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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169517
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20231122BHJP
   G01T 1/202 20060101ALI20231122BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G01T1/20 G
G01T1/20 E
G01T1/202
A61B6/00 300S
A61B6/00 300W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080663
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】身深 亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖史
(72)【発明者】
【氏名】米澤 宏
(72)【発明者】
【氏名】鬼橋 浩志
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD10
2G188FF12
4C093AA03
4C093CA06
4C093EB12
4C093EB17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ノイズ低減を図ることができる放射線検出器の提供。
【解決手段】放射線検出器は基板と基板上の制御ラインとデータラインとデータライン間に設けられるバイアスラインと制御ラインとデータラインで画された領域毎に設けられた光電変換部と光電変換部領域外に設けられたノイズ検出部とシンチレータを備える。光電変換部は、光電変換素子、第1薄膜トランジスタ、第1有機材料の第1絶縁層を有し、第1絶縁層は光電変換素子の側面側の第1薄膜トランジスタ上に設けられ、第1バイアスラインは第1絶縁層上に設けられる。ノイズ検出部は、第2薄膜トランジスタ、第2有機材料の第2絶縁層を有する。第2絶縁層は第2薄膜トランジスタ上に設けられ、第2バイアスラインが第2絶縁層上に設けられる。第2薄膜トランジスタのソース電極と第2バイアスライン間の静電容量は、第1薄膜トランジスタのソース電極と第1バイアスライン間の静電容量と略同じである。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に設けられ、第1の方向に延びる複数の制御ラインと、
前記基板の上に設けられ、前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる複数のデータラインと、
隣り合う前記データライン同士の間のそれぞれに設けられ、前記第2の方向に延びるバイアスラインと、
前記複数の制御ラインと、前記複数のデータラインと、により画された複数の領域のそれぞれに設けられた光電変換部と、
前記複数の光電変換部が設けられた領域の外側に設けられた複数のノイズ検出部と、
前記複数の光電変換部が設けられた領域の上に設けられたシンチレータと、
を備え、
前記複数の光電変換部のそれぞれは、光電変換素子、ソース電極を有する第1の薄膜トランジスタ、および、第1の絶縁層を有し、
前記第1の絶縁層は、絶縁性を有する第1の有機材料を含み、前記光電変換素子の側面側であって、前記ソース電極を有する第1の薄膜トランジスタの上に設けられ、
前記第1の絶縁層の上には、第1のデータラインと、第1のバイアスラインと、が設けられ、
前記複数のノイズ検出部のそれぞれは、ソース電極を有する第2の薄膜トランジスタ、および、第2の絶縁層を有し、
前記第2の絶縁層は、絶縁性を有する第2の有機材料を含み、前記ソース電極を有する第2の薄膜トランジスタの上に設けられ、
前記第2の絶縁層の上には、第2のバイアスラインが設けられ、
前記第2の薄膜トランジスタの前記ソース電極と、前記第2のバイアスラインとの間の静電容量は、前記第1の薄膜トランジスタの前記ソース電極と、前記第1のバイアスラインとの間の静電容量と略同じである放射線検出器。
【請求項2】
前記第2の有機材料は、前記第1の有機材料と同じである請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記第2の絶縁層は、厚みの薄い部分、または、厚み方向を貫通する除去部を有する請求項1記載の放射線検出器。
【請求項4】
無機材料を含み、前記光電変換素子、前記第1の薄膜トランジスタ、および前記第2の薄膜トランジスタを覆う第3の絶縁層をさらに備えた請求項1~3のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【請求項5】
