(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169504
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】液化ガス燃料船
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20231122BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20231122BHJP
B63J 2/10 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B63B25/16 101A
B63H21/38 B
B63B25/16 H
B63J2/10
B63B25/16 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080646
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 宏之
(72)【発明者】
【氏名】三好 崇公
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】関 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 梨花子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】安全性の向上と製造コストの増加の抑制とを両立できる液化ガス燃料船を提供する。
【解決手段】船体11と、エンジン12と、常温かつ常圧で気体である燃料を液体の状態で貯留する燃料タンク13と、船体外に位置し燃料タンクに接続する複数のタンク配管32を含むタンク配管群14と、船体外に位置しエンジンに供給する燃料の温度及び圧力を調整する燃料処理装置15と、船体外に位置し燃料タンクと燃料処理装置をつなぐ燃料配管16と、タンク配管群を密閉して覆うタンク接続室17と、燃料処理装置を密閉して覆う燃料処理室18と、燃料配管を密閉して覆う配管二次囲い19と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
エンジンと、
常温かつ常圧で気体である燃料を液体の状態で貯留する燃料タンクと、
船体外に位置し前記燃料タンクに接続する複数のタンク配管を含むタンク配管群と、
船体外に位置し前記エンジンに供給する燃料の温度及び圧力を調整する燃料処理装置と、
船体外に位置し前記燃料タンクと前記燃料処理装置をつなぐ燃料配管と、
前記タンク配管群を密閉して覆うタンク接続室と、
前記燃料処理装置を密閉して覆う燃料処理室と、
前記燃料配管を密閉して覆う配管二次囲いと、を備えている、
液化ガス燃料船。
【請求項2】
前記タンク接続室、前記燃料処理室、及び前記配管二次囲いで覆われた各空間のうち少なくとも2つの空間が連通して共通空間を形成しており、
当該液化ガス燃料船は、
前記共通空間に空気を供給する給気ダクトと、
内部に排気ファンが位置し、前記共通空間から空気を排出する排気ダクトと、をさらに備えている、
請求項1に記載の液化ガス燃料船。
【請求項3】
前記タンク接続室、前記燃料処理室、及び前記配管二次囲いで覆われた各空間の全てが連通して共通空間を形成しており、
前記給気ダクトは前記タンク接続室及び前記燃料処理室の一方に接続しており、
前記排気ダクトは前記タンク接続室及び前記燃料処理室の他方に接続している、
請求項2に記載の液化ガス燃料船。
【請求項4】
前記タンク接続室、前記燃料処理室、及び前記配管二次囲いで覆われた各空間のうち、前記タンク接続室及び前記配管二次囲いで覆われた空間が連通して共通空間を形成しており、
前記給気ダクトは前記タンク接続室及び前記配管二次囲いの一方に接続しており、
前記排気ダクトは前記タンク接続室及び前記配管二次囲いの他方に接続している、
請求項2に記載の液化ガス燃料船。
【請求項5】
前記タンク接続室、前記燃料処理室、及び前記配管二次囲いで覆われた各空間のうち、前記燃料処理室及び前記配管二次囲いで覆われた空間が連通して共通空間を形成しており、
前記給気ダクトは前記燃料処理室及び前記配管二次囲いの一方に接続しており、
前記排気ダクトは前記燃料処理室及び前記配管二次囲いの他方に接続している、
請求項2に記載の液化ガス燃料船。
【請求項6】
