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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169561
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】サスペンションアーム
(51)【国際特許分類】
   B60G 7/00 20060101AFI20231122BHJP
   B60G 11/16 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
B60G7/00
B60G11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080742
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】神谷 啓介
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA83
3D301AA85
3D301AA86
3D301AA87
3D301AA89
3D301CA11
3D301DA08
3D301DA89
3D301DA94
3D301DA96
3D301DB12
3D301DB13
3D301DB20
(57)【要約】
【課題】耐久性能を向上させることのできるサスペンションアームを提供する。
【解決手段】ロアアーム14は、アーム本体20と、補強部材30と、樹脂成形部40とを備える。アーム本体20は、金属材料によって構成される。アーム本体20は、底壁21と、底壁21の両側縁から突出するとともに互いに対向する態様で延在する一対の側壁22と、一対の側壁22の各々における端部から一対の側壁22同士が離れる方向に突出する一対のフランジ23とを有する。補強部材30は、金属材料によって構成される。補強部材30は、一対のフランジ23同士を繋ぐ態様でフランジ23の各々に溶接されている。樹脂成形部40は、アーム本体20および補強部材30をインサート品として樹脂材料によって成形される。樹脂成形部40は、フランジ23と補強部材30とが溶接された溶接部分WPを覆う形状をなす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料によって構成され、底壁、および、前記底壁の両側縁から突出するとともに互いに対向する態様で延在する一対の側壁、および、前記一対の側壁の各々における前記突出する方向の端部から前記一対の側壁同士が離れる方向に突出する一対のフランジ、を有するアーム本体と、
金属材料によって構成され、前記一対のフランジ同士を繋ぐ態様で前記一対のフランジの各々に溶接されてなる補強部材と、
前記アーム本体および前記補強部材をインサート品として樹脂材料によって成形されてなるものであり、且つ、前記フランジと前記補強部材とが溶接された部分を覆う形状をなす樹脂成形部と、
を備えるサスペンションアーム。
【請求項2】
前記樹脂成形部は、前記一対の側壁の各々における外方側の面と、前記底壁における外方側の面と、を覆う形状をなしている
請求項1に記載のサスペンションアーム。
【請求項3】
前記アーム本体は、ロアアームを構成するものである
請求項1または2に記載のサスペンションアーム。
【請求項4】
前記アーム本体は、前記一対の側壁および前記底壁によって区画されるとともにサスペンションスプリングの端部を収容可能に構成されたスプリング収容部と、同スプリング収容部において前記底壁を貫通する貫通孔と、を有し、
前記樹脂成形部は、前記アーム本体における前記貫通孔の内面を含む同貫通孔の内縁を覆う態様で当該内縁に沿って延びる部分を有する
請求項3に記載のサスペンションアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車体と車輪とを繋ぐサスペンションアームが設けられている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載のサスペンションアームは、アーム本体を有している。アーム本体は、金属板によって構成されている。アーム本体は、一対の側壁と、底壁と、一対のフランジとを有する。一対の側壁は、互いに対向する態様で車幅方向に延在する。底壁は、一対の側壁の車両上下方向における一方の端部(第1端部)を繋ぐ態様で延在する。一対のフランジは、一対の側壁の各々に設けられる。各フランジは、車両上下方向における第1端部と反対側の端部に設けられる。各フランジは、一対の側壁同士が離れる方向に突出している。
【0003】
特許文献1には、サスペンションアームに、補強のための補強部材を設けることが提案されている。補強部材は、繊維強化樹脂材料によって構成されている。補強部材は、一対の側壁同士、詳しくは、一対のフランジ同士を繋ぐ態様で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-107838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
