(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169454
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】知育玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 33/00 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
A63H33/00 302Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080548
(22)【出願日】2022-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-12
(71)【出願人】
【識別番号】322005389
【氏名又は名称】矢崎 稚佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100156498
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 智之
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 稚佳子
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150BA01
2C150BB01
(57)【要約】
【課題】溝により形成された線で描かれた線画(線図)を親指でなぞって認識することで脳を刺激し活性化させる知育玩具を提供する。
【解決手段】知育玩具1は、少なくとも1つの平面部2と、平面部2に描かれた文字、図形、記号のいずれか又はこれらの所望な結合であって線を溝3により形成して得た線画とを具備
し、平面部2は多角柱又は略円柱若しくは略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面であり、溝3は平面部2に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの平面部と、前記平面部に描かれた文字、図形、記号のいずれか又はこれらの所望な結合であって線を溝により形成して得た線画とを具備することを特徴とする知育玩具。
【請求項2】
片手で保持可能な程度の所望の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項3】
前記知育玩具は杉又は檜の削り出しによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項4】
前記平面部は多角柱の天面および底面の少なくともいずれか一面であることを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項5】
前記平面部は略円柱又は略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面であることを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項6】
前記線画は動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の知育玩具。
【請求項7】
前記溝は前記平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部と前記山部の両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の知育玩具。
【請求項8】
前記山部の頂点は前記平面部より所望の高さ突出していることを特徴とする請求項7に記載の知育玩具。
【請求項9】
前記山部の頂点は前記平面部より所望の高さ陥没していることを特徴とする請求項7に記載の知育玩具。
【請求項10】
略円柱又は略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面である平面部と、前記平面部に描かれた図形であって線を溝により形成して得た線画とを具備し、前記溝は前記平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部と前記山部の両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であって、前記線画は動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形であって、かつ、杉又は檜の削り出しからなり、片手で保持可能な程度の所望の大きさであることを特徴とする知育玩具。
【請求項11】
前記山部の頂点は前記平面部より所望の高さ突出していることを特徴とする請求項10に記載の知育玩具。
【請求項12】
前記山部の頂点は前記平面部より所望の高さ陥没していることを特徴とする請求項10に記載の知育玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝により形成された線で描かれた線画(線図)を指、特に親指の腹でなぞった際の感触、すなわち触覚のみにより認識することで脳を刺激し活性化させることを主な目的とする知育玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の知育玩具として、特に触覚の刺激に着目された知育玩具として、複数個の同形の人形からなり、それぞれが手触りの異なる素材から構成されたものがあった(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、絵柄、欧文字・数字などが掘られた木のタイルがあった(例えば、非特許文献1を参照)。
【0004】
さらに、形状(輪郭)そのものが欧文字(例えば、非特許文献2を参照)や動物(例えば、非特許文献3を参照)である木のブロックがあった。
【0005】
さらに、正八面体の各面(全面)に数字を突形状に形成したものがあった(例えば、非特許文献4を参照)。
【0006】
以上のような知育玩具は、触覚を刺激することで、乳幼児期における知能の発達に寄与することが可能である。特に、乳幼児期における触覚の刺激は、大脳の発達を促すとされていることから、触覚の刺激を目的とする知育玩具は従来から少なからず存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】木のおもちゃ専門店 おもちゃの森sapporo,“プラントイ ナンバー1-10(2)”,[online],[令和4年5月9日検索],インターネット<URL:https://www.omochanomori.jp/SHOP/pl5641.html>
【0009】
【非特許文献2】木のおもちゃ専門店 おもちゃの森sapporo,“PLANTOYS(プラントイ)アルファベットA-Z”,[online],[令和4年5月9日検索],インターネット<URL:https://www.omochanomori.jp/SHOP/pl5168.html>
【0010】
【非特許文献3】木のおもちゃ・こども家具の製造直販 なかよしライブラリー,“動物積み木”,[online],[令和4年5月9日検索],インターネット<URL:https://wooden-toy.net/c/toy/no016>
【0011】
【非特許文献4】楽天市場 夢みつけ隊 ONLINE SHOPPING,“指先で数字を認識して脳を活性化!脳活玉(2個組)”,[online],[令和4年5月9日検索],インターネット<URL:https://item.rakuten.co.jp/yume/83d8a/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に係る知育玩具は複数個の同形の人形からなり、それぞれが手触りの異なる素材から構成され(同公報の請求項1および段落0015を参照)、これにより、五感のうちの触覚を刺激することで大脳の発達を促す(同公報の段落0060を参照)としている。
【0013】
しかし、特許文献1に係る知育玩具は指先(指の腹)のみならず手の平も含めた手全体から得た触覚を刺激するものであり、指先(指の腹)、特に親指の腹から得た触覚の刺激に着目したものではない。また、外形(輪郭)そのものを例えば動物(同公報の
図1および段落0014を参照)としたりすることで視覚的な楽しみは得られようが、これは手触りの異なる素材を手全体で触り触覚を刺激することで大脳の発達を促すという本質的な効果を実現する手段とは完全に独立した手段による副次的な効果に過ぎない。すなわち、親指の腹でなぞった際の感触、すなわち触覚のみにより認識することで脳を刺激し活性化させることを主な目的とする知育玩具において、特許文献1に係る知育玩具の技術的特徴(素材の手触り感)は当該目的の達成手段にはなり得ない。
【0014】
非特許文献1に係る知育玩具は木のタイルの表面に凹み(絵柄、欧文字・数字など)が形成されており、指でなぞって書き順を学習したり、袋に入れて数字を言い当てるゲームが楽しめるとしている。
【0015】
