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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169426
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】ガスシールパッド
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023170253
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2020536277の分割
【原出願日】2018-12-19
(31)【優先権主張番号】62/610,662
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】515251746
【氏名又は名称】サフィナ・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Saphena Medical, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジェイ・オーファノス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・グレノン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・バレンボイム
(57)【要約】      (修正有)
【課題】切開部位に実質的に気密シールを提供する装置を提供する。
【解決手段】パッドが提供され、パッドは、手術部位にガスシールを提供するための本体と、本体の第1の表面と本体の第2の表面との間で延び、手術器具を受け入れるサイズのポートと、本体に沿って配置され、第1の開口部と第2の開口部とを有するルーメンであって、第2の開口部は、手術部位に流体流を伝達するために手術部位と位置合わせされる、ルーメンとを有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術部位の上にガスシールを提供するための本体;
前記本体の第1の表面と前記本体の第2の表面との間で延び、手術器具を受け入れるサイズのポート;および
前記本体に沿って配置され、第1の開口部および第2の開口部を有するルーメンであって、前記第2の開口部は、流体流を前記手術部位に伝達するために前記手術部位と位置合わせされる、ルーメン
を含む装置。
【請求項2】
前記ポートを封止するフラップ、隔膜、一方向弁、またはそれらの組み合わせのうちの1つをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ポートは、前記手術器具とガスシールを形成するサイズである、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ルーメンの前記第2の開口部から前記手術部位に向かって延びるチューブをさらに含み、前記手術部位への流体流の送達を向上させる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記チューブは、前記ルーメンを通って延びる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記本体から延びるタブをさらに含み、前記パッドの取り外しを容易にするつまみを提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記本体の前記第2の表面の前記少なくとも一部の上に配置された接着剤をさらに含み、前記手術部位の上に前記ガスシールを形成するのを補助する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
手術部位の上にパッドを配置して、前記パッドと前記手術部位との間にガスシールを形成し、前記パッドは、前記手術部位と位置合わせされるポートを有すること;
前記手術器具とのガスシールされた係合を維持しながら、前記ポートを通して手術器具を前記手術部位に挿入すること;および
前記パッドを通して前記手術部位に流体流を伝達すること、
を含む方法。
【請求項9】
前記伝達することは、さらに、
流体源からルーメンの第1の開口部に前記流体流を導入すること;および
前記ルーメンの第2の開口部から前記流体流を排出すること、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記流体流は、気腹ガスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記伝達することは、前記手術部位に前記気腹ガスを吹送することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記配置することは、前記手術部位上の前記パッドの表面の少なくとも一部の上に配置された接着剤によって接着することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記パッドから延びるタブを掴んで引っ張って、前記手術部位から前記パッドを取り除くことをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記手術器具の先端を標的の解剖学的構造部まで前進させることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
手術部位の切開部の上にパッドを配置して、前記パッドと前記手術部位との間でガスシールを形成し、前記パッドは前記切開部と位置合わせされるポートを有すること;
内視鏡血管ハーベスタとのガスシールされた係合を維持しながら、前記ポートを通して前記切開部に内視鏡血管ハーベスタを挿入すること;
前記切開部にガス流を導入することにより前記手術部位を気腹させること;および
前記内視鏡血管ハーベスタを使用して標的血管を採取すること、
を含む内視鏡血管採取の方法。
【請求項16】
前記配置することは、前記本体の表面の少なくとも一部の上に配置された接着剤によって、前記手術部位の上に前記パッドを接着することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記本体の一部を掴んで引っ張って、前記手術部位から前記パッドを取り除くことをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記手術器具の先端を標的の解剖学的構造部まで前進させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記手術部位で前記切開部を切ることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
標的血管の深さまで切開することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記流体源からの前記気腹ガス流の導入が、前記本体の前記ポートを通って前記切開部への導入である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
手術部位の上にガスシールを提供するための本体;
前記本体を通って延びるシール部材であって、前記シール部材は、第1の開口部と第2の開口部とを有し、これらの開口部を通して手術用デバイスを前記手術部位に導くことができるシール部材;および
前記本体に沿って前記シール部材と流体連通するチャネルであって、前記チャネルの一端に第1の開口部と、前記チャネルの反対側の端部に第2の開口部とを有するチャネル
を含む装置。
【請求項23】