補強部材を金属板によって構成することが考えられる。この場合には、例えば補強部材を一対のフランジの各々に溶接することで同補強部材によって一対の側壁(一対のフランジ)が繋がれた構造になる。
【0006】
通常、サスペンションアームは、その保護のために塗装される。そのため、補強部材を溶接によってアーム本体に接合する補強構造を採用すると、溶接部分に形成される酸化皮膜の影響で、溶接部分においては塗膜が剥がれやすい状態になってしまう。そして、路面の小石が跳ねて車両の下部に当たる等して、塗膜が剥がれるようなことがあると、サスペンションアームの耐久性能の低下を招いてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのサスペンションアームは、金属材料によって構成され、底壁、および、前記底壁の両側縁から突出するとともに互いに対向する態様で延在する一対の側壁、および、前記一対の側壁の各々における前記突出する方向の端部から前記一対の側壁同士が離れる方向に突出する一対のフランジ、を有するアーム本体と、金属材料によって構成され、前記一対のフランジ同士を繋ぐ態様で前記一対のフランジの各々に溶接されてなる補強部材と、前記アーム本体および前記補強部材をインサート品として樹脂材料によって成形されてなるものであり、且つ、前記フランジと前記補強部材とが溶接された部分を覆う形状をなす樹脂成形部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】サスペンションアームの一実施形態であるロアアームの端面図である。
図2】同ロアアームが適用される車両の懸架装置の概略構成を示す略図である。
図3】同ロアアームを構成するアーム本体および補強部材の分解斜視図である。
図4】同ロアアームの斜視図である。
図5】同ロアアームの平面図である。
図6】同ロアアームの製造手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、サスペンションアームの一実施形態であるロアアームについて説明する。
先ず、本実施形態のロアアームが適用される懸架装置について説明する。
図2に示すように、懸架装置10は車体11と車輪12との間に設けられている。懸架装置10は、路面から車体11に伝わる衝撃を緩和する機能と路面に対して車輪12を押さえつける機能とを有している。
【0010】
懸架装置10は、アッパーアーム13およびロアアーム14を有している。アッパーアーム13およびロアアーム14は、車輪12と車体11とを繋ぐ態様で、車幅方向において延びている。アッパーアーム13およびロアアーム14は、車両15の上下方向に間隔を置いて設けられている。ロアアーム14は、アッパーアーム13よりも車両15における下方に配置されている。アッパーアーム13の一端およびロアアーム14の一端は車体11に連結されている。アッパーアーム13の他端およびロアアーム14の他端は車輪12に連結されている。
【0011】
懸架装置10は、コイルばねであるサスペンションスプリング16を有する。サスペンションスプリング16は、車体11とロアアーム14との間に架設されている。サスペンションスプリング16の軸線が上下方向に延びる態様で、サスペンションスプリング16は配置されている。サスペンションスプリング16の下端はロアアーム14に取り付けられている。
【0012】
以下、ロアアーム14の具体構成について、図1図6を参照して説明する。なお各図のX軸、Y軸、およびZ軸は互いに直交している。以下においては、X軸に沿う方向をX軸方向と称し、Y軸に沿う方向をY軸方向と称し、Z軸に沿う方向をZ軸方向と称す。
【0013】
図3図5に示すように、ロアアーム14は、アーム本体20と、補強部材30と、樹脂成形部40とを有している。
<アーム本体20>
アーム本体20は、金属材料によって構成されている。金属材料としては、例えば高張力鋼板(SPFC、SPFHなど)が採用される。アーム本体20は、プレス加工により成形される。アーム本体20は、底壁21、一対の側壁22、および一対のフランジ23を有している。アーム本体20は、底壁21、一対の側壁22、および一対のフランジ23により、Y軸方向およびZ軸方向に延在する平面における断面がハット形状をなしている。
【0014】
底壁21は、X軸方向およびY軸方向に延在している。ロアアーム14が車両15(図2参照)に取り付けられた状態では、底壁21は車両15の前後方向および車幅方向に延在した状態になる。
【0015】
一対の側壁22は底壁21の両側縁からZ軸方向に突出している。一対の側壁22の各々はX軸方向およびZ軸方向に延在している。一対の側壁22は、互いに対向する態様でY軸方向に間隔を置いて配置されている。アーム本体20において底壁21および一対の側壁22は、Z軸方向の一方側(図3の上側)に向けて開口する断面U字状をなす態様で、X軸方向において延びている。
【0016】
