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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169531
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】カニューレ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080690
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 丈人
(72)【発明者】
【氏名】山口 真史
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF43
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で身体に確実に係止することが可能なカニューレの提供を目的とする。
【解決手段】カニューレ1は、内腔11hを有する中空形状の内管11と、内管11の長軸方向に沿って延設された外管21と、内管11の長軸方向に沿って延設された中間部材31と、を備え、中間部材31は、第1の部位311と、第2の部位312と、一端部が第1の部位311に固定されかつ他端部が第2の部位312に固定された可撓性のアンカー313aを有するアンカー部313とを有し、外管21はスリット部21aを有し、第1の部位311と第2の部位312とは、内管11の長軸方向に沿って相対的に移動可能であり、第1の部位311と第2の部位312との間隔が狭まることで、アンカー313aがスリット部21aを介して外管21の外側に向かって湾曲しながら突出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューレであって、
先端から基端に亘って貫通する内腔を有する中空形状の内管と、
前記内管の外周を覆うように設けられ、前記内管の長軸方向に沿って延設された外管と、
前記内管と前記外管との間に設けられ、前記内管の長軸方向に沿って延設された中間部材と、を備え、
前記中間部材は、第1の部位と、前記第1の部位よりも基端側に位置する第2の部位と、一端部が前記第1の部位に固定されかつ他端部が前記第2の部位に固定された可撓性のアンカーを有するアンカー部とを有し、
前記外管は、前記内管の長軸方向に沿って穿設されたスリット部を有し、
前記第1の部位と前記第2の部位とは、前記内管の長軸方向に沿って相対的に移動可能であり、
前記第1の部位と前記第2の部位との間隔が狭まることで、前記アンカーが前記スリット部を介して前記外管の外側に向かって湾曲しながら突出することを特徴とするカニューレ。
【請求項2】
前記第1の部位および前記第2の部位のそれぞれが、前記内管の長軸方向に沿って移動可能である請求項1に記載のカニューレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カニューレに関する。
【背景技術】
【0002】
トロッカーやカテーテルなどの医療器具を、体壁を介して挿入する際、上記医療器具を身体に円滑に挿入できるように、カニューレが併用される。
【0003】
このようなカニューレとしては、カニューレ本体を穿設された体壁に係止できるように、例えば、バルーンが設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。バルーンは、例えば、カニューレ本体の先端部に設けられ、流体を圧送しながらバルーンを半径方向外側に向かって拡張することで身体の内側から体壁に係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011-514202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来のカニューレを用いる場合、バルーンを拡張するために流体をバルーン内に圧送する必要がある。このため、流体を圧送するためにカニューレ以外の別の装置が必要となるばかりか、流体の流通経路の液密性を確保する必要も生じる。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で身体に確実に係止することが可能なカニューレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のいくつかの態様は下記の通りである。
(1)カニューレであって、
先端から基端に亘って貫通する内腔を有する中空形状の内管と、
前記内管の外周を覆うように設けられ、前記内管の長軸方向に沿って延設された外管と、
前記内管と前記外管との間に設けられ、前記内管の長軸方向に沿って延設された中間部材と、を備え、
前記中間部材は、第1の部位と、前記第1の部位よりも基端側に位置する第2の部位と、一端部が前記第1の部位に固定されかつ他端部が前記第2の部位に固定された可撓性のアンカーを有するアンカー部とを有し、
前記外管は、前記内管の長軸方向に沿って穿設されたスリット部を有し、
前記第1の部位と前記第2の部位とは、前記内管の長軸方向に沿って相対的に移動可能であり、
