(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169472
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】温度センサユニットおよび回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 11/25 20160101AFI20231122BHJP
【FI】
H02K11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080583
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 数馬
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 聖治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智也
(72)【発明者】
【氏名】木村 栄貴
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA01
5H611BB04
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
5H611UB01
(57)【要約】
【課題】温度センサの取付けにおいて、コイルとの接触が不十分であると適切な温度測定ができない。そのため、コイルとの安定した接触を可能とし、コイル温度を精度よく測定できる温度センサユニットおよび回転電機を提供する。
【解決手段】実施形態の温度センサユニットは、温度センサと、保持部材と、を備える。保持部材は、温度センサの測定面とは反対側の面を保持するセンサ保持部と、センサ保持部から温度センサのリード線に沿って延びセンサ保持部を測定面側に押し付ける方向に弾性変形可能な板バネ部と、板バネ部が弾性変形した状態でセンサ保持部を固定部材に固定するための係止部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサと、
前記温度センサの測定面とは反対側の面を保持するセンサ保持部と、前記センサ保持部から前記温度センサのリード線に沿って延び前記センサ保持部を前記測定面側に押し付ける方向に弾性変形可能な板バネ部と、前記板バネ部が弾性変形した状態で前記センサ保持部を固定部材に固定するための係止部と、を有した保持部材と、
を備えた、温度センサユニット。
【請求項2】
前記板バネ部は、前記センサ保持部よりも前記測定面とは反対方向に位置され当該反対方向に凸の状態で湾曲した湾曲部を有した、請求項1に記載の温度センサユニット。
【請求項3】
前記温度センサは、前記測定面と当該測定面とは反対側の面との間に亘った一対の側面と、前記一対の側面と交差するとともに前記リード線側で前記測定面と当該測定面とは反対側の面との間に亘った一端面と、を有し、
前記センサ保持部は、前記温度センサにおける前記測定面とは反対側の面を支持する底壁と、前記一対の側面を支持する一対の側壁と、前記一端面と面する段差部と、を有した、請求項1または2に記載の温度センサユニット。
【請求項4】
前記温度センサには、前記測定面が設けられたベース部分よりも厚さが薄くなった薄肉部が設けられ、
前記センサ保持部は、前記薄肉部における前記測定面側の面と面する係止壁を有した、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の温度センサユニット。
【請求項5】
前記板バネ部には、前記リード線を引っ掛けるための切欠部が設けられた、請求項1~4のうちいずれか一つに記載の温度センサユニット。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか一つに記載の温度センサユニットと、
前記温度センサユニットの温度センサが取り付けられる一対のコイルを有したステータと、
前記温度センサユニットの保持部材が固定される前記固定部材としてのバスリングと、
