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特開2023-169468高架橋用地盤振動低減スラブ及びそれを用いた地盤振動低減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169468
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】高架橋用地盤振動低減スラブ及びそれを用いた地盤振動低減方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20231122BHJP
   E02D 31/08 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
E01D22/00 Z
E02D31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080579
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】野寄 真徳
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA01
2D059AA03
2D059GG12
(57)【要約】
【課題】高架橋の直下において、高架橋の橋脚のフーチング上面の上方にスラブを設置することにより、新たな用地を必要とせず、施工性が高く、低コストで短期間に施工することができ、効果的に沿線の地盤振動を抑制することができるようにする。
【解決手段】高架橋20の直下に設置されるコンクリート製の厚板部材であり、上面11dが地表面31に露出し、下面11eの少なくとも一部が、前記高架橋20の橋脚22の側方に突出するフーチング23であって地中32に埋設されたフーチング23の上面23aの上方において、該フーチング23の上面23aに対向するように設置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架橋の直下に設置されるコンクリート製の厚板部材であり、
上面が地表面に露出し、
下面の少なくとも一部が、前記高架橋の橋脚の側方に突出するフーチングであって地中に埋設されたフーチングの上面の上方において、該フーチングの上面に対向するように設置されることを特徴とする高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項2】
前記橋脚及びフーチングから離間して設置される請求項1に記載の高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項3】
前記フーチングの上面の50〔%〕以上を覆うように設置される請求項1に記載の高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項4】
前記高架橋の橋桁の全幅を超えない範囲に設置される請求項1に記載の高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項5】
前記橋脚から前記高架橋の橋桁の幅方向外側端に対応する位置までの範囲に設置される外側スラブを含む請求項1に記載の高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項6】
前記橋脚が前記高架橋の橋桁の幅方向に複数ある場合、橋桁の幅方向に関して前記橋脚同士の間の範囲に設置される内側スラブを含む請求項5に記載の高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項7】
前記外側スラブは、該外側スラブにおける橋桁の幅方向外側端に設けられ、地中に埋設された地中壁を有する請求項5に記載の高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項8】
前記高架橋の橋桁の長手方向に複数並んで配設され、地中に埋設されたスラブ付属杭が取り付けられる請求項1に記載の高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項9】
前記高架橋の橋桁の長手方向に延在し、地中に埋設されたスラブ付属板が取り付けられる請求項1に記載の高架橋用地盤振動低減スラブ。
【請求項10】
高架橋の直下において、
コンクリート製の厚板部材を、
上面が地表面に露出し、
下面の少なくとも一部が、前記高架橋の橋脚の側方に突出するフーチングであって地中に埋設されたフーチングの上面の上方において、該フーチングの上面に対向するように設置することを特徴とする高架橋用地盤振動低減スラブを用いた地盤振動低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高架橋用地盤振動低減スラブ及びそれを用いた地盤振動低減方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道や道路の高架橋の沿線においては、列車や自動車のような車両が走行することによって生じる地盤振動が沿線周囲に伝播し、環境問題を引き起こすことがある。そこで、地盤振動の対策として、垂直に延びる防振壁を地中に設けることが提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
