(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169511
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 15/10 20060101AFI20231122BHJP
F24C 3/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F24C15/10 B
F24C3/00 H
F24C15/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080655
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】大平 隼大
(57)【要約】
【課題】天板(30)の変形に起因した問題の発生を十分に抑制可能なガスコンロ(10)を提供する。
【解決手段】コンロケース(20)に矩形形状の天板を載置して、天板のバーナ開口(30a)からコンロバーナ(40)の上部を突出させ、コンロバーナの上部の外周側面には、燃料ガスを燃焼させる複数の炎口(40a)を形成する。また、天板は周縁部分(34)でコンロケースに取り付けると共に、周縁部分よりも内側の内側部分(35)には、天板が下向きの凸形状に撓んだ谷部(30v)、または上向きの凸形状に撓んだ山部(30m)を、天板の長手方向に沿った複数箇所に形成する。こうすれば、天板の熱膨張を複数の谷部または山部で分散して吸収することができるので、天板の変形が小さくなり、その結果、天板の変形に起因する問題の発生を抑制することが可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開放された箱形状のコンロケースと、
前記コンロケースの上面を覆う状態で取り付けられた略矩形形状の天板と、
前記天板に形成されたバーナ開口から上部を突出させた状態で前記コンロケースに搭載され、前記バーナ開口から突出した前記上部の外周側面に複数の炎口が形成されると共に、前記複数の炎口から燃料ガスを流出させることによって、前記燃料ガスを燃焼させるコンロバーナと、
前記バーナ開口から突出した前記コンロバーナの上部を囲んだ状態で前記天板上に載置される五徳と
を備えるガスコンロにおいて、
前記天板は、前記天板の周縁部分で前記コンロケースに取り付けられており、
前記天板上で前記周縁部分よりも内側部分には、前記天板が下向きの凸形状に撓んだ谷部または上向きの凸形状に撓んだ山部が、前記天板の長手方向に沿った複数箇所に形成されている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスコンロにおいて、
前記天板の前記内側部分には、前記山部よりも多くの前記谷部が形成されている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項3】
請求項1に記載のガスコンロにおいて、
前記天板上で前記五徳が載置される箇所には前記谷部または前記山部の何れかが形成されており、
前記五徳は、前記谷部または前記山部を跨いだ状態で前記天板上に載置されている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記山部の両側には前記谷部が形成されており、
前記天板の前記周縁部分を基準とした前記山部の高さは、前記周縁部分を基準とした前記谷部の低さよりも小さな値となっている
ことを特徴とするガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンロケース上に載置された天板と、天板に形成されたバーナ開口から上部が突出されたコンロバーナと、天板上に載置された五徳とを備え、コンロバーナで燃料ガスを燃焼させることによって調理物を加熱調理するガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
調理容器内の調理物を加熱調理する際には、ガスコンロが用いられることが一般的である。ガスコンロにはコンロバーナが搭載されており、コンロバーナで燃料ガスを燃焼させることによって調理容器内の調理物を加熱調理する。ガスコンロのコンロケースは上方が開口した箱形状となっており、コンロケースの上面は天板が取り付けられることによって塞がれている。天板には円形のバーナ開口が形成されており、コンロバーナはバーナ開口から上部を突出させた状態で、コンロケース内に搭載されている。バーナ開口から突出したコンロバーナの上部には、外周側面に複数の炎口が形成されており、炎口から流出する燃料ガスを燃焼させるようになっている。また、天板上には、バーナ開口から突出したコンロバーナの上部を囲むようにして、円環形状の五徳が載置されている。このため、五徳上に調理容器を置いてコンロバーナで燃料ガスを燃焼させることにより、調理容器内の調理物を加熱調理することが可能となる。
