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特開2023-1695採取装置、管理システム、採取システム、採取システムの制御方法、制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001695
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】採取装置、管理システム、採取システム、採取システムの制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20221226BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G01N1/10 K
G01N1/00 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102572
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】517264889
【氏名又は名称】株式会社MAGLAB
(71)【出願人】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】武市 真拓
(72)【発明者】
【氏名】高田 徹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 遼
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA03
2G052AA06
2G052AC03
2G052AC05
2G052AC16
2G052AC18
2G052AC23
2G052AD02
2G052AD06
2G052CA02
2G052CA12
2G052DA13
2G052FC05
2G052FC11
2G052HA12
2G052HA13
2G052HB04
(57)【要約】
【課題】サンプルを採取する採取装置の動作、および採取したサンプルの管理を容易化する。
【解決手段】採取装置(1)は、サンプルの採取を指示する採取指示を取得する指示取得部(11)と、採取指示に応じて、対象から採取したサンプルを、予め固有の識別情報が付与されている容器に収容する採取実行部(12)と、サンプルを収容した容器から識別情報を取得する識別情報取得部(13)と、サンプルを採取した採取時刻に関する採取時刻情報と、サンプルを収容した容器の識別情報とを含む採取完了情報を出力する完了報告出力部(15)と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象からサンプルを所定の容器に採取する採取装置であって、
前記サンプルの採取を指示する採取指示を取得する指示取得部と、
前記採取指示に応じて、前記対象から採取した前記サンプルを、予め固有の識別情報が付与されている前記容器に収容する採取実行部と、
前記サンプルを収容した前記容器から前記識別情報を取得する識別情報取得部と、
前記サンプルを採取した採取時刻に関する採取時刻情報と、前記サンプルを収容した前記容器の前記識別情報とを含む採取完了情報を出力する完了報告出力部と、を備える、
採取装置。
【請求項2】
前記容器を撮像可能なカメラと、
前記カメラによる撮像を制御する撮像制御部と、をさらに備え、
前記撮像制御部は、前記カメラにより、採取直前、採取中、および採取完了後の少なくともいずれかにおける前記容器を撮像する、
請求項1に記載の採取装置。
【請求項3】
前記容器は、外部からの光を遮光した遮光部内に保持され、
前記撮像制御部は、前記カメラが前記容器を撮像するとき該容器を照らすように照明部を制御する、
請求項2に記載の採取装置。
【請求項4】
前記容器を撮像した撮像画像には、該容器に示されている前記識別情報が写っており、
前記識別情報取得部は、前記撮像画像を、前記容器の前記識別情報として取得する、
請求項2または3に記載の採取装置。
【請求項5】
前記サンプルは液体であり、
前記採取実行部は、共洗い動作を行った後に、前記サンプルの採取を開始する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の採取装置。
【請求項6】
前記対象から採取された前記サンプルが前記容器まで移動可能な移動路を備え、
前記移動路は、
前記対象側に位置し、前記サンプルを採取する第1端と、
前記容器側に位置し、採取された前記サンプルが該容器に向けて出る第2端と、を有しており、
前記移動路を移動する前記サンプルが下降した後に上昇する谷部を有さない、
請求項5に記載の採取装置。
【請求項7】
前記移動路のいずれかの位置において、該移動路を移動している前記サンプル中の気泡を検知する気泡検知部をさらに備える、
請求項6に記載の採取装置。
【請求項8】
前記採取実行部が前記移動路を前記サンプルで満たすために要する時間、または前記移動路を前記サンプルで満たすために要する前記サンプルの採取量を示す移動路特性を、前記対象に設置され、最初の前記採取指示を取得する前に計測する移動路特性計測部をさらに備え、
前記採取実行部は、前記採取指示に示された採取量に、計測された前記移動路特性の分を加えた量の前記サンプルを前記対象から採取することによって、該採取指示に示された採取量の前記サンプルを前記容器に収容する、
請求項6または7に記載の採取装置。
【請求項9】
第1の容器及び第2の容器を含む複数の前記容器を保持可能な容器保持部をさらに備え、
前記容器保持部は、収容位置において前記第1の容器に前記サンプルが収容された後に、前記第2の容器に前記サンプルが収容されるように前記収容位置に第2の容器を移動させる、
請求項1から8のいずれか1項に記載の採取装置。
【請求項10】
前記容器は、栓を取り付け可能であり、前記サンプルの分析に使用する機器に適用可能な透明または半透明の遠沈管である、
請求項1から9のいずれか1項に記載の採取装置。
【請求項11】
対象からサンプルを所定の容器に採取する採取装置に、前記サンプルを採取する採取指示を出力する指示出力部と、
前記採取装置によって前記サンプルが採取された採取時刻に関する採取時刻情報と、前記サンプルが収容された容器に予め付与されている識別情報とを含む採取完了情報を、該採取装置から取得する完了報告取得部と、
前記対象の位置を示す位置情報および前記採取装置に固有の採取装置IDの少なくともいずれかと、該採取指示に対応する前記採取完了情報とを互いに対応付けて記憶する管理部と、を備える、
管理システム。
【請求項12】
採取直前、採取中、および採取完了後の少なくともいずれかにおいて、前記容器が撮像された撮像画像から、該容器に示された前記識別情報を読み取る識別情報読み取り部をさらに備える、
請求項11に記載の管理システム。
【請求項13】
請求項1から10の何れか1項に記載の採取装置と、
請求項11または12に記載の管理システムと、
前記管理システムと通信可能な遠隔端末と、
を備える、
採取システム。
【請求項14】
対象からサンプルを所定の容器に採取する採取装置と、該採取装置と通信可能に接続されている管理システムと、前記管理システムと通信可能な遠隔端末とを備える採取システムの制御方法であって、
前記遠隔端末から取得した、前記サンプルの採取を指示する採取指示を、前記管理システムから前記採取装置へ出力する採取指示ステップと、
前記採取指示に応じて、前記採取装置が、予め固有の識別情報が付与されている容器に前記サンプルを採取する採取実行ステップと、
前記採取装置から前記管理システムへ、前記サンプルを採取した採取時刻に関する採取時刻情報と、前記サンプルを収容した容器から取得された前記識別情報とを含む採取完了情報を出力する完了報告ステップと、