前記シール部材を強化する、前記シール部材内に配置された補強材をさらに含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記補強材は、そこから延びる1つ以上の幾何学的突起を含み、前記本体と前記補強材との結合面を提供する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記第1の開口部および前記第2の開口部は、それらを通して挿入された前記手術器具とガスシールを形成するサイズである、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記本体の前記第2の表面の前記少なくとも一部の上に配置された接着剤をさらに含み、前記手術部位の上に前記ガスシールを形成するのを補助する、請求項22に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年12月27日に提出された米国仮出願第62/610,662号と本願との両出願に共通するすべての主題について、米国仮出願第62/610,662号の優先権と利益をクレームする。前記仮出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
例示的な実施形態は、概して、手術用デバイスに関し、より詳細には、切開部位に実質的に気密シールを提供する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、トロカールは、患者の手術部位に挿入され、その後の気腹ガス(insufflation gas)の導入および/または他の器具の手術部位への配置のためのポータルとして機能する。しかしながら、従来のトロカールは大きく、扱いにくく、患者の体内に正確に挿入して配置することが難しい。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態では、装置が提供される。装置は、手術部位上にガスシールを提供する本体、本体の第1の表面と本体の第2の表面との間で延び、手術器具を受け入れるサイズのポート、および本体に沿って位置し、第1の開口部および第2の開口部を有するルーメンを含みことができ、第2の開口部は、流体流(fluid flow)を手術部位に伝達するために手術部位と位置合わせされている。装置は、ポートを封止するためのフラップ(flap)、隔膜(septum)、一方向弁(one-way valve)、またはそれらの組み合わせのうちの1つをさらに含んでもよい。ポートは、手術器具とのガスシールを形成するサイズであってもよい。装置は、ルーメンの第2の開口部から手術部位に向かって延びるチューブをさらに含み、手術部位への流体流の送達を向上させてもよい。チューブは、ルーメンを通って延びてもよい。装置は、本体から延びるタブをさらに含み、パッドの取り外しを容易にするつまみを提供してもよい。装置は、本体の第2の表面の少なくとも一部の上に配置された接着剤をさらに含み、手術部位の上にガスシールを形成するのを補助してもよい。
【0005】
いくつかの実施形態では、方法が提供される。この方法は、手術部位の上にパッドを配置して、パッドと手術部位との間にガスシールを形成し、パッドは手術部位と位置合わせされるポートを有すること、手術器具とのガスシールされた係合を維持しながら、ポートを通して手術器具を手術部位に挿入すること、およびパッドを通して手術部位に流体流を伝達することを含む。伝達することは、流体源からルーメンの第1の開口部に流体流を導入すること、およびルーメンの第2の開口部から流体流を排出すること、を含んでもよい。流体流は、気腹ガスを含んでもよい。伝達することは、手術部位に気腹ガスを吹送することを含んでもよい。配置することは、手術部位上のパッドの表面の少なくとも一部の上に配置された接着剤によって接着することを含んでもよい。この方法は、パッドから延びるタブを掴んで引っ張って、手術部位からパッドを取り除くことをさらに含んでもよい。この方法は、さらに、手術器具の先端を標的の解剖学的構造部まで前進させることをさらに含んでもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、内視鏡血管採取の方法が提供される。この方法は、手術部位の切開部の上にパッドを配置して、パッドは切開部と位置合わせされるポートを有するパッドと手術部位との間にガスシールを形成すること、内視鏡血管ハーベスタとのガスシールされた係合を維持しながら、ポートを通して切開部に内視鏡血管ハーベスタを挿入すること、切開部にガス流を導入することにより手術部位にガスを注入すること、および内視鏡血管ハーベスタを使用して標的血管を採取することを含む。
【0007】
配置することは、本体の表面の少なくとも一部の上に配置された接着剤によって、手術部位の上にパッドを接着することを含んでもよい。この方法は、本体の一部を掴んで引っ張って、手術部位からパッドを取り除くことをさらに含んでもよい。この方法は、手術器具の先端を標的の解剖学的構造部まで前進させることをさらに含んでもよい。この方法は、手術部位で切開部を切ることをさらに含んでもよい。この方法は、標的血管の深さまで切開することをさらに含んでもよい。流体源からの気腹ガス流の導入は、本体のポートを通って切開部へと行ってもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、装置が提供される。装置は、手術部位の上にガスシールを提供する本体、本体を通って延びるシール部材であって、シール部材は、第1の開口部と第2の開口部とを有し、これらの開口部を通して手術用デバイスを手術部位に導くことができるシール部材、および本体に沿ってシール部材と流体連通するチャネルであって、チャネルの一端に第1の開口部と、チャネルの反対側の端部に第2の開口部とを有するチャネルを含む。装置は、シール部材を強化する、シール部材内に配置された補強材をさらに含んでもよい。補強材は、そこから延びる1つ以上の幾何学的突起を含み、本体と補強材との結合面を提供してもよい。第1の開口部および第2の開口部は、そこを通って挿入された手術器具とともにガスシールを形成するようなサイズであってもよい。装置は、本体の第2の表面の少なくとも一部の上に配置された接着剤をさらに含み、手術部位の上にガスシールを形成するのを補助してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
例証する非限定的な例示的実施形態は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【0010】
図1図1A図1Bおよび図1Cは、様々な実施形態に係る封止デバイスの斜視図、側面図および底面図である。
図2A図2Aは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する方法のステップを示す図である。
図2B図2Bは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する方法のステップを示す図である。
図2C図2Cは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する方法のステップを示す図である。
図2D図2Dは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する方法のステップを示す図である。
図2E図2Eは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する方法のステップを示す図である。
図2F図2Fは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する方法のステップを示す図である。
図3A図3Aは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
図3B図3Bは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
