(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169465
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】電子源、プラズマ源及びスイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01J 1/304 20060101AFI20231122BHJP
H01J 27/20 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01J1/304
H01J27/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080572
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 久生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 学史
(72)【発明者】
【氏名】木村 重哉
【テーマコード(参考)】
5C227
【Fターム(参考)】
5C227AA08
5C227AB09
5C227AB12
5C227AC06
5C227AD01
5C227AD11
5C227GG10
5C227GG13
(57)【要約】
【課題】高効率の電子源、プラズマ源及びスイッチ装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、電子源は、基体及び第1陰極層を含む。前記第1陰極層は、複数の第1多結晶ダイヤモンドを含む第1ダイヤモンド層と、第1元素を含む第1部材と、を含む。前記第1ダイヤモンド層の少なくとも一部は、前記基体と、前記第1部材と、の間にある。前記第1元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
第1陰極層と、
を備え、
前記第1陰極層は、
複数の第1多結晶ダイヤモンドを含む第1ダイヤモンド層と、
第1元素を含む第1部材と、
を含み、
前記第1ダイヤモンド層の少なくとも一部は、前記基体と、前記第1部材と、の間にあり、
前記第1元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、電子源。
【請求項2】
前記第1ダイヤモンド層は、第1ダイヤモンド面、第2ダイヤモンド面及び第1中間領域を含み、
前記基体から前記第1ダイヤモンド層への方向において、前記第2ダイヤモンド面は、前記基体と前記第1ダイヤモンド面との間にあり、
前記第1中間領域は、前記第1ダイヤモンド面と前記第2ダイヤモンド面との間にあり、
前記第1部材は前記第1中間領域に設けられていない、または、前記第1ダイヤモンド面における前記第1部材の濃度は、前記第1中間領域における前記第1部材の濃度よりも高い、請求項1に記載の電子源。
【請求項3】
前記第1ダイヤモンド層は、第1ダイヤモンド面及び第2ダイヤモンド面を含み、
前記基体から前記第1ダイヤモンド層への方向において、前記第2ダイヤモンド面は、前記基体と前記第1ダイヤモンド面との間にあり、
前記第1部材は前記第2ダイヤモンド面に設けられていない、または、前記第1ダイヤモンド面における前記第1部材の濃度は、前記第2ダイヤモンド面における前記第1部材の濃度よりも高い、請求項1に記載の電子源。
【請求項4】
前記第1ダイヤモンド層は、第1ダイヤモンド面及び第2ダイヤモンド面を含み、
前記基体から前記第1ダイヤモンド層への方向において、前記第2ダイヤモンド面は、前記基体と前記第1ダイヤモンド面との間にあり、
前記第1ダイヤモンド面は、凹部と凸部とを含み、
前記第1部材の少なくとも一部は、前記凹部にある、請求項1に記載の電子源。
【請求項5】
前記凹部における前記第1部材の濃度は、前記凸部における前記第1部材の濃度よりも高い、請求項4に記載の電子源。
【請求項6】
前記第1部材は、前記第1元素を含む複数の粒を含む、請求項1に記載の電子源。
【請求項7】
前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの1つから前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの別の1つへの方向は、前記基体と前記第1ダイヤモンド層との境界に沿う、請求項1に記載の電子源。
【請求項8】
前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの平均の径は、前記基体から前記第1ダイヤモンド層への方向における前記第1ダイヤモンド層の厚さの1/2以上である、請求項1に記載の電子源。
【請求項9】
前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの平均の径は、200nm以上5000nm以下である、請求項1に記載の電子源。
【請求項10】
前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの1つに含まれる炭素と、前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの別の1つに含まれる炭素と、が結合した、請求項1に記載の電子源。
【請求項11】
複数の前記第1陰極層が設けられ、
前記複数の第1陰極層は、多角形の複数の辺にそれぞれ沿って並び、
前記複数の第1陰極層のそれぞれは、前記多角形の内側を向く平面状の第1表面を含む、請求項1に記載の電子源。
【請求項12】
前記複数の第1陰極層の1つは、前記複数の第1陰極層の別の1つの隣であり、
前記第1陰極層の前記1つの前記第1表面と、前記複数の第1陰極層の前記別の1つの前記第1表面と、の間の角度は、90度を超える、請求項11に記載の電子源。
【請求項13】
第2陰極層をさらに備え、
前記第2陰極層は、
複数の第2多結晶ダイヤモンドを含む第2ダイヤモンド層と、
第2元素を含む第2部材と、
を含み、
前記第2部材と前記第1部材との間に前記基体があり、
