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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169533
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20231122BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20231122BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231122BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231122BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G03F7/42
H01L21/306 S
H01L21/302 104H
H01L21/304 645B
H01L21/304 643A
H01L21/304 651M
H01L21/304 651L
H01L21/30 572B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080693
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 紘太
(72)【発明者】
【氏名】太田 喬
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀一
【テーマコード(参考)】
2H196
5F004
5F043
5F146
5F157
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196LA02
2H196LA03
5F004BA19
5F004BB26
5F004BC07
5F004BD01
5F004CA04
5F004DA27
5F004DB26
5F004EA34
5F043AA40
5F043BB30
5F043CC16
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F146MA02
5F146MA03
5F146MA05
5F146MA10
5F157AA64
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB90
5F157BB66
5F157BD33
5F157BE23
(57)【要約】
【課題】より効率的にレジストを基板から剥離または除去することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理方法および基板処理装置は、レジストパターン100が形成された基板Wの表面に過酸化水素水を供給する。基板処理方法および基板処理装置は、基板Wに接する過酸化水素水にオゾンガスを供給する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストパターンが形成された基板の表面に過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給工程と、
前記基板に接する前記過酸化水素水にオゾンガスを供給するオゾンガス供給工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記過酸化水素水を前記基板に供給する前または後に前記過酸化水素水を室温よりも高い剥離促進温度で加熱する過酸化水素水加熱工程をさらに含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記剥離促進温度は、前記過酸化水素水の沸点未満である、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記剥離促進温度は、水の沸点未満である、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記過酸化水素水供給工程は、前記過酸化水素水を前記基板の表面に供給する初回供給工程と、前記基板の表面への前記過酸化水素水の供給を停止した後に前記過酸化水素水を前記基板の表面に供給する再供給工程とを含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記オゾンガス供給工程は、前記過酸化水素水の複数の液滴が前記基板の表面の全域に分散している状態で、前記基板に接する前記過酸化水素水に前記オゾンガスを供給する工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記過酸化水素水供給工程は、前記過酸化水素水のミストを前記基板の表面に供給するミスト供給工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記過酸化水素水供給工程は、液柱ノズルから前記基板の表面まで連続した前記過酸化水素水の液柱を形成することにより、前記過酸化水素水を前記基板の表面に供給する液柱供給工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記過酸化水素水を前記基板の表面に供給する前に、前記オゾンガスを前記基板の表面に接触させることにより、前記レジストパターンの表面に対する水の接触角を減少させる親水化工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板に接する前記過酸化水素水に前記オゾンガスを供給した後に、前記レジストパターンを前記基板の表面から剥離するレジスト剥離液を前記基板の表面に供給する剥離液供給工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
レジストパターンが形成された基板の表面に過酸化水素水を供給する過酸化水素水ノズルと、
前記基板に接する前記過酸化水素水にオゾンガスを供給するオゾンノズルと、を含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。基板には、例えば、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、硬化層を有するレジストを基板の表面から除去するために、基板を150℃以上の温度で加熱しながら、基板の表面にオゾンガスを供給し、その後、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)などの硫酸を含む処理液を基板の表面に供給することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-41077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の一つは、より効率的にレジストを基板から剥離または除去することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための本発明の一実施形態は、レジストパターンが形成された基板の表面に過酸化水素水を供給する過酸化水素水供給工程と、前記基板に接する前記過酸化水素水にオゾンガスを供給するオゾンガス供給工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0006】
この方法によれば、基板の表面に形成されたレジストパターンに過酸化水素水を接触させる。さらに、この過酸化水素水にオゾンガスを接触させる。オゾンガスと過酸化水素との反応により、ヒドロキシルラジカルが生成される。ヒドロキシルラジカルは、レジストパターンを酸化し分解する。これにより、レジストパターンの少なくとも一部が剥離または除去される。ヒドロキシルラジカルは、オゾンガスよりも酸化還元電位が高く、オゾンガスよりも酸化力が強い。したがって、オゾンガスでレジストパターンを酸化および分解する場合に比べて、レジストパターンを効率的に除去できる。それにより、硫酸を含有するレジスト剥離液の使用量を削減したり、その使用を省いたりすることができるので、環境負荷を低減できる。
【0007】
レジストパターンが基板の表面に形成されているのであれば、基板は、基板の表面においてレジストパターンから露出した部分に不純物イオンを注入するイオン注入が行われた基板であってもよいし、イオン注入が行われていない基板であってもよい。前者の場合、レジストパターンの表層は、イオン注入によって硬化していてもよいし、硬化していなくてもよい。
【0008】
過酸化水素水は、過酸化水素の水溶液である。過酸化水素水は、過酸化水素(H)と水(HO)とを主成分とする液体である。過酸化水素および水が主成分であれば(例えば、過酸化水素および水の体積パーセント濃度が90%以上であれば)、過酸化水素水は、過酸化水素および水以外の物質を含んでいてもよい。
【0009】
オゾンガスは、空気中のオゾンの濃度よりも高い濃度でオゾンを含むオゾン含有ガスである。オゾン含有ガスは、オゾンが均一に分散したガスである。オゾン含有ガスは、オゾンだけを含むガスであってもよいし、オゾン以外の成分も含むガスであってもよい。後者の場合、酸素、または二酸化炭素などのオゾン以外の成分が、オゾン含有ガスに含まれていてもよい。
【0010】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理方法に加えてもよい。
【0011】
前記基板処理方法は、前記過酸化水素水を前記基板に供給する前または後に前記過酸化水素水を室温よりも高い剥離促進温度で加熱する過酸化水素水加熱工程をさらに含む。
【0012】
この方法によれば、基板に供給した後に過酸化水素水を間接的または直接的に加熱する。もしくは、加熱した過酸化水素水を基板に供給する。これにより、剥離促進温度、つまり、室温よりも高温の過酸化水素水にオゾンガスを接触させることができ、ヒドロキシルラジカルの生成を促進することができる。その結果、レジストパターンと反応するヒドロキシルラジカルを増やすことができ、より効率的にレジストパターンを除去できる。
【0013】