前記第1の部位と前記第2の部位との間隔が狭まることで、前記アンカーが前記スリット部を介して前記外管の外側に向かって湾曲しながら突出することを特徴とするカニューレ。
(2)前記第1の部位および前記第2の部位のそれぞれが、前記内管の長軸方向に沿って移動可能である前記(1)に記載のカニューレ。
【0008】
なお、本明細書において、「カニューレ」とは、体壁に固定され、長尺形状の穿刺具(以下、「トロッカー」とも称する)や、鉗子など器具を挿通可能な中空形状の医療器具を指す。「先端側」とは、カニューレの長軸方向(長軸方向、長手方向)に沿う方向であって、身体のより深部(遠位)に挿入される方向を意味する。「基端側」とは、カニューレの長軸方向に沿う方向であって、先端側と反対側の方向を意味する。「先端」または「先端部」とは、任意の部材または部位における先端側の端部、「基端」または「基端部」とは、任意の部材または部位における基端側の端部をそれぞれ指す。特に指定がない限り、「長軸方向」とはカニューレの長軸方向を意味し、「半径方向」とは上記「長軸方向」に直交する方向を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、簡易な構成で身体に確実に係止することが可能なカニューレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態を示す概略的側面図であって、トロッカーが装着された状態を示す図である。
図2図1のカニューレを分解した状態を示す概略的分解斜視図であって、(a)は内管およびハウジング、(b)は中間部材、(c)は外管をそれぞれ示している。
図3図1のカニューレを分解した状態を示す概略的分解斜視図であって、(a)は内管およびハウジング、(b)は中間部材、(c)は外管をそれぞれ示している。
図4図1の外管を省略して示す概略的斜視図であって、第1および第2の部位の移動機構を説明するための図である。
図5図1の外管を省略して示す概略的側面図であって、(a)はアンカーが略直線状に延びている状態、(b)はアンカーが湾曲している状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のカニューレは、先端から基端に亘って貫通する内腔を有する中空形状の内管と、上記内管の外周を覆うように設けられ、上記内管の長軸方向に沿って延設された外管と、上記内管と上記外管との間に設けられ、上記内管の長軸方向に沿って延設された中間部材と、を備え、上記中間部材は、第1の部位と、上記第1の部位よりも基端側に位置する第2の部位と、一端部が上記第1の部位に固定されかつ他端部が上記第2の部位に固定された可撓性のアンカーを有するアンカー部とを有し、上記外管は、上記内管の長軸方向に沿って穿設されたスリット部を有し、上記第1の部位と上記第2の部位とは、上記内管の長軸方向に沿って相対的に移動可能であり、上記第1の部位と上記第2の部位との間隔が狭まることで、上記アンカーが上記スリット部を介して上記外管の外側に向かって湾曲しながら突出することを特徴とする。
【0012】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、図面に示した各部の寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、必ずしも実際の寸法に対応するものではない。なお、図4図5(a),(b)では、便宜上、外管21が省略されている。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、一実施形態を示す概略的側面図である。図2図3は、それぞれ図1の概略的分解斜視図である。図2図3とは、互いにほぼ反対側から見たときの図を示している。カニューレ1は、図1図3に示すように、概略的に、内管11と、外管21と、中間部材31と、ハウジング41と、後述するアンカー移動機構およびアンカー突出機構とにより構成されている。
【0014】
内管11は、先端から基端に亘って貫通する内腔11hを有する中空形状の部材である。内管11は、具体的には、例えば、先端から基端に亘って長軸方向に貫通する中空形状のシャフトで構成することができる。内管11は、トロッカーやカテーテルなどの医療器具を円滑に挿脱することができるように、内腔11hの内径が一定であり、内周面が滑らかに形成されていてもよい。
【0015】
内管11を形成する材料としては、生体適合性を有しかつ内腔11hを介して医療器具を円滑に挿通できることが好ましい。
【0016】
外管21は、内管11の外周を覆うように設けられ、内管11の長軸方向に沿って延設された部材である。外管21は、内管11の長軸方向に沿って穿設されたスリット部を有している。外管21は、具体的には、例えば、長軸方向に沿った1または2以上の長手形状のスリット部21aを有する長尺状の中空形状のシャフトで構成することができる。スリット部21aには、後述する中間部材31のアンカー313aが通過できるように形成されている。外管21は、体壁を介して体内に円滑に挿入することができるように、その外径が略一定であり、外周面が滑らかに形成されていてもよい。外管21は、内管11の長軸方向に対して固定されていてもよく、内管11の長軸方向に沿って移動できるように構成されていてもよい。
