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特開2023-169572III族窒化物結晶の製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169572
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】III族窒化物結晶の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/38 20060101AFI20231122BHJP
   C30B 25/12 20060101ALI20231122BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20231122BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C30B29/38 D
C30B25/12
C23C16/34
H01L21/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080764
(22)【出願日】2022-05-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、環境省、令和2年度未来のあるべき社会・ライフスタイルを創造する技術イノベーション事業(高品質GaN基板を用いた超高効率GaNパワー・光デバイスの技術開発とその実証)委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】布袋田 暢行
(72)【発明者】
【氏名】滝野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】松野 俊一
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077BE15
4G077DB30
4G077EG03
4G077EG23
4G077HA02
4G077HA12
4G077TA04
4G077TF02
4G077TH11
4K030AA01
4K030AA13
4K030BA08
4K030BA38
4K030BB02
4K030CA04
4K030EA04
4K030EA06
4K030GA02
4K030JA06
4K030JA09
4K030JA10
5F045AA03
5F045AB14
5F045AB17
5F045AC00
5F045AC12
5F045AD14
5F045AD15
5F045AD16
5F045AD17
5F045AD18
5F045AF02
5F045AF03
5F045AF04
5F045AF07
5F045AF10
5F045BB20
5F045DP03
5F045DP28
5F045DQ05
5F045DQ08
5F045EE14
5F045EF02
5F045EF08
5F045EK06
5F045EM02
5F045EM09
(57)【要約】
【課題】構成部材の腐食を抑制し、製造の歩留まりを向上させることができるIII族窒化物結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】反応容器の基板保持部材に種基板を配置すると共に、基板保持部材の下部空間を取り囲む筒状部材を配置する準備工程と、III族元素含有ガスと、窒素元素含有ガスと、を反応容器に供給して、種基板にIII族窒化物結晶を成長させる成長工程と、を含み、成長工程において、基板保持部材と筒状部材との間から非反応性ガスを噴出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器の基板保持部材に種基板を配置すると共に、前記基板保持部材の下部空間を取り囲む筒状部材を配置する準備工程と、
III族元素含有ガスと、窒素元素含有ガスと、を前記反応容器に供給して、前記種基板にIII族窒化物結晶を成長させる成長工程と、
を含み、
前記成長工程において、前記基板保持部材と前記筒状部材との間から非反応性ガスを噴出する、III族窒化物結晶の製造方法。
【請求項2】
前記基板保持部材は、前記種基板を載置する平坦部と、前記平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、
前記折返し部は、前記筒状部材よりも大きく、前記筒状部材の半径方向に重なりを有し、
前記筒状部材の外部に向けて、前記折返し部と前記筒状部材との間から前記非反応性ガスを噴出する、請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項3】
反応容器の基板保持部材に種基板を配置すると共に、前記基板保持部材の下部空間を取り囲む筒状部材を配置する準備工程と、
III族元素含有ガスと、窒素元素含有ガスと、を前記反応容器に供給して、前記種基板にIII族窒化物結晶成長させる成長工程と、
を含み、
前記基板保持部材は、前記種基板を載置する平坦部と、前記平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、
前記折返し部は、前記筒状部材よりも大きく、前記筒状部材の半径方向に重なりを有する、III族窒化物結晶の製造方法。
【請求項4】
前記折返し部は、鉛直下方向に対して-90度から+90度の角度で延在している、請求項2又は3に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項5】
反応容器を備えるIII族窒化物結晶の製造装置であって、