前記過酸化水素水加熱工程は、間接加熱工程、直接加熱工程、および事前加熱工程のいずれかであってもよいし、これらのうちの2つ以上を含んでいてもよい。前記間接加熱工程は、前記基板に接する前記過酸化水素水に、加熱した前記基板および加熱した気体の少なくとも一方を接触させることにより、前記過酸化水素水を前記剥離促進温度で加熱する工程である。直接加熱工程は、前記基板に接する前記過酸化水素水に、ランプなどの熱源から放出された電磁波を照射することにより、前記過酸化水素水を前記剥離促進温度で加熱する工程である。事前加熱工程は、前記過酸化水素水を前記基板に供給する前に前記基板に供給すべき前記過酸化水素水を前記剥離促進温度で加熱する工程である。
【0014】
前記剥離促進温度は、前記過酸化水素水の沸点未満である。
【0015】
この方法によれば、過酸化水素水の沸点よりも低い温度で過酸化水素水を加熱する。これにより、過酸化水素水が基板から蒸発する速度を低下させることができ、過酸化水素水が基板上にある状態を維持することができる。多量の過酸化水素水を基板に保持させれば、過酸化水素水を沸点以上の温度で加熱しても、比較的長い時間、過酸化水素水が基板上にある状態を維持することができる。しかしながら、この場合、基板上の過酸化水素水の液滴または液膜の厚みが大きくなり、レジストパターンの表面まで到達するヒドロキシルラジカルが減少する。過酸化水素水の沸点よりも低い温度で過酸化水素水を加熱することにより、厚みの大きな過酸化水素水の液滴または液膜を基板上に形成しなくても、過酸化水素水が基板上にある状態を維持することができる。
【0016】
前記剥離促進温度は、水の沸点未満である。
【0017】
この方法によれば、水の沸点、つまり、100℃よりも低い温度で過酸化水素水を加熱する。これにより、基板上の過酸化水素水から水が蒸発する速度を低下させることができ、厚みの大きな過酸化水素水の液滴または液膜を基板上に形成しなくても、水が基板上にある状態を維持することができる。ヒドロキシルラジカルは、オゾンガスと過酸化水素との反応だけでなく、オゾンガスと水との反応によっても生成される。これにより、レジストパターンと反応するヒドロキシルラジカルを増やすことができる。
【0018】
レジストパターンが加熱されると、レジストパターンに含まれる溶剤が気化する。レジストパターンの表層に硬化層が形成されている場合、気化した溶剤が排出され難いので、レジストパターンの内部の圧力が上昇する。レジスト塗布からレジスト剥離の前までの一連の工程には、プリベークやポストベークなどの基板を加熱する工程が含まれる。この一連の工程における基板の温度の最大値を最高温度と定義する。レジストパターンの表層に硬化層が形成されており、レジストパターンが加熱される温度が最高温度よりも大幅に高いと、レジストパターンの内部の圧力が高くなり易い。
【0019】
過酸化水素水を室温よりも高い剥離促進温度で加熱するとき、当該剥離促進温度を過酸化水素水の沸点よりも低い温度または水の沸点よりも低い温度にすれば、レジストパターンが加熱される温度を、前述の一連の工程における基板の温度の最大値、つまり、最高温度に近づけることができる。もしくは、レジストパターンが加熱される温度を、最高温度以下にすることができる。これにより、レジストパターンの表層に硬化層が形成されている場合であっても、レジストパターンの内部の圧力が高くなることを防止できる。
【0020】
前記過酸化水素水供給工程は、前記過酸化水素水を前記基板の表面に供給する初回供給工程と、前記基板の表面への前記過酸化水素水の供給を停止した後に前記過酸化水素水を前記基板の表面に供給する再供給工程とを含む。換言すれば、前記過酸化水素水供給工程は、過酸化水素水の供給を少なくとも1回途中で中断する工程を含む。
【0021】
この方法によれば、過酸化水素水を室温よりも高い剥離促進温度で加熱すると共に、過酸化水素水を基板の表面に断続的に供給する。つまり、過酸化水素水を基板の表面に供給し、基板の表面に保持させる。過酸化水素水の供給が停止されている間(過酸化水素水の追加が停止されている間)、基板上の過酸化水素水は、蒸発やオゾンガスとの反応により減少する。基板の表面への過酸化水素水の供給を再開し、基板の表面に過酸化水素水を追加する。これにより、過酸化水素水を供給し続ける場合に比べて過酸化水素水の消費量を削減しながら、過酸化水素水が基板上にある状態を維持することができる。加えて、過酸化水素水を供給し続ける場合に比べて基板上の過酸化水素水の液滴または液膜を薄くできる。
【0022】
前記オゾンガス供給工程は、前記過酸化水素水の複数の液滴が前記基板の表面の全域に分散している状態で、前記基板に接する前記過酸化水素水に前記オゾンガスを供給する工程を含む。基板の表面に対して垂直な方向から基板の表面を見たときの過酸化水素水の液滴の形状は、円、楕円、および線のいずれかであってもよいし、これら以外の形状であってもよい。
【0023】
この方法によれば、基板の表面の全域が過酸化水素水の液膜で覆われている状態ではなく、過酸化水素水の複数の液滴が基板の表面の全域に分散している状態で、基板に接する過酸化水素水にオゾンガスを接触させる。これにより、基板の表面の全域が過酸化水素水の液膜で覆われている場合に比べて、効率的にレジストパターンを除去することができる。理由は、以下の通りである。
【0024】
レジストパターンと過酸化水素水との界面である固液界面(図4参照)に供給されるヒドロキシルラジカル(OH)は、オゾンガスと過酸化水素水とレジストパターンとの境界である三態境界(図4参照)に近づくにしたがって増加する。これは、ヒドロキシルラジカルが短時間で過酸化水素に戻るので、過酸化水素水の液滴または液膜の表面から固液界面までの最短距離が長いと、固液界面に到達する前にヒドロキシルラジカルが消滅するからである。したがって、三態境界付近では、三態境界から遠い位置に比べて、過酸化水素水に接するレジストパターンを効率的に除去することができる。
【0025】
過酸化水素水の複数の液滴が基板の表面の全域に分散しているときの三態境界の全長(長さの合計値)は、基板の表面の全域が過酸化水素水の液膜で覆われているときの三態境界の全長よりも大きい。前述のように、三態境界付近では、三態境界から遠い位置に比べて、過酸化水素水に接するレジストパターンを効率的に除去することができる。以上の理由により、基板の表面の全域が過酸化水素水の液膜で覆われている場合に比べて、効率的にレジストパターンを除去することができる。
【0026】
前記過酸化水素水供給工程は、前記過酸化水素水のミストを前記基板の表面に供給するミスト供給工程を含む。
【0027】
この方法によれば、霧状の過酸化水素水を基板の表面に供給する。過酸化水素水のミストは、多数の過酸化水素水の粒子によって構成されている。基板上の過酸化水素水の粒子は、別の過酸化水素水の粒子と結合し、過酸化水素水の液滴(過酸化水素水の粒子よりも直径が大きい過酸化水素水の集合体)を基板の表面に形成する。レジストパターンの表面が疎水性の場合、過酸化水素水の複数の液滴が形成され、基板の表面の全域に分散する。レジストパターンの表面が親水性の場合、基板の表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成される。これにより、液柱ノズルから基板の表面まで連続した過酸化水素水の液柱を形成する場合に比べて、薄い過酸化水素水の液滴または液膜を形成できる。
【0028】
前記過酸化水素水供給工程は、液柱ノズルから前記基板の表面まで連続した前記過酸化水素水の液柱を形成することにより、前記過酸化水素水を前記基板の表面に供給する液柱供給工程を含む。
【0029】
この方法によれば、過酸化水素水を基板の表面に向けて液柱ノズルから連続的に吐出し、過酸化水素水を基板の表面に衝突させる。液柱ノズルから吐出された過酸化水素水は、液柱ノズルから基板の表面まで連続した過酸化水素水の液注を形成する。レジストパターンの表面が疎水性の場合、過酸化水素水の複数の液滴が形成され、基板の表面の全域に分散する。レジストパターンの表面が親水性の場合、基板の表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成される。これにより、過酸化水素水のミストを基板の表面に供給する場合に比べて、短時間で過酸化水素水の液滴または液膜を形成できる。
【0030】
前記基板処理方法は、前記過酸化水素水を前記基板の表面に供給する前に、前記オゾンガスを前記基板の表面に接触させることにより、前記レジストパターンの表面に対する水の接触角を減少させる親水化工程をさらに含む。
【0031】
この方法によれば、オゾンガスを基板の表面に接触させ、レジストパターンの表面の疎水性を弱める。これにより、レジストパターンの表面に対する水の接触角が減少する。この状態で、過酸化水素水を基板の表面に供給する。レジストパターンの表面が疎水性の場合、大きな流量で過酸化水素水を供給しなければ、基板の表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜を形成することができない。しかしながら、この場合、過酸化水素水の消費量が増加する上に、分厚い過酸化水素水の液膜が形成される。レジストパターンの表面を親水化した後に過酸化水素水を供給すれば、過酸化水素水の消費量を削減しながら、基板の表面の全域を覆う薄い過酸化水素水の液膜を形成することができる。加えて、オゾンガスを用いてレジストパターンを除去するだけでなく、オゾンガスを用いてレジストパターンの表面を親水化するので、オゾンガス以外の液体または気体を用いてレジストパターンの表面を親水化する場合に比べて、配管やバルブなどの基板の処理に用いる流体機器の数を減らすことができる。
【0032】
前記基板処理方法は、前記基板に接する前記過酸化水素水に前記オゾンガスを供給した後に、前記レジストパターンを前記基板の表面から剥離するレジスト剥離液を前記基板の表面に供給する剥離液供給工程をさらに含む。
【0033】
この方法によれば、オゾンガスと過酸化水素との反応により生成されたヒドロキシルラジカルを用いてレジストパターンの全部または一部を剥離または除去した後に、レジスト剥離液を基板の表面に供給する。レジストパターンの一部が基板の表面に残っていたとしても、このレジストパターンは、レジスト剥離液との接触により、基板の表面から剥がれる。レジストパターンの残渣が基板の表面に残っていたとしても、この残渣は、レジスト剥離液によって洗い流される。これにより、基板の表面に残留するレジストを減らすことができる。
【0034】
