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特開2023-169430離散型フィールドデバイスおよび信号用のスマート機能
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169430
(43)【公開日】2023-11-29
(54)【発明の名称】離散型フィールドデバイスおよび信号用のスマート機能
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20231121BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
G05B19/05 L
G05B23/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171438
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2019177724の分割
【原出願日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】16/146,784
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512132022
【氏名又は名称】フィッシャー-ローズマウント システムズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ギャリー・ケイ・ロー
(72)【発明者】
【氏名】ケント・エイ・バー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処理プラントおよび処理制御システムに関し、特に、処理プラントの離散型要素にスマート機能を提供する。
【解決手段】(A)処理制御装置により送信されるDIメッセージを第一チャネルを通して受信する工程であって、処理制御装置が、(i)フィールドデバイスに連結された複数の離散型I/Oチャネルを通して1つ以上の組の情報を伝達する複数のDI信号を受信し、(ii)複数のDI信号に基づいて1つ以上の組の情報でDIメッセージを符号化し、(iii)DIメッセージを第一チャネルを通して送信するように構成されている工程と、(B)DIメッセージを復号し1つ以上の組の情報を識別する工程と、(C)処理コントローラが、少なくとも部分的に1つ以上の組の情報に基づいて処理を制御できるように、1つ以上の組の情報を第二チャネルを通して処理コントローラへ送信する工程と、を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力/出力(I/O)チャネルを通してフィールドデバイスによって送信される離散型入力(DI)信号が伝達する情報を処理コントローラが受信できるようにするための、信号特徴付け用の方法であって、
(A)処理制御装置によって送信されるDIメッセージを第一チャネルを通して受信する工程であって、前記処理制御装置が、
(i)1つ以上のフィールドデバイスに連結された複数の離散型I/Oチャネルを通して、1つ以上の組の情報を伝達する複数のDI信号を受信し、
(ii)前記複数のDI信号に基づいて、前記1つ以上の組の情報で前記DIメッセージを符号化し、
(iii)前記DIメッセージを前記第一チャネルを通して送信するように構成されている工程と、
(B)前記DIメッセージを復号し、前記1つ以上の組の情報を識別する工程と、
(C)処理コントローラが、少なくとも部分的に前記1つ以上の組の情報に基づいて処理を制御できるように、前記1つ以上の組の情報を第二チャネルを通して前記処理コントローラへ送信する工程と、
を有するものである方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記第二チャネルを通して前記処理制御装置に電力を供給可能とするために十分に電力を前記第二チャネルに提供する工程を更に有するものである方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記第一チャネルは電力通信バスであり、
前記第二チャネルへ提供される前記電力は、前記信号特徴付け構成要素によって、前記第一チャネルから得られるものである方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記電力通信バスは、前記処理コントローラに通信可能に連結されたI/Oカードに接続されているものである方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法において、前記1つ以上の組の情報は少なくとも第一組の情報と第二組の情報とを有し、前記DIメッセージを復号する工程は、
前記第一組の情報に関しては、(i)第一サブセットのビットと第二サブセットのビットとを含む前記DIメッセージ内の第一組のビットを識別する工程と、(ii)前記第一サブセットのビットが示す値を識別する工程と、(iii)前記第二サブセットのビットが前記第一サブセットのビットのビット反転を示すことを確認する工程とを有し、
前記第二組の情報に関しては、(i)第三サブセットのビットと第四サブセットのビットとを含む前記DIメッセージ内の第二組のビットを識別する工程と、(ii)前記第三サブセットのビットが示す値を識別する工程と、(iii)前記第四サブセットのビットが前記第三サブセットのビットのビット反転を示すことを確認する工程とを有するものである方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法において、
前記DIメッセージを復号する工程は、
前記DIメッセージ内の特定の組の情報に関しては、(i)前記特定の組の情報に対応する前記DIメッセージ内の1組のビットを識別する工程であって、前記1組のビットが、第一サブセットのビットと第二サブセットのビットとを含むものである工程と、(ii)前記第二サブセットのビットが、前記第一サブセットのビットのビット反転を示さないことを決定する工程と、(iii)前記特定の組の情報が前記DIメッセージに適切に符号化されていないことを示すエラーを生成する工程と、を有するものである方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の方法において、
前記処理制御装置用のデバイスタグをオートセンシングする工程と、
前記デバイスタグが前記処理制御装置に接続できるように、前記第一チャネルを通して前記デバイスタグを送信する工程と、
を更に有するものである方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記処理制御装置に接続された前記複数の離散型I/Oチャネルの各々用に信号タグをオートセンシングする工程と、
前記信号タグが前記離散型I/Oチャネル用のハードウェアアドレスに接続できるように、前記第一チャネルを通して前記信号タグを送信する工程と、
を更に有するものである方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に処理プラントおよび処理制御システムに関し、特に、処理プラントの離散型要素にスマート機能を提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
発電、化学処理、石油処理、他の処理で使用される分散型の処理制御システム、例えば、分散型またはスケーラブルな処理制御システムには、相互に通信可能に連結され、処理制御ネットワークを通して少なくとも1つ以上のホストまたはオペレータワークステーションに通信可能に連結され、アナログバス、デジタルバス、またはアナログ/デジタル複合型バスを通して1つ以上のフィールドデバイスに通信可能に連結された1つ以上の処理コントローラが含まれる。
【0003】
フィールドデバイス、例えば、弁、弁ポジショナ、スイッチ、およびトランスミッタ(例えば、温度センサ、圧力センサ、流速センサ)は、斯かる処理またはプラント内で、弁の開閉、スイッチ装置のオンオフ、処理パラメータの測定などの機能を実行する。
【0004】
処理コントローラは、プラント環境内に通常位置しており、フィールドデバイスによって行われる処理測定および/またはフィールドデバイスに関連する他の情報を示す信号を受信し、(例えば、処理制御を決定する異なる制御モジュールの作動を行う)コントローラアプリケーションを実行し、受信情報に基づいて制御信号を生成し、フィールドデバイスで実行される制御モジュールまたはブロック、例えば、HART(登録商標)、WirelessHART(登録商標)、FOUNDATION(登録商標)Fieldbusフィールドデバイスとの調整を行う。
【0005】
制御モジュールが実行される結果、処理コントローラは、通信リンクまたは信号経路を通して制御信号を送信することにより、処理プラントまたはシステムの少なくとも一部の動作を制御する(例えば、プラントまたはシステム内で作動/実行される1つ以上の産業処理の少なくとも一部を制御する)。例えば、コントローラ及びフィールドデバイスは、処理プラントまたはシステムによって制御される処理の少なくとも一部を制御する。
【0006】
プラント環境内に通常位置する入力/出力(I/O)カード(「I/O装置」または「I/Oモジュール」とも呼ばれる)は、一般的に、コントローラと1つ以上のフィールドデバイスとの間に通信可能に配置されており、それらの間で、例えば、電気信号をデジタル値にデジタル値を電気信号に変換することにより、通信可能な状態を保っている。通常、フィールドデバイスの入力または出力は、同じ通信プロトコル用に構成された、またはフィールドデバイスの入力/出力で使用されるようなプロトコル用に構成された1つ以上のI/Oカードを通して、通信可能に処理コントローラに連結されている。特に、フィールドデバイス入力/出力は、アナログ通信または離散通信用に構成されているのが通常である。一般的に、コントローラは、フィールドデバイスと通信するため、フィールドデバイスによって利用されるのと同タイプの入力または出力用に構成されたI/Oカードを通常必要としている。すなわち、処理コントローラは、アナログ制御信号(例えば、4~20mA信号)を受信するように構成されたフィールドデバイス用に、適切な制御信号を送信するためのアナログ出力(AO)I/Oカードを必要としており、アナログ信号を通して測定値または他の情報を送信するように構成されたフィールドデバイス用には、上記通信された情報を受信するためのアナログ入力(AI)カードを通常必要としている。同様に、処理コントローラは、離散型制御信号を受信するように構成されたフィールドデバイス用には、適切な制御信号を送信するための離散型出力(DO)I/Oカードを必要としており、離散信号を通して情報を送信するように構成されたフィールドデバイス用には、離散型入力(DI)カードを通常必要とする。一般的に、各I/Oカードは、複数のフィールドデバイス入力または出力に接続されていてもよく、その場合、特定の入力または出力用の各通信リンクは「チャネル」と呼ばれる。例えば、120チャネルDO I/Oカードは、120の個別の離散型フィールドデバイス入力に通信可能に連結されており、コントローラが(DO I/Oカードを通して)離散型の制御出力信号を120の個別の離散型フィールドデバイス入力へ送信できるようになっていてもよい。
【0007】
本明細書で使用される場合、フィールドデバイス、コントローラ、およびI/O装置は、「処理コントローラ」と通常呼ばれており、処理制御システム/プラントのフィールド環境内に一般的に配置または設置される。1つ以上のコントローラによって形成されたネットワーク、1つ以上のコントローラに通信可能に接続されたフィールドデバイス、およびコントローラとフィールドデバイスとの間の通信を促進するための中間ノードは、「I/Oネットワーク」または「I/Oサブシステム」と呼ばれてもよい。
【0008】
フィールドデバイスおよびコントローラからの情報は、通常、データハイウェイまたは通信ネットワーク(「処理制御ネットワーク」)を通して、1つ以上の他のハードウェア装置、例えば、オペレータワークステーション、PCまたはコンピュータ装置、携帯装置、データヒストリアン、レポートジェネレータ、中央集中型データベース、またはプラントの厳しい現場環境から離れた制御室または他の場所(例えば、処理プラントの後置環境)に置かれる他の中央集中型管理コンピュータ装置へ通常送信される。
【0009】
オペレータまたは保守点検担当者は、処理管理ネットワークを通して通信される情報により、ネットワークに接続された1つ以上のハードウェア装置を通して、処理に関する望ましい機能を実行できる。斯かるハードウェア装置がアプリケーションを実行し、その結果、オペレータは、例えば、処理制御ルーチン(複数も可)の設定変更を行ったり、処理コントローラまたはスマートフィールドデバイス内の制御モジュールの調整をしたり、処理の現状または処理プラント内の特定の装置の状態を観察したり、フィールドデバイスや処理コントローラが生成する警報を監視したり、担当者の訓練または処理制御ソフトウェアの試験のために処理操作をシミュレーションしたり、処理プラント内の問題またはハードウェアの故障を診断したりすることができる。ハードウェア装置、コントローラ、およびフィールドデバイスが利用する処理制御ネットワークまたはデータハイウェイには、有線通信経路、無線通信経路、および複合有線/無線通信経路などが含まれる。
【0010】
一例として、Emerson Process Managementが販売するDeltaV(登録商標)制御システムには、(処理プラント内の異なる場所に配置された)異なる装置内に保管され実行される複数のアプリケーションが含まれる。ユーザは、処理制御システムまたはプラントの後置環境内の1つ以上のワークステーションまたはコンピュータ装置に配置された設定アプリケーションにより、処理制御モジュールを作成または変更し、斯かる処理制御モジュールをデータハイウェイを通して専用の分散型コントローラへダウンロードできる。通常、斯かる制御モジュールは、通信可能に相互接続された機能ブロック(すなわち、入力に基づいて制御スキーム内の機能を実行し、制御スキーム内の他の機能ブロックに出力を提供する、オブジェクト指向プログラミングプロトコルのオブジェクト)で構成されている。更に、設定設計者は、設定アプリケーションにより、(オペレータへデータを表示したり、オペレータが処理制御ルーチン内の設定(設定点など)変更を行えるようにしたりするため、閲覧アプリケーションによって使用される)オペレータインターフェースを設定または変更できるようになる。
【0011】
各専用コントローラ、あるいはいくつかの例では1つ以上のフィールドデバイスは、(実際の処理制御機能を実施するように割り当てられ、ダウンロードされる制御モジュールを作動する)各コントローラアプリケーションを記憶および実行する。1つ以上のオペレータワークステーション(またはオペレータワークステーションおよびデータハイウェイと通信可能に接続された1つ以上の遠隔コンピュータ装置)で実行される閲覧アプリケーションは、データハイウェイを通してコントローラアプリケーションからデータを受信し、処理制御システム設計者、オペレータ、またはユーザインターフェースを使用するユーザへ斯かるデータを表示するが、オペレータの見解、技術者の見解、専門家の見解などいくつかの異なる見解のいずれかを提供してもよい。データヒストリアンアプリケーションは、データハイウェイを通して提供されるデータの一部または全部を回収し記憶するデータヒストリアン装置に通常記憶され、該装置によって実行されるが、設定データベースアプリケーションは、同様にデータハイウェイに接続されたコンピュータで実行され、現在の処理制御ルーチン設定およびそれに関連したデータを記憶するものである。あるいは、設定データベースは、設定アプリケーションと同じワークステーション内に配置されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般的に、処理プラント(またはプラントの一部)は、設計段階、設置段階、および試運転段階を含む複数段階の工程後、オンラインとされてもよい。設計段階中、設計者は、一般的な制御戦術を開発し、処理要素を特定(すなわち、制御戦略を実施するのに必要な装置および処理コントローラを特定)する。設置段階中、処理要素が設置される。試運転段階中、処理要素が試験され、システムまたはプラントが意図された状態で作動できる時点までそれが行われる。残念ながら、プラントのいくつかの側面は、設置および試運転段階の前に完全に設計するのは困難である。斯かる段階は性質上ある程度反復性のものであってもよく、少なくとも部分的には並行して実行されてもよい。
【0013】
例えば、I/Oネットワークまたはサブシステムの設計は複雑な複数段階の工程である。数十年間、専用I/Oアーキテクチャが使用されており、各コントローラが、バックプレーンを通してコントローラに物理的に接続された1つ以上の専用の複数チャネルI/Oカードを有している。残念なことに、斯かる専用I/Oアーキテクチャの設計は困難な作業である。まず、計装図(P&ID)が設計され、制御要素に関する初期見解、並びにそれが制御戦略内でどのように使用されるべきかに関する初期見解が提供される。次に、器具リストが斯かるP&IDから導かれるが、それは設計中の各要素(例えば、フィールドデバイス)の詳細なリストであり、装置タイプ、製造元、較正範囲、並びに処理装置内の各要素の物理的位置などがそれに含まれる。しかし、現場配線設計は、一般的に、I/Oサブシステムが規定されるまでは完了されないし、I/Oサブシステムは、一般的に、現場信号使用が制御戦略内で規定され、信号と制御戦略が適切なコントローラに割り当てられるようになるまでは画定できない。各コントローラの信号数が分かった場合にのみ、各コントローラ用の実際のI/Oサブシステムが特定され、現場配線設計が完了する。
【0014】
残念ながら、プロジェクトの変更および再設計により、現場配線設置が妨害され複雑化する場合が多い。通常、現場配線設計の完了後、物理的な通信リンクが設置され、I/Oネットワークが構築される。「有線マーシャリング」は、物理的な通信リンク(例えば、2または3の有線リンク)を確立する上で従来から業界で容認された慣行である。斯かる有線マーシャリングは困難な作業であり、現場技師はフィールド接続箱(FJB)の端子盤にフィールドボックスを配線し、次に、I/O室(「制御室」と呼ばれることもある)のマーシャリングキャビネット内にある端子盤の第一組に斯かるFJB端子盤を配線する。次に、現場技師は、マーシャリングキャビネット内にある端子盤の第一組をマーシャリングキャビネット内にある端子盤の第二組に配線し、その後、該第二組は「システムキャビネット」内の適切なI/Oカードに配線される。斯かるI/Oカードは、通常、問題のフィールドデバイスの制御または監視用に割り当てられたコントローラに(例えば、バックプレートを通して)通信可能に接続されている。
【0015】
マーシャリングキャビネットは通信の相互接続点を示しており、設計段階および試運転段階中に問題が生じる原因となり得る。ワイヤは通常(複数のコアケーブルを通して)現場からマーシャリングキャビネットへもたらされるので、接続された各フィールドデバイスが適切なI/Oカードおよびチャネルに確実に接続されるようにするため、キャビネット内の配線は一般的にクロスマーシャリングされていなければならない。特に、フィールドデバイスは通常マーシャリングキャビネット内にある端子盤の第一組に接続されており、I/Oカードは通常マーシャリングキャビネット内にある端子盤の第二組に接続されている。適切な作動が確実に行われるようにするため、すなわち、例えばコントローラがフィールドデバイスへコマンドを送信する場合、目的のフィールドデバイスがそのコマンドを確実に受信するようにするため、端子盤の第一組の各端子が端子盤の第二組の適切な端子に配線(すなわち、クロスマーシャリング)されていなければならない。
【0016】
クロスマーシャリングは問題発生の原因となり得る。特に、複数のポイントで「マッピングエラー」が生じ得る。第一の例として、フィールドデバイス出力がマーシャリングキャビネットの間違った端子、従って間違ったI/Oカードチャネルに配線され、(例えば、フィールドデバイスが正しいI/Oカードと同じタイプのI/Oカードに間違って配線された場合)間違ったシステム変数に割り当てられたフィールドデバイスによって送信される情報が得られることになる。第二の例として、フィールドデバイスがマーシャリングキャビネットに正しく配線されていたとしても、マーシャリングキャビネットとI/Oカードとの間の配線が間違っている場合、同じ問題が生じることになる。第三の例として、フィールドデバイスおよびI/Oカードがそれぞれマーシャリングキャビネットに正しく配線されていたとしても、クロスマーシャリングにより同じ問題が発生する場合がある。更に、全ての配線が正しい場合でも、技師がI/Oチャネルを間違ったシステム変数に割り当ててしまった場合にもエラーが生じ得る。エラーの原因を特定し、斯かるエラーが配線エラーに起因するのか、それともソフトウェア構成エラーに起因するのかを決定するのは極度に骨の折れる作業である。要するに、全世界の何十億ものテレビの背後にある迷路のような配線同様、ワイヤがどこから来てどこへ行くのかを追跡するのは増々困難となっており、人手によってもたらされるエラーの可能性は増々増大している。
【0017】
更に問題を悪化させる点として、現場配線活動は、I/Oサブシステム(複数も可)設計が完了する遥か以前に開始される必要のある場合が多いことである。その結果、設計段階で不確実な期間が生じ、(プロジェクト範囲の変更や制御論理の変更によってハードウェアの変更が発生し、その結果)入手可能な情報に変更の可能性が生じ、斯かる情報に基づいて推測が行われることになるからである。斯かる後期変更は、特にフィールドデバイスが新しいコントローラに再分散されなければならない場合には、高価なものとなる。斯かる変更が高価なのは、新しいI/Oカードへの通信リンクの再配線だけでなく、追加の機器を収容するのに必要な追加のキャビネット空間の所為でもある。
【0018】
要するに、後期設計変更を行うためI/Oネットワークの処理コントローラまたは他の要素を追加するのは、斯かる変更が設計図、現場配線、時にはシステムキャビネットの配置面積に影響を及ぼすので、コスト増大を招くことである。あらゆるプロジェクトが後期変更を余儀なくされている。斯かる変更は、制御戦略の変更、スキッド機器要求事項の後期変更、要求されている制御CPU能力の過小評価、フィールドデバイスの追加、デバイスタイプの変更(例えば、アナログトランスミッタによるリミットスイッチの取り換え)などによって生じ得る。
【0019】
I/O要求事項に関する共通の課題である斯かる後期プロジェクト変更は、プロジェクト実施全体に亘ってドミノ現象をもたらし得る。作図の手直し、制御システムの分割、ワイヤの移動、および新しいキャビネットの構築などである。設置されたフィールドデバイスの取り換えなどの単純な作業でさえ複雑になり得る。例えば、DO I/Oカードに接続されている設置済みのフィールドデバイスを、アナログ信号を通して制御コマンドを受信するように構成された新しいフィールドデバイスで置き換える場合、現場技師は、空のチャネルを有するAO I/Oカードを見つけるか、あるいは新しいAO I/Oカードを設置する必要がある。現場技師は、次に、フィールドデバイスとマーシャリングキャビネットとの間の配線、マーシャリングキャビネットの端子間の配線、およびマーシャリングキャビネットとI/Oカードとの間の配線を取り除く必要がある。最後に、現場技師は、マーシャリングキャビネットに新しいフィールドデバイスを配線し、必要ならばマーシャリングキャビネットに新しいI/Oカードを配線し、マーシャリングキャビネット内のクロスマーシャリングが、マーシャリングキャビネット内の適切な端子を正確に連結しているか否かを確認する必要がある。
【0020】
要するに、後期変更により、プロジェクトにかかる時間、コスト、およびリスクが増大する。これは、従来の専用I/Oアーキテクチャの非柔軟性と、フィールドデバイスが適切なI/OカードおよびI/Oカードチャネルに通信可能に連結されているか否かを確認する必要のあるクロスマーシャリングとによって問題が更にひどくなる。
【0021】
