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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169547
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】電子レンジ
(51)【国際特許分類】
   F24C 7/02 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
F24C7/02 320M
F24C7/02 320A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080720
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】金井 孝博
(72)【発明者】
【氏名】坂口 洋一
(72)【発明者】
【氏名】石井 琢也
【テーマコード(参考)】
3L086
【Fターム(参考)】
3L086AA01
3L086AA13
3L086BA08
3L086CB06
3L086CB17
3L086CC12
3L086DA20
3L086DA22
(57)【要約】
【課題】専用容器を用いるか否かに拘わらず、調理物を最適な温度で加熱できる電子レンジを提供する。
【解決手段】電子レンジ1は、マイクロ波によって調理物を加熱するための加熱室12と、加熱室12の側壁15にそれぞれ設けられた一対の上側ガイドレール20と、一対の上側ガイドレール20に着脱可能に配置されるプレート50と、プレート50の吊り下げレール52に着脱可能に取り付けられる容器55と、上側ガイドレール20の載置部20aよりも下側に配置され、底壁13上に配置された調理物の温度、及び容器55内に収容された調理物の温度のいずれでも検出可能な赤外線センサ42とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁、天壁、一対の側壁、後壁、及び扉によって画定され、マイクロ波によって調理物を加熱するための加熱室と、
前記一対の側壁にそれぞれ前後方向に延びるように設けられた一対のガイドレールと、
前記一対のガイドレールに着脱可能に配置され、前記底壁と対向する面に取付部を有するプレートと、
前記ガイドレールに配置された前記プレートの前記取付部に着脱可能に取り付けられ、前記底壁に対して上方に間隔をあけて位置するように前記加熱室内に配置される容器と、
前記一対の側壁のうちの少なくとも一方の前記ガイドレールの上端よりも下側に配置され、前記底壁上に配置された調理物の温度、及び前記容器内に収容された調理物の温度のいずれでも検出可能な第1センサと
を備える、電子レンジ。
【請求項2】
前記底壁の中央を通り前記底壁に対して交差する方向に延びる基準線と、前記加熱室内に配置した前記容器の軸線とは一致しており、
前記第1センサは赤外線センサであり、
前記赤外線センサの視野中心は、前記底壁から前記底壁の上方の40mmまでの間で前記基準線に交差し、かつ前記加熱室内に配置された前記容器の側壁部を通るように設定されている、
請求項1に記載の電子レンジ。
【請求項3】
前記ガイドレールは、前記加熱室内へ前記側壁の一部を膨出させて形成されており、
前記第1センサは、前記ガイドレールの形成による前記加熱室外の凹部内に配置されている、
請求項1又は2に記載の電子レンジ。
【請求項4】
前記ガイドレールは、前記天壁に対向する載置部と、前記載置部のうち前記側壁から最も離れた先端から前記側壁に向けて下向きに傾斜した傾斜部とを有し、
前記傾斜部に前記第1センサにより温度検出するための貫通孔が設けられている、
請求項3に記載の電子レンジ。
【請求項5】
前記天壁、前記後壁、及び前記一対の側壁のうちの一方によって画定された角部に、前記加熱室内の温度を検出するための第2センサが配置され、
前記一方の側壁のうち前記第2センサの前側には、前記一対の側壁のうちの他方に向けて突出して前記第2センサへの前記プレートの干渉を防ぐガード凸部が設けられている、
