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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169563
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】反応装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/04 20060101AFI20231122BHJP
【FI】
B01J8/04 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080745
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】薮花 優棋
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 佳宏
【テーマコード(参考)】
4G070
【Fターム(参考)】
4G070AA01
4G070AB04
4G070BA08
4G070BB06
4G070CA01
4G070CB17
4G070CC03
4G070CC07
4G070DA12
(57)【要約】
【課題】触媒の劣化を低減できると共に反応容器を短くできる反応装置を提供する。
【解決手段】反応装置は、発熱を伴う化学反応が起こる反応装置であって、入口から出口に向かって原料ガスが流通する反応容器と、反応容器が内包する触媒と、を備え、原料ガスの流れの方向に沿って順に、第1部、第2部、第3部を含む。第1部、第2部、第3部のうち化学反応の活性化エネルギーを下げる度合いは、第2部が最も小さい。また反応装置は、第1部で温度が上昇し、第2部で温度が低下し、第3部で温度が上昇する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口から出口に向かって原料ガスが流通する反応容器と、前記反応容器が内包する触媒と、を備え、発熱を伴う化学反応が起こる反応装置であって、
前記原料ガスの流れの方向に沿って、順に、第1部、第2部、第3部を含み、
前記第1部、前記第2部、前記第3部のうち前記化学反応の活性化エネルギーを下げる度合いは、前記第2部が最も小さい反応装置。
【請求項2】
入口から出口に向かって原料ガスが流通する反応容器と、前記反応容器が内包する触媒と、を備え、発熱を伴う化学反応が起こる反応装置であって、
前記原料ガスの流れの方向に沿って、順に、第1部、第2部、第3部を含み、
前記第1部で温度が上昇し、前記第2部で温度が低下し、前記第3部で温度が上昇する反応装置。
【請求項3】
前記第2部は、触媒活性のない不活性体、又は、前記第1部および前記第3部に含まれる触媒の触媒活性よりも触媒活性が低い低活性触媒を含む請求項1記載の反応装置。
【請求項4】
前記第1部は、前記第3部に含まれる触媒の触媒活性よりも触媒活性が低い触媒を含む請求項1又は3に記載の反応装置。
【請求項5】
前記流れの方向における前記第1部の厚さは、前記流れの方向における前記第3部の厚さよりも小さい請求項1又は3に記載の反応装置。
【請求項6】
前記化学反応は、水素および二酸化炭素を含む前記原料ガスからメタンを合成する反応である請求項1又は2に記載の反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発熱を伴う化学反応が起こる反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒を内包する反応容器を原料ガスが流通することにより発熱を伴う化学反応が起こる反応装置では、反応熱によって反応場の温度が上昇すると、シンタリング等の触媒の劣化が生じ易くなる。触媒の劣化を低減するため、特許文献1に開示された先行技術では、互いに間隔をあけて並列に配置した反応容器に原料ガスを流通させた後、合流させ、反応容器の断面方向における温度分布のばらつきを低減し、触媒の過熱を防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-114432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では、互いに間隔をあけて反応容器を並列に配置するので、反応容器が配置された範囲に対して反応容器の体積が小さくなる。反応容器が配置された範囲につり合う反応容器の体積を確保すると、反応容器の全長が大きくなるという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、触媒の劣化を低減できると共に反応容器を短くできる反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の反応装置は、発熱を伴う化学反応が起こる反応装置であって、入口から出口に向かって原料ガスが流通する反応容器と、反応容器が内包する触媒と、を備え、原料ガスの流れの方向に沿って順に、第1部、第2部、第3部を含み、第1部、第2部、第3部のうち化学反応の活性化エネルギーを下げる度合いは、第2部が最も小さい。