前記管理システムが、前記対象の位置を示す位置情報および前記採取装置に固有の採取装置IDの少なくともいずれかと、該採取指示に対応する前記採取完了情報とを互いに対応付けて記憶する管理ステップと、を含む、
採取システムの制御方法。
【請求項15】
請求項14に記載の採取システムの制御方法をコンピュータに実行させるための制御プログラムであって、前記採取装置に前記採取実行ステップおよび前記完了報告ステップを実行させ、前記管理システムに前記採取指示ステップおよび前記管理ステップを実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象からサンプルを採取する採取装置、採取装置を管理する管理システム、採取システム、採取システムの制御方法、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象を調査・監視する場合、定期的に対象からサンプルが採取され、採取されたサンプルが分析される。従来、対象からサンプルを採取する担当者が、定期的に対象まで出向き、サンプルを容器に採取し、採取場所および採取日時を記録している。
【0003】
例えば、サンプルを採取する採取装置を遠隔操作する技術が知られている。対象が上水設備である場合の例として、特許文献1には、互いに離れた複数の上水設備における上水の水質を一括して監視するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-060363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象の数が多い場合、あるいは対象が遠く離れている場合には、採取装置を遠隔操作できたとしても、採取装置によるサンプル採取動作の監視、および採取されたサンプルの管理には労力を要する。また、例えば、採取場所および採取日時を記録したり、採取場所および採取日時とサンプルを収容した容器とを照合したりするときには、人為的なミスが発生しやすい。
【0006】
本発明の一態様は、採取装置によるサンプル採取動作の監視、および採取したサンプルの管理が容易な採取装置、管理システム、採取システム、および採取システムの制御方法等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る採取装置は、対象からサンプルを所定の容器に採取する採取装置であって、前記サンプルの採取を指示する採取指示を取得する指示取得部と、前記採取指示に応じて、前記対象から採取した前記サンプルを、予め固有の識別情報が付与されている前記容器に収容する採取実行部と、前記サンプルを収容した前記容器から前記識別情報を取得する識別情報取得部と、前記サンプルを採取した採取時刻に関する採取時刻情報と、前記サンプルを収容した前記容器の前記識別情報とを含む採取完了情報を出力する完了報告出力部と、を備える。
【0008】
また、本発明の態様2に係る管理システムは、対象からサンプルを所定の容器に採取する採取装置に、前記サンプルを採取する採取指示を出力する指示出力部と、前記採取装置によって前記サンプルが採取された採取時刻に関する採取時刻情報と、前記サンプルが収容された容器に予め付与されている識別情報とを含む採取完了情報を、該採取装置から取得する完了報告取得部と、前記対象の位置を示す位置情報および前記採取装置に固有の採取装置IDの少なくともいずれかと、該採取指示に対応する前記採取完了情報とを互いに対応付けて記憶する管理部と、を備える。
【0009】
本発明の態様3に係る採取システムは、上記態様1に係る採取装置と、上記態様2に係る管理システムと、前記管理システムと通信可能な遠隔端末とを備える。
【0010】
本発明の態様4に係る制御方法は、対象からサンプルを所定の容器に採取する採取装置と、該採取装置と通信可能に接続されている管理システムと、前記管理システムと通信可能な遠隔端末とを備える採取システムの制御方法であって、前記遠隔端末から取得した、前記サンプルの採取を指示する採取指示を、前記管理システムから前記採取装置へ出力する採取指示ステップと、前記採取指示に応じて、前記採取装置が、予め固有の識別情報が付与されている容器に前記サンプルを採取する採取実行ステップと、前記採取装置から前記管理システムへ、前記サンプルを採取した採取時刻に関する採取時刻情報と、前記サンプルを収容した容器から取得された前記識別情報とを含む採取完了情報を出力する完了報告ステップと、前記管理システムが、前記対象の位置を示す位置情報および前記採取装置に固有の採取装置IDの少なくともいずれかと、該採取指示に対応する前記採取完了情報とを互いに対応付けて記憶する管理ステップと、を含む。
【0011】
本発明の各態様に係る採集システムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記採取システムが備える採取装置および管理システムの各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記採取システムをコンピュータにて実現させる制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、採取装置によるサンプル採取動作の監視、および採取したサンプルの管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1に係る採取システムの概略構成を示す構成図である。
図2】採取装置の全体構成の一例を示す斜視図である。
図3】容器ホルダの後部の構成の一例を示す斜視図である。
図4】ホルダ台の構成の一例を示す図である。
図5】採取装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図6】管理システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図7】採取システムが実行する処理の一例を示すシーケンス図である。
図8】遠隔端末の表示部に表示される、採取指示の入力を受け付ける画面例である。
図9】採取指示のデータ構造の一例を示す図である。
図10】採取完了情報データベースのデータ構造の一例を示す図である。
図11】容器の構成の一例を示す図である。
図12】遠隔端末の表示部に表示される、採取完了情報を表示する表示画面の一例を示す図である。
図13】移動路の配設例を示す模式図である。
図14】共洗い動作の一例を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施形態2に係る採取装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図16】本発明の実施形態3に係る採取装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1から図14を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(採取システム100の適用範囲)
まず、本発明の一態様に係る採取システム100の適用範囲について説明する。採取システム100は、例えば、対象からサンプルを採取する採取装置1によるサンプル採取動作の監視、および、採取されたサンプルの管理を容易化することが可能なシステムである。
【0016】
ここで、「対象」とは、分析用の液体または気体のサンプルを採取する対象となる場所および施設等を意図している。例えば、以下に挙げる場所および施設等が「対象」となり得る。
【0017】
・下水処理場、下水を貯留する設備、およびマンホール下の導水管(採取されるサンプルの例:下水、気体等)
