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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169559
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】建具用錠装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 1/00 20060101AFI20231122BHJP
   E05C 3/04 20060101ALI20231122BHJP
   E05B 65/08 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
E05B1/00 311K
E05C3/04 L
E05B65/08 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080739
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】渡部 真実
(72)【発明者】
【氏名】本橋 成哲
(57)【要約】
【課題】手を使わずに施解錠動作を行うことができる建具用錠装置を提供すること。
【解決手段】枠体内に納められた障子を横方向にスライド移動させることによって開口部を開閉する建具に設けられ、障子を施解錠する建具用錠装置であって、障子に設けられ、移動部材の上下方向への移動によって施解錠動作を行う錠装置本体と、障子の室内側見付け面の下部に上下移動可能に設けられる足操作部と、移動部材と足操作部とを連結する連結部材と、を備え、足操作部は、操作者の足によって、錠装置本体の施錠若しくは解錠、又はそのいずれもが可能に設けられる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体内に納められた障子を横方向にスライド移動させることによって開口部を開閉する建具に設けられ、前記障子を施解錠する建具用錠装置であって、
前記障子に設けられ、移動部材の上下方向への移動によって施解錠動作を行う錠装置本体と、
前記障子の室内側見付け面の下部に上下移動可能に設けられる足操作部と、
前記移動部材と前記足操作部とを連結する連結部材と、を備え、
前記足操作部は、操作者の足によって、前記錠装置本体の施錠若しくは解錠、又はそのいずれもが可能に設けられる、建具用錠装置。
【請求項2】
前記足操作部は、操作者の足で横方向へ押圧操作されることによって、前記障子を開閉可能に設けられる、請求項1に記載の建具用錠装置。
【請求項3】
前記錠装置本体は、前記足操作部の下方向への移動によって、前記連結部材を介して前記移動部材を下方向に移動させて解錠動作を行う、請求項1又は2に記載の建具用錠装置。
【請求項4】
前記移動部材に対して上方向に付勢力を作用させる付勢部材と、
下方向に移動した前記足操作部を下位置に保持するとともに、前記足操作部が再び下方向に押圧された際に保持を解除する保持部材と、をさらに備え、
前記錠装置本体は、前記保持部材によって前記足操作部が下位置に保持されている間、解錠状態を維持するとともに、前記保持部材による前記足操作部の保持解除時に、前記付勢部材の付勢力によって前記移動部材を上方向に移動させて施錠動作を行う、請求項3に記載の建具用錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具用錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、障子の召合せ框に設けられる操作部材を室内側から下方に押し下げることによって解錠する建具用錠装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-155974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建具用錠装置の操作部材は、施解錠動作を行うたびに人の手に触れるため、操作者の手に菌やウィルスが付着していると、操作部材を介して菌やウィルスが他の人に感染するおそれがある。
【0005】
さらに、両手に荷物を抱えた操作者や手が不自由な操作者の場合には、施解錠動作を行うことが非常に困難となる場合がある。
【0006】
