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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169477
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20231122BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63B25/16 101A
B63B25/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080593
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】三好 崇公
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】関 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 梨花子
(57)【要約】
【課題】甲板と燃料調整室との間に確保されるスペースを有効に活用することができる船舶を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る船舶は、液化ガスを燃料とする推進用エンジンと、前記液化ガスを貯留する、甲板12上に配置された2つの燃料タンク2A,2Bと、甲板12との間にスペースが確保されるように甲板12に対して嵩上げされた燃料調整室4を含む。燃料調整室4は、前記推進用エンジンの上流側で前記燃料の温度および圧力を調整する機器を収容する。甲板12と燃料調整室4との間の前記スペースに艤装品10が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを燃料とする推進用エンジンと、
前記液化ガスを貯留する、船体の上面を構成する甲板上に配置された少なくとも1つの燃料タンクと、
前記甲板との間にスペースが確保されるように前記甲板に対して嵩上げされた、前記推進用エンジンの上流側で前記燃料の温度および圧力を調整する機器を収容する燃料調整室と、を備え、
前記甲板と前記燃料調整室との間の前記スペースに艤装品が配置されている、船舶。
【請求項2】
前記艤装品は、係船用ウインチ、係船用ロープおよび配管の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
左舷側および右舷側に位置するように前記甲板上に配置された、前記液化ガスの供給源との接続用の一対のバンカーステーションと、
前記一対のバンカーステーションから前記少なくとも1つの燃料タンクへ前記液化ガスを導く燃料受入配管と、
前記少なくとも1つの燃料タンクから前記燃料調整室へ前記液化ガスを導く液体配管と、
前記少なくとも1つの燃料タンク内で気化したBOGを前記少なくとも1つの燃料タンクから前記燃料調整室へ導くBOG配管と、
前記燃料調整室で温度および圧力が調整された燃料を前記燃料調整室から前記推進用エンジンへ導く燃料供給配管と、をさらに備え、
前記艤装品は、前記燃料受入配管、前記液体配管、前記BOG配管および前記燃料供給配管の少なくとも一つを含む、請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記少なくとも1つの燃料タンクに対応する、前記燃料受入配管、前記液体配管および前記BOG配管が集中するエリアを区画する少なくとも1つのタンク接続室をさらに備える、請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
前記少なくとも1つの燃料タンクは、船幅方向に互いに離間する2つの燃料タンクを含み、
前記燃料調整室は、前記2つの燃料タンクの間に配置されており、
前記少なくとも1つのタンク接続室は、前記2つの燃料タンクの上方にそれぞれ配置された2つのタンク接続室を含む、請求項4に記載の船舶。
【請求項6】
前記甲板と前記燃料調整室の基準床面とを接続する第1通路と、
前記燃料調整室の基準床面、上階床面または屋上面と前記2つのタンク接続室の床面とをそれぞれ接続する2つの第2通路と、
をさらに備える、請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