を備えた、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、温度センサユニットおよび回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータの周方向に隣接した一対のコイルの間の隙間に、温度センサと、温度センサをコイルに押し付ける弾性体と、を備えた温度センサユニットが設けられた回転電機が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の温度センサユニットでは、温度センサの取付けにおいて、コイルとの接触が不十分であると適切な温度測定ができない。そのため、コイルとの安定した接触を可能とし、コイル温度を精度よく測定できる温度センサユニットおよび回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の温度センサユニットは、温度センサと、保持部材と、を備える。保持部材は、温度センサの測定面とは反対側の面を保持するセンサ保持部と、センサ保持部から温度センサのリード線に沿って延びセンサ保持部を測定面側に押し付ける方向に弾性変形可能な板バネ部と、板バネ部が測定面側に弾性変形した状態でセンサ保持部を固定部材に固定するための係止部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の温度センサユニットが取り付けられる回転電機の例示的な斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の温度センサユニットの例示的な斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の温度センサユニットの例示的な断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の温度センサユニットの取付前の状態を示した例示的な断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の温度センサユニットの取付後の状態を示した例示的な断面図である。
【
図6】
図6は、第1変形例の温度センサユニットの例示的な斜視図である。
【
図7】
図7は、第1変形例の温度センサユニットの例示的な断面図である。
【
図8】
図8は、第1変形例の温度センサユニットの取付前の状態を示した例示的な断面図である。
【
図9】
図9は、第1変形例の温度センサユニットの取付後の状態を示した例示的な断面図である。
【
図10】
図10は、第2変形例の温度センサユニットの例示的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0008】
また、以下に開示される実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0009】
[実施形態]
図1は、実施形態の温度センサユニット10が取り付けられる回転電機100の斜視図である。
図1に示されるように、回転電機100は、フレーム50や、ステータ60、コイル70、バスリング80、不図示のロータ等を備えている。回転電機100は、いわゆる集中巻モータとして構成されている。
【0010】
なお、以下の説明では、便宜上、回転電機100(ステータ60)の回転軸の軸方向を、単に軸方向と称し、回転軸の径方向を、単に径方向と称し、回転軸の周方向を、単に周方向と称する。また、図中、軸方向の一方を矢印Xで示し、周方向の一方を矢印Cで示す。
【0011】
フレーム50は、回転電機100の回転軸を中心とした円筒状に構成されている。フレーム50の内周部には、ステータ60の複数の分割コア61が周方向Cに一体化された状態で取り付けられている。フレーム50は、ステータ60や、不図示のロータ等を収容するケースの一部を構成している。
【0012】
ステータ60は、複数の分割コア61と、複数のコイル70と、を有している。複数の分割コア61は、互いに周方向Cに隣接して並んでおり、全体として円環状のステータコアを構成している。分割コア61は、それぞれコイル70が巻回されるティースや、ティースの径方向外方で円弧状に延びるヨーク等を有している。
【0013】
コイル70は、分割コア61のそれぞれにコイルボビン等を介して取り付けられている。コイル70は、U相コイル70Uや、V相コイル70V、W相コイル70W等を含んでいる。これらのU相コイル70U、V相コイル70V、およびW相コイル70Wは、バスリング80を介して電源との接続用のU相端子83U、V相端子83V、W相端子83Wと電気的に接続されている。
【0014】
また、本実施形態では、複数のコイル70のうち少なくともいずれか一つの周方向Cの側面70a(
