(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169423
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】スロープ装置
(51)【国際特許分類】
E04G 27/00 20060101AFI20231121BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20231121BHJP
E04F 11/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
E04G27/00
E04F15/00 S
E04F11/00 100
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169652
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2019177604の分割
【原出願日】2019-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】393018130
【氏名又は名称】長谷川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】相田 憲秀
(57)【要約】
【課題】スロープ板の傾斜角度の調整作業を短時間で簡単に行うことができるスロープ装置を提供する。
【解決手段】スロープ装置1は、通路の下段面G2に配置されるベースフレーム2と、後端部がベースフレームに回動自在に連結された可変スロープ板3と、ベースフレームと可変スロープ板との間に設けられて可変スロープ板を傾斜角度調整自在に支持する支持ユニット4とを備えている。支持ユニットは、前後方向にのびかつベースフレームに軸線を中心として回転自在に取り付けられた1本のねじ軸41と、ねじ軸にねじ嵌められかつねじ軸の回転に伴って前後方向に移動させられる送りナット42と、一端部が送りナットに回動自在に連結されかつ他端部が可変スロープ板に回動自在に連結された支持アーム43A,43Bと、ねじ軸を回転させるための回転操作部44とを有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路の上段面とその後方に位置する下段面との間に生じる段差を解消するためのスロープ装置であって、
下段面に配置されるベースフレームと、
後端部がベースフレームに回動自在に連結されかつ上面がスロープ面を構成する可変スロープ板と、
ベースフレームと可変スロープ板との間に設けられかつ可変スロープ板を傾斜角度調整自在に支持している支持ユニットとを備えており、
支持ユニットは、前後方向にのびかつベースフレームに軸線を中心として回転自在に取り付けられている1本のねじ軸と、ねじ軸にねじ嵌められかつねじ軸の回転に伴って前後方向に移動させられる送りナットと、一端部が送りナットに回動自在に連結されかつ他端部が可変スロープ板に回動自在に連結されている支持アームと、ねじ軸を回転させるための回転操作部とを有している、スロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば各種の作業現場や工場施設・物流施設等において、手押し車等の運搬台車やフォークリフト等の荷役車両が移動する通路面の段差箇所に設置して、当該段差を解消するために用いられるスロープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
段差を有する通路面においては、例えば手押し車やフォークリフト等が段差を乗り越えて移動するのが困難な場合があることから、この段差を解消して手押し車等の移動を支障なく行えるようにするために、スロープ装置が従来使用されている。
【0003】
スロープ装置として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このスロープ装置は、下段面に配置される枠状の本体部と、本体部に対して傾斜角度調整自在に設けられるスロープ板部と、スロープ板部の左右両側部をそれぞれ支持する左右2つのスロープ板支持機構と、各スロープ板支持機構の移動を抑制してスロープ板部を所要の傾斜角度に保持する左右2つのスロープ板傾斜保持機構とを備えている。
各スロープ板支持機構は、スコットラッセルリンク機構、すなわち一端部がスロープ板部に回動自在に連結され他端部が本体部に沿って前後方向に水平移動する第1リンク部材と、一端部が本体部に回動自在に連結され他端部が第1リンク部材の長手方向途中に回動自在に連結される第2リンク部材とからなる。
また、各スロープ板傾斜保持機構は、前後方向にのびる貫通孔を有する箱状をなし本体部に設けられるストッパー部と、頭部側が第1リンク部材の移動端部に回動自在に連結され先端部側がストッパー部の貫通孔に挿通されるボルトよりなる位置調整ガイド部と、ボルトに螺着されたナットよりなりストッパー部に係り止められるストッパー係止部とで構成されている。
上記スロープ装置にあっては、左右のスロープ板傾斜保持機構のナット(ストッパー係止部)を所要の回転方向に所要量だけ回転させることにより、各スロープ板支持機構の第1リンク部材の移動端部の移動可能範囲を変更し、それによって、設置個所の段差の高さに合うようにスロープ板部の傾斜角度を変更調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記スロープ装置の場合、スロープ板部の傾斜角度の調整を、左右2つのスロープ板傾斜保持機構のナット(ストッパー係止部)をそれぞれ回転させることにより行うため、これらの回転操作や左右のナットの位置調整に手間を要し、操作性に問題があった。