複数のノイズ検出部は、前記第1の方向、および前記第2の方向の少なくともいずれかの方向に並べて設けられている請求項1~3のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記光電変換素子の、前記基板側の電極は、前記第1の薄膜トランジスタの前記ソース電極と電気的に接続され、
前記光電変換素子の、前記基板側とは反対側の電極は、前記第1のバイアスラインと電気的に接続され、
前記第1の薄膜トランジスタのゲート電極は、前記制御ラインと電気的に接続され、
前記第1の薄膜トランジスタのドレイン電極は、前記第1のデータラインと電気的に接続されている請求項1~3のいずれか1つに記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器の一例にX線検出器がある。X線検出器には、例えば、複数の光電変換部を有するアレイ基板と、複数の光電変換部の上に設けられX線を蛍光に変換するシンチレータとが設けられている。また、光電変換部には、シンチレータからの蛍光を信号電荷に変換する光電変換素子、信号電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う薄膜トランジスタなどが設けられている。
【0003】
一般的には、X線検出器は、以下のようにしてX線画像を構成する。まず、外部から入力された信号によりX線の入射を認識する。次に、予め定められた時間の経過後に、読み出しを行う光電変換部の薄膜トランジスタをオン状態にして、蓄積された信号電荷を画像データ信号として読み出す。そして、各光電変換部毎に読み出された画像データ信号の値に基づいてX線画像を構成する。
【0004】
ところが、各光電変換部毎に読み出された画像データ信号の値には、X線の線量に応じた値と、ノイズに応じた値とが含まれている。そのため、X線画像を構成する際には、各光電変換部毎に読み出された画像データ信号の値からノイズに応じた値を差し引く、オフセット処理(オフセット補正)が行われる。
【0005】
この場合、ノイズには大きく分けて、ランダムノイズと横引きノイズがある。ランダムノイズは、X線画像の全体に一様に分布して発生する。一方、横引きノイズは横方向もしくは縦方向に筋状に現われる。そのため、横引きノイズの方がランダムノイズよりも目立ちやすくなるので、横引きノイズの低減が求められる。
【0006】
この様な横引きノイズの低減を図るために、X線の入射時に信号電荷を発生しないノイズ検出部を設ける技術が提案されている。この様な技術においては、光電変換部から読み出された画像データ信号の値から、ノイズ検出部から読み出されたノイズ信号の値を差し引くようにしている。
しかしながら、ノイズ検出部を設けたとしても、ノイズの低減に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-97452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ノイズのさらなる低減を図ることができる放射線検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る放射線検出器は、基板と、前記基板の上に設けられ、第1の方向に延びる複数の制御ラインと、前記基板の上に設けられ、前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる複数のデータラインと、隣り合う前記データライン同士の間のそれぞれに設けられ、前記第2の方向に延びるバイアスラインと、前記複数の制御ラインと、前記複数のデータラインと、により画された複数の領域のそれぞれに設けられた光電変換部と、前記複数の光電変換部が設けられた領域の外側に設けられた複数のノイズ検出部と、前記複数の光電変換部が設けられた領域の上に設けられたシンチレータと、を備えている。前記複数の光電変換部のそれぞれは、光電変換素子、ソース電極を有する第1の薄膜トランジスタ、および、第1の絶縁層を有している。前記第1の絶縁層は、絶縁性を有する第1の有機材料を含み、前記光電変換素子の側面側であって、前記ソース電極を有する第1の薄膜トランジスタの上に設けられている。前記第1の絶縁層の上には、第1のデータラインと、第1のバイアスラインと、が設けられている。前記複数のノイズ検出部のそれぞれは、ソース電極を有する第2の薄膜トランジスタ、および、第2の絶縁層を有している。前記第2の絶縁層は、絶縁性を有する第2の有機材料を含み、前記ソース電極を有する第2の薄膜トランジスタの上に設けられている。前記第2の絶縁層の上には、第2のバイアスラインが設けられている。前記第2の薄膜トランジスタの前記ソース電極と、前記第2のバイアスラインとの間の静電容量は、前記第1の薄膜トランジスタの前記ソース電極と、前記第1のバイアスラインとの間の静電容量と略同じである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】X線検出器を例示するための模式斜視図である。
図2】X線検出器のブロック図である。
図3】アレイ基板の回路図である。