図5参照)には、後述する温度センサユニット10の温度センサ20が取り付けられる。このように、本実施形態では、温度センサ20がコイル70の側面70aの温度を測定する状態に設けられることによって、温度センサ20にフレーム50(ケース)内を循環する冷却液や冷却風等が接触するのが抑制されている。側面70aは、被取付面の一例である。
【0015】
なお、ステータ60の径方向内方には、不図示のロータが対向して配置される。ステータ60は、コイル70への通電によってフレーム50(ケース)の内部に磁界を発生させ、当該磁界との相互作用によってロータ鉄心ひいてはロータ鉄心の内周部に固定されたロータシャフトを回転させる。
【0016】
バスリング80は、バスリング本体81や、突起82、U相端子83U、V相端子83V、W相端子83W、接続端子84等を有している。バスリング80は、リング状に構成され、ステータ60の軸方向Xの一方の端面61aを覆った状態に取り付けられている。バスリング本体81は、U相端子83Uや、V相端子83V、W相端子83W、接続端子84等とインサート成形によって一体化されている。
【0017】
また、バスリング80には、軸方向Xに貫通した貫通孔81cが設けられている。貫通孔81cは、後述する温度センサユニット10が軸方向Xの一方側から挿入される取付穴である。貫通孔81cは、周方向Cに隣接した一対のコイル70の間の隙間G(
図4参照)と軸方向Xに並び、当該隙間Gと連通している。
【0018】
突起82は、バスリング80の外周縁部から軸方向Xの他方側に突出している。突起82は、ステータ60の軸方向Xの端面61aに設けられたポケット部62に挿入される。本実施形態では、突起82がポケット部62に挿入されることによってバスリング80のステータ60に対する周方向Cへの移動が制限され、上述した貫通孔81cと隙間Gとが周方向Cに位置決めされる。突起82およびポケット部62は、位置決め部の一例である。
【0019】
接続端子84は、バスリング80の外周縁部から径方向外方に突出した状態に設けられている。接続端子84は、ステータ60のU相コイル70U、V相コイル70V、およびW相コイル70Wのそれぞれと結線される。また、U相端子83U、V相端子83V、およびW相端子83Wは、バスリング80の内周縁部から径方向内方に突出した状態に設けられ、バスリング80内を周方向Cに延びる複数のバスリング本体81(環状線)を介して接続端子84と接続されている。
【0020】
なお、本実施形態では、バスリング本体81(環状線)は、U相や、V相、W相、中性点等の環状線を含み、これらの環状線が径方向に並んでいる。そして、環状線のうち最も径方向外方に位置された中性点の環状線に周方向の切れ目部分(分断部分)が設けられている。そして、バスリング80における環状線の切れ目部分と対応する位置に上述した貫通孔81cが形成されている。
【0021】
図2は、温度センサユニット10の斜視図である。
図2に示されるように、温度センサユニット10は、温度センサ20と、温度センサ20を保持する保持部材30と、を有している。温度センサユニット10は、保持部材30と温度センサ20とが一体化された状態で、上述したバスリング80の軸方向Xの一方から貫通孔81c内に挿入される。
【0022】
温度センサ20は、内部にセンサ素子部22(
図3参照)が設けられたセンサ筐体21と、センサ素子部22と電気的に接続されたリード線23と、を有している。センサ素子部22は、サーミスタ等であり、コイル70の温度を測定可能である。センサ素子部22によって測定(検温)された温度情報は、軸方向Xに沿って延びたリード線23を介して外部の制御装置に出力される。
【0023】
センサ筐体21は、一方向(周方向C)に扁平な直方体状に構成されている。本実施形態では、センサ筐体21は、その厚さ方向が周方向Cに沿い、長手方向が軸方向Xに沿い、短手方向が径方向に沿う状態(姿勢)で、保持部材30に保持されている。
【0024】
センサ筐体21は、測定面21aと、裏面21b(
図3参照)と、一端面21cと、一対の側面21dと、を有している。測定面21aは、センサ筐体21の厚さ方向(周方向C)の一方の面であり、被取付面(測定対象面)としてのコイル70の側面70aと面する。裏面21bは、センサ筐体21の厚さ方向(周方向C)の他方の面であり、保持部材30のセンサ保持部39と面する。
【0025】
一端面21cは、センサ筐体21の長手方向(軸方向X)の一方側の端面である。本実施形態では、一端面21cは、保持部材30の段差部33(
図3参照)と面し、かつリード線23が軸方向Xに貫通している。一対の側面21dは、センサ筐体21の短手方向(径方向)の両側の面である。一対の側面21dは、保持部材30の側壁32と面する。