【0006】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、スロープ板の傾斜角度の調整を短時間で簡単に行うことができるスロープ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0008】
1)通路の上段面とその後方に位置する下段面との間に生じる段差を解消するためのスロープ装置であって、
下段面に配置されるベースフレームと、
後端部がベースフレームに回動自在に連結されかつ上面がスロープ面を構成する可変スロープ板と、
ベースフレームと可変スロープ板との間に設けられかつ可変スロープ板を傾斜角度調整自在に支持している支持ユニットとを備えており、
支持ユニットは、前後方向にのびかつベースフレームに軸線を中心として回転自在に取り付けられている1本のねじ軸と、ねじ軸にねじ嵌められかつねじ軸の回転に伴って前後方向に移動させられる送りナットと、一端部が送りナットに回動自在に連結されかつ他端部が可変スロープ板に回動自在に連結されている支持アームと、ねじ軸を回転させるための回転操作部とを有している、スロープ装置。
【0009】
2)ねじ軸は、可変スロープ板の左右幅中心部の下方に位置するようにベースフレームに取り付けられており、
支持アームは、一端部が送りナットの左半部に回動自在に連結されかつ他端部が可変スロープ板の左半部に回動自在に連結されている左支持アームと、一端部が送りナットの右半部に回動自在に連結されかつ他端部が可変スロープ板の右半部に回動自在に連結されている右支持アームとを有している、上記1)のスロープ装置。
【0010】
3)ねじ軸は、その前端部が可変スロープ板の前端部の下方付近に突出するようにベースフレームに取り付けられており、
回転操作部が、ねじ軸の前端部に設けられている、上記1)または2)のスロープ装置。
【0011】
4)支持ユニットは、左右方向にのび、右端部がねじ軸の前後いずれか一方の端部に歯車機構を介して連動可能に接続されるとともに、左端部が可変スロープ板の左側縁部の下方付近に突出するように、ベースフレームに軸線を中心として回転自在に取り付けられている伝動用左回転軸、および/または、左右方向にのび、左端部がねじ軸の前後いずれか一方の端部に歯車機構を介して連動可能に接続されるとともに、右端部が可変スロープ板の右側縁部の下方付近に突出するように、ベースフレームに軸線を中心として回転自在に取り付けられている伝動用右回転軸をさらに有しており、
回転操作部が、伝動用左回転軸の左端部および/または伝動用右回転軸の右端部に設けられている、上記1)または2)のスロープ装置。
【0012】
5)回転操作部が、電動回転工具に接続可能な回転操作ヘッドよりなる、上記1)~4)のいずれか1つのスロープ装置。
【0013】
6)可変スロープ板が、左右1対の縦フレーム材と、左右の縦フレーム材に前後方向に並ぶように架け渡されてボルトで締結されている複数の上面板材とを有している、上記1)~5)のいずれか1つのスロープ装置。
【発明の効果】
【0014】
上記1)のスロープ装置によれば、支持ユニットの1本のねじ軸を、回転操作部を介して所要方向に所要角度だけ回転させることにより、可変スロープ板の傾斜角度を段差の高さに合わせて任意に変更調整することができるので、同調整作業を短時間で簡単に行うことができ、操作性に優れている。
【0015】
上記2)のスロープ装置によれば、支持ユニットの左右2つの支持アームによって、可変スロープ板を安定的に支持することができるので、使用時に可変スロープ板にガタつきや揺れ等が生じるおそれがない。
また、同スロープ装置によれば、上述した可変スロープ板の傾斜角度調整時の操作性を維持しながら、スロープ装置の耐久性も高められる。
さらに、同スロープ装置によれば、各支持アームの構造を単純化できるので、製造が容易となってコストも抑えられる上、必要な耐荷重強度が得られやすい。
【0016】
上記3)のスロープ装置によれば、支持ユニットの回転操作部が、可変スロープ板の前端部の下方付近に突出したねじ軸の前端部に設けられているので、ねじ軸を回転させるための操作を、可変スロープ板の下方に手を深く差し込んだりすることなく、スロープ装置の前方から容易に行うことができ、操作性に優れている。
【0017】
上記4)のスロープ装置によれば、支持ユニットの回転操作部が、可変スロープ板の左右いずれか一方の側縁部の下方付近に突出した伝動用回転軸の端部に設けられているので、ねじ軸を回転させるための操作を、可変スロープ板の下方に手を深く差し込んだりすることなく、スロープ装置の側方から容易に行うことができ、操作性に優れている。
特に、同操作は、スロープ装置を可変スロープ板の前端部が段差に近接するように配置した状態で行うことができるので、可変スロープ板の傾斜角度の調整がより一層容易となる。
【0018】
上記5)のスロープ装置によれば、回転操作ヘッドよりなる回転操作部に例えばインパクトドライバ等の電動回転工具を接続して、当該電動回転工具によりねじ軸を回転させて可変スロープ板の傾斜角度の調整を行うことができるので、同調整作業をきわめて短時間で楽に行うことができる。
【0019】
