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特開2023-169469水噴射式織機におけるクランク式開口装置
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  • 特開-水噴射式織機におけるクランク式開口装置 図1
  • 特開-水噴射式織機におけるクランク式開口装置 図2
  • 特開-水噴射式織機におけるクランク式開口装置 図3
  • 特開-水噴射式織機におけるクランク式開口装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169469
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】水噴射式織機におけるクランク式開口装置
(51)【国際特許分類】
   D03C 13/00 20060101AFI20231122BHJP
   D03D 47/32 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
D03C13/00 A
D03C13/00 R
D03C13/00 U
D03D47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080580
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋田 悠吾
(72)【発明者】
【氏名】大山 勝也
(72)【発明者】
【氏名】米島 芳之
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA16
4L050CA16
4L050CC02
4L050CC11
(57)【要約】
【課題】水噴射式織機のクランク式開口装置において、水受けパン上への潤滑剤の落下が発生し難い構成を提供すること。
【解決手段】揺動軸に取り付けられた開口レバーと綜絖枠とが押上ロッドで連結されたクランク式開口装置であって、開口レバーが、揺動軸に取り付けられるレバー部と、押上ロッドの軸受部に挿通される連結ピンを支持する一対の側壁及びレバー部の長手方向に対向する前後の端壁を有する連結部とで構成されており、軸受部に潤滑剤を供給するための供給部を備えた水噴射式織機におけるクランク式開口装置において、連結部は、側壁及び端壁によって画定される空間を閉塞する底壁を有し、開口レバーは、潤滑剤の排出に用いられる排出用通路であって長手方向におけるレバー部の揺動軸側に開口すると共に前記空間に開口する排出用孔に連通する排出用通路と、排出用通路の開口を閉塞すると共にその閉塞状態を開放可能に設けられた閉塞部材とを有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水噴射式織機に備えられると共に、揺動軸に取り付けられた開口レバーと綜絖枠とが押上ロッドで連結されたクランク式開口装置であって、前記開口レバーが、前記揺動軸に対して取り付けられるレバー部と、前記押上ロッドの軸受部に挿通される連結ピンを支持する一対の側壁及び前記レバー部の長手方向に対向する前後の端壁を有する連結部とで構成されており、前記軸受部に潤滑剤を供給するための供給部を備えた水噴射式織機におけるクランク式開口装置において、
前記連結部は、前記側壁及び前記端壁によって画定される空間を閉塞する底壁を有し、
前記開口レバーは、前記潤滑剤の排出に用いられる排出用通路であって前記長手方向における前記レバー部の揺動軸側に開口すると共に前記空間に開口する排出用孔に連通する排出用通路と、前記排出用通路の開口を閉塞すると共にその閉塞状態を開放可能に設けられた閉塞部材とを有している
ことを特徴とする水噴射式織機におけるクランク式開口装置。
【請求項2】
前記排出用孔が前記底壁に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の水噴射式織機におけるクランク式開口装置。
【請求項3】
前記排出用通路は、前記開口レバーにおける前記長手方向と交差する面に開口するように形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水噴射式織機におけるクランク式開口装置。
【請求項4】