【0026】
センサ素子部22(
図3参照)は、センサ筐体21に収容されている。センサ素子部22は、センサ筐体21の内部に充填されたフッ素樹脂等の耐熱性や、耐薬品性、絶縁性の高い外皮材によって保護されている。なお、センサ筐体21の軸方向Xの他端部には、センサ素子部22が収容されたベース部分25よりも周方向Cの厚さが薄くなった薄肉部24が設けられている。
【0027】
図3は、温度センサユニット10の断面図である。
図3に示されるように、保持部材30は、センサ保持部39と、板バネ部34と、係止部35と、を有している。保持部材30は、全体としては一方向(周方向C)に扁平な帯板の板ばね状に構成されている。
【0028】
本実施形態では、保持部材30は、その厚さ方向が周方向Cに沿い、長手方向が軸方向Xに沿い、短手方向が径方向に沿う状態(姿勢)で、回転電機100の一対のコイル70の間の隙間G(
図4参照)に挿入される。保持部材30は、耐熱性の高い合成樹脂材料等によって作られている。
【0029】
センサ保持部39は、温度センサ20を保持する部分であり、保持部材30の軸方向Xの他端部に位置されている。センサ保持部39は、底壁31と、側壁32と、段差部33と、を有している。底壁31は、温度センサ20の測定面21aとは反対側の裏面21bに沿って延びており、当該裏面21bを支持する。
【0030】
側壁32(
図2参照)は、底壁31の短手方向(径方向)の両端部から測定面21a側に突出している。側壁32は、温度センサ20の一対の側面21dを支持し、これによりセンサ筐体21が一対の側壁32の間に挟まれている。側壁32は、温度センサユニット10の隙間G(
図4参照)への取付時に温度センサ20が保持部材30に対して径方向に倒れたり外れたりするのを抑制している。
【0031】
また、側壁32の周方向Cに沿った高さは、センサ筐体21の周方向Cに沿った厚さよりも低く抑えられている。すなわち、センサ筐体21は、測定面21aが側壁32よりも周方向Cの一方側(
図3の左側)に突出した状態で側壁32に支持されている。
【0032】
段差部33は、底壁31における温度センサ20側の表面から裏面側に凹んでいる。段差部33は、温度センサ20の軸方向Xの一端面21cと面する側面33aを有する。段差部33は、温度センサユニット10の隙間Gへの取付時に側面33aと一端面21cとの当接によって温度センサ20が保持部材30に対して軸方向Xの一方に移動するのを制限している。
【0033】
板バネ部34は、センサ保持部39から温度センサ20のリード線23に沿って軸方向Xの一方側に延びている。板バネ部34は、その厚さ方向(周方向C)に弾性変形可能であり、この弾性力によってセンサ保持部39を測定面21a側に押し付けることが可能である。
【0034】
また、板バネ部34の軸方向Xの一端部には、湾曲部34aが設けられている。湾曲部34aは、板バネ部34の直線状の部分から軸方向Xの一方側(
図3の上側)に凸の状態で周方向Cの他方側(
図3の右側)に湾曲している。
【0035】
また、湾曲部34aは、板バネ部34側の支点部34bからその反対の先端側に向けて軸方向Xの他端部側(
図3の下側)ほど周方向Cの他方側(
図3の右側)に向かうように傾斜している。本実施形態では、湾曲部34aの板バネ部34に対する傾斜角度θは、約5°に設定されている。
【0036】
また、本実施形態では、自由状態における湾曲部34aの先端と温度センサ20の測定面21aとの間の周方向Cに沿った幅は、バスリング80の貫通孔81c(
図4参照)の周方向Cの幅よりも狭くなるよう設定されている。すなわち、湾曲部34aは、貫通孔81c内で周方向Cに弾性変形可能である。
【0037】
また、湾曲部34aの先端には、係止部35が設けられている。係止部35は、フック状に構成され、湾曲部34aから周方向Cの他方側(
図3の右側)に突出している。係止部35は、貫通孔81c(
図4参照)の縁部と軸方向Xに引っ掛かることにより、保持部材30がバスリング80から軸方向Xの一方側に外れるのを抑制可能である。
【0038】
図4は、温度センサユニット10の取付前の状態を示した断面図である。
図4に示されるように、温度センサユニット10は、保持部材30と温度センサ20とが一体化された状態で、バスリング80の軸方向Xの一方側から貫通孔81c内に挿入される。貫通孔81cは、周方向Cに隣接した一対のコイル70の間の隙間Gと軸方向Xに並び、当該隙間Gと軸方向Xに連通している。