前記反応容器は、前記III族窒化物結晶を成長させる種基板を載置する基板保持部材と、
前記基板保持部材より下部空間を取り囲む筒状部材と、
を備え、
前記基板保持部材と前記筒状部材との間から非反応性ガスを噴出する、III族窒化物結晶の製造装置。
【請求項6】
前記基板保持部材は、前記種基板を載置する平坦部と、前記平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、
前記折返し部は、前記筒状部材よりも大きく、筒状部材の半径方向に重なりを有し、
前記筒状部材の外部に向けて、前記折返し部と前記筒状部材との間から前記非反応性ガスを噴出する、請求項5に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
【請求項7】
反応容器を備えるIII族窒化物結晶の製造装置であって、
前記反応容器は、前記III族窒化物結晶を成長させる種基板を載置する基板保持部材と、
前記基板保持部材より下部空間を取り囲む筒状部材と、
を備え、
前記基板保持部材は、前記種基板を載置する平坦部と、前記平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、
前記折返し部は、前記筒状部材よりも大きく、筒状部材の半径方向に重なりを有する、III族窒化物結晶の製造装置。
【請求項8】
前記折返し部は、鉛直下方向に対して-90度から+90度の角度で延在している、請求項6又は7に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
【請求項9】
III族元素酸化物ガスを生成する原料反応部と、
前記原料反応部から供給される前記III族元素酸化物ガスと窒素元素含有ガスを反応させ、前記種基板の上にIII族窒化物結晶を成長する結晶成長部と、
前記原料反応部から前記結晶成長部へ前記III族元素酸化物ガスを供給する原料ガスノズルと、
前記原料ガスノズルの周囲に配置され、前記結晶成長部へ前記窒素元素含有ガスを供給する窒素源ガスノズルと、
を備える、請求項6に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
【請求項10】
前記原料ガスノズルは、噴射口の噴射方向が前記種基板の表面に対して対向するように配置されている、請求項9に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
【請求項11】
前記窒素源ガスノズルは、噴射口の噴射方向が前記種基板の表面に対して傾斜するように配置されている、請求項9に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
【請求項12】
前記基板保持部材を回転させる回転機構を備えた、請求項5又は7に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
【請求項13】
前記窒素源ガスノズルは、噴射口の前記種基板の表面における噴射方向が、前記種基板の回転の半径方向に対して偏向するように配置されている、請求項9に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
【請求項14】
前記非反応性ガスの流速は、前記折返し部の外周を通過する前記III族元素酸化物ガスと前記窒素元素含有ガスを含む全てのガス流速、の0.5倍以上であることを特徴とする、請求項9に記載のIII族窒化物結晶の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、III族窒化物結晶の製造方法および製造装置に関する。特に、反応容器内に配置された被処理基板に向かってガスを供給する気相成長法によるIII族窒化物結晶の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN、AlGaN、InGaN、GaなどのIII族窒化物半導体は、例えば、発光ダイオードや半導体レーザーなどの光デバイスやヘテロ接合高速電子デバイス等の分野に利用されている。III族窒化物半導体であるGaNの製造方法の1つに、III族元素金属(例えば、Ga金属)と塩化物ガス(例えば、HClガス)を反応させて、III族元素金属塩化物ガス(GaClガス)を生成し、前記III族元素金属塩化物と窒素元素含有ガス(例えば、NHガス)からGaNを成長させる、Hydride Vapor Phase Epitaxy(HVPE法)が実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、前記HVPE法では、結晶成長において副生成物であるNHCl(塩化アンモニウム)が多量に発生し、製造装置の排気配管を詰まらせるため、結晶成長を阻害するという問題があった。この問題を解決する方法として、前記III族元素金属(例えば、Ga金属)と酸化剤(例えば、HOガス)とを反応させて前記III族元素金属酸化物ガス(GaOガス)を生成し、前記III族元素金属酸化物ガスと窒素元素含有ガス(例えば、NHガス)からGaNを成長させる、Oxygen Vapor Phase Epitaxy(OVPE法)が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
前記HVPE法や前記OVPE法の特徴としては、有機金属気相成長法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)など他の結晶成長法で典型的な1μm/h程度の成長速度と比較して、10μm/h以上あるいは100μm/h以上の非常に大きい成長速度を得られることが挙げられる。このため、HVPE法やOVPE法は、GaN自立基板の製造に用いられている。