【0017】
外管21を形成する材料としては、生体適合性を有しかつ体壁を円滑に通過できることが好ましい。
【0018】
中間部材31は、内管11と外管21との間に設けられ、内管11の長軸方向に沿って延設された部材である。中間部材31は、第1の部位311と、第2の部位312と、アンカー部313とを有している。
【0019】
第1の部位311は、例えば、内管11の外周を覆うように設けられた筒状の部材で構成することができる。長軸方向において、第1の部位311の先端の位置は、内管11の先端の位置と同じかまたは内管11の先端の位置よりも基端側に位置するように配置することができる。また、第1の部位311は、長軸方向に沿って外管21と共に移動できるように、貫通孔21cに挿通された固定ピン211を用いて外管21に固定されている。
【0020】
第2の部位312は、第1の部位311よりも基端側に位置する部位である。第2の部位312は、第1の部位311および外管21に対して長軸方向に沿って相対的に移動できるように配置されている。
【0021】
第1の部位311および第2の部位の形状312は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。上記形状としては、例えば、内管11の外周を覆うような断面が環状またはC字状の部材(筒状の部材など)等が挙げられる。
【0022】
第1の部位311と第2の部位312とは、内管11の長軸方向に沿って相対的に移動できるように構成されている。長軸方向に沿った相対的な移動としては、例えば、第1の部位が内管11に対して固定された状態で、第2の部位が内管11の長軸方向に沿って移動しながら両者の距離が変化する態様、第1の部位および第2の部位のいずれもが内管11の長軸方向に沿って移動しながら、両者の距離が変化する態様等が挙げられる。本実施形態においては、第1の部位311および第2の部位312のそれぞれが、内管11の長軸方向に沿って移動できるように構成されている。なお、第1の部位311および第2の部位312の移動機構については後述する。
【0023】
第1の部位311および第2の部位312を形成する材料としては、生体適合性を有しかつ内管11や後述する外管21に対して滑動性等を有していることが好ましい。
【0024】
アンカー部313は、一端部が第1の部位311に固定されかつ一端部と反対側の部位に位置する他端部が第2の部位312に固定された可撓性の部位である。アンカー部313は、アンカー313aを有している。アンカー部313は、1本または複数本のアンカー313aで構成することができる。アンカー部313を構成するアンカー313aそれぞれは、第1の部位311と第2の部位312との間隔が狭まることで、スリット部21aを介して外管21の外側に向かって湾曲しながら突出するように構成されている。本実施形態では、4本のアンカー313aが内管11の長軸に対して軸対称となる位置に配置されている。
【0025】
アンカー313aの一端部および他端部は、例えば、それぞれ第1の部位311および第2の部位312に溶着されたり、接着剤で接着されることより固定されている。これにより、アンカー313aの略中央部は、第1の部位311と第2の部位312とを相対的に近づけることで外管21の外側に向かって略U字状に湾曲するように変形することができる。なお、アンカー313aの突出機構については後述する。
【0026】
アンカー313aは、例えば、可撓性を有する長手形状のワイヤーやリボンなどの部材等で形成されていてもよい。上記部材の断面形状は特に限定されない。アンカー313aの断面形状としては、例えば、真円形状、楕円形状、略矩形状(扁平形状)等が挙げられる。なお、アンカー313aのうちの少なくとも身体に接する可能性がある部位は、鋭利な形状ではないことが好ましい。なお、アンカー313aは、外側への湾曲をより確実にするべく、外側へ凸形状となっていることが望ましい。
【0027】
アンカー313aを形成する材料としては、略U字状に湾曲するような可撓性を有し、かつ生体適合性も有することが好ましい。
【0028】
ハウジング41は、内管11の基端部に接続された部材である。ハウジング41は、例えば、ハウジング本体411と、接続部421とを有するように構成することができる。
【0029】
ハウジング本体411は、基端に設けられた開口41aを介してトロッカーやカテーテルなどの医療器具を挿脱する部位である。ハウジング本体411には、図1に示すように、内管11内にガスを供給できるように、ガス供給口431が設けられていてもよい。ガス供給口431には、ガスの逆流を防止できるように、逆止弁441が取り付けられていてもよい。
【0030】
接続部421は、ハウジング本体411の先端側に設けられ、内管11に固着された部位である。接続部421は、後述するセレクタ溝61と、被係合部421aとを有している。接続部421と内管11との固着方法は、特に限定されない。上記固着方法としては、例えば、接着剤を用いて接着する方法、嵌着する方法、溶着する方法等が挙げられる。
