形態において、種々の次世代配列決定技術の1つが使用され、例えば、マイクロアレイ配列決定、Solexa配列決定(Illumina)、Ion Torrent(Life Technologies)、SOliD(Applied Biosystems)、パイロシーケンシング、単分子リアルタイム配列決定(Pacific Bio)、ナノポア配列決定及びトンネリング電流配列決定からなる群から選択される配列決定技術が含まれる。
【0180】
5.7. IL-6アンタゴニスト
本明細書に記載される方法において使用されるIL-6アンタゴニストは、IL-6の生物学的活性を低下させることができる。
【0181】
5.7.1. 抗IL-6抗体
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、抗IL-6抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体である。
【0182】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、全長抗IL-6モノクローナル抗体である。具体的な実施形態において、全長モノクローナル抗体はIgG抗体である。ある種の実施形態において、全長モノクローナル抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、複数種の全長抗IL-6抗体を含むポリクローナル組成物であり、その複数種の各々は固有のCDRを有する。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、Fab、Fab'、及びF(ab')2断片から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、scFv、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、又はラクダ由来のVHH単一ドメインナノボディなどの単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、IL-6抗原結合断片を含む免疫結合体又は融合体である。いくつかの実施形態において、抗体は二重特異性又は多重特異性であり、抗原結合部分の少なくとも1つはIL-6に対する特異性を有する。
【0183】
いくつかの実施形態において、抗体は完全にヒトである。いくつかの実施形態において、抗体はヒト化されている。いくつかの実施形態において、抗体はキメラであり、非ヒトV領域及びヒトC領域ドメインを有する。いくつかの実施形態において、抗体はマウスである。
【0184】
典型的な実施形態において、抗IL-6抗体は、ヒトIL-6への結合について100nM未満のKDを有する。いくつかの実施形態について、抗IL-6抗体は、ヒトIL-6への結合について75nM、50nM、25nM、20nM、15nM又は10nM未満のKDを有する。具体的な実施形態において、抗IL-6抗体は、ヒトIL-6への結合について5nM、4nM、3nM又は2nM未満のKDを有する。選択された実施形態において、抗IL-6抗体は、ヒトIL-6への結合について1nM、750pM、又は500pM未満のKDを有する。特定の実施形態において、抗IL-6抗体は、ヒトIL-6への結合について500pM、400pM、300pM、200pM又は100pM以下のKDを有する。
【0185】
典型的な実施形態において、抗IL-6抗体は、IL-6の生物学的活性を中和する。いくつかの実施形態において、中和抗体は、IL-6のIL-6受容体への結合を妨げる。
【0186】
典型的な実施形態において、抗IL-6抗体は、少なくとも7日間の静脈内投与後の排泄半減期を有する。ある種の実施形態において、抗IL-6抗体は、少なくとも14日間、少なくとも21日間、又は少なくとも30日間の排泄半減期を有する。
【0187】
いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体は、非置換ヒトIgG定常ドメインと比較して、血清半減期を延長する少なくとも1つのアミノ酸置換を有するヒトIgG定常領域を有する。
【0188】
ある種の実用形態において、IgG定常ドメインは、残基252、254、及び256に置換を含み、ここで、アミノ酸残基252のアミノ酸置換はチロシンによる置換であり、アミノ酸残基254のアミノ酸置換はスレオニンによる置換であり、アミノ酸残基256のアミノ酸置換はグルタミン酸による置換である(「YTE」)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,083,784号を参照されたい。ある種の延長された半減期の実施形態において、IgG定常ドメインは、T250Q/M428L(Hintonら、J. Immunology 176:346~356頁 (2006))、N434A(Yeungら、J. Immunology 182:7663~7671頁 (2009))、又はT307A/E380A/N434A(Petkovaら、International Immunology、18: 1759~1769頁 (2006))から選択される置換を含む。
【0189】
いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体の排泄半減期は、ヒト血清アルブミンのFcRN結合特性を利用することによって増加する。ある種の実施態様において、抗体はアルブミンにコンジュゲートされる(Smithら、Bioconjug. Chem.、 12: 750~756頁 (2001))。いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体は、細菌アルブミン結合ドメインに融合される(Storkら、Prot. Eng. Design Science 20: 569~76頁 (2007))。いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体は、アルブミン結合ペプチドに融合される。((Nguygenら、Prot Eng Design Sel 19: 291~297頁 (2006))。いくつかの実施形態において、抗IL-1抗体は二重特異性であり、1つの特異性はIL-6Rに対するものであり、1つの特異性はヒト血清アルブミンに対するものである(Ablynx、WO2006/122825 (二重特異性ナノボディ))。
【0190】
いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体の排泄半減期は、PEG化(Melmedら、Nature Reviews Drug Discovery 7: 641~642頁 (2008))によって、HPMA共重合体コンジュゲーション(Luら、Nature Biotechnology 17: 1101~1104頁 (1999))によって、デキストランコンジュゲーション(Nuclear Medicine Communications、16: 362~369頁 (1995))によって、ホモアミノ酸ポリマー(HAPs、Hapylation)とのコンジュゲーション(Schlapschyら、Prot Eng Design Sel 20: 273~284頁 (2007))によって、又はポリシアリル化(Constantinouら、Bioconjug. Chem. 20: 924~931頁 (2009))によって増加する。
【0191】
5.7.1.1.1. MED5117及び誘導体
ある種の実施形態において、抗IL-6抗体又はその抗原結合部分は、MEDI5117の6つのCDRをすべて含む。具体的な実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、MEDI5117重鎖V領域及び軽鎖V領域を含む。特定の実施形態において、抗体は全長MEDI5117抗体である。MEDI5117抗体は、WO2010/088444及びUS 2012/0034212号に記載され、それらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。MEDI5117抗体は、以下のCDR並びに重鎖及び軽鎖配列を有する:
【0192】
MEDI5117 VH CDR1
SNYMI (配列番号12)
MEDI5117 VH CDR2
DLYYYAGDTYYADSVKG (配列番号13)
MEDI5117 VH CDR3
WADDHPPWIDL (配列番号14)
MEDI5117 VL CDR1
RASQGISSWLA (配列番号15)
MEDI5117 VL CDR2
KASTLES (配列番号16)
MEDI5117 VL CDR3
QQSWLGGS (配列番号17)
【0193】
MEDI5117重鎖
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTISSNYMIWVRQAPGKGLEWVSDLYYYAGDTYY
ADSVKGRFTMSRDISKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCARWADDHPPWIDLWGRGTLVTVSS
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSS
GLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGG
PSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYN
STYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREE
MTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRW
QQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号18)
【0194】
MEDI5117軽鎖
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKVLIYKASTLESGVPS
RFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQQSWLGGSFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPS
DEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTL
SKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列番号19)
【0195】
様々な実施形態において、抗IL-6抗体はMED5117の誘導体である。
【0196】
いくつかの実施形態において、MED5117誘導体は、MED5117重鎖及び/又は軽鎖V領域に1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0197】
ある種の実施形態において、誘導体は、MEDI5117抗IL-6抗体の元のVH及び/又はVLと比較して、ヒトIL-6に対する特異性を保持しながら、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4アミノ酸未満の置換、3未満のアミノ酸置換、2未満のアミノ酸置換、又は1未満のアミノ酸置換を含む。
【0198】
ある種の実施態様において、MED5117誘導体は、MEDI5117のVH及びVLドメインのアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。配列同一性パーセントは、デフォルトパラメーターを使用するBLASTアルゴリズムを使用して決定される。
【0199】
ある種の実施形態において、MED5117誘導体は、CDRが、MEDI5117のそれぞれのCDRのアミノ酸配列と少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。配列同一性パーセントは、デフォルトパラメーターを使用するBLASTアルゴリズムを使用して決定される。
【0200】
ある種の実施形態において、VH及び/又はVL CDR誘導体は、1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基(すなわち、抗体がヒトIL-6に特異的に結合するのに重要でないアミノ酸残基)に保存的アミノ酸置換を含む。
【0201】
5.7.1.1.2. 他の抗IL-6抗体
様々な実施形態において、抗IL-6抗体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、エルシリモマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(Argen-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals、Lonza)、及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals、Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体由来の6つのCDRを含む。ある種の実施形態において、抗IL-6抗体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals、Lonza)、及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals、Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体由来の重鎖V領域及び軽鎖V領域を含む。具体的な実施形態において、抗IL-6抗体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals、Lonza)、及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals、Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体である。
【0202】
いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体は、その開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS 2016/0168243、US 2016/0130340、2015/0337036、US 2015/0203574、US 2015/0140011、US 2015/0125468、US 2014/0302058、US 2014/0141013、US 2013/0280266、US 2013/0017575、US 2010/0215654、US 2008/0075726、米国特許第5,856,135号、US 2006/0240012、US 2006/0257407、又は米国特許第7,291,721号に記載されるものから選択される抗体由来の6つのCDRを含む。
【0203】
5.7.2. 抗IL-6受容体抗体
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、抗IL-6受容体抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体である。
【0204】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、全長抗IL-6受容体モノクローナル抗体である。具体的な実施形態において、全長モノクローナル抗体はIgG抗体である。ある種の実施形態において、全長モノクローナル抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、複数種の全長抗IL-6受容体抗体を含むポリクローナル組成物であり、その複数種の各々は固有のCDRを有する。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、Fab及びFab'断片から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストは、ラクダ由来のVHH単一ドメインナノボディを含むscFv、単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は二重特異性又は多重特異性であり、抗原結合部分の少なくとも1つはIL-6Rに対する特異性を有する。
【0205】
いくつかの実施形態において、抗体は完全にヒトである。いくつかの実施形態において、抗体はヒト化されている。いくつかの実施形態において、抗体はキメラであり、非ヒトV領域及びヒトC領域ドメインを有する。いくつかの実施形態において、抗体はマウス由来である。
【0206】
典型的な実施形態において、抗IL-6受容体抗体は、ヒトIL-6Rへの結合について100nM未満のKDを有する。いくつかの実施形態において、抗IL-6R抗体は、ヒトIL-6Rへの結合について75nM、50nM、25nM、20nM、15nM又は10nM未満のKDを有する。具体的な実施形態において、抗IL-6受容体抗体は、ヒトIL-6Rへの結合について5nM、4nM、3nM又は2nM未満のKDを有する。選択された実施形態において、抗IL-6受容体抗体は、ヒトIL-6Rへの結合について1nM、750pM又は500pM未満のKDを有する。具体的な実施形態において、抗IL-6受容体抗体は、ヒトIL-6Rへの結合について500pM、400pM、300pM、200pM、又は100pM以下のKDを有する。
【0207】
典型的な実施形態において、抗IL-6Rは、IL-6の生物学的活性を減少させる。