しかし、非特許文献1に係る知育玩具は線画(線図)ではなく面的な凹みにより形成された絵柄などを指でなぞるものであるから、指先から得るべき触覚に繊細さが求められるものではなく、したがって、触覚の刺激によって脳の活性化を促すという効果は極めて不十分である。
【0016】
非特許文献2および3に係る知育玩具は共に形状(輪郭)そのものを欧文字や動物に形成していることから、視覚を遮ってそれが何であるかを予想、想像するにあたっては、指先の触覚というよりも手全体の触覚に大きく依存するものであり、したがって、指先、特に親指の腹への刺激効果は殆ど期待できない。
【0017】
非特許文献4に係る知育玩具は正八面体の各面(全面)に数字を突形状に形成していることから、視覚を遮ってそれが何であるかを予想、想像するにあたっては、指先の触覚というよりも手全体の触覚に大きく依存するものであり、加えて、突形状の場合、得るべき触覚に繊細さが求められるものではなく、したがって、指先、特に親指の腹への刺激効果は殆ど期待できない。
【0018】
その他、触覚の刺激を目的とする知育玩具は従来から少なからず存在しているが、親指の腹に刺激を与え、適度に脳を活性化するという観点に着目したものは発明者が調べた限り見当たらない。
【0019】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、例えば請求項1に係る発明では、文字、図形、記号のいずれか又はこれらの所望な結合であって線を溝により形成して得た線画(線図)が描かれた平面部を具備した知育玩具を手に取り、例えば視覚を遮った状態で親指の腹で線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像しながら思い描く過程で、第二の脳と証される指(例えば、「長谷川嘉哉,親ゆびを刺激すると脳がたちまち若返りだす!,pp.28~33,(2015)サンマーク出版」を参照)の中でも特に脳と密接に結びつき、さまざまな指令を受け止め、実行する役割を担っている親指の腹に刺激を与え、その刺激を脳に伝達し、脳を活性化させる(例えば、前掲「長谷川」p.38を参照)ことにより、乳幼児の脳の発達を促したり、高齢者の認知症を予防したりすることが可能である。なお、5本の指のなかでも、認知症防止のために特に大きな役割を果たすのが親指であり、親指を動かすと、脳が刺激されて、活性化し、若返っていくという研究結果もある(例えば、前掲「長谷川」p.26を参照)。
【0020】
加えて、線画(線図)を突起ではなく溝で形成していることから、親指の腹で線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像する難易度は突起の場合と比して高く、適度な集中が求められる。したがって、親指の腹に与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に係る知育玩具は、少なくとも1つの平面部と、平面部に描かれた文字、図形、記号のいずれか又はこれらの所望な結合であって線を溝により形成して得た線画とを具備したものである。
【0022】
請求項2に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具を片手で保持可能な程度の所望の大きさにしたものである。
【0023】
請求項3に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具を杉又は檜の削り出しによって形成したものである。
【0024】
請求項4に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具において、平面部は多角柱の天面および底面の少なくともいずれか一面としたものである。
【0025】
請求項5に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具において、平面部は略円柱又は略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面としたものである。
【0026】
請求項6に係る知育玩具は、請求項4又は請求項5に係る知育玩具において、線画を動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形としたものである。
【0027】
請求項7に係る知育玩具は、請求項4又は請求項5に係る知育玩具において、溝を平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝としたものである。
【0028】
請求項8に係る知育玩具は、請求項7に係る知育玩具において、山部の頂点を平面部より所望の高さ突出させたものである。
【0029】
請求項9に係る知育玩具は、請求項7に係る知育玩具において、山部の頂点を平面部より所望の高さ陥没させたものである。
【0030】
請求項10に係る知育玩具は、略円柱又は略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面である平面部と、平面部の少なくともいずれか一面に描かれた図形であって線を溝により形成して得た線画とを具備し、溝は平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であって、線画は動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形であって、かつ、杉又は檜の削り出しからなり、片手で保持可能な程度の所望の大きさとしたものである。
【0031】
請求項11に係る知育玩具は、請求項10に係る知育玩具において、山部の頂点を平面部より所望の高さ突出させたものである。
【0032】
請求項12に係る知育玩具は、請求項10に係る知育玩具において、山部の頂点を平面部より所望の高さ陥没させたものである。
【発明の効果】
【0033】
請求項1に係る知育玩具においては、平面部に線を溝により形成して得た線画(線図)を形成することにより、乳幼児や高齢者などの使用者が知育玩具を手に取り、例えば視覚を遮った状態で親指の腹で線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像しながら思い描く過程で、第二の脳と証される指(例えば、前掲「長谷川」pp.28~33を参照)、とりわけ親指の腹に刺激を与えられ、その刺激が脳に伝達され、脳が活性化される(例えば、前掲「長谷川」p.38を参照)。
【0034】
したがって、乳幼児の脳の発達を促したり、高齢者の認知症を予防したりすることが可能である。なお、5本の指のなかでも、認知症防止のために特に大きな役割を果たすのが親指であり、親指を動かすと、脳が刺激されて、活性化し、若返っていくという研究結果もある(例えば、前掲「長谷川」p.26を参照)。
【0035】
加えて、線画(線図)を突起ではなく溝で形成していることから、親指の腹で線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像する難易度は突起の場合と比して高く、適度な集中が求められるため、親指の腹に与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる。
【0036】
さらに請求項2に係る知育玩具においては、知育玩具が片手で保持可能な程度の所望の大きさであることから、線画(線図)が形成された平面部を親指で、当該平面部と対抗する部分を中指で、一側面を人差し指で、一側面と対抗する側面を手の平で、このような安定した保持状態で触覚の刺激、延いては、脳の活性化を極めて効果的(効率的)に行うことが可能である。
【0037】
さらに請求項3に係る知育玩具においては、知育玩具を杉又は檜の削り出しによって形成し、原料は天然木材のみであるから、例えば塗布された塗料や顔料を舐めてしまうことで起き得る乳幼児の健康障害の心配が払拭されるだけでなく、木材の優しい(ぬくもりのある)手触りで得る触覚や杉や檜の香りで得る嗅覚が齎す癒しの効果を併せて持つことが可能である。
【0038】
さらに請求項4に係る知育玩具においては、知育玩具が多角柱であり、その天面および底面の少なくともいずれか一面を線画(線図)が形成された平面部としていることから、例えば、天面を線画(線図)が形成された平面部とすれば、天面を親指で、底面を中指で、一側面を人差し指で、一側面と対抗する側面を手の平で、このような極めて安定した保持状態とすることが可能である。
【0039】
さらに請求項5に係る知育玩具においては、知育玩具が略円柱又は略楕円柱であり、その天面および底面の少なくともいずれか一面を線画(線図)が形成された平面部としていることから、例えば、天面を線画(線図)が形成された平面部とすれば、天面を親指で、底面を中指で、一側面を人差し指で、一側面と対抗する側面を手の平で、このような極めて安定した保持状態とすることが可能であるだけでなく、この保持状態においては、人差し指と手の平には曲面である側面が接触することになるため、より心地よい保持感を得ることが可能である。
【0040】
さらに請求項6に係る知育玩具においては、線画(線図)を動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形としていることから、所望の複数の知育玩具をセットで用意することにより、視覚を遮った状態で親指の腹でなぞって、同一又は同種の線画(線図)を選ぶという遊び方によって、ゲームをしているかのワクワク感を抱きながら触覚の刺激、延いては、脳の活性化を行うことが可能である。