試運転段階に関する点であるが、処理プラントまたはシステムの試運転には、斯かるシステムまたはプラントが意図されたように作動する時点まで、斯かるプラントまたはシステムの種々の構成要素を導く工程が含まれる。処理要素が設置された後、斯かる処理要素の少なくともいくつかが試運転の対象となる。例えば、フィールドデバイス、サンプルポイント、および/または他の要素が試運転の対象となる。試運転工程は、通常複数の活動を含む複雑な工程である。例えば、試運転工程には、特に、設置された処理コントローラ(フィールドデバイスなど)の識別およびその所定の接続の確証または確認、処理制御システムまたはプラント内の処理コントローラをユニークに識別するタグの決定および提供、デバイスのパラメータ、制限などの初期値の設定または構成、例えばデバイスに提供される信号を操作したり他の試験を実行したりすることにより、種々の条件下でのデバイスの設置、動作、および行動の正確性の確証、および他の試運転活動が含まれる。試運転中のデバイスの確認は、安全面並びに規制および品質要求事項の遵守の面で重要である。
【0022】
他の試運転活動が、デバイス関係の処理制御ループにおいて実行される。一般的に、「処理制御ループ」には、1つ以上のフィールドデバイスと、制御スキームを実施する目的で相互通信するように構成されたコントローラとが含まれる。例えば、制御ループには、操作変数(例えば、弁が開状態の場合にパイプを通して冷水が流れる)を変更するように(例えば、タンクへの導入配管用の制御弁)を作動できるフィールドデバイスと、操作変数(例えば、タンクの水の温度)の変更によって影響を受ける1つ以上の制御変数を測定する1つ以上のフィールドデバイスと、操作変数の望ましい値に達するように作動中のフィールドデバイスを制御するコントローラとが含まれていてもよい。
【0023】
いずれにせよ、制御ループにおける試運転活動には、例えば、数例を挙げると、相互接続(例えば、マーシャリングキャビネット内に見られる相互接続)を通して送信される種々の信号が当該相互接続の両末端で予期行動を取っていることの確認、プラント内で実行されているデバイスが実際に物理的に接続されていることを示す施工完了時I/Oリストの生成、他の「設置完了時」データの記録などが含まれる。
【0024】
通常、処理プラントの試運転には、当該処理プラントの現場環境で設置、設定、および相互接続される物理的装置、接続、配線などが必要である。プラントの後置環境において、種々の装置、その構成、および相互接続を識別したり、および/またはそれに対応したりするデータが統合され、確認または試運転が行われ、保存される。従って、物理的ハードウェアが設置および構成された後、種々の装置が他の装置と通信できるように、識別情報、論理命令、他の命令および/またはデータが現場環境に配置された種々の装置へダウンロードされる、あるいは他の方法で提供される。
【0025】
勿論、後置環境で行われる試運転活動に加え、物理的装置および論理装置の現場環境における接続および作動の正確性を個別的および統合的に確認するための試運転活動も行われる。例えば、フィールドデバイスは、物理的に設置され、例えば、電源オン、電源オフなどが個別に確認される。次に、フィールドデバイスのポートが試運転ツールに物理的に接続され、それにより模擬信号がフィールドデバイスへ送信され、種々の模擬信号へ応答するフィールドデバイスの行動が試験される。同様に、通信ポートを試運転対象として持つフィールドデバイスが、最終的にマーシャリングキャビネットの端末ブロックに物理的に接続され、そして端末ブロックとフィールドデバイスとの間の実際の通信が試験されてもよい。試運転により、システム設計または現場配線におけるエラーが明らかになるかもしれない。斯かるエラーは、前述した高価な後期プロジェクト変更となり得る。
【0026】
通常、現場環境におけるフィールドデバイスおよび/または他の構成要素の試運転には、試験信号および応答がフィールドデバイスおよび他のループ構成要素間で相互に通信され、その結果的行動が確認できるように、構成要素の識別に関する知識、およびある場合には構成要素相互接続に関する知識が必要である。現在周知の試運転技術においては、斯かる識別および総合接続に関する知識またはデータは、一般的に、後置環境によって現場環境の構成要素へ提供される。例えば、後置環境は、実際のプラント作業中に制御モジュールによって制御されるスマートフィールドデバイスへ、制御モジュールで使用されるフィールドデバイスタグをダウンロードする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本明細書に開示されるのは、「ダム(愚鈍)」離散型フィールドデバイスおよび離散信号にスマートな機能性を追加するための技術、システム、機器、構成要素、デバイス、および方法である。上記技術、システム、機器、構成要素、デバイス、および方法は、工業用の処理制御システム、環境、および/またはプラント(これらは、本明細書において、「工業用制御」、「処理制御」、または「処理」システム、環境、および/またはプラントと同意語である)に適用されてもよい。通常、斯かるシステムおよびプラントは、物理的原料を製造、精製、または変形して製品を生成または製造するのに作動される1つ以上の処理(本明細書では、「工業用処理」とも呼ばれる)の制御を個別に提供するものである。
【0028】
上記技術、システム、機器、構成要素、デバイス、および方法により、1つ以上のフィールドデバイス用の一組の離散型I/Oチャネルがグループ分けされ、組織化され、フィールドモジュールデバイス(より一般的には、「フィールドモジュール」、「処理制御装置」、または「処理制御エンティティ」と呼ばれることもある)に接続できるが、その場合、該フィールドモジュールデバイスは、I/Oチャネルを通して、マーシャリングキャビネットの電子マーシャリング機器へ接続されてもよい。フィールドモジュールは中間機器として機能し、I/Oチャネルを経て受信されるメッセージを復号し、DOチャネル用のコマンドを識別するが、その後、該メッセージは適切なDOチャネルへ転送される。好都合なことに、コントローラは、電子マーシャリング機器に接続された単一のI/Oチャネルを経て複数のDO信号を参照できる。フィールドモジュールは、DIチャネルの信号により運ばれる変数値も受信し、その値をメッセージへ符号化し、該メッセージはマーシャリング機器およびコントローラへ送信されるので、DIチャネルの変数値をコントローラが利用可能となる。
【0029】
フィールドモジュールは、フィールドモジュールおよび任意の接続フィールドデバイスの試運転および設定に関連する情報、例えば、フィールドデバイスにとってユニークなタグ、および/またはDIおよびDOチャネルにとってユニークな信号タグなどを含むプロファイルを記憶していてもよい。プロファイルの情報は、電子マーシャリング機器によって(および、特に、マーシャリング機器に接続された信号特徴付け構成要素によって)オートセンシングが可能であり、従って、対応するDIまたはDO信号が存在するI/Oチャネルにプロファイル内の任意のタグを割り当てる/接続することができる。フィールドモジュールのタグをオートセンシングし、タグの接続を自動的に更新するための斯かるオートセンシング技術および接続技術により、I/Oネットワークは、容易かつ迅速に、再構成および配線が可能である。
【0030】
1つ以上のコントローラが、DIO制御要素、またはフィールドモジュールに対応する機能ブロックを自動的に設定するように構成されていてもよく、その場合、当該制御要素または機能ブロックは、フィールドモジュールに接続されたDO信号へ書き込んだり、および/またはフィールドモジュールに接続されたDI信号によって運ばれる値を読み込んだりするため、制御ルーチンによって利用されてもよい。斯かる自動設定手順中、DIO制御要素の入力は、フィールドモジュールに接続されたDO信号を示す信号タグに接続されるので、他のルーチンまたはブロックは、DIO制御要素入力に書き込むことにより、DO信号への書き込みが可能となる。同様に、DIO制御要素の出力は、DI信号を示す信号タグに接続されるので、他のルーチンまたはブロックは、DIO制御要素の出力を受信し、それを読み出すことにより、DI信号によって運ばれる値の読み出しが可能となる。
【0031】
本明細書には、フィールドモジュールのプロファイルを更新するのに利用される携帯装置も記載されている。一般的に、携帯装置は、フィールドモジュールとの間に1つ以上の近距離通信チャネルを確立し、その通信チャネルを用いて、フィールドモジュールのプロファイルへ新しい情報をダウンロードしてもよい。例示的な近距離通信チャネルには、RFIDチャネル、NFCチャネル、ブルートゥース(登録商標)チャネル、およびWiFiダイレクトチャネルなどが含まれる。携帯装置により、現場環境にいる人は、プラントの後置環境にあるワークステーションへ戻ることなく、現場近くにいる間に(例えば、現場配線を更新して、フィールドデバイスにチャネルを追加したり、チャネルを取り替えたり、あるいはそれを除去したりした後)、迅速かつ容易にフィールドモジュールを更新できる。従って、その人は、携帯装置を用いることにより、フィールドモジュールを目視し、更新されたプロファイルの情報が現場配線、フィールドデバイスの接続、または制御スキームの変更を正確に反映しているか否かを確認または再確認できる。
【0032】
上記要約は、以下に更に詳細に記載される概念の一部を紹介する目的で提供されたものである。詳細な記載で説明されるように、ある実施形態は上記要約では記載されていない特徴および利点を含んでいる場合もあり、ある実施形態は上記要約に記載されている1つ以上の特徴および/または利点を省いている場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A図1Aは、本明細書記載の1つ以上の離散型I/Oネットワークによって構成され、本明細書記載の1つ以上のスマート試運転技術を用いて試運転されるI/Oネットワークを含む、例示的処理プラントのブロック図である。
図1B図1Bは、図1Aに示されるコントローラで実施される制御ルーチンの1つの例を示す。
図2図2は、固定専用I/Oカードおよびダイレクトマーシャリングを含み、専用I/Oアーキテクチャを有する従来のI/Oネットワークを示すブロック図である。
図3図3は、図1Aに示されるI/Oネットワークの1つを示すブロック図であり、該ネットワークは、本明細書記載の技術を用いて容易に設計、配線、再設計、および試運転可能である。
図4A図4Aは、テンプレートから作成される未設定DIO制御要素を示すものであり、該テンプレートは、DIO制御要素の例(例えば、図3に示されるDIO要素)を作成するのに利用されるものである。
図4B図4Bは、離散型制御(DC)機能ブロックを含む制御ルーチンを示すものであり、該機能ブロックは、1つ以上の他のブロック(例えば、図4Aに示されるDIO要素)へリンクされ、リンクされたブロック(複数も可)から離散型入力信号(複数も可)を受信し、DC機能ブロックによって実行される論理に基づき、リンクされたブロック(複数も可)へ離散型出力信号を提供するものである。
図5図5は、図3に示される電子マーシャリング構成要素を支持する、例示的電子マーシャリングブロックまたは機器のプロファイルビューを示す。
図6図6は、フィールドモジュール(例えば、図3に示されるフィールドモジュール)をスマートに試運転する例示的方法のフローチャートである。
図7図7は、フィールドモジュール並びにフィールドデバイス用の1つ以上の離散型入力または出力に関連付けられた制御要素(例えば、図3に示されるような制御要素)を自動的に設定する例示的方法のフローチャートである。
図8A図8Aは、フィールドモジュール(例えば、図3に示されるようなフィールドモジュール)のプロファイルを更新するのに使用される例示的携帯装置のブロック図である。
図8B図8Bは、図8Aに示されるような携帯装置を用いてプロファイルを更新する、例示的方法のフローチャートである。
図9A図9Aは、図3に示されるフィールドモジュールおよびDIO CHARMを接続するチャネルによって運ばれ、第一プロトコルに従って符号化、復号、送信、または受信される、例示的データまたは通信信号を示す。
図9B図9Bは、図3に示されるフィールドモジュールおよびDIO CHARMを接続するチャネルによって運ばれ、図9Aに示される第一プロトコルよりも多くの利点を提供する第二プロトコルに従って符号化、復号、送信、または受信される、例示的データまたは通信信号を示す。
図10A図10Aは、DIO CHARMおよび.または図3に示されるフィールドモジュールによって実行され、図9Bに示されるプロトコルに従うメッセージを符号する例示的方法のフローチャートである。
図10B図10Bは、DIO CHARMおよび.または図3に示されるフィールドモジュールによって実行され、図10Aに示されるプロトコルに従うメッセージを復号化する例示的方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
上述のように、オンラインにおいてリアルタイムで1つ以上の工業処理を制御するように作動する処理プラント、処理制御システム、または処理制御環境は、本明細書記載の新規なスマート試運転技術、システム、機器、構成要素、装置、および/または方法の1つ以上を用いて試運転を行ってもよい。処理プラントには、オンラインで試運転および操作が行われる場合、処理工場内で行われる1つ以上の工程を管理する目的で、処理制御システムと協力して物理的機能を実行する、1つ以上の有線または無線処理制御装置、構成要素、または要素が含まれる。処理プラントおよび/または処理制御システムには、例えば、1つ以上の有線通信ネットワークおよび/または無線通信ネットワークが含まれる。加えて、処理プラントまたは制御システムには、中央集中型のデータベース、例えば、連続タイプ、バッチタイプ、資産運用管理タイプ、ヒストリアンタイプ、および他のタイプのデータベースが含まれてもよい。
【0035】
本明細書は以下のようなセクション、すなわち(I)離散型処理要素用の改善されたI/Oネットワークが用いられる例示的プラント環境、(II)固定、専用I/Oカード、および直接マーシャリングを含む専用I/Oアーキテクチャを用いた従来のI/Oネットワーク、(III)離散型処理要素用の改善されたI/Oネットワーク、(IV)離散型処理要素用のスマート試運転技術、(V)改善された離散型I/O通信プロトコル、(VI)他の考察、に分けて記載される。
【0036】
(I.例示的プラント環境5)
図1Aは、例示的処理プラント、処理制御システム、または処理制御環境5のブロック図であり、本明細書記載の1つ以上の離散型I/O信号管理技術に従って構成された入力/出力(I/O)ネットワーク7もそれに含まれる。処理制御産業においては、「I/O」と言う用語は、関連しているが異なるいくつかの文脈で使用される場合がある。この用語は、一般的に、フィールドデバイスをI/Oカードまたはコントローラに通信可能に連結する論理リンクまたは通信チャネル(例えば、「I/O」チャネル)を意味するが、数多くの他の概念、例えば、I/Oチャネルへ信号を送信したり、そこから信号を受信したりする装置(例えば、「I/O装置」または「I/Oカード」)、I/O装置に関連付けられたコネクタまたは端末(例えば、「I/Oコネクタ」)、I/Oチャネル上で送信される信号(例えば、「I/O信号」、信号によって示される変数またはコマンド(例えば、「I/O」パラメータ)、信号によって伝達される変数またはコマンドの値(例えば、「I/Oパラメータ値」)などを意味する場合に使用されもてよい。本明細書で「I/O」と言う用語が限定子なしに使用される場合、斯かる概念のいずれが考察されているかは、文脈から明白となるはずである。更に、「I/Oチャネル」は特定タイプの「通信チャネル」または「チャネル」を示しており、この点も理解されるべきである。すなわち、文脈によって別の意味が示されていない限り、限定子「I/O」無しに「チャネル」または「通信チャネル」と言う用語が使用される場合、ある実施例では通信リンクはI/Oチャネルであってもよいし、またいくつかの実施例ではI/Oチャネル以外の通信リンクであってもよい。
【0037】
処理プラント5は処理を管理するものであり、処理の状態を特徴付ける1つ以上の「処理出力」(例えば、タンクレベル、流速、材料温度など)および1つ以上の「処理入力」(例えば、操作することにより処理出力に変化をもたらす種々の環境条件およびアクチュエータの状態)を有している。図1Aの処理プラントまたは制御システム5は、現場環境122(例えば、「処理プラントフロア122」)および後置環境125を含んでおり、それらは処理制御バックボーンまたはデータハイウェイ10(1つ以上の有線および/または無線通信リンクを含み、任意の望ましいまたは適切な通信プロトコル、例えばイーサネット(登録商標)プロトコルを用いて実施されてよい)によって通信可能に相互に接続されている。
【0038】
図1Aに示されるような)高レベルにおいて、現場環境122は、実行時に処理を行うように配置、設置、相互接続されている物理的構成要素(例えば、処理制御装置、ネットワーク、ネットワーク要素など)を含んでいる。例えば、現場環境はI/Oネットワーク6およびI/Oネットワーク7を含む。斯かる各I/Oネットワークの構成要素は、大体、処理プラント5の現場環境122に配置または設置されている、あるいは何らかの形でそこに含まれている。一般的に、処理プラント5の現場環境122において、原料が受け取られ、現場に配置された物理的構成要素を用いてそれが処理され、1つ以上の製品が製造される。
【0039】
対照的に、処理プラント5の後置環境125には、現場環境122の厳しい条件および材料から遮蔽および/または保護された種々の構成要素、例えば、コンピュータ装置、オペレータワークステーション、データベース、データバンクなどが含まれる。いくつかの構成において、種々のコンピュータ装置、データベース、および処理プラント5の後置環境125に含まれる他の構成要素および装置は、物理的に異なる場所に配置されていてもよい、すなわち、いくつかは処理プラント5に配置され、他のいくつかは離れた場所に配置されていてもよい。
【0040】
(A.プラント5の現場環境122)
上記のように、現場環境122はI/Oネットワーク6および7(各々プラントネットワーク10に連結されている)を含んでいる。各I/Oネットワーク6および7は、1つ以上のコントローラ、1つ以上のコントローラに通信可能に接続されたフィールドデバイス、およびコントローラとフィールドデバイスとの間の通信を簡便化するための中間ノード(例えば、I/Oカード)を含んでいる。
【0041】
処理プラント5の各処理コントローラは、コントローラのメモリに記憶させてもよい1つ以上の制御ルーチンによって規定される制御戦略を実施する。コントローラのプロセッサが1つ以上の制御ルーチンを実行する場合、コントローラは、プラント5の処理を制御するため、有線または無線処理制御通信リンクまたは他のフィールドデバイスへのネットワークを通して、制御信号(すなわち、「制御出力」)をフィールドデバイスへ送信する。コントローラは、(i)1つ以上の受信信号(「制御入力」と呼ばれてもよい)(例えば、フィールドデバイスによって得られた測定値を示す1つ以上の受信信号)、および(ii)1つ以上の制御ルーチンの論理(1つ以上のソフトウェア要素(例えば、機能ブロック)によって規定される論理)に基づいて制御信号を生成してもよい。一般的に、コントローラは、フィードバック(すなわち、制御変数の測定値)および処理出力用の望ましい値(すなわち、セットポイント)に基づいて、処理入力(「操作変数」と呼ばれてもよい)を操作し、特定の処理出力(「制御変数」または単に「処理変数」と呼ばれてもよい)を変更する。
【0042】
処理プラント5で実施される処理を制御するため、少なくとも1つのフィールドデバイスが物理的機能(例えば、弁の開閉、温度の上げ下げ、測定、状態の感知など)を実行する。あるタイプのフィールドデバイスは、I/Oデバイス(例えば、「I/Oカード」)を用いてコントローラと通信する。処理コントローラ、フィールドデバイス、およびI/Oカードは有線であっても無線であってもよいし、処理プラント環境またはシステム5には、任意の数および組み合わせの有線および無線処理コントローラ、フィールドデバイス、およびI/Oデバイスが含まれてよい。
【0043】
例えば、図1Aは、入力/出力(I/O)カード26および28を通して有線フィールドデバイス15~22に通信可能に接続され、無線ゲートウェイ35およびデータハイウェイ10を通してフィールドデバイス40~46に通信可能に接続された処理コントローラ11を示す。いくつかの構成では(図示しない)、コントローラ11は、バックボーン10以外の1つ以上の通信ネットワーク、例えば、1つ以上の通信プロトコルを支援する 任意数の他の有線または無線通信リンク、例えば、WIFiや他のIEEE802.11対応無線ローカルエリアネットワークプロトコル、移動通信プロトコル(WiMAX、LTE、他のITU-R対応プロトコル)、Bluetooth(登録商標)、HART(登録商標)、WirelessHART(登録商標)、Profibus、FOUNDATION(登録商標)Fieldbusなどを用いて、無線ゲートウェイ35に通信可能に接続されてもよい。
【0044】
コントローラ11は、例えば、Emerson Process Managenetが販売するDeltaV(登録商標)コントローラでもよいが、フィールドデバイス15~22および40~46のうち少なくともいくつかを用いて、バッチ処理または連続処理を行うように操作されてもよい。1つの実施形態では、コントローラ11は、処理制御データハイウェイ10に通信可能に接続されているだけでなく、例えば、標準4~20mAデバイス、I/Oカード26、28、および/または任意のスマート通信プロトコル(例えば、FOUNDATION(登録商標)Fieldbusプロトコル、HART(登録商標)プロトコル、WirelessHART(登録商標)プロトコルなど)を用いて、フィールドデバイス15~22および40~46の少なくともいくつかにも通信可能に接続されている。図1Aにおいて、コントローラ11、フィールドデバイス15~22、I/Oカード26、28は有線装置であり、フィールドデバイス40~46は無線フィールドデバイスである。勿論、有線シールドデバイス15~22および無線フィールドデバイス40~46も、任意の他の望ましい基準(複数も可)、例えば、任意の有線または無線プロトコル(将来開発される任意の基準またはプロトコルを含む)などにも対応し得るであろう。
【0045】
図1Aの処理コントローラ11は、1つ以上の処理制御ルーチン38(例えば、メモリ32に記憶されているルーチン)を実施または監督するプロセッサ30を含む。プロセッサ30は、フィールドデバイス15~22および40~46、およびコントローラ11に通信可能に接続されている他のノードと通信するように構成されている。本明細書記載の制御ルーチンまたはモジュールはいずれも、望ましい場合には、異なるコントローラまたは他の装置で実施または実行される部分を有していてもよい。同様に、処理制御システム内で実施される本明細書記載の制御ルーチンまたはモジュール38は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアなどを含む任意の形態を有していてもよい。制御ルーチンは、オブジェクト指向プログラミング、ラダーロジック、シーケンシャルファンクションチャート、機能ブロックダイアグラム、または任意の他のソフトウェアプログラミング言語または設計パラダイムを用いて、任意の望ましいソフトウェアフォーマットで実施されてもよい。制御ルーチン38は任意の望ましいタイプのメモリ32、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、または読み取り専用メモリ(ROM)に記憶させてもよい。同様に、制御ルーチン38は、例えば、1つ以上のEPROM、EEPROM、アプリケーション特有集積回路(ASIC)、または任意の他のハードウェアまたはファームウェア要素にハードコードされてもよい。従って、コントローラ11は、任意の望ましい方法で、制御戦略または制御ルーチンを実施するように構成されてもよい。
【0046】