前記レバー部は、前記揺動軸に取り付けられると共に前記連結部が連続する主体部と、前記排出用通路を形成するために前記主体部に取り付けられる通路形成部材とで構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の水噴射式織機におけるクランク式開口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水噴射式織機に備えられると共に、揺動軸に取り付けられた開口レバーと綜絖枠とが押上ロッドで連結されたクランク式開口装置であって、開口レバーが、揺動軸に対して取り付けられるレバー部と、押上ロッドの軸受部に挿通される連結ピンを支持する一対の側壁及びレバー部の長手方向に対向する前後の端壁を有する連結部とで構成されており、軸受部に潤滑剤を供給するための供給部を備えた水噴射式織機におけるクランク式開口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水噴射式織機の開口装置として、織機の主軸を駆動源とするクランク機構を駆動手段として綜絖枠を上下動させる、所謂、クランク式開口装置が知られている。そして、そのようなクランク式開口装置の一例として、特許文献1に開示された装置が挙げられる。
【0003】
その特許文献1に開示されたクランク式開口装置は、織機の主軸を駆動源とするクランク機構に連結された揺動軸と、その揺動軸に取り付けられた開口レバーと、開口レバーと綜絖枠とに連結された押上ロッドとを備えている。そして、そのクランク式開口装置では、揺動軸がクランク機構により往復反転駆動されることで、揺動軸に対し開口レバーと押上ロッドとを介して連結された綜絖枠が、上下方向に往復駆動されるようになっている。
【0004】
また、そのようなクランク式開口装置における開口レバーの一例として、特許文献2に開示されたものが挙げられる。その特許文献2に開示された開口レバーは、揺動軸に対し取り付けられるレバー部と、押上ロッドが連結される連結部とで構成されている。その連結部は、一対の側壁を有するように形成されており、その両側壁の間の空間が、その上方及び下方を開放された空間となっている。また、その連結部には、両側壁間に架設されるかたちで連結ピンが設けられている。その上で、その開口レバーでは、その連結ピンが両側壁間において押上ロッドの軸受部に挿通されることで、連結部と押上ロッドとが連結されている。そして、クランク式開口装置においては、そのように開口レバーが連結部において押上ロッドと連結されることで、押上ロッド(綜絖枠)が開口レバーによって支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7-26374号公報
【特許文献2】実開平5-66081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、クランク式開口装置においては、揺動軸(開口レバー)の揺動運動に伴って押上ロッドの軸受部が連結ピンに対して摺動するため、その軸受部がグリス等の潤滑剤で潤滑されるようになっている。また、水噴射式織機においては、軸受部の潤滑剤が緯入れに伴う噴射水の影響を受けるため、定期的(例えば、機上り時)に軸受部に新たな潤滑剤を供給する必要がある。なお、そのように軸受部に新たな潤滑剤が供給されると、それまで軸受部内にあった古い潤滑剤は軸受部外へ排出される。
【0007】
その上で、特許文献2に開示されたクランク式開口装置(以下、「従来装置」と言う)では、前述のように、押上ロッドの軸受部が配置されている開口レバーの連結部における両側壁の間の空間は、その下方を開放された空間となっている。そのため、その従来装置では、前記のように軸受部に潤滑剤が供給されて古い潤滑剤が軸受部外へ排出されると、その排出された古い潤滑剤がその空間から落下することとなる。また、そのような古い潤滑剤の落下は、織機の製織中においても、押上ロッドの揺動に伴って発生する場合がある。
【0008】
なお、一般的な水噴射式織機においては、開口レバーに対する下側に、緯入れノズルから噴射された噴射水を受ける水受け部(水受けパン)が設けられている。したがって、従来装置では、前述のように落下した潤滑剤が、その水受けパンで受けられることとなる。その結果、従来装置では、水受けパンで受けられた水は、潤滑剤(油分)を多く含んだ状態となってしまう。そのため、一般的な織布工場ではその水受けパンで受けられた水を工場内で排水処理することが行われているが、その水が油分を多く含んでいることに起因し、その排水処理に多くの労力と費用が必要となってしまう。
【0009】
