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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169420
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】構造計算支援装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20231121BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20231121BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/13
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169458
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2019204398の分割
【原出願日】2019-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】517362853
【氏名又は名称】株式会社アークデータ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100153268
【弁理士】
【氏名又は名称】吉原 朋重
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 俊正
(57)【要約】
【課題】
建築物について、実用的、かつ、簡素化された前提を備える構造計算モデルによって構造分析を行う。
【解決手段】
建築物の構造分析を有限要素法によって行う構造計算支援装置であって、前記建築物のモデル化される一の要素において、垂直な壁柱を備える壁エレメント置換を施すことによって生成される第1の剛性マトリクスと、前記垂直な壁柱に直交する水平な壁柱を備える壁エレメント置換を施すことによって生成される第2の剛性マトリクスと、の行列上同じ位置にある成分どうしを足して生成する第3の剛性マトリクスを用いて、前記建築物のモデル化を行う。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の構造分析を有限要素法によって行う構造計算支援装置であって、
前記建築物のモデル化される一の要素において、垂直な壁柱を備える壁エレメント置換を施すことによって生成される第1の剛性マトリクスと、前記垂直な壁柱に直交する水平な壁柱を備える壁エレメント置換を施すことによって生成される第2の剛性マトリクスと、の行列上同じ位置にある成分どうしを足して生成する第3の剛性マトリクスを用いて、前記建築物のモデル化を行うことを特徴とする構造計算支援装置。
【請求項2】
前記第1の剛性マトリクスと前記第2の剛性マトリクスとが、4つの同一節点について生成される剛性マトリクスであることを特徴とする請求項1に記載の構造計算支援装置。
【請求項3】
前記垂直な壁柱が、前記一の要素において、左上側に位置する第1の節点と右上側に位置する第2の節点とで形成される上側線と、左下側に位置する第3の節点と右下側に位置する第4の節点とで形成される下側線と、を結ぶ垂直材であり、
前記水平な壁柱が、前記一の要素において、前記第1の節点と前記第3の節点とで形成される左側線と、前記第2の節点と前記第4の節点とで形成される右側線と、を結ぶ水平材であることを特徴とする請求項2に記載の構造計算支援装置。
【請求項4】
前記垂直な壁柱と前記上側線との交点、前記垂直な壁柱と前記下側線との交点、前記水平な壁柱と前記左側線との交点及び前記水平な壁柱と前記右側線との交点に、軸応力を測定する軸ばね、せん断応力を測定するせん断ばね及び曲げ応力を測定する回転ばねが配置され、前記軸ばね、前記せん断ばね及び前記回転ばねの各測定値に基づいて、各節点の変位量を算出することを特徴とする請求項3に記載の構造計算支援装置。
【請求項5】
前記一の要素の節点における応力の大きさを表すベクトルが、前記第3の剛性マトリクスに、右側から各節点における変位量の大きさを表すベクトルを乗じたものと等しくなるという剛性方程式を生成することによって、前記建築物の構造分析を行うことを特徴とする請求項4に記載の構造計算支援装置。
【請求項6】
建築物の構造分析を有限要素法によって行う装置において行われる構造計算支援方法であって、
前記建築物のモデル化される一の要素において、垂直な壁柱を備える壁エレメント置換を施すことによって生成される第1の剛性マトリクスと、前記垂直な壁柱に直交する水平な壁柱を備える壁エレメント置換を施すことによって生成される第2の剛性マトリクスと、の行列上同じ位置にある成分どうしを足して生成する第3の剛性マトリクスを用いて、前記建築物のモデル化を行うことを特徴とする構造計算支援方法。
【請求項7】
前記第1の剛性マトリクスと前記第2の剛性マトリクスとが、4つの同一節点について生成される剛性マトリクスであることを特徴とする請求項6に記載の構造計算支援方法。
【請求項8】
前記垂直な壁柱が、前記一の要素において、左上側に位置する第1の節点と右上側に位置する第2の節点とで形成される上側線と、左下側に位置する第3の節点と右下側に位置する第4の節点とで形成される下側線と、を結ぶ垂直材であり、
前記水平な壁柱が、前記一の要素において、前記第1の節点と前記第3の節点とで形成される左側線と、前記第2の節点と前記第4の節点とで形成される右側線と、を結ぶ水平材であることを特徴とする請求項7に記載の構造計算支援方法。
【請求項9】
前記垂直な壁柱と前記上側線との交点、前記垂直な壁柱と前記下側線との交点、前記水平な壁柱と前記左側線との交点及び前記水平な壁柱と前記右側線との交点に、軸応力を測定する軸ばね、せん断応力を測定するせん断ばね及び曲げ応力を測定する回転ばねが配置され、前記軸ばね、前記せん断ばね及び前記回転ばねの各測定値に基づいて、各節点の変位量を算出することを特徴とする請求項8に記載の構造計算支援方法。
【請求項10】