コントローラ11は、一般的に機能ブロックと呼ばれるものを用いて制御戦略を実施する。各機能ブロックは全体的な制御ルーチンのオブジェクトまたは他の部分(例えば、サブルーチン)であり、処理制御システム5内の処理制御ループを実施するため、(リンクと呼ばれる通信手段を通して)他の機能ブロックと一緒に作動する。制御ベースの機能ブロックは、通常、(i)入力機能、例えば、トランスミッタ、センサ、または他の処理パラメータ測定装置に関連した入力機能(「入力ブロック」とも呼ばれる)、(ii)制御機能、PID、ファジー論理などを実行する制御ルーチンに関連する制御機能(「制御ブロック」とも呼ばれる)、および(iii)処理制御システム5内のいくつかの物理的機能を実行するため、弁などのデバイスの操作を制御する出力機能(「出力ブロック」とも呼ばれる)のうちの1つを実行する。勿論、ハイブリッドおよび他のタイプの機能ブロックも存在する。
【0047】
機能ブロックはコントローラ11内に記憶させ、そこで実行してもよいが、これは斯かる機能ブロックが、標準の4~20mA装置およびHART(登録商標)装置などの特定のタイプのスマートフィールドデバイスで使用される、またはそれに関連付けられている場合の例であり、あるいはフィールドデバイス自体に記憶させ、そこで実行してもよいが、これはFOUNDATION(登録商標)Fieldbus装置の例である。1つ以上の制御ルーチン38が、1つ以上の機能ブロックを操作することにより実行される1つ以上の制御ループを実施してもよい。
【0048】
有線フィールドデバイス15~22は、任意のタイプのデバイス、例えば、センサ、弁、トランスミッタ、ポジショナなどであってもよく、I/Oカード26、28は、任意の望ましい通信プロトコルまたはコントローラプロトコルに対応する任意のタイプの処理制御I/Oデバイスであってもよい。図1Aにおいては、フィールドデバイス15~18は、アナログラインまたはアナログ/デジタル複合ラインを通してI/Oカード26と通信する標準4~20mAデバイスまたはHART(登録商標)デバイスであり、フィールドデバイス19~22は、FOUNDATION(登録商標)Fieldbus通信プロトコルを用いてデジタルバスを通してI/Oカード28と通信するFOUNDATION(登録商標)Fieldbusフィールドデバイスなどのスマートデバイスである。しかし、いくつかの実施形態では、それに加えてあるいはその替わりに、有線フィールドデバイス15、16および18~21、および/またはI/Oカード26、28の少なくともいくつかが、処理制御データハイウェイ10を用いて、および/または他の適切な制御システムプロトコル(例えば、Profibus、DeviceNet、Foundation Fieldbus、ControlNet、Modbus、HARTなど)を用いて、コントローラ11と通信する。
【0049】
図1Aにおいて、無線フィールドデバイス40~46は、WirelessHART(登録商標)プロトコルなどの無線プロトコルを使用し、無線処理制御通信ネットワーク70を通して通信する。斯かる無線フィールドデバイス40~46は、無線ネットワーク70(これも、例えばその無線プロトコルまたは別の無線プロトコルを用いて、無線通信するように構成されている)の1つ以上の他の装置またはノードと直接通信してもよい。無線フィールドデバイス40~46は、無線通信するようには構成されていない1つ以上の他のノードと通信するため、処理制御データハイウェイ10または他の処理制御通信ネットワークに接続されている無線ゲートウェイ35を利用してもよい。無線ゲートウィ35は、無線通信ネットワーク70の種々の無線装置40~58へアクセスを提供する。特に、無線ゲートウィ35は、無線装置40~58と、有線装置11~28と、および/または処理制御プラント5の他のノードまたは装置との間で通信可能な連結を提供する。例えば、無線ゲートウェイ35は、処理制御データハイウェイ10を用いて、および/または処理プラント5の1つ以上の他の通信ネットワークを用いて、通信可能な連結を提供してもよい。
【0050】
無線ネットワーク70の無線フィールドデバイス40~46は、有線フィールドデバイス15~22同様、処理プラント内の物理的制御機能、例えば、弁の開閉、処理パラメータの測定などを実行する。しかし、無線フィールドデバイス40~46は、ネットワーク70の無線プロトコルを用いて通信するように構成されている。従って、無線フィールドデバイス40~46、無線ゲートウェイ35、および無線ネットワーク70の他の無線ノード52~58は、無線通信パケットの製造者兼消費者である。
【0051】
処理プラント5のいくつかの構成において、無線ネットワーク70は非無線装置を含んでいる。例えば、図1Aにおいて、図1Aのフィールドデバイス48は、レガシー4~20mAデバイスであり、フィールドデバイス50は有線HART(登録商標)装置である。ネットワーク70内で通信するため、フィールドデバイス48および50は、無線アダプタ52a、52bを通して無線通信ネットワーク70に接続されている。無線アダプタ52a、52bは、WirelessHART(登録商標)などの無線プロトコルを支援し、Foundation(登録商標)Fieldbus、PROFIBUS、DeviceNetなどの1つ以上の他の通信プロトコルも支援する。加えて、いくつかの構成においては、無線ネットワーク70は1つ以上のネットワークアクセスポイント55a、55bを含んでおり、斯かるアクセスポイントは、無線ゲートウェイ35と有線通信する個別の物理的装置であってもよいし、一体化装置として無線ゲートウェイ35に提供されていてもよい。無線ネットワーク70は、無線通信ネットワーク70内で1つの無線装置から別の無線装置へパケットを転送するのに、1つ以上のルータ58を含んでいてもよい。図1Aにおいて、無線装置40~46および52~58は相互に通信し合うし、無線通信ネットワーク70の無線リンク60および/または処理制御データハイウェイ10を通して、無線ゲートウェイ35とも通信する。
【0052】
(プラント5の後置環境125)
上記のように、後置環境125には、現場環境122の厳しい条件および材料から遮蔽および/または保護された種々の構成要素、例えば、コンピュータ装置、オペレータワークステーション、データベース、データバンクなどが含まれる。後置環境125は、以下の任意の1つ以上が含まれていてもよく、その各々はデータハイウェイ10に通信可能に接続されていてもよい。それらは、すなわち(i)1つ以上のオペレータワークステーション71、(ii)設定アプリケーション72aおよび設定データベース72b、(iii)データヒストリアンアプリケーション73aおよびデータヒストリアンデータベース73b、(iv)他の無線プロトコルを用いて他の装置と通信する1つ以上の無線アクセスポイント74、(v)処理制御システム5の外部にあるシステムへの1つ以上のゲートウェイ76、78である。
【0053】
(1.オペレータワークステーション71)
オペレータワークステーション71は、処理プラント5の実行時操作を監視するのにオペレータが使用してもよいし、診断、修正、保守点検、および/または必要な他の操作を行うのに使用されてもよい。オペレータワークステーション71の少なくとも一部は、プラント5内またはその近くの種々の保護された場所に配置されてもよく、いくつかの状況では、オペレータワークステーション71の少なくとも一部は離れた場所ではあるが、それでもプラント5とは通信可能に接続されている場所に配置されてもよい。オペレータワークステーション71は有線コンピュータ装置であってもよいし、無線コンピュータ装置であってもよい。
【0054】
(2.データヒストリアンおよびデータベース73b)
データヒストリアン73aはデータハイウェイ10全体に提供されるデータの一部または全てを集め、そのデータの履歴を取得したり、ヒストリアンデータベース73bに長期間保存したりするのに利用される。データヒストリアン73aおよびヒストリアンデータベース73bは、設置アプリケーション72aおよび設置アプリケーション72b同様、中央集中型で処理制御システム5において単一の論理的外観を有していてもよいが、複数のデータヒストリアンアプリケーション73aが処理制御システム5内で同時に行われてもよいし、データヒストリアン73bが複数の物理的データ記憶装置全体で実行されてもよい。
【0055】
(3.無線アクセスポイント74)
1つ以上の他の無線アクセスポイント74により、後置環境125(現場環境122の場合もある)の装置が、無線プロトコル、例えば、WiFiや他のIEEE802.11対応無線ローカルエリアネットワークプロトコル、移動通信プロトコル、例えば、WiMAX(ワイマックス、Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)、または他のITU-R(International Telecommunication Union Radio Communication Sector)対応プロトコル、短波長無線通信、例えば、近距離通信(NFC)およびブルートゥース(登録商標)、または他の無線通信プロトコルを用いて、他の装置と通信できるようになる。一般的に、斯かる無線アクセスポイント74により、ハンドヘルド式コンピュータ装置または他の携帯コンピュータ装置(例えば、ユーザインターフェース装置75)は、無線ネットワーク70ではなく、無線ネットワーク70とは異なる無線プロトコルを支援する各無線処理制御通信ネットワークを通して、通信できるようになる。例えば、無線または携帯ユーザインターフェース装置75は移動ワークステーションであってもよいし、あるいは処理プラント5内でオペレータが使用する診断試験機器(例えば、1つのオペレータワークステーション71の場合)であってもよい。いくつかのシナリオにおいては、形態コンピュータ装置に加えて、1つ以上の処理制御装置(例えば、コントローラ11、フィールドデバイス15~22、または無線装置35、40~58)も、アクセスポイント74が支援する無線プロトコルを用いて通信する。
【0056】
(4.ゲートウェイ76および78)
ゲートウェイ76および78は、処理制御システム5の外部にあるシステムとインターフェース接続されてもよい。一般的に、斯かるシステムは、処理制御システム5で生成または操作される情報の消費者または供給者である。例えば、処理制御プラント5は、当該処理プラント5を別の処理プラントに通信可能に接続するのに、ゲートウェイノード76を含んでいてもよい。加えてまたはそれに代わって、処理制御プラント5は、当該処理プラント5を外部の公共システムまたは私的システム、例えば、実験室システム(例えばLIMS(Laboratory Information Management System))、オペレータラウンドデータベース、マテリアルハンドリングシステム、保守管理システム、製品在庫管理システム、製造計画システム、天候データシステム、商品出荷システム、包装システム、インターネット、別のプロバイダの処理制御システム、または他の外部システムに通信可能に接続するのに、ゲートウェイノード78を含んでいてもよい。
【0057】
図1Aは、例示的処理プラント5に含まれる限定数のフィールドデバイス15~22および40~46、無線ゲートウェイ35、無線アダプタ52、アクセスポイント55、ルータ58、および無線処理制御通信ネットワーク70を有する単一のコントローラ11を示しているが、これは例示的および非制限的な実施形態に過ぎない。処理制御プラントまたはシステム5に含まれるコントローラ11の数は任意でよいし、プラント5の処理を制御するのに、コントローラ11はいずれも任意数の有線または無線装置およびネットワーク15~22、40~46、35、52、55、58、および70と通信できる。
【0058】
(設定アプリケーション72aおよびデータベース72b)
図1Aの残りである設定アプリケーション72aおよび設定データベース72bは、プラント5の特定の側面を設定するのに利用されてよい。設定アプリケーション72aは、種々の場合に1つ以上のコンピュータ装置(図示しない)で実行され、ユーザが処理制御モジュールを作成したり、変更したり、データハイウェイ10を通して斯かるモジュールをコントローラ11にダウンロードしたりするのを可能にするし、オペレータインターフェース(オペレータは、これを通して、処理制御ルーチン内のデータを閲覧したり、データ設定を変更したりできる)を作成したり、変更したりするのも可能にする。設定データベース72bは、作成された(例えば、設定された)モジュールおよび/またはオペレータインターフェースを記憶する。一般的に、設定アプリケーション72aおよび設定データベース72bは、中央集中型で処理制御システム5において単一の論理的外観を有していてもよいが、複数の設定アプリケーション72aが処理制御システム5内で同時に実行されてもよいし、設定データベース72bが複数の物理的データ記憶装置全体で実行されてもよい。従って、設定アプリケーション72a、データベース72b、およびそのユーザインターフェース(図示しない)は、制御および/または表示モジュール用に設定または開発システム72を構成する。一般的に(必ずしもそうとは限らないが)、設定システム72は、プラント5がリアルタイム(本明細書では、処理プラント5の「実行時」と同意語として使用される)で作動しているか否かに拘わらず、設定/開発技師によって利用されるが、オペレータワークステーション71は、処理プラント5のリアルタイム操作中に利用されるので、設定システム72はオペレータワークステーション71とは異なっている。
【0059】
試運転に関しては、設定アプリケーション72bは、処理プラントフロアまたは現場環境122で実行が計画されている、または実行されるのが望ましい種々の装置または構成要素および相互接続を具体的に識別したり、および/またはそれに対処したりするためのデータおよび他の情報を記憶していてもよい。斯かる試運転データのいくつかは、装置およびその中のループの試運転に使用される目的で現場環境122の構成要素に提供されてもよいし、斯かるデータのいくつかは、例えば、処理プラント5の実際の作動中に現場環境122と一緒に操作される制御モジュールおよび/またはオペレータインターフェースモジュールの設計、開発、準備のために後置環境125で利用されてもよい。一例として、承認された制御モジュールが処理コントローラにダウンロードされてもよく、その場合、それが実際の操作中に実行された場合、処理コントローラは、常駐の制御モジュールに従ってループ内にある他の構成要素間で種々の信号を送受信(ある場合には、他の処理コントローラとの間で送受信)することにより、処理プラント5内の処理の少なくとも一部を制御できるようになる。
【0060】
設置データベース72bは、現場環境122にある構成要素の複数の論理識別子を記憶してもよく、その場合、コントローラ11および他の装置は、論理識別子を用いて該構成要素および該構成要素に関連付けられた信号を参照できるようになる。例えば、特定のフィールドデバイスにおいて、設定データベース72bは、特定のハードウェアアドレスまたはI/Oチャネルに論理識別子をマッピングまたは関連付ける情報を記憶してもよい。ハードウェアアドレスは、特定のコントローラ、特定のコントローラに接続された特定のI/Oカード、および/または特定のI/Oカードをフィールドデバイスに接続するI/Oチャネル用の特定のアドレスを識別してもよい。いくつかの例では、斯かるマッピングまたは接続は、コントローラ11、ユーザインターフェース装置75、オペレータワークステーション71、または任意の他の望ましい装置(例えば、論理識別子を知るのに必要な任意の装置)に記憶させてもよい。論理識別子がハードウェアアドレスまたはI/Oチャネルに関連付けられたら、当該識別子は「割り当てられた」と見なされる。いくつかの例では、システム5は、ソフトウェア要素(例えば、制御ルーチンおよび/または機能ブロック)は参照するがバインディング(接続)を持たない「非割り当て」論理識別子を含んでいてもよい。すなわち、システム5および設定データベース72bがタグにバインディングされたハードウェアアドレスやI/Oチャネルを持たない場合、論理識別子は「非割り当て」と見なされる。従って、制御ルーチンにより非割り当て論理識別子が参照された場合、プラント5の信号が伝達する値は何も読み取られないし、信号を通してプラント5内のフィールドデバイスに送信されるコマンドは何もないことになる。
【0061】
斯かる論理識別子の例としては、デバイスタグ(DT)(各々が特定の器具、コントローラ、弁、または他の物理的フィールドデバイスを示す)およびデバイスシグナルタグ(DST)(特定の装置によって受信または生成され、通常フィールドデバイスによって利用される、特定のパラメータに対応する特定の信号を各々が示す)が挙げられる。いくつかの装置では、デバイスシグナルタグは、装置のデバイスタグと当該装置が受信または生成する特定の信号の識別子の組み合わせから成る。いくつかの装置(通常、レガシー装置またはダム装置)では、デバイスタグは、物理的装置および該装置が生成する信号の両方を表す。一般的に、装置の論理識別子は、該装置をユニークに識別するため、現場環境122および後置環境125の両方の処理プラント5によって使用される。DTおよびDSTは、「システムタグ」または「システム識別子」と呼ばれてもよい。
【0062】
いくつかの例では、スマートフィールドデバイス19~22も、スマートフィールドデバイス22にとってユニークな論理識別子を記憶してもよい。斯かる論理識別子は、フィールドデバイス19~22を識別するのにプラント5によって利用されるシステムタグとは異なっていてもよく、「ソース識別子」または「ソースタグ」と呼ばれてもよい。ソースタグは、実施次第で、設定データベース72bに記憶させてもよいし、記憶させなくてもよい。
【0063】
(C.例示的制御ルーチン101)
図1Bは制御ルーチン101を示しており、これは、図1Aに示されるコントローラ11によって実施される制御ルーチンの1つの例である。制御ルーチン101には4つのブロック、すなわち、アナログ入力(AI)ブロック102、AIブロック104、制御ブロック106、およびAOブロック108が含まれる。
【0064】
ルーチン101は、任意の適切なコンピュータ装置(例えば、固定型ワークステーションまたはデスクトップ、ラップトップ、タブレットなど)で実行される任意の適切な構成および設計システムを用いて設計および作成される。設計者は、各ブロックを、ライブラリからアプリケーション72aによって表示されるキャンバス領域(図示しない)にドラッグアンドドロップすることによりルーチン101を作成する。次に設計者は、各ブロックをインスタンス化および設定し、制御ルーチン101を規定するためにブロック間にリンクを作成する。
【0065】
制御ルーチン101は一組のアナログ入力に基づいてアナログ出力を提供するが、プラント5のコントローラ11または他のコントローラによって実施される制御ルーチンは、任意の適切な数のアナログまたはデジタル入力に基づいて、任意の適切な数のアナログまたはデジタル出力を提供できることは理解されるであろう。プラント5で使用される制御機能ブロックおよび制御ルーチンへの入力は、(例えば、アナログ入力ブロックまたは離散型入力ブロックを通して)フィールドデバイスから受信するパラメータ値、または他の制御機能ブロックまたは他の制御ルーチンから受信するパラメータ値であってよい。同様に、プラント5でコントローラによって実施される制御機能ブロックおよび制御ルーチンによって提供される出力は、他の制御ルーチンまたはブロック(例えば、フィールドデバイスへパラメータまたはコマンドを提供する離散型またはアナログの出力ブロック、制御機能ブロック、例えば、PIDブロックまたは離散型の制御ブロックなど)への入力として提供されるパラメータ値またはコマンドであってもよい。制御ルーチン101はPID機能ブロック106を有しているが、プラント5で実施される制御ルーチンは他のタイプの制御機能ブロックも利用できることは理解されるであろう。例えば、図4Bは、コントローラによって実施される制御ルーチンで用いられる例示的離散型制御(DC)機能ブロックを示している。
【0066】
いずれにせよ、設計者は、図1Aに示される設定アプリケーション72aを用いて、本明細書記載のコントローラによって実施されるルーチン101および他の制御ルーチンを設計してもよい。特に、設計者は、ルーチンに含めたいと思うブロックの視覚表現を「キャンバス領域」に加え、その視覚表現に影響を及ぼし(例えば、視覚表現をクリックして、斯かる設定を可能にするドロップダウンメニュを起動し)、ブロックの入力および出力間の接続を確立することによりブロック間の情報の流れを画定してより広範な制御ルーチンの論理設計を簡便化することにより、ルーチンを設計してもよい。例えば、特に制御ルーチン101を参照すると、設計者は一般的なPIDブロックテンプレート(図示しない)をキャンバス領域にドラッグして図1Bに示されるPID機能ブロック106をインスタンス化してもよい。高レベルにおいて、PIDブロックは、操作変数(MV)(例えば、温水の吸い込み管路における制御弁の位置)を操作することにより、処理変数(PV)または制御変数(CV)(例えば、タンクの流体の温度レベル)を望ましいレベルまたは設定点(SP)へ駆動する論理を含む。一般的なPIDブロックテンプレートは、(i)設定点112と測定処理変数114との間のエラー114を計算し、(ii)比例項118、積分項120、および/または微分項122をエラー116に適用し、出力値126を求めるように構成されている。一般的に、出力値126はPV114を設定点へ近づけるのに必要なMVへの追加変更を示す。一例として、PIDブロックは、SP112の行き過ぎを避けるために時間をかけて徐々に弁を開き、測定されたPV114のフィードバックに依存して、弁を開くコマンドを更に漸増させる(またはPV114がSP112に近づくとそれを漸減させる)。エラー114がゼロの場合に出力126はゼロであり、望ましいSP112を達成するのにそれ以上の変更が必要でないことをそれは示している。
【0067】
設計者は、機能ブロック106をインスタンス化すると、機能ブロック106の動作に影響を及ぼすようにパラメータ118~122を設定してもよい。例えば、設計者は項118~122の1つ以上を変更し、より急速にSPに達するようにブロック106を変更してもよい(SP112の行き過ぎおよび振動発生の危険性が高まる)し、あるいは当該項の1つ以上を変更して制御変数がより控えめな速度でSP112に達するようにしてもよい(行き過ぎおよび/または振動発生の可能性が低下する)。
【0068】
入力ブロック102および104は、テンプレートAIブロックをキャンバス領域にドラッグアンドドロップし、各々をタグへ接続することによりインスタンス化されてもよい。例えば、設計者は、PIDブロック106用の測定PV114として望ましいと考える、PV(例えば、温度)測定用のフィールドデバイスにとってユニークなシステムタグ(例えば、TI-093)へ、AIブロック104を接続してもよい。次にユーザは、AIブロック104と機能ブロック106のPV114との間をリンクし、AIブロック104をPV114にフィードする。システムタグが同様にAIブロック102に接続されてもよい。いくつかの例では、設計者は、ユーザによって変更可能な(例えば、設定点の調整)変数を示すタグを使用してもよい。いくつかの例では、設計者は、SP112用の入力としてAIブロック102を使用する代わりに、第二機能ブロックの出力を利用してカスケード制御を実施してもよい。
【0069】
最後に、出力ブロック108は、テンプレートAOブロックをキャンバス領域にドラッグアンドドロップし、それをタグ(例えば、上記制御弁にとってユニークなタグ)へ接続することによりインスタンス化されてもよい。次に設計者は、PIDブロック106がAOブロック108へフィードされるように、出力126をブロック108へリンクしてもよい。
【0070】
制御システム5は、出力を導くように設定された特定のルーチンまたは論理を使用するように構成された数多くの他のブロックテンプレート、並びにテンプレートから作成される1つ以上の入力ブロック、制御ブロック、および/または出力ブロックをリンクすることにより開発される他の制御ルーチンを有していてもよい。
【0071】
(II.例示的な従来のI/Oネットワーク200および直接マーシャリング)
図2は、固定された専用のI/Oカードおよび直接マーシャリングを含む専用I/Oアーキテクチャを有する従来のI/Oネットワーク200を示すブロック図である。高レベルにおいて、直接マーシャリングは、各フィールドデバイスI/Oをマーシャリングキャビネットにある特定の端末ブロックへ配線することと、各I/OカードチャネルをマーシャリングキャビネットにあるそのI/Oカード専用のフィールド端末アレイの端末ブロックへ配線することと、端末ブロックおよびマーシャリングキャビネットにあるFTAをクロスマーシャリングすることによりフィールドデバイスI/OをI/Oカードへ連結することとに関係している。