本開示は、手を使わずに施解錠動作を行うことができる建具用錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の建具は、枠体内に納められた障子を横方向にスライド移動させることによって開口部を開閉する建具に設けられ、前記障子を施解錠する建具用錠装置であって、前記障子に設けられ、移動部材の上下方向への移動によって施解錠動作を行う錠装置本体と、前記障子の室内側見付け面の下部に上下移動可能に設けられる足操作部と、前記移動部材と前記足操作部とを連結する連結部材と、を備え、前記足操作部は、操作者の足によって、前記錠装置本体の施錠若しくは解錠、又はそのいずれもが可能に設けられる、建具用錠装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】建具を室内側から見た正面図である。
図2図1中のA-A線に沿う縦断面図である。
図3図1中のB-B線に沿う横断面図である。
図4】建具用錠装置の足操作部を示す斜視図である。
図5】建具用錠装置の施錠動作時の錠装置本体の内部構造を示す図である。
図6】建具用錠装置の解錠動作時の錠装置本体の内部構造を示す図である。
図7】建具用錠装置のガイド用平歯車及びトリガーを示す斜視図である。
図8】建具用錠装置の大径平歯車及び小径平歯車を示す斜視図である。
図9】内障子の召合せ框に設けられる錠装置本体を室外側から見た図である。
図10】外障子の召合せ框に設けられる受け具を室外側から見た図である。
図11】足操作部の取付け構造を示す分解斜視図である。
図12A】足操作部に設けられるラッチ部材の保持解除状態を示す図である。
図12B】足操作部に設けられるラッチ部材の保持状態を示す図である。
図13】建具の使用状態を示す図である。
図14】足操作部による建具用錠装置の解錠動作を示す図である。
図15】足操作部の他の実施形態を示す斜視図である。
図16】足操作部の他の実施形態を示す斜視図である。
図17】足操作部の他の実施形態を示す斜視図である。
図18】足操作部の他の実施形態を示す斜視図である。
図19】足操作部の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に示す建具は、建物躯体の開口部を内障子3及び外障子4によって開閉する引き違い窓1である。
【0010】
図中に示す矢印において、X1-X2に沿う方向は、引き違い窓1の室内外方向である。X1方向は、引き違い窓1の室外側を示し、X2方向は、引き違い窓1の室内側を示す。図1は、引き違い窓1を室内側から見た図である。各図の上下は、引き違い窓1の鉛直方向に沿う上下に対応している。引き違い窓1において、見付け面は、室外側及び室内側にそれぞれ面する面である。引き違い窓1において、見込み面は、見付け面に直交し、室内外方向に沿う面である。引き違い窓1において、横方向及び左右方向は、開閉時の内障子3及び外障子4の移動方向に沿う方向をいう。左右方向は、引違い窓1を室内側から見た状態を基準とし、観察者の右手側を右、左手側を左とする。
【0011】
引き違い窓1は、建物躯体の開口部に取り付けられる枠体2と、枠体2の内側にスライド可能に納められる内障子3及び外障子4と、を有する。枠体2は、上枠21、下枠22、及び左右の縦枠23を矩形に枠組みすることによって構成される。図2に示すように、上枠21の見込み面には、室内側レール211及び室外側レール212が下方に向けて突出している。下枠22の見込み面には、室内側レール221及び室外側レール222が上方に向けて突出している。
【0012】
内障子3は、枠体2の内側における室内側に配置される。内障子3は、上框31、下框32、戸先框33、及び召合せ框34を矩形に框組みした框体30の内側に、ガラス等の面材35が納められる。内障子3の召合せ框34は、図2及び図3に示すように、面材35が納められる召合せ框本体341と、召合せ框本体341の室内側に、召合せ框本体341と同じ横幅で突出する召合せ框延長部342と、を有する。内障子3は、上枠21の室内側レール211と下枠22の室内側レール221とに亘って係合し、上枠21及び下枠22の延び方向に沿って左右方向にスライド移動可能に設けられる。
【0013】
外障子4は、枠体2の内側における室外側に配置される。外障子4は、上框41、下框42、戸先框43、及び召合せ框44を矩形に框組みした框体40の内側に、ガラス等の面材45を納めることによって構成される。外障子4は、上枠21の室外側レール212と下枠22の室外側レール222とに亘って係合し、上枠21及び下枠22の延び方向に沿って左右方向にスライド移動可能に設けられる。
【0014】
図1図3に示すように、内障子3及び外障子4が建物躯体の開口部を全閉した状態において、内障子3の召合せ框34と外障子4の召合せ框44とは、室内外方向に重なり合うように配置される。召合せ框34,44は、いずれも中空形状を有する。召合せ框34,44には、引き違い窓1を施解錠する建具用錠装置5(以下、単に錠装置5という場合がある。)が設けられる。
【0015】