・河川、池、湖、および各種水路(採取されるサンプルの例:水、周囲の空気)
・海岸、港湾(採取されるサンプルの例:海水)
・各種製品を製造する工場等の施設(採取されるサンプルの例:中間製品、廃液、排出される気体等)
・施設または家屋内の空間(採取されるサンプルの例:空気)
・各種貯留タンク、反応容器、混合容器、および培養容器(採取されるサンプルの例:反応液、培養液、内部ガス等)
例えば、病原性のウイルスおよび細菌等に感染した感染者の糞便には、当該ウイルスおよび細菌が含まれている場合がある。例えば、地域毎の下水処理場からサンプル(すなわち下水)を採取して、サンプルに含まれる遺伝子を抽出・解析すれば、感染者数が多い地域を特定することが可能である。また、定期的に採取したサンプルを分析すれば、各地域における感染者数の推移を監視することも可能となる。
【0018】
また、例えば、工場等の施設の排気口からサンプル(すなわち排気)を採取して、サンプルに含まれる成分を解析すれば、排気が環境および生物(例えば健康状態)に及ぼす影響を評価・監視することが可能である。
【0019】
以下では、下水処理施設(対象)からサンプル(例えば、下水)を採取する採取装置1を備える採取システム100を例に挙げて説明する。
【0020】
(採取システム100の構成)
まず、採取システム100の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る採取システム100の概略構成を示す構成図である。
【0021】
採取システム100は、対象に設置され、対象からサンプルを採取する装置である採取装置1、および管理システム9を備えている。管理システム9は、これに限定されるものではないが、クラウドシステムであってもよい。管理システム9は、採取装置1への採取指示の出力、および採取装置1からの採取完了情報の取得を行い、採取装置1によるサンプル採取動作の監視および採取されたサンプルの管理を行うシステムである。
【0022】
採取システム100は、遠隔端末5を備えていてもよい。遠隔端末5は、採取システム100を利用する管理者が使用するコンピュータである。管理者は、採取装置1が設置されている対象から、および、採取装置1が設置された対象から遠く離れた遠隔地から、遠隔端末5を用いて採取システム100にアクセス可能である。遠隔端末5は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等であってもよい。遠隔端末5は、通信機能を有しており、管理システム9へ採取指示を登録したり、採取完了情報を閲覧したりすることが可能である。遠隔端末5は、例えば、キーボード、タッチパネル、およびマイク等の入力部、およびモニタ等の表示部等を有していてもよい。
【0023】
採取システム100において、採取装置1と管理システム9、および遠隔端末5と管理システム9は、互いに通信可能に接続されている。また、遠隔端末5は、管理システム9を介して、採取装置1と通信可能に接続され得る。例えば、管理システム9は、図1に示すように、通信ネットワークを介して、複数の採取装置1(採取装置1a、1b、1c・・・)および複数の遠隔端末5(遠隔端末5a、5b、・・・)と通信可能に接続されていてもよい。管理システム9と採取装置1、および、管理システム9と遠隔端末5は無線通信で接続されていてもよいし、有線通信で接続されていてもよい。
【0024】
採取システム100において、図1に示すように、採取装置1a、1b、1c、・・・がそれぞれ別の下水処理施設に設置されており、各採取装置1が各下水処理施設から下水を採取する構成であってもよい。しかし、採取システム100は、このような構成に限定されない。例えば、採取システム100において、管理システム9は、液体を採取する採取装置1aと気体を採取する採取装置1bとを同時に管理可能である。この場合、例えば、管理システム9は、(i)下水処理施設に設置されており、該下水処理施設から下水を採取する採取装置1a、および、(ii)施設または家屋内の空間に設置されており、該空間の空気を採取する採取装置1b、と通信可能に接続されていればよい。
【0025】
(採取装置1の外観)
次に、採取装置1の外観について、図2を用いて説明する。図2は、採取装置1の全体構成の一例を示す斜視図である。図2は、採取装置1を正面上方から見た様子を示している。
【0026】
採取装置1は、筐体C、扉部D、容器保持部32、ポンプ31、および移動路Pを備えている。なお、採取装置1には、各機能の処理を実行するように制御する制御部10が内蔵されている(図3参照)。制御部10については後に説明する(図5参照)。
【0027】
筐体Cには、採取装置1によるサンプル採取動作およびデータ通信を制御する制御部10、および採取動作に伴い駆動する各種構成(例えば、ポンプ31等)が配置されている。筐体Cは、採取装置1の制御部10、各種構成を、該採取装置1が設置された対象において保護する。なお、対象の中には採取装置1を戴置するために適した場所が無い場合がある。例えば、マンホール下の導水管から下水を採取するための採取装置1は、導水管を流れる下水の上方(すなわち、マンホール蓋の裏側)に紐または鎖によって吊るされて設置され得る。この場合、筐体Cの上面中央に、紐または鎖を通したり、フック(鉤)をひっかけたりすることが可能な取っ手部が設けられていてもよい。
【0028】
扉部Dは、開閉可能に筐体Cに取り付けられている。扉部Dは、サンプルを収容する容器Tまたは容器ホルダHを採取装置1に設置する場合、および、サンプルを収容した容器Tおよび容器ホルダHを採取装置1から取り出す場合に開けられる。図2図4は、扉部Dが開けられた状態の採取装置1を示している。
【0029】
扉部Dが閉じられた場合、容器Tおよび容器ホルダHは、筐体Cおよび扉部Dに囲まれた空間に保持されるため、容器Tに収容されたサンプル内への意図しない異物の混入を抑制することができる。また、サンプルを収容している容器Tが風雨に晒されることなく保持され得る。それゆえ、容器Tからのサンプルの蒸発量を低減することも期待できる。
【0030】
対象から採取されたサンプルには、光によって変質したり分解したりする成分が含まれる場合がある。このような不安定な成分を含むサンプルを採取する採取装置1の筐体Cおよび扉部Dは遮光性を有していてもよい。これにより、外部からの光を遮光した遮光部内に、容器Tに収容されたサンプルを保持することができる。ここで、遮光部とは、遮光性を有する筐体Cおよび遮光性を有する扉部Dによって囲まれた空間である。
【0031】
容器保持部32は、容器ホルダHおよびホルダ台Bを備えていてもよい。容器ホルダHは、1または複数の容器Tを保持可能である。図2では、6本の容器Tを保持している容器ホルダHを適用した場合を示している。容器Tには、各容器に固有の識別情報である容器情報T1(識別情報)が付与されている。容器情報T1は、各容器Tに添付または表示されていてもよい。容器情報T1は、例えば、QRコード(登録商標)、バーコード、公知の光学的文字認識(OCR)機能により読み取り可能な文字列等であってもよい。あるいは、容器情報T1は、RFID等であってもよい。以下では、各容器Tに、容器情報T1が予め添付されている場合を例に挙げて説明する。例えば、容器情報T1が添付された空の容器Tを容器ホルダHにセットする場合、容器情報T1が一定の方向に向くようにセットされ得る。図2では、容器ホルダHにセットされた容器Tの容器情報T1が容器ホルダの半径方向外向きに向けられている様子が示されている。容器T毎に予め付与されている容器情報T1については後に説明する(図11参照)。
【0032】