上記6)のスロープ装置によれば、可変スロープ板が、左右の縦フレーム材と複数の上面板材とをボルトで締結してなるので、例えば使用に伴って一部の上面板材が損傷した場合でも、当該上面板材のみを簡単に交換することができ、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係るスロープ装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図5】同スロープ装置のベースフレームおよび支持ユニット(左右支持アームを除く)を示す平面図である。
【
図6】同支持ユニットを分解して示す左側面図である。
【
図7】同スロープ装置の折り畳んだ状態を示す左側面図である。
【
図8】この発明の第2の実施形態に係るスロープ装置の左側面図である。
【
図10】同スロープ装置のベースフレームおよび支持ユニット(左右支持アームを除く)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、
図1~10を参照して、この発明の実施形態を説明する。
なお、以下の説明において、
図2,8の各右を「前」、同左を「後」といい、「左右」は前から見た場合の左右(
図4,9の各左右)をいうものとする。
【0022】
[第1の実施形態]
図1~7は、この発明の第1の実施形態に係るスロープ装置を示したものである。
図1~4に全体構成を示したように、この実施形態に係るスロープ装置(1)は、通路の上段面(G1)とその後方に位置する下段面(G2)との間に生じる段差(G3)を解消するためのものであって、下段面(G2)に配置されるベースフレーム(2)と、後端部がベースフレーム(2)に回動自在に連結されかつ上面がスロープ面(30)を構成する可変スロープ板(3)と、ベースフレーム(2)と可変スロープ板(3)との間に設けられかつ可変スロープ板(3)を傾斜角度調整自在に支持している支持ユニット(4)とを備えている。
また、スロープ装置(1)は、前端部がベースフレーム(2)に回動自在に連結されかつ下段面(G2)に配置される固定スロープ板(5)を備えている。固定スロープ板(5)の上面は、可変スロープ板(3)のスロープ面(30)の後端に連なるスロープ面(50)を構成している。
【0023】
図5に示すように、ベースフレーム(2)は、平面より見て略長方形枠状のものである。より詳細には、ベースフレーム(2)は、左右2本の縦フレーム材(21)と、両縦フレーム材(21)の前端部どうし、後端部どうしおよび長さ中間部どうしの間にそれぞれ渡し止められた前後および中間の3本の横フレーム材(22A)(22B)(22C)とを有している。
左右各縦フレーム材(21)は、水平壁部(211)および水平壁部(211)の左右方向外側縁から上方にのびる垂直壁部(212)を有する横断面L形のものである。水平壁部(211)には、必要に応じて水抜き孔(211a)が形成される。後横フレーム材(22C)も、水平壁部(221)および水平壁部(221)の後側縁から上方にのびる垂直壁部(222)を有する横断面L形のものである。前横フレーム材(22A)および中間横フレーム材(22B)は、後述する支持ユニット(4)のねじ軸(41)を取り付けるための取付部として機能するものであって、それぞれ横断面略方形の中空状となされている(
図2,6等も参照)。
図5,6に示すように、中間横フレーム材(22B)の内部には、横断面略方形の補強芯材(23)が嵌め入れられていてもよい。
前横フレーム材(22A)および中間横フレーム材(22B)の下面どうしの間には、平面より見て略方形をした底板材(25)が渡し止められている。底板材(25)の左右側縁部には、前横フレーム材(22A)および中間横フレーム材(22B)の下面に接合されている前後両端部分を除いて、上方に短くのびた立上がり縁部(251)が形成されている。また、底板材(25)上面の左右幅中間部には、前後両端部分を除いて、前後方向にのびる1本または並列状の複数本の凸条部(252)が形成されている。この底板材(25)は、後述する支持ユニット(4)の送りナット(42)をスライドさせるためのスライドベース部として機能するものである。底板材(25)には、必要に応じて水抜き孔(253)が形成される。
また、
図5に示すように、ベースフレーム(2)は、さらに、中間横フレーム材(22B)と左右縦フレーム材(21)との間に渡し止められた複数本(ここでは前後各2本の計4本)の斜めフレーム材(24)を備えていてもよく、これらの斜めフレーム材(24)によって、ベースフレーム(2)の強度がより一層高められる。
ベースフレーム(2)を構成する上記縦フレーム材(21)、横フレーム材(22A)(22B)(22C)、補強芯材(23)、斜めフレーム材(24)は、それぞれ軽金属材によって形成されているのが好ましく、より好ましくは、軽量で強度があって加工性、耐食性にも優れているアルミニウム合金材(特にアルミニウム合金押出形材)により形成される。
2本の縦フレーム材(21)と3本の横フレーム材(22A)(22B)(22C)との接合、および中間横フレーム材(22B)と複数本の斜めフレーム材(24)との接合は、通常、溶接によって行われるが、その他の接合手段(例えばボルト締結、リベット接合など)を用いてもよい。
【0024】
可変スロープ板(3)は、
図3に示すように平面より見て略長方形となされている。より詳細には、可変スロープ板(3)は、左右1対の縦フレーム材(31)と、左右の縦フレーム材(31)に前後方向に並ぶように掛け渡されて接合された複数(ここでは5つ)の上面板材(32A)(32B)(32C)とを有している。