図1は従来の防振壁の防振作用を説明した模式図である。
【0004】
一般的に、鉄道や道路の沿線地盤の振動は、レイリー(Rayleigh)波と呼ばれる表面波と考えられている。図1は、このような表面波を遮断するために地中に埋め込まれた垂直に延びる平板である防振壁を表面波が透過及び回折する様子を模式的に示している。x=0の位置に深さHの防振壁(地中壁)が埋め込まれ、震動源からは地中振幅分布がa0 (z)の入射波が入射されるものとする。そして、防振壁を透過直後の地中振幅分布はa(z)となっている。また、深さがHより浅い箇所では、入射波の振幅に防振壁の振動透過率β(β<1)が乗じられた振幅となる。
【0005】
しかしながら、垂直に延びる防振壁は、振動源から離して設置することによって十分な振動低減効果が得られるものであるので、一般的な鉄道や道路のように沿線に広い敷地が得られない場合には、実施が困難である。そこで、水平に延びる平板ブロックを鉄道や道路の高架橋のような構造物の周囲の地下に埋設することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
図2は従来の水平に延びる平板ブロックを構造物の周囲の地下に埋設した状態を示す断面図である。
【0007】
図2において、101は鉄道の高架橋の橋脚のような振動を発する構造物である。また、102は構造物101を支えるケーソン基礎であり、その幅はBである。さらに、103は、厚さがt、幅がWの平板ブロックであって、周辺の地盤より剛性の高いものである。この平板ブロック103は、内周面がケーソン基礎102に接触しない程度に離して円盤状に配設され、地表からの深さHの地中に埋設されている。これにより、垂直に延びる防振壁よりも、高い振動低減効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】芦谷公稔、「振動遮断工の防振効果の評価手法」、物理探査、第58巻第4号、第351-362頁、2005年8月1日
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7-3829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の技術は、防振壁や平板ブロックを地中に埋設する必要があるので、長い作業時間と高いコストがかかってしまう。列車や自動車のような車両が走行することによって生じる地盤振動等の環境振動の主要な波動は表面波であり、例えば、図1に示されるような防振壁の場合、地表を伝播する表面波の波長に対応する幅及び深さまで施工する必要があるので、一般的には、幅10~100〔m〕、深さ2~10〔m〕、厚さ0.3~1〔m〕程度の大規模な工事が必要となってしまう。さらに、このような防振壁は、振動源から離して設置することによって十分な振動低減効果が得られるものであるので、鉄道や道路の高架橋の周辺に広い用地を確保する必要がある。
【0011】
また、図2に示されるような平板ブロック103の場合、その技術の発明者は、平板ブロック103の幅Wをケーソン基礎102の幅Bと同程度以上とし、平板ブロック103の厚さtを幅Wの1/5程度以上とし、平板ブロック103の剛性を剪断波速度で周辺地盤の3~5倍以上とし、α・Vs/4fの深さに設置すると、制振に有効である、と報告している。なお、α=0.5~0.8、Vsは地盤の剪断波速度、fは振動数である。この技術も振動のパスに着目し、平板ブロック103を高架橋の橋脚のような構造物101の周囲の地下に埋設し、埋設した平板ブロック103が表面波の地中振幅分布を乱すことによって、遠方への振動の伝播を抑制するものである。しかし、図1に示される技術よりも規模が小さいとはいえ、平板ブロック103を地中に埋設するので、やはり大規模な工事が必要であり、さらに、ケーソン基礎102の幅以上の幅を有する平板ブロック103をケーソン基礎102の周囲に設置するのであるから、図1に示される技術ほどでなくても、構造物101の周辺に広い用地を確保する必要がある。
【0012】
ここでは、前記従来の技術の問題点を解決して、高架橋の直下において、高架橋の橋脚のフーチング上面の上方にスラブを設置することによって、新たな用地を必要とせず、施工性が高く、低コストで短期間に施工することができ、効果的に沿線の地盤振動を抑制することができる高架橋用地盤振動低減スラブ及びそれを用いた地盤振動低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、高架橋の直下に設置されるコンクリート製の厚板部材であり、上面が地表面に露出し、下面の少なくとも一部が、前記高架橋の橋脚の側方に突出するフーチングであって地中に埋設されたフーチングの上面の上方において、該フーチングの上面に対向するように設置される。
【0014】
他の高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、さらに、前記橋脚及びフーチングから離間して設置される。
【0015】
更に他の高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、さらに、前記フーチングの上面の50〔%〕以上を覆うように設置される。