前記第2ダイヤモンド層の少なくとも一部は、前記基体と、前記第2部材と、の間にあり、
前記第2元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電子源。
【請求項14】
前記第2ダイヤモンド層は、第3ダイヤモンド面及び第4ダイヤモンド面を含み、
前記基体から前記第2ダイヤモンド層への方向において、前記第4ダイヤモンド面は、前記基体と前記第3ダイヤモンド面との間にあり、
前記第2部材は前記第4ダイヤモンド面に設けられていない、または、前記第3ダイヤモンド面における前記第2部材の濃度は、前記第4ダイヤモンド面における前記第2部材の濃度よりも高い、請求項13に記載の電子源。
【請求項15】
複数の第2陰極層をさらに備え、
複数の前記第1陰極層が設けられ、
前記基体の少なくとも一部は、前記複数の第1陰極層の1つと、前記複数の第2陰極層の1つと、の間にあり、
前記複数の第1陰極層は、面状であり、
前記複数の第1陰極層は、多角形の複数の辺にそれぞれ沿い、
前記複数の第1陰極層のそれぞれは、前記多角形の内側を向く平面状の第1表面を含み、
前記複数の第2陰極層のそれぞれは、前記多角形の外側を向く平面状の第2表面を含み、
前記複数の第2陰極層の前記1つは、
複数の第2多結晶ダイヤモンドを含む第2ダイヤモンド層と、
第2元素を含む第2部材と、
を含み、
前記第2部材と前記第1部材との間に前記基体があり、
前記第2ダイヤモンド層の少なくとも一部は、前記基体と、前記第2部材と、の間にあり、
前記第2元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電子源。
【請求項16】
複数の第1ダイヤモンド層のラマンスペクトルにおいて、440cm-1のラマンシフトにおける強度は、1350cm-1のラマンシフトにおける強度よりも高く、1570cm-1のラマンシフトにおける強度よりも高い、請求項1に記載の電子源。
【請求項17】
ガスを収容可能な容器と、
前記容器のなかに設けられた請求項1に記載の電子源と、
前記容器のなかに設けられた陽極部材と、
を備えたプラズマ源。
【請求項18】
ガスを収容可能な容器と、
前記容器のなかに設けられた電子源であって、前記電子源は、基体と、前記基体に支持された第1陰極層と、を含み、前記第1陰極層は、複数の第1多結晶ダイヤモンドを含む、前記電子源と、
前記容器のなかに設けられた陽極部材と、
前記容器のなかに設けられた第1部材であって、前記第1部材は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、前記第1部材と、
を備えたプラズマ源。
【請求項19】
ガスを収容可能な容器と、
前記容器のなかに設けられた電子源であって、前記電子源は、基体と、前記基体に支持された第1陰極層と、を含み、前記第1陰極層は、複数の第1多結晶ダイヤモンドを含む、前記電子源と、
前記容器のなかに設けられた陽極部材と、
を備え、
前記容器の内面の少なくとも一部は、第1部材を含み、
前記第1部材は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、プラズマ源。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか1つに記載のプラズマ源と、
前記容器のなかに設けられた制御導電部と、
を備えたスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子源、プラズマ源及びスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子源によりプラズマが形成される。プラズマを用いたスイッチなどがある。高効率の電子源が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、高効率の電子源、プラズマ源及びスイッチ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、電子源は、基体及び第1陰極層を含む。前記第1陰極層は、複数の第1多結晶ダイヤモンドを含む第1ダイヤモンド層と、第1元素を含む第1部材と、を含む。前記第1ダイヤモンド層の少なくとも一部は、前記基体と、前記第1部材と、の間にある。前記第1元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る電子源を例示する電子顕微鏡写真像である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る電子源の特性を例示するグラフである。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る電子源の一部を例示する模式的断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、第2実施形態に係るプラズマ源を例示する模式的断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係るプラズマ源の動作を例示する模式図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るプラズマ源を例示する模式的断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るプラズマ源を例示する模式的断面図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係るプラズマ源を例示する模式的断面図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態に係るスイッチ装置を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る電子源310は、基体30及び第1陰極層10を含む。第1陰極層10は、基体30に支持される。
【0009】