【0031】
次に、第1および第2の部位311,312の移動機構、およびアンカー313aの突出機構の具体例について詳述する。
【0032】
[第1および第2の部位の移動機構]
第1および第2の部位311,312の移動機構は、図4に示すように、例えば、セレクタ溝61と、セレクタリング51と、係合部312aと、被係合部421aと、を有するように構成することができる。
【0033】
セレクタ溝61は、ハウジング41の接続部421に設けられた溝部である。セレクタ溝61は、例えば、長軸方向に沿って延びる縦溝61aと、一端が縦溝61aに連続しかつ長軸方向に対して直交する方向に延びる複数の横溝61bと、により構成することができる。複数の横溝61bは、長軸方向に沿って所定の間隔で並設されている。隣り合う横溝61bどうしの間隔は均等でもよく、異なっていてもよい。セレクタ溝61は、後述するセレクタリング51の凸部51aの先端部を受け入れる。
【0034】
セレクタリング51は、外管21の基端部に配置され、外管21の円周方向に沿って移動(回転)可能な略環状の部材である。センタリング51の内周には、内側に向かって突出する凸部51aが設けられている(図2(c),図3(c)参照)。凸部51aの先端はセレクタ溝61に係合する。セレクタリング51は、外管21の環状溝21f内に回転可能に配置される。
【0035】
ここで、凸部51aは、縦溝61a内を長軸方向に沿って移動することができる。そのため、セレクタリング51が配置された外管21は、凸部51aが縦溝61aを移動することで内管11に対して長軸方向に沿って移動することができる。凸部51aは、横溝61b内に入り込むこともできる。そのため、セレクタリング51が配置された外管21は、凸部51aが複数の横溝61bのうちのいずれかに入り込むことで、内管11に対する長軸方向の移動が制限され、内管11に対する外管21の位置が決定(固定)される。なお、外管21の固定により、外管21に固定された第1の部位311も同様に内管11に固定される。
【0036】
係合部312aは、後述する被係合部421aに係合する部位である。係合部312aは、例えば、第2の部位312の基端部に設けられ、基端側に向かって突出した略コ字状(円筒の周方向の一部を切り欠いた形状)に形成されている。
【0037】
被係合部421aは、係合部312aに係合する部位である。被係合部421aは、例えば、接続部421の先端部に設けられ、先端側に向かって開放された略コ字状(円筒の周方向の一部を切り欠いた形状)に形成されている。
【0038】
ここで、係合部312aと被係合部421aとは、長軸方向に沿ってのみ相対的にスライドできるように係合している。このため、第2の部位312は、内管11の長軸方向における移動は許容されつつ、円周方向に沿う回転は阻止される。なお、第2の部位312は、アンカー部313と第1の部位311とを介して外管21に繋がっている。そのため、内管11に対する第2の部位312の回転を阻止することで、内管11に対する第1の部位311および外管21の回転も一体的に阻止される。
【0039】
[アンカーの突出機構]
アンカー313aの突出は、第1の部位311と第2の部位312との長軸方向における相対的な移動(接近)により発現する。すなわち、第1の部位311と外管21とは互いに固定されている。このため、第2の部位312と第1の部位311との間隔を狭めることでアンカー313aが湾曲しながら突出する。
【0040】
より具体的には、図5(a),(b)に示すように、第2の部位312の外周面にはノブ71が取り付けられていると共に、外管21には長軸方向に延びかつノブ71を通すスロット21b(貫通孔)が形成されている(図1参照)。このため、スロット21bを介して外部に露出したノブ71を長軸方向に沿って先端側に移動すると、第2の部位312がスライドしながら第1の部位311に近づく。これにより、第1の部位311と第2の部位312との間隔が狭まり、アンカー313aが湾曲してその略中央部がスリット部21aから外部(半径方向外側)に向かって突出する。
【0041】
一方、ノブ71の操作により第2の部位312を第1の部位311から遠ざける(第1の部位311と第2の部位312との間隔を拡げる)と、湾曲しているアンカー313aが略直線状に戻り、アンカー部313全体が外管21内に収納される。
【0042】
なお、第1の部位311と先端側にスライドした第2の部位312との間隔が固定できるように、ロック機構が設けられていてもよい。ロック機構は、具体的には、図5(a),(b)に示すように、例えば、略U字溝312bと、ロックピン212と、解除ピン314とにより構成することができる。
【0043】
略U字溝312bは、第2の部位312に形成された略U字状の溝である。略U字溝312bにはロックピン212を係止可能な部位が設けられている。ロックピン212は、中途が外管21の貫通孔21eに固定され、半径方向に沿って延設されている。ロックピン212の外側端は外部に露出し、開放されたロックピン212の内側端は略U字溝312bに入り込んでいる。解除ピン314は、内側端が略U字溝312bに囲まれた第2の部位312の先端に固定され、半径方向外側に向かって延設されている。解除ピン314の外側端は、外管21に設けられた貫通孔21dを介して外部に露出している(図1参照)。