以上のような従来の水噴射式織機のクランク式開口装置に鑑み、本発明は、前記のようなクランク式開口装置において、水受けパン上への潤滑剤の落下が発生し難い構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水噴射式織機に備えられると共に、揺動軸に取り付けられた開口レバーと綜絖枠とが押上ロッドで連結されたクランク式開口装置であって、特に、開口レバーが、揺動軸に対して取り付けられるレバー部と、押上ロッドの軸受部に挿通される連結ピンを支持する一対の側壁及びレバー部の長手方向に対向する端壁を有する連結部とで構成されており、軸受部に潤滑剤を供給するための供給部を備えた水噴射式織機におけるクランク式開口装置を前提とする。
【0011】
その上で、本発明は、連結部は、側壁及び端壁によって確定される空間を閉塞する底壁を有し、開口レバーは、潤滑剤の排出に用いられる排出用通路であって長手方向におけるレバー部の揺動軸側に開口すると共に空間に開口する排出用孔に連通する排出用通路と、排出用通路の開口を閉塞すると共にその閉塞状態を開放可能に設けられた閉塞部材とを有していることを特徴とする。
【0012】
また、そのような本発明によるクランク式開口装置において、排出用孔が底壁に形成されていてもよい。さらに、排出用通路は、開口レバーにおける長手方向と交差する面に開口するように形成されていても良い。また、レバー部は、揺動軸に取り付けられると共に連結部が連続する主体部と、排出用通路を形成するために主体部に取り付けられる通路形成部材とで構成されていても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクランク式開口装置によれば、開口レバーの連結部が、側壁及び端壁によって確定されると共に軸受部が配置される空間を閉塞する底壁を有するように構成されている。それにより、そのクランク式開口装置では、潤滑剤が供給されることに伴って軸受部から落下した古い潤滑剤が、その底壁によって受けられることとなる。その上で、その開口レバーは、その長手方向におけるレバー部の揺動軸側と前記空間とに開口する排出用孔に連通する排出用通路を有するように構成されている。それにより、その底壁で受けられた古い潤滑剤は、その排出用通路によってレバー部の揺動軸側へと導かれる。したがって、そのクランク式開口装置では、軸受部への潤滑剤の供給に伴う水受けパン上への潤滑剤の落下が発生し難くなる。
【0014】
しかも、そのクランク式開口装置は、その排出用通路の開口を閉塞可能であると共に、その閉塞状態を解放可能であるように設けられた閉塞部材を有している。それにより、製織中においては、その閉塞部材で排出用通路の開口を閉塞状態とすることで、開口レバーが揺動されることに伴って排出用通路の開口から潤滑剤が飛散することを防止することができる。そして、軸受部への潤滑剤の供給時には、閉塞部材によるその閉塞状態が開放された状態とすることで、前述のようにしてレバー部の揺動軸側へと導かれた潤滑剤を排出用通路の開口から排出することができる。
【0015】
このように、本発明によれば、軸受部への潤滑剤の供給に伴う水受けパン上への潤滑剤の落下が発生し難くなるだけでなく、製織中に揺動される開口レバーからの潤滑剤の飛散を防止することもできる。それにより、本発明は、従来装置と比べ、水受けパンで受けられた水への油分の混入を可及的に防止することができるので、織布工場で行われている排水処理にかかる労力や費用を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明が適用された水噴射式織機におけるクランク式開口装置を示す斜視図である。
図2図1における上面部分拡大図である。
図3図2におけるA-A線断面図である。
図4図3におけるB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明による水噴射式織機におけるクランク式開口装置の一実施形態(本実施例)を図1~4に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すのは水噴射式織機におけるクランク式開口装置1であって、クランク式開口装置1は、水噴射式織機の主軸(図示せず)を駆動源とするクランク機構6を駆動手段として綜絖枠9を上下動させるように構成されている。そのクランク式開口装置1は、織機フレーム2における一対のサイドフレーム2a、2b間に架設された2本の揺動軸3、3を含んでおり、各揺動軸3が、それぞれに固定された一対の開口レバー4、4及び押上ロッド5、5を介し、対応する綜絖枠9と連結されている。なお、その揺動軸3、3は、2本が上下に並列に並べられるかたちで、その両端部において各サイドフレーム2a、2bに対し回転可能に支持されている。
【0019】