請求項1又は2に記載の電子レンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調理物を収容した専用容器を、補助部材を介して加熱室の底壁上に浮かせた状態で配置可能とした電子レンジが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-139226号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電子レンジでは、専用容器に収容した調理物の加熱以外に、所定の皿に載せた調理物を底壁上に直接配置して加熱する場合がある。しかし、特許文献1の電子レンジでは、専用容器を用いる場合と専用容器を用いない場合の調理物の温度検出について何ら考慮されていない。よって、専用容器を用いるか否かによって調理物に対する加熱温度が異なり、最適な加熱を行えない虞がある。
【0005】
本発明は、専用容器を用いるか否かに拘わらず、調理物を最適な温度で加熱できる電子レンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、底壁、天壁、一対の側壁、後壁、及び扉によって画定され、マイクロ波によって調理物を加熱するための加熱室と、前記一対の側壁にそれぞれ前後方向に延びるように設けられた一対のガイドレールと、前記一対のガイドレールに着脱可能に配置され、前記底壁と対向する面に取付部を有するプレートと、前記ガイドレールに配置された前記プレートの前記取付部に着脱可能に取り付けられ、前記底壁に対して上方に間隔をあけて位置するように前記加熱室内に配置される容器と、前記一対の側壁のうちの少なくとも一方の前記ガイドレールの上端よりも下側に配置され、前記底壁上に配置された調理物の温度、及び前記容器内に収容された調理物の温度のいずれでも検出可能な第1センサとを備える、電子レンジを提供する。
【0007】
調理物の温度を検出するための第1センサがガイドレールの上端よりも下側に配置されている。これにより、専用の容器を用いることなく、調理物を加熱室の底壁上に直接配置して加熱する場合、第1センサと調理物の間には何も介在しないため、調理物の温度を確実かつ高精度に検出できる。一方、プレートを介して加熱室内に配置した専用の容器内の調理物を加熱する場合、第1センサと容器の間には何も存在しないため、容器を介して調理物の温度を確実かつ高精度に検出できる。よって、専用容器を用いるか否かに拘わらず、調理物を最適な温度で加熱できる。
【0008】
前記底壁の中央を通り前記底壁に対して交差する方向に延びる基準線と、前記加熱室内に配置した前記容器の軸線とは一致しており、前記第1センサは赤外線センサであり、前記赤外線センサの視野中心は、前記底壁から前記底壁の上方の40mmまでの間で前記基準線に交差し、かつ前記加熱室内に配置された前記容器の側壁部を通るように設定されている。これにより、専用容器を用いるか否かに拘わらず、調理物の温度を確実かつ高精度に検出できる。
【0009】
前記ガイドレールは、前記加熱室内へ前記側壁の一部を膨出させて形成されており、前記第1センサは、前記ガイドレールの形成による前記加熱室外の凹部内に配置されている。これにより、プレートの着脱作業によって、プレートが干渉することによる第1センサの故障を防止できる。また、ガイドレールの形成による加熱室外の凹部内に第1センサを配置しているため、第1センサの配置スペースを削減でき、電子レンジを小型化できる。
【0010】
前記ガイドレールは、前記天壁に対向する載置部と、前記載置部のうち前記側壁から最も離れた先端から前記側壁に向けて下向きに傾斜した傾斜部とを有し、前記傾斜部に前記第1センサにより温度検出するための貫通孔が設けられている。これにより、底壁上に直接配置した調理物の温度、底壁上に間隔をあけて配置した容器内の調理物の温度を確実に検出できる。
【0011】
前記天壁、前記後壁、及び前記一対の側壁のうちの一方によって画定された角部に、前記加熱室内の温度を検出するための第2センサが配置され、前記一方の側壁のうち前記第2センサの前側には、前記一対の側壁のうちの他方に向けて突出して前記第2センサへの前記プレートの干渉を防ぐガード凸部が設けられている。これにより、プレートの着脱作業によって、プレートが干渉することによる第2センサの故障を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子レンジでは、専用容器を用いるか否かに拘わらず、調理物を最適な温度で加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る電子レンジを示す斜視図。