【0041】
また、例えば線画(線図)を形成した平面部を裏面とした状態で、同一又は同種の線画(線図)を選ぶという、いわばトランプの神経衰弱ゲームのような遊び方を副次的に楽しむことが可能である。
【0042】
さらに請求項7に係る知育玩具においては、溝は平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であることから、突起のみで形成された線画(線図)や単なる溝(例えば、凹字やV字の凹み)のみで形成された線画(線図)と比して、親指の腹に伝わる情報量は格段に増し、線画(線図)が何であるかをより鋭敏に予想、想像することが可能である。
【0043】
さらに請求項8に係る知育玩具においては、山部の頂点が平面部より所望の高さ突出していることから、親指の腹でなぞる際、山部の頂点が親指の腹に強く当たり、触覚を強く刺激するため、線画(線図)が何であるかをより鋭敏に予想、想像することが可能であると共に、触覚の強い刺激、延いては、脳の効果的(効率的)な活性化を行うことが可能である。
【0044】
さらに請求項9に係る知育玩具においては、山部の頂点が平面部より所望の高さ陥没していることから、親指の腹でなぞる際、山部の頂点が親指の腹に弱く当たり、触覚を緩やかに刺激するため、線画(線図)が何であるかを予想、想像する難易度は頂点が平面部より突起又は面一の場合と比して高く、適度な集中が求められるため、親指の腹に与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる共に、頂点の摩耗を抑制することが可能である。
【0045】
さらに請求項10に係る知育玩具においては、略円柱又は略楕円柱の天面又は底面である平面部と、平面部の少なくともいずれか一面に描かれた図形であって線を溝により形成して得た線画とを具備し、溝は平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であって、線画は動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形であって、かつ、杉又は檜の削り出しからなり、片手で保持可能な程度の所望の大きさであることから、上述した請求項1~3および請求項5~7と同一の効果を得ることが可能である。
【0046】
さらに請求項11に係る知育玩具においては、上述した請求項8と同一の効果を得ることが可能である。
【0047】
さらに請求項12に係る知育玩具においては、上述した請求項9と同一の効果を得ることが可能である。
【0048】
その他、請求項4~7、請求項9、請求項10および請求項12に係る知育玩具においては、突部のない天面および突部のない底面を備えていることから、例えば所望の個数の知育玩具を積み重ねることにより、いわば達磨落しゲームのような遊び方を副次的に楽しむことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を右手で保持した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図である。
【
図4】
図3に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(分類当てゲーム)を示す説明図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(神経衰弱ゲーム)を示す説明図である。
【
図7】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(達磨落しゲーム)を示す説明図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図である。
【
図9】
図8に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【
図10】本発明の第三の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図である。
【
図11】
図10に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を用いて、本発明の第一の実施形態に係る知育玩具について説明する。なお、第一の実施形態は請求項1~3および請求項5~7に係る知育玩具を包含させたもの(請求項10に相当)であるが、各請求項の構成要件(発明特定事項)のみで構成された知育玩具についても成立し、その場合には、それぞれの構成に応じた範囲の効果を実現できることは論を俟たない。
【0051】
図1は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の斜視図であり、
図2は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を右手で保持した状態を示す斜視図である。
図3は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図であり、
図4は
図3に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
図5は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(分類当てゲーム)を示す説明図、
図6は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(神経衰弱ゲーム)を示す説明図であり、それぞれ知育玩具を並べて真上から見た平面図である。
図7は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(達磨落しゲーム)を示す説明図である。なお、
図2においては、後述する平面部2に描かれた線画(線図)を簡略化(単なる円)している。また、
図5と
図6においては、後述する線画(線図)の線を形成する溝3のW字形状溝を簡略化している。
【0052】
まず、本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の構成について説明する。
【0053】
図において、1は第一の実施形態に係る略円柱の知育玩具であり、杉の木を直径5cm、高さ2cmに削り出したものである。
【0054】
原材料に樹脂や金属ではなく杉の木を採用することにより、乳幼児や高齢者が知育玩具1を使用する際、天然木材の優しい(ぬくもりのある)手触りで得る触覚や杉の香りで得る嗅覚が齎す癒しの効果を得ることが可能であり、また、豊かな感性を育むことも期待できる。また、匂いを嗅ぐことは、脳に刺激を与え、認知症を予防する効果があるとされている(例えば、前掲「長谷川」p.152を参照)。なお、杉に限らず、檜、楢、欅などでも成り立つことは勿論である。もっとも、発明者が実験により得た知見によれば、杉ないし檜が手触りおよび香りのバランスにおいて適していることが明らかになっている。特に杉の香り成分には、心を落ち着かせるリラックス効果や調湿、大気浄化、さらにはがん細胞の増殖を抑える可能性を示す研究結果もある(2019年6月15日付朝日新聞記事「be report-杉はもう悪者じゃない-」を参照)。
【0055】
知育玩具1の大きさ(直径5cm×高さ2cm)は、発明者が実験により得た知見によれば、乳幼児にとっても高齢者にとっても片手で保持するのに適していることが明らかになっている。また、直径5cm程度より小さい場合、手にしたものをすぐに口に近づけ舐めようとする月齢の低い乳幼児が誤って口に入れてしまった際に飲み込むことは困難であっても、口一杯に咥えてしまい呼吸困難に陥ってしまう危険性がある。以上から、知育玩具1の大きさは直径4.5~6cm、高さ1~2.5cmに収まることが望ましい。もっとも、大きさは適宜設定しても良く、例えば、片手で保持できない程度の大きさに設定した場合であっても、両手で保持するなり台に置くなりして使用すれば良い。
【0056】
2は略円柱の知育玩具1の天面、すなわち平面部である。3は溝であり、線を溝3により形成して所望の線画(線図)が平面部2に描かれている。
【0057】
溝3は山部3bとその両側に位置する2つの谷部3aからなるW字形状溝であって、描かれた線画(線図)は動物類(例えば、犬、牛、象など)、花類(例えば、桜、チューリップ、ヒマワリなど)、食物類(例えば、リンゴ、イチゴ、バナナなど)、乗り物類(例えば、車、バイク、飛行機など)など、その一性質によって分類することが可能なものである。その他、数字、記号、平仮名、片仮名、漢字、欧文字などでも良い。
【0058】
溝3における第一の指当接部3c(2カ所)および山部3bの頂点である第二の指当接部3d(1カ所)は平面部2に描かれた線画(線図)を親指4の腹4aでなぞる際に、腹4aと当接し、腹4aに刺激を与える機能を有する。
【0059】
知育玩具1は以上の通り構成されており、原料は天然木材のみであり、塗料や顔料あるいはワックスなどを使用していない。したがって、乳幼児が舐めてしまっても健康障害の心配がない。さらに、剥離、色褪せなどの経年劣化の問題を抑制できる。
