(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169524
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】車両の運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20231122BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20231122BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080673
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 小百合
(72)【発明者】
【氏名】後藤 明之
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA49
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD12
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3D241CE03
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3D241DA52Z
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3D241DC39Z
3D241DC40Z
3D241DC50Z
3D241DC59Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
(57)【要約】
【課題】車両が走行軌跡に追従できなくなることを抑制できる、車両の運転支援方法及び運転支援装置を提供する。
【解決手段】車両を自律走行制御により走行させる走行軌跡を生成し、走行軌跡から、車両の前方の通過位置における軌跡の曲率を取得し、取得した軌跡の曲率と、車両の現在の走行状態とに基づいて、通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測し、取得した軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、車両が通過位置を走行する場合に、当該差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように自律走行制御により車両を走行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサが、
車両を自律走行制御により走行させる走行軌跡を生成し、
前記走行軌跡から、前記車両の前方の通過位置における軌跡の曲率を取得し、
取得した軌跡の曲率と、前記車両の現在の走行状態とに基づいて、前記通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測し、
取得した軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、
前記車両が前記通過位置を走行する場合に、前記差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように自律走行制御により前記車両を走行させる、車両の運転支援方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記車両の前方に、所定長さを有する予測区間を設定し、
前記予測区間で、所定距離間隔で、前記通過位置における軌跡の曲率を取得し、
前記車両の現在の走行状態に基づいて、前記通過位置ごとに、前記通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測し、
前記通過位置ごとに、前記通過位置における軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、
前記予測区間を走行する場合に、前記差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように前記車両を走行させる、請求項1に記載の車両の運転支援方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、
軌跡の曲率を取得する前記通過位置同士の間隔である所定距離を、前記車両の走行速度と、軌跡の曲率を取得する周期とに基づいて設定する、請求項1又は2に記載の車両の運転支援方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
第1通過位置と、前記第1通過位置から前記所定距離だけ前方にある第2通過位置との間で、軌跡の曲率の変化量が第1閾値より大きい場合は、軌跡の曲率の変化量が前記第1閾値以下である場合よりも前記周期を短く設定し、
前記第1通過位置と前記第2通過位置との間で軌跡の曲率を取得する、請求項3に記載の車両の運転支援方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記第1通過位置と前記第2通過位置との間で、軌跡の曲率の変化量が、前記第1閾値より小さい第2閾値よりも小さい場合は、軌跡の曲率の変化が前記第2閾値以上である場合よりも前記周期を長く設定する、請求項4に記載の車両の運転支援方法。
【請求項6】
車両を自律走行制御により走行させる走行軌跡を生成する制御部と、