【0044】
ここで、本実施形態のロック機構の動作について説明する。図5(a)に示すように、第1の部位311と第2の部位312との間隔が大きい状態(アンカー313aが略直線形状である状態)では、ロックピン212の内側端が略U字溝312bの先端部に位置している(アンロック状態)。
【0045】
上述のアンロック状態から第2の部位312を先端側に向かってスライドすると、図5(b)に示すように、第1の部位311と第2の部位312との間隔が小さい状態(アンカー313aが外管21の外側に向かって略U字状に湾曲する状態)に移行する。この際、ロックピン212の内側端は、略U字溝312bに囲まれた第2の部位312の鉤部312d(ロックピン212の内側端を係止可能な鉤状の部位)に係止され、第2の部位312が基端側に移動するのが阻止される。この状態では、外管21からのアンカー313aの突出が保持される(ロック状態)。
【0046】
一方、上述のロック状態(図5(b)参照)において解除ピン314を半径方向内側に向かって押し込むと、第2の部位312の略U字溝312bに囲まれた部位312cが内側に向かって弾性的に撓み、鉤部312dへのロックピン212の内側端の係止が解除される(アンロック状態)。このアンロック状態では、第2の部位312が基端側に移動可能な状態となる。これにより、第1の部位311と第2の部位312との間隔を再び拡げることができ、アンカー313aが略直線状に戻ることで、アンカー部313全体が外管21内に収納される(図5(a)参照)。
【0047】
次に、カニューレ1の使用態様について説明する。ここでは、トロッカーTが挿入されたカニューレ1と、カニューレ1を体表側から固定するための円環状の固定用ディスク(不図示)とを用いて、カニューレ1を身体に装着する手技を説明する。
【0048】
まず、カニューレ1の先端側から外管21の外周に固定用ディスクを嵌入し、ハウジング本体411近傍まで移動させておく。次いで、標準的な公知の外科手技を用い、カニューレ1を挿入する体壁の部位をあらかじめ切開する。次いで、トロッカーTが挿入されたカニューレ1を切開された体壁に押し当て、力を加えながらカニューレ1の先端が体腔内の所望の部位に達するまで挿入(穿刺)する。
【0049】
次に、術野を形成するために気腹を行う。気腹は、例えば、ハウジング本体411に設けられたガス供給口431を介して炭酸ガスなどを体内に導入しながら、腹腔を拡張することで行うことができる。
【0050】
次に、内管11に対する外管21(アンカー部313)の位置調整を行う。具体的には、[第1および第2の部位の移動機構]の項で説明したように、例えば、セレクタリング51の凸部51aをセレクタ溝61の縦溝61aに挿入した状態で、外管21を長軸方向にスライドしながら内管11の適所まで移動させる。次いで、セレクタリング51の凸部51aをセレクタ溝61の横溝61bに挿入することで、内管11に対して外管21(および第1の部位311)の位置を固定する。これにより、内管11に対するスリット21a(アンカー部313)の位置が決められる。
【0051】
次に、体腔側からのカニューレ1の抑えを行う。具体的には、[アンカーの突出機構]の項で説明したように、例えば、ノブ71の操作により第2の部位312をスライドさせながら第1の部位311に近づけると、図5(b)に示すように、第1の部位311と第2の部位312との間隔が狭まり、アンカー313aが湾曲してその略中央部がスリット部21aから外部に向かって突出する。その際、ロックピン212の内側端は鉤部312dに係止され、アンカー313aの突出が保持される。次いで、突出したアンカー313aを体内側から体壁に当接することで体腔側におけるカニューレ1の抑え(アンカーによる支え)が行われる。
【0052】
次に、体表側からのカニューレ1の抑えを行う。具体的には、あらかじめ外管21に嵌入されかつ体外に位置する固定用ディスクを用い、この固定ディスクをハウジング本体411近傍からカニューレ1の先端側に移動させ、体表に当接させる。これにより、体表側におけるカニューレ1の抑え(固定用ディスクによる係止)が行われる。
【0053】
上述の操作により、アンカー313aによる体腔側からの係止と、固定用ディスクによる体表側からの係止とにより、体壁がこれらに挟持され、カニューレ1が身体に係止(固定)される。カニューレ1を係止した後、例えば、トロッカーTをカニューレ1から抜去することで、身体へのカニューレ1の装着が完了する。
【0054】
なお、カニューレ1を身体から抜去する際には、例えば、解除ピン314を用いてロックを解除した後、ノブ71の操作により第2の部位312をスライドさせながら第1の部位311から遠ざける。これにより、図5(a)に示すように、第1の部位311と第2の部位312との間隔が拡がり、湾曲したアンカー313aが略直線状に戻ることで、突出したアンカー313aが外管21内に収納され、カニューレ1を身体から抜去することができる。