前記一の要素の節点における応力の大きさを表すベクトルが、前記第3の剛性マトリクスに、右側から各節点における変位量の大きさを表すベクトルを乗じたものと等しくなるという剛性方程式を生成することによって、前記建築物の構造分析を行うことを特徴とする請求項9に記載の構造計算支援方法。
【請求項11】
コンピューターに、請求項6乃至10の何れか一に記載の方法を実行させるための構造計算支援プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建築物の構造分析を有限要素法によって行う装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CLTは1995年頃からオーストリアを中心として発展し、現在では、イギリスやスイス、イタリアなどヨーロッパ各国でも様々な建築物に利用されている。また、カナダやアメリカ、オーストラリアでもCLTを使った高層建築が建てられるなど、CLTの利用は近年になり各国で急速な伸びを見せている。
【0003】
日本では2013年12月に製造規格となるJAS(日本農林規格)が制定され、2016年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行された。これらにより、CLTの一般利用がスタートした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】建築技術2017年2月号、No.805、平成29年1月17日発行、株式会社建築技術
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CLT材を使用する部位のモデル化手法として、非特許文献1の111頁図11で示されるようなモデルが提案されているが、各要素の外側にばねを配置する必要があるなど、構造計算モデルの前提が複雑であるという問題点がある。
【0006】
そこで本発明では、上記問題点に鑑み、建築物について、実用的、かつ、簡素化された前提を備える構造計算モデルによって構造分析を行う構造計算支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示する構造計算支援装置の一形態は、建築物の構造分析を有限要素法によって行う構造計算支援装置であって、前記建築物のモデル化される一の要素において、垂直な壁柱を備える壁エレメント置換を施すことによって生成される第1の剛性マトリクスと、前記垂直な壁柱に直交する水平な壁柱を備える壁エレメント置換を施すことによって生成される第2の剛性マトリクスと、の行列上同じ位置にある成分どうしを足して生成する第3の剛性マトリクスを用いて、前記建築物のモデル化を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
開示する構造計算支援装置は、建築物について、実用的、かつ、簡素化された前提を備える構造計算モデルによって構造分析を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態に係る壁エレメント置換(壁柱:垂直材)を説明する図である。
図2】本実施の形態に係る第1の剛性マトリクスを説明する図である。
図3】本実施の形態に係る壁エレメント置換(壁柱:水平材)を説明する図である。
図4】本実施の形態に係る第2の剛性マトリクスを説明する図である。
図5】本実施の形態に係る壁エレメント置換(壁柱:垂直材+水平材)を説明する図である。
図6】本実施の形態に係る壁エレメント置換(壁柱:垂直材+水平材)を説明する図である。
図7】本実施の形態に係る第3の剛性マトリクスを説明する図である。
図8】本実施の形態に係る構造計算支援装置のハードウエア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
(本実施の形態に係る構造計算支援装置の動作原理)
【0011】
図1乃至7を用いて、本実施の形態に係る構造計算支援装置(以下、単に「本装置」という。)1の動作原理について説明する。図1、3、5、6は、本装置1におけるモデル化の手法を説明する図であり、図2、4、7は、本装置1におけるモデル化で取り扱う剛性マトリクスを説明するための図である。
【0012】
本装置1は、CLT(Cross Laminated Timber)材2を使用する建築物4の構造分析を有限要素法によって行う。従って、本装置1は、構造分析の対象となる建築物4を要素6に分割し、要素6毎の応力や変形を求め、所定の箇所において要素6に関する分析を積み重ねることによって、建築物4における所定の箇所の構造分析を行う。
【0013】
図1、3、5、6で示すように、一の要素6は、左上側に位置する第1の節点10、右上側に位置する第2の節点12、左下側に位置する第3の節点14、右下側に位置する第4の節点16を備える。ここで、第1の節点10と第2の節点12とを結ぶ線を上側線18と呼び、第3の節点14と第4の節点16とを結ぶ線を下側線20と呼び、第1の節点10と第3の節点14とを結ぶ線を左側線22と呼び、第2の節点12と第4の節点16とを結ぶ線を右側線24と呼ぶ。
【0014】
図1で示すように、本装置1では、一の要素6において、建築物4の壁エレメント置換28を行う。壁エレメント置換28によるモデル化においては、上側線18と下側線20との中点どうしを結ぶ垂直材である壁柱26を備えるものと想定する。
【0015】
図2で示すように、壁エレメント置換28によるモデル化によって、一の要素6の節点10、12、14、16における応力の大きさを表すベクトルが、第1の剛性マトリクス34に、右側から各節点10、12、14、16における変位量の大きさを表すベクトルを乗じた剛性方程式が生成される。第1の剛性マトリクス34は、建築物4のモデル化される一の要素6において、垂直な壁柱26を備える壁エレメント置換28を施すことによって生成される剛性マトリクスである。
【0016】
図3で示すように、本装置1では、一の要素6において、建築物4の壁エレメント置換32を行う。壁エレメント置換32によるモデル化においては、左側線22と右側線24との中点どうしを結ぶ水平材である壁柱30を備えるものと想定する。なお、壁柱26と壁柱30とは直交する。