【0016】
更に他の高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、さらに、前記高架橋の橋桁の全幅を超えない範囲に設置される。
【0017】
更に他の高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、さらに、前記橋脚から前記高架橋の橋桁の幅方向外側端に対応する位置までの範囲に設置される外側スラブを含む。
【0018】
更に他の高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、さらに、前記橋脚が前記高架橋の橋桁の幅方向に複数ある場合、橋桁の幅方向に関して前記橋脚同士の間の範囲に設置される内側スラブを含む。
【0019】
更に他の高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、さらに、前記外側スラブは、該外側スラブにおける橋桁の幅方向外側端に設けられ、地中に埋設された地中壁を有する。
【0020】
更に他の高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、さらに、前記高架橋の橋桁の長手方向に複数並んで配設され、地中に埋設されたスラブ付属杭が取り付けられる。
【0021】
更に他の高架橋用地盤振動低減スラブにおいては、さらに、前記高架橋の橋桁の長手方向に延在し、地中に埋設されたスラブ付属板が取り付けられる。
【0022】
高架橋用地盤振動低減スラブを用いた地盤振動低減方法においては、高架橋の直下において、コンクリート製の厚板部材を、上面が地表面に露出し、下面の少なくとも一部が、前記高架橋の橋脚の側方に突出するフーチングであって地中に埋設されたフーチングの上面の上方において、該フーチングの上面に対向するように設置する。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、新たな用地を必要とせず、施工性が高く、低コストで短期間に施工することができ、効果的に沿線の地盤振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来の防振壁の防振作用を説明した模式図である。
図2】従来の水平に延びる平板ブロックを構造物の周囲の地下に埋設した状態を示す断面図である。
図3】第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの施工例を示す模式図である。
図4】第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工しない場合の振動の伝播状態を示す模式図である。
図5】第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合の振動の伝播状態を示す模式図である。
図6】第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの効果を確認するためのシミュレーションモデルを示す図である。
図7】第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工しない場合のシミュレーションによる振動の伝播状態解析結果を示す図である。
図8】第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合のシミュレーションによる振動の伝播状態解析結果を示す図である。
図9】第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの効果を確認するためのシミュレーションモデルによるフーチングの出力点位置の振動を比較したグラフである。
図10】第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの効果を確認するためのシミュレーションモデルによる構造物から離れた位置の振動を比較したグラフである。
図11】第2の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの施工例を示す模式図である。
図12】第3の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの施工例を示す模式図である。
図13】第3の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合の振動の伝播状態を示す模式図である。
図14】第4の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの施工例を示す模式図である。
図15】第4の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合の振動の伝播状態を示す第1の模式図である。
図16】第4の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合の振動の伝播状態を示す第2の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
