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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169370
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231121BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231121BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231121BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231121BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231121BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231121BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231121BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231121BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231121BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231121BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231121BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231121BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231121BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231121BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231121BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
C12N15/12
C07K14/715
A61K35/17
A61K39/395 T
A61K48/00
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023162990
(22)【出願日】2023-09-26
(62)【分割の表示】P 2021516889の分割
【原出願日】2019-09-26
(31)【優先権主張番号】1815775.0
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1902021.3
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】517215973
【氏名又は名称】オートラス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マーティン プーレ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン コルドバ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シモビ オヌオハ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン チェアン リム
(72)【発明者】
【氏名】ビアオ マ
(72)【発明者】
【氏名】マテュー フェラーリ
(57)【要約】
【課題】低密度標的抗原に結合し、Fab抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供すること。
【解決手段】また、本発明は、かかるCARを発現する細胞および疾患の処置におけるその使用に関する。本発明者らは、低密度標的抗原を標的にするCAR-T細胞について、Fab抗原結合ドメインを有するCARを使用するとCAR媒介シグナル伝達がより効率的になることを見出した。本発明の第1の態様の別の実施形態では、Fab抗原結合ドメインは、第1の標的抗原に結合する第1の結合ドメインおよび第2の標的抗原に結合する第2の結合ドメインを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、B細胞成熟抗原(BCMA)などの低密度標的抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫(骨髄腫)は、形質細胞の骨髄悪性疾患である。異常な形質細胞の集合体が骨髄内に蓄積し、骨髄においてこれらの集合体が正常な血球の産生を妨害する。骨髄腫は、米国において2番目によくみられる(非ホジキンリンパ腫に次ぐ)血液学的悪性疾患であり、血液学的悪性疾患のうちの13%および全ての癌のうちの1%を構成する。この疾患は、病的骨折を引き起こすことによる医療保険支出、感染に対する感受性、腎不全、その後の骨髄不全を経て死に至ることを考慮すると負荷の大きな疾患である。
【0003】
多くのリンパ腫と異なり、骨髄腫は、現在のところ不治の病である。リンパ腫で使用される標準的な化学療法剤は、骨髄腫にはほとんど効果がない。さらに、形質細胞においてCD20発現が喪失するので、この疾患に対してリツキシマブを使用できない。ボルテザミブおよびレノリドミドなどの新規の薬剤は部分的には有効であるが、寛解を持続させることはできない。
【0004】
したがって、有効性が高く、長期間の効果が改善された骨髄腫処置のための代替薬が必要である。
【0005】
キメラ抗原受容体(CAR)
キメラ抗原受容体は、その通常の形態では、モノクローナル抗体(mAb)の特異性をT細胞のエフェクター機能とつなぎ合わせたタンパク質である。その通常の形態は、抗原認識アミノ末端、スペーサー、T細胞の生存シグナルおよび活性化シグナルを伝達する化合物エンドドメインと全てが接続された膜貫通ドメインを有するタイプI膜貫通ドメインタンパク質の形態である。
【0006】
これらの分子の最も一般的な形態は、標的抗原を認識するためにモノクローナル抗体由来の単鎖可変断片(scFv)を使用する。scFvは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介してシグナル伝達エンドドメインに融合している。かかる分子により、その標的のscFvによる認識に応答してT細胞を活性化させる。T細胞がかかるCARを発現するとき、T細胞は、標的抗原を発現する標的細胞を認識して死滅させる。腫瘍関連抗原に対していくつかのCARが開発されており、かかるCAR発現T細胞を用いた養子移入アプローチは、種々の癌処置について現在臨床試験中である。Carpenter et al(2013,Clin Cancer Res 19(8)2048-60)は、B細胞成熟抗原(BCMA)に対するscFvを組み込んだCARを記載している。
【0007】
BCMAは、成熟リンパ球(すなわち、記憶B細胞、形質芽球、および骨髄形質細胞)で優先的に発現する膜貫通タンパク質である。また、BCMAは多発性骨髄腫細胞上に発現される。
【0008】
Carpenter et alは、抗BCMA CARを発現するように形質導入されたT細胞が骨髄腫患者のプラズマ細胞腫由来の骨髄腫細胞を特異的に死滅させることができることを実証している。
【0009】
抗BCMA抗体を使用したCARアプローチは有望であるが、この抗原を標的にしたときの特定の問題は、例えばリンパ腫細胞上のCD19と比較して、骨髄腫細胞上のBCMAの密度が特に低いことである。CAR-T細胞媒介処置は、CD19またはGD2などの大量の標的抗原に対しては臨床的に成功しているが、キメラ抗原受容体は、非常に低密度の抗原に応答してシグナルを伝達することはできないと報告されている。
【0010】
例えば、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)を標的にしたCAR-T研究では、ヒト神経芽細胞腫の2つの異種移植片モデルにおけるCAR-T細胞の抗腫瘍有効性が限定されていることを示した。サイトカイン産生はALK標的密度に対する依存度が高く、神経芽細胞腫細胞株上のALKの標的密度はCAR T細胞の最大活性化に不十分であることが示された(Walker et al.(2017)Mol.Ther.25,2189-2201)。
【0011】
再発性および/または難治性プレB細胞型急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の処置における抗CD22 CAR-T細胞の使用に関する別の研究では、用量依存性の抗白血病活性が認められたが、再発したものもあった。再発は、CD22部位密度の低下に関連し、それにより、CD22+細胞がCD22-CAR T細胞による死滅を回避したと考えられる(Fry et al.(2017)Nat.Med.doi:10.1038/nm.4441)。
【0012】
CAR T細胞は、死滅から、サイトカイン放出、増殖まで段階を経て活性化する。CAR T細胞は、低密度の抗原を有する標的細胞を死滅させる場合があるが、完全に活性化できない。
【0013】
したがって、抗原密度が低い標的抗原を発現する標的細胞を死滅させることができる代替のCAR T細胞アプローチが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Carpenter et al(2013,Clin Cancer Res 19(8)2048-60
【非特許文献2】Walker et al.(2017)Mol.Ther.25,2189-2201
【非特許文献3】Fry et al.(2017)Nat.Med.doi:10.1038/nm.4441
【発明の概要】
【0015】
発明の態様の要旨
本発明者らは、低密度標的抗原を標的にするCAR-T細胞について、Fab抗原結合ドメインを有するCARを使用するとCAR媒介シグナル伝達がより効率的になることを見出した。
【0016】
したがって、第一の態様では、本発明は、低密度標的抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記CARがFab抗原結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0017】
標的抗原は、標的細胞あたり1500コピー未満の平均密度で発現され得る。
【0018】
標的抗原は、ROR1、Tyrp-1、TACI、ALK、およびBCMAから選択され得る。例えば、標的抗原はBCMAであり得る。
【0019】
本発明の第1の態様の別の実施形態では、Fab抗原結合ドメインは、第1の標的抗原に結合する第1の結合ドメインおよび第2の標的抗原に結合する第2の結合ドメインを含み得る。
【0020】
第1の標的抗原または第2の標的抗原は、BCMAであり得る。
【0021】
この実施形態では、FabCARは、第1およびと第2の結合ドメインとの間に切断性リンカーを含み得る。
【0022】
リンカーは、酵素などの薬剤を用いて切断可能な場合がある。例えば、リンカーは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を用いて切断可能な場合がある。第1の結合ドメインを切り出して第2の結合ドメインを露呈させるために、本発明のCAR発現細胞の投与前または投与後に薬剤を被験体に投与しても良い。あるいは、切断剤(例えば、酵素)が特異的部位で発現される場合、特異的部位で切断が自然に起こり得る。前述の部位は、例えば、炎症部位または腫瘍部位であり得る。
【0023】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のCARをコードする核酸配列を提供する。
【0024】
第3の態様では、本発明は、核酸構築物であって、本発明の第1の態様に記載のCARをコードし、以下の一般構造:
VH-CH-spacer-TM-endo-coexpr-VL-CL;
VL-CL-coexpr-VH-CH-spacer-TM-endo;
VL-CL-spacer-TM-endo-coexpr-VH-CH;または
VH-CH-coexpr-VL-CL-spacer-TM-endo;
のうちの1つを有し、
ここで、
VHは、重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CHは、重鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
spacerは、スペーサーをコードする核酸であり;
TMは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endoは、エンドドメインをコードする核酸配列であり;
coexprは、第1および第2のポリペプチドの同時発現を可能にする核酸配列であり;
VLは、軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CLは、軽鎖定常領域をコードする核酸配列である、核酸構築物を提供する。
【0025】
本発明の第3の態様の別の実施形態では、核酸構築物は、以下の一般構造:
VH1-L1-VH2-CH-spacer-TM-endo-coexpr-VL1-L2-VL2-CL;
VL1-L1-VL2-CL-coexpr-VH1-L2-VH2-CH-spacer-TM-endo;
VL1-L1-VL2-CL-spacer-TM-endo-coexpr-VH1-L2-VH2-CH;または
VH1-L1-VH2-CH-coexpr-VL1-L2-VL2-CL-spacer-TM-endo
のうちの1つを有し得、
ここで、
VH1は、前記第1の結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
L1およびL2は、同一でも異なっていてもよい切断性リンカーであり;
VH2は、前記第2の結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CHは、重鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
spacerは、スペーサーをコードする核酸であり;
TMは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endoは、エンドドメインをコードする核酸配列であり;
coexprは、第1および第2のポリペプチドの同時発現を可能にする核酸配列であり;
VL1は、前記第1の結合ドメインの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
VL2は、前記第2の結合ドメインの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CLは、軽鎖定常領域をコードする核酸配列である。
