(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169546
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】電子レンジ用調理器具及び電子レンジ
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20231122BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
F24C7/02 551B
A47J27/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080718
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】坂口 洋一
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢也
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝博
【テーマコード(参考)】
3L086
4B055
【Fターム(参考)】
3L086BF01
3L086BF04
3L086BF10
3L086DA06
4B055AA10
4B055BA22
4B055CA06
4B055CA23
4B055CB02
4B055CB07
4B055DB15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容器吊り下げ方式の電子レンジ用調理器具及びこれを備える電子レンジにおけるマイクロ波による加熱時の加熱効率の低下を抑制する。
【解決手段】電子レンジ用調理器具2は、電子レンジ本体1の加熱室30内に着脱可能に支持されるプレート本体11と、プレート本体11の下面に設けられた支持機構15とを備えたプレート10と、加熱室30の底面32と間隔L1をあけて位置するように、支持機構15に着脱可能に支持される容器20とを備え、プレート10及び容器20は、マイクロ波透過体である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レンジ本体の加熱室内に着脱可能に支持されるプレート本体と、前記プレート本体の下面に設けられた支持機構とを備えたプレートと、
前記加熱室の底面と間隔をあけて位置するように、前記支持機構に着脱可能に支持される容器とを備え、
前記プレート及び前記容器は、マイクロ波透過体からなる電子レンジ用調理器具。
【請求項2】
前記プレート本体の前記下面には、前記容器が前記プレート本体の前記下面に対して吸着することを抑制するためのエアベントが設けられている請求項1に記載の電子レンジ用調理器具。
【請求項3】
前記エアベントは、前記プレート本体の前記下面から下方に突出すると共に前記プレートの前後方向に延びるビードによって形成されている請求項2に記載の電子レンジ用調理器具。
【請求項4】
前記支持機構は、前記プレート本体の前記下面に沿って前後方向に延びる幅方向一対の吊り下げレールで構成され、
前記一対の吊り下げレールの前端部及び後端部は、前記プレート本体の前端部及び後端部と同一面をなすように連続している請求項1又は請求項2に記載の電子レンジ用調理器具。
【請求項5】
前記容器は、前記支持機構に着脱可能に支持されるフランジ部を有し、
前記フランジ部のうち少なくとも前記支持機構と当接する部分にシリコーンゴム製の緩衝部材が装着されている請求項1又は請求項2に記載の電子レンジ用調理器具。
【請求項6】
電子レンジ本体と、
請求項1又は請求項2に記載の電子レンジ用調理器具とを備え、
前記電子レンジ本体の加熱室内における前記プレートの下側にマイクロ波源で発生させたマイクロ波を前記加熱室に出力する出力部が配置され、前記加熱室内における前記プレートの上側にヒータ加熱機構が配置されている電子レンジ。
【請求項7】
前記ヒータ加熱機構によって調理物を加熱するヒータ調理と、前記マイクロ波源によって調理物を加熱するマイクロ波調理とを制御し、かつ前記ヒータ調理と前記マイクロ波調理との切り替えを制御する制御部を有する請求項6に記載の電子レンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ用調理器具及び電子レンジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調理物を収容した容器を電子レンジの加熱室内において加熱室の底面から浮かせて配置することが開示されている(容器吊り下げ方式)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