図2図1の電子レンジを前後方向中央で切断した断面図。
図3図1の電子レンジを幅方向中央で切断した断面図。
図4】プレートと容器を用いていない電子レンジの図3と同様の断面図。
図5図2の一部の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0015】
図1から図3は、本発明の実施形態に係る電子レンジ1を示す。図面に付したX方向は、電子レンジ1の前後方向であり、矢印で示す向きが後側で、矢印とは逆向きが前側である。Y方向は、電子レンジ1の幅方向であり、矢印で示す向きが左側で、矢印とは逆向きが右側である。Z方向は、電子レンジ1の高さ方向であり、矢印で示す向きが上側で、矢印とは逆向きが下側である。
【0016】
図1から図3を参照すると、電子レンジ1は、調理物を加熱するための加熱室12を備えるレンジ本体10と、レンジ本体10に開閉可能に取り付けられた扉30とを備える。また、電子レンジ1は、加熱室12に着脱可能に配置されるそれぞれ専用のプレート50と容器55を備え、加熱する調理物を、加熱室12内に直接配置するだけでなく、専用の容器55に収容させた状態で配置可能である(図3及び図4参照)。本実施形態では、専用の容器55を用いるか否かに拘わらず、赤外線センサ42によって調理物の温度を確実かつ高精度に検出可能とし、調理物を最適な温度で加熱できるようにする。
【0017】
以下、レンジ本体10、扉30、プレート50、及び容器55について、具体的に説明する。
【0018】
加熱室12は、直方体状の空間であり、外装体11内に設けられ、扉30によって開口17が開放可能に塞がれている。外装体11と加熱室12の間の空間は、電子レンジ1を構成する電気部品を配置する配置部19である。
【0019】
加熱室12は、いずれも矩形状の底壁13、天壁14、一対の側壁15、後壁16、及び扉30によって画定されている。そのうち、底壁13は、セラミック、ガラス、又は樹脂等のマイクロ波を透過可能な材料からなり、マイクロ波反射体である金属製のカバー18の上端に取り付けられている。天壁14、一対の側壁15、後壁16は、いずれもマイクロ波反射体である金属板からなる。扉30については後に詳述する。
【0020】
底壁13は、XY平面に沿って延び、カバー18を介して外装体11の底壁上に所定間隔をあけて支持されている。天壁14は、底壁13の高さ方向上側に対向して配設され、XY平面に沿って延びている。一対の側壁15は、いずれもXZ平面に沿って延び、互いに幅方向に対向している。一対の側壁15それぞれの下端はカバー18に連なり、一対の側壁15それぞれの上端は天壁14に連なっている。カバー18、天壁14、及び一対の側壁15それぞれの前端は、外装体11の前壁に連なり、加熱室12の開口17を画定している。後壁16は、YZ平面に沿って延びており、カバー18、天壁14及び一対の側壁15それぞれの後端に連なっている。
【0021】
図1及び図2を参照すると、一対の側壁15にはそれぞれ、プレート50を配置するためのガイドレール20,21が設けられている。
【0022】
上側ガイドレール20は、一対の側壁15のうちの高さ方向の同じ位置にそれぞれ設けられている。一対の上側ガイドレール20は、加熱室12の全高の中央よりも上側の領域に設けられている。
【0023】
下側ガイドレール21は、上側ガイドレール20の下方に間隔をあけて位置し、一対の側壁15のうちの高さ方向の同じ位置にそれぞれ設けられている。一対の下側ガイドレール21は、加熱室12の全高の中央よりも下側の領域に設けられている。
【0024】
これらのガイドレール20,21は、加熱室12内である幅方向中央に向けて突出し、前後方向に延びるように設けられている。より具体的には、ガイドレール20,21はそれぞれ、プレス加工によって側壁15の一部を加熱室12内に膨出させて形成されており、載置部20a,21aと傾斜部20b,21bを備える。載置部20a,21aは、天壁14に対向するようにXY平面に沿って延びている。傾斜部20b,21bは、載置部20a,21aのうち側壁15から最も離れた先端から、載置部20a,21aが連なる側壁15に向けて、下向きに傾斜している。載置部20aと傾斜部20b及び載置部21aと傾斜部21bは、いずれも断面円弧状の湾曲部を介して連なっている。ガイドレール20,21の形成によって、加熱室12の外側には前後方向に延びる凹溝(凹部)22がそれぞれ形成されている。