【0060】
次に、知育玩具1の使用方法(遊び方)について説明する。
【0061】
最も基本的(本質的)な使用方法は、乳幼児や高齢者などの使用者が知育玩具1を手に取り、例えば視覚を遮った状態で親指4の腹4aで平面部2に描かれた線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像しながら思い描く過程で、第二の脳と証される指(例えば、前掲「長谷川」pp.28~33を参照)、とりわけ親指4の腹4aから得る触覚に刺激を与えるものである。なお、目を閉じて、指先でモノにふれることは、脳への刺激をより強くし、より効果的(効率的)に脳を活性化できるとされている(例えば、前掲「長谷川」p.107を参照)。
【0062】
そして、第二の脳と証される指(例えば、前掲「長谷川」pp.28~33を参照)の中でも特に脳と密接に結びつき、さまざまな指令を受け止め、実行する役割を担っている親指4の腹4aに刺激を与え、その刺激を脳に伝達し、脳を活性化させる(例えば、前掲「長谷川」p.38を参照)ことにより、乳幼児の脳の発達を促したり、高齢者の認知症を予防したりすることが可能となっている。なお、5本の指のなかでも、認知症防止のために特に大きな役割を果たすのが親指であり、親指を動かすと、脳が刺激されて、活性化し、若返っていくという研究結果もある(例えば、前掲「長谷川」p.26を参照)。
【0063】
なお、知育玩具1の適度な大きさによって、使用者は平面部2を親指4で、平面部2と対抗する面(底面)を中指6で、一側面を人差し指5で、一側面と対抗する側面を手の平7で、このような極めて安定した保持状態で触覚の刺激、延いては、脳の活性化を極めて効果的(効率的)に行うことが可能となっており、加えて、この保持状態においては、人差し指5と手の平7には曲面である側面が接触することになるため、より心地よい保持感を得ることが可能である。
【0064】
また、線画(線図)を突起ではなく溝3で形成していることから、親指4の腹4aで線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像する難易度は突起の場合と比して高く、適度な集中が求められる。したがって、親指4の腹4aに与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる。加えて、溝3は平面部2に垂直な溝断面形状が1つの山部3bとその両側に位置する2つの谷部3aからなるW字形状溝であることから、突起のみで形成された線画(線図)や単なる溝(例えば、凹字やV字の凹み)のみで形成された線画(線図)と比して、親指4の腹4aに伝わる情報量は格段に増し、線画(線図)が何であるかをより鋭敏に予想、想像することが可能である。
【0065】
ところで、知育玩具1は親指4に効果的(効率的)な刺激を与えることに長けている。なぜなら、溝3を単純な凹み(凹、U字、V字など)ではなく、W字に形成し、親指4により鋭敏な刺激を与えることで、複雑かつ多様な線画(線図)でも認識できるようにしているからである。
【0066】
最も基本的(本質的)な使用方法は以上の通りであるが、これに限らず、知育玩具1は使用者の自由な発想によって多様な遊び方を提供し得る。
【0067】
図5に示す通り、動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な線画(線図)が描かれた複数の知育玩具セット10を用意している。図において、知育玩具1aはブドウ(果物類)、同1bはライオン(動物類)、同1cはサクラ(花類)、同1dはリンゴ(果物類)、同1eはウサギ(動物類)、同1fはヒマワリ(花類)の線画(線図)である。これら知育玩具セット10に対し、視覚を遮った状態で親指4の腹4aでなぞって、同種(用意する知育玩具セットによっては同一でも良い)の線画(線図)を選ぶという遊び方(分類当てゲーム)によってワクワク感を抱きながら触覚の刺激、延いては、脳の活性化を行うことが可能である。なお、視覚を遮る手段として目を閉じる以外に、例えば複数の知育玩具1を箱や袋に入れて、その中に手を入れ手探りしながら、ターゲットを探し出すなどすれば、よりワクワク感が期待できる。
【0068】
図6に示す通り、複数の知育玩具セット100を用意している。図において、知育玩具1aはブドウ、同1bはライオン、同1cはサクラの線画(線図)であり、各2個ある。これら知育玩具セットを裏返した状態から、いわゆる神経衰弱ゲームのように同一の線画(線図)を探し出すという遊び方を副次的に楽しむことが可能である。
【0069】
図5、
図6の例のように、知育玩具1の平面部2に描いた線画(線図)を工夫することで多様な遊び方を提供でき、その工夫次第では、乳幼児の学習効果や高齢者の認知症予防効果も期待できる。例えば、線画(線図)を干支の十二支とした知育玩具1(十二支揃っている必要はない)と十二支に含まれない動物とした知育玩具1を混在させた知育玩具セットの中から、視覚を遮って、十二支を探し出すという遊び方も提供できる。このような場合、十二支をまだ知らない乳幼児などにとっては新しい知識として学習でき、十二支を忘れてしまっていた高齢者などにとっては十二支を思い出す(記憶を呼び起こす)ことができる。この点、記憶力は記憶を再認識することで強化され、情景や言動を思い出すワクワクで感情が動き、扁桃核を刺激し、脳を若返らせ、認知症を遠ざけるという研究結果もある(例えば、前掲「長谷川」p.139を参照)。すなわち、この「思い出す(記憶を呼び起こす)」という行為によって、認知症を予防したり、進行を遅らせる効果が期待できる。
【0070】
図7に示す通り、複数の知育玩具1g~1j(積み重ねる段数は適宜使用者が選択すれば良い)を用意し積み重ねることにより、いわば達磨落しゲームのような遊び方を副次的に楽しむことが可能である。
【0071】
その他、知育玩具1は略円柱であることから、球体と異なり、天面又は底面を下向き(接地面)にすることで、例えばテーブル(台)の上に安定した状態で置いておくことが可能である。他方、側面(曲面)を下向き(接地面)にしてテーブル(台)の上に置けば、転がして遊ぶことができ、特に乳幼児にとってはワクワク感が得られる。なお、第一の実施形態に係る知育玩具1は略円柱としたが、これに限らず、略楕円柱であっても良い。この場合、テーブル(台)の上を転がして遊ぶ際に転がり具合を抑制でき、誤落下を回避でき得る。
【0072】
以下、図面を用いて、本発明の第二の実施形態に係る知育玩具について、第一の実施形態との相違点(溝断面形状)のみ説明する。
図8は本発明の第二の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図であり、
図9は
図8に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【0073】
図に示す通り、山部30dの頂点が平面部2より所望の高さ突出していることから、親指4の腹4aでなぞる際、山部30dの頂点が親指4の腹4aに強く当たり、触覚を強く刺激するため、線画(線図)が何であるかをより鋭敏に予想、想像することが可能であると共に、触覚の強い刺激、延いては、脳の効果的(効率的)な活性化を行うことが可能である。
【0074】
以下、図面を用いて、本発明の第三の実施形態に係る知育玩具について、第一の実施形態との相違点(溝断面形状)のみ説明する。
図10は本発明の第三の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図であり、
図11は
図10に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【0075】
図に示す通り、山部300dの頂点が平面部2より所望の高さ陥没していることから、親指4の腹4aでなぞる際、山部300dの頂点が親指4の腹4aに弱く当たり、触覚を緩やかに刺激するため、線画(線図)が何であるかを予想、想像する難易度は頂点が平面部2より突起又は面一の場合と比して高く、適度な集中が求められるため、親指4の腹4aに与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる共に、頂点の摩耗を抑制することが可能である。
【0076】
以上、本発明の第一、第二、第三の実施形態に係る知育玩具1について説明したが、総じて、知育玩具1は効果的(効率的)な「親指4の刺激」の実現手段という点に着目して発明したものである。5本の指の中でも特に「親指」に着目した理由は、親指は他の指に比べていろいろな動きができること、すなわち、親指の動きの自由度が高いことによって、もったり、つかんだり、はめたり、むすんだり、めくったり、さまざまな動作をすることが可能になる(人間は親指を使ってはじめて、望む動作を行うことができる)こと、だから、親指はそれだけ脳と密接に結びつき、さまざまな指令を受け止め、実行する役割を担っていること、逆に言えば、親指を刺激することこそが、(最も効果的に)脳を活性化し、血流を上げ、若返らせることになるからである(例えば、前掲「長谷川」pp.37~38を参照)。
【0077】