前記走行軌跡から、前記車両の前方の通過位置における軌跡の曲率を取得する取得部と、
取得した軌跡の曲率と、前記車両の現在の走行状態とに基づいて、前記通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測する予測部と、を備え、
前記制御部は、取得した軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、
前記車両が前記通過位置を走行する場合に、前記差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように自律走行制御により前記車両を走行させる、車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援方法及び運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサにおける検出遅れ、信号の通信遅れ、アクチュエータの応答遅れなど、車両の運動の制御における遅れ要素に応じた所定時間後の目標走行状態を予測し、目標走行状態となるような指令を、車両の運動を制御するアクチュエータへ出力し、車両の運動を制御することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、遅れ要素に応じた所定時間だけ早めに指令を出力し、遅れ要素を補償しているが、道路の幅方向における目標の走行軌跡と実際の走行軌跡との差を補償することはできない。そのため、走行軌跡の曲率が比較的短い時間で複数回変化するような場合は、目標の走行軌跡と実際の走行軌跡との道路の幅方向の差が大きくなり、上述した遅れ要素を考慮するだけでは、車両が走行軌跡に追従できなくなることがあるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、車両が走行軌跡に追従できなくなることを抑制できる、車両の運転支援方法及び運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両を自律走行制御により走行させる走行軌跡を生成し、走行軌跡から、車両の前方の通過位置における軌跡の曲率を取得し、取得した軌跡の曲率と、車両の現在の走行状態とに基づいて、通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測し、取得した軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、車両が通過位置を走行する場合に、当該差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように自律走行制御により車両を走行させることによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両が走行軌跡に追従できなくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る運転支援装置を含む運転支援システムを示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す運転支援システムにて運転支援を実行する走行シーンの一例を示す平面図である。
【
図3A】
図1に示す運転支援システムにて生成された走行軌跡の一例を示す平面図である。
【
図3B】
図1に示す運転支援システムにて生成された走行軌跡の他の例を示す平面図である。
【
図4B】車両の曲率を予測する運動方程式の一例である。
【
図5】
図1の運転支援システムにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は、左側通行の法規を有する国で、車両が左側通行で走行することを前提とする。右側通行の法規を有する国では、車両が右側通行で走行するため、以下の説明の左と右を対称にして読み替えるものとする。
【0010】
[運転支援システムの構成]
図1は、本発明に係る運転支援システム10を示すブロック図である。運転支援システム10は車載システムであり、自律走行制御により、車両の乗員(ドライバーを含む)により設定された目的地まで車両を走行させる。自律走行制御とは、後述する運転支援装置を用いて車両の走行動作を自律的に制御することをいい、当該走行動作には、加速、減速、発進、停車、右方向又は左方向への転舵、車線変更、幅寄せなど、あらゆる走行動作が含まれる。また、自律的に走行動作を制御するとは、運転支援装置が、車両の装置を用いて走行動作の制御を行うことをいう。つまり、運転支援装置は、予め定められた範囲内でこれらの走行動作に介入し、制御する。介入されない走行動作については、ドライバーによる手動の操作が行われる。
【0011】
図1に示すように、運転支援システム10は、撮像装置11、測距装置12、自車状態検出装置13、地図情報14、自車位置検出装置15、ナビゲーション装置16、車両制御装置17、表示装置18、及び運転支援装置19を備える。運転支援システム10を構成する装置は、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、互いに情報を授受できる。
【0012】
撮像装置11は、画像により車両の周囲の対象物を認識する装置であり、たとえば、CCDなどの撮像素子を備えるカメラ、超音波カメラ、赤外線カメラなどのカメラである。撮像装置11は、一台の車両に複数を設けることができ、たとえば、車両のフロントグリル部、左右ドアミラーの下部及びリアバンパ近傍に配置できる。これにより、車両の周囲の対象物を認識する場合の死角を減らすことができる。