図4】比較例に係るノイズ検出部を例示するための模式平面図である。
図5】比較例に係るノイズ検出部を例示するための模式平面図である。
図6】光電変換部の模式断面図である。
図7】比較例に係るノイズ検出部の模式断面図である。
図8】本実施の形態に係るノイズ検出部を例示するための模式平面図である。
図9】本実施の形態に係るノイズ検出部を例示するための模式平面図である。
図10】本実施の形態に係るノイズ検出部の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る放射線検出器は、X線のほかにもγ線などの各種放射線に適用させることができる。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
以下に例示をするX線検出器1は、放射線画像であるX線画像を検出するX線平面センサである。
X線検出器1は、例えば、一般医療などに用いることができるが、用途に限定はない。
【0012】
図1は、X線検出器1を例示するための模式斜視図である。
なお、図1においては、バイアスライン2c3などを省いて描いている。
図2は、X線検出器1のブロック図である。
図3は、アレイ基板2の回路図である。
図1図3に示すように、X線検出器1には、アレイ基板2、信号処理回路3、画像構成回路4、およびシンチレータ5が設けられている。
【0013】
アレイ基板2は、シンチレータ5によりX線から変換された蛍光(可視光)を電気信号に変換する。
アレイ基板2は、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、データライン(又はシグナルライン)2c2、バイアスライン2c3、および、ノイズ検出部2gを有する。
【0014】
なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、データライン2c2、バイアスライン2c3、およびノイズ検出部2gの数などは例示をしたものに限定されるわけではない。
【0015】
基板2aは、板状を呈し、無アルカリガラスなどの透光性材料から形成されている。
光電変換部2bは、基板2aの一方の表面に複数設けられている。
光電変換部2bは、矩形状を呈し、複数の制御ライン2c1と、複数のデータライン2c2と、により画された複数の領域のそれぞれに設けられている。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。
なお、1つの光電変換部2bは、X線画像における1つの画素(pixel)に対応する。
【0016】
複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1、薄膜トランジスタ2b2(第1の薄膜トランジスタの一例に相当する)、および、絶縁層2f4(第1の絶縁層の一例に相当する)が設けられている。なお、絶縁層2f4に関する詳細は後述する。
また、図3に示すように、光電変換素子2b1において変換した信号電荷を蓄積する蓄積キャパシタ2b3を設けることもできる。蓄積キャパシタ2b3は、例えば、矩形平板状を呈し、各薄膜トランジスタ2b2の下に設けることができる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタ2b3を兼ねることができる。
【0017】
光電変換素子2b1は、例えば、フォトダイオードなどとすることができる。
薄膜トランジスタ2b2は、蛍光が光電変換素子2b1に入射することで生じた電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う。薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極2b2a、ドレイン電極2b2b及びソース電極2b2cを有している。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極2b2aは、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極2b2bは、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2cは、対応する光電変換素子2b1(電極2b1b)と蓄積キャパシタ2b3とに電気的に接続される。また、光電変換素子2b1のアノード側と蓄積キャパシタ2b3は、対応するバイアスライン2c3と電気的に接続される。
【0018】
制御ライン2c1は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。制御ライン2c1は、例えば、行方向(第1の方向の一例に相当する)に延びている。
1つの制御ライン2c1は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のうちの1つと電気的に接続されている。1つの配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の他端は、信号処理回路3に設けられた制御回路31と電気的に接続されている。
