(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169584
(43)【公開日】2023-11-30
(54)【発明の名称】傾斜地用作業機の操作システム
(51)【国際特許分類】
E02F 3/30 20060101AFI20231122BHJP
B66D 1/46 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
E02F3/30 E
B66D1/46 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080789
(22)【出願日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】594151715
【氏名又は名称】株式会社Sakatec
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】川口 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】竜沢 一也
(72)【発明者】
【氏名】望月 潤
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 淳一
(57)【要約】
【課題】少人数の作業者により傾斜地用作業機を安全に稼働させることが可能な傾斜地用作業機の操作システムを提供する。
【解決手段】自走式の傾斜地用作業機2と、傾斜地用作業機2を作業位置の上方側に助勢する助勢装置4と、傾斜地用作業機2及び助勢装置4を遠隔操作する操作装置5と、を備え、前記助勢装置4は、傾斜地用作業機2の作業位置の上方に設けられた複数の固定点61~63と、固定点61~63及び傾斜地用作業機2の間に張設された昇降用ワイヤ41に巻取力を与えるウィンチ7と、ウィンチ7による昇降用ワイヤ41の巻取力の大きさを示す巻取力データを検出して操作装置5に送信する巻取力データ送信手段と、を有し、操作装置5は、傾斜地用作業機2及びウィンチ7に制御信号を出力する無線機と、巻取力データ送信手段から送信された巻取力データを表示する表示手段と、を有する、傾斜地用作業機2の操作システム1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式の傾斜地用作業機と、前記傾斜地用作業機を作業位置の上方側に助勢する助勢装置と、前記傾斜地用作業機及び前記助勢装置を遠隔操作する操作装置と、を備えた傾斜地用作業機の操作システムであって、
前記助勢装置は、前記傾斜地用作業機の作業位置の上方に設けられた複数の固定点と、前記固定点及び前記傾斜地用作業機の間に張設された昇降用ワイヤに巻取力を与えて前記傾斜地用作業機の移動を助勢するウィンチと、前記ウィンチによる前記昇降用ワイヤの巻取力の大きさを示す巻取力データを検出して前記操作装置に送信する巻取力データ送信手段と、を有し、
前記操作装置は、前記傾斜地用作業機及び前記ウィンチに制御信号を出力する無線機と、前記巻取力データ送信手段から送信された巻取力データを表示する表示手段と、を有する、傾斜地用作業機の操作システム。
【請求項2】
前記巻取力データ送信手段は、前記ウィンチの駆動電力を検出する検出部と、前記検出部で検出した前記ウィンチの駆動電力データを前記操作装置に送信する送信機と、を有し、
前記表示手段は、前記巻取力データとして前記駆動電力データを表示する、請求項1に記載の傾斜地用作業機の操作システム。
【請求項3】
前記巻取力データ送信手段は、前記ウィンチの駆動電力を検出して表示する電力表示部と、前記電力表示部の表示画像を撮像するカメラと、前記カメラの撮像データを前記操作装置に送信する送信機と、を有し、
前記表示手段は、前記巻取力データとして前記カメラの撮像データを表示する、請求項1に記載の傾斜地用作業機の操作システム。
【請求項4】
前記昇降用ワイヤから前記固定点に及ぶ荷重の大きさを示す荷重データを測定して前記操作装置に送信する荷重データ送信手段を、さらに備え、