容器ホルダHは、ホルダ台Bに戴置される。容器ホルダHが複数の容器Tを保持可能である場合、容器保持部32は、収容位置において第1の容器にサンプルが収容された後に、第2の容器にサンプルが収容されるように収容位置に第2の容器を移動させてもよい。ここで、収容位置とは、サンプルを容器Tに収容可能な位置を意図している。図2に示す例において、収容位置とは、後述の移動路Pの第2端P2から出たサンプルを収容可能な位置である。
【0033】
移動路Pの第2端P2の位置が固定されている場合には、容器保持部32は、容器ホルダHが動くことによって各容器Tの位置を変更する構成であってもよい。図2に示す例では、移動路Pの第2端P2の位置は固定されており、容器ホルダHの方が時計回りまたは反時計回りに回転可能であってもよい。この容器ホルダHの回転には、公知の駆動機構(例えば、モータ等)が適用され得る。容器保持部32は、この駆動機構を備えていてもよい。例えば、容器ホルダHが容器Tを一列に保持する場合には、容器ホルダHをスライド移動させる構成であってもよい。
【0034】
他方、容器ホルダHが可動ではなく、各容器Tの位置が固定されている場合には、容器保持部32は、移動路Pの第2端P2の方を、各容器Tに対応する位置に移動させる構成であってもよい。この場合、第2端P2が複数存在していてもよい。例えば、複数の第2端P2のそれぞれから別の容器Tにサンプルを収容する構成であってもよい。2本の容器Tに同時にサンプルを収容した場合、一方の容器Tのサンプルを分析用サンプルとし、他方の容器Tのサンプルを予備用(あるいは再分析用)サンプルとすることができる。
【0035】
なお、第2端P2を各容器Tに対応する位置に移動させる構成よりも、図2に示すように、容器ホルダHを時計回りまたは反時計回りに回転させる構成の方が、よりコンパクトな採取装置1を実現することが容易である。なぜならば、前者の場合、採取装置1の遮光部内において、第2端P2を各容器Tに対応する位置に移動させるための空間を確保しなければならないからである。
【0036】
ポンプ31は、サンプルを対象から移動路P内に入れたり、サンプルを移動路P内から移動路P外へ出したりすることが可能である。移動路Pとしては、シリコーン製等の軟質性チューブが適用され得る。この場合、ポンプ31としては、ペリスタポンプ(登録商標)が採用され得る。ペリスタポンプを採用した採取装置1は、液体のサンプル、および気体のサンプルを採取可能である。また、ペリスタポンプを採用した採取装置1は、対象から移動路P内に入ったサンプルを該対象に戻すことも可能である。この動作は、移動路P内を共洗いする場合に利用される。採取装置1の共洗い動作については後に説明する。
【0037】
移動路Pは、対象側に位置し、サンプルを採取する第1端P1と、容器T側に位置し、採取されたサンプルが容器Tに向けて出る第2端P2とを有する。移動路Pは、第1端P1から第2端までサンプルが円滑に移動可能な経路となるように配設される。例えば、移動路P内に以前に採取されたサンプルが大量に残存していると、新たに採取されるサンプルと古いサンプルとが混ざってしまう。このようなことを回避できるように、筐体Cにおける移動路Pを配設することが望ましい。筐体Cにおける移動路Pの配設様式については、後に説明する(図13参照)。
【0038】
複数の対象のそれぞれに採取装置1を設置する必要があるため、設置装置1の製造コストは低い方が望ましい。そこで、採取装置1の筐体C、扉部D、容器ホルダH、ホルダ台B等は、3Dプリンタを用いて製造可能であってもよい。これにより、採取装置1の小型化を実現しつつ、製造コストを軽減することができる。
【0039】
対象によっては、採取装置1を設置するためのスペースが十分に確保されるとは限らないため、採取装置1は可能な限り軽量かつコンパクトであることが望ましい。そこで、採取装置1は、対象からサンプルを採取するために必須ではない機能を省略して、必須の機能のみを有するように構成されていてもよい。例えば、筐体Cおよび扉部Dは、必要最小限の強度および防水機能を有していてもよい。これにより、採取装置1の軽量化が達成され得る。
【0040】
近年、高感度な分析手法が適用されるようになったため、分析に必要なサンプル量は従来に比べて少なくなっている。分析に供するために必要な量のサンプルを対象から採取できれば良く、必要な量以上のサンプルを採取しても無駄である。そこで、採取装置1は、分析に供する量のサンプルを収容可能な容器Tにサンプルを収容する構成であってもよい。この場合、採取するサンプルの量が少ないため、採取したサンプルを収容する容器Tのサイズも小さい。これにより、採取装置1の軽量化およびコンパクト化が達成され得る。容器Tについては、後に具体例を挙げて説明する(図11参照)。
【0041】
次に、容器ホルダHの後部の構成について、図3を用いて説明する。図3は、容器ホルダHの後部の構成の一例を示す斜視図である。図3は、図2の採取装置1の容器ホルダHを取り外したときに様子を、正面上方から見た図である。
【0042】
図3に示すように、筐体Cには、容器ホルダHにセットされた容器Tを撮像可能なカメラ331が備えられている。カメラ331は、採取直前、採取中、および採取完了後の少なくともいずれかにおける容器Tを撮像することが可能である。カメラ331は、例えば、スチルカメラ(still camera)である。カメラ331は、例えば、デジタルカメラであってもよい。
【0043】
容器Tを撮像した撮像画像には、該容器Tに示されている容器情報T1が写っていてもよい。この場合、採取システム100は、カメラ331によって撮像された容器Tの撮像画像自体を識別情報として用いる構成を採用してよいし、撮像画像から容器情報T1を読み取る構成を採用してもよい。
【0044】
ここで、容器Tが円筒形状である場合、容器情報T1は曲面に添付されることとなるため、撮像画像に写る容器情報T1は歪んでおり、そのままでは読み取れない場合が想定され得る。また、容器ホルダHにセットされた容器Tが所定の向きからずれている場合、容器情報T1が歪んで写ることが想定され得る。そこで、採取システム100は、撮像画像に写る容器情報T1に対して画像処理を行い、処理後の撮像画像から容器Tの容器情報T1を読み取る構成であってもよい。ここで、画像処理としては、公知の幾何学歪補正処理(例えば、曲率補正処理等)が適用され得る。この構成を採用すれば、採取システム100は、容器Tの容器情報T1を撮像画像から精度良く読み取ることができる。
【0045】
また、容器Tを撮像した撮像画像には、移動路Pの第2端P2、および該容器Tに収容されたサンプルの液面等が写っていてもよい。この場合、カメラ331によって撮像された容器Tの撮像画像から、サンプルの採取状況および採取されたサンプル量を確認する構成を採用してもよい。ここで、サンプルの採取状況とは、例えば、未採取、採取済等を意図している。
【0046】
カメラ331は、動画撮影が可能であってもよい。例えば、カメラ331によって撮像された動画には、容器ホルダHの動作、サンプル採取中の様子が写っていてもよい。この場合、カメラ331によって撮像された動画によって、サンプル採取動作、および移動路Pの第2端P2から出ているサンプルの様子等を監視することができる。
【0047】
採取装置1の筐体Cおよび扉部Dが遮光性を有している場合、扉部Dが閉じられると、容器ホルダHは遮光された空間(前述の遮光部)に存在することになる。この構成によって、カメラ331による容器Tの撮像が外部の光によって乱されることを防ぐことができる。しかし、容器Tを撮像するためには、容器Tを照らす照明が必要である。そこで、筐体Cには、図3に示すように、カメラ331が容器Tを撮像するときに撮像対象の容器Tを照らす照明部332a、332bが設けられていてもよい。この場合、カメラ331および照明部332a、332bは、採取装置1の撮像部33を構成する。
