(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169490
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 5/14 20060101AFI20231122BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B60C5/14 Z
B60C15/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080624
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 悠介
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC25
3D131BC31
3D131BC51
3D131CB12
3D131CB13
3D131HA14
3D131HA33
3D131HA42
(57)【要約】
【課題】ビード部における成形不良を抑制しつつ、空気遮断性及びラバーチェーファーの耐久性を確保した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤにおいて、ブチルゴム層の端は、粘着ゴム層の端よりもタイヤ軸方向内側に配置される。ブチルゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、ビードトウからタイヤ径方向外側に7mm離れた点を通ると共にタイヤ軸方向に延びる第1仮想直線と、ビードコアの幅方向の両端を通る第2仮想直線と、の間に配置される。前記粘着ゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、前記ビードコアの底面のタイヤ軸方向内側端を通ると共に前記底面と直交する第3仮想直線と、前記第3仮想直線よりもタイヤ軸方向内側で前記補強層のタイヤ軸方向内側面に接すると共に前記第3仮想直線と平行な第4仮想直線と、の間に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面六角形状のビードコアを有する一対のビード部と、
前記一対のビード部の間で架け渡され、前記ビードコアを挟み込むように前記ビードコアの周りで折り返されるカーカスプライと、
前記ビードコア及び前記カーカスプライを覆うように配置される補強層と、
前記カーカスプライのタイヤ軸方向内側に配置されるインナーライナーと、
前記ビード部のタイヤ径方向内側端を形成するラバーチェーファーと、を備え、
前記インナーライナーは、タイヤ最内面を形成するブチルゴム層と、前記ブチルゴム層と前記カーカスプライとの間に配置される粘着ゴム層と、を備え、
前記ブチルゴム層の端は、前記粘着ゴム層の端よりもタイヤ軸方向内側に配置され、
前記ブチルゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、前記ビード部のビードトウからタイヤ径方向外側に7mm離れた点を通ると共にタイヤ軸方向に延びる第1仮想直線と、前記ビードコアの幅方向の両端を通る第2仮想直線と、の間に配置され、
前記粘着ゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、前記ビードコアの底面のタイヤ軸方向内側端を通ると共に前記底面と直交する第3仮想直線と、前記第3仮想直線よりもタイヤ軸方向内側で前記補強層のタイヤ軸方向内側面に接すると共に前記第3仮想直線と平行な第4仮想直線と、の間に配置される、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ブチルゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、前記ビードトウからタイヤ径方向外側に13mm離れた位置でタイヤ軸方向に延びる第5仮想直線上又は前記第5仮想直線よりもタイヤ径方向内側に配置される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ブチルゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、前記底面に沿って延長した第6仮想直線上又は前記第6仮想直線よりもタイヤ径方向外側に配置される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記粘着ゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、前記第3仮想直線から3mm離れた位置で前記第3仮想直線と平行に延びる第7仮想直線上又は前記第7仮想直線よりもタイヤ軸方向外側に配置される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ラバーチェーファーによる前記ブチルゴム層の覆い代は、タイヤ子午線断面において、10mm以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ビードコアの中心を通ると共にビードベースに垂直な第1の仮想線と、ビードベースと平行であると共にビードベースから15mm離れた位置に設けられた第2の仮想線と、の間にインナーライナーの端が配置された空気入りタイヤが開示されている。斯かる構成によれば、インナーライナーを幅広にしてビードトウにインナーライナーの端が近づいた場合でも、インナーライナーの端とそれに隣接するラバーチェーファーとの間でビード部の割れ欠けの原因となる亀裂の発生を防止でき、空気抜けも改善できると記載されている。