前記2つの第2通路は、船幅方向において前記燃料調整室の両側に配置されており、
前記第1通路は、前記燃料調整室の船尾側を通って前記2つの第2通路同士を接続している、請求項6に記載の船舶。
【請求項8】
前記少なくとも1つの燃料タンクは船尾に配置され、前記燃料調整室は前記少なくとも1つの燃料タンクの前方に配置されている、請求項4に記載の船舶。
【請求項9】
前記甲板と前記燃料調整室の基準床面とを接続する第1通路と、
前記燃料調整室の基準床面、上階床面または屋上面と前記少なくとも1つのタンク接続室の床面とを接続する第2通路と、
をさらに備える、請求項8に記載の船舶。
【請求項10】
前記燃料調整室および前記少なくとも1つのタンク接続室のそれぞれには、前記燃料調整室内または前記タンク接続室内の圧力が閾値を超えたときに開かれる安全弁がそれぞれ設けられている、請求項4~9の何れか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガスを燃料とする推進用エンジンを含む船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減を目的として、LNG(Liquefied Natural Gas)やLPG(Liquefied Petroleum Gas)などの液化ガスを燃料とする推進用エンジンを含む船舶が積極的に開発されている。液化ガスは、液体のまま推進用エンジンへ供給される場合もあるし、気体または超臨界流体にされて推進用エンジンへ供給される場合もある。
【0003】
例えば、特許文献1には、推進用エンジンの燃料である液化ガスを貯留する2つの燃料タンクを船体の上面を構成する甲板上に配置した船舶が開示されている。この船舶では、甲板上の船尾部分に上部構造体が設けられ、船幅方向において上部構造体の両側に燃料タンクが配置されている。
【0004】
また、特許文献1の船舶では、上部構造体および燃料タンクの後方に燃料調整室が配置されている。特許文献1には、燃料調整室について「液化ガス燃料を主推進機関や発電用機関まで供給するための関連機器を設置する」と記載されている。また、特許文献1の図1からは、燃料調整室が甲板に対して嵩上げされている点が看取される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-50135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の船舶のように、燃料調整室を甲板に対して嵩上げした場合、甲板と燃料調整室との間に確保されるスペースを有効に活用することが望まれる。
【0007】
そこで、本開示は、甲板と燃料調整室との間に確保されるスペースを有効に活用することができる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、液化ガスを燃料とする推進用エンジンと、前記液化ガスを貯留する、船体の上面を構成する甲板上に配置された少なくとも1つの燃料タンクと、前記甲板との間にスペースが確保されるように前記甲板に対して嵩上げされた、前記推進用エンジンの上流側で前記燃料の温度および圧力を調整する機器を収容する燃料調整室と、を備え、前記甲板と前記燃料調整室との間の前記スペースに艤装品が配置されている、船舶を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、甲板と燃料調整室との間に確保されるスペースを有効に活用することができる船舶が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは第1実施形態に係る船舶の側面図、図1Bは同船舶の平面図である。
図2図1AのII-II線に沿った断面図である。
図3】バンカーステーションから推進用エンジンであるメインエンジンおよび発電用エンジンまでの配管系統図である。
図4】第1実施形態の変形例を示す図である。
図5図5Aは第2実施形態に係る船舶の側面図、図5Bは同船舶の平面図である。
図6図5BのVI-VI線に沿った断面図である。