図3は第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの施工例を示す模式図、図4は第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工しない場合の振動の伝播状態を示す模式図、図5は第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合の振動の伝播状態を示す模式図、図6は第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの効果を確認するためのシミュレーションモデルを示す図、図7は第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工しない場合のシミュレーションによる振動の伝播状態解析結果を示す図、図8は第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合のシミュレーションによる振動の伝播状態解析結果を示す図、図9は第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの効果を確認するためのシミュレーションモデルによるフーチングの出力点位置の振動を比較したグラフ、図10は第1の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの効果を確認するためのシミュレーションモデルによる構造物から離れた位置の振動を比較したグラフである。なお、図3において、(a)は横断面を示す図、(b)はスラブの上面を示す図である。
【0027】
図において、20は、本実施の形態における高架橋であって、鉄道用のものであってもよいし、道路用のものであってもよいし、いかなる用途のものであってもよいが、ここでは、説明の都合上、鉄道用のものであるとして説明する。また、前記高架橋20は、ラーメン高架橋又は桁式高架橋のいずれであってもよく、21は橋桁であるが、高架橋20がラーメン高架橋である場合には高架スラブと呼ばれる。
【0028】
さらに、22は、橋桁21を下方から支持する橋脚であり、鉄筋コンクリート製の長尺部材である。ここで、前記橋脚22は、橋桁21の長手方向に延在する柱列を左右2本形成するように、並んで配設されているものとして説明する。そして、各橋脚22の下端部には側方に突出するフーチング23が形成され、また、該フーチング23の下面には鉄筋コンクリート製の長尺部材である地中杭24の上端が接続されている。なお、フーチング23及び地中杭24は、その全体が地中32内に埋設されている。
【0029】
本実施の形態においては、前記高架橋20の直下であって、前記フーチング23の上面23aの上方に、高架橋用地盤振動低減スラブとしてのスラブ11が設置されている。該スラブ11は、コンクリート製の厚板部材であり、その厚さtは、好ましくは、0.5~2〔m〕程度に設定されている。また、前記スラブ11は、上面11dが地表面31に露出するように、かつ、下面11eの少なくとも一部がフーチング23の上面23aに対向するように、かつ、前記橋脚22及びフーチング23から離間して設置されている。なお、前記上面11dは、好ましくは、地表面31とフラット、すなわち、地表面31とほぼ面一である。
【0030】
そして、前記スラブ11は、フーチング23の上面23aの少なくとも一部を覆うように設置される。好ましくは、橋脚22を除くフーチング23の上面23aの範囲の50〔%〕以上を覆うように設置される。また、前記スラブ11は、図3(a)に示されるように、橋桁21の全幅Aを超えない範囲に設置される。すなわち、鉄道用地(道路用地)内に設置された高架橋20の橋桁21の直下の範囲内に設置される。
【0031】
前記スラブ11は、いかなる形状及び寸法の部材であってもよいが、図3に示される例においては、平面形状が概略長方形の外側スラブ11A及び内側スラブ11Bを含んでいる。なお、外側スラブ11Aと内側スラブ11Bとを統合的に説明する場合には、スラブ11として説明する。
【0032】
前記外側スラブ11Aは、橋脚22の2本の列の外側に配設されるスラブ11であり、図3(b)に示されるように、平面視において、橋桁21の長手方向に延在する一対の長辺部11aと、橋桁21の幅方向に延在する一対の短辺部11bとを有する長方形であるが、橋桁21の幅方向中央寄りの長辺部11aには橋脚22との接触を避けるための凹入部11cが形成されている。なお、長辺部11aは、橋桁21の長手方向に延在する橋脚22の列のうちの互いに隣接する2本の周囲を囲む程度の長さであって、橋桁21の長手方向に互いに隣接する外側スラブ11A同士の間に間隙が生じる程度の長さに設定されている。さらに、短辺部11bは、橋脚22の中心から橋桁21の幅方向外側端に対応する位置までの長さである。
【0033】
また、前記内側スラブ11Bは、橋脚22の2本の列の間に配設されるスラブ11であり、図3(b)に示されるように、平面視において、橋桁21の長手方向に延在する一対の長辺部11aと、橋桁21の幅方向に延在する一対の短辺部11bとを有する長方形であるが、両方の長辺部11aには橋脚22との接触を避けるための凹入部11cが形成されている。なお、長辺部11aは、橋桁21の長手方向に延在する橋脚22の列のうちの互いに隣接する2本の周囲を囲む程度の長さであって、橋桁21の長手方向に互いに隣接する内側スラブ11B同士の間に間隙が生じる程度の長さに設定されている。さらに、短辺部11bは、2本の列における一方の橋脚22の中心から一方の橋脚22の中心までの長さである。なお、内側スラブ11Bの短辺部11bの長さは、前記外側スラブ11Aの短辺部11bの長さと同様に、橋桁21の幅方向に隣接する外側スラブ11Aと内側スラブ11Bとの間に間隙が生じる程度の長さに設定されている。