【0026】
核酸構築物は、ドメイン抗体(dAb)、scFv、またはFab抗原結合ドメインを有する第2のキメラ抗原受容体もコードし得る。
【0027】
第2のキメラ抗原受容体は、以下の抗原:CD19、FcRL5、およびTACIのうちの1つに結合し得る。
【0028】
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様の核酸配列または本発明の第3の態様の核酸構築物を含むベクターを提供する。
【0029】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様のCARを発現する細胞を提供する。
【0030】
細胞は、上記定義の本発明の第1の態様の第1のCAR、および第2のキメラ抗原受容体を発現し得る。
【0031】
また、細胞は、構成性に活性なサイトカイン受容体を発現し得る。
【0032】
第6の態様では、本発明は、第5の態様の細胞を作製する方法であって、本発明の第2の態様の核酸配列;本発明の第3の態様の核酸構築物;または本発明の第4の態様のベクターを細胞にex vivoで導入するステップを含む、方法を提供する。
【0033】
第7の態様では、本発明は、第5の態様の細胞の複数を、薬学的に許容され得る担体、希釈剤、または賦形剤と共に含む、医薬組成物を提供する。
【0034】
第8の態様では、本発明は、請求の第7の態様の医薬組成物を被験体に投与するステップを含む、がんを処置する方法を提供する。
【0035】
癌は、多発性骨髄腫であり得る。
【0036】
第9の態様では、本発明は、がんの処置で使用するための本発明の第7の態様の医薬組成物を提供する。
【0037】
第10の態様では、本発明は、がんを処置するための医薬組成物の製造における本発明の第5の態様の細胞の使用を提供する。
【0038】
本発明は、標的細胞上に低密度で発現された抗原を標的にするときにCAR媒介シグナル伝達達および標的細胞死滅が改善されたキメラ抗原受容体を提供する。かかる抗原は、最適以下のT細胞:標的細胞シナプスを形成するので、古典的CARを用いて標的にすることが困難である(図3)。
【0039】
かかる抗原を標的にすることができると、がん処置の全く新しい可能性が広がる。多くの潜在的に有用な癌標的抗原は、標的細胞上に低密度発現される(ROR1、Tyrp-1、TACI、ALK、およびBCMAなど)。本発明は、これらの抗原を標的にするための改良された構築物を提供し、前記構築物は、これらの標的を単一の標的として使用することができ、重要には、CAR-T細胞の効率および安全性を高めるために複数の抗原を標的にするためのストラテジーに含めることができる。
【0040】
さらなる態様
本発明はまた、以下の番号をつけたパラグラフにまとめた態様を提供する。
【0041】
1.第1の標的抗原に結合する第1の結合ドメインおよび第2の標的抗原に結合する第2の結合ドメインを含むFab抗原結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
2.第1および第2の結合ドメインとの間に切断性リンカーを含む、パラグラフ1に記載のCAR。
3.前記リンカーが、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)で切断可能である、パラグラフ2に記載のCAR。
4.前述の第1の標的抗原が腫瘍部位で発現され、それにより、前述のCARを発現する細胞を癌患者に投与したときに、前述の細胞が前述の被験体内の腫瘍部位に帰巣する、前述のパラグラフのいずれかに記載のCAR。
5.前述の第2の標的抗原が、腫瘍部位に発現され、1またはそれを超える正常組織上にも発現される、前述のパラグラフのいずれかに記載のCAR。
6.前述の第1および/または第2の標的抗原が、以下の群から選択される、前述のパラグラフのいずれかに記載のCAR:BCMA、ROR1、Tyrp-1、TACI、ALK、ErbB2、MUC1、CD33、CD123、PSMA、EpCAM、GD2、NCAM、葉酸結合タンパク質、およびMUC16。
7.前述の第1の標的抗原/第2の標的抗原が、以下の抗原対のうちの1つから選択される、パラグラフ1~5のいずれかに記載のCAR:ErbB2およびMUC1;CD33およびCD123;PSMAおよびEpCAM;GD2およびNCAM;葉酸結合タンパク質およびMUC16。
8.前記第1の標的抗原/第2の標的抗原が、表2に示す標的抗原対のうちの1つである、パラグラフ7に記載のCAR。
9.前述のパラグラフのいずれかに記載のCARをコードする核酸配列。
10.核酸構築物であって、パラグラフ1~8のいずれかに記載のCARをコードし、以下の一般構造:
VH1-L1-VH2-CH-spacer-TM-endo-coexpr-VL1-L2-VL2-CL;
VL1-L1-VL2-CL-coexpr-VH1-L2-VH2-CH-spacer-TM-endo;
VL1-L1-VL2-CL-spacer-TM-endo-coexpr-VH1-L2-VH2-CH;または
VH1-L1-VH2-CH-coexpr-VL1-L2-VL2-CL-spacer-TM-endo
のうちの1つを有し、
ここで、
VH1は、前記第1の結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
L1およびL2は、同一でも異なっていてもよい切断性リンカーであり;
VH2は、前記第2の結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CHは、重鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
spacerは、スペーサーをコードする核酸であり;
TMは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endoは、エンドドメインをコードする核酸配列であり;
coexprは、第1および第2のポリペプチドの同時発現を可能にする核酸配列であり;
VL1は、前記第1の結合ドメインの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
VL2は、前記第2の結合ドメインの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CLは、軽鎖定常領域をコードする核酸配列である、核酸構築物。
11.パラグラフ9に記載の核酸配列またはパラグラフ10に記載の核酸構築物を含む、ベクター。
12.パラグラフ1~8のいずれかに記載のCARを発現する細胞。
13.パラグラフ9に記載の核酸配列;パラグラフ10に記載の核酸構築物;またはパラグラフ11に記載のベクターを細胞にex vivoで導入するステップを含む、パラグラフ12に記載の細胞を作製する方法。
14.パラグラフ12に記載の細胞の複数を、薬学的に許容され得る担体、希釈剤、または賦形剤と共に含む、医薬組成物。
15.パラグラフ14に記載の医薬組成物を被験体に投与するステップを含む、がんを処置する方法。
16.がんの処置で使用するためのパラグラフ14に記載の医薬組成物。
17.がんを処置するための医薬組成物の製造におけるパラグラフ12に記載の細胞の使用。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
低密度標的抗原に結合するキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記CARがFab抗原結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
(項目2)
前記標的抗原が、標的細胞あたり1500コピー未満の平均密度で発現される、項目1に記載のCAR。
(項目3)
前記標的抗原が、ROR1、Tyrp-1、TACI、ALK、およびBCMAから選択される、項目1または2に記載のCAR。
(項目4)
前記標的抗原がBCMAである、項目3に記載のCAR。
(項目5)
前記Fab抗原結合ドメインが、
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-GFIFSDYN(配列番号79)
CDR2-IIYDGSST(配列番号80)
CDR3-ATRPGPFAY(配列番号81);および
b)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-QSLLHSNGNTY(配列番号82)
CDR2-LVS(配列番号83)
CDR3-VHGTHAWT(配列番号84)
を含む、項目4に記載のCAR。
(項目6)
前記Fab抗原結合ドメインが、配列番号29として示した配列を有するVHドメイン;および配列番号30として示した配列を有するVLドメインを含む、項目5に記載のCAR。
(項目7)
前記Fab抗原結合ドメインが、第1の標的抗原に結合する第1の結合ドメインおよび第2の標的抗原に結合する第2の結合ドメインを含む、前記項目のいずれかに記載のCAR。
(項目8)
前記第1の標的抗原または前記第2の標的抗原がBCMAである、項目7に記載のCAR。
(項目9)
第1および第2の結合ドメインとの間に切断性リンカーを含む、項目7または8に記載のCAR。
(項目10)
前記リンカーが、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を用いて切断可能である、項目9に記載のCAR。
(項目11)
前記項目のいずれかに記載のCARをコードする核酸配列。
(項目12)
核酸構築物であって、項目1~6のいずれかに記載のCARをコードし、以下の一般構造:
VH-CH-spacer-TM-endo-coexpr-VL-CL;
VL-CL-coexpr-VH-CH-spacer-TM-endo;
VL-CL-spacer-TM-endo-coexpr-VH-CH;または
VH-CH-coexpr-VL-CL-spacer-TM-endo;
のうちの1つを有し、
ここで、
VHは、重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CHは、重鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
spacerは、スペーサーをコードする核酸であり;
TMは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endoは、エンドドメインをコードする核酸配列であり;
coexprは、第1および第2のポリペプチドの同時発現を可能にする核酸配列であり;
VLは、軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CLは、軽鎖定常領域をコードする核酸配列である、核酸構築物。
(項目13)
核酸構築物であって、項目7~10のいずれかに記載のCARをコードし、以下の一般構造:
VH1-L1-VH2-CH-spacer-TM-endo-coexpr-VL1-L2-VL2-CL;
VL1-L1-VL2-CL-coexpr-VH1-L2-VH2-CH-spacer-TM-endo;
VL1-L1-VL2-CL-spacer-TM-endo-coexpr-VH1-L2-VH2-CH;または
VH1-L1-VH2-CH-coexpr-VL1-L2-VL2-CL-spacer-TM-endo
のうちの1つを有し、
ここで、
VH1は、前記第1の結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
L1およびL2は、同一でも異なっていてもよい切断性リンカーであり;
VH2は、前記第2の結合ドメインの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CHは、重鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
spacerは、スペーサーをコードする核酸であり;
TMは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endoは、エンドドメインをコードする核酸配列であり;
coexprは、第1および第2のポリペプチドの同時発現を可能にする核酸配列であり;
VL1は、前記第1の結合ドメインの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
VL2は、前記第2の結合ドメインの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CLは、軽鎖定常領域をコードする核酸配列である、核酸構築物。
(項目14)
ドメイン抗体(dAb)、scFv、またはFab抗原結合ドメインを有する第2のキメラ抗原受容体もコードする、項目12または13に記載の核酸構築物。
(項目15)
前記第2のキメラ抗原受容体が、以下の抗原:CD19、FcRL5、およびTACIのうちの1つに結合する、項目14に記載の核酸構築物。
(項目16)
項目9に記載の核酸配列または項目12~15のいずれかに記載の核酸構築物を含む、ベクター。
(項目17)
項目1~10のいずれかに記載のCARを発現する細胞。
(項目18)
項目1~10のいずれかに記載の第1のCAR、および項目14または15に定義の第2のキメラ抗原受容体を発現する細胞。
(項目19)
構成性に活性なサイトカイン受容体も発現する項目17または18に記載の細胞。
(項目20)
項目11に記載の核酸配列;項目12~15のいずれかに記載の核酸構築物;または項目16に記載のベクターを細胞にex vivoで導入するステップを含む、項目17~19のいずれかに記載の細胞を作製する方法。
(項目21)
項目17~19のいずれかに記載の細胞の複数を、薬学的に許容され得る担体、希釈剤、または賦形剤と共に含む、医薬組成物。
(項目22)
項目21に記載の医薬組成物を被験体に投与するステップを含む、がんを処置する方法。
(項目23)
前記がんが多発性骨髄腫である、項目22に記載の方法。
(項目24)
がんの処置で使用するための項目21に記載の医薬組成物。
(項目25)
がんを処置するための医薬組成物の製造における項目17~19のいずれかに記載の細胞の使用。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】多発性骨髄腫患者におけるBCMAの発現。
【0043】
図2】キメラ抗原受容体の異なる結合ドメイン形式。 (a)Fab CAR形式;(b)dAb CAR形式;(c)scFv CAR形式。
【0044】
図3】古典的なCAR-T細胞の、低密度で標的抗原を発現する標的細胞との相互作用を示す概略図。(a)基底状態のCAR T-細胞膜;(b)CAR T-細胞膜は、高密度標的発現細胞と免疫シナプスを形成する;(c)低密度抗原を有する標的細胞に応答したCAR T-細胞膜。
【0045】
図4】構成性に活性なキメラサイトカイン受容体を示す概要図。キメラ膜貫通タンパク質は、二量体化ドメインおよびサイトカイン受容体エンドドメインを含む。示した実施形態は、二量体化ドメインが抗体型重鎖定常領域および軽鎖定常領域を含むので、「Fab」型構造を有する。これらのドメインの間が定常的に二量体化すると、IL2受容体共通γ鎖がIL-2受容体β鎖またはIL-7受容体α鎖のいずれかと結びつき、構成性のサイトカインシグナル伝達に至る。