図7】第2実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1A,1Bおよび図2に、第1実施形態に係る船舶1を示す。本実施形態では、船舶1が、オイルや液化ガスなどの液体である積荷を輸送する液体タンカーである。ただし、船舶1の用途はこれに限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0012】
具体的に、船舶1は、甲板12を有する船体11を含む。甲板12は船体11の上面を構成する。本実施形態では、甲板12が船体11の全長に亘ってフラットであるが、甲板12は、船首部および船尾部の一方または双方が中間部よりも高くなるか低くなるように構成されてもよい。
【0013】
船体11内には、船長方向に並ぶ複数のカーゴタンク13が設けられており、これらのカーゴタンク13に積荷である液体が貯留される。また、船体11内には、船尾(すなわちカーゴタンク13の後方)にエンジンルーム14が設けられている。さらに、甲板12上の船尾部分には、上部構造体15が設けられている。上部構造体15は、ブリッジや居住区を含む。
【0014】
エンジンルーム14内には、プロペラ16を駆動する推進用エンジンが配置される。本実施形態では、船舶1が機械推進船であるため、推進用エンジンが、プロペラ16を直接的に駆動するメインエンジン51(図3参照)である。また、エンジンルーム14内には、図3に示すように、船内電力を生成するための複数の発電用エンジン52と、余剰の燃料を処理するための補助ボイラ53も配置されている。
【0015】
ただし、船舶1が電気推進船である場合は、メインエンジン51が省略されて発電用エンジン52が発電機およびモータを介してプロペラ16を駆動するため、発電用エンジン52が推進用エンジンとなる。
【0016】
推進用エンジンであるメインエンジン51および発電用エンジン52は、液化ガスを燃料とする。甲板12上には、その液化ガスを貯留する2つの燃料タンク2A,2Bが配置されている。燃料である液化ガスは、例えば、LNG、LPG、LH2などである。積荷が液化ガスである場合は、燃料は積荷と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0017】
本実施形態では、メインエンジン51および発電用エンジン52が、燃料噴射圧が0.5~10MPa程度のオットーサイクルのレシプロエンジンである。また、本実施形態では、図3に示すように、液化ガスを強制的に気化した気化ガスおよび燃料タンク2A,2B内で気化したBOG(Boil Off Gas)が燃料としてメインエンジン51および発電用エンジン52へ供給される。ただし、液化ガスがLPGの場合は、LPGが液体のまま燃料としてメインエンジン51へ供給されてもよい。
【0018】
メインエンジン51は、燃料噴射圧が25~35MPa程度のディーゼルサイクルのレシプロエンジンであってもよい。この場合、液化ガスに由来する超臨界流体が燃料としてメインエンジン51へ供給されてもよい。あるいは、メインエンジン51は、ガスタービンエンジンであってもよいし、ボイラと蒸気タービンの組み合わせであってもよい。
【0019】
メインエンジン51および発電用エンジン52は、気化ガスおよびBOGである燃料ガスのみを燃料とするガス専焼エンジンであってもよい。あるいは、メインエンジン51および発電用エンジン52は、燃料を燃料ガスと燃料油の一方または双方に切り換え可能な二元燃料エンジンであってもよい。
【0020】
燃料タンク2A,2Bは、本実施形態では、船長方向に長い筒状であり、船長方向において船体11の略中央に配置されている。ただし、燃料タンク2A,2Bの形状および位置は適宜変更可能である。
【0021】
燃料タンク2A,2Bは、船幅方向に互いに離間しており、左舷側および右舷側にそれぞれ位置している。燃料タンク2A,2Bの間には、燃料調整室4が配置されている。燃料調整室4は、メインエンジン51および発電用エンジン52の上流側で燃料の温度および圧力を調整する機器を収容する。
【0022】
図2に示すように、燃料調整室4は、甲板12との間にスペースが確保されるように甲板12に対して嵩上げされている。つまり、燃料調整室4は、甲板12から立ち上がる複数の支柱42で支持されている。
【0023】
甲板12と燃料調整室4との間のスペースには、艤装品10が配置されている。本実施形態では、艤装品10が複数の配管である。これらの配管については後述にて詳細に説明する。
【0024】