図3C図3Cは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
図3D図3Dは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
図3E図3Aは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
図3F図3Aは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
図3G図3Gは、様々な実施形態に係る図1A図1Cの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
図4図4A図4B図4Cおよび図4Dは、様々な実施形態に係る封止デバイスの上面図および側面図である。
図5A図5Aは、様々な実施形態に係る図4A図4B図4Cおよび図4Dの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
図5B図5Bは、様々な実施形態に係る図4A図4B図4Cおよび図4Dの封止デバイスを使用する別の方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照して、様々な例示的な実施形態を以下でより十分に説明する。しかしながら、本発明の概念は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書で説明される例示的な実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの例示的な実施形態は、本開示が徹底して完全なものとなるように提供され、本発明の概念の範囲を当業者に完全に伝えるだろう。図面では、層および領域のサイズおよび相対サイズは、明確にするために誇張されている場合がある。全体を通して、同様の数字は同様の要素を指す。
【0012】
要素が別の要素に「接続されている("connected")」または「結合されている("coupled")」と言及されているときは、他の要素に直接接続または結合されていてもよいし、介在要素が存在していてもよいことが理解されるであろう。一方、要素が別の要素に「直接接続されている("directly connected")」または「直接結合されている("directly coupled")」と言及されているときは、介在する要素は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様の方法で解釈されるべきである(例えば、「間に("between")」対「直接間に("directly between")」、「隣接して("adjacent")」対「直接隣接して("directly adjacent")」など)。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、この発明の概念が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般に使用されている辞書で定義されているような用語は、関連する技術の文脈においてその意味と一致するように解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはないことがさらに理解されるであろう。
【0014】
本開示の実施形態は、概して、手術器具に適用される。本開示の様々な実施形態は、例えば、内視鏡処置中のトロカールの必要性を取り除くために可撓性のガスシールされた封止デバイスを提供するために使用されることができる。
【0015】
図1A図1Cは、実質的に気密シールを作り出す、手術部位に配置するパッドなどの封止デバイスまたは装置100を示す。例えば、ガスシールは、実質的に気密シールであってもよい。最初に図1Aを参照すると、本開示の様々な実施形態に従って、パッド100は、例えば切開部の上の手術部位に配置するために、第1の表面101aおよび第2の表面101bを有する本体101を含んでもよい。実質的に気密シールの形成を容易にするために、本体101は、切開部を完全に覆うように、手術部位よりも十分に大きくしてもよい。一実施形態では、本体101は、特定の適用部位に対して過度に扱いにくくならないようにしながら、切開部よりも十分に大きく、標的部位に接着するのに十分な表面積を提供するのに十分なサイズの直径を有する円形の形状にされていてもよい。例えば、本体101の直径は、3~5インチであってもよい。本体101はまた、例えば膝または肘における標的部位への接着を維持しながら可動性を可能にするようなサイズおよび形状であってもよい。図1Aには、実質的に円形の形状を有するように示されているが、本体101は、本体が切開部を覆い、気密シールを形成することができる限り、例えば、正方形、長方形、六角形、三角形、八角形、楕円形、十字形、任意の幾何学的デザイン、任意の他の適切な形状、またはそれらの組み合わせを含む任意の形状であってもよいことが、本開示の観点から明らかになるであろう。いくつかの実施形態では、本体101は、切開部を覆うことを容易にして気密シールを形成するために、約1インチから約10インチの間の直径を有してもよい。しかしながら、本開示の観点から、切開部を覆い、気密シールを形成することができる任意のサイズの本体101またはデバイス100が、様々な実施形態に従って使用されてもよいことが明らかになるであろう。
【0016】
デバイス100が患者の身体トポグラフィー(body topography)に適合してガスシールを形成するのを補助することが望ましい範囲で、いくつかの実施形態では、本体101は、手術部位で患者の表面に適合するのに十分に柔軟であってもよい。これに関しては、図1A図1Bに示されているように、本体101は、実質的に薄く、デバイス100の柔軟性を促進してもよい。一実施形態では、本体は、約0.01インチから約1.0インチの範囲の厚さであってもよい。もちろん、用途に応じて、本体の厚さを上記の範囲外にしてもよい。さらに、本体101は、実質的に流体不透過性の材料から作られて、手術部位の上にガスバリアを提供してもよい。このような材料の例には、例えば、ポリウレタン、シリコーンなどのエラストマー、EPDM、フルオロカーボン、ネオプレン、ニトリル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET、PTFE、PFA、FEP、EVAなどのポリマー、生体吸収性物質(PLA、PGA、PCL)、その他の適切な材料、またはそれらの組み合わせを含むことができる。デバイスが皮膚または他の組織に対して配置される一実施形態では、デバイスを作製できる材料は、生体適合性であってもよい。いくつかの実施形態では、本体101の材料は、引き裂き抵抗性があり、不注意による破壊または漏れを有利に防止できる。例えば、いくつかの実施形態では、本体101は、約ショア10Aから約ショア90Aのデュロメータ硬度を有してもよい。
【0017】
再び図1Aを参照すると、本体101はまた、第1の表面101aの1つから第2の表面101bまで延びるポート103を含み、切開位置の手術部位で患者に1つ以上の手術器具を導入するためのポータルとして機能することができる。いくつかの実施形態では、ポート103は、挿入される手術器具の直径よりもわずかに小さいサイズであってもよい。そのため、ポート103は、手術器具と実質的に緊密で(tight)弾性的にガスシールされた継手(gas-sealed fit)を提供することができる。いくつかの実施形態では、ポート103は、本体101内の実質的に中央に配置されてもよい。しかしながら、本開示を考慮すると、ポート103は、様々な実施形態によれば、本体101内のどこにでも配置できることが明らかであろう。いくつかの実施形態では、ポート103は、例えば、再シール可能なフラップ、再シール可能な隔膜、一方向弁、またはそれらの組み合わせなどの再シール可能な要素(図示せず)を備えて、1つ以上の手術器具の挿入を可能にしながら、手術器具がポート103内に存在しないときにポート103のガスシールを提供してもよい。いくつかの実施形態では、再シール可能な要素は、ポート103を介した患者への周囲の空気の流入を防止し、ポート103を通って気腹ガス(insufflation gas)の漏出を防止することができる。このようにして、本体101によって形成されたガスシールは、ポート103内に手術器具が存在するか否かにかかわらず維持される。