【0013】
測距装置12は、車両と対象物との相対距離および相対速度を演算するための装置であり、たとえば、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRFなど)、LiDAR(light detection and ranging)ユニット、超音波レーダーなどのレーダー装置又はソナーである。測距装置12は、一台の車両に複数設けることができ、たとえば、車両の前方、右側方、左側方及び後方に配置できる。これにより、車両の周囲の対象物との相対距離及び相対速度を正確に演算できる。
【0014】
撮像装置11及び測距装置12にて検出する対象物は、道路の車線境界線、中央線、路面標識、中央分離帯、ガードレール、縁石、高速道路の側壁、道路標識、信号機、横断歩道、工事現場、事故現場、交通制限などである。また、対象物には、自車両以外の自動車(他車両)、自動二輪車(オートバイ)、自転車、歩行者など、車両の走行に影響を与える可能性がある障害物も含まれている。撮像装置11及び測距装置12の検出結果は、必要に応じて、運転支援装置19により所定の時間間隔で取得される。
【0015】
また、撮像装置11及び測距装置12の検出結果は、運転支援装置19にて統合又は合成(いわゆるセンサフュージョン)することができ、これにより、検出した対象物の不足する情報を補完できる。たとえば、自車位置検出装置15により取得した、車両が走行する位置である自己位置情報と、車両と対象物の相対位置(距離と方向)とにより、運転支援装置19にて対象物の位置情報を算出できる。算出された対象物の位置情報は、運転支援装置19にて、撮像装置11及び測距装置12の検出結果、並びに地図情報14などの複数の情報と統合され、車両の周囲の走行環境情報となる。また、撮像装置11及び測距装置12の検出結果と、地図情報14とを用いて、車両の周囲の対象物を認識し、その動きを予測することもできる。
【0016】
自車状態検出装置13は、車両の走行状態を検出するための装置であり、車速センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ(たとえばジャイロセンサ)、舵角センサ、慣性計測ユニットなどが挙げられる。これらの装置については、特に限定はなく、公知のものを用いることができる。また、これらの装置の配置及び数は、車両の走行状態を適切に検出できる範囲内で適宜に設定できる。各装置の検出結果は、必要に応じて、運転支援装置19により所定の時間間隔で取得される。
【0017】
地図情報14は、走行経路の生成、走行動作の制御などに用いられる情報であり、道路情報、施設情報及びそれらの属性情報を含む。道路情報及び道路の属性情報には、道路の幅、道路の曲率半径、路肩の構造物、道路交通法規(制限速度、車線変更の可否)、道路の合流地点と分岐地点、車線数の増加・減少位置などの情報が含まれている。地図情報14は、レーンごとの移動軌跡を把握できる高精細地図情報であり、各地図座標における二次元位置情報及び/又は三次元位置情報、各地図座標における道路・レーンの境界情報、道路属性情報、レーンの上り・下り情報、レーン識別情報、接続先レーン情報などを含む。
【0018】
高精細地図情報の道路・レーンの境界情報は、車両が走行する走路とそれ以外との境界を示す情報である。車両が走行する走路とは、車両が走行するための道であり、走路の形態は特に限定されない。境界は、車両の進行方向に対して左右それぞれに存在し、形態は特に限定されない。境界は、たとえば、路面標示又は道路構造物であり、路面標示としては車線境界線、中央線などが挙げられ、道路構造物としては中央分離帯、ガードレール、縁石、トンネル、高速道路の側壁などが挙げられる。なお、交差点内のような走路境界が明確に特定できない地点では、予め、走路に境界が設定されている。この境界は架空のものであって、実際に存在する路面標示または道路構造物ではない。
【0019】
地図情報14は、運転支援装置19、車載装置、又はネットワーク上のサーバに設けられた記録媒体に読み込み可能な状態で記憶されている。運転支援装置19は、必要に応じて地図情報14を取得する。
【0020】
自車位置検出装置15は、車両の現在位置を検出するための測位システムであり、特に限定されず、公知のものを用いることができる。自車位置検出装置15は、たとえば、GPS(Global Positioning System)用の衛星から受信した電波などから車両の現在位置を算出する。また、自車位置検出装置15は、自車状態検出装置13である車速センサ、加速度センサ及びジャイロセンサから取得した車速情報及び加速度情報から車両の現在位置を推定し、推定した現在位置を地図情報14と照合することで、車両の現在位置を算出してもよい。
【0021】
ナビゲーション装置16は、地図情報14を参照して、自車位置検出装置15により検出された車両の現在位置から、乗員(ドライバーを含む)により設定された目的地までの走行経路を算出する装置である。ナビゲーション装置16は、地図情報14の道路情報及び施設情報などを用いて、車両が現在位置から目的地まで到達するための走行経路を検索する。走行経路は、車両が走行する道路、走行車線及び車両の走行方向の情報を少なくとも含み、たとえば線形で表示される。検索条件に応じて、走行経路は複数存在し得る。ナビゲーション装置16にて算出された走行経路は、運転支援装置19に出力される。
【0022】