容器吊り下げ方式では、容器を吊り下げるための支持機構が必要となる。特許文献1では、支持機構がマイクロ波遮断体であるため、マイクロ波による加熱効率について改良の余地がある。
【0005】
本発明は、容器吊り下げ方式の電子レンジ用調理器具及びこれを備える電子レンジにおけるマイクロ波による加熱時の加熱効率の低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書において、電子レンジという用語は、特に言及する場合を除き、オーブンとしての機能を有するもの(オーブンレンジ)、及びグリルとしての機能を有するものを含む。
【0007】
本発明の第1の態様は、電子レンジ本体の加熱室内に着脱可能に支持されるプレート本体と、前記プレート本体の下面に設けられた支持機構とを備えたプレートと、前記加熱室の底面と間隔をあけて位置するように、前記支持機構に着脱可能に支持される容器とを備え、前記プレート及び前記容器は、マイクロ波透過体からなる電子レンジ用調理器具。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、庫内の底面と容器の底面との間に間隔を設定できるので、電子レンジによる調理物の加熱を、調理物に応じて適切に制御できる。プレート及び容器がマイクロ波透過体であるので、マイクロ波源で発生させたマイクロ波を前記加熱室に出力する出力部の位置に関わらず、容器内の調理物に対して、いずれの方向からでもマイクロ波を照射でき、加熱効率の低下を抑制できる。
【0009】
また、プレート上の調理物をヒータ等で調理した後に、前記調理物をマイクロ波で加熱調理する場合、例えば、金属製のプレートのようにプレート上の調理物を一旦取り出し、マイクロ波透過体からなる容器等に移し替えて、再度電子レンジに戻す必要がない。これにより、電子レンジによって、ヒータ調理とマイクロ波調理とが自動で切り替えわるような調理機能を実行させることができる。
【0010】
前記プレート本体の前記下面には、前記容器が前記プレート本体の前記下面に対して吸着することを抑制するためのエアベントが設けられていてもよい。
【0011】
本構成によれば、容器内の調理物を加熱する際に、容器の開口部を食品用ラップフィルム等で覆った場合、加熱後に容器内に負圧が生じる。これにより、食品用ラップフィルムが容器内側方向に吸引されて、その結果、容器とプレートとの間に吸着が生じる。これに対して、プレートの下面に設けられたエアベントによって、食品用ラップとプレートとの間に空気を取り込むことができ、容器がプレートに吸着されることを回避できる。
【0012】
前記エアベントは、前記プレート本体の前記下面から下方に突出すると共に前記プレートの前後方向に延びるビードによって形成されてもよい。
【0013】
本構成によれば、プレートの補強用のビード間に生じる窪みを利用して、エアベントを実現することができる。
【0014】
前記支持機構は、前記プレート本体の前記下面に沿って前後方向に延びる幅方向一対の吊り下げレールで構成され、前記一対の吊り下げレールの前端部及び後端部は、前記プレート本体の前端部及び後端部と同一面をなすように連続してもよい。
【0015】
本構成によれば、一対の吊り下げレールの前端部及び後端部と、プレート本体の前端部と後端部とが連続して設けられているので、一対の吊り下げレールの前端部及び後端部がプレート本体の前端及ぶ後端からずれている場合に比べて、吊り下げレールの落下強度を向上できる。
【0016】
前記容器は、前記支持機構に着脱可能に支持されるフランジ部を有し、前記フランジ部のうち少なくとも前記支持機構と当接する部分にシリコーンゴム製の緩衝部材が装着されてもよい。
【0017】
本構成によれば、容器のフランジ部と支持機構とが、緩衝部材を介して当接されるので、容器のフランジ部と支持機構とが、直接当接することによる異音を抑制できる。
【0018】