【0046】
図5】抗BCMA CARをscFv CAR形式およびFabCAR形式との間で比較した死滅アッセイの結果。CAR発現細胞を、非BCMA発現標的細胞(SupT1 NT)、低BCMA発現標的細胞(SupT1BCMAlow)、または超低BCMA発現標的細胞(JeKo-1)と、1:4(図5A)または1:8(図5B)の比で共培養した。以前に特徴づけられた抗BCMA CAR(bb2121)を、正の対照として使用した。24時間後、標的細胞の死滅をFACSによってアッセイし、標的細胞数を、非トランスフェクトT細胞(NT)を用いて得た細胞数に対して正規化した。
【0047】
図6】抗BCMA CARをscFv CAR形式およびFabCAR形式との間で比較した死滅アッセイの結果。CAR発現細胞を、非BCMA発現標的細胞(SupT1 NT)、低BCMA発現標的細胞(SupT1BCMAlow)、または超低BCMA発現標的細胞(JeKo-1)と、1:4(図6A)または1:8(図6B)の比で共培養した。以前に特徴づけられた抗BCMA CAR(bb2121)を、正の対照として使用した。72時間後、標的細胞の死滅をFACSによってアッセイし、標的細胞数を、非トランスフェクトT細胞(NT)を用いて得た細胞数に対して正規化した。
【0048】
図7】標的細胞との共培養後のscFv CAR形式またはFabCAR形式のいずれかの抗BCMA CARを発現するT細胞によるIFNγ産生。 CAR発現細胞を、非BCMA発現標的細胞(図7A)または低BCMA発現標的細胞(図7B)と、1:4または1:8の比で共培養した。以前に特徴づけられた抗BCMA CAR(bb2121)を、正の対照として使用した。24時間後、IFNγ産生をELISAによってアッセイした。
【0049】
図8】標的細胞との共培養後のscFv CAR形式またはFabCAR形式のいずれかの抗BCMA CARを発現するT細胞のCD4細胞数およびCD8細胞数。 CAR発現細胞を、非BCMA発現標的細胞(SupT1 NT)、低BCMA発現標的細胞(SupT1BCMAlow)、または超低BCMA発現標的細胞(JeKo-1)、またはMM.1s標的細胞と、1:1の比で96時間共培養した。CD4(図8A)およびCD8(図8B)T細胞のホールセル数を、CD3およびマーカーRQR8、次いで、CD8+またはCD8-のいずれかに対するゲーティングによって得た。
【0050】
図9】切断性FabCARを示す概要図。 切断性FabCARは、以下の2つの抗原結合ドメインを含む:外部(膜遠位)結合ドメイン1および内部(膜近位)結合ドメイン2。結合ドメイン1および2は、切断性リンカーによって連結している。例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)によってリンカーを切断すると、結合ドメイン1が除去される。切断していない場合(FabCARがインタクトであるとき)、内部結合ドメインは、立体障害に起因する外部ドメインの存在によって部分的に閉塞される。内部ドメインは、重鎖および軽鎖が切断されたときに活性化される。
【0051】
図10】実施例7に記載の可溶性抗体を示す概要図。 可溶性抗体を、2つの可変ドメイン、BCMAに対する外部結合ドメイン(抗BCMA D8)、およびCD19に対する内部結合ドメイン(抗CD19 CAT)を用いてデザインした。MMP-9切断性リンカーを、一方の鎖上のVHドメインと他方の鎖上のVLドメインとの間に含めた。また、VH含有鎖は、抗体のFc部分を含んでいた。
【0052】
図11】MMP-9の存在下でのインキュベーション後の経時的な可溶性抗体(D8-MMP9-CAT19)の切断率を示すためのグラフ。MMP-9切断部位を含まないスクランブルリンカーを有する等価な抗体(D8-scrambled-CAT19)を、負の対照として使用した。
【0053】
図12】ELISAを用いた、無処置のままか、MMP-9での処置後の可溶性抗体(D8-MMP9-CAT19)またはスクランブルリンカーを有する負の対照(D8-scrambled-CAT19)によるCD19結合を示すためのグラフ。
【0054】
図13】無処理のまま(D8-MMP9-CAT19)またはMMP-9での処理後(D8-MMP9-CAT19切断)のCD19に対する可溶性抗体の結合動態学を示すためのグラフ。CD-19モノクローナル抗体(CAT19 IgG)を、正の対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0055】
詳細な説明
キメラ抗原受容体
本発明は、Fab抗原結合ドメインを有するキメラ抗原受容体に関する。
【0056】
古典的キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外抗原認識ドメイン(バインダー)が細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)に接続しているキメラタイプI膜貫通タンパク質である。バインダーは、典型的には、モノクローナル抗体(mAb)由来の単鎖可変断片(scFv)であるが、抗体様抗原結合部位を含む他の形式に基づくことができる。スペーサードメインは、通常、バインダーを膜から分離し、適切な配向を可能にするために必要である。使用される一般的なスペーサードメインは、IgG1のFcである。より小型のスペーサー、例えば、抗原に応じて、CD8α由来のストーク、さらにはIgG1ヒンジのみですら十分な場合がある。膜貫通ドメインは、細胞膜内にタンパク質を係留し、スペーサーをエンドドメインに接続する。
【0057】
初期のCARデザインは、FcεR1のγ鎖またはCD3ζのいずれかの細胞内部分に由来するエンドドメインを有していた。結果的に、これらの第1世代の受容体は免疫学的シグナル1を伝達し、同族標的細胞のT細胞による殺滅を引き起こすのに十分であったが、T細胞を、それが増殖および生存するように十分に活性化することはできなかった。この限界を克服するために、複合エンドドメインが以下のように構築された:T細胞共刺激分子の細胞内部分とCD3ζの細胞内部分との融合により、抗原認識後に活性化および共刺激シグナルを同時に伝達することができる第2世代の受容体が得られる。最も一般的に使用される共刺激ドメインは、CD28の共刺激ドメインである。これは最も効力のある共刺激シグナル(すなわち、T細胞増殖を引き起こす免疫学的シグナル2)を供給する。いくつかの受容体も記載されており、この受容体には、TNF受容体ファミリーエンドドメイン(生存シグナルを伝達する密接に関連するOX40および41BBなど)が含まれる。活性化、増殖、および生存シグナルを伝達することができるエンドドメインを有するさらにより効力のある第3世代のCARをここに記載している。
【0058】
CARが標的抗原に結合するとき、この結合により、CARが発現されるT細胞に活性化シグナルが伝達される。したがって、CARは、T細胞の特異性および細胞傷害性を、標的にされた抗原を発現する腫瘍細胞に向ける。
【0059】
したがって、CARは、典型的には、以下を含む:(i)抗原結合ドメイン;(ii)スペーサー;(iii)膜貫通ドメイン;および(iii)シグナル伝達ドメインを含むか、それと会合している細胞内ドメイン。
【0060】
CARは、以下の一般構造を有し得る:
抗原結合ドメイン-スペーサードメイン-膜貫通ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)。
【0061】
抗原結合ドメイン
抗原結合ドメインは、抗原を認識するキメラ受容体の一部である。古典的CARでは、抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体由来の単鎖可変断片(scFv)を含む(図2cを参照のこと)。ドメイン抗体(dAb)抗原結合ドメインまたはVHH抗原結合ドメインを有するCARも産生されている(図2bを参照のこと)。
【0062】
本発明のキメラ抗原受容体では、抗原結合は、例えば、モノクローナル抗体のFab断片を含む(図2aを参照のこと)。FabCARは、以下の2つの鎖を含む:抗体様軽鎖可変領域(VL)および定常領域(CL)を有する鎖;および重鎖可変領域(VH)および定常領域(CH)を有する鎖。一方の鎖はまた、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CLとCHとの間の会合により、受容体が組み立てられる。
【0063】
Fab CARの2本の鎖は、以下の一般構造を有し得る:
VH-CH-スペーサー-膜貫通ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメイン;および
VL-CL
または
VL-CL-スペーサー-膜貫通ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメイン;および
VH-CH
【0064】
本明細書中に記載のFab型キメラ受容体について、抗原結合ドメインは、一方のポリペプチド鎖由来のVHおよび他方のポリペプチド鎖由来のVLで構成されている。
【0065】
ポリペプチド鎖は、VH/VLドメインとCH/CLドメインとの間にリンカーを含み得る。リンカーは、可動性を示し、VH/VLドメインをCH/CLドメインから空間的に分離するのに役立ち得る。
【0066】
可動性リンカーは、グリシン、トレオニン、およびセリンなどの小型で非極性の残基から構成され得る。リンカーは、(GlySer)(配列番号78)リンカー(式中、nは反復数である)などの1またはそれより多くのグリシン-セリンリンカーの反復を含み得る。各リンカーは、50、40、30、20、または10アミノ酸長未満であり得る。
【0067】
また、本発明は、第1の標的抗原に結合する第1の結合ドメインおよび第2の標的抗原に結合する第2の結合ドメインを含む切断性FabCARを提供する。かかる切断性Fab CARを、図9に模式的に示す。
【0068】
切断性Fab CARは、第1および第2の結合ドメインとの間に切断性リンカーを含み得る。
【0069】
切断性Fab CARの2本の鎖は、以下の一般構造を有し得る:
VH1-VH2-CH-スペーサー-膜貫通ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメイン;および
VL1-VL2-CL
または
VL1-CL1-スペーサー-膜貫通ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメイン;および
VH2-CH2
【0070】
切断性FabCARでは、第1の結合ドメインによる立体障害に起因して、切断されていない状態では膜近位結合ドメイン(図9中の結合ドメイン2)への接近性は低い。切断されると、結合ドメイン1が除去されて結合ドメイン2への接近性が増加するので、結合ドメイン2がその標的抗原の存在下で活性化される。
【0071】
切断性リンカーは、小分子などの薬剤またはプロテアーゼなどの酵素によって切断され得る。リンカーを切断して第2の結合ドメインを介したシグナル伝達を活性化するか増強するために、薬剤が患者に投与され得る。あるいは、切断剤は、in vivoで(例えば、炎症または腫瘍成長/転移部位で)天然に発現され得る。
【0072】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)は、器官形成および成長中のほとんどの細胞外基質タンパク質の分解を担う酵素群である。成人臓器におけるMMPの発現および活性は通常は低いが、炎症および癌が含まれる種々の病的状態において著しく増加する。
【0073】
MMPは、共通のドメイン構造を有するカルシウム依存性の亜鉛含有エンドペプチダーゼである。3つの共通のドメインは、プロペプチド、触媒ドメイン、および可動性ヒンジ領域によって触媒ドメインに連結したヘモペキシン様C末端ドメインである。
【0074】
MMPは、ほぼ全てのヒト癌に存在し;隣接する間質内の線維芽細胞、癌関連線維芽細胞、および/または非線維芽細胞性癌細胞によって発現され得る。したがって、MMPは、血管形成、腫瘍成長、および転移の促進によって腫瘍環境に影響を及ぼすことができる。したがって、MMP発現は、腫瘍の侵襲性、病期、および患者の予後に関連する。
【0075】
MMP発現の増加は、癌細胞増殖の増加および腫瘍サイズの増加に相関する。MMPファミリーのほとんどすべてのメンバーは、ヒト癌において無調節であることが見出されており、MMP-1、-2、-7、-9、-13、および-14は最もよく影響を受ける。
【0076】
本発明の切断性FabCARでは、第1および第2の結合ドメインとの間のリンカーは、MMP、特に、MMP-1、-2、-7、-9、-13、および-14から選択されるMMPによって切断され得る。
【0077】
例えば、以下のMMP酵素で切断可能な種々の配列が公知である:
MMP-1: PLGLWA (配列番号85)
MMP-2: PAGLAG (配列番号86)
MMP-9: PLGLAG (配列番号87)
【0078】
本発明の切断性FabCARの切断性リンカー配列は、配列番号85~87として示した配列のうちの1つを含み得る。
【0079】
定常領域ドメイン
ヒトには以下の2つのタイプの軽鎖が存在する:カッパ(κ)鎖およびラムダ(λ)鎖。ラムダクラスは、以下の4つのサブタイプを有する:λ、λ、λ、およびλ。Fab型キメラ受容体の軽鎖定常領域は、これらの軽鎖タイプのいずれかに由来し得る。
【0080】
本発明のキメラ受容体の軽鎖定常ドメインは、カッパ鎖定常ドメインである配列番号1として示した配列を有し得る。
【0081】
配列番号1
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0082】
哺乳動物免疫グロブリン重鎖には以下の5つのタイプが存在する:γ、δ、α、μ、およびε(それぞれ、免疫グロブリンIgG、IgD、IgA、IgM、およびIgEクラスを定義する)。重鎖γ、δ、およびαは、3つのタンデムIgドメインから構成される定常ドメインを有し、可動性を付与するヒンジを有する。重鎖μおよびεは、4つのドメインから構成される。
【0083】
本発明のFab型キメラ受容体のCHドメインは、γ免疫グロブリン重鎖に由来する配列番号2として示した配列を含み得る。
【0084】
配列番号2
STKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRV
【0085】
スペーサー
古典的CARは、抗原結合ドメインを膜貫通ドメインと接続し、かつ抗原結合ドメインをエンドドメインから空間的に分離するスペーサー配列を含む。可動性スペーサーにより、抗原結合ドメインを異なる方向に配向させて結合を容易にすることが可能である。
【0086】