【0025】
図1及び図3を参照すると、扉30は、外装体11の前側に取り付けられ、加熱室12の開口17を開放可能に塞ぐ。扉30は、幅方向に延びる回転軸(図示せず)を中心として、図1に示す開位置と、図3に示す閉位置との間を回転可能である。扉30は、マイクロ波を透過可能で不透明な樹脂製の枠体31と、加熱室12内を透視可能な窓32を備える。窓32の内側には、例えば直径1mmの多数の孔を設けたパンチングメタルからなり、マイクロ波を反射可能で視認性が確保された反射層33が設けられている。但し、扉30は、高さ方向に延びる回転軸を中心として水平方向に回動する構成であってもよい。
【0026】
図4に最も明瞭に示すように、レンジ本体10は更に、マグネトロン40、ヒータ41、赤外線センサ(第1センサ)42、サーミスタ(第2センサ)43、及び制御部(図示せず)を備える。
【0027】
マグネトロン40は、マイクロ波を出力するマイクロ波源であり、金属製のダクト(導波管)40aに端部に配置されている。マグネトロン40とダクト40aは配置部19内に配置され、ダクト40aのマグネトロン40と反対側の端部がカバー18に接続されている。カバー18内には、底壁13のうち幅方向と前後方向の中央に位置するようにモータによって回転可能なアンテナ40bが配置されている。マグネトロン40が出力したマイクロ波は、ダクト40aによってカバー18内に導かれ、アンテナ40bを介して底壁13から加熱室12内に出力され、調理物を加熱する。底壁13のうち符号40cで示す範囲が、マイクロ波の透過領域、つまり加熱室12内にマイクロ波を出力する出力部を構成する。
【0028】
ヒータ41は、上側ガイドレール20の上方に位置するように天壁14に隣接して配置され、輻射熱によって加熱室12内の調理物を加熱する。本実施形態では、ヒータ41は、天壁14に設けられた上向きの窪み14a内に、前後方向に間隔をあけて一対配置され、それぞれ幅方向に延びている。但し、ヒータ41は、前後方向の中央に位置するように1本のみ設けられてもよいし、3本以上設けられてもよい。また、ヒータ41は、幅方向に間隔をあけて前後方向に延びるように配置されてもよい。また、底壁13の下側にもヒータを配置してもよい。
【0029】
赤外線センサ42は、赤外線検出素子を備え、加熱室12内の調理物の温度を検出するサーモパイル式である。図2図4、及び図5を参照すると、赤外線センサ42は、右側の側壁15に形成された上側ガイドレール20の、加熱室12外である凹溝22内に配置されている。
【0030】
赤外線センサ42は、上側ガイドレール20の傾斜部20bの前後方向中央に設けられた貫通孔20cを通して、加熱室12内を臨むように取り付けられている。つまり、赤外線センサ42は、上側ガイドレール20の上端である載置部20aよりも下側に配置されている。赤外線センサ42は、赤外線を検出可能な範囲である円錐状の視野42aを有する。この視野42aの設定については後に詳述する。
【0031】
引き続いて図2図4、及び図5を参照すると、サーミスタ43は、加熱室12外である天壁14の上側に配置された本体(図示せず)と、天壁14を貫通して加熱室12内に配置された検出部43aとを備え、加熱室12内の温度を検出する。より具体的には、検出部43aは、天壁14、後壁16、及び図2において右側の側壁15によって画定された加熱室12の角部に配置されている。
【0032】
右側の側壁15には、サーミスタ43の前側に位置し、左側の側壁15に向けて概ね四角錐状に突出するガード凸部23が、プレス加工によって側壁15の一部を膨出させて設けられている。ガード凸部23の先端は検出部43aよりも左側に突出し、ガード凸部23の下端は検出部43aの下端よりも下側に位置している。これにより、上側ガイドレール20にプレート50を配置するとき、意図せずにプレート50が検出部43aに干渉することによるサーミスタ43の故障を防止している。
【0033】