【0019】
データライン2c2は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。データライン2c2は、例えば、行方向に直交する列方向(第2の方向の一例に相当する)に延びている。
1つのデータライン2c2は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2のうちの1つと電気的に接続されている。1つの配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の他端は、信号処理回路3に設けられた信号検出回路32と電気的に接続されている。
【0020】
バイアスライン2c3は、隣り合うデータライン2c2同士の間のそれぞれに設けられている。バイアスライン2c3は、データライン2c2が延びる方向に延びている。
バイアスライン2c3には、図示しないバイアス電源が電気的に接続されている。図示しないバイアス電源は、例えば、信号処理回路3などに設けることができる。
なお、バイアス電源は、必ずしも必要ではなく、必要に応じて設けるようにすればよい。バイアス電源が設けられない場合には、バイアスライン2c3は、例えば、グランドに電気的に接続することができる。
【0021】
制御ライン2c1、データライン2c2、およびバイアスライン2c3は、例えば、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成することができる。
【0022】
絶縁層2fは、光電変換部2b、制御ライン2c1、データライン2c2、バイアスライン2c3、およびノイズ検出部2gを覆っている。
絶縁層2fは、例えば、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、酸窒化物絶縁材料、および樹脂材料の少なくとも1種を含む。
なお、絶縁層2fに関する詳細は後述する。
【0023】
図3に示すように、ノイズ検出部2gは、複数設けられている。複数のノイズ検出部2gは、複数の光電変換部2bが設けられた領域(有効画素領域)の外側に並べて設けられている。複数のノイズ検出部2gは、制御ライン2c1が延びる方向、およびデータライン2c2が延びる方向の少なくともいずれかの方向に並べて設けられている。例えば、図3に示すように、複数のノイズ検出部2gは、データライン2c2が延びる方向に並べて設けることができる。複数のノイズ検出部2gは、例えば、制御ライン2c1が延びる方向に並べて設けることもできる。複数のノイズ検出部2gは、例えば、制御ライン2c1が延びる方向、およびデータライン2c2が延びる方向に並べて設けることもできる。
【0024】
図3に例示をしたものは、複数のノイズ検出部2gが、有効画素領域の一方の外側に設けられているが、有効画素領域の二方の外側、三方の外側、四方の外側に設けられていてもよい。また、ノイズ検出部2gの列が複数設けられていてもよい。
【0025】
複数のノイズ検出部2gのそれぞれには、バイアス電極2g1、薄膜トランジスタ2b2(第2の薄膜トランジスタの一例に相当する)、および絶縁層2f4b(第2の絶縁層の一例に相当する)が設けられている。
なお、絶縁層2f4bに関する詳細は後述する。
薄膜トランジスタ2b2は、対応する制御ライン2c1と対応するデータライン2c2とに電気的に接続されている。バイアス電極2g1は、バイアスライン2c3と電気的に接続されている。
【0026】
なお、光電変換部2bに蓄積キャパシタ2b3が設けられる場合には、ノイズ検出部2gにも蓄積キャパシタ2b3を設けることもできる。蓄積キャパシタ2b3は、例えば、バイアス電極2g1の下方に設けることができる。
バイアス電極2g1は、例えば、金属などの導電性材料から形成される。バイアス電極2g1が導電性材料から形成されていれば、シンチレータ5で発生した蛍光がバイアス電極2g1に入射したとしても信号電荷の発生はほとんどない。バイアス電極2g1は、例えば、バイアスライン2c3と同じ材料から形成することができる。バイアス電極2g1は、例えば、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成することができる。
【0027】
ノイズ検出部2gに設けられた薄膜トランジスタ2b2のゲート電極2b2aは、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極2b2bは、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2cは、例えば、対応するバイアス電極2g1と対向している(図10を参照)。
なお、ノイズ検出部2gの構成に関する詳細は後述する。
【0028】
信号処理回路3は、アレイ基板2の、シンチレータ5側とは反対側に設けられている。 図2に示すように、信号処理回路3には、制御回路31と、信号検出回路32とが設けられている。