【0034】
図3(b)において、各橋脚22の周囲を取り囲む点線は、地中32に埋設されたフーチング23の外周縁を示している。このことから、図3(b)に示される例においては、スラブ11が、橋脚22を除くフーチング23の上面23aの範囲の50〔%〕以上を覆うように設置されていることが分かる。
【0035】
また、いずれのスラブ11も、凹入部11cが形成されていることによって、橋脚22と接続乃至接触されていない、すなわち、橋脚22との縁が切られていることが分かる。これにより、構造設計が不要となる。また、振動が橋脚22からスラブ11に直接的に伝播されることが防止される。なお、必要に応じて、スラブ11と橋脚22との間の間隙を弾性材料等で埋め合わせることもできる。
【0036】
なお、橋桁21の長手方向に延在する橋脚22の柱列が1本のみである場合、すなわち、橋桁21の幅方向に関して橋脚22が1本しかない場合には、スラブ11は外側スラブ11Aのみであって、内側スラブ11Bは存在しない。一方、橋桁21の長手方向に延在する橋脚22の柱列が3本以上である場合、すなわち、橋桁21の幅方向に関して橋脚22が3本以上ある場合には、内側スラブ11Bが、橋桁21の幅方向に2つ以上並んで設置される。
【0037】
図4に示されるように、スラブ11の施工がなされていない、すなわち、スラブ11が設置されていない場合、フーチング23の上面23aから地表面31に入射した矢印41で示される波動の一部は、矢印43で示されるように、反射して地中32に伝播していく。また、残りの波動は、矢印42で示されるように、レイリー(Rayleigh)波として地盤の表層を伝播する。なお、構造物としての橋脚22及びフーチング23から地盤に入射する波動は、主として、フーチング23から入射すると考えられ、地盤の表層を伝播する波動の大部分はフーチング23の上面23aからの入射と考えられる。
【0038】
一方、図5に示されるように、スラブ11の施工がなされ、フーチング23の上面23aの上方にスラブ11が設置されている場合、コンクリートの反射率が大きいので、フーチング23の上面23aから地盤に入射した矢印41で示される波動の大部分は、コンクリート製のスラブ11の下面11eによって反射され、矢印43で示されるように、地中32に伝播していく。また、残りの波動は、矢印44で示されるように、スラブ11の下面11eを透過してスラブ11内を伝播し、さらに、その一部は、矢印45で示されるように、スラブ11の下面11eを再度透過して、地中32に伝播していく。これにより、高い振動低減効果を得ることができる。
【0039】
このような振動低減効果は、図6に示されるようなシミュレーションモデルを使用してシミュレーション解析を行うことによって、確認することができる。なお、図6において、23cは、フーチング23における出力点位置を示している。
【0040】
図7及び8は、それぞれ、スラブ11の施工がなされていない場合のシミュレーション解析結果、及び、スラブ11の施工がなされている場合のシミュレーション解析結果を示している。なお、図7及び8において、矢印51は、シミュレーションにおける加振点の位置を示しており、ここでは、橋桁21上に敷設された図示されない軌道の中心位置に垂直方向の加振がなされたものとしてシミュレーション解析が行われた。また、図7及び8は、振幅分布を示しており、振幅分布の節の部分に曲線53が引かれており、矢印52と併せて、地盤内の波動の伝播方向を示している。
【0041】
図7に示されるように、スラブ11の施工がなされていない、すなわち、スラブ11が設置されていない場合、地中32では振幅分布の節が同心円状に広がっている。また、地表面31においては、振幅の山の高さが、点線で示される地表面31の高さよりもかなり上方に位置し、地盤の表層を伝播する波動の振幅が大きいことが分かる。
【0042】
一方、図8に示されるように、スラブ11の施工がなされ、フーチング23の上面23aの上方にスラブ11が設置されている場合、地中32では振幅分布の節が水平方向に長い楕円形状に広がっている。これは、図5に示されるように、フーチング23の上面23aから地盤に入射した矢印41で示される波動の大部分が、スラブ11の下面11eによって反射されたためと考えられる。また、地表面31においては、点線で示される地表面31より上に出ている振幅の山の高さが小さく、地盤の表層を伝播する波動の振幅が小さくなっていることが分かる。
【0043】
図9及び10は、それぞれ、シミュレーション解析結果によるフーチング23の出力点位置23cおける振動の大きさ、及び、シミュレーション解析結果による構造物としての橋脚22及びフーチング23の中心から橋桁21の幅方向に15〔m〕離れた位置における振動の大きさを示すグラフである。なお、図9及び10において、横軸は1/3オクターブバンド中心周波数〔Hz〕を示し、縦軸は振動加速度レベル〔dB〕を示している。また、図9及び10において、□はスラブ11が設置されていない場合の振動を示し、○はフーチング23の上面23aの上方に厚さtが0.2〔m〕のスラブ11が設置されている場合の振動を示し、△はフーチング23の上面23aの上方に厚さtが1〔m〕のスラブ11が設置されている場合の振動を示している。