【0003】
コンロバーナで燃料ガスを燃焼させると、燃焼による輻射熱を受けて天板の温度が上昇する。その結果、天板には熱膨張が発生する。その一方で、天板が取り付けられているコンロケースは、燃焼による輻射熱の影響は小さいので、天板と比べて温度の上昇は少なく、これに伴う熱膨張も天板と比べて小さい。このため天板は、コンロケースよりも大きな熱膨張を吸収するべく、全体が上向きの凸形状、あるいは下向きの凸形状に撓むように変形しようとする。ここで、天板全体が上向きの凸形状に撓んでしまうと、コンロバーナの燃焼状態が悪化する虞が生じる。この理由は、コンロバーナはコンロケースに固定されているため、天板が上向きの凸形状に変形すると、コンロバーナの上部の外周側面に形成されている複数の炎口に対して、天板が接近することになる。すると、炎口で燃焼している燃料ガスの炎に空気を供給し難くなる。このため、天板が上向きの凸形状に変形する場合、変形がある程度の大きさになると、炎口での燃焼に必要な空気を供給することができなくなって、コンロバーナの燃焼状態が悪化する虞が生じる。
【0004】
そこで、天板を予め下向きの凸形状に撓ませておき、天板が加熱されて熱膨張が発生した場合には必ず下向きの凸形状に変形するようにすることで、コンロバーナの燃焼状態が悪化する事態を防止しようとするコンロバーナが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている従来のコンロバーナは、上向きに変形することは無いものの、下向きには大きな変形が発生し得るため、天板の変形に起因する様々な不具合(例えば、五徳のガタツキ発生や、天板の下面と下方の搭載物との干渉など)が生じ得るという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、天板の変形に起因した問題の発生を十分に抑制することが可能なガスコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
上面が開放された箱形状のコンロケースと、
前記コンロケースの上面を覆う状態で取り付けられた略矩形形状の天板と、
前記天板に形成されたバーナ開口から上部を突出させた状態で前記コンロケースに搭載され、前記バーナ開口から突出した前記上部の外周側面に複数の炎口が形成されると共に、前記複数の炎口から燃料ガスを流出させることによって、前記燃料ガスを燃焼させるコンロバーナと、
前記バーナ開口から突出した前記コンロバーナの上部を囲んだ状態で前記天板上に載置される五徳と
を備えるガスコンロにおいて、
前記天板は、前記天板の周縁部分で前記コンロケースに取り付けられており、
前記天板上で前記周縁部分よりも内側部分には、前記天板が下向きの凸形状に撓んだ谷部または上向きの凸形状に撓んだ山部が、前記天板の長手方向に沿った複数箇所に形成されている
ことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明のガスコンロにおいては、略矩形形状の天板がコンロケースの上に載置されており、天板に形成されたバーナ開口からはコンロバーナの上部が突出した状態となっている。そして、バーナ開口から突出したコンロバーナの上部の外周側面には複数の炎口が形成されており、炎口から流出する燃料ガスを燃焼させることが可能となっている。また、天板は周縁部分でコンロケースに取り付けられており、周縁部分よりも内側の部分(天板の内側部分)には、天板が下向きの凸形状に撓んだ谷部、または上向きの凸形状に撓んだ山部が、天板の長手方向に沿った複数箇所に形成されている。
【0010】
コンロバーナで燃料ガスを燃焼させると、燃焼による炎の輻射熱で天板が加熱されて熱膨張するが、天板の周縁部分を支えるコンロケースは輻射熱による加熱の影響は天板よりも小さい。このため天板は、加熱による影響の小さいコンロケースに、周縁部分が取り付けられた状態で熱膨張することになり、天板の内側部分では、熱膨張を吸収するために天板が撓むように変形する。ここで、天板の内側部分に、天板の長手方向に沿って複数の谷部または山部を形成しておけば、谷部では谷がより深くなるように変形し、山部では山がより高くなるように変形するため、熱膨張を複数の谷部または山部で分散して吸収するができる。その結果、天板の特定の箇所が大きく変形することを防止することができるので、天板の変形に起因した問題が生じることを十分に抑制することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、天板の内側部分に、山部よりも多くの谷部を形成することとしても良い。