【0072】
I/Oネットワーク200には、処理コントローラ158A、冗長バックアップコントローラ158B(総称的に「コントローラ158」)およびI/Oカード156A~F(マーシャリングキャビネット150を通して1組のフィールドデバイス152A~Kに通信可能に接続されている)、1組のフィールド接続箱(FJB)154A~D、およびいくつかの有線リンク181A、181B、および183が含まれる。
【0073】
処理コントローラ158は、I/Oネットワーク200により、1つ以上のフィールドデバイス152を通して処理または処理の一部を制御可能となる。残念ながら、I/Oネットワーク200の設計は柔軟性に乏しく、現場配線完了後の変更が難しく、従って、労働、時間、および材料面でプロジェクト変更が高価となる。
【0074】
I/Oネットワーク200の設計段階中にP&IDが設計され、制御要素の初期見解、およびネットワーク200に関する制御戦略でそれがどのように使用されるかについての初期見解が提供される。次に、器具リストが斯かるP&IDから導かれるが、それは設計の各要素(例えば、フィールドデバイス)の詳細リストであり、デバイスタイプ、製造元、較正範囲など、並びに処理機器内の各要素の物理的位置を含むものである。設計者は、設定段階の一部として、各フィールドデバイス152に関連付けられたフィールド信号を規定し、各規定された信号をコントローラに割り当てる。
【0075】
図2に示されるように、フィールドデバイス152の各々が信号送受信用の1つ以上のI/O端末を有しており、各端末161~176は特定の信号タイプ(例えば、AO、AI、DI、またはDO)を有している。明瞭化のため、制御システムの観点から、端末には「入力」または「出力」とラベルが付される。例えば、端末161、164、166、167、および172は各々、端末を通してアナログ入力(すなわち「AI」信号)を送信するように構成されている。端末162、163、および168は各々、端末を通してアナログ入力(すなわち「AO」信号)(例えば、弁を開くコマンドなどの制御コマンドを伝達する信号)を送信するように構成されている。端末169および176は各々、斯かる端末を通してデジタル入力(すなわち「DI」信号)を送信するように構成されている。端末165、170、171、173、174、および175は各々、斯かる端末を通してデジタル出力(すなわち「DO」信号)を送信するように構成されている。
【0076】
図2に示されるように、端末161~176に関連付けられた信号の各々は、コントローラ158に割り当てられる。端末161~176用に特定された各信号タイプの信号数により、設計者は、コントローラ158がフィールドデバイス152の各入力および出力と通信するのに必要な各I/Oカード156の数およびタイプを決定できる。
【0077】
各I/Oカードが(i)限定数のI/Oチャネルを有し、(ii)特定タイプの信号用に構成され、そのタイプの信号にしか利用できないので、I/Oカードの選択は重要である。「I/Oチャネル」と言う用語は、I/Oカードまたはコントローラをフィールドデバイスに接続する論理リンクを意味する。各I/Oチャネルは、複数の物理的リンクおよび斯かる物理的リンクを接続するための端末点を含んでいてもよい。I/Oカード156は4つのI/Oチャネルに限定されているが、いくつかの専用I/OカードはI/Oチャネルに関して異なる限定数(例えば、8チャネル)を有している。各I/Oカード156は特定タイプの信号用に構成されており、そのタイプの信号にしか使用できない。一例として、AI I/Oカード156AはAI信号しか送信できず、DI信号を送信したりDOまたはAO信号を受信したりできない。斯かる要求事項並びに各I/Oカード156は4つのチャネルまでしか支援できないと言う要求事項により、未使用および無駄な端末ブロックが生じる。例えば、フィールドデバイス端末161~176のうち5つはAI信号を送信するように構成されている。
【0078】
設計段階完了後、技術者は現場配線の開発段階を開始できる。I/O端末161~176は対応するフィールド接続箱FJB154A~Dに配線され、次にFJBがマーシャリングキャビネット150内の一組の端末192に配線される。端末161~176の各々が、FJBの対応する端末およびマーシャリングキャビネット150内の対応する端末192に接続されている。すなわち、存在するI/O端末161~176それぞれに、対応する端末192が使用されなければならない。一組の端末192は現場端末アセンブリ(FTA)に配線され、FTAの各々は対応するI/Oカード156A~Fに配線される。
【0079】
端末192をFTA194に配線する工程は「クロスマーシャリング」と呼ばれる。端末192に接続されるワイヤの組織化はプラントの物理的レイアウトによって決定されるが、FTA194の組織化はFTAに接続されるI/Oカード156の信号タイプによって決定されるので、クロスマーシャリングは通常必要である。特に、近接した場所を共有するフィールドデバイスは最初に利用可能な端末192に配線されたFJBを共有する場合が多いが、その結果、端末192のグループ化(大体FJBに対応しているが、他に識別可能な組織化の方法がない)が生じる。対照的に、FTA194は、各々特定のI/Oカード156にフィードされるので、信号タイプによって組織化される。例えば、FTA194AはAIカード156Aに対応している。従って、端末194Aは各々、AIチャネルに接続された(すなわちAIフィールドデバイス端末に配線された)端末192に接続される必要がある。同様に、FTA194CはAOカード156Cに対応しているので、FTA194Cの端末は各々、AOチャネルに配線された(すなわちAOフィールドデバイス端末に接続された)端末192に配線されるべきである。同様に、端末194Dは、DIカード156Dと、DIフィールドデバイス端末に配線された端末192との間の相互接続として機能すべきである。
【0080】
専用I/Oカードに関連したチャネル制限により、非効率的なI/Oカードの配置、並びに未使用のI/Oチャネル、端末ブロック、およびマーシャリングキャビネット150内の関連キャビネットのスペースが生じる。I/Oカード156の各々が4つのチャネルしか支援しないので、2つのAIカード156Aおよび156Bがコントローラ158に設置および接続されなければならないし、2つの対応するFTA194Aおよび194Bが利用されなければならない。信号数要求および専用I/Oカード156の制限の故に、例えばFTA194Bは3つの未使用端末を有し、I/Oカード156Bは3つの未使用I/Oチャネルを有する。フィールドデバイス152に関する信号要求とI/Oカード156の制限との間の不完全調和により、I/Oカード156の非効率的な配置が生じる。コントローラ158には16の信号が割り当てられているという事実にも拘わらず、コントローラ158は6つの専用I/Oカードを必要とする。信号数がタイプ毎に完全に分配されているならば、コントローラ158が必要とするI/Oカードの数は4つしかないであろう。
【0081】
更に、I/Oネットワーク200には、単一のフィールドデバイスが複数の入力および/または出力を送信または受信できる場合であっても、DIおよびDO端末161~176の各々にI/Oチャネルが要求される。例えば、フィールドデバイス152Iは2つのDI端末および1つのDO I/O端末を有し、フィールドデバイス152Kは1つのDI端末および3つのDO端末を有している。その結果、コントローラ158が、(例えば、関連した制御戦略を実施するために)フィールドデバイス152Iによって得られた、またはそれに関連付けられた複数のパラメータを必要とする場合、DI信号によって示される各パラメータにI/Oチャネルが配線されなければならず、その結果、複数の有線I/Oチャネルおよび現場配線の更なる複雑性が生じる。ほとんどのプラントにおいて、フィールドデバイスの入力および出力の大半が離散信号用に構成されなければならないので、これは問題である。
【0082】
一般的に、I/Oチャネル対フィールドデバイスの高い比率の問題は、HART(登録商標)プロトコルの故に、アナログ信号を送信または受信するように構成されたスマートフィールドデバイスにおいては問題が少ない。HART(登録商標)プロトコルにより、フィールドデバイスまたはコントローラは、I/Oチャネルでループ電流振幅を使用して(「主変数」値を伝達する)アナログ信号を送信または受信し、(1つ以上の「副次変数」値を伝達する)電流ループ信号にデジタル搬送波信号を重ね合わせることにより、スマートフィールドデバイスとコントローラとの間で双方向の現場通信が可能となる。従って、スマートフィールドデバイスおよび/またはコントローラは、AIまたはAO信号に関連付けられた主変数値だけでなく、重畳されたデジタル搬送波信号を用いて副次変数値も送受信できる。一例として、アナログ信号用に構成されたスマートフィールドデバイスは、重畳された搬送波信号を用いて、フィールドデバイスタグ、各主変数および副次的変数に関連付けられたDST、フィールドデバイスに関する状態情報、デバイス警報などを送信できる。タグを副次的変数として送信できるスマートフィールドデバイスの能力は、フィールドデバイスを試運転しI/Oネットワークを設定する場合に特に有用である。
【0083】
対照的に、DIおよびDOカード156D~F並びにフィールドデバイス152Iおよび152Kは、副次的変数値を送信または受信する同様な能力を有していない。これらは、離散信号用に設定されたほとんどの装置同様、DIまたはDOチャネルの信号レベルによって示される単一の変数値を送信または受信する以外に何もできない「ダム(愚鈍)装置」である。
【0084】
一般的に、本明細書で使用される場合、上記のように、スマートフィールドデバイスは、通常、AIまたはAOチャネルを通して主変数値を受信または送信するように構成されたアナログ装置である。一方、「ダム」または「レガシー」フィールドデバイスは、搭載プロセッサ(複数も可)および/または搭載メモリを一般的に有さず、副次的変数値を送信する能力を一般的に持たない。
【0085】
(プラント5のI/Oネットワーク7および電子マーシャリング)
図3は、離散型要素にスマート機能を与え、本明細書記載の技術を用いて容易に設計、配線、再設計、および試運転が可能なI/Oネットワーク7(図1Aにも示される)を示すブロック図である。I/Oネットワーク7は、現場配線を容易にし、信号を統合および組織化し、キャビネットの設置面積を減少させ、非効率的なI/Oカード配置を最小限に抑える一組の信号特徴付けモジュール(CHARacterizarion Modules(すなわち「CHARM」)を有する。一般的に、高レベルにおいて、CHARMは、(i)フィールドデバイスからアナログまたは離散型入力信号を識別および特徴付けし、信号によって運ばれる情報を識別し、識別した情報を容認可能なフォーマットで(例えば、デジタル通信バスを通して)I/Oカードまたはコントローラへ転送するか、あるいは(ii)(例えば、デジタル通信バス上の電圧または電流レベルを識別することにより)I/Oカードまたはコントローラからの信号を識別および特徴付けし、信号により運ばれる情報を識別し、(例えば、フィールドデバイスへ送信されるアナログまたは離散型出力信号を通して)識別された情報を適切なフィールドデバイスへ転送するように構成されている。いくつかの例では、本開示に記載されるCHARMは、「電子マーシャリング構成要素」または「信号特徴付け構成要素」と同意語である。
【0086】
更に、ネットワーク7は、CHARM293Mを含む入力および出力(DIO)サブネットワーク299、双方向通信チャネル282を通してCHARM293Mに連結されたフィールドモジュール291、およびDIまたはDO信号を運ぶI/Oサブチャネルを通してフィールドモジュール291に連結された1つ以上のフィールドデバイスを有する。DIOサブネットワーク299により、プラント5は、通信のため離散型I/O信号に依存するダムフィールドデバイスに「タグを付し」、ダムフィールドデバイスには通常利用できない「スマート」機能を実施することが可能となる。CHARM293Mは、通常のDIまたはDO CHARMと異なり双方向通信が可能であり、1つ以上のフィールドデバイスに連結された複数の離散型入力または離散型出力チャネルへの連結も可能である。
【0087】
I/Oネットワーク7は、フィールドデバイス252A~K、端末255A~Dを含むFJB254-D、フィールドモジュール291、CHARM I/OまたはC-I/Oカード256AおよびバックアップCHARM I/Oカード256Bを含むマーシャリングキャビネット150、一組のCHARM293、および処理コントローラ258A~Bを有する。
【0088】
フィールドデバイス252A~Kは、図2に示されるフィールドデバイス152A~Kおよび図1Aに示されるフィールドデバイス15~22と類似している。I/Oネットワーク7を開発する設計段階中、設計者は器具リストを開発し、フィールドデバイス252A~Kの各々に関連付けられたフィールド信号を規定する。フィールドデバイス252A~Kは各々、フィールドデバイス152A~K同様、信号を送信または受信するための1つ以上のI/O端末またはコネクタ261~276を有し、コネクタ261~276は各々、特定の信号タイプ(例えば、AO、AI、DI、またはDO)を有している。設計者は、設計段階の終わり近くになって、端末261~276に特化された各タイプの信号の信号数を開発する。設計者は、信号数を用いることにより、コントローラ258がフィールドデバイス252の入力および出力の各々と通信するのに必要な各CHARM293の数およびタイプを決定できる。
【0089】
設計段階完了後、技術者は開発の現場配線段階を開始できる。I/O端末261~276が対応するFJB254A~254Cに配線され、次にFJBがCHARM293A~Lに通信可能に接続される。
【0090】
(A.I/Oネットワーク7のCHARM293およびC-I/Oカード256)
各CHARM293は、マーシャリングキャビネット250の端末ブロックに接続されたソケットを通してマーシャリング機器に挿入できるプラグ可能/取り外し可能な電子構成要素である。CHARM293は各々、(i)I/Oカード256への第一リンク(例えば、バックプレーンバス支援デジタル通信機器)に通信可能に接続され、I/Oカード256との通信を確立する第一通信インターフェースと、(ii)(例えば、端末ブロック、および端末ブロックとフィールドデバイス端末との間の2つ、3つ、または4つのワイヤ接続を通して)フィールドデバイスへの第二リンクに通信可能に接続された第二通信インターフェースとを有していてもよい。CHARM293は、1つ以上、バックプレーンおよび/または第一通信インターフェースを通して電力を得てもよい。
【0091】
CHARMは、第一通信インターフェースを通して特定のタイプの信号を受信し、第二インターフェースを通して該信号が運ぶ情報を送信するように構成されている(その逆も可)。アナログ信号を通してフィールドデバイスと通信するように設定されたCHARMは、第一リンクのデジタル信号と第二リンクのアナログ信号との間の信号変換を可能にするため、アナログデジタル変換器(A/D)を有していてもよい。例えば、アナログ入力信号を受信するように設定されたCHARMは、アナログ4~20mA信号を受信し、信号の電流振幅に基づいてパラメータ値を決定し、該パラメータ値をデジタル通信バスを通してコントローラまたはI/Oカードへ送信してもよい。第二例として、アナログまたは離散型出力信号を送信するように設定されたCHARMは、標的フィールドデバイス用のコマンドまたはパラメータ値を通信バスを通して受信し、アナログ信号または離散信号を適切なI/Oチャネルを通して標的フィールドデバイスに送信してもよい。
【0092】
CHARMが挿入されるソケットは、フィールドデバイスをI/Oカード256に通信可能に接続するための適切なフィールドデバイス入力/出力に配線可能な端末ブロックを有する。CHARM293は、効果的に、図2に示される端末192、FTA194、およびI/Oカード156A~Fに置き換わり得る。図2のI/Oカード156とは異なり、I/Oカード256は、バックボーン10並びにバックボーン10に接続された任意の処理コントローラに接続可能である。すなわち、I/Oカード526は単一のコントローラに割り当てられる必要はない。マーシャリングキャビネット250は、(例えば、リンク284および/または図1に示されるバックボーン10を通して)プラントの任意の望ましい処理コントローラに接続できる単一のI/Oカード、すなわちそれによって、キャビネット250に接続された全てのフィールドデバイス入力および出力にコントローラを接続できる単一のI/Oカードであってもよいのではないかと考える人もいるであろう。いくつかの例では、I/Oカード256は96のフィールドデバイス信号接続またはI/Oチャネルを支援する。
【0093】
好都合なことに、技術者は、CHARM293を用いることにより、クロス配線の心配をすることなく、フィールドデバイス252を任意の端末ブロックに配線できる。技術者は、フィールドデバイスを端末ブロックに配線し、適切な信号タイプ用に設定されたCHARMを挿入するだけで、フィールドデバイスとI/Oカードとの間の通信を確立できる。例えば、フィールドデバイス252AはAI信号を送信するように設定される。従って、技術者は、I/Oカード256(そして、最終的にはコントローラ258)がフィールドデバイス252Aによって送信されるAI信号を受信できるように、フィールドデバイス252Aに配線された端末ブロックに、AI CHARM293Aを挿入してもよい。
【0094】
上記のように、I/Oカード256は、バックプレーンバスを通して、各CHARM293に通信可能に接続されてもよい。更に、I/Oカード256は、通信リンク284(有線(例えば、イーサネット(登録商標)リンク)であっても無線であってもよい)を通してコントローラへ通信可能に接続されてもよい。いくつかの例では、リンク284は直接であってもよいが、他の例では、リンク284は1つ以上の他のリンク、ノード、および/またはネットワークを有していてもよい。例えば、I/Oカード256は、図1Aに示されるバックボーン10を通してコントローラ258に接続されてもよい。斯かる実施により、I/Oカード256などの任意のC-IOカードが任意の適切に設定されたコントローラと通信できるようになるので、斯かるコントローラの各々が、C-I/Oに接続された任意のフィールドデバイスと通信できるようになる。C-I/Oカードとコントローラとの間の斯かる多対多マッピングは、従来の実施、すなわち各I/Oカードが特定のコントローラに割り当てられ、I/Oカードに接続されたフィールドデバイスが斯かる割り当てられたコントローラを通してのみ制御可能であると言う、従来のコントローラおよびI/Oカードの実施と比べて、数多くの改善(例えば、再設計および再配線を有する柔軟性)を提供する。
【0095】
更に、I/Oカード256は、図2に示されるI/Oカード156とは異なり、コントローラを有する単一のアセンブリの一部ではない。I/Oカード156は、一般的に、対応するコントローラ158が位置する場所に配置される必要があるが、I/Oカード256は、コントローラ258に対して遠隔地(例えば、現場環境内のマーシャリングキャビネット250内)に配置されてもよい。勿論、いくつかの例では、I/Oカード256は、コントローラ258と場所を共有してもよいし、コントローラ258とアセンブリを共有してもよいし、コントローラ258と同じバックプレーンおよび通信バスに接続されてもよい。I/Oカード256は、操作中、1つ以上のCHARM293からバックボーンバスを通して信号を受信し、その信号が運ぶ情報をコントローラ258へ転送する。更に、I/Oカード256は、コマンドを含むメッセージを運ぶ信号をコントローラ258から受信し、バックプレーンバスを通して、(例えば、メッセージ中でそのコマンドに関連付けられていると識別された特定のフィールドデバイスまたはCHARMに基づいて)適切なCHARMにそのコマンドを転送してもよい。
【0096】
(B.I/Oネットワーク7のCHARM293)
CHARM293MはI/Oネットワーク7の中で特別である。CHARM293Mは、CHARM29A~Lとは異なり、1つ以上のフィールドデバイスをCHARM293Mに連結するI/Oチャネルを通して双方向通信を行うように構成されている。特に、CHARM293Mは、2つの物理的リンク28A(フィールドモジュール191をFJB254Dの端末255Dの1つに接続)および282B(端末255DをCHARM293Mに接続)を含むものとして示される通信チャネル282を通して、双方向通信を行う。
【0097】
CHARM293Mは、フィールドモジュール291を通してフィールドデバイスI/Oコネクタに連結されるが、フィールドモジュール291が支援するのと同数のフィールドデバイス信号を支援してもよい。典型的な例では、フィールドモジュール291は最高8つのフィールドデバイス信号(任意の望ましい、離散型入力と離散型出力の組み合わせでもよい)を支援する。いくつかの例では、シールドモジュール291およびCHARM293Mは、4信号、16信号、または任意の他の望ましい数のフィールドデバイス信号を支援してもよい。
【0098】
CHARM293Mは、作動中、I/Oカード256および/またはコントローラ258へのリンクを通して、離散型出力(DO)用の1つ以上のコマンドを受信し、フィールドモジュール291へ送られる信号を経て送信されるメッセージ(「DOメッセージ」と呼ばれる場合もある)に、そのコマンドを符号化する。例えば、図3を参照すると、CHARM293Mは、メッセージに、DO273用の第一コマンド、DO274用の第二コマンド、およびDO275用の第三コマンドを符号化する。各コマンドは2進数であってもよく、従って単一のビットで示される。符号化されたメッセージはチャネル282上の信号を通して送信され、フィールドモジュール291によって受信および復号される。次に、フィールドモジュール291はそのコマンドを適切なDOへ送信する。
【0099】
更に、CHARM293Mは、フィールドモジュール291に接続された1つ以上のフィールドデバイス離散型入力(DI)(例えば、DI276)によって送信される情報を含むメッセージ(「DI」メッセージと呼ばれることもある)を受信してもよい。CHARM293MはDIメッセージを復号し、フィールドモジュール291に接続した1つ以上のフィールドデバイスDIの各々から変数値または他の情報を識別し、次に、受信した変数値をI/Oカード256および/またはコントローラ258へ転送してもよい。CHARM293Mは、変数値の転送に加え、どの処理変数がどの値を有しているかをコントローラ258が分かるように、各変数値に関連付けられたタグを送信してもよい。
【0100】
上述のように、CHARM293Mは、フィールドモジュール291Mとの双方向通信が可能である。装置は、DIメッセージとDOメッセージを交互に送信するため、クロック同期化に依存してもよい。更に、チャネル282上の通信信号は、CHARM293Mがフィールドデバイス291に提供するDC電力に重ね合わされてもよい。CHARM293Mは、CHARM293MをI/Oカード256に接続する電力バスからこの電力を得てもよい。CHARM293Mは、通信信号をチャネル282上の電力に供給するための結合回路および/またはチャネル282上の電力から通信信号を分離するためのデカプリング回路を有していてもよい。フィールドモジュール291とCHARM293Mとの間の通信は、図9A、9B、10A、および10Bを参照して、より詳細に以下に記載される。
【0101】
(C.I/Oネットワーク7のフィールドモジュール291)
フィールドモジュール291は、(i)フィールドデバイス入力および/または出力に接続した複数の離散型通信チャネルと、(ii)フィールドモジュール291をCHARM、I/Oカード、および/またはコントローラに接続する単一の離散型通信チャネルとの間の通信インターフェースとして機能するように構成された電子処理制御装置、機器、または構成要素である。フィールドモジュール291は筐体(図示しない)を有していてもよく、処理プラント5内の任意の適切な場所(例えば、1つ以上のフィールドデバイス用の一群の離散型入力および/または出力コネクタの近く)に配置されていてもよい。更に、フィールドモジュール291は、該フィールドモジュール291にとってユニークなタグを含むプロファイルを記憶していてもよく、接続されたフィールドデバイス、信号、およびフィールドモジュール291の試運転、設定、および操作を促進するため、該タグおよび他のプロファイル情報をCHARM、I/Oカード、および/またはコントローラへアップロードしてもよい。いくつかの例では、フィールドモジュール291は、DO信号を受信するフィールドデバイスまたは要素へ電力を提供する。