【0208】
典型的な実施形態において、抗IL-6R抗体は、少なくとも7日間の静脈内投与後の排泄半減期を有する。ある種の実施形態において、抗IL-6R抗体は、少なくとも14日間、少なくとも21日間、又は少なくとも30日間の排泄半減期を有する。
【0209】
いくつかの実施形態において、抗IL-6R抗体は、非置換ヒトIgG定常ドメインと比較して血清半減期を延長する少なくとも1つのアミノ酸置換を有するヒトIgG定常領域を有する。
【0210】
ある種の実用形態において、IgG定常ドメインは、残基252、254、及び256に置換を含み、ここで、アミノ酸残基252におけるアミノ酸置換はチロシンによる置換であり、アミノ酸残基254におけるアミノ酸置換はスレオニンによる置換であり、アミノ酸残基256におけるアミノ酸置換はグルタミン酸による置換である(「YTE」)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,083,784号を参照されたい。ある種の延長された半減期の実施形態において、IgG定常ドメインは、T250Q/M428L(Hintonら、J. Immunology 176:346~356頁 (2006))、N434A(Yeung ら、J. Immunology 182:7663~7671頁 (2009))、又はT307A/E380A/N434A((Petkova ら、International Immunology、18: 1759~1769頁 (2006))から選択される置換を含む。
【0211】
いくつかの実施形態において、抗IL-6R抗体の排泄半減期は、ヒト血清アルブミンのFcRN結合特性を利用することによって増加する。ある種の実施態様において、抗体は、アルブミンにコンジュゲートされる(Smithら、Bioconjug. Chem.、 12: 750~756頁 (2001))。いくつかの実施形態において、抗IL-6R抗体は、細菌アルブミン結合ドメインに融合される(Storkら、Prot. Eng. Design Science 20: 569~76頁 (2007))。いくつかの実施形態において、抗IL-6抗体は、アルブミン結合ペプチドに融合される(Nguygenら、Prot Eng Design Sel 19: 291~297頁 (2006))。いくつかの実施形態において、抗IL-1抗体は二重特異性であり、1つの特異性はIL-6Rに対するものであり、1つの特異性はヒト血清アルブミンに対するものである(Ablynx、WO2006/122825 (二重特異性ナノボディ))。
【0212】
いくつかの実施形態において、抗IL-6R抗体の排泄半減期は、PEG化(Melmedら、Nature Reviews Drug Discovery 7: 641~642頁 (2008))によって、HPMA共重合体コンジュゲーション(Luら、Nature Biotechnology 17: 1101~1104頁(1999))によって;デキストランコンジュゲーション(Nuclear Medicine Communications、16: 362~369頁(1995))によって、ホモアミノ酸ポリマー(HAPs、Hapylation)とのコンジュゲーション(Schlapschyら、Prot Eng Design Sel 20: 273~284頁(2007))によって、又はポリシアリル化(Constantinouら、Bioconjug. Chem. 20: 924~931頁(2009))によって増加する。
【0213】
ある種の実施形態において、抗IL-6R抗体又はその抗原結合部分は、トシリズマブの6つのCDRをすべて含む。具体的な実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、トシリズマブの重鎖V領域及び軽鎖V領域を含む。特定の実施形態において、抗体は全長トシリズマブ抗体である。
【0214】
ある種の実施形態において、抗IL-6R抗体又はその抗原結合部分は、サリルマブの6つのCDRをすべて含む。具体的な実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、サリルマブの重鎖V領域及び軽鎖V領域を含む。特定の実施形態において、抗体は、全長サリルマブ抗体である。
【0215】
ある種の実施形態において、抗IL-6R抗体又はその抗原結合部分は、VX30(Vaccinex)、ARGX-109(arGEN-X)、FM101(Formatech)、SA237(Roche)、NI-1201(NovImmune)、又はUS 2012/0225060に記載される抗体の6つのCDRをすべて含む。
【0216】
ある種の実施形態において、抗IL-6R抗体又はその抗原結合部分は、単一ドメイン抗体である。具体的な実施形態において、単一ドメイン抗体は、ラクダVHH単一ドメイン抗体である。特定の実施形態において、抗体は、ボバリリズマブ(ALX-0061)(Ablynx NV)である。
【0217】
5.7.3. 抗IL-6:IL-6R複合体抗体
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、IL-6及びIL-6Rの複合体に特異的な抗体である。ある種の実施形態において、抗体は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるUS 2011/0002936に記載されているものから選択される抗体の6つのCDRを有する。
【0218】
5.7.4. JAK及びSTAT阻害剤
IL-6は、JAK-STAT経路を介してシグナル伝達することが知られている。
【0219】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、JAKシグナル伝達経路の阻害剤である。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はJAK1特異的阻害剤である。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はJAK3特異的阻害剤である。いくつかの実施形態において、JAK阻害剤はpan-JAK阻害剤である。
【0220】
ある種の実施形態において、JAK阻害剤は、トファシチニブ(Xeljanz)、デセルノチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、レスタウルチブ、パクリチニブ、ペフィシチニブ、INCB-039110、ABT-494、INCB-047986及びAC-410からなる群から選択される。
【0221】
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストはSTAT3阻害剤である。特定の実施形態において、阻害剤はSTAT3アンチセンス分子であるAZD9150(AstraZeneca、Isis Pharmaceuticals)である。
【0222】
5.7.5. さらなるIL-6アンタゴニスト
様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストはアンタゴニストペプチドである。
【0223】
ある種の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、C326(AvidiaによるIL-6阻害剤、AMG220としても公知である)、又はIL-6の組換えタンパク質阻害剤であるFE301、(Ferring International Center S.A.、 Conaris Research Institute AG)である。いくつかの実施形態において、抗IL-6アンタゴニストは、可溶性gp130、FE301(Conaris/Ferring)を含む。
【0224】
5.8. 投薬レジメン
5.8.1. 抗体、抗原結合断片、ペプチド
典型的な実施形態において、抗体、抗原結合断片、及びペプチドIL-6アンタゴニストは、非経口的に投与される。
【0225】
いくつかの非経口的な実施形態において、IL-6アンタゴニストを静脈内投与する。ある種の静脈内の実施形態において、IL-6アンタゴニストはボーラスとして投与される。ある種の静脈内の実施形態において、IL-6アンタゴニストは注入として投与される。ある種の静脈内の実施形態において、IL-6アンタゴニストはボーラスとして投与され、続いて注入される。いくつかの非経口的な実施形態において、IL-6アンタゴニストは皮下投与される。
【0226】
様々な実施形態において、抗体、抗原結合断片、又はペプチドIL-6アンタゴニストは、患者の体重又は表面積とは無関係な用量(平坦用量)で投与される。
【0227】
いくつかの実施形態において、静脈内平坦用量は、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg又は10mgである。いくつかの実施形態において、静脈内平坦用量は、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg又は20mgである。いくつかの実施形態において、静脈内平坦用量は、25mg、30mg、40mg又は50mgである。いくつかの実施形態において、静脈内平坦用量は、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mgである。いくつかの実施形態において、静脈内平坦用量は、1~10mg、10~15mg、15~20mg、20~30mg、30~40mg、又は40~50mgである。いくつかの実施形態において、静脈内平坦用量は、1~40mg又は50~100mgである。
【0228】
いくつかの実施形態において、皮下平坦用量は、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mgである。いくつかの実施形態において、皮下平坦用量は、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg又は200mgである。いくつかの実施形態において、皮下平坦用量は、210mg、220mg、230mg、240mg又は250mgである。いくつかの実施形態において、皮下平坦用量は、10~100mg、100~200mg、又は200~250mgである。いくつかの実施形態において、皮下平坦用量は、10~20mg、20~30mg、30~40mg、40~50mg、50~60mg、60~70mg、70~80mg、80~90mg、又は90~100mgである。いくつかの実施形態において、皮下平坦用量は、100~125mg、125~150mg、150~175mg、175~200mg、又は200~250mgである。
【0229】
様々な実施形態において、抗体、抗原結合断片、又はペプチドIL-6アンタゴニストは、患者体重ベースの用量として投与される。
【0230】
いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg又は1.0mg/kgの静脈内用量で投与される。いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg又は5mg/kgの用量で投与される。
【0231】
いくつかの実施形態において、皮下重量ベースの用量は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg又は1.0mg/kgである。いくつかの実施形態において、アンタゴニストは、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg又は5mg/kgの用量で投与される。
【0232】
様々な静脈内の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、7日に1回、14日に1回、21日に1回、28日に1回、又は1カ月に1回投与される。様々な皮下の実施形態において、IL-6アンタゴニストは、14日に1回、28日に1回、1カ月に1回、2カ月に1回(隔月)、又は3カ月に1回投与される。
【0233】
ある種の好ましい実施形態において、IL-6アンタゴニストはMEDI5117抗体である。様々な実施形態において、MEDI5117は、週1回、1~30mgの平坦用量でIV投与される。ある種の実施形態において、MEDI5117抗体は、週1回、1、2、3、4、5、7.5、10、15、20、25、又は30mgの平坦用量でIV投与される。いくつかの実施形態において、MEDI5117抗体は、月1回~3カ月に1回、25~250mgの平坦用量でs.c.投与される。特定の実施形態において、MEDI5117は、月1回、2カ月に1回、又は3カ月に1回、30mg、45mg、60mg、75mg、100mg、120mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、240mg、又は250mgの用量でs.c.投与される。
【0234】
いくつかの実施形態において、IL-6アンタゴニストはトシリズマブである。様々な実施形態において、トシリズマブは、100kg以上の患者にs.c.で週1回、162mgの開始用量で投与される。いくつかの実施形態において、トシリズマブは、4mg/kgの用量で4週間に1回静脈内投与され、その後、臨床応答に基づいて4週間ごとに8mg/kgに増加する。
【0235】
5.8.2. JAK及びSTAT阻害剤
典型的な実施形態において、低分子JAK阻害剤及びSTAT阻害剤は経口投与される。
【0236】
様々な実施形態において、阻害剤は、1~10mg、10~20mg、20~30mg、30~40mg、又は40~50mgの経口用量で1日1回又は2回投与される。いくつかの実施形態において、阻害剤は、50~60mg、60~70mg、70~80mg、80~90mg、又は90~100mgの用量で1日1回又は2回投与される。いくつかの実施形態において、阻害剤は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50mgのPOの用量で1日1回又は2回投与される。いくつかの実施形態において、阻害剤は、75mgのPO QD又はBID、100mgのPO QD又はBIDの用量で投与される。
【0237】
ある種の実施形態において、JAK阻害剤はトファシチニブであり、5mg PO BID又は11mg PO qDayの用量で投与される。
【0238】
ある種の実施形態において、JAK阻害剤はデセルノチニブであり、25mg、50mg、100mg又は150mg PO BIDの用量で投与される。
【0239】
ある種の実施形態において、阻害剤はルキソリチニブであり、25mgのPO BID、20mgのPO BID、15mgのPO BID、10mgのPO BID、又は5mgのPO BIDの用量で投与される。
【0240】
5.9. 追加の治療剤
本明細書に記載される方法の様々な実施形態において、本方法は、IL-6アンタゴニストに追加の治療剤の投与をさらに含み、ここで、第2の治療剤はまたヘプシジン発現を減少させることができる。
【0241】
いくつかの実施形態において、第2の治療剤はBMPアンタゴニストである。ある種の実施形態において、BMPアンタゴニストは抗BMP6抗体である。特定の実施形態において、抗BMP6抗体は、US 2016/0176956又はUS 2016/0159896に記載される抗体の6つのCDRを有し、それらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0242】
ある種の実施形態において、第2の治療剤は、ヘモジュベリンアンタゴニストである。特定の実施形態において、ヘモジュベリンアンタゴニストは抗ヘモジュエリン抗体である。特定の実施形態において、抗ヘモジュエリン抗体は、Kovacら、Haematologica (2016) doi:10.3324/ haematol.2015.140772 [印刷前のePub]に開示されている抗体の6つのCDRを有する。
【0243】
ある種の実施形態において、第2の治療剤は、ヘプシジンアンタゴニストである。特定の実施形態において、ヘプシジンアンタゴニストは抗ヘプシジン抗体である。特定の実施形態において、抗体は、US 2016/0017032に記載されている抗体由来の6つのCDRを有し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0244】
5.10. キット
別の態様において、キットが提供される。
【0245】
典型的な実施形態において、キットは、患者から得られた生物学的サンプルから、TMPRSS6 SNP rs855791の位置で患者の遺伝子型を決定するための試薬を提供する。
【0246】
5.11. さらなる態様及び実施形態
5.11.1. 慢性腎疾患又は心血管疾患における炎症を治療するための方法
他の態様及び実施形態において、IL-6アンタゴニストによる慢性腎疾患又は心血管疾患における炎症を特徴付け、治療するための方法、並びに患者の治療に対する応答性を特徴付けるための組成物及び方法が提供される。
【0247】