第1陰極層10は、第1ダイヤモンド層10D及び第1部材10Cを含む。第1ダイヤモンド層10Dは、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dを含む。第1部材10Cは、第1元素を含む。
【0010】
第1元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、第1部材10Cは、第1元素を含む複数の粒を含んでも良い。第1部材10Cは、例えば、Ptを含む粒、または、Moを含む粒などで良い。第1部材10Cの少なくとも一部が網目状または膜状でも良い。
【0011】
第1ダイヤモンド層10Dの少なくとも一部は、基体30と第1部材10Cとの間にある。
【0012】
基体30は、例えば、モリブデン、タングステン、ダイヤモンド、シリコン、炭化ケイ素及び窒化ガリウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。基体30は、例えば、基板で良い。基体30は、導電性で良い。基体30は、結晶を含んで良い。例えば、基体30の上に、第1陰極層10が結晶成長により形成されて良い。例えば、エピタキシャル成長により、第1陰極層10が形成される。より高い品質の第1陰極層10が得られる。基体30は、単結晶基板でも良い。基体30が単結晶基板である場合、第1陰極層10において高い結晶性が得られる。これにより、高い効率での電子の放出が得られる。基体30が単結晶基板である場合、基板の面方位により第1陰極層10の結晶の面方位を制御できる。例えば、高い効率での電子の放出が得られる。
【0013】
実施形態においては、第1元素を含む第1部材10Cが、第1ダイヤモンド層10Dの表面に設けられる。これにより、高い放出効率が安定して得られることが分かった。
【0014】
実施形態において、第1陰極層10から電子が放出される。第1陰極層10がダイヤモンドを含むことで、より高い効率で、安定して電子が放出される。ダイヤモンドの表面は、水素終端されて良い。水素終端により、より高い効率で電子が放出される。
【0015】
このような構成において、電子の放出を続けると、空間に存在するイオンがダイヤモンドの表面に衝突し、ダイヤモンドの水素終端が部分的に破壊される場合がある。これにより、ダイヤモンドの表面において、未結合手が発生する。これにより、高い放出効率が得にくくなる場合がある。
【0016】
実施形態においては、第1元素を含む第1部材10Cが、第1ダイヤモンド層10Dの表面に設けられる。第1部材10Cは、触媒として作用する。例えば、第1部材10Cの第1元素により、水素ラジカルが発生する。水素ラジカルは、第1ダイヤモンド層10Dの表面を移動し、未結合手を水素化する。これにより、水素終端が安定して維持できる。実施形態によれば、安定した高効率の電子源が提供できる。
【0017】
実施形態において、第1部材10Cは、第1ダイヤモンド層10Dの表面に設けられることが好ましい。例えば、第1ダイヤモンド層10Dのバルク中などには第1部材10Cが設けられないことが好ましい。第1ダイヤモンド層10Dのバルク中に第1部材10Cが設けられると、例えば、熱伝導率などが低下する。放熱性が低下し易い。
【0018】
例えば、
図1に示すように、第1ダイヤモンド層10Dは、第1ダイヤモンド面F1、第2ダイヤモンド面F2及び第1中間領域MR1を含む。基体30から第1ダイヤモンド層10Dへの方向を方向Ds1とする。方向Ds1は積層方向(または成長方向)である。方向Ds1において、第2ダイヤモンド面F2は、基体30と第1ダイヤモンド面F1との間にある。第2ダイヤモンド面F2は、基体30と対向する面である。第1ダイヤモンド面F1は、表面である。
【0019】
第1中間領域MR1は、第1ダイヤモンド面F1と第2ダイヤモンド面F2との間にある。第1中間領域MR1は、例えば、バルク領域である。実施形態において、第1部材10Cは第1中間領域MR1に設けられていないことが好ましい。または、第1ダイヤモンド面F1における第1部材10Cの濃度は、第1中間領域MR1における第1部材10Cの濃度よりも高いことが好ましい。
【0020】
実施形態において、第1部材10Cは第2ダイヤモンド面F2に設けられていないことが好ましい。または、第1ダイヤモンド面F1における第1部材10Cの濃度は、第2ダイヤモンド面F2における第1部材10Cの濃度よりも高いことが好ましい。
【0021】
図1に示すように、第1部材10Cは、第1ダイヤモンド面F1の凹部に設けられても良い。例えば、第1ダイヤモンド面F1は、凹部10dと凸部10pとを含む。第1部材10Cの少なくとも一部は、凹部10dにある。例えば、凹部10dにおける第1部材10Cの濃度は、凸部10pにおける第1部材10Cの濃度よりも高い。
【0022】
図1に示すように、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dのそれぞれは、基体30の表面から成長して良い。例えば、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dのそれぞれは、基体30の表面に固定される。例えば、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの方向Ds1における重なりが少ないことが好ましい。これにより、より高い熱伝導率が得られる。例えば、ダイヤモンド粒の焼結体が用いられる場合は、複数の粒が重なりあう。これにより、熱伝導率が低くなりやすい。
【0023】
例えば、
図1に示すように、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの1つから複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの別の1つへの方向は、基体30と第1ダイヤモンド層10Dとの境界10Iに沿う。
【0024】
図1に示すように、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの平均の径を径dm1とする。基体30から第1ダイヤモンド層10Dへの方向Ds1における第1ダイヤモンド層10Dの厚さを厚さt1とする。径dm1は、例えば、厚さt1の1/2以上であることが好ましい。複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの重なりが抑制される。径dm1は、例えば、厚さt1の2倍以下で良い。