燃料タンク2A,2Bの上方には、タンク接続室3A,3Bがそれぞれ配置されている。つまり、タンク接続室3Aは燃料タンク2Aに対応し、タンク接続室3Bは燃料タンク2Bに対応する。ただし、タンク接続室3A,3Bは、燃料タンク2A,2Bの脇(船首側、船尾側、左舷側または右舷側)に配置されてもよい。
【0025】
燃料調整室4には、当該燃料調整室4内の圧力が閾値を超えたときに開かれる安全弁41が設けられている。同様に、タンク接続室3A,3Bのそれぞれには、タンク接続室(3Aまらは3B)内の圧力が閾値を超えたときに開かれる安全弁31が設けられている。また、燃料調整室4およびタンク接続室3A,3Bのそれぞれには、換気装置が設けられる。
【0026】
燃料調整室4は、基準床面と屋上面との間に上階床面を有しない一階建てであってもよいし、基準床面と屋上面との間に上階床面を有する二階建てであってもよい。甲板12と燃料調整室4の基準床面とは第1通路43によって接続されており、燃料調整室4の基準床面とタンク接続室3A,3Bの床面とは2つの第2通路32によってそれぞれ接続されている。
【0027】
本実施形態では、図1Bに示すように、第2通路32が船幅方向において燃料調整室4の両側に配置されており、第1通路43が、燃料調整室4の船尾側を通って2つの第2通路32同士を接続している。
【0028】
燃料調整室4には、当該燃料調整室4の出入口付近に燃料調整室4の基準床面と同じ高さの出入口デッキが設けられ、タンク接続室3A,3Bのそれぞれには、当該タンク接続室(3Aまたは3B)の出入口付近にタンク接続室の床面と同じ高さの出入口デッキが設けられる。
【0029】
第1通路43は、甲板12から燃料調整室4の出入口デッキまでの高さの2つの階段(図1Bでは省略)を含み、各第2通路32は、燃料調整室4の出入口デッキから対応するタンク接続室(3Aまたは3B)の出入口デッキまでの高さの階段を含む。なお、第1通路43の階段の数は1つであってもよい。
【0030】
さらに、甲板12上には、液化ガスの供給源との接続用の一対のバンカーステーション2C,2Dが、左舷側および右舷側に位置するように配置されている。
【0031】
図3に示すように、バンカーステーション2C,2Dから燃料タンク2Aへは、燃料受入配管6Aを通じて液化ガスが導かれ、バンカーステーション2C,2Dから燃料タンク2Bへは、燃料受入配管6Bを通じて液化ガスが導かれる。燃料受入配管6Aの上流部と燃料受入配管6Bの上流部は互いに合流して共通の流路となっている。燃料受入配管6A,6Bには、燃料タンク(2Aまたは2B)の近傍に、遮断弁61がそれぞれ設けられている。
【0032】
燃料タンク2Aから燃料調整室4へは、液体配管7Aを通じて液化ガスが導かれ、燃料タンク2Bから燃料調整室4へは、液体配管7Bを通じて液化ガスが導かれる。液体配管7Aの上流端は、燃料タンク2A内に配置されたポンプ21に接続されており、液体配管7Bの上流端は、燃料タンク2Bに配置されたポンプ21に接続されている。液体配管7Aの下流部と液体配管7Bの下流部が互いに合流して共通の流路となっている。液体配管7A,7Bには、燃料タンク(2Aまたは2B)の近傍に、遮断弁71がそれぞれ設けられている。
【0033】
燃料タンク2Aから燃料調整室4へは、燃料タンク2A内で気化したBOGがBOG配管7Cを通じて導かれ、燃料タンク2Bから燃料調整室4へは、燃料タンク2B内で気化したBOGがBOG配管7Dを通じて導かれる。液体配管7Aの下流部と液体配管7Bの下流部が互いに合流して共通の流路となっている。BOG配管7C,7Dには、燃料タンク(2Aまたは2B)の近傍に、遮断弁72がそれぞれ設けられている。
【0034】
タンク接続室3Aは、燃料受入配管6A、液体配管7AおよびBOG配管7Cが集中するエリアを区画する。燃料タンク2Aには燃料受入配管6A、液体配管7AおよびBOG配管7Cを集約するためのドームが設けられており、タンク接続室3Aは、そのドームに隣接するエリアを区画する。また、タンク接続室3Aは、燃料受入配管6Aに設けられた遮断弁61、液体配管7Aに設けられた遮断弁71およびBOG配管7Cに設けられた遮断弁72を収容する。
【0035】
さらに、タンク接続室3A内では、遮断弁72の下流側でBOG配管7Cから返送配管6Cが分岐しており、この返送配管6Cに遮断弁62が設けられている。返送配管6Cは、途中で分岐してバンカーステーション2C,2Dまで延びている。