また、反応装置は、第1部で温度が上昇し、第2部で温度が低下し、第3部で温度が上昇する。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、反応装置は触媒を内包する反応容器を含み、原料ガスの流れの方向に沿って順に、第1部、第2部、第3部を含む。第1部、第2部、第3部のうち化学反応の活性化エネルギーを下げる度合いは、第2部が最も小さいので、第2部の発熱は、第1部および第3部の発熱に比べて小さい。第1部で上昇した温度が第2部で低下するので、反応容器が短くても触媒の温度が過剰に上がらないようにできる。その結果、触媒の劣化を低減できる。
【0008】
第2の態様によれば、反応装置は触媒を内包する反応容器を含み、原料ガスの流れの方向に沿って順に、第1部、第2部、第3部を含む。第1部で温度が上昇し、第2部で温度が低下し、第3部で温度が上昇する。反応容器が短くても触媒の温度が過剰に上がらないようにできるので、触媒の劣化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施の形態における反応装置のブロック図である。
図2】反応容器の断面図である。
図3】反応装置の各部と温度との関係を示す図である。
図4】第2実施の形態における反応装置の断面図である。
図5】第3実施の形態における反応装置の断面図である。
図6】第4実施の形態における反応装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は第1実施の形態における反応装置10のブロック図である。反応装置10は原料ガスが流通する反応容器20を備えている。反応容器20は、2つの配管11,14がつながる合流配管17が接続されている。配管11は第1の原料ガスが供給される配管であり、上流から下流へ順に調節弁12、逆止弁13が配置されている。配管14は第2の原料ガスが供給される配管であり、上流から下流へ順に調節弁15、逆止弁16が配置されている。合流配管17には仕切弁18が配置されている。第1及び第2の原料ガスは、それぞれ調節弁12,15を経て最適な混合比に設定され、2つの原料ガスが混ざった混合ガス(原料ガス)は、仕切弁18を経て反応容器20に供給される。
【0011】
本実施形態では、第1の原料ガスが水素、第2の原料ガスが二酸化炭素である場合を説明する。反応容器20は適度な圧力に設定されると共にヒーター27によって加熱され、CO+4H→CH+2HOの化学反応式で表されるメタン製造(メタネーション)を行う。生成物は反応容器20の下流に接続された凝縮器28により氷温に冷却され、メタンを含むガスと水とに分離される。メタンを含むガスは、原料ガスの水素と二酸化炭素とを含み得る。
【0012】
メタネーションは反応装置10で起こる化学反応の一例であり、これに限られるものではない。原料ガス、反応条件および触媒(後述する)を適宜選択することにより、例えば以下の化学反応を反応装置10で起こすことができる。
【0013】
メタンの部分酸化による合成ガス製造:2CH+O→2CO+4H
メタノール合成:CO+2H→CHOH
メタノール合成:CO+3H→CHOH+H
フィッシャー・トロプシュ合成:CO+2H→-(CH)-+H
-(CH)-は直鎖炭化水素を意味する
ジメチルエーテル合成:2CO+4H→CHOCH+H
【0014】
図2は反応装置10の断面図である。図2に示す矢印は、反応容器20を原料ガスが流通する方向を示す(図4から図6においても同じ)。反応容器20は触媒24,26及び低活性触媒25を内包する。反応装置10は、原料ガスの流れの方向に沿って(上流から下流に向かって)、順に第1部21、第2部22、第3部23を含む。第1部21及び第3部23はそれぞれ触媒24,26を含む。第2部22は、触媒24,26の触媒活性よりも触媒活性が低い低活性触媒25を含む。触媒24,26及び低活性触媒25は、化学反応の活性化エネルギーを下げ、化学反応を進行させやすくする。触媒活性が低いとは、化学反応の活性化エネルギーを下げる度合いが小さいことをいう。
【0015】
本実施形態では、第1部21、第2部22及び第3部23は、触媒24、低活性触媒25及び触媒26がそれぞれ配置された、内径が同一の管のフランジをボルト等で締め付けることにより互いに結合されている。しかし、これに限られるものではない。単一の管に触媒24、低活性触媒25及び触媒26を順に充填して、第1部21、第2部22及び第3部23を設けることは当然可能である。
【0016】