前記目的を達成するための本発明の他の実施形態は、レジストパターンが形成された基板の表面に過酸化水素水を供給する過酸化水素水ノズルと、前記基板に接する前記過酸化水素水にオゾンガスを供給するオゾンノズルと、を含む、基板処理装置を提供する。この装置によれば、前述の基板処理方法と同様の効果を奏することができる。基板処理方法に関する前述の特徴の少なくとも1つを、この実施形態に係る基板処理装置に加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態に係るレジスト剥離を含む基板の処理の一例を示す工程図である。
図2】本発明の一実施形態に係るレジストパターンの一例を示す概略断面図である。
図3A-C】本発明の一実施形態に係るレジスト剥離の一例について説明するための概略図である。
図3D-F】本発明の一実施形態に係るレジスト剥離の一例について説明するための概略図である。
図4】基板上の過酸化水素水の液滴に溶け込んだオゾンガスが過酸化水素水に含まれる過酸化水素と反応して、ヒドロキシルラジカルが生成されることを説明するための概略図である。
図5】硬化層に空洞が形成されたレジストパターンのイメージの一例を示す鉛直断面図である。
図6A-C】本発明の一実施形態に係るレジスト剥離の他の例について説明するための概略図である。
図6D】本発明の一実施形態に係るレジスト剥離の他の例について説明するための概略図である。
図7】基板上の過酸化水素水の液膜に溶け込んだオゾンガスが過酸化水素水に含まれる過酸化水素と反応して、ヒドロキシルラジカルが生成されることを説明するための概略図である。
図8】本発明の一実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す概略平面図である。
図9】前処理ユニットの鉛直断面の一例を示す断面図である。
図10A】熱処理ユニットの鉛直断面の一例を示す断面図である。
図10B】熱処理ユニットの鉛直断面の他の例を示す断面図である。
図11】後処理ユニットの鉛直断面の一例を示す断面図である。
図12】基板処理装置によって実行される基板の処理の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係るレジスト剥離を含む基板Wの処理の一例を示す工程図である。図2は、本発明の一実施形態に係るレジストパターン100の一例を示す概略断面図である。
【0038】
図1に示す基板Wの処理では、シリコンウエハなどの基板Wの表面に樹脂および溶剤を含むフォトレジスト液を塗布することにより、基板Wの表面の全域を覆うレジスト膜を形成するレジスト塗布を行う(図1のステップS1)。その後、基板Wの表面の全域がレジスト膜で覆われた状態で基板Wをプリベーク温度で加熱することにより、レジスト膜に含まれる溶剤を蒸発させるプリベークを行う(図1のステップS2)。その後、紫外線などの光をフォトマスクを介して基板W上のレジスト膜に照射することにより、フォトマスクに形成された回路パターンをレジスト膜に転写する露光を行う(図1のステップS3)。
【0039】
露光後は、現像液を基板Wに供給することにより、レジスト膜から不要な部分を除去し、残ったレジスト膜に相当するレジストパターン100を基板Wの表面に形成する現像を行う(図1のステップS3)。その後、基板Wをポストベーク温度で加熱するポストベークを行う(図1のステップS4)。露光後、現像前に、基板Wを加熱するポストエクスポージャーベークを行ってもよい。ポストベークの後は、基板Wの表面においてレジストパターン100から露出した部分に不純物イオンを注入するイオン注入を行う(図1のステップS5)。その後、不要になったレジストパターン100を基板Wの表面から除去するレジスト剥離を行う(図1のステップS6)。
【0040】
イオン注入では、基板Wの表面の一部だけでなく、レジストマスクに相当するレジストパターン100にも、不純物イオンが衝突する。そのため、レジストパターン100の表層の全域または大部分が、炭化等の変質によって硬化層101に変化する。その一方で、レジストパターン100の内部は、硬化しないまま硬化層101の内側に残る。図2は、レジストパターン100のうち硬化しなかった部分に相当する非硬化部102が基板Wの表面に接しており、非硬化部102の先端面および両方の側面が硬化層101で覆われた例を示している。以下では、このようなレジストパターン100を基板Wの表面から除去するレジスト剥離について説明する。
【0041】
以下では、本発明の一実施形態に係るレジスト剥離の2つの例について説明する。
【0042】
以下の説明において、特に断りがない限り、基板Wは、母材に相当する基板Wと母材上に形成されたレジストパターン100との両方を表し、基板Wの表面は、レジストパターン100の表面と基板Wの表面のうちレジストパターン100から露出した部分との両方を表すものとする。
【0043】
図3A図3B図3C図3D図3E、および図3Fは、本発明の一実施形態に係るレジスト剥離の一例について説明するための概略図である。図3A図3Fは、基板Wを水平に見た状態を示している。図4は、基板W上の過酸化水素水の液滴に溶け込んだオゾンガスが過酸化水素水に含まれる過酸化水素と反応して、ヒドロキシルラジカルが生成されることを説明するための概略図である。図4中の太線は、レジストパターン100と過酸化水素水との界面である固液界面111を示している。図5は、硬化層101に空洞103が形成されたレジストパターン100のイメージの一例を示す鉛直断面図である。
【0044】
図3Aに示すように、硬化層101を有するレジストパターン100を基板Wから除去するときは、室温(15~30℃内の一定またはほぼ一定の温度)よりも高温の剥離促進温度で基板Wを均一に加熱し、基板Wの全体を剥離促進温度に維持する。図3Aは、レジストパターン100が形成された基板Wの表面を上に向けた状態で、発熱するホットプレート30の上に基板Wを水平に配置し、基板Wの下面とホットプレート30との接触により基板Wを剥離促進温度で均一に加熱している例を示している。このような基板Wの加熱に加えてまたは代えて、室温よりも高温の加熱ガスまたは加熱液と基板Wとの接触により基板Wを加熱してもよいし、ランプなどの熱源から放出された電磁波を基板Wに照射することにより基板Wを加熱してもよい。
【0045】
次に、図3Bに示すように、水平な姿勢の基板Wを剥離促進温度で均一に加熱した状態で、過酸化水素水ノズルの一例であるミストノズル51Aから噴出された過酸化水素水のミストを基板Wの表面に供給し、過酸化水素水の複数の液滴を基板Wの表面の全域に分散させる。基板Wへの過酸化水素水のミストの供給は、基板Wの表面に向けて過酸化水素水のミストを噴射することにより行ってもよいし、過酸化水素水のミストを基板Wの上方の空間に拡散させて、拡散した過酸化水素水のミストを基板Wの表面に落下させることにより行ってもよい。これら以外の方法により過酸化水素水のミストを基板Wの表面に供給してもよい。
【0046】
過酸化水素水のミストは、多数の過酸化水素水の粒子によって構成されている。基板Wに供給された過酸化水素水の粒子は、別の過酸化水素水の粒子と結合し、過酸化水素水の液滴を基板Wの表面上に形成する。過酸化水素水のミストの供給を継続すると、基板W上の過酸化水素水の液滴は、徐々に大きくなっていく。しかしながら、レジストパターン100の表面が疎水性なので、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成されるのではなく、図3Bに示すように、互いに離れた複数の過酸化水素水の液滴が基板Wの表面の全域に分散し、基板Wの表面の一部だけが過酸化水素水で覆われる。
【0047】
次に、図3Cに示すように、水平な姿勢の基板Wを剥離促進温度で均一に加熱すると共に、過酸化水素水の複数の液滴を基板Wの表面の全域に分散させた状態で、基板W上の過酸化水素水の複数の液滴にオゾンガスを接触させる。例えば、基板Wを収容した熱処理チャンバー34(図10Aおよび図10B参照)内の気体を排出しながら、熱処理チャンバー34内にオゾンガスを供給し続けることにより、オゾンガスが熱処理チャンバー34内に充満した状態を維持すると共に、新しいオゾンガスを基板Wに供給し続ける。
【0048】
これに代えて、熱処理チャンバー34内にオゾンガスを充満させた後、熱処理チャンバー34内へのオゾンガスの供給を停止すると共に、熱処理チャンバー34の内部を密閉してもよい。この場合、一定の時間が経過するたびに熱処理チャンバー34内のオゾンガスを新しいオゾンガスで置換してもよい。熱処理チャンバー34内に供給されるオゾンガスは、室温であってもよいし、室温よりも高温であってもよい。
【0049】
図4に示すように、オゾンガスは、基板W上の過酸化水素水に溶解し、過酸化水素水に含まれる過酸化水素と反応する。これにより、「O+H→OH+HO+O」で示される化学反応により、ヒドロキシルラジカル(図4中の「OH」)とヒドロペルオキシラジカル(図4中の「HO」)とが生成される。過酸化水素水の液滴内で生成されたヒドロキシルラジカルの一部は、当該液滴中を拡散し、レジストパターン100と過酸化水素水との界面である固液界面111に到達する。固液界面111で生成されるヒドロキシルラジカルもある。ヒドロキシルラジカルは、固液界面111でレジストパターン100の硬化層101(図5参照)と反応し、硬化層101を酸化および分解する。非硬化部102(図5参照)まで到達したヒドロキシルラジカルは、非硬化部102を酸化および分解する。これにより、レジストパターン100の少なくとも一部が気化し、基板Wから除去される。
【0050】
前述のように、水平な姿勢の基板Wを剥離促進温度で均一に加熱すると共に、過酸化水素水の複数の液滴を基板Wの表面の全域に分散させた状態で、基板W上の過酸化水素水の複数の液滴にオゾンガスを接触させる。基板Wの加熱により基板W上の過酸化水素水を間接的に加熱することができ、オゾンガスと過酸化水素との反応性を高めることができる。これにより、ヒドロキシルラジカルの総数を増やすことができ、硬化層101と反応するヒドロキシルラジカルを増やすことができる。
【0051】