錠装置5は、内障子3の召合せ框34に内蔵される錠装置本体50Aと、外障子4の召合せ框44に内蔵される受け具50Bと、を有する。本実施形態の錠装置5は、内障子3の召合せ框34に設けられる足操作部6を操作者が室内側から足で操作することによって、施錠動作及び解錠動作のいずれもが可能に構成される。足操作部6は、錠装置5の施解錠操作のための第1の操作部である。錠装置本体50A及び受け具50Bは、召合せ框34,44における高さ方向の中央部付近にそれぞれ内蔵される。足操作部6は、内障子3における召合せ框34の室内側見付け面34aの下部に配置される。
【0016】
図5及び図6に示すように、錠装置本体50Aは、ケース51内に、ラック52、ガイド用平歯車53、大径平歯車54、小径平歯車55、トリガー56、及び掛け具57を有する。
【0017】
ラック52は、ケース51内の室内側に配置され、召合せ框34における召合せ框延長部342内を上下方向に延びている。ラック52の室外側の側面には、ラック52の長さ方向に沿ってラック歯521が形成されている。ラック52の室内側には、ケース51に一体に設けられる支持片511が配置される。支持片511は、ラック52の延び方向に沿って上下に延びている。ラック52の室内側の側面は、支持片511に当接している。ラック52は、ケース51内に、支持片511に沿って上下にスライド移動可能に配置される。ラック52は、本開示における移動部材である。
【0018】
ラック52の下端は、ケース51から下方に突出している。ケース51から突出するラック52の下端とケース51とに亘って、引っ張りばね522が設けられる。引っ張りばね522の一端は、ラック52の下端に設けられるばね係止凸部522aに係止されている。引っ張りばね522の他端は、ケース51の下面板512に引っ掛けられている。引っ張りばね522は、ラック52が下方向へ移動した際に伸長し、ラック52に対して上方に復帰させるように付勢力を作用させる。この引っ張りばね522は、本開示における付勢部材である。
【0019】
ラック52には、連結板523が取り付けられている。連結板523は、ラック52から室内側に向けて延び、内障子3の召合せ框34の室内側見付け面34aから突出している。連結板523は、召合せ框34の室内側見付け面34aに配置される縦長状の手操作部7に連結している。手操作部7は、錠装置5の手動操作用部材であり、錠装置5の施解錠操作のための第2の操作部である。手操作部7は、ラック52と一体に上下に移動可能に設けられる。
【0020】
ラック52は、ラック歯521が設けられる室外側の側面に、ラック52の長さ方向に沿って延びる段部524を有する。段部524には、上下に離隔して配置される係合凹部524a,524bが設けられる。
【0021】
ラック52の室外側には、キックばね525が配置される。キックばね525は、ケース51内に突設されたピン513に引っ掛けられている。キックばね525の一端525aは、ケース51内に設けられた係止ピン514に掛け止められている。キックばね525の他端525bは、円弧状に折り曲げられ、ラック52の段部524に弾性的に当接している。
【0022】
段部524に設けられる係合凹部524a,524bは、ラック52の移動ストロークの上端位置と下端位置とを規定する。ラック52の移動ストロークの上端位置では、図5に示すように、キックばね525の円弧状の他端525bは、下側の係合凹部524bに係合する。ラック52の移動ストロークの下端位置では、図6に示すように、キックばね525の円弧状の他端525bは、上側の係合凹部524aに係合する。ラック52が上下移動した際に、移動ストロークの上端位置及び下端位置においてクリック感が得られるため、操作性が向上する。
【0023】
ガイド用平歯車53は、ケース51内の下部に配置され、ケース51に設けられる支軸J1に回転可能に支持されている。ガイド用平歯車53は、ラック歯521に噛合している。図7に示すように、ガイド用平歯車53は、支軸J1に沿って突出するボス部531を有する。ボス部531の外周には、円弧状の外周面531aと、外周面の一部が平坦にカットされた形状の被係止面531bと、が設けられる。これによって、支軸J1に直交するボス部531の横断面は、略D字状の外形を有する。ガイド用平歯車53は、ラック52の上下移動に連動して、支軸J1を中心に回転可能である。
【0024】
大径平歯車54及び小径平歯車55は、ケース51内の上部に配置され、ケース51に設けられる支軸J2に回転可能に支持されている。大径平歯車54は、ラック歯521に噛合している。図8に示すように、大径平歯車54と小径平歯車55とは同軸状に設けられる。大径平歯車54には、支軸J2に沿って突出する係合凸軸541を有する。小径平歯車55は、係合凸軸541に係合する係合孔551を有する。大径平歯車54と小径平歯車55とは、係合凸軸541と係合孔551とが互いに係合することによって、ラック52の上下移動に連動して、支軸J2を中心に一体に回転する。