【0003】
しかしながら、インナーライナーの端の位置が第1の仮想線の近傍に配置された場合、インナーライナーがビードコアの底面のタイヤ径方向内側に入り込むことによってラバーチェーファーの厚みが薄くなり、ラバーチェーファーの耐久性が低下する恐れがある。
【0004】
また、特許文献1には、インナーライナーのブチルゴム層の位置について記載されていない。そのため、インナーライナーの端の位置が第2の仮想線の近傍に配置された場合、ブチルゴム層の端が第2の仮想線よりもタイヤ径方向外側に配置され、インナーライナーの空気遮断性を損なう恐れがある。さらに、その場合、インナーライナーのボリューム不足によりインナーライナーとラバーチェーファーとの間に空気溜まりが生じ、ビード部の成形不良が生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、ビード部における成形不良を抑制しつつ、空気遮断性及びラバーチェーファーの耐久性を確保した空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の空気入りタイヤは、断面六角形状のビードコアを有する一対のビード部と、前記一対のビード部の間で架け渡され、前記ビードコアを挟み込むように前記ビードコアの周りで折り返されるカーカスプライと、前記ビードコア及び前記カーカスプライを覆うように配置される補強層と、前記カーカスプライのタイヤ軸方向内側に配置されるインナーライナーと、前記ビード部のタイヤ径方向内側端を形成するラバーチェーファーと、を備え、前記インナーライナーは、タイヤ最内面を形成するブチルゴム層と、前記ブチルゴム層と前記カーカスプライとの間に配置される粘着ゴム層と、を備え、前記ブチルゴム層の端は、前記粘着ゴム層の端よりもタイヤ軸方向内側に配置され、前記ブチルゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、前記ビード部のビードトウからタイヤ径方向外側に7mm離れた点を通ると共にタイヤ軸方向に延びる第1仮想直線と、前記ビードコアの幅方向の両端を通る第2仮想直線と、の間に配置され、前記粘着ゴム層の端は、タイヤ子午線断面において、前記ビードコアの底面のタイヤ軸方向内側端を通ると共に前記底面と直交する第3仮想直線と、前記第3仮想直線よりもタイヤ軸方向内側で前記補強層のタイヤ軸方向内側面に接すると共に前記第3仮想直線と平行な第4仮想直線と、の間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
空気入りタイヤにおける一実施形態について、
図1を参照しながら説明する。なお、各図(
図1~
図4)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0010】
図1において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1のタイヤ回転軸と平行であるタイヤ軸方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2である。
【0011】
タイヤ軸方向D1において、内側は、タイヤ赤道面S1に近い側となり、外側は、タイヤ赤道面S1から遠い側となる。タイヤ径方向D2において、内側は、タイヤ回転軸に近い側となり、外側は、タイヤ回転軸から遠い側となる。タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ軸方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午線断面とは、タイヤ回転軸を含む断面で且つタイヤ赤道面S1と直交する断面のことである。
【0012】
本実施形態に係るタイヤ1は、重荷重用タイヤである。重荷重用タイヤとは、「JATMA YEAR BOOK 2022(日本自動車タイヤ協会規格)」の「C章:トラック及びバス用」や「D章:建設車両用」に記載されたタイヤである。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード部2と、各ビード部2からタイヤ径方向D2の外側に延びる一対のサイドウォール3と、各サイドウォール3のタイヤ径方向D2の外側端に連なるトレッド4と、を備えている。タイヤ1は、不図示のリムに装着される。
【0014】
ビード部2は、環状のビードコア21と、ビードコア21からタイヤ径方向D2の外側に延びるビードフィラー22と、を備える。ビードコア21は、断面六角形状に形成されている。本実施形態において、ビードコア21は、タイヤ軸方向D1の内側に向かってタイヤ径方向D2の内側に傾斜しているが、これに限られない。ビードフィラー22は、断面略三角形状に形成されている。