【0025】
1つの例において、「径」は、定方向径の平均である。「径」は、任意の代表径でも良い。代表径は、例えば、三軸径、または、相当径などで良い。「径」に関する情報は、例えば、X線小角散乱法(SAXS)を用いた測定により得られて良い。「径」に関する情報は、例えば、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡による表面像から得られても良い。「径」は、例えば、表面像の投影像内の所定範囲内における粒子の所定方向の径の平均でも良い。
【0026】
複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの平均の径dm1は、200nm以上5000nm以下であることが好ましい。径dm1が200nm以上であることで、例えば、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの単層が得やすく、高い熱伝導率が得易い。径dm1が5000nm以下であることで、例えば、電子の放出のための電圧を低くし易い。例えば、第1ダイヤモンド層10Dが高い生産性で得られる。径dm1は、500nm以下でも良い。
【0027】
例えば、複数の第1多結晶ダイヤモンドの間には、第1部材10Cは実質的に設けられない。例えば、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの1つに含まれる炭素と、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの別の1つに含まれる炭素と、が結合して良い。結合は、炭素同士の結合である。
【0028】
図2は、第1実施形態に係る電子源を例示する電子顕微鏡写真像である。
図2は、第1ダイヤモンド層10Dの表面(例えば、第1ダイヤモンド面F1)の電子顕微鏡写真像である。
図2に示すように、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの間に第1部材10Cが観察される。この例では、第1部材10Cは、Mo粒である。
【0029】
実施形態において、例えば、第1ダイヤモンド層10Dの表面に第1部材10Cが付着される。付着の方法は任意である。例えば、チャンバ内に置かれた第1ダイヤモンド層10Dに、第1元素を含む部材をスパッタすることなどにより、実施形態に係る第1陰極層10が得られて良い。1つの例において、第1部材10C(Mo粒など)の径は、例えば、1nm以上50nm以下である。
【0030】
図3は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
図3に示すように、実施形態に係る電子源311は、基体30及び第1陰極層10に加えて、第2陰極層20をさらに含む。これを除く電子源311の構成は、電子源310の構成と同様で良い。
【0031】
第2陰極層20は、第2ダイヤモンド層20D及び第2部材20Cを含む。第2ダイヤモンド層20Dは、複数の第2多結晶ダイヤモンド28Dを含む。第2部材20Cは、第2元素を含む。第2元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素は、第1元素と同じで良い。
【0032】
第2部材20Cと第1部材10Cとの間に基体30がある。第2ダイヤモンド層20Dの少なくとも一部は、基体30と第2部材20Cとの間にある。
【0033】
電子源311においては、第1陰極層10及び第2陰極層20の両方から電子が放出される。単位面積あたりに放出される電子を多くすることができる。より高い効率が得られる。
【0034】
第2陰極層20の構成は第1陰極層10の構成と同様で良い。例えば、第2ダイヤモンド層20Dは、第3ダイヤモンド面F3、第4ダイヤモンド面F4及び第2中間領域MR2を含む。基体30から第2ダイヤモンド層20Dへの方向において、第4ダイヤモンド面F4は、基体30と第3ダイヤモンド面F3との間にある。第4ダイヤモンド面F4は、基体30と対向する面である。第3ダイヤモンド面F3は、表面である。
【0035】
第2中間領域MR2は、第3ダイヤモンド面F3と第4ダイヤモンド面F4との間にある。第2中間領域MR2は、例えば、バルク領域である。例えば、第2部材20Cは第2中間領域MR2に設けられていないことが好ましい。または、第3ダイヤモンド面F3における第2部材20Cの濃度は、第2中間領域MR2における第2部材20Cの濃度よりも高いことが好ましい。
【0036】
例えば、第2部材20Cは第4ダイヤモンド面F4に設けられていないことが好ましい。または、第3ダイヤモンド面F3における第2部材20Cの濃度は、第4ダイヤモンド面F4における第2部材20Cの濃度よりも高い。
【0037】
例えば、第3ダイヤモンド面F3は、凹部20dと凸部20pとを含む。第2部材20Cの少なくとも一部は、凹部20dにある。例えば、凹部20dにおける第2部材20Cの濃度は、凸部20pにおける第2部材20Cの濃度よりも高い。
【0038】
以下、第1ダイヤモンド層10Dの特性の例について説明する。以下では、品質の異なる3種類の試料の特性の例について説明する。第1試料SPL1において、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dは、比較的低品質のp形ダイヤモンドである。第2試料SPL2において、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dは、比較的高品質のp形ダイヤモンドである。第3試料SPL3において、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dは、高品質のp形ダイヤモンドである。
【0039】