【0036】
同様に、タンク接続室3Bは、燃料受入配管6B、液体配管7BおよびBOG配管7Dが集中するエリアを区画する。燃料タンク2Bには燃料受入配管6B、液体配管7BおよびBOG配管7Dを集約するためのドームが設けられており、タンク接続室3Bは、そのドームに隣接するエリアを区画する。また、タンク接続室3Bは、燃料受入配管6Bに設けられた遮断弁61、液体配管7Bに設けられた遮断弁71およびBOG配管7Dに設けられた遮断弁72を収容する。
【0037】
さらに、タンク接続室3B内では、遮断弁72の下流側でBOG配管7Dから返送配管6Dが分岐しており、この返送配管6Dに遮断弁62が設けられている。返送配管6Dは、途中で分岐してバンカーステーション2C,2Dまで延びている。
【0038】
返送配管6Cの下流部と返送配管6Dの下流部が互いに合流して共通の流路となっている。返送配管6C,6Dは、燃料タンク2A,2B内に液化ガスを供給する際に、供給量と同程度の量のガスを液化ガスの供給源へ返送するためのものである。
【0039】
燃料調整室4内では、液体配管7A,7Bが気化器81に接続されている。気化器81では液化ガスが気化されて気化ガスが生成され、生成された気化ガスが配管82を通じてバッファ容器83へ導かれる。気化器81は、気化ガスの温度および圧力を調整する役割を果たす。
【0040】
また、燃料調整室4内では、BOG配管7C,7Dが加熱器85に接続されている。加熱器85で加熱されたBOGは、配管86を通じてバッファ容器83へ導かれる。配管86には圧縮機87が設けられている。加熱器85および圧縮機87は、BOGの温度および圧力を調整する役割を果たす。
【0041】
バッファ容器83には、気化ガスとBOGの混合体である燃料が一時的に貯留される。燃料調整室4で温度および圧力が調整された燃料、つまりバッファ容器83に一時的に貯留された燃料は、第1燃料供給配管9Aを通じて燃料調整室4からメインエンジン51へ導かれ、第2燃料供給配管9Bを通じて燃料調整室4から発電用エンジン52へ導かれ、第3燃料供給配管9Cを通じて燃料調整室4から補助ボイラ53へ導かれる。第1燃料供給配管9A、第2燃料供給配管9Bおよび第3燃料供給配管9Cの上流部は互いに合流して共通の流路となっている。
【0042】
第1燃料供給配管9Aには、複数の弁を含む弁ユニット91が設けられている。同様に、第2燃料供給配管9Bおよび第3燃料供給配管9Cのそれぞれにも弁ユニット91が設けられている。本実施形態では、弁ユニット91がエンジンルーム14内に位置しているが、弁ユニット91は燃料調整室4内に位置してもよい。あるいは、弁ユニット91専用の部屋がある場合は、弁ユニット94はそこに配置されてもよい。
【0043】
甲板12と燃料調整室4との間のスペースに配置される艤装品10は、燃料受入配管6A,6Bと、液体配管7A,7Bと、BOG配管7C,7Dと、第1燃料供給配管9Aの少なくとも1つを含んでもよい。また、甲板12と燃料調整室4との間のスペースに配置される艤装品10は、返送配管6C,6Dと、第2燃料供給配管9Bと、第3燃料供給配管9Cの少なくとも1つを含んでもよい。さらに、甲板12と燃料調整室4の間のスペースに配置される艤装品10は、荷積み時または荷揚げ時に積荷である液体が流れる積荷配管を含んでもよい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の船舶1では、甲板12と燃料調整室4との間のスペースに艤装品10が配置されるので、そのスペースを有効に活用することができる。しかも、燃料調整室4が甲板12に対して嵩上げされているために、燃料調整室4の下方に危険区画があったとしてもそれらを物理的に隔離することができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、左舷側と右舷側の2つの燃料タンク2A,2Bの間に燃料調整室4が配置されているので、2つの燃料タンク2A,2Bおよび燃料調整室4のレイアウトを、船長方向に延びる船体中心線に対して対称とすることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、第1通路43によって甲板12と燃料調整室4の基準床面とが接続され、第2通路32によって燃料調整室4の基準床面とタンク接続室3A,3Bの床面とが接続されている。このため、第1通路43を、甲板12から燃料調整室4までの導線としてだけでなく、甲板12からタンク接続室3A,3Bまでの導線として利用することができる。