これらの態様及び実施形態は、ヌクレオチド2321位にG又はCを含むTMPRSS6の1つ以上の対立遺伝子(アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする)を有する慢性腎疾患の患者及び心血管疾患の患者における炎症は、これらの患者を死亡リスクをより高いものにし、このような対象はこのリスクを減少するためにIL-6アンタゴニストで治療することできたという発見に少なくとも部分的に基づく。以下でより詳細に報告するように、慢性腎疾患の患者を遺伝子型分類し、IL-6及びCRPの血清レベルをアッセイし、これらの診断データを、投与されたEPO用量及び死亡リスクと比較した。ヌクレオチド2321位にG又はCを含むTMPRSS6の1つ以上の対立遺伝子(アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする)を有し、IL-6及び/又はCRPレベルが上昇した患者は、治療のためにより高いEPO用量を必要とし、死亡率がより高かった。この位置のヌクレオチドは、鉄分欠乏性貧血を有する患者の同定において重要であることが示されている(Finberg、Nat. Genet. 2008、40(5): 569~571頁を参照されたい。それが教示するすべてのもの、及び配列、変異体、命名法などに関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらのデータは、より高いEPO用量を必要とし及び/又は死亡リスクがより高いTMPRSS6遺伝子型に基づく患者のサブセットの同定を強く支持し、(例えば、慢性腎疾患に関連する)貧血の治療のための標準的な療法の有無にかかわらずIL-6阻害に応答する可能性がある。炎症を阻害することにより、EPO用量を減少させることができ、それによってEPOの有害な副作用(例えば、心血管リスク)を回避することができる。
【0248】
これらの態様及び実施形態はさらに、ヌクレオチド2321位にG又はCを含むTMPRSS6の1つ以上の対立遺伝子(アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする)を有する患者が、心筋梗塞又は心血管疾患に関連した死亡リスクがより高いという発見にさらに基づいている。これらの患者はまた、炎症及び増加したリスクを減少させるIL-6阻害から恩恵を受ける可能性がある。
【0249】
したがって、IL-6の生物学的活性を阻害することによって、例えば、SNP rs855791でTMPRSS6の遺伝子型を決定することによって選択された患者において、IL-6又はその受容体(gp80)が互いに結合することを遮断すること、又はそのシグナル伝達若しくは発現を遮断することによって(例えば、抗IL-6抗体によって又は抗IL-6R抗体若しくはJAK1/STAT3阻害によって)、心血管疾患又は慢性腎疾患の貧血を含む慢性腎疾患に関連する炎症を治療するため、及び/又はこのような状態に関連した死亡リスクを減少させるための治療方法が提供される。一実施形態において、慢性腎疾患の治療は、貧血の標準的な治療の有無にかかわらずに行われ、並びに慢性腎疾患に罹患している患者の応答性を貧血のための治療に特徴付け、例えばSNP rs855791でTMPRSS6の遺伝子型を決定し、炎症マーカーのレベル(例えば、IL-6及び/又はCRP血清レベルの上昇)を検出するための方法が行われる。
【0250】
IL-6生物学的活性又は発現を阻害する薬剤を投与することにより、このような患者における慢性炎症に関連する心血管疾患若しくは慢性腎疾患の貧血を治療し及び/又は死亡を減少させるための方法が提供される。
【0251】
いくつかの態様及び実施形態において、慢性腎疾患又は心血管疾患を有する対象における死亡率に寄与する慢性炎症を治療するため、及びそのような療法に対する患者の応答性を特徴付けるための組成物及び方法が提供される。具体的な実施形態において、慢性炎症性貧血及び死亡率(例えば、慢性腎疾患における)を特徴付け及び治療するための方法、並びに貧血の治療(例えば、エリスロポエチン又は赤血球新生刺激剤の投与)に対する患者の応答性を特徴付けるための方法が提供される。一態様において、選択された対象における慢性炎症を治療するための方法が提供され、該方法は、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有することによって治療するために選択される。
【0252】
別の態様において、心血管疾患又は慢性腎疾患を有する選択された対象における炎症又は慢性炎症を治療するための方法が提供され、該方法は、対象にIL-6アンタゴニスト(例えば、抗IL-6抗体)を投与することを伴い、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有することによって治療のために選択される。一実施形態において、該方法は、対象の死亡リスクを減少させる。一実施形態において、対象は、心筋梗塞又は心不全の病歴を有する。
【0253】
別の態様において、心血管疾患又は腎疾患を有する選択された対象における炎症及び死亡リスクを減少させる方法が提供され、該方法は、IL-6アンタゴニスト(例えば、抗IL-6抗体)を対象に投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有するものとして選択され、参照と比較して炎症が増加している。一実施形態において、対象は、心筋梗塞又は心不全の病歴を有する。
【0254】
別の態様において、慢性腎疾患又は心不全を有する対象における死亡のリスクを減少させるための方法が提供され、該方法は、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有するものとして同定され、参照と比較して炎症が増加している。
【0255】
別の態様において、対象における貧血を治療するための方法が提供され、該方法は、IL-6アンタゴニストを単独で又は貧血の療法と組み合わせて対象に投与することを伴い、この場合、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチド(マトリプターゼ-2、MT2とも呼ばれる)をコードする1つ以上の対立遺伝子(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)を有するものとして同定され、参照と比較して炎症が増加している。
【0256】
別の態様において、炎症が増加した対象における貧血を治療するための方法が提供され、該方法は、IL-6アンタゴニスト(例えば、IL-6抗体)を単独で、又はアミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)を有する対象において炎症を中和するのに有効な量の赤血球新生因子と組み合わせて、投与することを伴う。
【0257】
さらに別の態様において、それを必要とするものとして同定された対象においてEPOに対する応答性を増強させるための方法が提供され、該方法は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)を有する対象において炎症を中和するのに有効な量でIL-6アンタゴニスト(例えば、IL-6抗体)を投与することを含み、それによってEPO用量が低下する。
【0258】
別の態様において、炎症の増加を有する対象における死亡率を減少させるための方法が提供され、該方法は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)を有する対象における炎症を中和するのに有効な量でIL-6アンタゴニストを投与することを伴う。
【0259】
さらに別の態様において、それを必要とするものとして同定された対象の療法を選択するための方法が提供され、該方法は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)を有する対象を特徴付け、1つ以上の炎症マーカーIL-6又はCRPのレベルを検出することを伴い、ここで特徴付けは、IL-6アンタゴニストが単独で又は貧血の治療と組み合わせて投与されるべきであることを示す。
【0260】
さらに別の態様において、それを必要とするものとして同定された対象において、赤血球又はその前駆細胞(例えば、造血幹細胞、前赤芽球、赤芽球又は網状赤血球)の増殖又は生存を増加させるための方法が提供され、該方法は、対象にIL-6アンタゴニスト及び赤血球新生因子を投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)を有するものとして同定され、参照と比較して炎症が増加している。
【0261】
本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は癌性貧血、慢性自己免疫疾患における貧血、慢性炎症性疾患における貧血、心血管疾患における貧血、メタボリックシンドロームにおける貧血などを含む貧血を有している又は有するものとして同定される。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、慢性腎疾患を有している又は有するものとして同定される。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、炎症を有している又は有するものとして同定される。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、慢性炎症、慢性腎疾患、又は心血管疾患に関連する死亡リスクが増加している又は増加したものとして同定される。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、治療の必要があるものとして同定される。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、炎症の増加を有している又は有するものとして同定される。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子(例えば、TMPRSS6核酸分子のヌクレオチド2321位にG又はCを有する)を有している又は有するものして同定され、参照と比較して炎症が増加している。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、本方法は、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを含む。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、本方法は、対象にIL-6アンタゴニスト及び貧血の療法を投与することを含む。本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、対象はヒトである。
【0262】
本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、貧血の療法は、赤血球新生因子を投与することを含む。様々な実施形態において、赤血球新生因子は、エリスロポエチン、赤血球新生促進剤、HIF安定剤、及び補助的な鉄分の1つ以上である。
【0263】
様々な実施形態において、炎症の増加は、(例えば、ともにCRPを検出するが、分析性能が異なる従来のCRPアッセイ又は高感度アッセイ(hsCRP)によって測定されるように)参照と比較して、IL-6及び/又はCRPのレベルの増加によって特徴付けられる。様々な実施形態において、炎症の増加は、約5pg/mlを超えるIL-6として特徴付けられる。様々な実施形態において、炎症の増加は、約2mg/Lを超えるCRPとして特徴付けられる。
【0264】
本明細書に記載される態様のいずれかの様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは、炎症を中和するのに有効な量で投与される。様々な実施形態において、炎症を中和するのに有効な量は、IL-6を約15pg/ml未満、約10pg/ml未満、又は約5pg/ml未満に減少させる。様々な実施形態において、炎症を中和するのに有効な量は、CRPを約2mg/L未満又は約0.2mg/L未満に減少させる。
【0265】
本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、IL-6アンタゴニスト又は抗IL-6抗体を投与することにより、EPOの用量が減少する。ある種の実施形態において、EPOの用量は、約40IU/kg/週、約50IU/kg/週、約80IU/kg/週、約100IU/kg/週又はそれ以上減少される。様々な実施形態において、IL-6アンタゴニスト又は抗IL-6抗体を投与することにより、増加したEPO用量の副作用が減少する。
【0266】
一実施形態において、慢性腎疾患を有する患者は、貧血の標準的な治療の有無にかかわらずに治療される。特にIL-6生物学的活性又は発現を阻害する薬剤は、貧血の治療(例えば、EPO、ESA、HIF安定剤、補助的な鉄分、又は赤血球の輸血)の有無にかかわずに慢性腎疾患に関連する貧血を有する対象に提供される。貧血の治療は、赤血球新生又は赤血球生成を刺激することによって作用する。したがって、赤血球若しくはその前駆細胞の成長若しくは増殖を増加させ、及び/又は赤血球若しくはその前駆細胞の細胞死を低下させる薬剤。赤血球前駆細胞は、例えば、造血幹細胞、一般的な骨髄前駆細胞、前赤芽球、赤芽球、網状赤血球、又は赤血球に分化若しくは成熟し得る任意の細胞を含む。
【0267】
IL-6又はその受容体(gp80)が互いに結合することを遮断すること、又はそのシグナル伝達若しくは発現を遮断することによってIL-6生物学的活性を阻害する薬剤は、慢性腎疾患に関連する貧血を有する対象に医薬組成物において提供され得、ここで、医薬組成物は、有効量の該薬剤、貧血を治療するための薬剤(例えば、EPO、ESA、HIFプロリル-ヒドロキシラーゼ阻害剤、補助的な鉄分)及び適切な賦形剤を含む。一実施形態において、薬剤は、対象におけるIL-6ポリペプチド若しくは核酸分子のレベル又は活性を低下させ、あるいはIL-6受容体の活性化によって誘発される細胞内シグナル伝達を阻害するIL-6アンタゴニスト又は抗IL-6抗体である。抗IL-6抗体(例えば、MEDI5117)は、貧血の治療(例えば、EPO、ESA、HIF安定剤、補助的な鉄分の投与)と組み合わせて投与することができる。貧血を治療するための方法は、患者のTMPRSS6遺伝子型及び患者の炎症状態に依存して変化する。ヌクレオチド2321位にG又はCを含むTMPRSS6のメジャー対立遺伝子(アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする)に対してホモ接合性又はヘテロ接合性のであり、炎症マーカー(例えば、IL-6及び/又はCRP)のレベルが上昇している患者は、貧血の治療(例えば、EPO、ESA、HIF安定剤、補助的な鉄分の投与)の状況において、IL-6ポリペプチドのレベル又は活性を低下させるIL-6アンタゴニスト又は抗IL-6抗体が投与される。ヌクレオチド2321位にA又はTを含むTMPRSS6のマイナー対立遺伝子(アミノ酸736位にバリンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする)に対してホモ接合性である患者は、貧血の治療を補うために抗IL-6療法を必要としない。貧血を治療するための方法は、慢性腎疾患の病期、患者の年齢、健康状態、及び身体状態に応じて変化し得る。
【0268】
別の態様において、慢性炎症(例えば、慢性腎疾患で)に関連する貧血を有する対象を特徴付けるために有用なアッセイが提供される。炎症マーカーIL-6及びCRPは、任意の適切な方法によって検出することができる。本明細書に記載される方法は、IL-6若しくはCRPバイオマーカー及び/又は炎症状態の検出のために個々に又は組み合わせて使用することができる。一実施形態において、炎症は、参照(例えば、健常対照の対象由来の血清)における発現と比較して、対象の生物学的サンプル(例えば、血清)中のIL-6及び/又はCRPポリペプチドのレベルを検出することによって特徴付けられ、ここで、IL-6及び/又はCRP発現の増加は炎症の指標である。別の実施形態において、IL-6及び/又はCRP発現の増加は、慢性腎疾患に関連する貧血を有する対象が貧血の治療に応答せず、及び/又はIL-6アンタゴニスト(例えば、抗IL-6抗体)と組み合わせて投与した場合に貧血の治療に応答性であることを示す。
【0269】
一実施形態において、IL-6及び/又はCRPポリペプチドレベルをイムノアッセイによって測定する。イムノアッセイは、典型的には、サンプル中のバイオマーカーの存在又はレベルを検出するために抗体(又はマーカーに特異的に結合する他の薬剤)を利用する。抗体は、例えば、バイオマーカー又はその断片で動物を免疫することにより、当該技術分野において周知である方法によって産生され得る。バイオマーカーは、それらの結合特性に基づいてサンプルから単離することができる。あるいは、ポリペプチドバイオマーカーのアミノ酸配列が公知である場合、ポリペプチドを合成し、使用して、当該技術分野において周知である方法によって抗体を生成することができる。
【0270】
様々な実施形態において、伝統的なイムノアッセイが使用され、例えば、ウェスタンブロット、ELISA及び他の酵素イムノアッセイを含むサンドイッチイムノアッセイ、蛍光ベースのイムノアッセイ、及び化学発光が挙げられる。比濁分析法は、抗体が溶液中に存在する液相で行われるアッセイである。抗体への抗原の結合は、測定される吸光度の変化をもたらす。イムノアッセイの他の形態としては、磁気イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、及びリアルタイム免疫定量PCR(iqPCR)が挙げられる。他の検出方法には、液体クロマトグラフィー及び質量分析が含まれる。
【0271】
イムノアッセイは、固体基質(例えば、チップ、ビーズ、マイクロ流体プラットフォーム、膜)上で、又は抗体のマーカーへの結合及びその後の検出を支持する任意の他の形態上で行うことができる。単一のマーカーを一度に検出してもよく、又は多重フォーマットを使用してもよい。多重免疫分析には、平面マイクロアレイ(タンパク質チップ)及びビーズベースのマイクロアレイ(懸濁アレイ)が含まれ得る。
【0272】
