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  • 特開-歯車 図1
  • 特開-歯車 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169509
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】歯車
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/14 20060101AFI20231122BHJP
   F16F 15/126 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F16H55/14
F16F15/126 B
F16F15/126 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080653
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織奥 豊
【テーマコード(参考)】
3J030
【Fターム(参考)】
3J030AA11
3J030BA05
(57)【要約】
【課題】騒音を抑制可能な歯車を提供する。
【解決手段】ダンパー300は、外輪100の内周面に嵌合される第1の円筒状部材310と、内輪200の外周面に嵌合される第2の円筒状部材320と、第1の円筒状部材310の内周面と第2の円筒状部材320の外周面に固定される環状の弾性緩衝体330と、を備えると共に、第1の円筒状部材310における円筒部311の端部には、外輪100の端面に対向するように設けられる外向きフランジ部312が設けられ、外輪100の端面と外向きフランジ部312との間には、弾性体332が圧縮された状態で挟み込まれていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に複数の歯を有する外輪と、
前記外輪の内側に同心的に配される内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に配される環状のダンパーと、
を備え、
前記外輪の内周面と、前記内輪の外周面との間には、前記外輪と前記内輪との相対的な回転を一定範囲に制限する廻り止め構造が設けられる歯車であって、
前記ダンパーは、
前記外輪の内周面に嵌合される第1の円筒状部材と、
前記内輪の外周面に嵌合される第2の円筒状部材と、
第1の円筒状部材の内周面と第2の円筒状部材の外周面に固定される環状の弾性緩衝体と、
を備えると共に、
第1の円筒状部材における円筒部の端部には、前記外輪の端面に対向するように設けられる外向きフランジ部が設けられ、前記外輪の端面と前記外向きフランジ部との間には、弾性体が圧縮された状態で挟み込まれていることを特徴とする歯車。
【請求項2】
前記弾性緩衝体と前記弾性体は一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の歯車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の駆動部に設けられる歯車においては、騒音を抑制するために、緩衝用の弾性体を設ける技術が知られている。すなわち、歯車が、外輪と、内輪と、これら外輪と内輪との間に設けられる環状の弾性体とを備える技術が知られている。しかしながら、この技術においては、回転変動による振動を低減することで異音を低減する効果が得られるものの、歯(ギヤ)の噛み合いによる高周波の異音の抑制効果を十分得ることができず、未だ改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-362346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、騒音を抑制可能な歯車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0006】
すなわち、本発明の歯車は、
外周に複数の歯を有する外輪と、
前記外輪の内側に同心的に配される内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に配される環状のダンパーと、
を備え、
前記外輪の内周面と、前記内輪の外周面との間には、前記外輪と前記内輪との相対的な回転を一定範囲に制限する廻り止め構造が設けられる歯車であって、
前記ダンパーは、
前記外輪の内周面に嵌合される第1の円筒状部材と、
前記内輪の外周面に嵌合される第2の円筒状部材と、
第1の円筒状部材の内周面と第2の円筒状部材の外周面に固定される環状の弾性緩衝体と、
を備えると共に、
第1の円筒状部材における円筒部の端部には、前記外輪の端面に対向するように設けられる外向きフランジ部が設けられ、前記外輪の端面と前記外向きフランジ部との間には、弾性体が圧縮された状態で挟み込まれていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、弾性緩衝体が設けられるため、外輪と内輪との間の回転変動による振動を低減することで異音を低減することができる。また、外輪の端面と第1の円筒状部材の端部に設けられる外向きフランジ部との間に弾性体が圧縮された状態で挟み込まれることで、歯の噛み合いによる高周波の異音の抑制効果も得ることができる。
【0008】
前記弾性緩衝体と前記弾性体は一体に設けられているとよい。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は本発明の実施例に係る歯車の正面図である。
図2図2は本発明の実施例に係る歯車のダンパーを取り除いた状態を示す正面図である。
図3図3は本発明の実施例に係る歯車の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
(実施例)
図1図3を参照して、本発明の実施例に係る歯車について説明する。図1は本発明の実施例に係る歯車の正面図である。図2は本発明の実施例に係る歯車のダンパーを取り除いた状態を示す正面図である。図3は本発明の実施例に係る歯車の模式的断面図である。なお、図3図1中のAA断面図である。また、図3中の外輪と内輪は、図2中のAA断面図に相当する。以下、歯車の中心軸線を「中心軸線」と称する。
【0013】
<歯車の構成>