【0012】
天板が熱膨張すると、天板の谷部は谷が深くなる態様で変形し、山部は山が高くなる態様で変形する。従って、山部よりも多くの谷部を形成しておけば、天板全体としては下向きの凸形状に変形することになる。そして、天板が全体として下向きの凸形状に変形すれば、たとえ山部の位置にコンロバーナが搭載されていたとしても、コンロバーナが搭載された箇所で天板が高くなる方向に変形することを抑制することができる。このため、コンロバーナが搭載された部分で天板が上昇して、コンロバーナでの燃焼状態が悪化する事態を抑制することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、天板上で五徳が載置されている箇所には谷部または山部の何れかを形成することとして、天板上の五徳が谷部または山部を跨いだ状態で載置されるようにしても良い。
【0014】
天板上に載置された五徳が谷部または山部を跨ぐようにしておけば、天板が熱膨張して変形した場合でも、五徳の傾きが大きくなることを抑制することができる。このため、五徳がコンロバーナに対して大きく傾いたり、五徳がガタついたりするなどの問題が発生することを抑制することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のガスコンロにおいては、山部の両側には谷部を形成すると共に、天板の周縁部分を基準とした山部の高さを、周縁部分を基準とした谷部の低さよりも小さな値となるようにしても良い。
【0016】
天板が熱膨張すると山部が形成された部分は全体として上方に変形し、谷部が形成された部分は全体として下方に変形するが、山部の両側に谷部が形成されている場合は、両側に形成された谷部が下方に変形する影響で、山部のベースが下方に移動することになる。このため、天板の周縁部分を基準とした山部の高さを、周縁部分を基準とした谷部の低さよりも小さな値としておけば、熱膨張によって山部の山が高くなるように変形した場合でも、両側の谷部の変形によって打ち消すことができる。その結果、熱膨張の前後で、天板の山部の高さが変化することを抑制することができ、天板の変形に伴う様々な問題の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施例のガスコンロ10の外観形状を示した斜視図である。
【
図2】ガスコンロ10の大まかな構造を示す分解組立図である。
【
図3】従来のガスコンロ90で用いられている天板30の断面形状を示した説明図である。
【
図4】本実施例のガスコンロ10では天板の撓みを抑制可能な理由についての説明図である。
【
図5】第1変形例のガスコンロ10についての説明図である。
【
図6】第2変形例のガスコンロ10についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.本実施例 :
図1は、本実施例のガスコンロ10の外観形状を示した斜視図である。
図1に例示したガスコンロ10は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに嵌め込んで設置されるビルトインタイプのガスコンロ10であり、箱形状のコンロケース20と、コンロケース20の開口した上面を覆って設置される天板30とを備えている。
【0019】
コンロケース20の内部には2つのコンロバーナ40が左右に並べて搭載されており、それぞれのコンロバーナ40は、天板30に形成されたバーナ開口30a(
図2参照)から上部が突出している。そして、バーナ開口30aから突出したコンロバーナ40の上部の外周側面には複数の炎口40aが形成されており、これらの炎口40aから燃料ガスを流出させることが可能となっている。また、天板30から突出したコンロバーナ40の上部を囲むようにして、円形の五徳50が天板30上に搭載されている。このため、五徳50上に鍋などの調理容器を置いた状態で、炎口40aから流出した燃料ガスに点火して、燃料ガスを燃焼させることで、調理容器を下方からコンロバーナ40で加熱することが可能となる。更に、コンロバーナ40の奥側の天板30には、排気口カバー31が取り付けられている。
【0020】
また、ガスコンロ10の前面にはグリル扉21が設けられており、グリル扉21の奥には後述するグリル庫41(