【0039】
また、貫通孔81cは、当該貫通孔81c内に設けられた中壁81eによって周方向Cに二股状に分岐されている。本実施形態では、貫通孔81cの中壁81eよりも周方向Cの一方側(
図4の左側)の空間には、保持部材30のセンサ保持部39および板バネ部34が挿入され、ひいてはセンサ保持部39に保持された温度センサ20が一対のコイル70の間の隙間Gに挿入される。
【0040】
また、貫通孔81cの中壁81eよりも周方向Cの他方側(
図4の右側)の空間には、保持部材30の湾曲部34aが挿入され、ひいては湾曲部34aの係止部35が貫通孔81cの縁部に設けられた凹部81dに係止される。また、貫通孔81cの中壁81eよりも軸方向Xの一方側(
図4の上側)の空間には、保持部材30の支点部34bが挿入(係合)される。
【0041】
図5は、温度センサユニット10の取付後の状態を示した断面図である。
図5に示されるように、本実施形態では、温度センサユニット10が一対のコイル70の間の隙間Gに取り付けられた状態では、湾曲部34aの先端が貫通孔81c内で周方向Cの一方側(
図5の左側)に向かう方向Fp1に弾性変形する。
【0042】
これにより、保持部材30は、中壁81eに支持された支点部34bを支点に
図5の時計回り方向に回転しようとするが、保持部材30の回転が一対のコイル70によって制限され、ひいては板バネ部34が隙間G内で周方向Cの他方側(
図5の右側)に弾性変形する。すなわち、
図5の状態では、湾曲部34aと板バネ部34との間の傾斜角度θ(
図4参照)は
図4の状態よりも小さくなっている。
【0043】
したがって、センサ保持部39には板バネ部34の弾性変形に伴う力によって測定面21a側、すなわち周方向Cの一方側(
図5の左側)に向かう方向Fp2の力が生じる。これにより、センサ保持部39が測定面21a側に押し付けられ、ひいては温度センサ20の測定面21aとコイル70の側面70aとの間の面圧が高まる。
【0044】
また、温度センサユニット10が隙間Gに取り付けられた状態では、係止部35と貫通孔81cの凹部81dとの接触により、温度センサユニット10のバスリング80に対する軸方向Xの一方側への移動(抜け)が抑制される。
【0045】
このように、本実施形態によれば、温度センサ20と保持部材30とが一体化された状態の温度センサユニット10をバスリング80の軸方向Xの一方側から貫通孔81c内に挿入するという比較的簡単な操作によって、温度センサ20をホッテストポイントとなるコイル70の軸方向Xの中央位置に取り付けることができる。
【0046】
以上のように、本実施形態では、温度センサユニット10は、温度センサ20と、温度センサ20の測定面21aとは反対側の裏面21bを保持するセンサ保持部39と、センサ保持部39から温度センサ20のリード線23に沿って延びセンサ保持部39を測定面21a側に押し付ける方向に弾性変形可能な板バネ部34と、板バネ部34が弾性変形した状態でセンサ保持部39をバスリング80(固定部材)に固定するための係止部35と、を有した保持部材30と、を備える。
【0047】
このような構成によれば、板バネ部34の弾性変形に伴う力を利用してセンサ保持部39を測定面21a側に押し付けることができ、ひいては温度センサ20をコイル70の側面70aに押し付けることができる。これにより、コイル70に巻太り部や巻細り部等があったとしても温度センサ20とコイル70との接触状態にバラツキが生じるのが抑制され、ひいてはコイル70の温度をより精度よく測定することができる。また、温度センサ20のリード線23を隙間G内に押し込む従来構成と比べて、温度センサ20を所定位置としてコイル70の軸方向Xの中央位置により取り付けやすくすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、温度センサ20は、測定面21aと当該測定面21aとは反対側の裏面21bとの間に亘った一対の側面21dと、一対の側面21dと交差するとともにリード線23側で測定面21aと裏面21bとの間に亘った一端面21cと、を有し、センサ保持部39は、温度センサ20の裏面21bを支持する底壁31と、一対の側面21dを支持する一対の側壁32と、一端面21cと面する段差部33と、を有する。
【0049】
このような構成によれば、センサ保持部39の一対の側壁32や段差部33によって、温度センサユニット10の隙間Gへの取付時に温度センサ20が保持部材30に対して軸方向Xや径方向に移動したり外れたりするのを抑制することができる。