【0005】
図5は、従来のIII族窒化物結晶の製造装置の1つであるOVPE装置の断面構造を示す概略断面図である。このOVPE装置は、III族窒化物結晶の結晶成長を行う反応容器101を備え、反応容器101内には、GaOなどのIII族元素ガスを発生させる原料反応室102が設けられている。第1のヒータ104により加熱される原料反応室102内には、Ga、In、Alなどを含む金属原料106が原料容器103内に収容されている。また、原料反応室102には、HOガスなどの反応性ガスを供給する反応性ガス供給管107が接続されている。
【0006】
反応性ガス供給管107から原料容器103内に供給された反応性ガスと金属原料106との反応により、原料反応室102内にIII族元素含有ガスが生成される。生成されたIII族元素含有ガスは、原料反応室102に接続された原料ガスノズル108から反応容器101内に導入され、基板支持部112上に載置された種基板111へと輸送される。種基板111は、第2ヒータ105により加熱される。また、反応容器101には、NHガスなどの窒素元素含有ガスを供給する窒素元素含有ガス供給管109aおよび109bが接続されている。種基板111へと輸送されたIII族元素含有ガスと窒素元素含有ガスとが反応して、種基板111にIII族窒化物結晶110が成長する。基板支持部112は、図示していない回転駆動手段と接続されており、基板支持部112の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。窒素元素含有ガスの1つであるNHガスは腐食性ガスであり、NHガスが基板支持部112の下部空間に混入してしまうことを抑制するために、基板支持部112の下部空間を覆うように筒状部材10が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭52-23600号公報
【特許文献2】WO2015/053341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基板支持部112と筒状部材との間には回転するための隙間が存在し、隙間からNHガスが侵入することで、回転駆動手段等を構成している機構部品が腐食してしまうことが課題となっている。
【0009】
本開示の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、構成部材の腐食を抑制し、製造の歩留まりを向上させることができるIII族窒化物結晶の製造方法と製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本開示に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、反応容器
の基板保持部材に種基板を配置すると共に、基板保持部材の下部空間を取り囲む筒状部材を配置する準備工程と、III族元素含有ガスと、窒素元素含有ガスと、を反応容器に供給して、種基板にIII族窒化物結晶を成長させる成長工程と、を含み、成長工程において、基板保持部材と筒状部材との間から非反応性ガスを噴出する。
【0011】
本開示に係る別例のIII族窒化物結晶の製造方法は、反応容器の基板保持部材に種基板を配置すると共に、基板保持部材の下部空間を取り囲む筒状部材を配置する準備工程と、III族元素含有ガスと、窒素元素含有ガスと、を反応容器に供給して、種基板にIII族窒化物結晶成長させる成長工程と、を含み、基板保持部材は、種基板を載置する平坦部と、平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、折返し部は、筒状部材よりも大きく、筒状部材の半径方向に重なりを有する。
【0012】
本開示に係るIII族窒化物結晶の製造装置は、反応容器を備えるIII族窒化物結晶の製造装置であって、反応容器は、III族窒化物結晶を成長させる種基板を載置する基板保持部材と、基板保持部材より下部空間を取り囲む筒状部材と、を備え、基板保持部材と前記筒状部材との間から非反応性ガスを噴出する。
【0013】
本開示に係る別例のIII族窒化物結晶の製造装置は、反応容器を備えるIII族窒化物結晶の製造装置であって、反応容器は、III族窒化物結晶を成長させる種基板を載置する基板保持部材と、基板保持部材より下部空間を取り囲む筒状部材と、を備え、基板保持部材は、種基板を載置する平坦部と、平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、折返し部は、筒状部材よりも大きく、筒状部材の半径方向に重なりを有する。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、基板保持部材の下部空間に配置した構成部材の腐食を抑制し、種基板上に成長するIII族窒化物結晶へのパーティクルの混入を抑制する。これによって、III族窒化物結晶の製造の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造装置の断面構成の一例を示す概略断面図である。
図2図1のIII族窒化物結晶の製造装置における原料ガスノズルと窒素源ガスノズルとの配置の一例を示す正面断面図(a)および上面透過図(b)である。
図3】本開示の比較例2に係るIII族窒化物結晶の製造装置の構成を示す概略断面図である。