また、その揺動軸3を揺動駆動するためのクランク機構6は、各揺動軸3に一対一で対応させるかたちで、一対のサイドフレーム2a、2bのそれぞれに設けられている。その各クランク機構6は、前記主軸によって回転駆動される偏心駆動部6aが、その偏心駆動部6aに連結されたコンロッド6b、及びコンロッド6bと揺動軸3とを連結する揺動レバー6cを介し、対応する揺動軸3に対し連結されている。そして、そのクランク式開口装置1では、各揺動軸3が対応するクランク機構6によって往復揺動駆動されることで、各揺動軸3に対し連結された綜絖枠9が上下方向に往復駆動されるようになっている。
【0020】
その各揺動軸3と綜絖枠9との連結は、各揺動軸3に取り付けられた一対の開口レバー4、4と、その各揺動レバー4に連結されると共に綜絖枠9に連結される押上ロッド5とによって行われている。そして、その各開口レバー4は、揺動軸3に対して取り付けられる部分であるレバー部41と、押上ロッド5が連結される部分である連結部42とで構成されている。
【0021】
そのレバー部41は、揺動軸3を嵌挿するための貫通孔4dを有している。その貫通孔4dは、開口レバー4の長手方向における一端側となる位置で、前記長手方向と直交する方向(以下、「幅方向」と言う。)にレバー部41を貫通するように形成されている。また、レバー部41には、貫通孔4dに揺動軸3が嵌挿された状態で揺動軸3に対し開口レバー4が固定された状態とするための割締め機構が設けられている。
【0022】
また、連結部42は、レバー部41に対する前記長手方向の他端側で、前記長手方向においてレバー部41に連続するようなかたちで設けられている。その連結部42は、前記長手方向に対向する一対の端壁(前壁42a及び後壁42b)、及び前記幅方向に対向する一対の側壁42c、42cでその周壁が構成され、平面視において矩形状の空間40が内部に形成された構成となっている。
【0023】
その上で、連結部42は、その空間40に配置される連結ピン44を有している。その連結ピン44は、対向する一対の側壁42c、42c間において、両側壁42c、42cに支持されるかたちで設けられている。すなわち、連結ピン44は、両側壁42c、42c間に架設されるかたちで設けられている。なお、本実施例のクランク式開口装置1は、各開口レバー4に対し3枚の綜絖枠9(3本の押上ロッド5)が連結されるように構成されている。したがって、連結部42には、3本の連結ピン44が設けられている。
【0024】
押上ロッド5は、開口レバー4と対応する綜絖枠9とに連結される軸状の部材であり、その軸方向における一端側に開口レバー4に連結される軸受部11を有している。その軸受部11は、前記軸方向と直交する方向に貫通する貫通孔を有する円筒形状に形成されている。なお、開口レバー4と軸受部11とは、その貫通孔に連結部42における連結ピン44が挿通されるかたちで連結される。したがって、その貫通孔の孔径は、連結ピン44を挿通することが可能な大きさとなっている。また、本実施例では、滑り軸受12が軸受部11の貫通孔に内嵌されており、軸受部11と連結ピン44とは、その滑り軸受12を介して連結されている。
【0025】
さらに、押上ロッド5には、軸受部11における貫通孔の内周面に開口すると共に軸受部11から前記軸方向に延びるように形成された連通孔15aが設けられている。また、その連通孔15aは、軸受部11側とは反対の側の端部において、前記軸方向に対し直交する方向に屈曲され、押上ロッド5の外周面に開口するように形成されている。そして、その連通孔15aには、前記外周面に開口する側の端部に雌ネジが形成されており、その雌ネジに螺合されるかたちでグリースニップル15bが取り付けられている。なお、その連通孔15a及びグリースニップル15bが、軸受部11内に潤滑剤を供給する部分であり、本発明で言う供給部に相当する。
【0026】
また、軸受部11において、滑り軸受12にも、連通孔15aに連通するように穿設された連通孔12aが形成されている。 それにより、グリースニップル15bから潤滑剤が供給されると、その潤滑剤が連通孔15a及び滑り軸受12の連通孔12aを介して滑り軸受12の内周面側に供給されることとなる。
【0027】
なお、製織中における開口レバー4の揺動に伴って連結部42の上側から潤滑剤が飛び散らないようにするために、開口レバー4には蛇腹カバー43が設けられている。その蛇腹カバー43は、ゴム製の材料で形成されており、前記した矩形状の空間40の上方を覆うようなかたちで連結部42に対して取り付けられている。
【0028】