触媒24,26及び低活性触媒25は、各種の化学反応に適した触媒が制限なく用いられる。触媒24,26及び低活性触媒25は、担体に粒子が担持された粉末、ペレット又は多孔質構造体が例示される。担体は、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカ・アルミナ、ゼオライト、リン酸カルシウムの1種以上を含む酸化物の粉末、ペレット又は多孔質構造体が例示される。多孔質構造体は原料ガスが通過できる通気性を有する。また、粉末およびペレットの間の空隙を原料ガスが通過する。
【0017】
担体に担持される粒子は、Fe,Co,Ni,Cu,Ru,Rh,Pd,Ag,Ir,Pt,Auの1種以上を含む金属が例示される。触媒は、担体および粒子の材料および粒子径が同じであれば、触媒活性は担体が担持する粒子の表面積に比例するので、触媒24,26に比べ、担体が担持する粒子の表面積を小さくすることにより低活性触媒25が得られる。
【0018】
また、触媒活性を有しない不活性粒子を触媒24,26に混合し、一定量中に含まれる触媒24,26の量を少なくすることにより低活性触媒25が得られる。不活性粒子は、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカ・アルミナ、ゼオライト、リン酸カルシウムの1種以上を含む酸化物の粉末またはペレットが例示される。
【0019】
水素と二酸化炭素とが混ざった原料ガスを反応容器20に流通すると、原料ガスは順に第1部21、第2部22、第3部23を通過し、メタンと水を生成する化学反応が進行する。
【0020】
図3は反応装置10の各部と温度との関係を示す図である。図3の実施例は、第1部21、第2部22及び第3部23の反応場(触媒の集合)の断面の重心に、原料ガスが流れる方向に沿って複数の熱電対を配置して各熱電対が検知した温度を記録した結果である。比較例は、反応装置10を第1部21、第2部22及び第3部23に分けないで、第1部21の触媒24を反応容器20の全体に配置して同様に温度を記録した結果である。
【0021】
図3に示すように実施例は、第1部21で温度が上昇し、第2部22で温度が低下し、第3部23で温度が上昇する。第2部22は、低活性触媒25の触媒活性が触媒24の触媒活性より低く、活性化エネルギーを下げる度合いが第1部21よりも小さいため、反応速度が第1部21よりも小さくなり温度が低下する。第3部23は、触媒26の触媒活性が低活性触媒25の触媒活性より高く、活性化エネルギーを下げる度合いが第2部22よりも大きいため、反応速度が第2部22よりも大きくなり反応熱により温度が上昇する。しかし、第3部23には反応の生成物であるメタン及び水蒸気が存在するため、第3部23の反応熱はそれほど大きくならない。また、第3部23と第1部21との間に第2部22が介在するので、第3部23の熱は第1部21に伝わりにくく、第1部21の温度はそれほど高くならない。
【0022】
一方、比較例は、原料ガスからメタンと水を生成する化学反応(発熱反応)により、反応場の最高到達温度が、実施例に比べて高くなる。実施例によれば、比較例に比べ、化学反応に伴って上昇する触媒24,26及び低活性触媒25の温度を低減できるので、触媒の劣化を低減できる。また、先行技術のように反応容器を互いに間隔をあけて並列に配置する必要がないので、反応容器20の体積を確保しつつ反応容器20の全長を小さくできる。
【0023】
図2に戻って説明する。第1部21の触媒24の触媒活性は、第3部23の触媒26の触媒活性と同じ、又は、第3部23の触媒26の触媒活性より低い。原料ガスの流れの方向における第1部21の厚さは、原料ガスの流れの方向における第3部23の厚さよりも小さい。従って第1部21の触媒24の触媒活性が第3部23の触媒26の触媒活性と同じであっても、第1部21の厚さが第3部23の厚さよりも大きい場合に比べ、反応熱による第1部21の温度を低減できる。よって触媒24の劣化を低減できる。触媒活性が同じ触媒を第1部21及び第3部23に配置すれば、触媒活性が異なる2種類の触媒24,26を準備しなくても済むようにできる。
【0024】
原料ガスの流れの方向における第2部22の厚さは、原料ガスの流れの方向における第3部23の厚さよりも小さい。よって第2部22の厚さが第3部23の厚さよりも大きい場合に比べ、反応容器20の全長を小さくできる。
【0025】
原料ガスの流れの方向における第2部22の厚さは、原料ガスの流れの方向における第1部21の厚さよりも大きい。よって第1部21と第3部23との間に配置された低活性触媒25による断熱性を確保できる。
【0026】
図4を参照して第2実施の形態における反応装置30を説明する。第1実施形態では第2部22に低活性触媒25が配置される場合について説明した。これに対し第2実施形態では、触媒活性のない不活性体35が第2部32に配置される場合について説明する。第1実施形態において説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4は第2実施の形態における反応装置30の断面図である。