【0025】
トリガー56は、ケース51内におけるガイド用平歯車53の上側且つ大径平歯車54の下側に、室内外方向に沿って配置される。トリガー56は、室内外方向に長いガイド孔561を有する。ガイド孔561内には、ケース51に設けられるガイド凸部515が係合している。トリガー56は、ガイド凸部515がガイド孔561に対して相対的に移動可能な範囲で、室内外方向に移動可能に支持される。図6に示すように、トリガー56が最も室外側に移動したとき、トリガー56の室外側の端部は、ケース51から室外側に向けて突出する。このときのトリガー56は、召合せ框34の室外側見付け面34bから、外障子4の召合せ框44に当接する程度に室外側に突出する。
【0026】
トリガー56の下面には、下方に突出するばね受け部562が一体に設けられる。ばね受け部562には、圧縮ばね565の一端が当接している。圧縮ばね565の他端は、ケース51に設けられたばね固定片516に固定されている。圧縮ばね565は、ばね固定片516から室外側に向けて突出し、突出側の先端でばね受け部562に当接している。圧縮ばね565は、圧縮されることによって、ばね受け部562を介して、トリガー56に対して室外側に向けた付勢力を作用させる。
【0027】
トリガー56の室内側の端部の下面には、円弧状凹部563が設けられる。円弧状凹部563のさらに室内側の下面には、室内外方向に沿って平坦な係止面564が設けられる。ガイド用平歯車53は、ボス部531をトリガー56の円弧状凹部563の内側に嵌合させて支軸J1に支持される。ボス部531の円弧状の外周面531aは、円弧状凹部563の円弧面に沿っている。
【0028】
トリガー56の室外側の端部の右側面は、室外側に向かうに従って先細り状に形成される。これによって、トリガー56の室外側の先端面には、傾斜面566が形成されている。傾斜面566は、外障子4の召合せ框44と当接したときに、召合せ框44に対して摺動することによって、トリガー56を、圧縮ばね565を圧縮させながら、室内側に向けて徐々に後退させる。
【0029】
掛け具57は、ケース51内における大径平歯車54とトリガー56との間に配置され、ケース51に設けられる支軸J3に回転可能に支持されている。掛け具57の外周には、支軸J3を挟んで配置される円弧状係合板571と歯車部572とが設けられる。歯車部572は、小径平歯車55に噛合している。そのため、ラック52の上下移動に連動して大径平歯車54が回転すると、小径平歯車55を介して掛け具57が回転する。円弧状係合板571は、掛け具57の回転によって、施錠位置と解錠位置とにそれぞれ配置される。
【0030】
掛け具57の側面には、ばね係止凸部573が設けられている。ばね係止凸部573には、引っ張りばね574の一端が係止される。引っ張りばね574の他端は、ケース51に設けられたばね係止片517に係止されている。引っ張りばね574の付勢力は、掛け具57を受け具50Bに対して係合させる施錠時の途中から施錠方向に作用し、受け具50Bに対する係合を解除する解錠時の途中から解錠方向に作用する。そのため、施解錠動作を軽快に行うことができる。
【0031】
受け具50Bは、係合片58を有する。係合片58は、外障子4の召合せ框44の室内側見付け面44aに、掛け具57の円弧状係合板571に対して係合可能に配置される。
【0032】
図1及び図5は、錠装置5の施錠状態を示している。この状態において、内障子3及び外障子4は閉鎖され、召合せ框34,44は重なり合っている。ラック52は、移動ストロークの上端位置に配置される。トリガー56は、外障子4の召合せ框44に当接することによって室内側に最も後退し、圧縮ばね565を圧縮させている。この状態はトリガー作動状態である。掛け具57の円弧状係合板571は、内障子3の召合せ框34の室外側見付け面34bから張り出し、受け具50Bの係合片58と係合している。このとき、ガイド用平歯車53は、トリガー56の円弧状凹部563の内側で回転可能であるため、ラック52は、解錠のために下方向に移動可能である。
【0033】