【0044】
図9に示されるように、フーチング23の出力点位置23cにおいては、フーチング23の上面23aの上方に厚さtが1〔m〕のスラブ11が設置されている場合、25~50〔Hz〕帯域及び80~100〔Hz〕帯域の振動が小さくなっている。これは、厚さtが1〔m〕のスラブ11がフーチング23の上面23aの上方に設置されていることによって、フーチング23が拘束され、その結果、特定の周波数の振動が小さくなっていると考えられる。また、フーチング23の上面23aの上方に厚さtが0.2〔m〕のスラブ11が設置されている場合、80~100〔Hz〕帯域の振動が小さくなっているが、この帯域は25~50〔Hz〕帯域と比較すると、距離減衰量が大きいので、構造物としての橋脚22及びフーチング23から橋桁21の幅方向に離れた位置では目立たなくなる。したがって、厚さtが0.2〔m〕のスラブ11は、厚さtが1〔m〕のスラブ11よりも、地盤の振動低減効果が小さいと考えられる。
【0045】
また、図10に示されるように、構造物としての橋脚22及びフーチング23の中心から橋桁21の幅方向に15〔m〕離れた位置においては、フーチング23の上面23aの上方に厚さtが0.2〔m〕のスラブ11が設置されている場合、多くの周波数帯において、スラブ11が設置されていない場合と比較して、振動に大きな変化がない。一方、フーチング23の上面23aの上方に厚さtが1〔m〕のスラブ11が設置されている場合、25~40〔Hz〕帯域及び63~100〔Hz〕帯域の振動が大きく減少している。したがって、厚さtが厚い(tの数値が大きい)スラブ11を使用すると、大きな地盤の振動低減効果を得ることができると考えられる。
【0046】
なお、鉄道の駅の周辺や街中であれば、道路や駐車場等の舗装がなされている場合が多いが、一般的な舗装におけるアスファルト部分の厚さは、車道であれば0.2〔m〕未満、歩道であれば0.05〔m〕未満であるから、上述の厚さtが0.2〔m〕のスラブ11よりも薄いので、地盤の振動の低減効果を実質的に得ることができないと考えられる。
【0047】
このように、本実施の形態におけるスラブ11は、高架橋20の直下に設置されるコンクリート製の厚板部材であり、上面11dが地表面31に露出し、下面11eの少なくとも一部が、高架橋20の橋脚22の側方に突出するフーチング23であって地中32に埋設されたフーチング23の上面23aの上方において、フーチング23の上面23aに対向するように設置される。
【0048】
また、本実施の形態におけるスラブ11を用いた地盤振動低減方法においては、高架橋20の直下において、コンクリート製の厚板部材を、上面11dが地表面31に露出し、下面11eの少なくとも一部が、高架橋20の橋脚22の側方に突出するフーチング23であって地中32に埋設されたフーチング23の上面23aの上方において、フーチング23の上面23aに対向するように設置する。
【0049】
これにより、新たな用地を必要とせず、施工性が高く、低コストで短期間に施工することができ、効果的に高架橋20の沿線の地盤振動を抑制することができる。
【0050】
さらに、スラブ11は、橋脚22及びフーチング23から離間して設置される。これにより、振動が橋脚22からスラブ11に直接的に伝播されることが防止される。
【0051】
さらに、スラブ11は、フーチング23の上面23aの50〔%〕以上を覆うように設置される。これにより、フーチング23の上面23aから地盤に入射した波動の大部分は、スラブ11の下面11eによって反射され、地中32に伝播していくので、高い振動低減効果を得ることができる。
【0052】
さらに、スラブ11は、高架橋20の橋桁21の全幅Aを超えない範囲に設置される。したがって、高架橋20を設置するために取得された敷地の外側にスラブ11を設置するための用地を確保する必要がない。
【0053】
さらに、スラブ11は、橋脚22から高架橋20の橋桁21の幅方向外側端に対応する位置までの範囲に設置される外側スラブ11Aを含んでいる。
【0054】
さらに、スラブ11は、橋脚22が高架橋20の橋桁21の幅方向に複数ある場合、橋桁21の幅方向に関して橋脚22同士の間の範囲に設置される内側スラブ11Bを含んでいる。
【0055】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0056】
図11は第2の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの施工例を示す模式図である。なお、図において、(a)は横断面を示す図、(b)はスラブの上面を示す図である。
【0057】
本実施の形態においては、スラブ11にスラブ付属杭としての拘束用地中杭15が取り付けられている。該拘束用地中杭15は、地中32内を上下方向に延在するコンクリート製の棒状部材であり、その長さは、好ましくは、2~20〔m〕程度に設定されている。また、前記拘束用地中杭15は、上端が、地表面31に露出することなく、スラブ11に埋め込まれた状態となっている。なお、前記拘束用地中杭15は、スラブ11と一体化して製作されたものであってもよいが、図に示される例においては、スラブ11と別個に製作され、その上端がスラブ11に埋め込まれて取り付けられている。