制御部は、例えば1個のマイクロコンピュータからなり、マグネトロン40、ヒータ41、赤外線センサ42、及びサーミスタ43等に電気的に接続されている。制御部は、赤外線センサ42とサーミスタ43の検出結果に基づいて、マグネトロン40とヒータ41を制御し、加熱室12内の調理物を加熱する。
【0034】
制御部による加熱処理には、マイクロ波加熱モード(レンジ調理)、ヒータ加熱モード(グリル調理)、及び複合加熱モード(複合調理)が含まれる。マイクロ波加熱モードでは、赤外線センサ42とサーミスタ43それぞれの検出結果に基づいて、調理終了までマグネトロン40のみを作動させる。ヒータ加熱モードでは、サーミスタ43の検出結果に基づいて、調理終了までヒータ41のみを作動させる。複合加熱モードでは、赤外線センサ42とサーミスタ43それぞれの検出結果に基づいて、マグネトロン40とヒータ41の両方を作動させる。
【0035】
複合加熱モードの一例は次の通りである。制御部は、マグネトロン40を作動させ、マイクロ波加熱によって調理物の中心部まで火を通す。予め設定されたマイクロ波加熱時間、又はユーザが設定したマイクロ波加熱時間が経過すると、マグネトロン40の作動を停止する。続いて、ヒータ41を作動させ、ヒータ加熱によって調理物の表面に焦げ目をつける。予め設定されたヒータ加熱時間、又はユーザが設定したヒータ加熱時間が経過すると、ヒータ41の作動を停止する。つまり、複合加熱モードで制御部は、マグネトロン40によるマイクロ波加熱とヒータ41によるヒータ加熱とを自動的に切り換えて、調理物の加熱を行う。
【0036】
次に、電子レンジ1に用いられるそれぞれ専用のプレート50と容器55について説明する。
【0037】
図1及び図2を参照すると、プレート50は、上方から見て矩形状であり、一対の上側ガイドレール20又は一対の下側ガイドレール21への載置によって、加熱室12内に着脱可能に配置される。プレート50は、セラミック、ガラス、又は樹脂等のマイクロ波を透過可能な材料によって形成され、マイクロ波加熱モード、ヒータ加熱モード、及び複合加熱モードの全てで使用可能である。
【0038】
より具体的には、プレート50は、受皿状の本体50aと、本体50aの上端に設けられたフランジ部50bとを備える。本体50aの横幅は、一対の上側ガイドレール20間の幅及び一対の下側ガイドレール21間の幅よりも狭く、本体50aの奥行きは、加熱室12の前後方向の奥行きよりも小さい。フランジ部50bは、XY平面に沿って延び、一対の上側ガイドレール20間の幅及び一対の下側ガイドレール21間の幅よりも広い矩形状の枠体からなる。フランジ部50bの幅方向両側には、樹脂製の緩衝部材51がそれぞれ取り付けられている。
【0039】
プレート50の本体50aのうち底壁13の上面と対向する面には、容器55を取り付けるための一対の吊り下げレール(取付部)52が設けられている。吊り下げレール52は、プレート50に連なる垂下部52aと、垂下部52aの下端から加熱室12の幅方向内側へ突出する支持部52bとを備える。吊り下げレール52は、本実施形態ではプレート50に一体に形成されているが、プレート50とは別体に設けて一体に取り付けられてもよい。
【0040】
プレート50は、加熱室12内に配置する姿勢が定められている。図1を参照すると、扉30側に位置する吊り下げレール52の前端は解放されている。図3を参照すると、後壁16側に位置する吊り下げレール52の後端にはストッパ部52cが設けられている。ストッパ部52cは、垂下部52aの後端と支持部52bの後端とに連なり、吊り下げレール52の後端を塞いでいる。ストッパ部52cは、吊り下げレール52の前端から差し込んだ容器55が当接することで、それ以上の容器55の後壁16側への差し込み(移動)を規制する。
【0041】
図1及び図2を参照すると、容器55は、円形状の底壁部55aと、円錐筒状の側壁部55bとを備える有底筒状で、プレート50と同様にセラミック、ガラス、又は樹脂等のマイクロ波を透過可能な材料によって形成されている。容器55の上端には、吊り下げレール52の支持部52b上に載置される外径のフランジ部55cが形成されている。フランジ部55cの下面には、容器55の外周部にかけて延在する円環状の緩衝部材56が取り付けられている。緩衝部材56は可撓性を有する材料(例えばシリコーンゴム)からなり、吊り下げレール52と容器55が直接干渉することを防ぐ緩衝部材である。