図4】基板保持部材の下部空間から噴射する非反応性ガスと結晶成長部に流入する原料ガスとキャリアガスの流速比と基板保持部材の下部空間に設置したカーボン部品の重量減少との関係を表すグラフである。
図5】従来のIII族窒化物結晶の製造装置の1つであるOVPE装置の典型的な断面構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の第1の様態に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、反応容器の基板保持部材に種基板を配置すると共に、基板保持部材の下部空間を取り囲む筒状部材を配置する準備工程と、III族元素含有ガスと、窒素元素含有ガスと、を反応容器に供給して、種基板にIII族窒化物結晶を成長させる成長工程と、を含み、成長工程において、基板保持部材と筒状部材の間から非反応性ガスを噴出する。
【0017】
本開示の第2の様態に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、上記第1の態様において、基板保持部材は、種基板を載置する平坦部と、平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、折返し部は、筒状部材よりも大きく、筒状部材の半径方向に重なりを有し、筒状部材の外部に向けて、折返し部と筒状部材との間から非反応性ガスを噴出してもよい。
【0018】
本開示の第3の様態に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、反応容器の基板保持部材に種基板を配置すると共に、基板保持部材の下部空間を取り囲む筒状部材を配置する準備工程と、III族元素含有ガスと、窒素元素含有ガスと、を反応容器に供給して、前記種基板にIII族窒化物結晶成長させる成長工程と、を含み、基板保持部材は、種基板を載置する平坦部と、平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、折返し部は、筒状部材よりも大きく、筒状部材の半径方向に重なりを有する。
【0019】
本開示の第4の様態に係るIII族窒化物結晶の製造方法によれば、上記第2又は第3の態様において、折返し部は、鉛直下方向に対して-90度から+90度の角度で延在していてもよい。
【0020】
本開示の第5の様態に係るIII族窒化物結晶の製造装置によれば、反応容器を備えるIII族窒化物結晶の製造装置であって、反応容器は、III族窒化物結晶を成長させる種基板を載置する基板保持部材と、基板保持部材より下部空間を取り囲む筒状部材とを備え、基板保持部材と筒状部材との間から非反応性ガスを噴出する。
【0021】
本開示の第6の様態に係るIII族窒化物結晶の製造装置によれば、上記第5の態様において、基板保持部材は、種基板を載置する平坦部と、平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、折返し部は、筒状部材よりも大きく、筒状部材の半径方向に重なりを有し、筒状部材の外部に向けて、折返し部と筒状部材との間から非反応性ガスを噴出してもよい。
【0022】
本開示の第7の様態に係るIII族窒化物結晶の製造装置によれば、反応容器を備えるIII族窒化物結晶の製造装置であって、反応容器は、III族窒化物結晶を成長させる種基板を載置する基板保持部材と、基板保持部材より下部空間を取り囲む筒状部材と、を備え、基板保持部材は、種基板を載置する平坦部と、平坦部から鉛直下方向に延びる折返し部と、を有し、折返し部は、筒状部材よりも大きく、筒状部材の半径方向に重なりを有する。
【0023】
本開示の第8の様態に係るIII族窒化物結晶の製造装置によれば、上記第6又は第7の態様において、折返し部は、鉛直下方向に対して-90度から+90度の角度で延在していてもよい。
【0024】
本開示の第9の様態に係るIII族窒化物結晶の製造装置によれば、上記第6の態様において、III族元素酸化物ガスを生成する原料反応部と、原料反応部から供給されるIII族元素酸化物ガスと窒素元素含有ガスを反応させ、種基板の上にIII族窒化物結晶を成長する結晶成長部と、原料反応部から結晶成長部へIII族元素酸化物ガスを供給する原料ガスノズルと、原料ガスノズルの周囲に配置され、結晶成長部へ窒素元素含有ガスを供給する窒素源ガスノズルと、を備えてもよい。
【0025】
本開示の第10の様態によれば、上記第9の態様において、原料ガスノズルは、噴射口の噴射方向が種基板の表面に対して対向するように配置されていてもよい。
【0026】
本開示の第11の様態によれば、上記第9の態様において、窒素源ガスノズルは、噴射口の噴射方向が種基板の表面に対して傾斜するように配置されていてもよい。
【0027】
本開示の第12の様態によれば、上記第5又は第7の態様において、基板保持部材を回転させる回転機構を備えてもよい。
【0028】
本開示の第13の様態によれば、上記第9の態様において、窒素源ガスノズルは、噴射口の種基板の表面における噴射方向が、種基板の回転の半径方向に対して偏向するように配置されていてもよい。
【0029】
本開示の第14の様態によれば、上記第9の態様において、非反応性ガスの流速は、折返し部の外周を通過するガス流速の0.5倍以上であってもよい。
【0030】
以下、本開示の実施の形態に係るIII族窒化物結晶の製造装置及び製造方法について、図面を参照しながら説明する。尚、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0031】
(実施の形態1)
<III族窒化物結晶の製造装置>