【0058】
図に示されるように、外側スラブ11Aにおいて、前記拘束用地中杭15は、橋桁21の長手方向に延在する柱列を1本形成するように、並んで設置されている。具体的には、各外側スラブ11Aにおいて、フーチング23の上面23aよりも橋桁21の幅方向外側の位置に、3本の拘束用地中杭15が並んで取り付けられている。
【0059】
また、内側スラブ11Bにおいて、前記拘束用地中杭15は、橋桁21の長手方向に延在する柱列を左右2本形成するように、並んで設置されている。具体的には、各内側スラブ11Bにおいて、フーチング23の上面23aよりも橋桁21の幅方向内側の位置に、各列3本の拘束用地中杭15が2本の列をなすように並んで取り付けられている。
【0060】
このように、スラブ11に地中32内に埋設された拘束用地中杭15が取り付けられているので、スラブ11が地盤に強固に固定され、より高い振動低減効果を得ることができる。
【0061】
なお、その他の点の構成、作用及び効果については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0062】
このように、本実施の形態においては、スラブ11に、高架橋20の橋桁21の長手方向に複数並んで配設され、地中32に埋設された拘束用地中杭15が取り付けられる。
【0063】
これにより、スラブ11が地盤に強固に固定され、より高い振動低減効果を得ることができる。
【0064】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0065】
図12は第3の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの施工例を示す模式図、図13は第3の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合の振動の伝播状態を示す模式図である。なお、図12において、(a)は横断面を示す図、(b)はスラブの上面を示す図である。
【0066】
本実施の形態においては、スラブ11にスラブ付属板としての拘束用鋼矢板16が取り付けられている。該拘束用鋼矢板16は、地中32内を上下方向及び橋桁21の長手方向に延在する鉄鋼製の板状部材であり、その上下方向の長さは、好ましくは、2~20〔m〕程度に設定され、その橋桁21の長手方向の寸法はスラブ11の長辺部11aの長さと同程度に設定されている。また、前記拘束用鋼矢板16は、上端が、地表面31に露出することなく、スラブ11に埋め込まれた状態となっている。
【0067】
図12に示されるように、外側スラブ11Aにおいて、前記拘束用鋼矢板16は、橋桁21の長手方向に延在する列を一本形成するように設置されている。具体的には、各外側スラブ11Aにおいて、フーチング23の上面23aよりも橋桁21の幅方向外側の位置に拘束用鋼矢板16が取り付けられている。
【0068】
また、内側スラブ11Bにおいて、前記拘束用鋼矢板16は、橋桁21の長手方向に延在する列を左右2本形成するように、並んで設置されている。具体的には、各内側スラブ11Bにおいて、フーチング23の上面23aよりも橋桁21の幅方向内側の位置に、拘束用鋼矢板16が2本の列をなすように並んで取り付けられている。
【0069】
図13に示されるように、拘束用鋼矢板16が取り付けられたスラブ11の施工がなされ、フーチング23の上面23aの上方に拘束用鋼矢板16が取り付けられたスラブ11が設置されている場合、フーチング23の側面23bから地盤に入射した矢印41で示される波動の大部分は、矢印45で示されるように、拘束用鋼矢板16を透過して、地中32に伝播していく。また、残りの波動は、拘束用鋼矢板16によって橋桁21の幅方向内側に向けて反射され、矢印43で示されるように、地中32に伝播していく。
【0070】
なお、フーチング23の上面23aから地盤に入射した波動は、前記第1の実施の形態における説明と同様に、図5に示されるような挙動を示すものであるから、その説明を省略する。
【0071】
このように、スラブ11に地中32内に埋設された拘束用鋼矢板16が取り付けられているので、スラブ11が地盤に強固に固定されることによる高い振動低減効果とともに、フーチング23の側面23bから地盤に入射した波動の拘束用鋼矢板16による振動低減効果をも得ることができる。
【0072】
なお、その他の点の構成、作用及び効果については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
このように、本実施の形態においては、スラブ11に、高架橋20の橋桁21の長手方向に延在し、地中32に埋設された拘束用鋼矢板16が取り付けられる。
【0074】
これにより、フーチング23の側面23bから地盤に入射した波動を拘束用鋼矢板16によって減衰させることができる。