【0018】
さらに図1Aを参照すると、本体101はまた、一実施形態では、デバイス100を通って手術部位に流体流(fluid flow)を送達するためのトンネルまたはルーメン105を含むことができる。図示のように、ルーメン105は、流体源から流体流を受け取るために、一端に第1の開口部105aを含む。図示されるように、ルーメン105はまた、流体流をそこに送達するために、反対側の端部に、手術部位と位置合わせされた第2の開口部105bを含む。例えば、ルーメン105は、本体101の縁101cからポート103に向かって半径方向内向きに延びてもよい。いくつかの実施形態では、ルーメン105は、本体101の第1の表面101aまたは縁101cのどこかに位置する第1の開口部105aから、手術部位へ流体流を送達するために適した本体101の第2の表面101bのどこかに位置する第2の開口部105bまで延びてもよい。様々な実施形態に従って、第1の開口部105aは、ルーメン105を介して患者の内部または外部にガスまたは他の流体を伝達するためのルーメン105に流体源(例えば、ガス吹送供給、生理食塩水供給、水供給、注射器、または他のそのようなデバイスまたは装置)を接続することを可能にするための結合継手(coupling fitting)109に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、流体源は、ポート103および/またはルーメン105を通って提供されてもよい。結合継手109は、別のデバイスをデバイス100に取り付けるための結合機構の任意の組み合わせを含んでもよく、例えば、結合継手109は、ルアーフィッティング(Luer fitting)であってもよい。結合継手109は、例えば、金属、プラスチックなどの材料の任意の組み合わせから作製することができ、本体101に固定または取り外し可能に取り付けられてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、本体101は、遠位気腹(distal insufflation)のために構成され、デバイス100とは別個の医療機器のルーメンを通して流体源が提供されるようにしてもよい。例えば、医療機器は、ポート103または別個の入口点を通じて流体源を提供してもよい。
【0020】
デバイス100の取り外しを容易にするために、一実施形態では、本体には、本体101の縁101cから半径方向外向きに延びるタブ106を設けてもよい。いくつかの実施形態では、タブ106は、ユーザーがデバイス100を患者から取り外すのを補助するためのつまみ(finger grip)を形成することができる。図1Aに示されるように、一実施形態では、タブ106は、ルーメン105の延長として提供されてもよい。しかしながら、様々な実施形態に従って、デバイス100は、タブ106なしで設計されてもよいし、ルーメン105とは別個のタブ106を有するように設計されてもよいことは、本開示の観点から明らかになるであろう。
【0021】
チューブ107などの流体導管は、所望の範囲でルーメン105を通って延びるように提供されてもよい。実施形態では、図1Bに示されるように、チューブ107は、第1の端部107aと第2の端部107bとの間のルーメン105を通って延びてもよい。デバイス100と手術部位との間のガスシールを維持するために、いくつかの実施形態では、チューブ107は、ルーメン105と(例えば、溶接、接着剤、またはエラストマー干渉嵌合(elastomeric interference fit)によって)ガスシールを形成してもよい。図1Bに示されるように、いくつかの実施形態では、チューブ107の第2の端部107bは、ルーメン105の第2の開口部105bを超えて延びてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、第2の端部107bは、例えば、第2の端部107bを手術部位の上または上方に配置するように、第2の開口部105bと同一平面であるか、またはルーメン105内で終端してもよい。代替の実施形態では、チューブ107の第1の端部107aは、ルーメン105の第2の開口部105bに結合され、そこから延びてもよい。そのような実施形態では、チューブ107の第1の端部107aは、ルーメン105の第2の開口部105bと(例えば、溶接、接着剤、またはエラストマー干渉嵌合によって)ガスシールを形成してもよい。より一般的には、流体を手術部位に送達できるチューブ107およびルーメン105の任意の相対的構成を、様々な実施形態に従って用いてもよい。チューブ107は、中間層(例えば、皮膚、脂肪など)を通って標的位置(例えば、血管)へのすべての通過を可能にするサイズおよび形状にしてもよい。例えば、チューブ107は、1/2インチの長さから2インチの長さであってもよいが、これらの寸法は、特定の用途および標的位置に基づいて変化させてもよい。
【0022】
図1Bに示すように、手術部位への流体の送達を向上させるために、第2の端部107bは、ルーメン105の第2の開口部105bから所定の距離だけ患者の中に延びてもよい。異なる外科処置、異なる患者および異なる解剖学的構造部は、様々な深さの切開を必要とする可能性があるため、いくつかの実施形態では、チューブ107は、チューブ107が患者の中に延びる所定の距離のカスタマイズを可能にするように切り取り可能であってもよい。
【0023】
本体101によって提供されるガスシールを手術切開部にわたって維持するために、一実施形態では、チューブ107は、本体101と共にチューブ107を曲げることができるように十分に柔軟であってもよい。一実施形態では、チューブ107はさらに、患者内へのチューブ107の前進を可能にし、チューブ107の押しつぶし(crushing)および/または閉塞(occlusion)を防止するのに十分に剛性であってもよい。そのために、いくつかの実施形態では、チューブ107は、例えば、PVC、タイゴン(tygon)、シリコーン、PET、ポリウレタン、他の任意の適切な材料、またはそれらの組み合わせから構成されてもよい。
【0024】
様々な実施形態に従って、チューブの第1の端部107aは、チューブ107を介して患者の内部または外部にガスまたは他の流体を伝達するためのチューブ107に流体源(例えば、ガス吹送供給、生理食塩水供給、水供給、シリンジ、または他のそのようなデバイスまたは装置)を接続することを可能にするための結合継手109に結合されてもよい。
【0025】
しかしながら、いくつかの実施形態では、デバイス100はチューブ107を含まなくてもよいことが、本開示の観点から明らかになるであろう。そのような実施形態では、ルーメン105自体が、患者の内部または外部へのガスまたは他の流体のための通路を提供してもよい。さらに、そのような実施形態では、結合継手109は、第1の開口部105aにおいてデバイス100に直接取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、第2の端部107bおよびポート103は、同じ開口部であってもよい。
【0026】