図6は、錠装置5の解錠状態を示している。この状態において、内障子3及び外障子4のうちの少なくともいずれかが開放され、召合せ框34,44は重なり合っていない。ラック52は、移動ストロークの下端位置に配置される。この状態は、トリガー解除状態である。掛け具57は、ラック52の下方向への移動に連動して回転して円弧状係合板571をケース51内に配置させ、受け具50Bの係合片58との係合を解除している。このとき、ガイド用平歯車53のボス部531の被係止面531bは、トリガー56側に向いているため、トリガー56は、圧縮ばね565の付勢力によって室外側に向けて前進する。前進したトリガー56の係止面564は、被係止面531bに対面して配置されるため、ガイド用平歯車53は回転不能である。そのため、ラック52は、引っ張りばね522の付勢力に関わらず、上方向に移動不能であり、解錠状態が維持される。
【0034】
錠装置5の第1の操作部である足操作部6は、内障子3の召合せ框34の下部に配置され、室内側に突出している。足操作部6は、図2及び図11に示すように、略角柱状の基部61と、ペダル部62と、を有する。基部61とペダル部62とは、樹脂材料によって一体に成形される。足操作部6は、連結部材63によって、錠装置本体50Aのラック52に連結されている。
【0035】
図11に示すように、召合せ框34の下端部には、召合せ框延長部342の下端部が室内側及び下方に向けて切り欠かれた切欠き部343が形成されている。足操作部6の基部61は、切欠き部343から召合せ框延長部342の内部に、上下移動可能に挿入される。
【0036】
ペダル部62は、基部61の下端部に、室内側に向けて突出して一体に設けられる。本実施形態に示すペダル部62は、足挿入部621と、足挿入部621から上方に立ち上がる框カバー部622と、を一体に有する。
【0037】
足挿入部621は、図4及び図11に示すように、上面板621aと、下面板621bと、左右の側面板621cと、背面板621dと、を有し、室内側に向けて開口する横長の箱型形状を有する。足挿入部621の横幅は、召合せ框34の横幅よりも大きい。
【0038】
框カバー部622は、上方及び室外側が開放した角筒状に形成され、足挿入部621の上面板621aから上方に向けて一体に延びている。框カバー部622は、基部61が召合せ框延長部342の内部に挿入された際に、召合せ框34の室内側見付け面34aと召合せ框延長部342の左右の見込み面342aとを覆うように配置される。
【0039】
足操作部6は、基部61が召合せ框延長部342の内部に挿入されるため、足操作部6に横方向の力が加わった際に、召合せ框34に対して横方向への押圧力を作用させることができる。すなわち、足操作部6は、操作者の足で横方向へ押圧操作されることによって、内障子3を開閉可能に設けられる。
【0040】
足操作部6の基部61と錠装置本体50Aのラック52とを連結する連結部材63は、金属製の棒状部材によって構成される。連結部材63の上端部は、図5及び図6に示すように、ラック52の下端部に接続されている。連結部材63の下端部は、基部61を貫通し、図11に示すように、基部61の下方から取り付けられるナット631によって、基部61が下方に抜け落ちないように支持している。
【0041】
本実施形態の足操作部6は、さらにラッチ部材64を有する。ラッチ部材64は、本開示における保持部材である。ラッチ部材64は、基部61の下端部且つペダル部62の室外側に取り付けられている。ラッチ部材64は、一般にクワガタラッチ等とも呼ばれる。ラッチ部材64は、図12Aに示すように、箱型のラッチ部材本体641と、ラッチ部材本体641の下端から下方に突出する一対の保持腕部642と、一対の保持腕部642間に配置されて保持腕部642を開閉動作させるプッシュスイッチ643と、を有する。
【0042】
図2に示すように、足操作部6の下方の召合せ框34の切欠き部343には、被保持部65が配置されている。被保持部65は、固定部651と、固定部651の上面に突出する球状のストライク部652と、を有する。固定部651は、切欠き部343に露出する召合せ框本体341に固定されている。足操作部6が被保持部65に向けて下方向に移動すると、ラッチ部材64のプッシュスイッチ643がストライク部652によって押圧される。プッシュスイッチ643が押圧されると、図12Bに示すように、一対の保持腕部642が閉じ、ストライク部652を咥え込むようにして保持する。このとき、足操作部6は下降した位置に保持される。一対の保持腕部642がストライク部652を保持した状態から、足操作部6が再び下方向に移動してプッシュスイッチ643が再び押圧されると、一対の保持腕部642は開いた状態に復帰し、ストライク部652の保持を解除する。このとき、足操作部6は上方向へ移動することができる。
【0043】
次に、図13に示すように、両手に荷物を抱え持つ操作者OPが引き違い窓1の施解錠動作及び内障子3の開閉動作を行う場合について説明する。
【0044】