【0075】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第1~第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1~第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0076】
図14は第4の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブの施工例を示す模式図、図15は第4の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合の振動の伝播状態を示す第1の模式図、図16は第4の実施の形態における高架橋用地盤振動低減スラブを施工した場合の振動の伝播状態を示す第2の模式図である。なお、図14において、(a)は横断面を示す図、(b)はスラブの上面を示す図である。
【0077】
本実施の形態においては、スラブ11のうちの外側スラブ11Aは、地中壁12を有する。該地中壁12は、地中32内を上下方向及び橋桁21の長手方向に延在するコンクリート製の厚板部材であり、その厚さ、すなわち、橋桁21の幅方向の寸法は、好ましくは、0.3~2〔m〕程度に設定され、その上下方向の長さは、好ましくは、2~20〔m〕程度に設定され、その橋桁21の長手方向の寸法は外側スラブ11Aの長辺部11aの長さと同程度に設定されている。また、前記地中壁12は、好ましくは、外側スラブ11Aにおける橋桁21の幅方向外側の長辺部11aに沿うように設けられている。なお、前記地中壁12は、外側スラブ11Aと一体化して製作されたものであってもよいし、外側スラブ11Aと別個に製作され、その上端が外側スラブ11Aに組み合わされたものであってもよい。
【0078】
図に示されるように、前記地中壁12は、より好ましくは、その外側面12aが外側スラブ11Aにおける橋桁21の幅方向外側の長辺部11aとフラット、すなわち、橋桁21の幅方向外側の長辺部11aとほぼ面一となっている。したがって、地中壁12を有する外側スラブ11Aの横断面は、好ましくは、ほぼL字状となっている。
【0079】
なお、内側スラブ11Bは、地中壁12を有していない。
【0080】
図15に示されるように、地中壁12を有する外側スラブ11Aの施工がなされ、フーチング23の上面23aの上方に外側スラブ11Aが設置されている場合、コンクリートの反射率が大きいので、フーチング23の上面23aから地盤に入射した矢印41で示される波動の大部分は、コンクリート製の外側スラブ11Aの下面11eによって反射され、さらに、コンクリート製の地中壁12の内側面12bによって反射され、矢印43で示されるように、地中32に伝播していく。また、残りの波動は、矢印44で示されるように、前記下面11e及び内側面12bを透過して外側スラブ11A内を伝播し、さらに、その一部は、矢印45で示されるように、地中壁12の外側面12aを再度透過して、地中32に伝播していく。これにより、高い振動低減効果を得ることができる。
【0081】
また、図16に示されるように、フーチング23の側面23bから地盤に入射した矢印41で示される波動の大部分は、矢印44で示されるように前記内側面12bを透過し、さらに、前記外側面12aを再度透過して、矢印45で示されるように地中32に伝播していく。また、残りの波動は、前記内側面12b及び外側面12aによって橋桁21の幅方向内側に向けて反射され、矢印43で示されるように、地中32に伝播していく。
【0082】
このように、外側スラブ11Aが地中32内に埋設された地中壁12を有するので、スラブ11が地盤に強固に固定されることによる高い振動低減効果とともに、フーチング23の側面23bから地盤に入射した波動の地中壁12による振動低減効果をも得ることができる。
【0083】
なお、その他の点の構成、作用及び効果については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0084】
このように、本実施の形態においては、外側スラブ11Aは、外側スラブ11Aにおける橋桁21の幅方向外側端に設けられ、地中32に埋設された地中壁12を有する。
【0085】
これにより、スラブ11が地盤に強固に固定されるとともに、フーチング23の側面23bから地盤に入射した波動の振動が地中壁12によって低減されるので、より高い振動低減効果をも得ることができる。
【0086】
なお、本明細書の開示は、好適で例示的な実施の形態に関する特徴を述べたものである。ここに添付された特許請求の範囲内及びその趣旨内における種々の他の実施の形態、修正及び変形は、当業者であれば、本明細書の開示を総覧することにより、当然に考え付くことである。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本開示は、高架橋用地盤振動低減スラブ及びそれを用いた地盤振動低減方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
11 スラブ
11A 外側スラブ
11B 内側スラブ
11d、23a 上面
11e 下面
12 地中壁
15 拘束用地中杭
16 拘束用鋼矢板
20 高架橋
21 橋桁
22 橋脚
23 フーチング
31 地表面
32 地中
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16