本発明の第2の態様は、電子レンジ本体と、前記電子レンジ用調理器具とを備え、前記電子レンジ本体の加熱室内における前記プレートの下側にマイクロ波源で発生させたマイクロ波を前記加熱室に出力する出力部が配置され、前記加熱室内における前記プレートの上側にヒータ加熱機構が配置されている電子レンジを提供する。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、支持機構を備えたプレート及び容器がマイクロ波透過体であるので、支持機構及びプレートがマイクロ波反射体で構成される場合に比べて、下側から照射されるマイクロ波が減衰されることなく、容器内の調理物の加熱効率の低下を抑制できる。
【0020】
プレート上の調理物をヒータ等で調理した後に、前記調理物をマイクロ波で加熱調理する場合、例えば、金属製のプレートのようにプレート上の調理物を一旦取り出し、マイクロ波透過体からなる容器等に移し替えて、再度電子レンジに戻す必要がない。これにより、電子レンジによって、ヒータ調理とマイクロ波調理とが自動で切り替わるような調理機能を実行させることができる。
【0021】
前記ヒータ加熱機構によって調理物を加熱するヒータ調理と、前記マイクロ波源によって調理物を加熱するマイクロ波調理とを制御し、かつ前記ヒータ調理と前記マイクロ波調理との切り替えを制御する制御部を有してもよい。
【0022】
本構成によれば、電子レンジによって、ヒータ調理とマイクロ波調理とが自動で切り替わるような調理機能を実行させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、容器吊り下げ方式の電子レンジ用調理器具及びこれを備える電子レンジにおけるマイクロ波による加熱時の加熱効率の低下を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る電子レンジ用調理器具と電子レンジの斜視図。
【
図2】本発明に係る電子レンジ用調理器具と電子レンジの正面図。
【
図3】本発明に係る電子レンジ用調理器具と電子レンジの分解斜視図。
【
図5】扉を非表示にした電子レンジの部分拡大斜視図。
【
図6A】プレートとカバーを上方から見た分解斜視図。
【
図6B】プレートとカバーを下方から見た分解斜視図。
【
図6D】
図6CのVI-VI線に沿ったプレートとカバー部材の断面図。
【
図7】
図4の容器とプレートとガイドレールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0026】
図1から
図4を参照すると、本発明の実施形態に係る電子レンジは、電子レンジ用調理器具2(以下、単に調理器具2という)と、それが使用される電子レンジ本体1を備える。
【0027】
電子レンジ本体1は、
図1において手前側が開口となっている直方体状の空間である加熱室30を備える筐体3と、開口を開閉するための扉4を備える。加熱室30は、上壁31、下壁32、左側壁33、右側壁34、後壁35によって区画されている。以下、加熱室30内を「庫内」という場合がある。上壁31、左右側壁33,34、後壁35は、いずれもマイクロ波反射体である金属板からなる。下壁32は、セラミック、ガラス、又は樹脂等のマイクロ波を透過可能な材料からなり、マイクロ波反射体である金属製のカバー32aの上端に取り付けられている。庫内の左右側壁33、34には、一対の上側ガイドレール51と、一対の下側ガイドレール55が設けられている。ガイドレール51,55には、詳細を後述する調理器具2のプレート10が配置される。ガイドレール51,55及び調理器具2については、詳細を後述する。
【0028】
図4を参照すると、電子レンジ本体1は、マイクロ波源61と、ヒータ(ヒータ加熱機構)62と、制御部63とを有する。
【0029】
マイクロ波源61は、例えば、マグネトロンで構成され、加熱室30内の調理物をマイクロ波によってマイクロ波加熱する。マグネトロン61は、マイクロ波を出力するマイクロ波源であり、金属製のダクト61aに端部に配置されている。マグネトロン61とダクト61aは配置部36内に配置され、ダクト61aのマグネトロン61と反対側の端部がカバー32aに接続されている。カバー32a内には、下壁32のうち幅方向と前後方向の中央に位置するようにモータによって回転可能なアンテナ61bが配置されている。マグネトロン61が出力したマイクロ波は、ダクト61aによってカバー32a内に導かれ、アンテナ61bを介して下壁32から加熱室30内に出力され、調理物を加熱する。下壁32のうち符号61cで示す範囲が、マイクロ波の透過領域、つまり加熱室30内にマイクロ波を出力する出力部を構成する。出力部61cは、一対の上側ガイドレール51よりも下方に設けられていればよく、左右側壁33,34あるいは後壁35に設けられていてもよい。
【0030】