【0055】
以上のように、カニューレ1は上記構成であるので、簡易な構成でアンカー313aを突出することができ、突出したアンカー313aによりカニューレ1を身体に確実に係止することができる。
【0056】
本実施形態では、第1の部位311および第2の部位312のそれぞれが、内管11の長軸方向に沿って移動できるように構成されている。このため、内管11に対するアンカー部313の配置を容易に変更することができ、カニューレ1の身体への挿入深さを自在に調整することができる。体壁の厚みが小さいあるいは大きい場合のいずれであっても、アンカー部313の配置を変更できるので、いずれの場合でも、身体に確実に係止し易い。加えて、体腔内の抜け止めの位置を変えることで、逆止弁部を体表面へ近づけ、大きさゆえの高重心による施術中の倒れ易さを改善することが可能となっている。
【0057】
本実施形態のアンカー部313におけるアンカー313aは、長軸に対して対称となる位置に複数本(本実施形態では4本)配置されている。これにより、体腔内において、より安定してカニューレ1の抑え(アンカー313aによる支え)を行うことができる。
【0058】
本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態の構成のうちの一部を削除したり、他の構成に置換してもよく、上述した実施形態の構成に他の構成を追加等してもよい。
【0059】
例えば、上述した実施形態では、4本のアンカー313aが内管11の長軸に対して軸対称となる位置に配置されたカニューレ1について説明した。しかしながら、アンカーの本数およびその配置は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。すなわち、アンカーの本数は、1本であってもよい。1本のアンカーが外管の外側に向かって突出することで、体腔側におけるカニューレの抑え(アンカーによる支え)を行うことができ、カニューレが身体から抜け出るのを防止することができる。また、アンカーに捻りを加えておき、係止強度を変化することも可能である。係止強度を上げると、アンカーが体内から抜け出ることを防止し易くなる。
【0060】
また、上述した実施形態では、第1および第2の部位311,312の移動機構として、セレクタ溝61、セレクタリング51、係合部312a、および被係合部421aを有するカニューレ1について説明した。しかしながら、第1の部位と第2の部位とが内管の長軸方向に沿って相対的に移動ができれば、いずれの移動機構であってもよい。すなわち、上記特定のセレクタ溝61、セレクタリング51、係合部312a、および被係合部421a以外のセレクタ溝、セレクタリング、係合部、および被係合部を用いた移動機構であってもよく、セレクタ溝やセレクタリング等を用いない他の移動機構であってもよい。
【0061】
上述した実施形態では、アンカー313aの突出機構として、ノブ71を備えたカニューレ1について説明した。しかしながら、第1の部位311と第2の部位312との間隔を変更することができればいずれの突出機構であってもよい。
【0062】
上述した内管11や、外管21、中間部材31の第1および第2の部位311,312を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネイト等が挙げられるが、生体適合性を有しかつ滑動性を有していれば、特に制限されるものはない。アンカー313aを形成する材料としては、軟質ポリ塩化ビニルやステンレスが挙げられるが、略U字状に湾曲するような可撓性を有しかつ生体適合性有していれば、特に制限されるものはない。
【0063】
上述した実施形態では、略U字溝312b、鉤部312d、ロックピン212、および解除ピン314を有するロック機構を備えたカニューレ1について説明した。しかしながら、本発明の効果を損なわない限り、上記特定のロック機構以外のロック機構を備えているカニューレであってもよく、ロック機構を備えていないカニューレであってもよい。
【0064】
上述した実施形態における使用態様の説明においては、トロッカーTおよび固定用ディスクを併用した手技について記述した。しかしながら、トロッカーや固定用ディスクを用いないカニューレの使用態様であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 カニューレ
11 内管
11h 内腔
21 外管
21a スリット部
21b スロット
21c 貫通孔
21d 貫通孔
21e 貫通孔
21f 環状溝
211 固定ピン
212 ロックピン
31 中間部材
311 第1の部位
312 第2の部位
312a 係合部
312b 略U字溝
312c 部位
312d 鉤部
313 アンカー部
313a アンカー
314 解除ピン
41 ハウジング
411 ハウジング本体
421 接続部
421a 被係合部
431 ガス供給口
441 逆止弁
51 セレクタリング
51a 凸部
61 セレクタ溝
61a 縦溝
61b 横溝
71 ノブ
T トロッカー
図1
図2
図3
図4
図5