FabCAR(図2a)では、古典的キメラ抗原受容体(図2c)およびdAb CAR(図2b)において見られるように、スペーサーにより2本のポリペプチド鎖を二量体化させることができる。2本のポリペプチド鎖は、例えば、ジスルフィド架橋(複数可)を形成するのに適切な1またはそれより多くのシステイン残基を含み得る。IgG1由来のヒンジは、これに関して適切である。IgG1ヒンジに基づいたスペーサーは、配列番号3として示した配列を有し得る。
【0087】
配列番号3(ヒトIgG1ヒンジ):
AEPKSPDKTHTCPPCPKDPK
【0088】
あるいは、ヒンジスペーサーは、配列番号4として示した配列を有し得る。
【0089】
配列番号4(ヒンジスペーサー)
EPKSCDKTHTCPPCP
【0090】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜を横切るキメラ受容体の一部である。膜貫通ドメインは、膜内で熱力学的に安定な任意のタンパク質構造であり得る。これは、典型的には、いくつかの疎水性残基から構成されるαヘリックスである。任意の膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインを、キメラ受容体の膜貫通部分を供給するために使用することができる。タンパク質の膜貫通ドメインの配列および全長を、当業者がTMHMMアルゴリズム(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM-2.0/)を使用して決定することができる。あるいは、人為的にデザインされたTMドメインを使用しても良い。
【0091】
エンドドメイン
エンドドメインは、キメラ受容体のシグナル伝達部分である。エンドドメインは、キメラ受容体の細胞内ドメインの一部であり得るか、前記細胞内ドメインに会合し得る。抗原認識後、受容体がクラスター形成し、天然のCD45およびCD148がシナプスから排除され、シグナルが細胞に伝達される。最も一般的に使用されているエンドドメイン成分は、3つのITAMを含むCD3-ゼータのエンドドメイン成分である。これは、抗原への結合後にT細胞に活性化シグナルを伝達する。CD3-ゼータは、十分に適格な活性化シグナルを提供しない場合があり、さらなる共刺激シグナル伝達が必要であり得る。共刺激シグナルは、T細胞の増殖および生存を促進する。共刺激シグナルには以下の2つの主なタイプが存在する:Igファミリーに属するもの(CD28、ICOS)およびTNFファミリーに属するもの(OX40、41BB、CD27、GITRなど)。例えば、キメラCD28およびOX40を、増殖/生存シグナルを伝達させるためにCD3-ゼータと共に使用することができるか、3つ全てを共に使用することができる。
【0092】
エンドドメインは、以下を含み得る:
(i)ITAM含有エンドドメイン(CD3ゼータ由来のエンドドメインなど);および/または
(ii)共刺激ドメイン(CD28またはICOS由来のエンドドメインなど);および/または
(iii)生存シグナルを伝達するドメイン(例えば、TNF受容体ファミリーエンドドメイン(OX-40、4-1BB、CD27、またはGITRなど)。
【0093】
抗原認識部分がシグナル伝達部分由来の個別の分子上に存在するいくつかの系が記載されている(WO015/150771号;WO2016/124930号、およびWO2016/030691号に記載のものなど)。したがって、本発明のキメラ受容体は、抗原結合ドメインおよび膜貫通ドメインを含む抗原結合成分を含むことができ、この成分は、シグナル伝達ドメインを含む個別の細胞内シグナル伝達成分と相互作用することが可能である。本発明のベクターは、かかる抗原結合成分および細胞内シグナル伝達成分を含むキメラ受容体シグナル伝達系を発現し得る。
【0094】
キメラ受容体はシグナルペプチドを含み得るため、シグナルペプチドが細胞の内側で発現されるときに、新生タンパク質は小胞体、その後に細胞表面に向かい、そこで発現される。シグナルペプチドは、分子のアミノ末端に存在し得る。
【0095】
標的抗原
「標的抗原」は、本発明のキメラ受容体の抗原結合ドメインによって特異的に認識および結合される実体である。
【0096】
標的抗原は、がん細胞上に存在する抗原(例えば、腫瘍関連抗原)であり得る。
【0097】
CARの標的抗原は、標的細胞上に比較的低い密度で発現し得る。
【0098】
本発明の細胞は、低密度のCAR標的抗原を発現する癌細胞などの標的細胞を死滅させることが可能な場合がある。ある特定の癌において低密度で発現されることが公知の腫瘍関連抗原の例には、CLLにおけるROR1、黒色腫におけるTypr-1、骨髄腫におけるBCMAおよびTACI、ならびに神経芽細胞腫におけるALKが含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
実施例1は、骨髄腫細胞上のBCMAの発現を調査する研究を記載する。骨髄腫細胞表面上のBCMAコピー数の範囲が狭いことが見出された:細胞あたり348.7~4268.4 BCMAコピー、平均1181および中央値1084.9(図1)。
【0100】
CARの標的抗原の平均コピー数は、標的細胞あたり約10,000;5,000;3,000;2,000;1,000;または500コピーより少ない場合がある。
【0101】
癌細胞などの細胞表面上のコピー数は、実施例1に記載のPE Quantibriteビーズなどの標準的技術を使用して測定され得る。
【0102】
CARの標的抗原は、細胞あたり1500コピーまたはそれ未満、または細胞あたり1000コピーまたはそれ未満の平均コピー数で標的細胞によって発現され得る。
【0103】
標的抗原は、例えば、BCMA、ROR1、Tyrp-1、TACI、またはALKであってよい。
【0104】
BCMA
B細胞成熟標的(BCMA;TR17_HUMAN、TNFRSF17(UniProt Q02223)としても公知)は、成熟リンパ球(例えば、記憶B細胞、形質芽球、および骨髄形質細胞)で発現される膜貫通タンパク質である。また、BCMAは、骨髄腫細胞上で発現される。BCMAは、非グリコシル化III型膜貫通タンパク質であり、これは、B細胞の成熟、成長、および生存に関与する。
【0105】
BCMAに結合するCARまたはTanCARの抗原結合ドメインは、BCMAに結合することができる任意のドメインであってよい。14の抗BCMA抗体のVH配列およびVL配列を以下に示し、CDR配列は太字で下線を引いている。
【0106】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】
【0107】
BCMAに結合するCARの抗原結合ドメインは、上記のように、Ab14に対する抗BCMA Ab1のうちのいずれか由来のCDRを含んでよい。
【0108】
BCMAに結合するCARの抗原結合ドメインは、上記のように、Ab14に対する抗BCMA Ab1のうちのいずれか由来のVH配列および/またはVL配列、または少なくとも70、80、90、もしくは90%の配列同一性を有するそのバリアントを含んでよく、前述のバリアントは、BCMAへの結合能力を保持している。
【0109】
また、本発明は、Ab1~Ab14と命名された新規のBCMA結合抗体を提供する。Ab1~Ab14のVH、VL、およびCDR配列を、上記の配列番号5~30中に示すか、これらの配列番号として示す。
【0110】
BCMA結合抗体Ab1は、CAR形態において特に良好な有効性を示す。例えば、scFv CAR形式のAb1は、別のBCMA結合ドメインを有する種々の等価なCARよりも標的細胞死滅、IL-2放出、および増殖を改善した(データ示さず)。
【0111】
本発明はまた、以下の番号をつけたパラグラフにまとめた態様を提供する。
【0112】
1.以下を含む抗原結合ドメイン:
a)配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、または29に示した配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH);および
b)配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、または30に示した配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域(VL)。
2.以下を含むパラグラフ1に記載の抗原結合ドメイン:
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-GFTFSDSY(配列番号68)
CDR2-IYAGDGAT(配列番号69)
CDR3-ARPLYTTAYYYVGGFAY(配列番号70);および
b)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-QSLLSSGNQKNY(配列番号71)
CDR2-WAS(配列番号72)
CDR3-QQYYDTPLT(配列番号73)。
3.以下を含むパラグラフ1に記載の抗原結合ドメイン:
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-GFIFSDYN(配列番号79)
CDR2-IIYDGSST(配列番号80)
CDR3-ATRPGPFAY(配列番号81);および
b)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-QSLLHSNGNTY(配列番号82)
CDR2-LVS(配列番号83)
CDR3-VHGTHAWT(配列番号84)。
4.配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、または29として示した配列のうちの1つを有するVHドメイン;および配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、または30として示した配列のうちの1つを有するVLドメインを含む、パラグラフ1に記載の抗原結合ドメイン。
5.配列番号5として示した配列を有するVHドメイン;および配列番号6として示した配列を有するVLドメインを含む、パラグラフ3に記載の抗原結合ドメイン。
6.配列番号29として示した配列を有するVHドメイン;および配列番号30として示した配列を有するVLドメインを含む、パラグラフ3に記載の抗原結合ドメイン。
7.前述のパラグラフのいずれかに記載の抗原結合ドメインを含む抗体。
8.パラグラフ7に記載の抗体を含む、抗体-薬物抱合体(ADC)または二重特異性T細胞誘導物(BiTE)。
9.パラグラフ1~6のいずれかに記載の抗原結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
10.FabCARである、パラグラフ9に記載のCAR。
11.パラグラフ1~6のいずれかに記載の抗原結合ドメイン、およびパラグラフ6に記載の抗体、パラグラフ8に記載のADCもしくはBiTE、またはパラグラフ9または10に記載のCARをコードする核酸配列。
12.パラグラフ11に記載の核酸配列を含むベクター。
13.パラグラフ9または10のCARを発現する細胞。
14.パラグラフ11に記載のCARコード核酸配列を細胞に導入する工程を含む、パラグラフ13に記載の細胞を作製する方法。
15.パラグラフ13に記載の複数の細胞を、薬学的に許容され得る担体、希釈剤、または賦形剤と共に含む、医薬組成物。
16.パラグラフ15に記載の医薬組成物を被験体に投与する工程を含む、癌を処置する方法。
17.癌がB細胞白血病またはリンパ腫である、パラグラフ15に記載の方法。
18.癌の処置で使用するためのパラグラフ13に記載の細胞。
19.癌を処置するための医薬組成物の製造におけるパラグラフ13に記載の細胞の使用。
【0113】
例えば、キメラ抗原受容体、核酸配列および構築物、ベクター、細胞、医薬組成物、ならびに前節および後節に記載の細胞を作製および使用する方法の一般的な特徴も、上記パラグラフ中に記載の対応する構成要素に適用する。
【0114】
ROR1
受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体-1(ROR1)(神経栄養性チロシンキナーゼおよび関連受容体1(NTRKR1)としても公知)は、中枢神経系における神経突起成長を調整する受容体チロシンキナーゼである。これは、I型膜タンパク質であり、細胞表面受容体のRORサブファミリーに属する。
【0115】
ROR1は、卵巣癌幹細胞上で発現することが示されており、この細胞に関して、ROR1は、遊走/侵入またはin vitroでのスフェロイド形成および免疫不全マウスにおける腫瘍生着の促進において機能的役割を果たすようである。ROR1に特異的なヒト化mAbで処置すると、卵巣癌細胞が遊走するか、スフェロイドを形成するか、免疫不全マウスにおいて生着する能力を阻害することができる。
【0116】
WO2017/072361号は、CARでの使用に適切ないくつかのROR1特異的抗体を記載している。
【0117】
TACI
膜貫通アクチベーターおよびカルシウムモジュレーターおよびシクロフィリンリガンド(CAML)インタラクター)TACI(UniProtKB:O14836)は、免疫応答における制御因子であり、BCMAと同様に、CD27+記憶B細胞(特に周辺帯B細胞)などの成熟リンパ球、骨髄形質細胞、および骨髄腫細胞に優先的に発現される。
【0118】
さらに、TACIは、マクロファージ上に発現され、マクロファージの生存を媒介する。TACIは、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのリンパ球特異的メンバー(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー13B(TNFRSF13B)としても公知)であり、細胞表面から脱落してその可溶性形態で循環することができる。BCMAと対照的に、TACIは、胚中心B細胞に明らかに不在である。TACIは、TNFSF13/APRILおよびTNFSF13B/BAFFの受容体として機能を果たすことが公知であり、両方のリガンドに高い親和性で結合する。TACIは、B細胞拡大を阻害し、形質細胞の分化および生存を促進する。
【0119】
TACIは、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであり、B細胞機能の重要な制御因子としての機能を果たす。TACIは、2つのリガンド(APRILおよびBAFF)に高い親和性で結合し、その細胞外領域に2つのシステインリッチドメイン(CRD)を含む。しかしながら、N末端CRDがオルタナティブスプライシングによって除去されたTACIの別の形態が存在する。このより短い形態がリガンド誘導性細胞シグナル伝達が可能であること、および第2のCRDのみ(TACI_d2)が両方のリガンドに対して完全な親和性を示すことが示されている(Hymowitz et al 2005 Am Soc.Biochem.And Mol.Biol.Inc 280(8)7218-7227)。
【0120】
TACI_d2の結晶構造が、APRILTACI_d2の共結晶構造およびAPRIL BCMA複合体と共に解析されている(Hymowitz et al 2005,上記の通り)。
【0121】