第1試料SPL1においては、グロー放電からアーク放電に移行する電流が小さい。一方、第2試料SPL2及び第3試料SPL3においては、グロー放電からアーク放電に移行する電流が大きい。第2試料SPL2及び第3試料SPL3において、安定した動作が得易い。
【0040】
これらの試料の分析結果の例について説明する。
図4は、第1実施形態に係る電子源の特性を例示するグラフである。
図4は、第1試料SPL1、第2試料SPL2及び第3試料SPL3についてのラマンスペクトルの測定結果を例示している。
図4の横軸は、ラマンシフトRSである。縦軸は、信号の強度Int(相対値)である。
【0041】
図4において、約440cm
-1のラマンシフトRS、及び、約1205cm
-1のラマンシフトRSは、Bドープトダイヤモンドに対応する。約1305cm
-1のラマンシフトRSは、イントリンシックダイヤモンドに対応する。約1350cm
-1のラマンシフトRSは、乱れたsp
3結合カーボンに対応する。約1570cm
-1のラマンシフトRSは、sp
2結合カーボンに対応する。
【0042】
図4に示すように、第1試料SPL1のラマンスペクトルにおいては、ラマンシフトRSが約1350cm
-1における強度Int、及び、ラマンシフトRSが約1570cm
-1における強度Intが高い。このことは、第1試料SPL1において、sp
2結合カーボンの割合が高いことを示す。
【0043】
第2試料SPL2及び第3試料SPL3においては、これらの強度Intが低い。このことは、第2試料SPL2及び第3試料SPL3において、sp3結合カーボンの割合が高いことを示す。
【0044】
実施形態において、第1陰極層10のラマンスペクトルにおいて、440cm-1のラマンシフトRSにおける強度Intは、1350cm-1のラマンシフトRSにおける強度Intよりも高く、1570cm-1のラマンシフトRSにおける強度Intよりも高いことが好ましい。
【0045】
第1陰極層10において、1205cm-1のラマンシフトRSにおける強度Intは、1350cm-1のラマンシフトRSにおける強度Intよりも高く、1570cm-1のラマンシフトRSにおける強度Intよりも高いことが好ましい。
【0046】
上記のような特性により、例えば、放電時の消費電力を低減できる。例えば、高い電流密度までグロー放電を維持できる。例えば、アーク放電への移行が効果的に抑制できる。
【0047】
図5は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
図5に示すように、実施形態に係る電子源312において、複数の第1陰極層10が設けられてる。この例では、複数の基体30が設けられている。複数の基体30の1つに、複数の第1陰極層10の1つが設けられる。1つの基体30に複数の第1陰極層10が設けられても良い。
【0048】
図5に示すように、複数の第1陰極層10は、多角形Q1の複数の辺にそれぞれ沿って並ぶ。複数の第1陰極層10のそれぞれは、第1表面10fを含む。第1表面10fは、多角形Q1の内側を向く平面状の面である。
【0049】
例えば、複数の第1陰極層10は、陰極層11a~11fなどを含む。陰極層11a~11fのそれぞれが、平面状の第1表面10fを有する。このような構成により、複数の第1陰極層10で囲まれた空間SPに、効率的に電子が放出される。
【0050】
図6は、第1実施形態に係る電子源の一部を例示する模式的断面図である。
図6は、
図5の一部を例示している。複数の第1陰極層10の1つ(例えば陰極層11a)は、複数の第1陰極層10の別の1つ(例えば陰極層11b)の隣である。第1陰極層10の上記の1つ(陰極層11a)の第1表面10fと、複数の第1陰極層10の上記の別の1つ(陰極層11b)の第1表面10fと、の間の角度を角度θとする。実施形態において、角度θは、90度を超えることが好ましい。角度θは、例えば120度以上でも良い。角度θは、陰極層11aの第1表面10fを含む平面PL1と、陰極層11bの第1表面10fを含む平面PL2と、の間の角度に対応する。角度θが大きいことで、複数の第1陰極層10で囲まれた空間の断面が円形に近くなる。
【0051】
図7は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
図7に示すように、実施形態に係る電子源313は、複数の積層体35を含む。複数の積層体35のそれぞれが、第1陰極層10、基体30及び第2陰極層20を含む。第1陰極層10と第2陰極層20との間に、基体30がある。積層体35の構成は、例えば、
図3に例示した電子源311の構成と同様で良い。
【0052】
このように、電子源313は、複数の第2陰極層20を含む。電子源313において、複数の第1陰極層10が設けられる。基体30の少なくとも一部は、複数の第1陰極層10の1つと、複数の第2陰極層20の1つと、の間にある。複数の第1陰極層10は、面状である。複数の第1陰極層10は、多角形Q1の複数の辺にそれぞれ沿う。複数の第1陰極層10のそれぞれは、多角形Q1の内側を向く平面状の第1表面10fを含む。複数の第2陰極層20のそれぞれは、多角形Q1の外側を向く平面状の第2表面20fを含む。
【0053】
図3に関して説明したように、複数の第2陰極層20の1つは、第2ダイヤモンド層20Dと、第2部材20Cと、を含む。第2ダイヤモンド層20Dは、複数の第2多結晶ダイヤモンド28Dを含む。第2部材20Cは、第2元素を含む。第2元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2部材20Cと第1部材10Cとの間に基体30がある。第2ダイヤモンド層20Dの少なくとも一部は、基体30と第2部材20Cとの間にある。
【0054】
図8(a)及び
図8(b)は、第1実施形態に係る電子源を例示する模式的断面図である。
これらの図は、実施形態に係る電子源314を例示している。
図8(b)は、
図8(a)のX1-X2線断面図である。
図8(a)に示すように、電子源314において、複数の多角形Q1がX-Y平面に沿って設けられている。Y軸方向は、X軸方向に対して垂直である。X軸方向及びY軸方向に対して垂直な方向をZ軸方向とする。