【0042】
プレート50は、フランジ部50bが上側ガイドレール20上に載置されることで、加熱室12内に着脱可能に支持される。容器55は、フランジ部55cがプレート50の吊り下げレール52に差し込まれることで、吊り下げレール52に着脱可能に支持される。これにより、容器55が加熱室12内に収容される。プレート50に容器55が支持されている状態では、容器55の上部とプレート50が対向している。
【0043】
緩衝部材56の下端から容器55の底壁部55aの外面までの寸法は、加熱室12に配置したプレート50の吊り下げレール52のうち支持部52bの上面から底壁13の上面までの間隔よりも低い。そのため、図2及び図3に示すように、加熱室12に配置した容器55は、底壁13に対して上方に間隔(例えば20mm)をあけて位置する。ストッパ部52cへのフランジ部55cの当接によって容器55の移動が規制された状態では、底壁13の中央を通り底壁13に対して直交する方向に延びる基準線CLと、容器55の軸線ALとが一致する。
【0044】
なお、プレート50は、フランジ部50bを下側ガイドレール21に載置しても、加熱室12内に配置できる。但し、下側ガイドレール21に載置したプレート50と底壁13の間の高さは容器55の全高よりも低い。そのため、下側ガイドレール21に載置したプレート50の吊り下げレール52には、容器55は取付不可能である。
【0045】
次に、赤外線センサ42の視野42aの設定について説明する。
【0046】
前述のように、赤外線センサ42は、右側の側壁15のうち、加熱室12の全高の半分よりも上側のガイドレール20の形成による凹溝22内に配置されている。図2を参照すると、赤外線センサ42は、調理物の温度を検出可能な視野42aを備えている。視野42aは赤外線センサ42を頂点とする円錐状である。加熱室12の底壁13上に直接配置した調理物の温度、及び容器55内に収容した調理物の温度のいずれも正確に検出するために、視野42aの軸線である視野中心42bは、以下を満足するように配置されている。
【0047】
視野中心42bは、底壁13の上面から底壁13の上方の40mmまで(0mm以上40mm以下)の範囲Rで基準線CLに交差し、かつ加熱室12内に配置した容器55の側壁部55bを通るように設定されている。より好ましくは、底壁13の上方の5mm以上30mm以下の範囲Rで交差するように設定され、本実施形態では、底壁13の上方の20mmの位置で基準線CLに交差するように設定されている。
【0048】
視野中心42bと基準線CLの交点を過度に低くすると、容器55内に収容した調理物の温度を、容器55を介して高精度に検出できなくなる虞がある。視野中心42bと基準線CLの交点を過度に高くすると、容器55を用いることなく、加熱室12内に直接配置した調理物の温度を高精度に検出できなくなる虞がある。視野中心42bと基準線CLが交差しないねじれの位置に設定すると、前後方向において調理物の温度を高精度に検出できない部分が生じる虞がある。これらの不都合を防止するために、視野中心42bと基準線CLの交点は、上記定められた範囲Rに設定することが好ましい。加熱室12を前側から見ると、視野42aの角度θは例えば12度である。
【0049】
このように構成した電子レンジ1は、以下の特徴を有する。
【0050】
調理物の温度を検出するための赤外線センサ42が上側ガイドレール20の載置部20aよりも下側に配置されている。これにより、専用の容器55を用いることなく、調理物を底壁13上に直接配置して加熱する場合、赤外線センサ42と調理物の間には何も介在しないため、調理物の温度を確実かつ高精度に検出できる。一方、プレート50を介して加熱室12内に配置した専用の容器55内の調理物を加熱する場合、赤外線センサ42と容器55の間には何も存在しないため、容器55を介して調理物の温度を確実かつ高精度に検出できる。しかも、加熱室12の底壁13と容器55との間の間隔を設定できるため、電子レンジ1による調理物の加熱を、調理物に応じて適切に制御できる。よって、専用容器55を用いるか否かに拘わらず、調理物を最適な温度で加熱できる。
【0051】