IL-6及び/又はCRPポリペプチドレベルが上昇したものとして同定された貧血を有する慢性腎疾患患者は、貧血の治療と組み合わせて、IL-6発現又は活性を減少させる薬剤(例えば、抗IL-6抗体)による治療のために選択される。本発明の方法により処置された患者は、処置後のヘモグロビン、ヘマトクリット、エリスロポエチン用量、IL-6及び/又はCRP発現の変化を検出することによってモニターすることができる。IL-6及び/若しくはCRPの発現の減少並びに/又は炎症の減少を示す患者は、IL-6阻害に応答するものとして同定される。
【0273】
他の態様及び実施形態は、以下の番号付きの項目で提供される。
1. 選択された対象における慢性炎症を治療するための方法であって、IL-6アンタゴニストを対象に投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有することによって治療のために選択される、方法。
2. 心血管疾患、心不全、及び/又は慢性腎疾患を有する選択された対象における炎症を治療するための方法であって、IL-6アンタゴニストを対象に投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有することによって治療のために選択される、方法。
3. 心血管疾患、心不全及び/又は慢性腎疾患を有する選択された対象における炎症及び死亡のリスクを減少させるための方法であって、IL-6アンタゴニストを対象に投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有するものとして選択され、参照と比較して炎症が増加している、方法。
4. 慢性腎疾患を有する対象における貧血を治療するための方法であって、IL-6アンタゴニストを対象に投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有するものとして同定され、参照と比較して炎症が増加している、方法。
5. IL-6アンタゴニストが炎症を中和するのに有効な量で投与される、項目1~4のいずれかに記載の方法。
6. IL-6アンタゴニストが抗IL-6抗体である、項目1~4のいずれかに記載の方法。
7. 赤血球新生因子を対象に投与することをさらに含む、項目5に記載の方法。
8. 方法が対象の死亡リスクを減少させる、項目1~4のいずれか1つに記載の方法。
9. 慢性腎疾患又は心不全を有する対象における死亡のリスクを減少させるため方法であって、IL-6アンタゴニストを対象に投与することを含み、ここで、対象は、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有するものとして同定され、参照と比較して炎症が増加している、方法。
【0274】
10. 炎症の増加を有する対象における貧血を治療するための方法であって、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有する対象における炎症を中和するのに有効な量で赤血球新生因子及び抗IL-6抗体を投与することを含む、方法。
11. 炎症の増加が、参照と比較したIL-6及び/又はCRPレベルの増加によって特徴付けられる、項目1~10のいずれか1つに記載の方法。
12. 炎症の増加が、約5pg/ml、約10pg/ml、又は約15pg/mlを超えるIL-6として特徴付けられる、項目11に記載の方法。
13. 炎症の増加が、約2mg/Lを超えるCRPとして特徴付けられる、項目10に記載の方法。
14. 赤血球新生因子が、エリスロポエチン、赤血球新生促進剤、HIF安定剤、及び補助的な鉄分のうちの1つ以上である、項目10に記載の方法。
15. それを必要とするものとして同定された対象におけるEPOに対する応答性を増強するための方法であって、アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有する対象における炎症を中和するのに有効な量でIL-6アンタゴニスト及び抗IL-6抗体を投与することを含み、それによりEPOに対する対象の応答性を増強するための、方法。
16. 炎症を中和するのに有効な抗IL-6抗体の量が、IL-6を約15pg/ml未満、約10pg/ml未満又は約5pg/ml未満に減少させる、項目15に記載の方法。
17. 炎症を中和するのに有効なIL-6アンタゴニスト又は抗IL-6抗体の量が、CRPを約2mg/L未満に減少させる、項目16に記載の方法。
18. IL-6アンタゴニスト又は抗IL-6抗体を投与することが、EPOの用量を減少させる、項目15に記載の方法。
19. EPOの用量が約40IU/kg/週、約50IU/kg/週、約80IU/kg/週、約100IU/kg/週又はそれ以上減少される、項目17に記載の方法。
20. IL-6アンタゴニスト又は抗IL-6抗体を投与することが、増加したEPOの副作用を減少させる、項目15に記載の方法。
【0275】
21. それを必要とするものとして同定された対象の治療を選択するための方法であって、a)アミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有するものとして対象を特徴付けること及びb)1つ以上の炎症マーカーIL-6及びCRPのレベルを検出することを含み、特徴付けは、IL-6アンタゴニストが貧血の療法と組み合わせて投与されるべきであることを示す、方法。
22. IL-6アンタゴニスト及び貧血の療法を対象に投与することをさらに含む、項目21に記載の方法。
23. 貧血の療法が、赤血球新生因子を投与することを含む、項目21に記載の方法。
24. それを必要とするものとして同定された対象に赤血球若しくはその前駆細胞の増殖又は生存を増加させる方法であって、対象にIL-6アンタゴニスト及び赤血球新生因子を投与することを含み、ここで、対象がアミノ酸736位にアラニンを含むTMPRSS6ポリペプチドをコードする1つ以上の対立遺伝子を有するものとして同定され、対象は参照と比較して炎症が増加している、方法。
25.赤血球又はその前駆細胞における細胞死を減少させる、項目24に記載の方法。
26. 前駆細胞が、造血幹細胞、前赤芽球、赤芽球又は網状赤血球である、項目24に記載の方法。
27. 対象が慢性腎疾患を有する、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
28. 対象が貧血を有する、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
29. 貧血が、癌性貧血、慢性自己免疫疾患における貧血、慢性炎症性疾患における貧血、又はメタボリックシンドロームにおける貧血である、項目28に記載の方法。
【0276】
30. IL-6アンタゴニストが、炎症を中和するのに有効な量で投与される、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
31. IL-6アンタゴニストが抗IL-6抗体である、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
32. 炎症の増加が、参照と比較してIL-6及び/又はCRPのレベルの増加によって特徴付けられる、請求項15~24のいずれか1つに記載の方法。
33. 炎症の増加が、約5pg/ml、約10pg/ml、又は約15pg/mlを超えるIL-6として特徴付けられる、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
34. 炎症の増加が、約2mg/Lを超えるCRPとして特徴付けられる、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
35. 炎症を中和するのに有効な量が、IL-6を約10pg/ml未満又は約5pg/ml未満に減少させる、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
36. 炎症を中和するのに有効な量が、CRPを約2mg/L未満に減少させる、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
37. 赤血球新生因子が、エリスロポエチン、赤血球新生促進剤、HIF安定剤、及び補助的な鉄分のうちの1つ以上である、項目15~24のいずれか1つに記載の方法。
38. IL-6アンタゴニストを投与することが、EPOの用量を減少させる、項目24に記載の方法。
39. IL-6アンタゴニストが抗IL-6抗体である、項目38に記載の方法。
【0277】
40. EPOの用量が、約40IU/kg/週、約50IU/kg/週、約80IU/kg/週、約100IU/kg/週又はそれ以上減少される、項目38に記載の方法。
41. IL-6アンタゴニストを投与することが、増加したEPOの副作用を減少させる、項目23に記載の方法。
42. 対立遺伝子が、TMPRSS6ポリヌクレオチドの2321位のGを含む、項目1~40のいずれか1つに記載の方法。
43. IL-6アンタゴニストが、以下の核酸配列:
SNYMI (配列番号12)、
DLYYYAGDTYYADSVKG (配列番号13)、
WADDHPPWIDL (配列番号14)、
RASQGISSWLA (配列番号15)
KASTLES (配列番号16)、及び
QQSWLGGS (配列番号17)
から選択される1つ以上のCDRを有する抗IL-6抗体である、項目1~42のいずれか1つに記載の方法。
44. 抗IL-6抗体が、配列SNYMI(配列番号12)を含む重鎖CDR1、配列DLYYYAGDTYYADSVKG(配列番号13)を含む重鎖CDR2、配列WADDHPPWIDL(配列番号14)を含む重鎖CDR3、配列RASQGISSWLA(配列番号15)を含む軽鎖CDR1、配列KASTLES(配列番号16)を含む軽鎖CDR2、及び配列QQSWLGGS(配列番号17)を含む軽鎖CDR3を有する、項目42に記載の方法。
45. 抗IL-6抗体が、以下の配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTISSNYMIWVRQAPGKGLEWVSDLYYYAGDTYY
ADSVKGRFTMSRDISKNTVYLQMNSLRAEDTAVYYCARWADDHPPWIDLWGRGTLVTVSS
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSS
GLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGG
PSVFLFPPKPKDTLYITREPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYN
STYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREE
MTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRW
QQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (配列番号18)
を含む重鎖を有する、項目42に記載の方法。
46. 抗IL-6抗体が、以下の配列:
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKVLIYKASTLESGVPS
RFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQQSWLGGSFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPS
DEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTL
SKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列番号19)
を含む軽鎖を有する、項目42に記載の方法。
47. 抗IL-6抗体がMEDI5117である、項目42に記載の方法。
48. 対象がヒトである、項目1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0278】
5.11.2. 心腎臓症候群を治療するための方法
他の態様及び実施形態において、心腎臓症候群を治療するための組成物及び方法が提供
される。
【0279】
これらの態様及び実施形態は、心腎臓症候群のげっ歯類モデルにおける心臓損傷の抗IL-6治療が、ケア治療の標準と同等の効果を有するという発見に少なくとも部分的に基づいている。以下により詳細に報告するように、心腎臓症候群のげっ歯類モデルは、心筋梗塞後に抗IL-6又はケア療法の標準(ACE阻害剤、ペリンドプリル)で処置された。治療後、駆出率、心筋収縮力、及び心臓組織における線維性組織の割合を測定した。抗IL-6で処置された対象群とケア療法の標準で処置された対象群の両方における駆出率のレベルは、対照処置で処置された対象群のレベルと比較して増加した。抗IL-6で処置された群とケア療法の標準で処置された群の両方における心臓収縮性は、対照処置で処置された対象群のレベルと比較して増加した。抗IL-6で処置された群とケア療法の標準で処置された群の両方における線維性組織の量は、対照処置で処置された対象群の量と比較して低下させた。さらに、駆出率及び線維化組織の量のレベルは、抗IL-6で処置された対象群及びケア療法の標準で処置された対象群において同様であった。結果は、抗IL-6療法が、げっ歯類モデルにおける心腎臓症候群の治療においてケア療法の標準と同等の有効性を有することを実証している。
【0280】
これらの態様及び実施形態は、心筋梗塞後に心腎臓症候群を有するものとして、及びIL-6のレベルが上昇したものとして同定された患者が、心不全を含む心血管死のリスクを特に高めたという発見に少なくとも部分的にさらに基づいている。理論に縛られないが、IL-6は、心腎臓症候群の発症及び/又は進行において因果的役割を果たす可能性がある。したがって、心筋梗塞後のIL-6レベルが上昇した患者、又は心腎臓症候群を有し、及びIL-6レベルが上昇した患者は、IL-6阻害から恩恵を受ける可能性が高い。
【0281】
したがって、心腎臓症候群を有する対象における心臓及び/又は腎臓損傷を治療するための治療方法が提供され、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを伴う。いくつかの実施形態において、心腎臓症候群を有する対象における心臓及び/又は腎臓損傷の治療は、心腎臓症候群のための標準的な治療を用いて又は用いずに実施される。心筋梗塞後の患者における心血管死のリスクを特徴付けるための方法が提供され、該方法は、患者から得られた生物学的サンプル中のIL-6レベルの増加を検出することを伴う。
【0282】
一態様において、心腎臓症候群を有する対象において心臓/腎臓損傷を治療するための方法が提供され、該方法は、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを伴う。
【0283】
別の態様において、心腎臓症候群を有する対象において心機能を増加させるための方法が提供され、該方法は、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを伴う。
【0284】
さらに別の態様において、心腎臓症候群を有する対象において線維症を減少させる方法が提供され、該方法は、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを伴う。
【0285】
本明細書に記載された態様のいずれかの様々な実施形態において、本方法は、対象にケア療法の標準を投与することをさらに含む。様々な実施形態において、ケア療法の標準は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤である。
【0286】
本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、心機能の増加は、参照と比較した、対象の駆出率及び/又は心筋収縮力の増加によって特徴付けられる。本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、線維症の減少は、参照と比較した、対象由来の組織サンプル中の線維性組織の割合の低下によって特徴付けられる。様々な実施形態において、線維症は心臓組織内にある。
【0287】
本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、心臓及び/又は腎臓の損傷を有する。本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、心臓損傷に続いて腎臓損傷を有する。
【0288】
別の態様において、本発明は、対象の心筋梗塞後の対象における心血管死(例えば、心不全)のリスクの増加を同定するための方法を提供し、該方法は、参照と比較して、対象由来のサンプル中のIL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルを測定することを伴い、ここで、IL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルの増加は心血管死のリスクの増加を示す。
【0289】
さらに別の態様において、本発明は、対象の心筋梗塞後の対象における心血管死(例えば、心不全)のリスクを特徴付ける方法を提供し、該方法は、参照と比較して、対象由来のサンプル中のIL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルを測定することを伴い、ここで、IL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルの増加は心血管死のリスクの増加を示す。
【0290】