前記給気ダクトの給気口は、前記排気ダクトの排気口よりも前記船体の幅方向中央寄りに位置している、請求項2乃至5のうちいずれか一の項に記載の液化ガス燃料船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガスを燃料とする液化ガス燃料船に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス燃料船の船体内であって十分な換気がなされていない区画に位置する配管は、一般的に二重配管が用いられる(下記の特許文献1参照)。一方、液化ガス燃料船の船体外ではガスが充満しにくいことから、液化ガス燃料船の船体外に位置する配管は一般的に一重配管が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液化ガス燃料船の安全性をより向上させるには、船体外に位置する配管も全て二重配管とするのが望ましい。ところが、この場合には、液化ガス燃料船の製造コストが大幅に増加してしまう。
【0005】
そこで、本開示は、安全性の向上と製造コストの増加の抑制とを両立できる液化ガス燃料船を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る液化ガス燃料船は、船体と、エンジンと、常温かつ常圧で気体である燃料を液体の状態で貯留する燃料タンクと、船体外に位置し前記燃料タンクに接続する複数のタンク配管を含むタンク配管群と、船体外に位置し前記エンジンに供給する燃料の温度及び圧力を調整する燃料処理装置と、船体外に位置し前記燃料タンクと前記燃料処理装置をつなぐ燃料配管と、前記タンク配管群を密閉して覆うタンク接続室と、前記燃料処理装置を密閉して覆う燃料処理室と、前記燃料配管を密閉して覆う配管二次囲いと、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この構成によれば、安全性の向上と製造コストの増加の抑制とを両立できる液化ガス燃料船を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る液化ガス燃料船の概略正面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の第1変形例に係る液化ガス燃料船の概略正面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の第2変形例に係る液化ガス燃料船の概略正面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の第3変形例に係る液化ガス燃料船の概略正面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の第4変形例に係る液化ガス燃料船の概略側面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る液化ガス燃料船の概略正面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の変形例に係る液化ガス燃料船の概略正面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る液化ガス燃料船の概略正面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の変形例に係る液化ガス燃料船の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、実施形態について説明する。はじめに、第1実施形態に係る液化ガス燃料船100について説明する。
図1は、第1実施形態に係る液化ガス燃料船100の概略正面図である。
図1の紙面左右方向が船体11の幅方向であり、紙面に対して垂直な方向が船体11の前後方向である(
図2~
図4、
図6~
図9も同様)。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、船体11と、エンジン12と、燃料タンク13と、タンク配管群14と、燃料処理装置15と、燃料配管16と、タンク接続室17と、燃料処理室18と、配管二次囲い19と、給気ダクト20と、排気ダクト21と、を備えている。以下、これらの構成について順に説明する。
【0011】