【0015】
タイヤ1は、リムと接触する部分に配置されるラバーチェーファー23を備える。ラバーチェーファー23は、ビード部2のタイヤ径方向D2の内側端を形成している。ラバーチェーファー23は、後述する補強層6及びインナーライナー7の外側(タイヤ径方向D2の内側)からビードコア21を挟み込むようにビードコア21の周りで折り返されているラバーチェーファー23のタイヤ軸方向D1の外側端は、サイドウォール3と連接されている。タイヤ軸方向D1の内側におけるラバーチェーファー23のタイヤ径方向D2の外側端は、先細りに形成されている。
【0016】
タイヤ1は、一対のビード部2の間で架け渡されるカーカスプライ5と、リムとの摩擦からカーカスプライ5を保護する補強層6と、カーカスプライ5のタイヤ軸方向D1の内側に配置されるインナーライナー7と、を備えている。カーカスプライ5及びインナーライナー7は、一対のビード部2、一対のサイドウォール3及びトレッド4に亘って、タイヤ1の内周に沿って配置されている。
【0017】
カーカスプライ5は、配列した複数のプライコードをゴムで被覆したものである。カーカスプライ5は、ビードコア21を挟み込むようにビードコア21の周りで折り返された折り返し部51を備えている。折り返し部51のタイヤ径方向D2の外側端51aは、タイヤ軸方向D1の外側における補強層6のタイヤ径方向D2の外側端6aよりもタイヤ径方向D2の外側に配置されている。
【0018】
補強層6は、カーカスプライ5の一部及びビードコア21を覆うように断面略U字状に配置されている。補強層6の両端6a,6bは、ビードコア21よりもタイヤ径方向D2の外側に配置されている。補強層6は、金属コード又は有機繊維コードなどのコードの配列体をゴムで被覆したチェーファーである。本実施形態において、補強層6は、スチールコードが配列されたスチールチェーファーであるが、これに限られない。補強層6は、例えば、ナイロンコードが配列されたナイロンチェーファーなどであってもよい。
【0019】
インナーライナー7は、タイヤ最内面に配置され、タイヤ1の空気が充填される内部空間に面している。
図2に示すように、インナーライナー7は、タイヤ最内面を形成するブチルゴム層71と、ブチルゴム層71とカーカスプライ5との間に配置される粘着ゴム層72と、を備えている。ブチルゴム層71は、空気遮断性に優れたブチルゴムで形成されている。粘着ゴム層72は、ブチルゴムよりも粘着性に優れた粘着性ゴムで形成されている。株式会社東洋精機製作所の測定機器(商品名「タックテスターII」)を用いて金属平板との粘着性を測定した場合に、粘着性ゴムは、例えば、ブチルゴムの1.5倍以上の粘着性を示す。粘着ゴム層(接着ゴム層ともいう)72は、ブチルゴム層71とカーカスプライ5とを接着している。
【0020】
ブチルゴム層71の端71aは、先細りに形成されている。ブチルゴム層71の端71aは、粘着ゴム層72の表面に接している。ブチルゴム層71の端71aは、タイヤ子午線断面において、ビード部2のビードトウ2aからタイヤ径方向D2の外側に7mm離れた点を通ると共にタイヤ軸方向D1に沿って延びる第1仮想直線L1と、ビードコア21の幅方向の両端を通る第2仮想直線L2と、の間に配置されている。第1仮想直線L1と第2仮想直線L2との間には、第1仮想直線L1上と第2仮想直線L2上とが含まれる。
【0021】
ブチルゴム層71の端71aは、粘着ゴム層72の端72aよりもタイヤ軸方向D1の内側に配置されている。本実施形態において、ブチルゴム層71の端71aは、粘着ゴム層72の端72aよりもタイヤ径方向D2の外側に配置されているが、これに限られない。
【0022】
粘着ゴム層72の端72aは、タイヤ子午線断面において、ビードコア21の底面21aのタイヤ軸方向D1の内側端を通ると共に底面21aと直交する第3仮想直線L3と、第3仮想直線L3よりもタイヤ軸方向D1の内側に位置すると共に第3仮想直線L3と平行な第4仮想直線L4と、の間に配置されている。第4仮想直線L4は、補強層6のタイヤ軸方向D1の内側面と接している。第3仮想直線L3と第4仮想直線L4との間には、第3仮想直線L3上と第4仮想直線L4上とが含まれる。
【0023】
図3に示すように、ブチルゴム層71の端71aは、タイヤ子午線断面において、ビードトウ2aからタイヤ径方向D2の外側に13mm離れた位置でタイヤ軸方向D1に延びる第5仮想直線L5上又は第5仮想直線L5よりもタイヤ径方向D2の内側に配置されていることが好ましい。即ち、ブチルゴム層71の端71aは、第1仮想直線L1と第5仮想直線L5との間に配置されていることが好ましい。
【0024】
ブチルゴム層71の端71aは、タイヤ子午線断面において、ビードコア21の底面21aに沿って延長した第6仮想直線L6上又は第6仮想直線L6よりもタイヤ径方向D2の外側に配置されていることが好ましい。即ち、ブチルゴム層71の端71aは、第2仮想直線L2(