ヒータ62は、加熱室30の上壁31側に配置されている。ヒータ62は、加熱室30内の調理物を輻射熱によってヒータ加熱する。本実施形態では、ヒータ62は、前後方向に間隔をあけて一対配置されている。ヒータ62は、左右側壁33,34の一方から他方にかけて幅方向に延びている。ヒータ62は、一対の上側ガイドレール51よりも上方に設けられている。また、下壁32の下側にもヒータを配置してもよい。
【0031】
制御部63は、マイクロ波源61とヒータ62をそれぞれ制御し、加熱室30内の調理物を加熱する。制御部63には、例えばマイクロコンピュータを用いることができる。制御部63による加熱処理には、マイクロ波源61のみを駆動させるマイクロ波加熱モードと、ヒータ62のみを駆動させるヒータ加熱モードと、マイクロ波源61及びヒータ62の両方を駆動させる複合加熱モードとが含まれる。
【0032】
複合加熱モードでは、制御部63は、例えば、マイクロ波源61によるマイクロ波加熱とヒータ62によるヒータ加熱とを自動的に切り換えて、調理物の加熱を行う。具体的には、マイクロ波源61を駆動させ、マイクロ波加熱に切り替えて調理物の中心部まで火を通す。予め設定されたマイクロ波加熱時間、又は使用者が設定したマイクロ波加熱時間が経過すると、マイクロ波源61の駆動を停止する。続いて、ヒータ62を駆動させてヒータ加熱することで調理物の表面を焼き固める。予め設定されたヒータ加熱時間、又は使用者が設定したヒータ加熱時間が経過すると、ヒータ62の駆動を停止する。なお、複合加熱モードでは、ヒータ加熱後にマイクロ波加熱を実行してもよい。
【0033】
図4及び
図5を参照すると、一対の上側ガイドレール51はそれぞれ、左右側壁33,34の上下方向の同じ位置に配置されている。各上側ガイドレール51は、正面視で概ね断面直角三角形状であり、前後方向に水平に延びている。各上側ガイドレール51は、上面部52と、傾斜面部53とを有する。上面部52は、左右側壁33,34から庫内側に突出すると共に前後方向に延びる。傾斜面部53は、上面部52の幅方向内端から下方に向かって幅方向外側に位置するように傾斜し、前後方向に延びている。
【0034】
上面部52には、プレート10の後方への移動を規制するストッパ部52aが設けられている。ストッパ部52aには、後述のプレート10に装着されたカバー12に設けられたストッパ部12cが係合される。ストッパ部52aは、ガイドレール51の前後方向中間部分にそれぞれ設けられている。ストッパ部52aは、上面部52を下方に窪ませた凹部によって構成されている。ストッパ部52aは、上面部52を上方に突出させた凸部によって構成されてもよい。ストッパ部52aは、一対のガイドレール51のうち一方のみに設けられていてもよい。
【0035】
一対の下側ガイドレール55はそれぞれ、左右側壁33,34のうち、上側ガイドレール51の下方に間隔をあけて配置されている。一対の下側ガイドレール55は、上下方向の同じ位置に配置されている。各下側ガイドレール55は、上面部56と、傾斜面部57とを有する。上面部56は、左右側壁33,34から庫内側に突出すると共に前後方向に延びる。傾斜面部57は、上面部56の幅方向内端から下方に向かって幅方向外側に位置するように傾斜し、前後方向に延びている。
【0036】
上面部56には、プレート10の後方への移動を規制するストッパ部56aが設けられている。ストッパ部56aには、後述のプレート10に装着されたカバー12に設けられたストッパ部12cが係合される。ストッパ部56aは、ガイドレール55の前後方向中間部分にそれぞれ設けられている。ストッパ部56aは、上面部56を下方に窪ませた凹部によって構成されている。ストッパ部56aは、上面部56を上方に突出させた凸部によって構成されてもよい。ストッパ部56aは、一対のガイドレール55のうち一方のみに設けられていてもよい。
【0037】
図3に示すように、調理器具2は、平面視で長方形状のプレート10と、容器20とを備える。
【0038】
図6A,6Bを参照すると、プレート10は、マイクロ波透過体、例えば、セラミック材からなる。プレート10は、プレート本体11と、吊り下げレール(支持機構)15とを備える。
【0039】