船体11は、種々の設備を搭載する。本実施形態の船体11は、船体11の上面に相当する部分であって、外気にさらされる甲板31を有している。本実施形態において、甲板31よりも上方の区域は「船体外」となり、船体11の甲板31よりも下方の区域は「船体内」となる。なお、本実施形態の「甲板」は、上甲板のみならず、上甲板よりも上方に位置する甲板及び上甲板よりも下方に位置する甲板を含む。
【0012】
エンジン12は、液化ガス燃料船100を航行させるための動力を発生する。エンジン12は、船体内に位置している。本実施形態のエンジン12は、液化ガスを燃料としている。液化ガスは、常温かつ常圧で気体のガスが液体になったものであり、例えば液化水素やLNGなどが液化ガスに相当する。エンジン12には、液体のままの液化ガス、又は、液化ガスを気化させたガスが燃料として供給される。
【0013】
燃料タンク13は、燃料である液化ガスを液体の状態で貯留する。本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、2つの燃料タンク13を備えている。2つの燃料タンク13は、いずれも甲板31上に位置している。さらに、2つの燃料タンク13は、船体11の幅方向中央を基準として互いに対称に位置している。また、本実施形態の燃料タンク13は船体11の前後方向に延びる円筒状であるが、燃料タンク13の形状は特に限定されない。なお、燃料タンク13は、一部又は全部が甲板31よりも下方に位置していてもよい。
【0014】
タンク配管群14は、燃料タンク13の上方に位置している。本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、2つのタンク配管群14を備えている。2つのタンク配管群14は、いずれも複数のタンク配管32を含んでいる。各タンク配管32は、燃料タンク13上(つまり船体外)に位置しており、燃料タンク13に接続している。タンク配管32は、例えば検査のために一時的に燃料タンク13から液化ガスを取り出す配管、燃料の給油配管、及び、ボイルオフガス配管などである。なお、本実施形態の各タンク配管32は、一重配管である。
【0015】
燃料処理装置15は、エンジン12に供給する燃料の温度及び圧力を調整する(処理する)。燃料処理装置15は、甲板31上(つまり船体外)に位置している。また、本実施形態の燃料処理装置15は、船体11の幅方向中央であって、2つの燃料タンク13の間に位置している。エンジン12に供給する燃料の温度及び圧力は、エンジン12の機種及び運転状況によって予め設定されている。燃料処理装置15は、エンジン12の仕様に応じて、液化ガスを液体のままエンジン12に供給する場合もあれば、液化ガスを気化させてエンジン12に供給する場合もある。なお、燃料処理装置15で処理された燃料は、船体内に位置するエンジン配管33を介してエンジン12に供給される。
【0016】
燃料配管16は、燃料タンク13と燃料処理装置15をつないでいる。燃料配管16は、船体外に位置している。本実施形態の燃料配管16は、対応する燃料タンク13に接続する2つの個別部34と、2つの個別部34と燃料処理装置15をつなぐ合流部35とを含んでいる。なお、本実施形態の燃料配管16は、一重配管である。燃料タンク13と燃料処理装置15をつなぐ配管が二重配管である場合には、内側に位置する内部配管が燃料配管16に相当する。
【0017】
タンク接続室17は、タンク配管群14を密閉して覆う部屋である。本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、2つのタンク接続室17を備えている。各タンク接続室17は、対応するタンク配管群14を密閉して覆っている。このように、本実施形態では、タンク接続室17がタンク配管群14を密閉して覆うため、仮にタンク配管群14から燃料が漏れたとしても、タンク配管群14の周辺に燃料が広がることがないため安全性が高い。さらに、本実施形態では、タンク接続室17がタンク配管群14全体を覆うため、各タンク配管32をそれぞれ個別に覆う構成(各タンク配管32を全て二重配管とする構成も含む)に比べて、液化ガス燃料船100の製造コストの増加を抑制することができる。
【0018】
燃料処理室18は、燃料処理装置15を密閉して覆う部屋である。このように、本実施形態では、燃料処理室18が燃料処理装置15を密閉して覆うため、仮に燃料処理装置15から燃料が漏れたとしても、燃料処理装置15の周辺に燃料が広がることがないため安全性が高い。
【0019】