図2参照)が搭載されており、グリル庫41の内部には図示しないグリルバーナが搭載されている。グリル扉21の右方には、2つのコンロバーナ40に対応して2つのコンロ操作ボタン22が設けられており、ガスコンロ10の使用者は何れかのコンロ操作ボタン22を操作することによって、対応するコンロバーナ40に点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。また、グリル扉21の左方には、グリル操作ボタン23が設けられており、使用者はグリル操作ボタン23を操作することによって、グリルバーナに点火したり、消火したり、火力を調節したりすることが可能となっている。
【0021】
図2は、本実施例のガスコンロ10の大まかな構造を示す分解組立図である。図示されるように、コンロケース20は上面が開放した箱形状となっており、コンロケース20の上端は外側に向けて折り曲げられることによってフランジ面24が形成されている。フランジ面24は、矩形の枠形状となっており、手前側の一辺の三箇所には、天板30を取り付けるための嵌合部25が等間隔に形成されている。また、フランジ面24の左奥隅および右奥隅の位置には、天板30を取り付けるための取付穴26が形成されている。
【0022】
コンロケース20の中央にはグリル庫41が搭載されており、グリル庫41の左右の位置にはコンロバーナ40が搭載されている。グリル庫41の内部には図示しないグリルバーナが搭載されており、グリル扉21を開いてグリル庫41内に調理物をセットすると調理物をグリル調理することができる。また、グリル庫41の後方(図面上では奥側)には排気通路42が搭載されており、グリル調理で生じた燃焼排気や油煙などは排気通路42の開口端42aから排出されるようになっている。
【0023】
天板30は矩形形状の板状部材であり、中央には円形のバーナ開口30aが左右に並んで形成されており、2つのバーナ開口30aの奥側には矩形形状の排気口30bが形成されている。また、天板30の裏面の手前側には、図示しない3つの被嵌合部が等間隔に取り付けられており、更に、左奥隅および右奥隅の位置には取付穴32が形成されている。尚、天板30は、必ずしも矩形形状である必要はなく、たとえば、前部を湾曲した形状の略矩形形状としても良い。また、フランジ面24についても必ずしも矩形の枠形状である必要はなく、たとえば、天板30の形状に合わせた略矩形の枠形状としても良い。
【0024】
天板30は、コンロバーナ40の上部をバーナ開口30aに挿通させた状態で、天板30の裏面手前側の図示しない被嵌合部を、コンロケース20のフランジ面24の嵌合部25に嵌合させて、フランジ面24に天板30を載置する。そして、天板30の取付穴32の位置と、フランジ面24の取付穴26の位置とを合わせて、取付ネジ33を挿通することによって、天板30をフランジ面24に取り付ける。こうすると、天板30の排気口30bが、排気通路42の開口端42aの真上の位置となる。また、排気口カバー31は取付ネジ33を覆うようにして排気口30bに取り付けられる。更に、天板30のバーナ開口30aからコンロバーナ40の上部が突出した箇所の天板30上には、五徳50が載置される。
【0025】
このようなガスコンロ10では、コンロバーナ40で燃料ガスを燃焼させると、燃焼による炎の輻射熱で天板30が加熱されるため、天板30が熱膨張する。その一方で、コンロケース20は炎の輻射熱による加熱の影響が天板30よりも小さいから、熱膨張も天板30よりは小さい。このため、天板30は、熱膨張を吸収するために反り返るような態様で変形することになる。このとき、天板30が上向きの凸形状に撓んだ状態で変形すると、天板30のバーナ開口30aから突出したコンロバーナ40の上部に対して天板30が上昇する。その結果、コンロバーナ40の外周側面に形成された炎口40a(
図1参照)に対して天板30が近付き過ぎてしまい、炎口40aに形成される炎に十分な空気を供給することが困難になって、コンロバーナ40の燃焼状態が悪化する虞が生じる。そこで、従来のガスコンロでは、コンロケース20のフランジ面24で支えられた天板30の周縁部分に対して、周縁部分よりも内側の部分が、下向きの凸形状に撓んだ形状に形成されている。
【0026】
図3は、従来のガスコンロ90で用いられている天板30の断面形状を示した説明図である。断面方向は、天板30の長手方向(ここでは、
図2中に示したA-A断面)である。尚、