プレート本体11は、底壁部11aと、外周壁部11bと、鍔部11cとを備える。底壁部11aは、平面視で長方形状である。底壁部11aは、下壁32と概ね同じ大きさである。底壁部11aの上面には、調理物が配置されるようになっている。外周壁部11bは、底壁部11aの周縁から上方に連続して立ちあがる。鍔部11cは、外周壁部11bの上端から外側に向かって延設されている。鍔部11cは、前後方向(奥行方向)に対向する前側鍔部及び後側鍔部11dと、左右方向(幅方向)に対向する左側鍔部及び右側鍔部11eとを備え、左側鍔部及び右側鍔部11eには、カバー12が装着されている。
【0040】
左側鍔部及び右側鍔部11eには、カバー12を係合するための窪み11fと、突起11gが設けられている。窪み11fは、鍔部11cの前端部と後端部とに設けられている。窪み11fは、鍔部11eの上面を下方に窪ませて形成されている。突起11gは、鍔部11eの前端部と後端部とに設けられている。突起11gは、窪み11fに対応する前後方向位置に設けられている。突起11gの少なくとも一部の前後方向位置が、窪み11fと重複している。窪み11fは、鍔部11cの下面を下方に突出させて形成されている。
【0041】
カバー12は、耐熱性樹脂からなる。カバー12は、底カバー部12aと、開口部12bと、ストッパ部12cと、係合部12dとを有する。底カバー部12aは、左側鍔部及び右側鍔部11eの下面に沿って前後方向に延びて、左側鍔部及び右側鍔部11eの下面を下方から覆っている。
【0042】
図6Bに示すように、開口部12bは、底カバー部12aの前端部と後端部に設けられている。開口部12bは、左側鍔部及び右側鍔部11eの各突起11gに対応する位置に設けられている。開口部12bは、底カバー部12aを上下方向に貫通している。カバー12が左側鍔部及び右側鍔部11eに装着された状態では、開口部12bは、左側鍔部及び右側鍔部11eの突起11gと係合する。
【0043】
ストッパ部12cは、底カバー部12aの前後方向中間部分にそれぞれ設けられている。ストッパ部12cは、底カバー部12aから下方に突出する突起である。プレート10が上側ガイドレール51に配置された状態では、ストッパ部12cは、一対の上側ガイドレール51のストッパ部52a(
図5参照)に係合する。上側ガイドレール51のストッパ部52aが凸部である場合、ストッパ部12cは、底カバー部12aの下面を上方に向かって窪ませた窪み部によって構成されてもよい。ストッパ部12cは、底カバー部12aのうち一方のみに設けられていてもよい。
【0044】
図6Aに示すように、係合部12dは、底カバー部12aの前端部と後端部に設けられている。係合部12dは、左側鍔部及び右側鍔部11eの各窪み11fに対応する位置に設けられている。係合部12dは、正面視で断面倒L字状である。係合部12dは、底カバー部12aの幅方向外側の端部から上方に延びる縦辺部12eと、縦辺部12eの上端から幅方向内側に延びる上辺部12fとを有する。カバー12が鍔部11cに装着された状態では、上辺部12fは、鍔部11cの窪み11fと係合する。
【0045】
図6B,6Cを参照すると、吊り下げレール15は、左右方向の外周壁部11bよりも幅方向内側で、プレート本体11の下面に幅方向に間隔をあけて設けられている。吊り下げレール15は、プレート本体11の前端から後端にかけて、プレート本体11の下面に沿って前後方向に直線状に延びる。吊り下げレール15は、プレート10と一体的に形成されている。吊り下げレール15の前端部及び後端部と、プレート本体11の前端部と後端部とが同一面となるように連続して設けられている。より詳しくは、
図6Cに矢印α1に示されるように、一対の吊り下げレール15の前端部は、プレート本体11の前側の外周壁部11bと一体的に連続して形成されている。
図6Bに矢印α2で示されるように、吊り下げレール15の後端部は、プレート本体11の後側の外周壁部11bと一体的に連続して形成されている。
【0046】
図6Dに示すように、吊り下げレール15は、正面視において全体として断面L字状である。吊り下げレール15は、垂下部15aと、支持部15eとを有する。
【0047】
図6C,6Eに示すように、垂下部15aは、プレート本体11の底壁部11aから下方に延びている。垂下部15aの後端部には、前端部側よりも幅方向の厚さが大きい厚肉部15bが設けられている。垂下部15aは、厚肉部15bに向かって内面15cが幅方向内側に湾曲する。より詳しくは、垂下部15aの内面15cには、前後方向中間部から後方に向かって内側に湾曲する湾曲部15dが形成されている。湾曲部15dは、前後方向中間部と厚肉部15bとの間に位置する。湾曲部15dの曲率は、湾曲部15dが後述する容器20のフランジ部24(