【0055】
図8(a)に示すように、複数の積層体35が、多角形Q1の複数の辺にそれぞれ沿う。このような複数の積層体35を含む複数のグループが、X-Y平面に沿って並ぶ。
図8(a)において、多角形Q1が正六角形である例が示されている。
【0056】
図8(b)に示すように、電子源314は、支持部38を含んでも良い。支持部38は、複数の積層体35を支持する。例えば、支持部38は、第1支持部材38aと、第2支持部材38bと、を含む。例えば、複数の積層体35の1つは、第1支持部材38aと第2支持部材38bと、の間にある。
【0057】
支持部38は、第3支持部材38cを含んでも良い。第3支持部材38cは、第1支持部材38a及び第2支持部材38bを支持する。第3支持部材38cは、ベースである。第1支持部材38a及び第2支持部材38bは、例えば、弾性部材である。
【0058】
(第2実施形態)
図9(a)及び
図9(b)は、第2実施形態に係るプラズマ源を例示する模式的断面図である。
図9(a)は、
図9(b)のY1-Y2線断面図である。
図9(b)は、
図9(a)のY3-Y4線断面図である。
【0059】
図9(a)及び
図9(b)に示すように、実施形態に係るプラズマ源110は、容器50、電子源(この例では、電子源312)、及び、陽極部材40Mを含む。第1実施形態に係る任意の電子源が用いられて良い。
【0060】
容器50は、ガス50gを収容可能である。ガス50gは、容器50の内部の空間に収容される。ガス50gは、例えば、アルゴン、ヘリウム、水素、及び、重水素の少なくとも1つを含む。プラズマ源110は、ガス50gを含んでも良い。プラズマ源110の使用時に、容器50のなかにガス50gが導入されても良い。例えば、ガス50gは、容器50に設けられる導入口などから容器50の内部に導入されて良い。容器50は、容器50の内部の空間を気密に保持可能である。
【0061】
電子源312は、容器50のなかに設けられる。陽極部材40Mは、容器50のなかに設けられる。陽極部材40Mは、電子源312から離れる。
【0062】
図9(b)に示すように、制御部70が設けられても良い。制御部70は、例えば、電子源312と陽極部材40Mとの間に電圧を印加することが可能である。
【0063】
図9(a)及び
図9(b)に示すように、磁場印加部60が設けられても良い。プラズマ源110は、磁場印加部60を含んでも良い。磁場印加部60は、複数の第1陰極層10で囲まれた空間SPに磁場MFを印加可能である。磁場MFは、多角形Q1を含む平面(X-Y平面)と交差する方向(例えばZ軸方向)の成分を含む。例えば、磁場MFは、Z軸方向に沿う。磁場印加部60は、例えば磁石(例えば永久磁石)で良い。磁場印加部60は、例えば電磁石でも良い。例えば、陽極部材40Mは、Z軸方向において電子源312から離れる。
【0064】
このような磁場MFにより、電子源312は、クロスフィールドホローカソードとして機能して良い。
【0065】
図10は、第2実施形態に係るプラズマ源の動作を例示する模式図である。
図10に示すように、筒状(または環状)の電子源312で囲まれた空間SPに、磁場MFが印加される。磁場MFは、筒の軸方向(Z軸方向)に沿う。空間SPの中心部に、負グロー81が形成される。負グロー81と電子源312との間に電場E1が生じる。電子EL1は、磁場MFと、電場E1と、により、筒内を旋回しながらドリフトする。電子EL1は、ガス50gの粒子(分子など)と衝突を繰り返す。これにより電離が促進される。これにより、高い密度のプラズマが得られる。
【0066】
実施形態において、複数の第1陰極層10の多角形Q1の頂角の角度は、90度を超えることが好ましい。これにより、電子EL1の上記のドリフトが阻害されることを抑制できる。多角形Q1は、例えば正多角形で良い。
【0067】
図11は、第2実施形態に係るプラズマ源を例示する模式的断面図である。
図11に示すように、実施形態に係るプラズマ源111においては、磁場印加部60は、X-Y平面で、電子源312と重ならない。例えば、Z軸方向において、電子源312は、容器50と陽極部材40Mとの間にあっても良い。磁場印加部60の少なくとも一部は、X-Y平面において、容器50と重ならなくても良い。
【0068】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態に係るプラズマ源を例示する模式的断面図である。
図12に示すように、実施形態に係るプラズマ源120は、容器50、電子源320、、陽極部材40M及び第1部材10Cを含む。容器50は、ガス50gを収容可能である。電子源320、陽極部材40M及び第1部材10Cは、容器50のなかに設けられる。
【0069】
電子源320は、基体30と、基体30に支持された第1陰極層10と、を含む。第1陰極層10は、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dを含む(
図1参照)。第3実施形態においては、第1陰極層10は、第1部材10Cを含まなくて良い。
【0070】
第1部材10Cは、第1元素を含む。第1元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。この例では、第1部材10Cは、電子源320と陽極部材40Mとの間にある。第1部材10Cは、例えばグリッドである。
【0071】
プラズマ源120においては、動作をさせることにより、第1部材10Cに含まれる第1元素が、第1陰極層10に付着する。第1元素が、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dの表面に付着する。例えば、第1部材10Cの第1元素により、水素ラジカルが発生する。水素ラジカルは、第1ダイヤモンド層10Dの表面を移動し、未結合手を水素化する。これにより、水素終端が安定して維持できる。第3実施形態においては、安定した高効率のプラズマ源が提供できる。プラズマ源120において、第1陰極層10は、第1部材10Cを含んでも良い。