配管二次囲い19は、燃料配管16を密閉して覆う部材である。本実施形態の配管二次囲い19は、タンク接続室17と燃料処理室18をつないでおり、燃料配管16に沿って延びている。このように、本実施形態では、配管二次囲い19が燃料配管16を密閉して覆うため、仮に燃料配管16から燃料が漏れたとしても、燃料配管16の周辺に燃料が広がることがないため安全性が高い。なお、燃料タンク13と燃料処理装置15をつなぐ配管が二重配管である場合、外側の外部配管が配管二次囲い19に相当する。
【0020】
ここで、本実施形態では、タンク接続室17、燃料処理室18、及び配管二次囲い19で覆われた各空間の全てが連通して共通空間40を形成している。つまり、気体はタンク接続室17と配管二次囲い19の間を通過でき、配管二次囲い19と燃料処理室18の間を通過することができる。
【0021】
給気ダクト20は、上記の共通空間40に空気を供給する。本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、2つの給気ダクト20を備えている。2つの給気ダクト20は、それぞれタンク接続室17に接続している。給気ダクト20は、給気ダクト20の上端部分に位置する給気口41から外気(空気)を取り込んで、取り込んだ外気をタンク接続室17に(つまり、共通空間40に)供給する。
【0022】
排気ダクト21は、共通空間40から空気を排出する。本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、1つの排気ダクト21を備えている。排気ダクト21は、燃料処理室18に接続している。排気ダクト21の内部には排気ファン42が位置している。排気ダクト21は、燃料処理室18から(つまり、共通空間40から)空気を取り込み、取り込んだ空気を排気ダクト21の上端部分に位置する排気口43から排出する。
【0023】
給気ダクト20及び排気ダクト21が上記のように位置することで、タンク接続室17、燃料処理室18、及び配管二次囲い19のそれぞれに給気ダクト20及び排気ダクト21の両方を配置しなくとも、タンク接続室17、燃料処理室18、及び配管二次囲い19で覆われた空間内を換気することができる。しかも、共通空間40内ではタンク接続室17から配管二次囲い19を介して燃料処理室18に向かう空気の流れが形成されるため、共通空間40内の換気を効率よく行うことができる。その結果、仮に共通空間40内に燃料が漏れたとしても、共通空間40内における燃料濃度の上昇が抑制され、安全性が向上する。
【0024】
なお、本実施形態では、給気ダクト20がタンク接続室17に接続し、排気ダクト21が燃料処理室18に接続しているが、接続位置が逆であってもよい。つまり、給気ダクト20が燃料処理室18に接続し、排気ダクト21がタンク接続室17に接続していてもよい。この場合、共通空間40内では燃料処理室18から配管二次囲い19を介してタンク接続室17に向かう空気の流れが形成されるが、この場合であっても共通空間40内の換気を効率よく行うことができる。
【0025】
さらに、この場合には、排気ダクト21の排気口43よりも船体11の幅方向中央寄りに位置することになる。この構成では、給気口41は船体11の幅方向中央寄りに位置することになるため、海水が給気ダクト20の給気口41を介して共通空間40に入り込むのを抑制することができる。
【0026】
なお、本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、給気ダクト20のタンク接続室17との境界付近、及び、配管二次囲い19のタンク接続室17との境界付近に位置する防火ダンパを備えていてもよい。この構成によれば、タンク接続室17内で火災が発生した場合に、防火ダンパを閉じることで、タンク接続室17から火が広がるのを防ぐことができる。
【0027】
<第1変形例>
図2は、第1実施形態の第1変形例に係る液化ガス燃料船100の概略正面図である。上述の本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、2つの給気ダクト20と1つの排気ダクト21を備えている(
図1参照)。ただし、共通空間40の容積や排気ファン42の性能等に応じて、液化ガス燃料船100が備える給気ダクト20及び排気ダクト21の数を変更してもよい。例えば、
図2に示すように、液化ガス燃料船100は、燃料処理室18に接続する2つの給気ダクト20と、各タンク接続室17に接続する2つの排気ダクト21とを備えていてもよい。
【0028】
<第2変形例>