図2参照)と第6仮想直線L6との間に配置されていることが好まく、第5仮想直線L5と第6仮想直線L6との間に配置されていることがより好ましい。
【0025】
粘着ゴム層72の端72aは、カーカスプライ5の表面に接している。粘着ゴム層72の端72aは、タイヤ子午線断面において、第3仮想直線L3から3mm離れた位置で第3仮想直線L3と平行に延びる第7仮想直線L7上又は第7仮想直線L7よりもタイヤ軸方向D1の外側に配置されていることが好ましい。即ち、粘着ゴム層72の端72aは、第3仮想直線L3と第7仮想直線L7との間に配置されていることが好ましい。
【0026】
図2に示すように、ラバーチェーファー23は、ブチルゴム層71の端71aをタイヤ軸方向D1の内側から覆っている。ラバーチェーファー23によるブチルゴム層71の覆い代H1は、タイヤ子午線断面において、10mm以上であることが好ましい。覆い代H1は、20mm以下であることがより好ましい。覆い代H1は、タイヤ軸方向D1の内側におけるラバーチェーファー23のタイヤ径方向D2の外側端からブチルゴム層71の端71aまでの最短長さである。
【0027】
上記の各寸法は、例えば、タイヤ1を正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷状態で測定される値である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRA、及びETRTOであればMeasuring Rimである。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表IRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURESに記載の最大値、ETRTOであれば、INFLATION PRESSUREである。
【0028】
上記の各寸法は、タイヤ1をリムから取り外した状態で測定した値であってもよい。具体的には、リムから取り外したタイヤ1をタイヤ子午線断面でカットし、両側のビードトウ2a,2aを粘着テープで繋げる。その際、粘着テープがタイヤ軸方向D1と一致するように粘着テープを各ビードトウ2a,2aに貼り付けて、ビードトウ2a,2a同士の間隔をリムに装着した状態の間隔に一致させる。そして、カット断面を測定具で測定することによって、上記の各寸法を確認することができる。タイヤ径方向D2は、カット断面上で且つ粘着テープと直交する方向となる。
【0029】
[空気入りタイヤの製造方法]
次に、空気入りタイヤの製造方法の一例について、
図4を参照しながら説明する。
【0030】
図4に示すように、まずは、成形ドラム101にサイドウォールゴム102及び断面三角形状のラバーチェーファーゴム103を配置する。次に、シート状のブチルゴム104にシート状の粘着ゴム105を貼り付けて、ブチルゴム104及び粘着ゴム105をそれぞれラバーチェーファーゴム103と重なるように成形ドラム101に配置する。
【0031】
粘着ゴム105の幅寸法は、ブチルゴム104の幅寸法よりも大きい。即ち、粘着ゴム105の端105aは、ブチルゴム104の端104aよりも幅方向に突出しており、ブチルゴム104及び粘着ゴム105によって段差が形成されている。これにより、粘着ゴム105とラバーチェーファーゴム103との隙間を小さくでき、その隙間に空気溜りが生じることを抑制することができる。本実施形態において、粘着ゴム105の突出長さW1は、10mmであるが、これに限られない。突出長さW1は、
図2のブチルゴム層71の端71a及び粘着ゴム層72の端72aの位置によって適宜設定される。
【0032】
ブチルゴム104の端104aは、ブチルゴム104の厚み方向に沿った形状である。即ち、ブチルゴム104は、断面長方形状に形成されている。ブチルゴム104の端104aは、例えば、ラバーチェーファーゴム103との接触面に沿って傾斜していてもよい。ブチルゴム104の角は、丸みを有していてもよい。
【0033】
粘着ゴム105の端105aは、粘着ゴム105の厚み方向に沿った形状であることが好ましい。即ち、粘着ゴム105は、断面長方形状に形成されていることが好ましい。これにより、粘着ゴム層72のボリューム不足によって粘着ゴム層72とラバーチェーファー23との間に隙間が生じ、それぞれの間に空気溜りが生じることを抑制できる。粘着ゴム105の角は、丸みを有していてもよい。
【0034】
ブチルゴム104とラバーチェーファーゴム103との重なり代W2は、10mm~20mmであることが好ましい。これにより、
図2におけるラバーチェーファー23によるブチルゴム層71の覆い代H1を確保することができる。
【0035】
続いて、成形ドラム101にビードコアやカーカスプライなどを配置し、カーカスプライをビードコアの周りで折り返す。そして、一般的なタイヤ製造工程と同様にその他のタイヤ構成部材を取り付けて未加硫タイヤを成形する。最後に、上記の未加硫タイヤを加硫金型で加硫することによってタイヤを製造する。
【0036】
[1]