その一方で、基板W上の過酸化水素水を加熱すると、過酸化水素水が基板Wから蒸発する速度が増加する。したがって、基板Wへの過酸化水素水のミストの供給を停止した後に、新しい過酸化水素水のミストを基板Wに補給してもよい。もしくは、オゾンガスの供給を開始した後も過酸化水素水のミストの供給(追加)を継続してもよい。図3Dは、基板W上の過酸化水素水の液滴が小さくなった状態を示しており、図3Eは、過酸化水素水のミストの補給により、基板W上の過酸化水素水の液滴が大きくなった状態を示している。基板W上の過酸化水素水を加熱しなくても、オゾンガスと過酸化水素との反応により過酸化水素が基板Wから減少するので、これを補うために、新しい過酸化水素水のミストを再び基板Wに供給してもよい。
【0052】
図4は、基板W上の過酸化水素水の液滴の鉛直断面(鉛直な平面で切断した断面)を示している。図4中の符号112は、オゾンガスと過酸化水素水とレジストパターン100との境界である三態境界を示しており、図4中のハッチングされた領域は、ヒドロキシルラジカルの供給量が相対的に多い領域を示している。固液界面111に供給されるヒドロキシルラジカルは、三態境界112に近づくにしたがって増加する。これは、ヒドロキシルラジカルが短時間で過酸化水素に戻るので、過酸化水素水の液滴または液膜の表面から固液界面111までの最短距離が長いと、固液界面111に到達する前にヒドロキシルラジカルが消滅するからである。言い換えると、三態境界112付近では、過酸化水素水の液滴または液膜の表面から固液界面111までの最短距離が短く、ヒドロキシルラジカルが到達または発生し易い。
【0053】
図5は、三態境界112付近に形成された硬化層101の空洞103の一例を示している。この例では、3つの過酸化水素水の液滴のうち、両側の2つは、2つのレジストパターン100の上に配置されており、残りの1つは、2つのレジストパターン100の間に配置されている。5つの空洞103のうちの3つは、両側の2つの過酸化水素水の液滴の外周付近から基板Wの厚み方向に延びており、2つは、2つのレジストパターン100の側面から基板Wの面方向(基板Wの厚み方向に対して垂直な方向。図5では、紙面の左右方向)に延びている。いずれの空洞103も、硬化層101を貫通しており、非硬化部102に到達している。
【0054】
前記の通り、固液界面111に供給されるヒドロキシルラジカルは、三態境界112に近づくにしたがって増加する。したがって、図5に示すように、過酸化水素水の液滴の外周付近に空洞103が形成され、その後、硬化層101の残りの部分がヒドロキシルラジカルによって分解される。基板Wへのオゾンガスの供給は、空洞103が非硬化部102に到達すると想定される時間が経過した後に停止してもよいし、硬化層101において過酸化水素水に接触している全ての部分がヒドロキシルラジカルによって分解されると想定される時間が経過した後に停止してもよい。
【0055】
前述のように、レジストパターン100の表面が疎水性なので、過酸化水素水のミストを基板Wに供給すると、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成されるのではなく、過酸化水素水の複数の液滴が基板Wの表面の全域に分散する。しかしながら、レジストパターン100の表面において過酸化水素水に接している部分は、過酸化水素水やヒドロキシルラジカルとの反応により疎水性が弱まる。レジストパターン100の表面において過酸化水素水に接していない部分も、オゾンガスとの反応により疎水性が弱まる。したがって、基板Wへの新しい過酸化水素水のミストの供給を継続しながら、もしくは、新しい過酸化水素水のミストを基板Wに断続的に補給しながら、オゾンガスと過酸化水素とを反応させると、レジストパターン100の表面の疎水性が弱まり、基板W上の過酸化水素水の複数の液滴が、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜に変化する。
【0056】
過酸化水素水の複数の液滴が基板Wの表面の全域に分散しているとき、レジストパターン100の表面の一部が基板W上の過酸化水素水に接触していないことがある。これに対して、過酸化水素水の液膜が基板Wの表面の全域を覆っているとき、レジストパターン100の表面の全域またはほぼ全域が基板W上の過酸化水素水に接触している。したがって、過酸化水素水の液膜が形成されると、レジストパターン100の表面においてヒドロキシルラジカルが供給される範囲が広がり、硬化層101においてヒドロキシルラジカルによって分解される部分が増加する。これにより、より多くの硬化層101をヒドロキシルラジカルで分解することができる。
【0057】
レジストパターン100の硬化層101の少なくとも一部をヒドロキシルラジカルで分解した後は、基板Wを収容している熱処理チャンバー34(図10Aおよび図10B参照)の内部からオゾンガスを排出する。さらに、過酸化水素水の蒸発により全ての過酸化水素水が基板Wからなくなるまで待機し、その後、基板Wの加熱を停止する。このとき、剥離促進温度で基板Wを加熱し続けてもよいし、剥離促進温度よりも高い乾燥温度で基板Wを加熱することにより、基板Wが乾燥するまでの時間を短縮してもよい。基板Wの加熱を停止した後、基板Wを室温またはその付近の温度まで強制的に冷却してもよい。基板Wの加熱に加えてまたは代えて、気圧の低下や基板Wへの気体の供給などの別の乾燥方法により過酸化水素水を基板Wから除去してもよい。
【0058】
次に、図3Fに示すように、レジスト剥離液を基板Wの表面に供給し、残留しているレジストパターン100を基板Wから剥離する。図3Fは、回転している基板Wの上面(表面)に向けて剥離液ノズル85がレジスト剥離液の一例であるSPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)を吐出している例を示している。レジスト剥離液は、レジストパターン100と化学反応する化合物を含む薬液である。レジスト剥離液は、レジスト除去液とも呼ばれる。レジスト剥離液は、SPMまたはSC1(アンモニア水と過酸化水素水と水との混合液)であってもよいし、これら以外の薬液であってもよい。
【0059】
図5に示すような非硬化部102に到達した空洞103が硬化層101に形成されている場合、レジスト剥離液を基板Wに供給すると、レジスト剥離液が非硬化部102と反応し、硬化層101と共に非硬化部102が基板Wから剥がれる(リフトオフ)。これにより、レジストパターン100が基板Wから除去される。全てまたは殆ど全ての硬化層101がヒドロキシルラジカルによって分解されている場合も、レジスト剥離液が非硬化部102と反応し、非硬化部102が基板Wから剥がれる。したがって、レジスト剥離液が非硬化部102に到達できる状態であれば、硬化層101が残っていても、レジスト剥離液の供給により、全てまたは殆ど全てのレジストパターン100を基板Wから除去できる。
【0060】
レジスト剥離液を基板Wに供給した後は、純水などのリンス液で基板Wに付着するレジスト剥離液を洗い流し、その後、基板Wを乾燥させる。基板Wへのレジスト剥離液の供給は、基板Wの中心を通る鉛直な直線まわりに基板Wを水平面内で回転させながら、基板Wの上面または下面に向けてレジスト剥離液を吐出することにより行ってもよいし、基板Wをレジスト剥離液に浸漬させることにより行ってもよい。基板Wへのリンス液の供給についても同様である。基板Wの乾燥は、基板Wの高速回転により基板Wに付着している液を飛散させるスピンドライによって行ってもよいし、減圧乾燥などのスピンドライ以外の乾燥方法により行ってもよい。
【0061】
前述のように、オゾンガスが基板W上の過酸化水素水と接触するとき、室温よりも高温の剥離促進温度で基板Wを均一に加熱する。剥離促進温度は、プリベーク温度と等しくてもよいし、プリベーク温度よりも高温または低温であってもよい。同様に、剥離促進温度は、ポストベーク温度と等しくてもよいし、ポストベーク温度よりも高温または低温であってもよい。剥離促進温度は、過酸化水素水の沸点未満であってもよいし、水の沸点未満であってもよい。過酸化水素の沸点は、150.2℃である。したがって、剥離促進温度は、150.2℃未満であってもよいし、100℃未満であってもよい。過酸化水素水の濃度は、30~40wt%(質量パーセント濃度)であってもよいし、この範囲外であってもよい。30wt%の過酸化水素水の沸点は、106℃であり、35wt%の過酸化水素水の沸点は、108℃である。
【0062】
次に、本発明の一実施形態に係るレジスト剥離の他の例について説明する。
【0063】
図6A図6B図6C、および図6Dは、本発明の一実施形態に係るレジスト剥離の他の例について説明するための概略図である。図6A図6Dは、基板Wを水平に見た状態を示している。図7は、基板W上の過酸化水素水の液膜に溶け込んだオゾンガスが過酸化水素水に含まれる過酸化水素と反応して、ヒドロキシルラジカルが生成されることを説明するための概略図である。
【0064】
レジスト剥離の他の例では、レジスト剥離の一例と同様に、水平な姿勢の基板Wを剥離促進温度で均一に加熱する。その後、過酸化水素水のミストを基板Wに供給するのではなく、図6Aに示すように、オゾンガスを基板Wの表面の全域に接触させる。接触させる方法は、レジスト剥離の一例と同様である。オゾンガスがレジストパターン100の表面と反応すると、レジストパターン100の表面に対する水の接触角が減少し、レジストパターン100の表面の疎水性が弱まる。これにより、レジストパターン100の表面が親水性に変化する。
【0065】
次に、水平な姿勢の基板Wを剥離促進温度で均一に加熱した状態で、過酸化水素水を基板Wに供給し、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜を形成する。具体的には、前述したレジスト剥離の一例と同様に、過酸化水素水のミストを基板Wの表面に供給する。過酸化水素水のミストの供給を継続すると、過酸化水素水の複数の液滴が基板W上に形成され、徐々に大きくなっていく。オゾンガスとの反応によってレジストパターン100の表面の疎水性が弱まっているので、過酸化水素水の複数の液滴が基板Wの表面の全域に分散するのではなく、これらの液滴が基板Wの表面上で結合する。これにより、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成される。
【0066】
過酸化水素水の液膜を形成するとき、過酸化水素水のミストを基板Wの表面に供給することに加えてまたは代えて、基板Wの表面に向けて過酸化水素水を連続的に吐出してもよい。具体的には、図6Bに示すように、過酸化水素水ノズルの一例である液柱ノズル51Bから過酸化水素水を連続的に吐出することにより、液柱ノズル51Bから基板Wの表面の中央部に向かって流れる、液柱ノズル51Bと同程度の直径(例えば、直径が5~20mmの範囲内)の連続した過酸化水素水の液柱を形成し、この液柱を形成する過酸化水素水を水平な姿勢で静止した基板Wの表面の中央部に衝突させてもよい。