制御回路31は、薄膜トランジスタ2b2のオン状態とオフ状態を切り替える。
制御回路31は、複数のゲートドライバ31aと行選択回路31bとを有する。
【0029】
行選択回路31bには、画像構成回路4などから制御信号S1が入力される。行選択回路31bは、X線画像の走査方向に従って、対応するゲートドライバ31aに制御信号S1を入力する。
ゲートドライバ31aは、対応する制御ライン2c1に制御信号S1を入力する。
【0030】
例えば、制御回路31は、フレキシブルプリント基板2e1を介して、制御信号S1を各制御ライン2c1毎に順次入力する。
制御ライン2c1に入力された制御信号S1により、光電変換部2bに設けられた薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、蓄積キャパシタ2b3からの信号電荷(画像データ信号S2)が受信できるようになる。
【0031】
信号検出回路32は、薄膜トランジスタ2b2がオン状態の時に、画像構成回路4からのサンプリング信号に従って、データライン2c2およびフレキシブルプリント基板2e2を介して蓄積キャパシタ2b3から画像データ信号S2を読み出す。
例えば、画像データ信号S2は、以下のようにして読み出すことができる。
まず、制御回路31によって薄膜トランジスタ2b2が順次オン状態となる。薄膜トランジスタ2b2がオン状態となることで、バイアスライン2c3を介して一定の電荷が蓄積キャパシタ2b3に蓄積される。次に、薄膜トランジスタ2b2をオフ状態にする。X線が照射されると、シンチレータ5によりX線が蛍光に変換される。蛍光が光電変換素子2b1に入射すると、光電効果によって電荷(電子およびホール)が発生し、発生した電荷と、蓄積キャパシタ2b3に蓄積されている電荷(異種電荷)とが結合して蓄積されている電荷が減少する。次に、制御回路31は、薄膜トランジスタ2b2を順次オン状態にする。信号検出回路32は、サンプリング信号に従って各蓄積キャパシタ2b3に蓄積されている減少した電荷(画像データ信号S2)をデータライン2c2を介して読み出す。 また、信号検出回路32は、薄膜トランジスタ2b2がオフ状態の時に、データライン2c2およびフレキシブルプリント基板2e2を介してノイズ検出部2gからのノイズ電流(ノイズ信号N)を読み出す。
【0032】
画像構成回路4は、配線4aを介して、信号検出回路32と電気的に接続されている。なお、画像構成回路4は、信号処理回路3と一体化されていてもよいし、無線により信号検出回路32とデータ通信を行うようにしてもよい。
画像構成回路4は、読み出された画像データ信号S2を受信し、受信した画像データ信号S2を順次増幅し、増幅された画像データ信号S2(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。そして、画像構成回路4は、デジタル信号に変換された画像データ信号S2に基づいて、X線画像を構成する。構成されたX線画像のデータは、画像構成回路4から外部の機器に向けて出力される。
【0033】
シンチレータ5は、複数の光電変換部2bが設けられた領域の上に設けられ、入射するX線を蛍光に変換する。シンチレータ5は、基板2a上の有効画素領域を覆うように設けられている。
【0034】
シンチレータ5は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、あるいはヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)などを用いて形成することができる。この場合、真空蒸着法などを用いて、シンチレータ5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ5が形成される。
また、シンチレータ5は、例えば、酸硫化ガドリニウム(GdS)などを用いて形成することもできる。この場合、各光電変換部2bごとに四角柱状のシンチレータ5を設けることができる。
【0035】
その他、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために、シンチレータ5の表面側(X線の入射面側)を覆うように図示しない反射層を設けることができる。
また、空気中に含まれる水蒸気により、シンチレータ5の特性と反射層の特性が劣化するのを抑制するために、シンチレータ5と反射層を覆う図示しない防湿体を設けることができる。
【0036】
次に、ノイズ検出部2gについてさらに説明する。
X線画像に現れるノイズには、大きく分けてランダムノイズと横引きノイズがある。ランダムノイズは、X線画像の全体に一様に分布して発生するため、特定の模様や輪郭を持たない。これに対して、横引きノイズは、X線画像の横方向もしくは縦方向に筋状に現われる。この場合、X線画像は人間が見るものであるため、模様や輪郭のないランダムノイズよりも、模様や輪郭を有する横引きノイズの方がX線画像の品質に与える影響が大きい。そのため、X線検出器においては、横引きノイズの低減が求められる。