フランジ23は、一対の側壁22の各々に設けられている。フランジ23は、側壁22における上記底壁21と反対側の端部、すなわち底壁21から側壁22が突出する方向(図3における上方向)の端部に設けられている。フランジ23は、一対の側壁22同士が離れる方向に突出する形状をなしている。フランジ23は、X軸方向およびY軸方向に延在している。フランジ23は、側壁22の端部に沿って、同側壁22のX軸方向における一端から他端までの全長に渡り延びている。
【0017】
図4および図5に示すように、アーム本体20は、X軸方向における一方側から順に並ぶ態様で、第1連結部24、スプリング部25、第2連結部26を有している。
<第1連結部24>
第1連結部24は、車体11に取り付けられる部分である。第1連結部24において一対の側壁22は略平行に延びている。第1連結部24において一対のフランジ23は略平行に延びている。第1連結部24における各側壁22には、Y軸方向において貫通する第1貫通孔241が設けられている。各側壁22の第1貫通孔241を利用して、第1連結部24は車体11に連結される。
【0018】
<スプリング部25>
スプリング部25は、アーム本体20のX軸方向における中間部分を構成している。スプリング部25においては、Y軸方向における一対の側壁22の間隔が、第1連結部24における一対の側壁22の間隔や第2連結部26における一対の側壁22の間隔よりも大きくなっている。スプリング部25において各側壁22と各フランジ23とは、側壁22同士が離れる方向に突出する凸状をなす態様で延びている。スプリング部25において各側壁22と各フランジ23とは、曲率の低いなだらかな稜線を有する凸状をなす態様で延びている。
【0019】
スプリング部25の内部には、スプリング収容部251が区画形成されている。スプリング収容部251は、一対の側壁22および底壁21によって区画されている。スプリング収容部251は、前記サスペンションスプリング16(図2参照)の端部を収容可能に構成されている。具体的には、スプリング収容部251は、円柱状のスペースを含んでいる。ロアアーム14を車両15に取り付ける際には、スプリング収容部251の内部にサスペンションスプリング16の端部が収容された状態になる。
【0020】
スプリング部25においては、底壁21に、Z軸方向に貫通する第2貫通孔252が設けられている。
<補強部材30>
図3図5に示すように、補強部材30は、スプリング部25において、各側壁22における前記底壁21と反対側の端部(詳しくは、フランジ23)同士を繋ぐ形状をなしている。補強部材30は、金属材料によって構成されている。金属材料としては、高張力鋼板(SPFC、SPFHなど)が採用される。
【0021】
補強部材30は、溶接加工によって、各側壁22のフランジ23に接合(固定)されている。溶接加工としては、例えばアーク溶接が採用される。補強部材30は、X軸方向およびY軸方向に延在している。補強部材30のY軸方向における両端部(第1端部31および第2端部32)は、対向する側壁22に沿って、側壁22同士が離れる方向に突出する凸状をなす態様で延びている。補強部材30の第1端部31および第2端部32は、曲率の低いなだらかな稜線を有する凸状をなす態様で延びている。補強部材30の第1端部31および第2端部32は、溶接加工を通じて、アーム本体20のフランジ23の上面231に接合(固定)されている。
【0022】
補強部材30は、Z軸方向に貫通する第3貫通孔33を有する。第3貫通孔33は、補強部材30におけるX軸方向およびY軸方向の双方の中央に配置されている。ロアアーム14を車両15(図2参照)に取り付ける際には、サスペンションスプリング16が上記第3貫通孔33に挿通された状態になる。
【0023】
<第2連結部26>
第2連結部26は、車輪12に取り付けられる部分である。第2連結部26において一対の側壁22は略平行に延びている。第2連結部26において一対のフランジ23は略平行に延びている。第2連結部26における各側壁22には、Y軸方向において貫通する第4貫通孔261が設けられている。各側壁22の第4貫通孔261を利用して、第2連結部26は車輪12に連結される。
【0024】
<樹脂成形部40>
樹脂成形部40は、樹脂材料によって構成される。樹脂材料としては、例えば、熱可塑性樹脂材料(PP、PEなど)が採用される。樹脂成形部40は、アーム本体20および補強部材30をインサート品とするインサート成形によって成形される。
【0025】
<第1部分41>
図1および図5に示すように、樹脂成形部40は、フランジ23を3方向から密着した状態で覆う形状をなす第1部分41を有している。第1部分41は、断面コの字状をなす態様で、フランジ23に沿ってX軸方向に延びている。第1部分41は、フランジ23のX軸方向における両端を除く態様で、X軸方向の略全長に渡って延びている。
【0026】
ロアアーム14における第1連結部24および第2連結部26において、樹脂成形部40の第1部分41は、フランジ23のZ軸方向における両面と同フランジ23のY軸方向における突端とを3方向から密着状態で覆う形状をなしている。
【0027】