可変スロープ板(3)を構成する上記縦フレーム材(31)および上面板材(32A)(32B)(32C)は、それぞれ軽金属材によって形成されているのが好ましく、より好ましくは、軽量で強度があって加工性、耐食性にも優れているアルミニウム合金材(特にアルミニウム合金押出形材)により形成される。
各上面板材(32A)(32B)(32C)は、ボルト(33)によって左右の縦フレーム材(31)に締結固定されているのが好ましい。上面板材(32A)(32B)(32C)は、その上面が運搬台車等を走行させるためのスロープ面(30)を構成するものであり、スロープ装置(1)の使用に伴って、一部の上面板材(32A)(32B)(32C)が衝撃を受けて破損することも考えられる。そこで、上記のように、上面板材(32A)(32B)(32C)をボルト(33)締結によって左右の縦フレーム材(31)に接合するように構成すれば、破損した一部の上面板材(32A)(32B)(32C)を交換するだけでスロープ装置(1)を継続的に使用することができ、経済的である。
但し、可変スロープ板の構成は、上記態様には限定されない。具体的には、例えば、可変スロープ板は、左右1対の縦フレーム材と、左右側縁部が左右縦フレーム材に溶接された1枚の上面板材とを備えたものであってもよく、同構成によれば生産性の面で有利である。
【0025】
各縦フレーム材(31)は、例えば、
図4等に示すように、外側垂直壁部(311)と、内側垂直壁部(312)と、外側垂直壁部(311)および内側垂直壁部(312)の上側縁どうしを連結している上壁部(313)とを有している横断面略逆U形のものとなされる。また、縦フレーム材(31)は、外側垂直壁部(311)の下側縁から左右方向外方に張り出した外側張出壁部(314)と、内側垂直壁部(312)の下側縁から左右方向内方に張り出した内側張出壁部(315)と、縦フレーム材(31)の内部を上下に区画するように上壁部(313)と平行にのびる中間仕切り壁部(316)とをさらに有するものであってもよい。外側垂直壁部(311)の上下幅は、内側垂直壁部(312)の上下幅よりも大きくなされている。外側垂直壁部(311)および内側垂直壁部(312)の前端縁は、下方に向かって斜め後方にのびるように傾斜させられている。外側垂直壁部(311)の下側縁の後部は、外側垂直壁部(311)の上下幅が後方に向かって次第に狭くなるように斜め上向きに傾斜させられている。外側垂直壁部(311)および内側垂直壁部(312)には、前後方向に間隔をおいた所要の複数箇所にボルト挿通孔(図示略)があけられている。
【0026】
また、可変スロープ板(3)は、その耐荷重強度を高めるために、
図2に示すように、左右の縦フレーム材(31)どうしの間に前後方向に間隔をおいて複数本(ここでは計4本)の横フレーム材(34A)(34B)を渡し止めたものとしてもよい。横フレーム材の横断面形状は、配置箇所の構成等に応じて適宜設定すればよい。この実施形態では、前端に位置する横フレーム材(34A)が、横断面略U形となされており、同横フレーム材(34A)下面の左右両端部に、後述する支持ユニット(4)の左右支持アーム(43A)(43B)の上端部を回動自在に取り付けるための逆U形のアーム連結用ブラケット(341)が接合固定されるようになっている(
図2,4参照)。残りの横フレーム材(34B)は、例えば横断面略方形の中空状となされる。
【0027】
この実施形態の場合、上面板材は、3種類の上面板材(32A)(32B)(32C)、すなわち、可変スロープ板(3)の前端に配置される第1上面板材(32A)、可変スロープ板(3)の長さ中間に配置される3つの第2上面板材(32B)、および可変スロープ板(3)の後端に配置される第3上面板材(32C)によって構成されている。但し、上面板材の構成は、これに限定されるものではない。
第1上面板材(32A)は、横断面略四角形の中空状のものであって、3種類のうち最も幅狭となされている。第1上面板材(32A)の前端縁には、通路の上段面(G1)の後端縁に掛けられる鍔部(321)が形成されている。鍔部(321)は、可変スロープ板(3)の傾斜角度が最大(例えば約15°)となされた状態において、ほぼ水平となるように、第1上面板材(32A)の上面に対して所定角度(例えば約15°)をなすように斜め下向きに折れ曲がっている(
図2参照)。
第2上面板材(32B)は、上壁部と、上壁部の前後端縁および前後幅中央からそれぞれ下方にのびた3つの垂下壁部とを有する横断面略横E形のものとなされている。各垂下壁部の下端縁には、前後方向に短く張り出した脚部が形成されている。
第3上面板材(32C)は、横断面略四角形の偏平中空状のものであって、その後側部は、下壁部が後方に向かって斜め上向きに傾斜させられることにより、先細状となされている。
図2に示すように、各上面板材(32A)(32B)(32C)の左右両端部内には、ボルト(33)がねじ込まれる雌ねじ部材(35)が配置されてリベット(図示略)等により接合固定されている。
各上面板材(32A)(32B)(32C)の上面には、左右方向にのびる複数の滑り止め用凸条および/または凹溝が前後方向に並んで形成されている。
【0028】
可変スロープ板(3)は、その後端部が、ベースフレーム(2)の後端部に、左右方向にのびる回動軸を中心として回動自在に連結されている。より詳細には、可変スロープ板(3)の左右各縦フレーム(31)における外側垂直壁部(311)および内側垂直壁部(312)の後端部分が、ベースフレーム(2)の左右各縦フレーム(21)における垂直壁部(212)の後端上部に、ボルト(36)およびナット(37)により回動自在に連結されている。