【0027】
反応装置30は、原料ガスの流れの方向に沿って、順に第1部31、第2部32、第3部33を含む。反応容器20は触媒34,36及び不活性体35を内包する。第1部31及び第3部33はそれぞれ触媒34,36を含む。触媒34,36は化学反応の活性化エネルギーを下げ、化学反応を進行させやすくする。第2部32は触媒活性のない不活性体35を含む。触媒活性がないとは、不活性体35に化学反応の活性化エネルギーを下げる機能がないことをいう。
【0028】
不活性体35は、アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ニオビア、シリカ・アルミナ、ゼオライト、リン酸カルシウムの1種以上を含む酸化物の粉末、ペレット又は多孔質構造体が例示される。多孔質構造体は原料ガスが通過できる通気性を有する。また、粉末およびペレットの間の空隙を原料ガスが通過する。
【0029】
水素と二酸化炭素とが混ざった原料ガスを反応容器20に流通すると、原料ガスは順に第1部31、第2部32、第3部33を通過し、メタンと水を生成する化学反応が進行する。第2部32は、不活性体35に触媒活性がなく、活性化エネルギーを下げる度合いが第1部31よりも小さいため、反応速度が第1部31よりも小さくなり温度が低下する。第3部33は、触媒36により、活性化エネルギーを下げる度合いが第2部32よりも大きいため、反応速度が第2部32よりも大きくなり反応熱により温度が上昇する。しかし、第3部33にはメタン及び水蒸気が存在するため、第3部33の反応熱はそれほど大きくならない。また、第3部33と第1部31との間に第2部32が介在するので、第3部33の熱は第1部31に伝わりにくく、第1部31の温度はそれほど高くならない。従って触媒34,36の劣化を低減できる。
【0030】
第1部31の触媒34の触媒活性は、第3部33の触媒36の触媒活性と同じ、又は、第3部33の触媒36の触媒活性より低い。原料ガスの流れの方向における第1部31の厚さは、原料ガスの流れの方向における第3部33の厚さよりも小さい。原料ガスの流れの方向における第2部32の厚さは、原料ガスの流れの方向における第3部33の厚さよりも小さい。
【0031】
原料ガスの流れの方向における第2部32の厚さは、原料ガスの流れの方向における第1部31の厚さよりも小さい。よって第2部32の厚さが第1部31の厚さよりも大きい場合に比べ、反応容器20の全長を小さくできる。
【0032】
図5を参照して第3実施の形態における反応装置40を説明する。第1実施形態および第2実施形態では、第1部21,31の厚さが第3部23,33の厚さよりも小さい場合について説明した。これに対し第3実施形態では、第1部41の厚さと第3部43の厚さとが同じ場合について説明する。第1実施形態において説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第3実施の形態における反応装置40の断面図である。
【0033】
反応装置40は、原料ガスの流れの方向に沿って、順に第1部41、第2部42、第3部43を含む。反応容器20は触媒44,46及び低活性触媒45を内包する。第1部41及び第3部43はそれぞれ触媒44,46を含む。触媒44の触媒活性は、触媒46の触媒活性よりも低い。第2部42は、触媒44,46の触媒活性よりも触媒活性が低い低活性触媒45を含む。
【0034】
水素と二酸化炭素とが混ざった原料ガスを反応容器20に流通すると、原料ガスは順に第1部41、第2部42、第3部43を通過し、メタンと水を生成する化学反応が進行する。第2部42は、低活性触媒45の触媒活性が触媒44の触媒活性より低く、活性化エネルギーを下げる度合いが第1部41よりも小さいため、反応速度が第1部41よりも小さくなり温度が低下する。第3部43は、触媒46により、活性化エネルギーを下げる度合いが第2部42よりも大きいため、反応速度が第2部42よりも大きくなり反応熱により温度が上昇する。しかし、第3部43にはメタン及び水蒸気が存在するため、第3部43の反応熱はそれほど大きくならない。また、第3部43と第1部41との間に第2部42が介在するので、第3部43の熱は第1部41に伝わりにくく、第1部41の温度はそれほど高くならない。従って触媒44,46及び低活性触媒46の劣化を低減できる。
【0035】
原料ガスの流れの方向における第1部41の厚さは第3部43の厚さと同じだが、第1部41の触媒44の触媒活性は、第3部43の触媒46の触媒活性より低いので、第1部41における反応熱が過大にならないようにできる。
【0036】