以上、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、断面六角形状のビードコア21を有する一対のビード部2と、一対のビード部2の間で架け渡され、ビードコア21を挟み込むようにビードコア21の周りで折り返されるカーカスプライ5と、ビードコア21及びカーカスプライ5を覆うように配置される補強層6と、カーカスプライ5のタイヤ軸方向D1の内側に配置されるインナーライナー7と、ビード部2のタイヤ径方向D2の内側端を形成するラバーチェーファー23と、を備え、インナーライナー7は、タイヤ最内面を形成するブチルゴム層71と、ブチルゴム層71とカーカスプライ5との間に配置される粘着ゴム層72と、を備え、ブチルゴム層71の端71aは、タイヤ子午線断面において、ビード部2のビードトウ2aからタイヤ径方向D2の外側に7mm離れた点を通ると共にタイヤ軸方向D1に延びる第1仮想直線L1と、ビードコア21の幅方向(タイヤ軸方向D1)の両端を通る第2仮想直線L2と、の間で、且つ、粘着ゴム層72の端72aよりもタイヤ軸方向D1の内側に配置され、粘着ゴム層72の端72aは、タイヤ子午線断面において、ビードコア21の底面21aのタイヤ軸方向D1の内側端を通ると共に底面21aと直交する第3仮想直線L3と、第3仮想直線L3よりもタイヤ軸方向D1の内側に位置すると共に第3仮想直線L3と平行な第4仮想直線L4と、の間に配置され、第4仮想直線L4は、補強層6のタイヤ軸方向D1の内側面と接している。
【0037】
斯かる構成によれば、第1仮想直線L1を超えない位置で且つ粘着ゴム層72の端72aよりもタイヤ軸方向D1の内側にブチルゴム層71の端71aを配置することにより、ラバーチェーファー23と粘着ゴム層72との間に隙間が生じることを抑制でき、その隙間に空気溜りが生じることを抑制できる。第2仮想直線L2を超えた位置にブチルゴム層71の端71aを配置することによって、空気遮断性を確保することができる。粘着ゴム層72の端72aを第3仮想直線L3と第4仮想直線L4との間に配置することによって、粘着ゴム層72がビードコア21の底面21a側に入り込むことを防止し、ラバーチェーファー23の厚みが薄くなることを抑制できる。これにより、ラバーチェーファー23の耐久性を確保することができる。また、ラバーチェーファー23と粘着ゴム層72との間に空気溜りが生じることを抑制でき、ビード部2における成形不良を抑制することができる。その結果、ビード部2における成形不良を抑制しつつ、空気遮断性及びラバーチェーファー23の耐久性を確保することができる。
【0038】
[2]
また、上記[1]に係る空気入りタイヤ1に関して、ブチルゴム層71の端71aは、タイヤ子午線断面において、ビードトウ2aからタイヤ径方向D2の外側に13mm離れた位置でタイヤ軸方向D1に延びる第5仮想直線L5上又は第5仮想直線L5よりもタイヤ径方向D2の内側に配置される、という構成が好ましい。
【0039】
斯かる構成によれば、空気入りタイヤ1の空気遮断性をさらに確保することができる。
【0040】
[3]
また、上記[1]又は[2]に係る空気入りタイヤ1に関して、ブチルゴム層71の端71aは、タイヤ子午線断面において、ビードコア21の底面21aに沿って延長した第6仮想直線L6上又は第6仮想直線L6よりもタイヤ径方向D2の外側に配置される、という構成が好ましい。
【0041】
斯かる構成によれば、ラバーチェーファー23と粘着ゴム層72との間に隙間が生じることをさらに抑制でき、その隙間に空気溜りが生じることをさらに抑制できる。
【0042】
[4]
また、上記[1]~[3]の何れか一つに係る空気入りタイヤ1に関して、粘着ゴム層72の端72aは、タイヤ子午線断面において、第3仮想直線L3から3mm離れた位置で第3仮想直線L3と平行に延びる第7仮想直線L7上又は第7仮想直線L7よりもタイヤ軸方向D1の外側に配置される、という構成が好ましい。
【0043】
斯かる構成によれば、ラバーチェーファー23と粘着ゴム層72との間に空気溜りが生じることをさらに抑制でき、ビード部2における成形不良をさらに抑制することができる。
【0044】
[5]
また、上記[1]~[4]の何れか一つに係る空気入りタイヤ1に関して、ラバーチェーファー23によるブチルゴム層71の覆い代H1は、タイヤ子午線断面において、10mm以上である、という構成が好ましい。
【0045】
斯かる構成によれば、覆い代H1を10mm以上とすることにより、ブチルゴム層71とラバーチェーファー23との間に生じる隙間に空気が入ることを抑制できる。
【0046】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1…タイヤ、2…ビード部、2a…ビードトウ、21…ビードコア、21a…底面、22…ビードフィラー、23…ラバーチェーファー、3…サイドウォール、4…トレッド、5…カーカスプライ、51…折り返し部、6…補強層、7…インナーライナー、71…ブチルゴム層、72…粘着ゴム層、101…成形ドラム、102…サイドウォールゴム、103…ラバーチェーファーゴム、104…ブチルゴム、105…粘着ゴム、L1…第1仮想直線、L2…第2仮想直線、L3…第3仮想直線、L4…第4仮想直線、L5…第5仮想直線、L6…第6仮想直線、L7…第7仮想直線、S1…タイヤ赤道面