【0050】
[第1変形例]
図6は、第1変形例の温度センサユニット10Aの斜視図である。温度センサユニット10Aは、上記実施形態の温度センサユニット10と同様の構成を備えている。よって、温度センサユニット10Aは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0051】
ただし、本変形例では、
図6に示されるように、保持部材30Aに湾曲部34aと操作壁37と係止壁38とが設けられている点が、上記実施形態と相違している。係止壁38は、センサ保持部39の軸方向Xの他端部に設けられている。係止壁38は、一対の側壁32の周方向Cの一方側(測定面21a側)の端部の間を亘るように底壁31と平行に延びている。
【0052】
係止壁38は、温度センサ20における薄肉部24(
図7参照)の測定面21a側の面と面している。薄肉部24は、温度センサ20のうちセンサ素子部22が収容されたベース部分25よりも周方向Cの厚さが薄くなった部分である。係止壁38は、温度センサユニット10の隙間G(
図8参照)への取付時に薄肉部24との当接によって温度センサ20が保持部材30Aに対して周方向Cの一方側(測定面21a側)に移動したり外れたりするのを抑制している。
【0053】
また、係止壁38と底壁31との間には、軸方向Xに貫通した開口部31r(
図7参照)が設けられている。開口部31rには、上述した薄肉部24が挿入される。温度センサ20は、センサ保持部39への取付時に薄肉部24を開口部31rに対して傾斜させて挿入することで、センサ筐体21を係止壁38と段差部33との間に取り付けることができる。
【0054】
図7は、温度センサユニット10Aの断面図である。
図7に示されるように、本変形例では、板バネ部34は、湾曲部34aを有している。湾曲部34aは、板バネ部34の直線状の部分に対して周方向Cの他方側(
図7の右側)、すなわち測定面21aとは反対方向に凸の状態で湾曲している。
【0055】
また、湾曲部34aは、センサ保持部39よりも周方向Cの他方側(
図7の右側)に位置され、当該湾曲部34aの軸方向Xの中央位置ほど周方向Cの他方側に位置するように円弧状に曲がっている。本変形例では、湾曲部34aは、温度センサユニット10の隙間G(
図9参照)への取付時に当該隙間G内で周方向Cに弾性変形可能である。
【0056】
また、湾曲部34aの軸方向Xの一端部には、係止部35および支点部34bが設けられている。支点部34bは、湾曲部34aにおける係止部35との接続部位から軸方向Xの一方側に延びている。本変形例では、支点部34bは、センサ保持部39の底壁31に対して傾斜しており、その傾斜角度θは、約3°に設定されている。
【0057】
操作壁37は、支点部34bの軸方向Xの一端部から周方向Cの一方側(
図7の左側)に突出している。操作壁37は、バスリング80(
図8参照)の貫通孔81cの縁部と係合されることにより、保持部材30Aのバスリング80に対する軸方向Xの他方側(
図8の下側)への移動を制限している。すなわち、操作壁37は、温度センサ20のコイル70に対する軸方向Xの取付位置を位置決めしている。
【0058】
係止部35は、支点部34bと湾曲部34aとの間に設けられている。係止部35は、フック状に構成され、支点部34bから周方向Cの一方側(
図7の左側)に突出している。係止部35は、貫通孔81c(
図8参照)の縁部と軸方向Xに引っ掛かることにより、保持部材30Aがバスリング80に対して軸方向Xの一方側に外れるのを抑制可能である。
【0059】
図8は、温度センサユニット10Aの取付前の状態を示した断面図である。
図8に示されるように、温度センサユニット10Aは、保持部材30Aと温度センサ20とが一体化された状態で、バスリング80の軸方向Xの一方から貫通孔81c内に挿入される。貫通孔81cは、周方向Cに隣接した一対のコイル70の間の隙間Gと軸方向Xに並び、当該隙間Gと軸方向Xに連通している。
【0060】
また、貫通孔81cの軸方向Xの一方の縁部には、操作壁37が係合される凹部81fが設けられている。凹部81fは、バスリング80の端面81aから軸方向Xの他方に凹んでいる。また、本変形例では、係止部35が係止される凹部81dは、保持部材30Aに対応して貫通孔81cの周方向Cの一方側(
図8の左側)の内面に設けられている。凹部81fと凹部81dとは、軸方向Xに互いに間隔をあけて並んでいる。
【0061】