【0047】
しかも、第1通路43が2つの第2通路32同士を接続しているので、第1通路43を通じて、2つの第2通路32のどちらにもアクセスすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、燃料調整室4に安全弁41が設けられるとともにタンク接続室3A,3Bに安全弁31が設けられているので、燃料調整室4内の機器および配管またはタンク接続室3A,3B内の機器および配管から燃料が漏れたとしても、燃料調整室4内またはタンク接続室3A,3B内を適切な圧力に保つことができる。
【0049】
<変形例>
図4に示すように、燃料調整室4の基準床面とタンク接続室3Bの床面とを接続する第2通路32に加えて、燃料調整室4の屋上面とタンク接続室3Bの床面とを接続する第2通路33が採用されてもよい。第2通路33が採用される場合は、第2通路32が省略されてもよい。図4では、燃料調整室4の基準床面と燃料調整室4の上階床面とを接続する第3通路44と、燃料調整室4の上階床面と燃料調整室4の屋上面とを接続する第4通路45も採用されている。
【0050】
あるいは、燃料調整室4の基準床面と燃料調整室4の上階床面とを接続する第3通路44が採用される場合は、第2通路32,33の代わりに、燃料調整室4の上階床面とタンク接続室3Bの床面とを接続する第2通路が採用されてもよい。
【0051】
図4は右舷側の変形例を示すが、上述した変形例は左舷側にも適用可能である。
【0052】
(第2実施形態)
図5A,5Bおよび図6に、第2実施形態に係る船舶1Aを示す。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0053】
本実施形態では、燃料である液化ガスを貯留する燃料タンク2Eが船尾に配置されており、この燃料タンク2Eの前方に燃料調整室4が配置されている。燃料タンク2Eは、船幅方向に長い筒状であり、船幅方向において船体11の略中央に位置するように甲板12上に配置されている。ただし、燃料タンク2Eの形状および位置は適宜変更可能である。
【0054】
燃料タンク2Eの上方には、タンク接続室3Cが配置されている。タンク接続室3Cは、第1実施形態のタンク接続室3A,3Bのそれぞれと同様の構成を有する。
【0055】
すなわち、タンク接続室3Cは、燃料受入配管6E、液体配管およびBOG配管が集中するエリアを区画するとともに、燃料受入配管6Eに設けられた遮断弁、液体配管に設けられた遮断弁、BOG配管に設けられた遮断弁、および返送配管6Fに設けられた遮断弁を収容する。また、タンク接続室3Cには安全弁31が設けられている。
【0056】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、燃料調整室4は、甲板12との間にスペースが確保されるように甲板12に対して嵩上げされている。つまり、燃料調整室4は、甲板12から立ち上がる複数の支柱42で支持されている。
【0057】
甲板12と燃料調整室4の基準床面とは第1通路46によって接続されており、燃料調整室4の屋上面とタンク接続室3Cの床面とは、第2通路34によって接続されている。また、燃料調整室4の基準床面と燃料調整室4の上階床面とは第3通路47によって接続されており、燃料調整室4の上階床面と燃料調整室4の屋上面とは第4通路48によって接続されている。本実施形態では、第1通路46、第3通路47および第4通路48が燃料調整室4の後方に配置されている。
【0058】
燃料調整室4には、当該燃料調整室4の一階出入口付近に燃料調整室4の基準床面と同じ高さの一階出入口デッキが設けられ、第1通路46は、甲板12から一階出入口デッキまでの高さの階段を含む。
【0059】
同様に、燃料調整室4には、当該燃料調整室4の二階出入口付近に燃料調整室4の階上床面と同じ高さの二階出入口デッキが設けられ、第3通路47は、一階出入口デッキから二階出入口デッキまでの高さの階段を含む。
【0060】