以下、本開示の実施の形態に係るIII族窒化物結晶の製造装置について図1を参照して説明する。
図1は、本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造装置1の構成の一例を示す概略断面図である。なお、図1において、各構成部材の大きさ、比率等は実際とは異なっている場合がある。また、便宜上、鉛直上方をZ方向、これに垂直な水平面内をXY平面として、紙面右側に向かう方向をX方向、紙面手前から奥に向かう方向をY方向として示している。
【0032】
図1に示す本実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造装置1は、気相成長装置であり、III族窒化物結晶の結晶成長を行う反応容器20を備えている。反応容器20は、例えば、円筒形状であってもよく、III族元素含有ガスを発生する原料反応部5と、結晶成長部6と、窒素元素含有ガスを噴射する窒素源ガスノズル9と、を有する。原料反応部5内に設けられた原料反応室2において、III族元素含有ガスが生成される。生成されたIII族元素含有ガスは、原料ガスノズル8によって導出され、結晶成長部6に向けて噴射される。結晶成長部6において、原料ガスノズル8により噴出されたIII族元素含有ガスと、窒素源ガスノズル9により導入された窒素源含有ガスとは、混合領域S1で混合された後、基板保持部材12に載置された種基板11上の結晶成長領域S2において反応することで、種基板11上にIII族窒化物結晶が成長する。
【0033】
原料反応部5と結晶成長部6と窒素源ガスノズル9内で一定の温度を維持するために、反応容器20の外周部には、加熱部16が設置されている。また、未反応のIII族元素含有ガスと窒素源含有ガスとの原料ガス、およびHやNなどのキャリアガスは、種基板11の下流側に設けられた排気口17から排出される。
【0034】
実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造装置1によれば、基板保持部材12の下部空間に配置した構成部材の腐食を抑制する。また、種基板11上に成長するIII族窒化物結晶へのパーティクルの混入を抑制することで、III族窒化物結晶の製造の歩留まりを向上させることができる。
【0035】
以下に、図1に示す実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造装置1の構成部材について詳細に説明する。
【0036】
<原料反応部>
原料反応部5は、原料反応室2と原料ガスノズル8とを備え、本実施の形態1において、円筒形状を有する。原料反応部5において、III族元素含有ガスが生成される。原料反応部5の材質としては、特に限定されないが、例えば、石英、SiCコートカーボン、PGコートカーボン、PBNコートカーボン、SiC、などのセラミックスや、Mo、Ni、Fe、Co、Ti、Cr、Zr、Ta、W、及びPt、またはこれらを主成分とする合金を用いることができる。
【0037】
(原料反応室)
原料反応室2内には、III族元素含有ガスである出発Ga源4を収容している原料容器3が配置されている。また、原料反応室2は、反応性ガス供給管7に接続され、反応性ガス供給管7により、出発Ga源4と反応する反応性ガスが導入される。原料反応室2の内部は、加熱部16の第1のヒータ14により、所望の温度に維持されている。好ましくは、第1のヒータ14の加熱によって、900℃以上1300℃以下に保っている原料反応室2において出発Ga源4と反応性ガスとが反応して、III族元素含有ガスが生成される。原料反応室2および原料容器3の材質としては、石英、カーボン、SiCコートカーボン、PGコートカーボン、PBNコートカーボン、SiC、などのセラミックスや、Mo、Ni、Fe、Co、Ti、Cr、Zr、Ta、W、及びPt、またはこれらを主成分とする合金を用いることができる。
【0038】
ここで、III族元素含有ガスを生成する方法としては、III族元素含有源を酸化する方法と、III族元素含有源を還元する方法がある。
【0039】
III族元素含有源を酸化する方法として、出発Ga源4として金属Gaを用い、反応性ガスとして酸化性ガスであるHOガスを用いた場合の反応系を説明する。この場合は、下記化学反応式(1)に示すように、加熱している状態で、導入されたHOガスは、金属Gaと反応して、III族元素含有ガスであるGaOガスが生成される。
2Ga+HO→GaO+H (1)
なお、III族元素含有としては、Gaの他に、AlやInなども利用することができる。いずれの場合でも、III族酸化物ガスが生成される。
【0040】
次に、III族元素含有源を還元する方法として、出発Ga源としてGaを用い、反応性ガスとして還元性ガスであるHガスを用いた場合の反応系を説明する。下記化学反応式(2)に示すように、加熱している状態で、導入されたHガスは、Gaと反応して、III族元素含有ガスであるGaOガスが生成される。
Ga+H→GaO+2HO (2)
なお、III族元素含有源としては、AlやInなども利用することができる。いずれの場合でも、III族酸化物ガスが生成される。
【0041】
(原料ガスノズル)