図3では、コンロケース20内に搭載されたコンロバーナ40やグリル庫41や、天板30のバーナ開口30aについては図示が省略されている。その代わりに、コンロバーナ40が搭載されている位置が、太い一点鎖線で表示されており、天板30上に置かれた五徳50は破線で表示されている。また、天板30やコンロケース20の大きさに対して、天板30の板厚や、コンロケース20を形成する板状部材の板厚は、実際よりも厚めに表示されている。
【0027】
図3(a)には、天板30の温度が低い状態が示されている。前述したように、天板30は周縁部分34がコンロケース20のフランジ面24で支えられているが、周縁部分34よりも内側の部分(以下、内側部分35)は、下向きの凸形状に僅かに撓んだ形状となっている。
図3(a)に示した例では、天板30が下向きの凸形状に撓んだ形状の部分(以下、谷部30vと称する)は、天板30の周縁部分34に対して、Dc0だけ低くなっている。尚、
図3(a)では、天板30の撓みは実際よりも誇張された状態で表示されている。
【0028】
この状態からコンロバーナ40で燃料ガスを燃焼させると、天板30は炎からの輻射熱で加熱されることによって熱膨張する。これに対して、コンロケース20のフランジ面24は熱膨張しないので、天板30の周縁部分34では熱膨張が抑制される。このため、天板30は、天板30の内側部分35で谷部30vの撓みが大きくなる(谷部30vの谷が深くなる)態様で変形することによって熱膨張を吸収しようとする。
図3(b)には、天板30が熱膨張を吸収するために、谷部30vの谷が深くなる態様で変形した状態が示されている。
図3(b)に示した例では、天板30の周縁部分34に対して、天板30の谷部30vは、Dh0だけ低くなっている。尚、
図3(b)でも、天板30の変形が実際よりも誇張された状態で表示されている。
【0029】
図3(a)と
図3(b)とを比較すれば明らかなように、天板30の周縁部分34を基準とする天板30の谷部30vでの谷の深さは、熱膨張前のDc0から熱膨張後のDh0に増加している。また、谷部30vでの谷の深さが増加するに伴って、コンロバーナ40の搭載位置での天板30の傾きも大きくなっている。そして、コンロバーナ40の火力が大きくなれば、燃焼による炎の輻射熱も大きくなるから、天板30の変形(ここでは、谷部30vでの谷の深さ)や、コンロバーナ40の搭載位置での天板30の傾きが大きくなる。その結果、天板30の裏面がコンロケース20内に搭載された他の部品(例えば、グリル庫41の上面)に干渉したり、天板30上の五徳50にガタツキが発生したりといったように、天板30の変形に起因する様々な問題が生じ得る。そこで、本実施例のガスコンロ10では、天板30の変形に起因する問題を抑制するために、次のような断面形状の天板30を採用している。
【0030】
図4は、本実施例のガスコンロ10に採用されている天板30の断面形状についての説明図である。断面方向は、前述した
図3と同様に、天板30の長手方向(ここでは、
図2中に示したA-A断面)である。また、
図4でも、コンロケース20内に搭載されたコンロバーナ40やグリル庫41や、天板30のバーナ開口30aについては図示が省略されている。更に、天板30の板厚や、コンロケース20を形成する板状部材の板厚は、実際よりも厚めに表示されている。
【0031】
図4(a)には、本実施例の天板30の温度が低い状態が示されている。図示されるように、本実施例の天板30の断面形状は、谷部30vが2箇所に形成され、その間に、上向きの凸形状に撓んだ形状の部分が形成された形状となっている。以下では、天板30が上向きの凸形状に撓んだ形状の部分を、山部30mと称する。
図4(a)に示した例では、天板30の谷部30vは、天板30の周縁部分34に対してDc1だけ低くなっている。尚、
図4(a)では、説明の都合上、Dc1の値は、
図3(a)に示したDc0と同じ値に設定されている。また、天板30の山部30mは、周縁部分34に対してUc1だけ高くなっている。尚、
図1を用いて前述したように、ガスコンロ10には2つのコンロバーナ40が左右に並んで搭載されているから、天板30の谷部30vの位置は、コンロバーナ40の搭載位置の付近となる。
図4(a)では、天板30上に置かれた五徳50が破線で表示されている。
【0032】
図4(b)には、本実施例の天板30が加熱されて熱膨張した状態が示されている。
図4(a)と
図4(b)とを比較すれば明らかなように、天板30が熱膨張した状態でも天板30の大まかな形状(2つの谷部30vの間に山部30mが存在する形状)は変わらないが、熱膨張を吸収するために天板30の撓みは大きくなっている。たとえば、天板30の谷部30vに着目すると、