【0067】
基板Wを水平な姿勢で静止させながら、基板Wの表面の中央部に向けて過酸化水素水を連続的に吐出すると、吐出された過酸化水素水は、基板Wの表面の中央部に衝突し、その後、基板Wの表面に沿って基板Wの表面の中央部から放射状に流れる。基板W上の過酸化水素水は、後続の過酸化水素水によって外方に押し流され、基板Wの表面の外周から外方に排出される。これにより、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成される。
【0068】
基板Wへの過酸化水素水の供給は、基板Wを水平な姿勢で静止させながら行うのではなく、基板Wを水平な姿勢で回転させながら行ってもよい。具体的には、基板Wの中心を通る鉛直な直線まわりに基板Wを水平面内で回転させながら、基板Wの上面(表面)に向けて過酸化水素水を連続的に吐出してもよい。この場合、基板Wの回転による遠心力が基板W上の過酸化水素水に加わるので、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜を形成する時間を短縮できる。
【0069】
基板Wの表面に向けて過酸化水素水を連続的に吐出することにより、過酸化水素水のミストだけを基板Wの表面に供給する場合に比べて、短時間で基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜を形成できる。基板Wを水平な姿勢で回転させながら、基板Wの表面に向けて過酸化水素水を連続的に吐出する場合は、吐出される過酸化水素水の流量と基板Wの回転速度とを制御することにより、薄い過酸化水素水の液膜を形成できる。過酸化水素水のミストを基板Wに供給する場合は、基板Wの表面に向けて過酸化水素水を連続的に吐出する場合に比べて薄い過酸化水素水の液膜を形成できる。
【0070】
基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成された後は、基板Wへの過酸化水素水のミストの供給を停止してもよいし、継続してもよい。前者の場合、過酸化水素水のミストの供給を停止してから一定時間が経過した後に、基板Wへの過酸化水素水のミストの供給を再開してもよい。同様に、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成された後は、液柱ノズル51Bからの過酸化水素水の吐出を停止してもよいし、継続してもよい。前者の場合、過酸化水素水の吐出を停止してから一定時間が経過した後に、過酸化水素水の吐出を再開してもよい。
【0071】
次に、図6Cに示すように、水平な姿勢の基板Wを剥離促進温度で均一に加熱すると共に、基板Wの表面の全域を過酸化水素水の液膜で覆った状態で、基板W上の過酸化水素水の液膜にオゾンガスを接触させる。基板Wへのオゾンガスの供給は、レジストパターン100の表面を親水化するときから継続していてもよいし、過酸化水素水の液膜を形成した後に再開してもよい。後者の場合、過酸化水素水の液膜を形成する前に、熱処理チャンバー34の内部からオゾンガスを排出してもよい。
【0072】
オゾンガスが基板W上の過酸化水素水に接触すると、レジスト剥離の一例と同様に、オゾンガスと過酸化水素との反応によりヒドロキシルラジカルが生成され、レジストパターン100の硬化層101(図5参照)を分解する。これにより、非硬化部102(図5参照)に至る空洞103(図5参照)が硬化層101に形成される。基板Wへのオゾンガスの供給は、非硬化部102に至る空洞103が硬化層101に形成された時点で停止してもよいし、全てまたは殆ど全ての硬化層101がヒドロキシルラジカルによって分解されるまで継続してもよい。
【0073】
図6Cおよび図7に示すように、過酸化水素水の液膜の表面からレジストパターン100と過酸化水素水との界面である固液界面111までの最短距離は、過酸化水素水の液膜の外周部を除き、一定またはほぼ一定である。したがって、ヒドロキシルラジカルを固液界面111に均一に供給することができ、基板Wの表面の全域でレジストパターン100を均一に剥離できる。その一方で、過酸化水素水の液膜の厚みが大きいと、固液界面111に到達するヒドロキシルラジカルが減少する。したがって、過酸化水素水の液膜の厚み(膜厚)を極力減少させることが好ましい。
【0074】
基板Wへのオゾンガスの供給を停止した後は、レジスト剥離の一例と同様に、基板Wを乾燥させる。その後、図6Dに示すように、レジスト剥離液を基板Wに供給し、レジストパターン100を基板Wから除去する。図6Dは、回転している基板Wの上面(表面)に向けて剥離液ノズル85がレジスト剥離液の一例であるSPMを吐出している例を示している。
【0075】
このように、レジスト剥離の2つの例では、オゾンガスおよび過酸化水素水を基板Wの表面に供給することにより、レジストパターン100の少なくとも一部を基板Wの表面から剥離するレジスト剥離工程を行う。その後、レジスト剥離液を基板Wの表面に供給する残留レジスト剥離工程を行う。レジスト剥離工程を行った後にレジストが基板Wの表面に残っていたとしても、残留したレジストをレジスト剥離液によって基板Wの表面から剥離することができる。これにより、全てのレジストを基板Wから除去することができる。もしくは、基板Wに残留するレジストを減少させることができる。
【0076】
図8は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す概略平面図である。
【0077】
基板処理装置1は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板Wは、例えば、半導体ウエハなどである。基板処理装置1は、基板Wを収容する複数のキャリアCをそれぞれ保持する複数のロードポートLPと、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2とを含む。
【0078】
基板処理装置1は、さらに、基板Wを搬送する搬送ユニット(IR,SH,CR)と、基板処理装置1を制御する制御装置(コントローラ)3とを含む。制御装置3は、典型的にはコンピュータであり、プログラム等の情報を記憶するメモリ3mとメモリ3mに記憶された情報に従って基板処理装置1を制御するプロセッサ3pとを含む。
【0079】
搬送ユニット(IR,SH,CR)は、複数のロードポートLPから複数の処理ユニット2に延びる搬送経路上に配置されたインデクサロボットIR、シャトルSH、およびセンターロボットCRを含む。インデクサロボットIRは、複数のロードポートLPとシャトルSHとの間で基板Wを搬送する。シャトルSHは、インデクサロボットIRとセンターロボットCRとの間で往復移動して基板Wを搬送する。センターロボットCRは、シャトルSHと複数の処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、さらに、複数の処理ユニット2の間で基板Wを搬送する。図8に示す太線の矢印は、インデクサロボットIRおよびシャトルSHの移動方向を示している。
【0080】
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの塔を形成している。各塔は、上下方向に積層された複数の処理ユニット2を含む。4つの塔は、搬送経路の両側に2つずつ配置されている。複数の処理ユニット2は、基板Wを加熱または冷却しながら処理する複数の前処理ユニット2Dと、複数の前処理ユニット2Dで処理された基板Wを処理液で処理する複数の後処理ユニット2Wとを含む。ロードポートLP側の2つの塔は、複数の前処理ユニット2Dで形成されており、残り2つの塔は、複数の後処理ユニット2Wで形成されている。
【0081】
次に、前処理ユニット2Dについて説明する。
【0082】
図9は、前処理ユニット2Dの鉛直断面の一例を示す断面図である。図10Aは、熱処理ユニット8の鉛直断面の一例を示す断面図である。図10Bは、熱処理ユニット8の鉛直断面の他の例を示す断面図である。以下の説明において、「ライン」は、配管やバルブ等の流体機器によって形成された流路を意味する。例えば、気体供給ライン49は、気体供給のための流路に相当する。
【0083】
前処理ユニット2Dは、基板Wが通過する搬入搬出口4aが設けられたチャンバー4と、チャンバー4の搬入搬出口4aを開閉するシャッター5と、チャンバー4内で基板Wを加熱しながら処理液や処理ガスなどの処理流体を基板Wに供給する熱処理ユニット8と、熱処理ユニット8によって加熱された基板Wをチャンバー4内で冷却する冷却ユニット7と、チャンバー4内で基板Wを搬送する室内搬送機構6とを含む。センターロボットCRは、搬入搬出口4aを介して、チャンバー4に基板Wを出し入れする。搬入搬出口4aの近傍のチャンバー4内に冷却ユニット7が配置されている。
【0084】
冷却ユニット7は、クールプレート20と、クールプレート20を貫通して上下動するリフトピン22と、リフトピン22を上下動させるピン昇降駆動機構23とを含む。クールプレート20は、基板Wが載置される冷却面20aを備えている。クールプレート20の内部には、冷媒(典型的には冷却水)が循環する冷媒経路(図示省略)が形成されている。リフトピン22は、冷却面20aよりも上方で基板Wを支持する上位置と、先端が冷却面20aよりも下方に没入する下位置との間で上下動される。
【0085】
熱処理ユニット8は、ヒータ33を備えている。より具体的には、熱処理ユニット8は、ホットプレート30と、ホットプレート30を収容する熱処理チャンバー34と、ホットプレート30を貫通して上下動するリフトピン38と、リフトピン38を上下動させるピン昇降駆動機構39とを含む。ホットプレート30は、基板Wが載置される加熱面30aを備え、ヒータ33を内蔵している。
【0086】
ヒータ33は、加熱面30aに置かれた基板Wを室温よりも高い一定の温度で加熱できるように構成されており、例えば、基板Wを250℃まで加熱できるように構成されていてもよい。加熱面30aは、基板Wの形状に倣い、基板Wよりも一回り大きな平面形状を有している。具体的には、基板Wが円形であれば、加熱面30aは、基板Wよりもひとまわり大きな円形に形成される。