ロアアーム14におけるスプリング部25においては、フランジ23と補強部材30とがZ軸方向において重ねられた状態で溶接されている。こうしたスプリング部25において、樹脂成形部40の第1部分41は、重ねられた状態のフランジ23および補強部材30のZ軸方向における両面と同フランジ23のY軸方向における突端とを3方向から密着状態で覆う形状をなしている。スプリング部25において第1部分41が形成される部分は、フランジ23と補強部材30とが溶接される部分(以下、溶接部分WP)の全体を含んでいる。図1に示すように、上記溶接部分WPは、詳しくは、フランジ23における上記補強部材30が実際に溶接される側(図1の上側)の部分と、同部分の裏面側(図1の下側)の部分とを含んでいる。スプリング部25において第1部分41は、補強部材30のY軸方向における端部に沿ってX軸方向に延びている。スプリング部25において第1部分41は、補強部材30のX軸方向における両端を除く態様で、同補強部材30の配設部分におけるX軸方向の略全長に渡って延びている。
【0028】
<第2部分42>
図1および図4に示すように、樹脂成形部40は、各側壁22の外面と底壁21の外面とを覆う第2部分42を有している。第2部分42は、各側壁22の外方側の面、すなわち一方の側壁22における他方の側壁22から遠い側の面を覆う形状をなしている。また、第2部分42は、底壁21の外方側(図1の下側)の面を覆う形状をなしている。第2部分42は、一対の側壁22のX軸方向における両端と底壁21のX軸方向における両端とを除く態様で、各側壁22の外面および底壁21の外面においてX軸方向の略全長に渡って延びている。第2部分42の表面形状は、空気抵抗を減少させることの可能な凹凸形状をなしている。これにより、車両15の走行時における空気抵抗の低減が図られている。本実施形態では、樹脂成形部40の成形に用いる金型装置のキャビティの表面に凹凸形状が形成されている。そして、この金型装置を利用して樹脂成形部40を成形する際に、同樹脂成形部40における第2部分42の表面に、空気抵抗を減少させることの可能な凹凸形状が転写される。
【0029】
<第3部分43>
図1および図5に示すように、樹脂成形部40は、アーム本体20の第2貫通孔252の内縁を覆う第3部分43を有している。第3部分43は、第2貫通孔252の内縁におけるZ軸方向の両面と同第4貫通孔261の内面253とを3方向から密着した状態で覆う形状をなしている。第3部分43は、断面コの字状をなす態様で、第2貫通孔252の内縁の全周にわたり延びている。第3部分43は、アーム本体20における第2貫通孔252の内面253を含む同第2貫通孔252の内縁を覆う態様で、当該内縁に沿って延びている。
【0030】
以下、ロアアーム14の製造手順について、図6を参照しつつ説明する。
[形成工程]
図6に示すように、ロアアーム14の製造に際しては先ず、[形成工程]が実行される(ステップS1)。この工程では、プレス加工を通じて、アーム本体20および補強部材30(図3参照)が形成される。
【0031】
[溶接工程]
上記[形成工程]の後、[溶接工程]が実行される(図6のステップS2)。この工程では、溶接加工を通じて、アーム本体20に補強部材30が接合(固定)される。この工程では、補強部材30の第1端部31および第2端部32が、一対のフランジ23同士を繋ぐ態様で、各フランジ23に溶接される。
【0032】
[塗装工程]
上記[溶接工程]の後、[塗装工程]が実行される(図6のステップS3)。この工程では、耐候性を有する塗料を用いて、アーム本体20および補強部材30の全体が塗装される。なお本実施形態では、前記溶接部分WP(図1参照)の塗装が剥がれにくくするための前処理、詳しくは、溶接工程において溶接部分WPに生じた酸化皮膜を除去する処理は実行されない。
【0033】
[成形工程]
上記[塗装工程]の後、[成形工程]が実行される(ステップS4)。この工程では、アーム本体20および補強部材30をインサート品とするインサート成形によって、樹脂成形部40が成形される。具体的には、塗装後のアーム本体20および補強部材30が金型装置の内部にインサートされるとともに、その状態で金型装置を利用して樹脂成形部40が形成される。
【0034】
本実施形態では、[形成工程]、[溶接工程]、[塗装工程]および[成形工程]を通じて、アーム本体20、補強部材30、および樹脂成形部40を有するロアアーム14が一体形成される。
【0035】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(1)ロアアーム14は、アーム本体20と、補強部材30と、樹脂成形部40とを備える。補強部材30は、ロアアーム14の一対のフランジ23同士を繋ぐ態様で、それらフランジ23の各々に溶接されている。樹脂成形部40は、溶接部分WPを覆う形状をなしている。
【0036】