原料反応室2で生成されたIII族元素含有ガス、例えば、GaOガスは、原料反応部5の下流側に設けられた原料ガスノズル8により導出されて、結晶成長部6に向けて噴射される。III族元素含有ガスのキャリアガスとしては、特に限定されないが、ArやNなどの不活性ガス、またはHガスを用いることができる。III族窒化物結晶からなる堆積物がIII族窒化物結晶の製造装置1の構成部材へ付着することを抑制するために、原料ガスノズル8は、その内周又は外周にセパレートガス排出口が形成されていることが好ましい。セパレートガスとして、特に限定されないが、ArやNなどの不活性ガス、またはHガスを用いることができる。原料ガスノズル8の内径は、特に限定されないが、好ましくは、0mmを超え、100mm以下の範囲、より好ましくは、20mm以上、60mm以下である。原料ガスノズル8の肉厚は、特に限定されないが、好ましくは、0.5mm以上、10mm以下、より好ましくは、1mm以上、3mm以下である。原料ガスノズル8の材質としては、石英、カーボン、SiCコートカーボン、PGコートカーボン、PBNコートカーボン、SiC、などのセラミックスや、Mo、Ni、Fe、Co、Ti、Cr、Zr、Ta、W、及びPt、またはこれらを主成分とする合金を用いることができる。
【0042】
<窒素源ガスノズル>
窒素源ガスノズル9は、III族元素含有ガスと反応してIII族窒化物結晶を生成させるための窒素元素含有ガスを種基板11に向けて噴射する。図1に示すIII族窒化物結晶の製造装置1において、窒素源ガスノズル9は、少なくとも2本以上から構成されており、2本以上の窒素源ガスノズル9は、基板保持部材12の中心に対して、特に限定されないが、例えば、放射状に配置することができる。原料ガスノズル8から噴射されるIII族元素含有ガスと、窒素源ガスノズル9から噴射される窒素元素含有ガスとの混合性を向上させるために、窒素源ガスノズル9の噴射方向は、基板保持部材12の平坦部12aに対する正面視および上面視において、種基板11の上流側の手前で原料ガスノズル8から噴射されるIII族元素含有ガスと混合されることが好ましい。
【0043】
図2は、図1のIII族窒化物結晶の製造装置1における原料ガスノズル8と窒素源ガスノズル9との配置の一例を示す正面断面図(a)および上面透過図(b)である。図2(a)に示すように、原料ガスノズル8は、噴射口の噴射方向が基板保持部材12の平坦部12aに対して対向しており、直線方向D(+Z方向)に沿って配置されている。窒素源ガスノズル9は、本体部21と、噴射口22とを有する先端部23とを備えている。先端部23は、上記直線方向D(+Z方向)に対して傾斜角度θaで傾斜している。すなわち、図2(a)の正面視において、窒素源ガスノズル9の噴射方向Eに沿った仮想線24は、基板保持部材12の上方にある位置Fを中心とした円周上において交差する。傾斜角度θaは、基板保持部材12の平坦部12aに対する鉛直面において、原料ガスノズル8の噴射方向(-Z方向)と窒素源ガスノズル9の噴射方向とがなす角度である。
【0044】
次に、図2(b)に示すように、III族窒化物結晶の製造装置1は、少なくとも2本以上の窒素源ガスノズル9を備える。本実施の形態1において、少なくとも2本以上の窒素源ガスノズル9は、図2(b)の上面視に示すように、基板保持部材12の中心に対して放射状に配置されている。窒素源ガスノズル9の先端部23は、基板保持部材12の平坦部12aにおいて、半径方向26に対して偏向角度θbで傾斜している方向27(噴射方向E)に沿っている。すなわち、偏向角度θbは、図2(b)の上面視において、窒素源ガスノズル9の先端部23の方向27(噴射方向EのX-Y平面の成分ベクトル)と種基板11の半径方向26とのなす角度である。
【0045】
本実施の形態1では、それぞれの窒素源ガスノズル9は、図2(b)の上面視で基板保持部材12の回転方向Aと順方向に偏向角度θbを自己回転すると基板保持部材12の平坦部12aの半径方向26となるように配置されている。これによって、複数の窒素源ガスノズル9により噴出された窒素元素含有ガスは、旋回流を形成し、III族元素含有ガスとの混合性を高めることができる。なお、複数の窒素源ガスノズル9は、噴射方向がこれに限定されず、図2(b)の逆方向に偏向して配置されてもよい。
【0046】
III族窒化物結晶として、例えばGaN結晶を成長させる場合には、NHガス、NOガス、NOガス、Nガス、Nガス、などの窒素元素含有ガスを使用することができる。キャリアガスとして、特に限定されないが、ArやNなどの不活性ガス、またはHガスを用いることができる。また、原料ガスノズル8と同様に、III族窒化物結晶からなる堆積物がIII族窒化物結晶の製造装置1の構成部材への付着を抑制するために、窒素源ガスノズル9は、その内周又は外周にセパレートガス排出口が形成されることが好ましい。セパレートガスとしては、特に限定されないが、ArやNなどの不活性ガス、またはHガスを用いることができる。
【0047】
窒素源ガスノズル9の材質としては、窒素元素含有ガスに対する耐腐食性を有していることが必要であり、例えば、石英、SiCコートカーボン、PGコートカーボン、PBNコートカーボン、SiC、などのセラミックスや、Mo、Ni、Fe、Co、Ti、Cr、Zr、Ta、W、及びPt、またはこれらを主成分とする合金を用いることができる。
【0048】
窒素源ガスノズル9の内径は、特に限定されないが、好ましくは0mmを超え、30mm以下の間、より好ましくは、3mm以上15mm以下である。窒素源ガスノズル9の傾斜角度θaは、特に限定されないが、好ましくは、0度を超え90度未満、より好ましくは、5度から60度の範囲である。窒素源ガスノズル9の偏向角度θbは、特に限定されないが、好ましくは、0度を超え90度未満、より好ましくは、5度から45度の範囲である。
【0049】
なお、結晶成長領域S2におけるIII族窒化物結晶の生成を促進するため、窒素源ガスノズル9を加熱し、窒素源ガスノズル9内の窒素元素含有ガスを所定の割合で分解した状態にすることが好ましい。本実施の形態1において、窒素源ガスノズル9は、その外周部に設置された加熱部16の第1のヒータ14と第2のヒータ15とによって加熱されている。