【0029】
可変スロープ板(3)の左右いずれか一方の縦フレーム(21)(ここでは左縦フレーム(21))における垂直壁部(212)の長さ中央部外面に、平面より見て略U形をしたハンドル(6)がビス等によって取り付けられている。
なお、ハンドル(6)は、左右両方の縦フレーム(21)に取り付けられていてもよく、また、ベースフレーム(2)の左右いずれか一方または両方の縦フレーム(21)の垂直壁部(212)外面に取り付けられていてもよい。
【0030】
固定スロープ板(5)は、
図3に示すように平面より見て略長方形状となされている。固定スロープ板(5)の上面は、下段面(G2)と可変スロープ板(3)のスロープ面(30)とを繋ぐように所定角度(図では約15°)に傾斜させられたスロープ面(50)を構成している。なお、固定スロープ板(5)は、例えばスロープ装置のサイズが小さい場合等には、省略することも可能である。
より詳細には、固定スロープ板(5)は、左右1対の縦フレーム材(51)と、左右の縦フレーム材(51)に前後方向に並ぶように掛け渡されて接合された複数(ここでは3つ)の上面板材(52A)(52B)(52C)とを有している。
固定スロープ板(5)を構成する上記縦フレーム材(51)および上面板材(52A)(52B)(52C)は、それぞれ軽金属材によって形成されているのが好ましく、より好ましくは、軽量で強度があって加工性、耐食性にも優れているアルミニウム合金材(特にアルミニウム合金押出形材)により形成される。
各上面板材(52A)(52B)(52C)は、可変スロープ板(3)と同様に、ボルト(53)によって左右の縦フレーム材(51)に締結固定されているのが好ましい。但し、可変スロープ板の場合と同様に、固定スロープ板を、例えば、左右1対の縦フレーム材と、左右側縁部が左右縦フレーム材に溶接された1枚の上面板材とを備えたものとすることもできる。
各縦フレーム(51)は、
図2に示すように、側面より見て前後に長い略三角形をした垂直板状のものとなされている。各縦フレーム(51)の前端下部には、前方に向かって突出した連結用凸部(511)が形成されている。各縦フレーム(51)の長さ中間部には、各縦フレーム(51)の上側縁と平行にのびるように左右方向内方に張り出した内側張出壁部(512)が形成されている。各縦フレーム(51)には、前後方向に間隔をおいた所要の複数箇所にボルト挿通孔(図示略)があけられている。
左右の縦フレーム材(51)どうしの間には、前後方向に間隔をおいて複数本(ここでは計2本)の横フレーム材(54)が渡し止められているのが好ましい。横フレーム材(54)は、例えば横断面略方形の中空状となされる。
前側の横フレーム材(54)の前側面には、その左右両端部にマグネット(56)が取り付けられている。
上面板材は、固定スロープ板(5)の前端に配置されかつ前端縁に鍔部(521)を有する第1上面板材(52A)、固定スロープ板(5)の長さ中間に配置される第2上面板材(52B)、および固定スロープ板(5)の後端に配置される第3上面板材(52C)によって構成されている。これら固定スロープ板(5)の第1ないし第3上面板材(52A)(52B)(52C)は、この実施形態では、可変スロープ板(3)の第1ないし第3上面板材(32A)(32B)(32C)とそれぞれ同一の形状、構造を有しており、それによって構成部品の種類が低減され、コストが抑えられるようになっている。但し、固定スロープ板(5)の上面板材を、可変スロープ板(3)の上面板材とは異なる形状、構造を有するものとすることも勿論可能である。なお、第3上面板材(52C)には、必要に応じて、水抜き孔(522)があけられていてもよい。また、可変スロープ板(3)と同様に、各上面板材(52A)(52B)(52C)の左右両端部内には、ボルト(53)がねじ込まれる雌ねじ部材(55)が配置されてリベット(図示略)等により接合固定されている。
【0031】
固定スロープ板(5)は、その前端部が、ベースフレーム(2)の後端部に、左右方向にのびる回動軸を中心として回動自在に連結されている。より詳細には、固定スロープ板(5)における左右各縦フレーム(51)の連結用凸部(511)が、ベースフレーム(2)の左右各縦フレーム(21)における垂直壁部(212)の後端下部に、ボルト(57)およびナット(58)により回動自在に連結されている。
【0032】
支持ユニット(4)は、前後方向にのびかつベースフレーム(2)に軸線を中心として回転自在に取り付けられている1本のねじ軸(41)と、ねじ軸(41)にねじ嵌められかつねじ軸(41)の回転に伴って前後方向に移動させられる送りナット(42)と、一端部が送りナット(42)に回動自在に連結されかつ他端部が可変スロープ板(3)に回動自在に連結されている支持アーム(43A)(43B)と、ねじ軸(41)を回転させるための回転操作部(44)とを有している。
【0033】
ねじ軸(41)は、表面に所要形状の雄ねじ(例えば台形ねじ等)が形成された金属製棒状体よりなる。
このねじ軸(41)は、可変スロープ板(3)の左右幅中心部の下方に位置するようにベースフレーム(2)に取り付けられている。より詳細には、ねじ軸(41)は、ベースフレーム(2)の前横フレーム(22A)および中間横フレーム材(22B)の長さ中央部にまたがって回転自在に取り付けられている。