図4(a)に示した熱膨張前では、周縁部分34を基準とする谷部30vの谷の深さは、Dc1であったのに対して、
図4(b)に示した熱膨張後では、周縁部分34を基準とする谷部30vの谷の深さはDh1に増加しており、谷部30vの谷が深く(従って、谷部30vの撓みが大きく)なっている。
【0033】
また、谷部30vと山部30mとの高低差に着目すると、
図4(a)に示した熱膨張前では、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さはDc1であり、周縁部分34を基準とする山部30mの高さはUc1であるから、谷部30vと山部30mとの高低差はDc1+Uc1となる。これに対して、
図4(b)に示した熱膨張後では、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さはDh1であり、周縁部分34を基準とする山部30mの高さはUh1であるから、谷部30vと山部30mとの高低差はDh1+Uh1となる。
図4(a)と
図4(b)とを比較すれば明らかなように、Dh1+Uh1は、Dc1+Uc1よりも大きいから、谷部30vと山部30mとの間でも熱膨張によって撓みが大きくなっている。
【0034】
しかし、
図3を用いて前述した従来技術の天板30に比べると、本実施例の天板30では、熱膨張による変形が小さくなっている。すなわち、
図3(b)と
図4(b)とを比較すると、
図4(b)に示した本実施例では、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さDh1は、
図3(b)に示した従来技術での周縁部分34を基準とする谷部30vの深さDh0よりも小さくなっている。そして、前述したように、熱膨張前の周縁部分34に対する谷部30vの深さは、
図3(a)に示した従来技術と、
図4(a)に示した本実施例とで同じとしているから、本実施例では従来技術に対して熱膨張後の谷部30vの深さが小さくなるということは、熱膨張による天板30の変形が小さくなっていることを示している。また、本実施例では熱膨張による天板30の変形が小さくなった理由は、
図3に示した従来技術の天板30では、1箇所の谷部30vで熱膨張を吸収しているのに対して、
図4に示した本実施例の天板30では、2箇所の谷部30vと1箇所の山部30mの3箇所で分散して熱膨張を吸収できるためと考えられる。
【0035】
このように、本実施例の天板30では、熱膨張を分散して吸収することができるため、天板30に生じる変形を小さくすることができる。このため、天板30の変形に起因する様々な問題を抑制することが可能となる。
【0036】
また、
図4に示したように、本実施例の天板30では、谷部30vの位置がコンロバーナ40の搭載位置の近くに形成されている。このため、ガスコンロ10の五徳50は、谷部30vを跨いだ状態で天板30上に置かれることになり、天板30が熱膨張で変形しても、五徳50がコンロバーナ40に対して傾いたり、五徳50が傾いてガタツキが発生したりすることも抑制することが可能となる。
【0037】
加えて、本実施例の天板30では、2つの谷部30vの間に山部30mが形成されているので、天板30が熱膨張で変形した場合でも、山部30mが大きく下方に変形することが無い。このため、山部30mの裏面が、コンロケース20内に搭載された他の部品(例えば、グリル庫41など)に干渉する事態を防止することができる。
【0038】
また、天板30の周縁部分34を基準とした山部30mの高さに着目して、熱膨張前の
図4(a)と熱膨張後の
図4(b)とを比較すると、本実施例の天板30では、熱膨張することによって周縁部分34からの山部30mの高さが低くなっている。この理由は、山部30mの両側に存在する谷部30vが熱膨張による変形で下方に移動するので、その影響で山部30mも下方に移動しているためである。従って、
図4(a)に例示したように、熱膨張前の山部30mを周縁部分34よりも僅かに高く(例えば、周縁部分34を基準とする山部30mの高さUc1の絶対値を、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さDc1の絶対値よりも小さな値に)設定しておけば、熱膨張後は山部30mがほぼ周縁部分34と同じ高さとなるようにすることができ、その結果、山部30mの付近では、熱膨張の前後でほとんど天板30が変形しないようにすることができる。このため、例えば、2つのコンロバーナ40の間の奥側の位置に3つめのコンロバーナ40を搭載したガスコンロ10では、天板30の熱膨張によって3つめのコンロバーナ40の燃焼状態が悪化したり、五徳50がコンロバーナ40に対して大きく傾いたり、五徳50のガタツキが発生したりすることを抑制することが可能となる。