【0087】
熱処理チャンバー34は、チャンバー本体35と、チャンバー本体35の上方で上下動する蓋36とを備えている。熱処理ユニット8は、蓋36を昇降する蓋昇降駆動機構37を備えている。チャンバー本体35は、上方に開放する開口35aを有しており、この開口35aを蓋36が開閉する。蓋36は、チャンバー本体35の開口35aを塞いで熱処理チャンバー34の内部に密閉処理空間を形成する閉位置(下位置)と、開口35aを開放するように上方に退避した上位置との間で上下動される。リフトピン38は、加熱面30aよりも上方で基板Wを支持する上位置と、先端が加熱面30aよりも下方に没入する下位置との間で上下動される。
【0088】
チャンバー本体35の底部には、排気ポート41が形成されている。排気ポート41は、周方向に間隔を開けて複数箇所(例えば3箇所)に配置されていることが好ましい。排気ポート41は、排気ライン42を介して排気設備に結合される。
【0089】
蓋36は、加熱面30aに平行に延びるプレート部45と、プレート部45の周縁から下方に延びる筒部46とを含む。プレート部45は、具体的にはほぼ円形であり、筒部46は円筒形状を有している。筒部46の下端は、チャンバー本体35の上端に対向している。それにより、蓋36の上下動によって、チャンバー本体35の開口35aを開閉できる。
【0090】
図10Aに示すように、過酸化水素水のミストを基板Wの上面に向けて噴射するミストノズル51Aと、オゾンガスを基板Wの上面に向けて噴射するオゾンノズル55とは、蓋36に取り付けられている。図10Aは、蓋36のプレート部45を上下に貫通する2つの穴にミストノズル51Aおよびオゾンノズル55が挿入された例を示している。蓋36に対するミストノズル51Aおよびオゾンノズル55の位置は、この例に限られない。
【0091】
ミストノズル51Aは、過酸化水素水供給源54からミストノズル51Aに過酸化水素水を案内する過酸化水素水ライン52に接続されている。過酸化水素水バルブ53は、過酸化水素水ライン52上に配置されている。制御装置3が過酸化水素水バルブ53を開くと、過酸化水素水がミストノズル51Aに供給され、ミストノズル51Aが過酸化水素水のミストを噴出する。制御装置3が過酸化水素水バルブ53を閉じると、ミストノズル51Aへの過酸化水素水の供給が停止され、ミストノズル51Aからの過酸化水素水のミストの噴出が停止される。
【0092】
オゾンノズル55は、オゾン発生器58からオゾンノズル55にオゾンガスを案内するオゾンライン56に接続されている。オゾンバルブ57は、オゾンライン56上に配置されている。制御装置3がオゾンバルブ57を開くと、オゾンガスがオゾンノズル55に供給され、オゾンノズル55がオゾンガスを噴出する。制御装置3がオゾンバルブ57を閉じると、オゾンノズル55へのオゾンガスの供給が停止され、オゾンノズル55からのオゾンガスの噴出が停止される。
【0093】
ミストノズル51Aおよびオゾンノズル55とホットプレート30上の基板Wとの間には、シャワープレート59が配置されている。ミストノズル51Aから噴出された過酸化水素水のミストは、シャワープレート59と蓋36との間の空間を拡散し、シャワープレート59を貫通する複数の穴を通過する。これにより、過酸化水素水のミストがホットプレート30上の基板Wの上面に均一に供給される。同様に、オゾンノズル55から噴出されたオゾンガスは、シャワープレート59と蓋36との間の空間を拡散し、シャワープレート59を貫通する複数の穴を通過する。これにより、オゾンガスがホットプレート30上の基板Wの上面に均一に供給される。
【0094】
図10Bに示すように、熱処理ユニット8は、ミストノズル51Aに代えてまたは加えて、過酸化水素水を連続的に吐出する液柱ノズル51Bを備えていてもよい。この場合、シャワープレート59は省略することが好ましい。さらに、液柱ノズル51Bは、ホットプレート30上の基板Wの上面の中央部に向けて過酸化水素水を吐出することが好ましい。排気ライン42内の排気から液体を分離する気液分離器60を排気設備の上流に配置してもよい。
【0095】
制御装置3が過酸化水素水バルブ53を開くと、過酸化水素水が液柱ノズル51Bに供給され、液柱ノズル51Bが過酸化水素水の吐出を開始する。これにより、液柱ノズル51Bから基板Wの上面まで連続した過酸化水素水の液柱が形成される。基板Wの上面の中央部に衝突した過酸化水素水は、基板Wの上面に沿って外方に流れ、基板Wの上面の外周部から外方に排出される。制御装置3が過酸化水素水バルブ53を閉じると、液柱ノズル51Bへの過酸化水素水の供給が停止され、液柱ノズル51Bからの過酸化水素水の吐出が停止される。
【0096】
図9に示すように、室内搬送機構6は、チャンバー4の内部で基板Wを搬送する。より具体的には、室内搬送機構6は、冷却ユニット7と熱処理ユニット8との間で基板Wを搬送する室内搬送ハンド6Hを備えている。室内搬送ハンド6Hは、冷却ユニット7のリフトピン22との間で基板Wを受渡しでき、かつ熱処理ユニット8のリフトピン38との間で基板Wを受渡しできるように構成されている。それにより、室内搬送ハンド6Hは、冷却ユニット7のリフトピン22から基板Wを受け取って熱処理ユニット8のリフトピン38にその基板Wを渡す。さらに、室内搬送ハンド6Hは、熱処理ユニット8のリフトピン38から基板Wを受け取って冷却ユニット7のリフトピン22にその基板Wを渡す。
【0097】
前処理ユニット2Dの典型的な動作は、次のとおりである。
【0098】
センターロボットCR(図8参照)が基板Wをチャンバー4に搬入するとき、シャッター5は、搬入搬出口4aを開放する開位置に制御される。その状態で、センターロボットCRのハンドHがチャンバー4に進入し、基板Wをクールプレート20の上方に配置する。すると、リフトピン22が上位置まで上昇し、センターロボットCRのハンドHから基板Wを受け取る。その後、センターロボットCRのハンドHはチャンバー4外へと後退する。次に、室内搬送機構6の室内搬送ハンド6Hは、リフトピン22から基板Wを受け取って熱処理ユニット8のリフトピン38へと基板Wを搬送する。このとき蓋36は開位置(上位置)にあり、リフトピン38は受け取った基板Wを上位置で支持する。室内搬送ハンド6Hが熱処理チャンバー34から退避した後、リフトピン38は下位置まで下降して、基板Wを加熱面30aに載置する。一方、蓋36は、閉位置(下位置)へと下降し、ホットプレート30を収容する密閉処理空間を形成する。この状態で、基板Wに対する熱処理が行われる。
【0099】
熱処理を終えると、蓋36が開位置(上位置)へと上昇して熱処理チャンバー34が開放される。さらに、リフトピン38が上位置へと上昇し、基板Wを加熱面30aの上方へと押し上げる。その状態で、室内搬送機構6の室内搬送ハンド6Hは、リフトピン38から基板Wを受け取って、冷却ユニット7のリフトピン22へとその基板Wを搬送する。リフトピン22は、受け取った基板Wを上位置で支持する。室内搬送ハンド6Hの退避を待って、リフトピン22が下位置へと下降し、それにより、基板Wがクールプレート20の冷却面20aに載置される。それにより、基板Wが冷却される。
【0100】
基板Wの冷却を終えると、リフトピン22が上位置へと上昇し、それにより、基板Wを冷却面20aの上方へと押し上げる。その状態で、シャッター5が開かれ、センターロボットCRのハンドHがチャンバー4へと進入し、上位置にあるリフトピン22によって支持された基板Wの下方に配置される。その状態で、リフトピン22が下降することにより、センターロボットCRのハンドHに基板Wが渡される。基板Wを保持したハンドHは、チャンバー4外へと退避し、その後に、シャッター5が搬入搬出口4aを閉じる。
【0101】
図11は、後処理ユニット2Wの鉛直断面の一例を示す断面図である。
【0102】
後処理ユニット2Wは、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の液処理ユニットである。後処理ユニット2Wは、内部空間を区画する箱形のチャンバー9(図8参照)と、チャンバー9内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック70(基板保持手段、基板ホルダ)と、レジスト剥離液の一例であるSPMをスピンチャック70に保持されている基板Wに供給する剥離液供給ユニット71と、リンス液供給ユニット72と、スピンチャック70を取り囲む筒状のカップ73とを含む。図8に示すように、チャンバー9には、基板Wが通過する搬入搬出口9aが形成されており、この搬入搬出口9aを開閉するためのシャッター10が備えられている。チャンバー9は、その内部で処理液を用いた基板処理が行われる液処理チャンバーの一例である。
【0103】
スピンチャック70は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース74と、スピンベース74の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン75と、スピンベース74の中央部から下方に延びる回転軸76と、回転軸76を回転させることにより基板Wおよびスピンベース74を回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ77とを含む。スピンチャック70は、複数のチャックピン75を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース74の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0104】
カップ73は、スピンチャック70に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。カップ73は、スピンベース74の周囲を取り囲んでいる。カップ73は、スピンチャック70が基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されるときに、基板Wの周囲に排出される処理液を受け止める。カップ73に受け止められた処理液は、図示しない回収装置または排液装置に送られる。
【0105】