ねじ軸(41)の後端部は、雄ねじが形成されていない小径軸部(411)よりなる。中間横フレーム材(22B)およびこれに嵌入された補強芯材(23)には、これらの前壁部の左右長さ中央部に、挿入孔(223)(231)があけられている。また、中間横フレーム材(22B)の前壁部表面の長さ中央部には、上記挿入孔(223)(231)に合致する挿入孔(261)を有する補強プレート(26)がビス等によって接合固定されている。そして、ねじ軸(41)の小径軸部(411)が、ワッシャ(412)を介して、これらの挿入孔(223)(231)(261)に回転自在に挿入されている。
前横フレーム(22A)の前後壁部の長さ中央部に貫通孔があけられているとともに、これらの貫通孔にまたがるように前後方向にのびるねじ軸挿通用カラー(27)が嵌め入れられている。また、前横フレーム(22A)における後壁部の後面の長さ中央部には、カラー(27)の後端開口に合致する貫通孔(281)を有する補強プレート(28)がビス等によって接合固定されている。
ねじ軸(41)は、上記カラー(27)および補強プレート(28)の貫通孔(281)に前方から挿通されると共に、前述の通り、その後端の小径軸部(411)が中間横フレーム材(22B)、補強芯材(23)および補強プレート(26)の挿入孔(223)(231)(261)に挿入される。この状態で、ねじ軸(41)の前端部は、前横フレーム(22A)から前方に突出して、可変スロープ板(3)の前端部の下方付近に位置させられている(
図2参照)。
また、ねじ軸(41)には、その前端寄り部分に水平円筒状のストッパ(413)が嵌め被せられているとともに、両者(41)(413)がこれらをラジアル方向に貫通するスプリングピン等の連結ピン(414)によって接合一体化されている。このストッパ(413)は、ねじ軸(41)が前方に移動してベースフレーム(2)から脱落するのを防止する機能を有するとともに、送りナット(42)の前方への移動範囲を規制する機能を有している。
ねじ軸(41)の前端部には、ラジアル方向にボルト(415)が貫通させられているとともに、同ボルト(415)の先端部にナット(416)がねじ嵌められている。これらのボルト(415)およびナット(416)は、例えば、後述する回転操作ヘッドよりなる回転操作部(44)に接続して使用可能な電動回転工具が手元にない場合に、ねじ軸(41)を手動で回転させるための指掛け部(補助回転操作部)として機能するものである。
【0034】
送りナット(42)は、例えば図示のように、左右方向に長い横断面略方形の金属製ブロック体よりなるものであって、その長さ中央部には、ねじ軸(41)の雄ねじとねじ合わせられる雌ねじ(例えば台形ねじ)を有するねじ孔(421)があけられている。
この送りナット(42)は、ねじ軸(41)と共に送りねじを構成するものであって、ねじ軸(41)の回転に伴って前後方向に移動させられるようになっている。送りナット(42)は、前後方向移動時に、底板材(25)の上面、より詳細には、同上面に形成された複数の凸条部(252)の上をスライドさせられるようになっている。
送りナット(42)の左右両端部には、平面より見て前方に開口した略U字形のアーム連結用ブラケット(422)が接合固定されている。
【0035】
なお、ねじ軸および送りナットよりなる送りねじ機構は、上記態様に限定されるものではなく、その他、例えばボールねじ機構を適用することも可能である。
【0036】
この実施形態の支持アームは、一端部が送りナット(42)の左半部に回動自在に連結されかつ他端部が可変スロープ板(3)の左半部に回動自在に連結されている左支持アーム(43A)と、一端部が送りナット(42)の右半部に回動自在に連結されかつ他端部が可変スロープ板(3)の右半部に回動自在に連結されている右支持アーム(43B)とよりなる。
図4に示すように、左右各支持アーム(43A)(43B)は、それぞれ垂直状の下端アーム部(431)および上端アーム部(432)と、これら(431)(432)を連結するように左右方向外方に向かって斜め上向きにのびる中間アーム部(433)とを有している略クランク状の金属製筒状体よりなる。
下端アーム部(431)は、連結用ボルト(434)により、送りナット(42)の左右各側に設けられたアーム連結用ブラケット(422)に回動自在に取り付けられている。上端アーム部(432)は、連結用ボルト(435)およびナット(436)により、可変スロープ板(3)における前端の横フレーム材(34A)の左右各端部に設けられたアーム連結用ブラケット(341)に回動自在に取り付けられている。なお、左右各支持アーム(43A)(43B)の下端部は、図示のように送りナット(42)の左右各半部の端面に取り付けられる他、送りナット(42)の左右各半部の上面や前面等に取り付けられていてもよい。また、可変スロープ板(3)の左右各半部への左右各支持アーム(43A)(43B)の上端部の取付位置も、図示のものには限定されず、同位置より内側または外側の位置とすることもできる。
ねじ軸(41)の回転に伴い送りナット(42)が前後方向に移動することによって、左右の支持アーム(43A)(43B)の傾斜角度が変更され、それによって可変スロープ板(3)の傾斜角度が変更されるようになっている。
なお、支持アームは、上記実施形態のように左右2つの支持アーム(43A)(43B)によって構成する他、可変スロープ板(3)に連結される上端部側が2つまたは3つ以上に分岐した単一の支持アームによって構成してもよく、あるいは3つ以上の支持アームによって構成してもよい。