TACIのCRDは、他のTNFRのCRDと共に、保存された6残基配列(Phe/Tyr/Trp)-Asp-Xaa-Leu-(Val/Thr)-(Arg/Gly)(配列番号74)からなる共通の配列フィーチャ(いわゆるDXLモチーフ)を有する。このモチーフは、APRILまたはBAFFのいずれかの結合に必要である。受容体モチーフは、疎水性ポケットに結合し、BAFF表面上の2つの保存されたアルギニン残基と相互作用する。
【0122】
TACIに結合するCARまたはtanCARの抗原結合ドメインは、TACIに結合することができる任意のドメインであり得る。例えば、抗原結合ドメインは、表1に列挙した市販の抗TACI抗体のうちの1つから誘導可能なTACIバインダーを含み得る。
【0123】
【表1】
【0124】
抗原結合ドメインは、クローン2H6、2G2、1G6、または4B11由来のTACIバインダーのうちの1つを含み得る。
【0125】
これらのTACIバインダーは、以下の配列を有する:
2H6
ScFv:EVQLQQSGPELVKPGASVRMSCKASGYTFTNYVMHWVKQKPGQGLEWIGYINPSNDDTKYTEKFKGKATLTSDKSSSTAYMELSSLTSEDSAVYYCARGTHGDYYALDYWGQGTSVTVSSGGGGAGGGGSGGGGSDIVLTQSPASLAVSLGQSVTISCRASESVEYYGTSLMQWYQQKPGQAPKLLIYGASNVESGVPARFSGSGSGTDFSLNIHPVEEDDIAMYFCQQSRKVPWTFGGGTKLEIKR(配列番号31)
CDR H1:NYVMH(配列番号32)
CDR H2:YINPSNDDTKYTEKFKG(配列番号33)
CDR H3:GTHGDYYALDY(配列番号34)
CDR L1:RASESVEYYGTSLMQ(配列番号35)
CDR L2:GASNVES(配列番号36)
CDR L3:QQSRKVP(配列番号37)
【0126】
2G2
ScFv:QVTLKESGPGMLQPSQTLSLTCSFSGFSLSTFGMGVGWIRQPSGKGLEWLAHIWWDDAQYSNPALRSRLTISKDTSKNQVFLKIANVDTADTATYYCSRIHSYYSYDEGFAYWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIVMTQSQKFMSTTVGDRVSITCKASQNVGTAVAWYQQKPGQSPKLLIYSASNRYTGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNMQSEDLADYFCQQYSSYRTFGGGTKLEIKR(配列番号38)
CDR H1:TFGMGVG(配列番号39)
CDR H2:HIWWDDAQYSNPALRS(配列番号40)
CDR H3:RIHSYYSYDEGFAY(配列番号41)
CDR L1:KASQNVGTAVA(配列番号42)
CDR L2:SASNRYT(配列番号43)
CDR L3:QQYSSY(配列番号44)
【0127】
1G6
VH:QVQLKQSGPGLVAPSQSLSITCTVSGFSLTSYGVDWVRQSPGKGLEWLGIIWGGGRTNYNSAFKSRLSISKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAMYYCASGDRAADYWGQGTSVTVSS(配列番号45)
CDR H1:SYGVD(配列番号47)
CDR H2:IIWGGGRTNYNSAFKS(配列番号48)
CDR H3:GDRAADY(配列番号49)
VL:DIVMTQSQKFMSTTVGDRVTITCKASQNVGTAVAWYQQKPGQSPKLLIYSASNRYTGVPVRFTGSGSGTDFTLTINNMQSEDLADYFCQQYSSYPLTFGAGTKLELK (配列番号46)
CDR L1:KASQNVGTAVA(配列番号50)
CDR L2:SASNRYT(配列番号51)
CDR L3:QQYSSYP(配列番号52)
【0128】
4B11
VH:EVQLQQSVAELVRPGASVKLSCTASGFNIKNTYIHWVKQRPEQGLEWIGKIDPANGNSEYAPKFQGKATITADTSSNTAYLQLSSLTSEDTTIYYCTSGYGAYWGQGTTLTVSS(配列番号53)
CDR H1:NTYIH(配列番号55)
CDR H2:KIDPANGNSEYAPKFQG(配列番号56)
CDR H3:GYGAY(配列番号57)
VL:DIVLSQSPSSLAVSIGEKVTLSCKSSQSLLYSSNQKNYLAWFQQKPGQSLKLLIYWASTREFGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVKTEDLAVYYCQQYYTWTFGGGTKLEIK(配列番号54)
CDR L1:KSSQSLLYSSNQKNYLA(配列番号58)
CDR L2:WASTREF(配列番号59)
CDR L3:QQYYTW(配列番号60)
【0129】
本発明は、クローン2H6、2G2、1G6、または4B11のうちの1つに基づいたTCI結合ドメインを含む抗TACI剤(抗体、scFv、CAR、またはtanCARなど)を提供する。抗TACI剤は、配列番号32~37;39~44;47~52;55~60として示した配列を有する1またはそれを超えるCDRを含み得る。薬剤は、以下の6CDR群のうちの1つを含み得る:配列番号32~37;配列番号39~44;配列番号47~52、および55~60。
【0130】
抗TACI剤は、例えばFab形式で、配列番号31または38に示したVH配列および/またはVL配列(VHはセリン-グリシンリンカーの前にあり、VLはセリン-グリシンリンカーの後にある)を含み得る。抗TACI剤は、例えばFab形式で、配列番号45または53に示したVH配列および/または配列番号46または54に示したVL配列を含み得る。抗TACI剤は、配列番号31もしくは38に示したscFvまたは配列番号45の配列番号46との連結もしくは配列番号53の配列番号54との連結によって形成されたscFvを含み得る。
【0131】
上記配列の全てに関して、抗TACI剤は、バリアント配列がTACIへの結合能力を保持する場合、所与の配列に対して80%、85%、90%、95%、または98%の同一性を有する配列を含み得る。
【0132】
TYRP-1
Tyrp1は、メラニン合成に関与するメラノサイト特異的遺伝子産物である。マウスTyrp1は、ジヒドロキシインドールカルボン酸オキシダーゼ活性を有するが、ヒトメラノサイトにおける機能はあまりわかっていない。メラニン合成におけるその役割に加えて、Tyrp1は、チロシナーゼタンパク質の安定化およびその触媒活性の調整に関与する。また、Tyrp1は、メラノソーム構造の維持に関与し、メラノサイトの増殖およびメラノサイトの細胞死に影響を及ぼす。
【0133】
WO2009114585号は、Tyrp-1に結合するいくつかの抗体を記載している。また、抗Tyrp-1抗体は、Sigma-Aldrichから市販されている(SAB1406566およびHPA000937など)。
【0134】
ALK
未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、インスリン受容体スーパーファミリーに属する受容体チロシンキナーゼである。このタンパク質は、細胞外ドメイン、1回膜貫通領域に対応する疎水性ストレッチ、および細胞内キナーゼドメインを含む。ヒトALK配列は、公的に利用可能である(例えば、GENBANK(登録商標)受入番号NP_004295(タンパク質)、およびNM_004304(核酸)およびUniProt受入番号Q9UM73)。
【0135】
WO2015069922号は、ALKに結合するいくつかのscFv型抗原結合ドメインを記載している。
【0136】
切断性Fab CARの標的抗原
図9に模式的に示すように、本発明のFab CARは、2つの抗原結合ドメインを有し得る。
【0137】
本発明の切断性FabCARでは、第1および/または第2の結合ドメインは、標的細胞上に比較的低レベルで発現される抗原に結合し得る。例えば、前述のドメインは、ROR1、Typr-1、BCMA、TACI、およびALKから選択される抗原に結合し得る。特に、第2の(膜近位)結合ドメインの標的抗原は、標的細胞上に比較的低レベルで発現される抗原であり得る。
【0138】
第1の(膜遠位)結合ドメインによる標的抗原結合を使用して、CARが腫瘍を標的にすることができる。腫瘍内でリンカーが切断されると、第2の結合ドメインによる第2の標的抗原の結合を介して活性化し、腫瘍細胞が死滅する。しかしながら、第1の結合ドメインによる第1の標的抗原の結合も細胞死滅を誘発する場合があるが、非効率なシナプス形成に起因して、(第2の結合ドメインを介した標的抗原結合によって誘導される死滅と比較して)死滅効率は低下し得ることに留意すべきである。
【0139】
切断性FabCARの利点の1つは、内部結合ドメイン(すなわち、第2の結合ドメイン)が立体障害に起因してインタクトな分子内に部分的に閉塞されることである。第1の結合ドメインが切り取られるまで第2の結合ドメインのその標的抗原への暴露が減少し、前述の切り取りはCAR発現細胞が腫瘍に到達するまで起こり得ないので、第2の標的抗原が1またはそれを超える正常組織上にいくらかの範囲で発現される場合、この閉塞によって安全性を改善することができる。
【0140】
したがって、第2の抗原は、腫瘍細胞上では高レベルで発現され得るが、1またはそれを超える(one of more)正常組織上では低レベルで発現され得る。
【0141】
第1または第2の結合ドメインの標的抗原は、以下のうちの1つから選択され得る:ErbB2、MUC1、CD33、CD123、PSMA、EpCAM、GD2、NCAM、葉酸結合タンパク質、およびMUC16。
【0142】
特に、本発明の切断性FabCARは、以下の標的抗原の対のうちの1つに対して指向する結合ドメインを含み得る:ErbB2およびMUC1;CD33およびCD123;PSMAおよびEpCAM;GD2およびNCAM;葉酸結合タンパク質およびMUC16。これらの標的抗原対では、結合ドメイン1および結合ドメイン2は、例えば標的抗原対ErbB2およびMUC1のいずれかの抗原に結合し得る(may by)か、結合ドメイン1はErbB2に結合し得、かつ結合ドメイン2はMUC1に結合し得るか、結合ドメイン2はErbB2に結合し得、かつ結合ドメイン1はMUC1に結合し得る。
【0143】
特に、本発明の切断性FabCARは、表2に示す標的抗原対のうちの1つに対して指向する結合ドメインを含み得る。
【0144】
【表2】
【0145】
ORゲート
【0146】
本発明のCARを、1またはそれより多くの他の賦活性または抑制性のキメラ抗原受容体と組み合わせて使用してよい。例えば、本発明のCARを、「論理ゲート」において1またはそれより多くのCARと組み合わせて使用してよく、CAR組み合わせは、T細胞などの細胞によって発現されるとき、少なくとも2つの標的抗原の特定の発現パターンを検出することができる。少なくとも2つの標的抗原が抗原Aおよび抗原Bとして任意に示される場合、3つの可能な選択肢は以下の通りである:
「ORゲート」-T細胞は、抗原Aまたは抗原Bのいずれかが標的細胞上に存在するときに引き起こす
「ANDゲート」-T細胞は、抗原AおよびBの両方が標的細胞上に存在するときに引き起こす
「AND NOTゲート」-T細胞は、抗原Aが単独で標的細胞上に存在する場合に引き起こすが、T細胞は、抗原AおよびBの両方が標的細胞上に存在する場合に引き起こさない
【0147】
これらのCAR組み合わせを発現する操作されたT細胞を、2またはそれより多くのマーカーのがん細胞の特定の発現(または発現の欠如)に基づいて、がん細胞に精巧に特異的であるように調整することができる。
【0148】
かかる「論理ゲート」は、例えば、WO2015/075469号、WO2015/075470号、およびWO2015/075470号に記載されている。
【0149】
「ORゲート」は、標的細胞によって発現された個別の標的抗原にそれぞれ指向する2つまたはそれより多くの賦活CARを含む。ORゲートの利点は、有効性が抗原A+抗原Bとなるので、標的細胞上の有効に標的可能な抗原が増加することである。単一抗原のレベルが、CAR-T細胞が有効に標的にするのに必要な閾値未満であり得るので、このことは標的細胞上に変動するか低い密度で発現される抗原に特に重要である。また、ORゲートは、抗原回避現象が避けられる。例えば、いくつかのリンパ腫および白血病は、CD19が標的にされた後にCD19陰性になる:この現象が起こる場合、別の抗原と組み合わせてCD19を標的にするORゲートを使用すると「バックアップ」抗原が得られる。
【0150】
本発明のFabCARは、ORゲートにおいて、標的細胞によって発現される第2の標的抗原に対する第2のCARと組み合わせて使用され得る。
【0151】
抗BCMA FabCARについて、ORゲートは、B細胞または形質細胞内に発現される第2の抗原(CD19、TACI、またはFcRL5など)に対するCARを含み得る。
【0152】
第2のCARは、任意の適切な抗原結合ドメイン(例えば、scFv、ドメイン抗体(dAb)、またはFabに基づいた結合ドメイン)を有し得る。
【0153】
ORゲートは、ダブルFab CARであり得る。これに関して、細胞は、Fab型抗原結合ドメインを有する2つの個別のCARを発現し得る。FabCARは、例えば、BCMAおよびTACIまたはBCMAおよびFcRL5に対し得る。
【0154】
また、本発明は、3つのCARを含み、そのうちの少なくとも1つが本発明の第1の態様のFabCARであるトリプルORゲートを提供する。トリプルORゲートは、例えば、BCMA Fab CAR、CD19 CAR、およびFcRL5 CARまたはFab CARを含み得る。
【0155】
第2のCARは、膜貫通ドメインから抗原結合ドメインを立体的に分離し、可動性を付与するスペーサーを含み得る。種々の配列がCARのスペーサーとして一般に使用されている(例えば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ(上記)、またはヒトCD8ストーク)。スペーサーは、例えば、WO2016/151315号に記載のコイルドコイルドメインを含み得る。
【0156】
第2のCARは、活性化エンドドメインを含む。第2のCARは、例えば、CD3ζ由来のエンドドメインを含み得る。第2のCARは、1またはそれより多くの上記の共刺激ドメインを含み得る。例えば、第2のCARは、CD28、OX-40、または4-1BB由来のエンドドメインを含み得る。
【0157】
CD19バインダー
いくつかの抗CD19抗体が、CAR形式で以前に記載されている(fmc63、4G7、SJ25C1、CAT19(WO2016/139487号に記載)およびCD19ALAb(WO2016/102965号に記載)など)。
【0158】
本発明のダブルまたはトリプルORゲートで用いるための抗CD19 CARは、抗原結合ドメイン(これらの抗CD19抗体のうちの1つに由来するscFv型抗原結合ドメインなど)を含み得る。