【0072】
図13は、第3実施形態に係るプラズマ源を例示する模式的断面図である。
図13に示すように、実施形態に係るプラズマ源121は、容器50、電子源320、及び陽極部材40Mを含む。容器50は、ガス50gを収容可能である。電子源320及び陽極部材40Mは、容器50のなかに設けられる。
【0073】
電子源320は、基体30と、基体30に支持された第1陰極層10と、を含む。第1陰極層10は、複数の第1多結晶ダイヤモンド18Dを含む。第3実施形態においては、第1陰極層10は、第1部材10Cを含まなくて良い。
【0074】
図13に示すように、容器50の内面の少なくとも一部は、第1部材10Cを含む。第1部材10Cは、第1元素を含む。第1元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0075】
プラズマ源121においても、動作をさせることにより、第1部材10Cに含まれる第1元素が、第1陰極層10に付着する。これにより、水素終端が安定して維持できる。安定した高効率のプラズマ源が提供できる。プラズマ源121において、第1陰極層10は、第1部材10Cを含んでも良い。
【0076】
(第4実施形態)
図14は、第4実施形態に係るスイッチ装置を例示する模式的断面図である。
図14に示すように、実施形態に係るスイッチ装置210は、プラズマ源130及び制御導電部45を含む。プラズマ源130は、第2実施形態または第3実施形態に係る任意のプラズマ源が適用されて良い。制御導電部45は、容器50のなかに設けられる。制御導電部45は、例えば、制御部70と接続される。制御部70により、制御導電部45の電位が制御される。これにより、電子源(この例では、電子源330)と陽極部材40Mとの間に流れる電流が制御できる。第4実施形態によれば、安定した高効率のスイッチ装置が提供できる。制御導電部45は、第1部材10Cを含んでも良い。水素終端が安定して維持できる。
【0077】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
基体と、
第1陰極層と、
を備え、
前記第1陰極層は、
複数の第1多結晶ダイヤモンドを含む第1ダイヤモンド層と、
第1元素を含む第1部材と、
を含み、
前記第1ダイヤモンド層の少なくとも一部は、前記基体と、前記第1部材と、の間にあり、
前記第1元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、電子源。
【0078】
(構成2)
前記第1ダイヤモンド層は、第1ダイヤモンド面、第2ダイヤモンド面及び第1中間領域を含み、
前記基体から前記第1ダイヤモンド層への方向において、前記第2ダイヤモンド面は、前記基体と前記第1ダイヤモンド面との間にあり、
前記第1中間領域は、前記第1ダイヤモンド面と前記第2ダイヤモンド面との間にあり、
前記第1部材は前記第1中間領域に設けられていない、または、前記第1ダイヤモンド面における前記第1部材の濃度は、前記第1中間領域における前記第1部材の濃度よりも高い、構成1に記載の電子源。
【0079】
(構成3)
前記第1ダイヤモンド層は、第1ダイヤモンド面及び第2ダイヤモンド面を含み、
前記基体から前記第1ダイヤモンド層への方向において、前記第2ダイヤモンド面は、前記基体と前記第1ダイヤモンド面との間にあり、
前記第1部材は前記第2ダイヤモンド面に設けられていない、または、前記第1ダイヤモンド面における前記第1部材の濃度は、前記第2ダイヤモンド面における前記第1部材の濃度よりも高い、構成1に記載の電子源。
【0080】
(構成4)
前記第1ダイヤモンド層は、第1ダイヤモンド面及び第2ダイヤモンド面を含み、
前記基体から前記第1ダイヤモンド層への方向において、前記第2ダイヤモンド面は、前記基体と前記第1ダイヤモンド面との間にあり、
前記第1ダイヤモンド面は、凹部と凸部とを含み、
前記第1部材の少なくとも一部は、前記凹部にある、構成1に記載の電子源。
【0081】
(構成5)
前記凹部における前記第1部材の濃度は、前記凸部における前記第1部材の濃度よりも高い、構成4に記載の電子源。
【0082】
(構成6)
前記第1部材は、前記第1元素を含む複数の粒を含む、構成1~5のいずれか1つに記載の電子源。
【0083】
(構成7)
前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの1つから前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの別の1つへの方向は、前記基体と前記第1ダイヤモンド層との境界に沿う、構成1~6のいずれか1つに記載の電子源。
【0084】
(構成8)
前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの平均の径は、前記基体から前記第1ダイヤモンド層への方向における前記第1ダイヤモンド層の厚さの1/2以上である、構成1~7のいずれか1つに記載の電子源。
【0085】
(構成9)
前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの平均の径は、200nm以上5000nm以下である、構成1~8のいずれか1つに記載の電子源。
【0086】
(構成10)
前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの1つに含まれる炭素と、前記複数の第1多結晶ダイヤモンドの別の1つに含まれる炭素と、が結合した、構成1~9のいずれか1つに記載の電子源。
【0087】
(構成11)
複数の前記第1陰極層が設けられ、
前記複数の第1陰極層は、多角形の複数の辺にそれぞれ沿って並び、
前記複数の第1陰極層のそれぞれは、前記多角形の内側を向く平面状の第1表面を含む、構成1~10のいずれか1つに記載の電子源。
【0088】
(構成12)
前記複数の第1陰極層の1つは、前記複数の第1陰極層の別の1つの隣であり、
前記第1陰極層の前記1つの前記第1表面と、前記複数の第1陰極層の前記別の1つの前記第1表面と、の間の角度は、90度を超える、構成11に記載の電子源。