図3は、第1実施形態の第2変形例に係る液化ガス燃料船100の概略正面図である。上述の本実施形態に係る液化ガス燃料船100では、燃料配管16が2つの個別部34と1つの合流部35を含んでいる(
図1参照)。ただし、燃料配管16と周辺機器との位置関係等によっては、燃料配管16は合流部35を含まなくてもよい。つまり、
図3に示すように、燃料配管16に含まれる2つの個別部34が、それぞれ対応する燃料タンク13と燃料処理装置15とをつないでもよい。この場合、配管二次囲い19は、2つの個別部34を別々に密閉して覆ってもよい。
【0029】
<第3変形例>
図4は、第1実施形態の第3変形例に係る液化ガス燃料船100の概略正面図である。上述の本実施形態に係る液化ガス燃料船100は、2つの燃料タンク13を備えている(
図1参照)。ただし、液化ガス燃料船100が備える燃料タンク13の数は限定されない。例えば、
図4に示すように、液化ガス燃料船100が備える燃料タンク13は1つであってもよい。この場合、液化ガス燃料船100が備えるタンク配管群14、タンク接続室17、及びタンク接続室17に接続する給気ダクト20もそれぞれ1つとなる。
【0030】
<第4変形例>
図5は、第1実施形態の第4変形例に係る液化ガス燃料船100の概略側面図である。
図5の紙面左右方向が船体11の前後方向であり、紙面右側が船体11の船首側であり、紙面左側が船体11の船尾側である。上述の本実施形態に係る液化ガス燃料船100では、2つの燃料タンク13が船体11の幅方向中央を基準として対称に位置し、2つの燃料タンク13の間に燃料処理装置15が位置している(
図1参照)。ただし、燃料タンク13及び燃料処理装置15の位置はこれに限定されない。例えば、液化ガス燃料船100が備える燃料タンク13が1つである場合、
図5に示すように、燃料タンク13が船体11の船尾寄りに位置し、燃料処理装置15が燃料タンク13よりも前方に位置していてもよい。
【0031】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る液化ガス燃料船200について、第1実施形態に係る液化ガス燃料船100と相違する部分を中心に説明する。
図6は、第2実施形態に係る液化ガス燃料船200の概略正面図である。第1実施形態に係る液化ガス燃料船100では、タンク接続室17、燃料処理室18、及び配管二次囲い19で覆われた各空間の全てが連通して共通空間40を形成していた(
図1参照)。これに対し、第2実施形態に係る液化ガス燃料船200では、タンク接続室17、燃料処理室18、及び配管二次囲い19で覆われた空間のうち、タンク接続室17及び配管二次囲い19で覆われた空間のみが連通して共通空間40を形成している。つまり、気体はタンク接続室17と配管二次囲い19の間を通過できるが、配管二次囲い19と燃料処理室18の間を通過することはできない。
【0032】
さらに、本実施形態に係る液化ガス燃料船200は、2つの給気ダクト20と、3つの排気ダクト21とを備えている。2つの給気ダクト20のうちの1つは、配管二次囲い19に接続している。なお、給気ダクト20は配管二次囲い19の幅方向中央に位置しているが、配管二次囲い19に対する給気ダクト20の位置は特に限定されない。また、3つの排気ダクト21のうちの2つは、各タンク接続室17にそれぞれ接続している。給気ダクト20及び排気ダクト21が上記のように位置することで、共通空間40内では配管二次囲い19からタンク接続室17に向かう空気の流れが形成されるため、共通空間40内の換気を効率よく行うことができる。
【0033】
なお、本実施形態では、給気ダクト20が配管二次囲い19に接続し、排気ダクト21がタンク接続室17に接続しているが、接続位置が逆であってもよい。つまり、給気ダクト20がタンク接続室17に接続し、排気ダクト21が配管二次囲い19に接続していてもよい。この場合、共通空間40内ではタンク接続室17から配管二次囲い19に向かう空気の流れが形成されるが、この場合であっても共通空間40内の換気を効率よく行うことができる。
【0034】
また、液化ガス燃料船200が備える2つの給気ダクト20のうちの1つは、燃料処理室18に接続している。さらに、液化ガス燃料船200が備える3つの排気ダクト21のうちの1つは、燃料処理室18に接続している。給気ダクト20及び排気ダクト21が上記のように位置することで、燃料処理室18で覆われた空間の換気も行うことができる。
【0035】