車両制御装置17は、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)などの車載コンピュータであり、車両の走行を律する車載機器を電子的に制御する。車両制御装置17は、車両の走行速度を制御する車速制御装置171と、車両の操舵操作を制御する操舵制御装置172を備える。車速制御装置171及び操舵制御装置172は、運転支援装置19から入力された制御信号に応じて、これらの駆動装置及び操舵装置の動作を自律的に制御する。これにより、車両は、設定した走行経路に従って自律的に走行できる。車速制御装置171及び操舵制御装置172による自律的な制御に必要な情報、たとえば車両の走行速度、加速度、操舵角度及び姿勢は、自車状態検出装置13から取得する。
【0023】
車速制御装置171が制御する駆動装置としては、走行駆動源である電動モータ及び/又は内燃機関、これら走行駆動源からの出力を駆動輪に伝達するドライブシャフトや自動変速機を含む動力伝達装置、動力伝達装置を制御する駆動装置などが挙げられる。また、車速制御装置171が制御する制動装置は、たとえば、車輪を制動する制動装置である。車速制御装置171には、運転支援装置19から、設定した走行速度に応じた制御信号が入力される。車速制御装置171は、運転支援装置19から入力された制御信号に基づいて、これらの駆動装置を制御する信号を生成し、駆動装置に当該信号を送信することで、車両の走行速度を自律的に制御する。
【0024】
一方、操舵制御装置172が制御する操舵装置は、ステアリングホイールの操舵角度に応じて操舵輪を制御する操舵装置であり、たとえば、ステアリングのコラムシャフトに取り付けられるモータなどのステアリングアクチュエータが挙げられる。操舵制御装置172は、運転支援装置19から入力された制御信号に基づき、設定した走行経路に対して所定の横位置(車両の左右方向の位置)を維持しながら車両が走行するように、操舵装置の動作を自律的に制御する。この制御には、撮像装置11及び測距装置12の検出結果、自車状態検出装置13で取得した車両の走行状態、地図情報14及び自車位置検出装置15で取得した車両の現在位置の情報のうちの少なくとも一つを用いる。
【0025】
表示装置18は、車両の乗員に必要な情報を提供するための装置であり、たとえば、インストルメントパネルに設けられた液晶ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ(HUD)などのプロジェクターである。表示装置18は、車両の乗員が、運転支援装置19に指示を入力するための入力装置を備えてもよい。入力装置としては、ユーザの指触又はスタイラスペンによって入力されるタッチパネル、ユーザの音声による指示を取得するマイクロフォン、車両のステアリングホイールに取付けられたスイッチなどが挙げられる。また、表示装置18は、出力装置としてのスピーカーを備えてもよい。
【0026】
運転支援装置19は、運転支援システム10を構成する装置を制御して協働させることで車両の走行を制御し、設定された目的地まで車両を走行させるための装置である。目的地は、たとえば車両の乗員が設定する。運転支援装置19は、たとえばコンピュータであり、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)191と、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)192と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)193とを備える。CPU191は、ROM192に格納されたプログラムを実行し、運転支援装置19が有する機能を実現するための動作回路である。
【0027】
運転支援装置19は、自律走行制御により、設定された目的地まで車両を走行させる運転支援機能を有する。運転支援装置19は、運転支援機能として、走行経路を生成する経路生成機能と、車両の周囲の走行環境を認識する環境認識機能と、走行軌跡を生成し、走行軌跡に沿って車両を走行させる走行制御機能とを有する。これに加えて、運転支援装置19は、通過位置における軌跡の曲率を取得する取得機能と、通過位置における車両の曲率を予測する予測機能とを有する。ROM192に格納されたプログラムはこれらの機能を実現するためのプログラムを備え、CPU191がROM192に格納されたプログラムを実行することで、これらの機能が実現される。
図1には、各機能を実現する機能ブロックを便宜的に抽出して示す。
【0028】
[各機能ブロックの機能]
以下、
図1に示す支援部20、生成部21、認識部22、制御部23、取得部24及び予測部25の各機能ブロックが有する機能について説明する。なお、以下の説明では、自車両のことを単に車両とも言うこととする。
【0029】
支援部20は、自律走行制御により、設定された目的地まで車両を走行させる運転支援機能を有する。
図2は、運転支援装置19が、支援部20の運転支援機能により車両の走行を自律制御する、走行シーンの一例を示す平面図である。
図2に示す道路は車線L1、L2及びL3を有する3車線の道路であり、道路を走行する車両は図面の下側から上側に向かって走行するものとする。また、
図2に示す道路の前方には交差点が存在し、車線L1を走行する車両は交差点を左折でき、車線L2を走行する車両は交差点を直進でき、車線L3を走行する車両は交差点を右折できるものとする。
【0030】
図2に示す走行シーンでは、上述の交差点を直進して通過した先の位置に目的地(図示しない)が設定され、自車両V1は当該目的地に向かっているものとする。自車両V1は、車線L1の位置P1を走行している。また、車線L1では、他車両V2及びV3が路肩に駐車し、車線L2では、他車両V4及びV5が直進で走行し、車線L3では、他車両V6及びV7が右折のために停車している。