また、水噴射式織機は、緯入れノズルから噴射された噴射水を受ける水受けパン2eを備えている(図1)。その水受けパン2eは、矩形形状の底部を有するバスタブ状の部材として形成されている。そして、その水受けパン2eは、2本の揺動軸3、3の下方において、織機フレーム2における下側の梁材であるフロントボトムステー2cとリヤボトムステー2dとの間に位置するように設けられている。さらに、その水受けパン2eは、平面視において、織幅方向に関し一対のサイドフレーム2a、2b間に亘る範囲であって、織機の前後方向に関してはフロントボトムステー2cとリヤボトムステー2dとの間に亘る範囲に存在するように設けられている。
【0029】
そして、以上で説明した水噴射式織機のクランク式開口装置において、本発明では、連結部42が、前記した一対の端壁(前壁42a及び後壁42b)及び一対の側壁42c、42cによって画定された空間40の下方を閉塞するための底壁を有すると共に、開口レバー4が、その空間40に開口する排出用孔に連通する排出用通路、及びその排出用通路の開口を閉塞する閉塞部材を有するように構成されている。その上で、以下で説明する本実施例は、その開口レバー4における排出用通路がレバー部41の長手方向と直交する面に開口するように設けられると共に、その排出用通路を形成するためにレバー部41が主体部と通路形成部材とで構成されている例である。そのような開口レバー4を備えた本実施例のクランク式開口装置について、詳しくは以下の通りである。
【0030】
開口レバー4において、その連結部42は、空間40を画定する前記した一対の端壁(前壁42a及び後壁42b)及び一対の側壁42c、42cに加え、その空間40を下側においても閉塞する(空間40の下側を画定する)底壁42dを有するように構成されている。すなわち、周囲が前壁42a、後壁42b及び一対の側壁42c、42cで構成された連結部42は、その周囲に加え、底壁42dによって下側も閉塞されるように構成されたものとなっている。なお、前記のように連結部42には蛇腹カバー43が取り付けられており、連結部42の上側はその蛇腹カバー43によって覆われている。
【0031】
その底壁42dは、前記長手方向のレバー部41側(前壁42a側)の部分が、それ以外の部分よりも下方に突出するかたちで肉厚が厚くされた肉厚部42fであるように形成されている。そして、その肉厚部42fには、その下面及びレバー部41側の端面に開口する溝42f1が形成されている。さらに、肉厚部42fには、その溝42f1の底面に開口すると共に底壁42dを貫通する貫通孔42gが穿設されている。それにより、溝42f1は、その貫通孔42gによって空間40に連通された状態となっている。
【0032】
レバー部41は、そのレバー部41における揺動軸3に取り付けられる部分であって、連結部42が連続する部分である主体部41aを主体として構成されている。そして、前記した貫通孔4d及び割締め機構は、その主体部41aの前記長手方向における連結部42側とは反対側の端部に設けられている。また、その主体部41aは、前記長手方向における連結部42側とは反対側の端部の端面45が前記長手方向と直交する平面であるように形成されている。なお、主体部41aと連結部42とは、その主体部41aにおける下面41a2と連結部42における底壁42dの肉厚部42fの下面とが底壁42dの厚さ方向に関し同じ位置となるようなかたちで互いに連続している。
【0033】
そして、その主体部41aには、その下面41a2及び端面45に開口すると共に前記長手方向に延びる溝41a1が形成されている。また、その溝41a1は、その連結部42側の端部が連結部42の溝42f1に連続するように形成されている。さらに、その溝41a1は、その底面における端面45側の端部が上方に向けて傾斜する斜面41a3として形成されている。
【0034】
また、レバー部41には、主体部41aの溝41a1における下面側の開口を閉塞し、溝41a1とで潤滑剤を排出するための排出通路を形成する通路形成部材41bが設けられている。その通路形成部材41bは、短辺に対し長辺が十分に長い矩形状の板材を直角に屈曲させてL字形に形成された部材となっている。なお、その屈曲部41b3は、その板材の短辺方向における端部側となっており、通路形成部材41bは、その屈曲部41b3よりも一端側の部分の方が他端側の部分よりも面積が十分に大きい形を成している。そして、その通路形成部材41bにおいては、その一端側の部分が前記のように溝41a1を閉塞する部分である閉塞部41b1となり、他端側の部分が主体部41aの側面に対し取り付けられる部分である取付部41b2となっている。
【0035】
なお、その通路形成部材41bにおいて、前記長辺の方向における寸法は、主体部41a及び肉厚部42fの前記長手方向における長さ寸法の合計と略一致する大きさとなっている。また、その通路形成部材41bにおける閉塞部41b1の前記短辺の方向における寸法は、主体部41aにおける前記幅方向の寸法と略一致する大きさとなっている。