なお、本実施形態に係る液化ガス燃料船200は、給気ダクト20のタンク接続室17との境界付近、及び、配管二次囲い19のタンク接続室17との境界付近に位置する防火ダンパを備えていてもよい。この構成によれば、タンク接続室17内で火災が発生した場合に、防火ダンパを閉じることで、タンク接続室17から火が広がるのを防ぐことができる。
【0036】
<変形例>
図7は、第2実施形態の変形例に係る液化ガス燃料船200の概略正面図である。上述の本実施形態に係る液化ガス燃料船200は、2つの燃料タンク13を備えている(
図6参照)。ただし、液化ガス燃料船200が備える燃料タンク13の数は限定されない。例えば、
図7に示すように、液化ガス燃料船200が備える燃料タンク13は1つであってもよい。この場合、液化ガス燃料船200が備えるタンク配管群14、タンク接続室17、及びタンク接続室17に接続する排気ダクト21もそれぞれ1つとなる。なお、
図7に示す液化ガス燃料船200では、配管二次囲い19に接続する給気ダクト20は、配管二次囲い19のタンク接続室17から最も遠い部分に接続している。
【0037】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る液化ガス燃料船300について、第1実施形態に係る液化ガス燃料船100と相違する部分を中心に説明する。
図8は、第3実施形態に係る液化ガス燃料船300の概略正面図である。第1実施形態に係る液化ガス燃料船100では、タンク接続室17、燃料処理室18、及び配管二次囲い19で覆われた各空間の全てが連通して共通空間40を形成していた(
図1参照)。これに対し、第3実施形態に係る液化ガス燃料船300では、タンク接続室17、燃料処理室18、及び配管二次囲い19で覆われた空間のうち、燃料処理室18及び配管二次囲い19で覆われた空間のみが連通して共通空間40を形成している。つまり、気体は配管二次囲い19と燃料処理室18の間を通過することはできるが、タンク接続室17と配管二次囲い19の間を通過することはできない。
【0038】
さらに、本実施形態に係る液化ガス燃料船300は、4つの給気ダクト20と、3つの排気ダクト21とを備えている。4つの給気ダクト20のうち2つは、配管二次囲い19に接続している。なお、この2つの給気ダクト20は配管二次囲い19のタンク接続室17との境界付近に接続しているが、配管二次囲い19に対する給気ダクト20の位置は特に限定されない。また、3つの排気ダクト21のうちの1つは、燃料処理室18に接続している。給気ダクト20及び排気ダクト21が上記のように位置することで、共通空間40内では配管二次囲い19から燃料処理室18に向かう空気の流れが形成されるため、共通空間40内の換気を効率よく行うことができる。
【0039】
なお、本実施形態では、給気ダクト20が配管二次囲い19に接続し、排気ダクト21が燃料処理室18に接続しているが、接続位置が逆であってもよい。つまり、給気ダクト20が燃料処理室18に接続し、排気ダクト21が配管二次囲い19に接続していてもよい。この場合、共通空間40内では燃料処理室18から配管二次囲い19に向かう空気の流れが形成されるが、この場合であっても共通空間40内の換気を効率よく行うことができる。
【0040】
また、液化ガス燃料船300が備える4つの給気ダクト20のうちの2つは、各タンク接続室17にそれぞれ接続している。さらに、液化ガス燃料船300が備える3つの排気ダクト21のうちの2つは、各タンク接続室17にそれぞれ接続している。給気ダクト20及び排気ダクト21が上記のように位置することで、タンク接続室17で覆われた空間の換気も行うことができる。
【0041】
なお、本実施形態に係る液化ガス燃料船300は、給気ダクト20のタンク接続室17との境界付近、及び、排気ダクト21のタンク接続室17との境界付近に位置する防火ダンパを備えていてもよい。この構成によれば、タンク接続室17内で火災が発生した場合に、防火ダンパを閉じることで、タンク接続室17から火が広がるのを防ぐことができる。
【0042】
<変形例>
図9は、第3実施形態の変形例に係る液化ガス燃料船300の概略正面図である。上述の本実施形態に係る液化ガス燃料船300は、2つの燃料タンク13を備えている(
図8参照)。ただし、液化ガス燃料船300が備える燃料タンク13の数は限定されない。例えば、