図2に示す走行シーンでは、他車両V4は、自車両V1よりも低速で走行しているものとする。
【0031】
この場合、運転支援装置19は、支援部20の運転支援機能により、目的地に向かう走行経路を生成し、生成した走行経路に沿って、自律走行制御により自車両V1を走行させる。この自律走行制御は、主に生成部21、認識部22、制御部23、取得部24及び予測部25の有する各機能により制御される。
【0032】
生成部21は、車両が、現在位置から目的地まで走行するための走行経路を生成する経路生成機能を有する。また、生成部21は、車両が、走行経路に沿って走行するための車線を設定する機能を有する。運転支援装置19は、生成部21の経路生成機能により、ナビゲーション装置16を用いて、車両が、現在位置から目的地まで自律走行制御により走行する走行経路を生成する。また、運転支援装置19は、生成した走行経路に沿って走行するための車線を設定する。運転支援装置19は、必要に応じて、生成された走行経路と、設定された車線との情報を、ナビゲーション装置16から取得する。
【0033】
図2に示す走行シーンでは、運転支援装置19は、自車両V1の現在位置である位置P1から目的地まで走行する走行経路を生成する。
図2に示す走行シーンの場合、走行経路は、道路を道なりに直進する経路である。また、
図2に示す走行シーンでは、前方の交差点を直進で通過して目的地に向かうため、自車両V1の走行車線を車線L2に設定する。
【0034】
認識部22は、車両の周囲の走行環境を認識する環境認識機能を有する。運転支援装置19は、認識部22の環境認識機能により、撮像装置11及び測距装置12を用いて、車両の周囲の走行環境を認識する。走行環境とは、車両が、現在の走行状態を維持できるか、走行状態を変更する必要があるかを判定するための情報であり、たとえば、対象物の種類及び位置、障害物が存在する場合はその種類及び位置、路面状況などの道路状況、天気などの情報が含まれる。運転支援装置19は、撮像装置11及び測距装置12の検出結果に対して、パターンマッチング、センサフュージョンなどの適宜の処理を行い、走行環境を認識する。なお、運転支援装置19は、道路に設置された定点カメラ、交通情報を提供するサーバ、他車両との車車間通信などを用いて、車両の検出装置で検出できない範囲に存在する障害物を認識してもよい。
【0035】
図2に示す走行シーンでは、道路の定点カメラなどのインフラストラクチャが利用できず、外部のサーバや車車間通信に接続できない環境であるとする。この場合、運転支援装置19は、撮像装置11及び測距装置12の検出結果から、自車両V1の前方で駐車中の他車両V2と、車線L2を走行する他車両V4及びV5と、車線L3で停車する他車両V6とを認識する。なお、
図2に示す走行シーンでは、他車両V2及びV6の前方が検出装置の死角となり、他車両V3及びV7は認識できない。
【0036】
制御部23は、生成された走行経路に沿って車両を走行させる走行軌跡を生成し、生成した走行軌跡に追従するように車両の走行動作を制御する走行制御機能を有する。運転支援装置19は、制御部23の走行制御機能により、走行経路に沿って車両を走行させる走行軌跡を生成し、生成した走行軌跡に車両が追従するように、車両制御装置17(特に、車速制御装置171及び操舵制御装置172)を介して車両の走行動作を自律制御する。走行軌跡の生成には、地図情報14に含まれる道路の形状や、幅員、カーブの曲率などの情報に加えて、自車両V1の車体の全長及び全幅、並びに自車両V1の最小回転半径などを考慮する。
【0037】
図2に示す走行シーンでは、運転支援装置19は、認識した他車両V2及びV4を回避しつつ、車線L1から車線L2に進入する走行軌跡T1を生成する。そして、車両制御装置17を介して自車両V1の走行動作を自律制御し、走行軌跡T1に沿って、位置P1からP2まで走行する。
【0038】
運転支援装置19は、測距装置12の検出結果から、位置P2まで走行する間に、他車両V4が自車両V1の走行速度より低速で走行していることを認識する。この場合、運転支援装置19は、他車両V4とV5との間に自車両V1が進入するスペースが検出されれば、他車両V4を追い越して車線L2の走行を継続する。
【0039】
図2に示す走行シーンでは、他車両V4とV5との間に自車両V1が進入するスペースが存在するため、運転支援装置19は、他車両V4を追い越す走行軌跡T2を生成する。そして、自律走行制御により、走行軌跡T2に沿って、位置P2からP3まで走行して他車両V4を追い越す。
【0040】
図2に示す走行軌跡T1及びT2は、比較的小さな旋回半径の旋回を伴う軌跡である。具体的には、交差点の右左折で発生しうる、10R程度の旋回半径の旋回を伴う。また、走行軌跡T1及びT2では、走行軌跡の曲率が複数回変化するため、運転支援装置19は、操舵制御装置172を介してステアリングホイールを1回転以上回転させ、走行軌跡T1及びT2に追従する。このような走行シーンでは、車両の現在の走行状態を用いて走行軌跡に追従させる制御(フィードバック制御)を行うと、走行軌跡T1及びT2と、自車両V1が実際に走行した軌跡と差が大きくなり、自車両V1が走行軌跡T1及びT2に追従できなくなる場合がある。そこで、本実施形態の運転支援装置19は、車両の将来の走行状態を用いて走行軌跡に追従させる制御(フィードフォワード制御)を行う。
【0041】