【0159】
CD19結合ドメインは、以下を含み得る:
a)以下の配列を有する相補性決定領域(CDR)を有する重鎖可変領域(VH):
CDR1-GYAFSSS(配列番号61);
CDR2-YPGDED(配列番号62)
CDR3-SLLYGDYLDY(配列番号63);および
b)以下の配列を有するCDRを有する軽鎖可変領域(VL):
CDR1-SASSSVSYMH(配列番号64);
CDR2-DTSKLAS(配列番号65)
CDR3-QQWNINPLT(配列番号66)。
【0160】
CD19結合活性に負の影響を及ぼすことなく各CDRに1またはそれより多くの変異(置換、付加、または欠失)を導入することが可能な場合がある。各CDRは、例えば、1つ、2つ、または3つのアミノ酸変異を有し得る。
【0161】
CDRは、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドが接続された抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の融合タンパク質である単鎖可変断片(scFv)の形式であり得る。scFvの配向はVH-VLであり得る(すなわち、VHがCAR分子のアミノ末端側にあり、VLドメインがスペーサーに連結しており、それに膜貫通ドメインおよびエンドドメインが続く)。
【0162】
CDRは、ヒト抗体またはscFvのフレームワーク上にグラフトされ得る。例えば、本発明のCARは、以下の配列のうちの1つからなるか、以下の配列のうちの1つを含むCD19結合ドメインを含み得る。
【0163】
抗CD19 CARは、以下のVH配列を含み得る:
配列番号67-マウスモノクローナル抗体由来のVH配列
QVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYAFSSSWMNWVKQRPGKGLEWIGRIYPGDEDTNYSGKFKDKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYFCARSLLYGDYLDYWGQGTTLTVSS
【0164】
抗CD19 CARは、以下のVL配列を含み得る:
配列番号75-マウスモノクローナル抗体由来のVL配列
QIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPDRFSGSGSGTSYFLTINNMEAEDAATYYCQQWNINPLTFGAGTKLELKR
【0165】
抗CD19 CARは、以下のscFv配列を含み得る:
配列番号76-マウスモノクローナル抗体由来のVH-VL scFv配列
QVQLQQSGPELVKPGASVKISCKASGYAFSSSWMNWVKQRPGKGLEWIGRIYPGDEDTNYSGKFKDKATLTADKSSTTAYMQLSSLTSEDSAVYFCARSLLYGDYLDYWGQGTTLTVSSGGGGSGGGGSGGGGSQIVLTQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMHWYQQKSGTSPKRWIYDTSKLASGVPDRFSGSGSGTSYFLTINNMEAEDAATYYCQQWNINPLTFGAGTKLELKR
【0166】
2つのポリペプチド配列の間の同一率は、http://blast.ncbi.nlm.nih.govで自由に利用可能なBLASTなどのプログラムによって容易に決定され得る。
【0167】
FCRL5
Fc受容体様タンパク質5(FcRL5)は、免疫グロブリン受容体スーパーファミリーのメンバーであり、Fc受容体様ファミリーFcRL5は、1回貫通I型膜タンパク質であり、8個の免疫グロブリン様C2型ドメインを含む。成熟タンパク質は、106kDaである。
【0168】
FCRL5は、2個の抑制性ITIMリン酸化シグナル伝達モチーフを有する細胞質側末端を有する。FCRL5は、B細胞抗原受容体の共刺激の際にSHP1を動員することによってB細胞抗原受容体シグナル伝達を抑制し、それにより、カルシウム流入およびタンパク質チロシンリン酸化を減弱する。FCRL5およびB細胞抗原受容体を共刺激すると、ナイーブB細胞の増殖および分化が促進される。FCRL5は、成熟B細胞上および形質細胞上の両方に発現され、EBVタンパク質によって誘導される。FCRL5は、毛様細胞白血病、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫の患者の悪性B細胞上に過剰発現される。
【0169】
市販のFcRL5に対するモノクローナル抗体(CD307e(ThermoFisher)およびREA391(Miltenyi Biotec)など)が公知である。
【0170】
WO2016090337号は、FcRL5に結合するいくつかのscFv型抗原結合ドメインを記載している。
【0171】
本発明のORゲートでは、抗FcRL5 CARは、dAb、scFv、またはFab抗原結合ドメインを含み得る。FcRL5は、Fab抗原結合ドメインを含み得る。
【0172】
核酸構築物
本発明はまた、本発明のキメラ受容体をコードする核酸構築物を提供する。
【0173】
FabCARをコードする核酸構築物(図2a)は、以下の構造を有し得る:
VH-CH-spacer-TM-endo-coexpr-VL-CLまたは
VL-CL-spacer-TM-endo-coexpr-VH-CH
ここで、
VHは、重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CHは、重鎖定常領域をコードする核酸配列であり
spacerは、スペーサーをコードする核酸であり;
TMは、膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endoは、エンドドメインをコードする核酸配列であり;
coexprは、第1および第2のポリペプチドの共発現を可能にする核酸配列であり;
VLは、軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CLは、軽鎖定常領域をコードする核酸配列である。
【0174】
上記の両構造について、2つのポリペプチドをコードする核酸配列は、構築物中でいずれかの順序であり得る。
【0175】
2つまたはそれより多くの(two of more)CARを含み、そのうちの少なくとも1つが本発明のFabCARであるORゲートをコードする核酸構築物も提供する。
【0176】
ダブルORゲートをコードする核酸構築物は、以下の構造を有し得る:
VH-CH-spacer1-TM1-endo1-coexpr1-VL-CL-coexpr2-AgBD-spacer2-TM2-endo2;または
VL-CL-spacer-TM1-endo1-coexpr1-VH-CH-coexpr2-AgBD-spacer2-TM2-endo2
ここで、
VHは、第1のCARの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CHは、第1のCARの重鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
spacer1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり;
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endo1は、第1のCARのエンドドメインをコードする核酸配列であり;
coexpr1およびcoexpr2は、同一でも異なっていてもよく、第1のCAR;ならびに第1および第2のCARの第1および第2のポリペプチドの共発現が可能な核酸配列であり;
VLは、第1のCARの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CLは、第1のCARの軽鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
AgBDは、第2のCARの抗原結合ドメインをコードする核酸配列であり;
spacer2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり;
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endo2は、第2のCARのエンドドメインをコードする核酸配列である。
【0177】
第2のCARの抗原結合ドメインは、例えば、scFvまたはdAbであり得る。
【0178】
上記の両方の構造物について、第1のCARの2つのポリペプチドをコードする核酸配列;第1および第2のCARをコードする核酸配列は、構築物内に任意の順序で存在し得る。
【0179】
ダブルFabCAR ORゲートをコードする核酸構築物は、以下の構造を有し得る:
VH1-CH1-spacer1-TM1-endo1-coexpr1-VL1-CL1-coexpr2-VH2-CH2-spacer2-TM2-endo2-coexpr3-VL2-CL2;
VH1-CH1-spacer1-TM1-endo1-coexpr1-VL1-CL1-coexpr2-VL2-CL2-spacer2-TM2-endo2-coexpr3-VH2-CH2;
VL1-CL1-spacer1-TM1-endo1-coexpr1-VH1-CH1-coexpr2-VL2-CL2-spacer2-TM2-endo2-coexpr3-VH2-CH2;または
VL1-CL1-spacer1-TM1-endo1-coexpr1-VH1-CH1-coexpr2-VH2-CH2-spacer2-TM2-endo2-coexpr3-VL2-CL2;
ここで、
VH1は、第1のCARの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CH1は、第1のCARの重鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
spacer1は、第1のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり;
TM1は、第1のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endo1は、第1のCARのエンドドメインをコードする核酸配列であり;
Coexpr1、coexpr2、およびcoexpr3は、同一でも異なっていてもよく、第1のCARの第1および第2のポリペプチド;ならびに第2のCARの第1および第2のポリペプチドの同時発現が可能な核酸配列であり;
VL2は、第2のCARの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CL2は、第2のCARの軽鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
VH2は、第2のCARの重鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CH2は、第2のCARの重鎖定常領域をコードする核酸配列であり;
spacer2は、第2のCARのスペーサーをコードする核酸配列であり;
TM2は、第2のCARの膜貫通ドメインをコードする核酸配列であり;
endo2は、第2のCARのエンドドメインをコードする核酸配列であり;
VL2は、第2のCARの軽鎖可変領域をコードする核酸配列であり;
CL2は、第2のCARの軽鎖定常領域をコードする核酸配列である;
【0180】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、および「核酸」は、相互に同義であることが意図される。
【0181】
当業者は、多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が遺伝暗号の縮重の結果として同一のポリペプチドをコードすることができることを理解する。さらに、当業者は、日常的な技術を使用して、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映するように、本明細書中に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチドを置換することができると理解すべきである。
【0182】
本発明の核酸は、DNAまたはRNAを含み得る。本発明の核酸は一本鎖または二本鎖であり得る。本発明の核酸はまた、本発明の核酸内に合成または改変されたヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なるタイプの改変が当該分野で公知である。これらの改変には、メチルホスホナート骨格およびホスホロチオアート骨格、分子の3’末端および/または5’末端でのアクリジン鎖またはポリリジン鎖の付加が含まれる。本明細書中に記載の使用のために、当該分野で利用可能な任意の方法によってポリヌクレオチドを改変することができると理解すべきである。かかる改変は、目的のポリヌクレオチドのin vivo活性を強化し、寿命を延ばすために実施され得る。
【0183】
ヌクレオチド配列に関連する用語「バリアント」、「ホモログ」、または「誘導体」は、前記配列からか、前記配列への、1(またはそれより多くの)核酸の任意の置換、変形、改変、置き換え、欠失、または付加を含む。
【0184】
上記の構造物では、「coexpr」は、個別の実体として2つのポリペプチドの共発現が可能な核酸配列である。coexprは、核酸構築物が切断部位(複数可)によって連結した両方のポリペプチドを産生するように、切断部位をコードする配列であり得る。ポリペプチドが産生されたときに、いかなる外部の切断活性を必要とすることなく個別のペプチドに直ちに切断されるように、切断部位は自己切断され得る。
【0185】
切断部位は、2つのポリペプチドが分離するようになることが可能な任意の配列であり得る。
【0186】
用語「切断」を本明細書中で便宜上使用するが、切断部位により、古典的な切断以外の機序によってペプチドを個別の実体に分離することができる。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A自己切断ペプチド(以下を参照のこと)について、以下の「切断」活性を説明するための種々のモデルが提案されている:宿主細胞プロテイナーゼによるタンパク質分解活性、自己タンパク質分解、または翻訳効果(Donnellyら(2001)J.Gen.Virol.82:1027-1041)。かかる「切断」の正確な機序は、切断部位がタンパク質をコードする核酸配列の間に配置されたときに個別の実体としてタンパク質を発現する限り、本発明の目的には重要でない。
【0187】
切断部位は、例えば、フューリン切断部位、タバコエッチ病ウイルス(TEV)切断部位であり得るか、自己切断ペプチドをコードし得る。
【0188】
「自己切断ペプチド」は、タンパク質および自己切断ペプチドを含むポリペプチドが産生されたときに、いかなる外部の切断活性も必要とせずに個別かつ分離した第1および第2のポリペプチドに直ちに「切断される」かまたは分離されるように機能するペプチドを指す。