リンス液供給ユニット72は、スピンチャック70に保持されている基板Wに向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル80と、リンス液ノズル80にリンス液を供給するリンス液配管81と、リンス液配管81からリンス液ノズル80へのリンス液の供給および供給停止を切り替えるリンス液バルブ82とを含む。リンス液ノズル80は、リンス液ノズル80の吐出口が静止された状態でリンス液を吐出する固定ノズルであってもよい。リンス液供給ユニット72は、リンス液ノズル80を移動させることにより、基板Wの上面に対するリンス液の着液位置を移動させるリンス液ノズル移動ユニットを備えていてもよい。
【0106】
リンス液バルブ82が開かれると、リンス液配管81からリンス液ノズル80に供給されたリンス液が、リンス液ノズル80から基板Wの上面中央部に向けて吐出される。リンス液は、例えば、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水および希釈濃度(例えば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。リンス液の温度は、室温であってもよいし、室温よりも高い温度(例えば、70~90℃)であってもよい。
【0107】
剥離液供給ユニット71は、SPMを基板Wの上面に向けて吐出する剥離液ノズル85と、剥離液ノズル85が先端部に取り付けられたノズルアーム86と、ノズルアーム86を移動させることにより、剥離液ノズル85を移動させるノズル移動ユニット87とを含む。
【0108】
剥離液ノズル85は、例えば、連続流の状態でSPMを吐出するストレートノズルであり、例えば基板Wの上面に垂直な方向に処理液を吐出する垂直姿勢でノズルアーム86に取り付けられている。ノズルアーム86は、水平方向に延びており、スピンチャック70の周囲で鉛直方向に延びる揺動軸線(図示しない)まわりに旋回可能に設けられている。
【0109】
ノズル移動ユニット87は、揺動軸線まわりにノズルアーム86を旋回させることにより、平面視で基板Wの上面中央部を通る軌跡に沿って剥離液ノズル85を水平に移動させる。ノズル移動ユニット87は、剥離液ノズル85から吐出されたSPMが基板Wの上面に着液する処理位置と、剥離液ノズル85が平面視でスピンチャック70の周囲に位置するホーム位置との間で、剥離液ノズル85を水平に移動させる。処理位置は、剥離液ノズル85から吐出されたSPMが基板Wの上面中央部に着液する中央位置と、剥離液ノズル85から吐出されたSPMが基板Wの上面周縁部に着液する周縁位置とを含む。
【0110】
剥離液供給ユニット71は、剥離液ノズル85に接続され、硫酸供給源88から硫酸(HSO)が供給される硫酸配管89と、剥離液ノズル85に接続され、過酸化水素水供給源94から過酸化水素水(H)が供給される過酸化水素水配管95とを含む。
【0111】
硫酸供給源88から供給される硫酸と、過酸化水素水供給源94から供給される過酸化水素水とは、いずれも水溶液である。硫酸の濃度は、例えば90~98%であり、過酸化水素水の濃度は、例えば30~50%である。
【0112】
硫酸配管89には、硫酸配管89の流路を開閉する硫酸バルブ90と、硫酸の流量を変更する硫酸流量調整バルブ91と、硫酸を加熱するヒータ92とが、剥離液ノズル85側からこの順に介装されている。ヒータ92は、硫酸を室温よりも高い温度(70~190℃の範囲内の一定温度。例えば90℃)に加熱する。
【0113】
過酸化水素水配管95には、過酸化水素水配管95の流路を開閉する過酸化水素水バルブ96と、過酸化水素水の流量を変更する過酸化水素水流量調整バルブ97とが、剥離液ノズル85側からこの順に介装されている。過酸化水素水バルブ96には、温度調整されていない室温(例えば約23℃)の過酸化水素水が、過酸化水素水配管95を通して供給される。
【0114】
剥離液ノズル85は、例えば略円筒状のケーシングを有している。このケーシングの内部には、混合室が形成されている。硫酸配管89は、剥離液ノズル85のケーシングの側壁に配置された硫酸導入口に接続されている。過酸化水素水配管95は、剥離液ノズル85のケーシングの側壁に配置された過酸化水素水導入口に接続されている。
【0115】
硫酸バルブ90および過酸化水素水バルブ96が開かれると、硫酸配管89からの硫酸(高温の硫酸)が、剥離液ノズル85の硫酸導入口からその内部の混合室へと供給されるとともに、過酸化水素水配管95からの過酸化水素水が、剥離液ノズル85の過酸化水素水導入口からその内部の混合室へと供給される。
【0116】
剥離液ノズル85の混合室に流入した硫酸および過酸化水素水は、混合室で十分に撹拌混合される。この混合によって、硫酸および過酸化水素水が均一に混ざり合い、それらの反応によってSPMが生成される。SPMは、酸化力が強いペルオキソ一硫酸(Peroxymonosulfuric acid;HSO)を含む。高温に加熱された硫酸が供給され、かつ硫酸と過酸化水素水との混合は発熱反応であるので、高温のSPMが生成される。具体的には、混合前の硫酸および過酸化水素水のいずれの温度よりも高い温度(100℃以上。例えば、160℃)のSPMが生成される。剥離液ノズル85の混合室において生成された高温のSPMは、ケーシングの先端(下端)に開口した吐出口から基板Wに向けて吐出される。
【0117】
図12は、基板処理装置1によって実行される基板Wの処理の一例を示す工程図である。以下では、図8図9図11、および図12を参照する。制御装置3は、以下の動作を基板処理装置1に実行させるようにプログラムされている。
【0118】
基板処理装置1で基板Wを処理するときは、インデクサロボットIR、シャトルSH、およびセンターロボットCRが、ロードポートLPに置かれたキャリアC内の基板Wを前処理ユニット2Dに搬送する(図12のステップS11)。前処理ユニット2Dでは、前述のレジスト剥離の2つの例のいずれかが行われ、レジストパターン100(図5参照)の少なくとも一部が除去される(図12のステップS12)。
【0119】
具体的には、センターロボットCRが基板Wを前処理ユニット2Dに搬入し、室内搬送機構6が基板Wを熱処理ユニット8に搬送する。その後、基板W上の過酸化水素水を蒸発させて、基板Wを乾燥させるまでの工程が熱処理ユニット8で行われる。基板Wが乾燥した後は、必要に応じて、室内搬送機構6が基板Wをホットプレート30からクールプレート20に搬送する。これにより、基板Wがクールプレート20によって室温またはその付近の温度まで冷却される。基板Wが乾燥した後または冷却された後、センターロボットCRは、前処理ユニット2Dから基板Wを搬出し、搬出した基板Wを後処理ユニット2Wに搬入する(図12のステップS13)。
【0120】
後処理ユニット2Wでは、基板Wを回転させながら、レジスト剥離液などの処理液を基板Wの上面に供給するウェット処理が行われる(図12のステップS14)。具体的には、基板Wを回転させながら、基板Wの上面に向けて剥離液ノズル85にレジスト剥離液を吐出させるレジスト剥離液供給工程が行われる。その後、基板Wを回転させながら、基板Wの上面に向けてリンス液ノズル80にリンス液を吐出させるリンス液供給工程が行われる。その後、基板Wを高速回転させることにより基板Wを乾燥させる乾燥工程が行われる。その後、インデクサロボットIR、シャトルSH、およびセンターロボットCRが、後処理ユニット2W内の基板WをロードポートLPに置かれたキャリアCに搬送する(図12のステップS15)。
【0121】
以上のように本実施形態では、基板Wの表面に形成されたレジストパターン100に過酸化水素水を接触させる。さらに、この過酸化水素水にオゾンガスを接触させる。オゾンガスと過酸化水素との反応により、ヒドロキシルラジカルが生成される。ヒドロキシルラジカルは、レジストパターン100を酸化し分解する。これにより、レジストパターン100の少なくとも一部が剥離または除去される。ヒドロキシルラジカルは、オゾンガスよりも酸化還元電位が高く、オゾンガスよりも酸化力が強い。したがって、オゾンガスでレジストパターン100を酸化および分解する場合に比べて、レジストパターン100を効率的に除去できる。それにより、硫酸を含有するレジスト剥離液の使用量を削減したり、その使用を省いたりすることができるので、環境負荷を低減できる。
【0122】
本実施形態では、基板Wに供給した後に過酸化水素水を間接的または直接的に加熱する。もしくは、加熱した過酸化水素水を基板Wに供給する。これにより、剥離促進温度、つまり、室温よりも高温の過酸化水素水にオゾンガスを接触させることができ、ヒドロキシルラジカルの生成を促進することができる。その結果、レジストパターン100と反応するヒドロキシルラジカルを増やすことができ、より効率的にレジストパターン100を除去できる。
【0123】
本実施形態では、過酸化水素水の沸点よりも低い温度で過酸化水素水を加熱する。これにより、過酸化水素水が基板Wから蒸発する速度を低下させることができ、過酸化水素水が基板W上にある状態を維持することができる。多量の過酸化水素水を基板Wに保持させれば、過酸化水素水を沸点以上の温度で加熱しても、比較的長い時間、過酸化水素水が基板W上にある状態を維持することができる。しかしながら、この場合、基板W上の過酸化水素水の液滴または液膜の厚みが大きくなり、レジストパターン100の表面まで到達するヒドロキシルラジカルが減少する。過酸化水素水の沸点よりも低い温度で過酸化水素水を加熱することにより、厚みの大きな過酸化水素水の液滴または液膜を基板W上に形成しなくても、過酸化水素水が基板W上にある状態を維持することができる。
【0124】
本実施形態では、水の沸点、つまり、100℃よりも低い温度で過酸化水素水を加熱する。これにより、基板W上の過酸化水素水から水が蒸発する速度を低下させることができ、厚みの大きな過酸化水素水の液滴または液膜を基板W上に形成しなくても、水が基板W上にある状態を維持することができる。ヒドロキシルラジカルは、オゾンガスと過酸化水素との反応だけでなく、オゾンガスと水との反応によっても生成される。これにより、レジストパターン100と反応するヒドロキシルラジカルを増やすことができる。
【0125】