次に、図1Cを参照すると、ガスシールを形成し、患者への配置後にデバイス100の位置を維持するために、接着剤111が本体101の第2の表面101bの少なくとも一部に配置され、剥離可能ライナー(removable liner)によって保護されてもよい。いくつかの実施形態では、接着剤111は、患者上での本体101の再配置のための複数の接着除去サイクルを可能にするように選択されてもよい。例えば、接着剤111は、いくつかの実施形態では、例えば、シリコーンゲル接着剤、アクリル接着剤、またはポリウレタン接着剤などの任意の適切な医療用接着剤を含むことができる。本明細書では接着剤111を有するものとして説明されているが、本開示を考慮すると、患者とデバイス100との間のガスシール係合(gas-sealed engagement)を促進するのに適した任意の材料または表面処理を様々な実施形態に従って使用してもよいことが明らかであろう。当業者には理解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、接着剤を本体101とは別に塗布して、本体101を患者に接着してもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、接着剤111は、第2の表面101bの部分から選択的に省略されてもよい。さらに図1Cを参照すると、いくつかの実施形態では、ポート103および第2の開口部105bを囲む無接着剤ゾーン(adhesive-free zone)113が提供される。無接着剤ゾーン113で接着剤111を省略することにより、本体101は局所的に横方向に動かすことができる。したがって、ポート103を通して挿入された任意の手術器具は、処置中に器具を位置決めし、操作するために必要に応じて横方向に動かすことができる。さらに、無接着剤ゾーン113は、ポート103を取り囲むパッド材料が患者の皮膚に対して伸びることを可能にするので、本体101と手術器具との間のガスシールされた継手を維持できる。これに対し、無接着剤ゾーン113がないと、接着剤111が皮膚上に局所的に保持されることになるため、手術器具の動きが手術器具と本体101との間で分離を生じさせ、それによってガス漏れを引き起こすことになる。接着剤111はまた、使用後にユーザーがデバイス100を取り外すのを補助するために、タブ106から省略してもよい。タブ106上の接着剤111を省略することにより、タブ106によって形成されるつまみは、使用中の患者または取り外し中のユーザーに接着せず、したがって、デバイス100を取り外すためにユーザーが容易に掴むことができる。
【0028】
次に、図2A図2Fを参照すると、デバイス100を使用するための方法が提供される。図2Aに示すように、ユーザーは皮膚Sに切開部Iを設けてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、切開手術のように、ユーザーは、標的手術部位への切開を継続してもよい。例えば、内視鏡血管採取手術に関連して、ユーザーは、標的血管が見つかるまで切開してもよい。次に、図2Bを参照すると、本体101の接着剤111は、デバイス100のポート103が切開部位の上に配置されるように皮膚S上に配置されてもよく、それによりデバイス100と患者との間にガスシールを形成する。チューブの第2の端部107bはまた、切開部位に所望の深さまで送り込まれてもよい。図2Aおよび図2Bは、デバイス100を皮膚Sに配置する前の切開部Iの形成を示しているが、いくつかの実施形態では、デバイス100は、切開部Iを形成する前に配置されてもよいことは、本開示を考慮すると明らかであろう。例えば、デバイス100がチューブ107のないルーメンを含む場合、デバイス100を配置し、ポート103を通して切開部Iを形成してもよい。
【0029】
図2Cに示すように、デバイス100と切開部位との間にガスシールが形成されると、吹送供給(insufflation supply)ISがルーメン105またはチューブ107に(例えば、図のように結合継手109を介して)接続され、手術部位に気腹ガスを伝達してもよい。図2Dに示すように、手術器具200(例えば、図示のようなEVH)の先端201およびシャフト203は、ポート103を通して挿入することができ、本体101とのガスシールされた継手を形成する。次に、図2Eに示すように、手術器具200を手術部位に進めて、EVH手術に関連した血管採取などの外科手術を行うために使用することができる。図2Fに示すように、手術器具200をポート103から引き抜き、デバイス100を(例えば、タブ106を掴んで引っ張ることによって)患者の皮膚Sから除去することができる。本明細書では特定の順序で説明されているが、切開部Iを設けて切除するステップ、デバイス100を配置するステップ、手術部位を気腹させるステップ、手術器具200を挿入するステップ、および手術器具200を引き抜くステップは、特定の医療手術に適した任意の順序で実行されてもよいことが、本開示の観点から明らかになるであろう。
【0030】
次に、図3A図3Fを参照すると、デバイス100を使用するための代替方法が提供される。図3Aに示すように、ユーザーは、皮膚Sに最初の切開部(initial incision)Iを設けてもよい。次に図3Bを参照すると、例えば、チップサーチテクニック手法(tip-search technique procedure)などのいくつかの実施形態では、ユーザーは、デバイス100のポート103を通して手術器具300(例えば、図示のようなEVH)の先端301を挿入して、デバイス100と手術器具300との間にガスシールを形成することができる。図3Cに示すように、ユーザーは、所望の手術部位(例えば、採取する標的血管)に到達するまで、切開部を介して、手術器具300の先端301およびシャフト303の少なくとも一部を患者内に前進させることができる。次に、図3Dに示すように、本体101の接着剤111を皮膚S上に配置し、患者とデバイス100との間にガスシールを形成することができ、ポート103は切開部Iの上に配置されている。また、チューブの第2の端部107bを所望の深さまで切開部位内に送り込むことができる。
【0031】
図3Eにおいて、デバイス100と切開部位との間にガスシールが形成されると、吹送供給をルーメン105またはチューブ107に(たとえば、図のように結合継手109を介して)接続して、手術部位に気腹ガスを伝達できる。図3Fに示すように、手術器具300は、EVH手術で血管を採取するなどの外科手術を行うために使用することができる。図3Gに示すように、手術の完了後、手術器具300をポート103から引き抜くことができ、デバイス100を(例えば、タブ106を掴んで引っ張ることによって)患者の皮膚Sから除去できる。本明細書では特定の順序で説明されているが、切開部Iを設けるステップ、ポート103を通して先端301を挿入するステップ、手術部位に到達するまで先端301を患者内に前進させるステップ、デバイス100を配置するステップ、手術部位を気腹させるステップ、および手術器具300を引き抜くステップは、特定の医療手術に適した任意の順序で実行されてもよいことが、本開示の観点から明らかになるであろう。
【0032】
図4A図4Dは、実質的に気密なガスシールを形成するために手術部位に配置するためのデバイス400を示す。例えば、ガスシールは、実質的に気密なシールであってもよい。図4Aを参照すると、デバイス400は、本開示の様々な実施形態に従って、本体401と、ポート403と、結合継手409(例えば、ルアー)とを含んでもよい。本体401および結合継手409は、図1A図3Gに関して説明された本体101、チューブ107、および結合継手109と同様であってもよい。いくつかの実施形態では、デバイス400は、シール部材(sealing member)402およびガスチューブ408を含んでもよい。シール部材402は、シール部材402を通してポート403の開口部へのアクセスを可能にするサイズおよび寸法の開口部を有する本体401内の中央に配置されるように設計されてもよい。ガスチューブ408は、本体401と実質的に平行で横方向にシール部材402から延びるように設計されてもよい。図4Aは、本体401、シール部材402およびガスチューブ408を含むデバイス400の、互いに関連した上面図を示す。図4Cに示すように、ガスチューブ408は、本体401に沿って延びるチャネル408aを含んでもよく、チャネル408aは、チャネル408aの一端に(結合継手409に接続された)第1の開口部と、チャネル408aの反対側の端部に第2の開口部と、を有し、シール部材の側壁内の開口部を通してシール部材(例えば、シール部材402のチャンバ410b)と流体連通してもよい。