実際に、親指4を刺激することによって様々な効果が得られるという研究結果がある。例えば、「認知症の予防」、「健康寿命の長期化」、「気力・やる気の向上」、「怒り・イライラの抑制」、「記憶力の向上」、「安眠の促進(ストレスの緩和)」、「冷え性の解消」、「運動機能の改善」、「血圧の安定化(自律神経のバランス化)」などの効果が期待できる(例えば、前掲「長谷川」pp.42~47を参照)。
【0078】
そして、親指4に刺激を与えることにとりわけ着目している背景には、生活が便利になったことで、手先をつかう機会が減り、その結果、親指4が脳を刺激する場面も減少してきたことで、年齢にかかわらず、脳の老化を早める原因となっていることがある(例えば、前掲「長谷川」p.55を参照)。
【0079】
上述の通り、本発明に係る知育玩具1は効果的(効率的)な「親指4の刺激」の実現手段という点に着目して発明したものであるが、当該実現手段の要点は、突起ではなく溝3で形成され、そして、面的でなく線で形成された線画(線図)を親指4の腹4aでなぞるという点にある。さらに、溝3をW字形状溝にすればその効果はより高まるという点にある。
【0080】
なお、本発明に係る知育玩具1に描かれた線画(線図)を適宜選択することにより、特に乳幼児にとっては、遊びの感覚を持って脳を活性化させながら、接した線画(線図)を通して様々な学びを得ることができることは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
1 知育玩具
2 平面部
3 溝
4 親指
【手続補正書】
【提出日】2022-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの平面部と、前記平面部に描かれた文字、図形、記号のいずれか又はこれらの所望な結合であって線を溝により形成して得た線画とを具備し、前記平面部は多角柱又は略円柱若しくは略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面であり、前記溝は前記平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部と前記山部の両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であることを特徴とする知育玩具。
【請求項2】
前記山部の頂点は前記平面部より所望の高さ突出していることを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項3】
前記山部の頂点は前記平面部より所望の高さ陥没していることを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項4】
片手で保持可能な程度の所望の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項5】
前記知育玩具は杉又は檜の削り出しによって形成されたことを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項6】
前記線画は動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形であることを特徴とする請求項1に記載の知育玩具。
【請求項7】
略円柱又は略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面である平面部と、前記平面部に描かれた図形であって線を溝により形成して得た線画とを具備し、前記溝は前記平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部と前記山部の両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であって、前記線画は動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形であって、かつ、杉又は檜の削り出しからなり、片手で保持可能な程度の所望の大きさであることを特徴とする知育玩具。
【請求項8】
前記山部の頂点は前記平面部より所望の高さ突出していることを特徴とする請求項7に記載の知育玩具。
【請求項9】
前記山部の頂点は前記平面部より所望の高さ陥没していることを特徴とする請求項7に記載の知育玩具。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝により形成された線で描かれた線画(線図)を指、特に親指の腹でなぞった際の感触、すなわち触覚のみにより認識することで脳を刺激し活性化させることを主な目的とする知育玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の知育玩具として、特に触覚の刺激に着目された知育玩具として、複数個の同形の人形からなり、それぞれが手触りの異なる素材から構成されたものがあった(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、絵柄、欧文字・数字などが掘られた木のタイルがあった(例えば、非特許文献1を参照)。
【0004】
さらに、形状(輪郭)そのものが欧文字(例えば、非特許文献2を参照)や動物(例えば、非特許文献3を参照)である木のブロックがあった。
【0005】
さらに、正八面体の各面(全面)に数字を突形状に形成したものがあった(例えば、非特許文献4を参照)。
【0006】
以上のような知育玩具は、触覚を刺激することで、乳幼児期における知能の発達に寄与することが可能である。特に、乳幼児期における触覚の刺激は、大脳の発達を促すとされていることから、触覚の刺激を目的とする知育玩具は従来から少なからず存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】木のおもちゃ専門店 おもちゃの森sapporo,“プラントイ ナンバー1-10(2)”,[online],[令和4年5月9日検索],インターネット<URL:https://www.omochanomori.jp/SHOP/pl5641.html>
【0009】
【非特許文献2】木のおもちゃ専門店 おもちゃの森sapporo,“PLANTOYS(プラントイ)アルファベットA-Z”,[online],[令和4年5月9日検索],インターネット<URL:https://www.omochanomori.jp/SHOP/pl5168.html>
【0010】
【非特許文献3】木のおもちゃ・こども家具の製造直販 なかよしライブラリー,“動物積み木”,[online],[令和4年5月9日検索],インターネット<URL:https://wooden-toy.net/c/toy/no016>
【0011】
【非特許文献4】楽天市場 夢みつけ隊 ONLINE SHOPPING,“指先で数字を認識して脳を活性化!脳活玉(2個組)”,[online],[令和4年5月9日検索],インターネット<URL:https://item.rakuten.co.jp/yume/83d8a/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に係る知育玩具は複数個の同形の人形からなり、それぞれが手触りの異なる素材から構成され(同公報の請求項1および段落0015を参照)、これにより、五感のうちの触覚を刺激することで大脳の発達を促す(同公報の段落0060を参照)としている。
【0013】
しかし、特許文献1に係る知育玩具は指先(指の腹)のみならず手の平も含めた手全体から得た触覚を刺激するものであり、指先(指の腹)、特に親指の腹から得た触覚の刺激に着目したものではない。また、外形(輪郭)そのものを例えば動物(同公報の
図1および段落0014を参照)としたりすることで視覚的な楽しみは得られようが、これは手触りの異なる素材を手全体で触り触覚を刺激することで大脳の発達を促すという本質的な効果を実現する手段とは完全に独立した手段による副次的な効果に過ぎない。すなわち、親指の腹でなぞった際の感触、すなわち触覚のみにより認識することで脳を刺激し活性化させることを主な目的とする知育玩具において、特許文献1に係る知育玩具の技術的特徴(素材の手触り感)は当該目的の達成手段にはなり得ない。
【0014】
非特許文献1に係る知育玩具は木のタイルの表面に凹み(絵柄、欧文字・数字など)が形成されており、指でなぞって書き順を学習したり、袋に入れて数字を言い当てるゲームが楽しめるとしている。
【0015】
しかし、非特許文献1に係る知育玩具は線画(線図)ではなく面的な凹みにより形成された絵柄などを指でなぞるものであるから、指先から得るべき触覚に繊細さが求められるものではなく、したがって、触覚の刺激によって脳の活性化を促すという効果は極めて不十分である。
【0016】
非特許文献2および3に係る知育玩具は共に形状(輪郭)そのものを欧文字や動物に形成していることから、視覚を遮ってそれが何であるかを予想、想像するにあたっては、指先の触覚というよりも手全体の触覚に大きく依存するものであり、したがって、指先、特に親指の腹への刺激効果は殆ど期待できない。
【0017】