【0048】
容器Tに照明を当ててカメラ331にて撮像した場合、光の反射具合によっては、容器Tの容器情報T1が読み取れなかったり、容器T内のサンプルの液面が見にくくなったりするという問題が発生し得る。このような場合、容器Tを照らす光の方向を変更したり、光の強度を調節したりすることによって、これらの問題を解消することが可能である。そこで、採取装置1は、複数の照明部332a、332bを備えていてもよい。図3には、2つの照明部(照明部332a、332b)を備える場合が示されている。照明部332aは、筐体Cの天井部分に設けられ、上方から容器Tを照らすことが可能であり、照明部332bは、カメラ331よりも下方に設けられ、下方から容器Tを照らすことが可能である。採取装置1は、カメラ331によって容器Tを撮像する場合、照明部332aおよび照明部332bの少なくともいずれかから容器Tを照らすことが可能であってもよい。この構成を採用すれば、採取システム100は、容器情報T1の読み取り処理、および容器Tに収容されているサンプルの液面の位置に基づく水位検出処理を失敗する確率を低減させることができる。なお、照明部の数および各照明部の配置は、適宜変更可能であり、これに限定されない。
【0049】
なお、採取装置1は、水位検出処理のための測距センサを備えていてもよい。このような測距センサとしては、例えば、TOF(Time of Fright)センサ(図示せず)が適用され得る。TOFセンサは、収容位置の容器Tに向けて超音波や赤外線レーザーをパルス投光する出射部と、超音波や赤外線レーザーを受光する受光素子とを備えている。TOFセンサは、超音波や赤外線レーザーが出射されてから測定対象物(例えば、液面)において反射して受光素子に戻ってくるまでに要した時間を計測する。TOFセンサは、計測された時間と、超音波や赤外線レーザーの速度とに基づいて、測定対象物までの距離を算出し、出力する。容器T内のサンプルの水位検出のためにTOFセンサを用いる場合、TOFセンサを、筐体Cの天井の、収容位置に対応する位置に設置すればよい。これにより、TOFセンサは、容器T内の液面に向けて超音波や赤外線レーザーを出射することが可能である。採取装置1は、TOFセンサから出力される距離に基づいて、容器T内のサンプルの液面の位置を特定し、水位検出処理を実行することができる。
【0050】
続いて、ホルダ台Bの構成について、図4を用いて説明する。図4は、ホルダ台Bの構成の一例を示す図である。図4は、図3の採取装置1を、上方から見た図である。
【0051】
採取装置1のサンプル採取動作に異常が発生した場合、容器Tに向けて収容可能量を超えるサンプルが出され、容器Tからサンプルが溢れるという事象が発生するかもしれない。あるいは、容器Tが収容位置に無いときに第2端P2からサンプルが出るという事象が発生するかもしれない。あるいは、地震等によって、容器T内のサンプルが容器Tからこぼれるという事象が発生するかもしれない。このような事象が発生すると、採取装置1の内部が、サンプルによって汚染されてしまう。そこで、採取装置1のホルダ台Bの上面には、容器Tから溢れたり、こぼれたりしたサンプルの流路となる溝B1および貫通孔B2が設けられている。
【0052】
溝B1は、ホルダ台Bの上面に設けられた凹部であり。容器ホルダHに保持される各容器Tに対応する位置に設けられている。一方、貫通孔B2は、溝B1の底部からホルダ台Bの下面へと通している穴である。それゆえ、溝B1に到達したサンプルは、貫通孔B2から採取装置1外へ出ることが可能である。この構成を採用することにより、採取装置1は、内部が、こぼれたり、溢れたりしたサンプルによって汚染されてしまうことを回避することができる。
【0053】
(採取装置1の概略構成)
次に、採取装置1の概略構成について、図5を用いて説明する。図5は、採取装置1の概略構成の一例を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、既に説明した部材と同じ部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0054】
採取装置1は、制御部10、記憶部20、およびポンプ31を備えている。また、採取装置1は、容器保持部32および撮像部33をさらに備えていてもよい。制御部10は、例えばMCU(Micro Controller Unit:マイコン)であり、採取装置1が備える各機能の処理を実行するように制御する。記憶部20は、制御部10によって読み出される各種コンピュータプログラム、および、制御部10が実行する各種処理において利用されるデータ等が格納されている記憶装置である。記憶部20は、採取装置1によるサンプル採取の履歴を示す採取履歴21を含んでいる。なお、以下では、採取装置1が、管理システム9から取得した採取指示に応じてサンプルを採取する構成に着目して説明するが、採取装置1は、採取指示の入力操作を受け付ける入力部(図示せず)を備えていてもよい。これにより、管理者は、採取指示を対象に設置された採取装置1に直接入力することができる。
【0055】
制御部10は、指示取得部11、採取実行部12、識別情報取得部13、および完了報告出力部15を備えている。
【0056】
指示取得部11は、採取指示を管理システム9から取得する。採取指示は、遠隔端末5を用いて管理システム9に入力され得る。採取指示のデータ構造については、後に説明する(図8参照)。
【0057】
採取実行部12は、採取指示に応じて、対象から採取したサンプルを、予め固有の容器情報T1が付与されている容器Tに収容する。すなわち、容器情報T1は、容器T毎に、サンプルが収容される前から付与されている。例えば、採取実行部12は、容器保持部32の駆動機構を制御して、容器Tを収容位置に移動させる。容器Tの収容位置への移動が完了すると、続いて、採取実行部12は、ポンプ31を制御して、収容位置の容器T内へ対象からサンプルを移動させる。
【0058】
識別情報取得部13は、サンプルを収容した容器Tから容器情報T1を取得する。識別情報取得部13は、カメラ331によって撮像された撮像画像に容器情報T1が写っている場合、該撮像画像を取得する構成であってもよい。あるいは、識別情報取得部13は、容器情報T1を読み取り可能な読取装置(図示せず)によって読み取られた、各容器Tに付与された識別情報を、該読取装置から取得してもよい。なお、読取装置とは、例えば、QRコードリーダおよびバーコードリーダ等であってもよい。
【0059】
完了報告出力部15は、サンプルを採取した採取時刻に関する採取時刻情報と、サンプルを収容した容器Tの識別情報とを含む採取完了情報を出力する。例えば、完了報告出力部15は、採取実行部12から、サンプルの採取が完了した旨の信号を取得し、また、完了報告出力部15は、識別情報取得部13から、サンプルを収容した容器Tの識別情報を取得する。完了報告出力部15は、採取完了情報を生成し、管理システム9に出力する。採取完了情報は、採取履歴21として記憶部20に格納される。採取完了情報については、後に説明する(図10参照)。
【0060】
カメラ331を備える採取装置1の場合、制御部10は、カメラ331による撮像を制御する撮像制御部14を備えている。採取装置1が照明部332a、332bも備える場合、制御部10は、カメラ331が容器Tを撮像するときに照明部332a、332bの少なくともいずれかによって容器Tが照らされるように制御する。
【0061】
(管理システム9の概略構成)
続いて、管理システム9の概略構成について、図6を用いて説明する。図6は、管理システム9の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0062】