本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、心腎臓症候群、心不全、慢性腎疾患を有し、又は心腎臓の病状を有しない。本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は、心筋梗塞の約1カ月後に心腎臓症候群、心不全、慢性腎疾患を有し、又は心腎臓の病状を有していないものとして同定される。
【0291】
別の態様において、本発明は、心腎臓症候群を有する選択された対象における心臓及び/又は腎臓損傷を治療するための方法を提供し、該方法は、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを伴い、ここで、対象は、参照と比較して、対象由来の生物学的サンプル中の1つ以上のIL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドのレベルの増加を検出することによって治療のために選択される。
【0292】
さらに別の態様において、本発明は、心腎臓症候群を有する選択された対象における心血管死(例えば、心不全)のリスクを低下させる方法を提供し、該方法は対象にIL-6アンタゴニストを投与することを伴い、ここで、対象は、参照と比較して、対象由来の生物学的サンプル中のIL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルの増加を検出することによって選択される。本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、対象は心筋梗塞を有していた。
【0293】
本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、IL-6アンタゴニストは抗IL-6抗体である。様々な実施形態において、抗IL-6抗体はMEDI5117である。
【0294】
本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、生物学的サンプルは、血漿サンプル又は血清サンプルである。本明細書に描写された態様のいずれかの様々な実施形態において、対象はヒトである。
【0295】
別の態様において、IL-6生物学的活性又は発現を阻害する薬剤を投与することによって、患者の心腎臓症候群を治療し、及び/又はこのような患者の死亡若しくは心不全のリスクを減少させるための方法が提供される。一実施形態において、心腎臓症候群を有する患者は、心腎臓症候群の標準的治療(例えば、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤)を伴って又は伴わずに治療される。特に、IL-6の生物学的活性又は発現を阻害する薬剤は、心腎臓症候群を有する対象に提供される(例えば、抗IL-6抗体の投与)。
【0296】
別の態様において、心機能を増加させる方法及び心腎臓症候群を有する対象における線維症を減少させる方法が提供される。本方法は、IL-6の生物学的活性又は発現を阻害する薬剤を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、心機能の増加は、参照(例えば、健常対照の対象の駆出率)と比較した対象の駆出率の増加、又は参照(例えば、健常対照の対象の心筋収縮性)と比較した心筋収縮性(例えば、dP/dtmax)の増加によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、線維症の減少は、参照(例えば、健常対照の対象から得られた組織サンプル)と比較して、対象由来の組織サンプル中の線維性組織の割合の低下によって特徴付けられる。一実施形態において、線維症は心臓組織内にある。
【0297】
医薬組成物中、IL-6又はその受容体(gp80)が互いに結合することを遮断すること、又はそのシグナル伝達若しくは発現を遮断することによって、IL-6の生物学的活性を阻害する薬剤は、心腎臓症候群を有する対象に提供することができ、ここで、医薬組成物は、有効量の薬剤及び適切な賦形剤を含む。一実施形態において、薬剤は、対象におけるIL-6ポリペプチド若しくはポリヌクレオチドのレベル又は活性を低下させ、あるいはIL-6受容体活性化によって誘発される細胞内シグナル伝達を阻害する、IL-6アンタゴニスト又は抗IL-6抗体である。抗IL-6抗体(例えば、MEDI5117)を投与することができる。心腎臓症候群の治療方法は、心腎臓症候群のステージ、患者の年齢、健康状態、及び身体状態に応じて変化し得る。
【0298】
様々な実施形態において、心腎臓症候群を有する対象は、IL-6アンタゴニストで治療される。さらに、心筋梗塞後の心血管死及び/又は心不全のリスクが増加した対象は、対象におけるIL-6の血漿レベルを特徴付けることによって同定することができる。IL-6レベルが上昇した対象は、心血管死及び/又は心不全のリスクが増加している。このような対象は、IL-6アンタゴニストによる治療のために選択され得る。加えて、心筋梗塞に罹患した対象を含む、心腎臓症候群を有し及びIL-6レベルが増加した対象を治療のために選択することができる。治療のために選択されると、このような対象は、当該技術分野において公知である任意のIL-6アンタゴニストを実質的に投与され得る。適切なIL-6アンタゴニストには、例えば、公知のIL-6アンタゴニスト、市販のIL-6アンタゴニスト、当該技術分野において周知の方法を用いて開発されたIL-6アンタゴニスト、及びIL-6Rに関連する細胞内シグナル伝達システムに対するアンタゴニストが含まれる。
【0299】
別の態様において、心筋梗塞後の対象における心血管死、心不全のリスク、及び/又は死亡を特徴付けるためのアッセイが提供される。このアッセイは、対象から得られた生物学的サンプル中のIL-6の検出を特徴とする。IL-6は、任意の適切な方法によって検出することができる。一実施形態において、心血管死又は心不全のリスクは、参照(例えば、健常対照の対象由来若しくは心臓-腎臓病理がない対照対象由来の血清若しくは血漿)における発現と比較して、対象の生物学的サンプル(例えば、血清又は血漿)中のIL-6ポリペプチドのレベルを検出することによって特徴付けられ、ここで、IL-6の増加は、心血管死又は心不全のリスクの増加を示す。心血管死、心不全のリスク、又は死亡率の増加を有すると同定された対象は、治療のために選択され得る。別の実施形態において、心腎臓症候群を有し、IL-6レベルが増加した対象は、IL-6アンタゴニスト(例えば、抗IL-6抗体)による治療のために選択される。
【0300】
一実施形態において、IL-6ポリヌクレオチドレベルが測定される。IL-6ポリヌクレオチドのレベルは、定量的PCR、ノザンブロット、マイクロアレイ、質量分析、及びインサイチュハイブリダイゼーションなどの標準的な方法によって測定することができる。
【0301】
一実施形態において、IL-6ポリペプチドレベルが測定される。IL-6ポリペプチドのレベルは、イムノアッセイなどの標準的な方法によって測定することができる。イムノアッセイは、典型的には、サンプル中のバイオマーカーの存在又はレベルを検出するための抗体(又はマーカーに特異的に結合する他の薬剤)を利用する。抗体は、当該技術分野において周知である方法によって、例えば、バイオマーカー又はその断片を用いて動物を免疫化することによって産生され得る。バイオマーカーは、それらの結合特性に基づいてサンプルから単離することができる。あるいは、ポリペプチドバイオマーカーのアミノ酸配列が公知である場合、ポリペプチドを合成し、使用して、当該技術分野に周知である方法によって抗体を生成することができる。
【0302】
様々な実施形態において、アッセイは、伝統的なイムノアッセイを用い、例えば、ウェスタンブロット、ELISA及び他の酵素イムノアッセイを含むサンドイッチイムノアッセイ、蛍光ベースのイムノアッセイ、及び化学発光が挙げられる。比濁分析法は、抗体が溶液中に存在する液相で行われるアッセイである。抗体への抗原の結合は、測定される吸光度の変化をもたらす。イムノアッセイの他の形態としては、磁気イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、及びリアルタイム免疫定量PCR(iqPCR)が挙げられる。他の検出方法には、液体クロマトグラフィー及び質量分析が含まれる。
【0303】
イムノアッセイは、固体基質(例えば、チップ、ビーズ、マイクロ流体プラットフォーム、膜)上で、又は抗体のマーカーへの結合及びその後の検出を支持する任意の他の形態上で行うことができる。単一のマーカーを一度に検出してもよく、又は多重フォーマットを使用してもよい。多重免疫分析には、平面マイクロアレイ(タンパク質チップ)及びビーズベースのマイクロアレイ(懸濁アレイ)が含まれ得る。
【0304】
IL-6ポリペプチドレベルの増加を有するものとして同定された心腎臓症候群の患者は、IL-6発現又は活性を減少させる薬剤(例えば、抗IL-6抗体)による治療のために選択される。治療は、心腎臓症候群のための標準的な治療(例えば、ACE阻害剤)と組み合わせて投与され得る。本発明の方法で処置された患者は、処置後のIL-6の変化を検出することによってモニターすることができる。
【0305】
他の態様及び実施形態は、以下の番号付きの項目で提供される。
1. 心腎臓症候群を有する対象における心臓及び/又は腎臓損傷を治療するための方法であって、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを含む、方法。
2. 心腎臓症候群を有する対象における心機能を増加させる方法であって、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを含む、方法。
3. 心腎臓症候群を有する対象における線維症を減少させる方法であって、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを含む、方法。
4. 心機能の増加が、参照と比較した対象の駆出率の増加によって特徴付けられる、項目2に記載の方法。
5. 線維症が心臓組織内にある、項目3に記載の方法。
6. 線維症の減少が、参照と比較した対象由来の組織サンプル中の線維性組織の割合の低下によって特徴付けられる、項目3又は5に記載の方法。
7. 対象が心臓及び/又は腎臓損傷を有する、項目1~6のいずれか1つに記載の方法。
8. 対象が、心臓損傷に続いて腎臓損傷を有する、項目1~7のいずれか1つに記載の方法。
9. 対象にケア療法の標準を投与することをさらに含む、項目1~8のいずれか1つに記載の方法。
10. ケア療法の標準がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤である、項目1~9に記載の方法。
【0306】
11. 対象の心筋梗塞後の対象における心血管死のリスクの増加を同定するための方法であって、参照と比較して、対象由来のサンプル中の1つ以上のIL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドのレベルを測定することを含み、ここで、IL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルの増加は心血管死のリスクの増加を示す、方法。
12. 対象の心筋梗塞後の対象における心血管死のリスクを特徴付ける方法であって、参照と比較して、対象由来のサンプル中のIL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルを測定することを含み、ここで、IL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルの増加は心血管死のリスクの増加を示す、方法。
13. 対象が、心腎臓症候群、心不全、慢性腎疾患を有し、又は心腎臓の病状を有しない、項目11又は12に記載の方法。
14. 対象が、心筋梗塞の約1カ月後に、心腎臓症候群、心不全、慢性腎疾患を有し、又は心腎臓の病状を有していないものとして同定される、項目11~13のいずれか1つに記載の方法。
15. 心腎臓症候群を有する選択された対象における心臓及び/又は腎臓損傷を治療するための方法であって、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを含み、ここで、対象は、参照と比較して、対象由来の生物学的サンプル中のIL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルの増加を検出することによって治療のために選択される、方法。
16. 心腎臓症候群を有する選択された対象における心血管死のリスクを低下させる方法であって、対象にIL-6アンタゴニストを投与することを含み、ここで、対象は、参照と比較して、対象由来の生物学的サンプル中のIL-6ポリヌクレオチド又はポリペプチドの1つ以上のレベルの増加を検出することによって選択される、方法。
17. 対象が心筋梗塞を有していた、項目15又は16に記載の方法。
18. IL-6アンタゴニストが抗IL-6抗体である、項目1~10又は15~17のいずれか1つに記載の方法。
19. 抗IL-6抗体がMEDI5117である、項目18に記載の方法。
20. 生物学的サンプルが血漿サンプルである、項目11~19のいずれか1つに記載の方法。
21. 対象がヒトである、項目1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0307】
[実施例]
5.12. 実施例
以下の実施例は、例示の目的で提供され、限定するものではない。
【0308】
[実施例1]
5.12.1. TMPRSS6 SNP rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者においてのみ、慢性腎疾患の患者におけるEPO用量及び全生存率は血清IL-6及びCRPレベルと相関する
ペプチドホルモンであるヘプシジンは、全身の鉄分ホメオスタシスにおいて中心的な役割を果たす。Hentzeら、Cell 142:24~38頁 (2010)。ヘプシジン発現は、TMPRSS6遺伝子の産物、マトリプターゼ-2、II型膜貫通セリンプロテアーゼの影響を受けることが知られている。TMPRSS6遺伝子の一般的な変異体は、鉄分状態と相関することが示されており(Benyaminら、Nature Genetics 41(11):1173~1175頁 (2009))、TMPRSS6遺伝子の特定の突然変異は、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)を引き起こすことが示されている(Finbergら、Nature Genetics 40(5):569~571頁(2008))。SNP rs855791(2321G→A; A736V)は、ヘプシジン発現及び血液ヘモグロビンレベルの自然発生変動と関連しているTMPRSS6遺伝子における自然発生の変動である。
【0309】
末期腎疾患において、TMPRSS6 rs855791 SNPの遺伝子型が貧血の程度を予測するかどうかを決定するために、慢性腎疾患患者の臨床試験で以前に収集されたデータを、新たに決定されたSNP遺伝子型決定と併せて分析した。ヘプシジンの発現はまたIL-6によって調節されるため(Casanovasら、PLOS Computational Biol. 10(1):e1003421 (2014))、さらにデータを分析して、血清IL-6レベルが末期腎疾患における貧血の程度を予測できるかどうかを決定した。
【0310】
方法
ストックホルム-ウプサラ(スウェーデン)地域における6つの透析部において、2003年10月から2004年9月までの間に募集され、MIMICK1、MIMICK2(慢性腎疾患における炎症マーカーのマッピング)及びMIA(栄養不良、炎症及びアテローム性動脈硬化症)コホートに登録されたN=257人の患者からのデータは、鉄分欠乏ではなく、著しい貧血ではない、血液透析で安定した患者を選択するために、フェリチン>100ng/ml、及びHb>10mg/dLの一般的な透析基準に基づいてN=208に集約され、それにより、鉄分処理をヘモグロビンレベルから離す可能性のある因子を有する患者を排除した。
【0311】
エリスロポエチン(EPO)用量(IU/kg/週)、IL-6血清レベル(pg/ml)、CRP血清レベル(mg/L)、生存率(月数)及びSNP rs855791でのTMPRSS6遺伝子型を含むすべての患者の臨床データを照合し、統計分析ソフトウェア(SPSS Statistics Desktop、IBM)を使用して分析した。試験したTMPRSS6対立遺伝子並びにそれらのヌクレオチド及びアミノ酸を表1に示す。
【0312】
【0313】
コホートをrs855791亜群(ホモ接合性AA、ヘテロ接合性AG、ホモ接合性GG)に分離し、各遺伝子型群を血清IL-6レベル(例えば、IL-6<5pg/ml対>10pg/ml及びIL-6<5pg/ml対>15pg/ml)又は血清CRPレベル(CRP<2mg/L対>2mg/L)の三分位又は四分位に分離した。上部及び下部の三分位及び四分位におけるEPO用量間の比較を行った。ステューデントT-検定による遺伝子型群内及びANOVAによる群間の統計分析を行った。
【0314】
結果
各患者のEPO用量は、正常なヘモグロビンレベルを達成するために治療する医師によって滴定されていたため、EPO用量は根底にある貧血の程度の代理となるものとして使用することができた。マイナー対立遺伝子(A/A)に対するホモ接合性である対象におけるEPO用量は、IL-6の変動に対して比較的感受性でないことが見出された(
図1A;左パネル)。しかしながら、メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する対象、すなわち、メジャー対立遺伝子(G)がヘテロ接合(A/G)又はホモ接合(G/G)である患者におけるEPO用量は、それらのIL-6レベルに感受性であった(