図9は、温度センサユニット10Aの取付後の状態を示した断面図である。
図9に示されるように、本変形例では、温度センサユニット10Aが一対のコイル70の間の隙間Gに取り付けられた状態では、湾曲部34aが隙間G内で周方向Cの他方側(
図9の右側)のコイル70に押されて周方向Cの一方側に向かう方向Fp2に弾性変形する。
【0062】
したがって、周方向Cの他方側(
図9の右側)のコイル70の側面70bには湾曲部34aの弾性変形に伴う力、すなわち方向Fp2とは逆向きの力が生じる一方で、センサ保持部39には湾曲部34aの弾性変形に伴う力の反力によって周方向Cの一方側に向かう方向Fp3の力が生じる。これにより、センサ保持部39が測定面21a側に押し付けられ、ひいては温度センサ20の測定面21aとコイル70の側面70aとの間の面圧が高まる。
【0063】
また、温度センサユニット10Aが隙間Gに取り付けられた状態では、支点部34bが貫通孔81c内で周方向Cの他方側(
図9の右側)に向かう方向Fp1に弾性変形する。したがって、貫通孔81cの内面には支点部34bの弾性変形に伴う力、すなわち方向Fp1とは逆向きの力が生じる。これにより、支点部34bおよび操作壁37が貫通孔81cの周方向Cの一方側(
図9の左側)に押し付けられ、係止部35が凹部81dと係止されるとともに操作壁37が凹部81fと係合される。
【0064】
以上のように、本変形例では、板バネ部34は、センサ保持部39よりも測定面21aとは反対方向(周方向Cの他方側)に位置され当該反対方向に凸の状態で湾曲した湾曲部34aを有している。
【0065】
このような構成によれば、湾曲部34aの弾性変形を利用してセンサ保持部39を測定面21a側に押し付けることができるとともに、支点部34b、係止部35および操作壁37を貫通孔81cの周方向Cの一方の内面側に押し付けることができる。
【0066】
また、本変形例では、温度センサ20には、測定面21aが設けられたベース部分25よりも厚さが薄くなった薄肉部24が設けられ、センサ保持部39は、薄肉部24における測定面21a側の面と面する係止壁38を有している。
【0067】
このような構成によれば、センサ保持部39の係止壁38によって、温度センサユニット10Aの隙間Gへの取付時に温度センサ20が保持部材30Aに対して周方向Cの一方側に移動したり外れたりするのを抑制することができる。
【0068】
[第2変形例]
図10は、第2変形例の温度センサユニット10Bの斜視図である。温度センサユニット10Bは、上記実施形態の温度センサユニット10と同様の構成を備えている。よって、温度センサユニット10Bは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0069】
ただし、本変形例では、
図10に示されるように、板バネ部34にリード線23(
図2参照)を引っ掛けるための切欠部31sが設けられている点が、上記実施形態と相違している。切欠部31sは、板バネ部34の短手方向(径方向)に延びた第一部分31s1と、板バネ部34の長手方向(軸方向)に延びた第二部分31s2と、を有している。
【0070】
第一部分31s1は、板バネ部34の短手方向の一方または他方に開口している。第二部分31s2は、短手方向において第一部分31s1の開口端とは反対側の端部から長手方向の一方に延びている。切欠部31sは、第一部分31s1および第二部分31s2によって略L字状の貫通孔として構成されている。本変形例では、板バネ部34には、長手方向に互いに間隔をあけて複数の切欠部31sが互い違いに設けられている。
【0071】
このように、本変形例によれば、保持部材30Bの板バネ部34にリード線23の保持用の切欠部31sが設けられているため、当該切欠部31sにリード線23を引っ掛けることができ、ひいてはリード線23が保持部材30Bに対して撓んだり外れたりするのを抑制することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0073】
10,10A,10B…温度センサユニット、20…温度センサ、21a…測定面、21b…裏面(測定面とは反対側の面)、21c…一端面、21d…側面、23…リード線、24…薄肉部、25…ベース部分、30,30A,30B…保持部材、31…底壁、32…側壁、33…段差部、34…板バネ部、34a…湾曲部、35…係止部、38…係止壁、39…センサ保持部、60…ステータ、70…コイル、100…回転電機、C…周方向、G…隙間、X…軸方向。