非特許文献4に係る知育玩具は正八面体の各面(全面)に数字を突形状に形成していることから、視覚を遮ってそれが何であるかを予想、想像するにあたっては、指先の触覚というよりも手全体の触覚に大きく依存するものであり、加えて、突形状の場合、得るべき触覚に繊細さが求められるものではなく、したがって、指先、特に親指の腹への刺激効果は殆ど期待できない。
【0018】
その他、触覚の刺激を目的とする知育玩具は従来から少なからず存在しているが、親指の腹に刺激を与え、適度に脳を活性化するという観点に着目したものは発明者が調べた限り見当たらない。
【0019】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、例えば請求項1に係る発明では、文字、図形、記号のいずれか又はこれらの所望な結合であって線を溝により形成して得た線画(線図)が描かれた平面部を具備した知育玩具を手に取り、例えば視覚を遮った状態で親指の腹で線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像しながら思い描く過程で、第二の脳と証される指(例えば、「長谷川嘉哉,親ゆびを刺激すると脳がたちまち若返りだす!,pp.28~33,(2015)サンマーク出版」を参照)の中でも特に脳と密接に結びつき、さまざまな指令を受け止め、実行する役割を担っている親指の腹に刺激を与え、その刺激を脳に伝達し、脳を活性化させる(例えば、前掲「長谷川」p.38を参照)ことにより、乳幼児の脳の発達を促したり、高齢者の認知症を予防したりすることが可能である。なお、5本の指のなかでも、認知症防止のために特に大きな役割を果たすのが親指であり、親指を動かすと、脳が刺激されて、活性化し、若返っていくという研究結果もある(例えば、前掲「長谷川」p.26を参照)。
【0020】
加えて、線画(線図)を突起ではなく溝で形成していることから、親指の腹で線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像する難易度は突起の場合と比して高く、適度な集中が求められる。したがって、親指の腹に与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に係る知育玩具は、少なくとも1つの平面部と、平面部に描かれた文字、図形、記号のいずれか又はこれらの所望な結合であって線を溝により形成して得た線画とを具備し、平面部は多角柱又は略円柱若しくは略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面としたものであり、溝を平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝としたものである。
【0022】
請求項2に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具において、山部の頂点を平面部より所望の高さ突出させたものである。
【0023】
請求項3に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具において、山部の頂点を平面部より所望の高さ陥没させたものである。
【0024】
請求項4に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具を片手で保持可能な程度の所望の大きさにしたものである。
【0025】
請求項5に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具を杉又は檜の削り出しによって形成したものである。
【0026】
請求項6に係る知育玩具は、請求項1に係る知育玩具において、線画を動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形としたものである。
【0027】
請求項7に係る知育玩具は、略円柱又は略楕円柱の天面および底面の少なくともいずれか一面である平面部と、平面部の少なくともいずれか一面に描かれた図形であって線を溝により形成して得た線画とを具備し、溝は平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であって、線画は動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形であって、かつ、杉又は檜の削り出しからなり、片手で保持可能な程度の所望の大きさとしたものである。
【0028】
請求項8に係る知育玩具は、請求項7に係る知育玩具において、山部の頂点を平面部より所望の高さ突出させたものである。
【0029】
請求項9に係る知育玩具は、請求項7に係る知育玩具において、山部の頂点を平面部より所望の高さ陥没させたものである。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に係る知育玩具においては、平面部に線を溝により形成して得た線画(線図)を形成することにより、乳幼児や高齢者などの使用者が知育玩具を手に取り、例えば視覚を遮った状態で親指の腹で線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像しながら思い描く過程で、第二の脳と証される指(例えば、前掲「長谷川」pp.28~33を参照)、とりわけ親指の腹に刺激を与えられ、その刺激が脳に伝達され、脳が活性化される(例えば、前掲「長谷川」p.38を参照)。
【0031】
したがって、乳幼児の脳の発達を促したり、高齢者の認知症を予防したりすることが可能である。なお、5本の指のなかでも、認知症防止のために特に大きな役割を果たすのが親指であり、親指を動かすと、脳が刺激されて、活性化し、若返っていくという研究結果もある(例えば、前掲「長谷川」p.26を参照)。
【0032】
加えて、線画(線図)を突起ではなく溝で形成していることから、親指の腹で線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像する難易度は突起の場合と比して高く、適度な集中が求められるため、親指の腹に与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる。
【0033】
請求項1に係る知育玩具においては、さらに、知育玩具が多角柱の場合、その天面および底面の少なくともいずれか一面を線画(線図)が形成された平面部としていることから、例えば、天面を線画(線図)が形成された平面部とすれば、天面を親指で、底面を中指で、一側面を人差し指で、一側面と対抗する側面を手の平で、このような極めて安定した保持状態とすることが可能である。
【0034】
他方、知育玩具が略円柱又は略楕円柱の場合、その天面および底面の少なくともいずれか一面を線画(線図)が形成された平面部としていることから、例えば、天面を線画(線図)が形成された平面部とすれば、天面を親指で、底面を中指で、一側面を人差し指で、一側面と対抗する側面を手の平で、このような極めて安定した保持状態とすることが可能であるだけでなく、この保持状態においては、人差し指と手の平には曲面である側面が接触することになるため、より心地よい保持感を得ることが可能である。
【0035】
請求項1に係る知育玩具においては、さらに、溝は平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であることから、突起のみで形成された線画(線図)や単なる溝(例えば、凹字やV字の凹み)のみで形成された線画(線図)と比して、親指の腹に伝わる情報量は格段に増し、線画(線図)が何であるかをより鋭敏に予想、想像することが可能である。
【0036】
さらに請求項2に係る知育玩具においては、山部の頂点が平面部より所望の高さ突出していることから、親指の腹でなぞる際、山部の頂点が親指の腹に強く当たり、触覚を強く刺激するため、線画(線図)が何であるかをより鋭敏に予想、想像することが可能であると共に、触覚の強い刺激、延いては、脳の効果的(効率的)な活性化を行うことが可能である。
【0037】
さらに請求項3に係る知育玩具においては、山部の頂点が平面部より所望の高さ陥没していることから、親指の腹でなぞる際、山部の頂点が親指の腹に弱く当たり、触覚を緩やかに刺激するため、線画(線図)が何であるかを予想、想像する難易度は頂点が平面部より突起又は面一の場合と比して高く、適度な集中が求められるため、親指の腹に与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる共に、頂点の摩耗を抑制することが可能である。
【0038】
さらに請求項4に係る知育玩具においては、知育玩具が片手で保持可能な程度の所望の大きさであることから、線画(線図)が形成された平面部を親指で、当該平面部と対抗する部分を中指で、一側面を人差し指で、一側面と対抗する側面を手の平で、このような安定した保持状態で触覚の刺激、延いては、脳の活性化を極めて効果的(効率的)に行うことが可能である。
【0039】
さらに請求項5に係る知育玩具においては、知育玩具を杉又は檜の削り出しによって形成し、原料は天然木材のみであるから、例えば塗布された塗料や顔料を舐めてしまうことで起き得る乳幼児の健康障害の心配が払拭されるだけでなく、木材の優しい(ぬくもりのある)手触りで得る触覚や杉や檜の香りで得る嗅覚が齎す癒しの効果を併せて持つことが可能である。