レジストパターン100が加熱されると、レジストパターン100に含まれる溶剤が気化する。レジストパターン100の表層に硬化層101が形成されている場合、気化した溶剤が排出され難いので、レジストパターン100の内部の圧力が上昇する。レジスト塗布からレジスト剥離の前までの一連の工程には、プリベークやポストベークなどの基板Wを加熱する工程が含まれる。この一連の工程における基板Wの温度の最大値を最高温度と定義する。レジストパターン100の表層に硬化層101が形成されており、レジストパターン100が加熱される温度が最高温度よりも大幅に高いと、レジストパターン100の内部の圧力が高くなり易い。
【0126】
過酸化水素水を室温よりも高温の剥離促進温度で加熱するとき、当該剥離促進温度を過酸化水素水の沸点よりも低い温度または水の沸点よりも低い温度にすれば、レジストパターン100が加熱される温度を、前述の一連の工程における基板Wの温度の最大値、つまり、最高温度に近づけることができる。もしくは、レジストパターン100が加熱される温度を、最高温度以下にすることができる。これにより、レジストパターン100の表層に硬化層101が形成されている場合であっても、レジストパターン100の内部の圧力が高くなることを防止できる。
【0127】
本実施形態では、過酸化水素水を室温よりも高温の剥離促進温度で加熱すると共に、過酸化水素水を基板Wの表面に断続的に供給する。つまり、過酸化水素水を基板Wの表面に供給し、基板Wの表面に保持させる。過酸化水素水の供給が停止(中断)されている間(過酸化水素水の追加が停止されている間)、基板W上の過酸化水素水は、蒸発やオゾンガスとの反応により減少する。基板Wの表面への過酸化水素水の供給を再開し、基板Wの表面に過酸化水素水を追加する。これにより、過酸化水素水を供給し続ける場合に比べて過酸化水素水の消費量を削減しながら、過酸化水素水が基板W上にある状態を維持することができる。加えて、過酸化水素水を供給し続ける場合に比べて基板W上の過酸化水素水の液滴または液膜を薄くできる。
【0128】
本実施形態では、基板Wの表面の全域が過酸化水素水の液膜で覆われている状態ではなく、過酸化水素水の複数の液滴が基板Wの表面の全域に分散している状態で、基板Wに接する過酸化水素水にオゾンガスを接触させる。これにより、基板Wの表面の全域が過酸化水素水の液膜で覆われている場合に比べて、効率的にレジストパターン100を除去することができる。理由は、以下の通りである。
【0129】
レジストパターン100と過酸化水素水との界面である固液界面111(図4参照)に供給されるヒドロキシルラジカル(OH)は、オゾンガスと過酸化水素水とレジストパターン100との境界である三態境界112(図4参照)に近づくにしたがって増加する。これは、ヒドロキシルラジカルが短時間で過酸化水素に戻るので、過酸化水素水の液滴または液膜の表面から固液界面111までの最短距離が長いと、固液界面111に到達する前にヒドロキシルラジカルが消滅するからである。したがって、三態境界112付近では、三態境界112から遠い位置に比べて、過酸化水素水に接するレジストパターン100を効率的に除去することができる。
【0130】
過酸化水素水の複数の液滴が基板Wの表面の全域に分散しているときの三態境界112の全長(長さの合計値)は、基板Wの表面の全域が過酸化水素水の液膜で覆われているときの三態境界112の全長よりも大きい。前述のように、三態境界112付近では、三態境界112から遠い位置に比べて、過酸化水素水に接するレジストパターン100を効率的に除去することができる。以上の理由により、基板Wの表面の全域が過酸化水素水の液膜で覆われている場合に比べて、効率的にレジストパターン100を除去することができる。
【0131】
本実施形態では、霧状の過酸化水素水を基板Wの表面に供給する。過酸化水素水のミストは、多数の過酸化水素水の粒子によって構成されている。基板W上の過酸化水素水の粒子は、別の過酸化水素水の粒子と結合し、過酸化水素水の液滴(過酸化水素水の粒子よりも直径が大きい過酸化水素水の集合体)を基板Wの表面に形成する。レジストパターン100の表面が疎水性の場合、過酸化水素水の複数の液滴が形成され、基板Wの表面の全域に分散する。レジストパターン100の表面が親水性の場合、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成される。これにより、液柱ノズル51Bから基板Wの表面まで連続した過酸化水素水の液柱を形成する場合に比べて、薄い過酸化水素水の液滴または液膜を形成できる。
【0132】
本実施形態では、過酸化水素水を基板Wの表面に向けて液柱ノズル51Bから連続的に吐出し、過酸化水素水を基板Wの表面に衝突させる。液柱ノズル51Bから吐出された過酸化水素水は、液柱ノズル51Bから基板Wの表面まで連続した過酸化水素水の液注を形成する。レジストパターン100の表面が疎水性の場合、過酸化水素水の複数の液滴が形成され、基板Wの表面の全域に分散する。レジストパターン100の表面が親水性の場合、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜が形成される。これにより、過酸化水素水のミストを基板Wの表面に供給する場合に比べて、短時間で過酸化水素水の液滴または液膜を形成できる。
【0133】
本実施形態では、オゾンガスを基板Wの表面に接触させ、レジストパターン100の表面の疎水性を弱める。これにより、レジストパターン100の表面に対する水の接触角が減少する。この状態で、過酸化水素水を基板Wの表面に供給する。レジストパターン100の表面が疎水性の場合、大きな流量で過酸化水素水を供給しなければ、基板Wの表面の全域を覆う過酸化水素水の液膜を形成することができない。しかしながら、この場合、過酸化水素水の消費量が増加する上に、分厚い過酸化水素水の液膜が形成される。レジストパターン100の表面を親水化した後に過酸化水素水を供給すれば、過酸化水素水の消費量を削減しながら、基板Wの表面の全域を覆う薄い過酸化水素水の液膜を形成することができる。加えて、オゾンガスを用いてレジストパターン100を除去するだけでなく、オゾンガスを用いてレジストパターン100の表面を親水化するので、オゾンガス以外の液体または気体を用いてレジストパターン100の表面を親水化する場合に比べて、配管やバルブなどの基板Wの処理に用いる流体機器の数を減らすことができる。
【0134】
本実施形態では、オゾンガスと過酸化水素との反応により生成されたヒドロキシルラジカルを用いてレジストパターン100の全部または一部を剥離または除去した後に、レジスト剥離液を基板Wの表面に供給する。レジストパターン100の一部が基板Wの表面に残っていたとしても、このレジストパターン100は、レジスト剥離液との接触により、基板Wの表面から剥がれる。レジストパターン100の残渣が基板Wの表面に残っていたとしても、この残渣は、レジスト剥離液によって洗い流される。これにより、基板Wの表面に残留するレジストを減らすことができる。
【0135】
他の実施形態
オゾンガスおよび過酸化水素水を基板Wに供給することにより、全てまたは殆ど全てのレジストを基板Wから剥離できるのでれば、オゾンガスおよび過酸化水素水を基板Wに供給した後に、リンス液よりも酸化力が高いレジスト剥離液を基板Wに供給しなくてもよい。この場合、レジストパターン100の残渣を洗い流すために、純水などのリンス液を基板Wの表面に供給してもよい。とくに、SPMのような硫酸を含有するレジスト剥離液の使用量を削減したり、その使用を省いたりできることにより、環境負荷を低減できる。
【0136】
レジストパターン100の硬化層101の一部をオゾンガスおよび過酸化水素水を用いて除去した後であれば、非硬化部102に至る空洞103(図5参照)が硬化層101に形成される前に、基板Wへのオゾンガスの供給を停止してもよい。このようにしても、レジストパターン100の硬化層101の一部を除去せずにレジスト剥離液を基板Wに供給した場合に比べて、全てのレジストパターン100を基板Wから剥離する時間を短縮できる。
【0137】
過酸化水素水を過酸化水素水の沸点以上の温度で加熱してもよい。この場合、基板Wを150℃以上の温度で加熱してもよい。このようにすれば、基板Wを介してオゾンガスを150℃以上の温度で加熱することができる。これにより、オゾンガスの活性を高めることができ、オゾンガスと過酸化水素との反応により生成されたヒドロキシルラジカルだけでなく、オゾンガスでもレジストパターン100を酸化および分解することができる。
【0138】
オゾンガスを室温よりも高温の過酸化水素水に接触させるのではなく、オゾンガスを室温の過酸化水素水に接触させてもよい。すなわち、基板Wを加熱したり、室温よりも高温の過酸化水素水を基板Wに供給したりしなくてもよい。
【0139】
基板Wの表面へのオゾンガスおよび過酸化水素水の供給と、基板Wの表面へのレジスト剥離液の供給とを、別々の基板処理装置1で行ってもよい。より具体的には、オゾンガスおよび過酸化水素水を基板Wに供給した後に基板Wを別の基板処理装置1に搬送し、当該基板処理装置1内でレジスト剥離液を基板Wの表面に供給してもよい。もしくは、オゾンガスおよび過酸化水素水を基板Wに供給した後に、基板Wを搬送することなく、当該基板Wの表面にレジスト剥離液を供給してもよい。例えば、スピンチャック70に保持されている基板Wの表面にオゾンガスおよび過酸化水素水を供給し、その後、このスピンチャック70に保持されている基板Wの表面にレジスト剥離液を供給してもよい。
【0140】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
【0141】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。前述の全ての工程の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0142】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 :基板処理装置
20 :クールプレート
30 :ホットプレート
34 :熱処理チャンバー
35 :チャンバー本体
36 :蓋
51A :ミストノズル
51B :液柱ノズル
55 :オゾンノズル
85 :剥離液ノズル
100 :レジストパターン
101 :硬化層
102 :非硬化部
103 :空洞
111 :固液界面
112 :三態境界
W :基板
図1
図2
図3A-C】
図3D-F】
図4
図5
図6A-C】
図6D
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12