【0036】
そして、その通路形成部材41bは、その閉塞部41b1が主体部41aの下面41a2に当接すると共に取付部41b2が主体部41aの側面に当接した状態で、複数の固定用ボルトが主体部41aに形成された対応する雌ネジ孔に螺挿されることで主体部41aに対して取り付けられている。また、その取り付けは、通路形成部材41bの前記長辺の方向における一方の端縁の位置を主体部41aにおける前記長手方向の端面45の位置に一致させるかたちで行われている。それにより、開口レバー4は、通路形成部材41bの閉塞部41b1によって溝41a1及び溝42f1の下方を閉塞されて通路48が内部に形成されるように構成されたものとなっている。そして、その通路48は、連結部42側において貫通孔42gを介して空間40に連通すると共に、揺動軸3側において端面45に開口するものなっている。
【0037】
その上で、開口レバー4には、その通路48の開口を閉塞するための閉塞部材47が設けられている。なお、前述のように、レバー部41(主体部41a)における溝41a1は、その底面における端面45側の端部が斜面41a3として形成されている。すなわち、通路48は、その端面45に開口する部分である開口部が楔形を成す通路となっている。そこで、閉塞部材47は、通路48における開口部に嵌入されて閉塞し得るような大きさの、楔形の部材となっている。なお、その閉塞部材47は、ゴム製の材料で形成されており、若干の弾性変形を伴って通路48における開口部へ嵌入される。したがって、閉塞部材47は、その弾性により通路48の閉塞状態が維持されるようにすると共に、取り外しも容易に行えるものとなっている。
【0038】
以上のように構成されたクランク式開口装置1によれば、周囲が前壁42a、後壁42b及び一対の側壁42c、42cで構成された開口レバー4における連結部42が、その周囲に加え、底壁42dによって下側も閉塞されたものとなっている。それにより、そのクランク式開口装置1では、グリースニップル15bから潤滑剤が供給されることに伴って軸受部11から落下した古い潤滑剤が、底壁42dによって受けられることとなる。
【0039】
その上で、開口レバー4は、その内部に通路48が形成されたものとなっており、その通路48が連結部42側において貫通孔42gを介して空間40に連通すると共に、揺動軸3側において端面45に開口するものとなっている。それにより、底壁42dで受けられた古い潤滑剤は、貫通孔42gを通過して通路48内へ落ちることとなる。したがって、その古い潤滑剤は、連結部42から直ぐ下(水受けパン2e側)へ落ちること無く、揺動軸3側の端面45にのみで外部に開口する通路48により受けられることとなる。
【0040】
なお、通路48は、端面45側の開口部が閉塞部材47で閉塞されているので、その閉塞された状態では、古い潤滑剤は、その通路48内に溜る状態となる。その上で、必要に応じて閉塞部材47を取り外して前記開口部を開放することにより、通路48内の古い潤滑剤を排出することが可能となるため、例えば容器等を準備して作業者がその通路48から排出される古い潤滑剤を受けることにより、その潤滑剤が水受けパン2eへ落ちるのを有効に防止することができる。さらに、製織中においては、その閉塞部材47による前記開口部の閉塞された状態が維持されることで、開口レバー4が揺動されることに伴って通路48の開口部から潤滑剤が飛散するのを防止することができる。
【0041】
このように、本実施例のクランク式開口装置1においては、レバー部41の揺動軸3側に開口すると共に連結部42内の空間40に開口する貫通孔42gに連通する通路48が、開口レバー4からの潤滑剤の排出に用いられるものとなっている。したがって、その通路48が本発明で言う排出用通路に相当し、貫通孔42gが本発明で言う排出用孔に相当する。
【0042】
また、開口レバー4は、連結部42内の空間40に開口する貫通孔42gが底壁42dに形成されたものとなっている。それにより、クランク式開口装置1では、前述のようにして底壁42dで受けられた古い潤滑剤が貫通孔42gを通過して通路48内へ落下し易くなっており、古い潤滑剤が空間40から通路48側へ排出され易くなっている。
【0043】
また、開口レバー4は、通路48が端面45に開口するように形成されており、開口レバー4における通路48の開口する面が前記長手方向と直交する平面となるように構成されたものとなっている。それにより、そのクランク式開口装置1においては、軸受部11に潤滑剤を供給する作業者が水噴射式織機の前後方向における巻取り側から通路48の開口部に取り付けられている閉塞部材47にアクセスすることが容易になっており、閉塞部材47を通路48の開口部から取り外して通路48の閉塞状態を開放するための作業が容易になっている。