【0050】
<結晶成長部>
結晶成長部6は、基板保持部材12と筒状部材10とを備え、本実施の形態1において、それぞれ筒状、例えば、円筒形状を有する。結晶成長部6において、III族元素含有ガスと窒素元素含有ガスとが反応し、種基板11上にIII族窒化物結晶が成長する。混合された原料ガスの反応を促進するため、混合領域S1および結晶成長領域S2の外周部には、加熱部16の第2のヒータ15が設けられている。第2のヒータ15の温度は、III族窒化物結晶を成長させるために、1000℃以上1500℃以下に保つことが好ましい。
【0051】
<基板保持部材>
基板保持部材12は、例えば、基板サセプタであってもよい。種基板11は、基板保持部材12の平坦部12aに保持される。基板保持部材12の形状は、特に限定されないが、種基板11を載置する平坦部12aと、平坦部12aから下方向に延びる折返し部12bとから構成されていることが好ましい。折返し部12bを筒状部材10の半径方向に覆うように重ねることにより、基板保持部材12の下部空間への腐食性ガスの混入を抑制できることが期待される。折返し部12bは、図1に示すように、筒状部材10の鉛直線B(-Z方向)に対して傾斜角度θcで傾斜していてもよい。傾斜角度θcは、図1に示す概略断面図において、鉛直線B(-Z方向)に対して時計回りを正、反時計回りを負とした場合、折返し部12bの傾斜角度θcは、特に限定されないが、-90度から+90度の角度であり、好ましくは、―60度から+60度未満、より好ましくは、―10度から+10度の範囲である。折返し部12bの形状は、特に限定されないが、筒状部材10を囲むように、筒状部材10の半径方向に重なりを有していることが好ましい。筒状部材10の形状は、特に限定されないが、基板保持部材12の下部空間を取り囲む構造であることが好ましく、例えば円筒形状である。
【0052】
<非反応性ガスの噴出>
基板保持部材12の下部空間への窒素元素含有ガスの侵入を抑制するために、特に限定されないが、基板保持部材の折返し部12bと筒状部材10との間から、結晶成長部6内に向けて非反応性ガスを噴出させることが好ましい。折返し部12bと筒状部材10との間から結晶成長部6内に向けて噴出する非反応性ガスの流速Vと、結晶成長部6に流入し、折返し部12bの外周を通過する原料ガスやキャリアガスなどのガス流速Vとの比率V/Vは、特に限定されないが、好ましくは、0.5倍以上、より好ましくは、1.5倍以上である。
【0053】
非反応性ガスの種類としては、特に限定されないが、ArやNなどの不活性ガス、またはHガスを用いることができる。
【0054】
<基板保持部材の下部空間への窒素元素含有ガスの侵入について>
例えば、窒素元素含有ガスのNHガスが基板の下部空間に侵入してしまうと、カーボン部品やステンレス部品などの構成部品とNHガスとが接触し、構成部品が腐食してしまうこととなる。腐食した構成部品から発生したパーティクルは、基板保持部材12の平坦部12a上に載置された種基板11上のIII族窒化物結晶中に混入してしまうと、デバイス動作を阻害する転位が高密度で集中し、ピットと呼ばれる領域や貫通穴など、マイクロメートルからミリメートルオーダーまでの欠陥を生じさせてしまう可能性がある。これらの欠陥は、半導体デバイスの歩留まりの低下を引き起こしてしまう。
上記のように、基板保持部材の折返し部12bと筒状部材10との間から、結晶成長部6内に向けて非反応性ガスを噴出させることによって、上記課題である基板保持部材12の下部空間への腐食性ガスの混入を抑制できる。
【0055】
種基板11の材質としては、例えば、GaN、GaAs、Si、SiC、ZnO、サファイア、Ga、ScAlMgなどを用いることができる。
基板保持部材12および筒状部材10の材質としては、例えば、SiCコートカーボン、PGコートカーボン、PBNコートカーボン、SiC、などのセラミックスや、Mo、Ni、Fe、Co、Ti、Cr、Zr、Ta、W、及びPtまたはこれらを主成分とする合金を用いることができる。
【0056】
また、基板保持部材12は、回転シャフト13に接続されており、回転シャフト13により、III族窒化物結晶成長中に、基板保持部材12は、種基板11を回転させることができる。回転シャフト13は、例えば、3000rpmまでの回転を制御できる機構であることが好ましい。
【0057】
以上により、基板保持部材12の下部空間に配置した構成部材の腐食を抑制し、種基板11上に成長するIII族窒化物結晶へのパーティクルの混入を抑制することができる。これにより、III族窒化物結晶の製造の歩留まりを向上させることができる。
【0058】
(実施例1)
実施例1では、図1に示すIII族窒化物結晶の製造装置1を用いて、本開示の実施の形態に係るIII族窒化物結晶の1つであるGaN結晶を成長させた。出発Ga源として金属Gaを原料容器3内に配置し、反応性ガス供給管7から導入した反応性ガスであるHOガスと反応させ、生成したGaOガスをIII族元素含有ガスとして用いた。生成したGaOガスは、原料ガスノズル8より結晶成長部6内の種基板11に向けて噴射した。窒素元素含有ガスとしては、NHガスを用い、窒素源ガスノズル9より結晶成長部6内の種基板11に向けて噴射した。原料ガスノズル8および窒素源ガスノズル9の外周部に設けたセパレートガス排出口から、NガスとHガスとを排出した。
【0059】