管理システム9は、制御部90および記憶部60を備えている。
【0063】
制御部90は、例えばCPUであり、管理システム9が備える各機能の処理を実行するように制御する。制御部90は、指示出力部91、完了報告取得部92(読み取り部)、および管理部93を備えている。
【0064】
記憶部60は、制御部90によって読み出される各種コンピュータプログラム、および、制御部90が実行する各種処理において利用されるデータ等が格納されている記憶装置である。記憶部60は、採取指示61、位置情報62、および採取完了情報データベース63を含んでいる。
【0065】
採取指示61には、遠隔端末5によって入力された、採取装置1への採取指示が、指示対象である採取装置1毎に記憶されている。位置情報62は、対象の位置(すなわち、採取装置1が設置されている位置)を示す情報である。採取装置1のそれぞれには固有の識別情報である採取装置IDが付与されており、採取装置IDは、該採取装置1が設置された位置を示す位置情報62と対応付けられる。採取完了情報データベース63には、採取装置1から取得した採取完了情報と、対象の位置を示す位置情報または採取装置IDとが互いに対応付けられた情報が記憶されている。
【0066】
指示出力部91は、対象からサンプルを所定の容器Tに採取する採取装置1にサンプルを採取する採取指示を出力する。
【0067】
完了報告取得部92は、採取装置1によってサンプルが採取された採取時刻に関する採取時刻情報と、サンプルが収容された容器Tに予め付与されている識別情報とを含む採取完了情報を、採取装置1から取得する。完了報告には、採取直前、採取中、および採取完了後の少なくともいずれかにおいて、容器Tが撮像された撮像画像が含まれている場合、完了報告取得部92は、容器Tに示された識別情報を読み取る読み取り部としての機能を有していてもよい。
【0068】
管理部93は、対象の位置を示す位置情報または採取装置1に固有の採取装置IDを、採取指示に対応する採取完了情報と互いに対応付けて、採取完了情報データベース63に記憶する。
【0069】
管理システム9は、遠隔端末5に、採取指示の入力を促す表示画面を提供可能であってもよい。また、管理システム9は、遠隔端末5からの閲覧要求に応じて、採取完了情報データベース63に記憶された情報を含む表示画面を、要求元の遠隔端末5に提供してもよい。遠隔端末5の表示部に表示される、採取指示の入力を受け付ける表示画面、および採取完了情報を表示する表示画面については後に具体例をあげて説明する。
【0070】
(採取システム100の処理フロー)
次に、採取システム100の処理フローについて、図8図12を参照しつつ、図7を用いて説明する。図7は、採取システム100の採取装置1および管理システム9の処理の流れを示すシーケンス図である。
【0071】
図7において、まず、管理システム9は、管理者によって入力された採取指示を採取装置1に出力する(ステップS91:採取指示ステップ)。入力された採取指示は、指示対象である採取装置1毎に、採取指示61に記憶されてもよい。
【0072】
<採取指示の入力を受け付けるための画面表示>
図8は、遠隔端末5の表示部に表示される、採取指示の入力を受け付ける画面例である。採取指示は、採取装置1毎に設定され得る。そこで、採取指示の入力を受け付ける画面には、図8に示すように、採取装置IDが表示される欄R1、採取日を入力させる欄R2、採取時刻を入力させる欄R3、および採取量を入力させる欄R4が含まれていてもよい。また、採取装置IDに対応する、採取装置1が設置されている位置を示す位置情報(例えば、「施設Xからの下水路」等)が表示されていてもよい。
【0073】
図8に示すように、欄R5が設けられていてもよく、この欄R5には、下記のような情報が表示されてもよい。
・採取装置1が設置されている位置を示す地図
・欄R1に表示された採取装置IDが付与されている採取装置1の仕様および機能に関する情報
・過去に入力された採取指示のリスト
欄R1~R5を表示することによって、管理者の採取指示の入力を支援し、採取指示を誤りなく入力させることができる。遠隔端末5において入力された採取指示は、管理システム9に送信される。
【0074】
<採取指示61のデータ構造>
図9は、採取指示61のデータ構造の一例を示す図である。採取指示61には、図9に示すように、採取装置ID、採取日、採取時刻、および採取量が互いに関連付けられて記憶されている。
【0075】
図9には、採取装置ID[xxxxx]が付与された採取装置1、および採取装置ID「yyyyy」が付与された採取装置1に対する採取指示が示されている。例えば、採取装置ID[xxxxx]が付与された採取装置1に対しては、「毎日」、「9:00」および「15:00」に「50mL」のサンプルを採取することが指示されている。また、採取装置ID[yyyyy]が付与された採取装置1に対しては、「毎週月曜日」に、「7:00」および「17:00」に「100mL」、「12:00」に「50mL」のサンプルを採取することが指示されている。
【0076】
図7に戻り、採取装置1は、採取指示を取得する(ステップS11)。そして、採取装置1は、収容位置の容器Tを、カメラ331によって撮像する(ステップS12)。もし、収容位置に容器Tが無い場合、採取装置1は、収容位置に容器Tが位置するまで容器ホルダHを移動させる。
【0077】
次に、採取装置1は、取得した採取指示に応じて、予め固有の識別情報が付与されている容器Tにサンプルを採取する(ステップS13:採取実行ステップ)。
【0078】
続いて、採取装置1は、サンプルを採取した採取時刻に関する採取時刻情報と、サンプルを収容した容器Tから取得された識別情報とを含む採取完了情報を管理システム9に出力する(ステップS14:完了報告ステップ)。
【0079】
管理システム9は、採取完了情報を取得し(ステップS92)、対象の位置を示す位置情報または採取装置ID、および採取指示に対応する採取完了情報を互いに関連付けて採取完了情報データベース63に記憶する(ステップS93:管理ステップ)。
【0080】
<採取完了情報データベース63のデータ構造>
図10は、採取完了情報データベース63のデータ構造の一例を示す図である。採取完了情報データベース63には、図10に示すように、採取装置ID、採取開始時刻、および識別情報が互いに関連付けられて記憶されている。
【0081】
図10には、採取装置ID[xxxxx]が付与された採取装置1、および採取装置ID「yyyyy」が付与された採取装置1から取得した採取完了情報が示されている。例えば、採取装置ID[xxxxx]が付与された採取装置1からは、「9:00」および「15:00」に採取が開始されたこと、および識別情報が取得されている。識別情報として、サンプルを収容した容器Tの容器情報T1をカメラ331が撮像した撮像画像データが取得されている。
【0082】
なお、採取装置1が、サンプル採取動作における異常発生の有無を示す情報を、採取完了情報の代替、または採取完了情報に添付して出力する構成であってもよい。サンプル採取動作に異常が発生していないことを示す情報を取得した場合、図10に示すように、採取完了情報データベース63の備考として「OK」が入力される。一方、サンプル採取動作に異常が発生したことを示す情報を取得した場合には、「!」が入力される。例えば、備考に「!」が入力されている場合、採取完了情報を表示する表示画面において、管理者に知らせるメッセージ等が表示される構成であってもよい。なお、採取動作に異常が発生した場合、採取システム100は、異常発生を知らせる通知を遠隔端末5に送信する構成であってもよい。異常発生を知らせる通知は、電子メールとして送信されてもよいし、ソーシャルネットワーキングサービスを用いたメッセージとして送信されてもよい。異常発生を知らせる通知は、例えば、管理システム9から遠隔端末5に送信され得る。