取得部24は、走行軌跡から、自車両の前方の通過位置における軌跡の曲率を取得する取得機能を有する。運転支援装置19は、取得部24の取得機能により、生成された走行軌跡の通過位置と、当該通過位置における軌跡の曲率を取得する。運転支援装置19は、制御部23の走行制御機能により走行軌跡を生成する場合に、自車両V1の通過位置と、各通過位置における軌跡の曲率とを予め設定する。通過位置を設定する間隔は、自車両V1が走行軌跡に追従して走行できる範囲内で適宜の間隔を設定できる。たとえば、少なくとも走行軌跡の変曲点に対して、通過位置と曲率を設定する。また、道路に沿って緩やかなカーブを走行する場合は、間隔を比較的広く設定し、車線変更又は追い越しなど道路の形状に因らない走行をする場合は、道路に沿って走行する場合より間隔を狭く設定する。
【0042】
運転支援装置19により生成された走行軌跡の例を、
図3A及び3Bに示す。
図3Aに示す走行軌跡T3は、軌跡の曲率の変化が比較的大きい走行軌跡であり、
図3Bに示す走行軌跡T4は、走行軌跡T3と比較して、軌跡の曲率の変化が小さい走行軌跡である。走行軌跡T3及びT4では、軌跡の変曲点に通過位置と軌跡の曲率とが設定されている。
【0043】
走行軌跡T3及びT4では、通過位置は、自車両V1が走行する平面のX座標とY座標で設定される。たとえば、走行軌跡T3では、自車両V1の現在位置は(x0,y0)であり、次の通過位置は(x1,y1)と設定されている。なお、通過位置は直交座標系で設定する必要はなく、極座標系など適宜の方法で設定できる。また、軌跡の曲率とは、走行軌跡をある曲線として表し、当該曲線の、通過位置における曲率円の曲率半径の逆数として定義され、自車両V1の最小回転半径及び自車両V1が走行する道路の形状などを考慮し、自車両V1の乗員に違和感を与えない範囲内で適宜の値が設定される。たとえば、走行軌跡T3では、現在位置(x0,y0)における曲率はκr0であり、通過位置(x1,y1)における曲率はκr1である。
【0044】
また、運転支援装置19は、車両の前方に、所定長さを有する予測区間を設定し、予測区間で、所定距離間隔で、通過位置における軌跡の曲率を取得する。所定長さは、運転支援装置19によるフィードフォワード制御が適切に行える範囲内で適宜の長さを設定できる。一方、所定距離は、車両の走行速度と、軌跡の曲率を取得する周期とに基づいて設定し、当該周期は、運転支援装置19によるフィードフォワード制御が、自車両の乗員に違和感を与えない範囲内で適宜の周期を設定できる。
【0045】
図3Aに示す走行軌跡T3であれば、現在位置(x
0,y
0)から通過位置(x
6,y
6)までに予測区間Zを設定し、自車両の走行速度に鑑みて、少なくとも走行軌跡T3の各変曲点で軌跡の曲率が取得できる周期を設定する。また、
図3Bに示す走行軌跡T4であれば、現在位置(x
0,y
0)から通過位置(x
3,y
3)までに予測区間Zを設定し、自車両の走行速度に鑑みて、少なくとも走行軌跡T4の各変曲点で軌跡の曲率が取得できる周期を設定する。
【0046】
運転支援装置19は、軌跡の曲率を取得する場合に、第1通過位置と、第1通過位置から所定距離だけ前方にある第2通過位置との間で、軌跡の曲率の変化量が第1閾値より大きい場合は、軌跡の曲率の変化量が第1閾値以下である場合よりも、軌跡の曲率を取得する周期を短く設定する。そして、第1通過位置と第2通過位置との間で、さらに軌跡の曲率を取得する。これに対して、第1通過位置と第2通過位置との間で、軌跡の曲率の変化量が、第1閾値より小さい第2閾値よりも小さい場合は、軌跡の曲率の変化が第2閾値以上である場合よりも当該周期を長く設定する。このように、軌跡の曲率の変化量に応じて曲率を取得する周期を変化させることで、自車両が走行軌跡に追従できない事態を抑制しつつ、不必要なフィードフォワード制御で車両の挙動が頻繁に変化し、乗員に違和感を与える事態を抑制できる。
【0047】
たとえば、
図3Aに示す走行軌跡T3では、現在位置(x
0,y
0)と通過位置(x
1,y
1)との間で、κ
r1-κ
r0だけ曲率が変化する。この変化量が第1閾値より大きい場合は、軌跡の曲率を取得する周期をより短く設定し、現在位置(x
0,y
0)と通過位置(x
1,y
1)との間で、さらに軌跡の曲率を取得する。これに対して、κ
r1-κ
r0が第1閾値以下である場合は、軌跡の曲率を取得する周期を変更せず、軌跡の曲率の取得を継続する。第1閾値は、車両の最小回転半径などの運動性能を考慮して、曲率の変化量がその値より大きいと自車両が走行軌跡に追従できなくなる値を設定する。
【0048】
他の例として、
図3Bに示す走行軌跡T4では、現在位置(x
0,y
0)と通過位置(x
1,y
1)との間で、κ
r1-κ
r0だけ曲率が変化する。この変化量が第2閾値より小さい場合は、軌跡の曲率を取得する周期をより長く設定し、たとえば、通過位置(x
3,y
3)の曲率を取得しない。これに対して、κ
r1-κ
r0が第2閾値以上である場合は、軌跡の曲率を取得する周期を変更せず、軌跡の曲率の取得を継続する。第2閾値は、自車両が走行軌跡に適切に追従できる範囲内で適宜の値を設定できる。
【0049】
予測部25は、車両の現在の走行状態に基づいて、通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測する機能を有する。運転支援装置19は、予測部25の予測機能により、通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測する。車両の現在の走行状態とは、自車状態検出装置13から取得された走行速度、加速度、ヨーレート及び操舵角度などが挙げられる。また、自車位置検出装置15から取得された自車両V1の現在位置も走行状態に含まれる。