また、その他の実施態様として、ねじ軸に複数の送りナットをねじ嵌めると共に、各送りナットに1つまたは複数の支持アームの下端部を回動自在に連結し、各支持アームの上端部を可変スロープ板の所要箇所に回動自在に連結する構成としてもよい。
【0037】
回転操作部(44)は、可変スロープ板(3)の前端部の下方付近に突出したねじ軸(41)の前端部に設けられている。
回転操作部は、好ましくは、インパクトドライバ等の電動回転工具(D)に接続可能な回転操作ヘッド(44)よりなる。より詳細には、回転操作ヘッド(44)は、例えば、ねじ軸(41)の前端部に取り付けられた六角ナット(呼び径M10)によって構成されている。以上の構成によれば、可変スロープ板(3)の傾斜角度を調整するためのねじ軸(41)の回転操作を、電動回転工具(D)を用いて極めて簡単にかつ短時間で行うことができる。
【0038】
次に、上記スロープ装置(1)の設置手順の一例を説明する。
まず、スロープ装置(1)のベースフレーム(2)および固定スロープ板(5)を、通路の下段面(G2)に載置する。
次に、可変スロープ板(3)の前端部、すなわち第1上面板材(32A)の鍔部(321)と下段面(G2)との間の鉛直方向の距離が段差(G3)の高さとほぼ等しくなるように、可変スロープ板(3)の傾斜角度を調整する。具体的には、支持ユニット(4)の回転操作ヘッド(44)に電動回転工具(D)の先端部を接続して、ねじ軸(41)が所要の回転方向に所要量だけ回転するように、電動回転工具(D)を駆動させる。すると、ねじ軸(41)の回転に伴って、送りナット(42)が前後いずれかの所要方向に所要距離だけ移動し、それによって左右の支持アーム(43A)(43B)の傾斜角度が変更調整され、ひいては可変スロープ板(3)が所要の傾斜角度となされる。
最後に、スロープ装置(1)の位置を調整して、可変スロープ板(3)の上記鍔部(321)が上段面(G1)の後端縁に掛けられるようにすることにより、スロープ装置(1)の設置が完了する。こうして、可変スロープ板(3)および固定スロープ板(5)の上面により、上段面(G1)と下段面(G2)との段差(G3)を解消させ得るスロープ面(30)(50)が形成される。
【0039】
以上の通り、この実施形態のスロープ装置(1)によれば、1つのねじ軸(41)を回転操作するだけで、可変スロープ板(3)の傾斜角度を設置箇所の段差(G3)の高さに合うように調整することができる上、その回転操作も、可変スロープ板(3)の下方に手を深く差し込んだりすることなく、スロープ装置(1)の前方から、ねじ軸(41)の前端部の回転操作ヘッド(44)に接続した電動回転工具(D)を用いて、極めて簡単にかつ短時間で行うことができるので、操作に要する手間および時間が大幅に軽減される。
【0040】
図7は、上記スロープ装置(1)を折り畳んだ状態を示したものである。
図示のスロープ装置(1)は、
図1~4に示した設置状態から、固定スロープ板(5)をベースフレーム(2)の下面に重なるように反転させるとともに、支持ユニット(4)のねじ軸(41)を回転操作して可変スロープ板(3)の傾斜角度が最小(図では水平面に対して約0°)となるように変更調整したものである。
このように折り畳んだ状態のスロープ装置(1)は、設置状態と比べて全長および高さが大幅に小さく、コンパクトな形態となるので、運搬が容易となり、保管スペースも小さくて済む。
特に、ベースフレーム(2)、可変スロープ板(3)および固定スロープ板(5)の各構成部品をアルミニウム合金材製とした場合には、必要な耐荷重強度が損なわれることなく、スロープ装置(1)の全体重量が大幅に低減されるため、例えば作業員がハンドル(6)を持った状態でスロープ装置(1)を運搬することも可能となり、取扱性が著しく向上する。
また、この実施形態のスロープ装置(1)の場合、折り畳み状態において、固定スロープ板(5)の裏面側に備えられた左右のマグネット(56)に、ベースフレーム(2)下面の後端部に設けられた鋼等の磁性材料よりなる磁着部(29)、より詳細には、例えば左右各縦フレーム(21)の水平壁部(211)後端にねじ止められた鋼製ビス(29)(
図5等参照)が磁着されるようになっている。従って、例えばスロープ装置(1)を運搬等する場合に、固定スロープ板(5)が不用意に揺動するのが抑制され、運搬作業等を支障なく行うことが可能である。
【0041】
[第2の実施形態]
図8~10は、この発明の第2の実施形態に係るスロープ装置を示したものである。
この実施形態のスロープ装置(1X)は、以下の点を除いて、
図1~7に示す第1の実施形態のスロープ装置(1)と実質的に同一の構成を有しており、同スロープ装置(1)と実質的に同一の効果を奏するものである。
すなわち、第2の実施形態のスロープ装置(1X)では、支持ユニット(4X)が伝動用左回転軸(45)をさらに有している。伝動用左回転軸(45)は、左右方向にのびる金属製棒状体よりなり、その右端部がねじ軸(41)の前後いずれか一方の端部(図では前端部)に歯車機構(417)(451)を介して連動可能に接続されるとともに、その左端部が可変スロープ板(3)の左側縁部の下方付近に突出するように、ベースフレーム(2)に軸線を中心として回転自在に取り付けられている。そして、伝動用左回転軸(45)の左端部に回転操作部(44)が設けられている。