基板保持部材12は、平坦部12aから下方向に延びる折返し部12bが、筒状部材10を囲むように、また、筒状部材10の半径方向に重なるように、基板保持部材12と筒状部材10とを設置した。筒状部材10は、基板保持部材12の下部空間を取り囲むような円筒形状とした。基板保持部材の折返し部12bと筒状部材10との間から、結晶成長部6内に向けて、非反応性ガスであるNガスを噴射した。種基板11は、GaN単結晶基板を用いた。
【0060】
成長条件として、原料反応部5の温度を1100℃、結晶成長部6の温度を1200℃となるように、第1のヒータ14と第2のヒータ15に電力を供給した。GaOガスの分圧を0.00108atm、HOガスの分圧を0.00045atm、NHガスの分圧を0.15784atm,Hガスの分圧を0.71850atm、Nガスの分圧を0.12249atmとし、1時間の結晶成長を実施した。
【0061】
また、筒状部材10に対する折返し部12bの傾斜角度θcは0度、折返し部12bと筒状部材10との間から結晶成長部6内に向けて噴出する非反応性ガスの流速Vと、結晶成長部6に流入し折返し部12bの外周を通過するガス流速V、の比率V/Vは、0.5から4.4の範囲とした。基板保持部材12の下部空間に配置した構成部材の腐食性は、基板保持部材12の下部空間に設置したカーボン部品の単位時間に対する重量減少で評価した。
【0062】
(実施例2)
図3は、本開示の実施例2に係るIII族窒化物結晶の製造装置1Aの構成を示す概略断面図である。本実施例2では、実施例1と対比すると、基板保持部材12は、折返し部12bが無い平坦部12aのみから構成されていること以外は、実施例1と同じ条件でGaN単結晶基板上にGaN結晶を成長させた。尚、本実施例2では、平坦部12aと筒状部材10との間から結晶成長部6内に向けて噴出する非反応性ガスの流速Vと、筒状部材10の外周を通過する結晶成長部6に流入するガス流速Vとした。
【0063】
(実施例3)
実施例3は、図1において、ガス流速の比率V/Vが0となるように、すなわち、折返し部12bと筒状部材10との間から結晶成長部6内に向けて噴出する非反応性ガスを流さなかったこと以外は、実施例1と同じ条件でGaN単結晶基板上にGaN結晶を成長させた。
【0064】
(比較例1)
比較例1は、図3において、ガス流速の比率V/Vが0となるように、すなわち、平坦部12aと筒状部材10との間から結晶成長部6内に向けて噴出する非反応性ガスを流さなかったこと以外は、実施例2と同じ条件でGaN単結晶基板上にGaN結晶を成長させた。
【0065】
実施例1、2、3、および比較例1の評価結果を図4に示す。非反応性ガスを流すことにより、図3に示す折返し部12bが無い構造では、基板保持部材12の下部空間に設置したカーボン部品の重量減少は、約1/12.5となり、図1に示す折返し部12bを有する構造では、約1/538となった。また、折返し部12bが無い構造では、V/Vが0.5から4.4の範囲において、カーボン部品の重量減少は、平均約1.8g/hにとどまり、V/Vを大きくしてもカーボン部品の重量減少を完全に抑制することはできなかった。一方、折返し部12bを有する構造では、V/Vが0.5から4.4の範囲において、カーボン部品の重量減少を抑制することが確認できた。
【0066】
基板保持部材12の下部空間から結晶成長部6内に向けて非反応性ガスを噴射し、基板保持部材12の折返し部12bを筒状部材10の半径方向に重なるようにすることにより、基板保持部材12の下部空間への腐食性ガスの混入を抑制できたものと推察される。さらに、折返し部12bと筒状部材10との間から結晶成長部6内に向けて噴出する非反応性ガスの流速Vと、結晶成長部6に流入し、折返し部12bの外周を通過するガス流速Vを順方向とする。これによって、基板保持部材12の下部空間に配置した構成部材から発生するパーティクルがGaN成長膜中に混入することを抑制することができる。すなわち、基板保持部材12の下部空間に配置した構成部材の腐食を抑制し、GaN成長膜中へのパーティクルの混入を抑制し、成長したGaN表面のピットや貫通穴を低減させることができる。
【0067】
本開示は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
本開示のIII族窒化物結晶の製造装置によれば、基板保持部材の下部空間に配置した構成部材の腐食を抑制し、種基板上に成長するIII族窒化物結晶へのパーティクルの混入を抑制することができる。これによって、III族窒化物結晶の製造の歩留まりを向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示に係るIII族窒化物結晶の製造装置によって得られるIII族窒化物結晶は、例えば、発光ダイオード、レーザーダイオードなどの光デバイス、整流器、バイポーラトランジスタなどの電子デバイス、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視―紫外光検出器などの半導体センサなどに用いることができる。但し、本開示は、上述の用途に限定されず、広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 III族窒化物結晶の製造装置
2 原料反応室
3 原料容器
4 出発Ga源
5 原料反応部
6 結晶成長部
7 反応性ガス供給管
8 原料ガスノズル
9 窒素源ガスノズル
10 筒状部材
11 種基板
12 基板保持部材
12a 平坦部
12b 折返し部
13 回転シャフト
14 第1のヒータ
15 第2のヒータ
16 加熱部
17 排気口
20 反応容器
S1 混合領域
S2 結晶成長領域
図1
図2
図3
図4
図5