【0044】
さらに、開口レバー4は、通路形成部材41bの閉塞部41b1によって溝41a1及び溝42f1の下方を閉塞されて通路48が内部に形成されるように構成されたものとなっており、揺動軸3に取り付けられる部分である主体部41aと通路48を形成するために主体部41aに取り付けられる部分である通路形成部材41bとでレバー部41が構成されたものとなっている。それにより、クランク式開口装置1においては、内部に通路48が形成された開口レバー4を製造することがより容易に実現されている。
【0045】
以上では、本発明の水噴射式織機におけるクランク式開口装置の一実施例について説明したが、本発明による水噴射式織機におけるクランク式開口装置は、前記実施例に限定されるものではなく、以下のような変形した例でも実施が可能である。
【0046】
(1)古い潤滑剤を排出するための構造(排出構造)について、前記実施例では、排出用通路48におけるレバー部41側の部分が溝41a1と閉塞部材41b1とで形成されると共に、その排出用通路48を連結部42側まで延長させるべく、連結部42の底壁42dにおけるレバー部41側が肉厚部42fに形成され、その肉厚部42fに溝42f1が形成されている。それにより、排出用通路48は、連結部42側においてその肉厚部42fまで延長されたものとなっている。その上で、連結部42における溝42f1に開口するように排出用孔42gが形成されている。しかし、前記排出構造は、そのように構成されたものには限られない。
【0047】
例えば、前記排出構造は、排出用通路が連結部において後壁付近まで形成されるように構成されていても良い。その場合には、連結部は、その底壁の肉厚が全体に亘って前記実施例における肉厚部42fと同じ肉厚に形成されると共に、レバー部41側の溝41a1に連続する底壁における溝を後壁付近まで延びるように形成したものとされる。その上で、前記実施例の溝42f1と同じく、その溝の下方を閉塞部で閉塞されるようにすれば良い。なお、その場合に、排出用孔は、前壁42aと後壁42bとの間で、前記実施例の位置よりも後壁42b側に形成することが可能となる。すなわち、排出用孔の前記長手方向における位置は、前記実施例の位置に限らず、排出用通路との関係で適宜な位置に設定されていれば良い。
【0048】
また、排出構造は、排出用通路が連結部における底壁に形成された排出用孔により連結部内の空間に連通するように構成されたもの(すなわち、排出用孔が連結部における底壁に形成されるように構成されたもの)に限らず、排出用通路が連結部における前壁に形成された排出用孔により連結部内の空間に連通するように構成されたもの(すなわち、排出用孔が連結部における前壁に形成されるように構成されたもの)であっても良い。なお、その場合には、排出用通路は、レバー部側において上下方向に関し連結部内の空間と重複するかたちに形成されたものとされる。具体的には、排出用通路を構成するための溝がレバー部側にのみ設けられ、その溝の深さが上下方向に関し連結部内の空間と重複するような深さとなるようにされる。その上で、その溝と連結部内の空間とに連通する水平方向の貫通孔が前壁に穿設されるようにすれば良い。
【0049】
また、前記排出構造における排出用通路について、前記実施例では、排出用通路48が、開口レバー4におけるレバー部41に形成された溝41a1及び連結部42に形成された溝42f1と、板状の閉塞部41b2を含むと共に開口レバー4に取り付けられる通路形成部材41bとで形成されている。しかし、本発明において、排出用通路は、そのように形成されるのには限られない。
【0050】
例えば、前記実施例では開口レバーの下部に溝が形成されることでその下部が逆U字形を成すように開口レバーが形成されているが、それに代えて、開口レバーの下部が、前記実施例の溝における一方の側壁を含む部分が存在しない、逆L字形を成すように開口レバーを形成する。その上で、その逆L字形に形成された下部が前記実施例のようなL字形に形成された板状の通路形成部材で閉塞されて排出用通路が形成されるようにしても良い。
【0051】