【0040】
さらに請求項6に係る知育玩具においては、線画(線図)を動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形としていることから、所望の複数の知育玩具をセットで用意することにより、視覚を遮った状態で親指の腹でなぞって、同一又は同種の線画(線図)を選ぶという遊び方によって、ゲームをしているかのワクワク感を抱きながら触覚の刺激、延いては、脳の活性化を行うことが可能である。
【0041】
また、例えば線画(線図)を形成した平面部を裏面とした状態で、同一又は同種の線画(線図)を選ぶという、いわばトランプの神経衰弱ゲームのような遊び方を副次的に楽しむことが可能である。
【0042】
さらに請求項7に係る知育玩具においては、略円柱又は略楕円柱の天面又は底面である平面部と、平面部の少なくともいずれか一面に描かれた図形であって線を溝により形成して得た線画とを具備し、溝は平面部に垂直な溝断面形状が1つの山部とその両側に位置する2つの谷部からなるW字形状溝であって、線画は動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な図形であって、かつ、杉又は檜の削り出しからなり、片手で保持可能な程度の所望の大きさであることから、上述した請求項1および請求項4~6と同一の効果を得ることが可能である。
【0043】
さらに請求項8に係る知育玩具においては、上述した請求項2と同一の効果を得ることが可能である。
【0044】
さらに請求項9に係る知育玩具においては、上述した請求項3と同一の効果を得ることが可能である。
【0045】
その他、請求項1、請求項3~7、請求項9に係る知育玩具においては、突部のない天面および突部のない底面を備えていることから、例えば所望の個数の知育玩具を積み重ねることにより、いわば達磨落しゲームのような遊び方を副次的に楽しむことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を右手で保持した状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図である。
【
図4】
図3に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(分類当てゲーム)を示す説明図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(神経衰弱ゲーム)を示す説明図である。
【
図7】本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(達磨落しゲーム)を示す説明図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図である。
【
図9】
図8に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【
図10】本発明の第三の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図である。
【
図11】
図10に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を用いて、本発明の第一の実施形態に係る知育玩具について説明する。なお、第一の実施形態は請求項1および請求項4~6に係る知育玩具を包含させたもの(請求項7に相当)であるが、各請求項の構成要件(発明特定事項)のみで構成された知育玩具についても成立し、その場合には、それぞれの構成に応じた範囲の効果を実現できることは論を俟たない。
【0048】
図1は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の斜視図であり、
図2は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を右手で保持した状態を示す斜視図である。
図3は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図であり、
図4は
図3に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
図5は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(分類当てゲーム)を示す説明図、
図6は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(神経衰弱ゲーム)を示す説明図であり、それぞれ知育玩具を並べて真上から見た平面図である。
図7は本発明の第一の実施形態に係る知育玩具を使った遊び方の一例(達磨落しゲーム)を示す説明図である。なお、
図2においては、後述する平面部2に描かれた線画(線図)を簡略化(単なる円)している。また、
図5と
図6においては、後述する線画(線図)の線を形成する溝3のW字形状溝を簡略化している。
【0049】
まず、本発明の第一の実施形態に係る知育玩具の構成について説明する。
【0050】
図において、1は第一の実施形態に係る略円柱の知育玩具であり、杉の木を直径5cm、高さ2cmに削り出したものである。
【0051】
原材料に樹脂や金属ではなく杉の木を採用することにより、乳幼児や高齢者が知育玩具1を使用する際、天然木材の優しい(ぬくもりのある)手触りで得る触覚や杉の香りで得る嗅覚が齎す癒しの効果を得ることが可能であり、また、豊かな感性を育むことも期待できる。また、匂いを嗅ぐことは、脳に刺激を与え、認知症を予防する効果があるとされている(例えば、前掲「長谷川」p.152を参照)。なお、杉に限らず、檜、楢、欅などでも成り立つことは勿論である。もっとも、発明者が実験により得た知見によれば、杉ないし檜が手触りおよび香りのバランスにおいて適していることが明らかになっている。特に杉の香り成分には、心を落ち着かせるリラックス効果や調湿、大気浄化、さらにはがん細胞の増殖を抑える可能性を示す研究結果もある(2019年6月15日付朝日新聞記事「be report-杉はもう悪者じゃない-」を参照)。
【0052】
知育玩具1の大きさ(直径5cm×高さ2cm)は、発明者が実験により得た知見によれば、乳幼児にとっても高齢者にとっても片手で保持するのに適していることが明らかになっている。また、直径5cm程度より小さい場合、手にしたものをすぐに口に近づけ舐めようとする月齢の低い乳幼児が誤って口に入れてしまった際に飲み込むことは困難であっても、口一杯に咥えてしまい呼吸困難に陥ってしまう危険性がある。以上から、知育玩具1の大きさは直径4.5~6cm、高さ1~2.5cmに収まることが望ましい。もっとも、大きさは適宜設定しても良く、例えば、片手で保持できない程度の大きさに設定した場合であっても、両手で保持するなり台に置くなりして使用すれば良い。
【0053】
2は略円柱の知育玩具1の天面、すなわち平面部である。3は溝であり、線を溝3により形成して所望の線画(線図)が平面部2に描かれている。
【0054】
溝3は山部3bとその両側に位置する2つの谷部3aからなるW字形状溝であって、描かれた線画(線図)は動物類(例えば、犬、牛、象など)、花類(例えば、桜、チューリップ、ヒマワリなど)、食物類(例えば、リンゴ、イチゴ、バナナなど)、乗り物類(例えば、車、バイク、飛行機など)など、その一性質によって分類することが可能なものである。その他、数字、記号、平仮名、片仮名、漢字、欧文字などでも良い。
【0055】
溝3における第一の指当接部3c(2カ所)および山部3bの頂点である第二の指当接部3d(1カ所)は平面部2に描かれた線画(線図)を親指4の腹4aでなぞる際に、腹4aと当接し、腹4aに刺激を与える機能を有する。
【0056】
知育玩具1は以上の通り構成されており、原料は天然木材のみであり、塗料や顔料あるいはワックスなどを使用していない。したがって、乳幼児が舐めてしまっても健康障害の心配がない。さらに、剥離、色褪せなどの経年劣化の問題を抑制できる。
【0057】
次に、知育玩具1の使用方法(遊び方)について説明する。
【0058】
最も基本的(本質的)な使用方法は、乳幼児や高齢者などの使用者が知育玩具1を手に取り、例えば視覚を遮った状態で親指4の腹4aで平面部2に描かれた線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像しながら思い描く過程で、第二の脳と証される指(例えば、前掲「長谷川」pp.28~33を参照)、とりわけ親指4の腹4aから得る触覚に刺激を与えるものである。なお、目を閉じて、指先でモノにふれることは、脳への刺激をより強くし、より効果的(効率的)に脳を活性化できるとされている(例えば、前掲「長谷川」p.107を参照)。
【0059】
そして、第二の脳と証される指(例えば、前掲「長谷川」pp.28~33を参照)の中でも特に脳と密接に結びつき、さまざまな指令を受け止め、実行する役割を担っている親指4の腹4aに刺激を与え、その刺激を脳に伝達し、脳を活性化させる(例えば、前掲「長谷川」p.38を参照)ことにより、乳幼児の脳の発達を促したり、高齢者の認知症を予防したりすることが可能となっている。なお、5本の指のなかでも、認知症防止のために特に大きな役割を果たすのが親指であり、親指を動かすと、脳が刺激されて、活性化し、若返っていくという研究結果もある(例えば、前掲「長谷川」p.26を参照)。