前記表示手段は、前記荷重データ送信手段により測定された荷重データを表示する荷重データ表示部を有する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の傾斜地用作業機の操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山の斜面等からなる傾斜地における各種の作業を好適に実行することができる傾斜地用作業機の操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山の斜面等の傾斜地で使用される法面の作業機(加工機)を遠隔操作して土木加工面上を移動させる際に、作業面よりも上方の位置に左右一対の固定点(アンカー)を設けるとともに、この固定点及び前記作業機の間に昇降用ワイヤを張設し、ブルドーザーやバックホウ等の作業機に設置されたウィンチ、あるいは前記固定点に設置されたウィンチを作動させて昇降用ワイヤを巻き取ったり、繰り出したりすることにより、作業機の移動を助勢するように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された作業機を用いて傾斜地の土木作業等を行う際には、通常、傾斜地に自生する樹木を利用して複数の固定点を設置し、固定点及び作業機の間に張設された昇降用ワイヤにより作業機を上方側に助勢して作業機の横転等を防止しながら各種の作業を行うことになる。この際に、前記ウィンチの設置個所と作業機を遠隔操作する操作者の立ち位置とが離れていると、ウィンチから昇降ワイヤに与えられる巻取力を操作者が正確に認識することができないので、昇降ワイヤに過大な負荷が作用した状態で土木作業等が行われる可能性がある。
【0005】
このため、作業機を遠隔操作する操作者とは別の監視者をウィンチの設置部に配置し、この監視者と前記操作者とがトランシーバ等を用いて連絡を取り合って安全を確認しつつ作業機を稼働させる必要があった。また、固定点となる樹木が十分な太さを有していない場合、昇降用ワイヤに過大な荷重が作用して樹木が折れたり、引き抜かれたりする可能性がある。これを防止するためには、昇降用ワイヤから各固定点に及ぶ荷重の状態を観察する複数の観察者を配置しなければならず、多人数の作業者を要するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、山の斜面等からなる傾斜地において少人数の作業者により傾斜地用作業機を安全に稼働させることが可能な傾斜地用作業機の操作システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を包含する。
【0008】
(1)自走式の傾斜地用作業機と、前記傾斜地用作業機を作業位置の上方側に助勢する助勢装置と、前記傾斜地用作業機及び前記助勢装置を遠隔操作する操作装置と、を備えた傾斜地用作業機の操作システムであって、前記助勢装置は、前記傾斜地用作業機の作業位置の上方に設けられた複数の固定点と、前記固定点及び前記傾斜地用作業機の間に張設された昇降用ワイヤに巻取力を与えて前記傾斜地用作業機の移動を助勢するウィンチと、前記ウィンチによる前記昇降用ワイヤの巻取力の大きさを示す巻取力データを検出して前記操作装置に送信する巻取力データ送信手段と、を有し、前記操作装置は、前記傾斜地用作業機及びウィンチに制御信号を出力する無線機と、前記巻取力データ送信手段から送信された巻取力データを表示する表示手段と、を有する、傾斜地用作業機の操作システム。
【0009】
(2)前記巻取力データ送信手段は、前記ウィンチの駆動電力を検出する検出部と、前記検出部で検出した前記ウィンチの駆動電力データを前記操作装置に送信する送信機と、を有し、前記表示手段は、前記巻取力データとして前記駆動電力データを表示する、(1)に記載の傾斜地用作業機の操作システム。
【0010】
(3)前記巻取力データ送信手段は、前記ウィンチの駆動電力を検出して表示する電力表示部と、前記電力表示部の表示画像を撮像するカメラと、前記カメラの撮像データを前記操作装置に送信する送信機と、を有し、前記表示手段は、前記巻取力データとして前記カメラの撮像データを表示する、(1)に記載の傾斜地用作業機の操作システム。
【0011】
(4)前記昇降用ワイヤから前記固定点に作用する荷重の大きさを示す荷重データを測定して前記操作装置に送信する荷重データ送信手段を、さらに備え、前記表示手段は、前記荷重データ送信手段により測定された荷重データを表示する荷重データ表示部を有する、(1)~(3)の何れかに記載の傾斜地用作業機の操作システム。
【発明の効果】
【0012】