【0039】
尚、
図4に示した例では、天板30の内側部分35に、2つの谷部30vと1つの山部30mとが形成されているものとして説明したが、より多くの谷部30vと山部30mとを形成しても良い。例えば、3つの谷部30vを形成し、谷部30vと谷部30vとの間に1つずつ(合計で2つ)の山部30mを形成しても良い。
【0040】
B.第1変形例 :
上述した本実施例のガスコンロ10では、天板30の内側部分35には、谷部30vよりも多くの山部30mが形成されているものとして説明した。しかし、山部30mの数は、必ずしも谷部30vの数よりも少なくする必要はなく、谷部30vよりも多くの山部30mを形成しても良い。
【0041】
図5は、谷部30vよりも多くの山部30mが形成された第1変形例のガスコンロ10についての説明図である。
図5(a)には天板30が熱膨張する前の状態が示されている。
図5(a)に示した第1変形例のガスコンロ10では、天板30の内側部分35に形成された2つの山部30mは、周縁部分34を基準とする山の高さがUc2となっており、2つの山部30mの間に形成された谷部30vは、周縁部分34を基準とする谷の深さがDc2となっている。尚、周縁部分34を基準とする山部30mの高さUc2は、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さDc2よりも小さな値となっている。
【0042】
図5(b)には第1変形例のガスコンロ10が熱膨張した後の状態が示されている。第1変形例のガスコンロ10でも、熱膨張の前後で天板30の大まかな形状は変わらない。すなわち、
図5に示した例では、2つの山部30mの間に谷部30vが存在する形状は変わらない。しかし、天板30の熱膨張を吸収するために、熱膨張後は天板30の撓みが大きくなっている。例えば、天板30の周縁部分34を基準とする山部30mの高さは、熱膨張前のUc2から熱膨張後のUh2に増加し、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さは、熱膨張前のDc2から熱膨張後のDh2に増加する。
【0043】
しかし、
図3を用いて前述した従来技術の天板30に比べると、第1変形例の天板30でも、熱膨張による変形が小さくなっている。すなわち、
図3に例示した従来技術では、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さは、熱膨張の前後でDc0からDh0に増加するが、
図5に例示した第1変形例では、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さは、熱膨張の前後でDc2からDh2に増加している。従って、谷部30vの深さの増加量を比べると、第1変形例の増加量(=Dh2-Dc2)の方が従来技術の増加量(=Dh0-Dc0)よりも小さくなっており、天板30が撓む変形は小さくなっている。この理由は、第1変形例の場合も、天板30の熱膨張を2箇所の山部30mと1箇所の谷部30vの3箇所で分散して吸収しているためと考えられる。
【0044】
また、第1変形例の天板30では、2つの山部30mの間に谷部30vが形成されている。このため、天板30の熱膨張によって谷部30vの谷が深くなるように変形しても、両側の山部30mで山が高くなるように変形するので、谷部30vが大きく下方に変形することが無い。このため、天板30の中央部分に形成された谷部30vの裏面が、コンロケース20内に搭載された他の部品(例えば、グリル庫41など)に干渉することを防止できる。
【0045】
また、
図5に示すように、第1変形例の天板30では、山部30mの位置がコンロバーナ40の搭載位置の近くに形成されている。このため、ガスコンロ10の五徳50は、山部30mを跨いだ状態で天板30上に置かれることになり、天板30が熱膨張で変形しても、五徳50がコンロバーナ40に対して傾いたり、五徳50が傾いてガタツキが発生したりすることも抑制することが可能となる。加えて、第1変形例の天板30では、天板30が熱膨張すると、2つの山部30mの間の谷部30vが下方に変形するので、山部30mでの上方への変形が抑制される。このため、山部30mの近くに存在するコンロバーナ40の搭載位置でも、上方への変形を抑制することができるため、コンロバーナの燃焼状態が悪化する事態を抑制することもできる。
【0046】
尚、