まず、引き違い窓1の全閉状態において、操作者OPは、図13及び図14に示すように、室内側から片足のつま先FTを足操作部6のペダル部62内に挿入し、下方に大きく踏み付ける。足操作部6は、基部61によって召合せ框延長部342に案内されながら下方向に円滑に移動し、連結部材63を介して錠装置本体50Aのラック52を、引っ張りばね522を伸長させながら下方向へ移動させる。図6に示すように、ラック52が移動ストロークの下端位置に配置されると、掛け具57の回転によって円弧状係合板571と受け具50Bの係合片58との係合が解除され、錠装置5は解錠状態となる。
【0045】
その後、図13に示すように、操作者OPがペダル部62を踏みつけたまま、足を開方向D1に向けて移動させることによって足操作部6を横方向へ押圧操作し、内障子3を開移動させる。このとき、ラッチ部材64がストライク部652を保持することによって、足操作部6は下降した位置に保持される。そのため、内障子3の開放後、操作者OPがペダル部62からつま先FTを離しても、解錠状態は維持される。
【0046】
内障子3を閉じる場合、操作者OPは、室内側からつま先FTを再び足操作部6のペダル部62内に挿入し、足を閉方向D2に向けて移動させることによって足操作部6を横方向へ押圧操作し、内障子3を閉移動させる。内障子3が全閉すると、トリガー56は、外障子4の召合せ框44に当接して室内側に最も後退する。このとき、ガイド用平歯車53のボス部531がトリガー56の円弧状凹部563内に嵌合するため、ガイド用平歯車53は回転可能状態になるが、ラッチ部材64がストライク部652を保持しているため、足操作部6は下降した位置に保持される。そのため、ラック52は、引っ張りばね522の付勢力に関わらず、上方向に移動することはなく、錠装置5は解錠状態のままである。
【0047】
内障子3が全閉した後、操作者OPは、足操作部6を解錠時に比べて小さくもしくは軽く下方に踏み付け、ラッチ部材64によるストライク部652の保持を解除する。ラッチ部材64の保持が解除されると、ラック52は、引っ張りばね522の付勢力によって上方向に移動し、移動ストロークの上端位置に配置される。これによって、掛け具57が回転して円弧状係合板571と受け具50Bの係合片58とが係合し、錠装置5は施錠状態となる。
【0048】
内障子3の施解錠動作は、操作者OPが手操作部7を手動操作することによって行ってもよい。
【0049】
以上の本実施形態に係る錠装置5は、以下の効果を奏する。
【0050】
(1) 本実施形態の建具用錠装置5は、枠体2内に納められた内障子3を横方向にスライド移動させることによって開口部を開閉する建具である引き違い窓1に設けられ、内障子3を施解錠する建具用錠装置5であって、内障子3に設けられ、移動部材であるラック52の上下方向への移動によって施解錠動作を行う錠装置本体50Aと、内障子3の室内側見付け面34aの下部に上下移動可能に設けられる足操作部6と、ラック52と足操作部6とを連結する連結部材63と、を備え、足操作部6は、操作者OPの足によって、錠装置本体50Aの施錠及び解錠が可能に設けられる。
【0051】
これによれば、操作者OPが、室内側から足を使用して錠装置本体50Aを操作することができる。両手に荷物を抱えた操作者OPや手が不自由な操作者の場合であっても、手を使わずに錠装置本体50Aを操作して施解錠動作を行うことが可能である。しかも、錠装置本体50Aを操作する際に手を使用する機会が低減するため、手を介して菌やウィルスに感染するリスクも低減する。
【0052】
(2) 上記(1)に記載の建具用錠装置5において、足操作部6は、操作者OPの足で横方向へ押圧操作されることによって、内障子3を開閉可能に設けられる。
【0053】
これによれば、操作者OPが、室内側から足で足操作部6を操作することによって内障子3を開閉動作させることができる。手を使う必要がないため、両手に荷物を抱えた操作者OPや手が不自由な操作者の場合であっても内障子3を開閉させることができる。しかも、内障子3の開閉動作時に手を使用する必要がないため、手を介して菌やウィルスに感染するリスクも低減する。
【0054】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の建具用錠装置5において、錠装置本体50Aは、足操作部6の下方向への移動によって、連結部材63を介してラック52を下方向に移動させて解錠動作を行う。
【0055】
これによれば、操作者OPが足操作部6を足で下方向に踏み付けるだけの自然な動作で、錠装置5を解錠させることができるため、使い勝手に優れる。
【0056】