【0102】
好都合なことに、フィールドモジュール291は、プラント5内の離散型入力および出力信号およびフィールドデバイスの「スマート試運転」を可能にする。スマート試験中、離散信号用のタグがフィールドモジュール291を通して「オートセンシング」され、(例えば、設定データベース92bを通して)該信号を伝達する物理的チャネルに接続されるので、コントローラおよび他の装置はDI値を参照したり、および/またはタグを参照することによりDO信号を通してフィールドデバイスへコマンドを送信したりできる。以前は、離散型装置および信号に関しては、スマート試運転およびオートセンシングは実行可能ではなかった。通常の離散型装置は、単一の2進変数値以外、情報を記憶したり離散信号を通して何かを送信したりできないと言う意味で「ダム(愚鈍)」である。従って、アナログ信号を通してメッセージを送信するように構成されたスマートフィールドデバイス(例えば、HART装置)とは異なり、斯かるダム(愚鈍)な離散型装置はタグを記憶したり、タグを他の装置へ送信したりする方法がなく、従って、スマート試運転を行う能力を有していない。残念なことに、多くのプラントでかなりの数の装置が、リミットスイッチやソレノイドなどの離散型装置によって構成されている。
【0103】
更に、離散型装置は、フィールドモジュール291により、単純なDIおよびDO信号を通して通信が可能である。フィールドデバイスを修正する必要はなく、フィールドデバイスの観点から言えば、フィールドデバイスにおける現場配線の接続は通常のシステムと何ら異なるものではない。言い換えると、フィールドモジュール291は、離散型装置の高価で複雑な改装を回避しつつ、スマート試運転を可能にする。斯かる改装努力は、(i)高いインダクタンス、およびその結果として、通信信号を妨害する傾向、および(ii)従来の通信プロトコル(HARTおよび他のアナログ通信プロトコル)では満たされないほどの高い電力を要求する特定の離散型装置(特にソレノイド)の故に、難題が生じる可能性がある。
【0104】
フィールドモジュール291は、プロセッサ291A、I/Oインターフェース291B、電源291C、1つ以上のルーチン291Eおよびプロファイル291Fを記憶するメモリ291D、および/または1つ以上の通信インターフェース291G~Iを有していてもよい。プロセッサ291は、本明細書によってフィールドモジュール291に与えられた機能をフィールドモジュール291が提供できるようにする、1つ以上のルーチンを実行する。いくつかの例では、フィールドモジュール291は、以上に加えてまたはその代わりに、本明細書記載のフィールドモジュール291の機能のいくつかを提供するASIC(図示しない)を有している。
【0105】
電源291Cは、フィールドモジュール291に接続された1つ以上のDO(例えば、DO273)へ電力を提供する。いくつかの例では、フィールドモジュール291は電源を含まない、あるいは電源を利用しない。例えば、フィールドモジュール291は、電力およびデータ送信(例えば、データ信号は24V DC電力に重畳される)の両方用に利用できるチャネル282を通して電力を受け取る。フィールドモジュール291は、チャネル282の電力に通信信号を供給するための結合回路、および/またはチャネル282の電力から通信信号を分離するためのデカプリング回路を有していてもよい。フィールドモジュール192は、電力を必要とする接続DOへ受け取った電力を分電してもよい。しかし、いくつかの実施では、チャネル282から受け取った電力は、DOに接続されている全て、特に高電力を必要とするDO(例えば、ソレノイド)に給電するには不十分であるかもしれない。斯かる例の場合、電源291Cが斯かるDOへ電力を供給する。いくつかの例では、電源291Cは、フィールドモジュール291の他の構成要素と筐体を共有する。別の例では、電源291Cは筐体の外部にある。
【0106】
フィールドモジュール291の通信インターフェース291Gは、フィールドデバイス252kのI/Oコネクタ273~276への接続用のコネクタ(例えば、端末)を有する。フィールドデバイス252kは、FJBや従来のマーシャリングキャビネットへ配線される場合と同様の方法でフィールドモジュール291に配線される(例えば、フィールドデバイスI/O端末または端末ブロックは各々、2つ、3つ、または4つのワイヤ接続を通してフィールドモジュール291に配線されてもよい)が、いくつかの例では、他の手段を通して接続される。いくつかの例では、フィールドモジュール291は、複数のフィールドデバイス(例えば、フィールドデバイス252Iおよび252k)用のI/Oコネクタに接続される。
【0107】
通信インターフェース291Hは、通信チャネル282をFJB、CHARM、I/Oカード、および/またはコントローラに接続するためのコネクタ(例えば、端末ブロックまたはポート)を有する。単一の通信チャネル282は、一般的に、従来の現場配線(例えば、2つ、3つ、または4つのワイヤ接続、ツイストペアケーブル、光ファイバケーブルなど)を通して確立されるシリアルデータ送信チャネルであり、1つ以上の物理的リンク(例えば、フィールドモジュール291をFJB254Dに接続するリンク、およびFJB254Dをマーシャリングキャビネット250に接続するリンク)を有していてもよい。リンク282は、任意の適切な基準、例えば、RS-485、RS-422、RS-232、CAT5、CAT6などに対応する配線および接続を用いて設定してもよい。いくつかの例では、チャネル282は1つ以上の無線リンクを含む。
【0108】
通信インターフェースIは、他の装置と無線で通信する無線インターフェースを有する。特に、インターフェースIは、短距離通信(例えば、NFC、RFID、ブルートゥース(登録商標)など)用の任意の適切な基準およびプロトコルを支援する。
【0109】
プロファイル291Fは、フィールドモジュール291にとってユニークな1つ以上のシステムタグと、通信インターフェース291Gに接続された一組のフィールドデバイスチャネル(例えば、フィールドデバイス252k、およびこの場合コネクタ273~276へのチャネル)を有している。特に、単一のシステムタグまたはデバイスタグ、およびフィールドモジュール291に接続された各フィールドデバイスチャネル用のDSTを有していてもよい。例えば、コネクタ273~276への各チャネルは、プロファイル291FにリストアップされたユニークなDSTを有していてもよい。更に、DSTに対応するインターフェース291Gの特定のコネクタへの各DSTのマッピング(例えば、第一DSTに対応する端末ブロック1、第二DSTに対応する端末ブロック2などを示すもの)を有し、各DST用の信号タイプを識別してもよい。例えば、図3に示されるように、プロファイル291Fは、コネクタ273~275に対応するDST用の信号タイプは「DO」で、コネクタ276に対応するDST用の信号タイプは「DI」であることを示す。
【0110】
フィールドモジュール291のプロファイル291Fは、通信インターフェース291Iを通して更新したり取り替えたりしてもよい。特に、携帯装置は、該携帯装置とフィールドモジュール291との間の直接リンク、近距離リンク、無線リンクを通して、プロファイルを無線で更新してもよい。プロファイル291Fの更新は、フィールドデバイスチャネルがフィールドモジュール291へ追加されたり、それから切断されたり、置き換えられたりした場合、またはフィールドモジュール291に新しいタグが(例えば、プロジェクト再設計中に)割り当てられたりした場合に役立つ。特に、技術者またはエンジニアは、後置環境125のワークステーションに行ってプロファイル291Fを更新するように要求されるのではなく、無線更新機能を用いることにより、現場環境122のフィールドモジュール291近くにいる間に、(例えば、フィールドデバイスへのチャネルの追加、置換、または除去用の現場配線を更新した後)フィールドモジュール291を迅速かつ容易に更新できるようになり、フィールドモジュール291を視認し、更新されたプロファイルがフィールドモジュール291への物理的変更を正確に反映しているか否かを確認または再確認するのが可能になる。以下に、フィールドモジュールプロファイルを更新するための例示的フィールドデバイスおよび例示的技術が、図8Aを参照して、より詳細に記載される。
【0111】
既に上述したように、フィールドモジュール291は、(i)フィールドデバイス入力および/または出力に接続した複数の離散型通信チャネルと、(ii)フィールドモジュール291をCHARM、I/Oカード、および/またはコントローラに接続する単一の離散型通信チャネルとの間の通信インターフェースとして機能する。図3はインターフェース291Gに接続される複数のDOチャネルと単一のDIチャネルを示しているが、フィールドモジュール291が複数の入力および/または複数の出力に接続できることは理解されるであろう。
【0112】
フィールドモジュール291は、作動中、インターフェース291HおよびI/Oチャネル282を通して、CHARM293M、I/Oカード256、およびコントローラ258からのDOメッセージを運ぶ離散信号(「信号H1」とも呼ばれる)を受信する。フィールドモジュール291はメッセージを分析および復号し、メッセージに含まれている1つ以上のコマンドを識別し、システムタグ(例えば、DST)をDOメッセージにマッピングするタッグツーメッセージマップ(例えば、特定のDSTに対応するDOメッセージ内のビット位置を示すもの)を分析し、各コマンドに関して標的DO用のDSTが決定できるようにする。タッグツーメッセージマップは、一般的にプロファイル291Fに記憶され、DOメッセージの送信または受信に関係する他の装置、例えばコントローラ258にアップロードされる。しかし、いくつかの例では、タッグツーメッセージマップは、DOメッセージ用のメタデータに含まれてもよい。いずれにせよ、例えば、フィールドモジュール291は、DOメッセージ中の第一組のビットがDST「CV-123」にマッピングされることをプロファイル291Fから決定し、第一組のビット(例えば、「1」)によって示されるコマンドまたは値をDST「CV-123」に割り当ててもよい。次に、フィールドモジュール291は、各DSTをフィールドモジュール291の特定のチャネルまたはコネクタにマッピングするタグツーDOマップ(例えば、プロファイル291Fに記憶されているマップ)に基づいて、該コマンドを適切なフィールドデバイスチャネルへ転送する。例えば、フィールドモジュール291はプロファイル291Fを分析し、DST「CV-123」がフィールドモジュール291の第三端末ブロックにマッピングされているのをタグツーDOマップが示しているのを決定してもよい。フィールドモジュール291は、その結果、第三端末ブロックを通して、適切なコマンドまたは値(例えば、この場合1)を送信してもよい。
【0113】
更なる操作において、フィールドモジュール291は、1つ以上のフィールドデバイスチャネルを通して受信する1つ以上の変数値または他の組の情報を運ぶDIメッセージを、I/Oチャネル282を通して転送する。例えば、インターフェースGが複数組の情報を伝達する複数のDI信号を受信した場合、フィールドモジュール291は、DIメッセージ(複数組の情報の各々を運ぶペイロードを含む)を生成する。フィールドモジュール291は、望ましい場合には、各組の情報が特定のDSTにマッピングできるように、例えば、デリミタおよび/またはシステムタグ(例えば、DST)をDIメッセージにマッピングするタグツーメッセージを含むメタデータ部分を生成してもよい。いくつかの例では、フィールドモジュール291が受信する1つ以上のDI信号は2進値であり、従って、DIメッセージにおいて単一ビットによって示されてもよいし、いくつかの例では、フィールドモジュール291が受信するDI信号は2進数ではなく、従って、フィールドモジュール291が送信するDIメッセージにおいて2ビット以上であってもよい。更に、各変数値または各組の情報に関して図9Bを参照して考察されるように、フィールドモジュール291は、値を示す第一組のビットと値のビット反転を示す第二組のビットとでDIメッセージを符号化してもよい。いすれにせよ、CHARM,I/Oカード、および/またはコントローラが、フィールドデバイスによって送信されたメッセージおよび情報を受信できるように、フィールドモジュール291は、インターフェース291Hおよびチャネル282を通して、符号化されたメッセージを送信する。
【0114】
DI信号を通してフィールドデバイスによって送信される情報は、多くの内容を示していてもよい。例えば、ON-OFF弁は、弁が開いている場合に1の値(例えば、1~5V電圧信号に関しては5Vの値)を有するように設定された第一の2進数DIと、弁が閉じていることを示す1の値を有するように設定された第二の2進数DIを含んでいてもよい(一般的に、斯かる2つのDIが一致すると言うことは、弁が位置付け処理中にあること、あるいはエラーが存在することを示していてもよい)。更に、斯かる弁は、アクチュエータ、並びに1の値が存在する場合に弁が開くようにアクチュエータを駆動する第一の2進数DOと、1の値が存在する場合に弁が閉じるようにアクチュエータを駆動する第二の2進数DOとを有していてもよい。
【0115】
(D.コントローラ258およびDIO要素259F)
コントローラ258は、図1Aに示されるコントローラ11に類似しており、メモリ259Aに記憶される1つ以上の制御ルーチン259Dによって規定される制御戦略を実施する。コントローラ258は、リンク284を通してI/Oネットワーク7内の他の装置、並びに(図1Aに示される)バックボーン10を通してプラント5内の他の種々の装置に通信可能に接続されている。リンク284には、任意の適切な有線(例えば、イーサネット(登録商標))または無線チャネルが含まれてもよい。リンク284は、コントローラ258をI/Oカード256並びにフィールドデバイス252およびフィールドモジュール291に連結する。
【0116】
操作中、コントローラ258のプロセッサ259Bは制御ルーチン259Dを実行するが、コントローラ258は、当該ルーチンを用いて、フィールドデバイス252の制御を通してプラント5内の処理操作を制御するため、リンク284を通して制御信号をフィールドデバイス252aの1つに送信する。コントローラ258は、リンク184を通して受信する(例えば、フィールドデバイス252K、フィールドモジュール291、CHARM293M、および/またはI/Oカード256によって送信される情報を運ぶ)1つ以上の信号並びに制御ルーチン259Dによって規定される論理に基づいて、制御信号を生成してもよい。
【0117】
制御ルーチン259Dは各々、種々の制御要素または機能ブロック(FB)259Eをリンクおよび設定することにより開発されてもよい。一般的に、FB259Eは各々、入力機能、制御機能、および/または出力機能を表す。斯かるタイプのブロックおよび機能の例が図1Bを参照して記載される。
【0118】
コントローラ258は、1つ以上の制御ルーチン259Dを規定するためにFB259Eと一緒に使用されてもよいDIO要素(「DIO制御要素」、「DIOO機能ブロック」、または「DIOブロック」と呼ばれる場合もある)259Fを含む。要素259Fは、フィールドモジュール291および/またはCHARM293Mのソフトウェア表示と考えられてもよいオブジェクトまたはルーチンである。すなわち、DIO要素259Fは制御ルーチンに含まれてもよく、フィールドモジュール291およびCHARM293Mによって管理されるチャネル273~276のフィールドデバイス信号を参照するために参照されてもよい。DIO要素に類似した例示的要素が、図4Bを参照して以下に記載される。
【0119】
コントローラ258は、フィールドデバイス252K、フィールドモジュール291、CHARM293M、および斯かる各装置に関連付けられた信号およびチャネルの試運転中、斯かる装置および信号用の1つ以上のタグをオートセンシングし、(例えば、メモリ259Aおよび/または図1Aに示される設定データベース72bに)タグおよび各タグのバインディングを記憶させてもよい。斯かるバインディングは、特定のI/Oチャネルまたはサブチャネル、あるいはI/Oチャネルまたはサブチャネルにリンクしたハードウェアアドレスに、各タグをマッピングする。斯かるバインディングにより、プラントの装置は、変数値およびコマンドを伝達する信号にとってユニークなタグを読み取ったりそれに書き込んだりすることにより、情報(例えば、測定値、指標、コマンド)を読み取り、送信できる。プラント5の任意の望ましい装置、例えば、コントローラ258、コントローラ11、ワークステーション71、ヒストリアン73、1つ以上のフィールドデバイス252が、機能の読み取り書き込み用のタグを利用してもよい。
【0120】
バインディング中のハードウェアアドレスが、特定の端末ブロックアドレス、および/またはチャネルおよび装置が接続されているCHARM293用の特定のアドレスを識別してもよい。例えば、ハードウェアアドレスは、「controller.card.CHARM」の形を取ってもよい。例えば、フィールドモジュール291は、「Controller258->I/Ocard256->CHARM293M」のような形のアドレスを有してもよい。斯かる例において、各CHARMは関連付けられた端末ブロックアドレスまたはI/Oチャネルアドレスを有していてもよい。一般的に、マーシャリングキャビネットからフィールドデバイスまたはフィールドモジュールへ延びる各I/Oチャネルは、端末ブロックに対応する(すなわち、チャネル1=端末ブロック1、チャネル2=端末ブロック2など)。ハードウェアアドレスは、望ましい場合には、「controller.card.channel」の形および/または「controller.card.channel.subchannel」の形を取ってもよい。本明細書で使用される場合、I/Oチャネルの「サブチャネル」は、フィールドモジュールと接続フィールドデバイスI/Oコネクタとの間のチャネルを意味し、単に「チャネル」または「I/Oチャネル」と呼ばれる場合もある。I/Oコネクタ273~276用のチャネルは各々、I/Oチャネル282のサブチャネルである。
【0121】
いすれにせよ、コントローラ258は、I/Oカード256およびCHARM293Mと一緒に、フィールドモジュール291のプロファイル291Fに記憶されたタグをオートセンシングするので、オートセンシングされたタグは適切なハードウェアアドレスに接続することができ、装置間の通信リンクが設定および機能するや否や、フィールドデバイス252K、フィールドモジュール291、CHARM293M、および斯かる装置間のチャネル/信号が試運転可能となる。技術者は、斯かるオートセンシングのお蔭で、ハードウェアアドレスを手動で識別したり、適切なタグへのバインディングを手動で作成したりするような、人的ミスを引き起こし易い処理、および現場配線の変更が必要な場合に難題を引き起こすような処理を行う必要がなくなる。
【0122】
フィールドモジュール291はCHARM293Mに接続された端末ブロックから切断され、マーシャリングキャビネット250内の新しい端末ブロックへ連結されたり、あるいは異なるI/Oカードおよび異なるコントローラを用いて異なるマーシャリングキャビネット内の新しい端末ブロックへ連結されたりしてもよい。例えば、CHARM293Mが、該CHARM293Mを新しい端末ブロックに連結するソケットに挿入される場合、CHARM293Mは、フィールドデバイス291用のタグをオートセンシングし、該タグ用のバインディングが更新される。例えば、I/Oカード256または新しいI/OカードはCHRAM293Mと通信し、新しい端末ブロックまたはCHARM293M用のI/Oチャネルを識別し、新しいハードウェアアドレスでバインディングを更新してもよい。別の例では、第二DIO CHARMを新しいソケットに挿入し、フィールドモジュール291用のタグをオートセンシングし、新しいハードウェアアドレスを反映するようにバインディングを更新してもよい。
【0123】
フィールドモジュールのタグをオートセンシングし、該タグ用のバインディングを自動的に更新するDIO CHARM(例えば、CHARM293M)およびCHARM I/Oカードの機能により、I/Oネットワークの容易かつ迅速な再設定および再配線が可能となる。対照的に、手動による試運転はエラーを引き起こし易く、技術者に多大な時間と労力を要求するものである(技術者は再配線に時間を割かなければならないだけでなく、更新されないかもしれない記録を手動で付けなければならない)。例えば、手動による試運転において、装置は間違ったI/Oカードおよび/または間違ったコントローラに接続された端末ブロックに配線されることにより、適切なコントローラが該装置とは通信できなくなり、該装置に関連する制御ルーチンの実施が行えなくなるかもしれない。別の例では、技術者は間違ったハードウェアアドレスを有する装置用のバインディングを更新してしまい、その結果、他の装置がユニークなタグを通して該装置を参照することが不可能になってしまうかもしれない。本明細書記載のDIO CHARMおよびフィールドモジュールは、フィールドモジュールタグのオートセンシング、およびバインディングの自動更新を可能にすることにより、斯かるプロセスの発生を除去する。オートセンシング技術は、図6を参照して後に更に詳細に記載される。
【0124】
コントローラ258は、該コントローラ258がDIO制御要素または機能ブロックを全接続フィールドモジュール用に自動インスタンス化および設定できるようにする、自動設定ルーチン259Gを有している。斯かるDIO要素は、フィールドモジュールまたはDIO CHARMのソフトウェア表示と考えられてもよいオブジェクトまたはルーチンである。すなわち、1つ以上のフィールドデバイスとフィールドモジュールとの間の入力および出力チャネルは、対応するDIO要素(例えば、DIO要素259F)を通して、(例えば、制御ルーチンにより)アクセスしてもよい。いずれにせよ、自動設定ルーチン259GはDIO要素を自動的に設定する。例えば、ルーチン259Gの実行により、コントローラ258は、フィールドモジュール291からプロファイル291Fをダウンロードし、DIO要素259Fの入力および出力に適切なタグ(例えば、システムタグおよび/または信号タグ)を接続してもよい。従って、自動設定されたDIO要素259Fは、フィールドモジュール291用のシステムタグに接続され、DO273~275用の信号タグに接続された(例えば、他のブロックが書き込み、それによって対応するDO信号を制御するフィールドを示す)3つの制御要素または機能ブロック入力、およびDI276用の信号タグに接続された(例えば。他のブロックが読み込み、それによって対応するDI信号の値にアクセスできるようにする)1つの制御要素または機能ブロック出力を有していてもよい。ルーチン259Gによる自動設定DIO要素用の例示的技術は、図7を参照して以下のセクションに記載される。
【0125】
(E.DIO制御要素テンプレート450)
図4Aは、DIO制御要素(例えば、図3に示されるDIO要素259F)の1つ以上の例を作成するのに使用されるテンプレート(図示しない)から作成される、未設定のDIO制御要素450を示している。ユーザは、任意の適切な設定および設計システム(例えば、任意の適切なコンピュータ装置で実行される設定アプリケーション72a)を用いて、DIO制御要素450をインスタンス化および設定してもよい。DIO制御要素450は、図1Bに示されるルーチン101を参照して記載された方法と同様な方法でルーチンを作成するように設定され、他の入力ブロック、機能ブロック、および/または出力ブロックにリンクされてもよい。
【0126】
一般的に、要素450は、フィールドモジュール(例えば、フィールドモジュール291)のソフトウェア表示である。要素450は、フィールド452にフィールドモジュールのシステムタグを記入することにより、特定のフィールドモジュールに接続されてもよい。例えば、DIO要素259Fは、フィールドモジュール291にとってユニークなタグに接続される。