【0017】
図4で示すように、壁エレメント置換32によるモデル化によって、一の要素6の節点10、12、14、16における応力の大きさを表すベクトルが、第2の剛性マトリクス36に、右側から各節点10、12、14、16における変位量の大きさを表すベクトルを乗じた剛性方程式が生成される。第2の剛性マトリクス36は、建築物4のモデル化される一の要素6において、水平な壁柱30を備える壁エレメント置換32を施すことによって生成される剛性マトリクスである。
【0018】
図5及び6で示すように、壁エレメント置換28、32の節点10、12、14、16が同一であるため、本装置1は、壁エレメント置換28、32の合成を行うことによって、一の要素6におけるモデル化を行う。つまり、本装置1は、一の要素6において、第1の剛性マトリクス34及び第2の剛性マトリクス36それぞれの行列上同じ位置にある成分どうしを足した第3の剛性マトリクス38を生成する。
【0019】
図7で示すように、壁エレメント置換28、32を合成したモデル化によって、一の要素6の節点10、12、14、16における応力の大きさを表すベクトルが、第3の剛性マトリクス38に、右側から各節点10、12、14、16における変位量の大きさを表すベクトルを乗じた剛性方程式が生成される。
【0020】
本装置1による建築物4のモデル化において、壁柱26、30と線18、20、22、24との交点それぞれには、軸応力を測定する軸ばね40、せん断応力を測定するせん断ばね42及び曲げ応力を測定する回転ばね44が配置される。そして、本装置1は、軸ばね40、せん断ばね42及び回転ばね44の各測定値に基づいて、各節点10、12、14、16の変位量、応力等を算出する。
【0021】
図7で示すように、本装置1は、第3の剛性マトリクス38を備える剛性方程式によって建築物4をモデル化して、建築物4における所定の箇所の構造分析を行う。
【0022】
上記動作原理によって、本装置1は、CLT材2を使用する建築物4について、実用的、かつ、簡素化された前提を備える構造計算モデルによって構造分析を行う。
(本実施の形態に係る構造計算支援装置のハードウエア構成例)
【0023】
図8を用いて、本装置1のハードウエア構成例について説明する。図8は、本装置1のハードウエア構成の一例を示す図である。図8で示すように、本装置1は、CPU(Central Processing Unit)52、ROM(Read-Only Memory)54、RAM(Random Access Memory)56、補助記憶装置58、通信I/F60、入力装置62、出力装置(表示装置)64、記録媒体I/F66を有する。
【0024】
CPU52は、ROM54に記憶されたプログラムを実行する装置であり、RAM56に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、本装置1全体を制御する。ROM54は、CPU52が実行するプログラムやデータを記憶している。RAM56は、CPU52でROM54に記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時的に保持する。
【0025】
補助記憶装置58は、基本ソフトウエアであるOS(Operating System)や本実施の形態に係るアプリケーションプログラムなどを、関連するデータとともに記憶する装置であり、例えば、HDD(Hard Disc Drive)やフラッシュメモリなどである。
【0026】
通信I/F60は、有線・無線LAN(Local Area Network)、インターネットなどの通信ネットワークに接続し、通信機能を提供する他装置とデータの授受を行うためのインターフェースである。
【0027】
入力装置62は、キーボードやタッチパネルなど本装置1にデータ入力を行うための装置である。本装置1は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成される装置であり、本装置1が有する機能をユーザーが利用する際や各種設定を行う際のユーザーインターフェースとして機能する装置である。
記録媒体I/F66は、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリなどの記録媒体68とデータの送受信を行うためのインターフェースである。
【0028】
本装置1が有する各手段は、CPU52が、ROM54又は補助記憶装置58に記憶された各手段に対応するプログラムを実行することにより実現される形態としても良い。また、本装置1が有する各手段は、当該各手段に関する処理をハードウエアとして実現される形態としても良い。また、通信I/F60を介して外部サーバー装置から本発明に係るプログラムを読み込ませたり、記録媒体I/F66を介して記録媒体68から本発明に係るプログラムを読み込ませたりして、本装置1に当該プログラムを実行させる形態としても良い。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 構造計算支援装置
2 CLT(Cross Laminated Timber)材
4 CLT材を使用する建築物
6 有限要素法における要素
8 節点
10 第1の節点
12 第2の節点
14 第3の節点
16 第4の節点
18 上側線
20 下側線
22 左側線
24 右側線
26 垂直な壁柱
28 垂直な壁柱を備える壁エレメント置換
30 水平な壁柱
32 水平な壁柱を備える壁エレメント置換
34 第1の剛性マトリクス
36 第2の剛性マトリクス
38 第3の剛性マトリクス
40 軸ばね
42 せん断ばね
44 回転ばね
52 CPU
54 ROM
56 RAM
58 補助記憶装置
60 通信インターフェース
62 入力装置
64 出力装置
66 記憶媒体インターフェース
68 記憶媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8