図6E参照)に沿うように設定されている。容器20を吊り下げレール15に差し込む際に、湾曲部15dとフランジ部24とが当接することで、湾曲部15dが容器20の前後方向の位置に対するストッパとなる。湾曲部15dとフランジ部24とが面接触されるので、吊り下げレール15と容器20とが当接する際の割れ等を抑制できる。
【0048】
支持部15eは、垂下部15aの下端から幅方向内側に突出している。支持部15eは、幅方向及び前後方向に延び、幅方向が短辺とされ前後方向を長辺とする帯状である。支持部15eは、垂下部15aの前側部分と湾曲部15dに対応する位置に設けられている。言い換えると、厚肉部15bには設けられていない。幅方向に対向する一対の支持部15eの内端15fは、互いに間隔をあけて位置する。
【0049】
図6D,6Eを参照すると、底壁部11aの下面で、吊り下げレール15の間には、プレート10を補強するための複数のビード17が設けられている。複数のビード17は、底壁部11aの下面から下方に突出し、底壁部11aの下面に沿って前後方向に延びる。各ビード17は、正面視で断面矩形状で、ビード17の高さH1は、例えば、1.5mmである。各ビード17は、吊り下げレール15間において幅方向に均等に並べて配置されている。ビード17は、例えば正面視で断面三角形状であってもよい。
【0050】
図7を参照すると、隣接するビード17の間には、ビード17に対して底壁部11aの下面が上方に窪んだ部分、つまりエアベント17aが形成される。後述するように、エアベント17aにより、ラップフィルム等で開口部を覆った場合の容器20のプレート10への吸着を回避できる。
【0051】
エアベント17aは、底壁部11aと容器20(フランジ部24の上面)との間に空間を設けることができればよく、底壁部11aを下方に突出させるビード17に代えて、底壁部11aを上方に窪ませる複数の凹部で構成されてもよい。
【0052】
図7を参照すると、容器20は、容器本体21と、緩衝部材25とを備える。容器本体21は、マイクロ波透過体、例えば、ガラス製である。容器本体21は、上端が開口する概ね円錐台状である。容器本体21は、底部22と、周壁部23と、フランジ部24とを有する。容器本体21は、実質的に平滑である。
【0053】
図4及び
図7を参照すると、底部22は、平面視で概ね円形状で、加熱室30の下壁32に対向して設けられている。周壁部23は、底部22の周縁から上方に立ち上がり、上方に向かって外側に傾斜している。周壁部23の上端の外径R1は、一対の支持部15eの内端15f間の間隔W1よりも小さい。フランジ部24は、周壁部23の上端から幅方向外側に向かって一様に広がる。フランジ部24の外径R2は、一対の支持部15eの内端15f間の間隔W1よりも大きい。
【0054】
図4を参照すると、容器本体21に調理物が収容された容器20は、フランジ部24の両側がプレート10の吊り下げレール15に差し込まれることで、吊り下げレール15に着脱可能に支持される。具体的には、
図7に示すように、容器20のフランジ部24は、吊り下げレール15の支持部15e上に載置されることで、吊り下げレール15に支持される。プレート10に容器20が支持されている状態では、容器本体21の上部とプレート10の底壁部11aが対向している。プレート10とそれに支持された容器20は、加熱室30の開口から庫内に収容される。プレート本体11の左側鍔部11d及び右側鍔部11eがガイドレール51上に載置されることで、プレート10が庫内に支持される。
【0055】
図4に示すように、ガイドレール51の庫内での高さ位置、プレート10の形状、吊り下げレール15の垂下部15aの長さ、及び容器20の高さは、庫内の底面と容器20の底部22の下面との間に間隔L1が設けられるように設定されている。間隔L1は、例えば、加熱室30の下壁32から容器20の底部22の上面(調理物)までの上下方向距離L2が5mm以上30mm以下で設定されるようになっている。
【0056】
容器20を吊り下げレール15の支持部15e上に配置する場合に、ガラス製の容器20をセラミック材からなる支持部15eに当接させながら前後方向に移動させるため、異音が発生する。これに対して、容器20には、異音を抑制するための緩衝部材25が装着されている。
【0057】
図7及び