本実施例に係る歯車10は、いわゆるハスバ歯車である。この歯車10は、外周に複数の歯110を有する外輪100と、外輪100の内側に同心的に配される内輪200と、外輪100と内輪200との間に配される環状のダンパー300とを備えている。複数の歯110の歯筋は中心軸線に対して斜めに伸びるように構成されている。外輪100と内輪200は、硬質の材料により構成される。この材料としては、鉄などの金属を好適に採用することができるが、樹脂材料など他の硬質材料も採用し得る。
【0014】
外輪100の内周面と、内輪200の外周面との間には、外輪100と内輪200との相対的な回転を一定範囲に制限する廻り止め構造が設けられている。より具体的には、外輪100の内周面には、周方向に間隔を空けて複数の突起120が設けられ、内輪200の外周面にも周方向に間隔を空けて複数の突起220が設けられている。なお、本実施例においては、複数の突起120はいずれも寸法形状が同一で、周方向に等間隔に設けられている。複数の突起220も同様に、いずれも寸法形状が同一で、周方向に等間隔に設けられている。そして、隣り合う突起120の間に、それぞれ突起220が配されるように構成され、かつ、突起120と突起220との間には隙間が形成されるように構成されている。以上の構成により、外輪100と内輪200は、一定範囲内で相対的な回転が許容されつつ、外力により回転運動が作用して、突起120と突起220が接すると、外輪100と内輪200は共に回転する。
【0015】
外輪100の内周面には、ダンパー300が固定される大径部分130が設けられている。また、内輪200の外周面には、ダンパー300が固定される小径部分230が設けられている。これにより、ダンパー300は、その外周面が大径部分130の内周面に嵌合され、その内周面が小径部分230の外周面に嵌合されることで、外輪100と内輪200との間の環状隙間に固定される。
【0016】
また、本実施例に係る歯車10は、外輪100と内輪200との一定範囲内の相対的な回転を許容しつつ、内輪200に対する外輪100の傾き(中心軸線に対する傾き)を抑制する傾斜抑制構造を有する。より具体的には、外輪100に設けられ中心軸線に対して
垂直な壁面150と、内輪200に設けられ中心軸線に対して垂直な壁面250とが摺動するように設けられることで、傾斜抑制構造をなしている。本実施例においては、外輪100のうち、ダンパー300が固定される側とは反対側の端部に設けられた内向きフランジ部の内側の面が上記の壁面150としての役割を担っている。また、内輪200におけるダンパー300が固定される側とは反対側の端部の端面が上記の壁面250としての役割を担っている。
【0017】
このような傾斜抑制構造を有することで、内輪200に対する外輪100の傾き(中心軸線に対する傾き)が抑制される。すなわち、ハスバ歯車においては、外輪100における複数の歯110に対して外力(回転方向の力)が作用することで、外輪100に対して、外輪100を捩じるような力が作用する。これにより、内輪200に対して外輪100が傾くように作用するものの、傾斜抑制構造を有することで、外輪100の傾きを抑制することができる。これにより、異音の発生が抑制される。
【0018】
<ダンパー>
ダンパー300について、より詳しく説明する。ダンパー300は、外輪100の内周面(大径部分130)に嵌合される第1の円筒状部材310と、内輪200の外周面(小径部分230)に嵌合される第2の円筒状部材320とを備えている。第1の円筒状部材310は、円筒部311と、円筒部311の端部に設けられる外向きフランジ部312とを備えている。この外向きフランジ部312は、外輪100の端面に対向するように設けられる。
【0019】
また、ダンパー300は、第1の円筒状部材310の内周面と第2の円筒状部材320の外周面に固定される環状の弾性緩衝体330を備えている。弾性緩衝体330は、エラストマー材料(ゴムなど)により構成されており、第1の円筒状部材310の内周面と第2の円筒状部材320の外周面に加硫接着などによって直接固定されている。そして、弾性緩衝体330は、第1の円筒状部材310の内周面と第2の円筒状部材320の外周面との間の環状隙間を埋めるように配される緩衝体本体331と、外輪100の端面と外向きフランジ部312との間に圧縮された状態で挟み込まれる弾性体332とを備えている。これら緩衝体本体331と弾性体332は一体に設けられている。すなわち、外向きフランジ部312をエラストマー材料が覆うように設けられることで、緩衝体本体331と弾性体332が一体に設けられている。なお、弾性体332は、外輪100の歯110に接するように設けるのが望ましく、歯110に噛み合う相手側の歯500に対しても接し得るように設けるのが望ましい。なお、図3においては、図中丸で囲った部分を拡大した断面図についても示しており、この拡大図においては、歯110に相手側の歯500が噛み合った際の歯500の位置を太い点線にて示している。また、弾性体332の厚み(図中、左右方向の厚み)は0.5mm以上3mm以下の範囲で設定するとよい。
【0020】
<本実施例に係る歯車(ハスバ歯車)の優れた点>
本実施例に係る歯車10によれば、内輪200が固定される部材(回転軸など)と、外輪100の歯110に噛み合う部材(歯車など)との間で、回転運動を伝達することができる。低トルクの場合には、ダンパー300を介して、外輪100と内輪200との間で回転運動が伝達される。また、廻り止め構造が設けられることで、一定以上のトルクが作用した場合には、外輪100と内輪200との間で直接的に回転運動が伝達される。そして、ダンパー300が設けられるため、回転変動による振動を低減することで異音を低減することができる。また、外輪100の端面と第1の円筒状部材310の端部に設けられる外向きフランジ部312との間に弾性体332が圧縮された状態で挟み込まれることで、歯の噛み合いによる高周波の異音の抑制効果も得ることができる。すなわち、歯が噛み合う際に発生する歯の振動が抑制されることで、高周波の異音の抑制効果が発揮される。
【符号の説明】
【0021】
10 歯車
100 外輪
110 歯
120 突起
130 大径部分
150 壁面
200 内輪
220 突起
230 小径部分
250 壁面
300 ダンパー
310 第1の円筒状部材
311 円筒部
312 外向きフランジ部
320 第2の円筒状部材
330 弾性緩衝体
331 緩衝体本体
332 弾性体
500 歯
図1
図2
図3