本実施形態によれば、ロアアーム14における溶接部分WPを、樹脂材料により構成される樹脂成形部40によって密着した状態で覆うことができる。これにより、仮に、溶接部分WPの付近に跳ねた小石が当たった場合であっても、表面を覆う樹脂成形部40によって溶接部分WPを保護することができる。そのため、溶接部分WPを覆う部分が破損する等して同溶接部分WPが外部に露出した状態になることが抑えられるようになる。これにより、溶接部分WPに錆が生じる等といった、溶接部分WPの劣化を抑えることができるため、ロアアーム14の耐久性能を向上させることができる。
【0037】
なお、ロアアーム14は、塗膜の表面が樹脂成形部40によって覆われる構造をなしている。これにより、溶接部分WPにおいて、塗膜がロアアーム14(アーム本体20や補強部材30)から剥がれ難い構造になっている。そのため、上記溶接部分WPの塗装が剥がれにくくするための前処理、詳しくは、溶接工程において生じた酸化皮膜を除去する処理を省略することができる。
【0038】
(2)樹脂成形部40は、一対の側壁22の各々における外方側の面と底壁21における外方側の面とを覆う第2部分42を有している。第2部分42の表面は、空気抵抗を減少させることの可能な凹凸形状をなしている。本実施形態によれば、アーム本体20の外方側の面が樹脂材料によって構成される。そのため、アーム本体20の外方側の面が金属材料によって構成される場合と比較して、ロアアーム14の外面に対して、空気抵抗を減少させることの可能な凹凸形状を形成するための特定の加工を容易に施すことができる。
【0039】
(3)アーム本体20は、ロアアーム14を構成するものである。ロアアーム14は路面の近くに配置されるため、路面で小石が跳ねた場合や路面の水が巻き上がられた場合において、その影響を受けやすいと云える。本実施形態によれば、そうしたロアアーム14の耐久性能を向上させることができる。
【0040】
(4)アーム本体20は、一対の側壁22および底壁21によって区画されるスプリング収容部251を有する。スプリング収容部251はサスペンションスプリング16の端部を収容可能に構成されている。アーム本体20は、スプリング収容部251において底壁21を貫通する第2貫通孔252を有する。樹脂成形部40は、アーム本体20における第2貫通孔252の内面253を含む同第2貫通孔252の内縁を覆う態様で当該内縁に沿って延びる第3部分43を有する。本実施形態によれば、ロアアーム14の構造を、アーム本体20の第2貫通孔252の内縁において同アーム本体20と樹脂成形部40とが係合する構造にすることができる。そのため、アーム本体20と樹脂成形部40とが異素材で形成されるとはいえ、それらアーム本体20および樹脂成形部40の相対位置が不要にずれることを抑えることができる。
【0041】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
・樹脂成形部40の第2部分42に施す特定の加工としては、空気抵抗が抑えられる表面形状にするための加工に限らず、任意の加工を施すことができる。特定の加工としては、例えば、第2部分42の表面形状を撥水性が付与される形状にする加工や、第2部分42に防汚性を付与するための加工などを挙げることができる。
【0043】
・樹脂成形部40における第2部分42および第3部分43の一方を省略することができる。樹脂成形部40における第2部分42および第3部分43の両方を省略してもよい。
【0044】
・樹脂成形部40を構成する第1部分41のうち、第1連結部24に形成される部分を省略したり、第2連結部26に形成される部分を省略したりしてもよい。
・ロアアーム14の製造にかかる各工程を、前記[形成加工]、[溶接加工]、[成形加工]、[塗装加工]の順に実行するようにしてもよい。この場合には、[塗装加工]において、アーム本体20および補強部材30における樹脂成形部40によって覆われていない部分のみを塗装することで、ロアアーム14における金属材料によって構成される部分を塗膜によって保護することができる。したがって、アーム本体20および補強部材30の全体を塗装する場合と比較して、塗料を節約することができる。
【0045】
・前記各工程を、[形成加工]、[溶接加工]、[成形加工]の順に実行してロアアーム14を製造するようにしてもよい。この場合には、[成形工程]において、樹脂成形部40をアーム本体20および補強部材30の全体を覆う形状に成形することで、ロアアーム14の全体を樹脂成形部40によって保護することができる。この場合には、[塗装工程]を省略することができる。
【0046】
・上記実施形態にかかるサスペンションアームは、ロアアーム14に適用することに限らず、アッパーアーム13に適用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
14 ロアアーム
16 サスペンションスプリング
20 アーム本体
21 底壁
22 側壁
23 フランジ
25 スプリング部
251 スプリング収容部
252 第2貫通孔
253 内面
30 補強部材
40 樹脂成形部
41 第1部分
42 第2部分
43 第3部分
WP 溶接部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6