図9に示すように、液化ガス燃料船300が備える燃料タンク13は1つであってもよい。この場合、液化ガス燃料船300が備えるタンク配管群14、タンク接続室17、及びタンク接続室17に接続する給気ダクト20もそれぞれ1つとなる。
【0043】
(まとめ)
上述した実施形態に係る液化ガス燃料船は、船体と、エンジンと、常温かつ常圧で気体である燃料を液体の状態で貯留する燃料タンクと、船体外に位置し前記燃料タンクに接続する複数のタンク配管を含むタンク配管群と、船体外に位置し前記エンジンに供給する燃料の温度及び圧力を調整する燃料処理装置と、船体外に位置し前記燃料タンクと前記燃料処理装置をつなぐ燃料配管と、前記タンク配管群を密閉して覆うタンク接続室と、前記燃料処理装置を密閉して覆う燃料処理室と、前記燃料配管を密閉して覆う配管二次囲いと、を備えている。
【0044】
この構成では、タンク接続室がタンク配管群を密閉して覆うため、仮にタンク配管群から燃料が漏れたとしても、タンク配管群の周辺に燃料が広がることがないため安全性が高い。さらに、上記の構成ではタンク接続室は、タンク配管群全体を覆うため、複数のタンク配管をそれぞれ個別に覆う場合に比べて、液化ガス燃料船の製造コストを抑制することができる。
【0045】
また、上述した実施形態に係る液化ガス燃料船は、前記タンク接続室、前記燃料処理室、及び前記配管二次囲いで覆われた各空間のうち少なくとも2つの空間が連通して共通空間を形成しており、当該液化ガス燃料船は、前記共通空間に空気を供給する給気ダクトと、内部に排気ファンが位置し、前記共通空間から空気を排出する排気ダクトと、をさらに備えている。
【0046】
この構成によれば、タンク接続室、燃料処理室、及び配管二次囲いのそれぞれに給気ダクト及び排気ダクトを配置しなくとも、タンク接続室、燃料処理室、及び配管二次囲いで覆われた空間内を換気することができる。
【0047】
また、上述した第1実施形態に係る液化ガス燃料船は、前記タンク接続室、前記燃料処理室、及び前記配管二次囲いで覆われた各空間の全てが連通して共通空間を形成しており、前記給気ダクトは前記タンク接続室及び前記燃料処理室の一方に接続しており、前記排気ダクトは前記タンク接続室及び前記燃料処理室の他方に接続している。
【0048】
この構成によれば、共通空間内ではタンク接続室から配管二次囲いを介して燃料処理室に向かう空気の流れ、又は、燃料処理室から配管二次囲いを介してタンク接続室に向かう空気の流れが形成されるため、共通空間内の換気を効率よく行うことができる。
【0049】
また、上述した第2実施形態に係る液化ガス燃料船は、前記タンク接続室、前記燃料処理室、及び前記配管二次囲いで覆われた各空間のうち、前記タンク接続室及び前記配管二次囲いで覆われた空間が連通して共通空間を形成しており、前記給気ダクトは前記タンク接続室及び前記配管二次囲いの一方に接続しており、前記排気ダクトは前記タンク接続室及び前記配管二次囲いの他方に接続している。
【0050】
この構成によれば、共通空間内ではタンク接続室から配管二次囲いに向かう空気の流れ、又は、配管二次囲いからタンク接続室に向かう空気の流れが形成されるため、共通空間内の換気を効率よく行うことができる。
【0051】
また、上述した第3実施形態に係る液化ガス燃料船は、前記タンク接続室、前記燃料処理室、及び前記配管二次囲いで覆われた各空間のうち、前記燃料処理室及び前記配管二次囲いで覆われた空間が連通して共通空間を形成しており、前記給気ダクトは前記燃料処理室及び前記配管二次囲いの一方に接続しており、前記排気ダクトは前記燃料処理室及び前記配管二次囲いの他方に接続している。
【0052】
この構成によれば、共通空間内では配管二次囲いから燃料処理室に向かう空気の流れ、又は、燃料処理室から配管二次囲いに向かう空気の流れが形成されるため、共通空間内の換気を効率よく行うことができる。
【0053】
また、上述した実施形態に係る液化ガス燃料船において、前記給気ダクトの給気口は、前記排気ダクトの排気口よりも前記船体の幅方向中央寄りに位置していてもよい。
【0054】
この構成によれば、給気口は船体の幅方向中央寄りに位置しているため、海水が給気口を介して共通空間に入り込むのを抑制できる。
【符号の説明】
【0055】
11 船体
12 エンジン
13 燃料タンク
14 タンク配管群
15 燃料処理装置
16 燃料配管
17 タンク接続室
18 燃料処理室
19 配管二次囲い
20 給気ダクト
21 排気ダクト
32 タンク配管
40 共通空間
41 給気口
42 排気ファン
43 排気口
100、200、300 液化ガス燃料船