第4通路48は、二階出入口デッキから屋上面までの高さの階段を含む。一方、第2通路34は、燃料調整室4の屋上面からタンク接続室3Cの出入口デッキまでの高さの階段を含む。
【0061】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、甲板12と燃料調整室4との間のスペースに配置される艤装品10が複数の配管である。艤装品10は、燃料受入配管6Eと、液体配管と、BOG配管と、第1燃料供給配管9Aの少なくとも1つを含んでもよい。また、甲板12と燃料調整室4との間のスペースに配置される艤装品10は、返送配管6Fと、第2燃料供給配管9Bと、第3燃料供給配管9Cの少なくとも1つを含んでもよい。さらに、甲板12と燃料調整室4の間のスペースに配置される艤装品10は、荷積み時または荷揚げ時に積荷である液体が流れる積荷配管を含んでもよい。
【0062】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、甲板12と燃料調整室4との間のスペースに艤装品10が配置されるので、そのスペースを有効に活用することができる。しかも、燃料調整室4が甲板12に対して嵩上げされているために、燃料調整室4の下方に危険区画があったとしてもそれらを物理的に隔離することができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、燃料タンク2Eが船尾に配置され、この燃料タンク2Eの前方に燃料調整室4が配置されているので、燃料タンク2Eおよび燃料調整室4のレイアウトを、船長方向に延びる船体中心線に対して対称とすることが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、第1通路46によって甲板12と燃料調整室4の基準床面とが接続され、第3通路47によって燃料調整室4の基準床面と階上床面とが接続され、第4通路48によって燃料調整室4の階上床面と屋上面とが接続され、第2通路32によって燃料調整室4の屋上面とタンク接続室3Cの床面とが接続されている。このため、第1通路46を、甲板12から燃料調整室4までの導線としてだけでなく、甲板12からタンク接続室3Cまでの導線として利用することができる。
【0065】
<変形例>
甲板12と燃料調整室4との間のスペースに配置される艤装品10は、係船用ウインチと係船用ロープの少なくとも1つを含んでもよい。この場合、甲板12と燃料調整室4との間のスペースに配置される艤装品10は配管を含んでも含まなくてもよい。
【0066】
また、図7に示すように、第3通路47および第4通路48が省略され、燃料調整室4の基準床面とタンク接続室3Cの床面とを接続する第2通路35が採用されてもよい。
【0067】
(その他の実施形態)
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、甲板12と燃料調整室4との間のスペースに配置される艤装品10が配管を含む場合、艤装品10は、その配管上を船員が通行するためのオーバーブリッジなどの交通装置を含んでもよい。あるいは、甲板12と燃料調整室4との間のスペースに配置される艤装品10が係船用ロープを含む場合、艤装品10は、スタンドローラ、フェアリーダ、チョックなどの係船金物を含んでもよい。
【0069】
(まとめ)
第1の態様として、本開示は、液化ガスを燃料とする推進用エンジンと、前記液化ガスを貯留する、船体の上面を構成する甲板上に配置された少なくとも1つの燃料タンクと、前記甲板との間にスペースが確保されるように前記甲板に対して嵩上げされた、前記推進用エンジンの上流側で前記燃料の温度および圧力を調整する機器を収容する燃料調整室と、を備え、前記甲板と前記燃料調整室との間の前記スペースに艤装品が配置されている、船舶を提供する。
【0070】
上記の構成によれば、甲板と燃料調整室との間のスペースに艤装品が配置されるので、そのスペースを有効に活用することができる。しかも、燃料調整室が甲板に対して嵩上げされているために、燃料調整室の下方に危険区画があったとしてもそれらを物理的に隔離することができる。
【0071】
第2の態様として、第1の態様において、例えば、前記艤装品は、係船用ウインチ、係船用ロープおよび配管の少なくとも1つを含んでもよい。
【0072】