(4) 上記(3)に記載の建具用錠装置5において、ラック52に対して上方向に付勢力を作用させる引っ張りばね522と、下方向に移動した足操作部6を下位置に保持するとともに、足操作部6が再び下方向に押圧された際に保持を解除する保持部材であるラッチ部材64と、をさらに備え、錠装置本体50Aは、ラッチ部材64によって足操作部6が下位置に保持されている間、解錠状態を維持するとともに、ラッチ部材64による足操作部6の保持解除時に、引っ張りばね522の付勢力によってラック52を上方向に移動させて施錠動作を行う。
【0057】
これによれば、操作者OPが足操作部6から足を離しても、錠装置5の解錠状態は維持される。しかも、錠装置5の解錠状態において、足操作部6はラッチ部材64の保持機能によって下降した位置に保持されているため、足操作部6の位置によって錠装置5が解錠状態であることを確認することができる。さらに、錠装置5の再施錠時には、足操作部6を小さくもしくは軽く踏み付けるだけで、引っ張りばね522の付勢力によってラック52を上方向に移動させて簡単に施錠することができる。
【0058】
以上説明した建具は、内障子3及び外障子4の2枚の障子を有する引違い窓1を例示したが、本開示の建具はこれに限定されない。本開示の建具は、障子が3枚以上設けられるものであってもよいし、障子が1枚だけの片引き窓であってもよい。建具は、窓に限定されず、横方向にスライド移動することによって開口部を開閉する玄関用の片引き戸であってもよい。
【0059】
以上の実施形態では、足操作部6は、操作者OPの足による操作によって、施錠動作及び解錠動作の両方を行うように構成されるが、これに限定されない。足操作部6は、操作者OPの足による操作によって、施錠動作と解錠動作とのうちのいずれか一方のみを行うように構成されてもよい。足によって施錠動作と解錠動作とのうちのいずれか一方のみを行う場合でも、施解錠動作をいずれも手で行う場合に比べて錠装置本体50Aの操作のために手を使用する機会が低減するため、手を介して菌やウィルスに感染するリスクは低減する。
【0060】
本実施形態では、錠装置5に、ラック52に対して上方向に付勢する引っ張りばね522が設けられるが、引っ張りばね522は必ずしも設けられなくてもよい。錠装置5に引っ張りばね522が設けられない場合、錠装置5の施錠動作は、操作者OPが足操作部6を足で上方へ移動させるか、操作者OPが手操作部7を手で上方へ移動させることによって行うことができる。
【0061】
本実施形態では、足操作部6にラッチ部材64が設けられるが、ラッチ部材64は必ずしも設けられなくてもよい。足操作部6にラッチ部材64が設けられない場合、内障子3及び外障子4が全閉した際に、トリガー56が室内側に向けて後退することによって、引っ張りばね522の付勢力によって自動的に施錠動作が行われる。そのため、操作者OPは施錠のための操作を行う必要がない。錠装置5に引っ張りばね522が設けられない場合では、錠装置5の施錠動作は、操作者OPが足操作部6を足で上方へ移動させるか、操作者OPが手操作部7を手で上方へ移動させることによって行われる。
【0062】
足操作部は、本実施形態に示す形状の足操作部6に限定されない。足操作部は、図15に示す足操作部6Aのように、足挿入部621の上面板621aの室内側への延出量を下面板621bの室内側への延出量よりも小さくし、足挿入部621が室内側の上方にも開放するように形成されてもよい。これによれば、足挿入部621内に対して足挿入部621の上方からつま先を挿入し易くなる。足挿入部621の上面板621aの室内側への延出量は、図16に示す足操作部6Bのようにさらに小さくてもよい。
【0063】
足操作部は、図17に示す足操作部6Cのように、足挿入部621に下面板621bが設けられていなくてもよい。この場合、足操作部6Cの踏み付け動作は、上面板621aに対して行うことができる。
【0064】
足操作部のペダル部は、必ずしも箱型形状の足挿入部を有するものでなくてもよい。足操作部のペダル部は、足挿入部に代えて、図18に示す足操作部6Dのペダル部62のように、室内側に向けて突出する塊部材からなる足操作部材623を有するものであってよい。この足操作部材623は、横断面が略U字状を有する塊部材が室内側に向けて突出することによって形成される。塊部材からなる足操作部材623には、図19に示す足操作部6Eのように、横方向に貫通する貫通穴624が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 建具、 2 枠体、 3 内障子、 34a 室内側見付け面、 5 錠装置、 52 ラック(移動部材)、 522 引っ張りばね(付勢部材)、 6 足操作部、 63 連結部材、 64 ラッチ部材、 OP 操作者、 FT つま先(足)
図1
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