(1)に記載の傾斜地用作業機の操作システムによれば、ウィンチの設置個所と傾斜地用作業機を遠隔操作する操作者の立ち位置とが離れている場合においても、傾斜地用作業機を遠隔操作する操作者とは別の監視者をウィンチの設置部に配置することなく、操作装置を持った操作者が表示手段の表示画像を見ることによりウィンチに過大な駆動電力が供給された状態にあるか否かを容易かつ正確に判別することができる。したがって、傾斜地用作業機が障害物に接触する等によりその移動が拘束された状態で、ウィンチが駆動されて昇降用ワイヤに過大な巻取力が与えられた状態にあること等が、表示手段の表示画像に応じて判別された場合には、傾斜地用作業機の態勢を立て直すようにウィンチ及び傾斜地用作業機を遠隔操作して、傾斜地用作業機を安全に稼働させることができる。
【0013】
(2)に記載の傾斜地用作業機の操作システムによれば、操作装置を持った操作者が表示手段の表示画像を見ながら昇降用ワイヤに過大な巻取力が作用した状態にあるか否かを容易かつ正確に判別し、必要に応じて傾斜地用作業機の態勢を立て直すようにウィンチ及び傾斜地用作業機を遠隔操作することができる。
【0014】
(3)に記載の傾斜地用作業機の操作システムによれば、市販の電流計からなる電力表示部と、撮像用のカメラ及び送信機を有する市販の監視カメラ等と、を用いることにより、ウィンチから昇降用ワイヤに与えられる巻取力の大きさを示す巻取力データを容易かつ正確に検出して操作装置に送信し、これを表示手段に表示させることができる。
【0015】
(4)に記載の傾斜地用作業機の操作システムによれば、昇降用ワイヤから各固定点に作用する荷重の状態を観察する複数の観察者を配置することなく、各固定点に過大な荷重が作用した状態にあるか否かを容易かつ正確に判別することができる。したがって、例えば各固定点となる樹木が十分な太さを有していない場合等においても、この樹木が折れたり、引き抜かれたりする可能性があるか否か等を、操作装置を持った操作者が荷重データ表示部を目視することにより、容易かつ正確に判別することが可能であり、少人数の作業者によって傾斜地用作業機を安全に稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る傾斜地用作業機の操作システムの実施形態を示す正面図である。
【
図2】傾斜地用作業機の稼働状態を示す説明図である。
【
図6】固定点に荷重データ送信手段を設けた例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る傾斜地用作業機の操作システム1は、遠隔操作可能な自走式の傾斜地用作業機2と、山の斜面等からなる傾斜地の作業面3の上方側に傾斜地用作業機2を助勢する助勢装置4と、傾斜地用作業機2及び助勢装置4を遠隔操作する無線式コントローラ等からなる操作装置5と、を備えている。
【0019】
傾斜地用作業機2は、例えば
図2に示すように、クローラ式の下部走行部21と、この下部走行部21上に旋回可能に設けられた上部旋回部22とを備えた油圧ショベル等からなっている。この傾斜地用作業機2は、操作者が把持する操作装置5(
図1参照)から送信された制御信号に応じて作動する走行駆動部及び各種の油圧機器を有し、操作者の遠隔操作により作業面3を自在に走行するとともに、各種の土木作業等を行うように構成されている。
【0020】
助勢装置4は、
図1に示すように、作業面3の外縁付近に設けられた複数の固定点6と、この固定点6及び傾斜地用作業機2の間に張設された昇降用ワイヤ41と、この昇降用ワイヤ41に巻取力を与えるウィンチ7と、を備えている。固定点6は、
図2等に示すように、作業面3の外縁に生育する樹木等からなり、昇降用ワイヤ41の先端部が固定された第一固定点61(
図6参照)と、この第一固定点61から間隔を置いて配設された第二固定点62及び第三固定点63(
図4参照)と、を有している。
【0021】
第二,第三固定点62,63からなる固定点6には、
図1に示すように、作業面3の下方部等に設置されたウィンチ7から繰り出された昇降用ワイヤ41が巻き掛けられる定滑車42,43が設けられている。そして、第一固定点61と第二固定点62との間に張設された昇降用ワイヤ41の途中部が、傾斜地用作業機2に設けられた動滑車23(
図2参照)に巻き掛けられている。なお、第二固定点62の下方側に設置された第三固定点63及び定滑車43は、昇降用ワイヤ41をウィンチ7側へ単に案内するために設けられたものであって、これを省略することも可能である。
【0022】
ウィンチ7は、