【0127】
図示されているように、要素450は、8つの離散型入力または出力454およびハイブリッドの離散型入力/出力(DIO)456を有している。I/O454は各々、フィールドモジュール291の特定の端末または端末ブロックに対応する。ユーザは、フィールド461の1つに信号タグを記入することにより、信号タグに関連付けられた信号に、対応する離散型入力または出力454を接続できる。例えば、DIO要素259Fは、フィールドモジュール291からDO273へ送信される信号にとってユニークな信号タグ(例えば、FM-9872-CMD-OPEN)に接続された入力を有する。フィールドモジュールは各々、フィールドモジュールのどの端末または端末ブロックが特定の信号タグにマッピングされているかを示すプロファイルを有していてもよい。
【0128】
最後に、ハイブリッドDIO456は、接続されたフィールドモジュールおよびCHARM、I/Oカード、および/またはコントローラ間の特定のチャネル(例えば、図3に示されるチャネル282)に対応する。フィールド463に信号タグを記入することにより、CHARM、I/Oカード、およびフィールドモジュールに関連付けられたコントローラにDIO456を接続できる。例えば、DIO要素259Fは、チャネル282を示す信号タグに接続されたハイブリッドDIO456を含む。いくつかの例では、各フィールドモジュールが単一のハイブリッドDIO456を有しているので、要素450はフィールド463を自動設定してもよいし、および/またはシステムタグが要素450に接続されている場合、適切なチャネルを自動接続してもよい。更に、いくつかの例では、ハイブリッドDIO456用の信号タグは、要素450用のシステムタグと同じであってもよい。状況次第ではあるが、要素450は、任意の適切な数の離散型入力、任意の適切な数の離散型出力、および任意の適切な数の離散型ハイブリッドを有していてもよいことは理解されるであろう。更に、望ましい場合には、要素450は、離散型入力、離散型出力、または離散型ハイブリッド入力/出力を一切含まなくてもよい。
【0129】
図4Bは、離散型制御(DC)機能ブロック406を含む制御ルーチン401を示しているが、上記機能ブロックは、離散型入力信号を受信し離散型出力信号を提供するため、図4Aに示される1つ以上の他のブロック(例えば、DIO要素450)にリンクされていてもよい。
【0130】
特に、制御ルーチン401は、(i)DCブロック406の1組の離散型入力412~416に離散型入力信号を提供する1組の入力ブロック402~404(DI402、DI403、およびDIO要素404を含む)、および(ii)DCブロック406の離散型出力422~426から離散型出力信号を受信する1組の出力ブロック432~436(DO432、DO434、およびDIO要素436を含む)を有する。図4Bは3つの離散型入力412~416および3つの離散型出力422~426を含むDCブロック406を示しているが、DCブロック406は、任意の望ましい数の離散型入力(各々離散型信号を提供可能な任意の望ましいブロック(例えば、標準DIブロックまたはDIO要素、例えば図4Aに示されるDIO要素450)にリンク可能)を有していてもよいし、任意の望ましい数の離散型出力(各々離散型信号を受信可能な任意の望ましいブロック(例えば、標準DOブロックまたはDIO要素、例えばDIO要素450)にリンク可能)を有してもよい。
【0131】
入力ブロック402~404および出力ブロック432~436は、適切なタイプの信号を送信または受信するように設定された処理制御エンティティ(例えば、フィールドデバイスまたはフィールドモジュール)に関連付けられた、任意の適切なデバイスタグまたは信号タグに接続されていてもよい、またはそれに関連付けられていてもよい。例えば、入力ブロック402~404は各々、(i)離散型入力信号を送信可能な処理制御エンティティ用のデバイスタグ、または(ii)フィールドデバイスによって送信される特定の離散型入力信号用の信号タグのうちの1つ以上に接続されていてもよい、またはそれに関連付けられていてもよい。例えば、ブロック402またはブロック403は、図2に示されるフィールドデバイス152K用のデバイスタグ、またはフィールドデバイス152KのDI176用の信号タグに接続されていてもよい。更に、図4Aに示されるDIO要素450に類似のDIO要素404は、フィールドモジュールに関連付けられた任意の適切なデバイスタグまたは信号タグ(例えば、図3に示されるフィールドモジュール291またはフィールドモジュール291のDI276に関連付けられたタグ)に接続されていてもよい、またはそれに関連付けられていてもよい。
【0132】
処理制御エンティティおよび特定の信号に関連付けられたタグに入力ブロック402~404を接続した後、関連の処理制御エンティティは各々、離散型パラメータ値を伝達する信号をI/Oカードまたはコントローラへ送信する。コントローラは、送信処理制御エンティティおよび信号に「接続」されている信号タグまたはデバイスタグに離散型パラメータ値を関連付ける。次に、制御ルーチン401が実施された場合に、信号タグまたはデバイスタグが「接続」されている入力ブロック402~404が、関連ブロック(複数も可)に離散型パラメータ値を提供する。
【0133】
更なる例として、出力ブロック432~436は各々、(i)離散型出力信号を受信可能な処理制御エンティティ用のデバイスタグ、または(ii)フィールドデバイスへ送信される特定の離散型出力信号用の信号タグのうちの1つ以上に接続されていてもよい、またはそれに関連付けられていてもよい。例えば、ブロック432またはブロック434は、図2に示されるフィールドデバイス252E用のデバイスタグに接続されていてもよいし、またはフィールドデバイス252EのDO265用の信号タグに接続されていてもよい。更に、図4Aに示されるDIO要素450に類似のDIO要素436は、フィールドモジュールに関連付けられた任意の適切なデバイスタグまたは信号タグ(例えば、図3に示されるフィールドモジュール291用のタグ、またはフィールドモジュール291のDO273用のタグ)に接続されていてもよい、またはそれに関連付けられていてもよい。
【0134】
出力ブロック432~436が処理制御エンティティに関連付けるタグに接続した後、出力ブロック432~436は、ルーチン401の実行中、DCブロック406の出力422~426から離散型パラメータ値を受信する。次に、ルーチン401を実行するコントローラにより、離散型パラメータ値を伝達する信号が、出力ブロック432~436に接続された対応する処理制御エンティティ(例えば、フィールドデバイスまたはフィールドモジュール)に、(例えば、図3に示されるI/Oカード256Aおよび256BなどのI/Oカード、または図1Aに示されるI/Oカード26および28を通して)送信される。
【0135】
制御ルーチン401(ブロック402~406および432~436に関連付けられた情報の任意の論理または通過を含む)は、任意の適切なプロセッサまたはコントローラ(例えば、図1Aに示されるコントローラ11または図3に示されるコントローラ258)によって実行可能である。制御ルーチン401は、図1Bに示されるルーチン101を参照して記載される方法と同様な方法で(例えば、図1Aに示されるアプリケーション72aを通して)作成されてもよいし、ルーチン101と類似であってもよい。
【0136】
機能に関して言えば、DCブロック406は、一組の離散型入力412~416を通して受信するパラメータ値を用いて論理操作を実行し、それによってパラメータ値またはコマンドを生成または計算し、そのパラメータ値またはコマンドをDCブロック406が一組の離散型出力を通して他のブロック(例えば、図示された例では、ブロック432~436)に送信する。DCブロック406が実行する論理操作は、設計者がDCブロック406によって実施したいと考える任意の望ましい論理またはルーチンを表していてもよい。
【0137】
(F.CHARM293Mおよびマーシャリングブロック140)
図5は、特にCHARM293Mに関して、図3に示される電子マーシャリング構成要素293Mを支援する例示的電子マーシャリングブロックまたは機器140のプロファイル像を示す。図5において、電子マーシャリングブロックまたは機器140には、1つ以上のCHARM I/Oカード(DIOC)256(図3にも示される)を支援するCHARMキャリヤ142が含まれるが、斯かるカードには処理コントローラ258が(例えば、図3に示される有線または無線コネクタ284を通して)接続されていてもよい。加えて、電子マーシャリングブロックまたは機器140には、CHARMキャリヤ142(従って、CHARM I/Oカード256)に通信可能に接続され、複数の個別に設定可能なチャネルを支援する、1つ以上のCHARMベースプレート148が含まれる。
【0138】
チャネルは各々専用のCHARM端末ブロック410に対応しており、それにCHARM293M(または他の任意のCHARM)がしっかりと収容され電子的に接続されるので、(図3に示される)フィールドモジュール291、フィールドモジュール291に接続されたフィールドデバイスI/O(例えば、図3に示されるフィールドデバイス252kのコネクタ273~276)、およびコントローラ258を有するI/Oカードにおいて電子的マーシャリングが実行される。
【0139】
(IV.スマート試運転技術)
図6~8を参照して、プラント5などの処理プラントにおいて離散型要素のスマート試運転および設定を簡便化するのに使用可能な例示的技術およびシステムが以下に記載される。特に、図3を参照すると、以下に記載される技術およびシステムは、フィールドデバイス252Kなどの離散型フィールドデバイス、フィールドデバイス252KのI/Oコネクタ273~276などの離散型I/Oサブチャネル、フィールドモジュール291などのフィールドモジュールデバイス、DIO CHARM293MなどのDIO CHARMのスマート試運転に利用可能である。
【0140】
以下の記載は、(A)フィールドモジュールのスマート試運転方法を示す図6、(B)フィールドモジュールに関連付けられた制御要素または機能ブロックを自動的に設定する方法を示す図7、(C)フィールドモジュールのプロファイルを更新するように構成された例示的携帯装置を示す図8Aを参照する。
【0141】
(A.フィールドモジュールのスマート試運転方法)
図6は、フィールドモジュールのスマート試運転の例示的方法601に関するフローチャートである。一般的に、プラント5のI/Oネットワーク7の装置は、フィールドモジュール291などのフィールドモジュール、並びにフィールドモジュールに関連付けられた離散型フィールドデバイスおよび信号を試運転する方法601を実行する。方法601によって、試運転中、ソフトウェア設定タスクをハードウェア設定タスクから分離できるので、プロジェクト実施および後期変更の問題に対処できるようになる。方法601は図3に示されるフィールド291、DIO CHARM293M、およびコントローラ258との関連で記載されるが、類似のフィールドモジュール、DIO CHARM、およびコントローラが本明細書記載の機能を実施してもよいことは理解されるであろう。
【0142】
方法601は、CHARM293Mが起動されるステップ605で開始される。CHARM293Mは、CHARM293Mをフィールドモジュール291およびコントローラ258の両方に通信可能に接続することにより起動してもよい。通常、斯かる接続は、図5に示される機器140のベースプレート148のソケットにCHARM293Mを挿入することにより達成される。CHARMを挿入することにより、CHARM293Mの第一通信インターフェースが、機器140(これにチャネル282およびフィールドモジュール291がリンクされる)のI/Oコネクタ(例えば、端末ブロック)へ(例えば、電気接触により)連結される。
【0143】
更に、上記挿入により、CHARM293Mの第二通信インターフェースが(例えば、電気接触により)I/Oカード256への通信リンクに接続される。斯かるリンクは、電力をCHARM293Mに供給する電力バス、並びにCHARM293MをI/Oカード256およびコントローラ258と通信可能にする通信チャネルであってもよい。いくつかの例では、CHARM293Mの第一または第二通信インターフェースは、フィールドモジュール291、I/Oカード256、またはコントローラ258を連結する通信リンクに無線で接続されてもよい。斯かる例では、CHARM293Mを機器140のベースプレート148のソケットに挿入する工程により、CHARM293Mまたは機器140が1つ以上の無線接続を確立する工程がトリガされる。
【0144】
いずれにせよ、ステップ610において、CHARM293Mはフィールドモジュール291用のタグをオートセンシングする。システム5で使用される1組のシステムタグを参照すると、通常、タグは、フィールドモジュール291をユニークに識別する論理識別子である。例えば、プロファイル291Fに記憶され、CHARM293Mによってオートセンシングされるタグは、「FM-291」の文字セットとして記載されるであろうが、タグは他の任意の適切な文字の組み合わせ(従って、ユニークなタグ)であってもよい。オートセンシングは、「デバイスタグ」またはより一般的に「システムタグ」(デバイスタグおよび信号タグを包含する用語)と呼ばれてもよい場合もある。
【0145】
いずれにせよ、オートセンシングは、一般的に、CHARM293Mおよびフィールドモジュール291の両方が設置および起動された後に生じる。オートセンシングを簡便化するため、CHARM293Mおよびフィールドモジュール291のいずれかまたは両方が、チャネル282を通してビーコンを定期的に送信するように構成されてもよい。CHARM293Mが(例えば、フィールドモジュール291が設置され、CHARM293Mに連結され、起動された少し後に)ビーコンをフィールドモジュール291から受信すると、CHARM293Mは、フィールドモジュール291用のタグ(例えば、システムタグまたはフィールドモジュール291にとってユニークなデバイスタグ)またはプロファイルを要求することによりそれに応答する。フィールドモジュール291は、CHARM293Mに、(i)プロファイル291Fに記憶されたタグ、(ii)プロファイル291Fの一部、または(iii)プロファイル291F全体を送信することにより、その要求に応答する。同様に、フィールドモジュール291は、CHARM293Mからのビーコン受信に応答して、(CHARM293Mが挿入され起動された少し後に)斯かる情報のいずれかを送信してもよい。
【0146】
ステップ615において、CHARM293Mがタグ「FM-291」および/またはプロファイル291Fを受信した後、該タグはCHARM293Mおよび/またはチャネル282に特有のハードウェアアドレスに接続(バインディング)されるので、コントローラ258および他の装置が、タグ「FM-291」を参照することにより、I/Oサブネットワーク299(例えば、フィールドモジュール291)の装置と通信できるようになる。バインディングは、図1Aに示される設定データベース72bに記憶してもよい。バインディングおよびハードウェアアドレスは、図3を参照して更に詳細に記載されている。
【0147】
いくつかの例において、CHARM293Mは追加のタグをオートセンシングする。特に、CHARM293Mは、フィールドモジュール291に特有のデバイスタグ(DT)(例えば、「FM-291」)のセンシングに加えて、フィールドモジュール291に接続されたI/Oサブチャネルの信号(例えば、I/Oコネクタ273~276とフィールドモジュール291との間のサブチャネルの3つのDO信号およびDI信号)を示す信号タグまたはDSTをオートセンシングしてもよい。一般的に、オートセンシングされたDSTは各々、(i)フィールドデバイスによって測定、検出、あるいは報告された(DI信号で示される)特定のパラメータ、または(ii)DO信号を論理「1」に駆動することによりフィールドデバイスに提供可能な特定のコマンドに対応する。
【0148】
図1Aに示される設定データベース72bを参照して既に記載したように、DSTはフィールドモジュール291のDTを含んでもよい。例えば、CHARM293Mは、DI276に対応し制御弁用の状態指標を示す(例えば、弁が開いている、あるいは閉じていることを示す)DST「FM-291-CV-101」、および/またはDO273に対応し、制御弁を開状態に駆動するために論理「1」に駆動可能な信号を示すDST「FM-291-CO-374」をオートセンシングしてもよい。
【0149】
(B.フィールドモジュールに関連付けられた制御要素または機能ブロックを自動的に設定する方法)
図7は、フィールドモジュールおよびフィールドデバイス用の1つ以上の離散型入力または出力に関連付けられた制御要素を自動的に設定する例示的方法701のフローチャートである。一般的に、プラント5のI/Oネットワーク7の装置は、特定のフィールドモジュールのソフトウェア表示(フィールドモジュールの離散的入力および出力に対応する離散的入力および出力を有する)を生成するため、方法701を実施する。方法701を用いることにより、技術者または設計者は、処理プラントに存在するあらゆるフィールドモジュール用の制御要素(その数は数百または数千にも上る)を手動で設定しなければならない労力から解放される。方法701は、図3に示されるフィールドモジュール291、DIO CHARM293M、およびコントローラ258を参照して記載されているが、類似のフィールドモジュール、DIO CHARM、およびコントローラが本明細書記載の機能を実施してもよいことは理解されるであろう。
【0150】
方法701は、ステップ705、すなわちコントローラ258がDIOネットワーク299をまず検出する時点、またはコントローラ258がDIOネットワーク299への変更を検出する時点から始まる。コントローラ258は、CHARM293Mが機器140に挿入された時点および/またはフィールドモジュールがCHARM293Mに接続された時点で、DIOネットワーク299を検出してもよい。
【0151】
ステップ710において、コントローラ258は、DIOネットワーク299に関連付けられたプロファイルを要求する。特に、コントローラ258は、I/Oカード256およびCHARM293Mにプロファイル291Fを検索させ、プロファイル291Fをコントローラ258へ送信させる。
【0152】
ブロック705および710の破線外枠で示されるように、いくつかの例では、コントローラ258はステップ705および710を実施しない。その代わり、CHARM293Mおよび/またはI/Oカード256は、コントローラ258からの要求を受信することなく、サブネットワーク299への変更を検出し、プロファイル291Fをコントローラ258へ送信してもよい。CHARM293Mは、フィールドモジュール291のプロファイル291Fが最近アップロードしたプロファイルに一致するか否かを定期的に確認することにより、および/またはプロファイル291Fが更新された後、フィールドモジュール291が出す通知を受信することにより、サブネットワーク299への変更を検出してもよい。CHRAM293Mは、図6を参照して記載された方法601に従ってプロファイル291Fのタグ変更をオートセンシングしてもよい。
【0153】
いすれにせよ、ステップ711において、コントローラ258は、フィールドモジュール291用のプロファイル291FをI/Oカード256およびCHARM293から受信する。
【0154】
ステップ715において、コントローラ258はプロファイル291Fを分析し、フィールドモジュール291を示すタグ(例えば、「FM-291」)、および(i)フィールドモジュール291と、(ii)フィールドモジュール291に接続したフィールドデバイスI/Oコネクタ273~276との間のI/Oサブチャネルの信号を識別する。
【0155】
ステップ720において、コントローラ258はDIO制御要素259Fをインスタンス化し、要素259Fをデバイスタグ「FM-291」に接続する。更に、コントローラ258は、(プロファイル291から識別される)DI276用の信号タグをDI制御要素の出力に接続し、DO273~275用の信号タグをDIO制御要素の3つの入力に接続する。望ましい場合には、コントローラ258は、チャネル282用の信号タグを要素259Fのハイブリッド入力/出力へ接続してもよい。タグを要素259Fに接続した後、要素259Fを制御ルーチンに挿入し、他のブロック(例えば、入力ブロック、出力ブロック、または制御ブロック)にリンクし、DO273~275のいずれかに書き込んだり、および/またはDI276を読み取ったりしてもよい。
【0156】
フィールドモジュール291は、離散型信号273~276が伝達する情報とは異なる情報を生成してもよい。例えば、フィールドモジュール291は、フィールドモジュール291の健康を示す健康指標値、任意のI/Oサブチャネルまたはチャネル282の状態を示す1つ以上の通信状態指標、フィールドモジュール291における機能不全を示す1つ以上のエラーパラメータなどを生成してもよい。望ましい場合には、斯かる他のパラメータまたは指標は各々、要素259Fの出力に接続されてもよい。
【0157】
DIO要素の設定後、コントローラ258はフィールドモジュール291へ要求を定期的に送信し、要素259Fが最後に設定されてからプロファイル291Fが変更されていないかどうかを確認してもよい。コントローラ258がプロファイル291Fは変更されているという通知を受信したならば(ステップ705)、コントローラ258はステップ710~720を再び実施してもよい。
【0158】
(C.フィールドモジュールのプロファイルを更新するように設定された例示的携帯装置)
図8Aは、フィールドモジュール(例えば、フィールドモジュール291)のプロファイルを更新するのに使用される例示的携帯装置801のブロック図である。装置801は図3に示されるフィールドモジュール291を参照して記載されているが、装置801は、同様に、本明細書記載の操作に従って、任意の適切なフィールドモジュールと相互に影響を及ぼし合ってもよい。
【0159】
装置801によって、現場環境122にいる人は、プラントの後置環境125にあるワークステーションに戻ることなく、フィールドモジュールの近くにいる間に、(例えば、フィールドデバイスへのチャネルの追加、置換、または除去用の現場配線を更新した後)フィールドモジュール291を迅速かつ容易に更新できる。従って、装置801により、フィールドモジュール291を視認し、更新されたプロファイルがフィールドモジュール291への物理的変更を正確に反映しているか否かを確認または再確認できるようになる。携帯装置801は、処理制御環境の操作用に特別に構成されていてもよい。例えば、携帯装置801は本質的に安全である。すなわち、携帯装置801は、点火するだけのエネルギーを有さない/発しない構成要素だけを含む(例えば、全ての構成要素が24VDC未満の電圧および100mA未満の電流を維持するように構成される)ことにより、危険区域でも安全に操作できるように構成されていてもよい。別の例として、携帯装置801は、該装置801のユーザがプラント5の機器および変数を監視し、またはプラント5の変数または機器を操作し、プラント5の制御を実施できるようにする、オペレータ/保守点検ディスプレイを提供するように構成されていてもよい。
【0160】
携帯装置801は、ラップトップ、タブレット、移動電話、PDA、またはフィールドモジュール291のプロファイル291Fを更新するように構成された産業用コミュニケータなどの携帯電子装置である。装置801は、メモリ804に通信可能に接続されたプロセッサ802(任意の適切なマイクロプロセッサまたは汎用プロセッサであってよい)と、通信インターフェース806と、ユーザインターフェース(UI)808とを有している。装置801は、筐体および電池などの電源(図示しない)を有していてもよい。
【0161】
メモリ804は、非固定コンピュータ読み取り可能媒体(CRM)を含む任意の適切なメモリおよび/または記憶構成要素であってよいし、揮発性媒体および/または非揮発性媒体、および取り外し可能媒体および/または取り外し不能媒体を含んでいてもよい。メモリ804は、プロセッサ802によって実行され、装置801に帰属された機能を装置801が実行できるようにする1つ以上のルーチン812を記憶している。メモリ804は、フィールドモジュール291用のプロファイル814も記憶している。