【0189】
自己切断ペプチドは、アフトウイルスまたはカルジオウイルス由来の2A自己切断ペプチドであり得る。アフトウイルスおよびカルジオウイルスの一次2A/2B切断は、それ自体のC末端での2A「切断」によって媒介される。アフトウイルス(apthovirus)(口蹄疫ウイルス(FMDV)およびウマ鼻炎Aウイルスなど)では、2A領域は、約18アミノ酸の短い部分であり、タンパク質2BのN末端残基(保存プロリン残基)と共に、それ自体のC末端での「切断」を媒介することができる自律エレメントを示す(上記のDonellyら(2001))。
【0190】
「2A様」配列は、アフトウイルスまたはカルジオウイルス以外のピコルナウイルス、「ピコルナウイルス様」昆虫ウイルス、タイプCロタウイルス、ならびにTrypanosoma sppおよび細菌配列内の反復配列で見出されている(上記のDonnellyら(2001))。
【0191】
切断部位は、配列番号77として示した2A様配列(RAEGRGSLLTCGDVEENPGP)を含み得る。
【0192】
キメラサイトカイン受容体
また、本発明の核酸構築物は、キメラサイトカイン受容体をコードする1またはそれを超える核酸配列を含み得る。
【0193】
キメラサイトカイン受容体は、WO2017/029512号(本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0194】
キメラサイトカイン受容体は、以下を含み得る:
リガンドに結合するエキソドメイン;および
サイトカイン受容体エンドドメイン。
【0195】
リガンドは、例えば、腫瘍分泌因子、ケモカイン、または細胞表面抗原であり得る。
【0196】
キメラサイトカイン受容体は、以下の2つのポリペプチドを含む:
(i)以下を含む第1のポリペプチド:
(a)リガンドの第1のエピトープに結合する第1の抗原結合ドメイン
(b)サイトカイン受容体エンドドメインの第1の鎖;および
(ii)以下を含む第2のポリペプチド:
(a)リガンドの第2のエピトープに結合する第2の抗原結合ドメイン(b)サイトカイン-受容体エンドドメインの第2の鎖。
【0197】
別の実施形態では、キメラサイトカイン受容体は、二量体化ドメイン;およびサイトカイン受容体エンドドメインを含み得る。
【0198】
二量体化は自発的に起こる場合があり、この場合、キメラ膜貫通タンパク質は構成性に活性であろう。あるいは、二量体化は二量体化の化学誘導物質(CID)の存在下でのみ起こる場合があり、この場合、膜貫通タンパク質のみにより、CIDの存在下でサイトカイン型シグナル伝達が生じる。
【0199】
適切な二量体化ドメインおよびCIDは、WO2015/150771号(その内容が本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0200】
例えば、一方の二量体化ドメインがFK結合タンパク質12(FKBP12)のラパマイシン結合ドメインを含む場合があり、他方はmTORのFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)ドメインを含む場合があり;CIDは、ラパマイシンまたはその誘導体であり得る。
【0201】
二量体化ドメインが自発的にヘテロ二量体化する場合、このドメインは、抗体の二量体化ドメインに基づき得る。特に、二量体化ドメインは、重鎖定常ドメイン(CH)および軽鎖定常ドメイン(CL)の二量体化部分を含み得る。定常ドメインの「二量体化部分」は、鎖間ジスルフィド結合を形成する配列の一部である。
【0202】
例えば、図4に模式的示すように、キメラサイトカイン受容体は、エキソドメインとして抗体のFab部分を含み得る。
【0203】
キメラサイトカイン受容体は、以下の2つのポリペプチドを含み得る:
(i)以下を含む第1のポリペプチド:
(a)第1の二量体化ドメイン;および
(b)サイトカイン受容体エンドドメインの第1の鎖;および
(ii)以下を含む第2のポリペプチド:
(a)前述の第1の二量体化ドメインと二量体化する第2の二量体化ドメイン;および
(b)サイトカイン-受容体エンドドメインの第2の鎖。
【0204】
キメラサイトカイン受容体は、以下の2つのポリペプチドを含み得る:
(i)以下を含む第1のポリペプチド:
(a)重鎖定常ドメイン(CH)
(b)サイトカイン受容体エンドドメインの第1の鎖;および
(ii)以下を含む第2のポリペプチド:
(a)軽鎖定常ドメイン(CL)
(b)サイトカイン-受容体エンドドメインの第2の鎖。
【0205】
サイトカイン受容体エンドドメインは、例えば、以下を含み得る:
(i)IL-2受容体β鎖エンドドメイン
(ii)IL-7受容体α鎖エンドドメイン;または
(iii)IL-15受容体α鎖エンドドメイン;および/または
(iv)共通のγ鎖受容体エンドドメイン。
【0206】
Fab型の構成性に活性なキメラサイトカイン受容体をコードする核酸構築物は、以下の一般構造を有し得る:
CH-CRE1-coexpr-CL-CRE2;または
CL-CRE2-coexpr-CH-CRE1
ここで、
CHは、第1のポリペプチドの重鎖定常ドメインをコードする核酸配列であり;
CRE1は、第1のポリペプチドのサイトカイン受容体エンドドメインの第1の鎖をコードする核酸配列であり;
coexprは、第1および第2のポリペプチドの同時発現を可能にする配列をコードし;
CLは、第2のポリペプチドの重鎖定常ドメインをコードする核酸配列であり;
CRE2は、第2のポリペプチドのサイトカイン受容体エンドドメインの第2の鎖をコードする核酸配列である。
【0207】
本発明の核酸構築物は、FabCARおよびキメラサイトカイン受容体をコードし得る。
【0208】
ベクター
本発明はまた、本発明のキメラ受容体をコードする1またはそれより多くの核酸配列を含むベクターまたはベクターのキットを提供する。かかるベクターは、宿主細胞が本発明の第1の態様のCARを発現するように宿主細胞内に核酸配列(複数可)を導入するために使用され得る。
【0209】
FabCARおよびキメラサイトカイン受容体をコードする核酸配列の核酸構築物を含むベクターも提供する。
【0210】
ベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルスベクター(レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターなど)、またはトランスポゾンベースのベクターまたは合成mRNAであり得る。
【0211】
ベクターは、T細胞またはNK細胞などの細胞にトランスフェクトするか形質導入することが可能であり得る。
【0212】
細胞
本発明は、本発明のキメラ抗原受容体を含む細胞を提供する。細胞は、2つまたはそれより多くのCARを含み得る(例えば、細胞は、上記のダブルORゲートまたはトリプルORゲートを含み得る。
【0213】
本発明のFabCARまたはORゲートおよびキメラサイトカイン受容体を同時発現する細胞も提供する。
【0214】
細胞は、本発明の核酸またはベクターを含み得る。
【0215】
細胞は、細胞溶解性免疫細胞(T細胞またはNK細胞など)であり得る。
【0216】
T細胞またはTリンパ球は、細胞性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球の1つの型である。これらは、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によって他のリンパ球(B細胞およびナチュラルキラー細胞(NK細胞)など)と区別することができる。以下にまとめているように、種々のタイプのT細胞が存在する。
【0217】
ヘルパーTヘルパー細胞(TH細胞)は、免疫学的過程(B細胞の形質細胞およびメモリーB細胞への成熟ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化が含まれる)において他の白血球を補助する。TH細胞は、その表面上でCD4を発現する。TH細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上のMHCクラスII分子によってペプチド抗原が提示されたときに活性化されるようになる。これらの細胞は、異なるタイプの免疫応答を容易にするために異なるサイトカインを分泌するいくつかのサブタイプ(TH1、TH2、TH3、TH17、Th9、またはTFH)のうちの1つに分化することができる。
【0218】
細胞溶解性T細胞(TC細胞、またはCTL)は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶にも関与する。CTLは、その表面にCD8を発現する。これらの細胞は、全ての有核細胞の表面上に存在するMHCクラスIに関連する抗原への結合によってその標的を認識する。IL-10、アデノシン、および制御性T細胞によって分泌される他の分子を介して、CD8+細胞をアネルギー状態に不活性化することができ、それにより実験的自己免疫性脳脊髄炎などの自己免疫疾患を予防する。
【0219】
メモリーT細胞は、感染から回復した後に長期間にわたって維持される抗原特異的T細胞のサブセットである。メモリーT細胞は、その同族抗原への再曝露の際に迅速に多数のエフェクターT細胞へと拡大増殖する(expand)ため、免疫系に過去の感染を「記憶」させている。メモリーT細胞は、以下の3つのサブタイプを含む:セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)および2つのタイプのエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞およびTEMRA細胞)。メモリー細胞は、CD4+またはCD8+のいずれかであり得る。メモリーT細胞は、典型的には、細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
【0220】
以前は抑制性T細胞として公知であった制御性T細胞(Treg細胞)は、免疫寛容の維持に不可欠である。その主な役割は、免疫反応の終了に向けてT細胞性免疫を停止させること、および胸腺内でのネガティブ選択過程を回避した自己反応性T細胞を抑制することである。
【0221】
CD4+Treg細胞の2つの主なクラス(内在性Treg細胞および適応Treg細胞)が記載されている。
【0222】
内在性Treg細胞(CD4+CD25+FoxP3+Treg細胞としても公知)は、胸腺内で生じ、発生中のT細胞の、TSLPで活性化されている骨髄系(CD11c+)樹状細胞および形質細胞様(CD123+)樹状細胞の両方との相互作用に関与している。内在性Treg細胞は、FoxP3と呼ばれる細胞内分子の存在によって他のT細胞と区別することができる。FOXP3遺伝子を変異させると制御性T細胞の発生が阻止され、致死性自己免疫疾患IPEXを引き起こし得る。
【0223】
適応Treg細胞(Tr1細胞またはTh3細胞としても公知)は、正常な免疫応答中に生じ得る。
【0224】
細胞は、ナチュラルキラー細胞(またはNK細胞)であり得る。NK細胞は、先天性免疫系の一部を成し得る。NK細胞は、ウイルス感染細胞からの内生シグナルに対してMHC依存性様式で迅速に応答する。
【0225】
NK細胞(先天性リンパ球系細胞群に属する)は大顆粒リンパ球(LGL)と定義され、Bリンパ球およびTリンパ球を生成する共通のリンパ球系前駆細胞から分化した第3の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺、および胸腺で分化および成熟し、次いで、循環内に入ることが公知である。
【0226】
本発明の細胞は、上記の細胞型のうちのいずれかであり得る。
【0227】
本発明による細胞は、患者自体の末梢血(第一者)から、またはドナー末梢血(第二者)または無関係のドナー由来の末梢血(第三者)由来の造血幹細胞移植においてex vivoで作り出すことができる。
【0228】
あるいは、細胞は、誘導前駆細胞または胚性前駆細胞の、例えばT細胞またはNK細胞へのex vivo分化に由来し得る。あるいは、溶解機能を保持し、かつ治療に役立つもの(therapeutic)として作用することができる不死化T細胞株が使用され得る。
【0229】
これらの全ての実施形態では、キメラポリペプチド発現細胞は、多数の手段(ウイルスベクターを用いた形質導入、DNAまたはRNAを用いたトランスフェクションが含まれる)のうちの1つによってキメラポリペプチドをコードするDNAまたはRNAを導入することによって生成される。
【0230】
本発明の細胞は、被験体由来のex vivoでの細胞であり得る。細胞は、末梢血単核球(PBMC)試料に由来し得る。細胞は、本発明の第1の態様のキメラポリペプチドが得られる分子をコードする核酸で形質導入される前に、例えば抗CD3モノクローナル抗体での処置によって活性化および/または拡大増殖され得る。
【0231】
本発明の細胞は、以下によって作製され得る:
(i)上記列挙の被験体または他の供給源からの細胞を含む試料の単離;および
(ii)キメラポリペプチドをコードする1またはそれより多くの核酸配列での細胞の形質導入またはトランスフェクション。
【0232】
次いで、細胞は、精製され得る(例えば、抗原結合ポリペプチドの抗原結合ドメインの発現に基づいて選択され得る)。
【0233】
医薬組成物
本発明はまた、複数の本発明による細胞を含む医薬組成物に関する。
【0234】
医薬組成物は、さらに、薬学的に許容され得る担体、希釈剤、または賦形剤を含み得る。医薬組成物は、必要に応じて、1またはそれより多くのさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を含み得る。かかる製剤は、例えば、静脈内注入に適切な形態であり得る。
【0235】
処置方法
本発明は、(例えば、上記の医薬組成物中の)本発明の細胞を被験体に投与するステップを含む、疾患を処置する方法を提供する。
【0236】
疾患を処置する方法は、本発明の細胞の治療的使用に関する。本明細書中では、疾患に関連する少なくとも1つの症状を緩和、軽減、もしくは改善し、および/または疾患の進行を遅延、軽減、もしく遮断するために、疾患または状態を既に有する被験体に細胞を投与することができる。
【0237】
疾患を予防する方法は、本発明の細胞の予防的使用に関する。本明細書中では、未だ罹患しておらず、および/または疾患のいかなる症状も示していない被験体に、疾患の原因を予防するか損なわせるか、疾患に関連する少なくとも1つの症状の発生を軽減または予防するためにかかる細胞を投与することができる。被験体は、疾患の素因を有し得るか、発症リスクがあると考えられ得る。
【0238】
本方法は、以下のステップを含み得る:
(i)細胞を含む試料を単離するステップ;
(ii)かかる細胞を、本発明によって提供された核酸配列またはベクターで形質導入するかトランスフェクトするステップ;
(iii)(ii)由来の細胞を被験体に投与するステップ。
【0239】
細胞を含む試料は、上記の被験体または他の供給源から単離され得る。
【0240】
本発明は、疾患の処置および/または予防で用いるための本発明の細胞を提供する。