【0050】
車両の曲率は、
図4Aに示すように、操舵角度δと、車両の前輪軸と後輪軸との距離であるホイールベースLで定義される。操舵角度δは、車両の前後方向(車両の前輪軸又は後輪軸に垂直な方向)に平行な直線X1と、前輪の円周方向に平行な直線X2とが成す角度である。操舵角度は、ステアリングホイールの回転角度に比例するので、車両の曲率は、車両の前後方向に平行な直線X1の単位長さあたりのステアリングホイールの回転角度としても求められる。本実施形態の運転支援装置19では、フィードフォワード制御による自律走行制御を行うため、車両は設定された通過位置を通るが、その際の車両の曲率を、軌跡の曲率と一致させることで、設定された走行軌跡と、車両が実際に走行した軌跡との道路の幅方向の差を補償する。
【0051】
通過位置を走行した場合の車両の曲率は、たとえば、フレネ座標系を用いたモデルを用いて予測する。モデルは、非線形であっても、線形近似したものであってもよい。モデルの例として、非線形の状態方程式を
図4Bに示す。
図4Bに示す方程式で、sとtはそれぞれ自車両V1が走行する平面の縦方向と横方向の位置を表し、θは自車両V1のヨー角を表し、Vは自車両V1の走行速度を表す。方程式のκは車両の曲率であり、κ
rは軌跡の曲率である。したがって、自車両V1の前方のある通過位置において、自車両V1の走行速度とヨー角(V、θ)が自車状態検出装置13から取得した現在の走行速度とヨー角であると仮定すると、
図4Bに示す式を用いて、自車両V1前方の通過位置(s、t)と、当該通過位置の曲率(κ
r)を式に代入し、当該通過位置における自車両V1の車両の曲率(κ)を求めることができる。
【0052】
そして、運転支援装置19は、制御部23の走行制御機能により、取得した軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、車両が通過位置を走行するときに、当該曲率の差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように車両を走行させる。たとえば、
図3Aに示す走行軌跡T3において、通過位置(x
1,y
1)を通過した時の車両の曲率がκ
1と予測された場合は、κ
1-κ
r1を算出し、自車両が通過位置(x
1,y
1)を走行するときにκ
1がκ
r1となるように、車両の走行動作を自律制御する。
【0053】
また、運転支援装置19は、予測区間Zを設定した場合は、車両の現在の走行状態に基づいて、予測区間Zの通過位置ごとに、通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測し、通過位置ごとに、通過位置における軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、当該差を用いて、予測区間を走行する場合に、車両の曲率が軌跡の曲率となるように車両の走行動作を自律制御する。
【0054】
[運転支援システムにおける処理]
図5を参照して、運転支援装置19が情報を処理する際の手順を説明する。
図5は、本実施形態の運転支援システム10において実行される、情報の処理を示すフローチャートの一例である。以下に説明する処理は、運転支援装置19のプロセッサであるCPU191により所定の時間間隔で実行される。
【0055】
まず、ステップS1にて、経路生成機能により、設定された目的地まで走行する走行経路を生成する。続くステップS2にて、環境認識機能により、自車両V1の周囲の障害物を検出する。続くステップS3にて、自車両V1が走行軌跡に沿って走行できるか否かを判定する。障害物により、自車両V1が走行軌跡に沿って走行できないと判定した場合は、ルーチンの実行を終了し、表示装置18を介して、ドライバーに手動操作への切り替えを促す。これに対して、自車両V1が走行軌跡に沿って走行できると判定した場合は、ステップS4に進む。
【0056】
ステップS4にて、走行制御機能により走行軌跡を生成。続くステップS5にて、予測機能により、自車両V1の前方に予測区間Zを設定し、ステップS6にて、取得機能により、自車両V1前方の通過位置における軌跡の曲率を取得する。続くステップS7にて、ある通過位置(第1通過位置)と、その通過位置から所定距離だけ前方にある通過位置(第2通過位置)との間で、軌跡の曲率の変化量が第1閾値より大きいか否かを判定する。2つの通過位置の間で、軌跡の曲率の変化量が第1閾値より大きい場合は、ステップS8に進み、軌跡の曲率を取得する周期をより短く設定する。これに対して、2つの通過位置の間で、軌跡の曲率の変化量が第1閾値以下である場合は、ステップS9に進む。
【0057】
ステップS9にて、ある通過位置(第1通過位置)と、その通過位置から所定距離だけ前方にある通過位置(第2通過位置)との間で、軌跡の曲率の変化量が第2閾値より小さいか否かを判定する。2つの通過位置の間で、軌跡の曲率の変化量が第2閾値より小さい場合は、ステップS10に進み、軌跡の曲率を取得する周期をより長く設定する。これに対して、2つの通過位置の間で、軌跡の曲率の変化量が第2閾値以上である場合は、ステップS11に進む。つまり、2つの通過位置の間で、軌跡の曲率の変化量が第1閾値以下であり、第2閾値以上である場合は、曲率を取得する周期を維持する。
【0058】