【0083】
<容器Tに固有の識別情報>
ここで、容器Tの構成について、図11を用いて説明する。図11は、容器Tの構成の一例を示す図である。図11には、サンプルを収容した容器Tを示している。
【0084】
容器Tには、予め個別の容器情報T1が付与されている。図11では、容器情報T1がQRコードである場合を例に挙げて説明するが、これに限定されず、QRコード、バーコード、文字列表示、RFID等であってもよい。
【0085】
容器Tの開口部近傍には、雌ネジ部T2が設けられていてもよい。雌ネジ部T2は、所定の栓(図示せず)に設けられた雄ネジ部と螺合することが可能である。すなわち、容器Tは、雌ネジ部T2によって栓を取り付けて、収容したサンプルを中に密封することが可能であってもよい。
【0086】
容器Tは、サンプルの分析に使用する機器に適用可能な透明または半透明の遠沈管であってもよい。例えば、容器Tは、ポリプロピレン製またはポリスチレン製であってもよい。ここで、サンプルの分析に使用する機器とは、遠心分離器、振とう器、および攪拌機等を意図している。
【0087】
対象から採取したサンプルを収容するための容器Tと、サンプルを分析するために使用される分析用容器(図示せず)とが異なる場合、分析前にサンプルを移し替える必要がある。この移し替え作業は煩わしいばかりでなく、移し替えたサンプルの情報と移し替え作業に用いた分析用容器とを正確に記録しなければならないため人為的なミスが発生しやすい。採取装置1は、分析に使用可能な遠沈管等を容器Tとして用いるため、サンプルを移し替える必要が無く、人為的なミスの発生リスクを低減させることができる。
【0088】
容器Tは、対象から採取するサンプルの物性に応じたものを採用してもよい。例えば、サンプルが気体および高揮発性の液体等である場合、気体および高揮発性の液体を密封した空間に収容可能な容器T(例えば、密栓を有する容器T)が採用され得る。例えば、密栓を有する容器Tを採用した場合、第2端P2に設けられた針が、収容位置の容器Tの密栓に設けられた穿刺可能部を貫通し、この針を介してサンプルが容器T内に収容される構成を採用すればよい。
【0089】
<採取完了情報を表示する表示画面>
図12は、遠隔端末5の表示部に表示される、採取完了情報を表示する表示画面の一例を示す図である。採取完了情報は、採取装置1毎に管理される。採取完了情報を表示する画面には、図12に示すように、採取装置IDが表示される欄R6、採取日が表示される欄R7、採取時刻が表示される欄R8、および採取量が表示される欄R9が含まれていてもよい。また、採取装置IDに対応する、採取装置1が設置されている位置を示す位置情報(例えば、「施設Xからの下水路」等)が表示されていてもよい。
【0090】
図12に示すように、採取完了情報に含まれている容器Tを撮像した撮像画像が表示される欄R10が設けられていてもよい。カメラ331によって撮像された容器Tの撮像画像には、容器情報T1に加え、収容しているサンプルの液面(例えば、メニスカス)も写っていてもよい。この場合、採取完了情報の表示を視認した管理者は、欄R10の画像に基づいて、サンプル採取動作が適正に行われたことを容易に確認することができる。
【0091】
採取完了情報を表示する表示画面において、サンプルを収容した容器Tを回収する回収時期に関する情報を表示してもよい。例えば、容器ホルダHにセットされている空の容器Tの数を表示してもよい。サンプルを収容した容器Tを前回回収してからの、採取完了情報取得回数を表示してもよい。この構成を採用すれば、サンプルを収容した容器Tを回収すべきタイミングを管理者に知らせることができる。
【0092】
対象の数が多い場合、あるいは対象が遠く離れている場合には、採取装置1によるサンプル採取動作の監視、および採取されたサンプルの管理には労力を要する。また、例えば、対象の位置および採取日時を記録したり、対象の位置および採取日時とサンプルを収容した容器Tとを照合したりする作業にはミスが発生しやすい。上記の構成を採用すれば、容器Tに予め付与された識別情報に基づいて、採取されたサンプルを、対象の位置、採取日時、サンプルを収容した容器Tと容易に対応付けて管理することができる。
【0093】
(変形例:容器Tを撮像した撮像画像から採取量判定を行う構成)
採取システム100は、容器Tを撮像した撮像画像から、容器Tの識別情報の読み取りに加え、サンプルの採取量の適否判定を行う構成を採用してもよい。例えば、採取装置1の識別情報取得部13、あるいは、管理システム9の完了報告取得部92が、容器Tを撮像した撮像画像から、収容されているサンプルの水位を検出して、採取量の適否判定を行う構成を採用してもよい。この構成を採用すれば、採取指示に応じて、正常にサンプル採取動作がなされたか否かを、採取装置1自身または管理システム9が自動判定することができる。
【0094】
(移動路Pの配設例)
次に、移動路Pの配列例について、図13を用いて説明する。図13は、移動路Pの配設例を示す模式図である。
【0095】
移動路Pは、対象から採取されたサンプルが容器Tまで移動するための通路となる管である。前述のように、移動路Pには、対象側に位置し、サンプルを採取する第1端P1と、容器T側に位置し、採取されたサンプルが容器Tに向けて出る第2端と、を有している。
【0096】
採取指示に応じて採取されるサンプルは、採取指示に設定された採取時刻の対象の状態を反映したサンプルを採取することが求められる。例えば、サンプルが液体である場合、採取装置1がポンプ31を駆動させると、サンプルが移動路P内を移動する。採取指示に設定された採取量のサンプルが容器Tに収容されると、採取装置1はポンプを停止し、サンプル採取動作を終了する。このとき、第1端P1から第2端P2までの間に、サンプルが下降した後に上昇する谷部が存在すると、この谷部にサンプルが集まり、滞留してしまう。移動路P内に滞留している古いサンプルは、採取指示に応じて採取されるサンプルの採取量における誤差の原因にもなり得る。
【0097】
そこで、採取装置1では、図13に示すように、移動路Pを移動するサンプルが下降した後に上昇する谷部(U字状、J字状の部分)を有さないように配設される。これにより、サンプル採取時に移動路P内に進入したサンプルは、移動路P内に滞留することなく対象に戻る。それゆえ、採取装置1が、採取指示に応じて新規にサンプルを採取する場合、移動路P内には古いサンプルが残存していない。したがって、採取装置1は、新規に採取するサンプルへの古いサンプルの混入、および採取量における誤差の発生を抑制することができる。
【0098】
(共洗い機能)
例えば、高感度分析に供する液体のサンプルを採取する場合、採取量は少なくてもよい。しかし、採取量が少ない場合、移動路Pに残る古いサンプルの混入による分析結果への影響は無視できない。そこで、採取装置1は、サンプル採取動作の前に、移動路Pを共洗いする共洗い動作を行ってもよい。このような採取装置1を採用した採取システム100の処理フローについて、図14を用いて説明する。図14は、採取システム100の採取装置1および管理システム9の処理の流れを示すシーケンス図である。なお、説明の便宜上、既に説明した処理と同じ処理については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0099】
図14において、採取装置1は、採取指示を取得し(ステップS11)、収容位置の容器Tを撮像すると(ステップS12)、採取実行部12が、共洗い動作を実行し(ステップS12a)、その後に容器Tにサンプルを採取する。