【0060】
なお、知育玩具1の適度な大きさによって、使用者は平面部2を親指4で、平面部2と対抗する面(底面)を中指6で、一側面を人差し指5で、一側面と対抗する側面を手の平7で、このような極めて安定した保持状態で触覚の刺激、延いては、脳の活性化を極めて効果的(効率的)に行うことが可能となっており、加えて、この保持状態においては、人差し指5と手の平7には曲面である側面が接触することになるため、より心地よい保持感を得ることが可能である。
【0061】
また、線画(線図)を突起ではなく溝3で形成していることから、親指4の腹4aで線画(線図)をなぞってそれが何であるかを予想、想像する難易度は突起の場合と比して高く、適度な集中が求められる。したがって、親指4の腹4aに与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる。加えて、溝3は平面部2に垂直な溝断面形状が1つの山部3bとその両側に位置する2つの谷部3aからなるW字形状溝であることから、突起のみで形成された線画(線図)や単なる溝(例えば、凹字やV字の凹み)のみで形成された線画(線図)と比して、親指4の腹4aに伝わる情報量は格段に増し、線画(線図)が何であるかをより鋭敏に予想、想像することが可能である。
【0062】
ところで、知育玩具1は親指4に効果的(効率的)な刺激を与えることに長けている。なぜなら、溝3を単純な凹み(凹、U字、V字など)ではなく、W字に形成し、親指4により鋭敏な刺激を与えることで、複雑かつ多様な線画(線図)でも認識できるようにしているからである。
【0063】
最も基本的(本質的)な使用方法は以上の通りであるが、これに限らず、知育玩具1は使用者の自由な発想によって多様な遊び方を提供し得る。
【0064】
図5に示す通り、動物類、花類、食物類、乗り物類など、その一性質によって分類することが可能な線画(線図)が描かれた複数の知育玩具セット10を用意している。図において、知育玩具1aはブドウ(果物類)、同1bはライオン(動物類)、同1cはサクラ(花類)、同1dはリンゴ(果物類)、同1eはウサギ(動物類)、同1fはヒマワリ(花類)の線画(線図)である。これら知育玩具セット10に対し、視覚を遮った状態で親指4の腹4aでなぞって、同種(用意する知育玩具セットによっては同一でも良い)の線画(線図)を選ぶという遊び方(分類当てゲーム)によってワクワク感を抱きながら触覚の刺激、延いては、脳の活性化を行うことが可能である。なお、視覚を遮る手段として目を閉じる以外に、例えば複数の知育玩具1を箱や袋に入れて、その中に手を入れ手探りしながら、ターゲットを探し出すなどすれば、よりワクワク感が期待できる。
【0065】
図6に示す通り、複数の知育玩具セット100を用意している。図において、知育玩具1aはブドウ、同1bはライオン、同1cはサクラの線画(線図)であり、各2個ある。これら知育玩具セットを裏返した状態から、いわゆる神経衰弱ゲームのように同一の線画(線図)を探し出すという遊び方を副次的に楽しむことが可能である。
【0066】
図5、
図6の例のように、知育玩具1の平面部2に描いた線画(線図)を工夫することで多様な遊び方を提供でき、その工夫次第では、乳幼児の学習効果や高齢者の認知症予防効果も期待できる。例えば、線画(線図)を干支の十二支とした知育玩具1(十二支揃っている必要はない)と十二支に含まれない動物とした知育玩具1を混在させた知育玩具セットの中から、視覚を遮って、十二支を探し出すという遊び方も提供できる。このような場合、十二支をまだ知らない乳幼児などにとっては新しい知識として学習でき、十二支を忘れてしまっていた高齢者などにとっては十二支を思い出す(記憶を呼び起こす)ことができる。この点、記憶力は記憶を再認識することで強化され、情景や言動を思い出すワクワクで感情が動き、扁桃核を刺激し、脳を若返らせ、認知症を遠ざけるという研究結果もある(例えば、前掲「長谷川」p.139を参照)。すなわち、この「思い出す(記憶を呼び起こす)」という行為によって、認知症を予防したり、進行を遅らせる効果が期待できる。
【0067】
図7に示す通り、複数の知育玩具1g~1j(積み重ねる段数は適宜使用者が選択すれば良い)を用意し積み重ねることにより、いわば達磨落しゲームのような遊び方を副次的に楽しむことが可能である。
【0068】
その他、知育玩具1は略円柱であることから、球体と異なり、天面又は底面を下向き(接地面)にすることで、例えばテーブル(台)の上に安定した状態で置いておくことが可能である。他方、側面(曲面)を下向き(接地面)にしてテーブル(台)の上に置けば、転がして遊ぶことができ、特に乳幼児にとってはワクワク感が得られる。なお、第一の実施形態に係る知育玩具1は略円柱としたが、これに限らず、略楕円柱であっても良い。この場合、テーブル(台)の上を転がして遊ぶ際に転がり具合を抑制でき、誤落下を回避でき得る。
【0069】
以下、図面を用いて、本発明の第二の実施形態に係る知育玩具について、第一の実施形態との相違点(溝断面形状)のみ説明する。
図8は本発明の第二の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図であり、
図9は
図8に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【0070】
図に示す通り、山部30dの頂点が平面部2より所望の高さ突出していることから、親指4の腹4aでなぞる際、山部30dの頂点が親指4の腹4aに強く当たり、触覚を強く刺激するため、線画(線図)が何であるかをより鋭敏に予想、想像することが可能であると共に、触覚の強い刺激、延いては、脳の効果的(効率的)な活性化を行うことが可能である。
【0071】
以下、図面を用いて、本発明の第三の実施形態に係る知育玩具について、第一の実施形態との相違点(溝断面形状)のみ説明する。
図10は本発明の第三の実施形態に係る知育玩具の平面部に垂直な溝断面形状を示す説明図であり、
図11は
図10に示す説明図に親指の腹を当接させた状態を示す説明図である。
【0072】
図に示す通り、山部300dの頂点が平面部2より所望の高さ陥没していることから、親指4の腹4aでなぞる際、山部300dの頂点が親指4の腹4aに弱く当たり、触覚を緩やかに刺激するため、線画(線図)が何であるかを予想、想像する難易度は頂点が平面部2より突起又は面一の場合と比して高く、適度な集中が求められるため、親指4の腹4aに与えられる刺激を極めて効果的(効率的)に脳に伝達でき、脳の活性化が高く期待できる共に、頂点の摩耗を抑制することが可能である。
【0073】
以上、本発明の第一、第二、第三の実施形態に係る知育玩具1について説明したが、総じて、知育玩具1は効果的(効率的)な「親指4の刺激」の実現手段という点に着目して発明したものである。5本の指の中でも特に「親指」に着目した理由は、親指は他の指に比べていろいろな動きができること、すなわち、親指の動きの自由度が高いことによって、もったり、つかんだり、はめたり、むすんだり、めくったり、さまざまな動作をすることが可能になる(人間は親指を使ってはじめて、望む動作を行うことができる)こと、だから、親指はそれだけ脳と密接に結びつき、さまざまな指令を受け止め、実行する役割を担っていること、逆に言えば、親指を刺激することこそが、(最も効果的に)脳を活性化し、血流を上げ、若返らせることになるからである(例えば、前掲「長谷川」pp.37~38を参照)。
【0074】
実際に、親指4を刺激することによって様々な効果が得られるという研究結果がある。例えば、「認知症の予防」、「健康寿命の長期化」、「気力・やる気の向上」、「怒り・イライラの抑制」、「記憶力の向上」、「安眠の促進(ストレスの緩和)」、「冷え性の解消」、「運動機能の改善」、「血圧の安定化(自律神経のバランス化)」などの効果が期待できる(例えば、前掲「長谷川」pp.42~47を参照)。
【0075】
そして、親指4に刺激を与えることにとりわけ着目している背景には、生活が便利になったことで、手先をつかう機会が減り、その結果、親指4が脳を刺激する場面も減少してきたことで、年齢にかかわらず、脳の老化を早める原因となっていることがある(例えば、前掲「長谷川」p.55を参照)。
【0076】
上述の通り、本発明に係る知育玩具1は効果的(効率的)な「親指4の刺激」の実現手段という点に着目して発明したものであるが、当該実現手段の要点は、突起ではなく溝3で形成され、そして、面的でなく線で形成された線画(線図)を親指4の腹4aでなぞるという点にある。さらに、溝3をW字形状溝にすればその効果はより高まるという点にある。
【0077】
なお、本発明に係る知育玩具1に描かれた線画(線図)を適宜選択することにより、特に乳幼児にとっては、遊びの感覚を持って脳を活性化させながら、接した線画(線図)を通して様々な学びを得ることができることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
1 知育玩具
2 平面部
3 溝
4 親指