図1B;右パネル)。これらの後者の対象において、血清IL-6のレベルの増加(例えば、>5pg/ml)は、EPO用量の増加と関連していた。
【0315】
特定の理論に縛られるつもりはないが、マイナー対立遺伝子でのホモ接合は、鉄分処理におけるIL-6の影響を除去した。したがって、これらの患者(A/A)におけるEPO用量は、IL-6レベルにかかわらずほぼ同じであった。
【0316】
TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子(A)に対してホモ接合性である対象は、IL-6レベルにかかわらず同様の死亡率を示した(
図2A)。しかしながら、メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する対象、すなわち、メジャー対立遺伝子(G)がヘテロ接合又はホモ接合性である患者における生存は、IL-6レベルに従って変化した(
図2B)。実際、TMPRSS6のG対立遺伝子は、慢性腎疾患ステージ5透析対象におけるIL-6レベルの上昇に応答してより高い全原因死亡率を与えた。メジャー対立遺伝子(G)の少なくとも1つのコピーを有する対象において、IL-6レベル≧5pg/ml(すなわち、中程度及び最高の三分位IL-6)は、IL-6レベル<5pg/ml(すなわち、低い三分位IL-6)と比較して死亡率の増加と関連していた(
図2B)。
【0317】
また、急性期反応物であるCRP(炎症のマーカー)のレベルはまた、メジャー対立遺伝子(G)に対してヘテロ接合又はホモ接合性である対象においてEPO用量の増加と相関したが、マイナーな対立遺伝子に対してホモ接合性である患者においては相関しなかった(
図3)。
【0318】
検討
図1に示すように、TMPRSS6 rs855791 SNPでメジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者においてのみ、臨床的に滴定されたEPO用量として測定された根底にある貧血の程度は、IL-6レベルと相関していた。これらの患者において、血清IL-6レベルが高いほど、必要とされるEPO用量が高くなる(
図1B)。対照的に、マイナー対立遺伝子の2つのコピーを有する患者における貧血の程度は、血清IL-6レベルと相関しなかった(
図1A)。
【0319】
同様に、全生存率は、TMPRSS6 SNP rs855791のメジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者においてのみIL-6レベルと相関していた。TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する対象において、生存率は血清IL-6レベルと逆相関し、血清IL-6レベルの最高の三分位の患者は、IL-6レベルの最低の三分位のものよりも統計的に有意に劣った生存を示した(
図2B)。対照的に、rs855791でのマイナー対立遺伝子に対してホモ接合性である患者の全生存率は、IL-6レベルによって影響を受けなかった(
図2A)。
【0320】
理論に縛られるつもりはないが、TMPRSS6メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者において、血清IL-6の増加は、ヘプシジン発現の増加を引き起こし、それによって貧血を増加させる可能性がある。増加した死亡リスクは、調節不全の鉄分代謝、結果として生じる貧血、及び/又はEPOなどの赤血球新生刺激剤の増加した用量の結果である。これらの相関が因果関係を反映している場合、IL-6レベル又はIL-6シグナル伝達の減少は、慢性腎疾患患者であるが、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有するそれらの患者においてのみ、貧血を減少させ、必要なEPO用量を減少させ、生存率を増大し、IL-6の血清レベルが上昇したそれらの患者において最も効果的であるという可能性を生じさせる。
【0321】
[実施例2]
5.12.2.急性心筋梗塞後の死亡リスク及び心不全のリスクはTMPRSS6 SNP rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者においてのみIL-6血清レベルと相関する
TMPRSS6 rs855791遺伝子型が慢性疾患というよりはむしろ急性疾患の患者のIL-6感受性に影響を与えるかどうかを決定するために、急性冠症候群のために入院した患者の臨床試験において以前に収集されたデータを新たに決定されたSNP遺伝子型決定とともに分析した。
【0322】
方法
血小板阻害及び患者転帰(Platelet Inhibition and Patient Outcomes)(PLATO)の多施設研究に以前に登録された対象からのデータを分析した。患者が過去24時間に症状が現れた急性冠症候群のために入院していた場合、患者は、PLATO登録資格を得た。死亡率及び心不全の存在は、これらの対象において、心筋梗塞の30日後に開始されて測定された。
【0323】
結果
TMPRSS6 rs855791 SNPマイナー対立遺伝子(A)に対してホモ接合性である対象の死亡率は、IL-6の変動と相関しなかった(
図4A)。しかしながら、メジャー対立遺伝子(G)の1つ又は2つのコピーは、心筋梗塞後の対象におけるIL-6レベルの上昇に応答して、より高い全原因死亡率を与えた(
図4B)。したがって、TMPRSS6は、心筋梗塞後のIL-6媒介性の死亡リスクを調節した。
【0324】
IL-6媒介性心不全リスクにおけるTMPRSS6遺伝子型の影響はまた、PLATOに登録された対象において、心筋梗塞後の30日目から開始されて測定された。マイナー対立遺伝子(A)に対するホモ接合性である対象における心不全は、IL-6の変動と相関しなかった(
図5A)。しかしながら、TMPRSS6のG対立遺伝子は、心筋梗塞後の対象におけるIL-6レベルの上昇に応答してより高い心不全率を与えた(
図5B)。したがって、TMPRSS6は、心筋梗塞後の心不全のIL-6媒介性リスクを調節した。
【0325】
検討
これらのデータは、TMPRSS6遺伝子型、IL-6レベル、及び有害な臨床転帰の間の相関は、慢性腎疾患を有する患者に限定されないことを実証する。理論に縛られるつもりはないが、TMPRSS6メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有する患者において、血清IL-6の増加はヘプシジン発現の増加を引き起こし、その結果、心筋細胞における鉄分の隔離が増加し、続いて鉄分を媒介した細胞毒性をもたらす。これらの相関が因果関係を反映している場合、IL-6レベル又はIL-6シグナル伝達の減少は、急性冠症候群患者であるが、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有するそれらの患者においてのみ、急性冠症候群患者の心不全及び死亡率を減少させ、IL-6の血清レベルが上昇したそれらの患者において最も効果的であるという可能性を生じさせる。
【0326】
[実施例3]
5.12.3. iPS由来のヒト心筋細胞のインビトロ研究は、TMPRSS6遺伝子型とIL-6媒介細胞毒性の因果関係を確認する
実施例1及び2において観察された相関は、IL-6媒介性シグナル伝達の減少が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピー、IL-6レベルの上昇、並びに貧血又はヘプシジン媒介性の細胞毒性のいずれかを有する患者において、臨床的恩恵を与えるべきであることを示唆しているが、観察された相関は因果関係を証明するには不十分である。したがって、ヘプシジン発現及び虚血性損傷に対する細胞感受性におけるBMP及びBMP+IL-6の効果を調べるために、TMPRSS6の変異体をトランスフェクトしたヒト誘導性多能性細胞由来の心筋細胞(iPS-CM)において実験を行った。
【0327】
5.12.3.1. 方法
ヒトiPS由来の心筋細胞の培養 - iCell心筋細胞(Cellular Dynamics International、CDI Inc.)は、iCell心筋細胞プレーティング培地(CDI Inc.)を含む0.1%ゼラチンコートした6ウェル又は96ウェル細胞培養プレート上に播種された。プレーティングの48時間後、プレーティング培地を維持培地(CDI Inc.)と置き換えた。維持培地は、実験が行われる日まで隔日で置き換えられた。
【0328】
模擬虚血/再酸素化プロトコール - iPS心筋細胞は、以前に報告されるように(Das、A.、 Xi、L.、 and Kukreja、K. C. (2005) J. Biol. Chem. 280: 12944~12955頁; Das A、Smolenski A、Lohmann SM、Kukreja RC. (2006) J. Biol Chem. 281(50):38644~52頁)、細胞培地を、118 mM NaCl、24 mM NaHCO3、1.0 mM NaH2PO4、2.5 mm CaCl2-2H2O、1.2 mM MgCl2、20 mM乳酸ナトリウム, 16 mM KCl, 10mM 2-デオキシグルコース(pHを6.2に調整)を含有する「虚血緩衝液」で置き換えることにより、90分間、模擬虚血(SI)に供された。細胞は、SI期間全体にわたって、1~2%O2及び5%CO2を調整するトリガスインキュベーター中、37℃でインキュベートされた。再酸素化(RO)は、酸素正常な条件下で虚血性緩衝液を正常細胞培地で置き換えることによって達成された。それぞれ2又は18時間の再酸素化後の細胞壊死。iCellは上記のように4時間SI及び24時間ROに供された。
【0329】
細胞生存率及びアポトーシスの評価 - トリパンブルー排除アッセイを行って、以前に報告されているように細胞壊死をアセスメントした(Das、A.、 Xi、L.、及び Kukreja、K. C. (2005) J. Biol. Chem. 280、12944~12955頁; Das A、Smolenski A、Lohmann SM、Kukreja RC. (2006) J. Biol. Chem. 281(50):38644~52頁)。
【0330】
iCell心筋細胞のトランスフェクション - プレーティング後の8日目に、培地を新鮮な維持培地と置き換え、細胞を4時間インキュベートした。製造者(Promega Corp.、 Madison、WI)の指示に従って、ViaFect(商標)トランスフェクション試薬を使用して、細胞にpCMV6-XL5 TMPRSS6(K523)又はpCMV6-XL5 TMPRSS6(K523)V763Aをトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をさらなる実験に供した。
【0331】
ウェスタンブロット分析 - ウェスタンブロットは、以前に報告されるように(Das、A.、 Xi, L.、及び Kukreja、K. C. (2005) J. Biol. Chem. 280、12944~12955頁; Das A、Smolenski A、Lohmann SM、Kukreja RC. (2006) J. Biol. Chem. 281(50):38644~52頁)行った。全可溶性タンパク質を溶解緩衝液(Cell Signaling、MA)を用いて細胞から抽出した。ホモジネートを10,000×gで5分間、4℃で遠心分離し、上清を回収した。タンパク質(各サンプルから50μg)を12%アクリルアミドゲルで分離し、ニトロセルロース膜に移し、次に、TBST(10mm Tris-HCl、pH7.4、100mm NaCl、0.1%Tween 20)中の5%脱脂粉乳で1時間ブロッキングした。次に、膜は、各タンパク質について1:000に希釈したウサギモノクローナル/ポリクローナル又はヤギポリクローナル一次抗体とともに一晩インキュベートした。抗体は、すなわち、ホスホ-Beclin-1(Ser93)(D9A5G)ウサギmAb、Beclin-1、SQSTM1/p62、LC3A/B(D3U4C)XP(登録商標)ウサギmAb、ホスホ-Akt(Ser473)(D9E)XP(登録商標)ウサギmAb、Akt(pan)(C67E7)ウサギmAb、ホスホ-S6リボソームタンパク質(Ser240/244)(D68F8)XP(登録商標)ウサギmAb、S6リボソームタンパク質(5G10)ウサギmAb(Cell Signaling製、MA)、抗マトリプターゼ2(TMPRSS6)及び抗SLC40A1(フェロプルチン)(Abcam Company製、MA)及びヤギポリクローナルアクチン-HRP (Santa Cruz Biotechnology製TX)である。次に、膜を抗ウサギ西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(1:2000希釈、Amersham Biosciences)とともに2時間インキュベートした。ブロットを化学発光システムを使用して発色させ、バンドをスキャンし、デンシトメトリー分析によって定量した。
【0332】
リアルタイムPCR-Taqmanアッセイ - 製造元のプロトコール(QIAGEN Sciences、MD, USA)に従ってmiRNeasyミニキットを使用して、低分子RNAを含む総RNAを単離した。単離したRNAの濃度及び純度は、Nanodrop ND-1000分光光度計(Agilent technologies、CA、USA)を使用して測定した。簡潔には、1μgの総RNAを、高容量cDNA合成キット(Applied Biosystems、CA、USA)を使用してランダムヘキサマーを用いてcDNAに変換した。逆転写反応は、以下のPCR条件:25℃で10分間、37℃で120分間及び85℃で5分間を使用して行った。リアルタイムPCRは、以下のPCRサイクル条件:95℃で10分間、95℃で15秒間及び60℃で60秒間にて、Taqmanアンプリコン特異的プローブ(Applied Biosystems、CA, USA)Hamp (CGGCTCTGCAGCCTTG)(配列番号20)を使用して行った。Hampの発現は、GAPDH(CTTCCAGGAGCGAGATCCCGCTAA)(配列番号21)ハウスキーピング遺伝子に対して正規化された。相対的な遺伝子発現は、2-ΔΔCt法を使用して分析された。
【0333】
TMPRSS6突然変異誘発及びiPS細胞のトランスフェクション - pCMV6-XL5 TMPRSS6は、Origene Technologies(Rockville、MD)から購入し、カタログ番号SC306623はGenBankアクセッション番号NM_153609に対応していた。このクローンは、アミノ酸の変化をもたらす突然変異K253Aを含む。部位特異的突然変異誘発を行って、253位のアミノ酸を基準リジン(K)に復帰させた。復帰が確認されたら、V736A突然変異を導入するために部位特異的突然変異誘発を行った。すべての突然変異誘発反応は、Agilent Technologies QuikChange II XL部位特異的突然変異誘発キット(Santa Clara、CA、カタログ番号200521)を使用して行った。すべてのベクターを配列決定して確認した。使用したプライマー配列は以下の通りであった:アンチセンス(as)TMPRSS6 E253K GCATGAGGTCCTTGGGGCCCTGCAG(配列番号22)、センス(s)TMPRSS6 E253K CTGCAGGGCCCCAAGGACCTCATGC(配列番号23)、アンチセンス(as)TMPRSS6 V736A CCTGGTAGCGATAGGCCTCGCTGCACAGG(配列番号24)、センス(s)TMPRSS6 V736A CCTGTGCAGCGAGGCCTATCGCTACCAGG(配列番号25)。
【0334】
5.12.3.2. 結果
ヒトiPS-CMは、ベースライン時にマトリプターゼ-2を最小限しか発現しない。細胞にホモ接合性メジャー対立遺伝子及びホモ接合性マイナー対立遺伝子の心筋細胞をそれぞれ模倣する、TMPRSS6 rs855791SNPメジャー対立遺伝子によってコードされるマトリプターゼ-2 736A、又はそのマイナー対立遺伝子によってコードされるマトリプターゼ-2 736Vの構成的発現を駆動する構築物をトランスフェクトした。
【0335】
ヘプシジン発現は、BMP6/SMAD及びIL-6/STATシグナル伝達経路の両方によって調節され、BMPとIL-6の両方は、それらのそれぞれの受容体を介して作用して、ヘプシジン発現の増加を促進する。Casanovasら、PLOS Comp. Biol. 10(1):e1003421 (2014)。メジャー対立遺伝子及びマイナー対立遺伝子のiPS心筋細胞は、IL-6レベル(又はシグナル伝達)が減少する臨床的介入をモデル化するために、両方のシグナル伝達経路のアゴニスト-組換えBMP2及びIL-6-を用いて、又はBMP2だけを用いてインビトロで処理された。対照のiPS細胞はいずれのアゴニストでも処理されなかった。細胞死亡率は、正常酸素圧(正常酸素)下で、また低酸素状態をシミュレートした後、再酸素化(再灌流)の条件下で測定された。
【0336】
図6Aは、正常酸素レベルで細胞を処理した場合の結果を示す。TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子(「736Vマイナー対立遺伝子」)のみを発現するiPS心筋細胞は、IL-6シグナル伝達の排除により有意に影響を受けない(「n.s.」):トリパンブルー陽性細胞のパーセントとして測定した細胞死亡率は、BMP2+IL-6による処置と比較して、細胞をBMP2単独で処理した場合、有意に減少する。対照的に、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を発現するiPS心筋細胞は、IL-6シグナル伝達が排除された場合、統計的に有意により低い細胞死を示す。