【0100】
採取指示を取得した採取装置1の採取実行部12は、まず、採取指示に設定された採取時刻の前に、ポンプ31を駆動させて、移動路P内を対象から採取した液体で満たす。その後、採取実行部12は、ポンプ31を逆方向に駆動させて、移動路P内を満たしていた液体を対象へ戻す。これを数回繰り返す動作が「共洗い動作」である。
【0101】
採取実行部12は、共洗い動作において、移動路Pの第2端P2からサンプルが出ないようにポンプ31を制御する。例えば、採取装置1は、第1端P1から第2端P2までの移動路Pを満たすために必要な液体の容量が予め設定されていてもよい。この場合、採取実行部12は、共洗い動作において駆動させるポンプ31を、移動路Pを満たすために必要な容量未満の液体が対象から移動路P内へ移動するように制御すればよい。あるいは、採取装置1は、第2端P2の近傍にセンサ(図示せず)を備えていてもよい。この場合、採取実行部12は、移動路Pを満たす液体が当該センサによって検知されたときに、ポンプ31を停止させて、逆方向に駆動させればよい。このように構成すれば、共洗い動作中に意図せずサンプルが容器T内に収容されることを回避することができる。
【0102】
〔実施形態2〕
対象から採取するサンプルが液体である場合、移動路Pに対象から移動したサンプルに気泡が混じる場合がある。移動路P内の気泡は、採取装置1が採取するサンプルの採取量に誤差をもたらす。そこで、採取装置1に、移動路Pにおける気泡を検知する機能を搭載してもよい。
【0103】
(採取装置1Aの構成)
気泡を検知する機能を備える採取装置1Aについて、図15を用いて説明する。図15は、本発明の実施形態2に係る採取装置1Aの概略構成の一例を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0104】
採取装置1Aは、制御部10A、記憶部20、ポンプ31、容器保持部32、および撮像部33に加え、気泡検知部34を備える。そして、制御部10Aは、指示取得部11、採取実行部12A、識別情報取得部13、撮像制御部14、および完了報告出力部15を備えている。
【0105】
気泡検知部34は、移動路Pのいずれかの位置において、移動路Pを移動しているサンプル中の気泡を検知する。より具体的には、気泡検知部34は移動路Pの第1端P1と第2端P2との間に設置され、移動路P内の液体が検出されない状態(すなわち、気泡)を検出する。気泡検知部34は、これに限定されるものではないが、超音波センサであってもよい。
【0106】
例えば、採取装置1Aにおいて、第1端P1から第2端P2までの移動路Pを満たすために必要な液体の容量が予め設定されている場合、採取実行部12Aは、採取指示に設定された採取量のサンプルを容器Tに収容するための時間だけポンプ31を駆動させる。気泡検知部34が気泡を検知している期間がある場合、採取実行部12Aは、その期間の長さだけポンプ31を駆動させる時間を長くすればよい。これにより、採取装置1Aは、気泡に影響されることなく、採取指示に設定された採取量のサンプルを容器Tに採取することができる。
【0107】
〔実施形態3〕
例えば、ポンプ31としてペリスタポンプを採用した場合、移動路Pの第1端P1と第2端P2との高低差、および、移動路Pの長さ等に応じて、移動路Pを移動するサンプルの流速が異なる。複数の対象にそれぞれ採取装置1を設置する場合、管理者は、第1端P1から第2端P2までの移動路Pを満たすために必要な液体の容量は、各採取装置1が設置された対象毎に調べて設定しなければならない。そこで、採取装置1に、第1端P1から第2端P2までの移動路Pを満たすために必要な液体の容量を自動で計測するキャリブレーション機能を搭載してもよい。
【0108】
キャリブレーション機能を備える採取装置1Bについて、図16を用いて説明する。図16は、本発明の実施形態3に係る採取装置1Bの概略構成の一例を示すブロック図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0109】
採取装置1Bは、制御部10B、記憶部20B、ポンプ31、容器保持部32、および撮像部33を備えている。そして、制御部10Bは、指示取得部11、採取実行部12B、識別情報取得部13、撮像制御部14、および完了報告出力部15に加え、移動路特性計測部16をさらに備えている。移動路特性計測部16は、採取実行部12Bが移動路Pをサンプルで満たすために要する時間、または移動路Pをサンプルで満たすために要するサンプルの採取量を示す移動路特性を、対象に設置され、最初の採取指示を取得する前に計測する。計測された移動路特性は、記憶部20Bの移動路特性22に記憶される。
【0110】
採取実行部12Bは、採取指示に示された採取量に、計測された移動路特性の分を加えた量のサンプルを対象から採取することによって、採取指示に示された採取量のサンプルを容器Tに収容する。これにより、対象に設置した採取装置1B毎に、移動路特性を測定し、採取装置1Bに設定する手間を省くことができるため、採取装置1Bの設置時における作業量を軽減させることができる。
【0111】
〔付記事項〕
図1に示す採取装置1a、1b、1c、・・・はそれぞれ、採取装置1、1A、1Bのうちのいずれかであってもよい。採取システム100では、採取装置1、1A、1B毎に採取指示および採取完了情報が管理される。それゆえ、採取システム100の管理システム9は、異なる機能を有する複数の採取装置1、1A、1Bによるサンプル採取動作を管理することが可能である。
【0112】
〔ソフトウェアによる実現例〕
採取システム100(以下、「システム」と呼ぶ)の機能は、当該システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該システムに含まれる各装置(例えば、採取装置1、1A、1B)および管理システム9の各制御ブロック(特に制御部10、10A、10Bに含まれる各部、および制御部90に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0113】
この場合、上記システムは、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0114】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0115】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0116】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0117】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0118】
1、1a、1b、1c、1A、1B 採取装置
11 指示取得部
12 採取実行部
13 識別情報取得部
14 撮像制御部
15 完了報告出力部
16 移動路特性計測部
31 ポンプ
32 容器保持部
331 カメラ
332a、332b 照明部
34 気泡検知部
5、5a、5b 遠隔端末
9 管理システム
91 指示出力部
92 完了報告取得部
93 管理部
100 採取システム
B ホルダ台
B1 溝部
B2 穴部
C 筐体
D 扉部
H 容器ホルダ
P 移動路
P1 第1端
P2 第2端
T 容器
T1 容器情報
S12 採取実行ステップ
S13 完了報告ステップ
S91 採取指示ステップ
S93 管理ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16