【0241】
本発明はまた、疾患の処置のための医薬の製造における本発明の細胞の使用に関する。
【0242】
本発明の方法によって処置されるべき疾患は、がん性疾患(膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(腎細胞がん)、白血病、肺がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺がんなど)であり得る。
【0243】
疾患は、多発性骨髄腫(MM)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、神経芽細胞腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であり得る。
【0244】
疾患は、形質細胞障害、例えば、プラズマ細胞腫、形質細胞白血病、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症,アミロイド症、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、孤立性骨プラズマ細胞腫、髄外形質細胞腫、骨硬化性骨髄腫、重鎖病、意義未確定の単クローン性免疫グロブリン血症、またはくすぶり型多発性骨髄腫であり得る。
【0245】
本発明の細胞は、がん細胞などの標的細胞を死滅させることが可能であり得る。標的細胞は、標的細胞付近の腫瘍分泌性のリガンドまたはケモカインリガンドの存在によって特徴付けられ得る。標的細胞は、標的細胞表面に腫瘍関連抗原(TAA)の発現と共に可溶性リガンドが存在することによって特徴付けられ得る。
【0246】
本発明の細胞および医薬組成物は、上記の疾患の処置および/または防止で使用されるためのものであり得る。
【0247】
本発明を、ここに、実施例によってさらに説明するが、実施例は本発明の実施において当業者を補助することを意図し、本発明の範囲を制限することを決して意図しない。
【実施例0248】
実施例1-多発性骨髄腫細胞表面上のBCMAの発現
明らかに罹患していることが知られている多発性骨髄腫患者由来の新鮮な骨髄試料に対してCD138免疫磁性選択を実施することによって初代骨髄腫細胞を単離した。これらの細胞を、PEと抱合したBCMA特異的J6MO mAb(GSK)で染色した。同時に、結合部位数が公知のビーズの標準を、PE Quantibriteビーズキット(Becton Dickenson)を製造者の説明書通りに使用して生成した。骨髄腫細胞のBCMAコピー数を、骨髄腫細胞由来の平均蛍光強度をビーズから導いた検量線と相関させることによって導いた。骨髄腫細胞表面上のBCMAコピー数の範囲が狭いことが見出された:細胞あたり348.7~4268.4 BCMAコピー、平均1181および中央値1084.9(図1)。これは、例えばCARの古典的な標的であるCD19およびGD2よりもかなり低い。
【0249】
実施例2-抗BCMA FabCARの構築および抗BCMA scFv CARとの比較
CARをコードする核酸構築物のパネルを、以下のように生成した:
RQR8-2A-aBCMAscFv-CD8STK-41BBZ-一本鎖Fv CAR構築物
RQR8-2A-aBCMAFAb-CD8STK-41BBZ-FabベースのCAR構築物
RQR8-2A-aBCMA_C11D5.3-CD8STK-41BB-z-bb2121 scFv CAR構築物(正の対照)
抗BCMA scFvおよびFabドメインは、上記の抗BCMA Ab1のVH配列およびVL配列を含んでいた(それぞれ、配列番号5および6)。全ての構築物は、選別-自殺遺伝子RQR8(WO2013/153391号に記載され、scFv形式またはFab形式のいずれかのBCMA結合部分を有する)と同時発現される。
【0250】
実施例3-CAR発現試験
異なる形式のCARの発現を比較するために、T細胞を、scFv CARまたはFab CARで形質導入し、フローサイトメトリーによって細胞表面上の受容体を検出した。可溶性のBCMA-FCおよびQBEND10(RQR8発現を検出するため)でのT細胞の共染色によってCAR発現を検出する。
【0251】
実施例4-FACSベースの死滅アッセイ(FBK)
CAR-T細胞がBCMAを発現する標的細胞を死滅させる能力を、FACSベースの死滅アッセイを使用して調査した。T細胞を、エフェクター:標的比1:4および1:8で標的細胞と共培養した。生理学的レベルのBCMA抗原を発現するように操作されたSupT1細胞を、標的細胞として使用した:細胞あたり平均686コピーBCMA(SupT1-BCMA low)。また、超低レベルのBCMAを発現する標的細胞を作出した:細胞あたり平均81コピーBCMA(JeKo-1)。また、非操作SupT1細胞(SupT1-NT)を、負の対照として使用した。5×10形質導入標的細胞/ウェルを使用した総体積0.2mlの96ウェルプレートにおいてアッセイを行った。形質導入効率について正規化した後に共培養を設定した。インキュベーションの24時間後および72時間後にFBKをアッセイした。
【0252】
結果を図5および6に示す。24時間の共培養後(図5)、BCMA scFv CARおよびBCMA FabCARの両方は、低レベルのBCMA抗原を発現する標的細胞を首尾よく死滅させた。しかしながら、BCMA FabCARは、超低レベルのBCMAを発現する標的細胞(JeKo-1)の等価なscFv CARより優れた死滅を示した。また、BCMA FabCARは、他のBCMA scFv CAR(bb2121)より優れた死滅を示した。72時間後(図6)、類似のパターンが認められる。E:T比1:8で、BCMA FabCARは、超低BCMA発現標的細胞をほぼ完全に死滅させたのに対して、等価なバインダーを有するscFv CARは部分的な標的細胞死滅のみを示した。
【0253】
実施例5-サイトカイン放出
CAR T細胞によるIL-2およびインターフェロン-γ(IFNγ)の分泌を、実施例4に記載のようにエフェクター:標的比1:4および1:8での共培養から24時間後に上清を回収することによって測定した。IL-2およびIFN-Gの産生を、ELISAによって検出した。
【0254】
抗原非BCMA発現標的細胞(図7A)または低レベルのBCMAを発現する標的細胞(図7B)を使用して実施した共培養物についてのIFNγの結果を図7に示す。BCMA FabCAR発現T細胞は、等価なscFv CARよりもBCMA低発現標的細胞との共培養後に同レベルのIFNγを産生した。bb2121および等価なscFv CARの両方についての非形質導入SupT1標的細胞を用いたバックグラウンドは、FabCARで認められたバックグラウンドより高かった。
【0255】
実施例6-増殖アッセイ(PA)
増殖を測定するために、実施例4に記載のCAR発現T細胞の同一のパネルを、色素Cell Trace Violet(CTV)で標識した。T細胞を、CTVと37℃で20分間インキュベートした。その後に、細胞を5Vの完全培地を添加してクエンチした。5分間のインキュベーション後、T細胞を洗浄し、2mlの完全培地に再懸濁した。室温でさらに10分間インキュベートして、酢酸を加水分解させ、色素を保持させた。標識されたT細胞を、非BCMA発現標的細胞(SupT1 NT)、低BCMA発現標的細胞(SupT1BCMAlow)、超低BCMA発現標的細胞(JeKo-1)、またはMM.1s標的細胞と1:1の比で96時間共培養した。ウェルあたり5×10個の形質導入されたT細胞および等数の標的細胞(比1:1)を使用して、総体積が0.2mlの96ウェルプレート中でアッセイを行った。共培養後、T細胞をフローサイトメトリーによって分析して、T細胞の分裂の際に生じるCTVの希釈を測定した。
【0256】
また、細胞を、CD3およびマーカーRQR8に対してゲーティングし、次いで、CD4およびCD8T細胞についてのホールセル数を調査するためにCD8+またはCD8-のいずれかに対してゲーティングした。結果を図8に示す。BCMA FabCARは、3つ全てのBCMA発現標的細胞型(低発現標的、超低発現標的、およびMM.1s標的)との共培養後の等価なscFv CARおよびbb2121と比較してCD8細胞数が多く、このことは、より高い増殖および/または細胞死の低下のいずれかを反映していた(図8B)。CD4細胞において、bb2121およびscFv CARのバックグラウンド増殖が、FabCARで認められるバックグラウンド増殖よりも高いことも注目すべきである。これは、標的細胞の増殖が見かけ上より高いことを示し得るが、実際は、抗原の非存在でのCARの活性化の増加を反映している。
【0257】
実施例7-切断性FabCARの抗原結合ドメインと等価なデュアル可変ドメインを有する抗体のデザインおよび構築
切断性FabCARを、図9に模式的に示す。これは、以下の2つの抗原結合ドメインを含む:外部(膜遠位)結合ドメイン1および内部(膜近位)結合ドメイン2。結合ドメイン1および2は、切断性リンカーによって連結している。例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)によってリンカーを切断すると、CARから結合ドメイン1が除去される。切断していない場合(FabCARがインタクトであるとき)、内部結合ドメインは、立体障害に起因する外部ドメインの存在によって部分的に閉塞される。内部ドメインは、重鎖および軽鎖が切断されたときに活性化される。
【0258】
2つの結合ドメインを有する分子をデザインし、酵素での外部結合ドメインの切断によって内部結合ドメインを活性化することが可能であることを示すために、可溶性抗体を図10に示すようにデザインした。
【0259】
抗体は、BCMAに結合し、かつ上にそれぞれ配列番号29および30として示したVH配列およびVL配列を有する第1の抗原結合ドメインを含んでいた。第2の抗原結合ドメインは、CD19に結合し、かつ上にそれぞれ配列番号67および配列番号68として示したVH配列およびVL配列を有する。
【0260】
配列PLGLAG(配列番号87)を有するMMP-9切断性リンカーを、2つのVLドメインの間および2つのVHドメインの間に含めた。負の対照として、この配列のスクランブルバージョンを使用した:LALGPG(配列番号88)。
【0261】
構築物を以下のように作製した:
プラスミド1:D8_MMP9_CAT19_HC_HuIgG1
プラスミド2:D8_scrambled_CAT19_HC_HuIgG1
プラスミド3:D8_MMP9_CAT19_LC
プラスミド4:D8_scrambled_CAT19_LC
CHO細胞をプラスミド1およびプラスミド3のいずれかで同時トランスフェクトすると、CHO細胞は、図10に示したMMP-切断性リンカーを有する抗体を産生した;あるいは、プラスミド2およびプラスミド4で同時トランスフェクトすると、CHO細胞は、VH含有鎖およびVL含有鎖中にスクランブルリンカーを有する等価な抗体を産生した。
【0262】
実施例8-酵素を使用して2つの結合ドメイン抗体の外部結合ドメインを切断することができることの実証
実施例7に記載の抗体は、BCMA結合ドメインおよびCD19結合ドメインのVHドメインとVLドメインとの間にMMP-9切断性リンカーを含んでいた。BCMA結合ドメインがMMP-9酵素を使用して切断され得ることを実証するために、消化アッセイを以下のように設定した。
【0263】
アッセイ緩衝液中100μg/mLの組み換えヒトMMP-9を作製した。P-アミノ酢酸フェニル水銀(APMA)を、酵素を活性化するために最終濃度1mMまで添加し、37℃で24時間インキュベートした。
【0264】
消化アッセイを、最終緩衝液体積200ulで50ug抗体および6ul活性化酵素を混合することによって準備した。消化アッセイ試料を37℃でインキュベートし、1ug抗体溶液(4ul)を種々の時点で取り出し、NuPAGEローディング色素中に再懸濁し、ボイルし、凍結し、次いで、SDS-PAGEで泳動した。切断率をデンシトメトリーによって分析し、結果を図11に示す。
【0265】
MMP-9切断性リンカーを含む抗体を、マトリックスメタロプロテイナーゼによって経時的に消化し、酵素への暴露約1時間後にプラトーに達した。スクランブルリンカーを有する抗体は、酵素への暴露24時間後でさえも、消化の有意な増加は示さなかった。
【0266】
実施例9-内部結合ドメインの標的抗原への結合に及ぼす外部結合ドメイン切断の影響の調査
外部結合ドメインを除去するか除去しない場合の内部結合ドメインの活性を調査するために、ELISAアッセイを、CD19への結合を調査するために設定した。組換えCD19を、96ウェルプレート上に50ul/ウェル中1ug/mlでコーティングした。ブロッキング後、実施例7に記載の抗体(MMP-9リンカーまたはスクランブルリンカーを含み、かつ事前にMMP-9に暴露しているか暴露していない)を、15ug/mlで30分間負荷し、次いで、PBS0.05%Tween20で洗浄した。二次抗ヒトFc HRP抱合抗体を、1:3000希釈で添加し、1時間インキュベートした。シグナルを1-step Ultra TMB基質で検出し、1M HSO中でブロッキングした。結果を図12に示す:可溶性抗体(D8-MMP-CAT19)は、MMP-9切断の際にCD19への結合が増加したのに対して、スクランブルリンカーを有する抗体(D8-scrambled-CAT19)では、CD19結合はMMP-9への事前暴露による影響を受けなかった。
【0267】
実施例10-CD19結合の動態学に及ぼす外部結合ドメイン切断の影響の調査
CD19結合動態学を、Biacore8K装置によるプロテインAチップ上の抗体の捕捉によって試験した。実施例8に記載の抗体(MMP-9への事前暴露ありまたはなし)および正の対照抗体(CAT19 IgG)を、IgGについては75RUで、2つの結合ドメイン構築物については100RUで捕捉した。組換えCD19を、HBS-EP+緩衝液で透析し、分析物を500nMで2倍系列希釈を用いて試験した。結果を図13に示す。MMP-9切断性リンカーを有する抗体は、MMP-9での切断後のCD19結合のRmax(D8-MMP9-CAT19切断)が、MMP-9へ暴露しなかった等価な抗体(D8-MMP9-CAT19)より増加した。
【0268】
上記明細書中に記載の全ての刊行物は、本明細書中で参考として援用される。本発明の記載の方法およびシステムの種々の修正および変形は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者に明らかである。本発明を特定の好ましい実施形態と併せて記載しているが、特許請求の範囲に記載の発明がかかる特定の実施形態に過度に制限されるべきではないと理解すべきである。実際、分子生物学または関連分野の当業者に明らかな本発明の実施のための記載の様式の種々の修正は、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
図1
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【配列表】
2023169370000001.app
【外国語明細書】