【0337】
図6Bは、細胞を低酸素に供し、続いて再酸素化した場合の結果を示す。正常酸素条件と比較して、低酸素/再酸素化は、iPS心筋細胞に対して有意に毒性であり、正常酸素条件下の対照細胞の約20%と比較して、メジャー及びマイナー対立遺伝子の対照細胞の約40%が死滅した(
図6B~6Aを比較)。このバックグラウンド毒性の増加に対して、マイナー対立遺伝子のiPS心筋細胞は、IL-6シグナル伝達の排除によって有意に影響を受けない:細胞死亡率は、BMP2 + IL-6による処置と比較して、細胞をBMP2単独で処理した場合、わずかに減少させる。対照的に、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を発現するiPS心筋細胞は、IL-6シグナル伝達が排除された場合に、統計的に有意により低い細胞死を示す。
【0338】
5.12.3.3. 検討
これらのデータは、実施例1及び実施例2の臨床試験データの事後解析から導き出された推論を強化する:IL-6シグナル伝達の減少は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を発現する心筋細胞であるが、マイナー対立遺伝子のみを発現しない心筋細胞においてIL-6媒介毒性を減少させるのに有効であり得る。理論に縛られるつもりはないが、メジャー対立遺伝子のiPS心筋細胞におけるIL-6により誘発される毒性の増加は、ヘプシジン発現におけるIL-6媒介性の増加から生じ得、その結果、細胞内で鉄分の隔離が増加し、続いて鉄分を媒介した細胞毒性をもたらす。
【0339】
[実施例4]
5.12.4. 抗IL-6療法は、ヒトTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子のホモ接合体に遺伝子型的に類似したラットにおける心腎臓症候群のモデルにおける現在のケアの標準と同程度に有効である
実施例1で分析されたMIMICK研究に登録された患者などの慢性腎疾患を有する患者は、しばしば死亡率の主要な原因である心機能の障害を発症する。原発性慢性腎疾患に続くこの二次的心臓損傷は、心腎臓症候群4型(CRSタイプ4)と呼ばれる。
【0340】
実施例1及び3のデータによって示唆されるように、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有するCRS4患者における治療として抗IL-6療法が有効であるかどうかを試験するために、本発明者らは、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトに遺伝子型的に類似したCRS4のモデルを使用した。
【0341】
【0342】
0週目に、CRS動物において心筋梗塞が誘導された。2週目に、腎切除術を行った。対照群は、代わりにシャム手術を受けた。腎切除の前に、対象の様々なアセスメントを行った。アセスメントには、血清クレアチニン、糸球体濾過率、尿中の24時間タンパク質レベル、心エコー検査、尾部カフ血圧、並びに血漿及び尿中のバイオマーカーの測定が含まれた。
【0343】
腎切除後の1日目に治療を開始した。動物は、(i)対照処置、(ii)抗IL-6療法、及び(iii)ケア療法の標準の3つの群に分けられた。抗IL-6療法は、げっ歯類における使用に適した抗IL-6抗体であった。ケア療法の標準は、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤であるペリンドプリルの投与であった。治療の開始時に、すべての群の対象のアセスメントを行った。アセスメントには、血清クレアチニン、糸球体濾過率、24時間のタンパク質レベル、及び血漿中のバイオマーカーの測定が含まれた。
【0344】
腎切除後の3日目及び7日目に、すべての群の対象のアセスメントを行った。アセスメントには、3日目の血清クレアチニン及び血漿中のバイオマーカーの測定、7日目の血清クレアチニン、糸球体濾過率、24時間のタンパク質レベル、心エコー検査、血圧、及び血漿中のバイオマーカーの測定が含まれた。
【0345】
6週目で対象を犠牲にした。犠牲にする前に、すべての群における対象の様々なアセスメントを行った。アセスメントには、血清クレアチニン、糸球体濾過率、24時間のタンパク質レベル、血圧、血漿中のバイオマーカー、心エコー検査、及び圧力-体積ループ分析の測定が含まれた。犠牲後、組織学的評価(すなわち、心臓組織のシリウスレッド染色)のために、すべての群の対象から組織を採取した。
【0346】
図8A~8Dは、CRSを含まないラット(「シャム」)、薬理学的に無関係なアイソタイプ対照抗体で処理されたCRS動物(「アイソタイプ」)、抗IL-6抗体で処置されたCRS動物(「IL-6 ab」)、及び
図7において要約された心腎臓症候群モデルにおいてケアACE阻害剤の標準で処理されたCRS動物(「Peri」)の心臓駆出率を示す。
【0347】
図8Aは、心筋梗塞の2週間後、しかし、腎切除前、及び処置前のすべての群のベースライン駆出率レベルを示し、実験的に誘発された心筋梗塞が心臓駆出率の有意な低下を引き起こすことを実証した。
図8Bは、腎切除の1週間後、処置の1週間後のすべての群の駆出率レベルを示すプロットである。
図8Cは、腎切除の2週間後、処置の2週間後のすべての群の駆出率レベルを示すプロットである。
図8Dは、腎切除の4週間後、処置の4週間のすべての群の駆出率レベルを示すプロットである。結果を平均+/-SEMとして表す。
【0348】
処置の4週間後、処置群の両方、すなわち抗IL-6で処置された群とケアACE阻害剤療法の標準で処置された群は、アイソタイプ対照群と比較して統計的に有意に増加した駆出率レベルを示した(
図8D)(p<0.001)。処置の4週後に測定された抗IL-6及びケアの標準の群における同様の駆出率レベルは、抗IL-6療法がACE阻害剤ペリンドプリル(ケア療法の標準)と同等の効力を有することを示し、これは、抗IL-6療法が、心臓駆出率の変化によって測定される、ケア療法の標準と同等の心腎臓症候群モデルにおける心機能の保存において治療効力を有することを実証した。
【0349】
心臓収縮性の測定(
図9)は、抗IL-6療法がまた、ACE阻害剤によるケア療法の標準と同等の効果を有することを示した。処置の4週間後、抗IL-6及びケア療法の標準で処置された群の心臓収縮性は、対照のアイソタイプ群の心臓収縮性より有意に増加した。抗IL-6及びケアの標準の群における同様の心臓収縮性は、抗IL-6療法が、収縮性によって測定すると、ACE阻害剤ペリンドプリル(ケア療法の標準)と同等の心腎臓症候群モデルにおいて心機能の保存に有効であることを実証している。
【0350】
すべての群の動物から採取された心臓組織における線維症の測定はまた、抗IL-6療法がケア療法の標準と同等の効果を有することを実証した(
図10A~10C)。心臓組織における線維症は、2つの領域:「正常」領域及び「線維症周辺」領域における線維性組織の面積の割合を測定することによって定量化された。「正常」領域の例は、
図10Aの顕微鏡写真に示されている組織片の描写された部分によって示される。顕微鏡写真の挿入図は、「正常」領域の拡大図を示し、「正常」領域の小さな部分が線維化組織を有することを示している。「線維症周辺」領域は、線維性組織の周辺にある「正常」領域における組織の領域である。
【0351】
図10B及び10Cにおけるプロットは、抗IL-6又はケア療法の標準で処置された群の対象由来の心臓組織が、両方とも「正常」領域(
図10B)又は「線維症周辺」領域(
図10C)において測定された場合、アイソタイプ対照群と比較して線維性組織の面積の割合が有意に低下したことを示す。さらに、抗IL-6及びケア療法の標準の群で測定された線維性組織の面積の割合は、(「正常」領域と「線維症周辺」領域の両方において)類似し、抗IL-6がACE阻害剤ペリンドプリル(ケア療法の標準)と同等の抗線維化効果を有することを示した。
【0352】
これらのデータは、抗IL-6剤による処置が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトと遺伝子型的に類似する動物における心腎臓症候群のインビボモデルにおける心臓損傷及び回復機能を減少させるのに有効であることを実証する。
【0353】
[実施例5]
5.12.5. 抗IL-6療法は、ヒトTMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子ホモ接合体に遺伝子型的に類似したマウスにおける急性心筋梗塞のモデルにおいて心機能の保存に有効である
実施例2及び3のデータは、IL-6レベル又はIL-6シグナル伝達を減少させることは、急性冠症候群の患者であるが、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有するそれらの患者においてのみ、心不全及び死亡率を減少させることができ、IL-6の血清レベルが上昇したそれらの患者において最も効果的であることを示唆した。
【0354】
げっ歯類の研究は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトに遺伝子型的に類似したマウスにおける急性心筋梗塞後の抗IL-6療法の効果を決定するために行われた。
【0355】
図11A及び11Bは、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子に対してホモ接合性であるヒトに遺伝子型的に類似したマウスにおいて心筋梗塞が誘導されたインビボモデルからのデータを示す。対照群は治療を受けなかった。実験群を抗マウスIL-6抗体で処置した。
図11Aは、抗IL-6による処置が駆出率の統計的に有意な改善をもたらすことを示す。
図11Bは、抗IL-6による処置が、心臓駆出率(cardiac fractional)の短縮として測定される、収縮性における統計的に有意な改善をもたらすことを示す。データは、心筋梗塞の直後に与えられた抗IL-6療法が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子を有するヒト患者に遺伝子型的に類似するげっ歯類における左心室の機能回復を改善することを実証している。
【0356】
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]ヘプシジン媒介性障害を治療するための方法であって、
治療有効量のIL-6アンタゴニストを、ヘプシジン媒介性障害を有する患者に投与することを含み、
ここで、患者は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが決定されている、方法。
[実施形態2]患者が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが以前に決定されている、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]患者が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定する初期ステップをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
[実施形態4]患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
[実施形態5]患者は、CRPの処置前血清レベルが上昇している、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
[実施形態6]ヘプシジン媒介性障害が慢性疾患の貧血である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[実施形態7]患者は男性であり、処置前ヘモグロビン(Hb)レベルが14g/dl未満である、実施形態6に記載の方法。
[実施形態8]患者は、処置前Hbレベルが13g/dl未満である、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]患者は、処置前Hbレベルが12g/dl未満である、実施形態8に記載の方法。
[実施形態10]患者は、処置前Hbレベルが11g/dl未満である、実施形態9に記載の方法。
[実施形態11]患者は女性であり、処置前Hbレベルが12g/dl未満である、実施形態6に記載の方法。
[実施形態12]患者は、処置前Hbレベルが11g/dl未満である、実施形態11に記載の方法。
[実施形態13]患者は、処置前Hbレベルが10g/dl未満である、実施形態12に記載の方法。
[実施形態14]患者は、処置前Hbレベルが9g/dl未満である、実施形態13に記載の方法。
[実施形態15]患者は男性であり、処置前ヘマトクリットが40%未満である、実施形態6~10のいずれかに記載の方法。
[実施形態16]患者は、処置前ヘマトクリットが35%未満である、実施形態15に記載の方法。
[実施形態17]患者は、処置前ヘマトクリットが30~34%である、実施形態16に記載の方法。
[実施形態18]患者は、処置前ヘマトクリットが36%未満である、実施形態6及び11~14のいずれかに記載の方法。
[実施形態19]患者は、処置前ヘマトクリットが30%未満である、実施形態18に記載の方法。
[実施形態20]患者は、処置前ヘマトクリットが26~29%である、実施形態19に記載の方法。
[実施形態21]患者は、ESAの少なくとも1回の処置前投与を受けている、実施形態6~20のいずれかに記載の方法。
[実施形態22]患者は、ESAの少なくとも1回の処置前投与を受けていて、正常なHbレベル又は正常なヘマトクリットを有する、実施形態6に記載の方法。
[実施形態23]患者は、鉄補給の少なくとも1回の処置前投与を受けている、実施形態6~20のいずれかに記載の方法。
[実施形態24]患者は、鉄補給の少なくとも1回の処置前投与を受けていて、正常なHbレベル又は正常なヘマトクリットを有する、実施形態6に記載の方法。
[実施形態25]患者は、血液又は濃厚赤血球の少なくとも1回の処置前輸血を受けている、実施形態6~20のいずれかに記載の方法。
[実施形態26]患者は、血液又は濃厚赤血球の少なくとも1回の処置前輸血を受けていて、正常なHbレベル又は正常なヘマトクリットを有する、実施形態6に記載の方法。
[実施形態27]IL-6アンタゴニストは、患者のHbレベルを処置前レベルを上回るように増加させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態6~26のい
ずれかに記載の方法。
[実施形態28]IL-6アンタゴニストは、患者のヘマトクリットを処置前レベルを上回るように増加させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態6~27のいずれかに記載の方法。
[実施形態29]IL-6アンタゴニストは、患者のHbレベルを処置直前に存在するレベルを下回るように減少させることなく、患者のESA用量の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態21又は22に記載の方法。
[実施形態30]IL-6アンタゴニストは、患者のヘマトクリットを処置直前に存在するレベルを下回るように減少させることなく、患者のESA用量の減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態21又は22に記載の方法。
[実施形態31]IL-6アンタゴニストは、処置前のESA用量と比較して、患者のESA用量の少なくとも10%減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態21、22、29、又は30のいずれかに記載の方法。
[実施形態32]IL-6アンタゴニストは、処置前のESA用量と比較して、患者のESA用量の少なくとも20%減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態31に記載の方法。
[実施形態33]IL-6アンタゴニストは、処置前のESA用量と比較して、患者のESA用量の少なくとも50%減少を可能にするのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態32に記載の方法。
[実施形態34]IL-6アンタゴニストは、機能的鉄分欠乏を回復するのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態6~33のいずれかに記載の方法。
[実施形態35]慢性疾患は、慢性腎疾患(CKD)である、実施形態6~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態36]患者は、KDOQIステージ1慢性腎疾患、KDOQIステージ2慢性腎疾患、KDOQIステージ3慢性腎疾患、KDOQIステージ4慢性腎疾患、又はKDOQIステージ5慢性腎疾患を有する、実施形態35に記載の方法。
[実施形態37]患者は、KDOQIステージ5慢性腎疾患を有する、実施形態36に記載の方法。
[実施形態38]患者は、心腎臓症候群(CRS)を有する、実施形態35に記載の方法。
[実施形態39]患者は、CRSタイプ4を有する、実施形態38に記載の方法。
[実施形態40]患者は、少なくとも1回の処置前透析治療を受けている、実施形態35~39のいずれかに記載の方法。
[実施形態41]IL-6アンタゴニストは、年齢が合致し、疾患が合致した歴史的対照と比較して、心血管(CV)死亡率を減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態35~40のいずれかに記載の方法。
[実施形態42]慢性疾患は、慢性炎症性疾患である、実施形態6~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態43]慢性炎症性疾患は、関節リウマチ(RA)である、実施形態42に記載の方法。