ステップS11にて、予測区間Zの軌跡の曲率の取得が完了したか否かを判定する。予測区間Zの軌跡の曲率の取得が完了していないと判定した場合は、ステップS6に進み、軌跡の曲率の取得を継続する。これに対して、予測区間Zの軌跡の曲率の取得が完了したと判定した場合は、ステップS12に進み、自車両V1前方の通過位置を車両が走行するときの車両の曲率を予測する。続くステップS13にて、取得した軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、続くステップS14にて、算出した差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように自律走行制御により車両を走行させる。
【0059】
予測区間の走行を終えると、ステップS15に進む。ステップS15にて、目的地に到着したか否かを判定する。目的地に到着したと判定した場合は、ルーチンの実行を終了し、表示装置18を介して、ドライバーに手動操作への切り替えを促す。これに対して、目的地に到着していないと判定した場合はステップS2に進み、目的地に到着するまで上述の処理を繰り返す。
【0060】
[本発明の実施態様]
以上のとおり、本実施形態によれば、プロセッサが、車両を自律走行制御により走行させる走行軌跡を生成し、前記走行軌跡から、前記車両の前方の通過位置における軌跡の曲率を取得し、取得した軌跡の曲率と、前記車両の現在の走行状態とに基づいて、前記通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測し、取得した軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、前記車両が前記通過位置を走行する場合に、前記差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように自律走行制御により前記車両を走行させる、車両の運転支援方法が提供される。これにより、車両が走行軌跡に追従できなくなることを抑制できる。
【0061】
また、本実施形態の車両の運転支援方法によれば、前記プロセッサは、前記車両の前方に、所定長さを有する予測区間Zを設定し、前記予測区間Zで、所定距離間隔で、前記通過位置における軌跡の曲率を取得し、前記車両の現在の走行状態に基づいて、前記通過位置ごとに、前記通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測し、前記通過位置ごとに、前記通過位置における軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、前記差を用いて、前記予測区間Zを走行する場合に、車両の曲率が軌跡の曲率となるように前記車両を走行させる。これにより、設定した予測区間Zにおいて、車両が走行軌跡に追従できなくなることを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態の車両の運転支援方法によれば、前記プロセッサは、軌跡の曲率を取得する前記通過位置同士の間隔である所定距離を、前記車両の走行速度と、軌跡の曲率を取得する周期とに基づいて設定する。これにより、走行軌跡に応じて曲率を取得する間隔を設定できる。
【0063】
また、本実施形態の車両の運転支援方法によれば、前記プロセッサは、第1通過位置と、前記第1通過位置から前記所定距離だけ前方にある第2通過位置との間で、軌跡の曲率の変化量が第1閾値より大きい場合は、軌跡の曲率の変化量が前記第1閾値以下である場合よりも前記周期を短く設定し、前記第1通過位置と前記第2通過位置との間で軌跡の曲率を取得する。これにより、軌跡の曲率の変化量に応じて曲率を取得する周期を変化させることで、自車両が走行軌跡に追従できない事態を抑制しつつ、不必要なフィードフォワード制御で車両の挙動が頻繁に変化し、乗員に違和感を与える事態を抑制できる。
【0064】
また、本実施形態の車両の運転支援方法によれば、前記プロセッサは、前記第1通過位置と前記第2通過位置との間で、軌跡の曲率の変化量が、前記第1閾値より小さい第2閾値よりも小さい場合は、軌跡の曲率の変化が前記第2閾値以上である場合よりも前記周期を長く設定する。これにより、軌跡の曲率の変化量に応じて曲率を取得する周期を変化させることで、自車両が走行軌跡に追従できない事態を抑制しつつ、不必要なフィードフォワード制御で車両の挙動が頻繁に変化し、乗員に違和感を与える事態を抑制できる。
【0065】
また、本実施形態によれば、車両を自律走行制御により走行させる走行軌跡を生成する生成部21と、前記走行軌跡から、前記車両の前方の通過位置における軌跡の曲率を取得する取得部24と、取得した軌跡の曲率と、前記車両の現在の走行状態とに基づいて、前記通過位置を走行した場合の車両の曲率を予測する予測部25と、取得した軌跡の曲率と、予測した車両の曲率との差を算出し、前記車両が前記通過位置を走行する場合に、前記差を用いて、車両の曲率が軌跡の曲率となるように自律走行制御により前記車両を走行させる制御部23と、を備える、車両の運転支援装置19が提供される。これにより、車両が走行軌跡に追従できなくなることを抑制できる。
【符号の説明】
【0066】
10…運転支援システム
11…撮像装置
12…測距装置
13…自車状態検出装置
14…地図情報
15…自車位置検出装置
16…ナビゲーション装置
17…車両制御装置
171…車速制御装置
172…操舵制御装置
18…表示装置
19…運転支援装置
191…CPU(プロセッサ)
192…ROM
193…RAM
20…支援部
21…生成部
22…認識部
23…制御部
24…取得部
25…予測部
V1…自車両
V2、V3、V4、V5、V6、V7…他車両
L1、L2、L3…車線
P1、P2、P3…位置
T1、T2…走行軌跡
Z…予測区間