【0033】
図4Aの参照を続けて、いくつかの実施形態では、本体401は、粘着パッド(adhesive pad)であってもよい。粘着パッドは、デバイス400が配置される身体の一部に適合するように十分に柔軟である材料の任意の組み合わせから構成されてもよい。例えば、粘着パッドは、ポリウレタン材料から構成されてもよい。同様に、粘着パッドの接着材料は、本体401を身体に取り外し可能に接着することを可能にする接着材料(複数可)の任意の組み合わせであってもよい。例えば、接着剤は、シリコーン接着剤、アクリル接着剤、または生体適合性を有するものを含む当技術分野で知られている任意の接着剤であってもよい。いくつかの実施形態では、接着材料は、本明細書で説明されるように、十分なシールを維持しながら、患者上でのデバイス400の取り外しおよび交換を可能にする材料であってもよい。特に、粘着パッドは、患者の皮膚に対してデバイス400をシールし、切開部から出てくる漏れを回避する。
【0034】
デバイス400の取り外しを容易にするために、一実施形態では、本体401の少なくとも一部は、接着剤なしで提供され、除去領域(removal area)410を提供してもよい。いくつかの実施形態では、除去領域410は、ユーザーが患者からデバイス400を除去するための指で掴む領域を提供してもよい。
【0035】
図4Bを参照して、シール部材402が取り付けられたデバイス400の側面図が提供される。シール部材402は、本体401の一部としてもよく、または本体401の開口部を通して挿入されてもよい。図4Bに示すように、シール部材402は、シール部材402の一部がデバイス400の本体401の上および下に配置される実質的に円筒状の形状であってもよい。当業者には理解されるであろうが、シール部材402は、任意の形状の組み合わせであってもよく、例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、管状、円筒状、漏斗状、多角形などであってもよい。シール部材402は、本体401(粘着パッド)と手術器具500との間でシールを形成するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、本体401の下側に位置するシール部材の一部は、テーパー形状を含んでもよい。テーパー形状は、シール部材のその部分を挿入部位に挿入するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、シール部材402は、手術器具500のシャフト503の周りに広がるように設計され、デバイス400が患者上に配置されているときに気密シールを維持しながらポート403を通して手術器具500の挿入を可能にしてもよい。シール部材403は、柔軟な医療グレードの材料の任意の組み合わせから構成されてもよい。例えば、シール部材403は、医療グレードのシリコーンから作製されてもよい。いくつかの実施形態では、シール部材403は、器具500のシャフト503をより容易に挿入できるようにコーティングされてもよい。コーティングは、例えば、パラリンまたはテフロンを含む潤滑剤の任意の組み合わせを含んでもよく、例えば、噴霧(spraying)、浸漬(dipping)、蒸着(vapor)、成膜(deposition)などの任意の方法の組み合わせを使用して塗布されてもよい。
【0036】
図4Bの参照を続けて、いくつかの実施形態では、シール部材402は、ガスチューブ408に結合されてもよい。ガスチューブ408は、本体401と実質的に平行で横方向にシール部材402から延びてもよい。ガスチューブ408は、例えば、射出成形または他の製造方法によって、シール部材402と一体化されてもよい。あるいは、ガスチューブ408は、シール部材402に着脱可能に取り付けられた別個の部品であってもよい。いくつかの実施形態では、ガスチューブ408は、実質的に円筒形であってもよい。当業者には理解されるであろうが、ガスチューブ408は、任意の形状の組み合わせであってもよく、例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、漏斗状、多角形などであってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、ガスチューブ408は、結合継手409を含むように、またはそうでなければ結合継手409に結合されるように設計されてもよい。結合継手409は、デバイス400を他のデバイス(例えば、気腹チューブ)に結合するために、シール部材402に結合されたガスチューブ408の端部とは反対側に位置するガスチューブ408の第1の端部に結合されてもよい。結合継手409は、任意の機構の組み合わせを含んで、ガスチューブ408を手術デバイスまたは他のデバイスに結合してもよい。例えば、結合継手409は、ルアー(Luer)、ねじ込みヘッド(threaded head)、摩擦嵌合ヘッド(friction fit head)など、またはそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、流体源(fluid source)は、ポート403、デバイス400に組み込まれたルーメン、および/または別個の入口点で別個の器具を通して提供されてもよい。いくつかの実施形態では、本体401は、遠位気腹(distal insufflation)のために構成され、流体源がデバイス400とは別個の医療器具内のルーメンを通して提供されてもよい。
【0038】
図4Cを参照して、いくつかの実施形態では、シール部材402は、1つ以上のチャンバ410を含んでもよい。図4Cは、シール部材402を含むデバイス400の断面図を示す。図4Cに示すように、シール部材402は、ポート403の上方にあるチャンバ410aと、ポート403の下方にあるチャンバ410bとを含み、2つのチャンバ410a、410bを仕切る壁(ポート403の開口部を含む)を備えてもよい。いくつかの実施形態では、図4Cに示すように、ガスチューブ408は、シール部材402の側壁を通って下部チャンバ410bに延びるように構成され、ガスチューブ408を通ってコネクタ409からシール部材402の下部チャンバ410bに延びる通路を形成してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、シール部材402は、1つ以上のチャネル406を含んでもよい。図4Cは、シール部材402が取り付けられたデバイス400の断面側面図を示す。図4Cに示すように、チャネル406は、シール部材402の部分、例えば、本体401の下に位置するシール部材402の部分内に設置されてもよい。別法として、チャネル406は、シール部材402の全長にわたって延びてもよい。チャネル406は、医療器具500のシャフト503にぶつかるように設計され、(チャネル408aを介して)ガスが通過する通路を形成し、シャフト503がポート403内に挿入されたときにガスが遮断されるピンチオフの状況(pinch-off situation)を回避してもよい。
【0040】