[実施形態44]患者は、5.1を超える処置前DAS28スコアを有する、実施形態43に記載の方法。
[実施形態45]患者は、3.2~5.1の処置前DAS28スコアを有する、実施形態43に記載の方法。
[実施形態46]患者は、2.6未満の処置前DAS28スコアを有する、実施形態43に記載の方法。
[実施形態47]患者の処置前RAは、中程度に活性であるから重度に活性である、実施形態43に記載の方法。
[実施形態48]患者は、メトトレキセートの少なくとも1回の処置前投与を受けている、実施形態43~47のいずれかに記載の方法。
[実施形態49]患者は、TNFαアンタゴニストの少なくとも1回の処置前投与を受けている、実施形態43~48のいずれかに記載の方法。
[実施形態50]TNFαアンタゴニストは、エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、セルトリズマブ、及びゴリムマブからなる群から選択される、実施形態49に記載の方法。
[実施形態51]患者は、IL-6アンタゴニストの少なくとも1回の処置前投与を受けている、実施形態43~47のいずれかに記載の方法。
[実施形態52]処置前IL-6アンタゴニストは、トシリズマブである、実施形態51に記載の方法。
[実施形態53]処置前IL-6アンタゴニストは、トファシチニブである、実施形態51に記載の方法。
[実施形態54]処置IL-6アンタゴニストがMEDI5117である、実施形態51~53のいずれかに記載の方法。
[実施形態55]慢性炎症性疾患は、若年性特発性関節炎、強直性脊椎炎、プラーク乾癬、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、実施形態42に記載の方法。
[実施形態56]慢性疾患は、癌である、実施形態6~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態57]癌は、固形腫瘍、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、血液癌、多発性骨髄腫、白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、及び肝臓腺腫からなる群から選択される、実施形態56に記載の方法。
[実施形態58]慢性疾患は、慢性感染症である、実施形態6~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態59]慢性疾患は、うっ血性心不全(CHF)である、実施形態6~34のいずれかに記載の方法。
[実施形態60]ヘプシジン媒介性障害は、鉄剤不応性鉄欠乏性貧血(IRIDA)である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[実施形態61]ヘプシジン媒介性障害は、急性冠症候群である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[実施形態62]患者は、IL-6アンタゴニストの初回投与に先立って60日以内に心筋梗塞(MI)に罹患している、実施形態61に記載の方法。
[実施形態63]患者は、IL-6アンタゴニストの初回投与に先立って30日以内にMIに罹患している、実施形態62に記載の方法。
[実施形態64]患者は、IL-6アンタゴニストの初回投与に先立って48時間以内にMIに罹患している、実施形態63に記載の方法。
[実施形態65]患者は、IL-6アンタゴニストの初回投与に先立って24時間以内にMIに罹患している、実施形態64に記載の方法。
[実施形態66]IL-6アンタゴニストが、処置前レベルと比較して、心筋収縮性を改善するのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態61~65のいずれかに記載の方法。
[実施形態67]IL-6アンタゴニストは、処置前レベルと比較して、心臓駆出率を改善するのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態61~66のいずれかに記載の方法。
[実施形態68]IL-6アンタゴニストは、処置前レベルと比較して、心臓線維症を減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態61~67のいずれかに記載の方法。
[実施形態69]ヘプシジン媒介性障害は、キャッスルマン病である、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[実施形態70]ヘプシジン媒介性障害の治療を改善するための方法であって、
ヘプシジン媒介性障害を有する患者にIL-6アンタゴニストの投与を中止することを含み、
ここで、患者は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であると決定されている、方法。
[実施形態71]患者は、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であると以前に決定されている、実施形態70に記載の方法。
[実施形態72]患者が、TMPRSS6 rs855791マイナー対立遺伝子に対してホモ接合性であることを決定する初期ステップをさらに含む、実施形態70に記載の方法。
[実施形態73]慢性炎症性の貧血を伴わない患者におけるIL-6媒介性炎症性障害を治療するための方法であって、
貧血を伴わないIL-6媒介性炎症性疾患を有する患者に治療有効量のIL-6アンタゴニストを投与することを含み、
ここで、患者は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが決定されている、方法。
[実施形態74]患者は、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが以前に決定されている、実施形態73に記載の方法。
[実施形態75]患者が、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することを決定する初期ステップをさらに含む、実施形態73に記載の方法。
[実施形態76]患者は、IL-6の処置前血清レベルが上昇している、実施形態1~75のいずれかに記載の方法。
[実施形態77]患者は、2.5pg/mlを超える処置前血清IL-6レベルを有する、実施形態76に記載の方法。
[実施形態78]患者は、5pg/mlを超える処置前血清IL-6レベルを有する、実施形態77に記載の方法。
[実施形態79]患者は、7.5pg/mlを超える処置前血清IL-6レベルを有する、実施形態78に記載の方法。
[実施形態80]患者は、10pg/mlを超える処置前血清IL-6レベルを有する、実施形態79に記載の方法。
[実施形態81]患者は、12.5pg/mlを超える処置前血清IL-6レベルを有する、実施形態80に記載の方法。
[実施形態82]IL-6アンタゴニストは、患者の血清中の遊離IL-6レベルを処置前レベルを下回るように減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態76~81のいずれかに記載の方法。
[実施形態83]IL-6アンタゴニストは、遊離IL-6レベルを、処置前レベルと比較して少なくとも10%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態82に記載の方法。
[実施形態84]IL-6アンタゴニストは、患者の血清中の遊離IL-6レベルを、処置前レベルと比較して少なくとも20%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態83に記載の方法。
[実施形態85]IL-6アンタゴニストは、患者の血清中の遊離IL-6レベルを、処置前レベルと比較して少なくとも50%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態84に記載の方法。
[実施形態86]患者は、C反応性タンパク質(CRP)の処置前レベルが上昇している、実施形態1~85のいずれかに記載の方法。
[実施形態87]患者は、2mg/mlを超える処置前CRPレベルを有する、実施形態86に記載の方法。
[実施形態88]患者は、3mg/mlを超える処置前CRPレベルを有する、実施形態87に記載の方法。
[実施形態89]患者は、5mg/mlを超える処置前CRPレベルを有する、実施形態88に記載の方法。
[実施形態90]患者は、7.5mg/mlを超える処置前CRPレベルを有する、実施形態89に記載の方法。
[実施形態91]患者は、10mg/mlを超える処置前CRPレベルを有する、実施形態90に記載の方法。
[実施形態92]IL-6アンタゴニストは、患者のCRPレベルを処置前レベルを下回るように減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態86~91のいずれかに記載の方法。
[実施形態93]IL-6アンタゴニストは、患者のCRPレベルを、処置前レベルと比較して少なくとも50%減少させるのに十分な用量、スケジュール、及び期間で投与される、実施形態92に記載の方法。
[実施形態94]患者は、TaqMan(登録商標)リアルタイムPCRアッセイを使用して、TMPRSS6 rs855791メジャー対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを有することが決定されている、実施形態1~93のいずれかに記載の方法。
[実施形態95]IL-6アンタゴニストは、抗IL-6抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体である、実施形態1~94のいずれかに記載の方法。
[実施形態96]抗IL-6抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体は、ヒトIL-6への結合について100nM未満のKDを有する、実施形態95に記載の方法。
[実施形態97]抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、ヒトIL-6への結合について50nM未満のKDを有する、実施形態96に記載の方法。
[実施形態98]抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、ヒトIL-6への結合について10nM未満のKDを有する、実施形態97に記載の方法。
[実施形態99]抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、ヒトIL-6への結合について1nM未満のKDを有する、実施形態98に記載の方法。
[実施形態100]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、少なくとも7日間の静脈内投与後の排泄半減期を有する、実施形態95~99のいずれかに記載の方法。
[実施形態101]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、少なくとも14日間の静脈内投与後の排泄半減期を有する、実施形態100に記載の方法。
[実施形態102]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、少なくとも21日間の静脈内投与後の排泄半減期を有する、実施形態101に記載の方法。
[実施形態103]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、少なくとも30日間の静脈内投与後の排泄半減期を有する、実施形態102に記載の方法。
[実施形態104]IL-6アンタゴニストは、全長モノクローナル抗IL-6抗体である、実施形態95~103のいずれかに記載の方法。
[実施形態105]抗体は、IgG1又はIgG4抗体である、実施形態104に記載の方法。
[実施形態106]抗体は、IgG1抗体である、実施形態105に記載の方法。
[実施形態107]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、完全にヒトである、実施形態95~106のいずれかに記載の方法。
[実施形態108]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、ヒト化されている、実施形態95~106のいずれかに記載の方法。
[実施形態109]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、MED5117の6つの可変領域CDRをすべて含む、実施形態95~108のいずれかに記載の方法。
[実施形態110]抗体は、MED5117のVH及びVLを含む、実施形態109に記載の方法。
[実施形態111]抗体は、MED5117である、実施形態110に記載の方法。
[実施形態112]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、エルシリモマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals、Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals、 Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体の6つの可変領域CDRをすべて含む、実施形態9
5~108のいずれかに記載の方法。
[実施形態113]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals、 Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals、Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体由来の重鎖V領域及び軽鎖V領域を含む、実施形態112に記載の方法。具体的な実施形態において、抗IL-6抗体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals、Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals、Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体である。
[実施形態114]抗IL-6抗体又は抗原結合断片若しくは誘導体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals、 Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals、Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体である、実施形態113に記載の方法。具体的な実施形態において、抗IL-6抗体は、シルツキシマブ、ゲリリムズマブ、シルクマブ、クラザキズマブ、オロキズマブ、VX30(VOP-R003、Vaccinex)、EB-007(EBI-029、Eleven Bio)、ARGX-109(ArGEN-X)、FM101(Femta Pharmaceuticals、Lonza)及びALD518/BMS-945429(Alder Biopharmaceuticals、Bristol-Myers Squibb)からなる群から選択される抗体である。
[実施形態115]IL-6アンタゴニストは、単一ドメイン抗体、VHHナノボディ、Fab、又はscFvである、実施形態95~103のいずれかに記載の方法。
[実施形態116]IL-6アンタゴニストは、抗IL-6R抗体、又はその抗原結合断片若しくは誘導体である、実施形態1~94のいずれかに記載の方法。
[実施形態117]抗IL-6R抗体、抗原結合断片又は誘導体は、トシリズマブである、実施形態116に記載の方法。
[実施形態118]抗IL-6R抗体、抗原結合断片又は誘導体は、ボバリリズマブである、実施形態116に記載の方法。
[実施形態119]IL-6アンタゴニストは、JAK阻害剤である、実施形態1~94のいずれかに記載の方法。
[実施形態120]JAK阻害剤は、トファシチニブ(Xeljanz)、デセルノチニブ、ルキソリチニブ、ウパダシチニブ、バリシチニブ、フィルゴチニブ、レスタウルチニブ、パクリチニブ、ペフィシチニブ、INCB-039110、ABT-494、INCB-047986及びAC-410からなる群から選択される、実施形態119に記載の方法。
[実施形態121]IL-6アンタゴニストは、STAT3阻害剤である、実施形態1~94のいずれかに記載の方法。
[実施形態122]IL-6アンタゴニストは、非経口投与される、実施形態95~118のいずれかに記載の方法。
[実施形態123]IL-6アンタゴニストは、皮下投与される、実施形態122に記載の方法。
[実施形態124]IL-6アンタゴニストが経口投与される、実施形態119又は120に記載の方法。
6. 参照による組み込み
本出願に引用されたすべての刊行物、特許、特許出願及び他の書面は、個々の刊行物、特許、特許出願又は他の書面の各々がすべての目的で参照により組み込まれるように個別に示されているかのように同程度にすべての目的で、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0357】
7. 同等物
様々な具体的な実施形態を例示して説明したが、上記の明細書は限定的ではない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることは理解される。本明細書を検討すると多数の変形が当業者に明らかになる。
【配列表】
【外国語明細書】