図6を参照して第4実施の形態における反応装置50を説明する。第1実施形態から第3実施形態では、第2部22,32,42に低活性触媒25,45又は不活性体35が配置される場合について説明した。これに対し第4実施形態では、第2部52に配管55が設けられる場合について説明する。第1実施形態において説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図6は第4実施の形態における反応装置50の断面図である。
【0037】
反応装置50は、原料ガスの流れの方向に沿って、順に第1部51、第2部52、第3部53を含む。第1部51及び第3部53はそれぞれ触媒54,57を含む。第2部52は、第1部51と第3部53とを接続する配管55と、配管55に配置された凝縮器56と、を含む。第1部51及び第3部53は、適度な圧力に設定されると共にヒーター(図示せず)によって加熱される。凝縮器56の周辺にヒーターは配置されていない。
【0038】
水素と二酸化炭素とが混ざった原料ガスを第1部51に供給すると、原料ガスは順に第1部51、第2部52、第3部53を通過し、メタンと水を生成する化学反応が進行する。第2部52は、触媒が配置されておらず、活性化エネルギーを下げる度合いが第1部51よりも小さいため、反応速度が第1部51よりも小さくなり温度が低下する。第3部53は、触媒57により、活性化エネルギーを下げる度合いが第2部52よりも大きいため、反応速度が第2部52よりも大きくなり反応熱により温度が上昇する。しかし、第3部53にはメタンが存在するため、第3部53の反応熱はそれほど大きくならない。また、第3部53と第1部51との間に第2部52が介在するので、第3部53の熱は第1部51に伝わりにくく、第1部51の温度はそれほど高くならない。従って触媒54,57の劣化を低減できる。
【0039】
特に配管55に凝縮器56が配置されており、凝縮器56の周辺にヒーターは配置されていないので、第1実施形態から第3実施形態の第2部22,32,42に比べ、第2部52を冷やすことができる。
【0040】
第1部51の触媒54の触媒活性は、第3部53の触媒57の触媒活性と同じ、又は、第3部53の触媒57の触媒活性より低い。原料ガスの流れの方向における第1部51の厚さは、原料ガスの流れの方向における第3部53の厚さよりも小さい。従って第1部51の触媒54の触媒活性が第3部53の触媒57の触媒活性と同じであっても、第1部51の厚さが第3部53の厚さよりも大きい場合に比べ、反応熱による第1部51の温度を低減できる。よって触媒54の劣化を低減できる。
【0041】
第2部52の配管55に配置された凝縮器56によって、第1部51における反応の生成物は氷温に冷却され、水が分離される。第2部52を通って第3部53に供給される水蒸気を低減できるので、第3部53における反応速度を大きくできる。
【0042】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0043】
実施形態では、第1部21,31,41、第2部22,32,42及び第3部23,33,43の内径が同一の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1部21,31,41、第2部22,32,42及び第3部23,33,43の内径を異ならせることは当然可能である。
【0044】
第4実施形態では、第2部52に設けられた凝縮器56の周辺にヒーターが配置されていない場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凝縮器56の冷却能力が大きい場合には、ヒーターによる第2部52の温度上昇を低減できるので、凝縮器56の周辺にヒーターを配置して良い。
【0045】
第4実施形態では、第2部52が凝縮器56を含む場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凝縮器56を省くことは当然可能である。第1部51と第3部53とを配管55で接続することにより、第1部51や第3部53における反応速度に比べて第2部52における反応速度を小さくできるからである。
【0046】
第4実施形態では、第2部52に設けられた配管55に凝縮器56が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凝縮器56に代えて、触媒54,57よりも触媒活性が低い低活性触媒や触媒活性のない不活性体を配管55に配置することは当然可能である。
【符号の説明】
【0047】
10,30,40,50 反応装置
20 反応容器
21,31,41,51 第1部
22,32,42,52 第2部
23,33,43,53 第3部
24,26,34,36,44,46,54,57 触媒
25,45 低活性触媒
35 不活性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6