図4Cの参照を続けて、いくつかの実施形態では、デバイス400は、補強材(stiffener)404を含んでもよい。補強材は、医療器具がポート403内に挿入されたときに、デバイス400のシールを維持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、補強材404は、実質的に円筒形状を有するように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、製造中に、補強材404の円筒形部分をシール部材402内に入れて、本体402によって提供されるシールを強化して、歪みおよび漏れが生じるほど大きく広がらないようにしてもよい。例えば、図4Cに示すように、補強材404は、封止用シール部材内にインサート成形できる別個に成形された部品としてもよい。当業者には理解されるであろうが、補強材404は、シール部材402内に埋め込まれ、内部に挿入され、またはシール部材402の周囲に包まれるように設計された任意のサイズおよび形状であり、シール部材402を強化してもよい。強化するために、補強材404は、例えば、ポリカーボネートまたは他のプラスチックまたは金属材料などの硬質材料から作製されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、図4Dに示すように、補強材404は、例えば、指形状、ペダル形状などのそこから延びる1つ以上の幾何学的突起404aを含み、シール部材402を支持してもよい。図4Cに示すように、幾何学的突起404aは、本体401の下で且つ本体401に実質的に平行にシール部材402から外に延びるように設計されてもよい。いくつかの実施形態では、幾何学的突起404aは、患者の表面になじむように曲がったり(bend)屈曲したり(flex)するのに十分な柔軟性があり、補強材404および/またはシール部材402に対する本体401の粘着パッドへの結合面を形成してもよい。いくつかの実施形態では、幾何学的突起404aは、それが粘着パッドと標的皮膚との間に挟まれ得るように、本体401の下側に位置されてもよい。いくつかの実施形態では、粘着パッドは、特別な切り欠きを有する取り外し可能なライナー(図示せず)を有し、補強材404の幾何学的突起404aが、製造中に本体401にくっつくことを可能にしてもよい。ライナーの残りの部分は、患者に装着するために取り外されるまで粘着パッド上に留まってもよい。
【0042】
図4Dを参照して、いくつかの実施形態では、補強材404は、ガスチューブ408に結合されるように設計された横穴(cross hole)404bを有し、ガスが(例えば、結合継手409を介して)ガスチューブ408から(例えば、ガスチューブ408がシール部材402の側壁を通って延びる)本体401のポート403まで通過できるようにしてもよい。
【0043】
手術中、手術器具500は、デバイス400のポート403および本体401の開口部を通して挿入されて、本体401とのガスシールされた継手を形成し、手術部位に進められて、例えば血管採取などの外科処置を行ってもよい。手術器具500は、手術デバイス200、300に関して説明されたような手術デバイスであってもよく、先端501およびシャフト503を含んでもよい。いくつかの実施形態では、先端501およびシャフト503は、デバイス400のシール部材402内に適合するようなサイズおよび寸法にされてもよい。
【0044】
図5Aを参照すると、いくつかの実施形態では、図2A図2Fに関してより詳細に説明したように、デバイス400を手術器具500と共に使用し、切開手術を行うことができる。デバイス400を使用した切開手術中に、ユーザーは、切開を行い、静脈を見つけ、いくつかの軽い近位切開(proximal dissection)を行い、直接視覚化しながら空間を少し開くことができる。静脈が見つかると、図5Aに示すように、ユーザーはライナー(liner)を粘着パッドから本体401の底面から剥がし、シール部材402の少なくとも一部を患者の挿入部位に挿入できる。シール部材402の少なくとも一部が挿入された状態で、本体401の粘着パッドを切開部位の皮膚の表面上に配置して接着し、挿入部位に気密皮膚シール(gas-tight skin seal)を形成することができる。その後、ユーザーは、コネクタ409にガス源を取り付けて、ガスチューブ408およびポート403を通して挿入部位にガスを供給できる。手術が終了したとき、ユーザーは、患者から粘着パッドを剥離し、デバイス400を廃棄するか、または再使用のためにデバイス400を洗浄できる。
【0045】
図5Bを参照すると、いくつかの実施形態では、図3A図3Fに関してより詳細に説明したように、デバイス400を手術器具500と共に使用して、チップサーチ手法(tip-search procedure)を行うことができる。デバイス400を使用したチップサーチ手法中に、ユーザーは、静脈の近くに小さな切開を作り、次に、手術器具500を使用して、(例えば、先端501内にある)カメラを覗いて静脈を見つけることができる。チップサーチでは、直接可視化しながらではなく、通常のカメラを通して静脈を見つけることができる。図5Bに示すように、チップサーチを開始する前に、デバイス400を手術器具500と組み合わせてもよい。ユーザーが標的静脈を見つけたら、ユーザーは粘着パッドからライナーを剥がし、粘着パッドが皮膚に接触し、皮膚に接着してシールを形成するまで、デバイス400を手術器具500のシャフト503に沿って下に滑らせることができる。その後、ユーザーは、コネクタ409にガス源を取り付けて、ガスタイプ408およびポート403を通して挿入部位にガスを供給できる。手術が終了したとき、ユーザーは、患者から粘着パッドを剥離し、デバイス400を廃棄するか、または再使用のためにデバイス400を洗浄できる。
【0046】
図1A図5Bに関して説明したように、手術中、本発明のデバイスは、ポートを通して手術部位へのアクセスを提供しながら、手術部位での気密シールを提供するためのシステムおよび方法を提供する。最初に、気密シールを形成するために、デバイスの本体を手術部位の上に配置してもよく、ポートが手術部位の切開点(incision point)と実質的に一直線になる(または、位置合わせされる)。パッドの柔軟性は、手術部位の表面上に配置されたときに、パッドが部位の周りにぴったりくっつくことを可能にし、実質的に気密シールを形成する。手術部位へのパッドの接着を強化するために、パッドの接着層は、手術部位の表面と接触して配置されてもよい。
【0047】
パッドが手術部位に取り付けられた状態で、デバイスのポートは、適切な手術器具を挿入するために利用されてもよい。ポートは、手術部位で気密シールを維持しながら、手術器具を受け入れるサイズおよび寸法にされてもよい。特に、手術器具は、ポートを通して挿入され、挿入中にポートと係合されてもよい。ポートを通って手術部位に向かって配置された手術器具により、多くのタスクを実行することができる。タスクには、(例えば、器具の先端を介して)手術部位内の標的の解剖学的構造部へのアクセス、流体流の手術部位への伝達、手術部位からの材料の採取/除去、手術部位での切開、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。流体流(例えば、気腹ガス)の導入は、パッドから遠位に、手術器具自体を経由してパッドのポートを通って、および/またはパッドのルーメン/チューブを通って行われてもよい。
【0048】
外科処置が完了したら、手術部位の表面への影響を最小限に抑えて、パッドを手術部位から取り外してもよい。例えば、パッドから伸びるタブまたは接着剤のないパッドの一部を掴んで引っ張ることにより、パッドを取り外してもよい。その後、パッドまたはその一部は、廃棄または再使用のために洗浄されてもよい。
【0049】
本開示をその特定の実施形態に関して説明したが、本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ、同等物が代用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。さらに、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの修正を行い、特定の状況、指標、材料および物質の組成、プロセスステップまたは複数のステップに適応してもよい。そのような変更はすべて、本明細書に添付された特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