【0162】
通信インターフェース806は、装置801が情報またはデータを他のシステムに送信したり、および/または情報またはデータを他のシステムから受信したりするのを可能にする任意の適切なインターフェースであってよい。特に、インターフェース806は、(例えば、NFCを通して)フィールドモジュール291と直接の無線接続を確立するための回路を含む。例えば、インターフェース806は、NFCタグ、NFCリーダー/ライター、非NFC RFIDタグ、および/またはRFIDインターフェース806を有していてもよい。望ましい場合には、インターフェース806は、アクセスポイントの1つ55aまたは55bに無線接続するための回路、および/または(USB、イーサネット(登録商標)などを通して)フィールドモジュール291に無線接続を確立するための回路を有する。
【0163】
UI808は、任意の適切なユーザ入力構成要素またはユーザ出力構成要素を有していてもよい。図示されているように、UI808はディスプレイを有しており、それはLCDディスプレイ、スマートウォッチディスプレイ、ヘッドセットディスプレイ(例えば、VRゴーグル)、任意の他の適切なディスプレイ、またはそれらのいくつかの組み合わせであってよい。UI808はタッチスクリーン818も有しており、それはディスプレイ816または1つ以上の「ソフトキー」表面に一体化された抵抗性または容量性タッチスクリーンであってもよい。望ましい場合には、UI808は、入力用に使用可能なボタンおよび他の機械的アクチュエータ、並びに任意の適切な音声または視覚出力構成要素を有していてもよい。
【0164】
操作中、装置801のユーザは、フィールドモジュール291のプロファイル291Fに含めたいと考える情報を有するように、(例えば、UI808を通して)プロファイル814を設定する。斯かる設定には、モジュール291用のデバイスタグ、および/またはフィールドモジュール291からフィールドデバイスコネクタへの1つ以上のI/Oサブチャネル用の信号タグの提供も含まれる。いくつかの例では、装置801は、後置125のサーバー(例えば、設定前プロファイル814を記憶するデータベース72bに連結されたサーバー)から設定前の状態でプロファイル814をダウンロードするだけでもよい。
【0165】
いすれにせよ、プロファイル814が設定され、フィールドモジュール291へのダウンロードの準備が整った後、装置801はフィールドモジュール291を検出し、あるいはフィールドモジュール291が装置801を検出し、通信チャネルが確立され、プロファイル291Fを置き換えるためにプロファイル814の全てまたは一部がフィールドモジュール291へダウンロードされる。
【0166】
最初の例示的設定として、装置801は、フィールドモジュール291の受動RFIDタグまたはNFCタグ(単にRFタグとも呼ばれる)を検出するRFIDまたはNFCリーダー/ライターを有する。例えば、装置801は、技術者がフィールドモジュール291のタグの近く(例えば、4インチ以内)に該装置801を配置すると、フィールドモジュール291のNFCタグまたはRFIDタグに電力を供給する磁場を生成するようにしてもよい。次に、NFCまたはRFIDタグは、装置801が第二組のプロトコルまたは基準(例えば、ブルートゥース(登録商標)またはWiFiダイレクト)を通してフィールドモジュール291にリンクをブートストラップできるようにする情報を運ぶ信号を送信してもよい。いくつかの例では、フィールドモジュール291は、代わりに、能動または電力RFIDタグを用いることにより接続能力範囲を15フィートまで延長してもよい。
【0167】
いくつかの例では、フィールドモジュール291のRFIDまたはNFCタグは、フィールドモジュール291のシステムタグを記憶および送信する。斯かる例では、装置801はリーダー/ライターを用いて新しいシステムタグをNFCまたはRFIDタグに書き込むことにより、フィールドモジュール291のシステムタグを更新してもよい。斯かる操作は、プロファイル291Fがシステムタグを有するようにはまだ設定されていない場合、あるいはプロジェクト変更によりフィールドモジュール291に異なるタグを割り当てる必要がある場合に役立つ。更に、フィールドモジュール291は、フィールドデバイスへの各潜在的I/Oサブチャネル用に、NFCまたはRFIDタグを有していてもよい。装置801はその各々に書き込めるので、各I/Oサブチャネル用にプロファイル291Fに記憶された信号タグの更新が可能となる。
【0168】
第二の例示的設定において、フィールドモジュール291がRFIDまたはNFCリーダー/ライターを有し、装置801がNFCタグおよび受動または能動RFIDタグを有していてもよい。斯かる例では、フィールドモジュール291のリーダー/ライターは、(例えば、フィールドモジュール291のリーダー/ライターが提供する磁場によって給電された後)装置801のRFIDまたはNFCタグによって送信される信号を検出する。フィールドモジュール291は斯かる情報に依存して、第一の例で記載したのと同様の方法で第二リンクをブートストラップしてもよい。
【0169】
いくつかの例では、装置801はRFIDまたはNFCタグへ望ましいシステムタグまたは信号タグを記憶し、RFIDまたはNFCタグに電力が与えられた場合にそれらが送信されるようにしてもよい。フィールドモジュール291はシステムタグを受信し、それに従ってプロファイル291Fを更新する。
【0170】
第三の例示的設定では、フィールドモジュール291および装置801は各々、相互検出が可能でNFCピアツーピア(p2p)接続も確立できるNFCリーダー/ライターを有していてもよい。装置801は、斯かるFNCp2p接続を通してフィールドモジュール291にプロファイル814の全部または一部を送信し、プロファイル291Fを置き換えてもよい。
【0171】
望ましい場合には、装置801は、(例えば、アクセスポイント55a、55b、または74、バックボーン10、およびI/Oネットワーク7を通して)フィールドモジュール291に間接接続を確立し、斯かる間接接続を通して、プロファイル814の全部または一部をフィールドモジュール291にダウンロードしてもよい。いくつかの例では、設定アプリケーション72aまたはサーバーは、携帯装置801とフィールドモジュール291との間の中間要素として機能してもよい。
【0172】
図8Bは、図8Aに示される携帯装置801を用いて、フィールドモジュール(例えば、図3に示されるフィールドモジュール291)でプロファイル(例えば、プロファイル291F)を更新する例示的方法851のフローチャートである。
【0173】
方法851は、携帯装置801がフィールドモジュール291を検出するステップ852で始まる。携帯装置801は、ユーザからの入力なしに、自動的かつ無線でフィールドモジュール291を検出する。検出には、任意の適切な短距離、中距離、または長距離無線標準またはプロトコルが使用されてよい。例えば、上述したように、検出を促進するため、NFC、RFID、またはブルートゥース(登録商標)プロトコルが、装置801およびフィールドモジュール291によって使用されてもよい。検出は、13.56MHz、900MHz、2.4GHz、5GHz、または60GHzのうちの1つ以上の無線周波数帯を用いて達成されてもよい。いくつかの実施においては、ユーザ入力が検出を促進してもよい。例えば、ユーザは、装置801によって表示されフィールドモジュール291とユニークに関連付けられたタグ、識別子、または画像を選択してもよい。斯かるユーザ操作により、装置801は無線でフィールドモジュール291を検出しようとする。
【0174】
ステップ854において、装置801は、装置801とフィールドモジュール291との間に無線チャネルを確立する。通信チャネルには、任意の適切な短距離、中距離、または長距離無線標準またはプロトコルが使用されてよい。更に、無線チャネルは、13.56MHz、900MHz、2.4GHz、3.GHz、5GHz、または60GHzのうちの1つ以上の無線周波数帯に対応していてもよい。いくつかの実施においては、無線チャネルは、フィールドモジュール291の検出に使用されるプロトコル(複数も可)とは異なるプロトコル(複数も可)に対応する。例えば、フィールドモジュール291は、WiFi、ブルートゥース(登録商標)、または他のいくつかの無線通信チャネルをブートストラップするのに利用されるRFID通信を通して検出されてもよい。いくつかの実施においては、無線チャネルは、検出に使用されるのと同じプロトコル(複数も可)に対応する(例えば、検出およびその後の通信にNFCが使用されてもよい)。いくつかの例では、装置801におけるユーザ入力が、通信チャネルの確立を促進してもよい。例えば、装置801がまずフィールドモジュール291を検出し、次にユーザが、フィールドモジュール291との通信を確立したいという意図を示すため、UI808を通してフィールドモジュール291を選択してもよい。例えば、装置801が複数のフィールドモジュールを検出し、ユーザが通信を確立するための特定のフィールドモジュールを選択してもよい。
【0175】
ステップ856において、装置801が、確立された無線チャネルを通してフィールドモジュール291のプロファイルを更新する。例えば、装置801は、プロファイルの要求をフィールドモジュール291に送信してもよい。次に、モジュール291は、プロファイルを装置801に送信することによりその要求に応答してもよい。
【0176】
装置801は、プロファイルを受信した後、プロファイルに記憶された情報を更新してもよい。例えば、モジュール291用のデバイスタグを変更してもよいし、モジュール291によって送信された、またはそれが受信した信号用の1つ以上の信号タグを変更してもよい。装置801は、プロファイル更新後、(例えば、古いプロファイルを上書きするためのコマンド、あるいは新しいまたは更新されたプロファイルをアクティブにするためのコマンドと一緒に)プロファイルをモジュール291へ送り返してもよい。UI808におけるユーザ入力により、装置801は、(アップロードを開始するボタンまたは他のUI要素を用いることにより)プロファイルをモジュール291へアップロードできる、またはそのアップロードが簡便化される。モジュール291のプロファイルの更新能力により、プラントの職員は、(例えば、モジュール291を追加の、または異なるフィールドデバイスまたはフィールドデバイス信号に接続する必要が生じた場合に)モジュール291を迅速かつ容易に再設定できる。
【0177】
(V.処理プラント用の改善された離散的I/O通信プロトコル)
図9Aおよび9Bは、図3に示されるチャネル282によって伝達され、それぞれプロトコル912およびプロトコル922に従って本明細書記載のシステム(図3に示されるCHARM293Mおよびフィールドモジュール291を含む)によって符号化、複合、送信、または受信される例示的データまたは通信信号910および920を示す。図10Aおよび10Bは、プロトコル922に従ってメッセージを符号化するための例示的方法1001、およびプロトコル922に従ってメッセージを復号するための方法1051をそれぞれ示す。
【0178】
(A.プロトコル912および922)
図9Bを参照すると、信号920は、信号910が対応するプロトコル912よりも多くの利点を提供する新規なビット単位離散型I/O通信プロトコル922(本明細書ではより一般的に「DIOプロトコル」と呼ばれる)に対応する。特に、プロトコル922は、プロトコル912に対して、改善されたエラー検出、およびより安定したチャネル282のDCレベルを提供する。
【0179】
図示されているように、信号910および920は各々、チャネル282を通してCHARM293Mによってフィールドモジュール291に送信されるメッセージのペイロード部分を運ぶ。信号910および920によって運ばれるペイロードは同じ情報内容(例えば、同じ変数値)を運ぶが、信号910が運ぶペイロードはプロトコル912によって符号化および復号され、信号920が運ぶペイロードはプロトコル922によって符号化および復号される。信号910および920は、DIO CHARM293M、I/Oカード256、またはそのいくつかの組み合わせによって符号化されてもよい。
【0180】
図9Aは、信号910によって運ばれるメッセージのペイロード部分に対応する信号910の一部、および時間t1~t8で生じる信号910の8つの例を示す。ペイロードは、DO_1-DO_8:“0101 1111” に関する8つの離散型出力値に対応する8つのビットを示す情報を伝達する。8つのDO値914は、まずコントローラ258によって生成され、その値を(例えば、バックプレーンを通して)CHARM293Mへ転送するI/Oカード256へ送信される。次に、CHARM293MはDO値をメッセージに符号化し、そのメッセージをチャネル282を通して送信する。図示されているように、プロトコル912は、「1」のビット値が+5Vの電圧によって示され、「0」のビット値が+1Vの電圧によって示される振幅変調に依存する非ゼロ復帰プロトコルである。いくつかの例では、プロトコル910は、値(例えば、0Vおよび5V、-5Vおよび5Vなど)を表示するのに、異なる振幅に依存してもよい。図9Aは、(CHARM293Mが接続された図5に示される機器140のバックプレーンから得られる)24V DC電力に重畳された通信信号910を示しており、ある場合には、チャネル282は信号910を運ぶが、電力は提供しない。
【0181】
図9Bを参照すると、プロトコル922はプロトコル912よりも多くの利点を提供する。プロトコル922は、(i)第一離散型入力または出力変数値を示す第一サブセットのビット、および(ii)第一変数値のビット反転を示す第二サブセットのビットを送信することにより符号化される一組のデータを必要とする。同様に、プロトコル922に従って送信される各変数値は、値を示す1つ以上のビットの第一サブセットおよび該値のビット反転を示す1つ以上のビットの第二サブセットによって示される。
【0182】
例えば、操作中、CHARM293Mは、(t1で示されるように)第一ビットを「0」に設定し、(t2で示されるように)第二ビットをDO_1の値の反転、すなわち「1」に設定することにより、DO_1の値でメッセージを符号化する。第一組のビットはDO_1の値を示す。CHARM293Mは、その他の値924の各々についても同様な操作を実行する。フィールドモジュール293Mは信号920を受信し、値924の各々に関して各組のビットを識別し(例えば、第一の2つのビットはDO_1に対応し、第二の2つのビットはDO_2に対応するなど)、ビット内の第二ビットまたはサブセットが第一ビットまたは第一サブセットのビット、反転を示すことを確認することによりメッセージを復号する。
【0183】
好都合なことに、プロトコル922は、符号化レベルで単一ビットのエラーおよび複数ビットのエラーが検出できるような高信頼性を信号920に付与する。例えば、フィールドモジュール291またはCHARM293Mは、信号920によって運ばれる第二サブセットのビットが第一サブセットのビットのビット反転を示さない場合にエラーを検出する。更に、プロトコル922においては、チャネル282のDCレベルにおける変更が少なくて済む。図9Aを参照すると、プロトコル912はDCレベルをある期間人工的に高くまたは低く維持できる。対照的に、プロトコル922が要求する反転プロセスにおいては、ある期間、より安定したDCレベルが維持される。更に、プロトコルが振幅変調用に正電圧および負電圧(例えば、+5Vおよび-5V)を使用する場合、DCレベルは、平均して、設計された電力レベル(例えば、24V)近くに維持されるであろう。
【0184】
信号910および920の各々によって運ばれるペイロードの前および/または後には、(i)ペイロード情報、例えば、ペイロード長、変数識別子(例えば、DO_1~DO_8の各々を示すDST)、(例えば、各変数に関してペイロード内のビット位置を示す)変数マッピング、変数長(例えば、ある例では、特定の変数は2進数ではなく、従って2つ以上のビットを示してもよい)など、(ii)経路情報、例えば、1つ以上のタグ、ハードウェアアドレス、またはメッセージの送り先(例えば、フィールドモジュール291)を示すネットワークアドレス、ペイロードで運ばれる変数値の送り先(例えば、フィールドデバイス252kのコネクタI/O273)、メッセージ源(例えば、CHARM293Mおよび/またはコントローラ258)、および/またはメッセージを送り先(例えば、I/Oカード256および/またはCHARM293M)へ送信するのに使用される任意の中間ノード、(iii)エラー検出および修正情報、例えば、チェックサム、パリティビット、および/または巡回冗長検査(CRC)、(iv)メッセージ作成に使用されるプロトコルタイプを識別するプロトコル情報、および/または(v)デバイスを送受信して、新しいメッセージの開始の識別、適切な変数へのビット位置のマッピング、および/またはメッセージの終わりの識別を可能にするプリアンブル、開始コード、および/または終止コードを運ぶメガデータ部分(例えば、ヘッダーおよび/またはトレーラー)が伝達される。
【0185】
図9Aおよび9Bは2進数の変数値のみを運ぶ信号910および920を示しているが、いくつかの例では、プロトコル910および920は、非2進数の値も符号化および復号が可能である。例えば、16進数を使用してもよく、その場合、例えば、最初の組の16ビットが第一値を示し、第二組の16ビットが第二値を示す。別の例では、2進化10進数(BCD)が使用されてもよく、その場合、各変数値は1つ以上のバイトまたは半バイトで特徴付けられ、各々が10進数字を示してもよい。BCDが使用される場合、メッセージメタデータまたはフィールドモジュールプロファイルは、各バイトまたは半バイトを特定の変数およびその変数の特定の桁にマッピングし、それを記憶させてもよい。例えば、タンクレベルに関する2桁のBCD値は、第一桁のレベル値に関しては第一組の8ビットによって、第二桁のレベル値に関しては第二組の8ビットによって示されてもよい。
【0186】
いくつかの実施形態において、システム5、特にCHARM293Mおよびフィールドモジュール291は、チャネル282を通して送受信される信号用の異なる符号化プロトコルおよび復号プロトコル、例えば、マンチェスタ符号化に依存してもよい。しかし、マンチェスタ符号化には欠点がある。例えば、マンチェスタ符号化では、データ信号の帯域幅に対してデータ転送速度が半分になる。マンチェスタ符号化された信号はビット毎にトランジションが必要である(すなわち、1つの標準的な論理状態を運ぶのに2つのマンチェスタ論理状態が使用される)。更に、マンチェスタ符号化は自己クロッキングであり、従って、信号が復号される場合、信号からのクロック再生が必要である。プロトコル922は、信号920内にクロックが埋め込まれるのを必要としないので、復号中、信号からのクロック再生は要求されない。
【0187】
いくつかの例において、プラント5は追加技術または代替技術を実施してもよい。例えば、いくつかの例において、プラント5は、プロトコル912または922と同じ一般的なコーディング技法を用いるがゼロ復帰(RTZ)コーディング(信号がパルス間でゼロに低下する)に依存するプロトコル、および/または値を示すため一定の電圧レベルではなく電圧レベル間のトランジションに依存するプロトコルを実施する。更に、望ましい場合には、プラント5は、プロトコル912または922と同じ一般的なコーディング技法を用いるが、値を示すのに、信号の振幅ではなく信号の周波数または位相を変調するプロトコルを実施してもよい。
【0188】
(B.プロトコル522によるメッセージの符号化)
図10Aは、図3に示されるCHARM293Mおよび/またはフィールドモジュール291によって実施されてもよい、プロトコル922に従ってメッセージを符号化する例示的方法1001のフローチャートである。方法1001は、電力および離散通信を提供するチャネル上で、改善されたエラー検出および安定なDCレベルを提供する。
【0189】
高レベルにおいて、方法1001には、4つのステップ、すなわちDI信号受信ステップ1005/1007、メッセージ符号化ステップ1009、メッセージマッピングステップ1011、およびメッセージ送信ステップ1013が含まれる。
【0190】
ステップ1005および1007において、それぞれ変数値V1およびV2を運ぶ離散信号DI_1およびDI_2が受信される。例えば、図3を参照すると、フィールドモジュール291は、フィールドデバイスコネクタ276へのサブチャネルを通してDI_1を受信し、第二フィールドデバイスコネクタへのサブチャネル(図示しない)を通してDI_2を受信してもよい。
【0191】
フィールドモジュール291は、離散型信号を受信した後、(例えば、サブチャネルの電圧に基づいて)信号を復号し、ステップ1009でメッセージを符号化する。符号化されたメッセージは、一般的に、処理プラントの(例えば、図3に示されるフィールドデバイス252KのI/Oコネクタ276からの)DI信号に対応する変数値を運ぶので、「DIメッセージ」と呼ばれることもある。しかし、メッセージは、プロトコル922を通して、フィールドデバイスからのDI信号(例えば、フィールドモジュール291によって生成される指標値、またはDO信号に対応する値)に対応しない情報を用いて符号化してもよい。いずれにせよ、ステップ1009は、DIメッセージ用のペイロードが生成されるサブステップ1015、およびDIメッセージ用のメタデータが生成されるサブステップ1017を含む。
【0192】
サブステップ1015において、一組のビットが、値V1(サブステップ1021)およびV2(サブステップ1031)の各々用に生成される。特に、V1に関して言えば、V1を示す第一サブセットのビットが生成され(サブステップ1023)、VIのビット反転を示す第二サブセットのビットが生成される(サブステップ1025)。V2に関して言えば、V2を示す第一サブセットのビットが生成され(サブステップ1033)、V2のビット反転を示す第二サブセットのビットが生成される(サブステップ1035)。フィールドモジュール291は、全ての第二サブセットが、第一サブセットのビットによって示される値のビット反転を示すことを確認してもよい。そうでなければ、フィールドモジュール291はエラー信号をCHARM293Mへ送信し、符号化エラーが生じたことをCHARM293Mに通知してもよい。いずれにせよ、エラーが検出されなければ、各ビットの組がメッセージのペイロード内のビット位置に符号化される。
【0193】
サブステップ1017に関して言えば、図9Aおよび9Bを参照して例示的メタデータが上述された。メタデータは、(例えば、プロトコル922にとってユニークな特定の開始コードまたは終止コードを通して)DIメッセージの開始および/または終止を示していてもよい。いくつかの例では、DIメッセージ用に生成されるメタデータはとても僅かまたはゼロである。
【0194】
ステップ1011において、タグツーメッセージマップが生成されてもよい。制御システム5は、DI_1およびDI_2(各々変数(例えば、制御弁状態)を示す)の各々に関してユニークなタグを有していてもよい。タグツーメッセージマップは、DIに対応する各タグについてDIメッセージ内でビット位置を識別する。ステップ1011は、方法1001の他の任意のステップの前に生じてもよく、図3に示されるプロファイル291Fに記憶されてもよい(次に、それは、CHARM293M、I/Oカード256、コントローラ258、および/またはプラント5内の他の装置へアップロードされてもよい)。いくつかの例では、マップは、ステップ1017で生成されるメタデータに含まれる。
【0195】
ステップ1013において、フィールドモジュール291は、(CHARM293Mによって受信および復号されてもよい)DIメッセージを伝達する離散信号H1をI/Oチャネル282を通して送信する。送信された離散信号用の「H1」ラベルは、信号H1が離散信号DI_1およびDI_2とは異なることを示す以外、何ら重要性を有していない。フィールドモジュール291は、インターフェース291Hおよびチャネル282を通して信号H1をCHARM293Mへ送信し、インターフェース291Gに個別に配線された2つのチャネルを通して信号DI_1およびDI_2を受信する。
【0196】