図3に示すように、昇降用ワイヤ41が巻装されたドラム71と、このドラム71を正方向と逆方向とに切り替え可能に回転駆動する駆動モータ72と、ウィンチ7による昇降用ワイヤ41の巻取力の大きさを示す巻取力データ、具体的には駆動モータ72に定電圧の電力を供給する図外のバッテリーもしくは発電機の電流値を表示する電流計からなる電力表示部73とが設けられている。また、ウィンチ7の設置部には、電力表示部73の表示画像を撮像するカメラ81と、このカメラ81の撮像データを操作装置5に送信する送信機82と、を有する巻取力データ送信手段8が設けられている。
【0023】
操作装置5には、
図5に示すように、傾斜地用作業機2に設けられた従来周知のカメラ及び送信機から送信された各種のデータに基づいて傾斜地用作業機2の作業姿勢等を表示するメインモニター51と、操作者により操作される操作レバー及び操作ボタン等を有する操作部52と、巻取力データ送信手段8から送信されたカメラ81の撮像データをウィンチ7の巻取力データとして表示する表示窓等からなる表示手段53と、傾斜地用作業機2及び操作装置5との間でデータの送受信を行う無線機54と、が設けられている。
【0024】
本発明に係る傾斜地用作業機の操作システム1を用いて土木作業等を行うためには、まずセッティング工程において、
図1に示すように、作業面3の外縁に沿って複数の固定点、つまり第一~第三固定点61~63を設け、その第二,第三固定点62,63に定滑車42,43を取り付ける(
図4参照)とともに、第三固定点63の下方側にウィンチ7を設置する。そして、ウィンチ7から繰り出された昇降用ワイヤ41を作業面3の外縁に沿って案内し、各定滑車42,43に巻き掛けるとともに、昇降用ワイヤ41の先端部を作業面3の第一固定点61に固定する。また、第一固定点61及び第二固定点62に張設された昇降用ワイヤ41を作業面3側へ繰り出して、その途中部を傾斜地用作業機2の動滑車23に巻き掛けることにより傾斜地用作業機2を吊下するように支持する。
【0025】
次に作業工程において、傾斜地用作業機2を目視可能で安全な場所に位置する操作者が操作装置5を用いて、昇降用ワイヤ41が弛まないようにウィンチ7を遠隔操作することにより傾斜地用作業機2を作業面3の上方側へ助勢しながら、傾斜地用作業機2を作業面3の上下方向及び左右方向に移動させるとともに、操作装置5のメインモニター51を見ながら傾斜地用作業機2の油圧機器を遠隔操作して作業面3に対する所定の土木作業等を行う。
【0026】
この際に、傾斜地用作業機2の上方側への移動は、傾斜地用作業機2の走行駆動部による走行とウィンチ7による昇降用ワイヤ41の巻き上げ力との双方によりなされる。一方、傾斜地用作業機2の下方側への移動は、ウィンチ7のブレーキを緩めて昇降用ワイヤ41を繰り出しつつ、傾斜地用作業機2の走行駆動部を作動させることにより行われる。また、傾斜地用作業機2を作業面3の左右方向に移動させる際には、例えば昇降用ワイヤ41に一定の張力を作用させて傾斜地用作業機2の横転を防止しつつ、平地における移動と同様に、進む方向へ傾斜地用作業機2を旋回させて走行させる等により行われる。
【0027】
上述のように傾斜地用作業機2を遠隔操作する際に、操作者は操作装置5の表示手段53に表示された昇降用ワイヤ41の巻取力データ、具体的には巻取力データ送信手段8のカメラ81により撮像されたウィンチ7の駆動電力を確認しつつ、ウィンチ7及び傾斜地用作業機2の遠隔操作を行うことができる。このため、ウィンチ7から昇降用ワイヤ41に過大な巻取力が与えられることを効果的に防止して、少人数の作業者により傾斜地用作業機2を安全に稼働させることができる。
【0028】
すなわち、ウィンチ7の設置個所と、傾斜地用作業機2を遠隔操作する操作者の立ち位置と、が離れている場合においても、傾斜地用作業機2を遠隔操作する操作者とは別の監視者をウィンチ7の設置部に配置することなく、操作装置5を持った操作者が表示手段53の表示画像を見ることによりウィンチ7に過大な駆動電力が供給された状態にあるか否かを容易かつ正確に判別することができる。したがって、例えば傾斜地用作業機2が窪地に嵌り込んだり、障害物に接触したりする等により、傾斜地用作業機2の移動が拘束されてウィンチ7から昇降用ワイヤ41に過大な巻取力が与えられた状態にあることが、表示手段53の表示画像に応じて判別された場合には、傾斜地用作業機2の態勢を立て直すようにウィンチ7及び傾斜地用作業機2を遠隔操作することができる。この結果、傾斜地用作業機2の移動が拘束された状態で、傾斜地用作業機2による土木作業等が強行されて昇降用ワイヤ41が破断したり、傾斜地用作業機2が作業面3から落下したりする等の事態の発生を容易かつ効果的に防止することができる。