図8を参照すると、緩衝部材25は、容器本体21とは別体で、マイクロ波透過体であると共に可撓性を有する、例えばシリコーンゴム製である。緩衝部材25は、環状で、容器本体21の周壁部23及びフランジ部24に装着される。容器本体21に装着される前の状態の緩衝部材25の内径R3は、周壁部23の外径R1よりも小さい。緩衝部材25は、厚みが1.5mm~2.0mm程度のゴムシートからなり、フランジ部24の下面24aと、周壁部23の外周面23aとを容器本体21の外側から覆う。緩衝部材25は、無端状であればよく、環状でなくてもよい。
【0058】
図7に示すように、緩衝部材25は、正面視で逆L字状で、外被覆部25aと、下被覆部25bと、接続部25cとを有する。外被覆部25aは、容器本体21の周壁部23の傾斜に沿って上下に延びて、容器本体21の外周面23aを覆う。下被覆部25bは、フランジ部24に沿って幅方向に延びて、フランジ部24の下面24aを覆う。接続部25cは、外被覆部25aの上端と、下被覆部25bの内端部とを接続する。
【0059】
図7及び
図8を参照すると、緩衝部材25の支持部15eと当接する面(下被覆部25b)の下面には、支持部15eと当接する当接部25gが設けられている。具体的には、当接部25gは、下被覆部25bの全周に間隔をあけて複数設けられている。当接部25gは、下被覆部25bの下面から下方に突出する半球状で、半球状の頂部が支持部15eの上面に当接するようになっている。当接部25gを設けることで、下被覆部25b全体が支持部15eに当接する場合に比べて、下被覆部25bが支持部15eに当接する面積が低減されている。当接部25gの形状は、支持部15eに対する接触面積が低減される形状であればよく、例えば、下方に向かって頂点を有する三角形状でもよい。
【0060】
緩衝部材25は、拡径させるように弾性変形させた状態で、容器本体21の底部22側からフランジ部24側に向かって、容器本体21の周壁部23及びフランジ部24に装着させる。緩衝部材25が所定の取付位置に装着されると、緩衝部材25は弾性復元力によって周壁部23に当接し、緩衝部材25と容器本体21との間の摩擦力によって装着状態が維持される。
【0061】
緩衝部材25と容器本体21との間に水等の液体が残留した場合、緩衝部材25と容器本体21との間の摩擦係数が低下し、緩衝部材25が容器本体21から離脱しやすくなる。これに対して、緩衝部材25は、緩衝部材25と容器本体21との間で周方向に連続する水膜を断ち切るための構造を有している。
【0062】
図8及び
図9を参照すると、緩衝部材25の容器本体21に接触する部分には、全周に間隔をあけて配置された複数の凸部25dが設けられている。各凸部25dは、周方向に直交し、外周面23aに沿って長い突条である。具体的には、緩衝部材25の容器本体21に接触する面には、容器本体21から離間する方向に窪む溝部25eが周方向に間隔をあけて配置されている。凸部25dは、隣接する溝部25e間に形成された部分である。凸部25dは、外被覆部25a、接続部25c、及び下被覆部25bの内端部に跨って延びる。
【0063】
外被覆部25aの下端部には、凸部25dに連続すると共に周方向に延びて、容器本体21の外周面23aに接触する環状部25fが設けられている。本実施形態では、外被覆部25aの下端部には、溝部25eは設けられていない。これにより、緩衝部材25が装着された容器20を底面から見たときに、緩衝部材25は周方向に連続するので緩衝部材25を装着することによって美観が損なわれることがない。ただし、溝部25eは、環状部25fを上下方向に分断するように、外被覆部25aの上端から下端にわたって設けられていてもよい。
【0064】
緩衝部材25が容器本体21に装着された状態で、溝部25eでは緩衝部材25が容器本体21に接触していないが、凸部25dでは緩衝部材25が容器本体21に接触するので、緩衝部材25と容器本体21との間で周方向に連続する水膜を断ち切ることができる。凸部25dは、緩衝部材25の周長に対して25%以上65%以下の割合で配置されている。25%未満であると、凸部25dによる水膜の分断が困難である。65%を超過すると緩衝部材25を容器本体21に装着する際の摩擦が大きくなって、装着しにくくなる。
【0065】
このように構成した加熱調理器1は、以下の特徴を有する。
【0066】