【0037】
横引きノイズの発生源は、主に、制御回路31であると考えられている。例えば、制御回路31において発生したノイズや、制御回路31を駆動するための電源線のノイズが制御ライン2c1に侵入する場合がある。制御ライン2c1とデータライン2c2との間には、薄膜トランジスタ2b2が電気的に接続されている。そのため、薄膜トランジスタ2b2がオフ状態となっていれば、制御ライン2c1からデータライン2c2にノイズが侵入しないとも考えられる。ところが、薄膜トランジスタ2b2の近傍には光電変換素子2b1が配置されている。そのため、光電変換素子2b1の電極2b1bと、薄膜トランジスタ2b2との間に線間容量(浮遊容量)が発生し、静電結合により、制御ライン2c1からデータライン2c2にノイズが侵入する場合がある。制御ライン2c1からデータライン2c2にノイズが侵入すると、横引きノイズが発生する。
【0038】
この場合、制御回路31や電源線において発生するノイズを減らせば、横引きノイズを低減させることができる。しかしながら、この様なノイズ対策を講じれば、X線検出器1の構造が複雑となり、高価格化を招くことになる。
【0039】
そのため、一般的には、横引きノイズを検出するノイズ検出部102aを複数設け、各光電変換部2bから出力された画像データ信号S2の値から、検出された横引きノイズに応じた値を差し引く、オフセット処理が行われる。
【0040】
図4および図5は、比較例に係るノイズ検出部102gを例示するための模式平面図である。
図4は、複数のノイズ検出部102gをデータライン2c2に沿って並べた場合である。
図5は、複数のノイズ検出部102gを制御ライン2c1に沿って並べた場合である。
図6は、光電変換部2bの模式断面図である。図6は、図4および図5における光電変換部2bのA-A線断面図である。
図7は、比較例に係るノイズ検出部102gの模式断面図である。図7は、図4および図5におけるノイズ検出部102gのB-B線断面図である。
なお、図4図7は、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタ2b3を兼ねる場合である。
【0041】
図4図5、および図6に示すように、光電変換部2bに設けられた光電変換素子2b1は、pn接合またはpin構造を有する半導体層2b1a、半導体層2b1aの基板2a側に設けられた電極2b1b、および半導体層2b1aの基板2a側とは反対側に設けられた透明電極2b1cを有する。電極2b1bは、薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2cと電気的に接続されている。透明電極2b1cは、電極2c3aを介して、バイアスライン2c3(第1のバイアスラインの一例に相当する)と電気的に接続されている。
【0042】
前述したように、光電変換部2bに設けられた薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極2b2a、ドレイン電極2b2b、およびソース電極2b2cを有している。ゲート電極2b2aは、制御ライン2c1と電気的に接続される。ドレイン電極2b2bは、電極2c2aを介して、データライン2c2(第1のデータラインの一例に相当する)と電気的に接続される。ソース電極2b2cは、光電変換素子2b1の電極2b1bと電気的に接続される。
【0043】
光電変換素子2b1、および薄膜トランジスタ2b2は、基板2aの上に設けられ、絶縁性を有する無機材料(例えば、酸化物絶縁材料など)を含む絶縁層2f1~2f3により覆われている。
【0044】
また、絶縁層2f3とデータライン2c2との間、および絶縁層2f3とバイアスライン2c3との間には、絶縁性を有する有機材料(第1の有機材料の一例に相当する)を含む絶縁層2f4が設けられている。絶縁層2f4は、光電変換素子2b1の側面側であって、薄膜トランジスタ2b2の上に設けられている。絶縁層2f4の上には、データライン2c2と、バイアスライン2c3とが設けられている。絶縁層2f4の上に設けられたデータライン2c2およびバイアスライン2c3は、絶縁性を有する無機材料を含む絶縁層2f5により覆われている。また。絶縁性を有する有機材料を含む絶縁層2f6が、絶縁層2f5の上に設けられている。
【0045】
図4図5、および図7に示すように、ノイズ検出部102gには、光電変換素子2b1が設けられていない。ノイズ検出部102gには、例えば、薄膜トランジスタ2b2、バイアス電極102g1、および絶縁層2f1~2f3、2f4a~2f6が設けられている。この場合、ノイズ検出部102gに設けられた絶縁層2f4aの体積は、光電変換部2bに設けられた絶縁層2f4の体積よりも、光電変換素子2b1の体積分だけ大きくなっている。
【0046】