【0029】
上述の実施形態では、ウィンチ7の駆動電力を検出して表示する電流計からなる電力表示部73と、この電力表示部73の表示画像を撮像するカメラ81と、このカメラ81の撮像データを操作装置5に送信する送信機82と、を巻取力データ送信手段8に設けた構成としたため、市販の電流計からなる電力表示部73と、撮像用のカメラ81及び送信機82を有する市販の監視カメラ等と、を用いることにより、ウィンチ7による昇降用ワイヤ41の巻取力の大きさを示す巻取力データとして、カメラ81の撮像データを容易かつ正確に検出して操作装置5に送信することが可能である。
【0030】
なお、上述に実施形態に代え、例えばウィンチ7の駆動電力を検出する電流計等からなる検出部と、その検出値をデジタル信号に変化して操作装置5に送信する送信機82と、を巻取力データ送信手段8に設けた構成としてもよい。この構成においても、ウィンチ7による昇降用ワイヤ41の巻取力の大きさを示す巻取力データとして、ウィンチ7の駆動電力データを表示手段43に表示させることにより、操作装置5を持った操作者が表示手段53の表示画像を見ながら昇降用ワイヤ41に過大な巻取力が加えられた状態にあるか否かを容易かつ正確に判別し、必要に応じて傾斜地用作業機2の態勢を立て直すようにウィンチ7及び傾斜地用作業機2を遠隔操作できるという利点がある。
【0031】
図5に示すように、傾斜地用作業機2の作業姿勢等を表示するメインモニター51の一部に、ウィンチ7の巻取力データとして表示する表示窓からなる表示手段53を設けてなる上述の実施形態に代え、メインモニター51と、ウィンチ7の巻取力データとして表示するサブモニターからなる表示手段53と、を別々に設けた構成としてもよい。また、単一のモニターに傾斜地用作業機2の作業姿勢とウィンチ7の巻取力データとを一定間隔で交互に、あるいは操作者の操作に応じて順次、表示するように構成してもよい。
【0032】
また、
図6に示すように、昇降用ワイヤ41から各固定点61~63に作用する荷重の大きさを示す荷重データを測定して操作装置5に送信するテンションメータ等からなる荷重データ送信手段9を設けるとともに、この荷重データ送信手段9により測定された荷重データを表示する荷重データ表示部(図示せず)を操作装置5に設けた構成としてもよい。この構成によれば、昇降用ワイヤ41から各固定点61~63に作用する荷重の状態を観察する複数の観察者を配置することなく、各固定点61~63に過大な荷重が作用した状態にあるか否かを容易かつ正確に判別することができる。したがって、各固定点61~63となる樹木が十分な太さを有していない場合等においても、この樹木が折れたり、引き抜かれたりする可能性があるか否かを、操作装置5の操作者が荷重データ表示部を目視することによって容易かつ正確に判別することが可能であり、少人数の作業者によって傾斜地用作業機2を安全に稼働させることができる。
【0033】
上述の実施の形態では、固定点61~63として作業面3付近の傾斜地に生育する樹木を利用した例について説明したが、作業面3付近に適当な樹木が生育していない場合には、
図7に示すように、固定点61~63の設置部に位置する傾斜地に、一定間隔を置いて深さ2~3m程度の一対の孔90を形成し、該孔90にアンカーボルト91をセットした状態で、コンクリート92を流し込む等により、一対のアンカーボルト91を相互に一定間隔を置いて傾斜地に埋設状に固定した構造としてもよい。そして、両アンカーボルト91の上端部を連結する連結板93を傾斜地に略平行に固定し、この連結板93に形成した取付孔94に前記昇降用ワイヤ41を挿通させる等により、この昇降用ワイヤ41を固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 傾斜地用作業機の操作システム
2 傾斜地用作業機
3 作業面
4 助勢装置
5 操作装置
6 固定点
7 ウィンチ
8 巻取力データ送信手段
9 荷重データ送信手段
21 下部走行部
22 上部旋回部
23 動滑車
41 昇降用ワイヤ
42,43 定滑車
51 メインモニター
52 操作盤
53 表示手段
54 無線機
61 第一固定点
62 第二固定点
63 第三固定点
71 ドラム
72 駆動モータ
73 電力表示部
81 カメラ
82 送信機