赤外線センサの視野中心42bは、底壁13の上面から底壁13の上方の40mmまでの範囲Rで基準線CLに交差し、かつプレート50を介して加熱室12内に配置された容器55の側壁部55bを通るように設定されている。これにより、専用の容器55を用いるか否かに拘わらず、調理物の温度を確実かつ高精度に検出できる。
【0052】
赤外線センサ42は、膨出した上側ガイドレール20の形成による加熱室12外の凹溝22内に配置されている。これにより、プレート50の着脱作業によって、プレート50が干渉することによる赤外線センサ42の故障を防止できる。また、上側ガイドレール20の形成による加熱室12外の凹溝22内に赤外線センサ42を配置しているため、赤外線センサ42の配置スペースを削減でき、電子レンジ1を小型化できる。
【0053】
上側ガイドレール20は載置部20aと傾斜部20bを備え、傾斜部20bに赤外線センサ42により温度検出するための貫通孔20cが設けられている。これにより、底壁13上に直接配置した調理物の温度、底壁13上に間隔をあけて配置した容器55内の調理物の温度を確実に検出できる。
【0054】
加熱室12の背面上側の角部に加熱室12内の温度を検出するサーミスタ43の検出部43aが配置され、側壁15には検出部43aへのプレート50の干渉を防ぐガード凸部23が設けられている。そのため、プレート50の着脱作業によって、検出部43aにプレート50が干渉することによるサーミスタ43の故障を防止できる。
【0055】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0056】
例えば、上側ガイドレール20の一部を更に膨出させ、その膨出部分による凹部内に赤外線センサ42を配置してもよい。また、赤外線センサ42は、一対の上側ガイドレール20の両方に配置してもよい。
【0057】
赤外線センサ42の配置は、上側ガイドレール20の上端である載置部20aよりも下側であれば、上側ガイドレール20の形成による凹溝22以外であってもよいし、視野中心42bと加熱室12の底壁13の中央を通る基準線CLとが交差する構成であれば、側壁15の前後方向中央以外であってもよい。
【0058】
プレート50を配置するガイドレールは、プレート50を介して容器55を配置可能な1段のみであってもよいし、3段以上であってもよい。ガイドレールを3段以上設ける場合、プレート50を介して容器55を配置可能な最も上側のガイドレールに、赤外線センサ42を配置することが好ましい。
【0059】
第1センサは、調理物の温度を検出できる非接触式のセンサであれば、赤外線センサ42以外であってもよい。第2センサは、加熱室12の温度を検出できるセンサであれば、サーミスタ43以外であってもよい。
【0060】
プレート50の取付部は、容器55を取付可能な構成であれば、吊り下げレール52以外の構成であってもよい。
【0061】
マグネトロン40の出力部40cは、加熱室12の底壁13と上側ガイドレール20との間であれば、後壁16に設けられてもよいし、一対の側壁15のうちの一方に配置されてもよい。
【0062】
電子レンジ1は、ヒータ41を備えることなく、マイクロ波加熱モードのみを実行可能としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 電子レンジ
10 レンジ本体
11 外装体
12 加熱室
13 底壁
14 天壁
14a 窪み
15 側壁
16 後壁
17 開口
18 カバー
19 配置部
20 上側ガイドレール
20a 載置部(ガイドレールの上端)
20b 傾斜部
20c 貫通孔
21 下側ガイドレール
21a 載置部
21b 傾斜部
22 凹溝(凹部)
23 ガード凸部
30 扉
31 枠体
32 窓
33 反射層
40 マグネトロン(マイクロ波源)
40a ダクト
40b アンテナ
40c 出力部
41 ヒータ
42 赤外線センサ(第1センサ)
42a 視野
42b 視野中心
43 サーミスタ(第2センサ)
43a 検出部
50 プレート
50a 本体
50b フランジ部
51 緩衝部材
52 吊り下げレール(取付部)
52a 垂下部
52b 支持部
52c ストッパ部
55 容器
55a 底壁部
55b 側壁部
55c フランジ部
56 緩衝部材
CL 基準線
AL 容器の軸線
図1
図2
図3
図4
図5