なお、図示は省略したが、伝動用左回転軸(45)に代えて、または伝動用左回転軸(45)に加えて、左右方向にのび、左端部がねじ軸(41)の前後いずれか一方の端部に歯車機構を介して連動可能に接続されるとともに、右端部が可変スロープ板(3)の右側縁部の下方付近に突出するように、ベースフレーム(2)に軸線を中心として回転自在に取り付けられている伝動用右回転軸を設け、伝動用右回転軸の左端部に回転操作部を設けてもよい。特に、伝動用左回転軸(45)と伝動用右回転軸の両方を設けた場合は、例えばスロープ装置(1)の設置環境等に応じて作業者が所望の方向からねじ軸(41)の回転操作を行うことができ、利便性がさらに向上する。
【0042】
ベースフレーム(2)の前横フレーム材(22X)は、水平壁部(224)および水平壁部(224)の後側縁部から上方にのびる垂直壁部(225)を有する横断面L形のものである。
水平壁部(224)上面の長さ方向所要位置(図では長さ中央からやや左にずれた位置)には、伝動用左回転軸(45)が挿通される挿通孔(図示略)を有する垂直な保持壁部(226)が形成されている。
垂直壁部(225)の長さ中央部に、ねじ軸(41)が挿通される挿通孔(図示略)が形成されている。
【0043】
ねじ軸(41)の前端部は、垂直壁部(225)から前方に向かって突出させられている。ねじ軸(41)の前端部には、歯車機構の構成要素として第1傘歯車(417)が設けられている。
【0044】
保持壁部(226)から左右方向内方に向かって突出させられた伝動用左回転軸(45)の一端部(右端部)には、第1傘歯車(417)と噛み合う第2傘歯車(451)が設けられている。
伝動用左回転軸(45)の左側部分は、ベースフレーム(2)における左縦フレーム材(21)の垂直壁部(212)の前端部に形成された挿通孔(図示略)に挿通されている。以上の構成により、伝動用左回転軸(45)の左端部は、可変スロープ板(3)の左側縁部の下方付近に突出させられるようになっている。
また、伝動用左回転軸(45)には、保持壁部(226)の左側面に隣接する所定箇所に、Eリング等よりなるスプリング保持用鍔部(452)が設けられているとともに、該鍔部(452)と左縦フレーム材(21)の垂直壁部(212)との間の部分に、スプリング(46)が外挿されている。伝動用左回転軸(45)は、スプリング(46)のばね弾性力(付勢力)により右方に向かって付勢されるので、それによって第2傘歯車(451)と第1傘歯車(417)との噛合状態が保持される。また、スプリング保持用鍔部(452)が保持壁部(226)の左側面に当接させられることにより、スプリング(46)による付勢力が第2傘歯車(451)および第1傘歯車(417)に対して必要以上に加わらないように規制される。従って、以上の構成によれば、伝動用左回転軸(45)の回転力が第2傘歯車(451)および第1傘歯車(417)を介してねじ軸(41)に確実に伝達されるので、伝動用左回転軸(45)との連動により、ねじ軸(41)を確実にかつスムーズに回転させることができる。
【0045】
伝動用左回転軸(45)の左端部に設けられる回転操作部は、第1の実施形態と同様に、インパクトドライバ等の電動回転工具(D)に接続可能な回転操作ヘッド(44)(例えば呼び径M10の六角ナット)によって構成されるのが好ましい。
また、伝動用左回転軸(45)の左端部には、ラジアル方向にボルト(415)が貫通させられているとともに、同ボルト(415)の先端部にナット(416)がねじ嵌められている。これらのボルト(415)およびナット(416)は、伝動用左回転軸(45)およびこれに連動するねじ軸(41)を手動で回転させるための指掛け部(補助回転操作部)として機能しうるものである。
【0046】
この実施形態のスロープ装置(1X)によれば、可変スロープ板(3)の傾斜角度を調整するためのねじ軸(41)の回転操作を、可変スロープ板(3)の下方に手を深く差し込んだりすることなく、スロープ装置(1X)の側方から電動回転工具(D)を用いてきわめて容易に行うことができ、操作性に優れている。特に、同操作は、スロープ装置(1X)を可変スロープ板(3)の前端部、すなわち第1上面板材(32A)の鍔部(321)が段差(G3)に近接するように配置した状態で行うことができるので、可変スロープ板(3)の傾斜角度の調整作業がより一層容易となる。
【0047】
なお、図示は省略したが、上記各実施形態のスロープ装置(1)(1X)を左右方向に並ぶように複数設置してもよく、それによって、例えばフォークリフト等の荷役車両が段差(G3)を乗り越えるための幅広のスロープ面を形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明は、例えば各種の作業現場や工場施設・物流施設等において、運搬台車や荷役車両等が移動する通路面の段差箇所に設置して、当該段差を解消するためのスロープ面を形成するスロープ装置として、好適に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
(1)(1X):スロープ装置
(2):ベースフレーム
(3):可変スロープ板
(30):スロープ面
(31):縦フレーム材
(32A)(32B)(32C):上面板材
(33):ボルト
(4)(4X):支持ユニット
(41):ねじ軸
(417):第1傘歯車(歯車機構)
(42):送りナット
(43A):左支持アーム
(43B):右支持アーム
(44):回転操作ヘッド(回転操作部)
(45):伝動用左回転軸
(451):第2傘歯車(歯車機構)
(5):固定スロープ板
(50):スロープ面
(D):電動回転工具
(G1):上段面
(G2):下段面
(G3):段差