【手続補正書】
【提出日】2023-10-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面を有する柔軟な本体であって、前記底面は、前記柔軟な本体の前記底面と、手術部位との間のガスシールを提供するために、その直径にわたって手術部位に適合および接着するように構成されている柔軟な本体
前記本体を通って延びるシール部材であって、前記シール部材は、第1の開口部と第2の開口部とを有し、これらの開口部を通して手術用デバイスを前記手術部位にある切開部に導くことができるシール部材;および
前記本体に沿って前記シール部材と流体連通するチャネルであって、前記チャネルの一端に第1の開口部と、前記チャネルの反対側の端部に第2の開口部とを有するチャネル
を含む装置。
【請求項2】
前記シール部材を強化する、前記シール部材内に配置された補強材をさらに含む、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記補強材は、そこから延びる1つ以上の幾何学的突起を含み、前記本体と前記補強材との結合面を提供する、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記シール部材の前記第1の開口部および前記第2の開口部は、それらを通して挿入された前記手術器具と前記ガスシールを形成するサイズである、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記本体の前記面の前記少なくとも一部の上に配置された接着剤をさらに含み、前記切開部の上に前記ガスシールを形成するのを補助する、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記チャネルは前記柔軟な本体の表面に沿って延在する、請求項1に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
本開示をその特定の実施形態に関して説明したが、本開示の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ、同等物が代用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。さらに、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの修正を行い、特定の状況、指標、材料および物質の組成、プロセスステップまたは複数のステップに適応してもよい。そのような変更はすべて、本明細書に添付された特許請求の範囲内にあることが意図される。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
手術部位の上にガスシールを提供するための本体;
前記本体の第1の表面と前記本体の第2の表面との間で延び、手術器具を受け入れるサイズのポート;および
前記本体に沿って配置され、第1の開口部および第2の開口部を有するルーメンであって、前記第2の開口部は、流体流を前記手術部位に伝達するために前記手術部位と位置合わせされる、ルーメン
を含む装置。
(態様2)
前記ポートを封止するフラップ、隔膜、一方向弁、またはそれらの組み合わせのうちの1つをさらに含む、態様1に記載の装置。
(態様3)
前記ポートは、前記手術器具とガスシールを形成するサイズである、態様1に記載の装置。
(態様4)
前記ルーメンの前記第2の開口部から前記手術部位に向かって延びるチューブをさらに含み、前記手術部位への流体流の送達を向上させる、態様1に記載の装置。
(態様5)
前記チューブは、前記ルーメンを通って延びる、態様4に記載の装置。
(態様6)
前記本体から延びるタブをさらに含み、前記パッドの取り外しを容易にするつまみを提供する、態様1に記載の装置。
(態様7)
前記本体の前記第2の表面の前記少なくとも一部の上に配置された接着剤をさらに含み、前記手術部位の上に前記ガスシールを形成するのを補助する、態様1に記載の装置。
(態様8)
手術部位の上にパッドを配置して、前記パッドと前記手術部位との間にガスシールを形成し、前記パッドは、前記手術部位と位置合わせされるポートを有すること;
前記手術器具とのガスシールされた係合を維持しながら、前記ポートを通して手術器具を前記手術部位に挿入すること;および
前記パッドを通して前記手術部位に流体流を伝達すること、
を含む方法。
(態様9)
前記伝達することは、さらに、
流体源からルーメンの第1の開口部に前記流体流を導入すること;および
前記ルーメンの第2の開口部から前記流体流を排出すること、を含む、態様8に記載の方法。
(態様10)
前記流体流は、気腹ガスを含む、態様8に記載の方法。
(態様11)
前記伝達することは、前記手術部位に前記気腹ガスを吹送することをさらに含む、態様10に記載の方法。
(態様12)
前記配置することは、前記手術部位上の前記パッドの表面の少なくとも一部の上に配置された接着剤によって接着することをさらに含む、態様8に記載の方法。
(態様13)
前記パッドから延びるタブを掴んで引っ張って、前記手術部位から前記パッドを取り除くことをさらに含む、態様8に記載の方法。
(態様14)
前記手術器具の先端を標的の解剖学的構造部まで前進させることをさらに含む、態様8に記載の方法。
(態様15)
手術部位の切開部の上にパッドを配置して、前記パッドと前記手術部位との間でガスシールを形成し、前記パッドは前記切開部と位置合わせされるポートを有すること;
内視鏡血管ハーベスタとのガスシールされた係合を維持しながら、前記ポートを通して前記切開部に内視鏡血管ハーベスタを挿入すること;
前記切開部にガス流を導入することにより前記手術部位を気腹させること;および
前記内視鏡血管ハーベスタを使用して標的血管を採取すること、
を含む内視鏡血管採取の方法。
(態様16)
前記配置することは、前記本体の表面の少なくとも一部の上に配置された接着剤によって、前記手術部位の上に前記パッドを接着することをさらに含む、態様15に記載の方法。
(態様17)
前記本体の一部を掴んで引っ張って、前記手術部位から前記パッドを取り除くことをさらに含む、態様15に記載の方法。
(態様18)
前記手術器具の先端を標的の解剖学的構造部まで前進させることをさらに含む、態様15に記載の方法。
(態様19)
前記手術部位で前記切開部を切ることをさらに含む、態様15に記載の方法。
(態様20)
標的血管の深さまで切開することをさらに含む、態様19に記載の方法。
(態様21)
前記流体源からの前記気腹ガス流の導入が、前記本体の前記ポートを通って前記切開部への導入である、態様15に記載の方法。
(態様22)
手術部位の上にガスシールを提供するための本体;
前記本体を通って延びるシール部材であって、前記シール部材は、第1の開口部と第2の開口部とを有し、これらの開口部を通して手術用デバイスを前記手術部位に導くことができるシール部材;および
前記本体に沿って前記シール部材と流体連通するチャネルであって、前記チャネルの一端に第1の開口部と、前記チャネルの反対側の端部に第2の開口部とを有するチャネル
を含む装置。
(態様23)
前記シール部材を強化する、前記シール部材内に配置された補強材をさらに含む、態様22に記載の装置。
(態様24)
前記補強材は、そこから延びる1つ以上の幾何学的突起を含み、前記本体と前記補強材との結合面を提供する、態様23に記載の装置。
(態様25)
前記第1の開口部および前記第2の開口部は、それらを通して挿入された前記手術器具とガスシールを形成するサイズである、態様22に記載の装置。
(態様26)
前記本体の前記第2の表面の前記少なくとも一部の上に配置された接着剤をさらに含み、前記手術部位の上に前記ガスシールを形成するのを補助する、態様22に記載の装置。
【外国語明細書】