【0089】
(構成13)
第2陰極層をさらに備え、
前記第2陰極層は、
複数の第2多結晶ダイヤモンドを含む第2ダイヤモンド層と、
第2元素を含む第2部材と、
を含み、
前記第2部材と前記第1部材との間に前記基体があり、
前記第2ダイヤモンド層の少なくとも一部は、前記基体と、前記第2部材と、の間にあり、
前記第2元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~10のいずれか1つに記載の電子源。
【0090】
(構成14)
前記第2ダイヤモンド層は、第3ダイヤモンド面及び第4ダイヤモンド面を含み、
前記基体から前記第2ダイヤモンド層への方向において、前記第4ダイヤモンド面は、前記基体と前記第3ダイヤモンド面との間にあり、
前記第2部材は前記第4ダイヤモンド面に設けられていない、または、前記第3ダイヤモンド面における前記第2部材の濃度は、前記第4ダイヤモンド面における前記第2部材の濃度よりも高い、構成13に記載の電子源。
【0091】
(構成15)
複数の第2陰極層をさらに備え、
複数の前記第1陰極層が設けられ、
前記基体の少なくとも一部は、前記複数の第1陰極層の1つと、前記複数の第2陰極層の1つと、の間にあり、
前記複数の第1陰極層は、面状であり、
前記複数の第1陰極層は、多角形の複数の辺にそれぞれ沿い、
前記複数の第1陰極層のそれぞれは、前記多角形の内側を向く平面状の第1表面を含み、
前記複数の第2陰極層のそれぞれは、前記多角形の外側を向く平面状の第2表面を含み、
前記複数の第2陰極層の前記1つは、
複数の第2多結晶ダイヤモンドを含む第2ダイヤモンド層と、
第2元素を含む第2部材と、
を含み、
前記第2部材と前記第1部材との間に前記基体があり、
前記第2ダイヤモンド層の少なくとも一部は、前記基体と、前記第2部材と、の間にあり、
前記第2元素は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~11のいずれか1つに記載の電子源。
【0092】
(構成16)
複数の第1ダイヤモンド層のラマンスペクトルにおいて、440cm-1のラマンシフトにおける強度は、1350cm-1のラマンシフトにおける強度よりも高く、1570cm-1のラマンシフトにおける強度よりも高い、構成1~15のいずれか1つに記載の電子源。
【0093】
(構成17)
ガスを収容可能な容器と、
前記容器のなかに設けられた構成1~16のいずれか1つに記載の電子源と、
前記容器のなかに設けられた陽極部材と、
を備えたプラズマ源。
【0094】
(構成18)
ガスを収容可能な容器と、
前記容器のなかに設けられた電子源であって、前記電子源は、基体と、前記基体に支持された第1陰極層と、を含み、前記第1陰極層は、複数の第1多結晶ダイヤモンドを含む、前記電子源と、
前記容器のなかに設けられた陽極部材と、
前記容器のなかに設けられた第1部材であって、前記第1部材は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、前記第1部材と、
を備えたプラズマ源。
【0095】
(構成19)
ガスを収容可能な容器と、
前記容器のなかに設けられた電子源であって、前記電子源は、基体と、前記基体に支持された第1陰極層と、を含み、前記第1陰極層は、複数の第1多結晶ダイヤモンドを含む、前記電子源と、
前記容器のなかに設けられた陽極部材と、
を備え、
前記容器の内面の少なくとも一部は、第1部材を含み、
前記第1部材は、Pd、Ni、Co、W、Mo、Ir及びRuよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、プラズマ源。
【0096】
(構成20)
構成17~19のいずれか1つに記載のプラズマ源と、
前記容器のなかに設けられた制御導電部と、
を備えたスイッチ装置。
【0097】
実施形態によれば、高効率の電子源、プラズマ源及びスイッチ装置が提供できる。
【0098】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電子源、プラズマ源及びスイッチ装置に含まれる陰極層、陽極部材、容器、磁場印加部、及び制御部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0099】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0100】
その他、本発明の実施の形態として上述した電子源、プラズマ源及びスイッチ装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電子源、プラズマ源及びスイッチ装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0101】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10…第1陰極層、 10C…第1部材、 10D…第1ダイヤモンド層、 10I…境界、 10d…凹部、 10f…第1表面、 10p…凸部、 11a~11f…陰極層、 18D…第1多結晶ダイヤモンド、 20…第2陰極層、 20C…第2部材、 20D…第2ダイヤモンド層、 20d…凹部、 20f…第2表面、 20p…凸部、 28D…第2多結晶ダイヤモンド、 30…基体、 35…積層体、 38…支持部、 38a~38c…第1~第3支持部材、 40M…陽極部材、 45…制御導電部、 50…容器、 50g…ガス、 60…磁場印加部、 70…制御部、 81…負グロー、 θ…角度、 110、111、120、121、130…プラズマ源、 210…スイッチ装置、 310~314、320、330…電子源、 Ds1…方向、 E1…電場、 EL1…電子、 F1~F4…第1~第4ダイヤモンド面、 Int…強度、 MF…磁場、 MR1、MR2…第1、第2中間領域、 PL1、PL2…第1、第2平面、 Q1…多角形、 RS…ラマンシフト、 SP…空間、 SPL1~SPL3…第1~第3試料、 dm1…径、 t1…厚さ