図5に示した例では、天板30の内側部分35に2つの山部30mと1つの谷部30vとが形成されているが、より多くの山部30mと谷部30vとを形成しても良い。例えば、3つの山部30mを形成し、山部30mと山部30mとの間に1つずつ(合計で2つ)の谷部30vを形成しても良い。
【0047】
C.第2変形例 :
上述した本実施例および第1変形例のガスコンロ10では、天板30の内側部分35に形成されている谷部30vの数と山部30mの数とは異なっているものとして説明した。しかし、谷部30vと山部30mとを同数ずつ形成するようにしても良い。
【0048】
図6は、天板30の内側部分35に谷部30vと山部30mとが1つずつ形成された第2変形例のガスコンロ10を例示した説明図である。
図6(a)には天板30が熱膨張する前の状態が示されており、
図6(b)には熱膨張した後の状態が示されている。
図6(a)に例示した第2変形例のガスコンロ10では、天板30の周縁部分34を基準とする谷部30vの深さがDc3となっており、周縁部分34を基準とする山の高さがUc3となっている。尚、
図6に示した例では、谷部30vの深さDc3と、山部30mの高さUc3とは同じ値となっているが、山部30mの高さUc3は谷部30vの深さDc3よりも小さな値としても良い。
【0049】
図6(b)には第2変形例のガスコンロ10が熱膨張した後の状態が示されている。第2変形例のガスコンロ10でも、熱膨張の前後で天板30の大まかな形状は変わらない。しかし、天板30の熱膨張を吸収するために、熱膨張後は天板30の撓みが大きくなっている。例えば、天板30の周縁部分34を基準とする谷部30vの深さは、熱膨張前のDc3から熱膨張後のDh3に増加し、周縁部分34を基準とする山部30mの高さは、熱膨張前のUc3から熱膨張後のUh3に増加している。
【0050】
しかし、
図3を用いて前述した従来技術の天板30に比べると、第2変形例の天板30でも、熱膨張による変形が小さくなっている。すなわち、
図3に例示した従来技術では、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さは、熱膨張の前後でDc0からDh0に増加するが、
図6に例示した第2変形例では、周縁部分34を基準とする谷部30vの深さは、熱膨張の前後でDc3からDh3に増加している。従って、谷部30vの深さの増加量を比べると、第2変形例の増加量(=Dh3-Dc3)の方が従来技術の増加量(=Dh0-Dc0)よりも小さくなっており、天板30が撓む変形は小さくなっている。この理由は、第2変形例の場合も、天板30の熱膨張を谷部30vおよび山部30mの2箇所で分散して吸収しているためと考えられる。
【0051】
また、
図6に示すように、第2変形例の天板30では、谷部30vの位置および山部30mの位置がコンロバーナ40の搭載位置の近くに形成されている。このため、ガスコンロ10の五徳50は、谷部30vあるいは山部30mを跨いだ状態で天板30上に置かれることになり、天板30が熱膨張で変形しても、五徳50がコンロバーナ40に対して傾いたり、五徳50が傾いてガタツキが発生したりすることも抑制することが可能となる。
【0052】
尚、
図6に示した例では、天板30の内側部分35に谷部30vと山部30mとが1つずつ形成されているが、より多くの山部30mと谷部30vとを形成しても良い。例えば、2つの谷部30vと2つの山部30mとを、谷部30vと山部30mとが交互になるように形成しても良い。
【0053】
以上、本実施例および各種の変形例のガスコンロ10について説明したが、本発明は上記の実施例や変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0054】
例えば、
図4~
図6を用いて前述したように、本実施例や変形例のガスコンロ10では、天板30の山部30mは周縁部分34よりも高くなっているものとして説明した。しかし、山部30mは、谷部30vよりも高くなっていれば十分であり、周縁部分34よりも低くなっていても構わない。
【符号の説明】
【0055】
10…ガスコンロ、 20…コンロケース、 21…グリル扉、
22…コンロ操作ボタン、 23…グリル操作ボタン、 24…フランジ面、
25…嵌合部、 26…取付穴、 30…天板、 30a…バーナ開口、
30b…排気口、 30m…山部、 30v…谷部、 31…排気口カバー、
32…取付穴、 33…取付ネジ、 34…周縁部分、 35…内側部分、
40…コンロバーナ、 40a…炎口、 41…グリル庫、 42…排気通路、
42a…開口端、 50…五徳、 90…ガスコンロ。