また、排出用通路は、開口レバー側に形成された溝等が板状の通路形成部材で閉塞されて形成されるのには限られず、通路形成部材に溝を形成し、その通路形成部材と開口レバーの下面とで形成されるようにしても良い。その場合には、開口レバーは、前記実施例等とは異なり、その下面が平面であるように形成されたものとされる。また、通路形成部材は、肉厚の部材が用いられ、その上面に開口する溝が形成されたものとされる。但し、その溝は、その延在方向における一方側が通路形成部材の外側に開口すると共に、他方側が閉塞されるように形成されたものとされる。その上で、その通路形成部材を前記他方側が開口レバーの前記長手方向における連結部側となる向きで開口レバーの下面に取り付け、その通路形成部材の溝と開口レバーの下面とで排出用通路が形成されることとなる。
【0052】
なお、本発明においては、排出用通路を形成する上で通路形成部材を用いることは必須では無く、排出用通路は、開口レバーを貫通するように形成されたものとしても良い。その場合には、排出用通路は、開口レバーにおける揺動軸側の端面と連結部内の空間とに開口する前記長手方向の貫通孔として開口レバー内に穿設されたものとされる。
【0053】
また、排出用通路は、前記実施例では開口レバー4の端面45(前記長手方向と交差する面)に開口するように形成されており、その開口(排出口)が水噴射式織機の前後方向における巻取り側からアクセスすることが容易であるように前方を向く端面に設けられたものとなっている。しかし、本発明において、排出用通路は、そのように前記長手方向と交差する面に開口する(排出口が前記長手方向と交差する面に設けられる)ように形成されるものには限られず、例えば、その排出口が開口レバーの下面に設けられるように形成されたものであっても良い。
【0054】
(2)連結部について、本発明においては、連結部は、前壁、後壁、及び、一対の側壁で構成される周壁に加え、その周壁内の空間の下部を閉塞する底壁を備えるかたちで構成される。その上で、連結部は、その周壁と底壁とが一体成型されて構成されたものであっても良いし、或いは、底壁が周壁とは別部材として形成され、その底壁が周壁に取り付けられるかたちで構成されたものであっても良い。なお、後者の場合において、底壁を周壁に対し着脱可能とすれば、作業者がその底壁を周壁から取り外した状態とした上で、その底壁に付着した古い潤滑剤を除去することが可能となる。
【0055】
(3)閉塞部材について、前記実施例では、閉塞部材48がゴム製の材料で形成されており、その弾性により通路48の閉塞状態が維持されると共に、取り外しが容易に行えるものとなっている。しかし、本発明において、閉塞部材は、そのような弾性により閉塞状態が維持されるものには限られない。例えば、閉塞部材は、排出用通路の開口部を雌ネジ孔とした上で、その雌ネジ孔に螺挿されるネジ部材(止めネジ等)であっても良い。また、閉塞部材は、排出用通路を密封できるものであれば、他の蓋部材であっても良い。
【0056】
(4)供給部について、前記実施例では、軸受部11に潤滑剤を供給するための供給部15が、押上ロッド5に穿設された連通孔15a及びその連通孔15aの端部に取付けられたグリースニップル15bで構成されており、供給部が、押上ロッド側に設けられたものとされている。しかし、本発明が前提とする水噴射式織機のクランク式開口装置においては、その供給部は、押上ロッド側に設けられるものに限られず、連結ピン(連結部)側に設けられるものであっても良い。
【0057】
具体的には、連結ピンをその内部に軸線方向に延びる連結孔を有すると共にその連通孔が軸線方向の一端側の端面に開口するように形成されたものとする。さらに、その連通孔に連通すると共に外周面に開口する透通孔を連結ピンに形成すると共に、連通孔の開口側にグリースニップルが取り付けられたものとする。そして、グリースニップルを介して連通孔に潤滑剤を供給することで、その潤滑剤が透通孔を介して連結ピンの外周面側(軸受部内)に供給されるようにすれば良い。
【0058】
また、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 クランク式開口装置
2 織機フレーム
2a サイドフレーム
2b サイドフレーム
2c フロントボトムステー
2d リヤボトムステー
2e 水受けパン
3 揺動軸
4 開口レバー
4d 貫通孔
5 押上ロッド
6 クランク機構
6a 偏心駆動部
6b コンロッド
6c 揺動レバー
9 綜絖枠
11 軸受部
12 滑り軸受
12a 連通孔
15 供給部
15a 連通孔
15b グリースニップル
40 空間
41 レバー部
41a 主体部
41a1 溝
41a2 下面
41a3 斜面
41b 通路形成部材
41b1 閉塞部
41b2 取付部
41b3 屈曲部
42 連結部
42a 前壁
42b 後壁
42c 側壁
42d 底壁
42g 貫通孔
42f 肉厚部
42f1 溝
43 蛇腹カバー
44 連結ピン
45 端面
47 閉塞部材
48 通路
図1
図2
図3
図4