ノイズ検出部102gには、光電変換素子2b1が設けられていないので、シンチレータ5において発生した蛍光が、ノイズ検出部102gに入射したとしても信号電荷が発生しない。すなわち、ノイズ検出部102gは、X線の入射時に信号電荷を発生しない。そのため、ノイズ検出部102gからの出力には、X線の線量に応じた値が含まれておらず、ノイズに応じた値が含まれている。
【0047】
ここで、前述したように、横引きノイズは、薄膜トランジスタ2b2を介して制御ライン2c1からデータライン2c2に侵入するノイズにより発生すると考えられていた。そのため、光電変換部2bと同様に、ノイズ検出部102gを薄膜トランジスタ2b2を介して制御ライン2c1に接続すれば、ノイズ検出部102gからの出力値と画像データ信号S2に含まれているノイズとが同等となると考えられていた。
【0048】
ところが、本発明者の得た知見によれば、横引きノイズは、制御ライン2c1からデータライン2c2に侵入するノイズと、バイアスライン2c3からデータライン2c2に侵入するノイズとにより発生することが判明した。
【0049】
この場合、バイアスライン2c3とデータライン2c2との間の静電結合により、バイアスライン2c3からデータライン2c2にノイズが侵入すると考えられる。そのため、光電変換部2bにおけるバイアスライン2c3とデータライン2c2との間の静電容量と、ノイズ検出部102gにおけるバイアスライン2c3とデータライン2c2との間の静電容量とが同等であれば、ノイズ検出部102gからの出力値と画像データ信号S2に含まれているノイズとが同等となると考えられる。
【0050】
ところが、前述したように、ノイズ検出部102gに設けられた絶縁層2f4aの体積は、光電変換部2bに設けられた絶縁層2f4の体積よりも、光電変換素子2b1の体積分だけ大きい。そのため、光電変換部2bにおける静電容量と、ノイズ検出部102gにおける静電容量とが異なるものとなり、ノイズ検出部102gからの出力値と画像データ信号S2に含まれているノイズとが同等とならなくなる。
【0051】
図8および図9は、本実施の形態に係るノイズ検出部2gを例示するための模式平面図である。
図8は、複数のノイズ検出部2gをデータライン2c2に沿って並べた場合である。 図9は、複数のノイズ検出部2gを制御ライン2c1に沿って並べた場合である。
図10は、本実施の形態に係るノイズ検出部2gの模式断面図である。図10は、図8におけるノイズ検出部2gのC-C線断面図である。
なお、図8図10は、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタ2b3を兼ねる場合である。
また、光電変換部2bの構成は、図6に例示をした光電変換部2bの構成と同様である。
【0052】
図8図9、および図10に示すように、ノイズ検出部2gには、光電変換素子2b1が設けられていない。ノイズ検出部2gには、例えば、薄膜トランジスタ2b2、バイアス電極2g1、および絶縁層2f1~2f3、2f4b~2f6が設けられている。
絶縁層2f4bは、絶縁性を有する有機材料(第2の有機材料の一例に相当する)を含み、薄膜トランジスタ2bの上に設けられている。絶縁層2f4bの上には、データライン2c2と、バイアスライン2c3(第2のバイアスラインの一例に相当する)と、が設けられている。
【0053】
本実施の形態に係るノイズ検出部2gにおいては、ノイズ検出部2gにおけるデータライン2c2とバイアスライン2c3との間の静電容量が、光電変換部2bにおけるデータライン2c2とバイアスライン2c3との間の静電容量と略同じとされている。例えば、絶縁層2f4bの有機材料は、絶縁層2f4の有機材料と同じであり、絶縁層2f4の面積を調整することで、静電容量が略同じとなるようにしている。例えば、絶縁層2f4bに、厚みの薄い部分、または、厚み方向を貫通する除去部を設けて、絶縁層2f4の面積を調整している。
【0054】
本実施の形態に係るノイズ検出部2gとすれば、光電変換部2bにおける静電容量と、ノイズ検出部102gにおける静電容量とが略同じとなるので、ノイズ検出部2gからの出力値と画像データ信号S2に含まれているノイズとが略同等となるようにすることができる。
【0055】
そのため、ノイズ検出部2gからの出力値をオフセット処理に用いれば、ノイズのさらなる低減を図ることができる。なお、オフセット処理に用いる値は、複数のノイズ検出部2gから出力された値の平均値とすることもできる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 X線検出器、2 アレイ基板、2a 基板、2b 光電変換部、2b1 光電変換素子、2b2 薄膜トランジスタ、2c1 制御ライン、2c2 データライン、2c3 バイアスライン、2g ノイズ検出部、2g1 バイアス電極、2f4 絶縁層、2f4b 絶縁層、3 信号処理回路、4 画像構成回路、5 シンチレータ、31 制御回路、32 信号検出回路
図1
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