マイクロ波源61からのマイクロ照射により調理物の加熱の際、庫内の底面(マイクロ波源61が配置されてる)と容器本体21の底面との間に間隔L1が設けられるので、容器本体21の底部において調理物が局部加熱されるのを回避できる。また、同じ容器20を使用する場合でも、吊り下げレール15の設計、より具体的には吊り下げプレートレール14の垂下部15aの長さを変更することで、庫内の底面と容器本体21の底面との間の間隔を調節できるので、電子レンジ本体1による調理物の加熱を、調理物に応じて適切に制御できる。庫内の底面と容器本体21の底面との間の間隔は、ガイドレール51の設計(例えば、庫内におけるガイドレール51の設置高さ)や、プレート10の設計(例えば、ガイドレール51からプレート10の下面までの距離)によっても調節できる。
【0067】
プレート10及び容器20がマイクロ波透過体であるので、出力部61cの位置に関わらず、容器20内の調理物に対して、いずれの方向からでもマイクロ波を照射でき、加熱効率の低下を抑制できる。
【0068】
プレート10上の調理物をヒータ62等で調理した後に、調理物をマイクロ波で加熱調理する場合、例えば、金属製のプレートのようにプレート上の調理物を一旦取り出し、マイクロ波透過体からなる容器等に移し替えて、再度電子レンジ本体1に戻す必要がない。これにより、電子レンジ本体1によって、ヒータ調理とマイクロ波調理とが自動で切り替えわるような調理機能を実行させることができる。
【0069】
ガラス製の容器20及びセラミック製のプレート10は、樹脂製の容器及びプレートと比較して、傷つき、臭い残り、及び耐久性の点で優位である。よって、ユーザの利便性を向上できる。
【0070】
容器20内の調理物を加熱する際に、容器20の開口部をラップフィルム等で覆った場合、加熱後に容器20内に負圧が生じる。これにより、ラップフィルムが容器20内側に吸引されて、容器20とプレート10との間に吸着が生じる。これに対して、プレート10の下面に設けられたエアベント17aによって、ラップフィルムとプレート10との間に空気を取り込むことができ、容器20がプレート10に吸着されることを回避できる。
【0071】
プレート10の補強用のビード17間に生じる窪みを利用して、エアベント17aを実現することができる。
【0072】
一対の吊り下げレール15の前端部及び後端部と、プレート本体11の前端部と後端部とが連続して設けられているので、一対の吊り下げレール15の前端部及び後端部がプレート本体11の前端及ぶ後端からずれている場合に比べて、吊り下げレール15の落下強度を向上できる。
【0073】
容器本体21における吊り下げレール15と当接する部分には、緩衝部材25が装着されているので、容器20のフランジ部24と、吊り下げレール15とが当接することによる異音を抑制できる。
【0074】
加熱室30内におけるプレート10の下側にマイクロ波源61で発生させたマイクロ波を加熱室30に出力する出力部61cが配置され、加熱室30内におけるプレート10の上側にヒータ62が配置されているが、吊り下げレール15を含むプレート10がマイクロ波透過体からなるので、吊り下げレール15等の支持機構がマイクロ波反射体からなる場合に比べて、下側から照射されるマイクロ波が減衰されることがなく、容器20内の調理物の加熱効率の低下を抑制できる。
【0075】
ヒータ調理とマイクロ波調理とを制御する制御部63を有し、制御部63は、ヒータ調理とマイクロ波調理との切り替えを制御するので、電子レンジ本体1によって、ヒータ調理とマイクロ波調理とが自動で切り替わるような調理機能を実行させることができる。
【0076】
上述の実施形態では、プレート10がセラミック材である構成について説明したが、プレート10は、マイクロ波透過体であればよく、例えば、耐熱樹脂製、耐熱ガラス製、陶器等であってもよい。
【0077】
上述の実施形態では、プレート10がカバー12を備える構成について説明したが、これに限られるものではなく、カバー12を備えていなくてもよい。この場合は、鍔部11e,11dに直接ストッパ部を設けてもよい。
【0078】
上述の実施形態では、緩衝部材25が、フランジ部24の下面から容器20の周壁部23に装着される構成について説明したが、これに限られるものではなく、フランジ部24の上面側に回り込んで配置されていてもよい。
【0079】
なお、本発明の電子レンジ用調理器具及び電子レンジは、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 電子レンジ本体
2 電子レンジ用調理器具
10 プレート
11 プレート本体
15 吊り下げレール(支持機構)
17 ビード
17a エアベント
20 容器
24 フランジ部
25 緩衝部材
30 加熱室
32 下壁(底面)
61 マイクロ波源
61c 出力部
62 ヒータ(ヒータ加熱機構)
63 制御部