第3の態様として、第2の態様において、例えば、上記の船舶は、左舷側および右舷側に位置するように前記甲板上に配置された、前記液化ガスの供給源との接続用の一対のバンカーステーションと、前記一対のバンカーステーションから前記少なくとも1つの燃料タンクへ前記液化ガスを導く燃料受入配管と、前記少なくとも1つの燃料タンクから前記燃料調整室へ前記液化ガスを導く液体配管と、前記少なくとも1つの燃料タンク内で気化したBOGを前記少なくとも1つの燃料タンクから前記燃料調整室へ導くBOG配管と、前記燃料調整室で温度および圧力が調整された燃料を前記燃料調整室から前記推進用エンジンへ導く燃料供給配管と、をさらに備え、前記艤装品は、前記燃料受入配管、前記液体配管、前記BOG配管および前記燃料供給配管の少なくとも一つを含んでもよい。
【0073】
第4の態様として、第3の態様において、例えば、上記の船舶は、前記少なくとも1つの燃料タンクに対応する、前記燃料受入配管、前記液体配管および前記BOG配管が集中するエリアを区画する少なくとも1つのタンク接続室をさらに備えてもよい。
【0074】
第5の態様として、第4の態様において、前記少なくとも1つの燃料タンクは、船幅方向に互いに離間する2つの燃料タンクを含み、前記燃料調整室は、前記2つの燃料タンクの間に配置されており、前記少なくとも1つのタンク接続室は、前記2つの燃料タンクの上方にそれぞれ配置された2つのタンク接続室を含んでもよい。この構成によれば、2つの燃料タンクおよび燃料調整室のレイアウトを、船長方向に延びる船体中心線に対して対称とすることが可能となる。
【0075】
第6の態様として、第5の態様において、上記の船舶は、前記甲板と前記燃料調整室の基準床面とを接続する第1通路と、前記燃料調整室の基準床面、上階床面または屋上面と前記2つのタンク接続室の床面とをそれぞれ接続する2つの第2通路と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、第1通路を、甲板から燃料調整室までの導線としてだけでなく、甲板からタンク接続室までの導線として利用することができる。
【0076】
第7の態様として、第6の態様において、前記2つの第2通路は、船幅方向において前記燃料調整室の両側に配置されており、前記第1通路は、前記燃料調整室の船尾側を通って前記2つの第2通路同士を接続してもよい。この構成によれば、第1通路を通じて、2つの第2通路のどちらにもアクセスすることができる。
【0077】
第8の態様として、第4の態様において、前記少なくとも1つの燃料タンクは船尾に配置され、前記燃料調整室は前記少なくとも1つの燃料タンクの前方に配置されてもよい。この構成によれば、燃料タンクおよび燃料調整室のレイアウトを、船長方向に延びる船体中心線に対して対称とすることが可能となる。
【0078】
第9の態様として、第8の態様において、上記の船舶は、前記甲板と前記燃料調整室の基準床面とを接続する第1通路と、前記燃料調整室の基準床面、上階床面または屋上面と前記少なくとも1つのタンク接続室の床面とを接続する第2通路と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、第1通路を、甲板から燃料調整室までの導線としてだけでなく、甲板からタンク接続室までの導線として利用することができる。
【0079】
第10の態様として、第4~第9の態様において、前記燃料調整室および前記少なくとも1つのタンク接続室のそれぞれには、前記燃料調整室内または前記タンク接続室内の圧力が閾値を超えたときに開かれる安全弁がそれぞれ設けられてもよい。この構成によれば、燃料調整室内の機器および配管またはタンク接続室内の機器および配管から燃料が漏れたとしても、燃料調整室内またはタンク接続室内を適切な圧力に保つことができる。
【符号の説明】
【0080】
1,1A 船舶
10 艤装品
11 船体
12 甲板
2A,2B,2E 燃料タンク
2C,2D バンカーステーション
3A~3C タンク接続室
31 安全弁
32~34 第2通路
4 燃料調整室
41 安全弁
43,46 第1通路
51 メインエンジン(推進用エンジン)
6A,6B,6E 燃料受入配管
61 遮断弁
7A,7B 液体配管
7C,7D BOG配管
71,72 遮断弁
9A~9C 燃料供給配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7