図10Aに示されるステップ1009は、変数値を伝達するDIメッセージを符号化するフィールドモジュール291用のサブステップを示しているが、ステップ1009のサブステップは、任意の望ましい情報を伝達するメッセージを符号化するため、任意の適切な装置(例えば、CHARM293M)によって同様に用いられてもよい。一般的に、CHARM293Mは、フィールドデバイスサブチャネルを通して受信した変数値を符号化するのではなく、I/Oカード256およびコントローラ258を通して受信するコマンドをメッセージに符号化する。CHARM293Mはチャネル282を通して「DOメッセージ」を送信するので、それはフィールドモジュール291によって受信および復号され、次にフィールドモジュールはI/Oサブチャネルを通して適切なフィールドデバイスへコマンドを送信する。
【0197】
(C.プロトコル922によるメッセージの復号)
図1Bは、図3に示されるCHARM293Mおよび/またはフィールドモジュール291によって実施されてもよい、プロトコル922に従ってメッセージを復号する例示的方法1051のフローチャートである。方法1051は、電力および離散通信を提供するチャネル上で、改善されたエラー検出および安定なDCレベルを提供する。
【0198】
高レベルにおいて、方法1051には、4つのステップ、すなわちメッセージ受信ステップ1055、メッセージ復号ステップ1057、離散型出力(DO)信号符号化ステップ1059、およびコマンド送信ステップ1061が含まれる。
【0199】
ステップ1055において、フィールドモジュール291は離散信号H1が伝達するメッセージを受信する。上述したように、「H1」ラベルは、受信信号を他の離散信号(例えば、ステップ1059および1061で参照されるDO信号)から区別する以外、重要性を有しない。
【0200】
ステップ1057において、フィールドモジュール291は、受信メッセージをプロトコル922に従って復号する。受信メッセージは、一般的に、DO信号を通してフィールドデバイスによって受信されるコマンドまたは制御出力の値を(例えば、図3に示されるフィールドデバイス252KのI/Oコネクタ273-275の1つを通して)運ぶので、受信メッセージは「DOメッセージ」と呼ばれることもある。しかし、復号ステップ1057は、メッセージがプロトコル922を通して符号化されている限り、任意の適切な情報(例えば、DI信号に対応する値、フィールドモジュール291用のコマンドなど)を伝達するメッセージを復号するのに用いられてよい。いずれにせよ、ステップ1057は、特定のコマンドまたは他の情報を示すビットを識別するサブステップ1061および1071を含む。
【0201】
特に、サブステップ1065において、フィールドモジュール291は、第一組内において、コマンドC1を示す第一サブセットのビットを識別する。サブセット1067において、フィールドモジュール291は、第一組内において、コマンドC1のビット反転を示す第二サブセットのビットを識別する。第二サブセットが第一サブセットのビット反転を示さない場合、コマンドC1は「捨てられ」、デフォルトのコマンド(例えば、以前存在したコマンドまたは所定の「安全な」コマンド)が代わりに用いられる。サブステップ1075および1077において、フィールドモジュール291は、第二組のビット内に、コマンドC2を示す第一サブセットのビットおよびコマンドC2のビット反転を示す第二のサブセットのビットを識別するため、類似の操作を行う。
【0202】
サブステップ1063および1073において、フィールドモジュール291は、それぞれコマンドC1およびC2用に、標的フィールドデバイスサブチャネルまたはI/OコネクタX1およびX2を識別する。フィールドモジュール291は、(例えば、どのタグがメッセージ内のどのビット位置に対応するかを示す)タグツーメッセージマップの分析、および/または(例えば、どのタグがどのハードウェアアドレスに対応するかを示す)タグツーハードウェアマップに基づいて、斯かる標的サブチャネルを識別する。斯かるマップは、プロファイル291Fに記憶されてもよいし、DOメッセージのメタデータ部分に含められてもよい。
【0203】
DOメッセージが復号された後、フィールドモジュール291は、(チャネルX1が伝達する)信号DO_1および(チャネルX2が伝達する)信号DO_2を各々復号することにより、コマンドC1(サブステップ1091)およびC2(サブステップ1093)を適切なフィールドデバイスI/OチャネルX1およびX2にそれぞれ送信する。一般的に、コマンドC1およびコマンドC2の符号化工程は、適切な信号の電圧を2つのレベルの1つ(例えば、5Vまたは1V)に駆動する工程だけを含む。
【0204】
図10Bに示されるステップ1057は、コマンド値を運ぶDOメッセージを復号するフィールドモジュール291用のサブステップを示しているが、1057のサブステップは、プロトコル922に従って符号化されるメッセージを復号するため、任意の適切な装置(例えば、CHARM293M)によって同様に用いられてよい。例えば、CHARM293Mは、フィールドモジュール291から受信したDIメッセージを復号し、DI値の組を識別するのにステップ1057を実施してもよい。次に、CHARM293Mは、斯かるDI値(望ましい場合には、関連付けられたタグ)をI/Oカード256および/またはコントローラ258へ転送してもよく、その結果、コントローラ258は、(例えば、測定された処理変数、例えば、流速、タンクレベル、弁の位置、圧力レベル、温度などを示す)DI値を適用する制御ルーチンを実施できるようになる。
【0205】
(VI.他の考察)
離散型処理制御要素(例えば、離散型装置、離散型通信チャネル、離散信号など)を管理し、制御システム5内の離散型要素のスマート試運転を実行するための種々の態様、機器、システム、構成要素、デバイス、方法、および技術が以下に記載される。
【0206】
上述したように、本明細書記載のスマート試運転技術により、処理プラント5の試運転にかかる時間、人材、およびコストが大幅に削減される。処理プラントには何百、何千、あるいは何万もの離散型要素(処理プラントの操作が開始される前に、その各々が試運転されなければならない)を含んでいるので、スマート試運転により導かれる人材および時間の節約(従って財政的な節約)は膨大である。更に、スマート試運転技術の少なくとも一部は自動的に行われるので、ユーザエラーの生じる可能性は少なくなり、従って、従来の試運転技術よりも更に正確なものとなる。
【0207】
本明細書記載のスマート試運転技術は、処理制御システム5に関して記載されているが、本明細書記載のスマート試運転技術の任意の1つ以上が、処理制御プラントの処理制御安全情報システム、例えば、Emerson Process Managementが提供するDeltaV SIS(登録商標)にも同様に適用可能である。例えば、独立型処理制御システムまたは統合制御安全システム(ICSS)が、本明細書記載のスマート試運転技術の任意の1つ以上を用いて試運転されてもよい。
【0208】
加えて、ソフトウェアで実施される場合、本明細書記載のアプリケーション、サービス、およびエンジンはいずれも、例えば、磁気ディスク、レーザディスク、固体メモリ装置、分子メモリ記憶装置、または他の記憶媒体における任意の有形の非固定コンピュータ読み取り可能メモリ、コンピュータまたはプロセッサのRAMまたはROMに記憶させてもよい。本明細書記載の例示的システムは、特にハードウェアで実行されるソフトウェアおよび/またはファームウェアを含むものとして記載されているが、斯かるシステムは例示的なものに過ぎず、限定的に考えられるべきものではない。例えば、斯かるハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアはいずれも、または全て、独占的にハードウェアで具体化されてもよいし、独占的にソフトウェアで具体化されてもよいし、またはハードウェアとソフトウェアの任意の組み合わせで具体化されてもよい。従って、本明細書記載の例示的システムが、1つ以上のコンピュータ装置のプロセッサで実行されるソフトウェアで実施されているように本明細書に記載されていたとしても、提供されている例は斯かるシステムを実施する唯一の方法でないことを当業者は容易に想到するであろう。
【0209】
方法601、701、851、1001、および1051を参照すると、記載されている機能は、部分的にも全体的にも、図1Aに示されるシステム5の装置、回路、および/またはルーチンによって実施されてもよい。記載されている方法は各々、それぞれの方法の論理機能を実行するように永久的または半永久的に構成された一組の回路(例えば、ASICまたはFPGA)、またはそれぞれの方法の論理機能を実行するように少なくとも一時的に構成された一組の回路(メモリに記憶された論理機能を示す1つ以上のプロセッサおよび命令またはルーチン)によって具体化されてもよい。
【0210】
本発明は特定の例を参照して記載されているが、それらは例示的なものに過ぎず、本発明を限定する意図は全くないものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示されている実施形態について変更、追加、または削除が行われてもよいことは、当業者には明白である。さらに、前述のテキストは数多くの様々な実施形態を詳細に記載してあるが、本特許の範囲は本特許の終わりに説明される特許請求項の言葉およびその等価物によって規定されるものであることは理解されるべきである。詳細な説明は例示的な目的のみであり、あらゆる可能な実施形態を記載するものではない(あらゆる可能な実施形態を記載するのは不可能ではないにしても非実際的である)。数多くの代替実施形態が、現在の技術、または本特許の出願日後に開発される、本特許請求項の範囲およびその等価物内の技術を用いて実施可能であろう。
【0211】
本明細書全体を通して、単一の例として記載されている構成要素、操作、または構造体を、複数の例が実施してもよい。1つ以上の方法の個々の操作が別々の操作として図示および記載されているが、特定の実施形態においては、個々の操作の1つ以上が同時に行われてもよい。
【0212】
本明細書に記載される場合、「1つの実施形態」への言及は、その実施形態との関連で記載される特定の要素、特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれるものであることを意味している。本明細書の種々の場所に使用される「1つの実施形態において」と言う句は、必ずしも全てが同じ実施形態について言及しているものではない。
【0213】
本明細書に記載される場合、「有する」、「有して」、「含む」、「含んで」、「持つ」、「持って」と言う用語、またはその任意の他の変形は、非排他的包含を意図したものである。例えば、種々の要素を含む処理、方法、物品、または機器は、必ずしも斯かる要素のみに限定されるものではなく、明示的に掲載されていない他の要素、または斯かる処理、方法、物品、または機器に本来備わっている他の要素を含むものである。更に、明示的に別の意味が記載されていない限り、「または」と言う用語は、包含的な「または」であり、排他的な「または」ではないことを意味する。例えば、AまたはBの状態は、以下の任意の1つによって満たされる。Aは真実であり(または存在し)、Bは偽りである(または存在しない)、Aは偽りであり(存在せず)、Bは真実である(または存在する)、およびAもBも真実である(または存在する)。
【0214】
加えて、「a(1つの)」または「an(1つの)」は、本明細書記載の実施形態の要素および構成要素を記載するのに使用される。一般的に、システムまたは技術が「a(1つの)」部分または「a(1つの)」ステップを含むものとして記載されている場合、システムまたは技術は、1つまたは少なくとも1つの部分またはステップを含むものと解釈されるべきである。言い換えると、例えば、1つの青い器具として記載されているシステムは、(システムは青い器具を1つしか含んでいないことが明白でない限り)いくつかの実施形態においては複数の青い器具を含んでいてもよい。
【0215】
本明細書全体において、以下の用語および句のいくつかが使用される。
【0216】
(試運転) 試運転は少なくとも2つのカテゴリ、すなわち従来の試運転とスマート試運転とに分けられる。従来の試運転技術は、試運転が現場環境122において任意の重要な方法で開始できる前に、図1に示される現場環境122に置かれた種々の構成要素の名前および識別子並びに他の構成要素との関連および相互関係を後置環境125において規定する必要がある。すなわち、従来の試運転技術は、種々の現場構成要素が後置環境125でまず構成および規定され、斯かる試運転データが、現場環境122の構成要素の試運転に現場環境122内で利用可能となるには、処理制御システム5内の既存の通信経路を通して現場環境122へダウンロードまたは通信されなければならない。例えば、試運転データ(設定および定義を含む)は、通常、試運転データが、現場環境122における1つ以上の試運転行動を実行するのに利用可能となるように、従来の試運転技術を用いて、データハイウェイ10を通して、後置環境125からコントローラ120およびI/O装置108へ、ある場合には現場環境122のフィールドデバイス102へ送信される。
【0217】
一方、スマート試運転では、現場環境122における試運転活動を開始する前に、設定および定義が後置環境125において完全に完了する必要はない。代わりに、本明細書記載のスマート試運転技術では、処理プラントの後置環境125で実行される機能/論理設計および工学技術の進展とは独立に、物理的設計、設置、工学技術、および試運転が処理プラント5の現場環境122で開始および実行できる。例えば、現場環境122が処理プラント5の後置環境125に通信可能に接続される前に、例えば、現場環境122と後置環境125とが通信面で切断されている間に、および/または現場環境122に設置されたループ(またはその一部)が後置環境125から通信面で切断されている間に、種々の試運転活動が処理プラント5の現場環境122において実行できる。
【0218】
例えば、試運転活動の少なくとも一部は、処理制御システムまたはプラント5が、特定のI/Oカードおよび/またはI/Oチャネルへのフィールドデバイスの割り当てを知る前に実行されてもよい。加えてまたはその代わりに、種々の構成要素が処理制御ループの他の構成要素から切断されている間に、および/または種々の構成要素がループの他の構成要素へまだ割り当てられていない間に、種々の試運転活動が処理制御ループの種々の構成要素で形成されてもよい。従って、スマート試運転により、試運転プロセスの少なくとも一部が、場所的に、自動的に、分散的に、および/または平行して実行できるようになり、装置、構成要素、および処理プラント5の他の部分が、プラントまたはシステム5に全体的に組み込まれたり一体化されたりする前に、部分的または全体的に試運転されるようになり、その結果、従来の試運転技術と比べて、処理プラントを試運転するのに必要な時間、人材、コストが大幅に削減できる。
【0219】
(通信インターフェース)記載されている装置および/またはシステムのいくつかは、「通信インターフェース」(「ネットワークインターフェース」と呼ばれることもある)を含んでいる。例えば、装置806は、通信インターフェース806を含む。インターフェース806などの通信インターフェースは、システムが情報を他のシステムへ送信したり、情報を他のシステムから受信したりするのを可能にするが、有線および/または無線通信用の回路を含んでいてもよい。
【0220】
装置801および図8を参照すると、通信インターフェース806により、装置801は、任意の適切なネットワーク、例えば、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、または広域ネットワークを通して、フィールドモジュール291および/または他のコンピュータシステムまたはサーバーへ接続できる。特に、通信インターフェース806は、NFC用のプロトコルおよび基準(13.56MHz帯で作動)、RFID(125~134kHz、13.56MHz、および/または856MHz~960MHzの周波数帯で作動)、ブルートゥース(登録商標)(2.4~2.485GHzで作動)、WiFiダイレクト(2.4GHzまたは5GHz帯で作動)、および/または無線通信を可能にする任意の他の通信プロトコルまたは基準に従って、装置801をフィールドモジュール291に無線で接続するための回路を有する。
【0221】
(通信リンク) 「通信リンク」または「リンク」は、2つ以上のノードを接続する経路または媒体である。リンクは物理的リンクであってもよいし、論理リンクであってもよい。物理的リンクは、情報を転送するためのインターフェースおよび/または媒体(複数も可)であり、有線であってもよいし、無線であってもよい。物理的リンクの例としては、電気エネルギーの伝送用のコンダクタを有するケーブル、光の送信用の光ファイバー接続、および/または電磁波(複数も可)の1つ以上の特性への変化を通して情報を運ぶ無線電磁信号を含んでいてもよい。
【0222】
2つのノード間の論理リンクは、基盤となる物理的リンクおよび/または2つ以上のノードを接続する中間ノードの抽象概念を示す。例えば、2つ以上のノードが、論理リンクを通して論理的に連結されてもよい。論理リンクは、物理リンクと中間ノード(例えば、ルータ、スイッチ、または他のネットワーキング機器)の任意の組み合わせを通して確立してもよい。
【0223】
リンクは「通信チャネル」と呼ばれることもある。無線通信システムにおいて、「通信チャネル」(または単に「チャネル」)と言う用語は、一般的に、特定の周波数または周波数帯を意味する。キャリヤ信号(またはキャリア波)は、特定の周波数で、あるいはチャネルの特定の周波数以内で送信されてもよい。いくつかの例では、複数の信号が単一の帯域/チャネルを通して送信されてもよい。例えば、信号は、異なる副バンドまたは副チャネルを通して、単一の帯域/チャネル上を同時に送信される場合もある。別の例として、信号は、それぞれの送信機および受信機が問題の帯域を使用するタイムスロットを割り当てることにより、同じ帯域を用いて送信されてもよい。
【0224】
(メモリおよびコンピュータ読み取り可能媒体) 一般的に、本明細書で使用される場合、「メモリ」または「メモリ装置」と言う用語は、コンピュータ読み取り可能媒体(CRM)を含むシステムまたは装置を意味する。「CRM」とは、情報(例えば、データ、コンピュータ読み取り可能命令、プログラムモジュール、アプリケーション、ルーチンなど)を配置、保存、および/または検索するための関連コンピュータシステムによってアクセス可能な媒体(複数も可)を意味する。「CRM」は固定の媒体を意味し、ラジオ波のような実体のない過渡信号を意味するものではない。
【0225】
CRMは、関連コンピュータシステムに含まれる、または関連コンピュータシステムと通信状態にある任意の技術、装置、または装置群で実施されてもよい。CRMは、揮発性媒体および/または不揮発性媒体、および取り外し可能媒体および/または取り外し不能媒体を含んでもよい。CRMには、限定されないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル汎用ディスク(DVD)または他の光ディスクメモリ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクメモリまたは他の磁気メモリ装置、あるいは情報を記憶しコンピュータシステムによってアクセス可能な任意の他の媒体が含まれてもよい。CRMはシステムバスに通信可能に連結されてもよく、その場合、それによって、CRMとシステムバスに連結された他のシステムまたは構成要素との間の通信が可能になる。いくつかの実施においては、CRMは、メモリインターフェース(例えば、メモリコントローラ)を通してシステムバスに連結されてもよい。メモリインターフェースとは、CRMとシステムバスとの間のデータの流れを管理する回路である。
【0226】
(ネットワーク) 他の内容が明記されていない限り、情報またはデータを通信するシステム(複数も可)または装置(複数も可)の文脈で使用される場合、本明細書で使用される「ネットワーク」と言う用語は、ノードの集まり(例えば、情報を送信、受信、および/または転送可能な装置またはシステム)、およびノード間のテレコミュニケーションを可能にするように接続されたリンクを意味する。
【0227】
ネットワークには、ノード間のトラフィックの方向付けに責任のある専用ルータ、および任意に、ネットワークの設定および管理に責任のある専用装置が含まれる。ノードの一部または全部が、他のネットワーク装置間で送られるトラフィックの方向付けをするため、ルータとしての機能に適合されてもよい。ネットワーク装置は、有線または無線モードで相互接続されていてもよい。ネットワーク装置は、異なるルーティングおよび転送機能を有していてもよい。例えば、専用ルータは高容量通信が可能であってもよいが、いくらかのノードは、同じ期間に比較的わずかなトラフィックしか送受信できなくてもよい。加えて、ネットワークのノード間の接続は、異なるスループット能力および異なる減衰特性を持っていてもよい。光ファイバケーブルは、例えば、媒体に本来備わった物理的限界の違いによって、無線リンクよりも数桁多い帯域を提供できてもよい。ネットワークには、ネットワークまたはサブネットワーク、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)が含まれてよい。
【0228】
(ノード) 一般的に、「ノード」と言う用語は、接続点、再分配点、または通信端点を意味する。ノードは、情報を送信、受信、および/または転送可能な任意の装置またはシステム(例えば、コンピュータシステム)であってよい。例えば、メッセージを開始する、および/またはメッセージを最終的に受信する末端装置または末端システムがノードである。メッセージを(2つの末端装置間で)受信および転送する中間装置も一般的に「ノード」と見なされる。
【0229】
(プロセッサ) 本明細書記載の例示的方法の種々の操作が、少なくとも部分的に1つ以上のプロセッサで実行されてもよい。一般的に、「プロセッサ」および「マイクロプロセッサ」と言う用語は同意語として使用され、各々が、メモリに記憶された命令を検索および実行するように構成されたコンピュータプロセッサを意味する。プロセッサ(複数も可)は、斯かる命令を実行することにより、命令によって規定される種々の操作または機能を実行できる。プロセッサ(複数も可)は、特定の実施形態次第ではあるが、関連操作または機能を実行するように(例えば、命令またはソフトウェアによって)一時的に構成されていてもよいし、あるいは永久的に構成されていてもよい(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)用のプロセッサ)。プロセッサは、チップセット(例えば、メモリコントローラおよび/またはI/Oコントローラを含んでもよい)の一部であってよい。チップセットは、I/Oおよびメモリ管理機能、並びに複数の汎用および/または特殊レジスタ、タイマーなどを提供するように構成された、集積回路内の電子構成要素の集まりである。一般的に、本明細書記載のプロセッサの1つ以上が、システムバスを通して、他の構成要素(例えば、メモリ装置およびI/O装置)に通信可能に連結されていてもよい。
【0230】
特定の操作の実行が、単一の機械内にあるだけでなく、いくつかの機械間に配置された1つ以上のプロセッサ間に分散されていてもよい。いくつかの例示的実施形態においては、プロセッサ(複数も可)は、(例えば、住宅環境内、オフィス環境内、またはサーバーファームとして)単一の場所に配置されていてもよいが、別の実施形態においては、プロセッサはいくつかの場所間に分散されていてもよい。
【0231】
「処理する」、「算出する」、「計算する」、「決定する」、「提出する」、「表示する」などと言う用語は、情報を受信、記憶、送信、または表示する1つ以上のメモリ(例えば、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはそれらの組み合わせ)、レジスタ、または他の機械の構成要素内の物理的(例えば、電子、磁気、または光学)量として示されるデータを操作または変換する機械(例えば、コンピュータ)の行動または処理を意味する。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B